JP2022533011A - 認知障害を処置するためのパルス状gnrh投与 - Google Patents

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Abstract

本発明は、嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害を処置するための新規治療方法に関する。ダウン症候群のマウスモデル(DS-Ts65Dnマウス)を使用することにより、本発明者らは、GnRH不全がDSにおける認知低下の年齢依存的な獲得に関与すること、及びDSにおけるパルス状GnRH処置によって嗅覚及び認知に関連付けられる障害を回復可能にすることを実証した。本発明者らはさらに、GnRH不全が、認知低下が嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害の病理学的経路に関与すること、及び、したがって、パルス状GnRH投与を、嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害の処置のために使用できることを実証している。したがって、本発明は、認知障害の処置のためのGnRHの使用に関し、前記GnRHは、パルス投与により投与される。本発明はさらにmiR-200及び/又はmiR-155に関し、それらは、認知障害の処置における使用のための、GnRH分泌調節に関与することが公知である。

Description

本発明の分野
本発明は、嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害を処置するための新規治療方法に関する。本発明は特に、嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害の処置のためのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)のパルス投与に関する。
本発明の背景
嗅覚障害及び認知障害の関連性は、いくつかの障害において見出される。嗅覚機能障害は、例えば アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、ダウン症、又は非ダウン症の遅滞(Doty, 2012)において示されており、一般的な病理学的基質がこれらの疾患において含まれうることを示唆する。しかし、この嗅覚障害に関与する機構は依然として不明である。
認知障害は一般的に、記憶障害、ならびに少なくとも1つの他の認知領域、例えば注意、言語、視空間スキル、又は問題解決などの障害を含む。これらの障害によって、患者の日々の機能的活動が大きく損なわれ、一般的に集中的な健康管理が要求される。
今日まで、認知障害のための満足できる標準的な処置はない。
このように、認知障害のための新規治療アプローチについての必要性がある。
ダウン症候群(DS)は、21トリソミーとしても公知であり、知的障害の最も一般的な遺伝的形態であり、世界中での出生数1万人当たり10~14人の有病率であり、年齢に依存的な複数の併存疾患に関連付けられる(Antonarakis, 2017;Bayen et al., 2018)。DSを伴う患者は実際に、しばしば40歳の誕生日までに顕在化する加齢の生理学及び状態を加速させているように見える。特に、DSを伴う成人は、21番染色体上のこの遺伝子の位置の結果として、APPによりコードされるアミロイド前駆体タンパク質の過剰発現に部分的に起因するアルツハイマー病(AD)を発生する非常に高いリスクがある。死後試験によって、DSを伴う成人のほぼ100%が40歳までにADの神経病理学的変化を示すことが明らかにされているが(Editorial, 2013;Lott and Head, 2019)、臨床試験によって、DSを伴う40歳未満の人々では、生涯にわたる知的障害にもかかわらず、認知症の率は全体的に低いことが示されている。しかし、認知症の臨床症状は40歳以降から迅速に現れる(Ballard et al., 2016)。
DSはしばしば、妊孕性及び嗅覚障害に関連付けられる。不思議なことに、これらの特色はまた、別の障害であるカルマン症候群(KS)において見出すことができる。KSは、生殖軸及び嗅覚系の両方に影響する遺伝性疾患である。それは、嗅覚プラコードから脳中へのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)ニューロンの移動の失敗により起こされる低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の形態である。患者は、春機発動期開始及び妊孕性の非存在、ならびに嗅覚の喪失を呈する。
DS患者は、妊孕性障害及び加速加齢生理を有する。自然な加齢過程は、視床下部-下垂体性腺軸の変化をもたらし、最初にエストロゲンの劇的な低下(Studd et al., 1978)及び男性でのテストステロンの漸減(Deslypere et al., 1987)に導く。女性での低エストロゲン(Manly et al., 2000)及び男性での低テストステロンの両方が、不良な認知能力及びADの増加リスクと一貫して関連付けられてきた(Moffat et al., 2004;Yaffe et al., 2002)。女性での性腺ステロイドの劇的な低下は、閉経期での卵巣予備能の喪失に起因し、それによって、生殖及び種の生存を制御する神経ホルモンであるGnRHを放出する視床下部ニューロンの活性における著しく永続的な増加が誘発される。この増加は、GnRH分泌に対するエストロゲンの抑制的なネガティブフィードバック効果の欠如に起因し、黄体形成ホルモン(LH)を含む、下垂体により放出されるゴナドトロピンの循環レベルにおける劇的な増加をもたらす(Studd et al., 1978;Yen and Tsai, 1971)。高齢男性では、テストステロンパルス頻度及び血清レベルの減少は、視床下部-下垂体機能の変化と関連付けられ、それは加齢に伴うGnRH分泌の漸減に起因しうる(Deslypere et al., 1987)。同様に、閉経後の高齢女性は、加齢に伴い、生殖軸の視床下部部分のパルス状活性が著しく減少する(Hall et al., 2000)。視床下部のGnRH分泌における加齢に関連する低下の存在を示唆するヒトでのこれらの試験と並行して、マウスでの最近の試験によって、全身の加齢におけるGnRH神経内分泌系の関与が提唱された(Zhang et al., 2013)。
上の観点において、本発明者らは、後天性GnRH欠損症が、DSにおける認知低下の加齢依存的な獲得において役割を果たすことができるか否かを評価した(Schapiro et al., 1987)。
GnRHニューロン及び嗅覚ニューロンの両方が、嗅覚プラコードにおける同じグループの前駆細胞から生じ、GnRHニューロンが、さらなる胚発生の間に脳の視床下部中に移動する。この共有された起源によって、GnRH系と嗅覚系の間の関連が強調される。本発明者らは、このように、GnRH欠損症が、嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害に関与しうるか否かをさらに評価した。
詳細な説明
DSのマウスモデル(Ts65Dn)を使用し、本発明者らは、認知障害の獲得、しかし、また、嗅覚の低下である無嗅覚症が、DS(Nijjar and Murphy, 2002)及び認知症(Doty, 2012)の両方の特徴でもあり、出生後発達の間での脳におけるGnRH発現の段階的な喪失を伴い、成体期におけるパルス状LH分泌のパターン変化に関連付けられることを実証した。本発明者らはさらに、海馬及び皮質におけるGnRH-R発現ニューロンの活性を阻害することによって、コントロールの野生型マウスにおいて認知及び嗅覚障害が誘導されることを示した。本発明者らは特に、不妊症を管理するために先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の患者に通常投与されるパルス状GnRH処置(Boehm et al., 2015)によって、DSにおける嗅覚及び認知関連障害が逆転されることを実証した。
本発明者らはさらに、パルス状GnRH処置によって、Ts65Dnマウスの皮質におけるAD関連タンパク質、例えばTauCterなどの発現の減少を可能にすることができ、及び、これが、AD症状の出現の前、即ち、ADの初期段階においてであることを実証した。Ts65Dnマウスも、ADの有用なモデルと考えられていることは注目に値するが、DS患者(ヒト又はマウス)が、21番染色体上(又はマウスにおける対応する16番染色体上)に位置付けられるAPP遺伝子の過剰発現のために、アルツハイマー病(AD)を発生する非常に高いリスクがあるとの事実に起因する。
本願はこのように、以下を示す:
- GnRH欠損が、DSにおける認知低下の年齢依存的な獲得に関与する;
- 視床下部外構造におけるGnRH-R発現ニューロンの阻害によって、認知障害及び嗅覚障害の両方が誘導される;
- パルス状GnRH処置によって、DSにおける嗅覚及び認知に関連付けられる障害が逆転させることが可能になる;及び
- GnRH処置によって、ADに関連付けられるタンパク質の発現を低下させることが可能になり、ADは嗅覚機能障害に関連付けられることが公知である(例:Doty, 2012を参照のこと)。
上で言及するように、DS及びAD以外の複数の認知障害(例えばパーキンソン病、認知症、又は非ダウン症の遅滞など)は、随伴性の嗅覚機能障害及び認知低下に関連付けられる。認知低下が嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害は、このように、同じ病理学的経路を共有する。
GnRHニューロンは、胚発生の間に嗅覚前駆細胞から由来し、本明細書中で実証するように、GnRH発現における欠損によって嗅覚障害及び認知障害が誘導される。
このように、理論により拘束されることなく、本願は、GnRH欠損症が、認知低下が嗅覚障害に関連付けられる認知障害の病理学的経路に関与することを示す。
本願は、このように、GnRH置換処置によって、認知障害における嗅覚障害及び認知障害を逆転させることが可能になることを実証する。
したがって、本発明は、それを必要とする患者における認知障害の処置における使用のためのGnRHに関し、それにおいて前記GnRHはパルス投与により投与される。
本発明は、特に、それを必要とする患者における認知障害の処置における使用のためのGnRHに関し、それにおいて前記GnRHはパルス投与により投与され、及びそれにおいて前記患者は嗅覚機能障害を有する。
本発明はまた、それを必要とする患者における認知障害を処置するための、前記患者へのGnRHのパルス投与を含む方法に関する。特定の実施形態では、前記患者は嗅覚機能障害を有する。
GnRHは、視床下部において位置付けられるGnRHニューロンからパルス状様式で放出される神経ホルモンである。GnRH発現によって、下垂体前葉からの黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が制御される。差動的なGnRHパルス頻度及び振幅によって、FSH及びLHの分泌パターンが変化する。GnRHはデカペプチドである。本発明の文脈において、「GnRH」は、上のGnRHデカペプチド、及び任意の水溶性のイオン化可能な形態のGnRH(遊離塩基、塩、もしくは誘導体、ホモログ、又はそれらの類似体を含む)を指す。特定の実施形態では、「GnRH」は、ゴナドレリン、及び特に以下を指す:
- FACTREL(登録商標)、HRF(登録商標)、及びLUFORAN(登録商標)として商業的に入手可能なGnRH塩酸塩(HCl);又は
- LUTRELEF(登録商標)、LUTREPULSE(登録商標)、KRYPTOCUR(登録商標)、LHRHFERRING(登録商標)、LUTAMIN(登録商標)、RELISORML(登録商標)、CYSTORELIN(登録商標)、又はRELISORM(登録商標)として商業的に入手可能なGnRH酢酸塩/二酢酸塩。
ゴナドレリンは、ヒト視床下部において合成された内因性GnRHと同じアミノ酸配列を有し、このように、内因性GnRHと同じ薬理学的及び毒物学的プロファイルを有する合成デカペプチドである。
本発明の文脈において、GnRHは「パルス」様式で投与される。上記のように、GnRHは特定のパルス頻度及び振幅を伴って自然に分泌される。前記の頻度及び振幅は、種、性別、及び年齢に従って変動する。本発明の文脈において、「パルス」投与によって、患者と同じ種及び性別の中年期成人(即ち、ヒトでは20~30歳の間)の自然の内因性GnRHパルスピーク、即ち、患者と同じ種及び性別の中年期成人において観察されたGnRHの頻度及び振幅が再現される。パルス状GnRH投与は一般的に、生殖障害、例えば低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に起因する、例えば、カルマン症候群(Boehm et al. 2015;又は例えば、Leyendecker et al. 1980;Schoemaker et al. 1981;Reid et al. 1981;Keogh et al. 1981, Hayes et al. 2013;又はアクセッション番号NCT00383656の米国国立医学図書館において参照される進行中の臨床試験を参照のこと)としての、無月経及び不妊症などの処置のために使用される。このように、当業者は、内因性GnRHパルスピークに達するために使用される投与の量/頻度を知っている。
典型的には、ヒトの内因性GnRHパルスピークは、パルス当たり25から600ng/kgまで変動し、60から180分毎のピークを伴う(Hayes et al. 2013を参照のこと)。
典型的には、男性のGnRHパルスピークは、60から180分毎の10から40ng/kgのGnRHの、特に90から150分毎の20から30ng/kgのGnRHの投与に対応する。男性における典型的なGnRHパルスピークは、120分毎の25ng/kgのGnRHである(Boehm et al. 2015を参照のこと)。
典型的には、女性のGnRHパルスピークは、60から120分毎の50から100ng/kgのGnRHの、特に80から110分毎の65から85ng/kgのGnRHの投与に対応する。女性における典型的なGnRHパルスピークは、90分毎の75ng/kg(即ち、90分毎の3から10μg-Boehm et al. 2015又は臨床試験NCT00383656を参照のこと)のGnRHである。
当業者は、前記パルス状GnRHをどのように患者に投与するかを知っている。GnRHは、典型的には、経皮、経口、又は非経口投与を介して投与される。本明細書中で使用するように、用語「非経口」は、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、筋肉内投与ならびに注入投与を含む。GnRHは、典型的には、医薬的に許容可能な賦形剤と組み合わせて、経皮投与又は非経口投与のために適切な治療用組成物を形成する。
GnRHは、典型的には、上記の内因性GnRHパルスピークを再現するように、経皮送達システム、例えば特定の間隔でGnRHボーラスを送達するポンプ(例、携帯型注入ポンプ)などを介して投与される。Ferring Pharmaceuticalsにより産生及び商品化されたLUTREPULSE(登録商標)システムは、そのようなポンプの例である。他の適切なポンプは、例えば、参考文献WO2007041386の下で公開された国際特許出願において又は米国特許第4,722,734号;第5,013,293号;第5,312,325号;第5,328,454号;第5,336,168号;及び5,372,579において開示されている。
あるいは、GnRHは、移植されたGnRH産生ニューロンを介して投与することができる。この実施形態によれば、GnRH産生ニューロンは、患者の天然GnRHニューロンを置換するように患者に移植され、それにより、GnRH不全を治療する。本願の実施例のセクションにおいて実証されるように、GnRH分泌ニューロンの移植に基づく細胞治療によって、パルス状GnRH分泌の回復が可能になり、Ts65Dnマウスにおける嗅覚及び認知関連の障害が逆転される。
Lund et al (2013)において説明されているように、GnRH分泌ニューロンをヒト多能性幹細胞(hPSC)から、特にヒト誘導性多能性幹細胞(hiPSC)、例えば、健常なドナー線維芽細胞から確立されたhiPSCから発生させることが可能である。そのようなGnRH分泌ニューロンの産生においては、ヒト胚の破壊は不要である。
本願を通して説明されるように、本発明は、特に嗅覚機能障害に関連付けられる認知障害を処置するためにGnRHパルス分泌を回復することを目的とする。GnRH発現は、いくつかのmiRNAの作用を介して調節される。特に、miRNA-200ファミリーのメンバー及びmiR-155は、Zeb1及びCebpb(GnRHプロモーターアクチベーターの2つの重要なリプレッサー)をそれぞれ調節することが公知であり(Messina et al (2016)ならびに参考文献WO2017/182580の下で開示される国際特許出願を参照のこと)。本発明者らは、このように、miRNA-200ファミリーメンバー(「miR-200」として言及される)及び/又はmiR-155を過剰発現させることにより、患者におけるパルス状GnRH発現を回復することが可能であることを実証している。本発明者らは、miR-200の視床下部過剰発現によって、Ts65Dnマウスにおける匂いを区別する能力及び新規物体を認識する能力の両方のレスキューがもたらされることを特に実証している。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における認知障害の処置におけるに使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155に関する。
特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における認知障害の処置における使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155に関し、それにおいて患者は嗅覚機能障害を有する。
本発明はまた、治療有効量のmiR-200及び/又はmiR-155を前記患者に投与することを含む、それを必要とする患者における認知障害を処置するための方法に関する。特定の実施形態では、前記患者は嗅覚機能障害を有する。
「治療有効量」は、患者に治療的な利益を付与するために、即ち、本発明の場合では、前記患者におけるGnRHパルス分泌を回復するために必要である最小量の活性薬剤(即ち、miRNA)について意図する。
マイクロRNA(miR)は、生物学的過程の重大な調節因子として出現している小さな非コードRNAである。「マイクロRNA」、「miRNA」、又は「miR」は、約18から約25ヌクレオチドの長さの非コードRNAを意味する。これらのmiRは、miRNAをコードする個々の遺伝子を含む複数の起源から、タンパク質をコードする遺伝子のイントロンから、又は複数の密接に関連するマイクロRNAをしばしばコードするポリシストロン性転写物から由来しうる。
miR-200ファミリーは、miR-200a(miRデータベース中の参考文献MI0000737の下で又はEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000207607の下でアクセス可能なヒト配列)、miR-200b(miRデータベース中の参考文献MI0000342の下で又はEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000207730の下でアクセス可能なヒト配列)、miR-200c(miRデータベース中の参考文献MI0000650の下で又はEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000207713の下でアクセス可能なヒト配列)、miR-141(miRデータベース中の参考文献MI0000457の下で又はEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000207708の下でアクセス可能なヒト配列)、及びmiR-429(miRデータベース中の参考文献MI0001641の下で又はEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000198976の下でアクセス可能なヒト配列)を含む。「miR-200」により、それは、本明細書中で、上に列挙するmiR200ファミリーの任意のmiRNAとして言及される。
MiR-155は、miRデータベース中の参考文献MI0000681の下で及びEnsemblデータベース中の参考文献ENSG00000283904の下で示される配列を有する。
全てのこれらのmiRNAは当業者に公知である。それらは、インビボでの細胞の核への核酸の送達のために公知の任意の手順を用いて投与し、それを必要とする患者におけるパルス状GnRH発現を回復させることができる。特に、miR-200ファミリーメンバー及びmiR-155は、組換え技術を使用して投与することができる。例えば、適切なベクターを宿主細胞中に挿入し、その細胞中で発現させて、上のmiRを発現させてもよい。
本明細書中で使用するように、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。適切なベクターの1つの型は、ウイルスベクター(例、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV))である。
本発明によれば、パルス状GnRH、miR200、及び/又はmiR155は、認知障害の処置のために投与される。「認知障害」は、任意の公知の認知障害、特に、嗅覚機能障害に関連付けられる認知低下を伴う認知障害でありうる。
「認知障害」は、「神経認知障害」としても言及され、以前に達成された認知機能のレベルからの低下(Sachdev et al. 2014を参照のこと)、即ち、知覚運動機能(視覚知覚、視覚構築推論、知覚-運動協調)、言語(対象の命名、単語の発見、流暢さ、文法及び構文、受容言語)、学習及び記憶(自由想起、手がかり想起、認識記憶、意味的及び自伝的長期記憶、潜在学習)、社会的認知(感情の認識、心の理論、洞察)、複雑な注意(持続的注意、分割的注意、選択的注意、処理速度)及び実行機能(計画、意思決定、作業記憶、フィードバックへの応答、抑制、柔軟性)における低下により特徴付けられる。総説については、米国精神医学会(APA)により発行された精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-V‐現場における参照)の第5版によって、神経認知障害の診断のための一般的なフレームワークが提供されている。DSM-Vは、特に主な認知症候群を記載している。それによって認知障害がせん妄、軽度及び重度神経認知障害の3つのカテゴリーに分類されており、軽度及び重度神経認知障害の特定の病因サブタイプを描写するための基準が定義されている。主な病因のサブタイプはアルツハイマー病;前頭側頭葉変性症、HIV感染症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、プリオン病、物質及び/又は薬物使用、外傷性脳損傷、及び血管疾患である。
上で言及するように、いくつかの認知障害は、嗅覚機能障害に関連付けられる認知低下を含む。Doty et al (2012)において開示されているように、そのような認知障害は、例えば、ダウン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、又は非ダウン症の遅滞である。
特定の態様によれば、本発明による認知障害はダウン症候群である。別の態様によると、認知障害はアルツハイマー病である。さらなる態様によれば、認知障害はパーキンソン病である。
さらに、加齢に関連付けられる認知機能の低下、特により高齢における軽度の認知機能障害は、初期の嗅覚機能障害に関連付けられることが公知である(Wilson et al. 2007を参照のこと)。したがって、さらなる一態様では、本発明による認知障害は、加齢に関連付けられる認知低下である。
嗅覚機能障害は、一般的に認知疾患の初期段階において又は中期段階において現れる。したがって、別の実施形態によれば、認知障害は、初期段階又は中期段階にある。特定の実施形態によれば、認知障害は初期段階にある。
例えば、アルツハイマー病は3つの段階を伴うスペクトルで進行することが公知である-症状を伴わない初期の前臨床段階;軽度認知障害の中期段階;及び認知症の症状により特徴づけられる最終段階。初期段階は、アミロイド蓄積及び他の神経細胞の変化を含む脳変化を含むが、しかし、重大な臨床症状を伴わない。中期段階は、人の年齢及び教育のため通常よりも大きいが、しかし、彼又は彼女の非依存に干渉しない記憶及び/又は他の思考の問題の症状を含む。ADの最終段階は、記憶喪失、単語発見の困難、及び非依存的に機能する人の能力を損なうのに十分に重大な視覚/空間の問題を含む(Sperling et al. 2011を参照のこと)。ADの間に、嗅覚機能障害は、主に無症候性の前臨床段階の間に、さらに「軽度認知障害」に対応する中間段階の間に現れる。したがって、特定の実施形態では、本発明による認知障害は、初期段階のアルツハイマー病である。
嗅覚機能障害はまた、パーキンソン病の初期段階の間に現れる(Ross et al. 2008を参照)。パーキンソン病は、ホーエン・ヤール重症度分類(Hoehn and Yahr Scale)として公知の5つの段階に従って進行する。本発明によるパーキンソン病の初期段階は、ステージI、II及びそれより初期(即ち、「前段階パーキンソン病」)である。したがって、別の特定の実施形態では、本発明による認知障害は、初期段階のパーキンソン病である。
Wilson et al (2007)において示されているように、嗅覚機能障害は加齢に関連付けられる認知低下の間に初期に現れる。このように、さらなる一実施形態によれば、本発明による認知障害は、加齢に関連付けられる認知低下の初期段階である。
また、上で説明したように、DS患者は生涯にわたる知的障害を示すが、しかし、特に年齢40歳前後で強い認知低下を、40歳後に認知症を示す。したがって、GnRH補充治療は、青年期から、又は少なくとも若年成人18-20において使用され、患者の認知能力を改善し、認知症の発症を遅延させることができる。したがって、さらなる実施形態では、本発明による認知障害は、「初期段階」DS、即ち、40歳又はそれ以上の患者において現れる加齢に関連する認知低下の前である。
本発明による認知障害は、嗅覚機能障害に関連付けられる(GnRH欠損症に関連付けられる認知障害を特異的に標的とするため)。「嗅覚機能障害」は、嗅覚における変化に対応する。前記変化は、「無嗅覚症」とも呼ばれる嗅覚の完全な喪失、又は「嗅覚減退症」もしくは「ミクロスミア」として言及される部分的な嗅覚でありうる。複数の嗅覚テストが、患者の嗅覚機能を評価するためにそれらを使用することに慣れた当業者に利用可能である。嗅覚テストは、精神物理学的テスト、電気生理学的テスト、及び精神生理学的テストに分けることができる(例えば、Doty et al (2007);Eibenstein et al (2005)及びKobal et al (1994)を参照のこと)。テストの例は、患者に馴染みのある匂い物質を提示することを意味し、患者は次に、オプションのリストから匂いの名前を選ばなければならない。閾値テストも使用することができる。それらは、患者により識別されることができる匂い物質の最も低い濃度を決定することを目的とする。
本発明の文脈では、「患者」は、哺乳動物(例、イヌ、ネコ、ブタ)である。特定の実施形態では、患者はヒトである。
本明細書中で使用するように、用語「処置する」又は「処置」は、そのような用語が適用される障害又は状態を逆転させる、緩和する、その進行を阻害する、又は防止すること、あるいはそのような用語が適用される障害又は状態の1つ又は複数の症状を逆転させる、緩和する、その進行を阻害する、又は防止することに関する。
本発明を、以下の図面及び実施例によりさらに例証する。しかし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして任意の方法で解釈すべきではない。
図1:Ts65Dnマウスは、新たな匂い及び物体を認識する能力が年齢に依存的な喪失を示す。(A)出生後発達の間での異なる段階で嗅覚及び視覚の手がかりを識別するマウスの能力を評価するために実施された実験計画の概略図。(B)馴化/脱馴化テストを使用し、異なる匂いの間で区別する能力を評価した。最初に、1つの匂いが、馴化段階の間に連続4回にわたり提示される;及び次に、新たな匂いが脱馴化段階の間に提示される。(C)新規物体認識テストが使用し、認識記憶を評価した。物体認識スコアを、動物が試行2の間に新たな物体を探索するのに費やした時間として、合計探索時間にわたり算出した。(D)P35では、Ts65Dnマウスは、野生型同腹仔(WT)と比較した場合、2つの異なる匂いを区別できなかったが、それらの環境において新たな物体の導入を等しく認識できた。(E)成体の年齢で、Ts65Dnマウスは、WT同腹仔と比較した場合、異なる匂い及び物体の両方を区別する能力の喪失を示した。*p<0.05;**p<0.01。 図2:Ts65dnマウスにおける海馬及び皮質のAPP、CTF、及びTau-Cterの発現レベル。(A、B)POA(WT-POA)を用いて移植された又は移植されていない(偽)3ヶ月及び中年期の成体(8~12ヶ月)Ts65dn及びWT雄マウスの海馬(A)及び皮質(B)におけるAPP、CTF、及びタウ-Cterのタンパク質レベルの定量化。(C、D)3ヶ月及び中年期の成体(8~12ヶ月)Ts65dn及びWT雌マウスの海馬(C)及び皮質(D)におけるAPP、CTF、及びTau-Cterのタンパク質レベルの定量化。GAPDHを負荷コントロールとして使用した。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。 図3:Ts65Dnマウスにおける匂い及び物体認識タスクにおけるmiR-200ファミリーメンバーの機能的関与の評価。miR-200b又はコントロールmiRNAを、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV9、Vector Biolabs)を使用し、成体雄Ts65Dnマウスの視床下部において選択的に過剰発現させた。miR-200bの過剰発現は、Ts65Dnマウスにおける匂いを区別する能力(A)及び新規物体を認識する能力(B)の両方のレスキューをもたらした。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。 図4:パルス状GnRH注入によって、Ts65Dnマウスにおける嗅覚及び認知関連の障害の両方が逆転される。(A)クリニックで使用されるGnRHペプチドであるLUTRELEF(登録商標)を用いて成体Ts65Dnマウスにおいて実施された薬理学的馳治療を例証する概略図。マウスに浸透圧ポンプを移植し、賦形剤又はLUTRELEF(登録商標)の持続注入を受けた(0.25μgr/3時間);又はプログラム可能なミニポンプ(iPRECIO)を移植し、パルスLUTRELEF(登録商標)注入を受けた(3時間毎;ピーク持続時間10分を伴う0.25μgのピーク)。(B-F)15日間の賦形剤又はLUTRELEF(登録商標)皮下投与後のLHパルス評価についての代表的なグラフ。Ts65Dn雄におけるLUTRELEF(登録商標)パルス注入によって、WTマウス及びTs65Dnマウス(G)の両方においてLHパルス頻度及びLHパルス振幅の両方を防止したLUTRELEF(登録商標)持続注入と比較し、LHパルス頻度及びLHパルス振幅(G)が有意に増加された。LUTRELEF(登録商標)のパルス注入によって、Ts65Dnマウスにおける異なる匂い(H)と認知障害(I)の間を識別する能力がレスキューされた。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。 図5:GnRH受容体(GnRH-R)を発現するニューロンの急性化学遺伝学的阻害によって、成体コントロールマウスにおける認知能力及び嗅覚能力が損なわれる。(A)認知能力及び嗅覚能力に対するGnRH-R発現ニューロンの化学遺伝学的阻害の効果を試験するためのプロトコルを例証する概略図。6ヶ月齢のGnrhr::Creマウスを、hM4D(Gi)DREADDウイルスベクターを用いた投与の前後にテストした。2つの黒色点は、ウイルスの投与部位を示す。クロザピン-n-オキシド(CNO)により誘導されたGnRH-R発現ニューロンの化学遺伝学的阻害によって、異なる匂い(B)とそれらの認知能力(C)を識別するGnrhr::Cre-DREADD投与マウスの能力が損なわれたが、生理食塩水投与は効果を有さなかった(B、C)。すべてのドットは1つの被験者を表す。統計的差異は、一元配置反復測定分散分析を使用してテストした。(B:コントロール対生理食塩水、q(2)=1.77、P=0.54、n=3及び3;コントロール対CNO、q(2)=60.28、P<0.0001、n=3及び3;生理食塩水対CNO、q(2)=16.92、P=0.01、n=3及び3。C:コントロール対生理食塩水、q(2)=1.39、P=0.65、n=3及び3;コントロール対CNO、q(2)=9.56、P=0.04、n=3及び3;生理食塩水対CNO、q(2)=11.27、P=0.03、n=3及び3)。*P<0.05;***P<0.001。
実施例
実施例1
Ts65dn雄マウスは、性的成熟の遅延、性腺機能低下症、及び不妊症を示す。
性的発達の異常及び不妊症は、ダウン症(DS)を伴う患者において記載されている(Hsiang et al., 1987)。等しく、Ts65dnマウスにおける成体の妊孕性の変化が以前に報告されており、このように、雄は不妊症を示し、雌は低受胎性である(Moore et al., 2010);しかし、性的成熟は、このマウスモデルにおいて探索されたことはない。本明細書では、Ts65dnマウスにおける生殖成熟の表現型の特徴付けを、出生から成体期まで実施した。
Ts65dn雄は、出生後の成熟及び春機発動期移行の間に、野生型同腹仔よりも小さく、有意に低い体重増加を示した。春機発動期の開始での著しい遅延が、野生型同腹仔と比較し、雄Ts65dnマウスにおいて観察された。Ts65dn雄は、亀頭包皮分離における遅延を示し、より小さな陰茎及びそれらの精巣は陰嚢中に下降しなかったが、それらの全てが、出生後の性的成熟を追跡するために使用される外部徴候である。亀頭包皮分離時の体重は、Ts65Dnと野生型同腹仔の間で同一であったが、遅延した成長が性的成熟における遅延に関与しうることを示唆する。さらに、Ts65Dnマウスは、主要な尿タンパク質の発現の不規則なプロファイルを呈したが、それは、尿中の排泄がテストステロンにより刺激され、マウスにおける性的成熟のマーカーとしても使用される。成体期では、Ts65dn雄は重度の性腺機能低下症を明らかにし、野生型マウスと比較してより低い精巣重量及びより小さな精巣を示した。
GnRHパルス状分泌は妊孕性に不可欠であるため(Belchetz et al., 1978)、本発明者らは次に、成体において尾からの連続的な血液サンプリングを実施することにより、GnRH分泌の代理マーカーである黄体形成ホルモン(LH)の分泌プロファイルを評価した。差はLHパルス頻度において見出されなかったが、Ts65dn雄は、野生型同腹仔と比較した場合、有意に低下したLHパルスの振幅を示した。LHパルス状態の調節解除は、出生後発達の間でのGnRHニューロン求心性ネットワークの変化により説明することができるため(Tata et al., 2018)、GnRHニューロンへのグルタミン酸作動性及びGABA作動性の並置を分析した。本発明者らは、WT同腹仔と比較した場合、生後12日目(P12)及びP35の両方で、Ts65dnマウスにおけるGnRHニューロンの細胞体での小胞グルタミン酸トランスポーター2(vGluT2)-又はGABAトランスポーター(vGaT)-免疫反応性点の並置数において任意の差を見出さなかった。性的成熟の間での視床下部-下垂体-性腺(HPG)軸の機能をさらに探索するために、ゴナドトロピン、LH、卵胞刺激ホルモン(FSH)、及びテストステロンの循環レベルを小春機発動期(minipuberty)(P12)、即ち、HPG軸の最初の出生前活性化に、及び成体において測定した。P12では、FSHレベルではなくLHレベルが、野生型同腹仔と比較した場合、Ts65dn雄において有意に上昇していることが見出された。成体雄DSマウスでは、LHレベル及びFSHレベルの両方が有意に増加していることが見出されたのに対し、テストステロンレベルは野生型のものと同等であった。これらの結果は、血漿テストステロンレベルが正常であるが、FSH及びLHのレベルが有意に上昇していることが見出されている成体DS雄において報告された所見と一致している(Hsiang et al., 1987)。性腺ステロイドにおける欠乏に応答する視床下部の能力を探るために、本発明者らは次に、両側精巣摘除術の前(コントロール)、ならびに14及び30日後にテストステロン及びLHの血清レベルを測定した。結果は、精巣摘除術によって野生型マウス及びTs65Dnマウスの両方においてLH循環レベルが強く増加することを示す(データは示さず)。インタクトな状態と同様に、LHレベルが、野生型同腹仔においてよりもTs65Dnにおいて精巣摘除後に有意に高いことが見出された。一緒に、これらのデータは、性腺と性腺ステロイドを含む視床下部の間でのコミュニケーション過程がTs65Dnマウスにおいて不変であるように見えることを示す。
雌における性的成熟の表現型の特徴付けによって、雄と同様に、体重増加が、出生後発達及び春機発動期移行の間で、野生型同腹仔よりもTs65dnにおいて有意に低いことが示された。Ts65dn雌は、循環エストラジオールレベルにおける増加の指標である、遅延した膣開口を示したが、しかし、差は最初の発情の発生日において見出されず、それは、生殖能力の獲得、即ち、春機発動期と厳密に相関する。膣開口時及び春機発動期開始時の体重は、野生型同腹仔よりもTs65Dn雌において低かった。成体Ts65dn雌も、発情間期においてより低い子宮重量を呈した。Ts65dn雌マウスは規則的な発情周期を示したにもかかわらず、それらは、野生型同腹仔と比較した場合、120日間にわたり産生されたより少ない同腹仔数及び同腹仔当たりのより少ない仔数を伴う減弱した忍容性を示した。しかし、差は、発情間期中のTs65dnマウスと野生型雌マウスの間でLH分泌のパターンにおいて、またFSHの循環レベルにおいて検出されなかった。
Ts65dnマウスはGnRH発現の年齢依存的な喪失を示す。
妥当なGnRHニューロンネットワーク発生は性的成熟及び正しいHPG軸機能のために不可欠であるため、本発明者らは次に、Ts65dnマウスの脳におけるGnRHニューロンの分布を評価した。この目的のために、本発明者らは、GnRHについての新生仔(P0)及び成体(P90)の脳のホールマウント免疫標識、それに続く溶媒除去器官の3次元イメージング(3DISCO)(胚及び出生後脳におけるニューロン接続を同様に試験するために以前に使用されてきた)を実施した(Belle et al., 2017;Casoni et al., 2016)。3D分析によって、Ts65dnマウスとWT同腹仔の間で出生時(P0)でのGnRH細胞体の分布及び数において差はないが、Ts65dnマウスは、成体期においてGnRH免疫反応性細胞体及び線維の有意な喪失を示した。視床下部のGnRHペプチド含量は、出生と春機発動期の間に進行性に増加し、乳仔期の間での小春機発動期の開始を伴う過程の加速を伴う(P7-P12)(Messina et al., 2016;Prevot, 2015)。GnRH発現が減少し始める段階を特定するために、本発明者らは次に、Ts65dnマウスにおける出生後発達の間での視床下部GnRH免疫反応性を調べた。従来の神経解剖学的分析によって、視床下部のGnRH免疫反応性ニューロンの数における喪失が、Ts65Dnマウスにおける春機発動期の開始後にだけ生じることが示された。ヒトにおいて行われた最近の試験によって、視床下部中でのそれらの分布に加えて、GnRH細胞体及び線維がいくつかの視床下部外脳領域でも見いだされることが明らかにされている(Casoni et al., 2016)。したがって、3DにおけるGnRHニューロン線維の追跡によって、正中隆起における古典的な向下垂体GnRH投射だけでなく、しかし、また、成体野生型マウスにおける視床下部外領域における多数のGnRHニューロン投射も強調された。GnRH免疫反応性線維は実際に、内側手綱及び前背側扁桃体まで容易に追跡することができ(Rance et al., 1994)、側脳室の壁に続いている、又は密接な関連においてしばしば見られた。しかし、成体Ts65dnマウスでは、GnRH線維は正中隆起において視覚化できたが、野生型において見られたGnRH免疫反応性の拡張投射ネットワークは存在しなかった。野生型における視床下部外領域におけるGnRH免疫反応性線維の広範な分布は、種の生存を制御するGnRHニューロンも非生殖過程においても関与し得ることを示唆する。当然の結果として、Ts65Dnマウスにおけるこれらの視床下部外GnRH線維の非存在によって、このGnRH欠損症が、このDSのマウスモデルにおける認知表現型に寄与しうるという興味深い仮説が提起される。
Ts65dnマウスは、年齢依存的な嗅覚及び認知機能の喪失を示す。
DS患者及びTs65Dnマウスは、精神遅滞(Epstein et al., 1991;Reeves et al., 1995)だけでなく、しかし、また、加齢に関連する嗅覚の障害(Bianchi et al., 2014;Nijjar and Murphy, 2002)を呈している。興味深いことに、匂いを知覚する能力の機能不全は、カルマン症候群を伴う患者におけるGnRH欠損症に関連付けられる(Boehm et al., 2015)。嗅覚の手がかりは哺乳行動において重要な役割を果たすため(Risser and Slotnick, 1987)、GnRHニューロンの正常な補体及び野生型同腹仔と同等の量の胃中の牛乳を示す(示さず)Ts65dn仔における出生時の嗅覚は、胚発生中の鼻から脳への欠損したGnRHニューロン移動を伴い、カルマン遺伝子中に変異を保有し、出生時に死亡するマウスとは対照的に、著しく影響されるようには見えなかった(Hanchate et al., 2012)。Ts65dnマウスにおいて見られるGnRH免疫反応性の喪失が、これらのマウスにおける嗅覚及び認知の低下に関連付けられるか否かを評価するために、本発明者らは、異なる匂いを識別するマウスの能力を評価するための馴化/脱馴化テスト(Breton-Provencher et al., 2009)ならびに春機発動期前(P35、GnRH免疫反応性がコントロール同腹仔と同等である場合)マウス及び成体(>P60、Ts65DnマウスがGnRH免疫反応性における喪失を経験する場合)マウスにおける認識記憶を評価するための新規物体認識テスト(Leger et al., 2013)を実施した(図1a)。本発明者らは、野生型同腹仔は、匂いが再導入される場合(馴化)、有意に低下した嗅ぎ動作時間を、及び新規の匂いが呈される場合(脱馴化)、嗅ぎ動作の回復を示すことを見出した;春機発動期前の年齢の雄及び雌の両方のTs65Dnマウスは、異なる匂いの間で区別することができず(図1b)、これらのマウスにおける明らかな嗅覚欠損症を示している。対照的に、Ts65Dnマウスは、P35で両方の性別の野生型同腹仔と比較した場合、それらの環境における新たな物体の導入を等しく認識することができた(図1d)。しかし、テストが、2ヶ月後、即ち、若年成体において実施された場合、嗅覚及び認識記憶の両方がTs65Dnマウスにおいて障害されていることが見られた(図1c)。これらの結果は、興味深いことに、GnRH発現における脳喪失と並行し、雄及び雌の両方のTs65Dnマウスにおける加齢に関連する認知低下の発生を示す(図1e)。Ts65Dnマウスにおける認知低下が異常な性腺機能に起因するか否かを決定するために、本発明者らは次に、両側精巣摘除術後3ヶ月に野生型マウス及びTs65Dnマウスの両方において嗅覚と認識記憶を評価した。精巣摘除動物はインタクトな動物(図1c、e)と同様に行動し(図1f、g)、Ts65Dnマウスにおいて見られる嗅覚障害及び認知障害が性腺機能不全又は脳と性腺の間の変化したコミュニケーションに起因する可能性が低いことを示唆している。
DS患者及びマウスの両方において存在するアミロイド前駆体タンパク質(App)遺伝子の三重化(Reeves et al., 1995)が、DSにおいて観察される早期発症型アルツハイマー病(AD)の表現型に関連づけられている。Ts65dnマウスにおいて観察された後天性欠損症が、DSにおけるAD病理の発生と平行しているか否かを決定するために、本発明者らは次にAPP、そのC末端フラグメント(CTF)及びTau C末端(Tau-Cter)をウエスタンブロットにより分析した。タンパク質分析によって、野生型と比較した場合、中年期(8~12ヶ月)における海馬(図2a)中でのAPP発現における有意な増加が明らかになったが、しかし、若年成体(3ヶ月)のTs65dn雄マウスにおいては明らかにならなかった。対照的に、変化は、Ts65dn雄の海馬中でのCTF及びTau-Cterの発現において見られていない(図2a)。皮質では、変化は、野生型同腹仔との比較において、Ts65dn雄におけるAD関連タンパク質の発現において見られなかった(図2b)。雌では、本発明者らは、12ヶ月齢のTs65Dn雌における海馬(図2c)及び皮質(図2d)中でAPP及びCTF発現における有意な増加を見出したが、差は、海馬中又は皮質中でのタウ-Cter発現において見られない(図2d)。このように、Ts65Dnマウスの脳におけるAPP代謝の年齢依存的な調節不全を示す以前の研究(Choi et al., 2009)と一致して、本発明者らは、両方の性別において、APPの発現が若い3ヶ月のTs65dnマウスにおいて影響されず、しかし、野生型同腹仔と比較した場合、中年期動物において増加することが見られる(図2ad)。全体として、これらのデータは、Ts65dnマウスにおける嗅覚及び認知の低下が、APP発現における任意の明白な変化の前に生じることを実証する。
Ts65dnマウスは、Gnrh発現を制御するmiRNA遺伝子ネットワークにおける不均衡を示す。
Ts65dnマウスにおける出生後成熟の間に観察されたGnRH免疫反応性の喪失は、興味深いことに、Dicer(マイクロRNA生合成のために不可欠なRNAse-IIIエンドヌクレアーゼ)がGnRHニューロン中で選択的にノックアウトされたマウスにおいて見られたものを連想させる(Messina et al., 2016)。後天性GnRH欠損症を伴うこれらのマウスがまた、Ts65dnマウスの行動表現型の一部を再現するか否かを決定するために、本発明者らは、成体Gnrh::Cre;DicerloxP/loxPマウスを嗅覚及び認知テストに供した。本発明者らは、GnRH発現の出生後喪失に導く、GnRHニューロン中での成熟miRNA発現の欠如(Messina et al. 2016)がまた、これらのマウスにおいて匂いを識別し、新たな物体を認識する能力において障害を起こし、このように、Ts65dnマウスを表現型コピーする(データは示さず)ことを見出した。
ヒト21番染色体及びマウス16番染色体の両方は、その複製がTs65Dnマウス系統を操作するためにが使用されているが(Reeves et al. 1995)、DS脳において過剰発現されていることが示されている(Elton et al., 2010)少なくとも5つのmiRNA(miR-99a、let-7c、miR-125b-2、miR-155、及びmiR-802)を含むことが以前に報告された。これらのmiRNAにおけるコピー数の変化の効果によって、このように、特定の標的遺伝子の減少した発現がもたらされ、このように、少なくとも部分的に、これらの個体の認知表現型に寄与しうる(Elton et al., 2010;Kuhn et al., 2010)。興味深いことに、本発明者らは最近、miR-99a、let-7c、miR-125b-2、及びmiR-155(miR-802ではない)がGnRHニューロンにより発現されること、ならびにそれらの発現がP7とP12の間に、即ち、小春機発動期の発症時に有意に増加することを報告した(Messina et al., 2016)。また、これらのmiRNA(miR155を含む)の一部がまた、他のmiRNA種の発現、例えばmiR-200ファミリーのメンバーの発現などに影響しうるが、それは、出生後発達の間(成体期を含む)にGnRH発現を制御する際に重要な役割を果たす(Messina et al., 2016)。miRNA-200ファミリーのメンバー、及びmiR-155は、Zeb1及びCebpb(GnRHプロモーターアクチベーターの2つの重要なリプレッサー)をそれぞれ調節することが公知である(Messina et al., 2016)。miRNAがTs65dnマウスにおけるGnRH免疫反応性の出生後喪失の基礎となる分子機構において含まれているか否かを調べるために、本発明者らは、成体の野生型及びTs65Dn同腹仔の視索前野(POA)(齧歯類におけるGnRHニューロンの主要な集団を含む)中でのmiRNA及び異なる遺伝子の発現を分析した。予期外に、リアルタイムPCR分析によって、Ts65dnマウスのPOA中でのmiR-155、let-7c、miR-125b-2、miR-802、及びmiR-99aの任意の過剰発現ではなく、しかし、むしろ、これらの遺伝子の減少した発現が明らかになった(データは示さず)。興味深いことに、データによって、Gnrh発現における著しい減少を伴う成体Ts65dnマウスのPOA中でのZeb1及びCebpb mRNA発現レベルの有意な上方調節が示された(図4c)。これはまた、大半のmiRNA-200ファミリーメンバーの発現の下方調節と関連付けられた(データは示さず)。対照的に、差は、Dicer、Nos1(一酸化窒素シンターゼ1)及びその受容体、sGC(可溶性グアニル酸シクラーゼ)の発現において、ならびにいくつかの公知のGnrhレギュレーター(Kiss1、キスペプチン受容体(Kiss1r)、otx2、及びmeis1を含む)の発現において観察されなかった(Messina et al., 2016)。Ts65DnマウスのニューロンにおけるGnRH発現の出生後喪失に関与する分子機構中へのさらなる洞察を得るために、本発明者らは、Gnrh::Gfp;Ts65dnレポーターマウスを構築し、それは異所性Gnrhプロモーター下でGFPを発現する。GnRHニューロンは、GnRH発現における劇的な下落に先行する発生段階であるP12で、以前に記載されたように(Messina et al., 2016)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)により単離した(データは示さず)。Gnrh::gfp;Ts65Dn及びGnrh::gfp同腹仔からのFACS単離GFP発現GnRHニューロンのリアルタイムPCR分析によって、Gnrh mRNA発現がP12のコントロール同腹仔におけるよりもGnrh::gfp;Ts65Dnにおいて有意に低いことが明らかになった。これらの変化した発現レベルは、Zeb1発現レベルにおける増加に関連付けられ、GnrhプロモーターアクチベーターOtx2及びKiss1rをコードする転写物の有意な下方調節を伴った。Cebpb及びDicer発現は不変のままであった。まとめると、これらのデータは、Ts65dnマウスにおけるmiR200ファミリーのメンバーの発現の変化が、mir200/Zeb1/Kiss1R/Otx2 miRNA遺伝子マイクロネットワークを制御するGnrhプロモーター活性における不均衡を作り出すことにより、出生後発達の間でのGnRH発現の段階的な喪失の基礎となるとの考えを裏付ける。
Ts65Dnマウスにおける嗅覚障害及び認知障害の獲得におけるmiR-200ファミリーの推定上の役割を決定するために、miR-200bを、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)の定位投与を使用し、成体の雄Ts65dnマウスの視床下部中で選択的に過剰発現させた。嗅覚能力及び認知能力の両方を、この実験プロトコルに供されたマウスの各々1匹におけるウイルス感染の前後に評価した。3ヶ月の回復期間後、データは、miR-200bの視床下部での過剰発現によって、Ts65Dnマウスにおける匂いを区別する能力(図3a)及び新規物体を認識する能力(図3b)の両方のレスキューがもたらされることを示し、コントロールAAVを用いて投与されたTs65Dnマウスは、嗅覚欠損及び記憶欠損のままであった。
GnRH補充治療によって、Ts65Dnマウスにおける嗅覚及び認知に関連付けられる障害が逆転する。
本発明者らは次に、成体Ts65dnマウスにより示される嗅覚欠損及び認知欠損が、細胞治療及び薬理学的治療を使用したGnRH補充によりレスキューすることができるか否かを決定しようと努力した。本発明者らは最初に、宿主組織との機能的接続を確立する、第3脳室(3v)中に移植された新生仔POA移植片の可能性を実証した、性腺機能低下症マウスにおいて妊孕性を回復すると以前に記載された手順を採用した(Charlton et al., 1987)。すなわち、野生型の仔(P0-P2)のPOAからの新生仔細胞は、他の場所で記載されているパパイン解離プロトコル(Messina et al., 2016)を使用して酵素的に解離され、成体Ts65dnマウスの3v中に定位投与された。なお、嗅覚能力及び認知能力の両方は、投与前に評価された。3ヶ月間の回復期間後、本発明者らは、Ts65dn雄における野生型新生仔視索前組織(WT-POA)の移植によって、賦形剤溶液を投与されたTs65Dnマウス(偽群)と比較し、嗅覚障害及び認知障害の両方のレスキューがもたらされることを観察した。本発明者らはまた、これらの動物における短期的な非視空間記憶を評価するためにY迷路テストを実施した。本発明者らは、Ts65Dn-Shamマウスとは対照的に、Ts65dn移植動物が、WT-Sham同腹仔と同じ時間を新たなアーム中で過ごすことを見出した。さらに、WT-Sham及び移植Ts65dnの両方が、Ts65Dn-Shamマウスと比較し、最初に新たなアームに入るためにより少ない時間を必要とした。同様の結果が、新生仔WT-POAの移植後に認知を回復した成体Ts65dn雌において観察された。しかし、嗅覚能力のレスキューは、Ts65dn移植雌において観察されなかった。新生仔POA移植によって、Ts65dn雄における妊孕性は回復せず(データは示さず)、高齢Ts65dn雌における発情周期も回復せず(データは示さず)、これらのマウスにおける嗅覚能力及び認知の回復が性腺機能の回復と無関係であることを示している。ウエスタンブロット分析によって、Ts65Dnコントロール(偽)と比較し、新生仔POAの移植後のTs65dn雄の皮質及び海馬中でのAPP及びCTF発現における変化がないことを明らかになり(図2a-d)、移植片媒介性のレスキューがこれらのADタンパク質における目に見える変化に関連付けられないことを示している。しかし、減少したTauCterの発現が、偽処置Ts65Dnマウスと比較した場合、視索前細胞を用いて移植されたTs65Dnの皮質中で見られた(図2b)。
GnRHニューロンがTs65Dnマウスにおける嗅覚機能及び認知機能のこのWT-POA移植片媒介性レスキューにおいて役割を果たすか否かを決定するために、Gnrh::cre;BoNTBloxP-STOP-loxPバイジェニックマウス(GnRHニューロンにおける小胞放出がこれらの細胞中でのボツリヌス神経毒Bの選択的発現により鈍化されているトランスジェニックマウス系統(BoNTBGnrh))からの新生仔細胞を、上に記載するプロトコルに従って、3vの成体Ts65dn雄(BoNTBGnrh POA)中に投与した。3ヶ月間の回復期間後、嗅覚及び認知のレスキューは、BoNTBGnrh-POA細胞を用いて移植されたこれらのTs65Dnマウスにおいて観察されなかった。興味深いことに、3ヶ月後(即ち、移植後6ヶ月)の急性GnRH腹腔内投与(50μg/kg体重)によって、偽及びBoNTBGnrh POA移植Ts65dnマウスの両方において嗅覚欠損及び認知欠損がレスキューされることが見られた(データは示さず)。
GnRHニューロンは、パルス状様式において神経ホルモンを放出する;パルス状GnRH放出は、脳脊髄液(Van Vugt et al., 1985)及び下垂体門脈血(Clarke and Cummins, 1982)の両方においてインビボでモニターされている。CSFにおけるその存在のため、GnRHの分泌欠損は、生殖機能に対する作用に加えて、齧歯類及びヒトの両方の認知に関与する脳領域中で、拡散性伝達を介して、GnRH受容体を発現するニューロン集団の機能も変化させうる(Granger et al., 2004;Wilson et al., 2006)。上で報告するように、GnRH発現を制御するmiRNA遺伝子マイクロネットワークにおける有意な変化、脳全体のGnRH免疫反応性における減少、及びLHパルス状態における変化は、GnRH神経機能が成体Ts65Dnマウスにおいて変化していることを強く示唆する。本発明者らは次に、Ts65dnマウスにおけるGnRHパルス状態を回復することによって、これらのマウスにおける認知能力をレスキューすることができる可能性を探索した。これを評価するために、成体Ts65dn雄に浸透圧ポンプを移植し、性腺刺激ホルモン低下性性腺刺激ホルモン低下症を伴う患者の妊孕性を回復させるためにクリニックで使用されるGnRHペプチドであるLUTRELEF(登録商標)の持続注入(10分当たり0.0025μg)(Boehm et al., 2015);又はプログラム可能なミニポンプを用いて、野生型マウスにおいて報告されたGnRH/LHパルス状態を模倣した15日の間でのパルス状LUTRELEF(登録商標)注入(3時間毎;ピーク持続時間10分を伴うピーク0.25μg)(Czieselsky et al., 2016)のいずれかを受けた(図4a)。本発明者らは、連続的な血液サンプリングによりLHパルス状態を評価した(図4b-g);Ts65Dn雄におけるLUTRELEF(登録商標)のパルス注入は、賦形剤で処置されたTs65Dn雄と比較した場合、LHパルス頻度及びLHパルス振幅を有意に増加させることが見出された(図4g)。実際に、LHパルスの振幅は、それらのWT同腹仔において観察されたものと同様のレベルまで増加した(図4g)。対照的に、LUTRELEF(登録商標)持続注入によって、野生型及びTs65Dn同腹仔におけるLHパルス状態が鈍った(図4g)。LUTRELEF(登録商標)のパルス注入によって、Ts65Dn雄における異なる匂いの間で識別する能力(図4h)及び認知欠損(図4i)の両方がレスキューされることが見られた。LUTRELEF(登録商標)の持続注入は、Ts65Dnマウスにおける嗅覚能力及び認知能力に対する効果を有さなかったが、それは、野生型マウスにおいてこれらのタスクに対する著しい悪影響を有するように見えた(図4h、i)。これらのデータによって、GnRHが認知に及ぼす有益な効果におけるGnRH分泌のパルス状特徴のこれまで疑われていない重要性が実証され、年齢依存的な認知低下を防止し、認知予備能を動員し、このように、神経発達障害(例、ダウン症)及び神経変性障害(例、ダウン症及びアルツハイマー病)を伴う患者における福祉を改善するための新たな処置戦略の開発への道が開かれる。
材料及び方法
動物
全てのマウスを、特定病原体未感染条件下で、12時間の明/暗サイクルを伴う温度制御された部屋(21~22℃)中に収容した。同腹児が生まれた日を0日齢(出生後0日目;P0)として考えた。動物をP21で離乳させ、食料及び水への自由摂取を提供した。
Ts65Dn(B6EiC3Sn.BLiA-Ts(1716)65Dn/DnJ;ストック番号005252)マウス(Ahmed et al., 2012;Reeves et al., 1995;Reinholdt et al., 2011)は、16番染色体の部分的トリソミー、ヒト21番染色体のオーソロガス領域を保有し、Jackson Laboratories(New Harbour、米国メイン州)から購入した。Ts65Dn系統はPde6b遺伝子についての遺伝的背景の野生型(WT)を有するため、系統を、Ts65Dnトリソミー雌をPde6b+(C57BL/6JEiJ×C3Sn.BLiA-Pde6b+/DnJ)F1/J;ストック番号003647)雄と交配することにより維持した。この交配システムによって、WT動物及びTs65Dn動物がもたらされる。DicerLoxP/LoxP,Gnrh::Cre(Tg(Gnrh1::Cre)1Dlc)マウス、Gnrh::Gfpマウス、及びTg(CAG-BoNT/B,EGFP)U75-56wp/J(iBot)マウスは、Brian Harfe博士(フロリダ大学、フロリダ州)(Harfe et al., 2005)、Catherine Dulac博士(Howard Hughes Medical Institute、マサチューセッツ州ケンブリッジ)(Yoon et al., 2005)、Daniel J. Spergel博士(イリノイ州、シカゴ大学医学部内分泌学部門)(Spergel et al., 1999)、及びFrank Pfrieger博士(University of Strasbourg)(Slezak et al., 2012)からそれぞれ供与された。マウスの遺伝子型を、補足表S1中に列挙されているプライマーを使用したPCRにより決定した。動物実験は、リール大学の実験動物の飼育と使用に関する組織倫理委員会により承認された;全ての実験が、2010年9月22日の欧州連合理事会指令(2010/63/EU)により指定された動物使用のためのガイドラインに従って実施された。使用される動物の性別を、本文及び/又は図面の説明文において指定する。動物の遺伝子型又は/及び処置群を、形態学的又は生理学的な差が無視できないほど明白である場合を除き、試験のために盲検化した。
生理学的測定
春機発動期試験。離乳した雄を、亀頭包皮(BPS)分離について毎日チェックし、尿サンプルを離乳からP45まで収集した。
離乳した雌マウスを膣開口部について毎日チェックした。膣開口後、膣スメアを毎日実施し、倒立顕微鏡下で分析し、発情周期の具体的な日を特定した。
妊孕性指数。雌の妊孕性指数を、120日間の長期交配の間の雌1匹当たりの同腹児数から算出した。
ホルモンレベル測定。顎下静脈及び体幹から採取された血液を、滅菌マイクロ遠心チューブ中に収集し、遠心分離まで氷上に保った。血漿を、3,000gで15分間にわたる4℃での血液サンプルの遠心分離後に収集し、使用まで-80℃で保存した。
LHアッセイ:LHレベルを、以前に記載した高感度LHサンドイッチELISA(Steyn et al., 2013)により決定した。96ウェル高親和性結合マイクロプレート(Corning)を、最終希釈率1:1,000(0.1M Na2CO3/NaHCO3、pH 9.6中)の50μLの捕捉抗体(モノクローナル抗体、抗ウシLHβサブユニット、518B7;L. Sibley;カリフォルニア大学デービス校)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを、200μLのブロッキング緩衝液(1×PBS-T pH 7.4(0.1M PBS、0.05% Tween 20(Sigma#P9416)中の5%(w/v)スキムミルクパウダー)を用いて室温(RT)で2時間にわたりインキュベートした。標準曲線を、1×PBS-T中の1%(w/v)BSA(Sigma、A9418)中のマウスLH(参照調製物、AFP-5306A;国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所の全国ホルモン及び下垂体プログラム(NIDDK-NHPP))の2倍段階希釈物を使用して作成した。LHスタンダード及び血液サンプルを、最終希釈率1:10,000の50μLの検出抗体(ウサギLH抗血清、AFP240580Rb;NIDDK-NHPP)を用いて、RTで1.5時間にわたりインキュベートした。結合基質を含む各々のウェルを、最終希釈率1:10,000の50μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ共役抗体(ヤギ抗ウサギ;Vector Laboratories、PI-1000)を用いてインキュベートした。1.5時間のインキュベーション後、100μLの1-Step Ultra TMB-Elisa Substrate Solution(ThermoFisher Scientific、カタログ番号34028)を各々のウェルに加え、室温で10分間にわたり放置した。反応を、各々のウェルへの50μLの3M HClの添加により停止させ、吸光度を450nmで測定した。
テストステロンアッセイ:血漿中テストステロンレベルを、商業的なELISA(Demeditec Diagnostics、DEV9911)(Moore et al., 2015)を製造元の指示に従って使用して測定した。
FSHアッセイ:FSHレベルは、以前に詳細に記載されたように(Garcia-Galiano et al., 2012)、国立衛生研究所(A.F. Parlow博士、National Hormone and Peptide Program、カリフォルニア州トーランス)により供給されたラジオイムノアッセイキットを使用して測定した。ホルモン測定を2通りに実施した。ラットFSH-I-9を、クロラミンT方法により125Iを用いて標識し、ホルモン濃度を、FSH-RP-2スタンダードの参照調製物を使用して決定した。アッセイ内及び間の変動係数は、FSHについて6%及び9%未満であった。アッセイの感度はFSHについて20pg/チューブであった。ホルモン測定の正確性を、公知の濃度の齧歯類血清サンプル(外部コントロールとして使用)の評価により確認した。
パルス状LH測定
成体マウスを、毎日の取り扱いで馴化した。血液サンプル(5μL)を2時間の間(10:00から12:00の間)に10分間隔で尾から採取し、45μLの1×PBS-T(0.05%)中で希釈し、直ちに凍結させ、-80℃で保存した。LHレベルを次に、前に記載したプロトコルを使用して決定した。パルスを、DynPeak(Vidal et al., 2012)を使用して確認した。
尿収集及びタンパク質分析
MUPプロファイルの多様性を評価するために、尿を、雄マウスにおける離乳時(P21)からP45まで、取り扱い時の自発的排尿、又はマウス膀胱に穏やかな圧力を加えた後での誘発のいずれかに続いて採取した。尿を、収集手順の間に、氷上に保たれたマイクロ遠心チューブ中に収集した。全てのサンプルを最初に-20℃で凍結し、次に、さらなる処理まで-80℃に保った。タンパク質分析のために、1μLの尿を1×サンプル緩衝液(Invitrogen)及び1×還元剤(Invitrogen)と混合した。サンプルを、NuPAGEシステム(Invitrogen)に供給されるプロトコルに従って、5分間にわたり煮沸し、4~12% MESSDS-ポリアクリルアミドゲル中で、150Vで75分間にわたり電気泳動した。移動後、タンパク質を、NuPAGEシステム(Invitrogen)のブロットモジュール中の0.2μmニトロセルロースメンブレン(Invitrogen)上に、冷条件において30Vで90分間にわたりトランスファーした。メンブレンを次に、RTのブロッキング緩衝液[0.05% Tween 20(TBST)及び5%脱脂粉乳を伴うTBS]中で1時間にわたりブロックし、ブロッキング緩衝液中で希釈した一次抗体(ウサギポリクローナル抗MUP1、1:200希釈、sc-66976、Santa Cruz Biotechnology、INC)を用いて4℃で48時間にわたりインキュベートした。これに続いて、メンブレンを、ブロッキング緩衝液中で希釈した二次抗体(ペルオキシダーゼ抗ウサギIgG(H +L)、1:2000希釈、PI-1000、Vector Laboratories)とのRTで1時間にわたるインキュベーション前に、1×TBSTを用いて3回洗浄した。二次抗体とのインキュベーション後、メンブレンを、1×TBSTを用いて3回洗浄した。免疫反応を、ECL検出キット(NEL101;PerkinElmer、マサチューセッツ州ボストン)を使用して現像し、デスクトップスキャナー(Epson Expression 1680 PRO)を使用してスキャンした。
組織タンパク質抽出及びウエスタンブロット分析
成体Ts65dn及びWTマウスからの海馬及び皮質の両方を、400μL(海馬について)又は800μL(皮質について)の溶解緩衝液(10mM Tris pH 7.4、10%スクロース及びプロテアーゼ阻害剤(10mLのComplete;Roche Diagnostics GmbHについて1ペレット)中で超音波処理し、使用まで-80℃で保存した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)を使用して決定し、その後に2×LDS(Life)を用いて希釈し、還元剤(Life)を添加した。サンプルを100℃で10分間にわたり煮沸した。タンパク質を、1×MOPS SDS泳動緩衝液を使用し、プレキャスト12% Criterion XT Bis-Trisポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)上で分離した。その後、タンパク質を0.4μmのニトロセルロースメンブレン(G&E Healthcare)に転写した。低分子量タンパク質、例えばAPP(CTF)のカルボキシ末端フラグメントなどについては、1×Tris-Tricine SDS泳動緩衝液中の16.5% Criterion XT Tris-Tricineポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)を使用した。これらを0.2μmのニトロセルロースメンブレン(G&E Healthcare)上に転写した。分子量の推定のために、分子量マーカー(Novex and Magic Marks、Life Technologies)を使用した。メンブレンをブロッキング緩衝液[TNT(Tris 15mM pH 8、NaCl 140mM、0.05% Tween)及び5%脱脂粉乳又は5%BSA]中で、室温でインキュベートし、ブロッキング緩衝液(5%ミルク又はBSAを伴うTNT)中で希釈した、適した一次抗体(補足表S2)と4℃で一晩インキュベートした。これに続いて、メンブレンを対応する二次抗体(補足表S2)とインキュベートした。免疫反応を、化学発光キット(ECLTM、Amersham Bioscience)を使用して現像し、LAS3000イメージングシステム(Fujifilm)を使用して可視化した。結果をGAPDHに対して標準化し、定量化を、ImageJソフトウェア(Scion Software)を使用して実施した。
精巣摘除術
成体雄は、イソフルラン麻酔下で陰嚢経路を介した両側性性腺摘出術に供した。
行動試験
馴化/脱馴化テスト。馴化/脱馴化テストを使用し、異なる匂いの間で区別する能力を評価した(Breton-Provencher et al., 2009)。マウスをテストの前に8日間にわたり単一で収容した。この嗅覚テストは、馴化のためのアセトフェノン(00790、Sigma)及び脱馴化のためのオクタンタル(05608、Sigma)、又はその逆の提示を含んだ。テストの前に、マウスは、オープンフィールド区域及び空の匂いボックスを30分間にわたり探索することを可能にした。この馴化期間の後、マウスに、1分間の期間にわたり4つの連続試行にわたり1つの匂いを経時的に提示し、10分間の試行間隔を維持し、匂いの置換を確実にした。4つの連続試行の後、第2の匂いを1分間の試行の間に提示した。匂い(20μLの1:1000希釈物)をろ紙上に投与し、穴を開けたプラスチックボックス中に置き、匂い刺激との直接的な接触を避けた。測定は、マウスが異なる試行の間に物体を嗅ぐのに費やした合計時間を記録することからなった。
新規物体認識テスト。認識記憶を、新規物体認識テストを使用して評価した(Leger et al., 2013)。マウスをテストの前に5日間にわたり単一で収容した。1日目に、2つの同一の物体(A+A)を、ケージの壁から等距離にあるケージの反対側のオープンフィールドアリーナ内に置いた。各々のマウスを2つの物体内に置き、それらを15分間にわたり探索することを可能にした。2日目は2つのフェーズ、習熟フェーズ及びテストフェーズからなった。15分間続いた習熟フェーズ(試行1)の間に、マウスは2つの他の同一物体(B+B)を探索した。このフェーズの後、マウスを、テストフェーズを開始する前に、そのホームケージ中に1時間にわたり戻した。テストフェーズの間に、試行1からの1つの物体及び完全に新しい物体(B+C)をオープンフィールド区域内に置き、マウスはそれらを5分間にわたり探索することが可能であった(試行2)。物体認識スコアを、合計探索時間にわたり新たな物体を探索する(試行2)のに費やされた時間として算出したが、認識メモリ機能を表すために使用する。
Y迷路テスト。自然な自発的探索行動及び視空間短期記憶を、Y迷路を使用してテストした(Bridoux et al., 2013;Dellu et al., 2000)。Y迷路は、3つの白い木製アーム(24.0cm×6.5cm×15cm)からなり、床上の41.0cmの高さまで上昇され、壁上の視覚的な手がかりで囲まれていた。マウスをスタートアーム中に置き、このアームの端に向いており、1つのアームがブロックされている間(新規アーム)、10分間にわたり迷路を探索することを可能にした。結果的に、マウスは、全ての3つのアームを5分間にわたり探索することを可能にする前に、それらのホームケージ中に1時間にわたり置かれた。マウスの軌跡を、EthoVisionビデオトラッキング装置及びソフトウェア(Noldus Bv、オランダ、ヴァーヘニンゲン)を使用して記録した。新規アーム中で費やされた時間及び新規アーム中に入るまでの潜時をマウス間で比較した。
脳組織解剖
マウスを断頭により安楽死させ、体幹血液をホルモンレベル分析のために収集した。視床下部の視索前野(POA)を、双眼拡大鏡下でWeckerハサミ(フランス、モリア)を使用して解剖し、直ぐにドライアイス中に置き、さらなる処理及びアッセイまで-80℃で保存した。
POAからのRNA分離及び定量的RT-PCR分析
mRNA及びmiRNAを含む全RNAを、Ambion mirVana(商標)miRNA Isolation Kit(Ambion, Inc;米国カリフォルニア州)を用いて、22及び26ゲージ針を通じたフラグメントの連続した粉砕により抽出した。RNAの品質及び濃度を、分光光度計ND-1000 NANODROP 385(Thermo-scientific)により決定した。遺伝子発現分析のために、mRNAを、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素(Life Technologies)を使用して逆転写した。リアルタイムPCRを、エキソン境界特異的TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用し、Applied Biosystems 7900HT高速リアルタイムPCRシステムで行った(補足表S3)。
マイクロRNA発現分析を、TaqMan特異的RTプライマー及びTaqMan miRNA逆転写キット(Applied Biosystems)を使用して実施した。その後、定量的リアルタイムPCRを、製造元の推奨するサイクリング条件を使用し、Applied Biosystems 7900HTサーモサイクラーで、miRNA(Applied Biosystems)のための事前に計画されたアッセイ(補足表S3)を使用して実施した。遺伝子及びmiRNA発現データを、SDS2.4.1及びData Assist 3.0.1ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して分析した。
蛍光活性化セルソーティング及び定量的RT-PCR分析を使用した視床下部GnRHニューロンの分離
Gnrh::Gfp及びGnrh::Gfp;Ts65dnマウスの視索前領域を顕微解剖し、パパイン解離システム(Worthington、ニュージャージー州レイクウッド)を使用して酵素的に解離し、単一細胞懸濁液を得た。FACSを、EPICS ALTRAセルソーターサイトメーターデバイス(BD Bioscience)を使用して実施した。ソート判定は、Gnrh::Gfp動物及びGnrh::Gfp;Ts65dn動物からの細胞懸濁液を比較することにより、GFP蛍光(励起:488nm、50mW;検出:GFPバンドパス530/30nm、自家蛍光バンドパス695/40nm)の測定に基づいた(補足図S5中に示すとおり)。各々の動物について、GFP陽性及び陰性細胞を10μLの抽出緩衝液[0.1%Triton(登録商標)X-100(Sigma-Aldrich)及び0.4U/μLのRNaseOUT(商標)(Life Technologies)]中に直接ソーティングした。
遺伝子発現を分析するために、FACSソーティングGnRHニューロンから得られたmRNAを、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素(Life Technologies)を使用して逆転写し、線形前増幅工程を、TaqMan(登録商標)PreAmp Master Mix Kitプロトコル(P/N 4366128、Applied Biosystems)を使用して実施した。リアルタイムPCRを、特異的TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用し、以前に記載されたように、Applied Biosystems 7900HT高速リアルタイム PCRシステムで行った(補足表S3)。
FACSソーティングGnRHニューロンのマイクロRNA発現分析を、ステムループRT-PCRベースのTaqMan Rodent MicroRNA Arrays(Applied Biosystems)を使用して実施した。簡単には、miRNAを、TaqMan miRNA逆転写キット(Applied Biosystems)をステムループメガプレックスプライマープールAとの組み合わせにおいて使用し、製造元の指示に従って逆転写した。線形前置増幅工程を、TaqMan(登録商標)PreAmp Master Mix Kitプロトコル(P/N 4366128、Applied Biosystems)を使用して実施し、定量的リアルタイムPCRを、Applied Biosystems 7900HTサーモサイクラーでTaqMan低密度アレイ(Applied Biosystems)を使用し、製造元の推奨するサイクリング条件を使用して実施した。遺伝子及びmiRNAの発現データを、SDS2.4.1及びData Assist 3.0.1ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して分析した。
ドナー組織の調製及び神経移植
POA移植片用の組織ドナーを、GnRHを放出するGnRHニューロン含む生後2日目(P2)のWTマウス(WT-POA)、及びGnRHを放出しないGnRHニューロンを含むGnrh::cre;BoNTBloxP-STOP-loxPマウス(BoNTBGnrh-POA)から得た。
この組織を顕微解剖し、パパイン解離システム(Worthington、ニュージャージー州レイクウッド)を使用して酵素的に解離し、5μLの1×HBSS溶液中の細胞懸濁液を得た。2つの視索前組織をインプラントにより使用した。
成体Ts65dnマウスを麻酔(イソフルラン)下で定位固定フレーム(Kopf(登録商標)Instruments、カリフォルニア州)中に置き、穿頭孔を、マウスの脳図譜に従って、正中線でブレグマから-1.7mmに開けた(Paxinos and Franklin, 2004)。25μLのハミルトンシリンジ(22ゲージ針)を3v(硬膜に対して5.6mmの深さ)中にゆっくりと挿入し、WT-POA又はBoNTBGnrh-POA外植片を含む5μLの異なる溶液を、注入ポンプ(KD Scientific、マサチューセッツ州ホリストン)を使用し、10分間にわたり投与した。
同じ条件下で、成体65dn及びWTマウスに5μLの賦形剤(HBSS 1×)を用いて投与した(偽群)。
アデノ随伴ウイルスベクター及び定位注入
成体Ts65dn雄の視床下部におけるmiR-200ファミリー、特にメンバーmiR-200bの選択的過剰発現については、scAAV9-EF1a-mmu-miR-200b-eGFP(AAV-miR200b、2.1×1013GC/ml)又はscAAV9-EF1a-ctrl-miR-eGFP(AAV-GFP、2.2×1013GC/ml)の両側投与(150nl又は300nl合計)を、POA(AP:+0.5mm、ML:±0.12mm、DV:-5.3mm)中に5μLハミルトンシリンジを介して20nl/分の速度で投与した。針を投与後5分間にわたり平静に放置した。両方のウイルスをベクターバイオラボから得て、投与座標はPaxinosマウス脳図譜に基づいた(Paxinos and Franklin, 2004)。
免疫組織化学的分析用の脳の調製
氷上で麻酔された新生仔(P0)マウス、ならびに50~100mg/kgのケタミン-HCl及び5~10mg/kgのキシラジン-HClを用いて麻酔された乳仔(P12)、春機発動期前(P35)、及び成体マウスを、2~10mlの生理食塩水、それに続く10~100mlの4%パラホルムアルデヒド(PFA)、pH7.4を用いて経心的に灌流した。脳を収集し、同じ固定液を用いて4℃で2時間にわたり固定し、OCT包埋培地(Tissue-Tek)中に包埋し、ドライアイス上で凍結し、凍結切片化まで-80℃で保存した。
免疫組織化学及び定量化
組織は、他に示さない限り、P0については16μmで、ならびにP12、P35、及び成体の脳については35μm(浮遊切片)で凍結切片化した(Leicaクライオスタット)。
GnRHタンパク質発現の評価
免疫組織蛍光実験を、以前に報告されたように行った(Hanchate et al., 2012;Messina et al., 2011)。冠状切片を次に0.1M PBS中で洗浄し、PBS 0.1M中のブロッキング溶液(2%ヤギ血清+0.5% Triton X-100)中で60分間にわたりインキュベートした。その後、切片を、ブロッキング溶液中の、Erik Hrabovszky博士(ハンガリー科学アカデミー実験医学研究所内分泌神経生物学研究所、ハンガリー、ブダペスト)(Hrabovszky et al., 2011)により産生されたモルモット抗GnRH(1:10000)中で(P0脳の場合);及びウサギ抗GnRH(1:3000)[G. Tramu教授(国立科学研究センター、URA 339、ボルドー大学I、フランス、タランス)からの寄贈物(Beauvillain and Tramu, 1980)]中で(P12、P35、及び成体の脳の場合)、4℃で48時間にわたりインキュベートした。一次抗体中でのインキュベーション後、切片を、0.1M PBSを用いて各々10分間にわたり3回リンスし、Alexa fluor 568共役抗モルモット(1:500)二次抗体又は抗ウサギ(1/500;Invitrogen A11077)二次抗体とRTで90分間にわたりインキュベートした。切片を次に洗浄し、Hoechst(1:10,000;Thermo Fisher Scientific Cat#H3569、RRID:AB_2651133)を用いて3分間にわたり対比染色し、0.1M PBSを用いて10分間にわたり3回リンスし、Mowiolカバースリップマウンティング溶液を使用してカバースリップでマウントした。GnRHニューロン集団はマウスの脳において非常に限定されているため、全てのニューロンを、2つの一連の脳(P12、P35、及び成体)又は頭(P0)の切片のうちの1つにおいて、顕微鏡下で肉眼によりカウントした。画像を、Zeiss Axio Imager Z2 ApoTome顕微鏡(Zeiss、ドイツ)を使用して取得した。
GnRHニューロン上のvGaT又はvGluT2並置の分析
P12及びP35マウスの冠状切片を0.1M PBS中で10分間にわたり3回洗浄し、ブロッキング溶液[10%正常ロバ血清(NDS;Sigma、D9663)を伴う0.1M PBS、0.25%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma、A9418)、0.3% Triton X-100(Sigma、T8787)]を用いて、RTで90分間にわたりインキュベートした。切片を次に、ブロッキング溶液中のウサギ抗GnRH(1:6,000)[G. Tramu教授(国立科学研究センター、URA 339、ボルドー大学I、フランス、タランス)からの寄贈物(Beauvillain and Tramu, 1980)]及びモルモット抗vGaT(1:750、Synaptic Systems、131 004)又はvGluT2(1:750、Synaptic Systems、135 404)と4℃で72時間にわたりインキュベートした。一次抗体を用いたインキュベーション後、切片を、0.1M PBSを用いて10分間にわたり3回リンスし、0.1M PBS中の対応する二次抗体、即ち、Alexa fluor 488共役ロバ抗ウサギ(1:400;Life Technologies、Molecular Probes、Invitrogen、A21206)及びAlexa fluor 594共役ロバ抗モルモット抗体(1:400;Jackson Immunoresearch、706-585-148)を用いて、RTで90分間にわたりインキュベートした。その後、切片を0.1M PBS中で10分間にわたり3回洗浄し、Hoechst(1:10,000;Thermo Fisher Scientific、H3569、RRID:AB_2651133)を用いて、3分間にわたりインキュベートし、続いて0.1M PBSを用いて10分間にわたり3回洗浄した。最後に、切片を、Mowiolカバースリップマウンティング溶液を使用し、カバースリップとマウントした。画像を、LSM 710ソフトウェア(Zeiss、ドイツ)を備えたLSM 710 Zeiss直立共焦点レーザー走査型顕微鏡を使用して取得した。
アデノ随伴ウイルスベクターの評価
冠状切片を次に、0.1M PBSを用いて洗浄し、ブロッキング溶液[0.1M PBS中の(5%ロバ血清+0.5% Triton X-100)]を用いて60分間にわたりインキュベートした。切片を次に、ブロッキング溶液中のニワトリ抗GFP(1:500;Aves Labs、Inc GFP-1020)及びウサギ抗GnRH(1:3000)[G. Tramu教授(国立科学研究センター、URA 339、ボルドー大学I、フランス、タランス)からの寄贈物(Beauvillain and Tramu, 1980)]を用いて、4℃で48時間にわたりインキュベートした。これに続いて、切片を、0.1M PBSを用いて、各々10分間にわたり3回リンスし、次に二次抗体Alexa fluor 488共役ロバ抗ニワトリ(1:500;Jackson Immuno Research 703-545-155)及びAlexa 568共役ロバ抗ウサギ(1:500;Invitrogen A10042)を用いて、RTで90分間にわたりインキュベートした。切片を次に洗浄し、Hoechst(1:10,000;Thermo Fisher Scientific Cat#H3569、RRID:AB_2651133)を用いて3分間にわたり対比染色し、0.1M PBSを用いて10分間にわたり3回リンスし、Mowiolカバースリップマウンティング溶液を使用してカバースリップとマウントした。画像を、LSM 710ソフトウェア(Zeiss、ドイツ)を備えたLSM 710 Zeiss直立共焦点レーザー走査型顕微鏡を使用して取得した。
iDisco
iDiscoは、蛍光を保ちながら脳組織を透明にする溶剤ベースの透明化方法である(Erturk et al., 2012;Erturk and Bradke, 2013)。
メタノールを用いたサンプル前処理:サンプルをPBS中で洗浄し(1時間にわたり2回)、続いて0.1M PBS中の50%メタノール(1時間にわたり1回)、80%メタノール(1時間にわたり1回)、及び100%メタノール(1時間にわたり2回)中でインキュベートした。次に、サンプルを20%DMSO/メタノール(2ml 30% H2O2/2ml DMSO/8mlメタノール、氷冷)中の5%H2O2中で、4℃で一晩漂白した。これに続いて、サンプルをメタノール(1時間にわたり2回)中、20%DMSO/メタノール(1時間にわたり2回)中、80%メタノール(1時間にわたり1回)中、50%メタノール(1時間にわたり1回)中、PBS(1時間にわたり1回)中、及び最後に、染色手順に進む前にPBS/0.2% TritonX-100(1時間にわたり2回)中で洗浄した。
ホールマウント免疫染色:サンプルを、調整可能なローテーター上で、10mlのブロッキング溶液(PBSGNaT)[0.2%ゼラチン(Sigma)、0.5% Triton X-100(Sigma-Aldrich)、及び0.01% NaAzide(Casoni et al., 2016)を含む1×PBS]中で、37℃で3晩にわたりインキュベートした。サンプルを、一次抗体を含む10mlのPBSGNaTに移し(表S1)、37℃で7日間にわたり回転中に置いた。これには、RTで、PBSGT中での30分間の6回の洗浄、及び4℃で、PBSGT中での一晩の最後の洗浄が続いた。次に、サンプルを10ml PBSGNaT中で希釈した二次抗体(1:400、Alexa 568、Alexa 647)と、37℃で2日間にわたり回転チューブ中でインキュベートした。RTで、0.1M PBS中での30分間にわたる6回の洗浄後、サンプルを透明化するまで暗所において、4℃でPBS中に保存した。
組織の透明化:全てのインキュベーション工程を、光との接触を避けるためにアルミホイルで覆われた14rpmのチューブローテーター上で、ドラフト中で、RTで実施した。サンプルを、H2O中で希釈されたメタノール(Sigma-Aldrich)の段階的なシリーズ(20%、40%、60%、80%、及び100%)中で1時間にわたり脱水させた。これには、100%ジクロロメタン(DCM;Sigma-Aldrich)中での30~40分間の脱脂工程が続いた。サンプルを、ジベンジルエーテル(DBE;Sigma-Aldrich)中で、RTで2時間にわたり、一定の撹拌上で、暗所において透明化した。最後に、サンプルを新鮮なDBE中に移し、イメージングまでRTで暗所においてガラスチューブ中に保存した。本発明者らは、以下に記載するように、6ヶ月間までにわたり任意の有意な蛍光喪失を伴わずに、サンプルを画像化することができた。
デジタル画像取得
以前に記載された異なる免疫組織蛍光実験を、下で言及する顕微鏡の1つを使用して分析し、Adobe Photoshop(Adobe Systems、カリフォルニア州サンノゼ、RRID:SCR_014199)を使用して画像を処理した。
蛍光顕微鏡
他に示さない限り、切片を、電動ステージ及びAxioCam MRmカメラ(Zeiss、ドイツ)を備えたZeiss Axio Imager Z2 ApoTome顕微鏡(Zeiss、ドイツ)を使用して分析した。特定のビームスプリッター(BS)波長、励起(Ex)波長、及び発光(Em)波長を、緑(Alexa 488-BS:495nm、Ex:450/490nm、Em:500/550nm)、赤(Alexa 688-BS:570nm、Ex:538/562nm、Em:570/640nm)、遠赤色(Alexa 647-BS:660nm、Ex:625/655nm、Em:665/715nm)、及び核染色(Hoechst-BS:395nm、Ex:335/383nm、Em:420/470nm)の可視化のために使用した。フォトモンタージュを作成するために、単一平面画像を、AxioVision 4.6システム(Zeiss、ドイツ)のMosaiXモジュール及びZeiss 20×対物レンズ(開口数NA=0.80)を使用し、各々のフルオロフォアについて経時的に捕捉した。高倍率の顕微鏡写真は、AxioVision 4.6システムのZスタックモジュールを使用して収集された一連のトリプルApoTome隣接画像から由来する最大強度の投射を表す。全ての画像を、切片内の全ての目に見える染色に対応し、ならびに対応する対物レンズ及び波長についての最適な工程サイズと一致する、定義されたzフォーカス範囲にわたり段階的な様式で捕捉した。
共焦点イメージング
GnRHニューロン上のvGaT及びvGluT2の並置の分析からの切片を、LSM710ソフトウェアを備えたLSM710 Zeiss直立共焦点レーザー走査顕微鏡を使用して画像化した。各々のGnRH-IRセルについて、0.25μm間隔での画像のスタックを、GnRH-IRニューロンの深さ全体にわたって100倍の対物レンズ及び2×デジタルズームを使用して収集した。100×対物レンズを使用した画像のZシリーズスタックを生成し、vGaT又はvGluT2の並置の密度を推定した。接触は、一次GnRH-IR樹状突起棘及びvGaT陽性又はvGluT2陽性末端の間に黒色ピクセルがない場合に定義した。各々の画像について、GnRH-IRニューロンの細胞体及び樹状突起(GnRH一次樹状突起に沿って45μmまで)に直接対抗するvGaT又はvGluT2標識された点の数をカウントし、組み合わせて、各々の細胞についての平均値を提供した。一次GnRH-IR樹状突起は、細胞体から45μmを超えて追跡できなかったため、従って、本発明者らは、樹状突起が切片を出るまで、15μm毎にvGaT並置の数を決定した。データは、vGaT又はvGluT2並置/μmとして提示する。
ライトシートイメージング
3Dイメージングを、以前に記載されているように実施した(Belle et al., 2014)。ImspectorProソフトウェア(LaVision BioTec)を使用した限外顕微鏡(LaVision BioTec)を使用してイメージングを実施した。ライトシートを、レーザー(波長488又は561nm、Coherent Sapphire Laser、LaVision BioTec)及び2つのシリンドリカルレンズにより生成した。2×対物レンズ(MVPLAPO、オリンパス)を伴う双眼実体顕微鏡(MXV10、オリンパス)を異なる倍率(1.6×、4×、5×、及び6.3×)で使用した。サンプルを、DBEで満たされた100%石英(LaVision BioTec)で作製されたイメージングリザーバー中に置き、レーザー光により側面から照射した。PCO Edge SCMOS CCDカメラ(2,560×2,160ピクセルサイズ、LaVision BioTec)を使用して画像を取得した。各々の画像間のステップサイズを2μmに固定した。
急性GnRH投与
認知能力及び嗅覚能力に対するGnRHの効果を試験するために、iBotマウス(65dn+POA-TOX)からのPOA外植片を用いて移植された成体雄Ts65Dnマウスを、0.05μg/gのBW、又は賦形剤(PBS pH 7,4)の用量中のGnRH-1ペプチド(Genecust)を用いて処置した。
嗅覚識別能力をテストするために、動物は馴化フェーズの2時間前にGnRH-1又は賦形剤の単回腹腔内(ip)投与を受けた。NORテストの場合では、1日目に、動物はGnRH-1ペプチド又は賦形剤の2回腹腔内投与を受けた。第1の投与を試行の開始前の2時間に、及び第2の投与を第1の投与後の12時間に与えて、記憶の固定を促した。2日目に、動物は、第1の試行の開始前の2時間に腹腔内投与を受けた。
持続性及びパルス皮下注入
成体マウスに、浸透圧ミニポンプ(1002、Alzet、USA)を用いて移植し、賦形剤(滅菌0.1M PBS)又はLUTRELEF(登録商標)(0.25μgr/3時間)(Ferring Pharmaceuticals、スイス)の持続注入を受けた;又はプログラム可能なマイクロ注入ポンプ(SMP-300、iPRECIO、日本)を用いて、賦形剤又はLUTRELEF(登録商標)のパルス注入(3時間毎、10分間の間に0.25μgのピーク)を受けて、WTマウスにおいて報告されたGnRH/LHパルスを模倣し(Czieselsky et al., 2016)、及び残りの時間にわたる低用量(0.0025μg/10分)を用いた基礎注入。ポンプは、マウスの背上の皮膚下に置いた。嗅覚欠損及び認知欠損の両方が、これらの動物において以前に確認された。手術の1週間後、マウスを再テストし、それらの嗅覚能力及び認知能力を評価した。手術の2週間後、反復の尾先端血液サンプリングを行い(他の場所に記載)、LHパルスプロファイルを評価した。
サンプルサイズ及び無作為化ステートメント
生理学的及び神経解剖学的試験のための、ならびにmiRNA及び遺伝子発現分析のためのサンプルサイズを、過去の経験及び文献中に提示されているものに基づいて推定した。各々の群からの少なくとも3つの異なる同腹仔からのマウスを性的成熟、妊孕性を試験するために使用し、FACS、解剖学、及び免疫染色により単離された細胞において定量的RT-PCR分析を実施するために使用した。無作為化方法は、実験群において被験者を割り当てる、又はデータを収集及び処理するために使用されなかった。
データ及び統計量の提示
全ての統計分析を、Prism 7(GraphPad Software)を使用して実施し、適した場所で正規性(Shapiro-Wilk検定)及び分散を評価した。サンプルサイズを、現場における標準的な慣行に従って選んだ。データを、多重比較のために、対応のない/対応のある両側スチューデントのt検定、マンホイットニーのU検定、又は一元配置分散分析を使用して比較した。テューキーの事後検定を、適している場合に実施した。有意水準をp<0.05に設定した。データを平均値±s.e.mとして示す。生物学的に非依存的な実験の数、P値、及び自由度を、本文又は図の説明文のいずれかに示す。
実施例2
GnRH-R発現ニューロンの急性化学遺伝学的阻害によって、成体コントロールマウスにおける認知能力及び嗅覚能力が損なわれる。
神経解剖学的結果によって、視床下部外のGnRH投射が、認知的及び社会的行動を制御する脳領域中で見出されることが実証された。さらに、非生殖過程の調節におけるGnRHの潜在的な役割はまた、マウス脳の皮質及び海馬においてGnRH受容体(GnRH-R)を発現するGFP標識ニューロンを特定する本発明者により実施された溶媒透明化(iDISCO)分析の3次元(3D)イメージングと一致している。
興味深いことに、図5中に示すように、Gnrhr::Creマウスの海馬においてGnRH受容体GnRH-Rを発現するニューロンが、阻害性DREADDウイルスベクター(AAV8-hSYN-DIO-hM4D(Gi)-mCherry)を用いて感染された場合(図5A)、200μLのクロザピン-n-オキシド(CNO-3mg/kg)の単回投与によって、野生型(wt)マウスにおける認知能力及び嗅覚能力の両方が劇的に低下した(図5B及びC)。まとめると、これらのデータは、正常な認知機能及び嗅覚機能が、視床下部から遠く離れた標的領域中でのGnRH作用に依存すること、及び出生後発達の間でのTs65Dnマウスにおける視床下部外GnRH線維の後天性欠損が、それらのDS様表現型において重大な役割を果たしうることの興味深い考えをさらに強調する。
参考文献
Figure 2022533011000001

Figure 2022533011000002

Figure 2022533011000003

Figure 2022533011000004

Figure 2022533011000005

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Figure 2022533011000007

Claims (13)

  1. GnRHがパルス投与により投与される、それを必要とする患者における認知障害の処置における使用のためのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)。
  2. それを必要とする患者における認知障害の処置における使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  3. 前記患者が嗅覚機能障害を有する、請求項1に記載の使用のためのGnRH、又は請求項2に記載の使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  4. 前記認知障害がダウン症候群である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH、又は使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  5. 前記認知障害がアルツハイマー病である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH、又は使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  6. 前記認知障害がパーキンソン病である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH、又は使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  7. 前記認知障害が加齢に関連付けられる認知低下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH、又は使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  8. 前記認知障害が初期段階中にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH、又は使用のためのmiR-200及び/又はmiR-155。
  9. 前記患者が男性である、請求項1及び3から8のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH。
  10. 前記パルス投与が120分毎の25ng/kgのGnRHの投与に対応する、請求項9に記載の使用のためのGnRH。
  11. 前記患者が女性である、請求項1及び3から8のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH。
  12. 前記パルス投与が90分毎の75ng/kgのGnRHの投与に対応する、請求項11に記載の使用のためのGnRH。
  13. 前記GnRHがゴナドレリンである、請求項1及び3から12のいずれか一項に記載の使用のためのGnRH。
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