JP2022528754A - 臓器を再調整するための方法および装置 - Google Patents

臓器を再調整するための方法および装置 Download PDF

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Abstract

例えば、心停止死体から採取された臓器を回復するための方法および装置ならびに流体であって、臓器が4時間以上温虚血に曝されている、方法および装置ならびに流体。採取後のバックテーブルで、臓器にlys-プラスミノーゲンを注射し、15分後にt-PAを注射する。アルブミンおよび電解質を含む高張性循環液を加え、前記lys-プラスミノーゲンおよびt-PAと一緒に臓器を通して循環させ、それによって循環圧を30~75分間、例えば5分当たり5mmHgのステップで20mmHgから70mmHgに増加させる。次いで、臓器を従来の基準によって評価する。【選択図】 図3

Description

本発明は、臓器の採取ならびに臓器の保存および評価に関する。
移植に利用可能な臓器の現在のプールは主に、脳死状態で、依然として機械的呼吸にさらされており、心臓がまだ拍動している患者由来の臓器に限定されている。
病院への搬送前または搬送中に心停止により死亡した患者の臓器は、通常、移植に用いられない。少数の症例では、特に心停止から臓器採取までの時間が30~60分未満など短い場合にはこのような臓器が使用されている。心停止から採取までの時間が1時間を超えると、臓器は通常移植に適さない。このような臓器の第2のプールを用いることができれば、移植に利用できる臓器の数を10倍から100倍に増やすことができるであろう。
心停止後、臓器は温虚血に曝され、その結果、代謝性の毒性最終産物が臓器に蓄積する。これは、酸素を含む血液による循環の失敗によるものであり、代謝性最終産物の蓄積をもたらす。
心停止後早期には、凝固系が活性化され、微小循環にフィブリン血栓が形成され、その結果、例えば患者を蘇生させて生かせる場合には、消失に数時間または数日を要する血栓性イベントが生じる。
死が起こると、腸内の微生物バリア機能がうまくいかず、LPSやサイトカイン放出のようなエンドトキシンによる細菌の異常増殖が場合によっては5分以内に起こり始める。したがって、循環停止により死亡したドナーからの臓器の使用は限界があると考えられ、ほとんどの場合、循環停止がコントロールされている状況で使用される。温虚血が2時間を超える臓器は、一般的に移植には不適当と考えられている。
臓器が冷却されると、代謝過程は摂氏1度当たり約6%減少する。28℃では、代謝過程は約50%に低下し、22℃では約25%に低下した。
死体は、通常、1時間で最大2℃冷たくなる。したがって、5時間後、身体および臓器は、約27℃の温度を有し得る。
したがって、当技術分野では、採取後に臓器を再調整(recondition)する方法が必要とされており、その場合、臓器の第2のプールをより広範囲に使用することができる。
特許公開EP0631786A1(要約)は虚血および付随する再潅流傷害の治療を開示し、これは、lys-プラスミノーゲンおよび類似の物質を含む、プラスミンおよびプラスミン形成タンパク質の投与を伴う。lys-プラスミノーゲンはglu-プラスミノーゲンのタンパク質分解切断から得ることができ、虚血状態によって損傷された組織に対して保護効果を有することが見出されている。lys-プラスミノーゲンの投与は再潅流時および再潅流がすでに起こった後に、対象を治療するために使用することができる。lys-プラスミノーゲンはまた、組織プラスミノーゲンアクチベーターなどを使用するものなどの血餅溶解療法と組み合わせて投与され得る。外科的処置に起因する虚血状態およびその後の再潅流傷害は、lys-プラスミノーゲンまたはlys-プラスミノーゲンの前駆細胞の効果を有するタンパク質で予防または処置することができることが挙げられる。このようなタンパク質はドナーおよびレシピエントの周囲の臓器および組織と同様に、すでに移植されたドナーの臓器または組織にも有益な影響を及ぼし得る。lys‐プラスミノーゲンまたはlys‐プラスミノーゲンの前駆体の効果を有するタンパク質の投与は、長期間の虚血、並びに移植後の再潅流によって引き起こされる生理的ストレスに、臓器および組織が耐えることを可能にする。臓器および組織の損傷は外科的処置が開始される前に、lys-プラスミノーゲンまたはlys-プラスミノーゲンの前駆細胞の効果を有するタンパク質を投与することにより、減少または完全に防止することができる。移植の場合、タンパク質は、臓器または組織の除去の前にドナーに投与され得る。ドナーはその臓器または組織の除去の前に、その臓器または組織を供給する動脈中に全身的にまたは局所的に処置され得る。同様に、臓器または組織のレシピエントは移植領域を取り囲む臓器および組織、ならびにレシピエント内に配置される臓器または組織を保護するために、移植前に処置され得る。lys-プラスミノーゲンまたはlys-プラスミノーゲンの前駆細胞の効果を有するタンパク質はまた、再潅流中または再潅流後に投与することができる。したがって、この特許公報はまだ循環しているドナーまたはレシピエントの身体へのlys-プラスミノーゲンの添加を示唆しており、さもなければ効果はないであろう。
したがって、本発明の目的は、上述の欠点および不利益のうちの1つまたは複数を単独で、または任意の組合せで軽減、緩和、または排除することである。
一態様では、ドナーから、例えば循環停止ドナー(DCD)から採取された臓器を回復する方法であって、ドナーが循環停止した少なくとも2時間後にドナーから臓器を回収するステップと、採取後に臓器にlys-プラスミノーゲンを提供するステップであって、lys-プラスミノーゲンが第1の高張性溶液(又は、高膨張性溶液/高腫脹性溶液/hyperoncotic solution)中に含まれるステップと、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)をlys-プラスミノーゲンの提供と同時にまたは提供した後に提供するステップであって、組織プラスミノーゲン活性化因子が第2の高張性溶液中に含まれるステップと、第1の回復段階で、5℃~25℃の間の低温でアルブミンおよび電解質を含む第3の高張性流体を臓器中に循環させるステップと、第2の回復段階で、28℃~37℃の間の温度で酸素化赤血球(RBC)を含む第4の高張性流体を臓器中に循環させるステップと、従来の基準によって臓器を評価するステップとを含む方法が提供される。
一実施形態では、第1の回復段階が、臓器中に前記第3の高張性流体を循環させるステップを含むことができ、前記第3の高張流体は50g/L~120g/Lの間の濃度のアルブミンを含み、それによって、循環圧力は例えば、約20mmHgから90mmHgまで、30~75分間、例えば、5分当たり5mmHgのステップで増加される。第2の回復段階は、臓器中に前記第4の高張性流体を循環させるステップを含むことができ、前記第4の高張性流体は50g/Lと120g/Lとの間の濃度のアルブミンを含み、それによって、循環圧力は例えば、約20mmHgから90mmHgまで、30分から75分間、例えば、5分当たり5mmHgのステップで増加される。
別の実施形態では、本方法が1時間~7時間の間、30mmHg未満の圧力で臓器中に保存液を循環させながら、4℃~16℃の間の低温で臓器を保存することをさらに含んでもよい。保存ステップは第2の復元ステップの後に、または復元ステップの間に実行されてもよい。
さらに別の実施形態では、第1および第2の高張性流体の少なくとも一方が生理学的濃度の電解質およびアルブミンを含み、第1および第2の高張性流体は50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンを含む。
さらに他の実施形態では、第1、第2、第3、および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つは、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤、アルガトロバンなどの直接トロンビン阻害剤、プロテインC、プロテインS、およびアブシキシマブなどの血小板阻害剤のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
さらに他の実施形態では、第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つは白血球フィルタを通って循環される。さらに、サイトカインの吸着のために、第3および第4の高張性流体の少なくとも一方にサイトソーベンツ(Cytosorbent)などのサイトカイン吸着体を接触させてもよい。さらに、第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つに、エンドトキシンの吸着のために、LPS吸着器などのエンドトキシン吸着器を接触させる。
さらに他の実施形態において、本方法は、ドナーが少なくとも3時間循環停止した後にドナーから臓器を回収するステップをさらに含むことができ、前記少なくとも3時間はドナーの腹部に設置された冷たい生理食塩水、氷、または氷泥(iceslush、アイススラッシュ)による2時間以下の局所冷却を含む。
さらに別の実施形態では、ドナーから、例えば心停止ドナー(DCD)から採取された臓器を回復する方法であって、ドナーが循環停止した少なくとも4時間後に、該ドナーから該臓器を回収するステップと、採取後に臓器にlys-プラスミノーゲンを提供するステップであって、前記lys-プラスミノーゲンは、50g/Lから70g/Lの間の濃度のアルブミンと、アンチトロンビンIIIのような凝固阻害剤とを含む第1の高張性溶液中に含まれるステップと、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)をlys-プラスミノーゲンの提供と同時に又はその後に該臓器に提供するステップであって、該組織プラスミノーゲン活性化因子が、50g/Lから70g/Lの間の濃度のアルブミンと、アンチトロンビンIIIのような凝固阻害剤とを含む第2の高張性溶液中に含まれるステップと、第1の回復段階で、圧力が20mmHgから70mmHg~90mmHgに上昇する間に、5~25℃の低温で、50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンと、電解質と、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤とを含む第3の高張性液体を、該臓器中に循環させるステップ、第2の回復段階で、30~37℃の温度で、赤血球(RBC)、50g/L~120g/Lの濃度のアルブミン、および電解質およびアンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤を含む第4の高張性液体を、該臓器中に循環させるステップと、該臓器を通常の基準で評価するステップと、を含む方法が提案される。
別の態様では、ドナーから、例えば、循環停止ドナー(DCD)から採取された臓器を回復するための装置が提供され、装置は、治療される臓器を収容するための容器、静脈が開いている臓器の動脈に接続するためのコネクタ、前記臓器中で前記容器内に存在する流体を循環させるために前記容器と前記コネクタとの間に接続された循環ポンプ、ドレン弁を介して前記容器に接続されたドレン、前記容器に流体を供給するために流体弁を介して前記容器に接続された少なくとも1つのバッグ、前記ポンプによってポンプ送りされた流体を酸素化するための酸素供給器と、前記ポンプによってポンプ送りされた流体の温度を制御するための加熱器(又は、ヒータ)/冷却器(又は、クーラ)、前記ポンプによってポンプ送りされた流体中の白血球を除去するための白血球フィルタ、前記容器の流体中のエンドトキシンを除去するように配置されたエンドトキシン吸着器、前記容器の流体中のサイトカインを除去するように配置されたサイトカイン吸着器、及び、前記容器の流体中の白血球を除去するように配置された白血球フィルタを含む。
さらなる態様では、lys-プラスミノーゲン、tPA、電解質、および50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンを含む、上記方法のいずれか1つを実施するための流体が提供される。
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、図面を参照しての本発明の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1は、大動脈および大静脈を切断することによって合わせて(又は、アンサンブルで)採取された2つの腎臓の概略図である(DIAPHRAGMATIC AREA:横隔膜エリア/AREA FOR TRANSVERSALIS TENDON:横筋のためのエリア/AREA FOR QUADRATUS LUMBORUM:腰方形筋のためのエリア/AREA FOR PSOAS:腰筋のためのエリア/URETER:尿管/INFERIOR VENA CAVA:下大静脈/AORTA:大動脈/L.(R.) RENAL ARTY:左(右)腎動脈/TWELFTH RIB:第12肋骨)。 図2は、腎臓の毛細血管系の概略図である。 図3は、本方法を実行するための装置の一実施形態についての概略ブロック図である。 図4は、本方法を実行するための装置の別の実施形態についての概略ブロック図である。 図5は、本方法を実行するための装置のさらに別の実施形態についての概略ブロック図である。 図5aは、本方法を実行する装置のさらに別の実施形態についての概略ブロック図である。 図5bは、2つの腎臓を別々に処置するための、図5aと同様の概略ブロック図である。 図6は、実施例1における動脈血流量の変化を示す図である。 図7は、実施例1における尿生産を示す図である。 図8は、実施例2の腎動脈血流量を示す図である。 図9は、実施例3の腎動脈血流量を示す図である。 図10は、実施例4の移植後の腎動脈流量を示す図である。 図11は、実施例6の移植後の腎動脈流量を示す図である。 図12は、実施例7の移植後の腎動脈流量を示す図である。 図13は、実施例9の移植後の腎動脈流量を示す図である。 図14は、実施例9の腎臓を示す写真である。 図15a、15b、15cおよび15dは、実施例9による移植後の腎臓を示す写真である。 図16aは、主に赤血球(RBC)からのIL-6レベルの変化を示す図である。 図16bは、やはり主に赤血球(RBC)からのIL-8レベルの変化を示す図である。 図16cは、主に赤血球(RBC)からのIL-1βレベルの変化を示す図である。 図16dは、やはり主に赤血球(RBC)からのTNF-αレベルの変化を示す図である。 図17は、実施例12による約300mosmの重量オスモル濃度(又は、オスモル濃度/osmolarity)を用いた、改質溶液による潅流後の流れを示す図である。 図18は、実施例14による圧力、流量および抵抗を示す図である。 図19~図22は、実施例16に係る移植前後のクレアチニン(又は、クレアチニン値/creatinine)を示す図である。 図23は、実施例16による腎臓を示す写真である。 図24は、実施例16による腎臓を示す写真である。 図25~図28は、実施例17および18に係る肝臓の写真である。 図29は、肝臓実施例17および18の結果を示す図である。
以下、本発明のいくつかの実施形態を説明する。これらの実施形態は当業者が本発明を実施できるようにし、最良の形態を開示するために、例示の目的で記載される。しかしながら、そのような実施形態は、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、特徴の特定の組み合わせが示され、検討される。しかしながら、異なる特徴の他の組み合わせも本発明の範囲内で可能である。
心臓が拍動を停止すると、血液循環は停止する。これは、血液循環を維持しようとする体からのカスケードイベント(又は、一連の事象/cascade of events/cascade events)をもたらす可能性があり、脳ヘルニア後の脳死の場合は自律神経性カテコールアミンストーム(又は、catecholamine storm)と呼ばれ、心血管の安定性を維持しようと体内で大量のアドレナリンとノルアドレナリンが放出される。最終的な結果は脳死と心停止である。脳ヘルニア形成前に心停止が起こると、カテコールアミンストームを伴わずに、凝固系や炎症系に影響を及ぼす他のカスケードイベントが続発する。心停止および循環停止による死亡後のイベントについてはあまり知られていない。
心停止および死後、15~25分以内に、蒼白(pallor mortis)と呼ばれるプロセスが起こり、皮膚は青白くなる。蒼白は、全身の毛細血管循環の停止に起因する。
次いで、死冷(algor mortis)と呼ばれるプロセスが起こり、このとき、体は、周囲温度に一致するまで、その温度を変化させる。約4時間後、体温は周囲温度に応じて約27℃~29℃又はそれ以下である。
その後、死後の硬直である死後硬直(rigor mortis)と呼ばれるプロセスが起こり、筋肉が硬くなる。死後、呼吸は停止し、アデノシン三リン酸(ATP)の生産に使われる酸素源が枯渇する。ATPは筋肉の弛緩時にアクチン-ミオシン架橋の分離を引き起こすのに必要である。身体は、これらの架橋を破壊することができないので、死後硬直に入る。死後硬直では、ミオシン頭部はアデノシン二リン酸(ADP)を介してアクチンタンパク質の活性部位と結合し続け、筋肉はさらに酵素活性が複合体を分解するまで弛緩できない。
死後硬直は心停止の約1~4時間後に始まり、約12時間後にピークに達する。体のすべての筋肉とすべての臓器に影響を及ぼす。
心停止患者を病院から離れた場所で調達する場合、心停止の持続時間や臓器への影響を評価することは難しい。したがって、遠隔の心停止体は、通常、移植目的には使用されない。本発明はそのような臓器を回復し、移植前にそのような臓器を修復し、評価し、保存することを目的とする。
臓器の採取が早ければ早いほど、臓器の転帰は良好である。
しかしながら、本発明の実施形態による回復プロセスは、死亡および循環停止後のより長い時間での良好でない転帰を伴う、死後硬直のピークの前およびピークまでの臓器を再調整することができる。
上記の作用はすべて心停止体内の臓器に干渉する。
心停止は血液の凝固系を活性化し、最終的に毛細血管系に微小血栓(microthrombi)を生成する可能性がある凝固促進状態(procoagulatory state)をもたらす可能性がある。凝固プロセスの活性化および非活性化の両方において、体温の低下が凝固手順にどのように影響するかについてはほとんど知られていない。
生体の循環器系が働いているとき、血液が凝固するかどうかは、凝固促進物質と呼ばれる凝固を促進する物質と、抗凝固物質と呼ばれる凝固を阻害する物質の2つのグループのバランスに依存している。正常な血流では抗凝固剤が優勢であり、その結果、血液は、血管中を循環している間に凝固しない。
心停止後に血液が循環を停止すると、凝固系に何が経時的に起こるのかはほとんどわかっていない。いかなる理論にも拘束されないが、循環停止がある場合には、循環停止の原因にも依存して、抗凝固剤はダウンレギュレートされ、凝血原は活性化されると考えられている。このプロセスは、遅い可能性があり、時間の経過に伴う温度の低下にも依存する。
血液が化学的に清浄なガラス試験管に収集される場合、血液は通常、6~10分で凝固し、これは、凝固障害を決定するために使用され得ることが公知である。しかし、ガラス管をシリコーン処理した容器に代替すると、血小板(thrombocytes)が活性化されないため、血液が1時間以上凝固しないことがある。したがって、採取(又は、摘出/harvesting)された臓器に捕捉された血液は、30分、1時間、またはそれ以上まで凝固しないと考えられる。2~4時間後に、広範な凝固が起こる。
心臓からの圧力が止まると、血管の一部、特に毛細血管が狭くなり、これが蒼白を引き起こし得る。さらにしばらくすると、血液中のアルブミンおよび他の腫腸性物質の存在は周囲組織から血管内への水の限外濾過を引き起こし、血管、特に細動脈および細静脈ならびにより大きな血管の拡張を引き起こす。時間が経つにつれて、赤血球は分離され、沈降反応において血管の最下部に沈降する。白血球および血小板を含むバフィーコート(buffy coat)が、赤血球の上に形成される。バフィーコートは、血小板および他のタンパク質の増加した濃度を有する。血管が拡張すると、血小板と相互作用する血管の一部が露出することがあり、約2~4時間後に血小板を活性化する。さらに、血液の循環がないため、血小板は特に血管に傷がある場合、血管の表面で内皮細胞(endothelial cells)とも相互作用し、内皮細胞に付着する可能性がある。このような相互作用は、内皮細胞をさらに損傷し得、そしてまた、最終的に血餅(又は、クロット/血栓/血塊/凝塊/clots)の形成をもたらし得る。このような血餅は、循環を有さない血管の任意の部分において形成され得る。また、温度の低下は、凝固系に様々な方法で影響を及ぼす。通常、より低い温度は化学反応を遅くする。したがって、ある時間、通常は数時間、例えば1~4時間後、血管は、血管の壁に付着する複数のより小さいまたはより大きい血餅を含み得る。これらの血餅は、ドナーから臓器を入手した後に通常行う臓器の血管の洗浄(又は、すすぎ/rinsing)によって洗い流すことができない。実際に、血餅が高圧および高フラッシング流によって洗い流されることを試みる場合、血餅が引き剥がされた内皮細胞に損傷をきたし得る。あるいは、これらの血餅は採取後や移植前に臓器が保存されている間も残る。臓器が最終的にレシピエントに移植されると、レシピエントの血液に血管が露出し、その結果、損傷を受けた血管領域に新たな血餅が形成される恐れがある。したがって、特に、循環停止後2時間、3時間、4時間、またはそれ以上などのある時間後にドナーから臓器が調達された場合、できるだけ早く血餅を除去することが重要である。このような血餅は、循環停止後の何時かに生成されるので、この問題は循環停止後長時間(例えば、4時間以上)経ったドナーから採取された臓器においてより大きい。他方ではこのプロセスは温度が低ければ減速され、これはドナーの身体が採取前により速く冷却される場合、これが凝固プロセスを減少させ得ることを意味する。
血餅が形成されると、大量のプラスミノーゲンが他の血漿タンパク質と共に血餅中に捕捉される。プラスミノーゲンは活性化されるまでプラスミンになったり、血餅の溶解を引き起こすことはないであろう。生体内では、傷ついた組織や血管内皮が組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と呼ばれる強力な活性化因子を非常にゆっくりと放出し、これは、その後実質的にプラスミノーゲンをプラスミンに変換し、残った血餅を取り除く。実際、血餅によって血流が遮断された小血管の多くは、生体内でこの機構によって再開通する。従って、プラスミン系の特に重要な機能は何百万もの小さな末梢血管から微小な血餅を除去することであり、これらは最終的に、それらを除去する方法がない場合に閉塞される。
血餅中に捕捉されたプラスミノーゲンは通常、glu-プラスミノーゲンであり、これは、tPAへの暴露でゆっくりとプラスミンに変換される。これは、系のゆっくりとした始動を引き起こす。しかし、しばらくするとglu-プラスミノーゲンはlys-プラスミノーゲンに変換され、これがはるかに速くプラスミンに変換される。したがって、最初の時間の後に血餅の溶解速度を増加させる正の増幅系が存在し、これは48時間までであり得る。
長い実験の後、本発明者は、虚血(ischemia)の最初の数時間の間の血餅の形成が臓器に有害であり得ると結論付けた。血小板は血液の非流によって活性化され、形成された血餅は、血餅の近傍の内皮細胞に影響を与え、傷つける恐れがあると考えられる。死後循環がなく、循環停止状態になるため、血餅が内皮細胞に影響を与える時間が長く、これにより損傷を受ける。
内因性溶解システムは、ドナー腎臓における微小血餅の溶解のために使用され得る。しかし、血餅溶解は遅い。実際、大量のtPAの添加は、プラスミノーゲンのプラスミンへの活性化速度を増加させない。
しかし、lys-プラスミノーゲンの添加およびtPAの添加は血餅の溶解を高め、そしてプロセスをスピードアップすることが見出された。線溶療法後は局所内皮の脆弱性が高いため、血餅の溶解後は局所環境に注意を払い、再血栓症を予防することができる。
本発明は任意の臓器(例えば、肝臓、腎臓、膵臓、膵島、子宮、小腸、多臓器移植)の移植において有用である。
以下、本発明の実施形態を、腎臓および肝臓の移植に関連して説明する。しかしながら、実施形態は、言及した他の臓器および他の組織の移植に有用である。
腎臓は図2に示すように、糸球体毛細血管(glomerular capillaries)と尿細管周囲毛細血管(peritubular capillaries)の2つの直列に接続された毛細血管系を含み、輸出細動脈(efferent arterioles)が2つの毛細血管系の間に配置されている点で特別である。従って、微小血餅(又は、微小凝血塊/microclots)は、両方の毛細管系において形成されていたかもしれない。さらに、毛細血管系の間に同伴される輸出細動脈には、より大きな血餅が形成されている可能性がある。凝固過程は腎臓に影響を及ぼし、2つの毛細血管系とその間に存在する輸出細動脈を遮断するであろう。このため、微小血餅が形成された腎臓から血餅をすすぎ出す(rinse out)ことは困難である。
再調整(recondition)過程を検証するために、4時間以上温虚血に曝露されたブタからの腎臓が実験目的に使用されてきた。6時間、8時間、10時間、12時間、またはそれ以上の間に虚血に曝露された腎臓は、再調整可能であるという証拠がある。さらに、1時間以下の虚血に曝露された腎臓もまた、多少は、このプロセスから利益を得ることができ、したがって、温または冷虚血時間の延長、または年齢、高血圧、糖尿病、低血圧、集中治療室(ICU)における時間、無尿、臨床検査値の上昇、バックテーブルでの潅流不良腎臓、または移植のためにドナーを主に受け入れない他の原因等の他の共立要因(cofounding factors)のいずれかによってマージナルであると考えられる脳死ドナー(BDD)由来の腎臓を含む。
本発明の一実施形態では、延長された及び未知の時間中に温虚血に曝露された腎臓が以下に述べる主なステップを使用することによって回復される。これらのステップは以下にさらに説明するように、以下に示すシーケンス(又は、順序)で正確に実行される必要はない。
第1のステップはlys-プラスミノーゲンおよびtPAを、採取直後およびバックテーブルで腎臓の動脈に、連続的に、または組み合わせて注入する、または体外の、ex-vivo潅流装置を通して、連続的に、または組み合わせて注入してもよいことを含んでもよい。lys-プラスミノーゲンは、生理学的等張(iso-tonic)電解質流体であり、おそらくは高浸透圧剤を含むキャリア流体中に含まれる。約5~20mlのlys-プラスミノーゲンを(5~100U/腎臓を使用して)注射し得る。lys-プラスミノーゲンは、腎臓の血管内に存在する血餅に付着する。約15分後(または同時に)、約5~20mlのtPA(0.5~10mg/腎臓を使用)を、同様の方法で動脈に注射し得る。tPAは生理学的に等張の電解質流体であり、おそらくは高浸透圧剤を含むキャリア流体に含まれてもよい。第1のステップは、室温以上、例えば20℃~37℃で提供されてもよい。
腎臓はさらに、循環または潅流(perfusion)ステップにさらされてもよく、腎臓は腎臓の動脈にコネクタを挿入し、静脈から出てくる流体を収集するための容器内に腎臓を配置することによって、潅流デバイスに接続される。容器は500ml~5000mlの生理学的等張電解質流体である循環流体を含むことができ、さらに、単独で、または追加の高浸透圧剤と組み合わせて、高浸透圧剤、例えばアルブミン57g/Lを含むことができる。循環流体は15℃~24℃(室温)の温度で、腎臓を通して35分間以上循環され、20mmHgの圧力で開始し、5分間毎に5mmHgずつ最大70mmHgまで圧力を繰り返し増加させ、続いて、より低い圧力、例えば30mmHgで30分間循環される。この間、lys-プラスミノーゲンとtPAはさらに腎臓内を循環し、抵抗性は次第に低下するであろう。腎臓の色を調べ、腎臓が青白い外観を有するときに高圧での処置を中断して圧力を低下させ続けることができる。
処置した血餅の再血栓症(又は、再血栓)を予防するために、以下のうちの1つまたはいくつかを、組み合わせてまたは単独で、添加することができる:
アンチトロンビンIII(ATIII)などのトロンビン阻害剤;アルゴバトラン、または、イノガトラン、メラガトラン(およびそのプロドラッグキシメラガトラン)、ダビガトランまたはヒルジンおよびそれらの誘導体などの任意の他の直接トロンビン阻害剤;
アロステリック阻害剤;
糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン)などの血小板阻害薬;
非可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害薬(アスピリン、トリフルサール);
アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害薬(カングレロール、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン);
ホスホジエステラーゼ阻害薬(シロスタゾール);
プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR-1)拮抗薬(ボラパキサル);
アデノシン再取り込み阻害薬(ジピラジモール);
トロンボキサン阻害剤(イフェトロバン、ピコタミドなどのトロンボキサンシンターゼ阻害剤、およびテルトロバンなどのトロンボキサン受容体拮抗剤);
または他の血小板阻害薬のいずれか。これらは、第1の注入ステップまたは第1の循環ステップまたは他の任意のステップの間に添加され得る。ヘパリンまたは低分子ヘパリンの添加は任意である 。
プロセスの第2のステップは、腎臓の血管を通る高張性流体(hyperoncotic liquid)の循環による循環系の潅流および回復(restoration)を含む。高張性(Hyperoncotic)とは血漿中のタンパク質によって引き起こされる圧力として定義されるが、デキストランまたはポリエチレングリコール(PEG)のような人工的構築物であり得る。共通の性質は、それが流れる腎臓の周囲組織よりも高いコロイド浸透圧を有するべきであるということである。さらに、流体は低温、例えば、12℃~24℃、および低圧、例えば、20mmHg~30mmHgで、回復段階の1つの段階で潅流されてもよく、より高い温度、例えば、18℃~32℃で、潅流圧力がより高く、例えば、25mmHg~70mmHgまたは90mmHgであってもよい回復段階の別の段階で潅流されてもよい。1つの高張性流体は50g/L~80g/L、例えば57g/Lまたは72g/Lなど、40g/L~120g/Lの高濃度のアルブミンを含むが、同様の特性を有する他の物質、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。高張性流体は、正常な細胞外レベルと比較して、約10mM~25mMの多量のカリウムを含み得る。高張性流体はまた、浸透膜不浸透性剤(グルコン酸塩およびグルコース)を含み得るが、その代わりに、またはそのようなもの(ラクトビオン酸塩、ラフィノース、マンニトール)と組み合わせて、類似の機能を有する他の薬剤を含み得る。常気圧で、酸素(O20%)、二酸化炭素(CO6.5%)、および窒素(N73.5%)で構成されたガスに露出することにより、流体を酸化させることができ、この場合、酸素のパーセンテージは血液ガス分析(blood gas analyses)後に、代謝ニーズに応じて変更することができる。高張性流体は腎臓の間質組織から水分を除去し、毛細血管系を回復させる。さらに、代謝プロセス不全(failing metabolic process)からの毒性産物は重炭酸塩のような緩衝系を使用して洗い流され、pHが回復されるが、追加的にまたは代替的に、類似の機能を有する他の薬剤または物質(リン酸塩、ヒスチジン/ヒスチジン-HC)を含有してもよい。
腎臓は長時間虚血にさらされているので、グリコーゲン貯蔵が消費されてATPが不足してしまう。したがって、細胞イオンポンプは働かず、細胞内外のNa/Kバランスが損なわれる。pHが低下し、乳酸塩およびピルビン酸塩が産生され、組織に蓄積される。高張性流体は代謝の基質としてグルコースおよび/またはアデニンを含むが、追加的または代替的に、同様の機能を有する他の薬剤(α-ケトグルタル酸、ヒスチジン、グルタミン酸)を含んでもよい。しかしながら、代謝速度は、このような低温では非常に遅い。
循環は低いポンプ圧で行われる。循環中、血管抵抗は連続的に減少し、循環は、血管抵抗が十分に低くなるまで継続され、これは数時間かかる場合もある。
プロセスの第3のステップは、微小環境のさらなる回復および腎臓の評価を含む。温度を約32℃に上昇させ、圧力を30mmHgまたは70mmHgまで上昇させる。洗浄された赤血球(RBC)は、3~20、例えば5~10、例えば6~8のヘマトクリット(hematocrit)に添加される。酸素化(又は、酸素注入/酸素添加/oxygenation)は、酸素レベルを増加させた酸素供給器によって行われる。正常な状態では、腎臓は尿を産生し始め、クレアチニン濃縮能が機能の目安として測定される。既知量のクレアチニンを、腎臓の濾過能力のマーカーとして溶液に添加することができる。さらに、腎臓を視覚的に検査する。腎臓に(広い)暗い部分がある場合は、腎不全の徴候かもしれない。さらに、腎血管抵抗を評価する。
腎臓が移植に適していると考えられる場合、腎臓を直接移植するか、または4~15℃の低温に冷却し、移植まで保存する。
第2のステップと第3のステップとの間に保存期間を配置することもできる。
様々なステップは、多くの点で修正することができる。
第1のステップは、第2のステップの後に1つまたはいくつかの第1のステップを差し挟むことによって修正することができる。例えば、高張性流体は1時間の間潅流され得、ここで、lys-プラスミノーゲンおよびtPA、ならびに場合によりATIIIが添加され、そして潅流はさらに1時間継続され得、ここで、lys-プラスミノーゲンおよびtPA、および場合によりAIIIが再び添加される、などである。
第2のステップは約1時間の第1の期間中に高張性流体を潅流し、次いで、例えばアルブミン濃度を例えば72g/Lから例えば57g/Lに低下させ、流体をさらに1~3時間循環させることによってコロイド浸透圧を低下させることにより、修正することができる。高張性流体は、0.1~10%の用量のデキストラン40を単独で、またはアルブミンもしくは任意の他の高張性剤と組み合わせて、さらに含み得る。
第3のステップは処置された血餅の再血栓症を予防するために、凝固阻害剤および/または血小板阻害剤を含むことによって修正され得る。第1のステップに関して上述したのと同じ製品を使用することができる。製品は第3のステップの間に腎臓に添加される前にRBC懸濁液に、RBCが添加される前に潅流溶液に、または両方の溶液に添加され得る。微小循環系や血管で形成された血餅は粘着性を有し、内皮細胞に付着すると考えられている。血餅が溶解すると、それらは内皮細胞および糖衣に損傷を残す。この損傷は、赤血球の洗浄にもかかわらず残存する、RBC懸濁液中の可能性のある血小板および凝固因子を活性化する。このような活性化は、同じ場所での血餅の新たな形成をもたらし得、これは回避されるべきである。アンチトロンビンIII、または任意の直接トロンビン阻害剤はトロンビンと反応し、トロンビンを不活性化し、除去する。アブシキシマブ、あるいは他の血小板阻害薬は、血小板がくっついて傷ついた内皮細胞に付着するのを防ぐ。ヘパリンまたは低分子ヘパリンの添加は任意である。
第3のステップは、28~37℃および30~90mmHgで実施されるように修正されてもよい。
すすぎステップは、ステップ間およびステップ中に行われてもよい。すすぎ液を腎臓に通し、次いで廃棄する。したがって、すすぎ液は腎臓を循環しない
腎臓はできるだけ早く採取されているが、一方で循環停止などの原因で腎臓が虚血に曝された時間はわかっていないが、虚血時間は約3時間か4時間以上など2時間を超える。腎臓は図1に示すように、腎臓、大動脈および大静脈を自由にし、腎動脈および腎静脈の上下の大動脈および大静脈を切断することによって採取される。アセンブリをバックテーブル上に置き、大動脈残渣(又は、大動脈残部/aorta residue)および大静脈残渣(又は、大静脈残部/vena cava residue)を目に見える血餅から除去する(又は、開放する)。
できるだけ早く、lys-プラスミノーゲン(5~100U)を針および注射器によって腎動脈に注入し、それによって、すべてのlys-プラスミノーゲンが腎動脈および腎臓に通過することを確実にするために、注射器の前に腎動脈を圧搾する。流体が腎静脈から出れば、腎臓がlys-プラスミノーゲンによって潅流されていることを示している。Lys-プラスミノーゲンは血管内の血餅と相互作用し、血餅や血餅内のフィブリンと結合する。次に、tPA注射の時間まで、両腎動脈と同様に腎静脈をクランプする。
次に、lys-プラスミノーゲンと同じ方法でtPAを注入する。しかしながら、静脈はわずかな過剰圧力が腎臓の内側に生成されるように、クランプされたままであってもよい。次いで、大動脈は、一端でカニューレ挿入され、他端でクランプされ、系をex-vivo機械潅流のためにセットする。両方の尿管には、尿をモニタリングできるようにカニューレが挿入される。
アンチトロンビンIII(ATIII)またはアルゴバトランなどのトロンビン阻害剤を、lys-プラスミノーゲンと一緒に、および/またはtPAと一緒に添加してもよい。
lys-プラスミノーゲンの注入容量、約10mlは、腎臓に通常含まれる血液の容量の約半分に相当し、腎臓(腎臓が150gの重量を有する場合)(10~20ml/100gの腎臓)あたり約15~30mlであることに留意されたい。tPaの体積も約10mlであり、用量は腎臓あたり0.5mg~10mgである。
最後に、図3に示すように、腎臓を閉鎖した容器に入れ、腎臓を大動脈残渣に吊り下げ、循環系に接続する。大静脈の下端は流体が腎臓から自由に流出することができるように開放され、一方、流体は容器の循環系によって大動脈に提供される。
ときには、腎臓を別々に扱うことがある。これにより、大動脈を縦に2つに分け、図3に示すように、カニューレを分割した大動脈パッチからまだ流出している腎動脈につなぐ。これにより、複数の動脈を1本の動脈として扱うことができ、それぞれの腎臓を別々にモニターできる可能性がある。ヒトでは、腎臓あたり1本以上の動脈が全腎臓の30%以上に見られる。提案された技術では、これは問題ではない。
図3に示すように、腎臓35の大動脈残渣33は、容器31内に配置されたコネクタ32に接続される。大静脈34は破線36で示すように、容器31の底部37に流体を放出するように開いている。流体レベル36は、腎臓の下、または腎臓の上、またはその間にあってもよく、図3に示されているのは、その間の場合である。
容器の底部37は、バルブ42を介してドレンバッグ41に接続されている。底部はまた、第1のスイッチ弁44を介してポンプ43に接続されている。図3に示される第1の位置において、第1のスイッチ弁44は、ポンプ43の入口を、すすぎ流体バッグ45または容器31の底部37のいずれかに接続する。
ポンプ43の出口は、ポンプを通過する流体の温度を制御する加熱/冷却器48に接続されている。加熱器/冷却器48の出口は第2のスイッチ弁46を介して、酸素供給器47および白血球フィルタ49に、または、図3に示されるスイッチの第1の位置では、直接コネクタ32に、そして腎臓に通じる。図示の位置では、流体が周囲の大気(流体中に溶解した酸素)に曝されることによってのみ酸素化される。
したがって、容器37の底部に存在する流体は、第1のスイッチ44を介してポンプ43に循環され、さらに加熱/冷却器48を介して第2のスイッチ46およびコネクタ32に循環される。流体はコネクタ32から大動脈および腎臓に進み、腎臓の血管を通り、さらに腎臓の静脈に進み、最終的に容器の底部に放出される。
ポンプ43はポンプ圧力が例えば20mmHgの所望の値に調整され、流量が腎臓の抵抗に依存するように、圧力制御されたポンプであってもよい。
容器31の底部37に存在する流体は、図3に示すように、いくつかのバッグ50、51、52、53および54を介して供給される。各バッグは、弁55、56、57、58及び59を介して容器31に接続されている。弁を開くことによって、バッグの内容物は、重力によって容器の底部に運ばれる。
一実施形態における動作は、以下の通りであってもよい:
採取後、腎臓をバックテーブルでlys-プラスミノーゲンおよびtPAに暴露した後、腎臓を容器31に移動させ、大動脈残渣をコネクタ32に接続して、腎臓を容器31内に吊るす。静脈は開いており、流体を容器の底部37に直接排出することができる。腎臓は、ネットなどの支持体(図示せず)上に載置されてもよく、水平軸に関してその位置の角度が異なってよい。容器内の温度は、所望の開始温度、例えば18℃~28℃に設定される。電解質と、場合によっては57g/Lの濃度のアルブミンとを含む循環流体を、対応する弁55を開くことによって循環流体バッグ50から容器31に供給することができる。次に腎臓を潅流し、20mmHgの圧力で5分間にて開始した後、50mmHgから90mmHgの事前に決めたどれかの値まで5分毎に5mmHgずつ増量する。次いで、圧力を例えば20~30mmHgに低下させ、事前に決定された追加の期間にわたって潅流することができる。腎臓の抵抗は減少し、腎臓は正常に薄い色になり、暗い領域は全くないか、あるいはわずかしかない。これは、腎臓の血管内の血餅が溶解され除去されたことを示す。ここで、容器内部の流体は、ドレン弁42を開くことによってドレン41に通される。
いかなる理論にも拘束されず、腎臓の暗い部分は循環のない領域のしるしであると考えられている。これは血栓や他の理由によるものかもしれない。このような暗い部分で後に循環が起これば、腎臓はこれらの領域を回復させて、組織を機能させる。
潅流ステップでは、ドレン弁42を閉じ、弁56を開くことによって、1000mlの潅流流体51を重力によって容器31に通す。容器内の流体レベルは1000mlの流体が容器の底部に蓄積されると、ライン36の上方に上昇し、弁56が閉じられる。第1のスイッチ弁44は図3に示されるその第1の位置にあり、ポンプが起動され、20mmHgの圧力でポンピングされる。ヒータ/クーラ48は、温度を12~18℃に調整する。容器の底部の流体は、数時間、例えば1~4時間、20~30mmHgの圧力で循環される。潅流ステップの間、腎臓の化学的性質は回復され、毒性産物が除去される。ここで、ポンプを停止し、すすぎを行う。潅流ステップはすすぎステップの後、低体温潅流期間中に、別の組成の潅流溶液で繰り返されてもよく、または、潅流がRBCの有無にかかわらず、別のより高い温度中に継続されてもよい。
評価ステップでは、潅流ステップからの同じ溶液を、ドレン弁42を開いて容器の内容物をドレン41に排出した後に使用することができ、または上述の2つのすすぎステップの後にドレン弁42を閉じて、弁57を開くことによって500mlの評価流体52を重力によって容器31に送った後に使用することができる。500mlの流体が入ったら、バルブ57を閉じる。第1のスイッチ弁44は図3に示されるその第1の位置にあり、ポンプが起動され、20mmHgの圧力でポンピングされる。加熱/冷却器48は、温度を28~32℃に上昇させる。pHおよび環境がチェックされる5~30分後、5~10のヘマトクリットが得られるまで弁58を開くことによってバッグ53から赤血球懸濁液(RBC)を添加し、その後バルブ58を閉じる。第2のスイッチ弁46は、流体および赤血球を酸素化するための回路内の酸素供給器47を含む第2の位置に移動される。腎臓が移植目的に使えると判断されるまで、30mmHgの圧力で1~4時間の間循環が進む。32~37°C、圧力70~90mmHgで15分間にわたって腎臓を評価し、腎臓の潅流状態に関して血管抵抗、血流、視覚的外観に注目する。外科医は、腎臓の潅流が良好であるか、中程度または不良であるかを判定し、中程度はいくつかの青色/黒色の斑点、不良はいくつかの大きな暗青色または黒色の領域が潅流されていない。尿産生を測定し、流量をml/分および100g腎組織として記録する。ポンプが停止され、ドレン弁42が開いて、容器の底部の全ての流体をドレン41に排出する。
任意のすすぎステップは、第1のスイッチ弁44を、ポンプ43をすすぎ流体バッグ45に接続するその第2の位置に移動させることによって実行されてもよい。ポンプを作動させ、約200mlを腎臓に循環させる。腎臓を出て容器の底部に至る流体は、開放弁42を介してドレン41にさらに通される。このようにして、全ての赤血球は腎臓からドレンにすすぎ出される。このようなすすぎステップは、数回、および他のステップの間に実施されてもよい。
保存ステップでは、ドレン弁42を閉じ、弁59を開くことにより500mlの保存液54を重力により容器31に通す。500mlの流体が入ったら、弁59を閉じる。第1のスイッチ弁44は図3に示されるその第1の位置にあり、ポンプが起動され、20~30mmHgの圧力でポンピングされる。ヒータ/クーラ48は、温度を12~15℃のように6~18℃に調節する。容器の底部の流体はレシピエントが見つかり、腎臓がレシピエントへの移植のために準備されるまで、数時間、最大48時間以上、20~30mmHgの圧力で循環される。ポンプが停止され、ドレン弁42が開いて、容器の底部の全ての流体をドレン41に排出する。腎臓はコネクタ32から取り外される。
図3に記載される実施形態で使用される流体は、表Aに詳述される流体であってもよい。
バックテーブル処置の間、lys-プラスミノーゲンは、表Aのベース溶液と同一であり得るキャリア流体中に含まれる。
一実施形態では、キャリア流体、リンス流体、潅流流体、および保存流体は同じ基本成分を有してもよい。これらの成分としては、ナトリウム含有量113mM~129mM、カリウム含有量5mM~25mM、マグネシウム含有量2.5mM~5mM、カルシウム含有量1mM~5mMが挙げられる。上記の電解質に加えて、以下の物質のうちの1つまたはいくつかが含まれ得る:40g/L~75g/L、例えば57g/Lまたは72g/Lなどの10g/L~120g/Lの濃度のアルブミン;任意に0g/L~100g/Lのデキストラン40、0g/L~70g/Lのヒドロキシエチルデンプン(HES)、0g/L~25g/Lのポリエチレングリコール(PEG20)、または0g/L~3g/LのPEG35、の単独または組み合わせ。デキストロース5mMおよび重炭酸塩10~35mMも任意である。さらに、L-アルギニン(一酸化窒素(NO)の前駆体、生理学的ストレス時の血圧の調節)、L-ロイシン(タンパク質合成)、L-グルタミン(アミノ酸産生に必要なL-アルギニンを合成する)、または他のものなどのアミノ酸を、単独でまたは組み合わせて、通常濃度で添加してもよい(表Aを参照のこと)。添加され得る他の物質は、I-イノシトール(膜電位安定剤)、アデニンおよびリボース(アデノシンを作る-ATPの一部)である。表Aに記載されているような微量物質(補因子およびビタミン)も添加することができる。ノボラピッド、T3、T4、プロゲストロンおよびエストロゲンなど、天然に存在するホルモンを生理的濃度で添加してもよい(表A)。チエナム(Tienam)のような抗生物質を添加してもよい。表Aによるこの基本流体は、キャリア流体、すすぎ流体、循環流体、潅流流体および保存流体のうちの少なくとも1つとして使用され得る。
潅流液は高い膠質浸透圧を有してよく、これは、70g/L~120g/L、例えば72g/Lの濃度までのアルブミン、およびおそらく0g/L~150g/Lの濃度のデキストラン40(またはデキストラン70)などの高張性溶液、または任意の他の公知の高張性流体の添加によって達成される。カリウムは、17~22mM、例えば18mMなど、13~25mMの範囲で、正常血漿よりも高く維持されてもよい。あるいは、カリウム濃度が1mM~13mMなどの低濃度であってもよい。カリウムおよびナトリウムレベルは生理学的環境およびpHの標準化(normalization)のために、RBCフェーズの間に変わる。
Figure 2022528754000002
評価流体はさらに、以下を含んでもよい:
アルゴバトラン(またはイノガトラン、メラガトラン(およびそのプロドラッグキシメラガトラン)、ダビガトランもしくはヒルジンおよびそれらの誘導体などの任意の他の直接トロンビン阻害剤、またはアロステリック阻害剤)などの凝固阻害剤;
血小板阻害薬、例えば糖タンパク質IIb/IIIa受容体拮抗薬(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン)、
不可逆性シクロオキシゲナーゼ阻害薬(アスピリン、トリフルサール)、
アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害薬(カングレロール、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン)、
ホスホジエステラーゼ阻害薬(シロスタゾール)、
プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR-1)拮抗薬(ボラパキサル)、
アデノシン再取り込み阻害薬(ジピラジモール)、
トロンボキサン阻害薬(イフェトロバン、ピコタミドなどのトロンボキサンシンターゼ阻害薬、およびテルトロバンなどのトロンボキサン受容体拮抗薬)または
他の血小板阻害薬-を組み合わせてまたは単独で、治療した血栓の再血栓症を予防するために含んでよい。
ヘパリン、プロテインCおよびプロテインSは任意である。
ベラパミルを加えてもよい。図4は、別の実施形態を示す。この実施形態は、腎臓を採取するための施設を備えるローカル(又は、地域)の病院で使用されることが意図される。腎臓は、当該ローカルの病院で前処理され、後にレシピエントへの移植を担当する中央病院に搬送される。
ローカルの病院では心停止の犠牲者であるドナーが、死亡からの時間が不明であるが、12時間、10時間、8時間、6時間または4時間未満に到着する。ドナーが到着するとすぐに、体内の有害な処置、特に代謝および凝固を減速させるために、屠体を冷却することができる。そのような冷却は、身体が例えば約0℃の空気温度を有する、冷蔵されている部屋または区画に置かれるという点で局所的であってよい。冷却の他の方法は、身体の周りまたは腹腔内に氷スラリーを配置することであってもよく、または冷たい流体を腹腔および/または胸腔内に注入してもよい。
採取チームがローカルの病院にいる場合、採取は、冷却の有無を問わず、できるだけ早く行うことができる。
腎臓を採取する際には、通常の手順が行われ、腎臓は、ひとまとめにして、あるいはそれぞれ別個にしてバックテーブルの上に置かれる。バックテーブルでは、腎動脈にlys-プラスミノーゲンを注入する第1のステップを行う。Lys-プラスミノーゲンは腎臓血管に約15分以上滞留させ、その間、腎臓動脈または大動脈にコネクタを取り付けることにより、腎臓をさらに準備する。
約15分後、または可能な限り早く、腎臓は図4に示されるように、容器アセンブリ60に移される。腎臓61のコネクタ63は、容器62の頂部の対応するコネクタ64に取り付けられ、そこで、腎臓61は図4に示されるように、容器61の内側に吊り下げられる。腎臓の静脈は、容器61の内部に直接開口している。
コネクタ64がまだ開いているとき、シリンジ75が接続され、約10mlのtPA(Alteplas)がコネクタ64を介して腎臓の動脈に注入される。lys-プラスミノーゲンの添加は代わりに、tPAの添加の前に、そしてバックテーブルでの添加の代わりに、コネクタ64に取り付けられたシリンジを介して実施され得ることに留意されたい。さらに代替的に、lys-プラスミノーゲンおよびtPAは、シリンジを介してコネクタ64に同時に添加され得るか、またはバックテーブルで同時に注入され得る。
アルテプラーゼの代わりに、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼおよびテネクテプラーゼなどの別のtPAを使用することができる。
その後、コネクタ64にチューブ65が接続される。チューブ65は螺旋形状に配置され、圧力バッグ66をコネクタ64に接続する。圧力バッグ66は、スタンド67によって、容器64の上方例えば27cmの所定の高さ(20mmHgの圧力に対応する)に支持されている。圧力バッグ66の高さ位置はウォームギアモータ68によってスタンド67に沿って調節可能である。チューブ65の螺旋構成は、チューブ65を高さ位置に調整する。最初、バッグは空である。
循環流体バッグ76は、電解質およびアルブミンなどの高浸透圧剤を含む循環流体を含む(表A)。バッグ76内の循環流体は、矢印77で示すように容器62に加えられる。約1Lの循環流体があり、容器62の容積は約1.3Lであり、これは、容器62は循環流体でほぼ満たされていることを意味する。循環流体は、1L/分でO、COとNのガス混合物を用いて、酸素供給器を介して酸化される。操作は室温で行う。循環流体は、系内のlys-プラスミノーゲンおよびtPAと一緒に循環する。
循環流体の量は1Lよりも小さくてもよいが、チューブおよびポンプ(容器を除く)ならびに腎臓の容積よりも大きくなければならない。加えて、容器内に収容されるためには、小さな容積が必要とされる。このような容量は、10ml、20ml、50ml、またはそれ以上であり得る。したがって、例えば、150ml~1000mlの循環流体を使用することができる。
ポンプ69がチューブ70を介して容器62に接続され、容器62から圧力バッグ66に循環流体をポンプで送る。レベル検出器71は、容器62の流体レベルが所定のレベルに達したときにポンプ69を始動させる。ポンプは例えば、ポンプの回転速度に対応する流量を有する蠕動ポンプである。ポンプが圧力制御されている必要はない。
ポンプ69は1分間に、例えば75ml/分の流量で作動され、75mlの流体が容器62から圧力バッグ66に移送される。ポンプ流量は、腎臓の抵抗が十分に低いことを示す、腎臓を通る所望の流量に対応するように選択される。腎臓100g当たり50ml/分の流量で十分であると通常考えられる。成人男性の正常な腎臓は約150gである。
圧力バッグ66は例えば、容器62の上方27cmの高さに配置されているので、循環流体の流れは、20mmHgに相当する27cm水柱の前記圧力で腎臓を通過する。腎臓の耐性が大きい場合、27cmの水柱のこの圧力は例えば7.5ml/分の腎臓を通る流れを引き起こすことができ、これは、容器62内の液面が10分で液面検出器71の液面に戻ることを意味する。次いで、ポンプ69が液面検出器71によって始動され、この手順が繰り返される。
圧力バッグ66は、ウォームギアモータ68によってより高い位置に移動されてもよい。一実施形態では、ウォームギアモータ68が圧力バッグの高さを1cm/分だけ増加させる。圧力が例えば、10分後に35cm水柱に増加すると、腎臓を通る流れは、例えば、15ml/分に増加する。これは、ポンプ69が5分後に再度運転されることを意味する。腎臓を通る流れが75ml/分になるように圧力が上昇すると、ポンプ69は連続的に作動する。これは、腎臓の抵抗性が十分に低いことを示している。ここで、圧力バッグ66の高さの増加が停止される。
圧力バッグの最大高さは、例えば95cmであり、70mmHgの圧力に対応する。圧力バッグが上部位置にある前に(最大70分後に)所望の流量(150gの腎臓に対して75ml/分)に達した場合、手順は中断される。所望の流量に達していない場合、70mmHg(95cm水柱)の圧力で操作をさらに30分間続ける。
これまでの操作は、18℃~28℃の室温で行われた。
容器62には、容器の大きな下側部分を覆うジャケット72が設けられている。ここで、ジャケットには、容器62を約5℃~18℃、例えば12℃~15℃の温度に冷却するための氷スラリーを設けることができる。圧力チャンバーを25cmに下げ、ポンプを操作して循環液を腎臓に循環させる。ジャケットおよび圧力バッグを有する容器は断熱ボックス(図示せず)内に配置されてもよく、アセンブリは継続する取扱いを担当する主病院に輸送される。腎臓は、この状態で、長時間、48時間まで、またはそれ以上保存され得る。
移植が行われるかもしれない主病院では、腎臓をさらに治療する。同じ容器62内に留まるか、または、腎臓は図5に示されるように、別の容器82に移動され得る。容器82は、腎臓が接続されるコネクタ84を備える。ポンプ89はチューブ87を介して容器82から腎臓の入口動脈に流体を圧送し、流体は先に説明したように、静脈を介して容器82に放出される。ポンプ89は圧力制御され、圧力を所望の値、例えば20~30mmHgに維持する。ヒータ/クーラ(図示せず)は潅流および保存の間、温度を所望の温度(例えば、12~32℃)に維持する。ドレンバッグ85は、バルブ86を介して容器82の底部に接続されている。
図5による装置はまた、赤血球懸濁バッグ91を含む。赤血球懸濁バッグは、並列に配置された3つのポンプ92、93、94を含む循環システムに接続される。サイトカインフィルタ95はポンプ92と直列に配置され、エンドトキシンフィルタ96はポンプ93と直列に配置され、酸素供給器97および白血球フィルタ98はポンプ94と直列に配置される。赤血球懸濁バッグ91の後に配置された懸濁弁99が開かれると、赤血球懸濁液は、ポンプ92、93、94によって、それぞれのフィルタ95、96、98および酸素供給器97を通って循環される。循環は、室温で約30分間行うことができる。このようにして、赤血球懸濁液は、エンドトキシン、サイトカインおよび白血球が除去されるように調整される。さらに、赤血球懸濁液は酸素化される。
評価溶液はバッグ101内に存在し、バルブ102を介して容器82に接続されている。バルブが開くと、バルブ86を開くことによって先にドレン85に中身を流し空になった容器82に、重力によって評価溶液が流れる。評価溶液を約32℃の温度に加熱する。評価溶液をポンプ89によって腎臓に循環させ、すると腎臓は32℃の温度となる。次に、赤血球懸濁液は、図5に示されるように、バルブ99および別の2つのバルブ103および104を開くことによって容器に添加される。懸濁液が重力によって容器82に移送されてしまうと、赤血球懸濁弁99が閉じられる。
ここで、ポンプ92、93、94は、容器82内にある流体を、開いた弁104および103を通して、ならびにフィルタ95、96、98を通して、および酸素供給器97を通して送り出す。このようにして、評価液がエンドトキシン、サイトカインおよび白血球を含まないことが保証される。さらに、赤血球は酸素化される。ここで、例えば、paO、PaCO、HCO、酸素飽和度、Hb、Hct、乳酸塩、ブドウ糖、pHなどの「血中」パラメータを測定することによって、腎臓を評価することができる。さらに、腎臓を光学的に検査することができる。抵抗値はポンプデータから計算できる。クレアチニンが評価液に添加される場合、クレアチニン濃度を含む尿産生を検査することができる。このようにして、腎臓が移植に適しているかどうかを調べる。
そして、容器82の内容物は、弁86を開いてドレン85に移送される。保存液105は、バルブ106を開くことによって容器82に導入される。保存液は全ての赤血球を除去するために、20~30mmHgの圧力および12~15℃の低温でポンプ89によって循環される。さらに、腎臓がその重量を増加させることが起こり(又は、起こると)、保存液は、腎臓に蓄積した過剰な水を除去するためのアルブミンを含む。最長7日間(またはそれ以上)の保存期間の後、腎臓を移植する。
さらなる実施形態を図5aに示す。この装置は、赤血球(RBC)懸濁液を洗浄するためのデバイス110(全て詳細には示されていない)を含む。バッグ111中の洗浄されたRBCは、チューブ112およびバルブ113を介してコンディショニング容器114に移される。容器114は、第1のポンプ116、酸素供給器117、サイトカイン吸着器118、白血球フィルタ119、第1の弁120および第2の弁121を含む調整回路115を含む。さらに、バルブを備えた第1のコネクタ122が第1のバルブ120に接続され、バルブを備えた第2のコネクタ123が第2のバルブ121に接続される。
第1および第2の弁120、121が開いており、コネクタ122、123の弁が閉じているとき、調整回路は容器114内に存在するRBC懸濁液中の白血球およびサイトカインを除去するために、酸素供給器117、白血球フィルタ119、およびサイトカイン吸着器118を通して容器114内の流体を循環させるためのポンプ116を作動させることによって、容器114内の流体を調整するように作動する。循環が少なくとも30分間、例えば60分間以上行われると、RBC懸濁液が調整される。
図5aの右側に処理システム130が示されている。処理システムは、第1の弁付きコネクタ122に接続することができる第3の弁付きコネクタ132と、第2の弁付きコネクタ123に接続することができる第4の弁付きコネクタ133とを有する処理容器131を含む。
処理容器131は、弁を備えたチューブを介して容器131に接続された3つの流体バッグ134、135、136を含む。このような弁を開くことによって、対応する流体バッグの流体を処理容器内に移して空にすることができる。廃棄物バッグ137が、弁を備えたチューブを介して処理容器の底部に接続されている。弁を開くことによって、容器131内の流体を廃棄物バッグ137に排出することができる。
採取された腎臓140(腎臓)には、大動脈残渣または腎動脈(動脈)に接続する腎臓コネクタ141が提供される。腎臓コネクタ141は、容器内に設けられた容器コネクタ142に接続することができる。容器コネクタ142は、循環ポンプ143および酸素供給器144を備える腎臓循環システムに接続される。ポンプ143は治療容器内の流体を、その下部から、前記ポンプおよび酸素供給器を介して、前記容器コネクタ142および腎臓140の動脈に循環させる。腎静脈から放出された流体は、さらなる循環のために容器の内部に放出される。
調整システムは処理容器131の底部に接続された第2のポンプ145を備え、これは処理容器131内の流体を、エンドトキシン吸着器146および白血球フィルタ147を通って処理容器に戻すようにポンピングするためのものである。
2つの医療用注入ポンプ148、149が、腎臓の動脈への流れに医療用薬剤を注入するために配置される。注入ポンプは、シリンジポンプであってもよい。注入される薬剤は、lys-プラスミノーゲン、tPA、ATIII、血小板阻害剤、トロンビン阻害剤、凝固阻害剤などであり得る。医療用注入ポンプ148、149はさらなるシリンジポンプが接続され得るように、交換可能であり得る。
処理容器から出て行く流体を加熱/冷却するために、ヒータ/クーラ150が配置されている。
システムの動作は以下の通りである:
RBC懸濁液は、公知の方法に従って洗浄システム110で洗浄される。洗浄が整うと、RBC懸濁液は、バルブ113を開くことにより重力によって調整容器114に移される。
調整容器114内の流体はバルブ120および121を開き、ポンプ116を作動させて、ポンプ116によって循環され、流体を白血球フィルタ119およびサイトカイン吸着器118を通して循環させ、それによって残存する白血球およびサイトカインを除去する。
その間に、腎臓140が採取され、処理容器131内に配置され、腎臓コネクタ141を介して容器コネクタ142に接続される。この操作は、例えば遠隔の病院において、図5aに示されるシステムの左側部分から離れたところで行われてもよい。
処理容器131には、必要に応じて流体バッグ134、135、136から処理流体が供給される。使用時には、流体は廃棄弁を開くことによって廃棄物バッグ137に排出される。
循環第2ポンプ145は、白血球及びエンドトキシンを連続的に除去するために、処理容器内の流体を白血球フィルタ147及びエンドトキシン吸着器146に通すために作動する。
循環ポンプ143は、上述したように、酸素供給器144を介して容器から腎臓の動脈へ、さらに腎静脈を介して腎臓の治療のための容器へと流体を循環させるために作動される。
医薬品ポンプ148、149は、医薬品を添加するために使用することができる。
次いで、処置システム130は、弁付きコネクタ122を弁付きコネクタ132に接続し、弁付きコネクタ123を弁付きコネクタ133に接続し、弁123を除く弁を開くことによって、調整システム115にドッキングされる。第1の弁120は閉鎖され、第2の弁121は開放され、すると、ポンプ116は、コネクタ122、132を介して調整容器114内の流体を処理容器にポンピングするために作動される。次に、第2バルブ121を閉じ、バルブ123を開くと、ポンプ116は、処理容器131内の処理液を酸素供給器117、白血球フィルタ119、サイトカイン吸着器118を通して循環させる。
処理は、上記の方法のいずれか1つに従うことができる。
図5bに示されるように、処理容器151は2つの腎臓を別々に処理するように修正されてもよいが、それらはひとまとめにして(en-block)配置されてもよい。2つの腎臓には容器コネクタ162、172に接続された2つの腎臓コネクタ161、171が設けられており、これらは図に示すように、循環ポンプ163、173に接続されている。酸素供給器164は図示されるように、2つの循環システムのための共通ラインに接続される。このシステムでは、それぞれの別個の腎臓に、異なる治療のために、医療用注入ポンプ168、169および178、179を介して別個の医療薬を提供することができる。
生体外(ex-vivo)潅流装置全体は、異なる臓器に適合させることができる。例えば、肝臓は、腎臓よりも大きく、より多量の流体を必要とし得る。
実施例1
回収前の手順:30頭の豚に麻酔をかけ、正常通気(又は、正常換気normoventilation)を達成させ、その後、人工呼吸器をオフにした。約15分後に心停止、循環停止が出現した。室温で2時間後、冷生理食塩水を腹腔および胸腔に導入し、その後、一時間、それ以上の処置は行わなかった。
回収:循環停止3時間後、腎臓の回収のために手術を開始し、平均45分を要した。
バックテーブル手順:腎臓当たり、0.9%生理食塩水で20mlに希釈した0.5~1%のリドカイン10ml中に約500Uのヘパリンを注射した後、腎臓を、SOLTRAN(腎臓還流液、Baxter Healthcare)で、バックテーブル上の腎動脈を通してフラッシュした。
処置手順:腎臓をA群11頭、B群13頭、C群6頭ずつ片腎のみ、D群同じ6頭ずつのもう一方の腎臓の4群に分けた。
A群は、2時間の冷蔵で処理され、その後、移植された。
B群は、2時間の冷蔵で処理され、続いて表Bに示される組成を有する溶液を使用して37℃で90分間再調整され、洗浄されたRBCと混合されて約15のhctにされ、続いて移植された。
Figure 2022528754000003
C群は、製造元( Organ Recovery Systems)の指示に従って、Life Port Kidney TransporterおよびKPS(Kidney Perfusion Solution)を用いて腎臓を回収した直後4時間の間に低体温潅流を行い、続いて移植を行った。
D群は、C群と同じドナーからの腎臓を、2時間の冷保存で処理し、続いて移植を行った。
図6は、再潅流後および移植後90分の観察後の動脈血流量(ml/分)の変化を示す。
図7は、移植後90分の平均尿産生をml/分で示す。Mann-Whitney U検定を用いた結果、再潅流時の流量は再調整B群の方が良好であり(p<0,05)(図6)、再調整B群は、移植後90分の尿産生も良好であった(p<0,05)(図7)。
実施例2
6頭の豚に麻酔を施し、正常換気を達成させた後、人工呼吸器をオフにした。約15分後に心停止が出現した。室温で2時間後、冷保存溶液(生理食塩水)を腹腔および胸腔に導入した。
死亡4時間後に腎臓の回収を開始した。
腎臓は腎動脈を通して、腎臓当たり、0.9%生理食塩水で20mlに希釈された0.5~1%リドカイン10mlの中に約500Uのヘパリンを注入した後、冷リンガー溶液でバックテーブル上にて洗い流した。
腎臓を、図3に示すタイプのex-vivo潅流装置に接続し、0.4mgのtPA(alteplas)および150Uのアピラーゼ(Sigma Aldrich、プリン作動薬(purinergic drug)-CD39/CD73)を、腎動脈を通して注入した。使用した溶液の組成を表Cに示す。
溶液を、温度15℃および圧力20mmHgで、30分間、酸素化せずに潅流した。次いで、温度を32℃に上昇させ、圧力を30mmHgに上昇させ、再調整フェーズで潅流をさらに90分間続けた。次いで、洗浄した白血球濾過したRBCを添加し、そして評価の間、潅流をさらに90分間続けた。
その後、腎臓を移植した。
図8は、再潅流後および90分後の腎臓の流れを示す。腎臓は微小循環を完全に除去せず(not clear)、腎臓の表面に潅流欠損を示した。線維素溶解薬ならびにプリン作動薬(アピラーゼ-CD39/CD73)-をex-vivo系に添加しても、血管抵抗および血流は実質的に改善されなかった。
Figure 2022528754000004
実施例3
別の実験では、実施例2のプロトコールを繰り返したが、アピラーゼは与えなかった。代わりに、リドカインを潅流溶液に添加した。このアイデアはリドカインが示したNaポンプへの影響により、再調整フェーズ中の安定化効果を探すことであった。溶液の組成を表Dに見ることができる。
Figure 2022528754000005
図9は最初の90分の間の変化しない流れを示し、これは、通常、減少している。さらに、重量変化は浸透圧が330mosmであり、カリウムレベルが約5mmol/Lであるという事実にもかかわらず、再調整の異なるフェーズ間で最小であった。実施例2では、腎臓が潅流の開始から再潅流の90分後に終わるまで、重さが有意に増加した。
実施例4
7頭の豚に麻酔を施し、正常換気を達成させ、その後、人工呼吸器をオフにした。約15分後に心停止が出現した。室温で2時間後、冷保存溶液(生理食塩水)を腹腔および胸腔に導入した。
各豚の両腎臓の回収を死亡の4時間後に開始した。
腎臓を、実施例2に記載されるように、腎動脈を通して、腎臓当たり、0.9%生理食塩水で20mlに希釈された0.5~1%リドカイン10ml中約500Uのヘパリンの注射後、冷リンガー溶液で、バックテーブル上にてフラッシュした。使用した溶液の組成を表Eに示す。
Figure 2022528754000006
腎臓をex-vivoで30分間、最初は15℃および20mmHgの圧力で潅流した。次に、まずO(20%)、CO(5,6%)およびN(74,4%)のガス混合物を使用して、潅流溶液を酸素化した。1時間後、この溶液を表Eの組成を有する新しい溶液と交換し、温度を32℃に上げ、圧力を30mmHgに調節した。洗浄した白血球濾過したRBCを加えて約10~15のhctとし、続いて5時間潅流した。次に潅流系から片方の腎臓を取り出し、レシピエントブタに移植(n=7)し、8時間まで90分間観察した。ex-vivo潅流システム中の残りの腎臓を、比較のためにさらに90分間潅流した。
図10に移植後の腎動脈血流量を示す。腎臓は機能しており、10時間以上尿を産生していた(n=3)。10時間まで続いた動物はほんのわずかであり、これは、流れの増加した広がりを説明する。実験の終了時、ブタはまだ麻酔下にあった。
実施例5
別の実験では実施例4(n=5)と同じプロトコールに従って処理を行ったが、生体外潅流(ex-vivo perfusion)を6時間でなく11時間継続した。流れは、再潅流で104ml/分、再潅流後14.5時間で109ml/分であった。このように、潅流時間を延長しても、かなりの流れを生じ、腎臓の輸送時間を可能にし、レシピエントが到着するのを待つことができる。
Figure 2022528754000007
実施例6
別の実験では、7匹のブタが実施例4と同じプロトコールに従って死亡宣告された。温虚血時間(WIT)は4~6時間であった。
死亡4時間後から、豚1頭あたり両腎臓を回収した。
生体外潅流を15℃で開始した。最初の1時間の間、72gアルブミン/Lを使用し(表Eによる溶液)、潅流中の圧力は20mmHgであった。30分後に酸素化を開始した。1時間後、溶液を排出し、温度を32℃に上昇させ、圧力を30mmHgにし、RBCを添加した後、80gアルブミン/Lの新しい溶液(表Fによる溶液)を2時間使用した。
図11に移植後の腎動脈血流量を示す。7つの腎臓はすべて、腎移植後4時間(118.7±15.0ml/分)および8時間(85.0±10.5ml/分)良好な流れを示し、尿産生を維持した。実験は8時間後に、まだブタが麻酔下にある状態で終了した。観察期間中、血流は減少していたが、腎臓は観察終了時に良好な血流を依然として有していた。倫理的許可により、豚を起床させることはできなかった。
Figure 2022528754000008
実施例7
別の実験では、4匹のブタが実施例4と同じプロトコールに従って死亡宣告した。腹部の氷を用いた局所冷却を2時間後に使用し、その結果、体温が、冷却剤として流体を用いた場合は25℃から29℃に変化したのに対し、37℃から約20℃に変化した。
腎臓を回収したが、それによってWIT(温阻血時間)は4~5時間の間で変化した。
腎臓を、57gアルブミン/Lを高張性剤として用いた、表Gに記載される溶液の組成物でリンスした。腎臓が白くなるまで、20mmHg~70mmHgまでの圧力を使用し、5分毎に圧力を5mmHg上昇させ、18℃の温度を使用して、ex-vivo装置で腎臓をリンスした。十分に潅流された腎臓を得るには、平均2~3リットルの溶液および最大で50分を要した。
同じ溶液を用いて、温度を12℃に下げ、腎臓を20mmHgで1時間潅流した。次いで、溶液を、表Fに見られる、80gアルブミン/Lを含む、温度28℃、および圧力30mmHgの溶液に変えた。RBCを添加して、最終のhctを約10~15にした。腎臓をこの溶液で2時間潅流した。次いで、温度を32℃に上昇させ、腎臓をさらに1時間潅流した後、系を排液し、最初に使用した57gアルブミン/Lを含む溶液を再び添加した。この溶液を用いて、移植前に、15℃、および20mmHgの圧力で30分間潅流を続けた。
図12に移植後の腎動脈流量を示す。回収後の腎臓の注意深い洗浄後に、再潅流後の高い流量を達成することができた。尿産生はレシピエントにおいて長期間維持されたが、長期観察時間後に低下し、これは数リットルの容量でのフラッシュが、内皮活性化によって遅れた結果に負の影響を及ぼし得ることを示す。さらに、4時間(145.7±29.3ml/分)および8時間(96.73±12.8ml/分)で、流れは、先の実施例1~5におけるように、腹腔および胸腔に導入された冷保存溶液による局所冷却よりも良好であり、25℃~29℃の温度を達成する。実験は、倫理的許可のため、ブタを麻酔下にある状態にしたまま終了した。
実施例8
別の実験において、8匹のブタが実施例4に記載されるように死亡宣告されたが、局所冷却はされなかった。
死後4時間で腎臓を回収し、200~500mlのPerfadexを用いてバックテーブル上で潅流した。いずれも潅流不良~中等度に乏しく、腎のクリアランスも不良であった。
その後、腎臓を腎摘出豚に直ちに移植した。再潅流時の平均流量は、14.15ml/分および90分36.8ml/分であった。すべての腎臓は90分後に青色/黒色を呈し、最後には尿の産生は認められなかった。この実験は対照としての役割を果たし、例えば本発明の実施形態による、いかなる冷却手順および他の処理もなしの場合、4時間のWITが、先の実験によると、移植設定において不十分な性能をもたらすことを示した。
Figure 2022528754000009
実施例9
別の実験では、6匹のブタが上記の技術を用いて死亡宣告された。腹部に挿入した氷スラッシュを使用した局所冷却を2時間後に使用し、その結果、冷却剤として流体を使用した25~29℃および氷を使用した20℃と比較して、体温が37℃から約10~12℃に変化した。
腎臓は、4~5時間の間で変化するWITで回収した。
バックテーブル上で、回収後、10Uのlys-プラスミノーゲンおよび200UのアンチトロンビンIII(ATIII)と混合した72g/Lアルブミン溶液(表I)を含む20mlの溶液を、静脈をクランプした後、腎動脈を通して各腎臓に注射し、次いで溶液を送達した後、動脈に注射した。
腎臓を生体外(ex-vivo)装置に移した。15分後、腎臓あたり1mgのtPA(アルテプラス)および100UのATIIIを注射し、72g/Lアルブミン溶液を含む20mlの溶液(表I)に希釈した後、5mlの4つの部分に分割した。tPAを、20mmHgで開始し、毎回5mmHgずつ増加させながら、20℃の温度で5分間隔で腎動脈に注射した。
tPAの注入完了後、腎臓を、72gアルブミン/Lを含む溶液で潅流し、圧力を5分毎に5mmHgずつ、50~70mmHgまで、または腎臓が清浄されるまで(どちらか早いほう)上昇させた。次いで、温度を12℃に下げ、潅流を20mmHgの潅流圧で1時間続けた。
57g/Lアルブミンを含む溶液(表H)でリンスした後、第2の用量のlys-プラスミノーゲン、続いてtPAおよびATIIIを与え、57gアルブミン/Lの溶液中に希釈し、上記のように動脈を通して連続的に与えた。
次いで、潅流を30分間、圧力20mmHg、温度12℃で続けた。RBCを5~10のhctまで添加する前に、温度を28℃および30mmHgの圧力まで上昇させた。RBCは外部ポンプによって2時間前処理し、溶液に添加する前に白血球フィルタを通して循環させた。これは、腎臓に接触する前に白血球を減少させるために行った。混合アルブミン溶液(57gアルブミン/L、表H)およびRBCを用いた潅流を1時間継続した。次いで、温度を37℃に上昇させ、圧力を70~90mmHgにして1時間評価した。赤血球(RBC)含有溶液から腎臓をすすぎ、新しい57g/Lアルブミン溶液で満たし、温度を15℃に下げた後、移植を行った。
移植は、腎移植直前に自然腎を摘出した豚に実施した。3匹は麻酔から覚醒させた(新倫理的許可は10日間の観察を許容する)。1匹の動物を3日目に調査し、腎臓の検査と新たな血液サンプルを採取した。投与された唯一の免疫抑制は再潅流時のステロイドであった。腎臓は良好に見え、血液中のクレアチニンは615μmol/Lであった。4日目に別のブタを調査したところ、腎も良好であり、血中クレアチニンは884μmol/Lであった。5日目に3番目のブタから試料を採取し、合計8日間追跡した。3頭とも移植腎機能発現遅延(DGF)の徴候を示し、1例では8日後に尿毒症および死亡に至り、、他の2例では3日目および4日目に尿濃縮能の徴候として血中クレアチニンの上昇および尿中クレアチニンの高値が表れ屠殺された。
図13は、6匹のブタのそれぞれについて、再潅流後および90分後の動脈血流を示す。lys-プラスミノーゲンとtPAを加えることにより、腎臓は以前よりも良好にみえ、抵抗は減少し、結果として微小循環が改善した。
図14は一部の腎臓が再潅流後に表面に斑点を示し、時には移植後数時間で青色/黒色の潅流不良な腎臓に発達し、凝固系による再血栓症または内皮に対する血小板/赤血球誘導作用のいずれかを示している。
実施例10
さらに3匹の豚において、実施例9のプロトコールが少数の例外を除いて繰り返された。
回収後、バックテーブル上で、lys-プラスミノーゲンの注入を上記のように行った。15分後、57gアルブミン/L(表H)を含む500mlの溶液中2mgのtPA(アルテプラス)を、腎臓を通してフラッシュした後、それらをex-vivo装置に取り出した。
ex-vivo装置では、腎臓を、72g/Lアルブミンを含む溶液(表I)中、24℃で、圧力を20mmHgから50mmHgと70mmHgとの間まで上昇させながら潅流した。同じ溶液を用いて、潅流を12℃および20mmHgの圧力で2時間続けた。
排水およびすすぎの後、57gアルブミン/Lを含む溶液(表H)を、洗浄したRBCと一緒に添加して、約5~10のhctにし、温度を28℃に変え、圧力を30mmHgにした。新たな用量のlys-プラスミノーゲン、tPA2mgおよびATIII200Uを添加し、温度を32℃に上昇させ、続いて評価のために70mmHgの圧力で15分間潅流した。リンスおよび洗浄後、57g/Lアルブミンを含む溶液(表H)を添加し、温度を15℃に低下させた。3匹すべての豚を麻酔から離脱させ、観察した。2匹の動物は10日間生存し、一方は血中クレアチン166μmol/L、他方は血中クレアチン174μmol/Lを有し、実験終了時の腎臓は正常に見えた。3匹目の豚は移植腎機能発現遅延で6日目に屠殺され、血中クレアチニンは1231μmol/Lであったが、尿中クレアチニンは2000μmol/Lを超え、尿濃縮能が示された。免疫抑制の唯一の手段として、全レシピエントにステロイドを投与した。同種異系拒絶反応の組織学的研究のためにサンプルを採取した。
図15aは、移植10日後の正常に見える腎移植を示している。拒絶反応の肉眼的徴候はない。
図15bは図15aの移植された腎臓の切断面を示し、正常な巨視的構造を示す。
図15cは10日間生存する第2の腎臓の表面を示し、暗点の領域を示し、影響を受けた微小循環を示す。
図15dは図15cにおける移植された腎臓の切断面を示し、下部極における影響を受けた循環を伴う暗い領域を示す。データは微小循環の局所的損傷の危険性が残っているかもしれないが、治療が機能および構造の両方を回復することができることを示す
実施例11
19匹のブタを含むさらなる実験において、サイトカインレベルを3つの群で測定した。サイトカインの吸着剤を全く含まない72g/Lアルブミン溶液(表I)で潅流された生きたドナー腎臓からなるA群(n=5)では、潅流の開始時、3時間、および37℃の終わりに試料を採取した。サイトカインの吸着剤を全く含まない57g/Lアルブミン溶液(表H)で潅流された生きたドナー腎臓からなる群B(n=5)では、潅流の開始時、3時間、および37℃の終わりに試料を採取した。C群(n=9)では、RBCおよび37℃での潅流の前に、72g/Lのアルブミン溶液で90分間、57g/Lのアルブミン溶液で90分間潅流したDCD腎臓からなり、その間すべてサイトカイン吸着剤(Cytosorb、Cytosorbents)を使用した。分析にはELISAキット(Quantikine ELISAキット、R&D Biosystems)を用いた。検出レベル未満のレベルを0に設定し、次いで、各群内の測定レベルの平均レベルを計算した。
図16aは、主に赤血球からのIL-6レベルの変化を示す図である。吸着剤(C群)は、IL-6の全ての徴候を効果的に除去した。
図16bはIL-8レベルの変化を示す図であり、これも主にRBCからのものであり、72g/Lアルブミン溶液よりも57g/Lからのものではない。吸着剤はIL-8(C群)を除去した。
図16cは、主に赤血球からのIL-1βレベルの変化を示す図である。吸着体は、腎臓自体または添加されたRBCのいずれかから寄与したサイトカインの全ての徴候をやはり除去した。
図16dは、主に赤血球からのTNF-αレベルの変化を示す図である。吸着体は、腎臓自体または添加されたRBCのいずれかから寄与したサイトカインの全ての徴候をやはり除去した。示されていないデータはIL-10レベルの分析を含み、ここでは、いずれの群においてもいずれのレベルも検出することができなかった。
Figure 2022528754000010
実施例12
別の実験において、ブタは、上記のプロトコールに従って死亡宣告され、2時間後に氷スラッシュで局所冷却し、4時間後に腎臓回収を開始した。
腎臓は4.5~5時間のWITで回収した。
バックテーブルで、腎臓に10Uのlys-プラスミノーゲンと2mgのtPAをそれぞれ15ml溶液中溶かして注射した。
腎臓をex-vivo装置に配置し、潅流した。潅流溶液は57gアルブミン/Lの濃度のアルブミンを含む表Jに見られる成分を含み、圧力を20mmHgから70mmHgに、5分毎に5mmHgずつ増加させた。600UのATIIIを、2mgのアブシキシマブ(血小板阻害剤)と共に潅流フェーズ(20℃)の間に使用した。
排水し、アルブミン57g/Lを有する表Jの溶液250mlで2回すすいだ後、アルブミン57g/Lを有する表Jの溶液を用いて15℃で2時間、潅流を続けた。
次いで、圧力を30mmHgに上昇させ、温度を28℃に上昇させ、続いて30分間潅流し、その後、赤血球(RBC)を添加した。赤血球(RBC)を、2mgのアブシキシマブと共に800UのATIIIで前処理し、白血球フィルタを通して潅流した後、溶液と混合した。腎臓は、パッチまたは影響された循環なしで、処理により完全に除去された。
Figure 2022528754000011
腎臓を移植し、2匹の豚を7日間追跡してから屠殺した。1つの腎臓に感染が認められた。両豚とも7日目にクレアチニンが上昇し、血中クレアチニンは1115μmol/L、1305μmol/L、尿中クレアチニンは1790μmol/L、4530μmol/Lであった。これはDGFの徴候と解釈される可能性があるが、尿を濃縮する腎機能が改善したとも解釈できる。
図17は約300mosmの浸透圧を有する溶液で潅流し、ATIIIおよび血小板阻害剤を添加した後の流れを示す図である。この図は、以前の実験で見られたよりも、再潅流でのより高い初期流れを示す。
実施例13
別の実験では、実施例12と同様のプロトコールを使用した。
バックテーブルで、15Uのlys‐プラスミノーゲンと3mgのtPAをそれぞれ15ml溶液中に溶かして注射した。
腎臓をex-vivo装置に配置し、57gアルブミン/Lの濃度のアルブミンを有する表Jに見られる成分を含む溶液で潅流した。600UのATIIIを、3mgのアブシキシマブと共に潅流フェーズ(20℃)の間に使用した。20mmHgから70mmHgまで、5分毎に5mmHg、圧を上昇させた。
排水し、アルブミン57g/Lを有する表Jの溶液250mlで2回すすいだ後、アルブミン57g/Lを有する表Jの溶液で、15℃で2時間潅流を続けた。このフェーズの間に、600UのATIIIおよび3mgのアブシキシマブの追加用量を添加した。
次いで、圧力を30mmHgに上昇させ、温度を28℃に上昇させ、続いて30分間潅流し、その後、赤血球(RBC)を添加した。赤血球(RBC)は3mgのアブシキシマブと共に800UのATIIIで前処理し、溶液と混合する前に白血球フィルタを通して潅流した。
2.5時間の潅流後、30mmHgの圧力での流れは147ml/分から138ml/分に減少し、抵抗は増加した。別の800UのATIIIおよび3mgのアブシキシマブを溶液に添加した。流れおよび抵抗は30分間停滞したままであり、次いで流れは増加し、抵抗は減少した。
実施例14
6匹のブタを含む別の実験では、以下のプロトコールを使用した。
まず、ドナーの左腎を働かせたまま、生体ドナーの右腎を摘出し廃棄した。
次に、レシピエントの左腎を回収し、ドナーの右腎を摘出した生体ドナーに直接移植した。
レシピエントの腹部を閉じ、レシピエントは後の移植を待つ間、依然としてレシピエントの右腎が働いているまま、眠っていた。
生体ドナーでは、ドナーに移植したレシピエントの左腎をドナーの血液で再潅流し、尿を産生するまで観察した。ドナーの腹部を閉じた。
次いで、ドナーの心停止を、先の実施例と同様にして生じさせた。
ドナーに移植されたレシピエントの左腎を、4.5~5時間のWIT後に回収した。
バックテーブルで、動脈および静脈の両方をクランプしたまま、腎臓に20UのLys-プラスミノーゲンおよび600UのATIIIを注射した。15分後、4mgのtPaを別の600UATIIIと一緒に注射した。15分後、腎臓をex-vivo潅流装置に接続した。
Figure 2022528754000012
ex-vivo潅流装置において、腎臓を57gアルブミン/Lを含む表Kの溶液で潅流した。70mmHgの圧で5分間潅流した後、潅流圧を30mmHgに下げ、腎臓を30分間潅流した。次いで、圧力を20mmHgに下げ、温度を15℃に下げて、腎臓を2時間潅流した。
並行して、洗浄した赤血球(RBC)を、室温で1時間、外部白血球フィルタを通して循環させた。循環赤血球(RBC)に、1000UATIII、3mgアブシキシマブ、および4mgアルガトロバン(直接抗トロンビン阻害剤)を添加した。
サイトカインを吸着するCytosorb(登録商標)フィルタおよびエンドトキシンを吸着するAlteco(登録商標)フィルタをNaClと、表Kの溶液で洗浄し、次いで潅流機に取り付けた。
潅流溶液の温度を28℃に上昇させ、圧力を30分間30mmHgに上昇させた。上記のRBCを溶液に添加し、フィルタを、例えば図5に示すように接続した。環境を28℃で安定化させた後、温度を32℃に上げた。腎臓をこの温度で3時間潅流した。
次に、1000UのATIII、3mgのアブシキシマブおよび8mgのアルガトロバンを溶液に添加した。32℃で1.5時間潅流した後、1.5mgのアブシキシマブ、4mgのアルガトロバン、および1000UのATIIIを溶液に加えた。次いで、温度を15℃に下げ、圧力を20mmHgに下げて、腎臓を30分間潅流した。
その後、腎臓を取り出し、レシピエントの腎臓をレシピエントに戻して移植し、残りのレシピエントの生来の腎臓を摘出した。流れと抵抗は図18からわかる。
実施例15
9匹のブタを含む別の実験では、実施例14と同じプロトコールを使用した。
ドナーに移植されたレシピエントの左の腎臓を、4.5~5時間のWIT後に回収した。
バックテーブルで、腎臓に、動脈および静脈の両方をクランプしたままで、30UのLys-プラスミノーゲンおよび600UのATIIIを注射した。15分後、6mgのtPaを別の600UATIIIと一緒に注射した。もう15分後、腎臓を潅流機に接続した。
ex-vivo潅流装置において、腎臓を57gアルブミン/Lを含む表Kの溶液で潅流した。75mmHgの圧で5分間潅流した後、潅流圧を25mmHgに下げ、腎臓を30分間潅流した。圧力を20mmHgに下げ、温度を15℃に下げ、腎臓を2時間潅流した。
並行して、洗浄した赤血球(RBC)を、室温で1時間、外部白血球フィルタを通して循環させた。1000UATIII、3mgのアブシキシマブおよび4mgのアルガトロバンを循環赤血球に添加した。
サイトカインを吸着するCytosorb(登録商標)フィルタおよびエンドトキシンを吸着するAlteco(登録商標)フィルタをNaClと、表Kの溶液で洗浄し、次いで潅流機に取り付けた。
潅流溶液の温度を28℃に上昇させ、圧力を30分間30mmHgに上昇させた。上記の赤血球(RBC)を溶液に添加し、フィルタを接続した。環境を28℃で安定化させた後、温度を32℃に上げた。腎臓をこの温度で3時間潅流した。
次いで、1000UのATIII、3mgのアブシキシマブおよび8mgのアルガトロバンを腎臓に添加した。32℃で1.5時間潅流後、1.5mgのアブシキシマブ、4mgのアルガトロバン、1000UのATIIIを腎臓に加えた。
実施例16
実験15と同様に、8匹のブタを含む別の実験では、ブタを先の実施例14および15と同じプロトコールに従って処置した。移植後、豚を麻酔から回復させ、最長3ヶ月間追跡調査した。10日目および3ヵ月目の血漿中のクレアチニン、ならびに同じ時点の尿中のクレアチニンを、図19~22に示すようにデータで追跡した。クレアチニンは最初の1週間以内に正常化し、3か月の生存期間中正常に保たれ、透析を必要としなかった。図23は典型的な腎臓を示し、再調整(リコンディショニング)および移植後3か月調査し、線維症または萎縮の徴候なしに十分に潅流した。図24では、腎臓が取り除かれ、湾曲部に沿って切断されており、正常な腎実質が示されている。
実施例17
1匹の豚に麻酔を施し、正常換気を達成させた後、人工呼吸器をオフにした。約15分後に心不全が出現した。室温で2時間後、破砕氷を腹腔内に導入した。
死亡4時間後に肝臓1個の回収を開始した。
バックテーブルで、肝臓を500mlの冷Storeprotect(登録商標)溶液で門脈を通してフラッシュした。肝動脈と門脈のそれぞれに、1200UATIIIと共に60ULys-プラスミノーゲンを注入し、次に大動脈、門脈および大静脈(caval vein)を15分間クランピングした。
肝臓をex-vivo潅流装置に接続し、72gアルブミン/Lを有する表Lの溶液で潅流した。その後、肝臓を潅流装置に連結し、潅流を開始した後、1200UATIIIと併せて12mgtPaを肝動脈と門脈に注入した。
Figure 2022528754000013
温度24℃にて、肝重量1gにつき、門脈内0.75ml/min/g、動脈内0.25ml/min/gで潅流を開始した。最初に門脈を10分間フラッシュした後、動脈流をオンにし、溶液を完全に酸素化した。
アブシキシマブを含む血小板阻害剤12mg、およびアルガトロバンを含む直接トロンビン阻害剤16mgを動脈および門脈に注射した。5分毎に5mmHgずつ圧を20mmHgから90mmHgまで上昇させた。肝臓が清浄になった後、圧力を30mmHgに低下させ、肝臓を22℃~24℃でさらに30分間潅流した。次に、温度を15℃に下げ、流量を門脈で0.75ml/分/g、動脈で0.25ml/分/gに2時間維持した。次に温度を33℃に上げ、RBCを加え、圧力を75mmHgに上げた。潅流は3時間行い、アブシキシマブ24mg+アルガトロバン32mgを動脈と門脈の両方で1時間毎に投与した。肝臓は図25および26に見られるように、実験の終わりに潅流欠損を有した。
実施例18
3匹の豚に麻酔を施し、正常換気を達成させた後、人工呼吸器をオフにした。約15分後に心停止が出現した。室温で2時間後、破砕氷を腹腔内に導入した。
死亡4時間後に肝臓の回収を開始した。
バックテーブル上で、肝臓を、500mlの冷Storeprotect(登録商標)溶液で、門脈を通してフラッシュした。肝動脈、門脈のそれぞれに、60Ulys-プラスミノーゲンと1200UATIIIを注入し、次に大動脈、門脈および大静脈を15分間クランピングした。その後、1200UATIIIと共に12mgtPAを肝動脈と門脈に注射した。15分間待った後、肝臓を潅流装置に接続した。
Figure 2022528754000014
潅流は、表Mによる溶液によって行った。潅流は、24℃の温度にて、門脈0.75ml/分/gおよび動脈0.25ml/分/g動脈で開始した。最初に門脈を10分間フラッシュした後、動脈潅流流をオンにし、溶液を完全に酸素化した。アブシキシマブ12mgとアルガトロバン16mgを動脈内および門脈内に注入した。5分毎に5mmHgずつ圧を20mmHgから90mmHgまで上昇させた。肝臓が清浄になった後、圧力を30mmHgに下げ、肝臓を22℃~24℃の温度でさらに30分間潅流した。次に、温度を15℃に下げ、流量を門脈で0.75ml/分/g、動脈で0.25ml/分/gに2時間維持した。次に温度を33℃に上げ、RBCを加え、圧力を75mmHgに上げた。潅流は3時間行い、アブシキシマブ24mg+アルガトロバン32mgを動脈と門脈の両方で1時間毎に投与した。
図29は、実験中の動脈内の流れを示す。実質内の斑点から肝臓がクリアになった。
検討
実施例1では、循環死(DCD)後4時間を超える温虚血時間(WIT)に供されたドナーからの腎臓を再調整(recondition)する基本原理を、最小必須培地(MEM)および高張剤としてアルブミンを含む溶液を用いて調査した。常温体外肝灌流は、持続灌流装置LifePort(LP)または低温保存(CS)保存対照よりも有意に良好な血流および尿産生をもたらした。
実施例2では、動脈と潅流液の両方に、ヘパリン、組織からATPを除去するプリン作動性阻害剤であるアピラーゼ、およびtPA(アルテプラス)を注入した後に、回収したDCD腎を広範囲にフラッシュすると、同様に構成された潅流液を用いて、血管抵抗および血流がわずかに改善し、腎臓を完全に除去することができなかった。アピラーゼは、微小循環によってフィブリン凝固物が除去された後に腎臓に運ばれる可能性がある。
実施例3ではリドカインを添加したが、これは90分で血流を改善し、おそらくNaポンプの阻害により安定化された膜機能を示唆する。
実施例4ではさらに、32℃でRBCを用いた潅流時間の延長が可能であること、レシピエントブタに移植後8時間にわたっていくつかの腎臓を観察したこと、次の実施例5では、潅流時間が移植腎において機能が維持されたまま11時間に延長されたことが注目された。
実施例6では、より高いコロイド浸透圧(アルブミン80g/L)を有する薬剤が4~6時間のWITで115ml/分を超える良好な腎流を有する腎臓を産生することが見出された。レシピエントを移植後8時間追跡した。
実施例7では、局所冷却を、死後2時間で、冷リンガー溶液から氷に変えた。これにより、冷リンガーを用いた25℃~29℃と比較して、中核体温は20℃に低下した。血流量は移植後4時間、8時間ともに有意に改善した。
局所冷却を受けておらず(実施例8を参照のこと)、そしてバックテーブル潅流のみを受けているブタは、再潅流(14.15ml/分)または90分(36.8ml/分)で良好な流れを示さなかった。
実施例9および10では、温度およびコロイド浸透圧を変化させ、通常の氷の代わりに氷スラッシュを導入した。採集前に10~12℃までの体温に達することができた。lys-プラスミノーゲンをtPAと併用して腎臓を治療することにより、腎臓はより良好にクリアになり、血管抵抗は大幅に改善した。線維素溶解治療を施した血管の再血栓症を予防するためにATIIIを投与した。アルテプラーゼを使用したが、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼおよびテネクテプラーゼのような任意の線維素溶解薬を使用することができた。この変更は、先の実施例で見られたよりも良好に腎臓を除去した。これらの腎臓のうちいくつかは、移植時に生来の腎臓の腎摘出術が実施された後、機能している腎臓とともに10日間生存し、DCDドナー由来の腎臓を死後4時間使用できることが証明された。評価期間中のRBC処理は、IL‐6,IL‐8、IL-1β,TNF‐αなどのサイトカインの放出に寄与する可能性があり、これらは全て、炎症反応や虚血再潅流に関与していることが判明した。特定の吸着剤(Cytosorb)を使用することにより、これらのサイトカインを完全に除去することができた(実施例11参照)。
続く実施例12および13において、本発明者らは血小板阻害剤(例えば、アブシキシマブ)が保存溶液およびRBCに、それらが潅流溶液と混合される前に添加されると、非常に良好な流れを生み出したことに注目した。さらに、RBCによる長期潅流中の血管抵抗の増加の徴候は、ATIIIおよびアブシキシマブを溶液に添加することによって改善することができ、これは、線維素溶解が終了した後に、凝固系および血小板接着の両方による再血栓症を予防することが所望されることを示す。ATIIIの用量は、先の実施例と比較して、これらの実施例において増加した。
実施例14および15では、アルガトロバン等の直接トロンビン阻害剤を添加することにより、結果がさらに改善され、RBCフェーズの間の血流の減少および血管抵抗の増加の危険性を回避した。
実施例16では、実施例14及び15に従って再調整した腎臓を首尾良く移植し、3ヶ月まで追跡した結果、再調整した腎臓も関連する臨床設定で機能していることが証明された。実施例14、15および16で使用された新規移植モデルは、最初に移植された腎臓が、心臓死が誘導される以前にレシピエントからドナーに移されたという事実のために、同種拒絶機構が排除されるということを意味する。再調整された腎臓がレシピエント豚の唯一の腎機能であったにもかかわらず、豚は透析を必要とせずに生存した。
実施例17では、循環死(DCD)後4時間を超える温虚血時間(WIT)施されたドナーからの腎臓における我々の実験を検証し、肝臓を再調整する基本原理を検討した。この溶液は、高張性剤としてアルブミンを含むがグルコン酸の代わりにラクトビオン酸のナトリウム塩を使用し、腎臓に効果があると証明された同様の内容物を有した。24℃での最初のフラッシュと潅流は実質を大部分除去したが、赤血球(RBC)後の評価終了時には肝臓は潅流欠損を有していた。
実施例18において、tPAおよびATIIIを、腎臓におけるプロトコールと同様に、バックテーブル上で送達した。生体外正常熱潅流は、対照DCD肝臓よりも良好な流れおよびより低い抵抗を伴って、クリアな実質をもたらした。著者らは、6、5時間の潅流後、胆汁産生および対照動物よりも低い乳酸レベルに注目し、肝臓は欠損なしに良好に潅流されたように見えた。
特許請求の範囲において、「含む/有する」という用語は他の要素又はステップの存在を排除するものではなく、更に、個々に列挙されているものの、複数の手段、要素又は方法ステップは例えば単一のユニットによって実施されてもよい。加えて、個々の特徴は異なる請求項又は実施形態に含まれてもよいが、これらは場合によっては有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれることは特徴の組み合わせが、実現可能でない及び/又は有利ではないことを意味するものではない。加えて、単数の言及は複数を排除するものではない。用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(first)」、「第2の(second)」等は複数を排除するものではない。クレーム中の参照符号は、単に明確な例として提供されるにすぎず、いかなる方法によってもクレームの範囲を限定するものと解釈してはならない。
本発明は特定の実施形態および実験を参照して上述されたが、本明細書に記載された特定の形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上記で特定されたもの以外の他の実施形態はこれらの添付の特許請求の範囲内で等しく可能である。

Claims (15)

  1. ドナー、例えば循環停止ドナー(DCD)から採取した臓器の回復方法であって、
    前記ドナーが循環停止してから少なくとも2時間後に前記ドナーから前記臓器を回収するステップと、
    採取後に前記臓器にlys-プラスミノーゲンを提供するステップであって、前記lys-プラスミノーゲンが第1の高張性溶液中に含まれる前記ステップと、
    組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)をlys-プラスミノーゲンの提供と同時に又はその後に提供するステップであって、前記組織プラスミノーゲン活性化因子は第2の高張性溶液中に含まれる前記ステップと、
    第1の回復段階で、5~25℃の低温で、アルブミンと電解質を含む第3の高張性流体を前記臓器に循環させるステップと、
    第2の回復段階で、28℃~37℃の間の温度で、酸素化赤血球(RBC)を含む第4の高張性流体を前記臓器に循環させるステップと、
    従来の基準によって、前記臓器を評価するステップ
    を含む、方法。
  2. 前記第1の回復段階が、
    前記第3の高張性流体を前記臓器を通して循環させるステップを含み、前記第3の高張性流体は50g/Lと120g/Lとの間の濃度のアルブミンを含み、それによって、循環圧力が、例えば、約20mmHgから90mmHgまで、30分から75分間、例えば、5分当たり5mmHgのステップで増加されることを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第2の回復段階が、
    前記第2の高張性流体を前記臓器を通して循環させるステップを含み、前記第4の高張性流体は50g/Lと120g/Lとの間の濃度のアルブミンを含み、それによって、循環圧力が、例えば、約20mmHgから90mmHgまで、30分から75分間、例えば、5分当たり5mmHgのステップで増加されるステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記臓器を4℃~16℃の低温で、保存液を30mmHg未満の圧力で1時間~7時間の間前記臓器を通して循環させながら保存するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記保存するステップは、前記第2の回復段階の後に、または各前記回復段階の間に実行される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1および第2の高張性流体の少なくとも一方が、生理学的濃度の電解質およびアルブミンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記第1および第2の高張性流体が、50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記第1、第2、第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つが、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害薬と、アルガトロバンのような直接的トロンビン阻害薬と、プロテインCと、プロテインSと、アブシキシマブなどの血小板阻害薬のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つが、白血球フィルタを通って循環される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つが、サイトカインの吸着のために、サイトソーベンツなどのサイトカイン吸着器と接触される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記第3および第4の高張性流体のうちの少なくとも1つが、エンドトキシンの吸着のために、LPS吸着器などのエンドトキシン吸着器と接触される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記ドナーが少なくとも3時間循環停止した後、前記ドナーから前記臓器を回収するステップを含み、前記少なくとも3時間には、前記ドナーの腹部に導入された冷たい生理食塩水、氷、またはアイススラッシュによる2時間以下の局所冷却が含まれる、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
  13. ドナー、例えば心停止ドナー(DCD)から採取した臓器の回収方法であって、
    前記ドナーが循環停止してから少なくとも4時間後に、前記ドナーから前記臓器を回収するステップと、
    採取後に前記臓器にLys-プラスミノーゲンを提供するステップであって、前記lys-プラスミノーゲンが、50g/L~70g/Lの間の濃度のアルブミンと、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤とを含む第1の高張性溶液中に含まれる前記ステップと、
    組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を前記臓器に、lys-プラスミノーゲンの提供と同時又はその後に提供するステップであって、前記組織プラスミノーゲン活性化因子は、50g/L~70g/Lの間の濃度のアルブミンと、アンチトロンビンIIIのような凝固阻害剤とを含む第2の高張性溶液中に含まれる前記ステップと、
    第1の回復段階において、50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンと、電解質と、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤とを含む第3の高張性流体を、圧力を20mmHgから70mmHg~90mmHgに上昇させながら、5℃~25℃の低温で、前記臓器を通して循環させるステップと、
    第2の回復段階において、赤血球(RBC)と、50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンと、電解質と、アンチトロンビンIIIなどの凝固阻害剤とを含む第4の高張性流体を、30℃~37℃の温度で、前記臓器を通して循環させるステップと、
    従来の基準によって前記臓器を評価するステップ
    を含む、方法。
  14. ドナーから、例えば循環停止ドナー(DCD)から採取された臓器を回復するための装置であって、
    処置される臓器を収容するための容器(31)と、
    静脈を開いた前記臓器の動脈に接続するためのコネクタ(32)と、
    前記臓器を通して前記容器内に存在する流体を循環させるために、前記容器と前記コネクタ(32)との間に接続された循環ポンプ(43)と、
    ドレン弁(42)を介して前記容器に接続されたドレン(41)と、
    前記容器に流体を供給するための流体弁(55、56、57、58、59)を介して前記容器(31)に接続された少なくとも1つのバッグ(50、51、52、53、54)と、
    前記ポンプ(43)によって汲み上げられた流体を酸素化するための酸素供給器(47)と、
    前記ポンプによって汲み上げられた前記流体の温度を制御するためのヒータ/クーラ(48)と、
    前記ポンプによって汲み上げられた前記流体中の白血球を除去するための白血球フィルタ(49)と、
    前記容器の前記流体中のエンドトキシンを除去するように配置されたエンドトキシン吸着器(95)と、
    前記容器の前記流体中のサイトカインを除去するように配置されたサイトカイン吸着器(96)と、
    前記容器の前記流体中の白血球を除去するように配置された白血球フィルタ(98)
    を含む、装置。
  15. lys-プラスミノーゲン、tPA、電解質、および50g/L~120g/Lの濃度のアルブミンを含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法を実施するための流体。
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