JP2022522357A - 羊水由来の細胞外小胞及び創傷治癒のためのその使用 - Google Patents

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Abstract

記載する本発明は、対象における創傷治癒のための組成物及び方法を提供する。この方法は、羊水由来の細胞外小胞及び薬学的に許容される担体を含む治療量の医薬組成物を投与することを含む。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願62/812,011(2019年2月28日出願)の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が援用される。
記載する発明は、一般的に、精製された羊水由来の細胞外小胞(EV)、EVを含む組成物、及びそれらの使用に関する。
羊水成分
胎児の付属器(接続部分を意味する)は、胎盤、卵膜、及び臍帯からなる。満期では、胎盤は、直径15~20cm、厚さ2~3cmの円盤状である。羊膜、羊膜及び絨毛膜は、羊膜腔内で胎児を囲み、子宮内膜脱落膜は、絨毛膜ディスクの縁から延伸する。絨毛膜板(胚外組織の胎児成分)は、羊膜腔に面する多層構造である。それは2つの異なる構造からなる:羊膜(上皮、緻密層、羊膜中胚葉、海綿状層からなる)及び絨毛膜(間葉と絨毛外増殖性栄養膜細胞領域からなり、この領域は、合胞体栄養細胞によって覆われているかまたは覆われていない様々な量のラングハンス類線維素に挿入されている)。
絨毛は、絨毛膜板に由来し、基板の栄養膜と母体の子宮内膜を介して胎盤を固定する。母体側から、絨毛膜絨毛内の基板の突起が胎盤中隔を生成し、これは実質を不規則な子葉に分割する(Parolini,O. et al.,2008,Stem Cell,2008,26:300-311)。
一部の絨毛は胎盤を基板に固定するが、他の絨毛は絨毛間の空間で自由に終結する。絨毛膜絨毛は、異なる機能と構造を呈する。満期の胎盤では、幹絨毛は、線維芽細胞、筋線維芽細胞、及び分散組織マクロファージ(ホーフバウアー細胞)からなる明確な筋肉壁と結合組織を備えた胎児血管の内部コアを示す。成熟した中間絨毛と満期絨毛は、毛細血管と薄い間葉からなる。基底膜は、合胞体栄養細胞と呼ばれる途切れのない多核層から間質コアを分離する。合胞体栄養細胞とその基底膜の間は、単一または凝集したラングハンス栄養膜細胞層であり、これは一般的に栄養膜細胞層と呼ばれる(Parolini,O.et al.,2008,Stem Cell,2008,26:300-311)。
胎盤は、3つの層を含む:いずれも胚に由来する羊膜、絨毛膜、及び母体組織に由来する脱落膜である。絨毛膜は、栄養膜層に由来し、羊膜は、受精後8日という早い時期に胚のすべての胚葉を生じさせるエピブラストに由来する。
胎児胎盤の4つの領域を区別することができる:羊膜上皮領域、羊膜間葉領域、絨毛膜間葉領域、及び絨毛栄養膜領域。
羊膜
羊膜は、内側の上皮層と外側の結合組織層からなる薄い無血管の膜であり、臍帯上で胎児の皮膚と隣接している。外層は、細胞内マトリックスに囲まれたヒト羊膜間葉系間質細胞(hMSC)を含む(Grzywocz,Z.et al. Folia Histochemica et Cytobiologica(2014)52(3):163-170)。胎児に最も近い内層は羊膜上皮(AE)であり、これは途切れのない単層の平らな立方上皮細胞及び円柱上皮細胞であり、羊水と接触している。それは、別個の基底膜に付着しており、この基底膜は羊水中胚葉(AM)に接続している。上皮に最も近い羊水中胚葉では、コラーゲンI及びIIIならびにフィブロネクチンからなる無細胞の緻密層が識別可能である。AMの深部では、分散した線維芽細胞様間葉系細胞と、まれなマクロファージのネットワークが観察される。羊膜の間葉層には2つの細画分が含まれていることが報告されており、1つは羊膜間葉系幹細胞としても知られる間葉表現型を含み、もう1つは単球様細胞を含む。羊膜には血管や神経がない。羊膜は、羊水からの拡散によって直接その栄養を得る。
絨毛膜
緩く配置されたコラーゲン繊維の海綿状層は、羊膜中胚葉と絨毛膜中胚葉を分離する。絨毛膜(絨毛葉)は、中胚葉と栄養膜の領域からなる。絨毛膜と羊膜中胚葉は組成が似ている。大きくて不完全な基底膜は、絨毛膜中胚葉を絨毛外栄養膜細胞から分離する。後者は、基板に存在する栄養膜細胞と同様に、フィブリノイド層内に分散しており、増殖の免疫組織化学的マーカーを発現する。ラングハンスフィブリノイド層は、通常、妊娠中に増加し、2つの異なる型のフィブリノイドからなる:内側のマトリックス型(よりコンパクト)と外側のフィブリン型(より網状)である。胎盤の端及び基板において、栄養膜は、脱落膜と広範囲に噛み合っている(Cunningham,F.et al.,The placenta and fetal membranes,Williams Obstetrics,20th ed. Appleton and Lange,1997,95-125;Benirschke,K. and Kaufmann,P. Pathology of the human placenta. New York,Springer-Verlag,2000,42-46,116,281-297)。
羊膜由来幹細胞
羊膜自体には、様々な層で分化することができる多能性細胞が含まれている。研究では、神経細胞とグリア細胞、心臓の修復、さらに肝細胞におけるそれらの可能性が報告されている。研究によると、ヒト羊膜上皮細胞は幹細胞マーカーを発現し、3つの胚葉すべてに分化する能力を有している。これらの特性、細胞の分離の容易さ、及び胎盤の利用可能性から、羊膜は、移植及び再生医療のための有用で議論の余地のない細胞源である。
羊膜上皮細胞は、当技術分野で公知のいくつかの方法によって羊膜から単離することができる。そのような方法の1つによれば、羊膜を、下にある絨毛膜から剥がし、トリプシンまたは他の消化酵素で消化する。分離された細胞は、プラスチックまたは基底膜でコーティングされた培養皿に容易に付着する。培養は、通常、5%~10%の血清及び上皮成長因子(EGF)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などの単純培地で確立し、培地中で細胞はロバストに増殖し、典型的な立方上皮形態を示す。通常、増殖が止まる前に2~6回の継代が可能である。羊膜上皮細胞は、低密度では十分に増殖しない。
羊膜には、異なる表面マーカーを有する上皮細胞が含まれており、このことは表現型の不均一性を示唆している。単離直後、ヒト羊膜上皮細胞は非常に低レベルのヒト白血球抗原(HLA)-A、B、Cを発現し;しかしながら、2継代までに、有意なレベルが観察される。ヒト羊膜上皮細胞上の追加の細胞表面抗原として、ATP結合カセットトランスポーターG2(ABCG2/BCRP)、CD9、CD24、E-カドヘリン、インテグリンα6及び1、c-met(肝細胞増殖因子受容体)、ステージ特異的胚性抗原(SSEA)3及び4、ならびに腫瘍拒絶抗原1-60及び1-81が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト羊膜上皮細胞には存在しないと考えられる表面マーカーとして、SSEA-1、CD34、及びCD133が挙げられ、一方、CD117(c-kit)及びCCR4(CCケモカイン受容体)などの他のマーカーは陰性であるか、または一部の細胞で非常に低いレベルで発現している場合がある。初期の細胞分離株は非常に低レベルのCD90(Thy-1)を発現するが、この抗原の発現は、培養中に急速に増加する(Miki,T.et al.,Stem Cells,2005,23:1549-1559;Miki,T.et al.,Stem Cells,2006,2:133-142)。
表面マーカーに加えて、ヒト羊膜上皮細胞は、オクタマー結合タンパク質4(OCT-4)SRY関連HMGボックス遺伝子2(SOX-2)、及びNanogなどの多能性幹細胞の分子マーカーを発現する(Miki,T.et al.,Stem Cells,2005,23:1549-1559)。
ヒト羊水間葉系細胞(hAMSC)及びヒト絨毛間葉系細胞(hCMSC)は、胚外中胚葉に由来すると考えられている。hAMSCとhCMSCは、それぞれ羊膜と絨毛膜の中胚葉、第1期、第2期、及び第3期の中胚葉から分離することができる。hAMSCの場合、分離は、通常、母体細胞の存在を最小限に抑えるために、卵膜のたわんだ部分から解剖された羊膜を用いて行う。例えば、均質なhAMSC集団は、2段階の手順で取得することができ;これにより、細かく刻んだ羊膜組織をトリプシンで処理してhAECを除去し、残りの間葉系細胞を消化によって(例えば、コラゲナーゼで、またはコラゲナーゼとDNaseで)遊離させる。妊娠期の羊膜からの収量は、組織1グラムあたり約100万個のhAMSC及び10倍以上のhAECである(Casey,M. and MacDonald P.,Biol Reprod,1996,55:1253-1260)。
ジスパーゼで栄養膜層を機械的及び酵素的に除去した後、第1及び第3期の絨毛膜の両方からhCMSCを分離する。次いで、絨毛膜中胚葉組織を消化する(例えば、コラゲナーゼで、またはコラゲナーゼとDNaseで)。間葉系細胞はまた、外植片培養によって絨毛膜胎児絨毛から分離されているが、母体の汚染の可能性が高い(Zhang,X.,et al.,Biochem Biophys Res Commun,2006,340:944-952;Soncini,M.et al.,J Tissue Eng Regen Med,2007,1:296-305;Zhang et al.,Biochem Biophys Res Commun,2006,351:853-859)。
培養hAMSCとhCMSCの表面マーカー特性、及び成人骨髄からの間葉系間質細胞(MSC)は類似している。
羊水(AF)
羊水は、胎児の成長と健康状態に必要な機械的保護、栄養素、及びその他の分子を提供する複雑で動的な生物学的流体である(Cho,C-K.J.,et al,“Proteomics Analysis of Human Amniotic Fluid,” 2007 Molecular & Cellular Proteomics 6:1406-1415)。AFの量的及び質的完全性は、妊娠中のヒト胎児の正常な発育に不可欠である。
胚発生の間、羊水腔は受精後7~8日で最初に出現し、妊娠初期では、羊水は、主に卵膜を通過する母体血漿に由来する(Rennie,K.et al.,“Applications of amniotic membrane and fluid in stem cell biology and regenerative medicine,” Stem Cells Intl.(2012)article 721538)。胎児の尿は、妊娠8~11週で最初に羊水空間に入り、妊娠の後半では、胎児の尿が羊水の主な原因物質となる(同上)。この時点で、胎児の皮膚の角質化が完了し、皮膚を通過する水分輸送が減少し、AF浸透圧が低下する(同上)。妊娠の残りの期間、体液量は、胎児の尿産生、口腔、鼻、気管及び肺液の分泌、胎児の嚥下、ならびに膜内経路の寄与を含む様々なメカニズムによって決定される(同上)。
AFには、水、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、乳酸塩、ピルビン酸塩、酵素、成長因子、ホルモン、及び電解質が含まれている(Cho,C-K.J.,et al,“Proteomics Analysis of Human Amniotic Fluid,” Molecular & Cellular Proteomics(2007)6:1406-1415;Rennie,K.et al.,“Applications of amniotic membrane and fluid in stem cell biology and regenerative medicine,” Stem Cells Intl.(2012)article 721538)。AFの主成分は水であるが、その全体的な組成は妊娠中に様々に異なっている(Roubelakis,MG,et al.,“Amniotic fluid and amniotic membrane stem cells: marker discovery,’Stem Cells Intl(2012)article 107836)。さらに、胎児からAFへの体液分泌物は様々な胎児細胞を運び、胎児の皮膚、胃腸、呼吸器、尿路、羊膜に由来する細胞の不均一な集団をもたらす(Rennie,K.et al.,“Applications of amniotic membrane and fluid in stem cell biology and regenerative medicine,” Stem Cells Intl.(2012)article 721538)。胎児が発育すると、羊水の量と組成が大幅に変化し、様々な在胎週数で採取した羊水試料で検出される細胞の補体はかなり異なる。
羊水細胞(AFC)は、3つの胚葉に由来する不均一な集団を表す。これらの細胞は上皮起源であり、発生中の胚または羊膜幹細胞として特徴付けられる羊膜の内面のいずれかに由来する(Roubelakis,MG,et al.,“Amniotic fluid and amniotic membrane stem cells:marker discovery,” Stem Cells Intl(2012)article 107836)。AFCは主に、形態学的特性、増殖特性、及び生化学的特性に基づいて分類された接着細胞の3つの群からなる:胎児の皮膚及び尿に由来する立方体~円柱状の細胞である上皮様(E型)細胞;卵膜に由来する羊水(AF型)細胞;ならびに主に線維性結合組織に由来する線維芽(F型)細胞。優勢な細胞型は、ケラチンとビメンチンを共発現するAF型と思われる。いくつかの研究では、ヒト羊水幹細胞(AFSC)を、通常の羊水穿刺中に回収された少量の第2期AFから取得することができることが報告されている。AFSCの分離は、以下のように分類することができる:(i)最初のコロニーが現れるまで初代培養を7日以上静置する単一ステップ培養プロトコル;(ii)培養5日後に付着していない羊膜細胞を回収し、さらに増殖させる、2段階の培養プロトコル;(iii)CD117(c-kit受容体)の細胞表面マーカーの選択;(iv)初期培養で形成された初期間葉系前駆細胞コロニーの機械的単離;及び(v)線維芽細胞様コロニーを単離するための短期間の培養。これらのステップに従って単離されたAFSCの大部分は、多能性間葉系表現型を共有し、成人のMSCと比較して高い増殖能と幅広い分化能を示した(Roubelakis,MG,et al.,“Amniotic fluid and amniotic membrane stem cells:marker discovery,” Stem Cells Intl(2012)article 107836)。
AFSC馴化培地の詳細な分析により、LiminexのMAPテクノロジーを使用して血管新生促進因子と血管新生阻害因子の存在が明らかになった。血管内皮増殖因子(VEGF)、間質細胞由来因子1(SDF-1)、インターロイキン8(IL-8)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、及び2つの血管新生阻害剤であるインターフェロンγ(IFNγ)とインターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10)は、分泌型タンパク質として同定されている(同上)。比較的少数のAFSCが、血管新生促進性成長因子及びサイトカインの検出可能な量を分泌するのに十分であることが示された(同上)。
ヒト羊水プロテオーム
妊娠16~18週の女性に由来するヒトAF試料の分析により、アルブミンがAFのタンパク質含有量のほぼ70%を構成し、免疫グロブリンが2番目に豊富な画分であることが示された(Cho,C-K.J.,et al,“Proteomics Analysis of Human Amniotic Fluid,” 2007,Molecular & Cellular Proteomics 6:1406-1415)。Choらは、羊水中の754個の別個の遺伝子から842個のタンパク質を、また、特徴未決定の遺伝子から88個のタンパク質を同定した。タンパク質を、強陰イオン交換(SAX)法及び強陽イオン交換(SCX)法から同定されたユニークなペプチド数によってソートしたが、この方法は、タンパク質量の半定量的測定法として一般的に受け入れられている。ユニークなペプチド数が最も多い羊膜液中の上位15のタンパク質は、降順で、アルブミン、免疫グロブリン、フィブロネクチン、セロトランスフェリン、補体C3、α1-アンチトリプシン、セルロプラスミン、αフェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、ペリオスチン、アポリポタンパク質A-1、アンチトロンビンIII、トランスフォーミング増殖因子β誘導タンパク質ig-h3前駆体、α1-ミクログロブリン、及びプラスミノーゲンであった。比較すると、血漿中の上位15のタンパク質は、降順で、アルブミン、免疫グロブリン、セロトランスフェリン、フィブリノーゲン、α1-ミクログロブリン、α1-アンチトリプシン、補体C3、ハプトグロビン、アポリポタンパク質A-1、アポリポタンパク質B、α1-酸糖タンパク質、リポタンパク質、H因子、セルロプラスミン、及び補体C4である。
メタボロミクス
標準的な生化学的変数は、妊娠中絶した妊娠7~12週の正常な妊娠の女性から経膣超音波ガイド羊水穿刺によって得られた羊水及び胚外体腔液の純粋な試料中で測定した。妊娠の第1期では、ナトリウム、カリウム、及び重炭酸塩のレベルは、羊水中で有意に高かったが、塩化物、尿素、ビリルビン、タンパク質、アルブミン、グルコース、クレアチニン、カルシウム、及びリン酸は、胚外体液中で高濃度に存在していた(Campbell,J.et al.,“Biochemical composition of amniotic fluid and extrambryonic coelomic fluid in the first trimester of pregnancy,” Br. J.Obstet. Gynaecol.(1992)99(7):563-565)。
1H-NMRベースの代謝特性を適用して、妊娠中に健康な母親の羊水と血漿中で発生する代謝変化を追跡した(Orczyk-Pawilowicz,et al,“Metabolomics of human amniotic fluid and maternal plasma during normal pregnancy,” PLos ONE(2016)11(4):e0152740)。妊娠の最初の3分の2の期間に、母親が同化状態にあることが確立される。妊娠第3期には、胎児で集中的な同化作用が起こり、母体の代謝が異化作用に切り替わる。AFでは、妊娠第2期から第3期への移行は、グルコース、カルニチン、アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、メチオニン、チロシン、及びフェニルアラニン)のレベルの低下と、クレアチニン、コハク酸、ピルビン酸、コリン、N,N-ジメチルグリシン、及びウロカニン酸のレベルの上昇に関連していた。血漿では、妊娠第2期から第3期への進行は、グリセロール、コリン、及びケトン体(3-ヒドロキシ酪酸及びアセト酢酸)のレベルの増加に関連していたが、一方、ピルビン酸濃度は有意に減少していた。乳酸とピルビン酸の比率はAFで減少し、血漿では増加していた。研究者らは、これらの結果は、胎児の成長ダイナミクスの変化、すなわち、かなり高い同化プロセスの速度を必要とする速い体重増加段階への移行に関連している可能性が最も高いと結論付けた。血漿とは対照的に、AFでのアミノ酸レベルの有意な低下は、胎児の成熟と、タンパク質合成に必要な基本的なビルディングブロックの需要の増加に関連している可能性がある。
羊水及び羊水組織には、タンパク質、脂質、炭水化物、及び電解質など、多数の活性生体分子が含まれており;そのうちのいくつかは、酵素、ホルモン、及び成長因子として機能し得る。成長因子は通常、多様な生物学的効果を有し得るタンパク質であるが、成長促進細胞のシグナル伝達カスケードを活性化することができる栄養因子として特徴付けられる。羊膜液に認められるいくつかの生物学的に関連する成長因子として、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF)、及びエリスロポエチン(EPO)が挙げられる。羊水はまた、部分的にはヒアルロン酸が存在するために(Gao X et al.,Ann Plastic Surg 1994;33:128-134)、瘢痕を減少させる(Ozgenel G Y et al.,J Neurosurg 2003;98:371-377)。
羊水の成長因子活性
羊膜細胞の機能の1つは、胚の発生中に様々なプロセスを調節する成長因子とサイトカインの放出である(Grzywocz,Z.et al. Folia Histochemica et Cytobiologica(2014)52(3):163-170)。胎児の発育中、VEGFは、ヒト羊膜の透過性を高める。in vitroでの研究により、羊膜が産生する成長因子が、血管新生、再上皮化、及び免疫調節に関与することが示された。いくつかの因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)は、細胞の分化と増殖を刺激する。IGF-2のような他の因子は、増殖を促進し得る。
羊膜細胞分画及び羊膜組織全体によって産生される成長因子は、in vitroサイトカインアッセイを使用して測定した(同上)。アッセイにより、上清中に、表皮及び線維芽細胞成長因子(HB-EGF、EGF-2、EGF-R、bFGF、FGF-4、FGF-6、FGF-7)、神経及びグリア成長因子(bNGF、GDNF、NT-3、NT-4)、血管新生成長因子(VEGF、VEGF-D、VEGF-R2、VEGF-R3、PLGF)、造血成長因子(G-CSG、GM-CSF、M-CSF、M-CSF-R、SCF、SCF-R)、インスリン様成長因子(IFG-1、IGF-2、IGF-ISR、IGFBP-1、IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-6)、血小板由来成長因子(PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGFRa、PDGFRb)、形質転換成長因子(TGF-a、TGF-b、TGF-b2、TGF-b3)ならびに他のタンパク質(HGF、AR)が検出された(同上)。この研究は、3時間、6時間、24時間、及び48時間で測定した、成長因子とその受容体のレベルの統計的に有意な経時的変化に着目していた(同上)。Sonciniらによる記載に従い、多少の改変を加えて、細胞画分を単離した(J.Tissue Eng.Regen.Med.(2007)1:296-305)。等量のhAMSC及びhAECからなるヒト羊膜全体が、EGF-R、IGF-2、IGFBP-2、IGFBP-2、及びIGFBP6を馴化培地中に放出した。間葉系細胞マーカーCD73(86%)、CD90(19.3%)及びCD105(2.2%)で陽性に染色された羊膜細胞画分1は、NT-4のみを放出し、その濃度は研究期間中に統計的に増加していたが、このことは、NT4がおそらくアポトーシスに関連して、羊膜上皮の機能において局所的な役割を果たしたことを示唆している(同上)。上皮細胞マーカーであるサイトケラチン4/5/6/8/10/13/18が陽性に染色され、主に羊膜上皮細胞を含む羊膜細胞画分2は、G-CSF、M-CSF、PDGFなどの造血増殖因子、及び血管新生調節因子PLGFを馴化培地中に放出した(同上)。
したがって、羊水組織と羊水は、組織の修復を刺激し、皮膚と結合組織の恒常性を促進する生物学的成分の供給源である。しかしながら、羊水組織及び羊水の分子組成には、ドナーごとに有意なばらつきがある。さらに、多くの重要な羊水因子が、羊水の回収と保管に使用される様々なプロセスを生き残るかどうかは不明である。したがって、羊水組織に固有の変動性、及び様々な回収及び保管条件は、様々な治療用途におけるこれらの製品の有効性を標準化し、再現するうえで、課題である。
創傷治癒
創傷は、正常な解剖学的構造及び機能の損傷または破壊に起因する(Robson MC et al.,Curr Probl Surg 2001,38:72-140;Velnar T et al.,The Journal of International Medical Research 2009,37:1528-1542)。これは、皮膚の上皮の健全性の単純な破壊から、腱、筋肉、血管、神経、実質器官、さらには骨などの他の構造への損傷を伴った、より深い皮下組織にまで及び得る(Alonso JE et al.,Surg Clin North Am 1996,76:879-903)。原因や形態に関係なく、創傷は局所組織環境に損傷を与え、破壊する。
創傷治癒は、可溶性メディエーター、血球、細胞外マトリックス、及び実質細胞が関与する動的で相互作用的なプロセスである。創傷修復プロセスは、四つ(4)の時間的及び空間的に重複する段階に分けることができる:(1)凝固段階、(2)炎症段階、(3)増殖段階、及び(4)リモデリング段階。知られていることの多くは、ヒトの皮膚の創傷治癒に基づいている。
凝固段階
損傷直後、血小板は損傷した血管に接着し、放出反応を開始し、止血反応を開始し、過度の出血を防ぎ、負傷した領域を暫定的に保護する血液凝固カスケードを引き起こす。血小板は、12をはるかに超える成長因子、サイトカイン、及び他の生存またはアポトーシス誘導剤を放出する(Weyrich AS and Zimmerman GA,Trends Immunol 2004 Sep,25(9):489-495)。血小板放出反応の重要な成分として、血小板由来成長因子(PDGF)ならびにトランスフォーミング成長因子Al及び2(TGF-A1及びTGF-2)が挙げられ、これらは、白血球、好中球、及びマクロファージなどの炎症細胞を誘引する(Singer AF and Clark RA,N Engl J Med 1999 Sep 2,341(10):738-746)。
炎症段階
組織の損傷は、血管の破壊と血液成分の血管外漏出を引き起こす。血栓は止血を再確立し、細胞遊走のための暫定的な細胞外マトリックスを提供する。血小板は、止血栓の形成を促進するだけでなく、マクロファージ及び線維芽細胞を誘引して活性化する血小板由来成長因子などの創傷治癒のいくつかのメディエーターを分泌する(Heldin,C. and Westermark B.,In:Clark R.,ed. The molecular and cellular biology of wound repair,2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.249-273,(1996))。しかしながら、出血がない場合、血小板は創傷治癒に必須ではないことが示唆され;凝固及び活性化補体経路によって、ならびに損傷または活性化実質細胞によって、多数の血管作用性メディエーター及び走化性因子が生成され、これらが炎症性白血球を損傷部位に動員することが示された(同上)。
創傷への細胞の侵入及び局所細胞の活性化は、常在細胞によって新規に放出されるか、または血小板及び好塩基球の顆粒に貯蔵された貯蔵物由来のメディエーターによって開始される(Sephel,G.C. and Woodward,S.C.,3. Repair,Regeneration and Fibrosis,” in Rubin’s Pathology,Rubin,R. and Strayer,D.S. Eds;5th Ed.,Wolters Kluwyer Health,/Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA(2008),71にて)。細胞遊走は、サイトカイン及び細胞外マトリックスの不溶性基質に対する細胞の応答を使用する(同上、72にて)。
浸潤性好中球は、異物粒子や細菌の傷ついた領域を浄化し、焼痂(健康な皮膚から剥落(脱落)するか、またはマクロファージによって貪食される死んだ組織)で押し出す。細胞外マトリックスタンパク質の断片、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)などの特定の化学誘引物質に応答して、単球もまた、創傷部位に浸潤し、肉芽組織の形成を開始させる成長因子(血小板由来成長因子や血管内皮成長因子など)を放出する活性化マクロファージになる。マクロファージは、インテグリン受容体によって細胞外マトリックスの特定のタンパク質に結合する。これは、マクロファージによる微生物の食作用と細胞外マトリックスの断片を刺激する作用である(Brown,E.Phagocytosis,Bioessays,17:109-117(1995))。研究によると、細胞外マトリックスへの接着は、単球を刺激して炎症性または修復性マクロファージへの変態を起こすことも報告されている。これらのマクロファージは、炎症と修復の間の移行において重要な役割を果たす(Riches,D.,In Clark R.,Ed. The molecular and cellular biology of wound repair,2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.95-141)。例えば、接着により、単球とマクロファージによる、単球とマクロファージの生存に必要なサイトカインであるコロニー刺激因子-1(CSF-1);強力な炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子-α(TNF-α);及び線維芽細胞の強力な化学誘引物質及びマイトジェンである血小板由来成長因子(PDGF)の発現が誘導される。単球及びマクロファージが発現することが示されている他のサイトカインとして、トランスフォーミング成長因子(TGF-α)、インターロイキン-1(IL-1)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、及びインスリン様成長因子-I(IGF- I)が挙げられる(Rappolee,D.et al.,Science,241,pp.708-712(1988))。マクロファージが枯渇した動物は創傷修復に欠陥があるため、創傷における新規組織形成の開始及び伝播に、単球及びマクロファージ由来の成長因子が必要であることが示唆されている(Leibovich,S,and Ross,R.,Am J Pathol,78,pp 1-100(1975))。
増殖段階
炎症段階の後に増殖段階が続き、そこでは活発な血管新生が新しい毛細血管を作り、特に線維芽細胞の増殖をサポートするために、創傷部位への栄養素の送達を可能にする。肉芽組織に存在する線維芽細胞が活性化され、平滑筋細胞のような表現型を獲得する。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化は、そのストレスファイバーがβ-及びγ-細胞質アクチンのみを含む原筋線維芽細胞の出現から始まる。原筋線維芽細胞は、ストレスファイバーにα-平滑筋アクチンを含む分化した筋線維芽細胞に進化し得る。筋線維芽細胞は、仮マトリックスに代わる細胞外マトリックス(ECM)成分を合成して沈着させる。それらはまた、マイクロフィラメント束またはストレスファイバーに組織化されたα-平滑筋アクチンによって媒介される収縮特性を有する。
血管新生
新規に形成される肉芽組織を維持するには、新規血管形成(血管新生)が必要である。血管新生は、創傷床の細胞外マトリックス、ならびに内皮細胞の移動及びマイトジェン刺激に依存する複雑なプロセスである(Madri,J.et al.,Angiogenesis in Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.355-371(1996))。血管新生の誘導は、当初、酸性または塩基性の線維芽細胞成長因子に起因していた。その後、血管内皮成長因子(VEGF)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、アンジオゲニン、アンジオトロピン、アンジオポエチン-1、及びトロンボスポンジンなど、他の多くの分子も血管新生活性を有することがわかっている(Folkman,J. and D’Amore,P,Cell,87,pp.1153-1155(1996))。
低酸素分圧と乳酸の上昇も血管新生を刺激することが示唆された。これらの分子は、マクロファージ及び内皮細胞による塩基性線維芽細胞成長因子(FGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)の産生を刺激することにより、血管新生を誘導する。例えば、創傷の活性化表皮細胞が、大量の血管内皮細胞成長因子(VEGF)を分泌することが報告された(Brown,L.et al.,J Exp Med,176,1375-1379(1992))。
塩基性線維芽細胞成長因子は、創傷修復の最初の3日間の血管新生の段階を設定すると仮定されたが、血管内皮細胞成長因子は、4日目から7日目の肉芽組織の形成中の血管新生に重要である(Nissen,N.et al.,Am J Pathol,152,1445-1552(1998))。
血管新生因子に加えて、仮マトリックスのための適切な細胞外マトリックス及び内皮受容体が血管新生に必要であることが示された。創傷に隣接し、創傷内で増殖する微小血管内皮細胞は、血管壁内の多量のフィブロネクチンを一時的に沈着させる(Clark,R.et al.,J.Exp Med,156,646-651(1982))。血管新生には、内皮細胞による機能的なフィブロネクチン受容体の発現が必要であるため(Brooks,P.et al.,Science,264,569-571(1994))、血管周囲のフィブロネクチンが、創傷への内皮細胞の移動の導管として機能することが示唆された。さらに、プロテアーゼの発現及び活性も血管新生に必要であることが示された(Pintucci,G.et al.,Semin Thromb Hemost,22,517-524(1996))。
血管新生をもたらす一連の事象は、以下のように提唱されている。損傷が、組織の破壊と低酸素症を引き起こす。酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(FGF)などの血管新生因子が、細胞破壊後すぐにマクロファージから放出され、低酸素症により、表皮細胞による血管内皮細胞成長因子の産生が刺激される。結合組織に放出されたタンパク質分解酵素は、細胞外マトリックスタンパク質を分解する。これらのタンパク質の断片は、末梢血単球を損傷部位に動員し、そこで活性化マクロファージになり、血管新生因子を放出する。塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの特定のマクロファージ血管新生因子は、内皮細胞を刺激してプラスミノーゲンアクチベーターとプロコラーゲン酵素を放出する。プラスミノーゲンアクチベーターはプラスミノーゲンをプラスミンに変換し、プロコラゲナーゼを活性コラゲナーゼに変換し、これら2つのプロテアーゼが協調して基底膜を消化する。基底膜の断片化により、血管新生因子によって刺激された内皮細胞が遊走し、損傷部位に新規の血管を形成することができる。創傷が新規肉芽組織で満たされると、血管新生が停止し、アポトーシスの結果として新規の血管の多くが崩壊する(Ilan,N.et al.,J Cell Sci,111,3621-3631(1998))。このプログラム細胞死は、トロンボスポンジン1及び2などの様々なマトリックス分子、及びアンジオスタチン、エンドスタチン、アンジオポエチン2などの抗血管新生因子によって調節されることが示唆されている(Folkman,J.,Angiogenesis and angiogenesis inhibition:an overview,EXS,79,1-8,(1997))。
リモデリング段階
第4の治癒段階は、肉芽組織の段階的なリモデリングと再上皮化を含む。このリモデリングプロセスは、主にタンパク質分解酵素、特にマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)とその阻害剤(TIMP、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)によって媒介される。再上皮化の間に、肉芽組織の主成分であるIII型コラーゲンは、真皮の主要な構造成分であるI型コラーゲンに徐々に置き換えられる。皮膚の弾力性に寄与し、肉芽組織には存在しないエラスチンも再び出現する。細胞密度は、血管細胞と筋線維芽細胞のアポトーシス(消散)によって正常化する。
上皮化
創傷の再上皮化は、損傷後数時間以内に始まる。毛包などの皮膚付属器由来の表皮細胞は、凝固した血液及び損傷した間質を創傷空間から迅速に除去する。同時に、細胞は、細胞内トノフィラメントの収縮(Paladini,R.et al.,J.Cell Biol,132,pp.381-397(1996));細胞間の物理的接続を提供するほとんどの細胞間デスモソームの溶解;及び細胞の移動と遊走を可能にする末梢細胞質アクチンフィラメントの形成(Goliger,J. and Paul,D.Mol Biol Cell,6,pp.1491-1501(1995);Gabbiani,G.et al.,J Cell Biol,76,PP.561-568(1978))を含む表現型の変化を受ける。さらに、表皮と基底膜との間のヘミデスモソーム結合が溶解し、表皮細胞の横方向の動きを可能にするため、表皮細胞と真皮細胞はもはや互いに接着しなくなる。表皮細胞でのインテグリン受容体の発現により、創縁で間質性I型コラーゲンが散在し、創傷空間のフィブリン血餅と織り交ぜられた様々な細胞外マトリックスタンパク質(例えば、フィブロネクチン及びビトロネクチン)と相互作用することができる(Clark,R.,J Invest Dermatol,94,Suppl,pp.128S-134S(1990))。遊走する表皮細胞は創傷を解体し、乾燥した焼痂を生存組織から分離する。解体の経路は、移動する表皮細胞がそれらの細胞膜上に発現するインテグリンのアレイによって決定されるように思われる。
表皮細胞がコラーゲン性真皮とフィブリン焼痂の間を遊走しようとする場合に必要とされる細胞外マトリックスの分解は、表皮細胞によるコラゲナーゼの産生(Pilcher,B.et al.,J Cell Biol,137,pp.1445-1457(1997))、ならびに真皮細胞によって産生されるプラスミノーゲン活性化因子によるプラスミンの活性化(Bugge,T.et al.,Cell,87:709-719(1996))に依存する。プラスミノーゲン活性化因子はまた、コラゲナーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ-1)も活性化し(Mignatti,P.et al.,Proteinases and Tissue Remodeling. In Clark,R. Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,427-474(1996))、コラーゲンと細胞外マトリックスタンパク質の分解を促進する。
損傷の1~2日後、創縁の表皮細胞は、活発に遊走する細胞の背後で増殖し始める。再上皮化中の表皮細胞の遊走及び増殖に対する刺激は決定されていないが、いくつかの可能性が示唆されている。創縁に隣接する細胞が存在しないこと(「フリーエッジ」効果)は、表皮細胞の遊走と増殖の両方を示している可能性がある。成長因子の局所放出及び成長因子受容体の発現の増加もまた、これらのプロセスを刺激する可能性がある。主要な候補として、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、及び表皮細胞成長因子(KGF)(Nanney,L. and King,L. Epidermal Growth Factor and Transforming Growth Factor-α. In Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.171-194(1996);Werner,S.et al.,Science,266,pp.819-822(1994);Abraham,J. and Klagsburn,M. Modulation of Wound Repair by Members of the Fiborblast Growth Factor family. In Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.195-248(1996))が挙げられる。再上皮化が続くと、基底膜タンパク質は、創縁から内側に向かって非常に規則正しい順序で、ジッパーのように再出現する(Clark R.et al.,J.Invest Dermatol,79,pp.264-269(1982))。表皮細胞は通常の表現型に戻り、再び確立された基底膜とその下にある真皮にしっかりと接着する。
肉芽組織の形成
多くの場合、肉芽組織と呼ばれる新規間質が、損傷の約4日後に創傷空間に侵襲し始める。多数の新規毛細血管が、新規間質にその粒状の外観を与える。マクロファージ、線維芽細胞、及び血管は同時に創傷空間に移動する(Hunt,T.ed. Wound Healing and Wound Infection:Theory and Surgical Practice. New York,Appleton-Century-Crofts(1980))。マクロファージは、線維増殖と血管新生を刺激するために必要な成長因子の継続的な供給源を提供し;線維芽細胞は、細胞の内部成長をサポートするために必要な新規細胞外マトリックスを生成し;血管は細胞代謝を維持するために必要な酸素と栄養素を運搬する。
成長因子、特に血小板由来成長因子-4(PDGF-4)及びトランスフォーミング成長因子β-1(TGF-β1)(Roberts,A. and Sporn,M,Transforming Growth Factor-1,In Clark,R.ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.275-308(1996))は、細胞外マトリックス分子(Gray,A.et al.,J Cell Sci,104,pp.409-413(1993);Xu,J. and Clark,R.,J Cell Biol,132,pp.239-149(1996))と協調して、創傷周囲の組織の線維芽細胞を刺激して増殖させ、適切なインテグリン受容体を発現し、創傷空間に遊走することが示された。血小板由来成長因子が慢性褥瘡(Robson,M.et al.,Lancet,339,pp.23-25(1992) 及び糖尿病性潰瘍(Steed,D.,J Vasc Surg,21,pp.71-78(1995))の治癒を促進することが報告された。他のいくつかの場合では、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が慢性褥瘡の治療に効果的であった(Robson,M.et al.,Ann Surg,216,pp.401-406(1992)。
仮マトリックスと呼ばれる、新規形成された細胞外マトリックスの構造分子(Clark,R.et al.,J.Invest Dermatol,79,pp.264-269,1982)は、細胞遊走のための足場または導管を提供することによって肉芽組織の形成に寄与する。これらの分子には、フィブリン、フィブロネクチン、及びヒアルロン酸が含まれる(Greiling,D. and Clark R.,J.Cell Sci,110,pp.861-870(1997))。フィブロネクチン、及び線維芽細胞上のフィブロネクチン、フィブリン、またはその両方に結合する適切なインテグリン受容体の出現は、肉芽組織の形成における律速段階であることが示唆された。線維芽細胞は細胞外マトリックスの合成、沈着、及びリモデリングに関与するが、細胞外マトリックス自体は、線維芽細胞がこれらのタスクを実行し、一般的にそれらの環境と相互作用する能力にプラスまたはマイナスの影響を与え得る(Xu,J. and Clark,R.,J Cell Sci,132,pp.239-249(1996);Clark,R.et al.,J Cell Sci,108,pp.1251-1261)。
架橋フィブリンの血餅またはしっかりと織り込まれた細胞外マトリックスへの細胞の移動には、細胞遊走の経路を切断できるアクティブなタンパク質分解系が必要である。血清由来のプラスミンに加えて、プラスミノーゲン活性化因子、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼA、ストロメリシンなど、様々な線維芽細胞由来の酵素がこのタスクの潜在的な候補であることが示唆されている(Mignatti,P.et al.,Proteinases and Tissue Remodeling. In Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,427-474(1996);Vaalamo,M.et al.,J Invest Dermatol,109,pp.96-101(1997))。創傷に遊走した後、線維芽細胞は細胞外マトリックスの合成を開始する。仮細胞外マトリックスは、おそらくトランスフォーミング成長因子-β1(TGF-β1)シグナル伝達に応答して、コラーゲンマトリックスに徐々に置き換えられる(Clark,R.et al.,J Cell Sci,108,pp.1251-1261(1995);Welch,M.et al.,J.Cell Biol,110,pp.133-145(1990))。
豊富なコラーゲンマトリックスが創傷に沈着すると、線維芽細胞はコラーゲンの産生を停止し、線維芽細胞に富む肉芽組織は比較的無細胞の瘢痕に置き換わる。創傷内の細胞は、未知のシグナルによって引き起こされるアポトーシスを起こす。これらのプロセスの調節不全は、ケロイド形成、肥厚性瘢痕、形態異常、及び強皮症などの線維性疾患で生じることが報告された。
創傷収縮及び細胞外マトリックスの再編成
創傷収縮は、細胞、細胞外マトリックス、及びサイトカインの複雑で組織化された相互作用を含む。治癒の第2週の間、線維芽細胞は、細胞-細胞及び細胞-マトリックス結合による細胞の原形質膜の細胞質面に沿って配置されたアクチン含有マイクロフィラメントの大きな束を特徴とする筋線維芽細胞表現型をとる(Welch,M.et al.,J Cell Biol,110,133-145(1990);Desmouliere,A. and Gabbiani,G. The role of the myofibroblast in wound healing and fibrocontractive diseases. In Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,pp.391-423(1996))。筋線維芽細胞の出現は、結合組織圧縮の開始と創傷の収縮に対応する。この収縮には、トランスフォーミング成長因子(TGF)-β1またはβ2及び血小板由来成長因子(PDGF)による刺激、インテグリン受容体を介したコラーゲンマトリックスへの線維芽細胞の接着、及びコラーゲンの個々の束間の架橋が必要であることが示唆された。(Montesano,R. and Orci,Proc Natl Acad Sci USA,85,4894-4897(1988);Clark,R.et al.,J Clin Invest,84,1036-1040(1989);Schiro,J.et al.,Cell,67,403-410(1991);Woodley,D.et al.,J Invest Dermatol,97,580-585(1991))。
肉芽組織から瘢痕への移行中のコラーゲンのリモデリングは、低率でのコラーゲンの継続的な合成と異化作用に依存する。創傷内のコラーゲンの分解は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と呼ばれるいくつかのタンパク質分解酵素によって制御され、これらは、マクロファージ、表皮細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞から分泌される(Mignatti,P.et al.,Proteinases and Tissue Remodeling. In Clark,R.Ed. The molecular and cellular biology of wound repair. 2nd Ed. New York,Plenum Press,427-474(1996))。創傷修復の様々な段階が、マトリックスメタロプロテイナーゼとメタロプロテイナーゼの組織阻害剤との異なる組み合わせに依存することが示唆されている(Madlener,M.et al,Exp Cell Res,242,201-210(1998))。
創傷は最初の3週間で最終強度の約20%しか得られず、その間、線維性コラーゲンは比較的急速に蓄積し、創傷の収縮によって再構築されていた。その後、創傷が引張強度を獲得する速度は遅いが、これは、コラーゲンの蓄積の速度、ならびにより大きなコラーゲン束の形成及び分子間架橋の数の増加を伴うコラーゲンのリモデリングがはるかに遅いことを反映している。
創傷治癒に関与するシグナル伝達経路
創傷治癒は、細胞の増殖、遊走、マトリックスの合成及び収縮の複雑なプロセスであり、様々な種類の細胞及び調節メカニズムが関与している。常在細胞(ケラチノサイト、線維芽細胞、及び内皮細胞)と炎症細胞が創傷治癒に関与する(Song,Q,et al. Int J Mol Med.2017 Aug;40(2):465-473,Chen XH,et al. Int J Radiat Biol. 2009;85:607-613;Amadeu TP,et al. J Surg Res. 2008;149:84-9を引用)。エビデンスにより、ヤヌス活性化キナーゼ/シグナルトランスデューサー及び転写活性化因子3(JAK/STAT3)シグナル伝達など、いくつかのシグナル伝達経路がそれらの標的遺伝子発現の誘発を介して創傷治癒に関連していることが明らかになった(同上、Li PN,et al. Wound Repair Regen. 2015;23:65-73;Pakyari M,et al. Adv Wound Care(New Rochelle)2013;2:215-224;Ren X,et al. Lasers Med Sci.2016;31:673-678;Shi Y,et al. Stem Cell Res Ther. 2015;6:120を引用)。創傷治癒において、サイトカインはSTATの活性化に寄与し、活性化されたJAK//STAT3経路は、創傷治癒に必要な増殖と分化を制御する(同上、Tokumaru S,et al. Biochem Biophys Res Commun. 2005;327:100-105;Yasukawa H,et al. Nat Immunol. 2003;4:551-556)。さらに、JAK/STAT3シグナル伝達カスケードの活性化を通じて、サイトカインは抗アポトーシス経路と抗菌分子を誘導し、組織の損傷を予防し、それらの修復を支援する(同上、Lejeune D,et al. J Biol Chem. 2002;277:33676-33682;Wolk K,et al. Semin Immunopathol. 2010;32:17-31;Yu R,et al. Arch Oral Biol. 2016;72:14-20)。さらに、ある研究では、創傷治癒におけるケラチノサイトの遊走においてSTAT3が重要な役割を果たしたが、増殖には重要ではなかったことが示された(同上、Sano S,et al. EMBO J. 1999;18:4657-4668を引用)。皮膚の創傷治癒におけるSmad3シグナル伝達の極めて重要な役割は、十分に記載されている(同上、Li PN,et al. Wound Repair Regen. 2015;23:65-73;Pakyari M,et al. Adv Wound Care(New Rochelle)2013;2:215-224を引用)。Smad3はSmadメディエーター(SMAD4)と結合して複合体を形成し、核に移動し、ケラチノサイトの遊走、線維芽細胞の浸潤、細胞外マトリックスの構築に関与する遺伝子を含む遺伝子の発現を調節する(同上、Penn JW,et al. Int J Burns Trauma. 2012;2:18-28;Hong HJ,et al. Biomaterials. 2008;29:4831-4837を引用)。さらに、Smad3は、修復された組織の再上皮化と線維形成のバランスをとることができる(同上、Biernacka A,et al. Growth Factors. 2011;29:196-202;Werner S,et al. J Invest Dermatol. 2007;127:998-1008を引用)。
臨床的創傷治癒
皮膚の最も重要な機能の1つは、環境に対するバリアになることである(Bakhtyar N,et al.,Stem Cell Res Ther. 2018 Jul 13,9(1):193,Bielefeld KA,et al. CMLS. 2013,70:2059-81を引用)。火傷、圧迫の結果としての慢性皮膚潰瘍、静脈うっ血、または真性糖尿病などの傷害は、組織の健全性が破壊され、創傷が生じる状態のいくつかを表す(同上、Bielefeld KA,et al. CMLS. 2013,70:2059-81;Singer AJ,Clark RAF. N Engl J Med. 1999,341:738-46を引用)。世界保健機関(WHO)によると、火傷は世界的な問題であり、年間およそ18万人が死亡しており、2004年には、世界中で約1,100万人が医療を必要とするほどの重度の火傷を負った(同上、W.H.O.(WHO),http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/burns,2018を引用)。火傷患者の高い死亡率は、皮膚の喪失に起因し、これは、代謝要求、水分喪失を増加させ、感染症のリスクを高める。したがって、創傷の閉鎖が不可欠である(同上、Sadiq A,et al. Int J Mol Sci. 2018,19を引用)。さらに、およそ15億人が、進行性の老化と適切な医療の欠如の組み合わせにより、不十分な創傷治癒に苦しんでいる(同上、Sadiq A,et al. Int J Mol Sci. 2018,19;Jeschke MG,et al. EBioMedicine. 2015,2:1536-48;Jeschke MG,et al. Burns:journal of the International Society for Burn Injuries. 2016,42:276-81;Valacchi G,et al. Ann N Y Acad Sci. 2012,1259:136-44を引用)。例えば、糖尿病は、重傷につながり得るもう1つの広く認められている病態である。糖尿病は、炎症の長期化、血管新生の欠如、コラーゲン産生の低下、高レベルのプロテイナーゼ及びコラーゲンの合成、ならびにマクロファージの機能不全により、糖尿病性潰瘍を引き起こし得る(同上、Fahey TJ 3rd,et al. J Surg Res. 1991,50:308-13;Singer AJ,Clark RA. N Engl J Med. 1999,341:738-46;Shah A,et al. Inflamm Res. 2017 Nov,66(11):931-945;Shah A,Amini-Nik S. International Journal of Drug Research and Technology. 2017;7:8を引用)。
創傷治癒のステップが協調的かつタイムリーに行われない場合、異常な創傷治癒が生じる可能性があり、開放創は感染症及び不十分な熱管理及び体液管理につながり得る。いくつかの病理学的障害では、通常の創傷治癒プロセスが妨げられ、長期化するため、それは、糖尿病性潰瘍などの慢性的な非治癒性創傷またはケロイド瘢痕などの病理学的瘢痕をもたらし得る(Hu Y,et al. Theranostics. 2018 Jan 1;8(1):169-184,Falanga V. Lancet. 2005;366:1736-43;Plikus MV,et al. Science. 2017;355:748-52を引用)。したがって、治癒時間を短縮し、皮膚/軟部組織の外傷後の瘢痕形成を阻害することは、緊急の臨床的必要性を表している。創傷治癒を促進するために様々な治療の試みがなされてきたが、最適な治療戦略はまだ開発中である。
過去数年にわたって、幹細胞は皮膚の創傷治癒を改善するための強力なツールとして注目されてきた。ヒト臍帯及び臍帯血(UCB)、羊膜細胞、ならびにウォートンゼリー(臍帯の粘膜結合組織)などの幹細胞の供給源は、創傷治癒において有望な結果を示している(Hu Y,et al. Theranostics. 2018 Jan 1;8(1):169-184;Bakhtyar N,et al.,Stem Cell Res Ther. 2018 Jul 13,9(1):193;Zhao B,et al. Stem Cells Int. 2018 Jul 25;2018:5420463)。
間葉系幹細胞(MSC)
間葉系幹細胞(MSC)(間質幹細胞としても知られる)は、様々な組織に認められる非血液の成体幹細胞である。それらは、形態学的に紡錘形であり、その細胞表面における特定のマーカーの発現、及び適切な条件下で最低3つの系統(骨形成、軟骨形成、及び脂肪生成)に沿って分化する能力を特徴とする。
MSC表現型に関するコンセンサスが欠如しているため、in vivoでMSCを明確に描写する単一のマーカーは同定されていないが、MSCは、細胞表面マーカーCD105、CD166、CD90、及びCD44に対して陽性であり、MSCは、CD45、CD34、CD14などの典型的な造血抗原に陰性であると一般的に考えられている。MSCの分化能については、骨髄由来MSCの集団が、骨、軟骨、腱、筋肉、脂肪組織、及び造血支持間質など、in vitro及びin vivoの両方で最終的に分化した間葉系表現型に発達する能力があることが研究によって報告されている。トランスジェニックマウスとノックアウトマウス、及びヒトの筋骨格系障害を使用した研究では、胚発生と成体の恒常性の間にMSCが複数の系統に分化することが報告されている。
in vivoプロセスを再現する適切な条件下でのMSCのin vitro分化の分析は、幹細胞の関与に不可欠な様々な因子の同定につながった。それらの中で、分泌された分子及びそれらの受容体(例えば、トランスフォーミング成長因子-β)、細胞外マトリックス分子(例えば、コラーゲン及びプロテオグリカン)、アクチン細胞骨格、及び細胞内転写因子(例えば、Cbfa1/Runx2、PPARγ、Sox9、及びMEF2)は、特定の系統への多能性MSCの関与を推進し、それらの分化した表現型を維持する上で重要な役割を果たすことが示されている。
MSCは、ex vivoでの操作中に表現型の再構成を受け、いくつかのマーカーの発現を失い、一方で新しいマーカーも獲得することが知られている(Augello,A.et al,“Mesenchymal stem cells:a perspective from in vitro cultures to in vivo migration and niches.” Eur. Cells and Materials(2010)(20):121-33,Jones,et al. 2002 Arthritis Rheum. 46: 3349-60を引用)。
創傷治癒におけるMSCの役割
MSCは:(1)細胞分化を介した構造的修復;(2)免疫調節;(3)血管新生及び再上皮化を促進する成長因子の分泌;及び(4)常在幹細胞の動員によって、創傷修復を調整すると考えられている(Balaji,S.et al,“The role of mesenchymal stem cells in the regenerative wound healing phenotype,”Adv.Wound Care(2012)1(40):159-65)。
in vivoでのMSCの遊走
結果は、MSCがいくつかの同時の役割を果たすことを示している:サイトカインを放出することによる炎症の抑制;成長因子を発現することによる治癒の支援;免疫調節タンパク質を分泌することによる宿主の免疫応答の改変;内在性修復細胞の応答の増強;及び骨などの一部の組織における成熟機能細胞としての作用(Phinney,DG and Pittenger,MF. MSC-derived exosomes for cell free therapy. Stem Cells(2017)35:851-58)。標識してin vivoで送達する場合、MSCは組織損傷部位に遊走する(同上)。CD44-HA相互作用は、MSC遊走活性に関与している(Zhu,H.et al,“The role of the hyaluronan receptor CD44 in mesenchymal stem cell migration in the extracellular matrix,” Stem Cells(2006)24:928-35)。
いくつかの報告は、MSC集団にSDF-1/CXCR4軸が存在し、機能的であることを示している(Augello,A.et al,“Mesenchymal stem cells: a perspective from in vitro cultures to in vivo migration and niches.” Eur.Cells and Materials(2010)(20):121-33,Wynn et al.2004 Blood 104:2643-45;Dar et al.2005 Nat.Immunol.6:1038-46を引用)。MSCは、単球走化性タンパク質-3(MCP-3)を含むSDF-1/CXCR-4軸以外の経路に作用する走化性シグナル伝達分子にも応答することができる(同上)。
MSCは、成長因子、サイトカイン、及びケモカインなどの広範囲の生物活性分子を分泌する能力を有することが提唱されている(同上、Monsel,A.et al,“Mesenchymal stem cell derived secretome and extracellular vesicles for acute lung injury and other inflammatory lung diseases,” Expert Opin.Biol.Ther.(2016)16:859-71;Caplan,A. and Correa,D.,“The MSC:an injury drugstore,” Cell Stem Cell(2011)9:11-15;Kosuma,GD,et al,“Effect of the microenvironment on mesenchymal stem cells paracrine signaling: opportunities to engineer the therapeutic effect,” Stem Cells Dev.(2017)26:617-31を引用)。これらの生物活性分子は、局所免疫応答を調節して再生微小環境を確立し、その後炎症を抑制し、損傷した組織を修復する(同上)。
幹細胞分泌によって媒介されるMSCの治療効果
観察されるMSCの治療効果が幹細胞分泌によって部分的に媒介されるという「パラクリン仮説」は、多くの注目を集めており、実験データによって裏付けられている(Arlan,F.et al,“Mesenchymal stem cell-derived exosomes increase ATP levels,decrease oxidative stress,and activate PI3K/Akt pathway to enhance myocardial viability and prevent adverse remodeling after myocardial ischemia/reperfusion injury,” Stem Cell Res.(2013)10:301-12,Gnecchi et al.,“Paracrine mechanisms in adult stem cell signaling and therapy,” Circ.Res.(2008),103:1204-1219を引用)。MSC-CMは、低酸素誘発損傷後の心筋細胞及び/または前駆細胞の生存を増強することが示されている(同上、Chimenti et al.,“Relative roles of direct regeneration versus paracrine effects of human cardiosphere-derived cells transplanted into infarcted mice,” Circ.Res.(2010),106:971-980;Deuse et al.,2009;Gnecchi et al.,“Paracrine mechanisms in adult stem cell signaling and therapy,” Circ.Res.(2008),103:1204-1219;Matsuura et al.,“Transplantation of cardiac progenitor cells ameliorates cardiac dysfunction after myocardial infarction in mice,” J.Clin.Invest.,119(2009),pp.2204-2217;Rogers et al.,2011を引用)。さらに、MSC-CMは梗塞した心筋に血管新生を誘導する(同上、Chimenti et al.,“Relative roles of direct regeneration versus paracrine effects of human cardiosphere-derived cells transplanted into infarcted mice,” Circ.Res.,106(2010),pp.971-980;Deuse et al.,“Hepatocyte growth factor or vascular endothelial growth factor gene transfer maximizes mesenchymal stem cell-based myocardial salvage after acute myocardial infarction,” Circulation,120(2009),pp.S247-S254;Li et al.,“Paracrine factors released by GATA-4 overexpressed mesenchymal stem cells increase angiogenesis and cell survival,” Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.,299(2010),pp.H1772-H1781を引用)。心筋虚血/再灌流(I/R)損傷のマウスモデル及びブタモデルの両方で、MSC-CMが梗塞サイズを縮小することが示されている(同上、Timmers et al.,“Reduction of myocardial infarct size by human mesenchymal stem cell conditioned medium,” Stem Cell Res.,1(2007),pp.129-137)。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び動的光散乱(DLS)分析は、MSCが50~65nmの範囲の流体力学的半径を有する心臓保護微粒子を分泌することを明らかにした(同上、Chen et al.,2011;Lai et al.,“Derivation and characterization of human fetal MSCs:an alternative cell source for large-scale production of cardioprotective microparticles,” J.Mol.Cell.Cardiol.,48(2010),pp.1215-1224)。MSC由来の細胞外小胞(EV)の治療効果は、MSCの組織源とは無関係であった。例えば、ヒト胚性幹細胞由来のMSCに由来するエクソソームは、他の胎児組織源(例えば、四肢、腎臓)に由来するものと類似していた。このことは、治療用EVの分泌がすべてのMSCの一般的な特性であり得ることを示唆した(同上、Lai et al.,“Exosome secreted by MSC reduces myocardial ischemia/reperfusion injury,” Stem Cell Res.,4(2010),pp.214-222)。
エクソソームと微小胞を含むMSC由来EV
創傷治癒の間、細胞間コミュニケーションは重要である(Bakhtyar N,et al.,Stem Cell Res Ther.2018 Jul 13,9(1):193,Amini-Nik S,et al. J Clin Invest.2014;124:2599-610;Raposo G,Stoorvogel W. J Cell Biol.2013;200:373-83を引用)。多細胞生物は細胞間コミュニケーションに大きく依存しており、これは直接的な細胞間接触と分泌分子の移動の両方を通じて達成することができる(同上、Raposo G,Stoorvogel W. J Cell Biol.2013;200:373-83;Venkat P,et al. Stem Cells Transl Med.2018 Jun;7(6):451-455を引用)。
エクソソーム及び微小胞(MV)を含むMSC由来EVは、細胞間コミュニケーション、細胞シグナル伝達、ならびに体内の短距離または長距離での細胞または組織の代謝の変化に関与し、損傷、感染、及び疾患に対する組織の応答に影響を与える(Phinney,DG and Pittenger,MF,“MSC-derived exosomes for cell free therapy,” Stem Cells(2017)35:851-58)。それらの内容には、サイトカインと成長因子、シグナル伝達脂質、mRNA、及び調節miRNAが含まれる(同上)。MSC EVの内容は静的ではなく;それらは、MSC組織起源、その活性、及びMSCのすぐ隣の細胞間の産物である(同上)。
MSCは、生物学的に活性な過剰量のタンパク質を分泌する。(同上、Tremain N,et al. MicroSAGE analysis of 2,353 expressed genes in a single cell‐derived colony of undifferentiated human mesenchymal stem cells reveals mRNAs of multiple cell lineages. Stem Cells 2001;19:408-418;Phinney DG,et al. “Biological activities encoded by the murine mesenchymal stem cell transcriptome provide a basis for their developmental potential and broad therapeutic efficacy,” Stem Cells 2006;24:186-198;Ren J,et al. “Global transcriptome analysis of human bone marrow stromal cells (BMSC) reveals proliferative,mobile and interactive cells that produce abundant extracellular matrix proteins,some of which may affect BMSC potency,” Cytotherapy 2011;13:661-674を引用)。
ほとんどの細胞は、>200nmの微小胞、及び50~200nmの直径のエクソソームの両方を含む、細胞内小胞局在化の結果としてEVを産生する。微小胞は原形質膜から脱落するが、一方、エクソソームは初期エンドソームに由来し、後期エンドソーム/多小胞体に成熟するにつれて、エンドソームと細胞表面の融合時にエクソソームとして放出される管腔内小胞の数が増加する(同上、Lee Y,El Andaloussi S,Wood MJ. “Exosomes and microvesicles: Extracellular vesicles for genetic information transfer and gene therapy,” Hum Mol Genet 2012;21:R15-134;Tkach M,Thery C. “Communication by extracellular vesicles:Where we are and where we need to go,” Cell 2016;164:1226-1232を引用)。
MSC由来EVは、以前のMSCに起因する非常に広範な治療効果を大部分で再現したものの、ほとんどの研究は、厳密にこの仮説の検証には及んでいない(同上)。例えば、心筋梗塞(同上、Bian S,et al. “Extracellular vesicles derived from human bone marrow mesenchymal stem cells promote angiogenesis in a rat myocardial infarction model,” J Mol Med(Berlin)2014;92:387-397を引用)、局所脳虚血(Doeppner TR,et al. “Extracellular vesicles improve post‐stroke neuroregeneration and prevent postischemic immunosuppression.” Stem Cells Transl Med 2015;4:1131-1143)、ゲンタマイシン誘導された腎損傷(Reis LA,et al. “Bone marrow‐derived mesenchymal stem cells repaired but did not prevent gentamicin‐induced acute kidney injury through paracrine effects in rats,” PLoS One 2012;7:e44092)、及び珪質症(Choi M,et al. “Therapeutic use of stem cell transplantation for cell replacement or cytoprotective effect of microvesicle released from mesenchymal stem cell,” Mol Cells 2014;37:133-1394)の動物モデルにおいて、様々なグループが、MSC対MSC由来EVの効力と、及びいくつかの場合ではMSC馴化培地と比較している。ほとんどの研究は、MSC由来EVが、組織を温存し、及び/または損傷からの機能的回復を促進する上で、MSCと同等に有効であることを報告しており、この所望される結果は、適切な対照の欠如、同等の投与、異なる疾患エンドポイントの評価、投薬の頻度及びタイミングのばらつき、ならびに用量依存効果の欠如による折衷であり、そのため、有効性及び効力の同等性に関して、信頼に足る結論を導くことは難しい(同上)。
羊水EV
臍帯血EV
ヒト臍帯血(UCB)は、創傷修復のための移植可能な幹細胞の魅力的な供給源であり、ドナーへのリスクがなく、アクセスが容易で、移植片対宿主病の発症率が低いといういくつかの明確な利点を有する(Hu Y,et al. Exosomes from human umbilical cord blood accelerate cutaneous wound healing through miR-21-3p-mediated promotion of angiogenesis and fibroblast function. Theranostics. 2018 Jan 1;8(1):169-184,Doi H, et al. Potency of umbilical cord blood- and Wharton’s jelly-derived mesenchymal stem cells for scarless wound healing. Sci Rep. 2016;6:18844;He B,et al. Therapeutic potential of umbilical cord blood cells for type 1 diabetes mellitus. J Diabetes. 2015;7:762-73を引用)。研究によると、ヒトUCB由来幹細胞から分泌されるエクソソームの局所注射は、糖尿病または火傷の動物モデルにおいて、皮膚細胞の増殖と遊走、血管新生、及び創傷閉鎖を促進し得ることが報告されている(同上、Zhang J,et al. Exosomes Derived from Human Endothelial Progenitor Cells Accelerate Cutaneous Wound Healing by Promoting Angiogenesis Through Erk1/2 Signaling. Int J Biol Sci. 2016;12:1472-87;Zhang B,et al. HucMSC-Exosome Mediated-Wnt4 Signaling Is Required for Cutaneous Wound Healing. Stem cells. 2015;33:2158-68を引用)。マウスの皮膚創傷にUCBエクソソームを局所注射すると、再上皮化が加速し、瘢痕幅が減少し、新規血管形成が増強された(同上)。UCBエクソソームはまた、線維芽細胞の増殖及び遊走を促進し、in vitroで内皮細胞の血管新生活性を増強した(同上)。
ウォートンゼリーEV
臍帯には2本の動脈と1本の静脈があり、ウォートンゼリー(WJ)と呼ばれる粘膜結合組織に包まれている(Bakhtyar N,et al. Exosomes from acellular Wharton’s jelly of the human umbilical cord promotes skin wound healing. Stem Cell Res Ther. 2018;9:193,Meyer FA,et al. Evidence for a mechanical coupling of glycoprotein microfibrils with collagen fibrils in Wharton’s jelly. Biochim Biophys Acta. 1983;755:376-387を引用)。ウォートンゼリーでは、グリコサミノグリカンヒアルロン酸が多くを占めており、線維芽細胞とコラーゲン原線維の周りにゲルを形成し、組織を圧力から保護し、組織構造を維持している(同上、Sakamoto T,et al. Electron microscopic histochemical studies on the localization of hyaluronic acid in Wharton’s jelly of the human umbilical cord. Nihon Sanka Fujinka Gakkai zasshi. 1996;48:501-507;Sobolewski K,et al. Collagen and glycosaminoglycans of Wharton’s jelly. Biol Neonate. 1997;71:11-21)。多くの研究所がウォートンゼリーの細胞上のMSCマーカーを同定し、胚性幹細胞と成体幹細胞の両方としての特性を研究している(同上、McElreavey KD,et al. Isolation, culture and characterisation of fibroblast-like cells derived from the Wharton’s jelly portion of human umbilical cord. Biochem Soc Trans. 1991;19,29s;Pirjali T,et al. Isolation and characterization of human mesenchymal stem cells derived from human umbilical cord Wharton’s jelly and amniotic membrane. Int J Organ Transplant Med. 2013;4:111-116;H.S.Wang,et al Chen,Mesenchymal stem cells in the Wharton’s jelly of the human umbilical cord,Stem Cells,22(2004)1330-1337を引用)。分泌因子を含むWJ-MSC馴化培地は、in vitroでの創傷治癒にプラスの効果があることも報告されている(同上、Arno AI,et al. Human Wharton’s jelly mesenchymal stem cells promote skin wound healing through paracrine signaling. Stem Cell Res Ther. 2014;5:28を引用)。無細胞ゼラチン状ウォートンゼリー(AGWJ)は、AGWJ治療後の創傷長を有意に減少させると共に、より早い時点での創傷治癒を可能とすることにより、マウスモデルにおけるin vivoでの有益な創傷治癒特性を有する。AGWJはまた、in vitroで細胞遊走を増加させ、筋線維芽細胞のマーカーであるα-平滑筋アクチン(αSMA)の発現をもたらした(同上、Bakhtyar N,et al. Acellular gelatinous material of human umbilical cord enhances wound healing:a candidate remedy for deficient wound healing. Front Physiol. 2017;8:200を引用)。AGWJから単離されたエクソソームは、in vitroでの細胞生存率及び細胞遊走を増強し、マウスのパンチ生検創傷モデルで皮膚創傷治癒を増強した。これらのエクソソームには、大量のα-2-マクログロブリン(α2M)が含まれていた(同上)。
羊膜上皮EV
ヒト羊膜上皮細胞(hAEC)は、エピブラストに由来する多能性前駆細胞である(Zhao et al. Exosomes derived from human amniotic epithelial cells accelerate wound healing and inhibit scar formation. J Mol Histol. 2017 Apr;48(2):121-132)。hAECは、より少ない瘢痕で創傷治癒を促進するのに効果的な役割を果たすことが確認されている(同上、Zhang B et al.(2015a)HucMSC-exosome mediated-Wnt4 signaling is required for cutaneous wound healing. Stem Cells 33:2158-2168;Zhang J et al.(2015b)Exosomes released from human induced pluripotent stem cells-derived MSCs facilitate cutaneous wound healing by promoting collagen synthesis and angiogenesis. J Transl Med 13:49を引用)。in vitro研究は、hAECエクソソームが滑らかな球形の構造を有し、CD9、CD63、CD81、Alix、TSG101及びHLA-Gのエクソソームマーカーに対して陽性であることを示した(同上)。ヒト線維芽細胞による蛍光標識されたhAECエクソソームの内在化は、用量依存的に増殖及び遊走の能力を増強した(同上)。さらに、細胞外マトリックス(ECM)、特にコラーゲン-I及びIIIの沈着は、高濃度のhAECエクソソームで処理し、MMP-1の発現を刺激することにより、下方制御された。in vivo創傷アッセイはまた、ラット皮膚創傷へhAECエクソソームを局所注射することにより、良好に配置されたコラーゲン線維による創傷治癒プロセスが促進されることを示した。
すべてのMSC由来EVが等価というわけではない。例えば、脂肪由来MSCから単離したエクソソームには、骨髄由来MSCと比較して最大4倍高いレベルの酵素活性ネプリライシンが含まれていることが報告されている。(同上、Katsuda T,et al. “Human adipose tissue‐derived mesenchymal stem cells secrete functional neprilysin‐bound exosomes,” Sci Rep(2013)3:1197を引用)。骨髄及び臍帯由来MSCに由来するEVは、in vitroで増殖を阻害し、U87MG神経膠芽腫細胞のアポトーシスを誘導することを示したが、一方、脂肪由来MSCに由来するEVは、細胞増殖を促進したものの、U87MGの生存率に影響を及ぼさなかった (同上、Del Fattore,A.et al,“Differential effects of extracellular vesicles secreted by mesenchymal stem cells from different sources on glioblastoma cells,” Expert Opin. Biol.Ther.(2015)15:495-504)。さらに、異なる組織特異的MSCから調製したエクソソームは、一次皮質ニューロン及び後根神経節外植片培養における神経突起伸長に対する測定可能に異なる効果を有していることが示されている。(同上、Lopez‐Verrilli et al. “Mesenchymal stem cell‐derived exosomes from different sources selectively promote neuritic outgrowth,” Neuroscience 2016;320:129-139を引用)。
羊水EV
ヒト羊水由来幹細胞(hAFS)は、胚性幹細胞と同様の多能性マーカー及び高い自己複製能を発現し、腫瘍形成性や倫理的懸念を引き起こすことがない多能性間葉系前駆細胞として広範に特徴付けられている(Balbi C,et al. First Characterization of Human Amniotic Fluid Stem Cell Extracellular Vesicles as a Powerful Paracrine Tool Endowed with Regenerative Potential. Stem Cells Transl Med. 2017 May;6(5):1340-1355,De Coppi P,et al. Isolation of amniotic stem cell lines with potential for therapy. Nat Biotechnol 2007;25:100-106を引用)。hAFSは胎性であるが胚性ではないため、多くの倫理的懸念を克服し、羊水穿刺または適格な帝王切開中に回収された残余の羊水試料または廃棄された羊水試料から幹細胞マーカーc-KITを発現させる際に容易に取得することができる(同上、De Coppi P,et al. Isolation of amniotic stem cell lines with potential for therapy. Nat Biotechnol 2007;25:100-106;Pozzobon M,et al. Isolation of c‐Kit+ human amniotic fluid stem cells from second trimester. Methods Mol Biol 2013;1035:191-198;Schiavo AA,et al. Endothelial properties of third‐trimester amniotic fluid stem cells cultured in hypoxia. Stem Cell Res Ther 2015;6:209を引用)。c‐KIT+ hAFSは、心筋梗塞(MI)のラット急性モデルにおいて梗塞サイズを縮小する心臓保護パラクリン効果を発揮することが示されている(同上、Bollini S, et al. Amniotic fluid stem cells are cardioprotective following acute myocardial infarction. Stem Cells Dev 2011;20:1985-1994を引用)。hAFSは、50~1,000nmのサイズのEVを能動的に分泌する(同上)。これらには、TSG101、ALIX、CD81、CD9、AnnV、及びCD63の発現によって識別されるナノサイズのエクソソーム粒子と、CD105などの細胞特異的マーカーが含まれる(同上、Lotvall J,et al. Minimal experimental requirements for definition of extracellular vesicles and their functions:A position statement from the International Society for Extracellular Vesicles. J Extracell Vesicles 2014;3:26913;Connolly KD,et al. Characterisation of adipocyte‐derived extracellular vesicles released pre‐ and post‐adipogenesis. J Extracell Vesicles 2015;24;4:29159を引用)。
本開示の主題は、創傷治癒を改善するためのEV組成物、及びその調製方法を提供することである。
一態様によれば、記載する本発明は、対象の創傷組織を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む第1の組成物と接触させることを含む、それを必要とする対象における創傷治癒の促進方法を提供し、治療量は、創傷面積を減少させ、創傷組織の修復を促進するのに効果的である。一実施形態によれば、組成物は、上皮細胞を活性化して間葉系細胞表現型(EMT)に移行することにより、創傷治癒を促進するのに効果的である。別の実施形態によれば、EVは、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する。別の実施形態によれば、EVは、約100,000×gでの沈降、約1.10~1.21g/mlのスクロース中の浮遊密度、及び約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする。別の実施形態によれば、接触は、局所または皮下である。別の実施形態によれば、第1の組成物は、ビメンチン、N-カドヘリン、Col1a1、Acta2、またはTGFbr2のうちの1つ以上のmRNAレベルを増加させるのに有効である。別の実施形態によれば、方法は、対象の創傷組織を、治療量のEV枯渇AFを含む第2の組成物と接触させるステップをさらに含み、第2の組成物の治療量は、間葉上皮転換(MET)を活性化し、傷ついた組織の修復を促進するのに効果的である。別の実施形態によれば、組織を、第1の組成物と接触させる時間と、第2の組成物と接触させる時間の間の長さは、約4時間~約24時間である。別の実施形態によれば、第2の組成物は、Stat3のmRNAレベルを増加させるのに効果的である。別の実施形態によれば、創傷は慢性創傷である。別の実施形態によれば、創傷は、糖尿病性潰瘍、褥瘡、または静脈性潰瘍である。別の実施形態によれば、創傷は火傷である。別の実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。別の実施形態によれば、EVを、a)超遠心;b)ショ糖密度勾配遠心分離;c)カラムクロマトグラフィー;d)サイズ排除;またはe)EVに対して選択的な親和性マトリックスを含む装置による濾過のうちの1つ以上によって羊水から精製する。別の実施形態によれば、方法は、EVをサイズによってフィルタリングするステップをさらに含む。別の実施形態によれば、EVは、約50nm~約200nmの平均直径によって特徴付けられる。
別の態様によれば、記載する本発明は、順に、羊水(AF)に由来する細胞外小胞(EV)を含む組成物と創傷を接触させて、対象における初期段階の創傷治癒を促進し;そして、EV枯渇AFを含む組成物と創傷を接触させて、対象における後期段階の創傷治癒を促進することを含む、それを必要とする対象における創傷治癒を促進する2段階の方法を提供する。一実施形態によれば、初期段階の創傷治癒は、上皮間葉転換(EMT)を活性化し、細胞遊走を誘導することを特徴とし、後期段階の創傷治癒は、間葉上皮転換(MET)及び創傷の上皮化を活性化することを特徴とする。別の実施形態によれば、EVは、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する。別の実施形態によれば、EVは、約100,000×gでの沈降、約1.10~1.21g/mlのスクロース中の浮遊密度、及び約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする。別の実施形態によれば、接触は、局所または皮下である。
別の態様によれば、記載する本発明は、対象の皮膚を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む組成物と接触させることを含む、それを必要とする対象における皮膚状態の調節方法を提供し、治療量は、皮膚のきめを改善する、しわを減らす、またはその両方に効果的であり、それによって皮膚状態を調節する。一実施形態によれば、方法は、組成物と接触させる前に、皮膚をマイクロニードリングすることをさらに含む。別の実施形態によれば、組成物は、上皮間葉転換(EMT)を活性化することによって皮膚状態を調節するのに効果的である。
非馴化無血清培地+10%羊水(uncSFM+AF)、uncSFM+10%AFのものと同量の羊水由来エクソソームを含むuncSFM(uncSFM+AFexos)、またはuncSFM+10%エクソソーム枯渇羊水(uncSFM+exo(-)AF)と共にインキュベートした、0、12、18、及び24時間のスクラッチ試験創傷治癒アッセイ中のC2C12筋芽細胞の明視野顕微鏡画像(20倍の対物レンズ)を示す一連の代表的な画像である。点線は、細胞が占めていない領域の輪郭を示す;スケールバーは50μmを示す。 図1に記載した条件におけるスクラッチ面積(時間ゼロでの全スクラッチに対する面積百分率)の定量化を示すグラフである。ImageJソフトウェアを使用して面積を計算し、条件と時点ごとに6つの独立した反復を測定した。各データポイントは、時間ゼロでの面積に対する平均面積百分率、±標準偏差を示す(uncSFM+AFまたはuncSFM+AFexosに対して、スチューデントt検定による*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001)。 全羊水(AF;合計)、ExoQuick TC-ULTRAキット(SBI Biosciences;exoCrude)を使用した羊水由来エクソソーム精製の粗画分、ExoQuick TC-ULTRAキット(SBI Biosciences;exoPure)由来の精製画分/溶出液、またはエクソソーム枯渇AF(exo(-)AF)のウエスタンブロット分析を示す写真である。CD63、アルブミン、及びCD9のプローブに使用する抗体を左側に示し、分子量(キロダルトン(kDa))を右側に示す。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のビメンチンmRNAの相対的存在量を示すグラフである。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のN-Cad/E-Cad mRNA比の相対的存在量を示すグラフである。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のCol1a1 mRNAの相対的存在量を示すグラフである。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のActa2 mRNAの相対的存在量を示すグラフである。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のTgfbr2 mRNAの相対的存在量を示すグラフである。 筋芽細胞スクラッチ試験アッセイにおける羊水画分由来の馴化培地中のStat3 mRNAの相対的存在量を示すグラフである。 非馴化無血清培地+10%羊水(uncSFM+AF)、uncSFM+10%AF中のものと同量の羊水由来エクソソームを含むuncSFM(uncSFM+AFexos)、またはuncSFM+10%エクソソーム枯渇羊水(uncSFM+exo(-)AF)と共にインキュベートした、0、12、18、及び24時間のスクラッチ試験創傷治癒アッセイ中のMMM線維芽細胞の明視野顕微鏡画像(20倍の対物レンズ)を示す一連の代表的な画像である。点線は、細胞が占めていない領域の輪郭を示す;スケールバーは50μmを示す。 図10に記載した条件におけるスクラッチ面積(時間ゼロでの全スクラッチに対する面積百分率)の定量化を示すグラフである。ImageJソフトウェアを使用して面積を計算し、条件と時点ごとに6つの独立した反復を測定した。各データポイントは、時間ゼロでの面積に対する平均面積百分率、±標準偏差を示す(uncSFM+AFまたはuncSFM+AFexosに対して、スチューデントt検定による*P<0.05及び**P<0.01)。 対象におけるCelexoderm(商標)による治療前及び治療後14日を示す写真である。 全羊水(全AF)、エクソソーム枯渇AF(exo(-)AF)、及びエクソソームリッチなAF画分(AF exos)のタンデム質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC/MS-MS)によって分析した生物学的三連試料のオーバーラップ(または非オーバーラップ)の程度を示すベン図である。分析を実施して、全スペクトルに対するペプチド濃縮を生成し、次いで、タンパク質に一意にマッピングしたペプチドのオーバーラップの程度を測定した。得られたベン図は、分析した試料のオーバーラップ(または非オーバーラップ)の程度を示す。 LC/MS-MSによって、全AF中に認められたタンパク質よりも高いレベルでエクソソームリッチなAF画分中に存在すると同定されたタンパク質に有意に関連する生物学的値、機能、及びプロセスを決定するための、DAVIDバイオインフォマティクスデータベースを使用した遺伝子オントロジー分析の結果を示す。 LC/MS-MSによって、全AF中に認められたタンパク質よりも高いレベルでエクソソーム枯渇AF画分中に存在すると同定されたタンパク質に有意に関連する生物学的値、機能、及びプロセスを決定するための、DAVIDバイオインフォマティクスデータベースを使用した遺伝子オントロジー分析の結果を示す。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」「an」、及び「the」は、文脈が別に指示しない限り複数の言及を含む。したがって、例えば、「ペプチド」への言及は、当業者に公知の1つ以上のペプチド及びその等価体などへの言及である。
本明細書中で使用する場合、用語「約」とは、それが使用されている数の数値の±20%を意味する。したがって、約50%は、40%~60%の範囲を意味する。
治療手段と組み合わせて使用する場合の「投与」とは、標的器官、組織もしくは細胞に直接治療薬を与えるか、または塗布すること、あるいは対象に治療薬を投与して、それによって治療薬が、器官、組織、細胞、またはそれを標的とする対象にプラスの影響を与えることを意味する。したがって、本明細書中で使用する場合、用語「投与する」には、EVまたはその組成物と組み合わせて使用する場合、標的器官、組織または細胞の内部または上にEVを提供し;または、例えば静脈内注射によって患者に全身的にEVを提供し、それによって治療薬を、標的の器官、組織、または細胞に到達させることが含まれ得るが、これらに限定されない。「投与」は、非経口、経口、皮下、または局所投与によって、吸入によって、または他の既知の技術と組み合わせたそのような方法によって達成され得る。
本明細書中で使用する用語「同種異系」とは、同じ種に属するか、または同じ種から得られるが、遺伝的に異なることを指す。
用語「アミノ酸」とは、アミノ基とカルボキシル基の両方を含む有機分子を指すために使用され;天然のタンパク質のビルディングブロックとして機能するアミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基の両方が同じ炭素原子に結合しているαアミノ酸である。用語「アミノ酸残基」または「残基」は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに組み込まれるアミノ酸を指すために同じ意味で用いられ、天然のアミノ酸及び天然のアミノ酸と同様に機能することができる天然アミノ酸の類似体が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中でアミノ酸に使用する略語は、従来使用されている略語である:A=Ala=アラニン;R=Arg=アルギニン;N=Asn=アスパラギン;D=Asp=アスパラギン酸;C=Cys=システイン;Q=G1n=グルタミン;E=Glu=グルタミン酸;G=Gly=グリシン;H=His=ヒスチジン;I=Ile=イソロイシン;L=Leu=ロイシン;K=Lys=リジン;M=Met=メチオニン;F=Phe=フェニルアラニン;P=Pro=プロリン;S=Ser=セリン;T=Thr=スレオニン;W=Trp=トリプトファン;Y=Tyr=チロシン;V=Val=バリン。アミノ酸は、L-またはD-アミノ酸であり得る。アミノ酸は、ペプチドの半減期を増加させるか、ペプチドの効力を増加させるか、またはペプチドのバイオアベイラビリティを増加させるように改変される合成アミノ酸で置き換えてもよい。
以下は、互いに保存的な置換であるアミノ酸の群を表す:
アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
アルギニン(R)、リジン(K);
イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
羊膜。羊膜は、胚外組織から発達し、胎児成分(絨毛膜板)と母体成分(脱落膜、妊娠中の子宮の内層を意味する)からなり、絨毛膜絨毛によって一緒に保持され、絨毛膜の栄養膜細胞層外皮を基底脱落膜に接続する。羊膜及び絨毛膜を含む胎児成分は、胎児を子宮内膜から分離する。羊膜は、胎児を囲む嚢の外側境界を形成し、一方、嚢の最内層は羊膜である。
羊膜(AM)は、内側から外側に向かって、(A)上皮単層、(B)厚い基底膜、(C)緻密層、(D)線維芽細胞層、及び(E)海綿状層からなる。羊膜上皮は、胎児に最も近い最も内側の層であり、羊水と接触しており、基底膜上に均一に配置された単層の細胞からなる。基底膜及び間質表面を形態学的にインタクトなままに維持する一方で、上皮層は除去され得る。基底膜は、細網線維のネットワークからなる。基底膜に隣接する間質マトリックスの緻密層は、AMの主要な線維性骨格を形成する。緻密層のコラーゲンは、線維芽細胞層内の間葉系細胞から分泌される。間質コラーゲン(I型及びIII型)が優勢であり、AMの機械的完全性を維持する平行な束を形成する。V型及びVI型のコラーゲンは、間質コラーゲンと上皮基底膜の間に糸状の接続を形成する。線維芽細胞層は、網状組織の塊に埋め込まれた緩い線維芽細胞ネットワークからなる。間質基質の海綿状層は、絨毛膜に隣接して位置し、羊膜と絨毛膜の間で圧縮されている胚外体腔の組織を表す。それは、主にIII型コラーゲンの非線維性網目構造を含む。海綿状層は、絨毛膜に緩く接続し;したがって、AMは鈍的切開によって絨毛膜から容易に分離される(Niknejad,H.et al,Eur. Cells and Materials(2008)15:88-99)。
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、語句「羊膜(AM)細胞」は、語句「羊膜上皮細胞(AEC)」と同じ意味で使用され、その大部分が羊膜上皮細胞からなる羊膜に由来するすべての細胞型を含むことを意図する。
本明細書中で使用する用語「羊膜幹細胞」は、羊膜に由来する多能性幹細胞、複能性幹細胞、及び前駆細胞を指し、これらは、適切な条件下でin vitro及び/またはin vivoで限られた数の細胞型を生じさせることができ、明示的に羊膜上皮細胞と羊膜幹細胞の両方を含む。
本明細書中で使用する用語「動物」、「患者」、及び「対象」には、ヒト及び野生動物、飼育動物、家畜などの非ヒト脊椎動物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、用語「動物」、「患者」、及び「対象」は、ヒトを指し得る。いくつかの実施形態によれば、用語「動物」、「患者」、及び「対象」は、非ヒト哺乳類を指し得る。
本明細書中で使用する場合、特定の病態の治療を「必要とする対象」という語句は、その病態を有するか、その病態を有すると診断されるか、またはその病態を発症するリスクがある対象である。いくつかの実施形態によれば、そのような治療を「必要とする対象」という語句はまた、語句の文脈及び使用法が別段の指示をしない限り、(i)記載する本発明の組成物を投与されるか;(ii)記載する本発明の組成物を受け取っているか;または(iii)記載する本発明の組成物を少なくとも1つ受け取っていた患者を指すために使用される。
本明細書中で使用する用語「抗体」とは、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内部表面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される少なくとも1つの結合ドメインからなるポリペプチドまたはポリペプチドの群を指す。抗体は、通常、ポリペプチド鎖の2つの同一のペアを含み、各ペアが1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する四量体形態を有する。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。本明細書中で使用する場合、「標的化結合剤」は、標的部位に優先的に結合する抗体またはその結合断片である。いくつかの実施形態によれば、標的化結合剤は、1つの標的部位のみに特異的である。いくつかの実施形態によれば、標的化結合剤は、複数の標的部位に特異的である。いくつかの実施形態によれば、標的化結合剤はモノクローナル抗体であってもよく、標的部位はエピトープであってもよい。本明細書中で使用する用語「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合ポケットと相互作用する結合相互作用を形成し得る抗原または他の高分子の部分を指す。抗体の「結合断片」は、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって生成される。結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、及び単鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解されている。抗体は、過剰な抗体が、カウンター受容体に結合する受容体の量を少なくとも約20%、40%、60%または80%、より一般的には約85%以上減少させる場合(in vitro競合結合アッセイで測定)、カウンター受容体への受容体の接着を実質的に阻害する。抗体は、オリゴクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体、及び単独で、または既知の技術によって提供される他のアミノ酸配列と組み合わせて、可溶性形態または結合形態で標識することができる抗体、ならびにそれらの断片、バリアントまたは誘導体であり得る。抗体は任意の種に由来し得る。抗体という用語はまた、本発明の抗体の結合断片を含み;例示的な断片として、Fv、Fab、Fab’、単鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディ)及びジスルフィド安定化可変領域(dsFv)が挙げられる。本明細書中で考察されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列のわずかな変化形は、そのアミノ酸配列の変化形が、本明細書に記載の抗体または免疫グロブリン分子に対して、少なくとも約75%、及びいくつかの実施形態では、少なくとも約80%、約90%、約95%、及び約99%の配列同一性を維持する限りにおいて、記載する本発明によって包含されることが企図される。保存的アミノ酸置換が企図される。例えば、ロイシンとイソロイシンまたはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、スレオニンとセリンとの独立した置換、またはアミノ酸と、構造的に関連したアミノ酸との同様の置換は、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸に関与しない場合、結果として得られる分子の結合機能または特性に対して主要な影響を及ぼさないと予想することが妥当である。アミノ酸変化が機能性ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。本明細書において、アッセイを詳細に記載する。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者によって容易に調製することができる。いくつかの実施形態によれば、断片または類似体のアミノ末端及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界の近くで生じる。構造的及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列データを、公的または独自開発の配列データベースと比較することによって同定することができる。例えば、コンピュータ比較法を使用して、構造及び/または機能が既知である他のタンパク質内で生じる、配列モチーフまたは予想されるタンパク質立体構造ドメインを同定することができる。既知の三次元構造へと折り畳まれるタンパク質配列を同定するための方法は、既知である。例えば、参照によりその全体が援用されるBowie et al. Science 253:164(1991)を参照されたい。
本明細書中で使用する場合、用語「抗原」とは、対象において抗体応答を誘発するか、または抗体によって認識され、結合される分子、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、断片、または他の生物学的部分を指す。
用語「アポトーシス」または「プログラム細胞死」とは、生物に損傷を与えることなく、小疱形成、細胞膜の変化、例えば、膜の非対称性と接着の喪失、細胞の収縮、核の断片化、クロマチンの凝縮、及び染色体DNAの断片化を含む、様々な形態学的変化をもたらす一連の生化学的事象からなる、生物学的ホメオスタシスに寄与する高度に制御された能動的プロセスを指す。
本明細書中で使用する用語「オートクリンシグナル伝達」とは、細胞が、それ自体または同じタイプの他の隣接する細胞に作用するシグナル分子を分泌するタイプの細胞シグナル伝達を指す。
本明細書中で同じ意味で使用される用語「自家」または「自己」とは、同じ生物に由来することを意味する。
用語「基礎培地」または「無血清培地(SFM)」とは、添加される血清を含まない(すなわち、本質的に血清を含まない)培地を意味することを意図している。基礎培地の例として、DMEM/F12、DMEM、F12、及びIMDMが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用する用語「結合」及び他の文法形式は、化学物質間の永続的な引力を意味する。結合特異性には、特定のパートナーへの結合と他の分子への非結合の両方が含まれる。機能的に重要な結合は、低から高までの範囲の親和性で生じ得、設計要素は、望ましくない交差型相互作用を抑制し得る。翻訳後修飾もまた、相互作用の化学的性質と構造を変化させ得る。「無差別結合」は、ある程度の構造的可塑性を伴う場合があり、その結果、異なるパートナーへの結合に重要な残基の異なるサブセットが生じ得る。「相対的結合特異性」は、生化学系において、分子がその標的またはパートナーと特異的に相互作用し、それによって個々の標的またはパートナーが何であるかによってそれらに特徴的に影響を与えるという特徴である。
本明細書中で使用する用語「バイオマーカー」または「マーカー」とは、生物学的状態の指標として使用されるペプチド、タンパク質、核酸、抗体、遺伝子、代謝産物、または任意の他の物質を指す。これは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の細胞または分子の指標として、客観的に測定され、評価される特性である。本明細書中で使用する用語「指標」とは、時間;または目に見えるシグナル、標識、マーク、注釈、もしくは症状、あるいはその存在のエビデンスまたは存在それ自体の関数としての相対的変化を明らかにし得る一連の観察される事実から導き出される任意の物質、数、または比率を指す。提案されたバイオマーカーが検証されると、それを使用して、個体における疾患リスク、疾患の存在を診断するか、または個体における疾患の治療を調整(薬物治療または投与計画の選択)し得る。潜在的な薬物療法を評価する際に、バイオマーカーは、生存率または不可逆的な罹患率などの自然なエンドポイントの代理として使用され得る。治療によりバイオマーカーが変化し、その変化が健康の改善に直接関係する場合、バイオマーカーは、臨床的有用性を評価するための代理エンドポイントとして役立ち得る。臨床エンドポイントは、患者がどのように感じ、機能し、生き残るかを測定するために使用することができる変数である。代理エンドポイントは、臨床エンドポイントの代替となることを目的としたバイオマーカーであり;これらのバイオマーカーは、規制当局及び臨床コミュニティに受け入れられる信頼水準で臨床エンドポイントを予測することが示されている。
本明細書中で使用する用語「担体」とは、生物に重大な刺激を引き起こさず、記載する本発明の組成物の化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない物質を指す。担体は、治療しようとする哺乳類への投与に適したものにするために、十分に高純度で、十分に低毒性でなければならない。担体は、不活性で有り得るか、または薬学的有用性を有し得る。用語「賦形剤」、「担体」、または「ビヒクル」は、同じ意味で用いられ、本明細書に記載の薬学的に許容される組成物の製剤化及び投与に適した担体物質を指す。本明細書における有用な担体及びビヒクルには、毒性がなく、他の成分と相互作用しない、当技術分野で公知のそのような物質が含まれる。
本明細書中で使用する用語「絨毛膜」とは、羊膜、胚、ならびに子宮内の他の膜及び実体を取り囲む外側の卵膜を指す。緩く配置されたコラーゲン繊維の海綿状層は、羊膜中胚葉と絨毛膜中胚葉を分離する。絨毛膜は、中胚葉と栄養膜の領域からなる。絨毛膜と羊膜中胚葉は組成が似ている。大きくて不完全な基底膜は、絨毛膜中胚葉を絨毛外栄養膜細胞から分離する。後者は、基板に存在する栄養膜細胞と同様に、フィブリノイド層内に分散しており、増殖の免疫組織化学的マーカーを発現する。ラングハンスフィブリノイド層は、通常、妊娠中に増加し、2つの異なる型のフィブリノイドからなる:内側のマトリックス型(よりコンパクト)と外側のフィブリン型(より網状)である。胎盤の端及び基板において、栄養膜は、脱落膜と広範囲に噛み合っている(Cunningham,F.et al.,The placenta and fetal membranes,Williams Obstetrics,20th ed. Appleton and Lange,1997,95-125;Benirschke,K. and Kaufmann,P. Pathology of the human placenta. New York,Springer-Verlag,2000,42-46,116,281-297)。母体組織をつなぐ絨毛膜は、4つの層からなる。これらは、内側から外側に向かって:(F)細胞層、交錯した線維芽細胞ネットワークからなる薄い層であり、多くの場合に不完全であるか、またはまったく存在しない;(G)いくつかの線維芽細胞及び多くのホーフバウアー細胞とともに、その繊維が平行になる傾向がある網状ネットワークからなる網状層;(H)上記の網状層にしっかりと接着している密性結合組織の層であり、アンカー線維及び分岐繊維を栄養膜に送り込む疑似基底膜;ならびに(I)より深部の側面上で母体の脱落膜と接触している2~10層の栄養膜細胞からなる、絨毛膜の最深部層である、栄養膜層である。この層には絨毛膜絨毛が含まれている(Bourne,GL,Am.J.Obstet.& Gynec.(1960)79(6):1070-73)。
「表面抗原分類(Cluster of Differentiation)」または「表面抗原分類(cluster of designation)」(CD)分子は、フローサイトメトリーを含む様々な方法を使用した細胞選別に利用される。細胞集団は通常、「+」または「-」記号を使用して定義され、これは、特定の細胞画分が特定のCD分子を発現するかどうかを示す。
本明細書中で使用する用語「馴化培地(conditioned medium)」(または複数形でmedia)とは、培養細胞によって培地に放出された代謝産物、成長因子、RNA及びタンパク質を含む培養細胞から採取された使用済み培地を指す。
本明細書中で使用する用語「接触」及びその様々な文法形式は、接触の、または直近もしくは近接の状態または条件を指す。
本明細書中で使用する用語「培養培地(culture medium)」(または複数形でmedia)とは、制御された増殖の下で細胞または組織を培養する、栄養素を含む物質を指す。
本明細書中で使用する用語「サイトカイン」とは、細胞によって分泌され、他の細胞に様々な影響を与える小さな可溶性タンパク質物質を指す。サイトカインは、増殖、発達、創傷治癒、及び免疫応答を含む、多くの重要な生理学的機能を媒介する。それらは、細胞膜にある細胞特異的受容体に結合することによって作用し、それにより、細胞内で別個のシグナル伝達カスケードが開始され、最終的には標的細胞の生化学的及び表現型の変化をもたらす。一般的に、サイトカインは局所的に作用する。それらには、インターロイキンの多くが包含されるI型サイトカイン、及びいくつかの造血成長因子;インターフェロン及びインターロイキン-10を含むII型サイトカイン;TNFα及びリンホトキシンを含む腫瘍壊死因子(TNF)関連分子;インターロイキン1(IL-1)を含む免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;ならびに様々な免疫機能及び炎症機能に重要な役割を果たす分子のファミリーであるケモカインが含まれる。同じサイトカインは、細胞の状態に応じて細胞に異なる影響を与え得る。サイトカインは、多くの場合、他のサイトカインの発現を調節し、そのカスケードを引き起こす。
本明細書中で使用する場合、用語「由来する」は、供給源から何かを受け取るか、獲得するか、または修飾するための任意の方法を包含することを意味する。
本明細書中で使用する場合、用語「検出」、「決定」、及びそれらの他の文法形式は、例えば、miRNAの存在もしくはレベル、または生体試料の状態の有無などの、バイオマーカーの同定または定量化のために実行する方法を指すために使用される。試料中で検出されるバイオマーカーの発現または活性の量は、全く無いか、アッセイまたは方法の検出レベル以下であり得る。
本明細書中で使用する用語「分化」とは、より特殊な機能を伴う、細胞または組織の組織化または複雑さのレベルの増加を伴う発達のプロセスを指す。
本明細書中で使用する用語「疾患」または「障害」とは、健康の障害または異常な機能の状態を指す。
本明細書中で使用する語句「初期段階」とは、凝固/止血及び炎症などの創傷治癒の初期の態様を指す。本明細書中で使用する語句「後期段階」とは、増殖及びリモデリング/成熟などの創傷治癒の後期の態様を指す。
本明細書中で使用する用語「内在性」とは、天然の、内部に組み込まれる、内部に収容される、接着する、付着する、または内部に存在することを指す。本明細書中で使用する用語「外来性」とは、非天然の、または特定のEV、細胞、生物、もしくは種の外部で発生もしくは生成されることを指す。
本明細書中で使用する場合、用語「濃縮する」とは、所望の物質の割合を増加させて、例えば、細胞集団における細胞または細胞成分のあるサブタイプの相対出現頻度を、天然の出現頻度に比べて増加させることを指すことを意味する。ポジティブ選択、ネガティブ選択、またはその両方は、一般的に、あらゆる濃縮スキームに必要であると考えられている。選択方法には、磁気分離及び蛍光標識細胞分取(FACS)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用する語句「上皮間葉転換」または「EMT」とは、上皮細胞がそれらの細胞極性及び細胞間接着を失い、遊走性及び浸潤性を獲得して間葉系幹細胞になるプロセスを指す。本明細書中で使用する語句「間葉上皮転換」または「MET」とは、逆のプロセスを指す。
本明細書中で使用する用語「悪化」とは、疾患またはその徴候または症状のいずれかの重症度の増加を指す。
本明細書中で使用する用語「増殖」及びその様々な文法的形態は、分散した生細胞が培養培地中、in vitroで増殖し、その結果、生細胞の数または量が増加するプロセスを指す。
本明細書中で使用する場合、用語「発現」及びその様々な文法的形態は、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(mRNAまたは他のRNA転写産物などに)転写されるプロセス及び/または転写されたmRNAが、その後、ペプチド、ポリヌクレオチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写産物及びコードされたポリペプチドを、まとめて「遺伝子産物」と呼ぶ場合がある。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞でのmRNAのスプライシングが含まれ得る。発現はまた、ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾を指し得る。
本明細書中で使用する用語「細胞外小胞」または「EV」は、細胞外環境に放出されて影響を及ぼし得るタンパク質、RNA及びマイクロRNAなどの生理活性分子を運ぶエクソソーム及び微小胞を含む。微小胞は、細胞表面からの膜小胞の外向きの出芽と分裂によって生成されると考えられている小さな膜で囲まれた嚢である。エクソソームは主に、原形質膜との融合時に放出される、あらかじめ形成された多小胞体に由来する。用語「EV枯渇」とは、細胞外小胞を本質的に含まないか、または実質的に含まないことを意味する。
本明細書中で使用する用語「成長因子」とは、細胞表面受容体に結合して細胞内シグナル伝達経路を誘発し、増殖、分化、または他の細胞応答をもたらす細胞外ポリペプチド分子を指す。これらの経路は、例えば、その合成速度を高めるか、その分解速度を低下させるか、またはその両方により、タンパク質及び他の高分子の蓄積を刺激する。例示的な成長因子には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
線維芽細胞成長因子(FGF)。線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーには、現在、構造的に関連する12を上回るメンバーが存在する。FGF1は、酸性FGFとしても知られ;FGF2は、塩基性FGF(bFGF)と呼ばれる場合があり;そしてFGF7は、ケラチノサイト成長因子という名前で呼ばれることもある。脊椎動物では、12を上回る、別個のFGF遺伝子が知られており;それらは、異なる組織内でRNAスプライシングまたは開始コドンを変化させることにより、何百ものタンパク質アイソフォームを生成することができる。FGFは、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)と呼ばれる一連の受容体型チロシンキナーゼを活性化することができる。受容体型チロシンキナーゼは、細胞膜を通って延伸するタンパク質である。パラクリン因子に結合するタンパク質の部分は細胞外側にあり、一方、休眠チロシンキナーゼ(すなわち、ATPを分割することによって別のタンパク質をリン酸化することができるタンパク質)は細胞内側にある。FGF受容体がFGFに結合すると(そしてそれがFGFに結合する場合のみ)、休眠キナーゼが活性化され、応答細胞内の特定のタンパク質をリン酸化して、それらのタンパク質を活性化する。
FGFは、血管新生(血管形成)、中胚葉形成、及び軸索伸長を含む、いくつかの発達機能に関連している。FGFは、多くの場合、互いに代用可能であるが、それらの発現パターンはそれらに別々の機能を与える。例えば、FGF2は血管新生に特に重要であるが、一方、FGF8は中脳と四肢の発達に関与している。
インスリン様成長因子(IGF-1)。インスリンと分子構造が類似するホルモンであるIGF-1は、体内のほぼすべての細胞、特に骨格筋、軟骨、骨、肝臓、腎臓、神経、皮膚、造血細胞、及び肺に成長促進効果をもたらす。それは子供の成長に重要な役割を果たし、大人にタンパク同化性の効果を与え続ける。IGF-1は、主に肝臓によって内分泌ホルモンとして、また標的組織でパラクリン/オートクリン様式で産生される。産生は成長ホルモン(GH)によって刺激され、栄養不足、成長ホルモン非感受性、成長ホルモン受容体の欠如、またはチロシンタンパク質ホスファターゼ非受容体11型(SHP2としても知られ、ヒトのPTPN11遺伝子によってコードされる)及び転写因子のSTATファミリーのメンバーであるシグナル伝達兼転写活性化因子5B(STAT5B)を含む、下流のシグナル伝達分子の障害によって遅延し得る。その主な作用は、多くの組織内の多くの細胞型に存在するその特定の受容体であるインスリン様成長因子1受容体(IGF1R)への結合によって媒介される。受容体型チロシンキナーゼであるIGF1Rに結合すると、細胞内シグナル伝達が開始されるが;IGF-1は、AKTシグナル伝達経路の最も強力な天然活性化因子の1つであり、細胞の成長及び増殖の刺激因子であり、プログラム細胞死の強力な阻害剤である。IGF-1は、成長ホルモン(GH)の効果の主要なメディエーターである。成長ホルモンは下垂体で作られ、血流に放出され、次いで肝臓を刺激してIGF-1を産生する。その後、IGF-1は全身の体の成長を刺激する。インスリン様効果に加えて、IGF-1はまた、特に神経細胞における細胞の増殖及び発達、ならびに細胞のDNA合成を調節することができる。
IGF-1は、ケモカイン受容体CXCR4(間質細胞由来因子-1、SDF-1の受容体)の発現レベルを増加させ、SDF-1に対するMSCの遊走応答を著しく増加させることが示された(Li,Y,et al,“Insulin-like growth factor 1 enhances the migratory capacity of mesenchymal stem cells,” 2007 Biochem. Biophys. Res.Communic.356(3):780-784)。SDF-1に応答したMSC遊走のIGF-1誘発性の増加は、PI3キナーゼ阻害剤(LY294002及びワートマニン)によって減弱されたが、マイトジェン活性化タンパク質/ERKキナーゼ阻害剤PD98059では減弱されなかった。いかなる特定の理論にも制限されるものではないが、データは、IGF-1がPI3/Akt依存性であるCXCR4ケモカイン受容体シグナル伝達を介してMSC遊走応答を増加させることを示している。
トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)。TGF-βスーパーファミリーには30以上の構造的に関連するメンバーがあり、それらは発達における最も重要な相互作用のいくつかを調節する。TGF-βスーパーファミリー遺伝子によってコードされるタンパク質は、カルボキシ末端領域が成熟ペプチドを含むようにプロセシングされる。これらのペプチドは、ホモ二量体(それ自体との)またはヘテロ二量体(他のTGF-βペプチドとの)に二量体化され、細胞から分泌される。TGF-βスーパーファミリーには、TGF-βファミリー、アクチビンファミリー、骨形成タンパク質(BMP)、Vg-1ファミリー、ならびにグリア由来神経栄養因子(GDNF、腎臓及び腸ニューロンの分化に必要)及び哺乳類の性決定に関与するミュラー管抑制因子を含むその他のタンパク質が含まれる。TGF-βファミリーのメンバーであるTGF-β1、2、3、及び5は、細胞間の細胞外マトリックス形成の調節、及び細胞分裂(正と負の両方で)の調節に重要である。TGF-β1は、コラーゲン及びフィブロネクチンの合成を刺激すること、ならびにマトリックスの分解を阻害することの両方により、細胞外マトリックス上皮細胞の量を増加させる。TGF-βは、上皮が分岐して腎臓、肺、及び唾液腺の管を形成できる位置及び時期を制御する上で重要であり得る。
血管内皮成長因子(VEGF)。VEGFは、増殖、遊走、浸潤、生存、及び透過性など、内皮細胞の多くの機能を媒介する成長因子である。VEGF及びそれらの対応する受容体は、脈管形成、血管新生、またはリンパ管系の形成のいずれかによって、最終的に血管系の発達をもたらす分子及び細胞事象のカスケードにおける重要な調節因子である。VEGFは、生理学的血管新生における重要な調節因子であり、骨格の成長及び修復においても重要な役割を果たす。
VEGFの正常な機能により、胚発生中、損傷後、及び閉塞した血管を迂回するために新規血管が作成される。成熟した確立された血管系において、内皮は、隣接する組織に情報伝達ネットワークを提供して、必要に応じて要求に応答することにより、周囲の組織の恒常性の維持において重要な役割を果たす。さらに、血管系は、周囲の組織が必要とする成長因子、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、及び代謝産物などを提供し、分子及び細胞の動きを制限するバリアとして機能する。
本明細書中で使用する用語「ハイブリダイゼーション」とは、塩基対形成を介した2つの一本鎖核酸分子の相互の結合を指す。ヌクレオチドは通常の条件下でそれらの相補体と結合するため、2つの完全に相補的な鎖は互いに容易に結合(すなわち「アニーリング」)する。しかしながら、ヌクレオチドの分子構造が異なるため、2つの鎖間の単一の不一致により、それらの間の結合がよりエネルギー的に不利になる。2本の鎖がアニーリングする速度を定量化することによって塩基の非互換性の影響を測定することにより、アニーリングする2本の鎖間の塩基配列の類似性に関する情報を得ることができる。
本明細書中で使用する用語「炎症」とは、血管形成組織が損傷に応答する生理学的プロセスを指す。例えば、参照により本明細書に援用されるFUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,4th Ed.,William E.Paul,ed. Lippincott-Raven Publishers,Philadelphia(1999)at 1051-1053を参照されたい。炎症プロセスの間に、解毒及び修復に関与する細胞が、炎症性メディエーターによって損傷部位に動員される。炎症は、多くの場合、炎症部位での白血球、特に好中球(多形核細胞)の強い浸潤を特徴とする。これらの細胞は、血管壁または無傷の組織に有毒物質を放出することにより、組織の損傷を促進する。伝統的に、炎症は急性応答と慢性応答に分けられてきた。本明細書中で使用する用語「急性炎症」とは、体液、血漿タンパク質、及び好中球白血球の蓄積を特徴とする急性損傷に対する迅速かつ一時的な(数分~数日)比較的均一な応答を指す。急性炎症を引き起こす有害物質の例として、病原体(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫)、外来性(例えば、アスベスト)または内在性(例えば、尿酸結晶、免疫複合体)由来の異物、供給源、及び物理的(例えば、火傷)または化学的(例えば、腐食性)因子が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用する用語「慢性炎症」とは、より長期間であり、終わりが曖昧で不明確な炎症を指す。慢性炎症は、初期の催炎物質の不完全なクリアランスを通して、または同じ位置で発生する複数の急性事象の結果として、急性炎症が持続する場合に引き継がれる。リンパ球とマクロファージの流入及び線維芽細胞の増殖を含む慢性炎症は、炎症活動が長期化または繰り返される部位で組織の瘢痕化を引き起こし得る。
本明細書中で使用する用語「注入」及び他の文法的形態は、静脈への血液以外の流体の導入を指す。
用語「単離された」は、本明細書中では、(1)天然の環境で認められるように、通常付随するかまたは相互作用する成分を実質的に、または本質的に含まない核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質などであるがこれらに限定されない物質を指すために用いられる。用語「実質的に含まない」または「本質的に含まない」は、本明細書中では、かなり、もしくは有意に含まないこと、または約95%、96%、97%、98%、99%以上もしくは100%含まないことを指すために使用される。単離された物質は、任意選択で、その天然の環境においてその物質と共に見出されない物質を含み;または(2)物質がその天然の環境にある場合、物質は、組成物への意図的な人間の介入によって合成的に(非天然に)改変されており、及び/またはその環境において見出される物質にとって天然ではない細胞内の位置(例えば、ゲノムまたは細胞内小器官)に配置されている。合成物質を得るための改変は、その天然状態にある物質に対して実施するか、またはその天然状態から除去してもよい。
本明細書中で使用する用語「マトリックスメタロプロテイナーゼ」とは、細胞外マトリックス成分の分解及びリモデリングに関与する亜鉛依存性プロテアーゼのコレクションを指す(Guiot,J.et al,“Blood biomarkers in idiopathic pulmonary fibrosis,” Lung(2017)195(3):273-280,Oikonomidi et al.,“Matrix metalloproteinases in respiratory diseases:from pathogenesis to potential clinical implications,” Curr Med Chem.2009;16(10):1214-1228を引用)。MMP-1及びMMP-7は、過敏性肺炎、サルコイドーシス、及びCOPDと比較して、主にIPF患者の血漿で過剰発現しているようであり、鑑別診断に役立つ可能性がある(同上、Rosas IO,et al.,“MMP1 and MMP7 as potential peripheral blood biomarkers in idiopathic pulmonary fibrosis,” PLoS Med.2008;5(4):e93を引用)。それらは炎症にも関与しており、肺線維症の病態生理学的プロセスに関与しているようである(同上、Vij R,Noth I. “Peripheral blood biomarkers in idiopathic pulmonary fibrosis,” Transl Res.2012;159(4):218-27;Dancer RCA,et al.,“Metalloproteinases in idiopathic pulmonary fibrosis,” Eur Respir J. 2011;38(6):1461-67を引用)。最も研究されているのはMMP-7であり、これは遺伝子レベルとタンパク質レベルの両方で、上皮細胞で有意に増加することが知られており、IPFの過形成上皮細胞と肺胞マクロファージで活性があると考えられている(同上、Fujishima S,et al.,“Production and activation of matrix metalloproteinase 7(matrilysin 1) in the lungs of patients with idiopathic pulmonary fibrosis,” Arch Pathol Lab Med. 2010;134(8):1136-42を引用)。高いMMP-7濃度と、強制肺活量(FVC)及びDLCO(%pred)によって評価される疾患の重症度との間にも有意な相関関係がある(同上、Rosas IO,et al.,“MMP1 and MMP7 as potential peripheral blood biomarkers in idiopathic pulmonary fibrosis,” PLoS Med. 2008;5(4):e93を引用)。高いレベルは、疾患の進行と生存率の低下に関連していた(MMP-7では>4.3ng/ml)(同上)。MMP2遺伝子は、マトリックスメタロペプチダーゼ2を作成するための指示を提供する。この酵素は、体全体の細胞で生成され、細胞間の空間に形成されるタンパク質及び他の分子の複雑な格子である細胞外マトリックスの一部になる。MMP-2の主な既知の機能の1つは、IV型コラーゲンを切断することであり、これは、細胞外マトリックスの一部として細胞を分離及び支持する薄いシート状の構造である基底膜の主要な構造成分である。
本明細書中で使用する用語「マイクロニードリング」とは、非常に細い針が皮膚を穿刺して制御された損傷を引き起こし、皮膚がより多くのコラーゲンを生成するように誘導し、顔の色つやを向上させる美容処置を指す。マイクロニードリングは、角質層(皮膚の外層)の針刺しに続く成長因子の放出の結果として起こるコラーゲン形成と血管形成に依存している。この手順は、瘢痕及び光老化の治療によく使用される。
用語「核酸」とは、本明細書中では、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指すために使用され、他に限定されない限り、それらが天然のヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)と同様の方法で一本鎖核酸にハイブリダイズするという点で天然ヌクレオチドの本質的な性質を有する既知の類似体を包含する。
用語「ヌクレオチド」は、本明細書中では、複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基からなる化合物を指すために使用される。最も一般的なヌクレオチドでは、塩基はプリンまたはピリミジンの誘導体であり、糖はペントースデオキシリボースまたはリボースである。ヌクレオチドは核酸のモノマーであり、核酸を形成するために3つ以上が結合している。ヌクレオチドは、RNA、DNA、ならびにCoA、FAD、DMN、NAD、及びNADPを含むがこれらに限定されないいくつかの補因子の構造単位である。プリンには、アデニン(A)とグアニン(G)が含まれ;ピリミジンには、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)が含まれる。
本明細書中で使用する場合、用語「パラクリンシグナル伝達」とは、隣接する細胞に作用する分泌されたシグナル分子を介した短距離の細胞間コミュニケーションを指す。
用語「医薬組成物」は、本明細書中では、標的の病態または疾患を、予防、強度の軽減、治癒、または治療するために使用する組成物を指すために使用される。用語「製剤」及び「組成物」とは、本明細書中では同じ意味で用いられ、すべての活性及び不活性成分を含む記載する本発明の製品を指す。
「薬学的に許容される」は、担体、希釈剤、または賦形剤が、製剤または組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって有害ではないことを指すために使用される。例えば、用語「薬学的に許容される」とは、動物、より具体的にはヒトで使用するために、連邦または州政府の規制当局によって承認されているか、または米国薬局方または他の一般的に認知されている薬局方に記載されていることを意味し得る。
用語「プライマー」とは、DNAの鎖にハイブリダイズした場合に、適切な重合剤の存在下で伸長産物の合成を開始することができる核酸を指す。プライマーは、DNA鎖の特定の領域にユニークにハイブリダイズするのに十分な長さを有する。プライマーはまた、例えば、cDNAの第1鎖を合成するためにRNA上で使用してもよい。
本明細書中で使用する用語「精製」及びその様々な文法形式は、異物、外来性、または好ましくない要素を分離または含まないようにするプロセスを指す。
本明細書中で使用する用語「皮膚状態を調節する」は、細胞の再生によって皮膚の完全性の増加を誘発し;皮膚の含水量または湿度を高め;経皮での水分損失、皮膚剥離、及び鱗屑を低減し;皮膚の厚さを向上させ;皮膚の引張特性を高め;皮膚の小じわやしわの出現を低減し;肌のきめを向上させ;皮膚の毛穴のサイズを縮小し;肌の滑らかさを高め;皮膚のシミを改善し;肌の色調を向上させ;または傷跡や皮膚の擦り傷の外観を改善することのうちの1つ以上を含む。
本明細書中で名詞として使用される用語「修復」とは、機能を回復させる任意の修正、強化、再調整、治療、填補、正常化、再生、修繕、パッチングなどを指す。動詞として使用される場合、それは、機能を、修正する、強化する、再調整する、治療する、填補する、正常化する、再生する、修繕する、パッチを当てる、または回復させることを意味する。
本明細書中で使用する用語「皮膚の完全性」とは、無傷の皮膚を指し、微生物の侵入に対する身体の最初の防御線であり、多くの環境脅威からの保護バリアを提供し、水分の保持を容易にする。本明細書中で使用する用語「皮膚の完全性の障害」とは、皮膚が損傷するか、損傷を受けやすいか、または正常に治癒できないような表皮及び/または真皮の変化を指す。
用語「幹細胞」とは、高い増殖能を有し、複数の異なる細胞表現型へ最終分化することができる娘細胞を生成し得る自己複製能を有する未分化細胞を指す。本明細書中で使用する用語「再生」または「自己再生」とは、幹細胞が分裂して、母細胞と区別できない発達の可能性を有する1つ(非対称分裂)または2つ(対称分裂)の娘細胞を生成するプロセスを指す。自己再生には、増殖と未分化状態の維持の両方が含まれる。
本明細書中で使用する用語「成体(体性)幹細胞」とは、組織または器官内の分化した細胞に認められる未分化細胞を指す。in vivoでのそれらの主な役割は、それらが見出される組織を維持及び修復することである。脳、骨髄、末梢血、血管、骨格筋、皮膚、歯、胃腸管、肝臓、卵巣上皮、及び精巣を含む多くの器官及び組織において同定されている成体幹細胞は、幹細胞ニッチとして知られる各組織の特定の領域に存すると考えられるが、そこでは、組織を維持するためにより多くの細胞が通常必要とされることによって、または疾患もしくは組織の損傷によって活性化されるまで、長期間静止状態(非分裂)のままになる場合がある。
本明細書中で使用する用語「症状」とは、特に、正常な機能、感覚、または外観からの変化として個体が経験する場合の、障害または疾患の徴候または兆候を指す。
本明細書中で使用する場合、用語「治療薬」または「活性薬剤」とは、意図した治療効果に関与する記載の発明の組成物の成分、構成要素または構成成分を指す。
本明細書中で使用する用語「治療成分」とは、集団の割合において、特定の疾患症状の進行を排除、低減、または予防する治療上有効な用量(すなわち、投与の用量及び頻度)を指す。一般的に使用される治療成分の例は、ED50であり、これは、集団の50%で特定の疾患の症状に対して治療的に有効である特定の用量での投与量を表す。
本明細書中で使用する用語「治療効果」とは、その結果が、望ましくかつ有益であると判断される治療の結果を指す。治療効果には、直接的または間接的な、疾患症状の阻止、軽減、または排除が含まれ得る。治療効果にはまた、直接的または間接的な、疾患症状の進行の阻止、低減、または排除が含まれ得る。
本明細書中で使用する場合、用語「組織」とは、類似の細胞及びそれらを取り巻く細胞間物質の集合を指す。例えば、脂肪組織は、主に、細網線維に囲まれ、小葉の群に配置されるか、またはより小さな血管の経路に沿って配置される脂肪細胞からなる結合組織である。結合組織は、様々な種類の多数の細胞と共に、繊維状物質及び基底質で形成される体の支持組織または骨格組織である。それは間葉に由来し、次いで間葉は中胚葉に由来する。結合組織の種類として、限定されないが、疎性結合組織または疎性結締組織;脂肪結合組織;密性結合組織、定形結合組織または非定形結合組織、白色繊維性結合組織;弾性結合組織;膠様結合組織;リンパ組織;軟骨性結締組織及び骨性結締組織が挙げられる。
本明細書中で使用する用語「治療する」、「治療される」、または「治療すること」とは、治療的処置及び/または予防的または防止的手段の両方を指し、目的は、望ましくない生理学的病態、障害もしくは疾患を予防もしくは減速(軽減)すること、または有益なもしくは望ましい臨床結果を得ることである。本発明の目的のために有益なまたは望ましい臨床結果として、症状の緩和;病態、障害もしくは疾患の程度の減弱;病態、障害もしくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);病態、障害もしくは疾患の発症の遅延もしくは進行の遅延;病態、障害もしくは疾患の状態の改善;及び検出可能であるか、検出不可能であるかに関わらず、寛解(部分的または全体的)、または病態、障害もしくは疾患の増強もしくは改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療には、過度のレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を誘発することが含まれる。「治療」はまた、治療を受けない場合の予測生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。
EV及びEVの調製
いくつかの実施形態によれば、記載する本発明は、羊水に由来する膜(すなわち、脂質二重層)小胞(EV)の集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、EVは、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する。医薬組成物に含まれる場合、医薬組成物は、単離されたEVの集団及び薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。いくつかの実施形態によれば、羊水は、医薬組成物の投与が企図される対象に対して、同種異系である。いくつかの実施形態によれば、羊水は、医薬組成物の投与が企図される対象に対して、自家性である。いくつかの実施形態によれば、羊水は、哺乳類の羊水である。いくつかの実施形態によれば、羊水は、ヒトの羊水である。
羊水
羊水試料は、胎児の核型分析のために妊娠16週~20週の間に行われる羊水穿刺によって得られる。2段階培養プロトコルを用いて、羊水からMSCを単離することができる(Tsai MS,et al.,Hum Reprod. 2004 Jun;19(6):1450-6)。羊膜細胞の培養(第1段階)については、チャング培地を使用した組織培養グレードのディッシュ(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)中で、in situ初代培養物をセットアップする。中期の選択及びコロニーの決定は、羊膜細胞における出生前の細胞遺伝学的診断の基本的な要件に基づく(Moertel CA,et al.,1992;Prenat Diagn 12,671-683)。MSCの培養(第2段階)については、羊膜細胞の初代培養後5日目に上清培地中の非接着羊水細胞を回収し、胎児の染色体分析が完了するまで、継続した。次いで細胞を遠心分離し、25cm2のフラスコ中で、20%ウシ胎仔血清(FBS;Hyclone,Logan,UT)及び4ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF;R&D systems,Minneapolis,MN)を添加した5mlのα改変最小必須培地(α‐MEM;Gibco‐BRL)にプレーティングし、MSC培養のために、5%加湿CO2下にて37℃でインキュベートした。臍帯血及び妊娠初期の胎児組織由来のMSCと同様に、SH3、SH4、CD29、CD44、及びHLA-A、B、C(MHCクラスI)などの表面抗原が検出され得、CD10、CD11b、CD14、CD34、CD117、HLA-DR、DP、DQ(MHCクラスII)及びEMAは存在しない(Tsai MS,et al.,Hum Reprod. 2004 Jun;19(6):1450-6;Pittenger MF,et al.,Science 284,143-7;Colter DC,et al., Proc Natl Acad Sci USA 98,78415;Young HY,et al.,Anat Rec 264,51-62)。
いくつかの実施形態によれば、EVは、微小胞、エクソソーム、またはその両方を含む。いくつかの実施形態によれば、EVは、約30nm~200nm、すなわち、少なくとも30nm、少なくとも31nm、少なくとも32nm、少なくとも33nm、少なくとも34nm、少なくとも35nm、少なくとも36nm、少なくとも37nm、少なくとも38nm、少なくとも39nm、少なくとも40nm、少なくとも41nm、少なくとも42nm、少なくとも43nm、少なくとも44nm、少なくとも45nm、少なくとも46nm、少なくとも47nm、少なくとも48nm、少なくとも49nm、少なくとも50nm、少なくとも51nm、少なくとも52nm、少なくとも53nm、少なくとも54nm、少なくとも55nm、少なくとも56nm、少なくとも57nm、少なくとも58nm、少なくとも59nm、少なくとも60nm、少なくとも61nm、少なくとも62nm、少なくとも63nm、少なくとも64nm、少なくとも65nm、少なくとも66nm、少なくとも67nm、少なくとも68nm、少なくとも69nm、少なくとも70nm、少なくとも71nm、少なくとも72nm、少なくとも73nm、少なくとも74nm、少なくとも75nm、少なくとも76nm、少なくとも77nm、少なくとも78nm、少なくとも79nm、少なくとも80nm、少なくとも81nm、少なくとも82nm、少なくとも83nm、少なくとも84nm、少なくとも85nm、少なくとも86nm、少なくとも87nm、少なくとも88nm、少なくとも89nm、少なくとも90nm、少なくとも91nm、少なくとも92nm、少なくとも93nm、少なくとも94nm、少なくとも95nm、少なくとも96nm、少なくとも97nm、少なくとも98nm、少なくとも99nm、少なくとも100nm、少なくとも101nm、少なくとも102nm、少なくとも103nm、少なくとも104nm、少なくとも105nm、少なくとも106nm、少なくとも107nm、少なくとも108nm、少なくとも109nm、少なくとも110nm、少なくとも120nm、少なくとも121nm、少なくとも122nm、少なくとも123nm、少なくとも124nm、少なくとも125nm、少なくとも126nm、少なくとも127nm、少なくとも128nm、少なくとも129nm、少なくとも130nm、少なくとも131nm、少なくとも132nm、少なくとも133nm、少なくとも134nm、少なくとも135nm、少なくとも136nm、少なくとも137nm、少なくとも138nm、少なくとも139nm、少なくとも140nm、少なくとも141nm、少なくとも142nm、少なくとも143nm、少なくとも144nm、少なくとも145nm、少なくとも146nm、少なくとも147nm、少なくとも148nm、少なくとも149nm、少なくとも150nm、少なくとも151nm、少なくとも152nm、少なくとも153nm、少なくとも154nm、少なくとも155nm、少なくとも156nm、少なくとも157nm、少なくとも158nm、少なくとも159nm、少なくとも160nm、少なくとも161nm、少なくとも162nm、少なくとも163nm、少なくとも164nm、少なくとも165nm、少なくとも166nm、少なくとも167nm、少なくとも168nm、少なくとも169nm、少なくとも170nm、少なくとも171nm、少なくとも172nm、少なくとも173nm、少なくとも174nm、少なくとも175nm、少なくとも176nm、少なくとも177nm、少なくとも178nm、少なくとも179nm、少なくとも180nm、少なくとも181nm、少なくとも182nm、少なくとも183nm、少なくとも184nm、少なくとも185nm、少なくとも186nm、少なくとも187nm、少なくとも188nm、少なくとも189nm、少なくとも190nm、少なくとも191nm、少なくとも192nm、少なくとも193nm、少なくとも194nm、少なくとも195nm、少なくとも196nm、少なくとも197nm、少なくとも198nm、少なくとも199nm、または少なくとも200nmの範囲の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、EVは、直径の範囲が、約50nm~約200nm、すなわち、少なくとも50nm、少なくとも51nm、少なくとも52nm、少なくとも53nm、少なくとも54nm、少なくとも55nm、少なくとも56nm、少なくとも57nm、少なくとも58nm、少なくとも59nm、少なくとも60nm、少なくとも61nm、少なくとも62nm、少なくとも63nm、少なくとも64nm、少なくとも65nm、少なくとも66nm、少なくとも67nm、少なくとも68nm、少なくとも69nm、少なくとも70nm、少なくとも71nm、少なくとも72nm、少なくとも73nm、少なくとも74nm、少なくとも75nm、少なくとも76nm、少なくとも77nm、少なくとも78nm、少なくとも79nm、少なくとも80nm、少なくとも81nm、少なくとも82nm、少なくとも83nm、少なくとも84nm、少なくとも85nm、少なくとも86nm、少なくとも87nm、少なくとも88nm、少なくとも89nm、少なくとも90nm、少なくとも91nm、少なくとも92nm、少なくとも93nm、少なくとも94nm、少なくとも95nm、少なくとも96nm、少なくとも97nm、少なくとも98nm、少なくとも99nm、少なくとも100nm、少なくとも101nm、少なくとも102nm、少なくとも103nm、少なくとも104nm、少なくとも105nm、少なくとも106nm、少なくとも107nm、少なくとも108nm、少なくとも109nm、少なくとも110nm、少なくとも120nm、少なくとも121nm、少なくとも122nm、少なくとも123nm、少なくとも124nm、少なくとも125nm、少なくとも126nm、少なくとも127nm、少なくとも128nm、少なくとも129nm、少なくとも130nm、少なくとも131nm、少なくとも132nm、少なくとも133nm、少なくとも134nm、少なくとも135nm、少なくとも136nm、少なくとも137nm、少なくとも138nm、少なくとも139nm、少なくとも140nm、少なくとも141nm、少なくとも142nm、少なくとも143nm、少なくとも144nm、少なくとも145nm、少なくとも146nm、少なくとも147nm、少なくとも148nm、少なくとも149nm、少なくとも150nm、少なくとも151nm、少なくとも152nm、少なくとも153nm、少なくとも154nm、少なくとも155nm、少なくとも156nm、少なくとも157nm、少なくとも158nm、少なくとも159nm、少なくとも160nm、少なくとも161nm、少なくとも162nm、少なくとも163nm、少なくとも164nm、少なくとも165nm、少なくとも166nm、少なくとも167nm、少なくとも168nm、少なくとも169nm、少なくとも170nm、少なくとも171nm、少なくとも172nm、少なくとも173nm、少なくとも174nm、少なくとも175nm、少なくとも176nm、少なくとも177nm、少なくとも178nm、少なくとも179nm、少なくとも180nm、少なくとも181nm、少なくとも182nm、少なくとも183nm、少なくとも184nm、少なくとも185nm、少なくとも186nm、少なくとも187nm、少なくとも188nm、少なくとも189nm、少なくとも190nm、少なくとも191nm、少なくとも192nm、少なくとも193nm、少なくとも194nm、少なくとも195nm、少なくとも196nm、少なくとも197nm、少なくとも198nm、少なくとも199nm、または少なくとも200nmである。いくつかの実施形態によれば、電子顕微鏡によると、EVは、カップ形の形態を有するように見える。いくつかの実施形態によれば、EVは、約100,000×gで沈降し、スクロース中で約1.10~約1.21g/mlの浮遊密度を有する。
いくつかの実施形態によれば、EVは、miRNAなどのRNA種を含む、タンパク質、核酸、またはその両方を含む。
いくつかの実施形態によれば、細胞外小胞は、単離されたEVである。本明細書中で使用する用語「単離されたEVの集団」とは、その天然の環境から物理的に分離されたEVの集団を指す。いくつかの実施形態によれば、単離されたEVの集団は、その集団が天然に存在する組織または細胞から、全体的または部分的に、物理的に分離することができる。いくつかの実施形態によれば、単離されたEVを含む組成物は、細胞もしくは細胞成分を実質的に含まないか、または馴化培地を含まないか、または実質的に含まない場合がある。いくつかの実施形態によれば、単離されたEVの濃度は、操作されていない馴化培地に存在するEVの濃度よりも高い場合がある。いくつかの実施形態によれば、EVの集団は、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の純度である濃縮されたEVの部分集団を含む。
いくつかの実施形態によれば、EVを、馴化培地から単離し、培養MSCによって培地中に放出された代謝産物、成長因子、RNA及びタンパク質を含む培養MSCから回収することができる。
いくつかの実施形態によれば、MSCからのEVの回収方法は、最初にMSCを約70%のコンフルエンシーに達するまで標準条件下で培養し、次いで細胞を無血清培地中で24時間培養することを含む。次いで、馴化培地を回収し、細胞全体及び細胞破片を除去するために、400×gで10分間及び12000×gで10分間の分画遠心法に供し、清澄化された馴化培地を生成する。次いで、清澄化された馴化培地を、100kDa MWCOフィルター(Millipore)を使用する限外濾過によって濃縮し、次いで、12000×gで10分間再度遠心分離する。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濃縮された清澄化馴化培地をPBS平衡化Chroma S-200カラム(Clontech)にロードし、PBSで溶出し、350~550μlの画分を回収することによってEVを単離する。EVを含む画分を同定し、場合によりプールする。標準的なブラッドフォード法(Bio-Rad)を使用して、タンパク質濃度を測定する。濃縮された細胞外小胞製剤のアリコートを、-80℃で保存する。
いくつかの実施形態によれば、EVはまた、清澄化された馴化培地を100,000×gで超遠心分離することによって精製することができる。いくつかの実施形態によれば、それらはまた、ショ糖クッションへの超遠心分離によって精製することができる。樹状細胞からのEV精製のためのGMP法は、J Immunol Methods. 2002;270:211-226に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。
いくつかの実施形態によれば、EVは、規定の細孔サイズのナイロンメンブレンフィルターによる分別濾過によって精製することができる。例えば、大きなポアサイズでの最初の濾過では、細胞の断片及び破片が保持され;その後、より小さな細孔サイズで濾過すると、EVが保持され、より小さなサイズの汚染物質からEVが精製される。
治療方法
いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象における創傷治癒の促進方法は、対象の創傷組織を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む第1の組成物と接触させることを含み、治療量は、創傷面積を減少させ、創傷組織の修復を促進するのに効果的である。いくつかの実施形態によれば、EVは、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する。
記載する本発明のEVを含む医薬組成物の「治療有効量」、「治療量」または「有効量」とは、所望の生物学的効果を達成するために計算される所定の量である。記載する方法によって企図される活動は、必要に応じて、医学的治療及び/または予防的治療の両方を含む。治療的及び/または予防的治療効果を得るために、記載する本発明に従って投与する組成物の特定の用量は、当然のことながら、例えば、投与する組成物、投与経路、及び治療しようとする病態を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。いくつかの実施形態によれば、標準的な有効量の医薬組成物は、約1×105~約1×109個のMSC、すなわち、1×105、2×105、3×105、4×105、5×105、6×105、7×105、8×105、9×105、1×106、2×106、3×106、4×106、5×106、6×106、7×106、8×106、9×106、1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、6×107、7×107、8×107、9×107、1×108、2×108、3×108、4×108、5×108、6×108、7×108、8×108、9×108、または1×109個の全MSCに由来するEVを含む。しかしながら、投与する有効量は、治療する病態、投与する組成物の選択、及び選択される投与経路を含む関連する状況に照らして医師によって決定されるものであり、したがって上記の用量範囲は、本発明の範囲を如何様にも制限することを意図するものではないことが理解されよう。本発明の実施形態の組成物の治療有効量は、通常、これを生理学的に許容される賦形剤組成物で投与する場合、組織において有効な全身濃度または局所濃度を達成するのに十分であるような量である。
いくつかの実施形態によれば、組成物は、上皮細胞を活性化して間葉系細胞表現型に転換する(EMT)ことにより、創傷治癒を促進するのに効果的である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、ビメンチン、N-カドヘリン、Col1a1、Acta2、またはTGFbr2のうちの1つ以上のmRNAレベルを増加させるのに有効である。いくつかの実施形態によれば、方法は、ビメンチン、N-カドヘリン、Col1a1、Acta2、またはTGFbr2のうちの1つ以上のレベルを測定するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態によれば、接触を、局所、皮下、鼻腔内、気管内、経口、非経口、静脈内、または腹腔内で行う。本明細書中で使用する用語「非経口」とは、消化管以外の手段による、例えば、限定されないが、注射(すなわち、注射による投与)による、例えば、皮下(すなわち、皮下注射)、筋肉内(すなわち、筋肉への注射)、静脈内(すなわち、静脈への注射)、または注入技術を含む、体内への導入を指す。いくつかの実施形態によれば、接触を、局所または皮下で行う。
いくつかの実施形態によれば、対象は、創傷と診断されているか、または創傷の症状を示すヒト患者である。いくつかの実施形態によれば、対象は、創傷と診断されているか、または慢性創傷の症状を示すヒト患者である。いくつかの実施形態によれば、対象は、創傷が慢性創傷に進行すると診断されているか、またはそのリスクがあるヒト患者である。いくつかの実施形態によれば、対象は、糖尿病性潰瘍、褥瘡、または静脈性潰瘍と診断されているか、またはその症状を示すヒト患者である。いくつかの実施形態によれば、対象は、火傷と診断されているか、または火傷の症状を示すヒト患者である。
いくつかの実施形態によれば、方法は、対象の創傷組織を、治療量のEV枯渇AFを含む第2の組成物と接触させるステップをさらに含み、第2の組成物の治療量は、間葉上皮転換(MET)を活性化し、創傷組織の修復を促進するのに効果的である。いくつかの実施形態によれば、組織を、第1の組成物と接触させる時間と、第2の組成物と接触させる時間の間の長さは、約4~約24時間、すなわち、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間である。いくつかの実施形態によれば、組織を、第1の組成物と接触させる時間と、第2の組成物と接触させる時間の間の長さは、24時間超である。いくつかの実施形態によれば、第2の組成物は、Stat3 mRNAレベルを増加させるのに効果的である。STAT3(シグナルトランスデューサー及び転写活性化因子3)は、上皮細胞増殖、細胞外マトリックスのリモデリング、血管新生、及び炎症の抑制などの、後期段階の創傷治癒に関与する遺伝子の発現を調節する転写因子である。いくつかの実施形態によれば、方法は、Stat3 mRNAのレベルを測定するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態によれば、EVを、a)超遠心;b)ショ糖密度勾配遠心分離;c)カラムクロマトグラフィー;d)サイズ排除;またはe)EVに対して選択的な親和性マトリックスを含む装置による濾過のうちの1つ以上によって羊水から精製する。いくつかの実施形態によれば、EVを、サイズによってさらにフィルタリングする。いくつかの実施形態によれば、EVは、約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、EVは、約50nm~約1000nmの平均直径を特徴とする。
いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象における創傷治癒を促進する2段階の方法は、順に、a.羊水(AF)に由来する細胞外小胞(EV)を含む組成物と創傷を接触させて、対象における初期段階の創傷治癒を促進し;そして、b.EV枯渇AFを含む組成物と創傷を接触させて、対象における後期段階の創傷治癒を促進することを含む。いくつかの実施形態によれば、初期段階の創傷治癒は、上皮間葉転換(EMT)を活性化し、細胞遊走を誘導することを特徴とし、後期段階の創傷治癒は、間葉上皮転換(MET)及び創傷の上皮化を活性化することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、EVは、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する。いくつかの実施形態によれば、EVは、約100,000×gでの沈降、約1.10~1.21g/mlのスクロース中の浮遊密度、及び約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、接触は、局所または皮下である。
いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象における皮膚状態の調節方法は、対象の皮膚を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む組成物と接触させることを含み、治療量は、皮膚のきめを改善する、しわを減らす、またはその両方に効果的であり、それによって皮膚状態を調節する。いくつかの実施形態によれば、方法は、組成物と接触させる前に、皮膚をマイクロニードリングすることをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、上皮間葉転換(EMT)を活性化することによって皮膚状態を調節するのに効果的である。
製剤
いくつかの実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。語句「薬学的に許容される担体」は、当技術分野で認知されている。この語句は、医薬品の投与に従来使用可能な実質的に非毒性の担体を意味するために用いられ、担体中で、本発明の単離されたエクソソームは安定であり、バイオアベイラビリティが維持される。薬学的に許容される担体は、治療しようとする哺乳類への投与に適したものにするために、十分に高純度で、十分に低毒性でなければならない。さらに、活性薬剤の安定性及びバイオアベイラビリティが維持されるべきである。薬学的に許容される担体は、液体または固体とすることができ、所与の組成物の活性薬剤及び他の成分と組み合わせた場合に、所望の容積、濃度などを提供するように計画された投与方法を考慮して選択する。例示的な担体として、対象の薬剤を身体の1つの器官または部分から身体の別の器官または部分に搬送または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入物質が挙げられる。各担体は、製剤の他の成分に適合するという意味で「許容され」なければならず、また患者に有害であってはならない。薬学的に許容される担体としての役目を果たし得る物質の幾つかの例として、乳糖、ブドウ糖、及びショ糖などの糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び座剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質除去水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質が挙げられる。適切な薬学的担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態によれば、薬学的に許容される担体は、無菌かつパイロジェンフリー水である。いくつかの実施形態によれば、薬学的に許容される担体は、乳酸リンガー溶液として知られることもあるリンガー乳酸である。
湿潤剤、乳化剤及び平滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤を組成物中に存在させることもできる。
薬剤的に許容される抗酸化剤の例として、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロシキトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
適切な担体、賦形剤、及び希釈剤のいくつかの例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウムアルギネート、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、ならびに鉱油が挙げられる。製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、保存剤、甘味剤または香味剤をさらに含み得る。当技術分野で周知の手順を用いて患者に投与した後に、活性成分を、迅速放出、持続放出、または遅延放出するように組成物を製剤化してもよい。
肺損傷または線維性肺疾患の治療のための治療量の組成物の局所送達は、標的部位またはその近くに化合物を投与する様々な技術によって行うことができる。局所送達技術の例は、限定することを意図したものではなく、利用可能な技術を説明することを目的としている。例として、局所送達カテーテル、部位特異的担体、インプラント、直接注射、または直接塗布、例えば、局所塗布、及び肺の場合は吸入による投与が挙げられる。
インプラントによる局所送達は、患部への医薬品を含むマトリックスの外科的配置を表す。埋め込まれたマトリックスは、拡散、化学反応、または溶媒活性剤によって医薬品を放出する。
具体的な投与様式は、適応症によって異なる。特定の投与経路及び投与計画の選択は、最適な臨床応答を得るために、臨床医に公知の方法に従って、臨床医によって調整または滴定されるべきである。投与する活性薬剤の量は、意図する治療効果を提供するのに十分な量である。投与する用量は、治療しようとする対象の特徴、例えば、治療する特定の哺乳類またはヒト、年齢、体重、健康、存在する場合には同時治療の種類、及び治療の頻度に依存し、当業者により(例えば、臨床医により)容易に決定することができる。
記載する本発明の活性薬剤及び適切な担体を含む医薬製剤として、有効量の記載する本発明のポリマーまたはコポリマーを含む、錠剤、カプセル、カシェ剤、小丸薬、丸薬、散剤及び顆粒剤を含むがこれらに限定されない固体剤形;溶液、散剤、液体エマルジョン、液体懸濁液、半固体、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル、ゼリー、及びフォームを含むがこれらに限定されない局所剤形;ならびに溶液、懸濁液、エマルジョン、及び乾燥粉末を含むがこれらに限定されない非経口剤形であり得る。有効成分は、薬学的に許容される希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、保存剤とともにそのような製剤に含まれ得ることも当技術分野で公知である。投与の手段及び方法は当技術分野で公知であり、当業者はガイダンスのために様々な薬理学的参考文献を参照することができる。例えば、Modern Pharmaceutics,Banker & Rhodes,Marcel Dekker,Inc.(1979);及びGoodman &GilmanのThe Pharmaceutical Basis of Therapeutics,6th Edition,MacMillan Publishing Co.,New York(1980)を参照することができる。
記載する本発明の医薬組成物を、例えば、注射、例えば、ボーラス注射または継続的注入による非経口投与用に製剤化することができる。医薬組成物を、所定の期間にわたって皮下に持続注入することによって投与することができる。注射用製剤は、保存剤を添加した単位剤形、例えばアンプルまたは複数回投与容器で提供することができる。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとることができ、また、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの調合剤を含有させることができる。
経口投与の場合、医薬組成物は、活性薬剤(複数可)を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体により、本開示の活性物質を、治療する患者による経口摂取用に、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することができる。経口使用のための医薬品は、固体賦形剤を添加し、場合により得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理し、所望により適切な助剤を添加して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって取得することができる。適切な賦形剤として、ラクトース、スクロース、マンニトール、及びソルビトールを含むがこれらに限定されない糖類などの充填剤;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤が挙げられるが、これらに限定されない。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を含むがこれらに限定されない崩壊剤を添加することができる。
糖衣錠コアを、好適なコーティングを用いて提供することができる。この目的のために、任意選択で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル、ポリエチレングリコール、及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有する濃縮された糖溶液を使用することができる。活性化合物用量の異なる組み合わせを識別するために、または特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
経口的に使用し得る他の医薬製剤として、ゼラチンで作製された押込嵌めカプセル、ならびにゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作られた軟性、密封カプセルが挙げられるが、これらに限定されない。押込嵌めカプセルは、例えばラクトースなどの充填剤、例えばデンプンなどの結合剤、及び/または例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び任意選択で、安定剤との混合物内に、活性成分を含み得る。軟性カプセル中で、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中で溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤を添加することができる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した用量であるべきである。
頬側投与については、組成物は、従来の手法にて製剤化される、例えば、錠剤またはロゼンジの形状をとり得る。
吸入による投与の場合、記載する本発明による使用のための組成物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器または吹送器で使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように製剤化することができる。
前述の製剤に加えて、記載する本発明の組成物は、デポー製剤として製剤化することもできる。そのような長時間作用性製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することができる。
デポー注射は、約1~約6か月またはそれ以上の間隔で投与することができる。したがって、例えば、組成物は、適切なポリマー物質または疎水性物質(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂、または難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
本明細書に開示する任意の1つまたは複数の活性薬剤を含む医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含み得る。そのような担体または賦形剤の例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及び例えばポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
非経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される非経口ビヒクルを伴って、溶液、懸濁液、エマルジョン、または凍結乾燥粉末として製剤化することができる。そのようなビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び不揮発性油などの非水性媒体を用いてもよい。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学的安定性(例えば、緩衝液及び保存剤)を維持する添加剤を含み得る。製剤は、一般的に使用される技術によって滅菌される。
記載する本発明は、皮下、局所、筋肉内、舌下、静脈内、腹腔内、鼻腔内、気管内、皮内、粘膜内、海綿体内、直腸内、洞内、胃腸、管内、髄腔内、脳室内、肺内、膿瘍内、関節内、心膜下、腋窩内、胸膜腔内、皮内、頬内、経粘膜、経皮、吸入、及びネブライザーを含むすべての投与経路に関する。あるいは、医薬組成物を、個体から除去する細胞に様々な手段によって導入してもよい。そのような手段として、例えば、リポソームまたは他のナノ粒子デバイスを介した微粒子銃が挙げられる。
いくつかの実施形態によれば、特許請求される本発明の医薬組成物は、記載するように、EV以外の1つ以上の治療薬を含む。そのような追加の活性治療薬の例には、1つ以上の鎮痛薬、抗炎症薬、または抗菌薬が含まれる。
鎮痛剤の例として、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、メタドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、及びフェンタニルが挙げられる。
抗炎症剤の例として、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラクナブメトン、ナプロキセン、ニンテダニブ、オキサプロジン、ピルフェニドン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、及びトルメチンが挙げられる。
抗菌剤の例として、限定されないが、例えば、バシトラシン、マフェニド、ムピロシン、ネオマイシン、スルファジアジン銀、クルクミン、及び蜂蜜などの抗生物質;ならびに、例えば、ビグアニド、銀、ヨウ素、及び塩素化合物などの保存剤が挙げられる。
前述の実施形態によれば、医薬組成物を、所定の期間、または長期間にわたる維持療法として、例えば、病態が改善、治癒するまで、または対象の寿命の期間中、1回投与してもよい。所定の期間は、1週間、2週間、3週間、4週間、及び最大1年間(終点を含むそのような値の間の任意の期間を含む)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物を、約1日間、約3日間、約1週間、約10日間、約2週間、約18日間、約3週間、または終点を含むこれらの値のいずれかの間の任意の範囲で投与してもよい。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物を、1年超、約2年、約3年、約4年、またはそれ以上投与してもよい。
前述の実施形態によれば、組成物または医薬組成物を、1日1回未満(例えば、隔日)、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回またはそれ以上投与してもよい。
参照されるすべての雑誌論文、特許、及び他の刊行物は、参照によりその全体が援用される。
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、また、表示範囲内の任意の具体的な除外限度に従って、本明細書にも包含される。表示範囲が限界値の片方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の両方のいずれかを除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
別途定義されない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載の方法及び物質と同様もしくは同等の任意の方法及び物質を使用し得るが、例示的な方法及び物質を記載した。本明細書中で言及されるすべての刊行物は、それらの刊行物が引用される方法及び/または物質を開示し、説明するために、参照により本明細書に援用される。
以下の実施例は、当業者に本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示するものであり、本発明者らが考える発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施した全てまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。
実施例1:羊水由来のエクソソームは、上皮間葉転換を活性化することによって創傷治癒を促進する
細胞外小胞(EV)/エクソソーム系の製品とヒト羊水(AF)の両方が、再生医療への応用の可能性について大きな注目を集めている。しかしながら、標的細胞型に薬効が発揮される作用機序は不明である。本明細書では、in vitroでモデル化された創傷治癒を促進するために羊水エクソソームが必要であるという仮説を検証した。
上皮間葉転換(EMT)とは、通常は基底面を介して基底膜と相互作用する分極した上皮細胞が、複数の生化学的変化を受けることを可能とし、それにより、増強された遊走能、侵襲性、アポトーシスに対する耐性の上昇、及びECM成分の産生の大幅な増加を含む間葉系細胞の表現型をとることを可能とする生物学的プロセスである(Kalluri,R. and Weinberg,RA,J.Clin.Invest.(2009)119:1420-1428,Kalluri R.,Neilson E.G. J.Clin.Invest. 2003;112:1776-1784を引用)。EMTの完了は、下方にある基底膜の分解と、それが発生した上皮層から離れて遊走可能な間葉系細胞の形成によって示される(同上)。
着床、胚形成、及び器官発達に関連するEMTは、共通の間葉表現型を共有する多様な細胞型を生成するように編成される。このクラスのEMT(「1型EMT」)は、線維症を引き起こさず、循環を介した全身拡散をもたらす侵襲性表現型を誘発しない(同上、Zeisberg M.,Neilson E.G. J.Clin.Invest. 2009;119:1429-1437を引用)。他の結果の中でも、これらの1型EMTは、間葉系細胞(一次間葉)を生成することができ、その後、間葉系細胞を上皮誘導体に変換して二次上皮を生成する間葉上皮転換(MET)を受ける可能性がある)(同上)。
2型EMTは、創傷治癒、組織再生、及び器官線維症に関連している(同上)。2型EMTでは、外傷や炎症性損傷後に組織を再構築するために、通常は線維芽細胞及び他の関連細胞を生成する修復関連事象の一部としてプログラムが開始される。しかしながら、1型EMTとは対照的に、これらの2型EMTは炎症に関連しており、創傷治癒及び組織再生中に認められるように、炎症が減弱すると終了する。臓器線維症の状況では、2型EMTは進行中の炎症に応答し続け、最終的には臓器破壊をもたらし得る。組織線維症は、本質的に、持続性の炎症による衰えない形態の創傷治癒である(同上)。
3型EMTは、以前に遺伝的及び後成的変化を受けた腫瘍細胞、特にクローンの増殖と限局性腫瘍の発生に有利な遺伝子で生じる。これらの変化は、特にがん遺伝子と腫瘍抑制遺伝子に影響を及ぼし、EMT調節回路と共働して、他の2種類のEMTで観察される結果とは大きく異なる結果を生み出す。3型EMTを受けているがん細胞は、浸潤して転移し、それによってがん進行の最終的な生命を脅かす症状を引き起こし得る。重要なことに、がん細胞はEMTを様々な程度で通過し得、一部の細胞は多くの上皮の形質を保持しながら、いくつかの間葉の形質を獲得し、他の細胞は上皮起源のすべての痕跡を取り除き、完全に間葉になる。どの特定のシグナルががん細胞で3型EMTを誘発するかはまだ不明である(同上)。
EMTを開始し、完了に達することができるようにするために、いくつかの異なる分子プロセスが関与している。これらには、転写因子の活性化、特定の細胞表面タンパク質の発現、細胞骨格タンパク質の再編成と発現、ECM分解酵素の産生、及び特定のマイクロRNAの発現の変化が含まれる。多くの場合、関与する因子は、細胞のEMT通過を示すためのバイオマーカーとしても使用される(同上)。
逆のプロセスである間葉上皮転換(MET)は、同様に上皮細胞を生成し得る。MET事象は、間葉系細胞が運動性の遊走特性を失い、細胞の極性と上皮への接着を獲得する事象として定義される。METとEMTは両方とも、原腸陥入及び再生組織を含む正常組織、ならびに線維性臓器または腫瘍の異常組織で生じる(Li B,et al. PLoS One. 2011;6(2):e17092,Kalluri R,Weinberg RA. The Journal of clinical investigation. 2009;119:1420;Polyak K,Weinberg RA. Nat Rev Cancer. 2009;9:265-273を引用)。したがって、EMT/METと幹細胞の間には強力な関係がある。実際、EMTは乳腺上皮細胞を駆動して、間葉系様の乳腺幹細胞と癌幹細胞に脱分化させる(同上、Mani SA,et al. Cell. 2008;133:704-715を引用)。さらに、人工多能性幹細胞(iPSC)は、リプログラミングの初期段階で、METにより、マウス胚性線維芽細胞(MEF)から誘導される(同上、Polo JM,Hochedlinger K. Cell Stem Cell. 2010;7:5-6;Li R,et al. Cell Stem Cell. 2010;7:51-63;Samavarchi-Tehrani P,et al. Cell Stem Cell. 2010;7:64-77を引用)。これらの結果は、METが幹細胞の活動に関連している可能性を示唆している。
EMT/METを同定するために、ビメンチンは間葉指標として広く適用されている(同上、Kalluri R,Weinberg RA. The Journal of clinical investigation. 2009;119:1420;Mani SA,et al. Cell. 2008;133:704-715;Arias AM. Cell. 2001;105:425-431;Thiery JP,et al. Cell. 2009;139:871-890;Gershengorn MC,et al. Science. 2004;306:2261-2264;Thiery JP. Nature Reviews Cancer. 2002;2:442-454を引用)。ビメンチンは、間葉系細胞の構造の維持に機能的に関与する中間径フィラメントタンパク質である(同上、Stenger AM,et al. Molecular Brain Research. 1992;13:273-275を引用)。間葉系細胞の移動と増殖に関連することに加えて、ビメンチンは細胞形態の変化または細胞骨格の再編成の指標である(同上、Venetianer A,et al. Nature. 1983;305:730-733;Hedberg KK,Chen LB. Experimental cell research. 1986;163:509-517を引用)。マウスの胚性原腸陥入では、原条を介して葉裂して中胚葉になる線維芽細胞においてビメンチンが増加するが(同上、Eckes B,et al. J Cell Sci. 2000;113(Pt13):2455-2462;Lane EB,et al. Nature. 1983;303:701-704;Franke WW,et al. Differentiation. 1982;23:43-59)、このことは、ビメンチンが細胞の形質転換と組織構築に役割を果たすことを示している。さらに、ビメンチンは線維細胞の原形質膜の極性の喪失と密接に関連しており(同上、Oriolo AS,et al. Experimental cell research. 2007;313:2255-2264を引用)、細胞の接着と分極はビメンチンの減少と関連している(同上、Nieminen M,et al. Nature cell biology. 2006;8:156-162を引用)。
EMTが上皮細胞の再活性化または再プログラミングに関連しているのに対し、METは幹細胞を静止状態に駆動するようである(同上、Mani SA,et al. Cell. 2008;133:704-715;Spaderna S,et al. Verh Dtsch Ges Pathol. 2007;91:21-28を引用)。METは他の細胞の不活性化にも関与しており、例えば、創傷治癒では、活性化された線維芽細胞は細胞極性を失い、創傷部位に遊走し、ケラチノサイトに分化するが(同上、Eckes B,et al. J Cell Sci. 2000;113(Pt13):2455-2462)、これはMETによって駆動されるプロセスである。
方法
羊水(AF)の獲得及び処理。AFは、スクリーニングし、感染症について陰性であると判定された、満期の選択的帝王切開から供与されたか、または、Merakris Therapeuticsにより、Dermacyte(商標)(精製AF)を研究用に供与された。ドナーAFを4℃で連続遠心分離に供し、次いで0.2μmのフィルターに通し、そして直ちに使用または-80℃で保存のいずれかを行った。AFエクソソームを、ExoQuick TC-ULTRAキット(SBI Biosciences)を製造元の仕様に従って使用して精製し、Dermacyte Liquidから50~200nmのサイズ範囲で濾過し、次いでZetaSizer(Malvern Panalytical)を使用して定量分析及び定性分析を行った。
細胞培養及びスクラッチ試験アッセイ。マウスC2C12筋芽細胞及びMMM線維芽細胞を、標準的なTC処理されたCorningプラスチック製品で、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(完全培地)を含むDMEM+10%FBS中で日常的に培養した。スクラッチ試験アッセイは、C2C12またはMMM細胞を完全培地中でおよそ70~90%のコンフルエンスまで増殖させ、次いで、目的の培地タイプ、例えば、無血清培地(SFM;50%IMDM(Gibco)、50%F12(Gibco)、1mg/mlポリビニルアルコール(Sigma)、1%化学的に定義された脂質濃縮物(Gibco)、450μMモノチオグリセロール(Sigma)からなる)のみ、SFM+10%AF、SFM+AF細胞外小胞(EV)/エクソソーム、またはSFM+10%EV/エクソソーム枯渇AFを添加することによって実施した。細胞を目的の各培地タイプで2時間平衡化させた後、200μlサイズの標準マイクロピペットチップで垂直方向のスクラッチを作成した。分離した細胞をウェルから吸引し、培地を交換した。各ウェルの底に基準点として水平線を引き、20倍の対物レンズを使用した明視野顕微鏡を用いて、水平線の上または下(または両方)のスクラッチの写真を一貫して経時的に撮影することにより、各時点で写真を記録した。スクラッチの面積を、ImageJソフトウェアでピクセル数を測定することによって決定し、時間ゼロでのスクラッチに対する絶対ピクセル数または面積の平均測定値として、標準偏差を示すエラーバーと共にプロットした。スチューデントt検定を用いて統計的有意性を試験した。
RNA抽出及びRT-qPCR。C2C12筋芽細胞でスクラッチ試験アッセイを行ってから24時間後、細胞を溶解してRNAを抽出し(ReliaPrep,Promega)、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して定量した。100ngのトータルRNAをSuperScriptIII酵素(ThermoScientific)を用いた逆転写に使用し、次いで、得られたcDNAを5~10×に希釈し、2μLを、ABI StepOnePlus qPCRサーマルサイクラー(AppliedBiosystems)上での2×SYBR Power MasterMix(Applied Biosystems)を用いた40サイクルの20μlのqPCR反応の実行に対する入力として使用した。2-ΔΔCt法を使用して、ハウスキーピング遺伝子Hmbsに対するRNA存在量を決定した。製品の特異性を、融解曲線分析で確認した。プライマー配列は、以下の通りである:
mHmbs_qF 5’-CAGAGAAAGTTCCCCCACCT-3’ (配列番号1)
mHmbs_qR 5’-AATTCCTGCAGCTCATCCAG-3’ (配列番号2)
mVimentin_qF 5’-AAACGAGTACCGGAGACAGGT-3’ (配列番号3)
mVimentin_qR 5’-TCTCTTCCATCTCACGCATCT-3’ (配列番号4)
mCol1a1_qF 5’-GCCAAGAAGACATCCCTGAA-3’ (配列番号5)
mCol1a1_qR 5’-CAGATCAAGCATACCTCGGG-3’ (配列番号6)
mTgfbr2_qF 5’-TGGACCCTACTCTGTCTGTGG-3’ (配列番号7)
mTgfbr2_qR 5’-ACTCCACGTTTTCCAGATTCA-3’ (配列番号8)
mActa2_qF 5’-ACTGGGACGACATGGAAAAG-3’ (配列番号9)
mActa2_qR 5’-GTTCAGTGGTGCCTCTGTCA-3’ (配列番号10)
mN-Cad_qF 5’-GGACATCATCACTGTGGCAG-3’ (配列番号11)
mN-Cad_qR 5’-TTCCATGTCTGTGGCTTGAA-3’ (配列番号12)
mE-Cad_qF 5’-CCGGGACTCCAGTCATAGG-3’ (配列番号13)
mE-Cad_qR 5’-CAGCTCTGGGTTGGATTCAG-3’ (配列番号14)
結果
図1は、非馴化無血清培地+10%羊水(uncSFM+AF)、uncSFM+10%AF中のものと同量の羊水由来エクソソームを含むuncSFM(uncSFM+AFexos)、またはuncSFM+10%エクソソーム枯渇羊水(uncSFM+exo(-)AF)と共にインキュベートした、0、12、18、及び24時間のスクラッチ試験創傷治癒アッセイ中のC2C12筋芽細胞の代表的な明視野顕微鏡画像を示す。このアッセイの結果を、図2において定量化する。10%のエクソソーム/EV枯渇AFを使用したuncSFMは、24時間にわたってスクラッチ領域の割合の減少をほとんど示さなかった。しかしながら、uncSFM+10%AFとuncSFM+10%AFエクソソーム/EVの両方は、エクソソーム/EV枯渇AFの結果と比較して、24時間にわたってスクラッチ領域の閉鎖が有意に増加したことを示した。
図3は、全羊水(AF;合計)中のCD63及びCD9(エクソソーム/EVのマーカー)、ExoQuick TC-ULTRAキット(SBI Biosciences;exoCrude)を使用してAFから精製されたエクソソームの画分、ExoQuick TC-ULTRAキット(SBI Biosciences;exoPure)由来の精製画分/溶出液、及びエクソソーム枯渇AF(exo(-)AF)のレベルを比較するウエスタンブロット分析を示す。CD63、及びより少ない程度でCD9は、エクソソーム枯渇AFを除くすべての画分に存在していた。アルブミンはAF中に豊富に含まれているため、精製されたエクソソーム由来の汚染物質の除去を示すマーカーとして使用する。
これらの実験は、精製されたAF-EVが、図1及び2で観察された創傷領域の閉鎖/遊走効果に必要かつ十分であることを示している。遊走は、創傷組織のリモデリングを開始する細胞動員及び活性化などの初期段階の治癒事象にとって重要である。エクソソーム枯渇AFにおけるビメンチンmRNAのレベルの低下によって示されるように、AFからEVを枯渇させると、遊走及び上皮間葉転換(EMT)が阻害される(図4)。EV枯渇AFは、代わりに、創傷治癒に必要な「後期」事象である再上皮化を促進し、これは、動員/活性化された細胞を通常の静止状態に戻す働きをする。
これらの反対の効果は、AF-EVではEMTを介して媒介されるが、EV枯渇AFではMETを介して媒介される。これは、ビメンチンmRNA(図4;有意ではないが)及びN-カドヘリン/E-カドヘリンmRNA比(図5;EMTの増加を示す)が、AF-EV処理筋芽細胞で増加したがEV枯渇AF培養細胞では減少したという観察によって裏付けられている。細胞/組織リモデリングを開始できる「動員/活性化」のエビデンスは、Col1a1(コラーゲン、I型、α1;修復された組織に存在する豊富なコラーゲン)(図6)及びActa2(α-アクチン-2;細胞運動に関与するタンパク質及び筋線維芽細胞形成のマーカー)(図7)のレベルが、AF-EV処理細胞では上昇するが、EV枯渇AF処理細胞では低下するか、または変化しないという観察に由来する。TGFbr2(トランスフォーミング成長因子、β受容体II;細胞増殖のマーカー)の発現(図8)は、AF-EV処理細胞では上昇するが、EV枯渇AF処理細胞では変化しないため、この効果はTGFβシグナル伝達の増加によって媒介され得る。逆に、EV枯渇AFは、STAT3(シグナル伝達性転写因子3;上皮細胞増殖、細胞外マトリックスのリモデリング、血管新生、及び炎症の抑制などの後期創傷治癒に関与する遺伝子の発現を調節する転写因子)のレベルの増加を示し、一方、AF-EV処理細胞のレベルは変化しなかった(図9)。
MMM線維芽細胞を使用してスクラッチ試験創傷治癒アッセイを繰り返した場合にも、同様の結果が認められた。図10は、時間0、12、18、及び24時間での代表的な明視野顕微鏡画像を示し、定量化した結果を図11に示す。uncSFM+10%エクソソーム/EV枯渇AFは、24時間にわたってスクラッチ領域の割合の減少をほとんど示さなかった。しかしながら、uncSFM+10%AFとuncSFM+10%AFエクソソーム/EVの両方は、エクソソーム/EV枯渇AFと比較して、24時間にわたってスクラッチ領域の閉鎖が増加したことを示した。
結論。AF-EVは、EMTを活性化することにより、in vitroモデルで創傷治癒を促進する。逆に、EV枯渇AFは、細胞遊走とEMTを強力に抑制する。これらの発見は、AF-EVが早期に送達されて細胞遊走を誘発し、次いでEV枯渇AFを使用して再上皮化/METなどの後期事象が活性化される創傷治療への2段階アプローチが、優れた結果をもたらし得ることを示唆している。
実施例2:局所生理活性化粧品
序文
現在の再生美容療法は、マイクロクリスタル・ピーリングまたはマイクロニードリングなどの角質除去技術を使用して、生理活性製剤を経皮的に送達する。真皮への大きな生物学的分子の送達は制限されており、剥脱及び他の機械的破壊力に部分的に依存している。生理活性製剤には、歴史的に自家多血小板血漿(PRP)及び成長因子血清が含まれるが、しかしながら、長い(そして潜在的に痛みを伴う)調製時間が必要であり、製剤化に一貫性がなく、安全特性が不確実である。
これらの問題を回避するために、羊水ベースの生理活性製剤(Celexoderm(商標)皮膚若返り血清として市販)をたっぷりと塗布して、角質除去とマイクロニードリングを組み合わせて真皮を破壊する治療法が開発され、最適化された。AF成分の存在と、AFが皮膚の再生を安全に促進できることを示す一連の文献に基づいて、この製剤を介した羊膜タンパク質及び他の生体分子の経皮送達により、しわが減少し、皮膚が引き締められるであろうと仮定した。
主な目的は、専門家による顔の角質除去を受けている対象における補助治療として、生理活性ヒドロゲル系(Celexoderm(商標)皮膚若返り血清、Merakris Therapeutics,LLC,Research Triangle Park,NC)のしわを滑らかにする特性を評価することであった。二次的な目的は、製剤に対する皮膚の感受性と耐容性を評価することであった。
方法
化粧品の製剤化。完全に濡れるまで(約45分)、パドルシャフトを約25°の角度に配置して滅菌蒸留水を約600rpmで攪拌しながら、カルボマーポリマーを添加する。攪拌速度を約300rpmに下げ、次いでpH6.8~7.0に達するまで1N NaOHをゆっくりと加える。次いでSpectrastat(商標)をゆっくりと添加し(1.8%v:v)、次いでAFをゆっくりと添加して20%の最終濃度(v:v)を得る。
対象(n=3)は、専門家の顔のクレンジングとそれに続く1mmのマイクロニードルローラーの角質除去を受けることについてインフォームドコンセントを提供した。マイクロニードリングは角質層を剥脱させ、真皮に小さなマイクロチャネルを形成し、局所的に塗布されたより大きな生体分子に対して、皮膚の生体層へのアクセスを媒介する。次いで、5グラムのCelexoderm(商標)を専門家のセッティングの下で顔に大量に塗布した。対象は、Celexoderm(商標)を14日間にわたって1日2回、しわのある標的領域に製品を大量に塗布することにより、自宅で局所塗布し続けた。
皮膚の全体的な視覚的変化を評価するために、手順を開始する前と開始してから14日後にデータを写真の形で収集した。対象はまた、皮膚の感受性と製品の満足度に関する定性的なフィードバックを、治療を行うエステティシャンに報告した。専門的な適用に関する医師のフィードバックを得た。
結果
3人の対象が単一の美容医療センターで治療を受け、肌のきめとしわの減少の質的な改善を報告した。1人の対象の写真を図12に示し、これは、「目じりの小じわ」の有意なしわの減少と部分的な消失を示す。3人の対象のうち2人は、マイクロニードル剥脱手順後のCelexoderm(商標)塗布による軽度の灼熱感を報告したが、自宅での塗布中または塗布後の灼熱感の報告はなかった(マイクロニードルなし)。皮膚の過敏症または他の問題に関する他の患者の報告はなかった。すべての対象は、Celexoderm(商標)を皮膚に塗布した場合に望ましい感触と質感を有していたと報告した。医師は、この製品について塗布が容易であり、製品の量が、顔と首の領域に自由に塗布するのに十分であると報告した。さらなる医師のフィードバックには、おそらくアルコール系保存剤の使用による、塗布による灼熱感を最小限に抑えるために保存剤を変更するという提案が含まれていた。
結論
本明細書に示す結果は、剥脱手順と組み合わせたCelexoderm(商標)がしわの減少を促進することを示している。剥脱による治療直後の灼熱感の報告(ただし、剥脱なしの家庭での使用では報告されていない)により、アルコール系の保存剤を、USP<61>試験(Spectrastat(商標)、Inolex Inc.,Philadelphia,PA)に合格したアルコールフリーの保存剤に交換するよう促された。多血小板血漿(PRP)などの他の生理活性製剤と比較して、Celexoderm(商標)を利用すると、採血に伴う安全性のリスクが軽減され(ユーザーの不快感がゼロ)、医療スパでの処置時間が短縮され、バッチ間でより一貫性のあるタンパク質/高分子製剤化が可能になる。Celexoderm(商標)の送達は、大きな分子を皮膚へ浸透させることをさらに促進するイオントフォレーシスまたはソノフォレーシスなどの機械的な力を使用して向上させてもよい。
Celexoderm(商標)皮膚若返り血清は、局所的及び/または皮下に送達され、ポイントオブケアで処理されるPRP及び他の生理活性製剤に対する、安全で潜在的に効果的な既製の代替品であると結論付ける。
実施例3.
タンデム質量分析(LC/MS-MS)と組み合わせた液体クロマトグラフィーを、全羊水(全AF)、エクソソーム枯渇AF(exo(-)AF)、及びAFのエクソソーム濃縮画分(AF exos)の三つ組の生物学的試料で実施した。分析を実施して、全スペクトルに対するペプチド濃縮を生成し、次いで、タンパク質に一意にマッピングしたペプチドのオーバーラップの程度を測定した。図13は、得られたベン図を示しており、これは、分析した試料のオーバーラップ(または非オーバーラップ)の程度を示す。
同じ「深度」のタンパク質シーケンシングを使用すると、羊水のエクソソーム画分には、より複雑なプロテオームが含まれる(実施したシーケンシングの深度で)。AFに非常に豊富に含まれるタンパク質(例えば、アルブミン及びトランスフェリンなど)は、主にエクソソーム画分の外側に認められる。
DAVIDバイオインフォマティクスデータベースを使用した遺伝子オントロジー分析を用いて、LC/MS-MSによって、全AF中に認められたタンパク質よりも高いレベルでエクソソームリッチなAF画分中に存在すると同定されたタンパク質に有意に関連する生物学的値、機能、及びプロセスを決定した。図14は、x軸上の高頻度タームに対するy軸上のlog10(p値)のプロットである。同定された高頻度タームは、左から右に、細胞質ゾル;細胞外エクソソーム;細胞間接着;細胞間接着に関与する;膜;ミエリン鞘;GTP結合;GTPase活性;小胞;アクチンフィラメントの結合及び接着斑であった。細胞外エクソソーム(特に)及びそれに関連するターム(例えば、細胞質ゾル、膜、小胞、アクチン結合、接着斑、細胞間接着、及びカドヘリン結合など)が見出された。GTP結合/GTPaseは、いくつかのGTP依存性シグナル伝達プロセスに関連している可能性がある。DAVIDバイオインフォマティクスデータベースを使用した遺伝子オントロジー分析も用いて、LC/MS-MSによって、全AF中に認められたタンパク質よりも高いレベルでエクソソーム枯渇AF画分中に存在すると同定されたタンパク質に有意に関連する生物学的ターム、機能、及びプロセスを決定した。図15は、x軸上の高頻度タームに対するy軸上のlog10(p値)のプロットである。同定された高頻度タームは、左から右に、細胞外領域、網膜恒常性、ホルモン活性、セリン型エンドペプチダーゼ阻害剤活性、DNA結合、及び血液凝固の正の調節である。図14よりもタームの数が少なく、エンリッチメント値が低かった。
実施例4. 組織の損傷
変形性関節症、関節リウマチ、及び乾癬性関節炎などの関節の変性障害は、持続的な痛みと障害をもたらす。
OAは軟骨の破壊と細胞外マトリックスの喪失を特徴とする。関節軟骨は、関節の表面を覆う引張荷重負荷結合組織である。関節軟骨は、血管、神経組織、またはリンパ管を含んでいない。大量のECMによって空間的に分離されている軟骨細胞は、ECMの合成と維持に関与している。軟骨の修復能力は、軟骨細胞数の減少によって明らかにされるように、年齢とともに低下する。これらの変化は軟骨の変性をもたらし、その修復能力を制限する。炎症を起こした滑膜によって生成される異化及び炎症誘発性因子は、軟骨基質の同化作用と異化作用のバランスを変化させ、軟骨の破壊を引き起こす。軟骨と軟骨下骨の変化は、さらなる滑膜炎を引き起こし;進行性滑膜炎は臨床症状を悪化させ、さらなる関節変性を刺激する。(Zhang,R.et al.,Am.J.Trans. Res.(2019)11(10): 6275-89)。
OA進行中の軟骨組織の変性は、慢性炎症によって引き起こされる。炎症性サイトカインとOAの発症との間には関連があることが一般的に認められている。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)及びトロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンとメタロプロテイナーゼ(ADAMTS)の発現が増加する。エクソソームのパラクリン分泌が関節組織の修復に役割を果たす可能性があることが示唆されている。(Mianehsaz,E.et al.,Stem Cell Res.& Therapy(2019)10: 340)。
前臨床研究は、脂肪組織または骨髄のいずれかから単離されたMSCの関節内注射により、関節の軟骨を変性から保護することができ、OAの発症を遅らせることができることを示している(同上、ter Huurne,MI et al,Arthritis Rheumatism(2012)64(11): 3604-13;Toupet,K.et al.,PLoS One(2015)10(1): e0114962;Murphy,JM,et all,Arthritis Rheumatism(2003)48(12): 3464-74);Desando,G.et al.,Arthritis Res.Ther.(2013)15(1): R22を引用)。
関節疾患に関与する様々な細胞に対するエクソソームの様々な影響を評価するために、数多くの調査が実施されてきた(同上、Anderson,HC et al.,Lab Investig.(2010)90(11): 1549;Chang,Y-H,Wu,K-C,et al.,Cell Transplant.(2018)27(3): 349-63;Li,JJ et al.,Nanomaterials(Basel)(2019)9(2): https://doi.org/103390/nano9020261;Withrow,J.et al.,Arthritis Res.Ther.(2016)18(1):286を引用)。細胞由来のEVは、OA及びRA患者の炎症を起こした関節から抽出された滑膜線維芽細胞(SF)から単離され、疾患の進行に関係する炎症及び軟骨変性などの細胞プロセスにおけるそれらの役割を調査するために使用される(同上、Withrow,J.et al.,Arthritis Res.Thera.(2016)18(1): 286;Li,Z.et al,Cell Physiol. Biochem.(2018)47(5): 2008-17;Maumus,M.et al.,Biochimie(2013)95(12): 2229-34を引用)。
Domenisらは、ヒト末梢血単核球(PBMC)から分化したマクロファージ上の末期OA患者に由来するSF由来エクソソームの免疫調節特性を調査した(同上、引用(Mediators Inflamm.(2017)2017:481-498)。患者の細胞をエクソソームで処理すると、マクロファージが一連のケモカイン及び炎症性サイトカイン、例えば、CCL8、IL-1β、MMP12、CCL15、MMP7、及びCCL20を生成し、軟骨の分解と関節の炎症をもたらすであろう。
Kolheらは同様の実験を行い、OA患者のSF由来のエクソソームで処置した関節軟骨細胞を使用して、細胞生存率と同化遺伝子(COL2A1、ACAN)の発現の有意な減少、及び異化遺伝子と炎症遺伝子(IL-6、TNF-α)の発現の増加を示した。(同上、Kolhe,R.et al.,Sci Rep.(2017)7(1): 2029を引用)。
Katoらは、エクソソームが関節軟骨細胞と炎症性滑膜線維芽細胞(SFB)の間の相互作用を媒介するかどうかを調査した。エクソソームを、未処理の類似断片ペア(SFB)、及びIL-1βで処理したか、または未処理の類似断片ブロック(SFP)から単離し、次いで正常な関節軟骨細胞に添加した。それらは、未処理のSFB由来のエクソソームと比較して、IL-1β処理したSFB由来のエクソソームで処理した場合、関節軟骨細胞において、MMP-13及びADAMTS-5の発現の上方制御ならびにACAN及びCOL2A1の下方制御を示した。さらに、IL-1βで処理したSFB由来のエクソソームは、in vitroモデルとin vivoモデルの両方でOA様の変化を引き起こした。(同上、Kato,T.et al,Arthritis Res.Ther.(2014)16(4): 8163を引用)。
関節損傷及びOAを治療する可能性を含む、様々な疾患に対するMSCの臨床応用への関心がますます高まっている(同上、Toh,WS,et al.,Semin. Cell Dev. Biol.(2017)67: 56-64;Davatchi,F.et al.,Intl J.Rheum Dis.(2016)19(3): 219-25);Lamo-Espinosa,JM et al.,J.Transl.med.(2016)14(1): 246;Vega,A.,et al.,Transplantation(2015)99(8): 1681-90;Ham,O.et al,Intl J.Mol.Sci.(2015)16(7): 14961-78;Qi,Y. and Qi,Y.et al,Mol.Biol.Rep(2012)39(5): 5683-89を引用)。MSCは通常、滑膜(同上、Koizumi,K.et al,Osteoarthr. Cartil.(2016)24(8): 1413-22を引用),骨髄(同上,Van Buul,G.et al,Osteoarthr. Cartil.(2012)20(10): 1186-96を引用)及び脂肪組織(同上、Manferdini,C.et al.,Arthritis Rheumatism(2013)65(5): 1271-81を引用)から分離されている。研究者は、損傷した組織機能の回復またはOAもしくは軟骨損傷の疾患症状の緩和におけるMSCの有効性を評価した(同上、Mendicino,M.et al,Cell Stem Cell(2014)14(2): 141-45;Lee,WY-W,Wang,B,J.Orthop. Trans.(2017)9: 76-88を引用)。罹患した関節へのMSCの移植後に観察された機能的増強(またはさらに関節組織の再生)にもかかわらず、それらの生着及びその後の望ましい細胞型への分化はめったに起こらなかった(同上、Wyles,CC,et al,Stem Cells Cloning(2015)8:117を引用)。
直接細胞移植アプローチには、注射後の細胞の生存率の低さ、細胞の挙動と細胞間相互作用の持続的な改善を予測できないこと、及び在庫品による処置を可能とする細胞の適切な貯蔵バンクの維持についての問題など、いくつかの問題がある(同上、Heldring,N.et al,Hum.Gene Ther.(2015)26(8): 506-17を引用)。高齢のドナーまたは他の不健康なドナーから分離されたMSCが疲弊したパフォーマンスと増殖をもたらすことがわかったため、ドナーの適合性はもう1つの問題である(同上、Siddappa,R.et al.,J.Orthop. Res.(2007)25(8): 1029-41を引用)。さらに、老化の誘導、増殖能の喪失、及び分化能力の低下(特に10~20の集団倍加を上回る)は、移植前のMSCの長期のex vivo細胞増殖に起因している(同上、Siddappa,R.et al.,J.Orthop. Res.(2007)25(8): 1029-41を引用)。分化したMSCの軟骨表現型を維持すること、及び軟骨内骨化の通常のプロセスの一部として軟骨形成誘導後に石灰化を受ける遺伝的プログラミングに起因して、それらが骨形成表現型に向かって増殖するのを防ぐことにも問題がある(同上、Dickhut,A.et al.,J.Cell Physiol.(2009)219(1): 219-26を引用)。さらに、MSCは特定の環境応答因子に感受性であり、疾患を有する関節環境でのMSC応答に悪影響を与え得る。例えば、報告によると、ヒト脂肪組織由来のMSCは、TNFで処置すると炎症誘発性セクレトームに切り替わり、次いで炎症反応を増強する役割を果たし得る(同上、Lee,MJ et al,J.Proeome Res.(2010)9(4): 1754-62を引用)。
最近の研究では、MSCエクソソームが、心臓、肝臓及び皮膚組織の修復を促進できることが示されている。(Zhang,R.et al.,Am.J.Trans. Res.(2019)11(10): 6275-89)。MSCエクソソームは、軟骨の修復と再生を媒介することも報告されている。例えば、Zhangらは、軟骨修復に対するヒト胚性MSCエクソソームの効果を最初に示した。軟骨欠損を、12匹の成体ラットの遠位大腿骨の気管溝に誘発した。12週間後、エクソソームで処理した欠損は、完全な軟骨と軟骨下骨の回復、及び規則的な表面を有する硝子軟骨、隣接する軟骨への完全な接着、及び年齢を一致させた対照と非常に似たECM沈着などの他の特徴を示した。(同上)。Cosenza らは、同種異系BMSCに由来するエクソソームが、軟骨と骨を分解から保護することにより、マウスがOAを発症するのを防ぐことを発見した(同上、92を引用)。MSCエクソソームによる軟骨再生の根底にあるメカニズム及び MSCエクソソームについて報告されている他の治療効果は解明されていない。(同上、Cosenza,S.et al.,Sci.Rep.(2017)7: 16214を引用)。
四肢の骨の関節端は、コラーゲンとプロテオグリカンが豊富なECMに囲まれた軟骨細胞からなる硝子軟骨で覆われている。軟骨は滑液に浸されており、滑液は関節を取り巻く線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)によって分泌される。RAに伴う関節の慢性炎症及びOAに伴う関節軟骨の機械的劣化はそれぞれ、関節空間内を循環するEVの変化を伴うように思われる。Murphy,C.et al..,Mol.Aspects. Med.(2018)60: 123-28)。
様々なmiRNAが、いくつかの重要な病理学的プロセスを媒介しているようである。
RAでは、miR-155とmiR146aが疾患の発症に関与していることが知られており;これらのmiRNAは両方ともTNF-αによって刺激され、炎症反応に間接的に影響を及ぼし、miR-155は炎症を増加させ、miR-146aは炎症を減少させる。(同上、Withrow,J.et al.,Arthritis Res.Ther.(2016)18(1): 286を引用)。
OAでは、FLS細胞をIL-1βで処理すると、EVが分泌され、miR-500B、miR-4454、miR-720、miR-199b、及びmiR-3154のレベルが上昇する(同上、Kato,T.et al.,Arthritis Res.Ther.(2014)16(4): 163を引用)。OA患者の滑液中のEVで検出されたマイクロRNAは、男性と女性で異なり、FLSによって分泌される。特に、OAの女性は、関節軟骨細胞のTLR3などのトール様受容体を標的とすることが知られているmiR-26aの顕著な下方制御を示す。エストロゲンはmiR-26aの産生を刺激することが知られているが、エストロゲン阻害剤はmiR-23aの発現を抑制する(同上、Kolhe,R.et al. Sci.Rep.(2017)7(1): 20-29を引用)。
様々な関節/整形外科的変性及び身体的過剰使用状態の治癒プロセスは複雑であるが、再生が収束するいくつかの根本的な細胞状態及び経路がある。これらは、炎症の軽減、細胞の恒常性の再開、及び整形外科的病理を逆転させるために協調して作用する様々な免疫/前駆細胞型の動員/活性化である。そのような状態のin vitroモデリングは、様々なタイプの関節炎及び身体的関節損傷を含むがこれらに限定されない様々な状況で広く使用されている(Blom et al. Arthritis and Rheumatism(2009)60(2):501-12;Johnson et al.,In vitro models for the study of osteoarthritis,The Veterinary Journal 209(2016)40-49を参照のこと)。例えば、IL-1BまたはTNF-Aを介したサイトカイン誘導の使用は、マウスモデル、及び線維芽細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、滑膜細胞、または破骨細胞/芽細胞を使用するin vitroモデルでこれらの状態を模倣するために広く使用されている方法である(同上)。
さらに、血清を除去し、それらを活性成分/被験試薬に置き換えることによって、これらの細胞の恒常性への復帰を試験するためのアッセイを使用してもよい。
いくつかの実施形態によれば、そのような状態の逆転についてアッセイすることができる測定法として、限定されないが、RT-qPCR、免疫蛍光、免疫組織化学、ELISA、ウエスタンブロット、またはJohnson et al 2016によって記載されたもの、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP、細胞外マトリックスの分解に関与するペプチダーゼの群)の天然の阻害剤であるTIMPタンパク質のようなタンパク質、例えば、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤(TIMP1)、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤(TIMP2)、メタロプロテイナーゼ3の組織阻害剤(TIMP3)、核因子κBサブユニット1(NFKB1)、形質転換成長因子β受容体1(TGFBR1)、形質転換成長因子β受容体2(TGFBR2)、シグナル伝達物質及び転写活性化因子3(STAT3)、コラーゲン1型α1鎖(COL1A1)、コラーゲンI型α2鎖(COL1A2)、フィブロネクチン1(FN1)、ACTA2(アクチンα2、平滑筋)、及び他のコラーゲン/ECMタンパク質をコードする他の抗炎症性マーカーを含む、標的バイオマーカー(複数可)を測定するための他の細胞ベースのアッセイまたは免疫アッセイが挙げられ得る。
いくつかの実施形態によれば、線維芽細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、滑膜細胞、または破骨細胞/芽細胞を使用するin vitroモデルは、組織損傷の代用として役立ち得る。いくつかの実施形態によれば、全AF、エキソ(-)AF、及びAF exosを、in vitroモデルに投与してもよく、上記の薬剤の1つ以上によって誘発された炎症状態を治療するか、上記の薬剤によって誘発された炎症状態を逆転させるか、または血清もしくは他の抗炎症成分の非存在下で恒常性を促進し得る(細胞分裂/増殖の促進またはin vitroでのアポトーシスの阻害によって測定する)。いくつかの実施形態によれば、in vtroモデルは、炎症または損傷を排除する状態で維持され得る。
実施例5. 退行性の眼の状態、瘢痕の減少
定義
本明細書中で使用する用語「血管新生」とは、既存の血管からの新規血管の成長を指す。血管新生は、生理学的条件下で、塩基性及び酸性のFGF、VEGF、アンジオゲニン、TGFβ、IFNβ、TNFα、及びPDGFなどの特定の血管新生分子によって活性化される。血管新生は、IFNα、サリドマイド、トロンボスポンジン-1、アンジオスタチン、エンドスタチン、天然に存在するカルボキシ末端の形態、MMP-2(PEX)の非触媒ドメイン、転移RNA(tRNA)シンテターゼ、及び色素上皮由来因子(PEDF)などの阻害分子によっても抑制することができる。通常は静止している毛細血管系は、これらの天然に存在する刺激物質と血管新生阻害剤のバランスによって厳密に制御されていると考えられている。このバランスが崩れると(例えば、糖尿病性網膜症(DR))、毛細血管内皮細胞が、増殖、遊走、分化するように誘導される。
用語「線維症」は、非CNS組織における線維芽細胞媒介性の創傷治癒プロセスを説明するために使用する。それは、傷害または炎症の結果として、またはその血液供給の妨害の結果としての過剰な線維性結合組織の形成または発達を指す。それは、瘢痕、異常な反応プロセスにつながる通常の治癒応答の結果であるか、または知られているもしくは理解されている原因がない場合がある。
本明細書中で使用する用語「神経膠症」とは、CNSで観察されるグリア細胞媒介性創傷治癒応答を指し、これは、線維症が非CNS組織における同様のプロセスを説明するために使用されるのと同様である。(Friedlander,M.,J.Clin.Invest.(2007)117(3): 576-86)。低酸素症及び炎症性発作に対する眼の反応は、通常、網膜または脈絡膜の血管新生を引き起こす。発生中、このプロセスは高度に規制されており、よく組織化された、成熟した血管系の確立をもたらす。成人では、これは多くの場合に当てはまらず、関連するグリア細胞(例えば、星状細胞、ミクログリア、ミュラーグリア細胞)が内皮細胞とともに増殖し、線維症と瘢痕形成を引き起こす。(同上)。
本明細書中で使用する用語「網膜神経膠症」とは、星状細胞、ミュラー細胞、及び/またはミクログリアの増殖を指し、これは、限局性から拡散性の分布を伴う様々な網膜層で起こり得る。網膜のグリア細胞の数の増加を特徴とする。網膜神経膠症は、一次性変化(一般的に病因が不明)として、または他の網膜病変にはない特徴(例えば、変性)として発症し得る。
本明細書中で使用する用語「ミュラー(またはミューラー)細胞」とは、円筒形の繊維状の形状を有し、網膜の厚さ全体に及ぶ、脊椎動物の網膜内の放射状グリア細胞を指す。ミュラー細胞は周囲の組織よりも高い屈折率を有し、光の伝播方向に沿って、つまり、光が組織に入る硝子体から外境界膜まで網膜を通る光の経路に配向する。光受容細胞の内側のセグメントは、入射光を受容する。in vitro及びin vivoでの網膜組織の透過及び反射共焦点顕微鏡は、これらの細胞が網膜表面から光受容細胞への光の低散乱通過を提供することを示した。個々のミュラー細胞は光ファイバーとして機能し、歪みを最小限に抑えて損失を抑えながら、脊椎動物の網膜を介した画像転送を媒介しているようである。Franze,K.et al,“Muller cells are living optical fibers in the vertebrate retina,” Proc.Natl Acad.Sci.USA(2017)104(20): 8287-92を参照のこと。
本明細書中で使用する用語「血管新生」とは、特に、疾患または外傷によって循環が損なわれている組織における、新規血管の発達を指す。例えば、角膜血管新生は、角膜への新規血管の侵入を特徴とし、角膜の透明性を維持する血管新生因子と抗血管新生因子との間のバランスの崩壊によって引き起こされる。虹彩ルベオーシスとしても知られる虹彩の血管新生(NVI)は、網膜虚血に反応して虹彩の前面に小さな細い血管が発達した際に生じる。用語「r網膜血管新生」とは、網膜における異常な血管成長を指す。
本明細書中で使用する用語「瘢痕組織」とは、創傷修復の生物学的プロセスの結果として、損傷または疾患によって破壊された正常組織を置き換える線維組織を指す。
眼の線維性疾患
眼の線維症は、視軸を機械的に破壊するか、組織の微小環境を十分に乱して、適切な細胞機能がもはや不可能になることにより、視力に破滅的な結果をもたらし得る。(Friedlander,M. “Fibrosis and diseases of the eye,” J.Clin.Invest.(2007)117(3): 576-86)。
眼の前眼部線維性疾患
創傷治癒に対する前眼部の応答は、非CNS組織の応答に、より類似している。視力喪失につながる前眼部の2つの主要な疾患は、角膜混濁と緑内障である。(同上)。
角膜は、外側は層状の非角質化上皮で覆われ、内側は、コラーゲンの複数の直交配列を間に挟んだ輸送内皮の単層で覆われている。可溶性VEGFR-1の濃度が高いため、通常は無血管であり、移行縁である角膜輪部に囲まれている。角膜輪部には、新生内皮細胞と角膜上皮幹細胞が存在する。(同上)。
角膜の疾患は、遺伝性(例えば、遺伝性ジストロフィー)、または感染症(例えば、ヘルペス性肝炎)もしくは炎症(例えば、翼状片)に続発する後天性であり得る。(同上)。瞼裂斑及び翼状片(角膜表面の線維血管の成長)をもたらす結膜の弾性変性は、誘発された乱視及び/または視軸の閉塞に続発する視力喪失をもたらし得る。(同上)。これらすべての疾患の最後の一般的な事象は、多くの場合、血管新生、組織浮腫、そして最終的には角膜実質の線維化に関連する炎症性変化であり、これは混濁と視力低下をもたらす。(同上)。
角膜創傷修復は、アポトーシスを伴う複雑な多相プロセスである(Klingeborn,M.et al.,Prog. Retin. Eye Res.(2017)59: 158-77,Netto,MV,et al.,Cornea(2005)24: 5009-22)を引用;増殖(同上、Cursiefen,C.et al. Cornea(2006)25: 443-47を引用);細胞形質転換(同上、Mimura,T.et al.,J.Vasc. Res.(2009)46: 541-550を引用);遊走(同上、Cornea(2006)25: 443-47を引用);及びECMリモデリング(同上、Mimura,T.et al.,J.Vasc. Res.(2009)46: 541-550を引用)。このプロセス全体の重要な構成要素は、膜貫通型マトリックスメタロプロテイナーゼ-14(MMP-14)である。角膜線維芽細胞は、内皮細胞に取り込まれるMMP-14とともにエクソソームを放出する(同上、Han,KY,et al. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci(2015)56: 5323-5329を引用)。エクソソームのMMP-14活性は、エクソソームにおけるMMP-2の蓄積と活性化に重要である(同上、Han,KY,et al.Invest. Ophthalmol. Vis. Sci(2015)56: 5323-5329を引用)。
角膜移植は、角膜が混濁または破損した患者の一様に憂鬱な予後を妨げてきたが、通常は混濁の再発が原因で、失敗率が高い。同上。
緑内障は通常、眼内液の産生の増加または流出に対する抵抗の増加のいずれかからの眼圧の増加に関連しているが、眼内液が眼を離れる管の進行性線維症(線維柱帯)が緑内障を引き起こす損傷のほとんどを占めるものとより一般的には考えられている。
眼の後眼部線維性疾患。
後眼部は、レンズの後部の構造からなり;目の後部の内部は、主に水、コラーゲン、及びヒアルロン酸からなる粘弾性物質である硝子体で満たされている。硝子体は、網膜(眼の最も後方の組織)の衝撃吸収材として機能し、特定の疾患状態(例えば、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、未熟児網膜症(ROP))において、グリア及び内皮細胞が通常の網膜内位置から網膜表面を越えて前方に、及び/または特定の硝子体に遊走する足場を提供し得る。
網膜または脈絡膜血管系の異常の結果として視力喪失をもたらす疾患(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、未熟児網膜症(ROP)、及び血管新生緑内障)は、黄斑浮腫、網膜及び体外出血、及び線維血管性瘢痕を特徴とする。これらすべての疾患に共通する最終的な病態生理学的共通因子は、損傷に対する網膜の応答であり、慢性的な創傷治癒は線維症を引き起こす。炎症性または低酸素性の刺激に応答して異常な血管が形成されると、それらは体液を漏出させ、網膜の肥厚及び浮腫及び/または出血を引き起こし、線維血管の増殖及び牽引性網膜剥離を引き起こし得る。
網膜の線維血管性瘢痕及び神経膠症
線維血管性瘢痕は、根底にある炎症性または低酸素症による血管新生とそれに関連する線維症の結果である。グリア細胞は、網膜の損傷や疾患に応答した線維性瘢痕の形成の主要な関係因子である。網膜では、特定のグリアが、発達中の組織と成熟した組織の両方で血管内皮と密接に関連している。例えば、活性化された星状細胞は、表在性血管叢の形成中に網膜血管内皮細胞が遊走するテンプレートを形成し;これらの細胞の数または分布の乱れは、網膜血管系の正常な発達を妨害する。炎症性疾患(例えば、AMD及び虚血性疾患(例えば、DR))は、網膜の線維血管性瘢痕及びそれに関連する視力喪失をもたらす病態のほとんどを占める。
網膜下線維症: AMD
網膜色素上皮(RPE)が老化するか疾患になると、それは不適切に機能し得、血管新生脂質と損傷したタンパク質を含むドルーゼンと呼ばれる網膜下沈着物が蓄積する。RPEの機能不全とドルーゼンの蓄積は、ブルッフ膜(網膜の外側部分(脈絡毛細管板)と網膜に栄養を供給する有窓のII型内皮によって裏打ちされた毛細血管の層の間にある光沢のある均質な膜)の肥厚をもたらし得、この線維症に関連する血管新生ドルーゼンの蓄積は、光受容体の脈絡膜毛細血管からの酸素の拡散を低下させ得、さらに病態を悪化させ、脈絡膜血管新生がもたらされ得る。これらの異常な新規血管が網膜下腔で成長し始めると、それらは多くの場合、出血し、さらなる創傷治癒応答を引き起こし、最終的には網膜下線維症を引き起こす。光受容体、RPE、脈絡膜血管の局所的な破壊は、黄斑の機能と視力の永続的な低下をもたらす。齧歯動物はヒトの疾患を忠実に模倣しているようには思われないが、トランスジェニックマウスはいくつかの用途を提供している。(Pennesi,ME,et al.,Mol.Aspects Med.(212)33(40: 487-509)。
AMD関連脈絡膜血管新生及びDRを治療するための現在の治療法は、血管増殖応答を媒介するサイトカインの阻害、または代謝需要の増加を引き起こしている組織の破壊を目的としているが、血管新生サイトカインの阻害は、病態生理学の根底にある虚血及び炎症性刺激に対処していない。
網膜上線維症:DR
DRでは、虚血は、周皮細胞死、微小動脈瘤、網膜内微小血管異常、血管透過性の変化、黄斑浮腫などの糖尿病性微小血管障害の結果として発症する。低酸素症が増加すると、血管新生が起こり、網膜内、硝子体下(網膜表面と後部硝子体基部の間)及び硝子体出血を引き起こし得る。これらの増殖する血管は神経膠症を伴う。異常な血管が網膜表面で増殖し続けると、それらは硝子体に伸びて収縮し、網膜表面に牽引力を引き起こし、網膜剥離を引き起こし得る。
虚血性網膜症の動物モデルは、網膜血管増殖を制御する要因のより良い理解を深めるのに役立つものの、糖尿病性網膜症の各段階で発生する神経及び血管の変化の完全な病態を完全に再現するモデルはない。(Olivares,AM,et al.,Curr.Diab. Rep.(2017)17(10): 93)
網膜下及び網膜上線維症を最小限に抑える努力は限られた成功しか収めておらず、瘢痕化はすでに光受容体の死をもたらしているため、視力を救うには遅すぎる治療的介入である。
網膜血管新生及び関連する神経膠症及び線維症もまた、ROPにおいて、及び網膜剥離を治療するための手術の合併症として観察される。
9. 網膜損傷、剥離、及びPVR
眼の外傷は、米国で2番目に多い視力障害の原因であり、年間約240万人の負傷が発生し、その10~20%が一時的または永続的に視力を喪失している(US EyeInjuryRegistry. 2016;American Academy of Ophthalmology. 2016)。穿通性外傷や頭部への衝撃性損傷など、眼への外傷性損傷の多くの形態は、網膜の裂傷を引き起こし、その後、その主要な代謝サポート源である網膜色素上皮(RPE)及び脈絡膜血管系からの剥離をもたらす。網膜剥離は必然的に光受容体細胞の変性と視力のいくらかの喪失をもたらす。小さな剥離は自然に解消する場合があるが、視力喪失の最小化はタイムリーな外科的修復によって最も確実になる。最初の傷害に関連する視力の喪失に加えて、網膜損傷の15.7%は、網膜の網膜下及び/または網膜上表面で、主にRPE及びグリア細胞からなる瘢痕組織の成長によって引き起こされる二次的失明状態をもたらし得る(Miura,M.et al. Retina(2000)20(5): 456-58)。いずれかの表面での瘢痕組織形成は、増殖性硝子体網膜症またはPVRと呼ばれる腫瘍性線維収縮性網膜障害のスペクトルの一部とみなされている(Machemer,R.et al.,Arch. Ophthalmol.(1991)109(11): 1492-93)。網膜下瘢痕は、再付着手術後のRPEと網膜の間のバリアとして機能することにより網膜機能と視力を破壊し、したがって、視細胞外節の食作用、レチノイドサイクルの完了、及び網膜-RPE-脈絡膜輸送を防止する。網膜上膜は光を覆い隠し、収縮し得、網膜のひだと網膜の再剥離を引き起こす。網膜上膜の形成とそれに続く収縮剥離は、依然として網膜再付着手術の最も一般的な失敗である(Speicher,MA et al. Retina(2000)20(5): 459-64;Duquesne,N.et al.,Graefes Arch. Clin.Exp. Ophthalmol.(1996)234(11): 677-82;Girard,P.,et al.,Retina(1994)14(5): 417-24;Gartry,DS,et al,Br. J.Ophthalmol(1993)77(4): 199-203;Greven,CM et al,Ophthalmology(1992)99(2): 257-62)。外科的管理の進歩により、収縮剥離の発生後に最終的に網膜を再付着させる能力が向上したが、視覚的予後は依然として不良である。
網膜剥離及びPVRにおける初期の細胞事象
網膜のPVR誘発性瘢痕は、網膜剥離後の最大の視力喪失と関連しているが、網膜とRPEの有意で多くの場合に不可逆的な変化は、損傷の直後に始まる。剥離から数時間以内に、増殖と細胞増殖の両方に関与する転写因子のミュラー細胞発現が増加する(Geller,SF et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2001)42 (6): 1363-69)。これに続いて、損傷後の最初の3日間にグリア細胞の増殖が激発し、その後瘢痕が形成される(Lewis,GP et al.,Mol.Vis.(2010)16: 1361-72;Fisher,SK et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(1991)32(6): 1739-48)。同様に、RPEの増殖は、物理的な外傷が最小限である実験的に誘発された剥離の場合でも、損傷後24時間で観察されている(Anderson,DH et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(1981)21(1 Pt1): 10-16)。これらの増殖事象に付随するのは、光受容体アポトーシスであり、再付着がない場合、損傷領域全体の神経細胞の最終的なリモデリングである(Cook,B.et al.,Invest. Ohthalmol. Vis. Sci.(1995)36(6): 990-96;Fisher,SK et al.,In:Kolb H,Fernandez E,Nelson R,(編集者)Webvision:The Organization of the Retina and Visual System [インターネット]. Salt Lake City (UT):University of Utah Health Sciences Center;1995-.)。網膜の再付着はミュラー細胞が網膜下腔に成長するのを効果的に阻止するが、ミュラー細胞の増殖は低レベルで継続し、網膜上表面への成長の方向を変え得る(Lewis,GP et al.,MOl. Neurobiol.(2003)28(2): 159-75。外科的に再付着した網膜で観察された低レベルの増殖は、硝子体でのPVR瘢痕形成が、再付着手術後数か月まで患者で通常観察されない理由を説明している可能性がある。したがって、網膜に悪影響を与える可能性のある初期の細胞事象を遮断することは、損傷後の視覚的回復を最大化するために不可欠である。
初期の分子シグナル
剥離から数分以内に、ミュラー細胞及びRPEにおけるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の線維芽細胞成長因子(FGF)を介した活性化のエビデンスが存在する(Geller,SF et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2001)42(6): 1363-69)。初日までに、リン酸化シグナル伝達物質及び転写活性化因子3(STAT3)の上方制御が一部の内顆粒層及び神経節細胞で見られ、3日目までに一部のRPE細胞でも検出される。培養ミュラー細胞を伸ばすと、インターロイキン6(IL6)の増殖に関連する遺伝子の発現が誘導され、IL6受容体とヤヌスキナーゼ(JAK)を介してSTAT3のリン酸化が刺激されるが(Wang,X.et al. PLoS One(2013),8(5)e63467)、このことは、損傷中の網膜の変形が、損傷に関連する事象の多くを開始するトリガーであり得ることを示唆している。同様に、上皮単層の物理的破壊は、RPE増殖の活性化に関与している可能性がある。FGFは培養中のサブコンフルエントRPEの有糸分裂であるが、実際にはインタクトなRPE単層での分化を促進し、FGFに曝露された分化RPE細胞は細胞周期に入らない(Radeke,MJ et al.,Genome Med.(2015)7(1): 58)。通常のRPE細胞は、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)とYボックス結合タンパク質3(YBX3)を隔離する密着結合を有しているため、細胞周期に入るのを防止する。これらの密着結合の外傷誘発性の破壊は、CDK4とYBX3の放出と核の再局在化、及びG1/S期転移を引き起こす。
PVR瘢痕化のための療法
PVRは、複数の細胞型、望ましくない細胞増殖、細胞拡散、収縮性を伴う複雑な疾患である。細胞分裂が、PVRの患者から除去された膜で観察されている(Tsanou,E.et al.,Intl J.Clin.Pract.(2005)59(10): 1157-61;Zhang,X et al. Curr.Eye Res.(2005)30(5): 395-403;Lesnik Oberstein,SYet al.,Br. J.Ophthalmol.(2011)95(2): 266-72)。動物モデル由来のデータ、及びヒトの患者から除去された膜は、応答の一部としてミュラー細胞の増殖に重要な役割を果たしていることを示している。ミュラー細胞プロセスの網膜表面への成長は、剥離後の最も初期の事象の1つとして日常的に観察されるため、これらのプロセスは、より複雑な細胞膜を形成できる細胞足場を提供し得る。
動物モデルにおける網膜剥離の研究は、最終的にPVRをもたらす一連の事象を示唆している。網膜剥離は、1)ミュラー細胞の網膜内増殖及び肥大、2)ミュラー細胞の網膜下腔への「増殖」、広範なグリア瘢痕の形成、3)網膜色素上皮細胞の膜への最終的な移動、ならびに4)膜及び網膜内の免疫細胞の統合、を引き起こす(Fisher,SK et al.,In:Kolb H,Fernandez E,Nelson R(編集者) Webvision:The Organization of the Retina and Visual System [インターネット]. Salt Lake City(UT):University of Utah Health Sciences Center;1995-2005;Fisher,SK,Lewis,GP,Vision Res.(2003)43(8): 887-97)。
網膜剥離における病態生理学的線維化応答は、硝子体に認められる多数の成長因子及びサイトカインへの曝露後のRPE細胞によって大部分が媒介される(Sadaka A & Giuliari G.,Cllin. Ophthalmol.(2012)6: 1325-33;Moysidis S,et al. Mediators Inflamm.(2012)2012.815937)。これらの要因は、細胞の遊走、増殖、生存、細胞外タンパク質の形成の環境を促進する。
in vivoでの細胞外小胞の役割
浸潤性及び/または局所単球は、脈絡膜血管新生などの広範囲の眼疾患に関係している((Klingeborn,M.et al.,Prog. Retin. Eye Res.(2017)59: 158-77,Espinosa-Heidmann,DG,et al. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2003)44: 3586-92を引用);ブドウ膜炎(Lee,RW.,et al.,Semin. Immunopathol.(2014)36: 581-94);角膜炎(同上、Cursiefen,C.,et al.,J.Clin.Invest. (2004)113: 1040-50;Cursiefen,C.,et al.,J.Exp. Med.(2011)208: 1083-92;Koch,AE.,et al.,Science (1992)258: 1798-1801を引用);糖尿病性網膜症 (同上、McLeod,DS.,et al.,Am.J.Pathol.(1995)147: 642-53;Schroder,S., et al Am.J.Pathol.(1991)139: 81-100;Serra,AM.,et al.,Am.J.Pathol. (2012)181:719-27を引用)、及び緑内障(同上、Alvarado,JA.,et al.,Arch. Ophthalmol.(2010)128: 731-37;Howell,GR.,et al.,J.Clin.Invest.(2012)122: 1246-61を引用。恒常性条件下でRPEに由来する細胞外小胞(EV)は、網膜色素上皮細胞のすぐ近くで免疫活性を下方制御し得ることが示唆されている。(Klingeborn,M.et al.,Prog. Retin. Eye Res.(2017)59: 158-77)。
脈絡膜血管新生(CNV)、またはDRなどの異常な網膜血管新生を伴う他の疾患を含むAMDの発症及び疾患プロセスにおけるエクソソームの役割を調べるための研究はほとんど行われていない。(Klingeborn,M.,et al.,Progr. Eye Res.(2017)59: 158-77)。網膜、RPE、脈絡膜には、血管新生促進と抗血管新生のシグナル伝達の微妙なバランスが存在する。(同上)。このシグナル伝達バランスにおけるエクソソームの役割は、網膜星状細胞から放出されたエクソソームが、マウスモデルでレーザー誘発CNVを阻害する抗血管新生成分を含むことを示す研究によって強調された(同上、Hajrasouliha,AR.,et al J.Biol.Chem.(2013)288: 28058-067を引用)。
房水(AH)が、緑内障などの眼疾患におけるタンパク質、核酸、及び脂質のバイオマーカー分析に使用されてきた(同上、Agnifili,L.et al.,Progr. Brain Res. (2015)221:1-32;Goyal,A., et al.,Current Eye Res.(2014) 39: 823-29);新生血管AMD(同上、Kang,GY et al.,J.Proteome Res.(2014)13:581-95;Liu,F.et al.,Mol.Vis.(2016)22: 352-61;Park,KH,et al.,Invest,Ophthalmol. Vis. Sci.(2014)55: 5522-30(2014)を引用;糖尿病誘発性眼疾患(同上、Vijosevic,S.et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2015)56: 1913-18;Vijosevic,S.et al.,Acta Ophthalmol. (2016)94:56-64を引用、及びブドウ膜炎(同上、Haasnoot,AM et al.,Arthritis Rheumatol.(2016)68: 1769-79;Kalinina Ayuso,V.et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2013) 54: 3709-20を引用)ことに加え、核酸及び脂質バイオマーカーの大部分、及びAHで同定されたタンパク質バイオマーカーの一部は、おそらくエクソソーム関連であったが、エクソソーム製剤の真正性に関する不確実性のため、エクソソーム特異的バイオマーカーにはほとんど注意が向けられてこなかった。同上。
動物モデルにおけるMSC細胞療法とエクソソーム療法
視神経挫滅後に硝子体に移植されたMSCは、網膜神経節細胞の有意な神経保護とそれらの軸索の中程度の再生を促進することが報告された。(Mead,B.,Tomarev,S. Stem Cell Translational Med.(2017)6: 1273-85)、Levkovitch-Verbin,H.,et al.(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2010 51: 6394-6400;Mead,B.,et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2013)54: 7544-56;Tan,H.B.,et al.,Clin.Interv. Aging(2015)10: 487-90;Zwart,I.,et al.,Exp. Neurol.(2009)216: 439-448を引用)。MSCは網膜神経節細胞とその軸索の生存を促進し、緑内障の動物モデルでそれらの機能を維持することも報告されている。(同上、Mead,B.et al,Cytotherapy(2016)18: 487-96;Emre,E.et al.,Cytotherapy(2015)17: 543-59;Johnson,TV,et al.,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.(2010)51: 2051-59;Yu,S.et al.,Biochem. Biophys. Res.Commun.(2006)344: 1071-79を引用)。そのような研究は、そのような効果の主要なメカニズムとして、細胞置換よりもパラクリンメカニズムを強く示唆している。MSC由来のエクソソームがMSCの生物学的機能を媒介することができるという考えを裏付けるデータが蓄積されている。
例えば、血管新生を促進するタンパク質と成長因子を含む低酸素条件下で培養した骨髄由来MSCに由来するエクソソームを使用して、マウスモデルの網膜虚血に対する硝子体内投与の効果を決定した。酸素誘発性網膜症を、C57BL/6Jマウスにおいて誘発した。各マウスの右眼に、ヒトMSCに由来する1μlの生理食塩水またはエクソソームを硝子体内注射し、対照マウスと比較した。注射の2週間後、網膜灌流を評価した。硝子体内エクソソーム治療は、in vivoで網膜血管の流れを部分的に保存し、関連する網膜の菲薄化を減少させた。生理食塩水で治療した眼と比較した場合、網膜血管新生は減少した。免疫原性または眼/全身の副作用はこの治療に関連していなかった。Moisseiev,E.et al.,Current Eye Res.(2017)42(10): 1358-67)。
プールされたヒト骨髄由来MSCに由来するエクソソームは、網膜神経節細胞(RGC)の死と軸索の再生のin vitroモデル、及びラットの視神経挫滅モデルで別のグループによって試験され、神経保護と軸索形成の可能性、及び効果がタンパク質またはmiRNAを介したものであるかどうかが試験された。(Mead,B.,Tomarev,S.,Stem Cell Translational Med.(2017)6: 1273-85)。初代網膜培養物を処置することにより、有意な神経保護及び神経突起形成効果が示されることが報告された。視神経挫滅及び毎週の硝子体内エクソソーム注射の21日後、光コヒーレンストモグラフィー、網膜電図及び免疫組織化学により、エクソソームがRGCの統計的に有意な生存及びそれらの軸索の再生を促進する一方で、RGC軸索喪失及びRGC機能不全が部分的に予防されることが示された。重要なmiRNAエフェクターモデルであるAragonaute-2のノックダウン後の治療効果の低下によって示されるように、効果はmiRNA依存性メカニズムに依存していた。(同上)。
オスのSprague-Dawleyラットに1%ヒアルロン酸の網膜下注射を使用して開発されたラット網膜剥離(RD)モデルも、ラット骨髄MSCに由来するエクソソームの治療効果を調査するために使用されている。(Ma,M.et al.,Exp. Eye Res.(2020)191: 107899)。処置のために、様々な濃度のMSCエクソソーム(5μL)を、外科的網膜-RPE分離の直後に網膜下腔に注入し、5μLのPBS対照と比較した。網膜剥離及びMSC-エクソソーム処置の3日後、網膜を解剖し、直ちに液体窒素で凍結し、Trizol(Invitrogen,米国)を使用して全RNAを抽出した。cDNAを、第1鎖cDNA合成用のRevertaidキット(Thermo,米国)を使用して合成し、qRT-PCRを実施した。炎症性サイトカインTNF-α、IL-1β、及び単球走化性タンパク質-1(MCP-1)の網膜発現レベルを、RT-PCRによって検出し、オートファジー関連タンパク質5(Atg5)及び微小管関連タンパク質1軽鎖3β(LC3)がウエスタンブロットによって検出され、アポトーシスを、RDの3日後にTUNELアッセイを使用して調べた。網膜構造は、RD後7日で観察された。プロテオミクス分析はまた、1次元ナノLC-ナノ-ESI-MS/MSと組み合わせたiTRAQベースの技術を使用して、MSC由来のエクソソームによって運ばれるタンパク質を検出するために実施した。MSC由来のエクソソーム処理後、TNF-α及びIL-1βの発現が有意に減少することがわかった。オートファジーを示すLC3-II(活性型)とLC3-I(不活性型)の比率(細胞損傷に対する保護効果を表す)は増強され、Atg5の切断は減少した。MSC由来のエクソソームによる処置もまた、対照群と比較した場合、光受容体細胞のアポトーシスを抑制し、正常な網膜構造が維持された。プロテオミクス分析により、MSC由来のエクソソームには3つの生物学的複製に由来する683の候補タンパク質が含まれていることが明らかとなり、これらは、細胞接着、免疫応答、細胞骨格リモデリング、及び発達、ならびに細胞の増殖と分化を含む43の生物学的プロセスにクラスター化され、MSC由来のエクソソームの光受容細胞変性の改善における治療効果に寄与し得る。193個のタンパク質のうち9個は、抗炎症作用、神経保護作用、及び抗アポトーシス作用を示し、網膜剥離の治療効果において重要な役割を果たすと仮定された。
まとめると、様々な特定の及び一般化された病理が、眼機能障害をもたらし得る。眼の機能障害とその逆転を試験することができる多くのin vitroモデルが存在する。測定には、炎症の逆転、アポトーシスの防止、細胞増殖の促進、または他のタイプの関連する読み出しが含まれる。角膜線維芽細胞(例えば、Karamichos et al Invest Opthalamol Vis Sci(2010)51(1382-88)及び角膜実質細胞(例えば、Chawla and Ghosh J Cell Phys(2018)233;3817-30を参照のこと)を使用したin vitroモデルが利用可能であり、変性、線維性、及び刺激性の状態を試験することができる。さらに、多能性または胚由来の網膜色素上皮細胞(Forrest et al Dis Models Mech(2015)8,421-7)を使用して、加齢性黄斑変性(AMD)病態をモデル化できる。
これらの疾患状態/モデル間の1つの共通点は、細胞の生存率/増殖の測定値を、AF、AFexos、またはexo(-)AFに置き換えることにより、血清/持続培地試薬がない場合の細胞恒常性の代用として使用できることである。細胞の生存率/増殖が維持される場合、被験試薬は細胞の恒常性を維持し、変性、線維症、刺激、及び/またはAMDをもたらす他の病態を逆転させるのに有効であり得ると結論付けられる。
いくつかの実施形態によれば、変性、線維症、刺激などを誘発するための例示的な被験試薬は、限定されないが、IL-1、TNF-α、ビタミンC、TGFB1、IL-6、またはIL-8などの刺激性または炎症誘発性薬剤であり得る。
変性、線維症、または刺激を含む病態の逆転は、上記のような被験試薬とのin vitro細胞モデルのインキュベーション後に測定することができ、細胞生存率またはアポトーシスを測定することができる。分子または細胞レベルでの測定には、RT-qPCR、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学、ウェスタンブロット、または マーカーの減少及び/またはTIMP1、TIMP2、TIMP3、NFKB1、TGBFR1、TGBFR2、STAT3、COL1A1、COL1A2、FN1、ACTA2、他のコラーゲン/ECMタンパク質 様々なコラーゲン、平滑筋アクチン、TGF-β、SMAD(細胞表面でのトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)スーパーファミリーから核シグナルへの情報伝達に重要な関連細胞内タンパク質の群);例えば、Attisano,L.,Lee-Hoeflich,ST,Genome Biol.(2001)2(8): PMC138956を参照のこと)、フィブロネクチン、及びE-cad/N-cadなどの他の下流のバイオマーカーの変化を測定するための他のアッセイが含まれる。
いくつかの実施形態によれば、被験薬(複数可)の存在下での1つ以上のバイオマーカーの変化は、被験薬がモデル化された眼の病理状態を逆転させ得ることを示し得る。
本発明を、その特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の真の主旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、また、均等物に置き換え得ることを理解されたい。さらに、特定の状態、物質、物質の組成、プロセス、単数または複数のプロセスステップを本発明の目的、主旨、及び範囲に適応させるために、多くの修正を行ってもよい。すべてのそのような修正は、特許請求の範囲内であることが意図される。

Claims (24)

  1. それを必要とする対象における創傷治癒の促進方法であって、前記対象の創傷組織を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む第1の組成物と接触させることを含み、前記治療量が、創傷面積を減少させ、前記創傷組織の修復を促進するのに効果的である、前記促進方法。
  2. 前記組成物が、上皮細胞を活性化して間葉系細胞表現型に転換する(EMT)ことにより、創傷治癒を促進するのに効果的である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記EVが、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記EVが、
    約100,000×gでの沈降、約1.10~1.21g/mlのスクロース中の浮遊密度、及び約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 前記接触が、局所的または皮下である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記第1の組成物が、ビメンチン、N-カドヘリン、Col1a1、Acta2、またはTGFbr2のうちの1つ以上のmRNAレベルを増加させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記対象の前記創傷組織を、治療量のEV枯渇AFを含む第2の組成物と接触させるステップをさらに含み、前記第2の組成物の治療量が、間葉上皮転換(MET)を活性化し、前記創傷組織の修復を促進するのに効果的である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記組織を、前記第1の組成物と接触させる時間と、前記第2の組成物と接触させる時間の間の長さが、約4時間~約24時間である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記第2の組成物が、Stat3のmRNAレベルを増加させるのに有効である、請求項7に記載の方法。
  10. 前記創傷が慢性創傷である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記創傷が、糖尿病性潰瘍、褥瘡、または静脈性潰瘍である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記創傷が火傷である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記EVを、a)超遠心;b)ショ糖密度勾配遠心分離;c)カラムクロマトグラフィー;d)サイズ排除;またはe)EVに対して選択的な親和性マトリックスを含む装置による濾過のうちの1つ以上によって羊水から精製する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記EVを、サイズによってフィルタリングするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記EVが、約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする、請求項15に記載の方法。
  17. それを必要とする対象における創傷治癒を促進する2段階の方法であって、順に:
    a.前記創傷を、羊水(AF)に由来する細胞外小胞(EV)を含む組成物と接触させて、前記対象における初期段階の創傷治癒を促進し、
    b.前記創傷を、EV枯渇AFを含む組成物と接触させて、前記対象における後期創傷治癒を促進することを含む、前記2段階の方法。
  18. 初期段階の創傷治癒が、上皮間葉転換(EMT)を活性化し、細胞遊走を誘導することを特徴とし、後期段階の創傷治癒が、間葉上皮転換(MET)及び創傷の上皮化を活性化することを特徴とする、請求項17に記載の2段階の方法。
  19. 前記EVが、羊水間葉系幹細胞(MSC)に由来する、請求項17に記載の方法。
  20. 前記EVが、
    約100,000×gでの沈降、約1.10~1.21g/mlのスクロース中の浮遊密度、及び約50nm~約200nmの平均直径を特徴とする、請求項17に記載の方法。
  21. 前記接触が、局所または皮下である、請求項17に記載の方法。
  22. それを必要とする対象における皮膚状態の調節方法であって、前記対象の皮膚を、ヒト羊水(AF)に由来する治療量の細胞外小胞(EV)を含む組成物と接触させることを含み、前記治療量が、皮膚のきめを改善する、しわを減らす、またはその両方に効果的であり、それによって前記皮膚状態を調節する、前記調節方法。
  23. 前記組成物と接触させる前に前記皮膚をマイクロニードリングすることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記組成物が、上皮間葉転換(EMT)を活性化することによって前記皮膚状態を調節するのに有効である、請求項22に記載の方法。
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