本発明は概して、薬剤送達装置に関し、より具体的には、吐出用量のサイズを決定するための手段を有する医療用注射装置に関する。
糖尿病ケアセグメントでは、従来のバイアルおよびシリンジシステムを使用して実施される非経口薬剤投与は、ペン注射装置を使用する投与によってますます置き換えられている。ペン注射装置は、特定の用量をあるリザーバ(バイアル)から別のリザーバ(シリンジ)へと最初手動で移さずに、予め充填された薬剤リザーバから用量注射を実行することを可能にするという点で、特に便利である。
主に、2タイプのペン注射装置が利用可能であり、耐久性注射装置は、使用前に装置にロードし、消耗後に交換することができる予め充填された薬剤カートリッジから1回以上の用量の薬剤を送達することができ、使い捨て注射装置は、予め充填された非交換式の薬剤カートリッジから1回以上の用量の薬剤を送達することができる。これらのタイプのペン注射装置の各々は、例えば、薬剤カートリッジから1回の用量のみを送達するように適合されたシングルショット装置、薬剤カートリッジから複数回の用量を送達することができるマルチショット装置、ユーザが注射に必要な力を提供する手動装置、注射時に解放可能な組み込みエネルギー源を有する自動装置、各注射イベントで薬剤の同じ所定の用量を送達するように適合された固定用量装置、ユーザにより設定可能な異なる用量の薬剤の送達を提供する可変用量装置などの、様々なサブタイプで実現されるか、または原理上は実現され得る。
ラベルが示唆するように、耐久性注射装置は、複数の薬剤カートリッジが使い果たされ交換されるかなりの時間にわたって使用されることを意図し、使い捨て注射装置は、専用薬剤カートリッジが使い果たされるまで使用され、その後、注射装置全体が廃棄されることを意図する。
糖尿病の治療においては、用量投与のそれぞれの回数を含む特定の薬剤(例えばインスリンまたはglp-1)の投与用量のログを保持することが望ましい。したがって、いくつかの注射装置は、デジタルディスプレイ上で、電子用量収集および用量関連情報をレビューする機会を提供する。
一例として、米国特許第6,277,099(B1)号(Becton,Dickinson and Company)は、電子薬剤送達ペンを開示しており、ダイヤルされた用量は、ユーザが操作可能な用量ノブの回転に応答して起動し、液晶ディスプレイ上に表示された圧電センサ配置によって検出される。薬剤送達ペンは、メモリ機能も備え、液晶ディスプレイとともに、用量サイズおよび最後の5回の注射の時刻を伝えるための操作可能なインターフェースを提供する。
しかしながら、そのようなタイプの構造は比較的高価であり、使い捨て注射装置ソリューションとして経済的に実行可能ではない。
Novo Nordisk A/S製の、FlexPen(登録商標)およびFlexTouch(登録商標)などの市販の使い捨て注射ペンは、弾性ラチェットアームによって生成された可聴クリックの形態での継続的な用量送達の検証を提供する。ピストンロッドが移動し、弾性ラチェットアームがそれに応答して弾性変形および回復を経ることを強制される際に、ピストンロッドシステムと弾性ラチェットアームとの間の繰り返されるエネルギー交換の結果として、クリックが生成される。これらの注射ペンにおいて、各々のそのようなクリックは、リザーバから吐出された医薬の単一のユニットを反映する。
国際公開第2007/107564号(Novo Nordisk A/S)は、ペン注射装置に取り付けるための外部アドオンモジュールを開示しており、それは機械的クリック音をピックアップすることができるミニチュアマイクを備える。アドオンモジュールは、用量吐出機構によって生成されたクリックを検出するために、ペン注射装置の外側ハウジング表面に取り付けられるように適合され、次いで、吐出用量のサイズは、検出されたクリック数を数えることによって推定され得る。
上記ソリューションにより、吐出用量の自動登録が可能になるが、ユーザが取り扱う必要があり、ペン注射装置に取り付けられたときに、一部のユーザが望ましくないと考える身体的外観と体重分布の両方に関して顕著な非対称性をもたらすそのシステムにおいて、上記ソリューションは、追加の構成要素を必要とする。
同時係属中の国際出願第PCT/EP2018/074853号は、すなわち、統合された力センサの使用によって薬剤の吐出用量を推定することができる注射装置を開示している。ソリューションは、用量吐出中にピストンロッドシステムとクリック生成弾性ラチェットアームとの間の繰り返しエネルギー交換が、前進ピストンロッドの速度変動に付随して反映されるという事実を利用し、したがって、センサは、薬剤吐出中にピストンロッドによってピストンワッシャーに加えられた軸力の結果として生じる変動を測定するように配設されており、そのような変動の数は、それに応じて吐出用量を示す。
統合された力センサは、追加のシステム構成要素の必要性をキャンセルし、少なくとも実質的に対称的な注射装置を可能にするが、偏向ラチェットアームの効果として発生する軸力の変動は、比較的小さく、ピストンロッドによって加えられた軸力のサイズ、ならびに満足のいく信号対雑音比を達成するために用量吐出システムの軸剛性に特定の要件を伴う。
米国特許第6,277,099(B1)号
国際公開第2007/107564号
国際出願第PCT/EP2018/074853号
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは低減させること、または先行技術のソリューションに対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
特に、本発明の目的は、薬剤送達装置において弾性ラチェットアームによって生成されたクリックを正確かつ確実に検出し、それによって薬剤の吐出用量の自動推定を可能にするためのソリューションを提供することである。
本発明のさらなる目的は、例えば、使い捨て注射装置などの使い捨て薬剤送達装置に費用効果の高い形で実装され得る、このようなソリューションを提供することである。
最小限のユーザの取り扱いを必要とし、注射装置の対称な構成を可能な限り提供するそのようなソリューションを提供することが、本発明のさらなる目的である。
本発明のさらなる目的は、高い信号対雑音比で作動する、正確で信頼性のある薬剤の吐出用量の自動推定のための手段を有する注射装置を提供することである。
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
本発明は、例えば、上述のFlexPen(登録商標)およびFlexTouch(登録商標)の注射装置などのタイプの薬剤送達装置に関し、これは、基準軸に沿って延在しており、かつ、用量吐出イベント中にその基準軸の周りで吐出方向に回転を強制されて、ある用量の医療物質を物質リザーバから吐出させる、ピストンロッドと、例えば、ピストンロッド回転子または駆動要素を介して、ピストンロッドと動作可能に結合されており、かつ所定の用量増分、すなわち所定の用量の医療物質の吐出に応答して偏向運動を受けるように構成されている、弾性ラチェット要素であって、偏向運動が、ピストンロッドを減速する、第1の部分運動と、ピストンロッドを加速し、およびクリックを生成する、第2の部分運動と、を含む、弾性ラチェット要素と、を含む。
こうしたタイプの薬剤送達装置では、弾性ラチェット要素の偏向運動は、したがって、用量吐出機構による前述の所定の用量の増分の吐出に対応するフィードバック信号を生成する。所定の用量増分は、用量吐出機構の構造に依存するサイズの明確に定義された体積である。したがって、弾性ラチェット要素の各偏向運動で吐出される医療物質の所定の体積は、製造業者によって事前に選択または事前に定義される。
第1の部分運動は、弾性ラチェット要素の基部位置から離れる出発運動であり、それゆえ、その中に弾性エネルギーの蓄積を引き起こし、一方で、第2の部分運動は、基部位置に向かう戻り運動であり、それゆえ、第1の部分運動中に蓄積された弾性エネルギーの放出を引き起こす。エネルギーの節約により、弾性ラチェット要素の第1の部分運動は、ピストンロッドが運動エネルギーを失うため、ピストンロッドの減速を結果として引き起こし、一方で、第2の部分運動は、運動エネルギーを得るため、ピストンロッドの加速を引き起こす。したがって、所定の用量増分の吐出中、ピストンロッドは、1サイクルの減速および加速、すなわち、弾性ラチェット要素の偏向運動に起因する速度変動を示す。
一態様では、本発明は、請求項1で定義されるような薬剤送達装置を提供する。
それによって、例えば、ペン注射装置などの薬剤送達装置が提供され得、用量吐出中の回転ピストンロッドからのトルクは、回転モジュールを駆動するために使用され、そのセンサシステムによって監視され、その結果、弾性ラチェット要素の偏向運動に起因し、伝達トルクの付随する変動によって反映されるピストンロッドの速度変動は、吐出用量のサイズの推定のために識別され得る。センサシステムは、トルクの変動に応答して特性信号を生成するセンサを含んでもよく、センサによって生成された信号からの弾性ラチェット要素の偏向運動に起因するピストンロッドの速度変動の発生を識別するように構成されてもよい。センサは、例えば、ピストンロッドの加速を示すトルクの増加に応答して、またはピストンロッドの減速を示すトルクの減少に応答して、特性信号を生成するように構成され得る。
トルクの監視は、ピストンロッドの回転剛性による軸力の監視よりもはるかに信頼性が高く、弾性ラチェット要素の偏向によって生成された信号が、トルクのサイズに関わらず、高い信号対雑音比で、ピストンロッドを通して直接センサシステムに伝達されることを確実にする。
それによって、用量吐出イベントの経過中に吐出された用量は、ピストンロッドの速度変動の識別された発生および所定の用量増分から自動的に推定され得る。例えば、ピストンロッドの速度変動の識別された発生を合計してもよく、結果を所定の用量増分で乗じて、吐出用量を取得してもよい。あるいは、所定の用量増分を等しくする値を速度変動の各発生に割り当ててもよく、次いで、割り当てた値を合計して、吐出用量を取得してもよい。
吐出用量の推定は、例えば、ピストンロッドの識別された速度変動の発生、およびセンサプロセッサに予め入力された所定の用量増分の値に基づいて計算を行うためのセンサプロセッサを備える、センサシステムによって取得されてもよい。
したがって、ハウジングおよび用量吐出機構を備える薬剤送達装置が提供されてもよく、用量吐出機構は、用量吐出イベント中に基準軸の周りで吐出方向に回転して、薬剤リザーバからの薬剤の吐出を引き起こすように適合されたピストンロッドを備える。これは、例えば、ハウジング内に一体的に形成されるナット部材に対して回転式に固定されたナット部材を通してらせん状に前進しているねじ込みピストンロッドによって達成され得る。用量吐出機構は、ピストンロッドと動作可能に結合され、かつ所定の薬剤の体積の吐出に対応する、ピストンロッドの所定の角度変位に応答して偏向運動を行うように構成された、弾性ラチェット要素をさらに含む。偏向運動は、ピストンロッドの回転エネルギーの一部が変換され、弾性ラチェット要素の弾性エネルギーとして保存される間の第1の部分運動と、保存された弾性エネルギーが放出され、ピストンロッドの回転エネルギーに変換される間の第2の部分運動と、を含み、その結果、その急激な運動が生じる。薬剤送達装置は、ピストンロッドと動作可能に結合され、かつ吐出方向へのピストンロッドの回転に応答して、回転抵抗力に対して基準軸の周りを回転するよう適合された回転子モジュールと、用量吐出イベント中にピストンロッドから回転子モジュールに伝達されるトルクを監視するためのセンサシステムと、をさらに備え、センサシステムが、監視されたトルクから、a)弾性ラチェット要素の偏向運動に起因するピストンロッドの速度変動の発生を識別することと、b)ピストンロッドの識別された速度変動の発生を合計し、それによって、用量吐出イベント中に弾性ラチェット要素によって受けられる、いくつかの偏向動作を決定することと、c)偏向運動の数に所定の用量増分を乗じて、それによって、薬剤の吐出用量を推定することと、を行うように構成される。吐出用量の推定は、代替的に、例えば、速度変動の各発生に、所定の用量増分を等しくする値を割り当て、次いで割り当てられた値を合計することによって、実行されてもよい。
あるいは、吐出用量の推定は、センサシステムによって識別されるピストンロッドの速度変動の発生に関するリレー情報および外部装置プロセッサに予め入力された所定の用量増分の値に基づいて計算を実行するように構成された外部装置プロセッサを備える外部装置によって取得されてもよい。
いずれにしても、薬剤送達装置は、センサシステムによって識別されたピストンロッドの速度変動の発生に関連する情報を通信するための通信インターフェースをさらに含んでもよい。吐出用量の推定がセンサシステムによって取得される場合、通信インターフェースは、例えば、推定される吐出用量の視覚的、聴覚的、および触覚的表現、例えば、ディスプレイ、ラウドスピーカー、および/またはバイブレーターのうちの少なくとも1つのための手段を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、通信インターフェースは、外部装置へのデータの有線または無線送信のための送信インターフェースを含んでもよい。
吐出用量の推定が外部装置によって取得される場合、例えば、通信インターフェースは、例えば、用量吐出イベント中にセンサシステムによって識別されたピストンロッドの速度変動の累積数を表す値などの有線または無線送信のための送信インターフェースを含んでもよい。次いで、この値は、所定の用量増分の事前に入力された値を使用して、外部装置プロセッサによって吐出用量のサイズに変換される。
外部装置は、例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、PC、第2の薬剤送達装置、診断装置等などの、送信された情報を受信し、受信した情報に基づいて薬剤の吐出用量の推定を潜在的に実行し、推定された吐出用量を表示または転送のいずれかを可能にする任意の装置であってもよい。
薬剤送達装置自体の吐出用量を推定し、および通信インターフェースを介してユーザに直接的に結果を示すことによって、追加のシステム構成要素を必要とせずに、比較的安価な様式で重要な用量関連情報を自動的に収集および中継することができる自己完結型装置を提供することが可能であり、一方で、薬剤送達装置内の情報を収集し、および外部装置内の吐出用量の推定のために情報を中継することによって、薬剤送達装置のストリップダウンバージョンが、処理能力に関して、より能力のある外部装置との組み合わせのために提供され得、処理能力、表示オプションなどの観点から、これらの外部装置は、他の多くの関連するまたは関連しない動作を追加で実行するように構成され得る。
本発明のいくつかの実施形態では、通信インターフェースは、推定された吐出用量の視覚的、聴覚的、および触覚的表現のうちの少なくとも1つのための手段と、推定された吐出用量を外部装置に有線または無線送信するための送信インターフェースとの両方を含んでおり、これにより、薬物送達装置は、センサシステムによって取得されたピストンロッドの速度変動の識別された発生およびセンサプロセッサに事前に入力された所定の用量増分の値から吐出用量を推定することができ、その後、両方とも結果を潜在的なさらなる処理について、ユーザおよび外部装置に直接中継する。
回転子モジュールは、原理的には、薬剤送達装置内の任意の好適な位置に配設されてもよく、ここで、ピストンロッドと動作可能に結合され得る。例えば、回転子モジュールは、ピストンロッドと、用量吐出イベント中にピストンロッドによって基準軸に沿って変位する薬剤リザーバの壁部分との間に配設されてもよい。注射ペンなどの薬剤送達装置の場合、変位可能なピストンを囲む略円筒形の側壁を有するカートリッジタイプの薬剤リザーバを保持するため、回転子モジュールは、ピストンロッドとピストンとの間に配設されてもよく、例えば、従来のピストンワッシャーと置き換えることができる。こうした配設は、組み立て中に回転子モジュールが容易に配置可能であり、用量吐出機構の他の可動部分との機械的干渉を回避するという利点を有する。
回転子モジュールは、センサシステムがピストンロッドの速度変動から生じる任意のトルク変動を検出することができるように、回転抵抗力に対して基準軸の周りを回転するように構成される。回転抵抗力は、例えば、摩擦力を含んでもよく、回転子モジュールが、ピストンロッドと、用量吐出中にピストンロッドによって基準軸に沿って変位する薬剤リザーバの壁部分との間に配設されている場合、摩擦力は、回転子モジュールの一部分と、用量吐出中に基準軸に沿って変位しない薬剤リザーバの壁部分との間に確立され得る。
したがって、回転子モジュールは、例えば、放射状に突出したリップ構造体を含んでもよく、回転抵抗力は、リップ構造体と薬剤リザーバの内面部分との間の摩擦境界面によって提供されてもよい。カートリッジタイプの薬剤リザーバの場合、回転抵抗力は、リップ構造体と略円筒形の側壁との間の摩擦境界面によって提供され得る。回転子モジュールは、略円筒形の側壁に対して回転するように予定されているため、いずれにせよ、用量吐出中にリップ構造体を提供することは、必要な回転抵抗力を取得する簡単な様式である。
本発明のいくつかの実施形態では、回転子モジュールは、ピストンロッドと、用量吐出中に基準軸に沿って変位する薬剤リザーバの壁部分との間に配設されており、ピストンロッドと回転的にインターロック係合している第1の部分と、リップ構造体を備え、かつトルク伝達構造体によって第1の部分と回転的に結合されている第2の部分と、を備え、センサシステムは、トルク伝達構造体上に配設されたセンサを備える。用量吐出イベント中、回転ピストンロッドは、したがって、第1の部分を回転させ、トルク伝達構造体は、回転する第1の部分から第2の部分にトルクを伝達し、その後、第2の部分は、リップ構造体と薬剤リザーバとの間の摩擦境界面によって提供される回転抵抗力に対して回転する。回転ピストンロッドおよび第1の部分のいかなる接線速度変動も、それによって、トルク伝達構造体が本意ではない第2の部分を駆動するにつれて、トルク伝達構造上のセンサによって捕捉される。
回転子モジュールは、第1の部分と第2の部分との間に配設された中間部をさらに含んでもよく、ここで、中間部は、別個の構成要素部分上の電子機器を予め配設するための製造およびアセンブリセットアップにおいて便利であり得るため、センサシステムおよびトルク伝達構造体を担持する。
本発明の他の実施形態では、回転子モジュールは、その遠位端でピストンロッドと同心に配設されており、かつ軸方向に延在する部分を含む第1の部分と、リップ構造体を担持し、かつ第1の部分に回転的にロックされている第2の部分と、を備え、ピストンロッドは、軸方向に延在する部分に接線方向の駆動力を加えるように構成された放射状突出部を備え、センサシステムは、放射状突出部と軸方向に延在する部分との間に配設されたセンサを備える。これにより、センサは、回転ピストンロッドから第1の部分に直接的に伝達されるトルクを監視することができる。
回転子モジュールは、実質的に第1の部分と第2の部分との間に配設された中間部をさらに含んでもよく、ここで、中間部は、センサシステムを担持し、かつセンサが配設される軸方向に延在するセンサキャリアを含む。繰り返すが、別個の構成要素部分上の電子機器を予め配設することは、製造およびアセンブリのセットアップにおいて都合が良い場合がある。
第2の部分は、空洞を形成するカップ形状の壁を含んでもよく、中間部は、実質的に空洞内に配設されており、その結果、軸方向に延在するセンサキャリアは、そこから近位に延在することができる。こうした配設は、省スペースであり、薬剤送達装置の軸寸法の最小化が望まれる場合に魅力的であり得る、小さな軸範囲を有する回転子モジュールを提供する。
センサは、その上の衝撃の変化に応答して電気信号を生成する圧電センサであってもよい。このようなセンサは、製造において安価であり、かつ非常に少ないスペースしか占有しない。あるいは、センサは、歪みゲージ、静電容量センサなどであってもよい。
別の態様では、本発明は、上述のタイプの薬剤送達装置で使用するための回転子モジュールを提供する。
さらなる態様では、本発明は、ピストンロッドが、用量吐出イベント中に基準軸の周りで回転を強制されて、薬剤の吐出を引き起こし、弾性ラチェット要素が、ピストンロッドと動作可能に結合されており、かつ所定の用量増分の吐出に応答して偏向運動を受け、その偏向運動が、ピストンロッドの速度変動を引き起こし、クリックを生じさせる、薬剤送達装置において弾性ラチェット要素によって生成されるクリックを検出する方法であって、(i)用量吐出イベント中にピストンロッドによって伝達されるトルクを監視することと、(ii)監視されたトルクから、弾性ラチェット要素の偏向運動に起因するピストンロッドの速度変動の発生を識別することと、を含む、方法を提供する。
例えば、工程(i)および(ii)は、例えば、ピストンロッドの加速を引き起こす弾性ラチェット要素の第2の部分運動中に経験されるように、ピストンロッドの接線速度の急激な変化に応答して信号を生成するように構成されたセンサシステムによって実現され得る。次いで、用量吐出イベント中に生成される信号の数は、弾性ラチェット要素の偏向運動に起因するピストンロッドの速度変動の発生の尺度として使用され得る。
上述のように、弾性ラチェット要素によって生成されるクリック数は、用量吐出イベント中に吐出される用量を示す。したがって、さらなる態様では、本発明は、ピストンロッドが、用量吐出イベント中に基準軸の周りで回転を強制されて、薬剤の吐出を引き起こし、弾性ラチェット要素が、ピストンロッドと動作可能に結合されており、かつ所定の用量増分の吐出に応答して弾性変形および回復を含む偏向運動を受け、その偏向運動が、ピストンロッドの速度変動を引き起こす、薬剤送達装置からの薬剤の吐出用量を決定する方法であって、(i)用量吐出イベント中にピストンロッドによって伝達されるトルクを監視することと、(ii)監視されたトルクから、弾性ラチェット要素の偏向運動に起因するピストンロッドの速度変動の発生を識別することと、(iii)ピストンロッドの速度変動の識別された発生および所定の用量増分から、薬剤の吐出用量を計算することと、を含む、方法を提供する。
本明細書に記載される弾性ラチェット要素は、上述のFlexPen(登録商標)装置およびFlexTouch(登録商標)装置に存在するものなどの弾性クリック発生アームであってもよく、または弾性クリック発生アームを含んでもよい。本発明の例示的な実施形態では、用量吐出機構は、少なくとも2つの弾性ラチェットアームを含む。
いかなる疑念も回避するために、この文脈では、用語「医療物質」は、「薬剤」という用語と交換可能であり、状態の治療、予防、または診断に使用される媒体、すなわち、体内で治療または代謝効果を有する媒体を指す。さらに、「遠位」および「近位」という用語は、薬剤送達装置または針ユニットに沿った位置または方向を示し、「遠位」とは、薬剤出口端を指し、「近位」とは、薬剤出口端の反対側の端を指す。
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「一態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態の中に含まれるわけではなく、それらすべての固有のものでもないことを表す。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図するものであり、別段特許請求されない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されないいずれの要素も本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薬剤送達装置の長手方向断面斜視図である。
図2は、注射装置の近位部分の斜視断面図である。
図3は、その中で使用されるセンサモジュールの第1の例示的な実施形態を含む、注射装置の中央部分の拡大長手方向断面斜視図である。
図4は、センサモジュールを詳述する長手方向断面斜視図である。
図5は、センサモジュールの断面斜視図である。
図6は、用量吐出動作中のセンサ測定のグラフ表示である。
図7は、代替的なセンサモジュールの分解図である。
図8は、カートリッジタイプの薬剤リザーバに対する、図7のセンサモジュールの配設の斜視的で部分的な透明図である。
図9は、長手方向断面図における図8の一部を示す。
図10は、図8のものと類似した配設における、図7のセンサモジュールの変形の斜視的で部分的な透明図である。
図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。
図1は、注射ペン1の形態の、本発明の第1の実施形態に係る薬剤送達装置の長手方向断面図である。注射ペン1は、長手方向のハウジング軸に沿って延びるハウジング2と、ハウジング2に対して少なくとも軸方向に固定され、薬剤カートリッジ30を保持するカートリッジホルダ20と、を備える。ナット要素9は、ハウジング2内にカートリッジホルダ20のちょうど近くに配置される。ナット要素9は、軸方向に延びるピストンロッド10をサポートし、ねじ切りインターフェースを介してハウジング2に対してピストンロッド10のらせん状の前進を可能にするように機能する。薬剤カートリッジ30は、近位端と遠位端との間に延びる概して円筒形の壁を有し、狭まった遠位端部分を備える。遠位端は貫通可能な隔壁32によって密封され、薬剤カートリッジ30は、概して円筒形の壁の内面と密封接触して配置されたピストン31を備え、それによりチャンバ33が概して円筒形の壁、ピストン31および隔壁32によって画定される。チャンバ33は、例えば、カートリッジホルダ20の針マウント21に従来的な様式で取り付けることができるカラーをさらに含む、ペン針ユニット(図示せず)の注射針形成部分の後面部分などの中空針構造体の貫通可能な隔壁32を通して挿入することによってアクセス可能である医療物質を保持する。本実施形態では、注射ペン1は使い捨てタイプであり、注射ペン1を損傷することなく薬剤カートリッジ30を取り外すことはできない。しかしながら、注射ペン1は、薬剤カートリッジ30の交換を可能にする耐久性のあるタイプの装置であり得ることに留意されたい。
注射ペン1は、注射される医療物質の望ましい用量を設定し、取り付けられた注射針を通して設定用量を吐出するように動作可能である。したがって、注射ペン1は、用量設定機構および用量吐出機構を含む。用量設定機構はユーザ操作可能な用量ダイヤル3と、その上に配置された複数の用量回数を有するスケールドラム7と、リセットチューブ8と、ラチェットチューブ13と、捩りばね16とを備え、ダイヤルアップとダイヤルダウンの両方により用量を設定し、設定用量を調節するように構成される。用量設定機構の特定の動作は、国際公開第2015/071354号に開示された注射装置における用量設定システムの動作と同様であるが、その用量設定機構は、吐出用量の決定のみに関係する本発明と無関係であるので、本明細書ではさらには説明しない。用量設定機構の動作の詳細は、前述の国際公開第2015/071354号、具体的には第10頁、第21行~第15頁、第13行を参照されたい。
以下では、注射ペン1の様々な構成要素および動作について、用量吐出機能に基づいて説明する。
注射ボタン5は、ハウジング2の近位端に摺動可能に配置される。注射ボタン5はリセットチューブ8に軸方向に固定され、ボタンばね4によって近位に付勢される。リセットチューブ8は、その遠位端部分軸方向にあり、ラチェットチューブ13と回転可能に連結され、それにより、リセットチューブ8の遠位変位は、ラチェットチューブ13の対応する遠位変位を引き起こし、ラチェットチューブ13の用量吐出方向の回転は、リセットチューブ8の対応する回転を引き起こす。
捻りばね16は、リセットチューブ8の外面に沿って軸方向に延び、ばねベース17に取り付けられた近位端と、ラチェットチューブ13に取り付けられた遠位端とを有する。ばねベース17は、ハウジング2に軸方向に回転可能に固定され、捩りばね16は、注射ペン1の組立時に、ラチェットチューブ13をハウジング2に対して用量吐出方向に(遠位端から見たとき時計回りに)付勢して、予歪みを付与されて、そのサイズに関わらず、全設定用量を完全に吐出するのに十分な力を確保する。
ラチェットチューブ13は、スプラインインターフェースを介してスケールドラム7と回転的にインターロックされ、スケールドラム7にはハウジング2の内面部分の螺旋リブ6と係合する外側螺旋溝が設けられ、それによって、ラチェットチューブ13の用量吐出方向の回転は、ハウジング2内のスケールドラム7の螺旋状近位変位を引き起こし、用量吐出方向と反対方向のラチェットチューブ13の回転は、ハウジング2内のスケールドラム7の螺旋状遠位変位を引き起こす。
ラチェットチューブ13は、クラッチ14に軸方向にロックされた遠位端部分にある。クラッチ14には、クラッチ14の用量設定軸方向位置で、ハウジング2の内面上の対応するハウジングスプライン15と係合し、それによりクラッチ14をハウジング2に回転的にロックする、複数の外側スプライン要素(見えない)が設けられている。クラッチ14には、ラチェットチューブ13上の可撓性のアーム(見えない)と相互作用するように構成された内側歯つき構造体(見えない)がさらに設けられ、それにより用量吐出方向におけるラチェットチューブ13とクラッチ14の共同回転を確実にする。
また、クラッチ14は、ピストンロッド10の周りに配設されたピストンロッド駆動要素11に回転的にロックされる。ピストンロッド10は、外側ねじ切り部と、2つの反対側の長手方向溝(見えない)とを有し、ピストンロッド駆動要素11は、2つの対向する突出部(見えない)を有する中央ボアを有し、その各々が、溝の1つと係合して、ピストンロッドドライブ要素11とピストンロッド10との間の回転インターロック接続を提供する。ピストンロッド駆動要素11は、図2に関連して以下に説明するように、ハウジング2に対してその回転自由度を制限するように作用する一対の対向するラチェットアーム12をさらに有する。
用量の設定中に、捻りばね16はさらに歪むようになる。設定用量を吐出するために、注射ボタン5はハウジング2の近位端に押下される。これにより、リセットチューブ8は遠位方向に軸方向に変位し、リセットチューブ8は、ラチェットチューブ13およびクラッチ14をスレーブ化する。その結果、クラッチ14は、ハウジングスプライン15の係合から外れるように摺動し、それによって解放された捩りばね16によって駆動される用量吐出方向に、ラチェットチューブ13へのその回転接続を介して、回転し始める。
捩りばね16がほどけるときのラチェットチューブ13およびクラッチ14の回転は、スケールドラム7の螺旋状近位運動、ならびにピストンロッド駆動要素11、したがってピストンロッド10の回転を引き起こす。ピストンロッド10とナット要素9との間のねじ切りインターフェースのために、これはピストンロッド10の薬剤カートリッジ30への螺旋状遠位前進を引き起こす。ピストンロッド10の遠位端は、以下に詳細に説明するセンサモジュール50の形態の特殊設計ピストンワッシャーに接続されており、ピストンロッド10の運動によりピストン31が薬剤カートリッジ30内に強制的に押し込まれて、それによって、ピストンは、設定用量の医療物質を取り付けられた注射針を介してチャンバ33から吐出する。
図2は、ナット要素9を通る断面のハウジング2の近位部分の斜視図であり、ラチェットアーム12がハウジング2の内周表面部分の周りに配置されたラチェット歯18と軸方向に整列していることを示す。各ラチェットアーム12は、ピストンロッド駆動要素11の周縁部分の円周方向の延長として形成され、半径方向外向き方向の付勢を有する懸架された可撓性の湾曲ビームを構成する。各ラチェットアーム12の端部分は、ラチェット歯18のセクションと相互作用し、ハウジング2に対するピストンロッド駆動要素11の反時計回り(遠位端から見て)の回転を防止する一方向性ラチェット機構を提供する。
上記の用量吐出動作の過程で、用量吐出方向におけるラチェットチューブ13、クラッチ14、およびピストンロッド駆動要素11の共同回転により、各ラチェットアーム12は多数のラチェット歯18を乗り越える。ラチェット機構は、2つの対向するラチェット歯18が同時にそれぞれのラチェットアーム12によって通過されるように構成され、2つの対向するラチェット歯18のそのような同時通過の1つは、薬剤カートリッジ30から吐出される医療物質の1つのユニットと相関する。
ピストンロッド駆動要素11の時計回りの回転中、ラチェット歯18とそれらのそれぞれの方向付勢との相互作用の結果として、ラチェットアーム12の各々は、ラチェット歯18の1つを通過するときに偏向運動を行う。ラチェットアーム12の1つを観察すると、医療用カートリッジ30から吐出される医療物質の1つのユニットに対応するピストンロッド駆動要素11の角変位により、ラチェットアーム12の端部分を、第1にラチェット歯18に沿って歯トラフベース位置から歯先偏向位置まで摺動させ、第2に歯先端部を通過させ、次の歯トラフで新しいベース位置をとらせる。本文脈において、これは、ラチェットアーム12の1つの偏向運動と呼ばれ、それは、次いで、歯トラフベース位置から歯先端部偏向位置への第1の部分運動と、歯先端部偏向位置から新しいベース位置への第2の部分運動とを含む。
歯トラフベース位置から歯先への運動は、ラチェットアーム12を、その付勢に対して、徐々に半径方向内側に偏向させ、それにより、ラチェットアーム12にエネルギーを蓄積させ、ラチェットアーム12の端部分とラチェット歯18との間の摩擦を増大させ、ピストンロッド駆動要素11の回転速度の瞬間的低下をもたらす。ラチェットアーム12の端部分が歯先端部を通過すると、ラチェットアーム12に保存されたエネルギーが解放され、ラチェットアーム12の端部分が次の歯トラフに向かって押し付けられ、摩擦が急激に減少し、ピストンロッド駆動要素11の回転速度の瞬間的な増加がもたらされる。
この反復的なエネルギーの蓄積および放出は、ピストンロッド駆動要素11の回転によって駆動されるピストンロッド10がセンサモジュール50に適用されるトルクに反映され、その結果、このトルクを監視することによって吐出用量のサイズを推定することが可能である。
そのために、注射ペン1は、センサモジュール50を含む。図3は、注射ペン1の中央部分のクローズアップ図であり、図4は、センサモジュール50を詳述する長手方向断面斜視図である。図3から分かるように、センサモジュール50は、軸方向に積層して、シート金属62を挟み、かつ下部65から近位に延在するアライメント部材66によって放射状に整列する、上部51、中間部60、および下部65を含む。センサモジュール50は、上部51がピストンロッド10の遠位端部分に軸方向に当接し、かつ回転的に係合し、また下部65がピストン31の近位面に当接するように、ピストンロッド10とピストン31との間に配設される。下部65は、ゴム材料から形成されており、薬剤カートリッジ30の略円筒形壁と接触する周方向摩擦リップ67を有する。
上部51は、中央穴55を有する円形基部52を備え、そこにアライメント部材66がセンサモジュール50の組み立てられた状態で位置する。タワー53は、円形基部52から近位に突出しており、ピストンロッド10の遠位端部分を受容するための空洞54を形成する。タワー53は、第1の軸方向に延在する平面接触面56と、第1の軸方向に延在する平面接触面56に対して直角に第2の軸方向に延在する平面接触面57と、を含む、内部構成を有する。これら2つの接触面56、57は、ピストンロッド10に対するセンサモジュール50の回転固定を提供するように、ピストンロッド10の遠位端部分で類似の接触面に適合する。上部51は、以下に記載されるように、回転上部51から中間部60へトルクを伝達する働きをする、偏心して位置付けられた下降ペグ部材58をさらに含む。
下部65は、アラインメント部材66とは別に、その役割は以下から明らかである、偏心して位置付けられた上昇ペグ部材68と、ピストン31と当接するための平面な下部表面69と、を含む。
中間部60は、図5に概略的に示されるように、複数の構成要素を担持し、この図は、センサモジュール50を斜視断面図で示す。アライメント部材66の周りに配設され、それによって定位置に保持されるブラケット61は、下降ペグ部材58と上昇ペグ部材68との間に横方向に延在する、シート金属62の一部分を支持する。圧電センサ70は、シート金属62上に印刷され、プロセッサ71と電気的に接続されており(図示せず)、これが次にラウドスピーカー72と電気的に接続される(図示せず)。電気構成要素のための電力は、例えば、印刷された電池または小さなボタンセルの形態の電池(図示せず)によって提供される。
使用時に、用量吐出イベント中、ピストンロッド10がナット要素9を通って回転し、ハウジング2およびカートリッジホルダ20に対して軸方向に前進するため、上部51は、同様の回転を受け、ピストンロッド10からのトルクが第2の軸方向に延在する平面接触面57を介してタワー53に伝達される。上部51は、ピストンロッド10と類似の軸変位をさらに受け、それによって遠位方向に押し出され、センサモジュール50全体が軸方向に圧縮不能であるため、下部65およびピストン31の近位表面も同様に押し出される。
上部51の回転は、下降ペグ部材58と金属シート62との間の相互作用によって中間部60に伝達され、後者は、金属シート62の大部分が実質的に剛直なビームとして機能し、およびわずかな部分が懸架ビームとして機能するように、その長さの大部分に沿ってブラケット61によって支持される。下降ペグ部材58がシート金属62に力を加え、その結果、中間部60がアライメント部材66の周りを結果として回転するにつれて、金属シート62の懸架部分は、上昇ペグ部材68に当接し、それに力を伝達し、それによって、下部65が中間部60および上部51とともに回転する。
摩擦リップ67と薬剤カートリッジ30との間の相互作用により、下部65の回転は、上部51が回転するときに金属シート62の懸架部分をわずかに曲げるのに十分に抵抗される。圧電センサ70は、例えば、金属シート62の懸架部分に印刷または装着されるように配設され、センサモジュール50が回転するにつれて、金属シート62と上昇ペグ部材68との間の接触力の変化を記録することができる。
より具体的には、圧電センサ70は、突然の偏向に応答して信号を生成する。上述のように、用量吐出中、ピストンロッドは、ラチェットアーム12とラチェット歯18との間の相互作用のために繰り返し減速および加速され、これは、ピストンロッド10が上部51に適用し、上部51が下部65に伝達するトルクに反映される。ラチェットアーム12が、それぞれ、ラチェット歯18によって付勢される偏向運動の第1の部分運動を受けるにつれて、弾性エネルギーを蓄積する間に、ピストンロッド10によって加えられるトルクは徐々に減少し、また、ラチェットアーム12が歯先を通過し、蓄積された弾性エネルギーの突然の放出によって駆動される第2の部分運動を受けたときに、トルクは急激に増加する。
急激なトルク増加は、上部51の小さな急激な運動を引き起こし、結果として、上昇ペグ部材68とシート金属62との間の急激な力が増加し、その結果、圧電センサ70の励起がもたらされる。したがって、用量吐出が進行するにつれて、圧電センサ70は、ラチェットアーム12が第2の部分運動を受けるたびに信号を生成し、したがって、パルストルクを捕捉して、吐出される用量のサイズを推定するために使用することができる。
図6は、薬剤カートリッジ30からのn個のユニットの医療物質の吐出中の経時的なトルク変動を示す。狭い点線曲線で表されるセンサ出力から分かるように、トルクは、第1のピーク、Pk1、および最後のピーク、Pknによって範囲が定められており、用量吐出が進行するにつれて変動する。各個々のピーク、Pkiは、両方のラチェットアーム12の偏向運動を反映しており、両方のラチェットアーム12の各々の偏向運動は、薬剤カートリッジ30から吐出される医療物質の1つのユニットに対応するので、総吐出用量は、用量吐出イベント中に示されるピーク、Pkiをカウントすることによって推定され得る。
センサ測定値は、例えば、ハイパス、ローパス、バンドパス、一致、および適応一致フィルタリングなどの、いくつかの好適な方法のうちのいずれかを使用してフィルタリングされて、信号対雑音比を最大化することができる。図6では、広く点線の曲線は、ハイパスフィルタリングの結果を示す。この結果を単純なスパイク検出アルゴリズムを通して実行することによって、センサ信号を、第1のピーク、Pk1に対応する第1のスパイク、Sp1、および最後のピーク、Pknに対応する最後のスパイク、Spnによって範囲が定められた容易に識別可能なスパイクに変換することができる。各個々のスパイク、Spiは、薬剤カートリッジ30から吐出された医療物質の1ユニットを反映するため、総吐出用量は、スパイク検出アルゴリズムによって生成されるスパイク、Spiをカウントすることによって推定され得る。
センサ信号70は、プロセッサ71によって捕捉かつ処理され、nの最終推定値は、例えば、用量吐出イベントの検出後の所定の時点で、発話合成された音声によってラウドスピーカー72を介して発表される。
図7は、本発明の第2の実施形態による薬剤送達装置で使用するための代替的なセンサモジュール150の分解図である。薬剤送達装置は、主に注射ペン1と同じタイプであり、すなわち、薬剤リザーバからの薬剤の吐出を引き起こすために、用量吐出イベント中に、ピストンロッドが長手方向軸の周りを用量吐出方向に回転させ、弾性ラチェット要素が、ピストンロッドと動作可能に結合され、所定の用量増分の吐出およびピストンロッドの速度変動を発生に応答して、弾性変形および回復を含む偏向運動を受ける、装置であり、用量検出の原理は、注射ペン1と基本的に同じである。したがって、図7は、第1の実施形態と機能的に異なる構成要素のみを示す。
センサモジュール150は、上部シート181と、上部シート181から基準軸に沿って間隔を置いた下部シート182と、上部シート181と下部シート182を接続し、かつプロセッサ(可視的でない)を担持する、ブリッジ183と、を有する、PCB180を含む。電力を供給する電池190は、上部シート181と下部シート182との間に配設される。上部シート181は、2つの正反対の軸方向に延在するストリップ184を提供するように形成されており、そのうちの1つは、圧電センサ170を担持するセンサ支持体として作用する。
電池190を有するPCB180、ならびにBluetoothモジュール185およびアンテナ186は、回転的にインターロックされた関係で反応部材151の同等の複数の放射状突出部151pを受容するように適合された複数の凹部160rを有する近位表面を有するモジュールハウジング160の空洞164に配設され、したがって、反応部材は、モジュールハウジング160のリッドとして作用する。反応部材151は、2つの正反対の軸方向に延在する反応プレート151rを含み、各反応プレート151rは、ストリップ184のうちの1つを支持する。摩擦リング167は、モジュールハウジング160の外部表面部分の周りに固定して取り付けられる。
図7はさらに、本発明の第2の実施形態による薬剤送達装置で用いられるピストンワッシャー195およびピストンロッド110の遠位部分を示す。ピストンロッド110は、以下に説明するように、ストリップ184および反応プレート151rと相互作用するように構成されたその遠位端部分で、2つの正反対の放射状突出部110aが提供される。
図8および図9はそれぞれ、本発明の第2の実施形態による薬剤送達装置の薬剤カートリッジ130で使用される図7の構成要素の斜視的で部分的な透明図、および長手方向断面図である。明確にするために、他の薬剤送達装置の構成要素は、これらの図から省略されている。図は、放射状突出部110aがストリップ184および反応プレート151rと整列している、センサモジュール150に基づく用量推定システムの機能状態を示す。ピストンワッシャー195は、従来的なタイプのスペーサー装置であり、ピストンロッド110によってピストン131に適用される駆動力の軸対称分布を確実にするために、薬剤カートリッジ130内のモジュールハウジング160とピストン131との間に配置される。
用量吐出イベント中、ピストンロッド110が回転するにつれて、放射状突出部110aは、反応プレート151rへの接線力の適用によって、ピストンロッド110から反応部材151に駆動トルクを伝達する。反応部材151とモジュールハウジング160との間の回転的にインターロックされた接続により、その両方ともピストンロッド110とともに回転し、空洞164に収容される構成要素をスレーブ化する。摩擦リング167は、薬剤カートリッジ130の内面部分と接触するように封止されているため、センサモジュール150の回転は、本発明の第1の実施形態における摩擦リップ67によって提供されるものと同様の摩擦抵抗に対して発生する。
用量吐出が進行するにつれて、放射状突出部110aのうちの1つと物理的に接触している圧電センサ170は、急激な接線力が影響を与えるときに、ピストンロッド110の速度変動から生じるトルク変動を感知し、上述の通り、ラチェットアームによる歯先(どちらも表示されていない)の通過を示す信号が各突発的な力が増加するたびに生成される。
信号は、ブリッジ183上のプロセッサに中継され、本発明の第1の実施形態に関連して上述のように処理されて、吐出用量のサイズを推定し得る。次いで、推定された用量値は、Bluetoothモジュール185によって、電子ディスプレイ(例えば、用量データを保存および評価するためのアプリケーションを有する携帯電話)上に用量サイズを提示することができる外部受信装置(図示せず)に無線で送信される。
図10は、用量推定が、圧電測定の代わりに歪みゲージ測定値に基づく、センサモジュール150の変動を示す。反応プレート151rは、平面外変形を可能にするために、わずかに長く、可撓性の反応プレート251rによって置き換えられる。対応するように、上部シート181は、反応プレート251rのそれぞれの接触面を覆うより長いストリップ284を有する。ストリップ284の一方、または両方は、対象のストリップ284の変形を測定することができるように、歪みゲージセンサ270を担持する。
ピストンロッド110上の放射状突出部110aは、歪みゲージセンサ270の上方のストリップ284に接触する。用量吐出が進行するにつれて、各ストリップ284は、放射状突出部110aのうちの1つと物理的に接触し、反応プレート251rのうちの1つによって支持される。歪みゲージセンサ270は、ストリップ284の急激な屈曲変形に従ってピストンロッド110の速度変動から生じるトルク変動を感知し、上述の通り、ラチェットアームによる歯先(どちらも表示されていない)の通過を示す信号を、各突発的な変形で生成する。生成された信号は、前述のように扱われる。