JP2022513336A - 血液脳関門の透過性を高めるための複数用量でのvegfの使用 - Google Patents

血液脳関門の透過性を高めるための複数用量でのvegfの使用 Download PDF

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Abstract

低用量の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ポリペプチドを使用することを含む、対象の血液脳関門(BBB)を越えた薬剤送達を促進する方法。いくつかの実施形態では、薬剤の投与の前後にVEGFポリペプチドの複数用量が対象に投与され得る。

Description

関連出願の相互参照
本出願は2018年10月3日に出願された米国特許仮出願第62/740,840号の出願日の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる。
多形神経膠芽腫(GBM)は、平均余命が診断後2年未満である脳の高悪性度の原発がんである。Siegel et al.,CA Cancer J Clin.,61,212-236(2011)and Bleeker et al.,J.Neurooncol.,108(1),11-27(2012)。GBMなどの脳疾患の治療用治療薬の開発に大きな進展があったが、このような治療薬を脳内の疾患部位まで効果的に送達することは血液脳関門(BBB)のために依然として困難である。
BBBは脳実質から体循環を分離する非常に選択的な双方向障壁系である。BBBは、イオンと神経伝達物質の区画化を維持すること、並びにペプチド、代謝物、細胞、及びサイトカインの輸送を制御することにより脳の恒常性を保護する。結果としてBBBは、治療薬、例えばナノ粒子又はリポソームなどの大きい物質が、静脈内投与後又は経口投与後に脳内に進入することを妨げる。Azad et al.,Neurosurg.Focus,38(7)(2015)。
BBBを完全に迂回するために脳への治療薬の直接注入が用いられた。Xu et al.,Biomaterials,107,44-60(2016);Bago et al.,Biomaterials,90,116-125(2016);Fourniols et al.,J.Control.Release,210,95-104(2015);Chew et al.,Adv.Healthc.Mater.,6 (2),1600766(2017);Wait et al.,Neuro.Oncol.,17(suppl 2),ii9-ii23(2015);Baltes et al.,J.Mater.Sci.Mater.Med.,21(4),1393-1402(2010);and Debinski et al.,Expert Rev Neurother,9(10),1519-1527(2013)。しかしながら、これらの方法は侵襲的であり、感染、出血、又は健康な脳組織の損傷などの危険性を有する。Azad et al.,2015及びDebinski et al.,2013。
したがって、脳疾患、例えばGBMの治療及び/又は診断のために、BBBを越えた治療薬及び診断薬の送達を促進する新しいアプローチを開発する必要性がある。
本開示は、(i)VEGF165Aにより(例えばVEGFポリペプチドの全身投与の45分後~4時間後に)一過性の開口(window)が生じ、この間は血液脳関門(BBB)が高い透過性を有し、治療薬の脳内への進入が可能になるという予期せぬ発見、及び(ii)複数回の低用量のVEGFにより治療薬、特に大型分子及び/又は水溶性分子の脳への送達を促進する効果の増大が示されたという予期せぬ発見に少なくとも部分的に基づいている。驚くべきことに、(リポソーム又はナノ粒子に被包されていてもよい)治療薬の送達の前後にVEGFを投与することによって、脳腫瘍に対する治療薬の効力がさらに強化された。
したがって、本開示のある態様は、(i)投与を必要とする対象に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ポリペプチドの1回目の用量を全身投与すること、(ii)ステップ(i)の15分~3時間後に前記対象に有効量の治療薬を全身投与すること、及び(iii)ステップ(ii)の2~24時間後に前記対象に前記VEGFポリペプチドの2回目の用量を全身投与することを含む、対象の脳に治療薬を送達する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量は、ステップ(ii)の治療薬の投与の2~8時間後に投与される。例えば、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量は、ステップ(ii)の治療薬の投与の3~5時間後に投与され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、(iv)ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量の投与の2~24時間後にVEGFポリペプチドの3回目の用量を投与することをさらに含んでよい。いくつかの例では、VEGFポリペプチドの3回目の用量は、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量の投与の2~12時間後に投与され得る。いくつかの例では、VEGFポリペプチドの3回目の用量は、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量の投与の3~5時間後に投与され得る。
いくつかの実施形態では、治療薬は、ステップ(i)のVEGFポリペプチドの1回目の用量の投与の約45分後に対象に投与され得る。代わりに、又は加えて、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量は、ステップ(ii)の治療薬の投与の約3時間後に対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、ステップ(iv)のVEGFポリペプチドの3回目の用量は、ステップ(iii)のVEGFポリペプチドの2回目の用量の投与の約3時間後に対象に投与され得る。
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、VEGFポリペプチドの1回目の用量、2回目の用量、及び/又は3回目の用量は約50~200ng/kgである。いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドの1回目の用量、2回目の用量、及び/又は3回目の用量は約100~150ng/kgである。
本明細書において使用される「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定されるような特定の値に対する許容可能な誤差範囲内にあることを意味し、その誤差範囲は、その値が測定又は決定される方法、すなわち測定系の限界に、部分的に依存することになる。例えば、「約」は当技術分野内での実施に関して許容可能な標準偏差内にあることを意味し得る。あるいは、「約」は所与の値の±20%まで、好ましくは±10%まで、より好ましくは±5%まで、さらにより好ましくは±1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的系又は生物学的過程に関し、この用語はある値と同じ桁内、好ましくは2倍の範囲内にあることを意味し得る。別段の定めが無い限り、本出願書及び特許請求の範囲において特定の値が記載される場合、「約」という用語は、その特定の値の許容可能な誤差範囲内にあることを暗に示し、且つ、その文脈でこれを意味する。
別の態様では、本開示は、低用量のVEGFを使用するBBBを越えた脳への治療薬の送達を促進する方法を提供する。このような方法は、(i)投与を必要とする対象に約50~200ng/kg(例えば、約100~150ng/kg)の用量で血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ポリペプチドを全身投与すること、及び(ii)ステップ(i)の15分~3時間後に前記対象に治療薬を投与することを含んでいてもよい。いくつかの例では、治療薬はステップ(i)の約45分後に前記対象に投与される。
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて使用されるVEGFポリペプチドは、VEGF-Aポリペプチドであってもよい。いくつかの例では、VEGF-AポリペプチドはヒトVEGF165Aであってもよい。いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドは、動脈又は静脈を介して対象に投与されてもよい。
本明細書に開示される方法のいずれかによって送達される治療薬は、小分子、タンパク質、又は核酸であってもよい。いくつかの例では、治療薬は水溶性であり、及び/又は500ダルトンを超える分子量を有する。ある例では、治療薬はドキソルビシンである。
いくつかの例では、治療薬は、リポソーム若しくはナノ粒子に被包されているか、又はリポソーム若しくはナノ粒子に結合していてもよい。いくつかの例では、リポソーム又はナノ粒子はPEG化されていてもよい。本明細書に開示されるリポソーム又はナノ粒子は、約20~500nm、例えば約20~300nm又は約20~200nmのソリッドコア直径を有していてもよい。ソリッドコア直径は、日常的方法、例えば透過電子顕微鏡法(TEM)によって決定されてもよい。以下の実施例も参照されたい。
いくつかの例では、治療薬は医薬組成物として製剤されてよく、薬学的に許容可能な担体が医薬組成物にさらに含まれている。あるいは、治療薬は遊離型であってもよい。
本明細書に開示される方法のいずれかによって治療される対象は、脳疾患を有することが疑われているヒト患者、脳疾患のリスクがあるヒト患者、又は脳疾患のヒト患者であってよい。例示的な脳疾患としては、脳腫瘍(例えばGBM)、脳卒中、精神神経障害、及び神経変性疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書は、(i)低用量及び/又は複数用量のVEGFポリペプチドによって脳への治療薬の送達が促進される、本明細書に開示されるVEGFポリペプチド及び本明細書に記載される治療薬を含む、脳疾患の治療に使用される組合せ剤、及び(ii)脳障害の治療のための、又は脳障害の治療に使用される医薬品の製造のための前記組合せ剤の使用を提供する。
本発明の1又は複数の実施形態の詳細を以下の記載に説明する。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、並びに添付されている特許請求の範囲からも明らかになるだろう。
低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。例示的実験計画を示す模式図である。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。マウス(n=5匹)における静脈内投与後のVEGF循環半減期を示す図である。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。VEGFの投与又は対照の投与の45分後又は4時間後のマウスの脳の代表的な造影前後のT1強調ガドリニウム(Gd)MRI像を示す写真である。皮質(青色)、静脈洞(黄色)、及びノイズ(赤色)の関心領域(ROI)が示されている。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。選択された領域のシグナルノイズ比の定量化を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAにより統計学的分析を行った。左パネル:皮質。右パネル:静脈洞。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。VEGF前処理の45分後又は4時間後のエバンスブルーの生体内分布を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAにより統計学的分析を行った。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。大脳皮質におけるイソレクチン(緑色)及びエバンスブルー(赤色)を示す代表的画像を示す写真である。上方左側:対照+エバンスブルー(Eb)。上方右側:VEGF前処理+45分後にEb処理。下方左側:凍結損傷。下方右側:ブランク対照。細胞核をDAPI(青色)で染色した。凍結損傷を陽性対照として使用した。スケールバー:100μm。 低用量のVEGFによりBBB透過性の一過性上昇が誘導されたことを示す図を含む。対照前処理後又はVEGF前処理後の脳における、異なる粒径の蛍光PEG修飾ポリスチレンナノ粒子の定量化を示すグラフである。各粒径の対照対VEGFの統計学的分析をt検定により行った。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数字は動物の数を表している。:対照に対してp<0.05、**:対照に対してp<0.01、***:対照に対してp<0.001。###:4時間に対してp<0.001。nsは有意でないことを表している。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。対照(対照+TMZ)、VEGF(V+TMZ)、又は10倍高用量のVEGF(10×V+TMZ)による前処理後のマウスの脳における、テモゾロミド(TMZ)の定量化を示すグラフである。TMZを5mg/kg又は20mg/kgの用量で投与し、1時間循環させた。対照+TMZに対するt検定により統計学的分析を行った。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。対照前処理又はVEGF前処理から45分後のドキソルビシン(dox)の生体内分布を示すグラフである。Doxを2時間循環させた後で試料を採取した。テューキーのHSDを用いたANOVAにより統計学的分析を行った。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。対照による前処理(対照+LD)又はVEGFによる前処理(V+45mLD)の45分後に投与されたLipoDoxの生体内分布率を示すグラフである。LipoDoxを4時間循環させた後に試料を採取した。テューキーのHSDを用いたANOVAにより統計学的分析を行った。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。マウス当たりの血漿中濃度に対して正規化されたLipoDoxの臓器別濃度を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAにより統計学的分析を行った。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。MTTアッセイにより測定されたDBTRG-05MGヒト神経膠芽腫細胞の生存率に対するLipoDox(LD)及びTMZの効果を示すグラフである。n=4。 選択された抗がん剤の脳への送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。5mg/kgの用量の尾静脈内注射後のLipoDox循環半減期を示すグラフである。n=5匹。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数字は試験した動物の数を表す。:p<0.05。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。ブタにおけるMRI試験の例示的実験計画を示す模式図である。上方パネル:本試験の例示的実験計画。下方パネル:分析される脳の領域。TSEは高速スピンエコー法を指す。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。関心領域を示すブタ脳スライスを示す写真である。CTX:大脳皮質、G:灰白質、W:白質、HPF:海馬体、TH:視床、STR:線条体(大脳核領域)、HY:視床下部、PIR:梨状野。対照で前処理されたブタ及びVEGFで前処理されたブタにおける造影前後の代表的T1強調MRI像、及び0~100のスケールで表された正規化されたシグナル強度の差のヒートマップを示す造影後と造影前の差分画像。選択された脳領域における強調されたSN比の定量化。テューキーのHSDを用いたANOVAにより結果を比較した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。全ての脳領域におけるSN比の平均増加を示すグラフである。左パネル:造影前に対する造影後のMRIのSN比。右パネル:MRIのSN比。独立t検定により結果を比較した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。VEGFにより前処理されたブタにおける薬剤の生体内分布を試験するための例示的実験計画を示す模式図である。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。ナノ粒子の蛍光及びブタ脳における蓄積を示すIVIS像を示す写真である。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。ナノ粒子の生体内全身分布のHPLCに基づく定量化を示すグラフである。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。脳の領域におけるナノ粒子の分布を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。ナノ粒子の平均脳内保持を示すグラフである。独立t検定によりデータを分析した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。LipoDoxの生体内全身分布を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。LipoDoxの生体内脳分布を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。LipoDoxの平均脳内保持を示すグラフである。独立2標本t検定によりデータを分析した。 大型動物モデルにおいて、脳への薬剤の送達がVEGFにより増加したことを示す図を含む。CSF中のLipoDox濃度を示すグラフである。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数字は動物の数を表す。:は対照に対してp<0.05、**:対照に対してp<0.01。nsは有意でないことを表す。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。VEGF投与の45分後及び4時間後の重要なBBB遺伝子についての定量的リアルタイムPCRを示すグラフである。n=4。左パネル:生化学的関門。中央パネル:解剖学的関門。右パネル:その他。テューキーのHSDにより、VEGF前処理動物の結果を対照動物の結果と比較した。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。VEGF投与後の脳血管のTEMイメージングを示す写真である。パネルの左から右:対照、15分でのTEMイメージング、45分でのTEMイメージング、及び4時間でのTEMイメージング。EC:内皮細胞、L:管腔、Er:赤血球、P:周皮細胞。埋め込まれているスケールバー:1μm。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。健康な脳及びGBM異種移植片における周皮細胞マーカーPDGFRβ(赤色)及び内皮細胞マーカーCD31(緑色)の染色を示す写真である。パネルの左から右:対照、15分でのイメージング、45分でのイメージング、4時間でのイメージング、腫瘍対照、及びVEGF処理された腫瘍。各画像の上右隅に平均周皮細胞被覆度が示されている。スケールバー:100μm。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。健康な脳及びGBM異種移植片における星状細胞マーカーGFAP(赤色)及び内皮細胞マーカーCD31(緑色)の染色を示す写真である。パネルの左から右:対照、15分でのイメージング、45分でのイメージング、4時間でのイメージング、腫瘍対照、及びVEGF処理された腫瘍。スケールバー:100μm。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。健康な脳及びGBM異種移植片におけるタイトジャンクションタンパク質クローディン5(赤色、中央段)及び内皮細胞マーカーCD31(緑色、最上段)の免疫蛍光像を示す写真である。別々のチャンネル、及び重ね合わせ画像が示されている。最上段と中央段の重ね合わせ画像が最下段に示されている。各画像の右上に共局在係数が示されている。スケールバー:40μm。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。周皮細胞の平均被覆率を示すグラフである。 VEGFがBBB透過性の複数の特徴に影響を与えたことを示す図を含む。クローディン5の平均共局在度を示すグラフである。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数は動物の数を表す。:対照に対してp<0.05、**:対照に対してp<0.01、***:対照に対してp<0.001、****:対照に対してp<0.0001。nsは有意でないことを表す。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。VEGF処理過程(V)及び複数VEGF処理過程(MV)の時間的経過及び説明を示す例示的実験計画の模式図である。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。腫瘍担持マウスにおける腫瘍内LipoDox濃度の定量化を示すグラフである。GBM異種移植片及び同じ動物の対側領域を分析した。t検定を用いて統計学的分析を行った。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。カプラン・マイヤー生存曲線を示すグラフである。ログランク(マンテル・コックス)検定により複数の曲線を対で比較した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。各処理群の腫瘍の輝度の週毎のまとめを示す写真及び対応するグラフである。各時点での動物の数が挿入されており、代表的なIVIS像が示されている。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。45日目にMRIによって測定された腫瘍容積分析を示す図である。左パネル:腫瘍容積を示すグラフ。右パネル:腫瘍のイメージングを示す写真。代表的な1mm厚のスライス(12枚目、13枚目、及び14枚目のスライス)が示されており、腫瘍領域が白色の境界線で印が付けられている。独立t検定によりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。60日目~70日目の間に死んだマウスからの腫瘍切片のKi67分析を示す図である。代表的な画像はKi67(緑色)及びDAPI(青色)を示す。スケールバー:100μm。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。DAPI染色により決定された腫瘍内細胞密度を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAにより結果を分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。イソレクチン染色により決定された400倍の倍率の視野当たりの腫瘍血管密度を示すグラフである。シャムマウスについては注入領域をイメージングした。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。脳腫瘍におけるIba1陽性細胞数の定量化を示すグラフである。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。HE染色により決定された腫瘍内浮腫の定量化を示すグラフである。シャムについては正常な脳の同じ大きさの領域を分析した。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。 神経膠芽腫のマウスモデルにおける動物生存期間がVEGF前処理と組み合わせられたLipoDoxによって延長したことを示す図を含む。HE染色により決定された腫瘍内出血の定量化を示すグラフである。シャムについては正常な脳の同じ大きさの領域を分析した。テューキーのHSDを用いたANOVAによりデータを分析した。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数字は分析された動物の数を表す。:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。nsは有意でないことを表す。 VEGFの低用量静脈内投与は安全性の問題を引き起こさなかったことを示す図を含む。マウスにおける血漿中S100β濃度を示すグラフである。BBB破綻を誘導するリポ多糖(LPS)を陽性対照として使用した。脳溶解物を第2の陽性対照として使用した。対応2標本t検定により前後の試料を分析した。一群当たり、n:4以上。 VEGFの低用量静脈内投与は安全性の問題を引き起こさなかったことを示す図を含む。VEGF又は10倍用量の投与後に4時間にわたって30分毎に測定されたマウスの収縮期血圧及び拡張期血圧を示すグラフである。VEGF投与の直前に最初(0分)のサンプリングを行った。 VEGFの低用量静脈内投与は安全性の問題を引き起こさなかったことを示す図を含む。VEGF投与後のブタの収縮期血圧と拡張期血圧の変化を示すグラフである。対応t検定によりデータを分析した。 VEGFの低用量静脈内投与は安全性の問題を引き起こさなかったことを示す図を含む。VEGF投与の45分後及び4時間後の重要な神経炎症マーカーの遺伝子発現を示すグラフである。n:5以上。上段左から右:TNF、IL1b、及びIL6。下段左から右:CCL2、CXCL2、及びGFAP。神経炎症を誘導するために凍結損傷(Cryo)及びLPSを使用した。各試料をGapdhに対して正規化した。テューキーのHSDを用いた二元配置ANOVAにより各群の結果をPBS群の結果に対して分析し、且つ、4時間の結果を24時間の結果に対して分析した。PBS群の平均閾値サイクル数(C)がリファレンスとして示されている。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。挿入されている数字は動物の数を表す。:対照に対してp<0.05、**:対照に対してp<0.01、***:対照に対してp<0.001、****:対照に対してp<0.0001。:4時間に対してp<0.05、##:4時間に対してp<0.01、###:4時間に対してp<0.001。nsは有意でないことを表す。 脳内へのIgG抗体の浸透及び脳組織内への抗nrCAM IgG一次抗体の浸透を示す図である。対照又はVEGFの45分後に一次抗体(Ab)を静脈内注入し、その後、動物を灌流固定し、脳の凍結切片を作製し、蛍光二次抗体で染色した。I.C.Ab試料については抗nrCAMを直接的に頭蓋内に注入した。従来法による染色切片は、参考に示されている。 HPLCにより測定されたエバンスブルーの検量線を示すグラフを含む。エバンスブルーの検量線を示す図である。 HPLCにより測定されたテモゾロミド(TMZ)の検量線を示すグラフを含む。TMZの検量線を示す図である。 HPLCにより測定されたドキソルビシンの検量線を示すグラフを含む。ドキソルビシンの検量線(HPLC)を示す図である。 LipoDoxのHPLC定量の結果を示すグラフを含む。低濃度(1.0μg/ml未満)のLipoDoxの検量線を示す図である。 LipoDoxのHPLC定量の結果を示すグラフを含む。高濃度(300.0μg/ml未満)のLipoDoxの検量線を示す図である。 LipoDoxのHPLC定量の結果を示すグラフを含む。脳組織からのLipoDox回収率を示す図である。点線は90%と110%の境界線を表す。 ナノ粒子のHPLC定量の結果を示すグラフを含む。LipoDox(LD)が存在する場合と存在しない場合のHPLCに基づくナノ粒子定量の検量線を示す図である。左パネル:示されている様々な薬剤濃度下でのピーク面積。右パネル:LipoDoxの存在がナノ粒子色素保持時間に影響しないことを示す保持時間のグラフ。 DBTRG細胞の生存度に対するVEGFの効果を示すグラフである。最大で100ng/mlまでの濃度のVEGFと共にDBTRG細胞を培養した。 VEGF処理に応答したクローディン5及びP-糖タンパク質の発現を示す図を含む。VEGF処理後のマウス全脳クローディン5のウエスタンブロット分析の結果を示す図である。左パネル:クローディン5の相対発現率を定量化するグラフ。右パネル:表示されている様々な時点におけるクローディン5の発現を示す写真。 VEGF処理に応答したクローディン5及びP-糖タンパク質の発現を示す図を含む。示されている様々な時点におけるVEGF処理後のP-糖タンパク質の染色を示す写真である。スケールバー:100μm。 VEGF処理後のドキソルビシンの生体内分布を示すグラフを含む。マウスにおけるVEGF前処理後のドキソルビシンの生体内分布を示すグラフである。 VEGF処理後のLipoDoxの生体内分布を示すグラフを含む。マウスにおける複数用量のVEGF処理後のLipoDoxの生体内分布を示すグラフである。 本試験において使用されるGBMマウスモデルの様々な特徴を示す図を含む。遺伝子組換えDBTRG-05MGヒト神経膠芽腫細胞株におけるルシフェラーゼ発現を示す図である。左パネル:DBTRG細胞におけるルシフェラーゼ発現レベルを示すグラフ。右パネル:DBTRG細胞におけるルシフェラーゼシグナルを示す写真。 本試験において使用されるGBMマウスモデルの様々な特徴を示す図を含む。頭蓋内注入を受けている例示的BALB/c NUマウスを示す写真である。 本試験において使用されるGBMマウスモデルの様々な特徴を示す図を含む。65日後の右半球内の典型的な腫瘍形態を示す写真である。 薬剤保持に対するシャム注射の効果を示す図を含む。VEGF(V)+リポソームドキソルビシン(LD)処理後の腫瘍内LipoDox。マウスにおけるシャム注射部位又は対側部位におけるLipoDox濃度を示すグラフである。 薬剤保持に対するシャム注射の効果を示す図を含む。VEGF(V)+リポソームドキソルビシン(LD)処理後の腫瘍内LipoDox。単回用量のVEGF及びその後のLipoDoxの投与後の腫瘍内LipoDox濃度を示すグラフである。 脳腫瘍を有し、且つ、LD単独での処置又はVEGF前処理と共に処理されたマウスの特徴を示す図を含む。IVISにより測定された腫瘍輝度とMRIによる確定された腫瘍の大きさとの相関を示すグラフである。 脳腫瘍を有し、且つ、LD単独での処置又はVEGF前処理と共に処理されたマウスの特徴を示す図を含む。生存実験期間中のマウスの体重を示すグラフである。 脳腫瘍を有し、且つ、LD単独での処置又はVEGF前処理と共に処理されたマウスの特徴を示す図を含む。処理群のマウスの腫瘍のIba1染色を示す写真である。シャムマウスにおいて対応する正常な脳領域をイメージングした。スケールバー:100μm。 脳腫瘍を有し、且つ、LD単独での処置又はVEGF前処理と共に処理されたマウスの特徴を示す図を含む。浮腫領域及び出血領域を有する腫瘍を例示的HE像を示す写真である。 脳腫瘍を有し、且つ、LD単独での処置又はVEGF前処理と共に処理されたマウスの特徴を示す図を含む。MRIにより測定された腫瘍容積に対するIVISに基づく発光測定値の相関を示すグラフである。 PDACモデルの特徴を示す図を含む。AsPC1細胞のルシフェラーゼ発現を確認するIVISを示すグラフ(左側)及び写真(右側)である。 PDACモデルの特徴を示す図を含む。マウスにおける膵臓腫瘍成立を示すIVISを示す写真である。 PDACモデルの特徴を示す図を含む。正常な膵臓及びPDAC異種移植膵臓を示す例示的写真を含む図である。 PDACモデルの特徴を示す図を含む。PDAC腫瘍又はシャム手術を受けた膵臓におけるLipoDoxの定量化を示すグラフである。 皮下GBMマウスモデルの特徴を示す図を含む。皮下腫瘍増殖の代表的なIVIS像を示す写真である。 皮下GBMマウスモデルの特徴を示す図を含む。60日後の代表的な腫瘍を示す写真である。 皮下GBMマウスモデルの特徴を示す図を含む。対照前処理又はVEGF前処理後の腫瘍内LipoDox濃度を示すグラフである。 45分、4時間、及び24時間での補助的な炎症遺伝子の発現を示すグラフを含む。下に示す処理群のFn1発現(左側)及びIl1a発現(右側)を示すグラフである。陽性対照として、凍結損傷(Cryo)及びリポ多糖(LPS)を神経炎症の誘導に使用した。 45分、4時間、及び24時間での補助的な炎症遺伝子の発現を示すグラフを含む。VEGF投与の45分後の遺伝子発現を示すグラフである。上段左から右:45分でのIL1b、45分でのTNFa、及び45分でのIL6。下段左から右:45分でのCCL2、45分でのCXCL1、及び45分でのGFAP。 マウス血清血液化学を示すグラフである。上段左から右:ALT/GPT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、CPK(クレアチニンキナーゼ)、及びLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)。下段左から右:ALP(アルカリホスファターゼ)、BUN(血中尿素窒素)、及びCK-MB(クレアチニンキナーゼMB)。
BBBを越えた薬剤送達に関連する困難を克服するために、BBBの破綻、BBBの浸透化、BBBの迂回、又はこれらの組合せを含む多数のアプローチが試みられてきた。浸透処理はこの関門を破綻させることができ、薬剤の取込み及び送達のために内在性運搬体タンパク質を利用する多くの試みが行われてきた。薬剤の脳脊髄液中への直接注入又は脳内への直接注入により、BBBが完全に回避される場合もある。しかしながら、これらの方法にはイオン不均衡、神経伝達物質の漏出、及び循環中へのケモカインの放出などのこれらの方法に独特な問題がある。Obermeier et al.,Nat Med 19(12):1584-1596;2013。
本明細書は、治療薬の投与前に低用量の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を全身投与、又は治療薬の投与前後に複数回の低用量VEGFを全身投与してBBBの透過性を高めることによって治療薬の脳内への取込みを改善することを含む有利な方法を提供する。この有利な方法は、BBB透過性に対するVEGFの効果を示す、本明細書に報告される予期せぬ発見に基づいている。以下にいくつかの例を示す。
本研究は、低用量のVEGFの静脈内注射により一過性(約45分~4時間)の開口が生じ、この間にBBBの透過性が高まり、この開口の後にBBBは完全性を回復することを示す。さらに、本研究は、複数用量のVEGFの投与、例えば治療薬投与前の1用量および治療薬投与後の1用量又は複数用量の投与が、ナノ粒子に基づく薬剤又はリポソームに基づく薬剤などの治療薬のBBB透過を容易にし、それによりヒト神経膠芽腫のマウスモデルの生存期間の大幅な延長などの意図される治療有効性を高めるうえでより有効であることを示す。
さらに、小型動物モデル(マウスモデル)及び大型動物モデル(ブタモデル)の両者において類似の結果が観察され、このことからこれらの選択された用量のVEGFであればヒトの治療において有効であると予期された。特に、本明細書に報告される結果は、VEGF前処理によって、治療薬(例えばLipoDox等)の脳腫瘍領域への進入が、マウスモデルにおいて観察されるような治療薬の正常な脳領域への進入よりもずっと高いレベルに増加したことを示す。
また、予期せぬことに、低用量のVEGFは、腫瘍脈管形成の増加、低血圧の誘発、又は任意の明確な有害作用を引き起こすことは認められなかった。10倍高用量のVEGFは脳の区画化を破綻させることも著しい低血圧を引き起こすこともなかった。
VEGFシグナル伝達の阻害はがん治療における重要な治療標的である。Kim et al.,Nature,362(6423),841-844(1993)。したがって、がん患者への外来性VEGFの投与は驚くべきことであり、直感と相いれないように思える。VEGFは炎症の強力な誘導因子であることが以前に示されており、且つ、高血圧の原因になり得る。驚くべきことに、VEGFによって非常に軽度の炎症しか誘導されないことが本研究の結果から示された。VEGF投与後の3時間以内では低血圧は観察されなかった。VEGFは神経炎症を引き起こすことが分かっているため、複数回の低用量VEGFが治療効力を高め、且つ、副作用を最小限にし得ると予期される。
BBBを越えた治療薬/診断薬の送達の促進のためのVEGFの使用
本開示の1つの態様は、低用量及び/又は複数用量のVEGFポリペプチドと薬剤(例えば診断薬又は治療薬)の併用を含む脳疾患の治療方法を特徴とする。VEGFポリペプチドは低用量での治療を必要とする対象に対して全身投与可能であり、続いてVEGFポリペプチドの投与後の適切な時間枠内に薬剤が投与される。場合によっては、VEGFポリペプチドは薬剤の投与後の適切な時間枠内に対象に対して1回又は複数回投与されてもよい。
(i)VEGF
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、脈管形成及び血管形成を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質であり、血小板由来増殖因子サブファミリーに属する増殖因子である。VEGFの通常機能は胚発生時の新血管形成、傷害後の新血管形成、運動後の筋肉形成、及び閉塞した血管を迂回するための新血管(側副循環)の形成である。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、正常な新血管形成、並びに細胞の増殖及び生存の促進の原因となる可溶性ホモ二量体タンパク質である。
ヒトでは5種類のVEGFの型が見られ、正常な細胞及び組織で見られる優勢な型はVEGF165Aである。Ferrara et al.,Nat Med,9(6),669-676(2003)。VEGFは内皮細胞上に存在するVEGFR-1受容体又はVEGFR-2受容体への結合を介して作用し、血管透過性に影響することが長らく知られている。Senger et al.,Science,219(4587),983-985(1983);Connolly et al.,Regulation of Vascular Function by Vascular Permeability Factor. In Vascular Endothelium:Physiological Basis of Clinical Problems;Catravas,J.D.,Callow,A.D.,Gillis,C.N.,Ryan,U.S.,Eds.;Springer US:Boston,MA,1991;pp 69-76;and Lee et al.,J.R.Soc.Interface,8(55),153-170(2011)。血管形成におけるVEGFの役割を考慮して、VEGFは虚血性疾患での使用についてヒトで治験されており、良好な耐用性を示すが特に有効ではないことがわかった。Henry et al.,Circulation,107(10),1359-1365(2003)。
VEGFは病態生理学的血管形成に役割を果たすことも知られており、遊離循環VEGFの減少に重点を置いた治療法(ベバシズマブ)又はVEGFR活性を妨害することに重点を置いた治療法(セディラニブ)を利用して、栄養送達の減少及び細胞生存経路の妨害による腫瘍進行の遅延化に成功している。Khasraw et al.,In Cochrane Database of Systematic Reviews;2014;Kim et al.,1993;Weis et al.,Nature,437(7058),497-504(2005);及びLu-Emerson et al.,J.Clin.Oncol.,33(10)(2015)。これらの薬剤は腫瘍血管系を正常化する場合もあり、その結果として薬剤がより効果的に腫瘍まで送達されるようになる。Jain et al.,Science,307:58-62(2005)。
本明細書に言及される5種類のファミリーのうちのいずれのVEGFも本明細書に開示される方法に使用することができる。VEGFは適切な起源、例えばヒト、サル、マウス、ラット、ブタ、イヌ、及びネコに由来するものであってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法において使用されるVEGF分子はVEGF-A分子、例えばVEGF-A165アイソフォームである。ヒトVEGF-A165のアミノ酸配列は、APMAEGGGQNHHEVVKFMDVYQRSYCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGLECVPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKCECRPKKDRARQENPCGPCSERRKHLFVQDPQTCKCSCKNTDSRCKARQLELNERTCRCDKPRR(配列番号1)である。
いくつかの例では本明細書に記載される方法において使用されるVEGF分子は野生型VEGFである。他の例ではこの分子は改変型変異体であってよく、この変異体は野生型と同等又は類似の生物活性を保持している。
このような改変型変異体は、野生型と比較して少なくとも85%(例えば90%、95%、97%、99%、又はそれ以上)の配列同一性を有していてもよい。2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993のように改変されている、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを用いて決定される。このようなアルゴリズムはAltschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTプログラム及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)内に組み込まれている。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いてBLASTプロテインサーチを実施して目的のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列の間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されるようにGapped BLASTを利用することができる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の初期パラメーターを使用することができる。
いくつかの実施形態では、改変型変異体は、野生型と比較して1又は複数の保存的アミノ酸残基置換から構成される。当業者は機能的に同等の変異体を提供するためにVEGF分子に保存的アミノ酸置換が行われてもよいこと、すなわち、変異体が特定のVEGFの機能を保持することを理解するであろう。本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換されたタンパク質の相対的電荷特性又はサイズ特性を変化させることがないアミノ酸置換のことを指す。変異体は、当業者に知られているポリペプチド配列改変方法をまとめている参照文献、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに見られるような方法に従って調製可能である。アミノ酸の保存的置換には、(a)M、I、L、V、(b)F、Y、W、(c)K、R、H、(d)A、G、(e)S、T、(f)Q、N、及び(g)E、Dの群内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる。
機能的に同等の変異体を作製するためのVEGFのアミノ酸配列中での保存的アミノ酸置換は、通常、この変異体をコードする核酸の変更によって行われる。このような置換は当業者に知られている様々な方法によって行われ得る。例えば、PCRによる変異、Kunkel(Kunkel,PNAS 82:488-492,1985)の方法に従う部位特異的変異導入、又はVEGF変異体をコードする核酸分子の化学合成によってアミノ酸置換が行われる場合がある。
本明細書に記載される方法において使用されるVEGF分子はいずれも従来法によって調製されてもよい。例えば、日常的なタンパク質精製法に従って適切な天然起源から分子を単離することができる。あるいは、従来の組換え技術によって適切な宿主細胞内で分子を産生することができる。
VEGFの他に、IGF-I及びIGF-IIなどの他の増殖因子も本明細書に記載される方法で使用されてもよい。
(ii)治療薬及び診断薬
本明細書に開示される方法は、BBBを越えた脳への薬剤の送達を促進することを目的としており、それにより薬剤は意図されている活性を及ぼすことができる。いくつかの例では、薬剤は脳障害、例えば脳腫瘍を治療するための治療薬であってもよい。他の例では、薬剤は脳の状態を診断するための診断薬、例えばイメージング剤であってもよい。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療薬又は診断薬は、少なくとも1時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも15時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも36、時間、少なくとも48、時間、少なくとも72時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、又は少なくとも100時間の半減期を有していてもよい。例えば、治療薬は、少なくとも40時間の半減期を有していてもよい。いくつかの例では、長期の半減期は、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも36時間、少なくとも40時間、少なくとも44時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも5か月、又は少なくとも1年間の半減期であってもよい。
本明細書に開示される治療薬は、1又は複数の治療効果を有する任意の分子であってもよい。このような分子は、小分子、タンパク質(例えば抗体)、核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、又は干渉RNA)、脂質、又は糖であってもよい。いくつかの例では、治療薬は水溶性化合物であってもよい。代わりに、又は加えて、治療薬は、(例えば5000ダルトンを未満の分子量を有する)小分子であってもよく、比較的に大きいサイズを有していてもよく、例えば500ダルトンを超える分子量、例えば1kDaを超える分子量、2kDaを超える分子量、3kDaを超える分子量、又は4kDaを超える分子量を有する。
いくつかの実施形態では、治療薬は遊離型であってよい。あるいは、治療薬は共有結合又は非共有結合により担体に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、治療薬はリポソーム若しくはナノ粒子に埋め込まれていてもよく、被包されていてもよく、結合していてもよい。
いくつかの例では、薬剤(例えば治療薬又は診断薬、場合によってはVEGFポリペプチド)はリポソームに埋め込まれているか、被包されていてもよく、結合していてもよい。例えば、リポソームは活性薬剤をリポソームの内部に有していてもよく、又は活性薬剤がリポソームの表面上に埋め込まれていてもよい。例として、本開示の治療薬はリポソームによって被包されていてもよく、リポソームの中に埋め込まれていてもよい。非限定的な例として、治療薬はリポソームドキソルビシン(LipoDox)であってよい。例えば、米国特許第5,213,804号明細書を参照されたい。活性薬剤(例えばVEGFポリペプチド、診断薬、治療薬、又はそれらの任意の組合せ)を含むリポソームは、当技術分野において知られている方法、例えばEpstein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980)並びに米国特許第4,485,045号明細書及び同第4,544,545号明細書に記載される方法によって調製可能である。循環期間が増加したリポソームが米国特許第5,013,556号明細書中に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を使用する逆相蒸発法により生成され得る。所定の孔径を有するフィルターからリポソームを押し出して所望の直径を有するリポソームが得られる。
リポソームは中性に帯電していてもよい。リポソームの電荷はゼータ電位測定法を用いて決定され得る。例えば、Clogston and Patri,Methods Mol Biol.2011;697:63-70を参照されたい。例えば、中性に帯電したリポソームは-10mV~+10mV(例えば-5mV~0mV、-3mV~0mV、-2mV~0mV、0~5mV、-2mV~2mV、又は-10mV~-5mV、5mV~10mV)のゼータ電位を有する場合がある。
あるいは、活性薬剤(例えば治療薬、診断薬、又は場合によってはVEGFポリペプチド)は、マイクロカプセル中に埋め込まれてナノ粒子を形成する場合もある。このようなナノ粒子は、例えばコロイド型薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)において、又はマクロエマルジョンにおいて、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルなど、例えばコアセルベーション技術又は界面重合によって調製され得る。このような技術は当技術分野において知られている。例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)を参照されたい。
本明細書に開示されるリポソーム又はナノ粒子はいずれも適切な大きさ、例えば適切なソリッドコア直径又は適切な流体力学的径を有していてもよく、それらの径はそれぞれ透過電子顕微鏡法及びMalvern ZetaSizerなどの従来法によって決定され得る。ある特定の例では、それらのリポソーム又はナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む場合がある。
いくつかの例では、本明細書に開示されるリポソーム及びナノ粒子の適切なソリッドコア直径は、約20~500nmの範囲、例えば約20~400nm、約20~300nm、約20~250nm、約20~200nm、約20~150nm、約20~100nm、約50~300nm、約50~200nm、又は約100~300nmの範囲であってよい。代わりに、又は加えて、本明細書に開示されるリポソーム及びナノ粒子の適切な流体力学的径は、30~550nmの範囲、例えば約30~500nm、約30~450nm、約30~350nm、約30~300nm、約30~250nm、約50~250nm、又は約150~350nmの範囲であってよい。いくつかの実施形態では、リポソームの流体力学的径は、100nm未満(例えば10nm~100nm、20nm~100nm、30nm~100nm、40nm~100nm、50nm~100nm、60nm~100nm、70nm~100nm、80nmと100nm、90~100nm、91nm~100nm、90~95nm、95~100nm、92nmと100nm、93nm~100nm、94nm~100nm、96~100nm、97nm~100nm、98nm~100nm、又は99nm~100nm)であってよい。リポソームの流体力学的径は、動的光散乱法を含む任意の適切な技法を用いて測定することができる。例えば、Kaszuba et al.,J Nanopart Res(2008)10:823及び以下の例を参照されたい。
治療薬は抗がん剤、例えば神経膠芽腫などの脳腫瘍を治療するための薬剤であってもよい。抗がん剤の非限定的な例としては、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、及びアクラルビシン)、代謝拮抗剤(例えばフルオロピリミジン、デオキシヌクレオシド類似体、チオプリン、メトトレキサート、及びペメトレキセド)、アルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブチル、イホスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチルウレア(MNU)、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、マイトマイシン、及びジアジコン)、細胞傷害性抗生剤(例えばアクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、及びミトキサントロン)、又は生物製剤(例えばベバシズマブ、セツキシマブ、ペムツモマブ、オレゴボマブ、ミンレツモマブ、エタラシズマブ、ボロシキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、AVE1642、IMC-A12、MK-0646、R1507、CP751871、マパツムマブ、KB004、又はIIIA4などの治療抗体)が挙げられる。
ある特定の例では、治療薬(例えば抗がん剤)は、リポソームによって被包されているか、又はリポソーム中に埋め込まれている。リポソームによって被包されている治療薬の非限定的な例は、リポソームドキソルビシンである。ドキソルビシンはDNAにインターカレートする化合物であり、トポイソメラーゼIIの阻害に関係するとされている。非限定的な例として、ドキソルビシンは、以下に示す式Iを含み得る。
Figure 2022513336000002
ドキソルビシン誘導体及び薬学的に許容可能なそれらの塩も本開示によって包含されることを理解されたい。例えば、ドキソルビシンは塩酸ドキソルビシンであってよい。
いくつかの例では式I中の1又は複数の位置が(例えば官能基の置換又は付加により)改変されている場合がある。官能基の非限定的な例としては、炭化水素鎖(例えば置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基)、ベンゼン環、アミン基、アルコール、エーテル、ハロゲン化アルキルド、チオール、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、及びアミドが挙げられる。したがって、本明細書において使用される「ドキソルビシン」という用語は、式Iのこれらの改変型変異体のうちのいずれも包含する。
化学元素はHandbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の内表紙、CASバージョンの元素周期表に従って特定され、特定の官能基は一般的にそのハンドブックの中に記載されるように定義される。また、有機化学の全般的な原則、並びに特定の機能性部分及び反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry, University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley&Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers, Inc.,New York,1989;及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。
本明細書に記載される化合物は1又は複数の不斉中心を含むことができ、したがって様々な異性体型、例えばエナンチオマー及び/又はジアステレオマーとして存在し得る。例えば、本明細書に記載される化合物は、個別のエナンチオマー、ジアステレオマー、又は幾何異性体の形で存在し得るか、又は(ラセミ混合物、及び1又は複数の立体異性体が濃縮された混合物を含む)立体異性体の混合物の形で存在し得る。キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む当業者に知られている方法によって混合物から異性体を単離することができ、又は不斉合成によって好ましい異性体を調製することができる。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。本発明は、本明細書に記載される化合物を他の異性体を実質的に含まない個々の異性体として、又は様々な異性体の混合物としてさらに包含する。
(iii)医薬組成物
本明細書に記載される方法において使用される活性薬剤(例えばVEGF、診断薬、及び/又は治療薬)はいずれも、本明細書に開示される方法のいずれかにおいて使用される医薬組成物を形成するために、緩衝剤を含む薬学的に許容可能な担体(非薬効成分(excipient))と混合され得る。「許容可能な」は、その担体が組成物の有効成分と適合可能でなくてはならず(及び好ましくは有効成分を安定化することができ)、且つ、治療対象に対して有害ではないことを意味する。緩衝剤を含む薬学的に許容可能な非薬効成分(担体)は当技術分野においてよく知られている。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000) Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照されたい。
許容可能な担体、非薬効成分、又は安定化剤は、使用される投与量及び濃度では服用者にとって無毒であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、又はベンジルアルコール、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体)、及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。薬学的に許容可能な非薬効成分は、さらに本明細書に記載される。
in vivo投与に使用される医薬組成物は無菌状態でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜を通す濾過により容易に実現される。治療組成物は無菌アクセスポートを有する容器の中、例えば静脈内投与用輸液バッグ中、又は皮下注射針によって突き刺すことができるストッパーを有するバイアル瓶中に注入されることが一般的である。
本明細書に記載される医薬組成物は、経口投与、非経口投与、又は直腸投与のため、又は吸入若しくは吹送による投与のために、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤若しくは懸濁剤、又は坐剤などの単位投与剤形であってもよい。
錠剤などの固体組成物の調製のため、主有効成分を医薬用担体、例えばコーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガム類、及び他の医薬用希釈剤、例えば水などの従来の錠剤作製成分と混合して、本発明の化合物又は無毒の薬学的に許容可能なその塩の均一な混合物を含有する固体前製剤組成物を形成することができる。これらの前製剤組成物が均一であると言う場合、組成物を錠剤、丸剤及びカプセル剤などの同等に有効な単位投与剤形に容易に細分できるように、有効成分が組成物中に均等に分散していることを意味する。その後、この固体前製剤組成物は、0.1~約500mgの本発明の有効成分を含む上記の種類の単位投与剤形に細分される。新規組成物の錠剤又は丸剤は被覆されていてもよく、被覆されていない場合は長期作用の利点をもたらす剤形になるように調合されていてもよい。例えば、錠剤又は丸剤は内側投薬成分と外側投薬成分を含むことができ、外側投薬成分は内側投薬成分上の外被の形態である。それらの2つの成分は、胃の中での崩壊に抵抗し、内側成分が完全なまま十二指腸に入っていくように働くか又は遅れて放出されるように働く腸溶層によって分けられている場合がある。様々な材料をそのような腸溶層又は腸溶被覆に使用でき、そのような材料としては、多くのポリマー酸、並びにポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、及びセルロースアセテートのような材料との混合物が挙げられる。
適切な界面活性剤には特に非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80、又は85)及び他のソルビタン(例えばSpan(商標)20、40、60、80、又は85)が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は0.05~5%の界面活性剤を都合よく含むことになり、0.1~2.5%であってもよい。必要であれば、他の成分、例えばマンニトール又は他の薬学的に許容可能なベヒクルが添加される場合があることを理解されたい。
適切な乳剤は、市販の脂肪乳剤、例えばIntralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、及びLipiphysan(商標)を使用してを調製され得る。有効成分は、事前に混合された乳剤組成物の中に溶解されてもよく、あるいは、油(例えば大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油、又はアーモンド油)及びリン脂質(例えば卵リン脂質、大豆リン脂質、又は大豆レシチン)と水との混合時に形成される乳剤の中に溶解されてもよい。乳剤の浸透圧(tonicity)を調節するために、他の成分、例えばグリセロール又はグルコースが添加される場合があることを理解されたい。適切な乳剤は、最大で20%の油、例えば通常5~20%の油を含む。脂肪乳剤は0.1~1.0.im、特に0.1~0.5.imの脂肪小滴を含んでいてもよく、且つ、5.5~8.0の範囲内のpHを有していてもよい。
乳剤組成物は、VEGF又は治療薬をIntralipid(商標)又はその構成成分(大豆油、卵リン脂質、グリセロール、及び水)と混合することにより調製される組成物であってもよい。
吸入又は吹送用の医薬組成物としては、薬学的に許容可能な水性溶媒若しくは有機溶媒、又はそれらの混合物中の液剤及び懸濁剤、並びに粉剤が挙げられる。液体組成物又は固体組成物は上で示したような適切な薬学的に許容可能な非薬効成分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は局所的効果又は全身的効果のために経口経路又は経鼻呼吸経路によって投与される。
一例では、活性薬剤のうちの1種類又は複数種類が液体医薬組成物に製剤されてもよく、それらの液体医薬製剤は、例えば静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は腹腔内注射によって投与可能な無菌液剤又は懸濁剤である。無菌注射液剤又は懸濁剤の製造に適切な希釈剤又は溶媒としては、1,3-ブタンジオール、マンニトール、水、リンゲル溶液、及び等張食塩水が挙げられるがこれらに限定されない。天然の薬学的に許容可能な油、例えばオリーブ油又はトウゴマ油同様に、脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体も注射剤の調製に有用である。これらの油剤又は懸濁剤は、アルコール性希釈剤又はカルボキシメチルセルロース若しくは類似の分散剤を含んでいてもよい。Tweens又はSpansなどの他の一般的に使用される界面活性剤、又は薬学的に許容可能な剤形の製造に一般的に使用される他の類似の乳化剤若しくは生物学的利用率向上剤も製剤目的のために使用可能である。
(iv)治療薬又は診断薬の脳送達の促進
本明細書に開示されるVEGFポリペプチドはいずれも、例えばVEGF165AなどのVEGF-A(及び他の増殖因子)は、BBBを越えた脳への薬剤の送達を増加させるために、本明細書に同様に開示される任意の薬剤(例えば治療薬又は診断薬)と併用することができる。処理を必要とする対象に対して低用量のVEGFポリペプチドを最初に投与し、VEGFの投与後の適切な時間枠内に適切な用量の薬剤を適切な経路によって対象に投与することができる。いくつかの例では、薬剤の投与後の適切な時間内にVEGFポリペプチドの1回又は複数回の追加用量が対象に投与される場合がある。VEGFの2連続の用量が適切な時間内に、例えば約2~24時間を空けて、対象に体系的に投与されてもよい。
本明細書に開示される治療薬又は診断薬はいずれも、脳送達促進のためにVEGFと併用されてもよい。いくつかの例では、治療薬又は診断薬は、リポソーム若しくはナノ粒子中に埋め込まれていてもよく、又はリポソーム若しくはナノ粒子に被包されていてもよい。
本明細書に記載される方法を実施するため、処理を必要とする対象(例えば、本明細書に記載されているような対象)に対して、適切な量のVEGFポリペプチド(例えばヒトVEGF-A165)を含む医薬組成物を適切な経路、例えば静脈内注射、動脈内注射、又は皮下注射によって最初に投与することができる。適切な時間の後に、同じ対象に対して有効量の治療薬又は診断薬を含む医薬組成物を適切な経路によって投与することができる。
「投与された」、「投与する」、又は「投与」という用語は、本発明の薬剤(例えば化合物又は組成物)の静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、動脈内投与、頭蓋内投与、又は皮下投与を含むがこれらに限定されない送達モードを指すために本明細書において互換的に使用される。本開示の1つの実施形態では、増殖因子(例えばVEGF)、治療薬、又はイメージング用造影剤などの診断薬が直接静脈内注射又は直接頭蓋内注射によって対象に投与される。全身投与は身体全体が影響を受けるように循環系内に薬剤を投与する投与経路である。投与は腸内投与(胃腸管を介した薬剤の吸収)又は非経口投与(注射、点滴、又は移植)によって行われ得る。
VEGFポリペプチド(及び本明細書に開示される別の増殖因子)及び治療薬/診断薬は、VEGF及び/又は治療薬/診断薬を適切な作用部位又は所望の作用部位まで効果的に輸送し得る任意の経路によって、適切な対象(例えばヒトなどの哺乳類動物)に投与され得る。例示的な投与経路としては、経口経路、経鼻経路、経肺経路、経皮経路、例えば受動的送達又はイオン導入送達、又は非経口経路、例えば直腸経路、デポー経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、腹腔内経路、動脈内経路、頭蓋内経路、小脳内経路、皮下経路、点眼液又は軟膏が挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチド(及び他の増殖因子)及び/又は治療薬/診断薬は従来の全身性経路、例えば静脈内注射又は皮下注射によって投与され得る。注射組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)などの様々な担体を含有し得る。静脈内注射のために、VEGF又は治療薬/診断薬などの水溶性薬剤は、薬剤及び生理学的に許容可能な非薬効成分を含む医薬製剤が注入される点滴法によって投与され得る。生理学的に許容可能な非薬効成分としては、例えば5%ブドウ糖、0.9%生理食塩水、リンゲル溶液、又は他の適切な非薬効成分が挙げられ得る。筋肉内製剤、例えば適切な可溶性塩形態の薬剤の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液などの医薬用非薬効成分中に溶解され、投与され得る。
いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドは低用量で対象に投与され得る。例えば、VEGFは約10ng/kg~500ng/kgの量、例えば約20~250ng/kg、約50~200ng/kg、又は約100~150ng/kgの量で対象(例えばヒト対象)に投与される。VEGFの選択された用量はBBBの透過性を高めるためには十分に高い用量であるべきだが、その後の脳に対する損傷(例えば浮腫)を必然的に引き起こすBBBの一体構造を破綻させるには不十分であるべきである。したがって、VEGFは約10ng/kg~500ng/kgの量、例えば約20ng/kg、50ng/kg、80ng/kg、100ng/kg、120ng/kg、150ng/kg、180ng/kg、200ng/kg、又は250ng/kgの量で対象(例えばヒト対象)に投与されることが好ましい。VEGFに対する感受性を有する対象に対しては、VEGFの用量を、例えば10ng/kg未満(例えば約1~5ng/kg又はそれ未満)まで減少させてもよい。あるいは、VEGFに対する耐性を有する対象に対しては、VEGFの用量を、例えば500ng/kg超(例えば約500ng/kg~5μg/kg、例えば800ng/kg、1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、又は5μg/kg)まで増加させてもよい。
有効量の治療薬又は診断薬は、対象中の脳障害を治療又は診断するためにVEGFポリペプチド(又は別の増殖因子)と併用される。本明細書において使用される「有効量」という用語は、必要な投与回数及び期間で疾患の治療に関して所望の結果を達成するために有効な量を指す。例えば、がんの治療においては、がんの任意の症状を減少させる、防止する、遅延若しくは抑制する、又は停止させる薬剤(すなわち、化合物又は組成物)が有効であり得る。有効量の薬剤は、疾患又は異常を治癒させるために必要とされるのではなく、疾患又は異常の発症が遅延、妨害、又は防止されるように、又は疾患若しくは異常の症状が改善されるように、疾患又は異常に対する治療をもたらすであろう。有効量は、指定期間内に1回、2回、又はそれより多くの回数で投与されるように適切な形で1回用量、2回用量、又はそれより多くの用量に分割されてもよい。
本開示のVEGF(又は他の増殖因子)及び/又は治療薬の投与量は、選択された特定の増殖因子又は治療薬、投与経路、及び患者において所望の応答を引き出す増殖因子又は治療薬の能力だけではなく、疾患状態又は緩和される症状の重症度、患者の年齢、性別、患者の体重、患者の健康状態、及び治療される病気の重症度、併用薬物、又は患者が従っている特別食などの因子、及び当業者が理解し得る他の因子によっても患者毎に異なることになり、適切な投与量は最終的には担当医師の自由裁量で決まることを理解されたい。投与計画は所望の応答を引き出すために調節されることがある。好ましくは、本発明の増殖因子がBBBに対する透過性を上昇させるような量及び期間で投与された後、続いて、治療応答の改善を達成するために少なくとも1用量の治療薬が対象に投与される。
いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドは、治療薬又は診断薬の投与の約15~180分前(例えば15~120分前、15~90分前、15~60分前、30~120分前、30~90分前、又は30~60分前)に投与され得る。いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドは、治療薬又は診断薬の投与の約15分前、約20分前、約25分前、約30分前、約35分前、約40分前、約45分前、又は約50分前に投与される。ある例では、VEGFは、治療薬の投与の約45分前に投与される。別の例では、VEGFの投与は、治療薬又は診断薬の投与の約3時間前である。
ある実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、治療薬(例えば抗がん剤)又は診断薬の投与後に1回又は複数回の追加用量のVEGFポリペプチドを対象に投与することをさらに含む。例えば、治療薬/診断薬の投与から約2~24時間後(例えば、2~12時間後、3~8時間後、又は3~5時間後)に対象に対して追加の第1用量のVEGFを投与することができる。ある例では、1回目の追加用量のVEGFは治療薬/診断薬の投与から約3時間後に対象に投与される。いくつかの例では、1回目の追加用量のVEGFの投与後の適切な時間枠内、例えば、1回目の追加用量のVEGFの投与後2~24時間(例えば2~12時間、3~8時間、又は3~5時間)に対象に対して2回目の追加用量のVEGFを投与することができる。ある例では、2回目の追加用量のVEGFは1回目の追加用量のVEGFの投与の約3時間後に対象に投与される場合がある。必要な場合は、治療薬又は診断薬の処理と共に追加用量のVEGFを対象に対して投与してもよい。
複数用量のVEGFが使用される場合、各VEGF投与の用量は同じであってよい。あるいは、異なるVEGF用量が異なる回に投与されてもよい。いくつかの例では、各回に低用量のVEGF(例えば、本明細書に開示される低用量の範囲内の用量)を対象に投与することができ、異なる回で投与されるVEGFの用量は同じであっても異なっていてもよい。
VEGF処理の経過において、薬剤の日常的手順の後に1回又は複数回の追加用量の治療薬又は診断薬が対象に投与されてもよい。いくつかの例では、治療薬又は診断薬の投与はそれぞれ、最後のVEGF投与の後の適切な時間枠内、例えば最後のVEGF投与後の30分~3時間以内、場合によっては最後のVEGF投与の約45分後に行われてもよい。
いくつかの例では、低用量のVEGFポリペプチド(例えばVEGF165A)がヒト患者などの対象に投与される。約30~60分(例えば45分)、有効量の治療薬又は診断薬が同じ対象に投与される。対象はその後、1回又は複数回の低用量のVEGFが追加投与されてもよく、例えば、治療薬/診断薬の投与の2~8時間後に1回目の追加の低用量のVEGFが投与され、場合によっては1回目の追加用量のVEGFの2~8時間後に2回目の追加の低用量のVEGFが投与される場合がある。追加の用量の治療薬又は診断薬は、1回目の追加用量のVEGFの前及び/又は後に対象に投与されてもよく、場合によっては2回目の追加用量のVEGFの前及び/又は後に対象に投与されてもよい。
いくつかの例では、治療薬又は診断薬の投与の後に3回以上の用量のVEGFが対象に投与される。例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回の用量(例えば低用量)のVEGFが治療薬又は診断薬の投与後に対象に投与されてもよい。治療薬の投与後に投与されるVEGFの用量は、連続的に(例えば治療薬の投与を挟まずに)投与されてもよい。あるいは、治療薬の投与後に投与されるVEGFの用量は、非連続的に(例えば治療薬の投与を挟んで)投与されてもよい。
いくつかの例では、VEGFの(例えば連続的又は非連続的な)投与と投与の間の間隔は最大で4時間(例えば15分間、30分間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、又は4時間)である。VEGFの(例えば連続的又は非連続的な)投与と投与の間の間隔は1~4時間、2~4時間、3~時間、1.5~4時間、2.5~4時間、2~3時間、又は2.5~3.5時間であってよい。いくつかの例では、VEGFの(例えば連続的又は非連続的な)投与と投与の間の間隔は3時間である。
いくつかの例では、対象に投与されるVEGFの用量がそれぞれ同じ量である。いくつかの例では、対象に投与されるVEGFの少なくとも2回の用量が同じ量である。いくつかの例では、対象に投与されるVEGFの少なくとも2回の用量が異なる量である。いくつかの例では、対象に投与されるVEGFの全ての用量が異なる量である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、対象の脳腫瘍などの脳疾患の治療に適用され得る。いくつかの例では、脳腫瘍は神経膠芽腫(例えば多形神経膠芽腫)である。「対象」又は「患者」という用語は、本発明の方法で治療可能なヒト種を含む動物を指す。「対象」又は「患者」という用語は、一方の性が具体的に指示されない限り男性と女性の両方を指すものとされる。したがって、「対象」又は「患者」という用語は本開示の治療方法から利益を得る場合がある任意の哺乳類動物を含む。
「腫瘍」及び「がん」という用語は本明細書において互換的に使用され、無制御の増殖、分化の欠如、及び/又は周囲の組織へ進入及び転移する能力を引き起こす、正常な制御の喪失を独自の特性として有する任意の細胞性悪性病変を意味することを意図している。ヒト脳腫瘍としては、神経膠腫、腫瘍転移、髄膜腫、下垂体腺腫、及び聴神経腫が挙げられるがこれらに限定されない。神経膠腫の例としては、星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、低悪性度星状細胞腫、未分化星状細胞腫、多形神経膠芽腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、上衣下腫、神経節腫、混合膠腫、乏突起神経膠腫、及び視神経膠腫が挙げられる。いくつかの例では、脳腫瘍は多形神経膠芽腫である。非グリア系腫瘍の例としては、聴神経腫瘍、脊索腫、CNSリンパ腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、ラブドイド腫瘍、及びシュワン細胞腫が挙げられる。脳神経に影響する腫瘍としては、視神経の神経膠腫、第8脳神経の神経線維腫、第5脳神経の神経線維腫が挙げられる。良性腫瘍としては、くも膜嚢胞、類皮嚢胞、類表皮嚢胞、コロイド嚢胞、及び神経上皮嚢胞、並びに他の任意の進行の遅い腫瘍が挙げられる。原発脳腫瘍は上記の腫瘍のように脳自体の中で発生するが、転移性脳腫瘍(身体の別の部分でのがんとして始まった続発性脳腫瘍)が最も一般的な脳腫瘍である。脳転移は、限定されないが、肺、皮膚(黒色腫)、腎臓、結腸、及び乳房で発生するがんを含む原発がんから転移する場合がある。
本明細書において使用される「治療」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果、例えばがんの増殖の遅延化又は抑制、又は器官(例えば脳)に対する虚血傷害の改善を得ることを意味するものとされる。その効果は疾患又はその症状の完全又は部分的な防止という点で予防的であってもよく、及び/又は疾患及び/又は疾患が原因の有害作用の部分的若しくは完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書において使用される「治療」には、哺乳類動物、特にヒトの疾患の防止的(例えば予防的)治療、治癒的治療、又は緩和的治療が含まれ、その治療には(1)ある疾患にかかりやすい可能性があるがまだその疾患を発症しているとは診断されていない個人における、疾患又は異常の発症の防止的(例えば予防的)治療、治癒的治療、又は緩和的治療、(2)(例えば疾患の進行停止による)疾患の抑制、又は(3)疾患の緩和(例えば疾患に関連する症状の軽減)が含まれる。
本明細書に記載される抗がん剤などの抗がん剤は、本明細書に提供される開示に従ってVEGF(及び本明細書に記載されるような別の増殖因子)と併用され得る。低用量のVEGFは小分子薬剤だけでなくタンパク質薬/ナノ粒子/幹細胞に対してもBBB透過性を上昇させることがわかった。したがって、小分子抗がん剤及び生物製剤の両方が脳腫瘍の治療有効性を高めるために本明細書に記載されるようなVEGFと併用され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、限定されないが、脳卒中、精神神経障害、又は神経変性疾患を含む脳障害の治療に適用することができる。このような脳疾患の例は本明細書に示されている。いくつかの例では。MSCなどの幹細胞が本明細書に提供される開示に従って脳卒中又は神経変性疾患の治療のためにVEGF(及び本明細書に記載されるような他の増殖因子)と併用され得る。他の例では、抗凝固剤(例えば本明細書に記載される抗凝固剤)が脳卒中の治療のためにVEGFと併用されてもよい。さらに、本明細書に記載される任意の抗精神病薬又は抗認知症薬を含む抗精神病薬又は抗認知症薬が精神障害又は認知症の治療のためにVEGFと併用されてもよい。これらの標的疾患の例も本開示中に示されている。
本明細書において使用される「脳卒中」という用語は、脳の全部又は一部への血液供給を阻止するか減少させる任意の事象を意味するものとされる。脳卒中は、血栓症、塞栓症、又は出血が原因の場合があり、虚血性脳卒中(血栓性脳卒中及び塞栓性脳卒中が含まれ、血栓症、塞栓症、及び全身性血流低下等により生じる)又は出血性卒中(脳内出血、くも膜下出血、硬膜下出血、及び硬膜外出血等により生じる)と呼ばれる場合がある。本明細書において使用される場合、熱中症及び一過性脳虚血発作(TIA)は脳卒中から除外される。熱中症は体温上昇により生じ、脳内の臨床症状は本明細書において規定される脳卒中の臨床症状(すなわち、脳内での低酸素状態と関連した血液供給の中断)とは異なる。TIAは時に「軽度脳卒中」と呼ばれるが、これらの軽度脳卒中は発症24時間以内に完全に解消する能力から、本明細書において規定される脳卒中と区別可能である。脳卒中は神経学的検査、血液検査、並びに/又はコンピュータ断層撮影(CT)スキャン(例えば造影剤を使用しないもの)、磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、超音波ドプラー法、及び動脈造影法などの医用画像撮影法によって診断される。
「精神神経障害」という用語は、4種類の精神的能力のうちのどれが影響を受けているかによって通常分類される神経障害を意味するとされる。例えば、第1の群には統合失調症及びせん妄などの思考障害及び認知不全が含まれ、第2の群には情動障害及び不安症などの気分障害が含まれ、第3の群には人格欠損及びパーソナリティ障害などの社会的行動障害が含まれ、第4の群には知的障害及び認知症などの学習障害、記憶障害、及び理解力障害が含まれる。したがって、本開示の精神神経障害は、統合失調症、せん妄、アルツハイマー病(AD)、うつ、躁病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、薬物中毒、軽度認知障害、認知症、激越、感情鈍麻、不安症、精神病、外傷後ストレス障害、易刺激性、及び双極性障害を包含する。
本明細書において使用される「神経変性疾患」という用語は、神経系の様々な領域での神経細胞死及びその結果としての罹患対象の機能障害を特徴とする状態を指す。本開示の神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、嗜銀顆粒病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、グアムALS/パーキンソン認知症複合、血管性認知症、前頭側頭型認知症、意味認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、封入体ミオパチー、封入体筋炎、又はパーキンソン病(PD)を包含する。
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、造影剤などのイメージング剤とのVEGF(又は他の増殖因子)の併用による脳イメージングに適用可能である。造影剤は、陽電子放射断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などのコンピュータ断層撮影法(CT)、又は磁気共鳴画像法(MRI)を用いて検出可能な任意の薬剤であってもよい。非限定的な例として、イメージング剤はコンピュータ断層撮影法(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)の造影剤であってよい。
脳障害の治療又は診断に使用されるキット
本開示は、脳疾患の治療又は診断のために本明細書に記載される方法において使用されるキットも提示する。このようなキットは少なくとも2つの容器を含むことができ、VEGFを含む第1の製剤を含む容器、及び本明細書に記載されるような治療薬(例えば抗がん剤)又は本明細書に記載されるような診断薬(例えばイメージング剤)を含む第2製剤を含む第2の製剤を含む。いくつかの例では、キットは、VEGFを含む第3製剤を含む第3の製剤を含み、第3の製剤は第2の製剤の投与の2~4時間後に処理を必要とする対象に全身投与されるものであってもよい。
いくつかの例では、キットには、第3の製剤の投与の2~4時間後に処理を必要とする対象に全身投与されるものであってよい、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含む第4製剤を含む、少なくとも1つの第4の容器(iv)がさらに含まれる。2つ以上の第4の容器を含む例では、連続的なVEGFと投与の間隔は2~4時間であってもよい(例えば、その間隔は3時間であってもよい)。
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかに準拠する取扱説明書を含んでいてもよい。含まれている取扱説明書は、本明細書に記載されるような標的脳疾患を治療又は診断するためのVEGF及び/又は治療薬/診断薬の投与についての説明を含み得る。キットは、個人が標的疾患を有しているか否かを特定することに基づく、治療に適切な個体の選別についての説明をさらに含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、取扱説明書は標的疾患のリスクがある個体へのVEGF又は治療薬/診断薬の投与についての説明を含んでいてもよい。
VEGF及び/又は治療薬/診断薬の使用に関する取扱説明書には、意図されている治療又は診断のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報が通常含まれている。容器は単位用量、バルク包装(例えば複数用量包装)、又は小単位用量であってよい。本明細書に記載されるキット中に提供される取扱説明書は、通常、ラベル上又は添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上に書かれた取扱説明書であるが、機械可読式の取扱説明書(例えば磁気式記憶ディスク又は光学式記憶ディスク上に保持されている取扱説明書)も許容可能である。
ラベル又は添付文書は、この組成物が本明細書に記載されるような脳疾患又は脳障害の治療/診断、発症遅延、及び/又は改善に使用されることを示す。取扱説明書は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実施するために提供されてもよい。
本発明のキットは適切に包装されている。適切な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、及びフレキシブル包装(例えば、密封されたマイラーバッグ又はプラスチックバッグ)等が挙げられるがこれらに限定されない。特定の装置、例えば吸入器、経鼻投与装置(例えば、アトマイザー)、又はミニポンプなどの輸液装置と併用するためのパッケージも考慮される。キットは無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は静脈内投与用輸液バッグ又は皮下注射針で突き刺し可能なストッパーを有するバイアル瓶であってよい)。容器が無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は静脈内投与用輸液バッグ又は皮下注射針で突き刺し可能なストッパーを有するバイアル瓶であってよい)。
キットは、任意に、緩衝液及び解釈用情報などの追加の構成要素を提供してもよい。通常、キットは容器、及び容器上の又は容器に添付されたラベル又は添付文書を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記キットの内容物を含む製品を提供する。
一般的な手法
本発明の実施には、別段の指示がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来技法が使用されることになり、それらの技法は当技術分野の範囲内である。Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)。
当業者は、さらに精査せずとも、上記記載に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は単なる例示であると解釈されるべきであり、いかなる意味においても以下の開示を限定するものではない。本明細書において引用されている全ての刊行物は、本明細書において参照された目的又は主題について参照により取り込まれる。
実施例:多形神経膠芽腫のリポソーム化薬剤療法の改善のための血液脳関門透過性の一過性上昇の誘導
本研究は、血液脳関門(BBB)の透過性を高めることによる脳への治療薬の送達の促進における低用量のヒト血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)の効果を試験する。本明細書では、低用量の全身投与されたヒトVEGFポリペプチドにより、マウス及びブタの両方で短時間のBBB透過性の上昇が誘導されたことが報告された。VEGFは、様々な大きさのナノ粒子、小分子、及びリポソーム化学療法薬を含む様々な例示的分子の脳送達を増加させることがわかった。これらの結果はVEGFによって誘導されるBBB透過性の時間枠は一過性であることを示しており、正常なBBB完全性はマウスモデルにおいて観察されたようにVEGFの投与後4時間以内に回復した。VEGFとリポソーム化ドキソルビシンを組み合わせることでヒト神経膠芽腫のマウスモデルの動物生存期間が予想外に延長された。驚くべきことに、VEGFがマウスに投与された場合、全身にわたる毒性は認められなかった。
したがって、これらの結果は、ナノ粒子又はリポソーム型薬剤などの治療薬のBBBを越えた送達を促進し、それにより脳障害の治療を促進するためにVEGFを使用することができることを裏付けている。
材料と方法
(i)動物実験
薬剤生体内分布試験に使用された動物は、体重約25gの8~10週齢の雄フレンド白血病ウイルスB(FVB)マウスであった。約21gの6~8週齢の雄BALB/c NUマウスをヒトGBM腫瘍異種移植実験に使用した。PDAC腫瘍異種移植のためには体重25~30gの8週齢のNOD/SCIDマウスを使用し、機構研究及び安全性試験には約30gの8~10週齢の雌ICRマウスを使用した。全てのマウスを台湾のBioLasco社から購入した。マウスを自由給水給餌で12時間毎の昼夜サイクルで飼育した。大型動物試験のために19~24kgのLanyuミニブタを使用した。全てのマウス実験は台湾中央研究院動物実験委員会(IACUC)によって認可され、ブタは台湾国家実験動物センターの認可済みプロトコルに従って獣医スタッフの監督下で使用された。
(ii)薬剤投与
マウスでは別段の定めが無い限り30Gのインスリン注射針を使用して尾静脈よりボーラス注射として薬剤を投与した。組換えヒトVEGF165A(Peprotech社、台湾)を0.1%(重量/体積)ウシ血清アルブミン中に懸濁し、別段の定めが無い限り体重1g当たり1.5ngの用量で外側尾静脈から投与した。エバンスブルー(Sigma社、E2129)を通常生理食塩水中に4%(重量/体積)の濃度で懸濁し、4ml/kgの用量で投与した。生理食塩水中に懸濁された塩酸ドキソルビシン(Sigma社、D1515)、又はLipoDox(TTY Bio社、台湾)を外側尾静脈により2~8mg/kgの用量でゆっくりと投与した。テモゾロミド(Sigma社、T2577)を5mg/kg又は20mg/kgの用量で投与した。20nm、100nm、及び500nmのソリッドコア直径を有する蛍光PEG結合黄緑色ポリスチレン微粒子(Life Technologies、Thermo Fisher社)を3mg/kgの用量で投与した。神経炎症の誘導のために使用したリポ多糖(Sigma社、L4391)を、5mg/kgの用量で投与した。ブタではrhVEGF165A(0.2μg/kg、2μg/ml)又はベヒクル対照を右総頸動脈に注入した。5%(重量/体積)ブドウ糖溶液中に0.35mg/mlの濃度に希釈されたLipoDox(TTY Bio社、台湾)を約3.0ml/分の速度のシリンジポンプによる静脈内点滴によって1.5mg/kgの用量で投与した。黄緑色PEG結合ポリスチレンナノ粒子(100nmのコア径)を3mg/kgの用量でボーラス注入により投与した。
(iii)ナノ粒子のPEG化
以前に記載されたように、mPEGアミン(5kD、Nanocs社、台湾)及びカルボジイミド(Sigma社)を使用して蛍光ナノ粒子をPEG化し、Malvern ZetaSizer ZSを使用してこれらのナノ粒子の特徴を分析した。Lundy et al.,Sci.Rep.,6:25613(2016)。
(iv)造影磁気共鳴画像法(MRI)
マウスについては技術員がPharmascan 7T 16cmボア水平システムを操作した。イソフルラン吸入によって麻酔されたFVBマウスにVEGF又は同体積のベヒクル対照を注入した。造影前T1強調スピンエコー画像を撮影した(反復時間(TR)=400ミリ秒、エコー時間(TE)=10.8ミリ秒、視野(FOV)=2×2cm、励起回数(NEX)=8、スライス厚0.8mm)。VEGF投与の45分後又は4時間後に造影剤(Gadovist、Bayer社)をカテーテル挿入された尾静脈に0.2mmol/kgの割合で投与した。造影剤注入の1分後に造影後T1強調画像を撮影した。ROIのシグナル(平均ピクセル強度)をバックグラウンドノイズの標準偏差によって除算することによってSN比を計算した。画像撮影、SN比測定、及び腫瘍容積測定は全て2人のMRI操作技術員により実施あれ、これらの技術員には試験群が伏せられた。
ブタについては、VEGF又はベヒクル対照を投与し、Philips Achieva X 3.0 3T MRI装置を使用して2枚の造影前T1強調ターボスピンエコー画像を撮影した(TR=600ミリ秒、TE=10ミリ秒、FOV=20×20cm、スライス厚=3mm)。VEGF投与の45分後にガドジアミド(Omniscan、GE Healthcare社)を0.1mmol/kgの用量(約5ml)でパワーインジェクターにより静脈内投与した。1分後に、3枚組の造影後画像を同じ設定で撮影した。2枚の造影前画像は平均され、各動物の造影後画像のうちで最も高いSN比を有するものが分析のために選択された。
(v)エバンスブルーの定量
30分の循環後に腹部大動脈から50mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を灌流した。臓器を取り出し、複数の小片に分割し、リンスし、乾燥し、重量測定し、500μlのホルムアミド中でホモジナイズし、60℃で一晩加熱し、21,000gで15分間遠心分離した。上清の吸光度を620nmで測定し、740nmでバックグラウンド補正を行い、検量線により未知濃度を定量した。エバンスブルー注射を受けなかったマウスの臓器を使用してブランク吸光度読み取り値を確定した。Radu et al.,J.Vis.Exp.,No.73,e50062(2013)。
同じ臓器の複数の小片に由来する濃度を平均した。この方法の検量線が図8aに示されている。エバンスブルーの血管外漏出を撮影するため、del Valleらの方法を適用した。del Valle et al.,J.Neurosci.Methods,174(1),42-49(2008)。マウスを50mlのPBSで心臓内灌流し、続いて50mlのパラホルムアルデヒド(4%重量/体積)中のエバンスブルー(1%重量/体積)で心臓内灌流した。局所的なBBB損傷領域を誘発するための凍結損傷を陽性対照として使用した。OCT(Optimum Cutting Temperature)コンパウンド中に脳を包埋し、分析用に20μm厚の切凍結片を作製した。
(vi)蛍光PEG結合ポリスチレンナノ粒子の定量
マウスではナノ粒子を30分間循環させた後、上記のように動物に対して灌流を行った。IVISを使用してナノ粒子の保持量を定量した(励起485nm、蛍光530nm)。ナノ粒子投与を受けなかったマウスの脳を使用してバックグラウンド補正を行った。ブタではHPLCを使用してナノ粒子の保持量を定量した。Chen et al.,Nanoscale,7(38),15863-15872(2015)。簡単に説明すると、ナノ粒子の蛍光染料をo-キシレン中に抽出し、Waters e2695分離モジュール及びX-bridge C18(250×4.6mm、5μm)カラムをメタノール:水(77:23)の移動相、流速1ml/分で使用して定量した。検出には、Waters 2475 FLR検出器を505nmの励起及び515nmの蛍光で使用した。
(vii)テモゾロミド(TMZ)のHPLC定量
約100mgの組織を酸性化酢酸アンモニウム(200μl、10mM、pH3.5)、硫酸亜鉛(200μl、100mM)、及びメタノール(400μl)中でホモジナイズし、続いて4℃で30分間、10,000gで遠心分離した。上清をHPLC分析のために採取した。80:20の比率の酢酸(0.1%体積/体積)とメタノールを使用して、35℃で、Atlantis T3 3μm HPLCカラム内、0.8ml/分の流速で、Waters e2695分離モジュールにより分離を実施した。Waters 2489 UV/可視光検出器を316nmで使用して検出を実施した。テオフィリンを内部標準として使用し、275nmでこれを測定して、結果をテオフィリンピークに対するTMZピークの比率として計算した。図8bに示されているように、溶解緩衝液中に溶解されたTMZの検量線から未知濃度を計算した。
(viii)ドキソルビシン及びリポソームドキソルビシンのHPLC定量
臓器を取り出し、乾燥し、重量測定し、複数の小片(約100mgの組織又は100μlの血漿)に分割した後、1mlの溶解緩衝液(0.25M ショ糖、5mM Tris-HCl、1mM MgSO、1mM CaCl、pH6.7)を使用して完全にホモジナイズした。次に、200μlのホモジネートを1mlの酸性化アルコール(70%エタノール、0.3N HCl)と混合し、-20℃で一晩放置した後、4℃で30分間、10,000gで遠心分離した。上清をHPLC分析のために採取した。Waters e2695分離モジュール、40℃で、X-Bridge 5μmカラム内、35%の10mM KHPOと65%のメタノールの移動相、1ml/分の流速より分離を行った。検出には、Waters e2475モジュール(励起480、蛍光600nm)を使用した。
LipoDox抽出のために、30分間の超音波処理、2回の凍結融解処理、及び溶解緩衝液へのトリトン-X100(1%体積/体積)の添加を含むようプロトコルを改変して、以前の刊行物のプロトコルに適合させた。Kovacs et al.,J.Control.Release,187,74-82(2014);及びLaginha et al.,Clin.Cancer Res.,11(19 Pt 1),6944-6949(2005)。検量線、HPLCピークの例、及び回収率が図9a~9dに示されている。
(ix)多形神経膠芽腫(GBM)異種移植モデル
本試験ではDBTRG-05MGヒト神経膠芽腫細胞を使用した。ルシフェラーゼ発現の証拠が図13aに示されている。10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地中において37℃でDBTRG-05MG細胞を日常的に培養した。製造業者のプロトコルに従ってMTTアッセイを実施した。GBM腫瘍の作製のため、6μlの無菌生理食塩水中に懸濁された300,000個のDBTRG-05MG生細胞を定位注入により0.5ml/分で6週齢のBALB/c NUマウスに投与した。注入位置はブレグマの後方2mm、右大脳半球1.5mm側方、及び硬膜より2.5mmの深さであり、細胞を視床に送達した。Baumann et al.,J.Vis.Exp.,No.67,3-6(2012)。ボーンワックスを頭蓋骨に塗り、縫合糸を用いて皮膚を閉じた。異種移植による腫瘍形成の成功率は約90%であった。これらの動物が腫瘍進行のために死んだ場合、又はこれらの動物が重篤な悪液質(開始時の体重の25%超の減少)、摂食不能、及び足指つまみ刺激に対する応答の欠如を含む所定の基準に合致した場合の殺処理時に、動物の死を記録した。Gholamin et al.,Cureus,4,1-14(2013)。腫瘍モデルのその他の特徴解析が図13A~13Cに示されている。
皮下GBM異種移植のために、1×10細胞のDBTRG-05MG細胞をBALB/c NUマウスのそれぞれの脇腹に注入し、58日間増殖させた。膵臓がん(PDAC)の同所性モデルについては、台湾国立台湾大学医病院のYu-Wen Tien博士より贈られたルシフェラーゼ発現性AsPC1ヒト膵臓がん細胞を10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640中において37℃で日常的に培養した。Tan et al.,Tumour Biol.,6(1),89-98(1985)。10μlの無菌PBS中に懸濁された5×10細胞のAsPC1生細胞を膵臓中に投与した。Chai et al.,J.Vis.Exp.2013,No.76,2-6(2013)。膵臓を腹腔内に戻した後、腹膜には連続縫合を使用し、皮膚には結節縫合を用いて、切開部分を二層で閉じた。その他の情報が図16A~16Dに提供される。
(x)腫瘍進行のIVIS評価
75μg/gのルシフェリン基質(Monolight、BD Bioscience社)を腹腔内投与により投与した。イソフルラン吸入によりマウスを麻酔し、Perkin Elmer IVIS Spectrumを使用して5分間隔で反復IVIS像を撮影した。最も強い発光シグナルを示す時点を分析に選択した。各フレームに存在するシャムマウス由来のバックグラウンド読み取り値を差し引いた。
(xi)免疫蛍光染色
60日目~70日目の間に死んだマウスの脳腫瘍を免疫蛍光染色に選択した。VEGF+対照の試料を参照のために含ませたが、これらのマウスは60日目よりも前に死んだ。使用した一次抗体及び希釈度は、抗Ki67抗体(1:500、GeneTex社、GTX16667)、イソレクチンIB4-AlexaFluor647、抗GFAP抗体(1:500、AbCam社、ab68428)、抗Iba1抗体(1:1000、Wako社、019-19741)、抗P-糖タンパク質抗体(1:100、AbCam社、ab170904)、抗pdgfrβ抗体(1:100、Abcam社、ab32570)、抗クローディン5抗体(1:50、Thermo Fisher Scientific社、34-1600)、抗CD31抗体(1:100、BD Pharmingen社、550274)であった。試料を4%(重量/体積)パラホルムアルデヒド(PFA)(pH6.8)中で一晩固定し、パラフィン中に包埋し、切片を作製した。スライドに対してキシレンを使用して脱パラフィンを行い、アルコールから水への段階希釈物によって再水和を行い、製造業者の指示に従って抗原賦活化、透過処理、及びブロッキングを行った。イソレクチン以外はブロッキング緩衝液中に希釈した一次抗体を4℃で一晩適用し、イソレクチンについては室温で1時間適用した。スライドをPBSで3回洗浄した後、第2の一次抗体を添加して、4℃で一晩放置した。使用した二次抗体は、ヤギ抗ウサギIgG-AlexaFluor 568(Invitrogen社、A-11011)とヤギ抗ラットIgG-AlexaFluor 488(Invitrogen社、A-11006)であり、室温で1時間適用した。少なくとも3枚の別々の切片を試験し、切片当たり少なくとも3枚の画像を撮影した。凍結切片については試料を灌流固定した後、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に浸漬し、30%(重量/体積)ショ糖溶液中で凍結保護して、OCT中で凍結し、切片作製を行い、ブロッキングから続けて上記のように染色した。HE染色(Mayers社)は標準的な実験プロトコルに従った。AxioScop顕微鏡をAxioFluor対物レンズ及びAxioVisionソフトウェアと共に使用して、又はModel-Zeiss LSM 700 Stage共焦点顕微鏡を使用して画像撮影を行った。
(xii)透過電子顕微鏡観察
マウスを麻酔し、PBSで灌流を行い、続いて100mlの0.1mMリン酸緩衝液(pH7.4)中の4%PFAで灌流を行った。脳を取り出し、4%PFA中で後固定し(一晩、4℃)、PBS中で洗浄した。クライオミクロトームを使用して同日に脳の冠状切片(100μm厚)を切り出し、浮遊切片を作製した。切片をPBS中の4%PFA、2.5%グルタルアルデヒド中に浸漬し(一晩、4℃)、PBSで5分間、3回洗浄した。これらの標本を1%四酸化オスミウム中で45分間浸漬し、脱水し、そしてスパー低粘性樹脂を使用して包埋した。その後、試料をトリミングし、Leica EM UC6ウルトラミクロトームを使用して切片作製を行った。その後、酢酸ウランとクエン酸鉛を使用してこれらの超薄切片を二重染色した。JEOL JEM 1200EX TEMを80KVの加速電圧で使用して画像を撮影した。
(xiii)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
血漿S100βについて、マウス血漿を1,500gで15分間の遠心分離により分離し、製造業者の指示(Elabscience社、E-EL-M1033)に従ってELISAを実施した。生理食塩水中の希釈脳ホモジネートを陽性対照として使用した。血漿中rhVEGFを測定するため、製造業者のプロトコルに従って抗ヒトVEGF ELISAキット(Boster社、EK0539)を使用した。VEGF投与前の同じマウスからの試料をブランクとして使用した。
(xiv)リアルタイム定量的PCR
約50mgの重量のマウス大脳皮質の試料をTrizol中でホモジナイズし、製造業者のプロトコルに従って全RNAを抽出した後、Nanodropによって定量化を行った。SuperScript IIIリバーストランスクリプターゼキット(Life Technology社)を使用して試料をcDNAに逆転写した。OmicsGreen qPCR SYBR Greenマスターミックス(Omics Bio社、台湾)を使用して、Applied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステムを用いて増幅をモニターした。GAPDHを内部対照として使用した。使用したプライマーが表1に示されている。
Figure 2022513336000003

Figure 2022513336000004

(xv)ソフトウェア及び統計学
GraphPad Prism 7.0b(Mac)を全ての統計学的分析及びグラフ作成に使用した。事前事後分析には対応t検定を用い、群分析には多重比較の補正のためにテューキーの事後検定と共に一元配置又は二元配置ANOVA(分散分析)を用いた。腫瘍生存分析のために死亡数を記録及び使用してカプラン・マイヤー生存曲線を作成し、マンテル・コックスログランク検定を用いてこれらの生存曲線を比較した。Mac用のLiving Image 4.0ソフトウェアを使用して腫瘍輝度及びナノ粒子蛍光のIVIS像の定量化を行った。MicroDicom(Windows)でMRI DICOM像を分類し、FIJI/ImageJ(Mac)で測定ツールを使用してSN比の計算を実施した。ヒートマップを作成するためにPythonを使用して動物内のボクセルをフレームの隅の64×64ボクセル領域の平均に対して比較し、その差を0~100までのスケールで表した。映像の明瞭さを改善するために免疫蛍光像の輝度とコントラストの調節を行い、この調節をシリーズ内の全ての画像に対して同様に適用した。共局在分析ではZeiss ZENソフトウェアで生画像を分析した。DAPIチャンネル/CD31チャンネルを使用して共局在が無いことに対する閾値を確定し、次にこの閾値をその他のチャンネルに対して適用した。ImageJのフリーハンドライン選択ツールを使用して周皮細胞の整列の分析を実施した。Affinity Designer(Mac)で図をまとめた。
(xvi)抗体投与方法
VEGFの投与又は対照の投与の45分後に尾静脈を介して30μlの抗NrCAM一次抗体(abCam社)を注入した。抗体を2時間循環させ、マウスを50mLの生理食塩水で灌流し、続いて50mLのパラホルムアルデヒド(4%重量/体積)で灌流した。脳を取り出し、4%PFA中に一晩保持した後、凍結切片に処理した。陽性対照として、灌流の前に5μlの抗体を脳内に直接注入した。次に、Alexa488結合二次抗体を使用して凍結切片を染色した。陰性対照として、未処理動物の脳切片を使用した。第2の陽性対照として、従来の実験技術(室温1時間)を用いて未処理動物の脳切片を抗nrCAM抗体で染色した。染色された陽性対照以外の全ての画像を固定された露光時間で撮影した。緑色チャンネルの強度をImageJで定量した。
結果
(i)低用量VEGFはBBB透過性の一過性上昇を誘導する
例示的実験計画が図1aに示されている。マウスにVEGF又はベヒクル対照を静脈内注入し、45分後又は4時間後に薬剤を静脈内注入した。図1bはマウス血流中でのヒトVEGFの半減期が約18.67分であることを示している。
磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される脳実質内への造影剤の透過は、多くの場合に生きている動物でのBBBの完全性の証明に使用される。Burgess et al.,Expert Opin.Drug Deliv.,11(5),711-721(2014);Jiang et al.,PLoS One,9(2)(2014);及びZheng et al.,Biomaterials,66,9-20.e86407(2015)。通常条件下では少量のガドリニウム系薬剤(Gd)が脳実質に進入するのみであり、コントラストがほとんど強調されないだろうと予期された。図1c及び図1dに示されているように、対照が投与された動物は造影前画像と比較してT1強調造影後画像では平均してわずかに3.5%の皮質組織のシグナルノイズ比(SN比)の増加を示した。しかしながら、VEGF投与の45分後にGdが投与された場合、皮質の平均SN比が有意に増加し(16%、p<0.001)、VEGF前処理によりGdの脳組織内への浸透が増加したことが示された。一方、VEGFの4時間後にGdが投与された場合、SN比の増加は5%未満のままであり、BBBの完全性が正常化したことが示された((対照に対してp=0.6150、VEGF処理45分後に対してp<0.001)。中央脳静脈洞の周囲の領域(黄色の境界線)の分析により、静脈洞内に存在する造影剤のために大幅なシグナル増強が全ての群において生じ、群間で有意な差が無いことが示された。例となる画像が示されており、ランダムノイズの関心領域(ROI;赤色の円、左隅)、中央脳静脈洞(中央の黄色の円)、及び皮質(黄色の円の右側の青色の曲線)が示されている。
エバンスブルー染料は血清アルブミンに迅速に結合可能であり、且つ、完全なBBBを通過しないことが当技術分野において知られていた。Huang et al.,Adv Mater,1-7(2014);Bing et al.,J.Ther.Ultrasound,2(1),13(2014);及びCardoso et al.,Brain Res.Rev.,64(2),328-363(2010)。VEGFの45分後又は4時間後にエバンスブルーを注入し、30分間循環させた。図1eに示されているように、VEGFで前処理されたマウスは対照処理動物と比較してエバンスブルーの脳組織内濃度が4.85倍高かったが(p=0.0069)、VEGFの4時間後にエバンスブルーが注入された場合、増加は検出されなかった(対照に対してp=0.9405)。BBB透過性の上昇が一過性のようであることがこのことからも示されている。
腎臓も45分でのエバンスブルー取込みの増加を示した。エバンスブルー定量の検量線が図8aに示されている。脳皮質の代表的切片が図1fに並んで示されており、イソレクチン染色された血管(緑色)の外側でのエバンスブルー染色(赤色)の増加が示されている。局所的損傷をBBBに対して引き起こす凍結損傷をエバンスブルー注入の前に用いて陽性対照を実施した。この損傷部位は実質において強いエバンスブルーシグナルを示した。
大型のナノ粒子よりも小型のナノ粒子の方が脳内に容易に入ることがよく知られている。Lin et al.,Sci.Transl.Med.,4(146),146ra109-146ra109(2012);Koffie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.2011,108(46),18837-18842(2011);及びBen-Zvi et al.,Nature,509(7501),507-511(2014)。大型のナノ粒子によるBBBの迂回に対するVEGFの効果を試験するため、VEGF投与の45分後に尾静脈注射によって蛍光染料含有PEG結合ポリスチレンナノ粒子を投与した。これらのナノ粒子は20nm、100nm、及び500nmのソリッドコア直径を有し、それぞれ52nm、120nm、及び512nmの流体力学的径を有し、ゼータ電位は中性であった。ナノ粒子の例示的特性が表2に示されている。
Figure 2022513336000005
表2では透過電子顕微鏡法(TEM)によってソリッドコア直径が測定され、Malvern ZetaSizerを使用して流体力学的径及びゼータ電位が測定された。数字は平均値±標準偏差を示している。ナノ粒子を30分間循環させた後、マウスを50mlの生理食塩水で灌流し、脳ナノ粒子含量をIVISにより定量した。予期されたように、通常条件下では20nmのナノ粒子は100nm又は500nmのナノ粒子よりも多く脳内へ浸透した。VEGF前処理動物では、図1gに示されているように、脳による20nmのナノ粒子の保持の有意な増加(対照に対して3.5倍、p=0.0002)が検出された。100nmのナノ粒子の浸透の有意な増加(対照に対して8倍、p=0.0182)も検出されたが、500nmのナノ粒子の保持の有意な変化は無かった(対照に対してp=0.9762)。また、抗体に基づく化学療法にとって有益であり得る、全身性注入されたIgG抗体がVEGF前処理により脳内へ浸透可能になることを示す予備的な証拠も得られた(図7)。
概して、これらのデータは、低用量の静脈内VEGF注射によりBBB透過性が上昇して、脳内への小分子又はナノ粒子の浸透が可能になり得ることを示す。この効果は一過性のようであり、VEGF注射から4時間後にはBBB機能が回復する。
(ii)VEGFは抗がん剤に対する血液脳関門の透過性を高めた
次に、異なる種類の治療化合物を脳組織へ送達するために上記同様のアプローチが使用可能であるかどうかを調べることにした。テモゾロミド(TMZ)はGBM治療の第一選択薬剤療法である。図2aに示されているように、10倍高い濃度のVEGFを使用した場合であっても、VEGFは脳内のTMZ濃度を有意に上昇させることがない。TMZ全身投与量を5mg/kgから20mg/kgまで増加させると脳内のTMZ量を増加したが、VEGFによる前処理がTMZの脳内濃度をさらに上昇させることはなかった。これは、TMZは小分子(MW=194.15)且つ高脂溶性分子として、それ自体の臨床効果のために脳内に浸透できるという事実に起因する可能性がある。Ostermann et al.,Clin Cancer Res,10(11),3728-3736(2004)。TMZ定量についての検量線及び試料の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ピークが図8bに示されている。
次に、例として塩酸ドキソルビシン(MW=579.98)を使用して、大型水溶性分子のBBB透過に対するVEGFの効果を試験した。ドキソルビシンは全身投与後に脳内にほとんど進入しない。ドキソルビシンの他の固形腫瘍に対する高い有効性から脳腫瘍にドキソルビシンを送達しようと多くの試みが行われてきた。Aryal et al.,J.Control.Release,204,60-69(2015);Kovacs et al.,2014;及びWohlfart et al.,J Control Release,154(1),103-107(2011)。本試験ではマウスにVEGF又は対照を注入し、45分後にドキソルビシン(8mg/kg)を注入した。この薬剤を2時間循環させた後に、この動物を生理食塩水で灌流した。次に、重要臓器からドキソルビシンを抽出し、HPLCにより定量した(図8c)。図2bに示される生体内分布の結果から、全身のドキソルビシンの0.1%未満が健常対照マウスの脳に進入したことが確認される。VEGFの前処理によって、脳内ドキソルビシン濃度が統計学的に有意に上昇したが(対照に対してp=0.0180)、それでも脳内のドキソルビシンの分布は他の臓器でのこの化合物の分布よりもずっと少ない(図2b)。
次に、PEG結合リポソームドキソルビシン(LipoDox)の脳送達の促進における効果についてVEGFを試験した。これらのリポソームは中性に帯電しており(-1.53mV)、95.55nmの平均流体力学的径を有することがわかった。下の表3を参照されたい(数値はMalvern ZetaSizerにより測定された平均値±標準偏差を表している)。LipoDoxは本明細書に開示されるPEG結合ナノ粒子と同様の特性を示し、脳への進入に成功した(図1e)。
Figure 2022513336000006
図2cの結果はVEGF投与後のLipoDoxの脳内への進入の有意な増加(対照に対して6.4倍、p=0.0037)を示しており、VEGF存在下でLipoDoxが健全なBBBを通過可能であったことを示している。図2dは試料採取時の各マウス個体の血漿LipoDox濃度に対して正規化され、結果として薬剤代謝及び排出の個体差について補正されているデータを示している。いずれの末梢器官でもLipoDox濃度に有意な差が検出されなかった。図9a~9dはHPLC法により測定されたLipoDox定量の結果を示している。
MTTアッセイを用いて、ヒト神経膠芽腫細胞株DBTRG-05MGと培養されるとLipoDoxはTMZよりも25倍低いIC50を有することがわかった(図2e)。また、5mg/kg用量での全身投与後のマウスにおけるLipoDoxの循環半減期は44.72時間であることがわかった(図2f)。この循環半減期はTMZの半減期(1.8時間)又はドキソルビシンの半減期(11時間)よりも著しく長い。Agarwala et al.,Oncologist,5(2),144-151(2000);及びJohansen et al.,Cancer Chemother.Pharmacol.,5(4),267-270(1981)。VEGFはいずれの所与の濃度でもDBTRG-05MG細胞の生存度に影響しないこともわかった(図10)。
(iii)VEGFは大型動物モデルにおいて脳への薬剤送達を増加させる
本明細書中で報告された結果が臨床的により適切な意義のある薬剤用量までスケールアップ可能であることを確認するために、脳への薬剤送達の促進におけるVEGFの効果をブタモデルにおいてさらに試験した。
頸動脈を介してVEGF(0.2μg/kg)又はベヒクル対照をLanyuミニブタ(各群n=3匹)に投与した。図3aに示されているように、GdのSN比増加を使用してMRIにより複数の脳領域でのBBB完全性を判定した。図3bに示されているように、VEGF前処理を受けたブタはベヒクル対照前処理を受けたブタと比較するとSN比の有意な増加を示した。さらに、この増加は試験した複数の主要な脳ROIを通して非常によく一貫していた。中央脳静脈洞のSN比増加には有意な差が存在しなかった。全ての領域のSN比の平均は、対照ベヒクルで前処理されたブタよりもVEGFで前処理されたブタにおいて4倍高かった(p=0.0035)(図3c)。このレベルの増加はマウスで観察された増加レベル(図1c~1d)に類似している。正規化された造影後シグナル強度と正規化された造影前シグナル強度の間の変化を示すヒートマップも図3bの右パネルに示されている。
PEG結合ポリスチレンナノ粒子(100nmのコア直径)及びLipoDoxを例として使用して、生体内分布試験をブタにおいても実施した(図3d)。VEGFで前処理されたブタの脳組織において、全ナノ粒子蓄積量のわずかな増加が観察された(図3e)。ナノ粒子の全身生体内分布のHPLCに基づく正確な定量化から、これらの粒子の大部分が肺に蓄積されていることが示された(図3f)。特定の脳領域の比較から、VEGF前処理後により多くのナノ粒子が保持される全体的な傾向が示された(図3g、左パネル及び右パネル)。全ての脳領域の平均によって、脳内のナノ粒子保持のわずかではあるが統計学的に有意な増加(2.4倍、p=0.0258)が示された(図3h)。
HPLCによる全身性LipoDox生体内分布の分析から、大半のLipoDoxが循環中に残り、脾臓がLipoDoxを保持する主要な臓器であるというマウスにおいて観察されたパターンと同様のパターンが示された。図3iを図2cと比較して参照されたい。脳における領域特異的なLipoDox蓄積の試験から、VEGFで前処理された動物により多くのLipoDoxが蓄積する全体的な傾向が示された(図3j)。全ての脳のデータを平均により、LipoDox蓄積のわずかな増加が明らかになった(図3k)。汚染混入の無い脳脊髄液(CSF)を3匹のブタから収集した。VEGFで前処理された2匹の動物はいずれも対照処理動物よりも高いCSF中LipoDox濃度を示した(図3l)。
概して、これらの結果は、VEGFで誘導されたBBBの透過性はスケールアップ可能であり、且つ、大型動物で導入可能であることを実証しており、このことはヒト患者にとってより臨床的に関係する。
(iv)VEGFはBBB透過性の複数の態様に影響する
BBB透過性は、タイトジャンクションタンパク質の発現又は局在の変化、内皮細胞からの周皮細胞の解離、星状細胞の喪失、並びにBBBトランスポーター及び排出ポンプの活性変化を含む多くの変化を特徴とする場合がある。VEGF又は生理食塩水の注入から45分後又は4時間後にマウスの脳を採取し、BBB透過性に対するVEGFの潜在的な影響について分析した。
最初のスクリーニングとしてBBB完全性に関わる重要遺伝子の発現を測定した。Macdonaldら著、J.Neurosci.Methods誌、第174巻(第2号)、219~226頁(2008年)。興味深いことに、これらの結果は、図4aに示されているように、Slc2a1(GLUT-1、グルコーストランスポーター)及びSlc6a8(CRT、クレアチニントランスポーター)などのBBBトランスポーターの増加、及びTjp2(ZO-2)及びCldn5(クローディン5)などのタイトジャンクション構成要素の減少を含む、いくつかの遺伝子の発現が変化することを示している。
VEGF注入から45分、90分、及び4時間で健常マウスから脳を採取した後、凍結し、薄切して、BBBの完全性についての重要な指標について染色した。透過電子顕微鏡観察(TEM)を用いてVEGF処理後の脳血管の形態を試験した。代表的な画像は、対照動物では、通常、基底膜で隔てられて、周皮細胞が内皮細胞に隣接して存在していたことを示している(図4b)。対照的に、VEGF注入から15分では、多くの血管はわずかに拡張しており、且つ、隣接する周皮細胞を欠いているようであった。45分では大半の血管はもはや拡張しておらず、VEGF処理後4時間では血管と周皮細胞の両方が正常に見えた(図4b)。
この発見をさらに試験するために、GBM担持マウスからの凍結試料をVEGF注入から45分後に採取した。BBBの完全性を視覚化するために以前に使用された血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)に対する抗体を使用して、周皮細胞を染色した。Chang et al.,Nat.Med.,23(4)(2017)。図4cに示されているように、抗CD31抗体で染色された周皮細胞で覆われた血管の長さを定量した。対照動物ではPDGFRβ染色がCD31血管の外側に観察された(91.1%の被覆率)。しかしながら、TEMの観察結果と一致して、周皮細胞被覆率は15分では低下しており(57.6%)、45分後(86.2%)及び4時間後(83.0%)では正常に戻った。腫瘍領域では血管は大きさ及び形態について非常に多様であり、周皮細胞による被覆率が低かった(30.8%)。驚くべきことに、VEGFでの前処理は、腫瘍領域内での周皮細胞被覆率(28.9%)に影響しなかった。
星状細胞のマーカーであるGFAPについても試験した。図4dに示されているように、処理群間で星状細胞の形態の明確な変化はなかった。腫瘍領域には星状細胞がほとんど存在しなかった。内皮細胞タイトジャンクションの構成要素であるクローディン5は、内皮細胞マーカーCD31と共染色された。Ben-Zvi et al.,Nature,509(7501),507-511(2014)。図4eに示されているように、これらの結果から、対照マウスにおけるクローディン5とCD31の高い共局在度(95%超)が示され、この共局在度はVEGF投与の45分後(55.8%)と4時間後(42.7%)で低下した。この結果は図4aに示されているCldn5の下方制御を示した遺伝子発現データに合致している。また、クローディン5のウエスタンブロットから、VEGF投与後にタンパク質発現が低下する傾向が示された(図11a~11b)。興味深いことに、対照処理マウスでは腫瘍領域にタイトジャンクションが多く存在すること(80.0%)が示された。VEGF前処理後に、タイトジャンクションの存在は48.5%まで低下した。図11bに示されているように、BBB上の主要な排出ポンプであるP-糖タンパク質も全ての時点において血管の膜上に均一に現れた。Kim et al.,J.Clin.Invest.,126(5),1-17(2016)。
(v)LipoDoxと組み合わされたVEGFは神経膠芽腫のマウスモデルの生存期間を延長する
VEGF前処理と組み合わせてLipoDoxを使用して、マウス神経膠芽腫モデルにおいて神経膠芽腫の治療実験を図5aに略述されているように実施した。LipoDoxの循環半減期が長いこと(44.72時間)、及びVEGF誘導BBB開放が一過性であることを考慮すると、(VEGF前処理に加えて)LipoDox投与の後に複数用量のVEGF(MV)を投与することで、複数回のLipoDoxの脳送達の機会が得られると予期された。MVマウスには最初にVEGFを投与し、次にその最初のVEGF投与の45分後にLipoDoxを投与した。このLipoDox投与から3時間後と6時間後に2回用量のVEGFによってこれらのMVマウスをさらに処理した。MV+VEGFマウスにおけるLipoDoxの生体内分布は図12Bに示されている。VEGF又は対照で前処理されたマウスにおけるドキソルビシンの生体内分布を比較として図12Aに示した。
ルシフェラーゼを発現するように遺伝子組換えされたヒト神経膠芽腫細胞株DBTRG-05MGを使用して、図13a~cに示されているようにBALB/c NUマウスの異種移植神経膠芽腫モデルを形成した。図5aも参照されたい。腫瘍進行を毎週のIVISによってモニターし、VEGF+対照(V+対照)、対照+LipoDox(対照+LD)、VEGF+LipoDox(V+LD)、又は複数回のVEGF+LipoDox(MV+LD)のいずれかの処置を受けるようにマウスをランダムに割り当てた。シャムマウスには腫瘍細胞ではなく生理食塩水が頭蓋内注入され、これらのマウスはMV+LD処置過程を受けた。LipoDoxは5mg/kgの用量で投与され、21日目、25日目、及び28日目に処置が行われた。
VEGF前処理後にGBM異種移植片へのLipoDoxの送達を定量した。驚くべきことに、VEGF前処理後に腫瘍内のLipoDoxがその対側部位よりも7.8倍多いことがこれらの結果から示されている(図5b)。この量は対照で前処理されたマウスでの腫瘍内濃度よりも13.6倍高かった。対照+LDマウスの腫瘍領域で検出された濃度は、その対側部位で検出された濃度よりもわずかに高い(2.3倍)だけであったことが重要であり、腫瘍自体のEPR効果が低いことを示唆している。シャム注入はLipoDox蓄積に影響しないこと(図14a)、及びVEGFの単回注入(V+LD)でもMV+LDよりも低い程度であったが腫瘍内のLipoDoxが増加すること(図14b)もわかった。
図5cに示されているカプラン・マイヤー生存曲線は対照+LDを受けたマウスの生存期間の中央値(60日)と比較して、V+LD群の生存期間の中央値(67日、p=0.0271)及びMV+LD群の生存期間の中央値(79日、p=0.0042)が改善していたを示している。V+LDとMV+LDとの間の差も有意であった(p=0.0483)。この実験の最中に死んだシャム操作マウスはいなかった。
図5dに示される毎週の腫瘍輝度試験により、処置開始前(21日目)には群間に差が無いことが分かる。しかしながら、処置完了から2週間後(42日目)には、V+LD処置を受けたマウス及びMV+LD処置を受けたマウスは、対照+LDマウスよりも有意に小さい腫瘍を有した(それぞれp=0.0425及びp=0.0417)。同じ傾向は49日目及び56日目でも継続した。63日目までMV+LD処置マウスはその他の群よりも有意に小さい腫瘍を有した(対照+LDに対してp=0.0029、V+LDに対してp=0.01273)。各群のマウスの代表的IVIS像が対応するグラフの上に示されている。45日目に対照+LD処理群及びV+LD処理群からそれぞれ5匹のマウスを無作為に選別し、図5eに示されているようにMRIにより腫瘍容積を確定した。MRI技術員が盲検状態でスライス画像を撮影し、分析した。これらの結果から、V+LD処置マウスの腫瘍は対照+LD処置マウスよりも総容積が有意に小さく(p=0.0358)、且つ、より少ないMRIスライスの中にしか存在しなかった(p=0.0303)ことが確認され、このことは腫瘍進行の遅延を示している。腫瘍の輪郭が描かれている代表的スライス画像が示されている。図15aはIVIS発光とMRIにより確定した腫瘍容積との相関が高い(r=0.7884)ことを示している。マウスの体重が図15bに示されている。
60~70日目の間に死んだ動物からの試料を染色用に選別した。V+対照の試料が参照のために含まれているが、これらの動物は60日よりも前に死んだものであり、直接的に比較できない。図5fは、Ki67腫瘍細胞の減少が、対照+LD処置マウスと比較してV+LD(p=0.0061)処置マウス及びMV+LD処置マウス(p=0.0001)で有意であること、及びMV+LD処置マウスとV+LD処置マウスとの間で有意であること(p=0.0208)を示している。DAPI染色により決定された腫瘍の全体的細胞密度(図5g)もMV+LD処理群でわずかに低下した(対照+LDに対してp=0.0478)。V+対照処置マウスは、おそらく早い時点での試料採取のため、細胞増殖の低下を示している。
VEGFが脈管形成の強力な刺激因子であることを考慮して、イソレクチンで切片を染色し、腫瘍内の血管を数えた。実際にはMV+LD処理群のマウスの腫瘍は対照+LD群のマウスよりも血管が少なかった(p=0.02)(図5h)。ミクログリア/マクロファージマーカーであるIba1の免疫組織化学染色によって、図5iに示されているように、様々な処理群の腫瘍中のIba1細胞数に有意な差が無いことが明らかになった。V+対照処置マウスは、これもまたおそらく早い時点での分析のため、免疫浸潤の減少を示した。Iba1染色された腫瘍の画像例が図15cに示されている。
さらに、保持されている間質液がVEGFによって増加する可能性があるので、HE染色像を使用して腫瘍内の浮腫領域及び出血領域のImageJを用いて特定した。HE染色像の例が図15dに示されている。興味深いことに、V+/MV+LD処置動物は対照処置動物よりも浮腫が少ない傾向があった(図5j)。出血に関しては群間で有意な差が無かったが、個々の動物の間で大きなばらつきがあった(図5k)。
VEGFが他の悪性腫瘍に対して作用するかどうかを調べるため、膵管腺がん(PDAC)モデルにおいて対照+/MV+LDプロトコルに続いてLipoDox取込みを定量し(図16a~図16c)、正常膵臓及び腫瘍異種移植片による取込みを比較した。これらの結果(図16d)は。PDAC異種移植片がシャム操作膵臓よりも約3倍多いLipoDoxを取り込んだことを示している。このことは、LipoDoxの全体的な濃度は依然として低いが、本モデルには何らかのEPR効果が存在することを示唆している。VEGF前処理の追加は、正常膵臓又はPDAC異種移植片のいずれにおいても取込みを変化させなかった。このことは、この用量のVEGFが末梢器官の血管透過性の変化を引き起こさないことを示す以前のデータに合致する。LipoDoxの蓄積に対するVEGF前処理の効果を皮下に移植されたGBM異種移植片において試験した。図17a~図17cに示されているように、MV+LD処理プロトコル後の腫瘍ではLipoDoxの蓄積の有意な変化は見られなかった。対照処理腫瘍におけるLipoDox濃度は、これらの腫瘍はBBBによって保護されていないため、皮下異種移植片では同所異種移植片と比べて25.8倍高いことは特筆に値する。
(vi)低用量VEGF静脈内投与は安全である
VEGFの投与は脳の区画化を破綻させ、結果として脳の構成要素が体循環中へ漏出することが示唆された。脳への治療薬の送達を促進するためにVEGFを使用することの潜在的な副作用が試験される。本研究ではカルシウム結合タンパク質S100β(S100β)をマーカーとして使用した。血液中のこのタンパク質の存在が脳損傷及びBBB完全性の喪失の末梢マーカーとしての役割を果たすことが以前に示されている。Marchi et al.,Clin.Chim.Acta.,342(1-2),1-12(2004);及びPlog et al.,J Neurosci,35(2),518-526(2015)。図6aに示されている結果には、本明細書に開示される低用量又は10倍高用量のVEGFでは、VEGFの投与から2時間後のマウス血漿中S100βに有意な変化が無いことが示されている。BBB透過性を上昇させる神経炎症の強力な誘導因子であるリポ多糖(LPS)は陽性対照として使用され、投与2時間後に血漿中S100βの有意な増加を引き起こした。
ヒトでの治験において、VEGFが注入時に一過性の全身性低血圧を引き起こすことがわかった。Henry et al.,Circulation,107(10),1359-1365(2003);及びEppler et al.,Clin.Pharmacol.Ther.,72(1),20-32(2002)。この所与のボーラス用量が同じ効果を引き起こし得るか試験するため、マウスにVEGFを低用量又は10倍高用量で注入し、BP-2000シリーズII血圧分析システムを使用して30分毎に血圧を測定した。図6bに示される結果には、VEGF投与後の4時間にわたって顕著な血圧の変化が無いことが示されている。同様に、VEGFを投与されたブタでは対照と比較して明確な血圧の変化が見られなかったが(図6c)、おそらく麻酔及び手術に起因して、両方の群において血圧低下の全体的な傾向が見られた。興味深いことに、VEGFを投与された1匹のブタで急速だが一過性のフラッシング反応が観察されたが、これはヒトにおいても認められている現象である。Henry et al.,Am.Heart J.,142(5),872-880(2001)。
内在性VEGFは脳損傷後の神経炎症を誘導することが知られている。AArgaw et al.J.Clin.Invest.2012,122(7),2454-2468(2012)。しかしながら、VEGF受容体が脳内皮細胞の脳に面している側である反管腔側上に多数存在することを考慮すると、外因性の静脈内VEGFの脳に対する効果は明確ではない。Kaya et al.,J.Cereb.Blood Flow Metab.,25(9),1111-1118(2005)。したがって、静脈内VEGFも神経炎症を誘導する可能性についての見識を得るため、リアルタイム定量的PCRを用いて神経炎症に関連するいくつかの主要サイトカインの遺伝子発現の変化をスクリーニングした。Skelly et al.,PLoS One,8(7),1-20(2013);及びMonnet-Tschudi et al.,Curr.Protoc.Toxicol.,No.SUPPL.50,1-20(2011)。本研究で使用されたVEGF及びLipoDox処理群の投与の4時間後又は24時間後に動物に灌流を行った。凍結損傷及びLPSを陽性対照として使用した。図6dに示される結果には、VEGF投与によって多数の神経炎症関連遺伝子の発現が中程度に上昇したことが示されている。Tnfa、Ccl2、及びCxcl1の発現はVEGF処理から4時間後では変化がなかったが、処理から24時間後では中程度に上昇することがわかった。急性炎症マーカーであるIl6の遺伝子発現は複数回のVEGFを利用した処理群では4時間後に上昇したが、単回VEGFを利用した処理群では上昇しなかった。Il1b又はGfapの発現が著しく上昇した処理群は無かったが、これらはいずれも凍結損傷又はLPSによって上昇した。
他の炎症マーカーの遺伝子発現データが図18aに示されており、使用した全てのプライマーのリストが上の表1に示されている。VEGF投与の45分後の測定値は対照と比較してこれらの類似した遺伝子の増加が無いことを示しており、このことは炎症が遅延型応答、おそらくはBBB透過性の上昇に対する応答になっている可能性があることを示している(図18b)。また、肝臓機能及び腎臓機能についての血液化学の結果は処理後に有害な変化が無いことを示した(図19)。これらの結果は所与の用量のVEGFが安全であると思われることを表している。
考察
VEGFは20nm~100nmのナノ粒子及びLipoDox(直径が約95nm)などの分子のBBB透過の向上において特に効果的であり、全てがVEGF前処理後に脳内に容易に進入したことは興味深いことである。LipoDoxは現在では乳房及び卵巣の固形腫瘍の治療に使用されているが、GBMの治療には認可されていない。LipoDoxは、PEG修飾によりこの薬剤分子が排出から保護されて、この薬剤分子が脳組織内をより容易にすることが可能になる場合があるため、P-糖タンパク質を発現する腫瘍を有する患者ではドキソルビシンよりも効果的な場合がある。Nance et al.,Sci Transl Med,4(149),149ra119(2012)。
ガドリニウム造影強調に基づくMRI分析により、ブタにおいて、マウスで観察された結果と非常に類似した結果(SN比の約4倍の増加)が示された。これはMRIが生体の脳のリアルタイムシグナルを測定しており、一方で他の方法が死後の組織採取、薬剤抽出、及び定量に依存していることを考慮すると有望な結果である。MRIは同じ動物の事前事後比較も可能にし、動物間の内在的不均一性に対抗する。
結果はVEGF投与後すぐに脳内でTjp2(ZO-2)及びCldn5の遺伝子発現が低下することを本明細書において示している。VEGF後の脳切片の染色によってもこれらの発見は確認された。腫瘍モデルは増殖が遅い(処置無しで生存期間の中央値が50~60日)にもかかわらず、タイトジャンクションの内皮細胞との高度の共局在を示し、BBTBが比較的に完全であることを示した。実際、健常対側と比較して、腫瘍内には、わずかに2.3倍のLipoDox進入したことがわかった。同じ腫瘍細胞株を使用して皮下GBM異種移植片を構築した場合、腫瘍内のLipoDox濃度は同所異種移植片での濃度よりも25倍高く、BBBが脳への効果的な薬剤送達を妨げている程度を明瞭に示している。
内在性VEGFは星状細胞の活性化を調節し、次にBBB完全性を仲介することが知られている。このことは、星状細胞から分泌されるVEGFがBBB透過性を局所的に上昇させる、虚血などの損傷に対する応答時に特に関連している。Argaw et al.、2012。しかしながら、分析を行った条件下では星状細胞の形態又はGfap遺伝子発現に変化は観察されなかった。これまでの研究から、外因性VEGFは、単離された脳毛細管及びin situのラットの脳において、P-糖タンパク質活性を調節可能であることがわかっている。Hawkins et al.,J.Neurosci.2010,30(4),1417-1425(2010)。所与の用量のVEGFの投与後、P-糖タンパク質遺伝子(Abcb1a)発現又は凍結切片中のP-糖タンパク質染色の形態的外観(図11b)に変化は見られなかった。しかしながら、腫瘍異種移植片では血管の周皮細胞被覆率が既に健康な脳と比較して有意に低下しており、VEGF前処理によってさらに低下することがなかった。したがって、静脈内VEGFは脳内皮細胞タイトジャンクションの一過性分解によってBBB透過性を上昇させると考えられるが、他の機構が関与する可能性もある。
安全性に関して静脈内VEGFは、他の点では健康なマウスの脳において多数の神経炎症関連遺伝子の発現を高めることがわかった。神経炎症は、局所的なサイトカイン生産、及びより多くの外部産生されたサイトカインが脳内へ入ることを可能にするBBBサイトカイントランスポーターの活性上昇が関わる、複雑で多角的な過程である。Obermeier et al.,Nat Med,19(12),1584-1596(2013)。
まとめると、本明細書において報告された結果は、低用量の静脈内VEGFがナノ医療治療薬の脳への送達を改善したことを示している。最も緊急性のある解決されていない臨床的必要性である脳腫瘍治療の改善を可能にするため、本発見は臨床に技術移転される可能性がある。
他の実施形態
本明細書中で開示された特徴の全てを任意の組合せで組み合わせてもよい。本明細書中に開示されたそれぞれの特徴は、同様、同等、又は類似の目的に適う代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別途明記されない限り、開示されたそれぞれの特徴は包括的な一連の同等又は類似の特徴のうちの一例に過ぎない。
上記の説明から当量者は本発明の基本的特徴を容易に確かめることができ、且つ、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために本発明の主旨と範囲から逸脱せずに本発明に様々な変更及び改変を加えることができる。したがって、他の実施形態も本特許請求の範囲内である。
均等物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書において説明及び例示されてきたが、当業者は本明細書に記載される機能を実施するために、及び/又は本明細書に記載される結果及び/又は本明細書に記載される利点のうちの1又は複数を得るために様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変更及び/又は改変のそれぞれが本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされるだろう。より一般的に言うと、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成は例示的であるとされ、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成は本発明の教示が使用される特定の用途又は特定の複数の用途に依存することを容易に理解するだろう。当業者は本明細書に記載される特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を認識し、又は日常的な実験法に過ぎない方法を用いてそのような均等物を確かめることができるだろう。したがって、前記の実施形態は単なる例として示されており、本発明の実施形態が具体的に説明及び請求されたように実施される以外にも添付されている請求項及びそれらの均等物の範囲内で実施され得ることを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は本明細書に記載されるそれぞれ個々の特徴、系、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象としている。また、2種類以上のそのような特徴、系、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組合せは、そのような特徴、系、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しなければ、本開示の本発明の範囲の中に含まれる。
本明細書において定義及び使用される場合の全ての定義は、辞書的定義、参照により取り込まれる文書内での定義、及び/又はそれらの定義された用語の通常の意味よりも優先されることを理解されたい。
本明細書に開示される全ての参照文献、特許、及び特許出願は各々が引用されている内容に関して参照により取り込まれ、いくつかの事例ではその文献の全体が包含される場合もある。
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は反対の趣旨が明確に示されていなければ「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「及び/又は」という言葉はそのように結合させられた要素のうちの「どちらか又は両方」、すなわち要素がある例では結合して存在し、他の例では分離して存在することを意味すると理解されるべきである。「及び/又は」を用いて挙げられた複数の要素は同様に解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合させられたそれらの要素のうちの「1又は複数」と解釈されるべきである。場合によっては「及び/又は」によって具体的に特定される要素以外に他の要素が具体的に特定された要素に関連しているにしても関連していないにしても存在する可能性がある。したがって、非限定的な例としては「A及び/又はB」に対する参照は「含む(comprising)」などの開放系の言葉と併用されると1つの実施形態ではAのみ(場合によってはB以外の要素を含む)を意味することがあり、別の実施形態ではBのみ(場合によってはA以外の要素を含む)を意味することがあり、さらに別の実施形態ではAとBの両方(場合によっては他の要素を含む)を意味すること等がある。
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「又は」は上で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的であると理解され、すなわち多数又は一連の要素、及び場合によっては挙げられていない追加の要素のうちの少なくとも1つを含むだけでなく、それらのうちの2つ以上を含むこともあると理解されるものとする。「ただ1つ(only one of)」又は「1つのみ(exactly one of)」などの明確に反対の趣旨を示す用語、又は特許請求の範囲の中で「から成る(consisting of)」と使用される場合のそれらの用語は、多数又は一連の要素のうちの1つの要素のみを含むことを意味する。一般に、本明細書において使用される「又は/若しくは」という用語は、「どちらか(either)」、「1つ(one of)」、「ただ1つ(only one of)」、又は「1つのみ(exactly one of)」などの除外を意味する用語が前置されると除外的選択(すなわち、「一方又は他方であって両方ではない」)を意味するとだけ理解されるものとする。特許請求の範囲の中で使用されるときに「から基本的に成る(consisting essentially of)」は特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、1又は複数の要素からなるリストを参照するときの「少なくとも1つ」という言葉はその要素のリスト中の要素のうちのいずれか1又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであり、その要素リスト内で具体的に挙げられたそれぞれ個々の要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、その要素リスト内の要素の任意の組合せを除外するものでもない。この定義は、場合によっては「少なくとも1つ」という言葉が言及している要素リスト内で具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連していても関連していなくても、存在する可能性があることも許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同じく「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同じく「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、ある実施形態では少なくとも1つのA、場合によっては2つ以上のAを含み、Bが無いこと(場合によってはB以外の要素を含む)を意味することがあり、別の実施形態では少なくとも1つのB、場合によっては2つ以上のBを含み、Aが無いこと(場合によってはA以外の要素を含む)を意味することがあり、さらに別の実施形態では少なくとも1つのA、場合によっては2つ以上のA、及び少なくとも1つのB、場合によっては2つ以上のB(場合によっては他の要素を含む)のこと等を意味し得る。
反対の趣旨が明確に示されていない限り、2つ以上の多数のステップ又は動作を含む本明細書において権利請求されているいずれの方法においても、その方法のステップ又は動作の順序は、その方法のステップ又は動作が列挙されている順序に必ずしも限定されないことも理解されたい。

Claims (25)

  1. (i)投与を必要とする対象に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ポリペプチドの1回目の用量を全身投与すること、
    (ii)ステップ(i)の15分~3時間後に前記対象に有効量の治療薬を全身投与すること、及び
    (iii)ステップ(ii)の2~24時間後に前記対象に前記VEGFポリペプチドの2回目の用量を全身投与すること
    を含む、対象の脳に治療薬を送達する方法。
  2. ステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量が、ステップ(ii)の前記治療薬の投与の2~8時間後に投与される(所望によりステップ(ii)の前記治療薬の投与の3~5時間後に投与される)、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が、
    (iv)ステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量の投与の2~24時間後、好ましくはステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量の投与の2~12時間後、より好ましくはステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量の投与の3~5時間後に、前記VEGFポリペプチドの3回目の用量を投与すること
    をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 前記治療薬が、ステップ(i)の前記VEGFポリペプチドの前記1回目の用量の投与の約45分後に前記対象に投与される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量が、ステップ(ii)の前記治療薬の投与の約3時間後に前記対象に投与される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ステップ(iv)の前記VEGFポリペプチドの前記3回目の用量が、ステップ(iii)の前記VEGFポリペプチドの前記2回目の用量の投与の約3時間後に前記対象に投与される、請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記VEGFポリペプチドの前記1回目の用量、前記2回目の用量、及び/又は前記3回目の用量が約50~200ng/kgである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記VEGFポリペプチドの前記1回目の用量、前記2回目の用量、及び/又は前記3回目の用量が約100~150ng/kgである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記VEGFポリペプチドがVEGF-Aポリペプチドである(所望により前記VEGF-AポリペプチドがヒトVEGF165Aである)、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記治療薬がリポソーム若しくはナノ粒子に被包されているか、又はリポソーム若しくはナノ粒子に結合している、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記リポソーム又は前記ナノ粒子がPEG化されている、請求項10に記載の方法。
  12. 前記リポソーム又は前記ナノ粒子が約20~500nm(所望により約20~300nm)のソリッドコア直径を有する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
  13. 前記治療薬が医薬組成物として製剤されており、薬学的に許容可能な担体が前記医薬組成物にさらに含まれている、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記治療薬が遊離型である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記治療薬が小分子、タンパク質、又は核酸である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記治療薬が水溶性であり、且つ、500ダルトンを超える分子量を有しており、所望により前記治療薬がドキソルビシンである、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記対象が脳疾患を有することが疑われているヒト患者、脳疾患のリスクがあるヒト患者、又は脳疾患のヒト患者であり、所望により前記脳疾患が脳腫瘍、脳卒中、精神神経障害、及び神経変性疾患からなる群から選択される、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の方法。
  18. VEGFの前記1回目の用量及び/又はVEGFの前記2回目の用量が静脈内注射又は動脈内注射により投与される、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
  19. (i)投与を必要とする対象に約50~200ng/kgの用量で血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ポリペプチドを全身投与すること、
    (ii)ステップ(i)の15分~3時間後に前記対象に治療薬を投与すること
    を含む、対象の脳に治療薬を送達する方法。
  20. 前記治療薬が、ステップ(i)の約45分後に前記対象に投与される、請求項19に記載の方法。
  21. ステップ(i)の前記VEGFポリペプチドの前記用量が約100~150ng/kgである、請求項19又は請求項20に記載の方法。
  22. 前記治療薬がリポソームに被包されているか、又はリポソームに結合している、請求項19~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記治療薬がドキソルビシンである、請求項22に記載の方法。
  24. 前記対象が脳疾患を有することが疑われているヒト患者、脳疾患のリスクがあるヒト患者、又は脳疾患のヒト患者であり、所望により前記脳疾患が脳腫瘍、脳卒中、精神神経障害、及び神経変性疾患からなる群から選択される、請求項19~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記VEGFが静脈内注射又は動脈内注射により投与される、請求項19~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
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