(発明の詳細な説明)
種々の態様において、カソードガス収集体積部内に1つ以上のバッフル構造を含む溶融炭酸塩型燃料電池構成が提供される。バッフル構造は、バッフルの不存在下で存在するであろう非ブロック化フロー断面積に対し、カソードガス収集体積部の非ブロック化フロー断面積を10%~80%、例えば、50%~80%低下させることができる。この利点は、種々のカソード集電体構造、例えば、カソード表面の開口率が50%以下になるカソード集電体構造で達成できる。かかるカソード集電体構造は、典型的には、板状構造がカソード表面と接触する構造に対応する。高CO2利用率の条件下で溶融炭酸塩型燃料電池を作動する場合、バッフルの存在は、増加した輸率および/または増加した動作電圧を提供するという形態において予期されない利点を提供し得ることが発見された。これらの利点は、高めたCO2利用率の条件下で生じる代替イオン輸送量を低下または最小化することで部分的に達成できる。
1つ以上のバッフル構造は、単一の燃料電池の境界を規定するセパレータプレート(例えば、バイポーラ(bipolar)プレート)と接触できる。1つ以上のバッフル構造は、所望によりセパレータプレートに装着することができる。バッフル構造は、セパレータプレートと接触するが、カソードのカソード表面と接触していないバッフル構造に基づいて、カソード集電体と区別できる。代わりに、少なくともいくらかの開口体積(open volume)がバッフル構造とカソード表面の間に残っている。カソード集電体によって覆われたカソード表面の部分について、残っている開口体積は、バッフル構造とカソード集電体との間にあることができることに留意されたい。
1つ以上のバッフル構造は、酸化条件下で650℃で安定であり、電解質からの腐食に耐性があり、カソード集電体およびセパレータプレート(例えば、バイポーラプレート)材料と互換性のある熱膨張係数を有するいずれの材料で構成されていてもよい。ステンレス鋼は、バッフル構造に適した材料の例である。
図3は、複数のバッフル330を含むカソードガス収集体積部320の側面図310および上面図370の例を示す。図3の側面図310において、カソード入力ガス325は、カソード340とセパレータプレート350(例えば、バイポーラプレート)との間の分離またはギャップによって規定されるカソードガス収集体積部320に導入される。もちろん、カソード340の対向側は、電解質341に隣接している。カソード集電体360は、カソードガス収集体積部320に対応するギャップを維持するための構造的支持を提供する。構造的支持は、カソード集電体360の部分322によって提供される。図3の側面図310に示すごとく、部分322は固体部分(solid portions)に対応するが、種々の態様において、カソード集電体によって提供される構造的支持は、構造による非ブロック化フロー断面積を低下させるまたは低下を最小化する中空構造またはシェル構造によって提供し得る。図3の上面図370に示されるごとく、バッフル330は、カソードガス収集体積部320内のカソード入力ガス325のフロー方向におよそ直交するように配向できる。したがって、バッフル330は、カソード入力ガスのフロー方向に沿ったカソードガス収集体積部320の非ブロック化フロー断面積の量を低下させる。
いくつかの態様において、1つ以上のバッフル構造を含むカソードガス収集体積部は、カソードを介する実質的な拡散を必要とすることなくCO2が効果的に到達できるカソード表面のパーセンテージに基づいて特徴付けることができる。1つのタイプの特徴付けは、カソードの開口率に基づくことができる。これは、カソード集電体と接触していないカソード表面の部分に対応する。
通常の溶融炭酸塩型燃料のカソード表面の開口率の典型値は約33%である。図1は、通常の構成で用いられるならば、33%の開口率を生じるカソード集電体構成の例を示す。図1において、集電体の表面110は、開口部115の規則的なパターンを含む板状表面に対応する。表面110の開口部115は、表面を打ち抜いて、表面110の平面下に延在するループ構造120を形成することによって形成された。通常の構成(または、配置;configuration)において、表面110はカソード表面と接触して位置し、一方、ループ構造120は、カソード入力ガスを受け入れるための体積を規定するために用いられるバイポーラプレート、セパレータプレート、または他のプレート構造を支持するために上方に延在する。プレート構造は、ループ構造の下縁部(bottom edge)122でループ構造120と接触するであろう。図1において、開口部120間の間隔140は、開口部120の長さ124とおよそ同じ距離である。図1において、開口部間の間隔160は、開口部120の幅126のおよそ半分である。これらの相対的な距離の関係に基づいて、このタイプの繰り返しパターンは、約33%の開口率を生じる。長さ124の典型値は約2.0mmであることができるが、幅126の典型値はおよそ6.0mmであることができる。図1の長方形のパターンが説明のための便利なパターンを表し、他のいずれの便利なタイプのパターンおよび/または開口部の不規則な配置も用いることができることを表すことに留意されたい。
いくつかの態様において、カソード集電体の板状構造は、カソード表面よりむしろ、セパレータプレートと接触できることに留意されたい。かかる態様において、カソード表面の開口率は、典型的には、50%を超えるであろう。かかる態様において、バッフル構造は、カソード集電体に装着し得る。かかるバッフル構造は、構造的支持を提供し、電気的接触を行うためにカソード表面に接触するカソード集電体の部分とは対照的に、バッフルとカソード表面との間に開口体積が残っている構造として識別できる。
さらにもう一つのタイプの特徴付けは、バッフル構造によって引き起こされる圧力降下に基づくことができる。一般的に、カソードガス収集体積部についての非ブロック化フロー断面積の低下の結果、カソードを横切る圧力降下を増加させることができる。溶融炭酸塩型燃料電池は周囲圧力に近い圧力でしばしば作動するため、カソードガス収集体積部を横切るわずか数kPaの圧力降下が、燃料電池の適切な作動に対して潜在的に重要になることができる。例えば、図9は、カソード入力ガスの速度に対するカソードガス収集体積部を横切る圧力降下の例を示す。図9に示される例において、カソードガス収集体積部の高さは、0.58インチ(約1.5cm)である。カソードガス収集体積部の長さは27インチ(68.5cm)である。かくして、示される圧力降下は、カソードの長さ(すなわち、カソードガス収集体積部の長さ)68.5cmを通過した後のガスの圧力降下に対応する。図9に示されるごとく、圧力降下は、低い速度で1kPa未満であるが、カソード入力ガスの速度増加と共に放物線状の増加を有する。なお、発電用の通常の溶融炭酸塩型燃料電池の作動について、カソード入力ガス流速の典型値はおよそ5m/秒以下であることが留意される。対照的に、炭素捕捉のために燃料電池を作動させる場合、カソード入力ガス流速は、5m/秒~15m/秒であることができ、またはそれ以上である可能性がある。カソード入力ガス流速についてのかかるより高値にて、図9の圧力降下は、2kPa~5kPaのオーダーにあることができ、フローチャネルの10%のみがブロックされる。カソードガス収集体積部への1つ以上のバッフル構造の導入は、非ブロック化フロー断面積を低下させることができ、圧力降下曲線において対応する増加を生じる。結果として、適切なバッフル構造の選択は、カソードガス収集体積部を横切る圧力降下の量と、燃料電池作動における他の改善との平衡を含むことができる。特に、カソード入力ガスフローの十分な圧力は、カソードガス収集体積部の非ブロック化フロー断面積の低下によって引き起こされる圧力降下に対応するために利用可能でなければならない。
本明細書において記載するバッフル構造は、MCFCを作動してCO2利用率を高める場合、例えば、0.97以下または0.95以下の輸率を含む作動条件で燃料電池を作動する場合にさらなる利点を提供できる。CO2利用率を高めるためにMCFCを使用することの1つの困難は、燃料電池の動作に必要な1つ以上の反応物が少量存在するならば、燃料電池の動作が潜在的に動力学的に制限され得ることである。例えば、CO2含有量が4.0体積%以下のカソード入力ストリームを用いる場合、75%以上のCO2利用率の達成は、1.0体積%以下のカソード出口濃度に対応する。しかしながら、1.0体積%以下のカソード出口濃度は、CO2がカソード全体に均一に分布していることを必ずしも意味しない。代わりに、濃度は典型的には、アノードおよびカソードのフローパターンのごとき種々の要因により、カソード内で変動する。CO2濃度の変動は、実質的に1.0体積%未満のCO2濃度が存在するカソードの部分を生じることができる。
溶融炭酸塩型燃料電池の通常の作動条件は、典型的に、代替イオン輸送量の低下、最小化、または非存在である条件に対応する。代替イオン輸送量は、燃料電池の輸率に基づいて定量化できる。輸率は、水酸化物イオンおよび/または他のイオンとは対照的に、炭酸イオンに対応する溶融炭酸塩電解質を横切って輸送されるイオンの割合(fraction)として定義される。輸率を決定するための都合よい方法は、a)カソード入口-対-カソード出口で測定されたCO2濃度の変化と、b)燃料電池によって生成される電流密度を達成するために必要な炭酸イオン輸送の量とを比較することに基づくことができる。輸率のこの定義は、アノードからカソードへのCO2の逆輸送が最小であることを前提としていることが留意される。かかる逆輸送は、本明細書に記載の作動条件では最小であると考えられる。CO2濃度については、カソード入力ストリームおよび/またはカソード出力ストリームをサンプリングでき、サンプルは、CO2含有量を決定するためにガスクロマトグラフに転送される。燃料電池の平均電流密度は、いずれかの都合よい方法で測定できる。
通常の作動条件下において、輸率は、0.98以上のごとき、および/または代替イオン輸送を実質的に有さないのごとき、1.0に比較的近くできる。0.98以上の輸率は、電解質を横切って輸送されるイオン電荷の98%以上が炭酸イオンに対応することを意味する。水酸化物イオンは-1の電荷を有するが、炭酸イオンは-2の電荷を有し、したがって、1つの炭酸イオンの輸送と同じ電荷輸率を生じるには、2つの水酸化物イオンを電解質を横切って輸送する必要がある。
通常の作動条件とは対照的に、0.95以下(または開口率の増加および/または非ブロック化フロー断面積の低下で作動する場合は0.97以下)の輸率での溶融炭酸塩燃料電池の作動は、たとえ、燃料電池によって生成される電流密度の一部が炭酸イオン以外のイオンの輸送によるものであったとしても、達成される炭酸イオン輸送の有効量を増大させることができる。輸率が0.97以下または0.95以下の燃料電池を作動させるためには、燃料電池のカソード内でCO2の枯渇(depletion)が発生する必要がある。カソード内のCO2のかかる枯渇は局所化される傾向があることが発見された。その結果、燃料電池のカソード内の多数の領域は、通常の作動に十分なCO2を依然として有することができる。これらの領域は、炭素捕捉(capture)のごとき電解質を横切って輸送するのに望ましいさらなるCO2を含む。しかしながら、かかる領域のCO2は、通常の条件下で作動する場合に、典型的には電解質を横切って輸送されない。輸率が0.97以下または0.95以下の作動条件を選択すると、十分なCO2を含む領域を用いて、さらなるCO2を輸送でき、一方、枯渇した領域は代替イオン輸送に基づいて作動できる。これは、カソード入力ストリームから捕捉されるCO2量の実際的な限界を増大させることができる。
電解質を横切る代替イオンの輸送の利点の1つは、たとえ、十分な数のCO2分子が速度論的に利用できないとしても、燃料電池が作動し続けることができることである。これは、たとえ、カソードに存在するCO2量が通常の燃料電池の作動には不十分であると通常考えられていたとしても、さらなるCO2をカソードからアノードに移動させることができる。これにより、燃料電池は、測定されたCO2利用率(utilization)が100%に近くなり、計算されたCO2利用率(電流密度に基づく)が測定されたCO2利用率よりも少なくとも3%より大きく、または少なくとも5%より大きく、少なくとも10%より大きく、または少なくとも20%より大きくなることができる。代替イオン輸送は、燃料電池が100%を超える計算されたCO2利用率に対応するであろう電流密度で作動することを可能にできることが留意される。
代替イオンの輸送は、燃料電池が目標電流密度を維持することを可能にできるが、電解質を横切る代替イオンの輸送も、溶融炭酸塩燃料電池の寿命を低下または最小化しかねないことがさらに発見された。かくして、燃料電池の寿命におけるこの損失の軽減が望ましい。カソード表面の開口率の増加、および/または非ブロック化フロー断面積の低下は、CO2捕捉を高めつつ、代替イオン輸送量を低下または最小化することができることが予期せぬことに発見された。
いくつかの態様において、高めたCO2捕捉は、0.97以下、または0.95以下、または0.93以下、または0.90以下の輸率のごとき輸率の量に基づいて定義できる。輸率が0.97以下の作動条件の維持の結果、典型的には、2.0体積%以下、または1.5体積%以下、または1.0体積%以下のカソード出力ストリーム中のCO2濃度を生じる。カソード出力ストリーム内の高CO2濃度では、典型的には、CO2の不十分な局所的枯渇は存在せず、より低い輸率値を生じる。
また、高めたCO2捕捉の存在は、他の要因によっても示されるが、かかる他の要因自体は、典型的には、高めたCO2捕捉を示すのに十分な条件ではない。例えば、より低いCO2濃度のカソード入力ストリームを用いる場合、高めたCO2捕捉は、いくつかの態様において、70%以上、または75%以上、または80%以上、例えば、95%までまたは場合によってはさらにより高いCO2利用率に対応することができる。より低濃度のCO2源の例は、5.0体積%以下または4.0体積%以下、例えば、1.5体積%以下または場合によってはより低いCO2を含むカソード入力ストリームを生じるCO2源に対応できる。天然(natural)ガスタービンからの排出は、5.0体積%以下または4.0体積%以下のCO2含有量をしばしば有するCO2含有ストリームの例である。加えてまたは別法として、高めたCO2捕捉は、溶融炭酸塩型燃料電池を用いて、60mA/cm2以上、または80mA/cm2以上、または100mA/cm2以上、または120mA/cm2以上、または150mA/cm2以上、または200mA/cm2以上、例えば、最大300mA/cm2までまたは場合によってはさらに高くのごとき、実質的な量の電流密度を生成する作動条件に対応することができる。代替イオン輸送の反応経路は、炭酸イオンを用いる反応経路よりも低い理論電圧を有するので、代替イオン輸送は、燃料電池の作動電圧の低下によっても示すこともできることが留意される。
通常、溶融炭酸塩型燃料電池のカソード排出中のCO2濃度は、5体積%以上のCO2、10体積%以上のCO2、または場合によってはさらに高くごとき比較的高い値に維持される。加えて、溶融炭酸塩型燃料電池は、典型的には、70%以下のCO2利用率値で作動される。これらの条件のいずれかが存在する場合、溶融炭酸塩電解質を横切る電荷の輸送の主要メカニズムは、炭酸イオンの輸送である。かかる通常条件下において、電解質を横切る代替イオン(例えば、水酸化物イオン)の輸送が生じるということが可能であるが、代替イオン輸送量は最小限であり、2%以下の電流密度(または同等に0.98以上の輸率)に対応する。
輸率の観点から作動条件を説明する代わりに、測定されたCO2利用率と、平均電流密度に基づいて「計算された」CO2利用率に基づいて作動条件を説明できる。この説明において、測定されたCO2利用率は、カソード入力ストリームから除去されるCO2量に対応する。これは、例えば、ガスクロマトグラフィーを用いて、カソード入力ストリームおよびカソード出力ストリーム中のCO2濃度を測定することによって決定できる。また、これは、実際のCO2利用率、または単にCO2利用率ということができる。この説明において、計算されたCO2利用率は、燃料電池によって生成されるすべての電流密度が電解質を横切るCO3
2-イオンの輸送(すなわち、CO2に基づくイオンの輸送)に基づいて生成されるならば生じるCO2利用率として定義される。測定されたCO2利用率と計算されたCO2利用率の差を個別に用いて、代替イオン輸送量を特徴付けることができ、および/またはこれらの値を用いて、前記のごとく輸率を計算できる。
いくつかの態様において、溶融炭酸塩型燃料電池の作動に適したいずれの便利なタイプの電解質も用いることができる。多数の通常のMCFCは、62モル%の炭酸リチウムと38モル%の炭酸カリウムの共融(eutectic)混合物(62%Li2CO3/38%K2CO3)、または52モル%の炭酸リチウムと48モル%炭酸ナトリウムの共融混合物(52%Li2CO3/48%Na2CO3)のごとき共融炭酸混合物を炭酸塩電解質として用いる。また、40モル%の炭酸リチウムと60モル%の炭酸カリウムの共融混合物(40%Li2CO3/60%K2CO3)のごとき他の共融混合物も利用できる。炭酸塩の共融混合物は、種々の理由で電解質として便利であることができるが、炭酸塩の非共融混合物も適当であることもできる。一般的に、かかる非共融混合物は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、および/または炭酸カリウムの種々の組合せを含むことができる。所望により、他のアルカリ炭酸塩(炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)のごとき、または炭酸バリウム、炭酸ビスマス、炭酸ランタン、または炭酸タンタルのごとき他のタイプの金属炭酸塩のごとき、他の金属炭酸塩のより少量を添加剤として電解質に含めることができる。
定義
開口率:カソード表面(カソード集電体に隣接する)の開口率は、カソード集電体と接触していないカソード表面のパーセンテージとして定義される。図2は、カソード集電体の板状表面と接触するカソード表面について開口率を表すために用いることができる繰り返し単位(すなわち、ユニットセル)の例を示す。図2の繰り返し単位の例は、図1に示される構造を表すために用いることができる繰り返しパターン(ユニットセル)に対応する。図2において、濃い領域は、カソード集電体がカソード表面と接触する領域に対応し、一方、明るい領域は、ガスがカソード表面とカソード集電体との間を通過できる領域に対応する。
開口率を決定するための計算例として、図2の距離126は、3.0に設定でき、距離266は0.75に設定でき、距離124は1.0に設定でき、距離244は0.5に設定できる。双方の距離244を加算すると、図1からの距離140(1.5)の値が得られることが留意される。同様に、双方の距離266を一緒に加算すると、図1からの距離160(1.0)の値が得られる。図2の距離に基づき、図2に示される構成の開口率210は、33%である。これは、例えば、開口率210の面積が3.0×1.0=3.0であり、全繰り返し単位の面積が(0.75+3.0+0.75)×(0.5+1.0+0.5)=9.0であることに注目することによって決定できる。かくして、開口率のパーセンテージは3.0/9.0、すなわち、33%である。図2の距離は標準化され、したがって、任意の長さの単位になることが留意される。
非ブロック化フロー断面積:種々の態様において、カソード集電体構造は、カソードの表面と燃料電池の端部に対応するセパレータプレート(例えば、バイポーラプレート)との間の距離またはギャップを維持するための構造的支持を提供できる。カソードとセパレータプレートの間のこのギャップは、カソード入力ガスを受け入れることができるカソードガス収集体積部に対応する。非ブロック化フロー断面積は、カソードガス収集体積部内のカソード入力ガスのフロー方向に基づいて定義できる。
この説明において、フロー方向は、カソードガス入口とカソードガス出口との間の平均経路に対応する。カソードガス収集体積部の中心軸は、フロー方向におよそ平行なカソードガス収集体積部の幾何学的中心を通る線として定義される。フローの断面積は、中心軸に垂直な断面積に基づくフロー方向に沿ったカソードガス収集体積部の平均断面積に対応する。カソードガス収集体積部は、典型的には、平行六面体に対応するため、中心軸は直線に対応することが留意される。しかしながら、もう一つのタイプの形状を有するカソードガス収集体積部について、中心軸は潜在的に曲線に対応できる。
フローの断面積は、ブロック化フローの断面積と非ブロック化フロー断面積の双方を潜在的に含むことができる。潜在的なブロッキング構造の例として、限定されるものではないが、バッフル構造および/またはカソード集電体構造が挙げることができる。ブロック化フローの断面積は、中心軸に平行な線がカソードガス収集体積部内の固体構造と交差するフロー断面積の部分(パーセンテージ)として定義される。非ブロック化フロー断面積は、かかる平行線がカソードガス収集体積部内の固体構造と交差しないフローの断面積の部分として定義される。
また、種々の態様において、1つ以上のバッフル構造をカソードガス収集体積部内に含むことができる。これらのバッフル構造は構造的支持を提供せず、したがって、カソード集電体の一部ではない。しかしながら、バッフル構造は、さらなるブロック化フローの断面積を表す。かくして、バッフル構造の存在は、カソード集電体のみが存在するならば「非ブロック化」領域であるものに対し、非ブロック化フロー断面積を低下させる。この説明において、バッフルの存在による非ブロック化フロー断面積の低下量は、バッフルの有無での非ブロック化フロー断面積の差として定義される。
バッフルの存在による非ブロック化フロー断面積の低下量は、10%~80%であることができる。いくつかの態様において、低下量は、10%~50%、または25%~50%、または10%~80%、または25%~80%、または50%~80%であることができる。典型的なカソード集電体構造は、いずれのバッフルも存在することなく、いくらかのブロック化フローの断面積を生じることが留意される。いくつかのカソード集電体構造によるブロック化フローの断面積は、10%のオーダーであることができる。バッフル構造による非ブロック化フロー断面積の低下量は、燃料電池内のカソード集電体構造の存在によるいずれかの低下に加えられる。
通常、図1に示す構造のごときカソード集電体構造は、板状表面110がカソード表面と接触するように配向されるであろう。種々の態様において、通常の構成を用いる代わりに、カソード集電体(例えば、図1に示される構造)は、ループ構造120の下縁部122がカソード表面と接触し、一方、板状表面110がセパレータプレートと接触するように配向できる。このタイプの構成は、45%以上、50%以上、または60%以上、例えば、90%までまたは場合によってはさらに高いカソード表面の開口率を潜時的に提供できる。また、バッフル構造は、50%を超えるカソード表面の開口率を持つかかる構造に効果的であることができるが、カソード表面の開口率が50%未満である構成に対し、利益量が低下し得る。
図4は、このタイプの構成の例を示し、ループ構造120の下縁部122は、カソード表面730と接触する。図4に示すごとく、カソード表面との接触点としてループ構造120の下縁部122を有することは、カソード表面上の開口率を実質的に増加させることができる。同様に、平均カソードガス側面(または、横方向;lateral)拡散長は、図4と同様の構成によって低下または最小化できる。しかしながら、カソード表面と集電体との間の電気的接触のより限定された性質のために、平均接触領域拡散長を増加させることができる。一例として、図1に示されるカソード集電体は、ループ構造120の下縁部122がカソード表面730と接触する構成に用いることができる。また、図4は、カソード表面との電気的接触を改善するための図4に示される構成におけるカソード集電体と共に用いることができる所望のオープンメッシュ構造750を示す。
代替イオン輸送での溶融炭酸塩型燃料の作動条件
種々の態様において、溶融炭酸塩燃料電池(例えば、燃料電池スタックの一部としてのセル)の作動条件は、0.97以下の輸率に対応するように選択でき、それにより、セルに炭酸イオンと電解質を横切る少なくとも1つのタイプの代替イオンの双方を輸送させる。輸率に加えて、溶融炭酸塩型燃料電池が代替イオンの輸送で作動していることを示すことができる作動条件には、限定されるものではないが、カソード入力ストリームのCO2濃度、カソードにおけるCO2利用率、燃料電池の電流密度、カソードを横切る電圧降下、アノードを横切る電圧降下、およびカソード入力ストリーム中のO2濃度が含まれる。加えて、アノード入力ストリームおよびアノードにおける燃料利用率は、一般的に所望の電流密度を提供するように選択できる。
一般的には、代替イオン輸送を引き起こすために、十分に高い電流密度を提供するために燃料電池を作動しつつ、カソードの少なくとも一部のCO2濃度は十分に低いことが必要である。カソード内の十分に低いCO2濃度は、典型的には、カソード入力フロー中の低CO2濃度、高CO2利用率、および/または高平均電流密度のいくつかの組合せに対応する。しかしながら、かかる条件だけでは、0.97以下または0.95以下の輸率を示すのに十分ではない。
例えば、カソード開口率がおよそ33%の溶融炭酸塩型燃料電池は、CO2カソード入口濃度が19体積%、CO2利用率が75%、平均電流密度が160mA/cm2で作動された。これらの条件は、計算されたCO2利用率と測定されたCO2利用率との1%未満の差に対応していた。かくして、実質的な代替イオン輸送/輸率の0.97以下または0.95以下の存在は、高CO2利用率および高平均電流密度の存在から単純に推測することはできない。
もう一つの例として、カソード開口率が50%~60%の溶融炭酸塩型燃料電池を、CO2カソード入口濃度4.0体積%、CO2利用率89%、電流密度100mA/cm2で作動させた。これらの条件は、少なくとも0.97の輸率に対応した。かくして、0.95以下の輸率/実質的な代替イオン輸送の存在は、カソード入力ストリーム中の低CO2濃度と組み合わせた高CO2利用率の存在から単純に推測することはできない。
さらにもう一つの例として、カソード開口率が50%~60%の間の溶融炭酸塩型燃料電池を、CO2カソード入口濃度13体積%、CO2利用率68%、および電流密度100mA/cm2で作動させた。これらの条件は、少なくとも0.98の輸率に対応した。
この説明において、電解質を横切って代替イオンを輸送するためのMCFCの作動は、最小量を超える代替イオンが輸送されるようにMCFCを作動させることとして定義される。少量の代替イオンが、種々の通常の条件下でMCFC電解質を横切って輸送されることが可能である。通常の条件下でのかかる代替イオン輸送は、0.98以上の輸率に対応でき、これは、燃料電池の電流密度の2.0%未満に対応する代替イオンの輸送に対応する。
この説明において、代替イオン輸送を引き起こすためのMCFCの作動は、0.95以下の輸率でMCFCを作動させることとして定義され、5.0%以上の電流密度(または5.0%以上の計算されたCO2利用率)は、代替イオンの輸送に基づく電流密度、あるいは10%以上、または20%以上、例えば、35%までまたは場合によってはさらに高いものに対応する。いくつかの態様において、増加した開口率および/または低下した非ブロック化フロー断面積での作動は、さもなければ0.95以下の輸率を生じるであろう条件下で代替イオン輸送量を低下または最小化できることが留意される。かくして、増加した開口率および/または低下した非ブロックフロー断面積での作動により、CO2捕捉/実質的な代替イオン輸送を高めたいくつかの作動条件は、0.97以下の輸率に対応し得る。
この説明において、実質的な代替イオン輸送を引き起こすためのMCFCの作動(すなわち、0.95以下または0.97以下の輸率で、開口率の増加および/または非ブロック化フロー断面積の低下での作動)を発電に適したアノードとカソードと間の電圧降下でMCFCを作動することに対応するように、さらに定義する。溶融炭酸塩型燃料電池における反応の電気化学的電位差の合計は約1.04Vである。実際的な考慮により、MCFCは典型的には、0.7V付近または約0.8Vの電圧で電流を生成するように作動する。これは、およそ0.34Vのカソード、電解質、およびアノードを横切る複合(combined)電圧降下に対応する。安定な作動を維持するために、カソード、電解質およびアノードを横切る複合電圧降下を約0.5V未満にでき、その結果、燃料電池によって生成される電流は、0.55V以上、または0.6V以上の電圧である。
アノードに関して、実質的な代替イオン輸送で作動するための1つの条件は、実質的な代替イオン輸送が発生する領域において、8.0体積%以上または10体積%以上のH2濃度を有することであることができる。その態様に依存して、これは、アノード入口付近の領域、カソード出口付近の領域、またはそれらの組合せに対応できる。一般的に、アノードの領域のH2濃度が低すぎると、実質的な代替イオン輸送を生成するための不十分な駆動力になるであろう。
また、アノードの適切な条件は、アノードにH2、改質可能燃料、またはそれらの組合せを提供すること、および20%~80%の範囲にある燃料利用率を含めた、所望の電流密度を生成するいずれかの便利な燃料利用率で作動することを含むことができる。いくつかの態様において、これは、60%以上または70%以上、例えば、85%までまたは場合によってはさらに高い燃料利用率のごとき、通常の燃料利用量に対応できる。他の態様において、これは、55%以下、または50%以下、または40%以下、例えば、20%以下または場合によってはさらに低い燃料利用率のごとき、H2の高めた含有量および/またはH2とCO(すなわち、合成ガス)の高めた組合せ含有量をアノード出力ストリームに提供するように選択された燃料利用率に対応できる。アノード出力ストリーム中のH2含有量、および/またはアノード出力ストリーム中のH2とCOの組合せ含有量は、所望の電流密度の生成を可能にするのに十分であることができる。いくつかの態様において、アノード出力ストリーム中のH2含有量は、3.0体積%以上、または5.0体積%以上、または8.0体積%以上、例えば、最大15体積%または場合によってはさらに高いことができる。加えてまたは別法として、アノード出力ストリーム中のH2とCOの組合せ(combined)量は、4.0体積%以上、または6.0体積%以上、または10体積%以上、例えば、20体積%までまたは場合によってはさらに高いことができる。所望により、燃料電池が低い燃料利用率で作動される場合、アノード出力ストリーム中のH2含有量は、10体積%~25体積%のH2含有量のごとき、より高範囲にあることができる。かかる態様において、アノード出力ストリームの合成ガス含有量は、対応してより高くなることができ、例えば、15体積%~35体積%のH2とCOの組合せ含有量である。態様に依存して、アノードを作動して、生成される電気エネルギーの量を増加でき、生成される化学エネルギーの量を増加でき(すなわち、H2をアノード出力ストリーム中の利用可能な改質によって生成できる)、または代替イオン輸送を引き起こすための燃料電池の作動と互換性のあるいずれかの他の便利な戦略を用いて作動できる。
アノード中の十分なH2濃度を有することに加えて、カソード内の1つ以上の位置は、炭酸イオン輸送のより好ましい経路が容易に利用できないように、十分に低いCO2濃度を有する必要がある。いくつかの態様において、これは、2.0体積%以下、または1.0体積%以下、または0.8体積%以下のカソード出口ストリーム(すなわち、カソード排出)中のCO2濃度を有することに対応できる。カソード内の変動により、カソード排出中の2.0体積%以下(または1.0体積%以下、または0.8体積%以下)の平均濃度が、カソードの局所領域におけるさらにより低いCO2濃度に対応できることが留意される。例えば、クロスフロー構成において、アノード入口およびカソード出口に隣接する燃料電池のコーナーにおいて、CO2濃度は、アノード出口とカソード出口に隣接する同じ燃料電池のコーナーよりも低くなりかねない。CO2濃度の同様の局所的な変動は、並流(co-current)または向流構成(counter-current configuration)を有する燃料電池において生じることができる。
また、低濃度のCO2を有することに加えて、カソードの局所領域は、1.0体積%以上、または2.0体積%以上のO2を有することもできる。燃料電池において、O2を用いて、代替イオン輸送を可能にする水酸化物イオンを形成する。十分なO2が存在しないならば、炭酸イオン輸送と代替イオン輸送メカニズムの双方がO2の利用可能性(availability)に依存するため、燃料電池は作動しない。カソード入力ストリーム中のO2に関して、いくつかの態様において、これは、4.0体積%~15体積%、または6.0体積%~10体積%の酸素含有量に対応できる。
また、1.0体積%以上または2.0体積%以上のごとき、代替イオン輸送が生じるのに十分な量の水が存在すべきであることが観察されている。いずれの特定の理論に拘束されることなく、実質的な代替イオン輸送で作動させることを試みる場合にカソード中で水が利用可能でないならば、燃料電池は、十分な水が利用可能である代替イオン輸送によって観察される非活性化速度よりも非常に速い速度で劣化するようである。空気は一般的にO2源として用いられ、H2Oが燃焼中に生成される生成物の1つであるため、典型的には、カソード内で十分な量の水が利用可能であることが留意される。
高めたCO2捕捉のための溶融炭酸塩型燃料電池の作動中のカソードガスおよび/またはアノードガスの不均一な分布のために、溶融炭酸塩型燃料電池の1つ以上のコーナーおよび/または縁は、典型的には、代替イオン輸送の実質的により高い密度を有するであろうと考えられている。1つ以上のコーナーは、カソードのCO2濃度が平均よりも低い位置、またはアノードのH2濃度が平均よりも高い位置、またはそれらの組合せに対応できる。
この説明において、燃料電池は、電解質によって分離されたアノードとカソードを備えた単一のセルに対応できる。アノードとカソードは、入力ガスのフローを受け取り、電解質を横切る電荷を輸送して電気を生成するための各々のアノードとカソードの反応を促進できる。燃料電池スタックは、統合されたユニット内の複数のセルを表すことができる。燃料電池スタックは複数の燃料電池を含むことができるが、燃料電池は典型的には、並列に接続でき、それらが集合してより大きなサイズの単一の燃料電池を表すかのように(およそ)機能できる。入力フローが燃料電池スタックのアノードまたはカソードに送達される場合、燃料スタックは、スタック内の各セル間で入力フローを分割するためのフローチャネルと、個々のセルからの出力フローを組み合わせるためのフローチャネルとを含むことができる。この説明において、燃料電池アレイを用いて、直列、並列、または他のいずれかの都合よい方法(例えば、直列および並列の組合せにて)に配置された複数の燃料電池(例えば、複数の燃料電池スタック)をいうことができる。燃料電池アレイは、燃料電池および/または燃料電池スタックの1つ以上のステージを含むことができ、第1のステージからのアノード/カソード出力は、第2のステージのアノード/カソード入力として働き得る。燃料電池アレイのアノードは、アレイのカソードと同じ方法で接続する必要がないことが留意される。便宜上、燃料電池アレイの第1のアノードステージへの入力は、アレイのアノード入力といってもよく、燃料電池アレイの第1のカソードステージへの入力は、アレイのカソード入力といってもよい。同様に、最終的なアノード/カソードステージからの出力は、アレイからのアノード/カソード出力といってもよい。燃料電池スタックが別々の改質要素を含む態様において、アノード入力フローは、改質要素に関連する1つ以上のアノードに入るに先立ち、最初に改質要素を通過し得ることが留意される。
本明細書における燃料電池の使用への参照は、典型的には、個々の燃料電池から構成される「燃料電池スタック」を意味し、より一般的には、流体連通における1つ以上の燃料電池スタックの使用をいうことが理解されるであろう。個々の燃料電池要素(プレート)は、典型的には、「燃料電池スタック」と呼ばれる矩形配列に「積み重ね(stacked)」ることができる。また、改質要素のごとき、さらなるタイプの要素を燃料電池スタックに含めることができる。この燃料電池スタックは、典型的には、原料供給ストリーム(feed stream)を受け取り、個々の燃料電池要素のすべてに反応物を分配し、次いでこれらの各要素から生成物を収集できる。ユニットとして見る場合、作動中の燃料電池スタックは、多数(しばしば、数十または数百)の個々の燃料電池要素で構成されていたとしても、全体として捉えることができる。これらの個々の燃料電池要素は、典型的には、(反応物と生成物の濃度が同様であるため)同様の電圧を有することができ、要素が電気的に直列に接続されている場合、総電力出力は、すべてのセル要素における全電流の合計から生じることができる。また、スタックを直列配置(series arrangement)に配置して、高電圧を生成することができる。並列配置は電流を増大(boost)させることができる。所与の排出フローを処理するのに十分に大容量の燃料電池スタックが利用可能であるならば、本明細書に記載されたシステムおよび方法は、単一の溶融炭酸塩型燃料電池スタックで用いることができる。本発明の他の態様において、複数の燃料電池スタックが、種々の理由のために望ましいか、または必要とされ得る。
本発明の目的のために、特記されない限りは、「燃料電池」なる用語は、1つ以上の個々の燃料電池要素のセットから構成される燃料電池スタックへの参照も含むと理解されるべきであり、および/またはそのように定義され、個々の燃料電池要素について、燃料電池が実際に典型的に使用される方法であるため、単一の入力と出力が存在する。同様に、燃料電池(複数)なる用語は、特記しない限りは、複数の別々の燃料電池スタックを含むこともいい、および/またはそのように定義されると理解されるべきである。換言すれば、この文書内のすべての参照は、特記しない限りは、「燃料電池」としての燃料電池スタックの作動を互換的にいうことができる。例えば、商業規模の燃焼発電機によって生成される排出の体積(または、量)は、通常サイズの燃料電池(すなわち、単一スタック)によって処理するには余りにも大きすぎるかもしれない。全排出を処理するために、複数の燃料電池(すなわち、2つ以上の別々の燃料電池または燃料電池スタック)を並列に配置して、各燃料電池が燃焼排出の(およそ)等しい部分を処理できるようにできる。複数の燃料電池を用いることができるが、各燃料電池は、燃焼排出のその(およそ)等しい部分が与えられると、典型的には、一般的に同様の方法で作動できる。
溶融炭酸塩型燃料電池の作動例:カソードとアノードのクロスフロー配向
図5は、溶融炭酸塩型燃料電池スタックの一部の一般的な例を示す。図5に示されたスタックの部分は、燃料電池301に対応する。スタック内の隣接する燃料電池からおよび/またはスタック内の他の要素から燃料電池を隔離するために、燃料電池は、セパレータプレート310および311を含む。図5において、燃料電池301は、電解質342を含む電解質マトリックス340によって分離されたアノード330およびカソード350を含む。種々の態様において、カソード350は、二層(または多層)カソードに対応できる。アノード集電体320は、スタック内のアノード330と他のアノードとの間に電気的接触を提供し、一方、カソード集電体360は、燃料電池スタック内のカソード350と他のカソードとの間に同様の電気的接触を提供する。加えて、アノード集電体320は、アノード330からのガスの導入および排出を可能にし、一方、カソード集電体360は、カソード350からのガスの導入および排出を可能にする。
作動中、CO2は、O2と共にカソード集電体360に移る。CO2およびO2は、多孔質カソード350に拡散し、カソード350および電解質マトリックス340の境界付近のカソード界面領域(または、カソードインターフェース領域;cathode interface region)に移動する。カソード界面領域において、電解質342の一部がカソード350の孔に存在できる。CO2およびO2は、カソード界面領域付近/内で炭酸イオン(CO3
2-)に変換でき、次いで、これは、電流の生成を促進するために、電解質342を横切って(したがって、電解質マトリックス340を横切って)輸送できる。代替イオン輸送が生じている態様において、O2の一部は、電解質342での輸送のために、水酸化物イオンまたは過酸化物イオンのごとき代替イオンに変換できる。電解質342を横切って輸送された後、炭酸イオン(または代替イオン)は、電解質マトリックス340とアノード330の境界付近のアノード界面領域に到達できる。炭酸イオンは、H2の存在下でCO2とH2Oに戻し変換され、燃料電池によって生成される電流を形成するために用いられる電子を放出する。H2および/またはH2を形成するのに適した炭化水素は、アノード集電体320を介してアノード330に導入される。
溶融炭酸塩型燃料電池のアノード内のフロー方向は、カソード内のフロー方向に対していずれかの都合のよい方向を有することができる。1つのオプションは、クロスフロー構成を使用することであり得、その結果、アノード内のフロー方向は、カソード内のフロー方向に対しておよそ90°の角度になる。クロスフロー構成を用いると、アノード入口/出口のマニホールドおよび/または配管(piping)を、カソードの入口/出口のマニホールドおよび/または配管とは異なる側の燃料電池スタックに配置できるため、このタイプのフロー構成には実用的な利点がある。
図6は、燃料電池カソードおよび対応する燃料電池アノード内のフロー方向を示す矢印と共に燃料電池カソードの上面図の例を模式的に示している。図6において、矢印405は、カソード450内のフロー方向を示し、一方、矢印425は、アノード(図示せず)でのフロー方向を示す。
アノードとカソードのフローが相互におよそ90°にて方向付けされるため、アノードとカソードのフローのパターンは、カソードの種々の部分で異なる反応条件を有することに寄与できる。カソードの四隅の反応条件を考慮することにより、種々の条件を説明できる。図6の図において、本明細書に記載の反応条件は、75%以上(または80%以上)のCO2利用率で作動する燃料電池の反応条件と定性的に同様である。
コーナー482は、カソード入力フローとアノード入力フローの双方の入口点に近い燃料電池の部分に対応する。結果として、CO2(カソード内)およびH2(アノード内)の双方の濃度は、コーナー482において比較的高い。その高濃度に基づいて、コーナー482付近の燃料電池の部分は、電解質を横切る炭酸イオン以外のイオンの輸送が実質的になく、予想される条件下で作動できると期待される。
コーナー484は、カソード入力フローの入口点に近く、アノード出力フローの出口点に近い燃料電池の部分に対応する。コーナー484付近の位置において、燃料利用率に応じて、アノード中のH2の濃度低下のため、電流密度の量を制限し得る。しかしながら、電解質を横切って輸送されるいずれのイオンも実質的に炭酸イオンに対応するように、十分なCO2が存在するであろう。
コーナー486は、アノード出力フローの出口点に近く、カソード出力フローの出口点に近い燃料電池の部分に対応する。コーナー486付近の位置において、H2(アノードでの)とCO2(カソードでの)の双方の濃度低下のため、燃料電池反応についての低い駆動力により、電流はほとんどまたは全く期待されない。
コーナー488は、アノード入力フローの入口点に近く、カソード出力フローの出口点に近い燃料電池の部分に対応する。コーナー488付近の位置での水素の比較的高い利用可能性は、実質的電流密度を生じると予想される。しかしながら、比較的低い濃度のCO2のため、水酸化物イオンおよび/または他の代替イオンの実質的な量の輸送が生じることができる。その態様に依存して、実質的な量の代替イオン輸送は、計算されたCO2利用率を5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上増加させることができる。加えてまたは別法として、輸率は、0.97以下、または0.95以下、または0.90以下、または0.85以下、または0.80以下であることができる。電解質を横切る実質的な量の代替イオンの輸送は、コーナー488付近の位置にてより高い電流密度を一時的に維持することを可能にできる。しかしながら、代替イオンの輸送も、カソードおよび/またはアノード構造を劣化させかねなく、その結果、コーナー488付近の位置にて経時的に電流密度が低くなる(場合によっては全くなくなる)。低い代替イオン輸送量(例えば、0.96以上、または0.98以上の輸率)にて、寿命劣化の量はそれほど深刻ではないことが留意される。
燃料電池内の1つ以上の位置で代替イオン輸送が重要になる場合、燃料電池が急速に劣化し始めることが発見された。これは、1つ以上の位置が劣化し、いずれのさらなる電流密度も得られないためであると考えられる。領域(群)が所望の電流密度に寄与しなくなると、燃料電池の残りの位置は、燃料電池の全体的な(平均)電流密度を一定に維持するために、より高い電流密度で作動しなければならない。これにより、代替イオンの輸送領域が増大し、その結果、劣化し、最終的には稼働を停止しかねない。あるいは、燃料電池の一部の劣化の結果、セルからの総電流密度が低下しかねなく、これも望ましくない。増加させた開口率および/または低下した非ブロック化フロー断面積を持つ燃料電池の作動は、高めたCO2捕捉中に生じる代替イオン輸送量を低下させ、燃料電池のより長寿命を可能にできる。
アノードの入力と出力
種々の態様において、MCFCのアノード入力ストリームは、水素、メタンのごとき炭化水素、CおよびHとは異なるヘテロ原子を含み得る炭化水素化合物または炭化水素様化合物、あるいはそれらの組合せを含むことができる。水素/炭化水素/炭化水素様化合物の源は、燃料源ということができる。いくつかの態様において、アノードに供給されるメタン(または他の炭化水素、炭化水素または炭化水素様化合物)の大部分は、典型的には新鮮なメタンであることができる。本明細書において、新鮮なメタンのごとき新鮮な燃料は、もう一つの燃料電池プロセスからリサイクルされない燃料をいう。例えば、アノード出口ストリームからアノード入口に戻るリサイクルされたメタンは、「新鮮な」メタンとは考えられない場合があり、代わりに再生メタンとして記載できる。
用いられる燃料源は、燃料源の一部を用いてカソード入力にCO2含有ストリームを提供するタービンのごとき他の構成要素と共有できる。燃料源投入物(または、入力;input)は、水素を生成する改質セクションにおいて炭化水素(または炭化水素様)化合物を改質するのに適切な燃料に比例した水を含むことができる。例えば、メタンがH2を生成するための改質用の燃料投入物であるならば、水-対-燃料のモル比は、約1-対-1から約10-対-1、例えば、少なくとも約2-対-1であることができる。外部改質については4-対-1以上の比率が典型的であるが、内部改質についてはより低値が典型的である。H2が燃料源の一部である程度まで、アノードでのH2の酸化が、燃料の改質に用いることができるH2Oを生成する傾向があることができるため、いくつかの所望の態様において、燃料にさらなる水は必要とし得ない。また、燃料源は、所望により、燃料源に付随する成分を含むことができる(例えば、天然ガス供給物は、さらなる成分としていくらかの含有量のCO2を含むことができる)。例えば、天然ガス供給物は、さらなる成分として、CO2、N2、および/または他の不活性(貴)ガスを含むことができる。また、所望により、いくつかの態様において、燃料源はアノード排出のリサイクルされた部分からのCOのごときCOを含み得る。燃料電池構造体(または、アセンブリ;assembly)への燃料中のCOの追加的または代替的な潜在的な源は、燃料電池構造体に入ることに先立ち、燃料に対して行われる炭化水素燃料の水蒸気改質によって生成されるCOであることができる。
より一般的には、種々のタイプの燃料ストリームが、溶融炭酸塩型燃料電池のアノード用のアノード入力ストリームとして用いるのに適し得る。いくらかの燃料ストリームは、炭化水素および/またはCおよびHとは異なるヘテロ原子も含み得る炭化水素様化合物を含むストリームに対応できる。この説明において、特記しない限りは、MCFCアノードについての炭化水素を含む燃料ストリームへの参照は、かかる炭化水素様化合物を含む燃料ストリームを含むと定義される。炭化水素(炭化水素様化合物を含む)燃料ストリームの例には、天然ガス、C1~C4炭素化合物(例えば、メタンまたはエタン)を含むストリーム、および重質C5+炭化水素(炭化水素様化合物を含む)を含むストリーム、ならびにそれらの組合せが含まれる。アノード入力に用いるための潜在的な燃料ストリームのさらに他の追加的または代替的な例は、有機材料の自然(生物学的)分解から生成されるメタンのごときバイオガスタイプのストリームを含むことができる。
いくつかの態様において、溶融炭酸塩型燃料電池は、希釈剤化合物の存在のために低エネルギー含量で、天然ガスおよび/または炭化水素ストリームのごとき入力燃料ストリームを処理するために用いることができる。例えば、メタンおよび/または天然ガスのいくらかの源は、実質的な量のCO2または、窒素、アルゴン、ヘリウムのごとき他の不活性分子のいずれかを含むことができる源である。高めた量のCO2および/または不活性物質の存在により、源に基づく燃料ストリームのエネルギー含量を低下させることができる。燃焼反応(例えば、燃焼動力タービンへの動力供給)についての低エネルギー含量の燃料の使用は、困難性をもたらしかねない。しかしながら、溶融炭酸塩型燃料電池は、燃料電池の効率に関して衝撃の低下または最小化で低エネルギー含量の燃料源に基づいて電力を生成できる。さらなるガス量の存在は、燃料の温度を改質および/またはアノード反応のための温度に上げるためにさらなる熱を必要とすることができる。加えて、燃料電池アノード内の水性ガスシフト反応の平衡性により、さらなるCO2の存在は、アノード出力に存在するH2とCOの相対的な量に影響を与えかねない。しかしながら、そうでなければ、不活性化合物は、改質およびアノード反応に最小限の直接的な衝撃だけを有することができる。溶融炭酸塩型燃料電池の燃料ストリーム中のCO2および/または不活性化合物の量は、存在する場合に、少なくとも約1体積%、例えば、少なくとも約2体積%、または少なくとも約5体積%、または少なくとも約10体積%、または少なくとも約15体積%、または少なくとも約20体積%、または少なくとも約25体積%、または少なくとも約30体積%、または少なくとも約35体積%、または少なくとも約40体積%、または少なくとも約45体積%、または少なくとも約50体積%、または少なくとも約75体積%であることができる。加えてまたは別法として、溶融炭酸塩型燃料電池の燃料ストリーム中のCO2および/または不活性化合物の量は、約90体積%以下、例えば、約75体積%以下、または約60体積%以下、約50体積%以下、または約40体積%以下、または約35体積%以下であることができる。
アノード入力ストリームの潜在的な源のさらに他の例は、精製所および/または他の工業プロセス出力ストリームに対応できる。例えば、コークス化(または、コーキング、coking)は、重質化合物をより低沸点範囲に変換するための多数の精製所における一般的なプロセスである。コークス化は典型的には、COおよび種々のC1~C4炭化水素を含めた、室温でガスとなる種々の化合物を含むオフガスを生成する。このオフガスは、アノード入力ストリームの少なくとも一部として用いることができる。他の精製所のオフガスストリームは、クラッキングまたは他の精製所プロセス中に生成されるライトエンド(C1~C4)のごとき、アノード入力ストリームに含めるのに追加的または代替的に適することができる。さらに他の適切な精製ストリームは、H2および/または改質可能燃料化合物も含むCOまたはCO2を含有する精製ストリームを追加的または代替的に含むことができる。
アノード入力のさらに他の潜在的な源は、加えてまたは別法として、水分含有量が増加したストリームを含むことができる。例えば、エタノールプラント(またはもう一つのタイプの発酵プロセス)からのエタノール出力ストリームは、最終蒸留に先立ち実質的な部分のH2Oを含むことができる。かかるH2Oは典型的には、燃料電池の作動に最小限の衝撃だけを引き起こす。かくして、アルコール(または他の発酵生成物)と水との発酵混合物を、アノード入力ストリームの少なくとも一部として用いることができる。
バイオガスまたは消化ガスは、アノード入力についてのもう一つの追加的または代替的な潜在的な源である。バイオガスは主にメタンとCO2を含み、典型的には有機物の分解または消化によって生成される。嫌気性細菌は、有機物を消化してバイオガスを生成するために用い得る。硫黄含有化合物のごとき不純物は、アノード入力として用いるのに先立ちバイオガスから除去し得る。
MCFCアノードからの出力ストリームは、H2O、CO2、CO、およびH2を含むことができる。また、所望により、アノード出力ストリームは、さらなる出力成分として、未反応の燃料(例えば、H2またはCH4)または不活性化合物を供給原料(feed)に有することもできる。この出力ストリームを改質反応用の熱を提供するための燃料源として、またはセルを加熱するための燃焼燃料として用いる代わりに、アノード出力ストリームに対して1つ以上の分離を行って、CO2をH2またはCOのごときもう一つのプロセスへの入力として、潜在的な値を持つ成分から分離できる。H2および/またはCOは、化学合成用の合成ガス、化学反応用の水素源、および/または低下した温室効果ガス排出量を持つ燃料として用いることができる。
カソードの入力と出力
通常、溶融炭酸塩型燃料電池は、アノードに送達される燃料ストリーム中の燃料のいくらかの部分を消費しつつ、所望の負荷を引き出すことに基づいて作動できる。次いで、燃料電池の電圧は、負荷、アノードへの燃料入力、カソードに供給される空気とCO2、および燃料電池の内部抵抗によって決定できる。カソードへのCO2は、従来、アノード排出をカソード入力ストリームの少なくとも一部として用いることによって部分的に提供できる。対照的に、本発明は、アノード入力およびカソード入力のための別々の/異なる源を用いることができる。アノード入力フローとカソード入力フローとの組成の間のいずれかの直接的リンクを取り除くことにより、とりわけ、過剰な合成ガスを生成する、二酸化炭素の捕捉を改善する、および/または燃料電池の総効率(電気と化学力)を改善するためのごとき、燃料電池を作動するためのさらなるオプションが利用可能になる。
種々の態様において、MCFCを作動して、燃料電池の電解質を横切る代替イオン輸送を引き起こすことができる。代替イオン輸送を引き起こすために、カソード入力ストリームのCO2含有量は、5.0体積%以下、または4.0体積%以下、例えば、1.5体積%~5.0体積%、または1.5体積%~4.0体積%、または2.0体積%~5.0体積%、または2.0体積%~4.0体積%であることができる。
カソード入力フローとして用いるのに適したCO2含有ストリームの一例は、燃焼源からの出力または排出フローであることができる。燃焼源の例には、限定されるものではないが、天然ガスの燃焼、石炭の燃焼、および/または他の炭化水素タイプの燃料(生物由来燃料を含む)の燃焼に基づく源が含まれる。追加的または代替的な源には、他のタイプのボイラー、燃焼ヒーター、炉、および/またはもう一つの物質(例えば、水または空気)を加熱するために炭素含有燃料を燃焼させる他のタイプの装置が含まれる。
カソード入力ストリームの他の潜在的な源は、加えてまたは別法として、生物生成されたCO2の源を含むことができる。これには、例えば、エタノール生成中に生成されるCO2のごとき、生物由来化合物の処理中に生成されるCO2が含まれる。追加的または代替的な例は、リグノセルロースの燃焼のごとき生物生成燃料の燃焼によって生成されるCO2を含むことができる。さらに他の追加的または代替的な潜在的CO2源は、鉄鋼、セメント、および/または紙の製造のためにプラントによって生成されるCO2含有ストリームのごとき、種々の工業プロセスからの出力または排出ストリームに対応できる。
さらにもう一つの追加的または代替的な潜在的CO2源は、燃料電池からのCO2含有ストリームであることができる。燃料電池からのCO2含有ストリームは、異なる燃料電池からのカソード出力ストリーム、異なる燃料電池からのアノード出力ストリーム、燃料電池のカソード出力からカソード入力へのリサイクルストリーム、および/または、燃料電池のアノード出力からカソード入力へのリサイクルストリームに対応できる。例えば、通常の条件下でスタンドアロンモードで作動するMCFCは、少なくとも約5体積%のCO2濃度でカソード排出を生成できる。かかるCO2含有カソード排出は、本発明の一態様により作動するMCFCについてのカソード入力として用いることができる。より一般的には、カソード排出からCO2出力を生成する他のタイプの燃料電池、ならびに「燃焼」反応および/または燃焼発電機によって生成されない他のタイプのCO2含有ストリームを加えてまたは別法として用いることができる。所望により、好ましくは、もう一つの燃料電池からのCO2含有ストリームは、もう一つの溶融炭酸塩燃料電池からのものであることができる。例えば、カソードに関して直列に接続された溶融炭酸塩型燃料電池について、第1の溶融炭酸塩型燃料電池のカソードからの出力を、第2の溶融炭酸塩型燃料電池のカソードへの入力として用いることができる。
CO2に加えて、カソード入力ストリームは、カソード反応に必要な成分を提供するためにO2を含むことができる。いくらかのカソード入力ストリームは、成分として空気を有することに基づくことができる。例えば、燃焼排出ストリームは、空気の存在下で炭化水素燃料を燃焼させることによって形成できる。かかる燃焼排出ストリーム、または空気の含有に基づく酸素含有量を有するもう一つのタイプのカソード入力ストリームは、約20体積%以下、例えば、約15体積%以下、または約10体積%以下の酸素含有量を有することができる。加えてまたは別法として、カソード入力ストリームの酸素含有量は、少なくとも約4体積%、例えば、少なくとも約6体積%、または少なくとも約8体積%であることができる。より一般的には、カソード入力ストリームは、カソード反応を行うための適切な酸素含有量を有することができる。いくつかの態様において、これは、約5体積%~約15体積%、例えば、約7体積%~約9体積%の酸素含有量に対応できる。多数のタイプのカソード入力ストリームについて、CO2とO2の組合せ量は、入力ストリームの約21体積%未満、例えば、入力ストリームの約15体積%未満または入力ストリームの約10体積%未満に対応できる。酸素を含む気流は、低酸素含有量を有するCO2源と組み合わせることができる。例えば、石炭の燃焼によって生成される排出ストリームは、空気と混合してカソード入口ストリームを形成できる低酸素含有量を含み得る。
また、CO2とO2に加えて、カソード入力ストリームは、N2、H2O、および他の一般的な酸化剤(空気)成分のごとき不活性/非反応性種を含むこともできる。例えば、燃焼反応からの排出に由来するカソード入力について、空気が燃焼反応の酸化剤源の一部として用いられるならば、排出ガスは、N2、H2O、および空気中に存在する少量の他の化合物のごとき空気の典型的な成分を含むことができる。燃焼反応のための燃料源の性質に依存して、燃料源に基づいた燃焼後に存在するさらなる種は、1つ以上のH2O、窒素酸化物(NOx)および/または硫黄(SOx)、および燃料中に存在するおよび/または燃料中に存在する化合物の部分的または完全な燃焼生成物である他の化合物、例えば、COを含み得る。これらの種は、全体的なカソード活性を低下させ得るが、カソード触媒表面を汚染しない量で存在し得る。かかる性能の低下は許容でき得るし、またはカソード触媒と相互作用する種は公知の汚染物質除去技術により許容できるレベルまで低下し得る。
カソード入力ストリーム(例えば、燃焼排出に基づく入力カソードストリーム)に存在するO2量は、燃料電池におけるカソード反応に必要な酸素を提供するのに有利に十分であることができる。かくして、O2の体積パーセントは、有利には、排出中のCO2量の少なくとも0.5倍であることができる。所望により、要すれば、さらなる空気をカソード入力に加えて、カソード反応に十分な酸化剤を提供できる。いくつかの形態の空気が酸化剤として用いられる場合、カソード排出中のN2量は、少なくとも約78体積%、例えば、少なくとも約88体積%、および/または約95体積%以下であることができる。いくつかの態様において、カソード入力ストリームは、H2SまたはNH3のごとき一般的に汚染物質とみなされる化合物を追加的または代替的に含むことができる。他の態様において、カソード入力ストリームを清浄化して、かかる汚染物質の含有量を低下または最小化できる。
MCFCの作動に適した温度は、約450℃~約750℃、例えば、少なくとも約500℃であり得、例えば、入口温度は約550℃、出口温度は約625℃であり得る。カソードに入るのに先立ち、所望により、カソード入力ストリームに熱を加えるまたは熱を除去して、例えば、アノードについての燃料入力の再形成のごとき他のプロセスに熱を提供できる。例えば、カソード入力ストリームの源が燃焼排出ストリームであるならば、燃焼排出ストリームは、カソード入口の所望の温度よりも高い温度を有し得る。かかる態様において、カソード入力フローとして用いるのに先立ち、燃焼排出から熱を除去できる。あるいは、燃焼排出は、例えば、石炭焚きボイラーの湿式ガススクラバーの後に、非常に低温であることができ、その場合、燃焼排出は約100℃未満であることができる。あるいは、燃焼排出は、複合サイクルモードで作動されるガスタービンの排出からのものであることができ、このモードにおいて、蒸気を上昇させて、さらなる発電のための蒸気タービンを作動することによってガスを冷却できる。この場合、ガスは約50℃未満であることができる。所望より低温である燃焼排出に熱を加えることができる。
さらなる溶融炭酸塩型燃料電池の作動戦略
いくつかの態様において、代替イオン輸送を引き起こすためにMCFCを作動する場合、燃料電池のアノードは、およそ60%~80%の通常の燃料利用率値で作動できる。電力を生成することを試みる場合、比較的高い燃料利用率で燃料電池のアノードを作動することは、電気効率(すなわち、燃料電池によって消費される化学エネルギーの単位当たりの生成される電気エネルギー)を改善するために有益であることができる。
いくつかの態様において、アノード出力フロー中で提供されるH2量の増加のごとき他の利点を提供するために、燃料電池の電気効率を低下させることが有益であり得る。これは、例えば、さらなる改質を行う、および/またはもう一つの吸熱反応を行うことによって、燃料電池(または燃料電池スタック)で生成される過剰熱を消費することが望ましいならば有益であることができる。例えば、溶融炭酸塩型燃料電池は、合成ガスおよび/または水素の生成の増加を提供するように作動できる。吸熱改質反応を行うために必要な熱は、発電用のアノードにおける発熱電気化学反応によって提供できる。発熱燃料電池反応によって生成された熱を燃料電池から離れて輸送することを試みるよりむしろ、この過剰熱を、改質および/またはもう一つの吸熱反応のための熱源として原位置(in situ)で用いることができる。この結果、熱エネルギーをより効率的に用いることができる、および/またはさらなる外部または内部熱交換の必要性を低下させることができる。本質的に原位置でのこの効率的な熱エネルギーの生成および使用は、有利な作動条件を維持しつつ、システムの複雑さおよび構成要素を低減させることができる。いくつかの態様において、改質または他の吸熱反応の量は、典型的には先行技術に記載されている熱要件よりも有意に少ないよりむしろ、発熱反応によって生成される過剰熱の量に匹敵するか、またはそれよりも多い吸熱熱要件を有するように選択できる。
加えてまたは別法として、燃料電池は、アノード入口とアノード出口との間の温度差が正よりむしろ負になるように作動できる。かくして、アノード入口とアノード出口との間の温度上昇を有する代わりに、十分な量の改質および/または他の吸熱反応を行って、アノード出口からの出力ストリームをアノード入口温度よりも低くできる。さらに加えてまたは別法として、さらなる燃料を燃料電池および/または内部改質ステージ(または他の内部吸熱反応ステージ)のヒーターに供給して、アノード入力とアノード出力との間の温度差を、吸熱反応の相対的な需要と、電力を生成するためのカソード燃焼反応とアノード反応との組み合わせた発熱熱生成に基づき予想される差異より小さくできる。改質が吸熱反応として用いられる態様において、過剰燃料を改質するように燃料電池を作動することにより、熱交換および改質のためのシステムの複雑さを最小化しつつ、通常の燃料電池作動に対し増加した合成ガスおよび/または増加した水素の生成を可能にできる。次いで、さらなる合成ガスおよび/またはさらなる水素は、化学合成プロセスおよび/または「クリーン」燃料として用いるための水素の収集/再利用を含めた、種々の適用で用いることができる。
アノードでの発熱反応によって酸化された水素1モル当たりの生成される熱量は、改質反応によって生成される水素1モル当たりの消費される熱量よりも実質的に大きくなることができる。溶融炭酸塩型燃料電池における水素の正味の反応(H2+1/2O2=>H2O)は、水素分子の約-285kJ/モルの反応エンタルピーを有することができる。このエネルギーの少なくとも一部は、燃料電池内で電気エネルギーに変換できる。しかしながら、反応エンタルピーと燃料電池によって生成される電気エネルギーとの(およその)差は、燃料電池内で熱になることができる。あるいは、このエネルギー量は、燃料電池の理論的最大電圧と実際の電圧との差を掛けたセルの電流密度(単位面積当たりの電流)、または<電流密度>×(Vmax-Vact)として表すことができる。このエネルギー量は、燃料電池の「廃熱(waste heat)」として定義される。改質の例として、メタン(CH4+2H2O=>4H2+CO2)の改質エンタルピーは、メタンの約250kJ/モルまたは水素分子の約62kJ/モルであることができる。熱平衡の見地から、電気化学的に酸化された各水素分子は、改質によって1を超える水素分子を生成するのに十分な熱を生成できる。通常の構成において、この過剰熱の結果、アノード入口からアノード出口までの実質的な温度差を生じることができる。この過剰熱を燃料電池の温度を上げるために用いる代わりに、適合する量の改質反応を行うことによって過剰熱を消費できる。アノードで生成される過剰熱は、燃料電池での燃焼反応によって生成される過剰熱で補足することができる。より一般的には、過剰熱は、燃料電池のアノードで吸熱反応を行うことによって、および/または燃料電池と統合された吸熱反応ステージにおいて消費できる。
態様に依存して、改質および/または他の吸熱反応の量は、燃料電池の所望の熱比を達成するために、アノードで反応した水素量に対して選択できる。本明細書で用いた「熱比(thermal ratio)」は、燃料電池構造体内の発熱反応(アノードおよびカソードの双方での発熱反応を含む)によって生成される熱を、燃料電池構造体内で生じる改質反応の吸熱需要で割ったものとして定義される。数学的に表現すると、熱比(TH)=QEX/QEN(式中、QEXは発熱反応によって生成された熱の総和であり、QENは燃料電池内で生じる吸熱反応によって消費された熱の総和である)である。発熱反応によって生成される熱は、改質反応、水性ガスシフト反応、カソードでの燃焼反応(すなわち、燃料化合物の酸化)、および/またはセルでの電気化学反応によるいずれかの熱に対応できることが留意される。電気化学反応によって生成される熱は、電解質を横切る燃料電池反応の理想的電気化学ポテンシャルから燃料電池の実際の出力電圧を引いたものに基づいて計算できる。例えば、MCFCでの反応の理想的電気化学ポテンシャルは、セルで生じる正味の反応に基づいて約1.04Vであると考えられる。MCFCの作動中、セルは、典型的には、種々の損失のために1.04V未満の出力電圧を有することができる。例えば、一般的な出力/作動電圧は約0.7Vであることができる。生成熱は、セルの電気化学ポテンシャル(すなわち、約1.04V)から作動電圧を引いたものに等しくなることができる。例えば、セル内の電気化学反応によって生成される熱は、燃料電池で約0.7Vの出力電圧が達成される場合、約0.34Vになることができる。かくして、このシナリオにおいて、電気化学反応は、約0.7Vの電気と約0.34Vの熱エネルギーが生成される。かかる例において、約0.7Vの電気エネルギーはQEXの一部として含まれていない。換言すれば、熱エネルギーは電気エネルギーではない。
種々の態様において、熱比は、燃料電池スタック、燃料電池スタック内の個々の燃料電池、統合された改質ステージを備えた燃料電池スタック、統合された吸熱反応ステージを備えた燃料電池スタック、またはそれらの組合せのごときいずれかの便利な燃料電池構造について決定できる。また、熱比は、燃料電池または燃料電池スタック構造体のごとき、燃料電池スタック内の異なるユニットについて計算し得る。例えば、熱比は、燃料電池スタック内の燃料電池(または複数の燃料電池)について、熱統合の見地から統合される燃料電池(複数)に十分に近接して統合された改質ステージおよび/または統合された吸熱反応ステージ要素と共に燃料電池内で計算し得る。
熱統合の見地から、燃料電池スタックの特徴的な幅は、個々の燃料電池スタック要素の高さであることができる。別々の改質ステージおよび/または別々の吸熱反応ステージは、燃料電池とは異なるスタック内の高さを有することができることが留意される。かかるシナリオにおいて、燃料電池要素の高さを特徴的な高さとして用いることができる。この説明において、統合された吸熱反応ステージは、1つ以上の燃料電池と統合されたステージ熱(stage heat)として定義でき、そのため、統合された吸熱反応ステージは、燃料電池からの熱を改質のための熱源として用いることができる。かかる統合された吸熱反応ステージは、統合されたステージに熱を提供する燃料電池からのスタック要素の高さの10倍未満で配置されると定義できる。例えば、統合された吸熱反応ステージ(例えば、改質ステージ)は、熱統合されたいずれかの燃料電池からのスタック要素の高さの10倍未満、またはスタック要素の高さの8倍未満、スタック要素の高さの5倍未満、またはスタック要素の高さの3倍未満で配置できる。この説明において、燃料電池要素に隣接するスタック要素を表す統合された改質ステージおよび/または統合された吸熱反応ステージは、隣接する燃料電池要素から離れて約1スタック要素の高さ以下であると定義される。
約1.3以下、または約1.15以下、または約1.0以下、または約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85以下、または約0.80以下、または約0.75以下の熱比は、MCFC燃料電池の使用において典型的に求められる熱比よりも低くなることができる。本発明の態様において、合成ガスの生成、水素の生成、吸熱反応によるもう一つの生成物の生成、またはそれらの組合せを増加および/または最適化するために、熱比を低減できる。
本発明の種々の態様において、燃料電池の作動は、熱比に基づいて特徴付けることができる。燃料電池が所望の熱比を有するように作動される場合、溶融炭酸塩燃料電池は、約1.5以下、例えば、約1.3以下、または約1.15以下、または約1.0以下、または約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85以下、または約0.80以下、または約0.75以下の熱比を有するように作動できる。加えてまたは別法として、熱比は、少なくとも約0.25、または少なくとも約0.35、または少なくとも約0.45、または少なくとも約0.50であることができる。さらに加えてまたは別法として、いくつかの態様において、燃料電池は、約40℃以下、例えば、約20℃以下、または約10℃以下のアノード入力とアノード出力との間の温度上昇を有するように作動させることができる。依然としてさらに加えてまたは別法として、燃料電池は、アノード入口の温度よりも約10℃低くから約10℃高いアノード出口温度を有するように作動できる。まださらに加えてまたは別法として、燃料電池は、アノード出口温度よりも高い、例えば、少なくとも約5℃高い、または少なくとも約10℃高い、または少なくとも約20℃高い、または少なくとも約25℃高いアノード入口温度を有するように作動できる。依然としてさらに加えてまたは別法として、燃料電池は、アノード出口温度よりも約100℃以下、または約80℃以下、または約60℃以下、または約50℃以下、または約40℃以下、または約30℃以下、または約20℃以下だけ高いアノード入口温度を有するように作動できる。
1未満の熱比を持つ燃料電池の作動は、燃料電池を横切る温度降下を引き起こすことができる。いくつかの態様において、改質および/または他の吸熱反応の量は、アノード入口からアノード出口への温度降下が約100℃以下、例えば、約80℃以下、または約60℃以下、または約50℃以下、または約40℃以下、または約30℃以下、または約20℃以下であることができるように制限し得る。アノード入口からアノード出口への温度降下の制限は、例えば、アノード内の燃料の完全または実質的に完全な変換を可能にするのに十分な温度を維持するために有益であることができる。他の態様において、さらなる熱を(さらなる燃料の熱交換または燃焼によってのごとき)燃料電池に供給でき、吸熱反応により消費された熱と燃料電池に供給されるさらなる外部熱のバランスにより、アノード入口温度が、約100℃以下未満、例えば、約80℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約40℃以下、約30℃以下、約20℃以下未満だけアノード出口温度よりも高くなることができる。
改質量は、加えてまたは別法として、改質可能燃料の利用可能性に依存できる。例えば、燃料がH2のみで構成されているならば、H2はすでに改質されており、さらに改質できないため、改質は生じない。燃料電池による「合成ガス」の量は、アノード入力の合成ガスの低位発熱量(LHV)-対-アノード出力の合成ガスのLHVにおける差として定義できる。合成ガスで生成されたLHV(sg net)=(LHV(sg out)-LHV(sg in)) (式中、LHV(sg in)とLHV(sg out)は、各々、アノード入口における合成ガスとアノード出口ストリームまたはフローにおける合成ガスのLHVをいう)。実質的な量のH2を含む燃料を提供された燃料電池は、さらなる改質可能燃料を含むこととは対照的に、実質的な量のすでに改質されたH2を含むので、潜在的な合成ガス生成の量において制限できる。より低発熱量は、燃料成分の気相、十分に酸化された生成物(すなわち、気相のCO2およびH2O生成物)に対する燃料成分の燃焼のエンタルピーとして定義される。例えば、CO2はすでに十分に酸化されているため、アノード入力ストリームに存在するいずれのCO2もアノード入力の燃料含有量に寄与しない。この定義について、アノード燃料電池反応によりアノードにおいて生じる酸化量は、アノードにおける電気化学反応の一部としてのアノードにおけるH2の酸化として定義される。
低下した熱比を持つ燃料電池を作動させる方法の例は、燃料電池内の熱の発生と消費をバランスさせるため、および/または生成するよりも多い熱を消費するために、燃料の過剰改質を行う方法であることができる。改質可能燃料を改質してH2および/またはCOを形成することは吸熱プロセスであることができ、一方、アノードの電気化学的酸化反応およびカソードの燃焼反応は発熱であることができる。通常の燃料電池作動中、燃料電池作動のための供給成分を供給するために必要な改質量は、典型的には、アノード酸化反応によって生成される熱量よりも少ない熱を消費することができる。例えば、約70%または約75%の燃料利用率での通常の作動は、少なくとも約1.4以上、または1.5以上の熱比のごとき、実質的に1より大きい熱比を生成する。結果として、燃料電池についての出力ストリームは入力ストリームよりも高温になることができる。このタイプの通常の作動に代えて、アノードに関連する改質ステージで改質される燃料の量を増加することができる。例えば、さらなる燃料は、発熱燃料電池反応によって生成される熱が、改質で消費される熱と(およそ)バランスすることができ、および/または生成されるよりも多くの熱を消費できるように改質できる。この結果、発電のためにアノードで酸化される量に対して実質的に過剰な水素を生じることができ、約1.0以下、例えば、約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85または以下、または約0.80以下、または約0.75以下の熱比を生じることができる。
水素または合成ガスのいずれかを、化学エネルギー出力としてアノード排出から回収することができる。水素は、燃やすまたは燃焼させる場合に温室効果ガスを生成させることなく、クリーン燃料として用いることができる。代わりに、炭化水素(または炭化水素化合物)の改質によって生成された水素について、CO2はすでにアノードループに「捕捉」されている。加えて、水素は、種々の精製プロセスおよび/または他の合成プロセスにについて価値がある入力になることができる。また、合成ガスは、種々のプロセスの価値がある入力になることができる。燃料価値を有することに加えて、合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ合成および/またはメタノール合成プロセスの入力として合成ガスを用いることによってのごとく、他のより高価値の製品を生成するための原料として用いることができる。
いくつかの態様において、アノードおよび/またはアノードに関連する改質ステージに送達される入力ストリーム中の改質可能燃料の改質可能な水素含有量は、アノードで反応する水素の正味量よりも少なくとも約50%大きく、例えば、少なくとも約75%大きく、または少なくとも約100%大きくなることができる。加えてまたは別法として、アノードおよび/またはアノードに関連する改質ステージに送達される入力ストリーム中の燃料の改質可能な水素含有量は、アノードで反応する水素の正味量よりも少なくとも約50%大きく、例えば、少なくとも約75%大きく、または少なくとも約100%大きくなることができる。種々の態様において、燃料ストリーム中の改質可能燃料の改質可能な水素含有量-対-アノードにおいて反応した水素量の比は、少なくとも約1.5:1、または少なくとも約2.0:1、または少なくとも約2.5:1、または少なくとも約3.0:1であることができる。加えてまたは別法として、燃料ストリーム中の改質可能燃料の改質可能水素含有量-対-アノードで反応する水素の量の比は、約20:1以下、例えば、約15:1以下または約10:1以下であることができる。一態様において、アノード入口ストリーム中の改質可能な水素含有量の100%未満が水素に変換できることが考えられる。例えば、アノード入口ストリーム中の改質可能な水素含有量の少なくとも約80%は、アノード中および/または関連する改質ステージにおいて、例えば、少なくとも約85%、または少なくとも約90%で水素に変換できる。加えてまたは別法として、アノードに送達される改質可能燃料量は、アノードで酸化された水素のLHVに対して、改質可能燃料のより低発熱量(LHV)に基づいて特徴付けることができる。これは、改質可能燃料余剰率(surplus ratio)ということができる。種々の態様において、改質可能燃料余剰率は、少なくとも約2.0、例えば、少なくとも約2.5、または少なくとも約3.0、または少なくとも約4.0であることができる。加えてまたは別法として、改質可能燃料余剰率は、約25.0以下、例えば、約20.0以下、または約15.0以下、または約10.0以下であることができる。
実施例1
本実施例において、50cm×50cmのサイズを有する溶融炭酸塩型燃料電池は、バッフルを含むように変更して、図3に示される構成と同様の構成を作製した。バッフルは、5本のステンレス鋼線(316ステンレス鋼)をバイポーラプレートにスポット溶接することにより、カソードとセパレータプレートとの間にスペース(すなわち、カソードガス収集体積部)に加えた。ワイヤーは、カソードとカソード集電体との間の利用可能な流路の高さのおよそ80%を占めていた。5本のワイヤーは50×50cmの流れ場の全幅にまたがっていた。ワイヤーの挿入後、非ブロック化フロー断面積はおよそ20%であった。しかしながら、カソード集電体構造により、フロー断面積の一部がすでにブロックされ、ワイヤーにより、ブロック化されたフロー断面積量がおよそ70%増加した。
図7および図8は、変更されていない燃料電池(50×50cmの流れ場)および上記のバッフルを含む燃料電池を作動した結果を示す。燃料電池は、650℃の温度と90mA/cm2の電流密度を含む高めたCO2利用率条件で作動した。カソード入力ガスは、4体積%CO2、10体積%O2、および10体積%H2O(バランスN2)を含んだ。アノード入力ガスは、72体積%H2、18体積%CO2、および10体積%H2Oに対応した。燃料電池は、図7に示すごとく、およそ90%、およそ105%、およびおよそ120%の見掛けのCO2利用率で作動した。実際のCO2利用率は、酸化剤の入口と出口のガスクロマトグラフィーサンプリングを介して測定した。見掛けのCO2利用率は、測定された電流密度に基づいている。
図7は、バッフルを含む燃料電池と参照電池の双方についての、実際のCO2利用率-対-見掛けのCO2利用率を示す。図7に示すごとく、見掛けのCO2利用率のおよそ同等のレベルにて、バッフル構造の存在は、実際のCO2利用率を予期せぬことにおよそ4%~5%増加させた。また、図8に示されるごとく、実際のCO2利用率のこの増加は、バッフル構造を含む燃料電池について作動電圧のおよそ0.15mVの予期されない増加を提供した。いずれの特定の理論に拘束されることなく、一定レベルの見掛けのCO2利用率での代替イオン輸送量の低下の結果、より高い電圧を生じたと考えられる。
さらなる実施形態
実施形態1. 溶融炭酸塩型燃料電池における電気を生成する方法であって、
H2、改質可能燃料、またはそれらの組合せを含むアノード入力ストリームをアノードガス収集体積部に通すこと、前記アノードガス収集体積部は、アノード表面、第1のセパレータプレート、およびアノード表面とセパレータプレートとの間に支持を提供するアノード集電体によって規定され;O2およびCO2を含むカソード入力ストリームをカソードガス収集体積部に導入すること、カソードガス収集体積部は、カソード表面、第2のセパレータプレート、およびカソード表面と第2のセパレータプレートとの間に支持を提供するカソード集電体によって規定され、前記カソードガス収集体積部は、カソード入力ストリームのフロー方向に基づくフロー断面を有し;溶融炭酸塩型燃料電池を0.97以下の輸率、60mA/cm2以上の平均電流密度で作動して電気、H2、CO、CO2を含むアノード排出、および2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のH2O、および1.0体積%以上のO2を含むカソード排出を生成すること、ここで、カソードガス収集体積部は、第2のセパレータプレートと接触する1つ以上のバッフルによってさらに規定され、1つ以上のバッフルは、カソードガス収集体積部の非ブロック化フロー断面積を10%以上低下させる、前記方法。
実施形態2. 輸率が0.95以下、または0.90以下である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3. カソード入力ストリームが5.0体積%以下のCO2を含む、またはカソード排出が1.0体積%以下のCO2を含む、あるいはそれらの組合せを含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態4. 1つ以上のバッフルが、非ブロック化フロー断面積を10%~80%(または25%~80%、または50%~80%、または10%~50%、または25%~50%)低下させる、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態5. 1つ以上のバッフルが、カソードガス収集体積部のフロー方向に対して実質的に垂直に整列されている、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態6. カソード表面の開口率が50%以下、または45%以下、または40%以下である、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態7. カソード表面の開口率が45%以上、または50%以上、または60%以上である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
実施形態8. カソード集電体が1つ以上のバッフルを含む;または、1つ以上のバッフルが第2のセパレータプレートに装着されている、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態9. a)カソードを横切る電圧降下が0.4V以下である;b)電気が0.55V以上の電圧で生成される;c)アノード排出中のH2濃度が5.0体積%以上である;d)アノード排出中のH2とCOの組合せ濃度が6.0体積%以上である;e)a)~d)の2つ以上の組合せ;またはf)a)~d)の3つ以上の組合せである、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態10. アノードにおける燃料利用率が60%以上である、またはアノードにおける燃料利用率が55%以下である、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態11. アノード;第1のセパレータプレート;アノードと第1のセパレータプレートとの間にアノードガス収集体積部を規定するアノードと第1のセパレータプレートと接触するアノード集電体;カソード;第2のセパレータプレート、カソードのカソード表面および第2のセパレータプレートと接触して、カソードと第2のセパレータプレートとの間にカソードガス収集体積部を規定するカソード集電体、前記カソードガス収集体積部はカソード入口と流体連通し;第2のセパレータプレートと接触する1つ以上のバッフル、前記1つ以上のバッフルは、カソードガス収集体積部の非ブロック化フロー断面積を10%以上低下させ;およびアノードとカソードとの間に電解質を含む電解質マトリックスを含む、溶融炭酸塩型燃料電池。
実施形態12. 1つ以上のバッフルが、非ブロック化フロー断面積を10%~80%(または25%~80%、または50%~80%、または10%~50%、または25%~50%)低下させる、実施形態11に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
実施形態13.
1つ以上のバッフルが、カソードガス収集体積部のフロー方向に実質的に垂直に整列している、実施形態11または12に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
実施形態14.
カソード表面の開口率が50%以下、または45%以下、または40%以下である;あるいは、カソード表面の開口率が45%以上、50%以上、または60%以上である、実施形態11~13のいずれかに記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
実施形態15.
カソード集電体が1つ以上のバッフルを含む;または、1つ以上のバッフルが第2のセパレータプレートに装着されている実施形態11~14のいずれかに記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲内のすべての数値は、示された値につき「約」または「およそ」により修飾され、当業者によって予想される実験誤差および変動を考慮する。
本発明は特定の実施形態に関して説明したが、必ずしもそのように限定されるわけではない。特定の条件下での作動のための適切な変更/修飾は、当業者には明らかであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明の真の精神/範囲内にあるかかるすべての変更/修飾をカバーするものとして解釈されることが意図される。