JP2022190429A - アルミニウム合金押出材 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材を提供する。【解決手段】アルミニウム合金押出材であって、Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、B:質量基準でTiの0.050倍以上1.0倍以下、及び残部がAlと不可避不純物からなり、押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合が90.0%以上であり、押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の存在密度が8.5×103個/mm2以上20×103個/mm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金押出材に関する。
アルミニウム合金は軽量かつ強度が高く、近年では、自動車、鉄道車両等の輸送機器、土木、建築分野、さらには家具、日用雑貨等の生活用品、家電製品等、用途が広がっている。アルミニウム合金材料には、肉薄化等によるさらなる軽量化が求められており、そのために、材料としてさらなる強度の向上が求められている。
特許文献1には、アルミニウム-マグネシウム-シリコン系のアルミニウム合金押出材の製造方法であって、質量%でマグネシウムを0.5~0.9%、シリコンを0.9~1.3%、鉄を0.3~0.5%、チタンを0.005~0.1%含有し、更に、銅を0.4%以下、マンガンを0.30%以下、クロムを0.10%以下、ジルコニウムを0.10%以下に制限し、残部をアルミニウムと不可避不純物からなるアルミニウム合金を押出成形し、空冷による焼入れを行った後、更に加工歪みを2~5%導入し、その後、人工時効を施すアルミニウム合金押出材の製造方法が記載されている。
特許文献2には、Si:0.70~1.3%(質量%、以下同じ)、Mg:0.45~1.2%、Cu:0.15~0.40%未満、Mn:0.10~0.40%、Cr:0.06%以下(0%を含まず)、Zr:0.05~0.20%、Ti:0.005~0.15%を含有し、Fe:0.30%以下、V:0.01%以下に規制し、残部Alおよび不可避不純物からなる化学成分を有し、耐力が350MPa以上であり、晶出物の粒径が5μm以下に規制されており、熱間押出方向と平行な断面における繊維状組織の面積比率が95%以上であるアルミニウム合金押出材が記載されている。
特許文献3には、Si:0.8~2.0質量%、Mg:0.7~1.0質量%、Cu:0.3~1.0質量%、Fe:≦0.20質量%、Mn:0.2~0.8質量%、Cr:0.1~0.4質量%、Mn+Cr:0.3~0.9質量%、残部がAlと不可避的不純物からなり、さらにMgとSi量がMg/1.73+0.2≦Si≦Mg/1.73+1.6の関係式を満たす成分組成を有しており、金属組織がファイバー組織である切削加工用アルミニウム合金押出材が記載されている。
特開2007-254809号公報 特開2014-074213号公報 特開2017-110238号公報
特許文献1では、焼入れ後に加工歪みを導入する工程が組み込まれており、通常の工程より工程数が多いことで、高コストとなりやすい。
特許文献2では、押出方向に繊維状組織を有しており、押出方向と平行な方向に対し、押出方向と垂直方向の機械的特性が劣ることがある。
特許文献3では、押出成形性が不十分で、十分な押出速度で成形するには、押出圧力を高くする必要があり、また、押出品の歪みが大きくなりやすい。そのため、押出材としての品質を保持するためには高コストとなりやすい。
そこで、本発明の目的は、低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材を提供することとする。
上記課題を解決するための本発明の構成は以下のとおりである。
[1]アルミニウム合金押出材であって、
Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
B:質量基準でTiの0.050倍以上1.0倍以下、
及び残部がAlと不可避不純物からなり、
押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合が90.0%以上であり、
押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の存在密度が8.5×10個/mm以上20×10個/mm以下である
アルミニウム合金押出材。
[2]押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のZr含有微粒子の存在密度は0.30個/μm以上3.0個/μm以下である前項[1]に記載のアルミニウム合金押出材。
[3]前記Zr含有微粒子はさらにSiを含む前項[2]に記載のアルミニウム合金押出材。
[4]押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子について、アスペクト比が大きい方から数えて25%となる値である、数基準25%アスペクト比は、3.00以上6.50以下である前項[1]~[3]のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材。
[5]押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の存在密度が15×10個/mm以下である前項[1]~[4]のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材。
[6]500℃における圧縮変形開始応力が25MPa以下であり、0.2%耐力が285MPa以上である前項[1]~[5]のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材。
前項[1]に記載の組成を有するアルミニウム合金材は、加熱することで変形しやすくなるため、押出圧力を低くすることが可能で、アルミニウム合金押出材の生産性が向上し、製造コストの低減を図れる。
アルミニウム合金押出材が前項[1]に記載の組成、及び結晶粒を有し、規定されている範囲のAl-Fe-Si粒子の存在密度を有することで、耐力及び強度が大きく向上する。
よって、本発明によれば、低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材を提供することができる。
図1は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の、押出方向に垂直な断面における、光学顕微鏡による偏光組織の写真の一例(実施例1)を示す図である。 図2は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。 図3は図2の写真を二値化した後、白黒反転した画像を示す図である。 図4は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における微細構造の走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。 図5は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材におけるEDXのライン分析図の一例(実施例1)を示す図である。 図6は図4の写真を二値化した後、白黒反転した画像を示す図である。 図7は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例を示すフロー図である。 図8は各実施例及び各比較例において用いられたダイスの押出断面を示す図である。 図9は各実施例及び各比較例で作製されたアルミニウム合金押出材を示す図である。 図10は押出材の断面の設計形状からの変形量を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、「押出材」「アルミ合金押出材」とある場合、特に断りがなければ、アルミニウム合金押出材を意味する。
<1.アルミニウム合金押出材>
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の化学組成は、それぞれ後述する含有量のSi、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部からなり、残部がAl及び不可避不純物からなる。なお、後述するが、本実施形態にかかる押出材は、Bを含まなくてもよい。すなわち、本実施形態にかかる押出材は、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよく、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよい。
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材は、押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒を含む。この結晶粒の詳細については後述する。
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材は、押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子を有する。Al-Fe-Si粒子の詳細については後述する。
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材には、Zrを含有する微粒子が存在することが好ましい。ここで、Zrを含有する微粒子をZr含有微粒子と呼ぶこともある。Zr含有微粒子の詳細については後述する。
〔1-1.アルミニウム合金押出材の各成分〕
[1-1-1.Si]
押出材中のSiの含有率は0.90質量%以上であり、1.03質量%以上であることが好ましく、1.05質量%以上であることがより好ましい。Siは、Mgとの相互作用にて化合物を形成しやすく、MgSi析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。また、後述するMgの添加量に対して、MgSiを生成するための添加量を超えて過剰に添加することにより、人工時効処理(後述する時効工程)後の押出材の強度等の特性をより高めることができるためである。
押出材中のSiの含有率は、1.30質量%以上であってもよく、1.50質量%以上であってもよい。
押出材中のSiの含有率は2.00質量%以下であり、1.78質量%以下であることが好ましい。この理由は、Si単体の粒界析出を抑制し、押出材の靭性をより高めるためである。また、押出圧力を低減し、生産性及び歩留まりを向上させるためである。
押出材中のSiの含有率は1.50質量%以下であってもよく、1.25質量%以下であってもよい。
[1-1-2.Mg]
押出材中のMgの含有率は0.65質量%以上であり、0.70質量%以上であることが好ましく、0.72質量%以上であることがより好ましく、0.74質量%以上であることがさらに好ましい。Mgは、Siとの相互作用にて化合物を形成しやすく、MgSi析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。
押出材中のMgの含有率は0.90質量%以下であり、0.88質量%以下であることが好ましく、0.83質量%以下であることがより好ましい。この理由は、析出物の量を適切な範囲とすることで、焼き入れ感受性を向上させ、押出時の圧力が上昇を抑制するためである。また、生成したMgSi析出物を低温で固溶させやすくして、製品(押出材)の形状の精度をより向上させるためである。
[1-1-3.Cu]
押出材中のCuの含有率は0.25質量%以上であり、0.28質量%以上であることが好ましく、0.32質量%以上であることがより好ましく、0.36質量%以上であることがさらに好ましい。Cuの含有により、MgSi析出物の見かけの過飽和量を増加させ、MgSi析出物の析出量を増加させることにより、押出材の時効硬化性が向上するためである。また、Cuを含む化合物が結晶粒内に微細に析出すると強度向上に寄与する。
押出材中のCuの含有率は0.50質量%以下であり、0.45質量%以下であることが好ましく、0.42質量%以下であることがより好ましい。この理由は、押出加工性を向上させ、低い押出圧力で押出成形が可能になるためである。また、押出材の耐食性が向上するためである。
[1-1-4.Fe]
押出材中のFeの含有率は0.050質量%以上であり、0.080質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることがさらに好ましい。FeはAl、Siと結合して鋳造時に晶出すると共に、結晶粒の粗大化を抑制する効果があるためである。
押出材中のFeの含有率は0.49質量%以下であり、0.45質量%以下であることが好ましく、0.35質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以下であることがさらに好ましく、0.27質量%以下であることがさらに好ましく、0.24質量%以下であることが特に好ましい。この理由は、針状のAl-Fe-Si系の化合物の晶出を抑制し、押出成形性及び押出品の靭性をより向上させるためである。
[1-1-5.Zr]
Zrは、均質化処理時にZr含有微粒子(詳細は後述する)として析出し、押出加工時に発生する結晶粒(詳細は後述する)の核となる。押出材中のZrの含有率は0.10質量%以上であり、0.11質量%以上であることが好ましく、0.13質量%以上であることがより好ましい。この理由は、Zr含有微粒子、すなわち再結晶の核の数を増加させ、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
押出材中のZrの含有率は0.25質量%以下であり、0.20質量%以下であることが好ましく、0.17質量%以下であることがより好ましい。この理由は、鋳造時に合金溶湯の流動性が向上し、鋳造による押出用素材の形成が容易となり、結果として押出材の生産性が向上するためである。
[1-1-6.Ti]
Tiは、鋳造時の結晶粒を微細化する働きがあり、加えて鋳造時の鋳塊割れを抑制する効果がある。押出材中のTiの含有率は0.010質量%以上であり、0.020質量%以上であることが好ましく、0.025質量%以上であることがより好ましい。
押出材中のTiの含有率は0.10質量%以下であり、0.085質量%以下であることが好ましく、0.060質量%以下であることがより好ましい。この理由は、鋳造時に合金溶湯の流動性が向上し、鋳造による押出用素材の形成が容易となり、結果として押出材の生産性が向上するためである。
[1-1-7.B]
BもTiと同様に結晶粒微細化に有効であり、添加することにより、TiB粒子が生成し、分散すると考えられる。さらに、TiB粒子が結晶の凝固核となり、後述する結晶粒の微細化をもたらすと考えられる。Bは含んでもよく、含まなくてもよい。ここで「Bを含まない」とは、不可避不純物以外のBを含まないということであり、不可避不純物としてのBは含んでもよい。Bを含む場合、押出材中のBの含有量は質量基準でTiの0.050倍以上であることが好ましく、0.10倍以上であることがより好ましく、0.15倍以上であることがさらに好ましい。この理由は、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
押出材中のBの含有量は質量基準でTiの1.0倍以下であり、0.50倍以下であることが好ましく、0.25倍以下であることがより好ましい。この理由は、余剰のBがMgと結合することを抑制して、Siと結合すべきMgが消費されることを抑制するためである。
[1-1-8.その他の元素]
押出材中の不可避不純物として、例えば、Mn及びCrは可能な限り含有率を少なくすることが好ましい。この理由は、焼入れ感受性を鈍化させ、冷却速度のばらつきが強度に与える影響を小さくし、押出材の品質をより安定させることができるためである。
〔1-2.結晶粒〕
図1は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の、押出方向に垂直な断面における、光学顕微鏡による偏光組織の写真の一例(後述する実施例1)を示す図である。同図に示すように押出材の、押出方向に垂直な断面(本項では以下、単に断面とすることもある)において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合は90.0%以上であり、95.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがさらに好ましく、99.0%以上であることが特に好ましい。この理由は、結晶粒間のへき開破壊を抑制し、押出材のせん断応力に対する強度を向上させるためである。
また、ここで、上記の面積割合は、押出方向に垂直な断面において、1.95mm×2.60mmの範囲を2視野にて測定した値、すなわち、2視野に対する結晶粒の面積割合である。また、画像の端部にあり、一部のみが写っている粒子については、各視野の面積及び結晶粒の面積のいずれにも算入されない(すなわち、面積割合の算出に用いる各視野の面積は1.95mm×2.60mmよりも小さくなる)。上記結晶粒が占める面積割合は、2視野の合計面積に対する、上記条件を満たす結晶粒の2視野分の合計面積を百分率で表した値である。
〔1-3.Al-Fe-Si粒子〕
図2は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。ここで、Al-Fe-Si粒子は、同じ視野のEDXマッピング分析における各元素量の半定量分析に基づいて確認される粒子である。具体的には、Al-Fe-Si粒子は、この分析においてFeの含有率が5.0mass%以上40mass%以下、Siの含有率が5.0mass%以上40mass%以下、残部がAl(不可避不純物を含んでもよい)である粒子とする。図2の写真内の白い点または棒状の部分がAl-Fe-Si粒子である。
図3は、図2の写真を二値化した後、白黒反転させた画像を示す図である。Al-Fe-Si粒子の長さは0.010μm以上30μm以下である(この範囲にないサイズの粒子は、本発明におけるAl-Fe-Si粒子ではない)。Al-Fe-Si粒子の長さは、SEM画像を二値化した画像に基づいて判定される。Al-Fe-Si粒子の長さは、二値化されて画像の黒い部分において、最も長い2点間の距離である。なお、二値化画像において白黒反転していない場合は、Al-Fe-Si粒子の長さは、白い部分における最も長い2点間の距離である。
押出材の押出方向に垂直な断面中のAl-Fe-Si粒子の存在密度は、8.5×10個/mm以上であり、8.7×10個/mm以上であることが好ましい。押出性を良好に保ちつつ、押出材の耐力及び引張強度を向上させるためである。
押出材の押出方向に垂直な断面中のAl-Fe-Si粒子の存在密度は、20×10個/mm以下であり、15×10個/mm以下であることが好ましく、13×10個/mm以下であることがより好ましい。Al-Fe-Si粒子のサイズを抑えることで、押出材の靭性が向上し、機械的特性が向上するためである。
なお、Al-Fe-Si粒子の数は、日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率1,000倍、視野121μm×90.9μm=10998.9μmを4視野で数えられる。4視野でのAl-Fe-Si粒子の合計数Nを、4視野分の面積で割ることで、Al-Fe-Si粒子の存在密度が算出される。すなわち、Al-Fe-Si粒子の存在密度は、N/(4×10998.9)[個/μm]=10×N/(4×10998.9)[個/mm]となる。
Al-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比は、押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子について、アスペクト比が大きい方から数えて25%(小数点以下四捨五入)となる値である。なお、Al-Fe-Si粒子のアスペクト比は、二値化した画像に基づいて測定される。
例えば、上記4視野内において、上記条件を満たすAl-Fe-Si粒子が100個であるならば、Al-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比は、アスペクト比が大きい方から数えて25番目の値であり、123個であるならば、31番目(30.3から四捨五入)の値である。
押出方向に垂直な断面において、Al-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比は、3.00以上であることが好ましく、3.70以上であることがより好ましく、4.50以上であることがさらに好ましい。ピン止め効果により必要以上の再結晶を抑制するためである。
押出方向に垂直な断面において、Al-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比は、6.50以下であることが好ましく、6.00以下であることがより好ましく、5.65以下であることがさらに好ましい。
〔1-4.Zr含有微粒子〕
図4は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における微細構造の走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。図4の写真内の白い部分がZr含有微粒子である。Zr含有微粒子の粒径は0.010μm以上1.0μm以下であり(この範囲にないサイズの粒子は、本発明におけるZr含有微粒子ではない)、粒子のサイズがこの範囲にあるか否かは、後述する二値化した画像に基づいて判定される。本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材はZr含有微粒子を含むことが好ましい。この理由は、Zr含有微粒子を核とすることで、結晶粒がより形成しやすくなるためである。Zr含有微粒子は、AlZrSi1-a(0<a≦1)であることが好ましい。
図5は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材におけるEDXのライン分析図の一例(実施例1)を示す図である。なお、EDXのライン分析図の縦軸の単位cpsは、カウント毎秒である。図5の下のEDXのライン分析図は、図5の上のSEM写真における直線に沿って行われている。Zr含有微粒子は、上記サイズの条件を満たしつつ、EDXのライン分析において、SEM写真における粒子(図4における白い部分)に対応する箇所にZrのピークが見られる粒子とする。
Zr含有微粒子はSiを含んでもよい。EDXのライン分析について、Zr含有微粒子において、Al以外の元素では、Zrのピーク強度が最も、またはSiのピーク強度に次いで大きいことが好ましく、Al以外の元素でZrのピーク強度が最も大きいことがより好ましい。
図6は、図4の写真を二値化した後、白黒反転した画像を示す図である。Zr含有微粒子の粒径は、SEM画像を二値化した画像に基づいて判定される。図6では、白黒反転されているので、Zr含有微粒子の粒径は、黒い部分を円とみなしたうえでその面積から算出された直径である。なお、二値化画像において白黒反転していない場合は、白い部分を円とみなしてZr含有微粒子の粒径が算出される。
押出材の押出方向に垂直な断面中のZr含有微粒子の存在密度は、0.30個/μm以上であることが好ましく、0.40個/μm以上であることがより好ましく、0.50個/μm以上であることがさらに好ましい。この理由は、上記結晶粒の粗大化を抑制するためである。
押出材の押出方向に垂直な断面中のZr含有微粒子の存在密度は、3.0個/μm以下であることが好ましく、2.0個/μm以下であることがより好ましく、1.0個/μm以下であることがさらに好ましい。この理由は、上記結晶粒をより確実に生成させるためである。
なお、Zr含有微粒子の数は、日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率10,000倍、視野12.1μm×9.09μm=109.989μmを4視野で数えられる。4視野でのZr微粒子の合計数Nを、4視野分の面積で割ることで、Zr含有微粒子の存在密度が算出される。すなわち、Zr含有微粒子の存在密度は、N/(4×109.989)[個/μm]となる。
〔1-5.アルミニウム合金押出材の機械的性能〕
本実施形態にかかるアルミニウム押出材の500℃における圧縮変形開始応力は、25MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、19MPa以下であることがさらに好ましい。ここで500℃における圧縮変形開始応力とは、後述する実施例の方法にて測定される値である。
本実施形態にかかるアルミニウム押出材の引張強さは、300MPa以上であることが好ましく、320MPa以上であることがより好ましく、330MPa以上であることがさらに好ましい。ここで引張強さは、後述する実施例の方法にて測定される値である(JISZ2241で、5号試験片(寸法は後述する)を用いて得られる値)。
本実施形態にかかるアルミニウム押出材の0.2%耐力は、285MPa以上であることが好ましく、290MPa以上であることがより好ましく、300MPa以上であることがさらに好ましい。ここで0.2%耐力は、後述する実施例の方法にて測定される値である(JISZ2241で、5号試験片(寸法は後述する)を用いて得られる値)。
<2.アルミニウム合金押出材の製造方法>
図7は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例を示すフロー図である。以下、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例について説明するが、本発明にかかる押出材の製造方法はこれに限られない。
図7に示すように本実施形態の一例にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法は、溶融工程と、鋳造工程と、均質化工程と、加熱工程と、押出工程と、ダイクエンチ工程と、時効工程とを含む。なお、これらの工程は全て必要とは限らず、例えば、鋳造後の材料が入手可能であれば、溶融工程及び鋳造工程は不要であり、均質化後の材料が入手可能であれば、均質化工程までの各工程は不要である。
〔2-1.溶融工程〕
溶融工程では、アルミニウム合金の溶湯を調製する。溶湯の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
〔2-2.鋳造工程〕
鋳造工程では、溶融工程で得られた溶湯を鋳造することによりビレット(押出用素材)を得る。鋳造方法は、特に限定されないが、例えば、垂直型フロート連続鋳造法、垂直型ホットトップ連続鋳造法、水平型連続鋳造法等が挙げられる。
〔2-3.均質化工程〕
均質化工程では均質化処理を行い、鋳造工程で得られたビレットの金属組織を均質化する、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させる。均質化工程によって強度の高い押出材が得られる。均質化工程に用いられるアルミニウム合金(ビレット)の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
均質化処理の温度は500℃以上であることが好ましく、530℃以上であることがより好ましく、550℃以上であることがさらに好ましい。この理由は、ビレットの金属組織を十分に均質化せるため、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させるためである。均質化処理の温度は600℃以下であることが好ましく、570℃以下であることがより好ましい。こうして金属間化合物の溶融を抑制することで、金属間化合物の粒子の粗大化を抑制し、押出材の機械的特性を向上させるためである。
均質化処理の時間は3時間以上であることが好ましく、8時間以上であることがより好ましく、12時間以上であることがさらに好ましい。この理由は、ビレットの金属組織を十分に均質化せるため、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させるためである。均質化処理の時間は24時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましく、18時間以下であることがさらに好ましい。この理由は、金属間化合物の粒子の粗大化を抑制し、押出材の機械的特性を向上させるためである。
均質化処理の後、ビレットを冷却することが好ましい。冷却後のビレットの温度は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。ビレットを50℃以下まで冷却して保管してもよい。冷却方法としては、水冷、ミスト冷却、空冷、ファン冷、放冷等が挙げられるが、特に限定されない。冷却速度は、100℃/h以上であることが好ましく、150℃/h以上であることがより好ましい。
〔2-4.加熱工程〕
加熱工程では、均質化工程で均質化されたビレットを加熱し、ビレットの変形抵抗を低下させる。また、加熱工程によりビレットを構成する成分を固溶させる。加熱工程において用いられるビレットを構成するアルミニウム合金材に含まれる元素及びその含有量は、アルミニウム合金押出材の説明にて上記したとおりである。
加熱温度は、350℃以上であり、400℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましい。この理由は、ビレットの変形抵抗を低下させて、押出圧力を低くするためである。
加熱温度は、ビレットを構成するアルミニウム合金の固相線温度を超えないことが好ましい。この理由は、アルミニウム合金中の金属間化合物の溶融を抑制するためである。後述する押出工程において、ビレット自身の加工発熱、及びダイスとの摩擦等による材料の加熱を考慮すると、具体的な加熱温度は、600℃以下であり、550℃以下であることが好ましく、530℃以下であることがより好ましく、510℃以下であることがさらに好ましい。
〔2-5.押出工程〕
押出工程では、加熱工程において加熱されたビレットを押出加工して、押出材を得る。具体的には、例えば、加熱工程において加熱されたビレットをコンテナに装填し、所定の開口部形状を有する押出用金型(以降、ダイスと呼ぶ)に押し付けることで、所望の断面形状を有する押出材が得られる。本実施形態にかかる押出材は、中空形状を有することが好ましい。押出速度は5.0mm/min以上であることが好ましく、6.5mm/min以上であることがより好ましい。この理由は、材料にひずみを与えて、上記結晶粒を有する金属組織がより形成しやすくなるためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
〔2-6.ダイクエンチ工程〕
ダイクエンチ工程では、押出加工(押出工程)により得られた押出材の冷却をする。冷却方法は、特に限定されないが、水冷、ミスト冷却、ファン空冷、放冷等が挙げられる。ダイクエンチ工程により、過飽和固溶体が形成される。冷却速度は7.0℃/sec以上であり、10℃/sec以上であることが好ましく、12℃/sec以上であることがより好ましい。この理由は、固溶している成分の析出を抑制し、過飽和固溶体を維持しやすいためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
冷却速度は、80℃/sec以下であり、40℃/sec以下であることが好ましく、20℃/sec以下であることがより好ましい。この理由は、冷却時の熱収縮による押出材の変形を抑制するためである。
ダイクエンチ工程の目標温度は、150℃以下であり、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。ダイクエンチ工程の後、後述する時効工程までの間、押出材を常温、例えば30℃以下で保管してもよい。
〔2-7.時効工程〕
時効工程では、ダイクエンチ工程において冷却された押出材に、人工時効処理を行う。時効工程により、押出材においてMgSi系析出物が成長し、押出材の強度が向上する。
時効処理温度は、120℃以上であり、140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。この理由は、押出材においてMgSi系析出物を析出させやすくなるためである。時効処理温度は、240℃以下であり、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。この理由は、押出材におけるMgSi系析出物の過剰な成長を抑制し、押出材の強度を向上させるためである。
時効処理時間は、2時間以上であり、4時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがより好ましい。この理由は、MgSi系析出物を十分に析出させるためである。時効処理時間は、48時間以下であり、16時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。この理由は、押出材におけるMgSi系析出物の過剰な成長を抑制し、押出材の強度を向上させるためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
以下、本発明にかかるアルミニウム合金押出材及びその製造方法について、実施例及び比較例を示しながら、より具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
<1.アルミニウム合金押出材の作製>
表1に示す元素、Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を用いて、直径156mmの円形断面を有するビレットを連続鋳造にて作製した。得られたビレットを560℃で14時間の均質化処理を施した。その後、ビレットを30℃まで、180℃/hで冷却した。次に、冷却されたビレットを500℃に加熱した。なお参考までに表1においてグレイの背景色が施されている部分は、本発明の要旨を逸脱する部分である。
Figure 2022190429000002
図8は、各実施例及び各比較例において用いられたダイスの押出断面(押出孔)を示す図である。各実施例及び比較例においては、このダイスD1によって図9及び図10に示す押出材1を成形するものである。この押出材1は、断面矩形状の外周壁11に、その内部(中空部)を2分割する中仕切壁12が一体に形成された中空形状の押出型材である。
そして図8に示すダイスD1は、押出材1の外周壁11を成形するための外周壁成形孔D11と、中仕切壁12を成形するための中仕切壁成形孔D12とを有する押出孔D10を備えている。またこのダイスD1は、外周壁成形孔D11の横寸法L1が50mmであり、縦寸法L2が50mmである。更に外周壁成形孔D11および中仕切り壁12の幅T1は、2.5mmであり、外周壁成形孔D11における内側の曲率半径Riは、2.5mmであり、外側の曲率半径Roは、5mmである。
各実施例及び各比較例いずれにおいても、500℃に加熱されたビレットに、上記図8のダイスD1を用いて、8インチ直接押出機にて押出加工を行った(押出工程)。この押出工程における各実施例及び各比較例における押出速度を表1に示した。
押出工程の直後にダイクエンチ工程を行い、押出材の温度を30℃とした。各実施例及び各比較例のダイクエンチ工程における冷却速度を表1に示した。ダイクエンチ工程後の押出材に180℃、6時間の人工時効処理(時効工程)を行い、アルミニウム合金押出材を得た。以下の説明において、特に断りがなければ、押出材は時効工程後に得られたアルミニウム合金押出材とする。また、時効処理後のアルミニウム合金押出材が、本発明にかかるアルミニウム合金押出材となる。
<2.アルミニウム合金の各種測定>
〔2-1.アルミニウム合金の500℃における圧縮変形開始応力の測定〕
均質化処理を施し、冷却されたビレットの中心部から、φ8mm×12mmの試験片形状に切り出した。なお、φ8mm×12mmの長手方向は、ビレットの長手方向(押出方向)である。切り出した試験片を500℃まで50℃/secで昇温し、500℃で10min保持し、500℃でひずみ速度0.10/sec(1秒ごとの圧縮率の増加量)、圧縮率({圧縮により減少した寸法(試験開始前は0mm)}/圧縮前の寸法(12mm))0.75まで圧縮し、応力-ひずみ(圧縮率)線図を得た。圧縮は真空雰囲気にて実施した。試験機は富士電波工機製のサーメックマスタZを用いた。
ここで、応力-ひずみ線図において、圧縮率0から0.30までの間における応力の極大値かつ最大値となっている値を圧縮変形開始応力とした。ここで極大値は、その圧縮率の値から、±0.050の範囲で、その圧縮率における荷重が最大となる値である。
各実施例及び各比較例にかかるアルミニウム合金について測定された圧縮変形開始応力を表1に示した。
〔2-2.押出性〕
上記押出工程(500℃に加熱されたビレットを用いた押出加工)における押出性を、下記判断基準に基づいて判定した。
「良」・・・押出圧力が25MPa未満であり、押出材に割れ及び目視上のクラックがない場合。
「不良」・・・押出圧力が25MPa以上である、押出材に割れが生じている、及び押出材に目視上のクラックがある、の少なくともいずれかである場合。
各実施例及び各比較例にかかるアルミニウム合金についての押出性の評価結果を表1に示した。
<3.アルミニウム合金押出材の各種測定>
図9及び図10は記述した通り各実施例及び各比較例で作製されたアルミニウム合金押出材を示す図である。以下の説明において、L、LT、STが示す向きは、図9及び図10の矢符号「L」「LT」「ST」で示される向きを示す。
〔3-1.押出材断面における結晶粒の占める面積割合〕
それぞれの押出材について、STの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、LT:10mm、ST:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-LT面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。この試験片を樹脂埋めし、Lの向きに垂直な断面をバフ研磨にて鏡面仕上げを行ったのち、バーカー電解液でエッチング処理を施した。処理が施された断面における、光学顕微鏡による偏光組織の画像を、画像処理ソフトウェアImage Jを用いて以下の解析をした。観察範囲は1.95mm×2.60mmで、画像の数は各実施例及び各比較例で2個である。結晶粒の観察のための写真の一例は、図1に示した通りで、これは実施例1の押出材の断面写真である。
それぞれの画像において、アスペクト比5.0以下、かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合を算出した。なお、画像の端部にあり、一部が画像の外にある粒子については、各視野の面積及び結晶粒の面積のいずれにも算入されない。上記結晶粒が占める面積割合は、2視野の合計面積に対する、上記条件を満たす結晶粒の2視野分の合計面積を百分率で表した値である。
各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定された、結晶粒が占める面積割合を表1に示した。
〔3-2.Al-Fe-Si粒子に関する測定〕
(Al-Fe-Si粒子の存在密度)
それぞれの押出材について、LTの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、ST:10mm、LT:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-ST面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。切り出された試験片をLの向き(押出方向)に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率1,000倍で、121μm×90.9μm=10998.9μmの視野の画像を4個取得し、EDXマッピング分析を行った。
得られたマッピング分析結果、及び二値化した画像(例えば図3)を用いて、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の個数Nを4視野分カウントした。カウントされたAl-Fe-Si粒子の数Nを4視野分の面積で割って、Al-Fe-Si粒子の存在密度を算出した。なお、カウントされるAl-Fe-Si粒子の定義は、上記の通りである。
各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定されたAl-Fe-Si粒子の存在密度を表1に示した。
(Al-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比)
それぞれの押出材において、カウントの対象となったAl-Fe-Si粒子のアスペクト比について、大きい方から数えて25%(小数点以下四捨五入)となる値(数基準25%アスペクト比)を求めた。
各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定されたAl-Fe-Si粒子の数基準25%アスペクト比を表1に示した。
〔3-3.押出材断面におけるZr含有微粒子の存在密度〕
それぞれの押出材について、STの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、LT:10mm、ST:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-LT面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。切り出された試験片をLの向き(押出方向)に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率10,000倍で、12.1μm×9.09μm=109.989μmの視野の画像を4個取得し、粒径0.010μm以上1.0μm以下のZr含有微粒子を、EDXライン分析(例えば図5)及び二値化した画像(例えば図6)を参照しながらカウントした。4視野分のZr含有微粒子の数Nを4視野分の面積で割って、Zr含有微粒子の存在密度を算出した。
各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定されたZr含有微粒子の存在密度を表1に示した。
〔3-4.引張強さ及び0.2%耐力〕
各実施例及び各比較例において得られたアルミニウム合金押出材から、JISZ2241に規定されている方法により測定した。測定は5号試験片を切り出して行った。具体的には、押出方向(L方向)に沿って標点間距離50mm及び平行部長さ60mm、幅25mm、厚さ2mm、肩部R30mmで切り出した。引張試験片の常温(24℃)における引張試験(JISZ2241に準拠)を、クロスヘッド速度2mm/minにて行うことで、引張強さを算出し、オフセット法にて0.2%耐力を測定した。
各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定された引張強さ及び0.2%耐力を表1に示した。
〔3-5.押出材の変形量〕
時効工程後の押出材を押出方向に垂直な面でカットした。押出材のカットされた断面の外形における隣り合う2辺の角度を測定し、図10に示すように90°からの差の絶対値θ[°]を変形量として求めた。各実施例及び各比較例にかかる押出材について、測定された変形量θを表1に示した。
<4.評価>
各実施例にかかるアルミニウム合金は、いずれも押出性に優れている。そのため、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材の生産性を向上させることができ、結果として押出材の製造コストの低減が可能である。また、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材は、いずれも引張強さ及び耐力が高い。
押出方向に垂直な断面において、Al-Fe-Si粒子の存在密度が低い比較例1にかかる押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
比較例2及び3にかかるアルミニウム合金は組成が共通で、Zrを含まず、Mn及びCrを含む。比較例2及び3にかかるアルミニウム合金は、500℃における圧縮変形開始応力が高く、生産性の低下につながる。この組成では比較例3のように押出速度を上げると押出材に割れが生じていた(押出性が不良)。一方、比較例2のように押出速度を下げれば押出材が得られるが、生産性が低く、製造コストが上昇する。
比較例4にかかるアルミニウム合金は、Zrが少量であり、Mn及びCrを含む。比較例4にかかるアルミニウム合金は、500℃における圧縮変形開始応力が高く、生産性の低下につながる。比較例4においては、押出材の作製は可能であったが、押出材中で、所望の結晶粒が形成できなかった。また、比較例4にかかる押出材は、押出方向に垂直な断面において、Al-Fe-Si粒子の存在密度が低い。この押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
比較例5にかかるアルミニウム合金は、比較例4のアルミニウム合金に対して、Mn及びCrの含有率がより低い。また、比較例5にかかる押出材は、押出方向に垂直な断面において、Al-Fe-Si粒子の存在密度が低い。比較例5にかかる押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
Siの含有率が低く、かつAl-Fe-Si粒子の存在密度が低い比較例6にかかる押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
Cuの含有率が低く、かつAl-Fe-Si粒子の存在密度が低い比較例7にかかる押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
比較例8にかかるアルミニウム合金は、Cuの含有率が高い。比較例8にかかるアルミニウム合金は、500℃における圧縮変形開始応力が高いうえに、押出材に割れが生じていた(押出性が不良)。
Mgの含有率が低い比較例9にかかる押出材は、引張強さ及び耐力が低かった。
比較例10にかかるアルミニウム合金は、Mgの含有率が高い。比較例10にかかるアルミニウム合金は、500℃における圧縮変形開始応力が高いうえに、押出材に割れが生じていた(押出性が不良)。
Zrを含まず、かつAl-Fe-Si粒子の存在密度が低い比較例11にかかる押出材は、耐力が低かった。
以上のことから、本発明にかかるアルミニウム合金押出材は、低コストで、引張強さ及び耐力が高いことがわかる。また、本発明にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法によれば、低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材が得られることがわかる。
この発明のアルミニウム合金押出材は、高強度構造材として利用可能である。
1:アルミニウム合金押出材

Claims (6)

  1. アルミニウム合金押出材であって、
    Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
    Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
    Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
    Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
    Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
    Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
    B:質量基準でTiの1.0倍以下、
    及び残部がAlと不可避不純物からなり、
    押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合が90.0%以上であり、
    押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の存在密度が8.5×10個/mm以上20×10個/mm以下である
    アルミニウム合金押出材。
  2. 押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のZr含有微粒子の存在密度は0.30個/μm以上3.0個/μm以下である請求項1に記載のアルミニウム合金押出材。
  3. 前記Zr含有微粒子はさらにSiを含む請求項2に記載のアルミニウム合金押出材。
  4. 押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子について、アスペクト比が大きい方から数えて25%となる値である、数基準25%アスペクト比は、3.00以上6.50以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金押出材。
  5. 押出方向に垂直な断面において、長さ0.10μm以上30μm以下のAl-Fe-Si粒子の存在密度が15×10個/mm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金押出材。
  6. 500℃における圧縮変形開始応力が25MPa以下であり、0.2%耐力が285MPa以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金押出材。
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