この発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この明細書で引用された文献の記載事項を含む任意の公知技術を、実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置は、被検眼の眼底にOCT血流計測を適用して取得された血流データに基づいて各種情報を表示させる機能を有する。実施形態に係る眼科情報処理装置は、例えば、別途に設けられたOCT装置が被検眼の眼底にOCT血流計測を適用して取得した血流データを受け、この血流データに基づいて各種情報の表示を実行する。一方、実施形態に係る眼科撮影装置は、被検眼の眼底にOCT血流計測を適用して血流データを取得し、この血流データに基づいて各種情報の表示を実行する。
被検眼の眼底にOCTを適用して取得されたデータ(眼底OCTデータ)は、任意の形態のデータであってよい。例えば、眼底OCTデータは、次の(1)~(5)のいずれか1以上を含んでいてよい。
(1)眼底のOCTスキャンによって収集されたデータ(生データ)
(2)生データを処理して得られた画像データ
(3)生データから画像データを生成するための一連の処理の途中で得られた中間データ
(4)生データを処理して得られた血流データ
(5)生データから血流データを生成するための一連の処理の途中で得られた中間データ
なお、眼底OCTデータの種別はこれらに限定されない。また、実施形態は、眼底OCTデータに関連付けられた各種情報を処理することができる。このような情報の例として、被検者識別情報、被検眼識別情報、被検眼が左眼であるか右眼であるかを示す識別情報、撮影日時などがある。
実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置は、データ表示処理を実行するプロセッサを含む。実施形態に係る眼科情報処理装置は、更に、生データや中間データを処理するプロセッサを含んでもよい。実施形態に係る眼科撮影装置は、これらプロセッサに加え、OCTを実行するための光学系や駆動系や制御系やデータ処理系を含む。
実施形態の眼科撮影装置は、例えばフーリエドメインOCTを実行可能に構成される。フーリエドメインOCTには、スペクトラルドメインOCTと、スウェプトソースOCTとが含まれる。スペクトラルドメインOCTは、広帯域の低コヒーレンス光源と分光器とを用いて、干渉光のスペクトルを空間分割で取得し、それをフーリエ変換することによって画像を構築する手法である。スウェプトソースOCTは、波長掃引光源(波長可変光源)と光検出器(バランスドフォトダイオード等)とを用いて、干渉光のスペクトルを時分割で取得し、それをフーリエ変換することによって画像を構築する手法である。OCTの手法はフーリエドメインOCTには限定されず、タイムドメインOCTやアンファスOCTでもよい。
実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置は、眼及び/又は他の部位を画像化するためのモダリティ(例えば、OCT以外のモダリティ)を含んでいてもよい。その典型例として、眼底カメラ、SLO、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡などがある。また、実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置は、眼及び/又は他の部位の特性を測定するための構成や、検査を行うための構成を含んでいてもよい。
実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置は、OCT血流計測により取得された眼底の血流データに基づく表示処理に加え、眼底の正面画像を表示する処理を実行する。眼底正面画像は、被検眼の正面側(角膜側)の視点からの眼底画像である。眼底正面画像は、任意のモダリティによって取得された画像であってよい。例えば、眼底正面画像は、眼底にOCTを適用して取得されたデータから構築される画像でもよいし、OCT以外のモダリティを眼底に適用して取得されたデータに基づく画像でもよい。後者の典型的な例として、眼底カメラ又はSLOにより得られた眼底写真(例えば、カラー眼底像、モノクロ眼底像、蛍光画像など)がある。実施形態に係る眼科撮影装置は、OCTのための構成及び他のモダリティのための構成の少なくとも一方を含む。
実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置におけるデータ処理機能(演算機能、画像処理機能、制御機能等)は、例えば、プロセッサや記憶装置等のハードウェアと、演算プログラムや画像処理プログラムや制御プログラム等のソフトウェアとが協働することによって実現される。なお、ハードウェアの一部は、実施形態に係る眼科情報処理装置又は眼科撮影装置との間で通信が可能な外部装置に設けられていてよい。また、ソフトウェアの少なくとも一部は、実施形態に係る眼科情報処理装置又は眼科撮影装置に予め格納されてよく、及び/又は、外部装置に予め格納されてよい。
〈眼科撮影装置〉
〈構成〉
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置について説明する。本実施形態の眼科撮影装置の構成例を図1に示す。眼科撮影装置1は、OCTを用いて眼底のデータを収集し、収集されたデータに基づいて眼底血流データを生成し、当該眼底の正面画像を取得し、眼底血流データと眼底正面画像とに基づき各種情報を表示することができる。
眼底血流データは、眼底血管(網膜血管、脈絡膜血管など)における血流状態(血流動態)を表すデータである。眼底血流データの例として、血流の向き、血流速度、血流速度の時系列変化、血流量、単位時間当たり血流量、単位時間当たり血流量の時系列変化、全血流量などがある。
また、眼科撮影装置1は、OCTを用いて収集されたデータに基づいて、眼底の形態を表す画像を形成することができる。眼底形態画像は、眼底の形態を表現した画像である。眼底形態画像の例として、Bスキャン画像、Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、血管強調画像などがある。
本実施形態では、OCT血流計測を眼底に適用して得られたデータに基づいて形態画像及び血流データの双方を形成することができる。なお、形態画像を取得するためのOCTスキャン(例えば、Bスキャン、3次元スキャン)と、血流データを取得するためのOCTスキャン(OCT血流計測)とを別々に実行するようにしてもよい。また、これら以外のデータを取得するためのOCTスキャンを実行してもよい。例えば、OCT血管造影を実行することができる。
また、眼科撮影装置1は、前述した眼底正面画像を取得する。本実施形態において、眼底正面画像は、Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラムなどのOCT正面画像を含んでいてよい。また、眼底正面画像は、眼底カメラ、SLO、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡などの任意のモダリティにより取得された画像を含んでいてよい。
情報の表示に用いられるデータの一部を他の装置によって取得するようにしてもよい。例えば、眼底血流データ及び眼底正面画像の一方を他の装置によって取得してもよい。また、他の装置を用いて眼底にOCTを適用して眼底形態画像を取得してもよい。他の装置により取得されたデータは、実施形態に係る眼科撮影装置に入力される。
眼科撮影装置1は、眼底正面画像、血流情報、眼底形態画像などの各種情報を、表示デバイス2に表示することができる。表示デバイス2は眼科撮影装置1の一部であってもよいし、眼科撮影装置1に接続された外部装置であってもよい。また、眼科撮影装置1は、各種情報を、コンピュータ、記憶装置、眼科装置などに送ることができる。
眼科撮影装置1は、制御部10と、記憶部20と、OCTデータ取得部30と、操作部50と、正面画像取得部60とを含む。制御部10は、スキャン制御部11と、同期処理部12と、表示制御部13とを含む。OCTデータ取得部30は、OCTスキャナ31と、画像形成部32と、血流データ生成部33とを含む。
任意的に、眼科撮影装置1はデータ入力部40を含んでいてよい。詳細については後述するが、本実施形態では、生体情報モニタから生体情報を利用する構成が適用される場合にデータ入力部40が設けられる。
〈制御部10〉
制御部10は、眼科撮影装置1の各部を制御する。制御部10はプロセッサを含む。「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。制御部10は、例えば、記憶回路や記憶装置(記憶部20、外部装置等)に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現することができる。
また、制御部10は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、専用線等の通信回線を介してデータの送受信を行うための通信インターフェイスを含んでよい。
〈スキャン制御部11〉
スキャン制御部11は、OCTスキャナ31を制御する。例えば、スキャン制御部11は、光源の制御、光スキャナの制御、測定光及び/又は参照光の光路長の変更、偏光調整、光量調整、フォーカス調整、固視位置の変更など、OCTスキャナ31に含まれる各種要素を制御する。スキャン制御部11が実行可能な処理の幾つかの例を後述する。
本実施形態では、被検眼の眼底における複数の血管位置のそれぞれに対してOCT血流計測を適用される。それにより、複数の血管位置に対応する複数の血流データが得られる。複数の血管位置は、被検眼の眼底における1以上の血管における複数の位置である。本実施形態では、複数の血管位置のそれぞれは後述の注目断面に相当する。
〈同期処理部12〉
同期処理部12は、眼底の複数の血管位置に対応する複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフ(後述)の少なくとも一方を互いに同期させるための処理を実行する。
すなわち、同期処理部12は、眼底の複数の血管位置に対応する複数の血流データを互いに同期させるための処理と、これら血流データに基づく複数の血流グラフを互いに同期させるための処理との一方又は双方を実行可能である。
これにより、表示デバイス2に表示される複数の血流グラフの間の相対的な位置関係(時間方向における相対的な位置関係)を調整することができる。なお、本実施形態では、複数の血流データの間の同期も複数の血流グラフの間の同期も共に、複数の血流グラフの表示のために実行されるので、これら2つの同期処理は実質的に同じ処理と言える。
血流グラフは、眼底の血管位置に対応する血流データに基づいて作成される、所定の血流パラメータの時系列変化を表すグラフ情報である。血流グラフにより表現される血流パラメータは、血流データが示す任意のパラメータ、及び、血流データを処理して求めることが可能な任意のパラメータの少なくとも一方を含んでいてよい。血流グラフの例については後述する。
本実施形態において、血流パラメータは、例えば、血流の向き、血流速度、血流速度の時系列変化、血流量、単位時間当たり血流量、単位時間当たり血流量の時系列変化、及び、全血流量のうちのいずれか1つ以上のパラメータを含んでいてよい。ただし、血流パラメータの種類はこれらに限定されない。
同期処理部12は、例えば、次の第1~第3の例のいずれかを実行するように構成されていてよい。
同期処理の第1の例を説明する。本例では、同期処理部12は、複数の血流データの特徴値を参照して同期処理を実行する。より具体的には、同期処理部12は、複数の血流データのそれぞれから特徴値を抽出し、抽出された特徴値に基づいて複数の血流データの同期処理及び/又は複数の血流グラフの同期処理を実行する。本例において、特徴値は、血流データを処理して特定可能な任意の特徴値であってよく、典型的にはピーク値などであってよい。同期処理部12は、例えば、複数の血流データから特定された複数の特徴値が時間軸における同じ位置に配置されるように、複数の血流データの同期処理及び/又は複数の血流グラフの同期処理を実行することができる。
同期処理の第2の例を説明する。本例では、同期処理部12は、複数の血流グラフの波形を参照して同期処理を実行する。より具体的には、同期処理部12は、複数の血流データのそれぞれから波形の特徴点を抽出し、抽出された特徴点に基づいて複数の血流データの同期処理及び/又は複数の血流グラフの同期処理を実行する。本例において、波形の特徴点は、血流グラフを処理して特定可能な任意の特徴点であってよく、典型的にはピーク点、傾きがゼロである点、変曲点、特徴パターンを呈する部分に含まれる点などであってよい。同期処理部12は、例えば、複数の血流グラフから特定された複数の特徴点が時間軸における同じ位置に配置されるように、複数の血流データの同期処理及び/又は複数の血流グラフの同期処理を実行することができる。
同期処理の第3の例を説明する。本例では、データ入力部40を介して入力される被検者の生体情報(バイタルサイン)を参照して同期処理が実行される。生体情報は任意の生体情報モニタを用いて取得される。生体情報モニタは、バイタルサインモニタ、臨床モニタなどとも呼ばれ、人のバイタルサインをモニタリングするための装置である。バイタルサインとしては、例えば、循環器機能に関するもの、呼吸器機能に関するもの、代謝機能に関するもの、脳機能に関するものなどがある。
循環器機能を測定するための生体情報モニタの例として、心電計、心拍計、脈拍計、血圧計などがある。呼吸器機能を測定するための生体情報モニタの例として、呼吸計がある。代謝機能を測定するための生体情報モニタの例として、活動量計がある。脳機能を測定するための生体情報モニタの例として、脳波計、脳磁計、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)装置がある。
以上に列挙した生体情報モニタは単なる例示であり、実施形態に適用可能な生体情報モニタはこれらに限定されない。例えば、体温、排尿、排便、意識状態などのバイタルサインを検出するための生体情報モニタを実施形態に適用することが可能である。
本例が適用される場合、眼科撮影装置1にデータ入力部40が設けられる。データ入力部40は、例えば、生体情報モニタから出力された信号を受けるインターフェイス(例えば、通信インターフェイス、端子など)を含む。データ入力部40は、例えば、OCT血流計測の適用前及び/又は適用中に、時系列的に変化する被検者の生体情報を生体情報モニタから受け付ける。同期処理部12は、データ入力部40により受け付けられた生体情報に基づいて、複数の血流データ及び複数の血流グラフの少なくとも一方を互いに同期させる。
本例において、同期処理部12は、生体情報モニタから入力される生体情報に基づいてデータ取得部30の動作を制御するように構成されていてよい。
例えば、同期処理部12は、生体情報モニタにより検出された生体情報に基づいてOCTスキャナ31の動作を制御することができる。その具体例として、生体情報モニタが心電計を含む場合、同期処理部12は、この心電計により得られる心電図の所定の時相(例えば、R波)のタイミングに合わせてOCTスキャナ31によるスキャンを開始させることができる。それにより、心拍の所定の時相をトリガーとしてOCT血流計測を開始することができる。
また、同期処理部12は、心電計により得られる心電図の所定の時相(例えば、R波)のタイミングに合わせてOCTスキャナ31によるスキャンを終了させることができる。それにより、心拍の所定の時相をトリガーとしてOCT血流計測を終了させることができる。
更に、これらの組み合わせとして、同期処理部12は、心電計により得られる心電図の所定の時相(例えば、R波)のタイミングに合わせてOCTスキャナ31によるスキャンを開始させ、当該時相の繰り返し回数をカウントし、このカウント値が所定回数(例えば、1回、2回、又は3回)に到達したタイミングでスキャンを終了させることができる。それにより、心拍サイクルの所定の繰り返し回数に相当する期間にわたる血流データを収集することができる。
他の例において、同期処理部12は、心電計により得られる心電図の所定の時相(例えば、R波)に対応する画像を形成するように画像形成部32を制御することができる。また、同期処理部12は、心拍サイクルの所定の繰り返し回数に相当する期間にわたる複数の画像を形成するように画像形成部32を制御することができる。また、同期処理部12は、画像形成部32により取得された複数の画像のうちから、心電図の所定の時相に対応する画像を選択することや、心電図の所定の期間にわたる画像群を選択することが可能である。
更に他の例において、同期処理部12は、心電計により得られる心電図の所定の時相(例えば、R波)のタイミングに応じた血流データを形成するように血流データ生成部33を制御することができる。また、同期処理部12は、心拍サイクルの所定の繰り返し回数に相当する期間にわたる血流データを形成するように血流データ生成部33を制御することができる。また、同期処理部12は、血流データ生成部33により取得された複数の血流データのうちから、心電図の所定の時相に対応する血流データを選択することや、心電図の所定の期間にわたる血流データ群を選択することが可能である。
被検眼の眼底の複数の血管位置のそれぞれに対するOCT血流計測において本例に係るいずれかの処理を適用することにより、複数の血管位置に対応する複数の血流データを互いに同期させることができ、更に、複数の血流データに基づく複数の血流グラフを互いに同期させることができる。
なお、同期処理部12により実行可能な同期処理は、上記の例に限定されない。また、心電計以外の種別の生体情報モニタが適用される場合においても、同様の処理を実行することが可能である。
〈表示制御部13〉
表示制御部13は、表示デバイス2に情報を表示するための制御を実行する。表示制御部13は、記憶部20に格納された情報に基づいて表示制御を実行することができる。
表示制御部13は、表示デバイス2に表示される情報に関する処理(生成、加工、合成等)を行うことができる。表示制御部13と他の要素(制御部10の他の要素、データ処理部40等)との連係によって、このような処理を実行するようにしてもよい。
〈記憶部20〉
記憶部20には各種データが記憶される。本例においては、少なくともOCTデータ21が記憶部20に記憶される。また、記憶部20は、眼底写真などの正面画像を記憶してもよい。なお、外部に設けられた記憶装置にOCTデータの少なくとも一部を保存し、要求に応じて眼科撮影装置1に提供するように構成してもよい。記憶部20は、例えば、ハードディスクドライブ、半導体メモリなどの記憶装置を含む。
〈OCTデータ21〉
OCTデータ21は、前述した眼底OCTデータ(1)~(5)のいずれか1以上を含む。典型的には、眼科撮影装置1は、眼底のOCTスキャンにより収集された生データから形態画像と血流データとを生成し、これらを含むOCTデータ21を記憶部20に保存する。換言すると、典型的な例では、前述した眼底OCTデータ(2)及び(4)がOCTデータ21に含まれる。また、OCT血管造影が適用された場合、OCTデータ21は、OCT血管造影で収集されたデータや、この収集データに基づく血管強調画像などを含む。
〈OCTデータ取得部30〉
OCTデータ取得部30は、被検眼の眼底にOCTを適用してデータ(例えば、記憶部20に保存されるOCTデータ21の少なくとも一部)を取得する。前述したように、OCTデータ取得部30は、OCTスキャナ31と、画像形成部32と、血流データ生成部33とを含む。画像形成部32は、画像形成プログラムを実行するプロセッサを含む。血流データ生成部33は、血流データ生成プログラムを実行するプロセッサを含む。
〈OCTスキャナ31〉
OCTスキャナ31は、スキャン制御部11による制御の下に眼底のOCTスキャンを実行する。それにより、眼底のデータ(生データ)が収集される。OCTスキャナ31は、例えばスペクトラルドメインOCT又はスウェプトソースOCTを利用した光干渉計測を実行するための構成を含む。このようなOCTスキャナ31には、従来と同様に、OCT光学系、駆動系、データ収集システム(DAQ)、制御系などが含まれる。
OCT光学系は、例えば、干渉光学系と、光スキャナと、光検出器とを含む。干渉光学系は、光源から出力された光を測定光と参照光とに分割し、この測定光を眼底に投射し、眼底からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成する。光スキャナは、ガルバノスキャナ等を含み、測定光を偏向する。それにより、眼底に対する測定光の投射位置が移動される。光検出器は、干渉光学系により生成された干渉光(のスペクトル)を検出する。
駆動系は、OCT光学系に含まれる要素を移動させたり動作させたりする。データ収集システムは、OCT光学系により逐次に得られる検出結果を収集する。制御系は、スキャン制御部11(又は、制御部10の他の要素)による制御の下に、OCT光学系、駆動系、データ収集システムなどを制御する。
OCT血流計測において、OCTスキャナ31は、予め設定された計測位置において血管に交差する断面を繰り返しスキャンしてデータを収集する。換言すると、OCTスキャナ31は、注目血管に交差する注目断面を繰り返しスキャンしてデータを収集する。このときのスキャンモードは、例えばラインスキャン(Bスキャン)である。このラインスキャンは、例えば、所定の周波数で繰り返し実行される。このような繰り返しスキャンにより収集されたデータは画像形成部32に送られる。
OCT血流計測において、更に、OCTスキャナ31は、注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるためのスキャンを行う。このスキャンは、例えば、注目血管に交差する2つの断面に対して実行される。ここで、2つの断面を注目断面の近傍に配置することができる。
なお、注目血管の傾斜角度を求めるための2つの断面の一方は、注目断面自体であってよい。他方の断面は、注目断面の近傍に設定される。この場合、上記した注目断面の繰り返しスキャンにより得られたデータを傾斜角度の算出に利用することができる。
まとめると、典型的には、OCT血流計測で実行されるスキャンは、注目断面の繰り返しスキャンと他の2つの断面のスキャンとの組み合わせでもよいし、注目断面の繰り返しスキャンと他の1つの断面のスキャンとの組み合わせでもよい。
注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるためのスキャンの態様は、これらに限定されない。例えば、3以上の断面をスキャンすることができる。或いは、注目断面を含む3次元領域をスキャンすることができる(3次元スキャン)。他の例として、注目断面に交差し、且つ、注目血管に沿った断面をスキャンすることができる。なお、OCT血流計測については、血流データ生成部33の説明において詳述する。
OCT血管造影を実行する場合、OCTスキャナ31は、眼底の3次元領域をスキャンする。このときのスキャンモードは、例えばラスタースキャン(3次元スキャン)である。このラスタースキャンは、例えば、複数のB断面(Bスキャン面)のそれぞれを所定回数ずつ(例えば4回ずつ)スキャンするように実行される。換言すると、このラスタースキャンは、複数のB断面を所定回数ずつ順次にスキャンするように、又は所定のシーケンスにしたがってスキャンするように実行される。OCTスキャナ31により収集された3次元データセットは画像形成部32に送られる。
OCTスキャナ31が実行可能なスキャンの態様は、上記した態様に限定されない。例えば、OCTスキャナ31は、形態画像を取得するためのOCTスキャンとして、ラインスキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン、3次元スキャンなどを行うことが可能である。
〈画像形成部32〉
画像形成部32は、OCTスキャナ31により収集されたデータに基づいて、OCT画像を形成する。例えば、OCT血流計測において、画像形成部32は、OCTスキャナ31により収集された3次元データセットに基づいて、各B断面について複数の断面像(Bスキャン画像)を形成する。このときの画像形成処理は、例えば、従来のOCT技術と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。
画像形成部32は、これら断面像を単一の3次元座標系に埋め込むことによりスタックデータを構築することができる。このスタックデータにおいては、各B断面に対して、スキャン繰り返し回数に対応する個数の断面像が割り当てられている。更に、画像形成部32は、このスタックデータに対して補間処理等を施すことによりボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。このボリュームデータにおいては、各B断面に相当する位置に対して、スキャン繰り返し回数に対応する個数のボクセル群が割り当てられている。
画像形成部32は、スタックデータ又はボリュームデータにレンダリングを施すことで、Bスキャン画像(縦断面像、軸方向断面像)、Cスキャン画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。
Bスキャン画像やCスキャン画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。或いは、任意断面の画像は、予め設定された厚さのスライスをその厚さ方向に投影することにより形成される。
プロジェクション画像は、スタックデータ又はボリュームデータを所定方向(Z方向、深さ方向、Aスキャン方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、スタックデータ又はボリュームデータの一部(例えば特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の角膜側を視点とする眼底画像を正面画像と呼ぶ。
画像形成部32は、レンダリングの他にも各種の画像処理を実行することが可能である。例えば、特定の組織や組織境界を求めるためのセグメンテーションや、組織のサイズ(層厚、体積等)を求めるためのサイズ解析などがある。セグメンテーションにより特定層(又は特定の層境界)が求められた場合、その特定層が平坦になるようにBスキャン画像や正面画像を再構築することが可能である。そのような画像を平坦化画像と呼ぶ。
画像形成部32は、血管強調画像を形成することができる。血管強調画像は、OCTデータを解析することで血管に相当する画像領域(血管領域)を特定し、この血管領域の表現態様を変更することでそれを強調した画像である。血管領域の特定には、被検眼の実質的に同じ範囲を繰り返しスキャンして得られた複数のOCTデータが用いられる。
血管強調画像は、例えば、OCTスキャンされた眼底の3次元領域における血管の分布(つまり、血管の3次元的な分布)を表現する。血管強調画像を形成するための手法には幾つかの種類がある。そのための典型的な手法を説明する。この処理には、被検眼の複数のB断面のそれぞれを繰り返しスキャンすることにより、時系列に並んだ複数のBスキャン画像をB断面ごとに含む3次元データセットが用いられる。なお、実質的に同じB断面を繰り返しスキャンするための手法として、固視やトラッキングがある。
血管強調画像を形成する処理では、まず、複数のBスキャン画像の位置合わせがB断面ごとに実行される。この位置合わせは、例えば、公知の画像マッチング技術を用いて行われる。その典型例として、各Bスキャン画像における特徴領域の抽出と、抽出された複数の特徴領域の位置合わせによる複数のBスキャン画像の位置合わせとを実行することができる。
続いて、位置合わせされた複数のBスキャン画像の間で変化している画像領域を特定する処理が行われる。この処理は、例えば、異なるBスキャン画像の間の差分を求める処理を含む。各Bスキャン画像は、被検眼の形態を表す輝度画像データであり、血管以外の部位に相当する画像領域は実質的に不変であると考えられる。一方、干渉信号に寄与する後方散乱が血流によってランダムに変化することを考慮すると、位置合わせされた複数のBスキャン画像の間で変化が生じた画像領域(例えば、差分がゼロでない画素、又は差分が所定閾値以上である画素)は血管領域であると推定することができる。
このようにして特定された画像領域には、それが血管領域である旨を示す情報が割り当てられる。複数のB断面について上記処理を実行することにより、3次元的に分布した血管領域が得られる。このような3次元血管強調画像をレンダリングすることで、血管分布を表す正面画像、任意断面の画像、任意範囲のシャドウグラムなどが生成される。
血管強調画像を形成する処理はこれに限定されない。例えば、ドップラーOCTを利用した従来の手法で血管領域を特定することや、従来の画像処理手法を用いて血管領域を特定することが可能である。また、部位に応じて異なる手法を用いることにより、部位ごとに血管領域を特定することが可能である。例えば、網膜については上記の典型的な手法やドップラーOCTの手法を用いて血管領域を特定し、脈絡膜については画像処理手法を用いて血管領域を特定することができる。
〈血流データ生成部33〉
血流データ生成部33は、OCT血流計測において動作する。血流データ生成部33は、OCT血流計測においてOCTスキャナ31により収集されたデータに基づき画像形成部32によって形成された注目断面の画像と、注目断面における注目血管の傾斜角度とに基づいて、注目血管における血流状態を表す血流データを生成する。
OCT血流計測においてOCTスキャナ31により収集されたデータは、注目血管に交差する注目断面を繰り返しスキャンして収集されたデータ(第1データ)と、注目血管に交差し、且つ、注目断面と異なる1以上の断面(注目断面の近傍の断面)をスキャンして得られたデータ(第2データ)とを含む。なお、第2データの代わりに、例えば、OCT血流計測とは別途に取得された、注目断面の位置又はその近傍位置における注目血管の傾斜角度を用いることができる。その例として、OCT血管造影により得られた血管強調画像から求められた傾斜角度を用いることが可能である。
画像形成部32は、OCT血流計測においてOCTスキャナ31により収集されたデータに基づいて、眼底の形態画像と位相画像とを形成する。OCT血流計測で得られる形態画像と位相画像とは同じ断面に対応する画像である。典型的には、注目断面(B断面)に対応する形態画像と位相画像とが得られる。
前述したように、典型的なOCT血流計測では、眼底に対して2種類のスキャン(補助的スキャン及び本スキャン)が実行される。補助的スキャンは、注目断面と異なる1以上の断面(注目断面の近傍の断面)をスキャンして第2データを収集するために実行される。典型的な補助的スキャンでは、注目血管に交差する2以上の断面が測定光でスキャンされる。補助的スキャンにより取得されたデータは、注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるために用いられる。一方、本スキャンは、注目血管に交差する注目断面を測定光で反復的にスキャンして第1データを収集するために実行される。補助的スキャンが行われる断面は、注目断面の近傍に配置される。本スキャンは、OCTを用いたドップラー計測である。
補助的スキャン及び本スキャンの対象断面は、例えば、注目血管の走行方向に対して直交するように向き付けられる。また、補助的スキャンの対象断面と注目断面との間の距離(断面間距離)は、事前に設定されるか、或いは、検査ごとに設定される。後者の例として、注目断面又はその近傍における注目血管の曲率や、検査精度等の所定のファクターに基づいて、断面間距離を設定することが可能である。また、ユーザーが所望の断面間距離を設定するようにしてもよい。
本スキャンは、患者の心臓の少なくとも1心周期の間にわたって実行されることが望ましい。それにより、心拍の全ての時相における血流データが得られる。本スキャンの実行時間は、予め設定された一定の時間であってもよいし、患者ごとに又は検査ごとに設定された時間であってもよい。
画像形成部32は、例えば、注目断面の近傍に設定された2つの補助的断面に対する補助的スキャンにより収集されたデータに基づいて、第1補助的断面の形態を表す断面像と、第2補助的断面の形態を表す断面像とを形成する。このとき、加算平均等の技術を利用して画質向上を図ることや、各補助的断面の2以上の断面像から最適な1枚を選択することが可能である。
更に、画像形成部32は、注目断面に対する本スキャン(反復的スキャン)により収集されたデータに基づいて、注目断面における時系列変化を表す断面像群を形成する。この処理は、例えば、スキャンの反復ごとに収集されたデータから断面像を形成することにより実現される。
画像形成部32が実行する処理は、例えば従来のOCT技術と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。なお、ここで説明した注目断面の断面像を形成する処理は、画像形成部32が実行する形態画像形成処理と同様である。
更に、画像形成部32は、注目断面に対する本スキャンにより収集されたデータに基づいて、注目断面における位相差の時系列変化を表す位相画像を形成する。この処理に用いられるデータは、注目断面の断面像(群)を形成するために用いられるデータと同じである。よって、注目断面の断面像と位相画像との間には自然な位置対応関係があり、レジストレーションは自明である。
位相画像の形成方法の例を説明する。典型的な例において、位相画像は、隣り合うAライン複素信号(隣接するスキャン点に対応する信号)の位相差を算出することにより得られる。換言すると、この例の位相画像は、注目断面の断面像の各画素について、その画素の画素値(輝度値)の時系列変化に基づき形成される。任意の画素について、画像形成部32は、その輝度値の時系列変化のグラフを考慮する。画像形成部32は、このグラフにおいて所定の時間間隔Δtだけ離れた2つの時点t1及びt2(t2=t1+Δt)の間における位相差Δφを求める。そして、この位相差Δφを時点t1(より一般に2つの時点t1及びt2の間の任意の時点)における位相差Δφ(t1)として定義する。予め設定された多数の時点のそれぞれについてこの処理を実行することで、当該画素における位相差の時系列変化が得られる。
位相画像は、各画素の各時点における位相差の値を画像として表現したものである。この画像化処理は、例えば、位相差の値を表示色や輝度で表現することで実現できる。このとき、時系列に沿って位相が増加したことを表す色(例えば赤)と、減少したことを表す色(例えば青)とを違えることができる。また、位相の変化量の大きさを表示色の濃さで表現することもできる。このような表現方法を採用することで、血流の向きや大きさを色や濃度で表現することが可能となる。以上の処理を各画素について実行することにより位相画像が形成される。
なお、位相差の時系列変化は、上記の時間間隔Δtを十分に小さくして位相の相関を確保することにより得られる。このとき、測定光のスキャンにおいて断面像の分解能に相当する時間未満の値に時間間隔Δtを設定したオーバーサンプリングが実行される。
血流データ生成部33は、例えば、血管領域特定処理と、傾斜角度算出処理と、血流データ生成処理とを実行することができる。血流データ生成処理は、例えば、血流速度算出処理を少なくとも含み、血管径算出処理と血流量算出処理とを更に含んでもよい。
血管領域特定処理において、血流データ生成部33は、注目血管に対応する各断面像中の血管領域を特定する。更に、血流データ生成部33は、注目断面に対応する位相画像中の血管領域を特定する。血管領域の特定は、各画像の画素値を解析することにより行われる(例えば閾値処理)。注目断面に対応する断面像中の血管領域と、この断面像と位相画像との間のレジストレーションの結果とに基づいて、位相画像中の血管領域を特定するようにしてもよい。
傾斜角度算出処理において、血流データ生成部33は、補助的スキャンにより取得されたデータから形成された画像(群)に基づいて、注目断面における注目血管の傾斜角度を算出する。
傾斜角度算出処理の例を説明する。図2を参照する。符号B0は、血管傾斜角度が算出される注目断面における断面像(注目断面像)を示す。注目断面像B0には、血管領域V0が描出されている。符号B11及びB12は、注目断面B0の近傍に位置する2つの補助的断面における2つの断面像(補助的断面像)を示す。補助的断面像B11には、血管領域V0と同じ血管(注目血管)の補助的断面B11における血管領域V11が描出されている。同様に、補助的断面像B12には、注目血管の補助的断面B12における血管領域V12が描出されている。
血流データ生成部33は、注目断面像B0と補助的断面像B11及びB12とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きを算出する。なお、参照される補助的断面像の個数は2つに限定されず、1以上の任意個数であってよい。
血流データ生成部33は、血管領域V0、V11及びV12と断面間距離とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きを算出する。断面間距離は、補助的断面像B11と補助的断面像B12との間の距離であってよい。或いは、断面間距離は、補助的断面像B11と注目断面像B0との間の距離と、補助的断面像B12と注目断面像B0との間の距離とのうちの少なくとも一方により定義されてもよい。補助的断面像B11(又はB12)と注目断面像B0との間隔をLとする。
図2に示すAスキャン方向(下方を指す矢印が指す方向)は、例えば、注目断面像B0に含まれるAスキャン像の向きを示す。このAスキャン像は、例えば、注目断面像B0に含まれる複数のAスキャン像の中央に位置するAスキャン像であってよい。
典型的な例において、血流データ生成部33は、3つの血管領域V0、V11及びV12の位置関係に基づいて、注目断面における注目血管の傾きAを算出することができる。この位置関係は、例えば、3つの血管領域V0、V11及びV12を結ぶことによって得られる。より具体的に説明すると、血流データ生成部33は、3つの血管領域V0、V11及びV12のそれぞれの特徴点を特定し、これら特徴点を結ぶ。ここで参照される特徴点としては、中心位置(軸線位置)、重心位置、最上部などがある。また、これら特徴点を結ぶ方法としては、線分で結ぶ方法、近似曲線(スプライン曲線、ベジェ曲線等)で結ぶ方法などがある。
更に、血流データ生成部33は、これら特徴点を結ぶ線に基づいて傾きAを算出する。線分が用いられる場合、血流データ生成部33は、例えば、注目断面像B0内の血管領域V0の特徴点と補助的断面像B11内の血管領域V11の特徴点とを結ぶ第1線分の傾きと、血管領域V0の当該特徴点と補助的断面像B12内の血管領域V12の特徴点とを結ぶ第2線分の傾きとに基づいて、傾きAを算出することができる。この算出処理の例として、2つの線分の傾きの平均値を求めることができる。また、近似曲線で結ぶ場合の例として、近似曲線と注目断面との交差位置における近似曲線の傾きを求めることができる。
この例では、3つの断面における血管領域を考慮しているが、2つの断面の血管領域を考慮して傾きを求めることも可能である。具体例として、補助的断面像B11内の血管領域V11と補助的断面像B12内の血管領域V12とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きAを求めることができる。或いは、補助的断面像B11内の血管領域V11と注目断面像B0内の血管領域V0とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きAを求めることもできる。例えば、上記の第1線分又は第2線分の傾きを求め、これを注目血管の傾きAとして採用することができる。
また、上記の例では傾きAの値を1つだけ求めているが、血管領域V0中の2以上の位置(又は領域)についてそれぞれ傾きを求めてもよい。この場合、得られた2以上の傾きの値を別々に用いることもできるし、これら傾きの値から統計的に得られる1つの値(例えば平均値)を傾きAとして用いることもできる。
血流データ生成処理において、血流データ生成部33は、本スキャン(ドップラーOCT)に基づき形成された位相画像と、血流データ生成部33により求められた傾斜角度とに基づいて、注目血管に関する血流データを生成する。前述したように、典型的な例において、血流データ生成処理は、血流速度算出処理と、血管径算出処理と、血流量算出処理とを含む。
血流データ生成部33は、位相画像として得られた位相差の時系列変化に基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における血流速度を算出することができる。本処理により算出される値は、或る時点における血流速度でもよいし、血流速度の時系列変化(血流速度変化データ)でもよい。前者の場合、例えば心電図の所定の時相(例えばR波の時相)における血流速度を選択的に取得することが可能である。また、後者における時間の範囲は、注目断面をスキャンした時間の全体又は任意の一部である。
血流速度変化データが得られた場合、血流データ生成部33は、当該時間の範囲における血流速度の統計値を算出することができる。この統計値としては、平均値、標準偏差、分散、中央値、最大値、最小値、極大値、極小値などがある。また、血流速度の値についてのヒストグラムを作成することもできる。
血流データ生成部33は、前述のようにドップラーOCTの手法を用いて血流速度を算出することができる。血流速度の算出には、例えば次の関係式が用いられる。
Δf:測定光の散乱光が受けるドップラーシフト
n:媒質(血液)の屈折率
v:媒質の流速(血流速度)
θ:測定光の入射方向と媒質の流れの方向とが成す角度(傾斜角度)
λ:測定光の中心波長
典型的な例において、媒質の屈折力nと測定光の中心波長λはそれぞれ既知であり、ドップラーシフトΔfは位相差の時系列変化から得られ、傾斜角度θは傾斜角度算出処理又は血管角度分布から得られる。血流データ生成部33は、これらの値を上記関係式に代入することにより、血流速度vを算出することができる。
血管径算出処理において、血流データ生成部33は、注目断面における注目血管の径を算出する。この算出方法の例として、眼底の正面画像を用いる第1の算出方法と、断面像を用いる第2の算出方法がある。
第1の算出方法が適用される場合、注目断面の位置を含む眼底の部位の撮影が予め行われる。この眼底撮影は、例えば正面画像取得部60により行われる。或いは、過去に取得されて保存された眼底の正面画像を読み出してもよい。また、血管強調画像を利用してもよい。
血流データ生成部33は、撮影画角(撮影倍率)、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて、眼底の正面画像におけるスケールを設定する。このスケールは実空間における長さを表す。具体例として、このスケールは、隣接する画素の間隔と、実空間におけるスケールとを対応付けたものである(例えば画素の間隔=10μm)。なお、上記ファクターの様々な値と、実空間でのスケールとの関係を予め算出し、この関係をテーブル形式やグラフ形式で表現した情報を記憶しておくことも可能である。この場合、上記ファクターに対応するスケールが選択的に適用される。
血流データ生成部33は、このスケールと血管領域に含まれる画素とに基づいて、注目断面における注目血管の径、つまり血管領域の径を算出する。具体例として、血流データ生成部33は、血管領域の様々な方向の径の最大値や平均値を求めることができる。或いは、血流データ生成部33は、血管領域の輪郭を円近似又は楕円近似し、その円又は楕円の径を求めることができる。なお、血管径が決まれば血管領域の面積を(実質的に)決定することができるので、血管径を求める代わりに当該面積を算出するようにしてもよい。
第2の算出方法について説明する。第2の算出方法では、注目断面における眼底の断面像が用いられる。この断面像は、本スキャンに基づく断面像でもよいし、これとは別に取得されたものでもよい。この断面像におけるスケールは、測定光のスキャン態様に応じて決定される。注目断面の長さは、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて決定される。血流データ生成部33は、例えば、注目断面の長さに基づいて隣接する画素の間隔を求め、第1の算出方法と同様にして注目断面における注目血管の径を算出することができる。
血流量算出処理において、血流データ生成部33は、血流速度の算出結果と血管径の算出結果とに基づいて、注目血管内を流れる血液の流量を算出する。この処理の一例を以下に説明する。
血管内における血流がハーゲン・ポアズイユ流(Hagen-Poiseuille flow)と仮定する。また、血管径をwとし、血流速度の最大値をVmとする。この場合、血流量Qは次の関係式で表される。
血流データ生成部33は、血管径算出処理により得られた血管径wと、血流速度算出処理により得られた血流速度における最大値Vmとを上記関係式に代入することにより、(単位時間当たりの)血流量Qを算出することができる。
〈操作部50〉
操作部50は、眼科撮影装置1に対してユーザーが指示を入力するために使用される。操作部50は、眼科装置やコンピュータに用いられる公知の操作デバイスを含んでよい。例えば、操作部50は、マウス、タッチパッド、トラックボール、キーボード、ペンタブレット、操作パネル、ジョイスティック、ボタン、スイッチ等を含んでよい。
操作部50は、タッチパネルを含んでもよい。この場合、表示制御部13は、指示や情報を入力するためのGUIをタッチパネルに表示することができる。
〈正面画像取得部60〉
正面画像取得部60は、眼底の正面画像を取得する。正面画像を取得するための処理は任意である。
第1の例において、正面画像取得部60は、眼底を撮影するための構成を含んでよい。例えば、正面画像取得部60は、眼底カメラの光学系、SLOの光学系、スリットランプ顕微鏡の光学系、眼科手術用顕微鏡の光学系など、任意の眼科モダリティの光学系を含んでいてよい。
なお、正面画像は、Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、血管強調画像などのOCT正面画像であってよい。この場合、正面画像取得部60は、OCTデータ取得部30(特に、OCTスキャナ31及び画像形成部32)に含まれていてよい。
或いは、正面画像取得部60は、OCTデータ取得部30によって取得されたデータ(例えば、OCTスキャナ31により収集されたデータ、画像形成部32により形成された画像データなど)に基づき正面画像を形成するプロセッサを含んでよい。
第2の例において、正面画像取得部60は、被検眼の眼底の正面画像を外部装置から取得するための構成を含んでよい。
例えば、正面画像取得部60は、LAN、インターネット、専用線等の通信回線を介してデータの送受信を行うための通信インターフェイスを含んでいてよい。この場合、正面画像取得部60は、例えば電子カルテシステムや画像アーカイビングシステムに格納されている被検眼の眼底の正面画像を、患者IDやDICOMタグ等を検索クエリとして取得することができる。
或いは、正面画像取得部60は、記録媒体に予め記録されたデータ(特に、被検眼の眼底の正面画像)を読み出すデータリーダを含んでいてよい。
〈動作〉
本実施形態に係る眼科撮影装置1の動作の例を説明する。眼科撮影装置1の動作の典型的な例を図3に示す。なお、患者ID等の入力、被検眼に対する光学系のアライメント、光学系のフォーカス調整、OCT光路長調整、固視位置の調整、OCTスキャン範囲の設定などの準備的処理は、既になされているものとする。
(S1:眼底の正面画像を取得する)
まず、制御部10は、正面画像取得部60を制御して被検眼の眼底の正面画像を取得させる。なお、正面画像の取得を行うタイミングは本例に限定されない。
一般に、OCT血流計測の前の任意のタイミング、OCT血流計測が行われているときの任意のタイミング、OCT血流計測とOCT血流計測との間の任意のタイミング、及び、OCT血流計測の後の任意のタイミングのいずれかにおいて、眼底画像を取得することができる。例えば、カラー眼底像のように可視光撮影で得られた画像が正面画像として使用される場合、可視光による縮瞳の影響を考慮して、OCT血流計測の後に正面画像を取得するように制御を行うことができる。
(S2:眼底の複数の血管位置に対してOCT血流計測を適用する)
眼科撮影装置1は、被検眼の眼底の複数の血管位置にそれぞれに対してOCT血流計測を適用する。本例では、血管位置は、注目血管の注目断面として設定される。
OCT血流計測において、スキャン制御部11は、OCTスキャナ31に含まれる光源や光スキャナを制御する。複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、OCTスキャナ31は、スキャン制御部11による制御の下、当該血管位置において注目血管に交差する第1断面を繰り返しスキャンして第1データを収集し、更に、注目断面の近傍において注目血管に交差する1以上の補助的断面をスキャンして第2データを収集する。なお、第1データの収集と第2データの収集の順序は任意である。
(S3:各血管位置について、形態画像を形成する)
複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、画像形成部32は、ステップS2において当該注目断面を繰り返しスキャンして収集された第1データに基づいて、当該注目断面に対応する1以上の形態画像(Bスキャン画像)を形成する。典型的には、スキャンの繰り返し回数と同じ枚数の形態画像を形成することができる。これにより、複数の血管位置のそれぞれについて、当該血管位置に対応する時系列Bスキャン画像が得られる。なお、スキャンの繰り返し回数よりも少ない枚数の形態画像を形成するようにしてもよい。
更に、複数の血管位置のそれぞれについて、画像形成部32は、ステップS2において1以上の補助的断面をスキャンして収集された第2データに基づいて、各補助的断面に対応する形態画像(Bスキャン画像)を形成する。
ステップS3において形成された各形態画像は、OCTデータ21として記憶部20に保存される。
(S4:各血管位置について、注目血管の傾斜角度を求める)
複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、血流データ生成部33は、当該血管位置に関してステップS3で形成された複数の形態画像のうちの2以上の形態画像に基づいて、当該注目断面における注目血管の傾斜角度を求める。この処理には、例えば、2つの補助的断面に対応する2つの形態画像の組み合わせ、又は、1つの補助的断面に対応する形態画像と当該注目断面に対応する形態画像との組み合わせが用いられる。
(S5:各血管位置について、位相画像を形成する)
複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、画像形成部32は、ステップS2において当該注目断面を繰り返しスキャンして収集された第1データに基づいて、当該注目断面に対応する位相画像を形成する。
ステップS5において形成された位相画像は、OCTデータ21として記憶部20に保存される。
(S6:各血管位置について、血流データを求める)
複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、血流データ生成部33は、ステップS4で求められた注目血管の傾斜角度と、ステップS5で形成された位相画像とに基づいて、当該注目断面を通過する注目血管についての血流データを生成する。この血流データは、例えば、注目血管における血流の時系列変化を表すデータを含む。このようなデータの例として、ステップS2で実行されたOCT血流計測の計測期間(典型的には、1心周期以上の長さの期間)における血流速度の時系列変化や、当該計測期間における単位時間当たり血流量の時系列変化などがある。
ステップS6において生成された血流データは、OCTデータ21として記憶部20に保存される。
(S7:各血管位置について、血流グラフを作成する)
複数の血管位置(つまり、複数の注目断面)のそれぞれについて、表示制御部13は、ステップS6で生成された血流データに基づいて、被検眼の眼底血流動態を表す血流グラフを作成する。この血流グラフは、当該注目断面における注目血管内の血流の時系列変化を表す。
血流グラフ作成処理は、例えば、次の処理を含む。
(1)ステップS6で生成された血流データ(例えば、血流速度、又は単位時間当たり血流量)を、横軸(第1座標軸)が時間tを示し、且つ、縦軸(第2座標軸)が血流速度(v)を示す2次元直交座標系にプロットする処理
(2)プロットされた点群を線でつなぐ処理。
ここで、プロットされる点群の値(つまり、縦軸の値)は、例えば、対応する時相(つまり、横軸の値)における注目血管断面に相当する複数の画素の値(つまり、血流速度の大きさなどに対応する値)の統計値であってよい。この統計値は、例えば、平均値、中間値、最頻値、最大値、最小値などであってよい。或いは、縦軸の値は、対応する時相における注目血管断面内の所定の画素(例えば、中心に位置する画素、重心に位置する画素など)の値であってもよい。
また、プロットされた点群を線でつなぐ処理は、時間的に隣接する点同士を線で接続する処理を含む。隣接する点同士を接続する線は、直線でも曲線でもよい。接続線が曲線である場合、例えば、プロットされた点群を制御点とする任意の近似曲線(例えば、スプライン曲線、ベジエ曲線など)を適用することが可能である。また、ラグランジュ補間などを適用して点群を補間するようにしてもよい。
(S8:複数の血流グラフを互いに同期させる)
同期処理部12は、ステップS7で作成された複数の血流グラフに対し、例えば前述した同期処理を適用する。
(S9:正面画像、計測位置情報、及び血流グラフを表示する)
表示制御部13は、ステップS1で取得された眼底の正面画像と、OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報と、ステップS7で作成された複数の血流グラフのうちの少なくとも1つとを、表示デバイス2に表示させる。
複数の計測位置情報は、眼底の正面画像とともに表示される。典型的には、複数の計測位置情報は、眼底の正面画像に重ねて表示される。或いは、複数の計測位置情報は、眼底の正面画像の近傍に表示される。
眼底の正面画像と複数の血管位置との間の対応付け(典型的には、眼底の正面画像における複数の計測位置情報の表示位置の決定)について、幾つかの例を説明する。なお、眼底の正面画像と複数の血管位置との間の対応付けの手法は、下記の例示に限定されない。
第1の例において、所定の眼底正面画像(例えば、ステップS1若しくは任意のタイミングで取得された正面画像、又は、これとの対応付け(レジストレーション)が可能な画像)に対して複数の血管位置が設定され、且つ、これら血管位置に対してステップS2のOCT血流計測が適用される。設定された複数の血管位置に対するOCT血流計測は、例えば次のような複数の処理を介して実行される:OCT血流計測と並行して眼底観察(つまり、正面画像の反復的取得)を実行する;これにより得られる眼底観察画像と上記した所定の眼底正面画像との間のレジストレーションを実行する;このレジストレーションの結果を介して複数の血管位置のそれぞれを眼底観察画像中の位置に変換する;眼底観察画像中に設定された位置に対してOCT血流計測を適用する。本例では、所定の眼底正面画像に対して設定された複数の血管位置のそれぞれに対して、当該血管位置に対応する位置に対して適用されたOCT血流計測で得られた血流データに基づく血流グラフが対応付けられる。
第2の例において、OCT血流計測と並行して眼底観察が実行される。OCT血流計測が適用された複数の位置(つまり、複数の血管位置)は、眼底観察により得られた眼底観察画像中の位置(座標)として記録される。この眼底観察画像と、ステップS1等で取得された眼底の正面画像との間のレジストレーションが実行される。このレジストレーションの結果を介して、眼底観察画像とともに記録された複数の血管位置のそれぞれが、眼底の正面画像中の位置に変換される。本例では、OCT血流計測が適用された複数の血管位置のそれぞれにおける血流グラフに対して、当該血管位置に対応する正面画像中の位置が対応付けられる。
ステップS9で表示される情報の例を図4に示す。符号110は、ステップS1で取得された眼底の正面画像である。また、符号121、122、123、124、125及び126は複数の計測位置情報に相当し、ステップS2においてOCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す。すなわち、計測位置情報121~126のそれぞれは、本スキャンが適用されたB断面の位置を示す。本例は、眼底の6つの血管位置に対してOCT血流計測が適用された場合を示す。
本例では、ステップS7において、6つの計測位置情報121~126により示される6つの血管位置に対応する6つの血流グラフ141、142、143、144、145及び146が作成される。作成された6つの血流グラフ141~146は、ステップS8において、互いに同期される。本例における血流グラフ141~146のそれぞれは、血流速度(v)の時系列変化を表している。
本例では、表示制御部13は、更に、6つの計測位置情報121~126と6つの血流グラフ141~146とを視覚的に関連付ける関連情報を表示させる。「視覚的に関連付ける」とは、例えば、計測位置情報と血流グラフとの対応関係を視覚を通じて認識可能に提示することを意味する。
本例の関連情報は、互いに対応する計測位置情報と血流グラフとのそれぞれの近傍に提示された共通の付帯情報を含む。具体的には、互いに対応する計測位置情報121と血流グラフ141とについて、計測位置情報121の近傍には付帯情報「A」131が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「A」151が血流グラフ141の近傍に提示されている。
同様に:互いに対応する計測位置情報122と血流グラフ142とについて、計測位置情報122の近傍には付帯情報「B」132が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「B」152が血流グラフ142の近傍に提示されている;互いに対応する計測位置情報123と血流グラフ143とについて、計測位置情報123の近傍には付帯情報「C」133が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「C」153が血流グラフ143の近傍に提示されている;互いに対応する計測位置情報124と血流グラフ144とについて、計測位置情報124の近傍には付帯情報「D」134が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「D」154が血流グラフ144の近傍に提示されている;互いに対応する計測位置情報125と血流グラフ145とについて、計測位置情報125の近傍には付帯情報「E」135が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「E」155が血流グラフ145の近傍に提示されている;互いに対応する計測位置情報126と血流グラフ146とについて、計測位置情報126の近傍には付帯情報「F」136が提示され、且つ、これと共通の付帯情報「F」156が血流グラフ146の近傍に提示されている。
本例の付帯情報151~156はアルファベットを含むが、付帯情報はこれに限定されない。例えば、付帯情報は、他の種類の文字列(例えば、数字、各国の文字など)を含んでいてよい。また、付帯情報は、マーク等の画像情報を含んでいてよい。
このような付帯情報(関連情報)により、ユーザーは、OCT血流計測が適用された血管位置(つまり、計測位置情報が示す位置)と血流グラフとの対応関係を容易に把握することができる。例えば、ユーザーは、或る血流位置におけるOCT血流計測の結果として得られた血流グラフを容易に特定することができる。逆に、ユーザーは、或る血流グラフがどの血管位置の計測結果を表しているか容易に把握することができる。一般に、任意個数の計測位置情報と任意個数の血流グラフとが表示されている場合にも同様の効果が奏される。
ステップS9で表示される情報の他の例を図5に示す。符号110は、ステップS1で取得された眼底の正面画像である。また、符号161、162、163、164、165及び166は複数の計測位置情報に相当し、ステップS2においてOCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す。
本例においても、6つの計測位置情報161~166により示される6つの血管位置に対応する6つの血流グラフ171、172、173、174、175及び176が作成される。作成された6つの血流グラフ171~176は、ステップS8において、互いに同期される。本例における血流グラフ171~176のそれぞれは、血流速度(v)の時系列変化を表している。
本例では、表示制御部13は、図4に示す例とは異なる関連情報を表示させる。本例の関連情報は、計測位置情報161~166と血流グラフ171~176とに付される色情報である。具体的には、表示制御部13は、互いに対応する計測位置情報と血流グラフとを共通の色で表示させる。例えば:互いに対応する計測位置情報161と血流グラフ171とのそれぞれが共通の黒色で表示される;互いに対応する計測位置情報162と血流グラフ172とのそれぞれが共通の赤色で表示される;互いに対応する計測位置情報163と血流グラフ173とのそれぞれが共通の青色で表示される;互いに対応する計測位置情報164と血流グラフ174とのそれぞれが共通の黄色で表示される;互いに対応する計測位置情報165と血流グラフ175とのそれぞれが共通の緑色で表示される;互いに対応する計測位置情報166と血流グラフ176とのそれぞれが共通のオレンジ色で表示される。
このような付帯情報(関連情報)によっても、ユーザーは、OCT血流計測が適用された血管位置(つまり、計測位置情報が示す位置)と血流グラフとの対応関係を容易に把握することができる。
図6A及び図6Bを参照しつつ情報表示制御の一例を説明する。符号110は、ステップS1で取得された眼底の正面画像である。また、符号181、182、183、184、185及び186は複数の計測位置情報に相当し、ステップS2においてOCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す。
本例においても、6つの計測位置情報181~186により示される6つの血管位置に対応する6つの血流グラフ191、192、193、194、195及び196が作成される。作成された6つの血流グラフ191~196は、ステップS8において、互いに同期される。本例における血流グラフ191~196のそれぞれは、血流速度(v)の時系列変化を表している。
本例では、まず、血流グラフ191~196の全てが表示されている。なお、この段階において、血流グラフ191~196のうちのいずれか1つ以上を表示させるようにしてもよい。
ユーザーは、計測位置情報181~186のうちの所望の計測位置情報を、操作部50を用いて選択する。この選択操作は、例えば、マウス等のポインティングデバイスを用いて所望の計測位置情報をクリックする操作である。
また、本例では、表示デバイス2に既に表示されている血流グラフに対応する計測位置情報が選択されたとする。例えば、図6Aに示す例では、6つの血流グラフ191~196の全てが既に表示されているので、6つの計測位置情報181~186のうちのいずれかが選択される。なお、表示デバイス2に現に表示されていない血流グラフに対応する計測位置情報が選択された場合については、次の例で説明する。
ユーザーが所望の計測位置情報を選択すると、表示制御部13は、選択された計測位置情報に対応する血流グラフの表示態様を変更する。この制御は、例えば、選択された計測位置情報に対応する血流グラフ自体の表示態様を変更する制御、及び/又は、選択された計測位置情報に対応する血流グラフの周囲(又は、その近傍)の表示態様を変更する制御を含む。
血流グラフ自体の表示態様を変更する制御の例として、血流グラフの色を変更する制御、血流グラフの太さを変更する制御、血流グラフの線の種類(実線、点線、破線など)を変更する制御、血流グラフの先の濃度を変更する制御などのうちのいずれかを実行することが可能である。
血流グラフの周囲(又は、その近傍)の表示態様を変更する制御の例として、前述した付帯情報を血流グラフの近傍に表示させる制御、血流グラフの周囲の表示色を変更する制御、血流グラフの周囲の濃度を変更する制御などのうちのいずれかを実行することが可能である。
このような血流グラフの表示態様の変更とともに、表示制御部13は、ユーザーにより選択された計測位置情報の表示態様を変更する制御、及び/又は、選択された計測位置情報の周囲(又は、その近傍)の表示態様を変更する制御を実行してもよい。計測位置情報に関する表示態様の変更は、例えば、血流グラフに関する表示態様の変更と同じ要領で行われる。
例えば、表示制御部13は、選択された計測位置情報の表示色と、これに対応する血流グラフの表示色とを、同じ色に変更する。図6Bは、ユーザーが計測位置情報182を選択し、表示制御部13が計測位置情報182の表示態様とこれに対応する血流グラフ192の表示態様とを変更した場合の例を表している。
他の例において、表示制御部13は、選択された計測位置情報の近傍と、これに対応する血流グラフの近傍とに、同じ付帯情報を表示させる。
このような表示制御によれば、ユーザーは、所望の血管位置(つまり、計測位置情報が示す位置)を選択することができ、更に、選択された血管位置と血流グラフとの対応関係を容易に把握することができる。
図7A及び図7Bを参照しつつ情報表示制御の一例を説明する。符号110は、ステップS1で取得された眼底の正面画像である。また、符号201、202、203、204、205及び206は複数の計測位置情報に相当し、ステップS2においてOCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す。
本例においても、6つの計測位置情報201~206により示される6つの血管位置に対応する6つの血流グラフ211、212、213、214、215及び216が作成される。作成された6つの血流グラフ211~216は、ステップS8において、互いに同期される。本例における血流グラフ211~216のそれぞれは、血流速度(v)の時系列変化を表している。
図7Aに示す段階では、血流グラフ191~196のいずれも表示されていない。なお、この段階において、血流グラフ191~196の一部を表示させるようにしてもよい。
ユーザーは、計測位置情報201~206のうちの所望の計測位置情報を、操作部50を用いて選択する。この選択操作は、例えば、マウス等のポインティングデバイスを用いて所望の計測位置情報をクリックする操作である。本例では、選択操作の段階において表示デバイス2に表示されていない血流グラフに対応する計測位置情報が選択されたとする。例えば、図7Aに示す例では、6つの血流グラフ211~216のいずれも表示されていないので、6つの計測位置情報201~206のうちのいずれかが選択される。なお、表示デバイス2に既に表示されている血流グラフに対応する計測位置情報が選択された場合については、図6A及び図6Bに示す例で説明した。
ユーザーが所望の計測位置情報を選択すると、表示制御部13は、選択された計測位置情報に対応する血流グラフを表示デバイス2に表示させる。このような血流グラフの表示制御とともに、表示制御部13は、ユーザーにより選択された計測位置情報の表示態様を変更する制御、及び/又は、選択された計測位置情報の周囲(又は、その近傍)の表示態様を変更する制御を実行してもよい。
図7Bは、ユーザーが計測位置情報202及び204を選択し、表示制御部13が計測位置情報202及び204の表示態様を変更し、且つ、これらに対応する血流グラフ212及び204を表示させた場合の例を表している。
本例において、表示制御部13は、選択された計測位置情報のそれぞれと、これに対応する血流グラフとを視覚的に関連付ける前述の関連情報を表示させてもよい。
このような表示制御によれば、ユーザーは、所望の血管位置(つまり、計測位置情報が示す位置)を選択してその血流グラフを観察することができる。更に、ユーザーは、選択された血管位置と血流グラフとの対応関係を容易に把握することができる。
図8を参照しつつ情報表示制御の一例を説明する。本例では、血流パラメータは、単位時間当たり血流量であるとし、血流グラフは、単位時間当たり血流量の時系列変化を表すものとする。
この場合において、表示制御部13は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置に対応する複数の血流データに基づいて、OCT血流計測が適用された複数の血管位置(のうちのいずれか少なくとも2つの血管位置)における単位時間当たり血流量の時系列変化を表す総血流量グラフを表示させることができる。換言すると、表示制御部13は、2以上の血管位置について取得された2以上の血流量から算出される値の時系列変化を表示させることができる。この値は、2以上の血流量から算出可能な任意の統計値であってよい。この統計値は、例えば、2以上の血流量の和(合計血流量)、2以上の血流量の平均値(平均血流量)、2以上の血流量のばらつき(標準偏差、分散など)、2以上の血流量のうちの最大値又は最小値などであってよい。なお、OCT血流計測が適用された複数の血管位置の全てに対応する複数の血流量の和が算出される場合、血流パラメータとして全血流量の時系列変化が得られ、それを所定期間にわたって積分することで全血流量が得られる。
本例において表示される情報の例を図8に示す。図4に示す例と同様に、本例では、眼底の正面画像110と、複数の計測位置情報221、222、223、224、225及び226と、複数の血流グラフ241、242、243、244、245及び246とが表示される。更に、図4に示す例と同様に、複数の計測位置情報221~246と複数の血流グラフ241~246とを関連付ける関連情報が表示される。具体的には、関連情報は、複数の計測位置情報221、222、223、224、225及び226のそれぞれの近傍に表示された付帯情報群231、232、233、234、235及び236と、複数の血流グラフ241、242、243、244、245及び246のそれぞれの近傍に表示された付帯情報群251、252、253、254、255及び256とを含む。
ただし、図4に示す血流グラフ141~146と異なり、本例における血流グラフ241~246のそれぞれは、単位時間当たりの血流量Qの時系列変化を表している。
本例のように血流パラメータが単位時間当たり血流量である場合、表示制御部13は、複数の血管位置(つまり、複数の計測位置情報221~226が示す位置)に対応する複数の血流データ(例えば、複数の血流グラフ241~246)に基づいて、複数の血管位置における単位時間当たり血流量の和の時系列変化を表す総血流量グラフ240を表示させることができる。なお、前述したように、平均血流量などの任意の統計値の時系列変化を表すグラフ(統計値グラフ)を表示させてもよい。
図8に示す例では、血流グラフ241~246とともに総血流量グラフ240を表示させているが、統計値グラフの表示態様はこれに限定されない。例えば、複数の血流グラフのうちの1つ以上のグラフとともに統計値グラフを表示させてもよいし、統計値グラフのみを表示させてもよい。
統計値グラフにおける各血流グラフ(又は、任意の2以上の血流グラフ)の寄与分を示す情報を表示させることができる。例えば、各血流グラフの近傍及び/又は各計測位置情報の近傍に、総血流量に対する寄与分を百分率などで示した情報を表示させることができる。また、統計値に対する寄与分の大きさを示す情報を表示させることができる。例えば、総血流量に対する寄与分の大きさに応じて各血流グラフの表示色及び/又は各計測位置情報の表示色を設定することが可能である。
2以上の血流データ(血流グラフなど)を比較するために、これら血流データのそれぞれに振動分析を適用し、その結果をグラフとして表現することができる。振動分析には、例えば、複素フーリエ変換や高速フーリエ変換を利用することができる。また、振動分析グラフは、例えば、横軸が振動モード(周波数モード)を示し、且つ、縦軸が振幅又は強度を示すように構成される。上記した血流グラフに加えて、又は、それの代わりに、振動分析グラフを表示することが可能である。また、振動分析グラフを解析して振動モードの個数や各振動モードの強度(振幅)を求め、2以上の振動分析グラフの間において比較することも可能である。
情報表示制御の他の例を説明する。本例では、表示制御部13は、OCT血流計測で得られた血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)に応じて、眼底の正面画像中の血管画像(血管領域)の表示色を制御する。それにより、被検眼の眼底における血流動態の分布を表す、あたかもサーモグラフィのような画像が得られる。
更に、表示制御部13は、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)における血流パラメータの時系列変化に基づいて、眼底の正面画像中の複数の血管画像の表示色を時系列的に変更することができる。それにより、被検眼の眼底における血流動態の分布の時系列変化を表す、あたかも動的サーモグラフィのような時系列画像が得られる。
このような画像を表示するために、例えば、眼科撮影装置1は、血流パラメータの値と表示色とを対応付けたルックアップテーブル(LUT)を予め記憶している。
表示制御部13は、例えば、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)に対応する血管(つまり、その血流グラフを作成するためのOCT血流計測が適用された血管)の画像を特定する。それにより、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)に対応する血管画像が特定される。この特定処理は、閾値処理、エッジ検出、リージョングローイング、ラベリングなどの任意の画像処理を含む。それにより、各血管に対応する連結画像領域(血管画像)が特定される。
連結画像領域の特定において、血管の交差を考慮することができる。例えば、眼底正面画像やアンジオグラム(モーションコントラスト画像)から決定される血管径の変化から血管の交差を検出することができる。また、3次元アンジオグラムから血管の交差を検出することも可能である。
表示制御部13は、複数の血流データのそれぞれ(又は、それに基づく血流グラフ)とルックアップテーブルとに基づいて、対応する血管画像の表示色を決定する。より具体的には、表示制御部13は、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)が示す値に対応する表示色をルックアップテーブルから特定する。
なお、単一の血管に対して2以上の血管位置が設定される場合がある。つまり、2以上の血管位置が同じ血管に対して設定される場合がある。このような場合、1つの血管画像を2以上の部分画像に分割し、各部分画像について表示色を決定することができる。また、異なる2つの血管位置における2つの血流データ(又は、それらに基づく2つの血流グラフ)から、2つの血管位置の間における血流パラメータの値の変化を推定することができる。更に、このようにして得られた断続的又は連続的に変化する推定値に対応する表示色をルックアップテーブルに基づき決定することができる。
設定された血管位置の個数にかかわらず、任意の血管に対して同様の推定処理を適用することができる。この場合の推定処理は、例えば、血管径の変化、血管の長さ、分岐の位置、分岐の数など、血管に関する各種の形態パラメータに基づいて実行される。
このような情報表示制御によれば、ユーザーは、血流パラメータの分布を直感的に把握することが可能となる。
情報表示制御の更に他の例を説明する。本例では、眼底の動脈と静脈とを色分けして表示する。そのための構成例を図9に示す。図9には、制御部10Aが示されている。制御部10Aは、例えば、図1の制御部10の代わりに適用される。制御部10Aは、血管分類部14を含む。血管分類部14は、複数の血管位置に対応する複数の血流データ(又は、それらに基づく複数の血流グラフ)に基づいて、眼底の正面画像に描出されている複数の血管画像を動脈に相当する画像(動脈画像)と静脈に相当する画像(静脈画像)とに分類する。
血管分類部14が実行する処理は、例えば、解析される画像の種別に応じて決定される。なお、血管分類部14は、解析される画像の種別(例えば、モダリティの種別)に応じて実行する処理を切り替えるように構成されてもよい。以下、血管分類(動脈/静脈判定)の例を説明するが、これらに限定されない。
解析される画像が眼底写真である場合、血管分類部14は、例えば、血管画像の軸線部分の明るさ(血柱反射亢進)の程度に基づいて動脈/静脈判定を実行することが可能である。
解析される画像がOCT血流計測で得られた位相画像である場合、血管分類部14は、血流動態や血流の向きに基づいて動脈/静脈判定を実行することが可能である。例えば、血流グラフの形状(振幅、波高、平均値、最大値、最小値、周波数、波長など)に基づいて動脈/静脈判定を実行することができる。また、一の血管に関する判定結果と、当該一の血管における血流の向きと、他の血管における血流の向きとに基づいて、当該他の血管の動脈/静脈判定を行うことができる。
表示制御部13は、血管分類部14により分類された動脈画像と静脈画像とを互いに異なる色で表示させる。例えば、動脈画像を赤色で表示させ、且つ、静脈画像を青色で表示させることができる。
このような情報表示制御によれば、ユーザーは、眼底の動脈と静脈とを直感的に判別することができる。更に、動脈の血流動態と静脈の血流動態とを容易に把握することができる。
他の例を説明する。動脈画像について、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)に応じた暖色系のルックアップテーブルを予め設定する。更に、静脈画像について、血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)に応じた寒色系のルックアップテーブルを予め設定する。
表示制御部13は、分類された動脈画像それぞれについて、その血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)と暖色系ルックアップテーブルとに基づいて当該動脈画像の表示色を決定する。また、表示制御部13は、分類された静脈画像それぞれについて、その血流データ(又は、それに基づく血流グラフ)と寒色系ルックアップテーブルとに基づいて当該静脈画像の表示色を決定する。更に、表示制御部13は、それぞれ決定された表示色で動脈画像及び静脈画像を表示させる。
以上に説明した眼科撮影装置1及びその変形は、基本的に、眼底の正面画像の取得(眼底撮影)と、OCT血流計測との双方を実行可能に構成されている。これに対し、実施形態に係る眼科撮影装置は、正面画像の取得(眼底撮影)及びOCT血流計測の一方のみを実行可能であってもよい。
正面画像を外部から取得する場合について説明する。本例では、眼底正面画像は、上記実施形態と同様に、カラー眼底像、モノクロ眼底像、蛍光眼底像、OCT横断面像(Cスキャン画像)、OCTプロジェクション画像、OCTシャドウグラム、及び、OCT血管強調画像のいずれかであってよい。或いは、本例の眼底正面画像は、眼底蛍光造影(例えば、フルオレセイン蛍光造影、インドシアニングリーン蛍光造影、自発蛍光造影など)により取得された画像であってもよい。
本例に係る眼科撮影装置の構成例を図10に示す。眼科撮影装置1Aは、上記実施形態の眼科撮影装置1と同様に、被検眼の眼底における複数の血管位置のそれぞれに対してOCT血流計測を適用して、複数の血管位置に対応する複数の血流データを取得することが可能である。また、眼科撮影装置1Aは、上記実施形態と異なり、眼底の正面画像を外部から受け付ける正面画像受付部70を含む。正面画像受付部70は、例えば、外部装置との間でデータ通信を行うための通信インターフェイス、記録媒体からデータを読み取る装置などを含んでいてよい。正面画像受付部70以外の構成要素のそれぞれについては、眼科撮影装置1においてこれに対応する構成要素と同様であってよい。
他方、血流データを外部から取得するように構成された眼科撮影装置の例を図11に示す。眼科撮影装置1Bは、上記実施形態の眼科撮影装置1と同様に、被検眼の眼底の正面画像を取得する正面画像取得部60を含む。また、眼科撮影装置1Bは、上記実施形態と異なり、血流データ受付部80を含む。血流データ受付部80は、被検眼の眼底における複数の血管位置のそれぞれに対してOCT血流計測を適用して取得された、複数の血管位置に対応する複数の血流データを受け付ける。血流データ受付部80は、例えば、外部装置との間でデータ通信を行うための通信インターフェイス、記録媒体からデータを読み取る装置などを含んでいてよい。血流データ受付部80以外の構成要素のそれぞれについては、眼科撮影装置1においてこれに対応する構成要素と同様であってよい。
図10及び図11に示す実施形態においては、例えば、表示制御部13は、OCTプロジェクション画像(又は、眼底観察画像のフレームなど)と、正面画像との間のレジストレーションを実行し、このレジストレーションの結果を利用して血管位置(つまり、計測位置情報の表示位置)と血流グラフとの間の対応付けを実行するように構成されていてよい。
〈眼科情報処理装置〉
例示的な実施形態に係る眼科情報処理装置について説明する。本実施形態の眼科情報処理装置の構成例を図12に示す。眼科情報処理装置300は、OCTを用いて取得された眼底のデータなどを記憶し、記憶されたデータに基づいて各種情報を表示する。
眼科情報処理装置300は、眼底正面画像、血流情報、血管強調画像などの各種情報を、表示デバイス2に表示することができる。表示デバイス2は眼科情報処理装置300の一部であってもよいし、眼科情報処理装置300に接続された外部装置であってもよい。また、眼科情報処理装置300は、各種情報を、コンピュータ、記憶装置、眼科装置などに送ることができる。
眼科情報処理装置300は、制御部310と、記憶部320と、データ処理部330と、データ入力部340と、操作部350とを含む。制御部310は、同期処理部312と、表示制御部213とを含む。記憶部320には、少なくともOCTデータ321が記憶される。また、記憶部320は、眼底写真などの正面画像を記憶してもよい。なお、正面画像がOCT画像である場合には、正面画像はOCTデータ321に含まれる。
眼科情報処理装置300の各要素は、例えば、前述した眼科撮影装置1において対応する要素と同様の構成及び機能を有する。すなわち、制御部310は制御部10と同様の構成及び機能を有し、同期処理部312は同期処理部12と同様の構成及び機能を有し、表示制御部313は表示制御部13と同様の構成及び機能を有し、記憶部320は記憶部20と同様の構成及び機能を有し、操作部350は操作部50と同様の構成及び機能を有する。
OCTデータ321は、OCTデータ21と同様の形態のデータであってよい。例えば、OCTデータ321は、次の(1)~(5)のいずれか1以上を含んでいてよい。
(1)眼底のOCTスキャンによって収集されたデータ(生データ)
(2)生データを処理して得られた画像データ
(3)生データから画像データを生成するための一連の処理の途中で得られた中間データ
(4)生データを処理して得られた血流データ
(5)生データから血流データを生成するための一連の処理の途中で得られた中間データ
データ処理部330は、各種データ処理を実行する。データ処理部330は、画像形成部32の少なくとも一部と同様の構成及び機能を有していてもよい。また、データ処理部330は、血流データ生成部33の少なくとも一部と同様の構成及び機能を有していてもよい。
データ入力部340は、OCTデータ321及び/又はその元になるデータを外部から眼科情報処理装置300に入力する。眼底の正面画像がOCT画像ではない場合(例えば、正面画像が眼底写真である場合など)、データ入力部340は、OCTデータ321及び/又はその元になるデータとは別に、眼底の正面画像を外部から眼科情報処理装置300に入力する。データ入力部340は、例えば、外部装置との間でデータ通信を行うための通信インターフェイス、記録媒体からデータを読み取る装置などを含んでいてよい。
表示制御部313は、次の表示制御を実行する:正面画像を表示させる;OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報を正面画像とともに表示させる;複数の血流データのうちの少なくとも1つに基づいて、それぞれが所定の血流パラメータの時系列変化を表す少なくとも1つの血流グラフを、正面画像と並列的に表示させる。
図12に示す実施形態において、例えば、表示制御部313は、OCTプロジェクション画像(又は、眼底観察画像のフレームなど)と、正面画像との間のレジストレーションを実行し、このレジストレーションの結果を利用して血管位置(つまり、計測位置情報の表示位置)と血流グラフとの間の対応付けを実行するように構成されていてよい。
〈作用・効果〉
上記した例示的な実施形態に係る眼科撮影装置及び眼科情報処理装置の作用及び効果について説明する。
例示的な実施形態において、眼科撮影装置(1)は、血流データ取得部(OCTデータ取得部30)と、正面画像取得部(60)と、表示処理部(表示制御部13など)とを含む。血流データ取得部は、被検眼の眼底にOCT血流計測を適用して、複数の血管位置に対応する複数の血流データを取得する。正面画像取得部は、被検眼の眼底の正面画像を取得する。表示処理部は、表示手段(表示デバイス2)に情報を表示させる。
具体的には、表示処理部は、正面画像取得部により取得された正面画像(110)を表示させる。更に、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報(121~126など)を正面画像とともに表示させる。加えて、表示処理部は、複数の血流データのうちの少なくとも1つに基づいて、それぞれが所定の血流パラメータの時系列変化を表す少なくとも1つの血流グラフ(141~146など)を、正面画像と並列的に表示させる。
他の例示的な実施形態において、眼科撮影装置(1A)は、血流データ取得部(OCTデータ取得部30)と、正面画像受付部(70)と、表示処理部(表示制御部13など)とを含む。血流データ取得部は、被検眼の眼底にOCT血流計測を適用して、複数の血管位置に対応する複数の血流データを取得する。正面画像受付部は、被検眼の眼底の正面画像を外部から受け付ける。表示処理部は、表示手段(表示デバイス2)に情報を表示させる。
具体的には、表示処理部は、正面画像受付部により受け付けられた正面画像を表示させる。更に、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報を正面画像とともに表示させる。加えて、表示処理部は、複数の血流データのうちの少なくとも1つに基づいて、それぞれが所定の血流パラメータの時系列変化を表す少なくとも1つの血流グラフを、正面画像と並列的に表示させる。
更に他の例示的な実施形態において、眼科撮影装置(1B)は、血流データ受付部(80)と、正面画像取得部(60)と、表示処理部(表示制御部13など)とを含む。血流データ受付部は、被検眼の眼底における複数の血管位置のそれぞれに対してOCT血流計測を適用して取得された、複数の血管位置に対応する複数の血流データを受け付ける。正面画像取得部は、被検眼の眼底の正面画像を取得する。表示処理部は、表示手段(表示デバイス2)に情報を表示させる。
具体的には、表示処理部は、正面画像取得部により取得された正面画像を表示させる。更に、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報を正面画像とともに表示させる。加えて、表示処理部は、複数の血流データのうちの少なくとも1つに基づいて、それぞれが所定の血流パラメータの時系列変化を表す少なくとも1つの血流グラフを、正面画像と並列的に表示させる。
これらの実施形態によれば、ユーザーは、正面画像とともに表示される計測位置情報によりOCT血流計測が適用された位置を把握でき、更に、その位置における血流動態を血流グラフから把握することができる。特に、これらの実施形態によれば、被検眼の眼底の複数の血管に対しOCT血流計測を適用して得られた複数の血流情報を好適な態様で提示することが可能である。それにより、複数の眼底血管の血流情報に基づく診断やスクリーニングの容易化を図ることができ、また、診断やスクリーニングの精度向上や確度向上を図ることができる。
実施形態において、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置に対応する複数の血流グラフを並列的に表示可能に構成されていてよい。
このような構成によれば、複数の血管位置に対応する複数の血流グラフから、眼底の血流動態の総合的な把握を支援することができる。
なお、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置に対応する複数の血流グラフのうちの1つ以上の血流グラフを選択的に(且つ、2以上の血流グラフを並列的に)表示可能であってもよい。
実施形態において、表示処理部は、表示手段に表示されている少なくとも1つの血流グラフのそれぞれと、この(又は、これら)血流グラフに対応する血管位置を示す計測位置情報とを視覚的に関連付ける関連情報を表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、関連情報を参照することにより、眼底における血管位置と血流グラフとの対応関係を容易に把握することが可能である。
実施形態において、表示処理部は、関連情報として、互いに対応する計測位置情報と血流グラフとのそれぞれの近傍に共通の付帯情報を表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、計測位置情報と血流グラフとに対して付与された共通の付帯情報を参照することにより、眼底における血管位置と血流グラフとの対応関係を容易に把握することが可能である。
実施形態において、表示処理部は、関連情報として、互いに対応する計測位置情報と血流グラフとを共通の色で表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、計測位置情報の表示色と血流グラフの表示色とを参照することにより、眼底における血管位置と血流グラフとの対応関係を容易に把握することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置は、操作部を更に含んでいてよい。更に、表示処理部は、複数の計測位置情報のいずれかが操作部を用いて選択されたときに、選択された計測位置情報に対応する血流グラフを表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、被検眼の眼底における所望の血管位置を指定するだけで、その血管位置における血流グラフを観察することができる。これにより、診断やスクリーニングのための作業の容易化や円滑化を図ることが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置は、操作部を更に含んでいてよい。更に、表示処理部は、複数の計測位置情報のうち既に表示されている血流グラフに対応する計測位置情報が操作部を用いて選択されたときに、選択された計測位置情報に対応する血流グラフの表示態様を変更するように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、被検眼の眼底における所望の血管位置を指定するだけで、その血管位置における血流グラフを容易に特定することができる。これにより、診断やスクリーニングのための作業の容易化や円滑化を図ることが可能である。
実施形態において、血流グラフは、第1座標軸が時間を示し、且つ、第2座標軸が血流速度及び単位時間当たり血流量のいずれかの血流パラメータを示す2次元直交座標系により表現されるように構成されていてよい。
このような構成によれば、血流速度の時系列変化や、単位時間当たり血流量の時系列変化を、グラフとして提示することができる。それにより、ユーザーは、血流速度の時系列変化や、単位時間当たり血流量の時系列変化を容易に把握することができる。
実施形態において、表示処理部は、血流パラメータが単位時間当たり血流量である場合に、複数の血流データに基づいて、複数の血管位置における単位時間当たり血流量の時系列変化を表す総血流量グラフを表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、複数の血管の血流動態だけでなく、複数の血管の統合的な血流動態も把握することが可能になる。
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置は、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方を互いに同期させる同期処理部を更に含んでいてよい。
複数の血管位置に対応する複数の血流データを同期させる構成によれば、同期された複数の血流データを用いて各種処理を実行することができるので、診断やスクリーニングの精度向上や確度向上を図ることが可能になる。複数の血流グラフを同期させる構成によれば、時系列方向の位置が調整された複数の血流グラフを表示させることができるので、診断やスクリーニングの精度向上や確度向上を図ることが可能になる。
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置は、受付部(データ入力部40)を更に含んでいてよい。データ入力部40は、血流データ取得部が複数の血管位置に対してOCT血流計測を適用しているときに、時系列的に変化する被検者の生体情報を生体情報モニタから受け付ける。更に、同期処理部は、受付部により受け付けられた生体情報に基づいて、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方を互いに同期させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方に対する同期処理を、被検者の生体情報に基づいて実行することができる。このように被検者の生体情報を参照することで、同期処理の精度向上や確度向上を図ることが可能になる。
実施形態において、同期処理部は、複数の血流データのそれぞれから特徴値を抽出し、抽出された特徴値に基づいて複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方を互いに同期させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方に対する同期処理を、血流データの特徴値に基づいて実行することができる。このように血流データの特徴値を参照することで、同期処理の精度向上や確度向上を図ることが可能になる。
実施形態において、同期処理部は、複数の血流グラフの波形に基づいて、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方を互いに同期させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、複数の血流データ及びこれらに対応する複数の血流グラフの少なくとも一方に対する同期処理を、血流グラフの波形に基づいて実行することができる。このように血流グラフの波形を参照することで、同期処理の精度向上や確度向上を図ることが可能になる。
実施形態において、表示処理部は、複数の血流データ又はこれらに対応する複数の血流グラフに基づいて、複数の血管位置に対応する正面画像中の複数の血管画像をカラー表示するように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、複数の血管画像の表示色を参照することで、被検眼の眼底における血流動態の分布状態を直感的に把握することが可能となる。
実施形態において、表示処理部は、複数の血流データ又は複数の血流グラフにおける血流パラメータの時系列変化に基づいて、複数の血管画像の表示色を時系列的に変更するように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、複数の血管画像の表示色の時系列的な変化を参照することで、被検眼の眼底における血流動態の分布状態の時系列的な変化を直感的に把握することが可能となる。
例示的な実施形態に係る眼科撮影装置は、血管分類部(14)を更に含んでいてよい。血管分類部は、複数の血流データ又は複数の血流グラフに基づいて、複数の血管画像を動脈画像と静脈画像とに分類する。更に、表示処理部は、動脈画像と静脈画像とを互いに異なる色で表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザーは、被検眼の眼底に分布する動脈と静脈とを直感的に判別することができる。更に、動脈の血流動態と静脈の血流動態とを容易に把握することができる。
実施形態において、正面画像は、カラー眼底像、モノクロ眼底像、蛍光眼底像、OCT横断面像(Cスキャン画像)、OCTプロジェクション画像、OCTシャドウグラム、及び、OCT血管強調画像のいずれかであってよい。
例示的な実施形態に係る眼科情報処理装置(300)は、記憶部(320)と、表示制御部(313)とを含む。記憶部は、被検眼の眼底における複数の血管位置のそれぞれに対してOCT血流計測を適用して取得された複数の血管位置に対応する複数の血流データと、眼底の正面画像とを記憶する。表示制御部は、表示手段(表示デバイス2)に情報を表示させる。
具体的には、表示処理部は、正面画像(110)を表示させる。更に、表示処理部は、OCT血流計測が適用された複数の血管位置を示す複数の計測位置情報(121~126など)を正面画像とともに表示させる。加えて、表示処理部は、複数の血流データのうちの少なくとも1つに基づいて、それぞれが所定の血流パラメータの時系列変化を表す少なくとも1つの血流グラフ(141~146など)を、正面画像と並列的に表示させる。
このような実施形態によれば、ユーザーは、正面画像とともに表示される計測位置情報によりOCT血流計測が適用された位置を把握でき、更に、その位置における血流動態を血流グラフから把握することができる。特に、このような実施形態によれば、被検眼の眼底の複数の血管に対しOCT血流計測を適用して得られた複数の血流情報を好適な態様で提示することが可能である。それにより、複数の眼底血管の血流情報に基づく診断やスクリーニングの容易化を図ることができ、また、診断やスクリーニングの精度向上や確度向上を図ることができる。
実施形態に係る眼科情報処理装置に対して、前述した眼科撮影装置1、1A若しくは1B、又はその変形として説明された任意の事項を適用することが可能である。
実施形態の作用及び効果はこれらに限定されず、実施形態として説明されたそれぞれの事項が提供する作用及び効果や、複数の事項の組み合わせが提供する作用及び効果も考慮されるべきである。また、所望の作用及び/又は効果を得るために、又は他の目的のために、前述したいずれかの実施形態、他の実施形態、公知技術等を任意に組み合わせることが可能である。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。