JP2022164635A - クエン酸水素二銀含有組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶解性に優れた粉末状の純粋なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末、及び当該含有組成物を簡便に、かつ高効率で得る手法を提供する。また、当該クエン酸水素二銀含有組成物を含有する抗菌剤又は抗ウイルス剤、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法は、
(1)溶媒中に、クエン酸水素二銀が飽和量以上となる量の銀化合物及びクエン酸を加えて反応液とする工程、
(2)前記反応液に塩基剤を加えて、pHを2.0~5.5に調製し、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程、及び
(3)析出したクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程、
を備える、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法は、
(1)溶媒中に、クエン酸水素二銀が飽和量以上となる量の銀化合物及びクエン酸を加えて反応液とする工程、
(2)前記反応液に塩基剤を加えて、pHを2.0~5.5に調製し、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程、及び
(3)析出したクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程、
を備える、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、クエン酸水素二銀含有組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤及びその製造方法に関する。
近年、衛生意識、特に感染症の予防対策意識が高まっており、人体の表面や身の回りの物品の抗菌及び抗ウイルス性を求める声が高まってきている。抗菌性を有する物質として、従来からトリクロサン及びジンクピリチオン、四級アンモニウム等の有機系抗菌剤が知られている。有機系抗菌剤は短時間に強い殺菌性を発揮するものの、人体の皮膚アレルギーを引き起こしたり、環境中の生物に対するホルモン撹乱の原因となったりするため、好ましくない場合がある。また、有機系抗菌剤は、殺菌効果は高いが同時に抗菌スペクトルが狭い特徴がある。そのため、その代替材料として、近年銀の化合物が注目されている。
このような銀の化合物として、例えばクエン酸銀が知られている。クエン酸銀は、有機系殺菌剤のような即効性と、無機系銀抗菌剤のような安全性かつ持続性とを兼ね備えているため、近年特に注目を集めつつある。クエン酸銀を含む溶液の製造方法として、例えば銀電極を用いてクエン酸水溶液中で電気分解する手法(特許文献1)、クエン酸三銀を使用する手法(特許文献2)、及びクエン酸溶液に銀ゼオライトを溶解させる手法(特許文献3)等が知られている。
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、2400ppmの銀イオン濃度を有するクエン酸二水素銀溶液を得るのに144時間もの長時間を要するものであり、生産効率が悪く、また高価な高純度の銀電極を必要とするため、生産コストが高くなる。特許文献2に記載の手法では、溶解性の悪いクエン酸三銀(25℃における溶解度:0.0284g/L、銀濃度170ppm)を使用しており、作業性が悪くなるうえ、高濃度の銀イオン濃度を有する溶液を得ることは困難である。特許文献3に記載の手法では、ゼオライト由来の骨格成分であるシリカやアルミニウムが不純物として混入する恐れがあり、純粋なクエン酸銀を得ることは困難であり、不純物を除去する場合には工程が増えて生産コストが高くなる。
したがって、本発明の目的は、水又はクエン酸溶液に簡単に溶解する新規な粉末状の純粋なクエン酸水素二銀含有組成物及びその製造方法を提供することである。また、当該クエン酸水素二銀含有組成物を含んでなる抗菌剤又は抗ウイルス剤、及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、生成するクエン酸水素二銀含有組成物が飽和量以上となるような量の銀化合物及びクエン酸を加えた水溶液を調製し、これに塩基剤を加えて溶液のpHを所望のpH域まで上昇させて、この反応溶液から飽和量以上の量のクエン酸水素二銀含有組成物を析出させることにより、固液分離としてのろ過操作及び軽い水洗操作等で簡便に粉末状のクエン酸を含まない純粋なクエン酸水素二銀含有組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。さらなる検討の結果、当該クエン酸水素二銀含有組成物はクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなる組成物であることを突き止め、更にそれが任意なpH値調整の操作だけで目標とする成分のモル比で構成された結晶混合物として析出させ、固液分離としてのろ過操作及び軽い水洗操作で得られることを見出した。さらに、当該結晶混合物は、水またはクエン酸溶液に簡単に溶解でき、当該溶液が広範な抗菌スペクトルを有し、また細胞毒性を示さずウイルス不活化活性を示すことから、抗菌剤及び/又は抗ウイルス剤として用いることができることを見出し、さらなる本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
(1)溶媒中に、クエン酸水素二銀が飽和量以上となる量の銀化合物及びクエン酸を加えて反応液とする工程、
(2)前記反応液に塩基剤を加えて、pHを2.0~5.5に調製し、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程、及び
(3)析出したクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程、
を備える、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[2]
前記クエン酸水素二銀含有組成物が、クエン酸二水素銀又はクエン酸三銀をさらに含有する組成物であり、組成物中の銀濃度が36.1wt%~63.1wt%である、[1]に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[3]
前記銀化合物が硝酸銀である、[1]又は[2]に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[4]
前記工程(1)~(3)の後に、
(4)反応液に、前記工程(1)~(3)の操作を繰り返しさらにクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程
を備える、[1]~[3]のいずれか1項に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法によってクエン酸水素二銀含有組成物を製造し、次いで、得られたクエン酸水素二銀含有組成物と水又はクエン酸溶液とを混合する工程を備える、抗菌剤又は抗ウイルス剤の製造方法。
[6]
クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなる組成物であって、その銀濃度が37.2wt%以上57.9wt%以下である組成物。
[7]
[6]に記載の組成物を含んでなる、抗菌剤又は抗ウイルス剤。
[1]
(1)溶媒中に、クエン酸水素二銀が飽和量以上となる量の銀化合物及びクエン酸を加えて反応液とする工程、
(2)前記反応液に塩基剤を加えて、pHを2.0~5.5に調製し、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程、及び
(3)析出したクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程、
を備える、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[2]
前記クエン酸水素二銀含有組成物が、クエン酸二水素銀又はクエン酸三銀をさらに含有する組成物であり、組成物中の銀濃度が36.1wt%~63.1wt%である、[1]に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[3]
前記銀化合物が硝酸銀である、[1]又は[2]に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[4]
前記工程(1)~(3)の後に、
(4)反応液に、前記工程(1)~(3)の操作を繰り返しさらにクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程
を備える、[1]~[3]のいずれか1項に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法によってクエン酸水素二銀含有組成物を製造し、次いで、得られたクエン酸水素二銀含有組成物と水又はクエン酸溶液とを混合する工程を備える、抗菌剤又は抗ウイルス剤の製造方法。
[6]
クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなる組成物であって、その銀濃度が37.2wt%以上57.9wt%以下である組成物。
[7]
[6]に記載の組成物を含んでなる、抗菌剤又は抗ウイルス剤。
本発明の製造方法によれば、溶解性に優れた純粋なクエン酸水素二銀含有組成物を簡便に、かつ高効率で得ることができる。また、本発明の製造方法を用いれば、クエン酸水素二銀に、作業性の良くないクエン酸三銀が混入した場合であっても、ろ過操作で当該組成物を得ることが可能となる
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、幅広い抗菌スペクトルを有し、さらにウイルスの不活化活性を有することから、抗菌剤又は抗ウイルス剤として、医薬品、医薬部外品、口腔ケア剤、消毒剤、洗浄剤、化粧料、ヘルスケアー製品、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤、表面処理剤、各種工程衛生維持、食品鮮度保持剤、食品包材、繊維含む布・衣類・寝具等、農産等物鮮度保持、サニタリー部材、農業資材、農薬代替、畜産伝染病防止、車産業等に用いることが可能である。また、例えば、本発明の新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を消臭剤として用いれば、銀由来の酸化力を有しているため、悪臭の原因となる硫黄系ガス、アミン系ガス、アルデヒド系ガス、プロピオン酸、イソ吉草酸等の成分と反応して無臭化させることもでき、消臭剤としての効果を発揮することが可能である。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、幅広い抗菌スペクトルを有し、さらにウイルスの不活化活性を有することから、抗菌剤又は抗ウイルス剤として、医薬品、医薬部外品、口腔ケア剤、消毒剤、洗浄剤、化粧料、ヘルスケアー製品、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、消臭剤、表面処理剤、各種工程衛生維持、食品鮮度保持剤、食品包材、繊維含む布・衣類・寝具等、農産等物鮮度保持、サニタリー部材、農業資材、農薬代替、畜産伝染病防止、車産業等に用いることが可能である。また、例えば、本発明の新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を消臭剤として用いれば、銀由来の酸化力を有しているため、悪臭の原因となる硫黄系ガス、アミン系ガス、アルデヒド系ガス、プロピオン酸、イソ吉草酸等の成分と反応して無臭化させることもでき、消臭剤としての効果を発揮することが可能である。
本発明において、「クエン酸水素二銀含有組成物」とは、少なくともクエン酸水素二銀を含む組成物であり、好ましくは、クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなる組成物を意味し、本発明の製造方法によって得られるクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀として表すこともある。クエン酸水素二銀含有組成物の粉末をクエン酸などに再溶解するためクエン酸水素二銀とクエン酸二水素銀からなる組成物であることが好ましい。これらクエン酸水素二銀含有組成物中に含まれる銀の含有量は、36.1wt%から63.1wt%であることが好ましく、36.1wt%から53.2wt%であることがより好ましい。
すなわち、水又はクエン酸溶液に対する溶解性は、クエン酸水素二銀よりもクエン酸二水素銀の方が高く、クエン酸三銀よりもクエン酸水素二銀の方が高いため、抗菌剤又は抗ウイルス剤を調製する観点からは、クエン酸二水素銀がクエン酸水素二銀含有組成物中25%以上含むことがより望ましい。上記クエン酸水素二銀とクエン酸二水素銀およびクエン酸三銀とクエン酸二水素銀のモル比は、乾燥処理をして得られたクエン酸銀粉末の重量と、その一部を取りだし硝酸溶液に溶解して高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって測定された銀濃度とから算出することができる。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、好ましくはクエン酸を実質的に含まず、より好ましくは実質的に、クエン酸二水素銀、クエン酸水素二銀及び/又はクエン酸三銀のみからなる組成物である。
本明細書において「母液最終pH」又は「最終pH」とは、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程での水溶液のpHを言う。クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸水素二銀の割合を制御するために、母液最終pHはpH2.0からpH5.5で調整する方法が好ましい。
本発明によれば、クエン酸水素二銀含有組成物はクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなり、クエン酸水素二銀とクエン酸二水素銀又はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなるクエン酸水素二銀含有組成物の中に含まれる銀の含有量が36.1wt%以上から63.1wt%未満であるクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を容易に得ることができる。
すなわち、水又はクエン酸溶液に対する溶解性は、クエン酸水素二銀よりもクエン酸二水素銀の方が高く、クエン酸三銀よりもクエン酸水素二銀の方が高いため、抗菌剤又は抗ウイルス剤を調製する観点からは、クエン酸二水素銀がクエン酸水素二銀含有組成物中25%以上含むことがより望ましい。上記クエン酸水素二銀とクエン酸二水素銀およびクエン酸三銀とクエン酸二水素銀のモル比は、乾燥処理をして得られたクエン酸銀粉末の重量と、その一部を取りだし硝酸溶液に溶解して高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって測定された銀濃度とから算出することができる。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、好ましくはクエン酸を実質的に含まず、より好ましくは実質的に、クエン酸二水素銀、クエン酸水素二銀及び/又はクエン酸三銀のみからなる組成物である。
本明細書において「母液最終pH」又は「最終pH」とは、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程での水溶液のpHを言う。クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸水素二銀の割合を制御するために、母液最終pHはpH2.0からpH5.5で調整する方法が好ましい。
本発明によれば、クエン酸水素二銀含有組成物はクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなり、クエン酸水素二銀とクエン酸二水素銀又はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなるクエン酸水素二銀含有組成物の中に含まれる銀の含有量が36.1wt%以上から63.1wt%未満であるクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を容易に得ることができる。
本明細書では「クエン酸銀」とは、クエン酸二水素銀、クエン酸水素二銀、及びクエン酸三銀、並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる化合物をいう。
クエン酸銀は、以下の構造式によって表すことができる。クエン酸二水素銀は、式中x=2、y=1であるクエン酸銀化合物を意味し、クエン酸水素二銀は、式中x=1y=2のクエン酸銀化合物を意味し、クエン酸三銀は、式中x=0、y=3のクエン酸銀化合物を意味する。
クエン酸銀の構造式
クエン酸銀は、以下の構造式によって表すことができる。クエン酸二水素銀は、式中x=2、y=1であるクエン酸銀化合物を意味し、クエン酸水素二銀は、式中x=1y=2のクエン酸銀化合物を意味し、クエン酸三銀は、式中x=0、y=3のクエン酸銀化合物を意味する。
クエン酸銀の構造式
本発明の一つの態様は、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法であり、まず所定量の溶媒を反応容器に充填する。溶媒としては水が好ましく、純水、又はイオン交換水がより好ましい。
次に所定量のクエン酸及び銀化合物を投入する。反応液を撹拌しながら投入した薬品が完全に溶解したことを確認する。その後、反応液のpHを確認し、続いて塩基剤を投入し反応液を所定のpH値まで上昇させる。反応液が所定のpHに到達してから、さらに撹拌を続け反応を完成させる。クエン酸水素二銀含有組成物の収量を高め、効率よくクエン酸水素二銀含有組成物を回収する観点からは、最終pHはpH2.0~pH5.5であることが好ましく、pH3.5~pH4.5であることがより好ましい。
本発明の「クエン酸」は、無水物であっても水和物であっても良いが、溶解性の観点から水和物であることが好ましい。また銀化合物としては特に限定されず、例えば硝酸銀、硫酸銀等が挙げられるが、クエン酸水素二銀含有組成物を効率よく生成する観点からは、硝酸銀であることが好ましい。
本発明の「塩基剤」は、反応液のpH値上昇に用いるために次第に系内に蓄積していくので、生成する硝酸塩化合物が析出しクエン酸銀に混入することを防止するために、生成する硝酸塩の溶解度が大きくなる水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。また、投入時には水溶液の形態として少量に分けて滴下することが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液を少量に分けて滴下することがより好ましい。
本発明の「塩基剤」は、反応液のpH値上昇に用いるために次第に系内に蓄積していくので、生成する硝酸塩化合物が析出しクエン酸銀に混入することを防止するために、生成する硝酸塩の溶解度が大きくなる水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。また、投入時には水溶液の形態として少量に分けて滴下することが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液を少量に分けて滴下することがより好ましい。
最初の工程で加える銀化合物の量とクエン酸の量とのモル比は、1:0.8~1.2であることが好ましく、1:0.95~1.05であることが更に好ましい。この理由は、銀を有効に使用するため反応液を繰り返し利用する。そのため反応母液中に残留する銀濃度が影響して、反応に関与する銀とクエン酸の当量比が変化すると、それ以降の反応時におけるクエン酸銀の収量にバラツキが生じるためである。
本発明では、所望のpHにおける反応母液中に生成するクエン酸水素二銀及び/又はクエン酸二水素銀、クエン酸水素二銀及び/又はクエン酸三銀が飽和量以上となる量の銀化合物とクエン酸を必要とし、撹拌しながらこれら薬剤を反応液に加えた後にさらに塩基剤を添加して、反応液を所望のpH値に調製する。この際塩基剤を加えると、それに応じて反応液中にクエン酸銀が析出し、撹拌を止めるとそれは反応容器の底に沈殿する。そしてこれを回収する。回収方法は特に限定されず、ろ過、デカンテーション等が挙げられる。
回収されたクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀は、軽く水洗され、その後常圧又は減圧下で乾燥させることが好ましい。乾燥させることで、粉末状のクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀を得ることができる。なお析出したクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸三銀の占める割合が大きくなると、比較例1の事例のように析出物が粘着性の有る餅状となり、それがフィルター上でペースト状となってしまい、目詰まりを起こさせ濾過が困難となってしまうが、一方で実施例8からも明らかになったように、その構成するクエン酸三銀のモル比を42%以下にするために母液の最終pHをpH5.5以下で調整すれば、析出物のろ過操作に多少時間を要するものの濾過操作が可能であり、クエン酸水素二銀含有組成物を粉末にすることが可能なことが新たに分かった。
固液分離して得られたクエン酸水素二銀含有組成物の熱分解を抑制する観点から、乾燥温度は60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。上記乾燥は、減圧乾燥あるいは凍結乾燥によって行われてもよい。
固液分離して得られたクエン酸水素二銀含有組成物の熱分解を抑制する観点から、乾燥温度は60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。上記乾燥は、減圧乾燥あるいは凍結乾燥によって行われてもよい。
本発明の一つの態様では、クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀又はクエン酸水素二銀及クエン酸三銀を回収した後の反応母液を再利用することができる。銀のロスを少なくした効率的なクエン酸銀の製造方法である。すなわち、クエン酸水素二銀含有組成物を回収した後の反応母液に、再度銀化合物及びクエン酸を加え、さらに塩基剤を加えることで、クエン酸水素二銀含有組成物が反応液中に析出するため、同様の操作を経て、均質なクエン酸水素二銀含有組成物を回収することができる。なお、初回のクエン酸水素二銀含有組成物調製時には実施例1でのクエン酸及び当量の硝酸銀を投入する水溶媒に代わって、実施例1-2に示すように水溶媒中にあらかじめクエン酸とクエン酸ナトリウムを添加してpH2~5程度の緩衝液組成にしておく方法も有る。その理由は、反応液に水酸化ナトリウム液を滴下する際、系のpHが安定し、所望のpH調整を確実にすることができる。
2回目以降の回収した反応母液を再利用するクエン酸水素二銀含有組成物が反応液中に析出する工程に、この様な調製は必要ない。
また発明者らは本発明の以前に特願2020-107646(本件出願日には未公開)に記載の発明を見出している。特願2020-107646に記載の発明では水溶媒中にあらかじめクエン酸とクエン酸ナトリウム添加してpH2~5程度の緩衝液組成にし、その中に銀化合物及びクエン酸金属塩を一度に加えてクエン酸水素二銀及び/又はクエン酸二水素銀の過飽和状態として析出させた。その理由は、pHを略一定に保つ手段として、一価クエン酸イオンと二価クエン酸イオンのモル比をそのpHにおけるクエン酸平衡組成に応じた組成比に合わせる方法をとる事で、反応系が最初から最後まで一定のpHに保持されるため穏やかで安定した調製方法であると判断されるからである。この方法はクエン酸水素二銀含有組成物を得るには論理的で理想的なベーシックな方法であるものの、複雑で手間と時間及び費用がかかる工程となるため、さらなる鋭意努力を重ねた結果、本発明の開発に至った。
特願2020-107646に記載の方法と本発明の方法とでは、得られるクエン酸水素二銀含有組成物は、任意の同じ最終pH条件に管理したとしてもクエン酸水素二銀含有組成物比は同じにはならない。例えば最終pHをpH4.0に調整した場合、クエン酸水素二銀含有組成物を構成するクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀のモル比は前者では1:4~6となるが、本発明の実施例1、2及び4に示したモル比の結果では異なる。前者の調製方法と本発明の調製方法の違いによりクエン酸水素二銀組成物の中が大きく違っている理由は、本発明方法は高濃度の水酸化ナトリウム溶液を滴下するため、滴下液周辺のpHが一時的に高pH側に上昇し、より荷電数の多いクエン酸が生成し、それに応じてクエン酸銀組成物が生成する傾向にあるからである。
本発明の製造方法に従ってクエン酸水素二銀含有組成物を製造すると、回数を重ねるにつれて反応母液中に硝酸塩(例えば硝酸ナトリウム)が蓄積する。しかし硝酸塩が生成しても硝酸塩の水への溶解度は非常に高いため、反応を妨害することはない。従って、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法は、量産性に優れている。また調製回数を重ねるにつれて反応母液量は少しずつ増加するが、クエン酸水素二銀含有組成物の生成反応を阻害することはない。
2回目以降の回収した反応母液を再利用するクエン酸水素二銀含有組成物が反応液中に析出する工程に、この様な調製は必要ない。
また発明者らは本発明の以前に特願2020-107646(本件出願日には未公開)に記載の発明を見出している。特願2020-107646に記載の発明では水溶媒中にあらかじめクエン酸とクエン酸ナトリウム添加してpH2~5程度の緩衝液組成にし、その中に銀化合物及びクエン酸金属塩を一度に加えてクエン酸水素二銀及び/又はクエン酸二水素銀の過飽和状態として析出させた。その理由は、pHを略一定に保つ手段として、一価クエン酸イオンと二価クエン酸イオンのモル比をそのpHにおけるクエン酸平衡組成に応じた組成比に合わせる方法をとる事で、反応系が最初から最後まで一定のpHに保持されるため穏やかで安定した調製方法であると判断されるからである。この方法はクエン酸水素二銀含有組成物を得るには論理的で理想的なベーシックな方法であるものの、複雑で手間と時間及び費用がかかる工程となるため、さらなる鋭意努力を重ねた結果、本発明の開発に至った。
特願2020-107646に記載の方法と本発明の方法とでは、得られるクエン酸水素二銀含有組成物は、任意の同じ最終pH条件に管理したとしてもクエン酸水素二銀含有組成物比は同じにはならない。例えば最終pHをpH4.0に調整した場合、クエン酸水素二銀含有組成物を構成するクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀のモル比は前者では1:4~6となるが、本発明の実施例1、2及び4に示したモル比の結果では異なる。前者の調製方法と本発明の調製方法の違いによりクエン酸水素二銀組成物の中が大きく違っている理由は、本発明方法は高濃度の水酸化ナトリウム溶液を滴下するため、滴下液周辺のpHが一時的に高pH側に上昇し、より荷電数の多いクエン酸が生成し、それに応じてクエン酸銀組成物が生成する傾向にあるからである。
本発明の製造方法に従ってクエン酸水素二銀含有組成物を製造すると、回数を重ねるにつれて反応母液中に硝酸塩(例えば硝酸ナトリウム)が蓄積する。しかし硝酸塩が生成しても硝酸塩の水への溶解度は非常に高いため、反応を妨害することはない。従って、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法は、量産性に優れている。また調製回数を重ねるにつれて反応母液量は少しずつ増加するが、クエン酸水素二銀含有組成物の生成反応を阻害することはない。
ここでpHが5.5を超える反応母液環境下では、生じるクエン酸水素二銀含有組成物は水への溶解が小さく、ろ過が困難であるという欠点を有している。これはクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸水素二銀に比べクエン酸三銀のモル比の割合が42%を超えるため、析出物が粘着性の有る餅状となり、それがフィルター上でペースト状となってしまい、目詰まりを起こさせろ過できず、又デカンテーションで無理に固液分離を行うも長時間を要し、その上粉末化するには時間とコストがかかり過ぎ、更には市場での最終使用形態に調整するのに必要な水やクエン酸溶液による希釈操作において、溶解性が悪いため必要以上に時間が掛かり過ぎて実用的でない。原因は、反応母液中に析出したクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸三銀のモル比が42%を超えて大きい割合を占めるようになると、クエン酸三銀による微粒子間相互の凝集作用が影響して、析出した生成物を回収しようとしてもろ過時に微粒子がフィルター上でペースト状になってしまい、ろ過ができない。この現象は比較例1で得たクエン酸水素二銀含有組成物の析出物をろ過処理し固液分離して回収する試みが困難であった事から、その新たなこの事実が確認できた。
現在、電気分解法によるクエン酸二水素銀を含むクエン酸溶液が実用化されている。しかしこの製造方法では多量のクエン酸二水素銀を工業的規模で得ることは困難である。本製造方法(電気分解法)はクエン酸溶液中に極板として銀板を浸漬し、これに直流電流を通電する。反応が進むにつれて電極表面には合わせて水も電気分解され、微小な気泡が電極表面を覆い、電流が流れにくくなり、クエン酸二水素銀の生産能力が低下する。最終形態であるクエン酸二水素銀の濃度を2400ppmまで上げるのに長時間(例えば144時間)を要する。このため、本法は工業的な大量生産に不向きであり、コストが高く、また銀濃度はクエン酸6wt%溶液中銀濃度2400ppm程度が限界である。反応物の最終形態がクエン酸二水素銀を溶解したクエン酸溶液であるため貯蔵及び運搬時に空間の多くを占める。またさらに高濃度の銀イオンを得るためにはさらに高濃度のクエン酸が必要となるが、これはクエン酸溶液の粘性を増加させるため、製造時の作業性が悪化するという欠点がある。さらに電気分解法により製造されたクエン酸二水素銀溶液(銀濃度2400ppm)を冷凍真空乾燥して粉末化することはできても、それにより製造コストは高くなり、しかも得られる粉末は、クエン酸二水素銀10重量%及びクエン酸90重量%からなる混合粉末であるため、効率よく純粋なクエン酸水素二銀含有組成物だけを得ることができない。
一方、本発明によれば、水又はクエン酸溶液に容易に溶解するクエン酸水素二銀含有組成物を簡易な手法で、かつ工業的スケールで得ることができる。また、クエン酸水素二銀含有組成物を乾燥した不純物を含まない粉末として得ることができるため、貯蔵・運搬時の占有体積を小さくすることができる。更に、クエン酸水素二銀含有組成物の溶解性のため、クエン酸水素二銀含有組成物をクエン酸溶液に投入してクエン酸銀高濃度溶液(例えば、2400ppmを超える銀イオン濃度)を調製することも容易になる。得られたクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を水又はクエン酸溶液に溶解させた溶液は、更に希釈することで、所望の銀濃度を有するクエン酸水素二銀混合粉末を含むこれ等新規な混合粉末を用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤を得ることができる。
水又はクエン酸溶液に再溶解させる観点から、上記の抗菌剤又は抗ウイルス剤は、本発明の製造方法によって得られるクエン酸水素二銀含有組成物と、1wt%から10wt%のクエン酸溶液、好ましくは5wt%から7wt%のクエン酸溶液に混合して製造することが好ましい。
上記抗菌剤又は抗ウイルス剤は、目的に応じて、クエン酸水素二銀含有組成物以外の抗菌剤や公知の添加剤、例えば、防腐剤、安定剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤等を抗菌剤および抗ウイルス剤として適宜配合することができる。
上記抗菌剤又は抗ウイルス剤中の銀濃度は特に限定されないが、実施例10の表3の試験結果から明らかなようにグラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、真菌に対する抗菌効果を発揮する銀の最小発育阻止濃度や、また同実施例中の表4及び表6の抗ウイルス試験結果で明らかになった抗ウイルス性を可能とする銀濃度、さらに同実施例中の表5及び表7の試験結果から、細胞毒性を有さず且つ安全な銀濃度は本結果から、1.0ppm~200ppmであることが好ましく、5ppm~100ppmであることがより好ましく、30ppm~50ppmであることが更に好ましいことがわかった。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、銀化合物に由来する銀イオンにより、菌の種類の差異、及び抗生物質による細菌の薬剤耐性獲得の有無にかかわらず抗菌効果を発揮することができる。また、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を、水又はクエン酸溶液で所望の銀イオン濃度に希釈した抗菌剤又は抗ウイルス剤は、それを塗布操作あるいは含浸操作等により被付着物の表面をこれらで被覆し、水分が揮発した跡には、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物が表面に残留する。その結果、クエン酸水素二銀含有組成物が付着した加工面は抗菌又は抗ウイルス機能を有する。またその上からアルコール等で再塗布されたとしても、それが蒸発すればクエン酸水素二銀含有組成物はそのまま表面に残留するので効果は持続する。クエン酸水素二銀含有組成物は水等で表面を洗い落とさない限り、その抗菌剤及び抗ウイルス剤の効果はいつまでも持続する。従って本剤は高い抗菌性及び抗ウイルス性を持続し、また本剤は幅広い抗菌スペクトルを有し、さらにウイルス不活化活能を有することから有用な抗菌剤又は抗ウイルス剤として使用することができる。
例えば米国環境保護庁(EPA)の承認したCovid-19に対する有効な消毒剤製品を掲載するリストNにおいて、これ等リスト中の消毒剤の中でも食品に直接触れても洗い落とす必要がない安全承認されたEPA登録食品接触表面消毒剤であって、安全性が高く更にCovid-19に対する殺菌力も十分に備え、その上その能力の残留性維持が24時間以上確保されると発表してきたPure Bioscience社が製造するクエン酸二水素銀とクエン酸で構成されるSilverion2400を使って作られていると思われる、PURE(R) Hard Surface disinfectant (EPA Reg. No. 72977-5-73912) が米国環境保護庁(EPA)の承認を受け2020年6月24日にリストNに追加掲載され、その安全性を有する抗菌力又は抗ウイルス力機能はクエン酸二水素銀中の銀イオンに因るものであり、その銀濃度が30ppmと技術資料に明記されていることから、クエン酸二水素銀を含む本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が37.2%から57.9%以下である粉末を1kgを用いて、同様の銀濃度30ppmに調整した場合の抗菌剤又は抗ウイルス剤の量は、先ずはイオン交換樹脂処理又はRO膜処理・EDI処理等で処理された精製水並み若しくはそれ以上の脱イオン水でクエン酸一水和水物を5wt%程度の濃度に調整したクエン酸水溶液を作り、それに本発明のクエン酸水素二銀含有組成物1kgを155倍から241倍に希釈溶解した2,400ppmの銀濃度のクエン酸水素二銀含有組成物のクエン酸溶解原液を作り保存、更に必要に応じてそれを前記脱イオン水で80倍希釈した銀濃度30ppmの溶解液を調整すれば、12,400リッターから19,280リッターの量が簡易に速やかに確保でき、これを抗菌剤又は抗ウイルス剤として顔・頭部・手指・手首等に直接スプレー噴霧塗布し、その抗菌剤又は抗ウイルス剤の液体を自らの手でむらなくその皮膚及び毛髪等の表面全体に伸ばして使用した場合、一人に必要な1回当たりの十分な量を10ml程度と仮定すると、これ等の部位に延べで1,240,000回から1,928,000回の噴霧塗布が可能となり、その水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤が皮膚等の表面で均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
またマスクや衣服等及び居住空間等及びフィルター等の多孔質素材に対して、銀濃度が30ppmに希釈された抗菌剤又は抗ウイルス剤をくまなくスプレー噴霧塗布すれば、同じくその水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤がそれら多孔質表面に付着し均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
更に食器類・金属・ガラス・建材・プラスチック・床・タイル・コンクリート等の非多孔質素材に対して、銀濃度が30ppm希釈された抗菌剤又は抗ウイルス剤をくまなくスプレー噴霧塗布すれば、同じくその水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤がそれら非多孔質表面に付着し均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
従って、例えば最近の事例として米国艦船空母セオドア・ルーズベルトでCovid-19に罹患した一部の乗務員により船内での感染が急拡大し、最終的には乗務員5,000人中約60%が航海中に感染してしまった問題は記憶に新しいが、その際に不測の緊急事態用として12,400リッター(62本/200L入りドラム缶)から19,280リッター(96本/200L入りドラム缶)の銀濃度30ppmの希釈溶液状での常備保管は困難だとしても、最も占有スペースを必要としないこの新たな形態である本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を、空母内にてペール缶等の湿度遮断遮光機能を有する容器で1kg及びクエン酸一水和物を12.05kg保管していたとしたなら、全艦船に配備されていると思われる前記脱イオン水を得る装置によって、それを用いた希釈銀濃度30ppmの抗菌剤又は抗ウイルス剤の10ml溶液を乗組員に、述べ1,240,000人分から1,928,000人分のCovid-19に対する持続した有効性を持つ抗菌剤又は抗ウイルス剤として適応出来たことになり、その上に人の肌や頭部等にスプレー噴霧塗布適用した残りの量を多孔質素材や非多孔質素材で作られた人の触れる可能性ある全ての物にも、スプレー噴霧塗布等を適用する事が出来たと考えられ、この不測の緊急事態に対して適切に持続可能な抗菌力及び抗ウイルス力機能による対処ができたことは容易に想定される。
例えば米国環境保護庁(EPA)の承認したCovid-19に対する有効な消毒剤製品を掲載するリストNにおいて、これ等リスト中の消毒剤の中でも食品に直接触れても洗い落とす必要がない安全承認されたEPA登録食品接触表面消毒剤であって、安全性が高く更にCovid-19に対する殺菌力も十分に備え、その上その能力の残留性維持が24時間以上確保されると発表してきたPure Bioscience社が製造するクエン酸二水素銀とクエン酸で構成されるSilverion2400を使って作られていると思われる、PURE(R) Hard Surface disinfectant (EPA Reg. No. 72977-5-73912) が米国環境保護庁(EPA)の承認を受け2020年6月24日にリストNに追加掲載され、その安全性を有する抗菌力又は抗ウイルス力機能はクエン酸二水素銀中の銀イオンに因るものであり、その銀濃度が30ppmと技術資料に明記されていることから、クエン酸二水素銀を含む本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が37.2%から57.9%以下である粉末を1kgを用いて、同様の銀濃度30ppmに調整した場合の抗菌剤又は抗ウイルス剤の量は、先ずはイオン交換樹脂処理又はRO膜処理・EDI処理等で処理された精製水並み若しくはそれ以上の脱イオン水でクエン酸一水和水物を5wt%程度の濃度に調整したクエン酸水溶液を作り、それに本発明のクエン酸水素二銀含有組成物1kgを155倍から241倍に希釈溶解した2,400ppmの銀濃度のクエン酸水素二銀含有組成物のクエン酸溶解原液を作り保存、更に必要に応じてそれを前記脱イオン水で80倍希釈した銀濃度30ppmの溶解液を調整すれば、12,400リッターから19,280リッターの量が簡易に速やかに確保でき、これを抗菌剤又は抗ウイルス剤として顔・頭部・手指・手首等に直接スプレー噴霧塗布し、その抗菌剤又は抗ウイルス剤の液体を自らの手でむらなくその皮膚及び毛髪等の表面全体に伸ばして使用した場合、一人に必要な1回当たりの十分な量を10ml程度と仮定すると、これ等の部位に延べで1,240,000回から1,928,000回の噴霧塗布が可能となり、その水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤が皮膚等の表面で均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
またマスクや衣服等及び居住空間等及びフィルター等の多孔質素材に対して、銀濃度が30ppmに希釈された抗菌剤又は抗ウイルス剤をくまなくスプレー噴霧塗布すれば、同じくその水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤がそれら多孔質表面に付着し均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
更に食器類・金属・ガラス・建材・プラスチック・床・タイル・コンクリート等の非多孔質素材に対して、銀濃度が30ppm希釈された抗菌剤又は抗ウイルス剤をくまなくスプレー噴霧塗布すれば、同じくその水分が蒸発した跡にはこの抗菌剤又は抗ウイルス剤がそれら非多孔質表面に付着し均一で高濃度な状態で残留し、その効果は水で洗い落とすまで持続する。
従って、例えば最近の事例として米国艦船空母セオドア・ルーズベルトでCovid-19に罹患した一部の乗務員により船内での感染が急拡大し、最終的には乗務員5,000人中約60%が航海中に感染してしまった問題は記憶に新しいが、その際に不測の緊急事態用として12,400リッター(62本/200L入りドラム缶)から19,280リッター(96本/200L入りドラム缶)の銀濃度30ppmの希釈溶液状での常備保管は困難だとしても、最も占有スペースを必要としないこの新たな形態である本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を、空母内にてペール缶等の湿度遮断遮光機能を有する容器で1kg及びクエン酸一水和物を12.05kg保管していたとしたなら、全艦船に配備されていると思われる前記脱イオン水を得る装置によって、それを用いた希釈銀濃度30ppmの抗菌剤又は抗ウイルス剤の10ml溶液を乗組員に、述べ1,240,000人分から1,928,000人分のCovid-19に対する持続した有効性を持つ抗菌剤又は抗ウイルス剤として適応出来たことになり、その上に人の肌や頭部等にスプレー噴霧塗布適用した残りの量を多孔質素材や非多孔質素材で作られた人の触れる可能性ある全ての物にも、スプレー噴霧塗布等を適用する事が出来たと考えられ、この不測の緊急事態に対して適切に持続可能な抗菌力及び抗ウイルス力機能による対処ができたことは容易に想定される。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、医療分野では医薬品として医療用殺菌剤、創傷被覆剤、熱傷被覆剤、褥瘡被覆剤、胃ろう・腸瘻及びPEG等、カテーテル、留置針、患部被覆用ガーゼ・包帯・ドレッシング・ギプス包帯等のあらゆる商品形態での抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。また、人の触れる可能性ある医療機器、事務機器、家電製品、ロッカー、院内医療従事者身辺衣服全般・マスク・防護ゴーグル・手術帽・手袋・予防衣・エプロン等、院内病床ベッド・毛布・シーツ・毛布カバー・枕・枕カバー・仕切カーテン等、及び患者部屋・集中治療室・診察室・治療室・検査室・理学療法室・廊下・医局・薬局・事務局・食堂・厨房・浴室・便所・待合室等、また医療廃棄物及び洗濯物からの二次感染を防止するあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、パーソナルケア分野では、顔・頭部・手・足・全身・毛髪・体毛・皮膚の消毒用品、婦人用衛生用品・インティメートケア用品・フットケア用品・練り歯磨き等オーラルケア用品・デンタルフロス用品・日焼け止め・アフターサンケア用品・リップスティック用品に関わる。化粧料分野では基礎化粧品・メークアップ・脇下消臭剤・脇下制汗剤・シャンプー・リンス・コンディショナー・トリートメント・クレンジング剤に関わる。医療分野では育毛増毛剤・除毛剤・脱色剤・ヘアカラー剤・抗座瘡剤・口腔内・肛門・尿道・膣等の消毒に関わるあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、軍隊及び自衛隊全活動域、警察全活動域、海上保安庁全活動域、消防及び救急隊全活動域及び、幼稚園・保育園・育児施設・遊戯類玩具類や学校及びそれ等の寮・食堂等の全活動域、更に家庭、病院、介護施設、ホテル、理美容室、理髪店、料理店、スポーツジム、事務所、作業所、工場、公共施設等及び移動手段である飛行機、ヘリコプター、列車、バス、モノレール、ゴンドラ、船舶、自動車等の内部の人が触れるあらゆる物品および空調内部・フィルター等に使用することができる。
例えばこれらの中でもドア、家具、ファブリック製品、家電、スィッチ、食器、調理器具、調理台、シンク等、床面、壁面、ガラス窓、浴槽、便器、寝具類、乳児・幼児向け用具・玩具類及び機器類・装置類・周辺機器・道具類・デスク・デスク周辺機器・自動車内部の部材・衣服類・マスク・防護ゴーグル・手袋・帽子・靴類・エプロン等に用いることができる。洗剤・汚れ浮遊剤・蛍光増白剤・研磨剤等を含む表面清掃組成物やワックス類等と併用した新機能剤商品の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
例えばこれらの中でもドア、家具、ファブリック製品、家電、スィッチ、食器、調理器具、調理台、シンク等、床面、壁面、ガラス窓、浴槽、便器、寝具類、乳児・幼児向け用具・玩具類及び機器類・装置類・周辺機器・道具類・デスク・デスク周辺機器・自動車内部の部材・衣服類・マスク・防護ゴーグル・手袋・帽子・靴類・エプロン等に用いることができる。洗剤・汚れ浮遊剤・蛍光増白剤・研磨剤等を含む表面清掃組成物やワックス類等と併用した新機能剤商品の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、食品加工工場分野での、機械部品・その周辺機器・用具類・空調内部及びフィルター等及び食品接触内面工程・食品包材内部等の衛生維持管理、全ての作業環境・クリーン環境保全設備・物品・表面・空間等の衛生維持管理、及び作業員の身にまとう全ての衣服・帽子・マスク・防護ゴーグル・手袋・靴等の衛生維持管理に向けたあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、農業分野では、収穫した果実類・野菜類・根菜類・根茎類・球根類及び魚介類、肉類全般の微生物汚染の防御および鮮度保持、及び穀物等のカビ・細菌・ウイルスを制御するために使用する抗生物質や有機系農薬に代わる病害防止剤、また土壌病害菌のカビ・細菌・ウイルス用有機系農薬に代わる安全性の高い農薬等とした商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、畜産分野では、食肉解体工程での食肉の触れる全ての工程の物品、表面・空間及び食肉自体の表面、機械部品・その周辺機器・空調内部及びフィルター・用具類等及び食品接触内面工程等の衛生維持管理、及び全ての作業環境・クリーン環境保全設備・物品・表面・空間等の衛生維持管理、また作業員の身にまとう全ての衣服・帽子・マスク・防護ゴーグル・手袋・靴等の衛生維持管理、更にはあらゆるカビ・細菌・ウイルスの原因による畜産伝染病(牛皮膚真菌症等、乳牛乳房炎等、鳥インフル・豚コレラ等)に向けたあらゆる動物薬等の商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成剤として用いる事を可能とする。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様として、工業分野として、冷却塔・乾燥機及びコンプレッサー等のフィルター・冷却水、用水プール、遊泳用プール、温水システム、空調システム・温泉・鉱泉、配管・タンク・水処理機器・周辺機器・ポンプ等水処理装置等や防腐剤・防カビ剤・抗微生物薬等に向けたあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成剤として用いる事を可能とする、等々の様々な産業上の利用が可能である。
本発明における「抗菌剤」又は「抗ウイルス剤」の使用態様における使用方法としては、あらゆるものの表面に噴霧、塗布、スプレー、浸漬、転写等の方法により皮膜化する商品形態、又はあらゆる液状、固体、半固体、ゲル、ゾル、スティック、カプセル状でその商品形状に合わせた使用方法に準ずる商品形態、徐放効果や緊急時の緊急処置効果を持たせた繊維自体や袋状・容器・カプセル等にこれを内包させた組成剤の商品形態等、如何なる商品形態の使用方法でも構わない。
また、例えば、本発明の新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を消臭剤として用いれば、銀由来の酸化力を有しているため、悪臭の原因となる硫黄系ガス、アミン系ガス、アルデヒド系ガス、プロピオン酸、イソ吉草酸等の成分と反応して無臭化させることもでき、消臭剤としての効果を発揮することが可能である。
本発明の製造方法によって得られるこの新規なクエン酸水素二銀含有組成物粉末を抗ウイルス剤として用いれば、本剤は例えばA型インフルエンザウイルス(H3N2)と同様のエンベロープを有する高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の原因であるH5N1亜型ウイルスのような変異ウイルス株も不活化させることが可能となる有用な抗ウイルス剤として効果を発揮することができる。また重症急性呼吸器症候群原因ウイルス(SARS)、あるいは病原性コロナウイルスCOVID-19もインフルエンザのそれとは異なるスパイクのタンパク構造を有しているが、やはり銀イオンに対して感受性のあるエンベロープを有していれば同様に不活化させることも可能と考えられる。
析出したクエン酸水素二銀含有組成物の組成
クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀又はクエン酸二水素銀とクエン酸三銀の占めるモル比の計算方法を示す。
クエン酸銀の分子式から、クエン酸二水素銀はC6H7O7・Agで構成されている。
その分子量は298.99である。従って銀の原子量は107.87であるので、クエン酸二水素銀の銀濃度は107.87/298.99×100=36.1wt%となる。同様に、クエン酸水素二銀のそれはC6H6O7・2Agで表され、その分子量は405.86となる。従ってクエン酸水素二銀の銀濃度は107.87×2/405.86×100=53.2wt%となる。クエン酸三銀はC6H5O7・3Agで表される。その分子量は512.73となる。従ってクエン酸三銀の銀濃度は107.87×3/512.73×100=63.1wt%となる。
すなわち、得られたクエン酸水素二銀含有組成物に含まれる銀の濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲にあるということは、このクエン酸銀はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀から構成されていることがわかる。また同様にクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲にあるということは、このクエン酸水素二銀含有組成物はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀から構成されていることがわかる。
クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀又はクエン酸二水素銀とクエン酸三銀の占めるモル比の計算方法を示す。
クエン酸銀の分子式から、クエン酸二水素銀はC6H7O7・Agで構成されている。
その分子量は298.99である。従って銀の原子量は107.87であるので、クエン酸二水素銀の銀濃度は107.87/298.99×100=36.1wt%となる。同様に、クエン酸水素二銀のそれはC6H6O7・2Agで表され、その分子量は405.86となる。従ってクエン酸水素二銀の銀濃度は107.87×2/405.86×100=53.2wt%となる。クエン酸三銀はC6H5O7・3Agで表される。その分子量は512.73となる。従ってクエン酸三銀の銀濃度は107.87×3/512.73×100=63.1wt%となる。
すなわち、得られたクエン酸水素二銀含有組成物に含まれる銀の濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲にあるということは、このクエン酸銀はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀から構成されていることがわかる。また同様にクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲にあるということは、このクエン酸水素二銀含有組成物はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀から構成されていることがわかる。
クエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル組成比の求め方
例えば以下実施例1を例に取れば、得られたクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が49.5wt%である。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるということなので、本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。
ここでクエン酸二水素銀(重量)の存在比をXとすると、 (0<X<1)
次の方程式が成立する。 36.1X+53.2(1-X)=49.5
これより X=0.217が求まり、クエン酸二水素銀21.7wt%、クエン酸水素二銀が78.3wt%から本クエン酸水素二銀含有組成物は構成されていることが分る。
さらに、それぞれのクエン酸銀の重量比(wt%)をそのクエン酸銀の分子量で除すれば、そのモル比を求めることができる。そのようにして計算すると、このクエン酸銀中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.27対0.73であった。
例えば以下実施例1を例に取れば、得られたクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が49.5wt%である。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるということなので、本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。
ここでクエン酸二水素銀(重量)の存在比をXとすると、 (0<X<1)
次の方程式が成立する。 36.1X+53.2(1-X)=49.5
これより X=0.217が求まり、クエン酸二水素銀21.7wt%、クエン酸水素二銀が78.3wt%から本クエン酸水素二銀含有組成物は構成されていることが分る。
さらに、それぞれのクエン酸銀の重量比(wt%)をそのクエン酸銀の分子量で除すれば、そのモル比を求めることができる。そのようにして計算すると、このクエン酸銀中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.27対0.73であった。
クエン酸水素二銀とクエン酸三銀とのモル組成比
上記計算例と同様に、例えば以下実施例8を例に取れば、得られたクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が57.9wt%である。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲にあるということなので、本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。
ここでクエン酸水素二銀(重量)の存在比をYとすると、 (0<Y<1)
次の方程式が成立する。
53.2Y+63.1(1-Y)=57.9
これより Y=0.527が求まり、本試料はクエン酸水素二銀52.7wt%、クエン酸三銀が47.3wt%から構成されていることが分かる。
さらにそれぞれの重量比(wt%)をそのクエン酸銀分子量で除すれば、それぞれのモル比を求めることができる。そのようにして計算するとこのクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸水素二銀とクエン酸三銀のモル比は0.58対0.42であった。
上記計算例と同様に、例えば以下実施例8を例に取れば、得られたクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度が57.9wt%である。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲にあるということなので、本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。
ここでクエン酸水素二銀(重量)の存在比をYとすると、 (0<Y<1)
次の方程式が成立する。
53.2Y+63.1(1-Y)=57.9
これより Y=0.527が求まり、本試料はクエン酸水素二銀52.7wt%、クエン酸三銀が47.3wt%から構成されていることが分かる。
さらにそれぞれの重量比(wt%)をそのクエン酸銀分子量で除すれば、それぞれのモル比を求めることができる。そのようにして計算するとこのクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸水素二銀とクエン酸三銀のモル比は0.58対0.42であった。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(反応液の最終pH4.0)の場合>
室温(25℃)下、イオン交換水1000mLに、クエン酸1水和物20.8g(0.10mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、これ等を投入し反応液とした。投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に少量ずつ滴下し、pH1.6になった反応液をpH4.0まで上昇させた。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け、反応を促進させた。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、密閉型乾燥器に入れて、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物18.95gを得た。この時に使用した真空ポンプはダイアフラム型真空ポンプ(アルバック機工製DA-20型)で、乾燥器中の気圧は常時0.05気圧以下に維持されていた。
室温(25℃)下、イオン交換水1000mLに、クエン酸1水和物20.8g(0.10mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、これ等を投入し反応液とした。投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に少量ずつ滴下し、pH1.6になった反応液をpH4.0まで上昇させた。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け、反応を促進させた。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、密閉型乾燥器に入れて、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物18.95gを得た。この時に使用した真空ポンプはダイアフラム型真空ポンプ(アルバック機工製DA-20型)で、乾燥器中の気圧は常時0.05気圧以下に維持されていた。
吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液中の銀濃度の分析は、それの少量をサンプリングし希薄な硝酸溶液で希釈してプラズマ発光分析装置(島津製作所株式会社製、ICP S 8000)を用いて測定したところ、2200ppmであった。一方の固液分離したろ過残渣物を前記方法により粉末状にしたクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度は、それの少量をサンプリングし、精秤して重量を測定した。それを希硝酸(2M/L)100mlに溶解して試料とし、上記ICP分析をして銀濃度を求めた。
この時のクエン酸水素二銀含有組成物粉末の銀濃度は49.5wt%であった。クエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるということなので、前記した計算方法により、本実施例1の本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。この例示した計算方法でのモル比の結果は、クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.27対0.73であった。
この時のクエン酸水素二銀含有組成物粉末の銀濃度は49.5wt%であった。クエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるということなので、前記した計算方法により、本実施例1の本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。この例示した計算方法でのモル比の結果は、クエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.27対0.73であった。
<実施例1-2:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。実施例1の最初のイオン交換水を初回のみクエン酸緩衝液(pH4)に置換えた場合>
実施例1のイオン交換水を、初回のみクエン酸緩衝液(pH4)に置換えて、水酸化ナトリウム溶液を滴下して所望の母液pHに調整する際に、水酸化ナトリウム溶液の投下状態が反応生成物に影響するかどうかを検討した。前記実施例1の調製法に準じて調製するが、クエン酸緩衝液(pH4)は、イオン交換水1000mLにあらかじめクエン酸1水和物14.0gとクエン酸ナトリウム2水和物12.6gを投入してpH4の緩衝液を調製した。つづいて実施例1と同様にクエン酸1水和物20.8g(0.1mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、上記クエン酸緩衝液(pH4)に投入した。つづいて実施例1では水酸化ナトリウム溶液(8wt%)98mlを反応母液に約10ml/min.の割合で反応母液に滴下し、pH4とした。その滴下作業に約15分間を要した。一方、本実施例1-2では水酸化ナトリウム溶液(8.0wt%)80mlを一度に投入し、残り21mlを注意深く滴下し、母液pHをpH4に調製した。それに要した時間は約3分間であった。その後の調製工程は実施例1と同じにした。このようにして粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物19.35gを得た。実施例1-2は実施例1に比べて操作時間を短縮できる。かかるクエン酸水素二銀含有組成物の調製方法も可能であるが、クエン酸緩衝液(pH4)を作る工程を加える必要が有り、更にそのクエン酸緩衝液(pH4)の為の原料としてクエン酸及びクエン酸ナトリウムが別途必要となる。
実施例1のイオン交換水を、初回のみクエン酸緩衝液(pH4)に置換えて、水酸化ナトリウム溶液を滴下して所望の母液pHに調整する際に、水酸化ナトリウム溶液の投下状態が反応生成物に影響するかどうかを検討した。前記実施例1の調製法に準じて調製するが、クエン酸緩衝液(pH4)は、イオン交換水1000mLにあらかじめクエン酸1水和物14.0gとクエン酸ナトリウム2水和物12.6gを投入してpH4の緩衝液を調製した。つづいて実施例1と同様にクエン酸1水和物20.8g(0.1mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、上記クエン酸緩衝液(pH4)に投入した。つづいて実施例1では水酸化ナトリウム溶液(8wt%)98mlを反応母液に約10ml/min.の割合で反応母液に滴下し、pH4とした。その滴下作業に約15分間を要した。一方、本実施例1-2では水酸化ナトリウム溶液(8.0wt%)80mlを一度に投入し、残り21mlを注意深く滴下し、母液pHをpH4に調製した。それに要した時間は約3分間であった。その後の調製工程は実施例1と同じにした。このようにして粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物19.35gを得た。実施例1-2は実施例1に比べて操作時間を短縮できる。かかるクエン酸水素二銀含有組成物の調製方法も可能であるが、クエン酸緩衝液(pH4)を作る工程を加える必要が有り、更にそのクエン酸緩衝液(pH4)の為の原料としてクエン酸及びクエン酸ナトリウムが別途必要となる。
<実施例2:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH4.0)における反応母液の再利用>
実施例1から得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.12Lに撹拌しながら実施例1に準じてクエン酸(1水和)20.8g(0.10mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、上記濾液である反応母液に投入した。投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物23.59gを得た。これを実施例1と同様の方法にて処理したその銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中に50.4wt%であった。このクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度は銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例2の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.21対0.79であった。
実施例1から得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.12Lに撹拌しながら実施例1に準じてクエン酸(1水和)20.8g(0.10mol)、硝酸銀17.0g(0.1mol)を精秤し、上記濾液である反応母液に投入した。投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物23.59gを得た。これを実施例1と同様の方法にて処理したその銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中に50.4wt%であった。このクエン酸水素二銀含有組成物の銀濃度は銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例2の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.21対0.79であった。
<実施例3:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH3.6)における反応母液の再利用>
実施例2で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.25Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)20.8g(0.10mol)、硝酸銀16.8g(0.1mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH3.6にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH3.6に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物23.95gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は46.6wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例3の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.46対0.54であった。
実施例2で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.25Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)20.8g(0.10mol)、硝酸銀16.8g(0.1mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH3.6にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH3.6に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物23.95gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は46.6wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例3の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.46対0.54であった。
<実施例4:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH4.0)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
実施例3で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.41Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物45.49gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は49.8wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例4の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.25対0.75であった。
実施例3で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.41Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物45.49gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は49.8wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例4の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.25対0.75であった。
<実施例5:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH4.5)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
実施例4で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.68Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物45.49gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は49.8wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例5の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.25対0.75であった。
実施例4で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.68Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH4.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH4.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物45.49gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は49.8wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例5の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.25対0.75であった。
<実施例6:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH2.5)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
実施例5で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.87Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH2.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH2.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物44.27gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は39.7wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例6の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.84対0.16であった。
実施例5で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.87Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH2.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH2.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物44.27gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は39.7wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例6の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.84対0.16であった。
<実施例7:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH2.0)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
実施例6で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液2.10Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH2.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH2.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物26.33gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は37.2wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例7の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.95対0.05であった。
実施例6で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液2.10Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH2.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH2.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離し、ろ過残渣物を軽く水洗し、減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物26.33gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は37.2wt%であった。銀濃度が36.1wt%から53.2wt%の範囲内にあるので、本実施例7の本試料もクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀からなる組成物であることを示している。実施例1に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.95対0.05であった。
<実施例8:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH5.5)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
比較例1で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液2.72Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH5.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH5.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。低pH域で析出したクエン酸水素二銀含有組成物析出物のように簡単には固液分離はできなかった。得られたクエン酸銀を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物37.59gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は57.9wt%であった。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲内にあるということなので、前記した計算方法により、本実施例8の本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。この例示した計算方法でのモル比の結果は、このクエン酸水素二銀含有組成物のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.58対0.42であった。
比較例1で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液2.72Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH5.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH5.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。低pH域で析出したクエン酸水素二銀含有組成物析出物のように簡単には固液分離はできなかった。得られたクエン酸銀を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物37.59gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物の粉末中の銀濃度は57.9wt%であった。これはクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度が53.2wt%から63.1wt%の範囲内にあるということなので、前記した計算方法により、本実施例8の本試料はクエン酸二水素銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。この例示した計算方法でのモル比の結果は、このクエン酸水素二銀含有組成物のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.58対0.42であった。
<実施例9:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH5.0)における2倍濃度の原料を使用した製造。および反応母液の再利用>
実施例8で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液3.12Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH5.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH5.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸二水素銀及びクエン酸三銀が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。得られたクエン酸水素二銀含有組成物を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物37.15gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物粉末中の銀濃度は57.0wt%であった。銀濃度が53.2wt%から63.2wt%の範囲内にあるので、本実施例9の本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。実施例8に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.68対0.32であった。
実施例8で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液3.12Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH5.0にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH5.0に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸二水素銀及びクエン酸三銀が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。得られたクエン酸水素二銀含有組成物を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物37.15gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物粉末中の銀濃度は57.0wt%であった。銀濃度が53.2wt%から63.2wt%の範囲内にあるので、本実施例9の本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。実施例8に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀のモル比は0.68対0.32であった。
<比較例1:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH7.5)における製造。>
実施例7で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.20Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH7.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH7.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。しかし、数分後にろ紙が目詰まりして固液分離することはできなかった。そこで反応液全部をもう一度容器に取り、一昼夜静置した。翌日析出物が完全に底に沈殿したので、上澄み液(母液)を別容器に取り出し、イオン交換水1.0Lを投入して撹拌して沈殿物を再分散させて、また一昼夜静置した。その後、デカンテーションして得たクエン酸水素二銀含有組成物を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物65.83gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度は62.2wt%であった。銀濃度が53.2wt%から63.2wt%の範囲内にあるので、本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。
実施例7で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液1.20Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。以後実施例1と同様にして投入した薬剤が完全に溶解し、反応液が完全に透明になったことを確認して水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH7.5にした。水酸化ナトリウム溶液を滴下し始めて2分から3分後には反応液が白濁し始めた。反応液がpH7.5に到達してからさらに3時間撹拌を続け反応を促進した。このようにしてクエン酸水素二銀含有組成物が析出する過飽和水溶液を調製した。この後撹拌を止めて、反応液全部をNo.5Cの標準濾紙(孔径:1μm)を用いた吸引濾過により固液分離した。しかし、数分後にろ紙が目詰まりして固液分離することはできなかった。そこで反応液全部をもう一度容器に取り、一昼夜静置した。翌日析出物が完全に底に沈殿したので、上澄み液(母液)を別容器に取り出し、イオン交換水1.0Lを投入して撹拌して沈殿物を再分散させて、また一昼夜静置した。その後、デカンテーションして得たクエン酸水素二銀含有組成物を減圧下、50℃で2週間乾燥させて、粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物65.83gを得た。実施例1と同様の方法にて処理し、その銀濃度の分析結果はクエン酸水素二銀含有組成物中の銀濃度は62.2wt%であった。銀濃度が53.2wt%から63.2wt%の範囲内にあるので、本試料はクエン酸水素二銀とクエン酸三銀からなる組成物であることを示している。
に記載した計算方法に準じてそのモル比を計算すると、このクエン酸水素二銀含有組成物中のクエン酸二水素銀とクエン酸三銀のモル比は0.13対0.87であった。表2にその結果を示す。
<比較例2:クエン酸水素二銀含有組成物の製造。(pH1.8)における製造。>
実施例9で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液3.52Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。反応液のpHはpH1.4であった。次に水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH1.8にした。この場合、反応液は透明で、クエン酸水素二銀含有組成物の析出物はできなかった。表2にその結果を示す。
表2 比較例のクエン酸銀調製結果
実施例9で得た吸引濾過により固液分離した濾液である反応母液3.52Lに撹拌しながらクエン酸(1水和)42.0g(0.20mol)、硝酸銀34.0g(0.20mol)を精秤し上記濾液である反応母液に投入した。反応液のpHはpH1.4であった。次に水酸化ナトリウム溶液(8wt%)を反応液に滴下し、反応液をpH1.8にした。この場合、反応液は透明で、クエン酸水素二銀含有組成物の析出物はできなかった。表2にその結果を示す。
表2 比較例のクエン酸銀調製結果
次に図1に上記表1のpH値とクエン酸二水素銀/クエン酸水素二銀のモル比をプロットした。
次に図2に上記表1及び表2のpH値とクエン酸水素二銀/クエン酸三銀のモル比をプロットした。
<実施例10:抗菌剤又は抗ウイルス剤の製造及び評価>
〔クエン酸水素二銀含有組成物の殺菌効果〕
実施例1で得られたクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀から成るクエン酸水素二銀含有組成物の粉末0.505gをクエン酸溶液(6.0wt%)100mLに加えて溶解させ、抗菌剤および抗ウイルス剤として用いる溶液を得た。得られた溶液の液中銀イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(島津製作所株式会社製、「ICP S-8100」)を用いて測定したところ、2480ppmであった。
得られた抗菌剤又は抗ウイルス剤を使用して、日本化学療法学会標準法の寒天平板希釈法に準じて、各種細菌に対する銀イオンの最小発育阻止濃度(MIC)を測定することによって抗菌性能を評価した。詳しくはミューラー・ヒントン・ブイヨン(MHB)培地(肉抽出液30.0%(w/v)、カザミノ酸1.75%(w/v)、可溶性デンプン0.15%(w/v)、pH7.3±0.1)中で被試験細菌を培養し、被試験細菌の数が1.0×104~5.0×104CFU/mLとなるようにして接種用菌液を調製した。上記試験溶液をMHB培地で10倍希釈した試料(銀イオン濃度:248ppm)を基準として、銀イオン濃度0.5ppmまで二倍希釈系列を作成した。各試料が均一に混合されるように100~200rpm(水平振とう)、振幅40~60mm、35~37℃の条件下で振とう培養し、24時間培養した。結果を表3に示す。
本試験結果から本発明のこれ等新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤はグラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、真菌に抗菌効果を発揮する抗菌スペクトルの広い抗菌剤として効果を発揮することがわかる。
〔クエン酸水素二銀含有組成物の殺菌効果〕
実施例1で得られたクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀から成るクエン酸水素二銀含有組成物の粉末0.505gをクエン酸溶液(6.0wt%)100mLに加えて溶解させ、抗菌剤および抗ウイルス剤として用いる溶液を得た。得られた溶液の液中銀イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(島津製作所株式会社製、「ICP S-8100」)を用いて測定したところ、2480ppmであった。
得られた抗菌剤又は抗ウイルス剤を使用して、日本化学療法学会標準法の寒天平板希釈法に準じて、各種細菌に対する銀イオンの最小発育阻止濃度(MIC)を測定することによって抗菌性能を評価した。詳しくはミューラー・ヒントン・ブイヨン(MHB)培地(肉抽出液30.0%(w/v)、カザミノ酸1.75%(w/v)、可溶性デンプン0.15%(w/v)、pH7.3±0.1)中で被試験細菌を培養し、被試験細菌の数が1.0×104~5.0×104CFU/mLとなるようにして接種用菌液を調製した。上記試験溶液をMHB培地で10倍希釈した試料(銀イオン濃度:248ppm)を基準として、銀イオン濃度0.5ppmまで二倍希釈系列を作成した。各試料が均一に混合されるように100~200rpm(水平振とう)、振幅40~60mm、35~37℃の条件下で振とう培養し、24時間培養した。結果を表3に示す。
本試験結果から本発明のこれ等新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤はグラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、真菌に抗菌効果を発揮する抗菌スペクトルの広い抗菌剤として効果を発揮することがわかる。
〔ウイルスに対する効果〕
以下の全ての試験は、25℃の環境下にて行い、試験ウイルスとしてA型インフルエンザウイルス(H3N2)およびネココロナウイルスを、宿主細胞としてMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)を使用した。
以下の全ての試験は、25℃の環境下にて行い、試験ウイルスとしてA型インフルエンザウイルス(H3N2)およびネココロナウイルスを、宿主細胞としてMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)を使用した。
(1)A型インフルエンザウイルスにおける抗ウイルス性試験
実施例10で使用したクエン酸水素二銀含有組成物溶液(銀濃度2480ppm)を使用して抗ウイルス性試験を実施した。この原液10.0mlをイオン交換水490mlに加え50倍希釈し、銀濃度50ppm溶液で抗ウイルス試験溶液(銀50ppm)を得た。銀濃度50ppmは多くの実用化が検討される製品では銀濃度10~100ppmで使用される場合が多いためである。この抗ウイルス試験溶液9mLに1.6×108PFU/mLのウイルス懸濁液1.0mLを加え、25℃で5分および10分静置して試験液を得た。静置後の試験液から0.5mLを採取し、薬剤不活性化剤(0.05% Tween80含有の0.85%の生理食塩水)4.5mLに加えて混合した。こうすることで薬剤のウイルスとの反応を停止させ、生残ウイルスをプラーク法にてウイルス感染価を評価した。5分後には100個以下、すなわち生残ウイルスを1億分の1にまで減少させた。10分後も同様であった。
この結果、本剤はインフルエンザウイルスに対して実用的に十分なウイルス不活化性能を有していることが分かった。A型インフルエンザウイルス(H3N2)とはそのスパイク性状が変わる病原性インフルエンザ(H1N5)や鳥インフルエンザなど多様な種類のインフルエンザウイルスが存在するが、銀イオンがこれらスパイクに吸着して、その機能を失わせることが想像され、変異したインフルエンザウイルスも含めた多種のインフルエンザ型ウイルスを不活化できることを示唆している。その結果を表4に示す。
実施例10で使用したクエン酸水素二銀含有組成物溶液(銀濃度2480ppm)を使用して抗ウイルス性試験を実施した。この原液10.0mlをイオン交換水490mlに加え50倍希釈し、銀濃度50ppm溶液で抗ウイルス試験溶液(銀50ppm)を得た。銀濃度50ppmは多くの実用化が検討される製品では銀濃度10~100ppmで使用される場合が多いためである。この抗ウイルス試験溶液9mLに1.6×108PFU/mLのウイルス懸濁液1.0mLを加え、25℃で5分および10分静置して試験液を得た。静置後の試験液から0.5mLを採取し、薬剤不活性化剤(0.05% Tween80含有の0.85%の生理食塩水)4.5mLに加えて混合した。こうすることで薬剤のウイルスとの反応を停止させ、生残ウイルスをプラーク法にてウイルス感染価を評価した。5分後には100個以下、すなわち生残ウイルスを1億分の1にまで減少させた。10分後も同様であった。
この結果、本剤はインフルエンザウイルスに対して実用的に十分なウイルス不活化性能を有していることが分かった。A型インフルエンザウイルス(H3N2)とはそのスパイク性状が変わる病原性インフルエンザ(H1N5)や鳥インフルエンザなど多様な種類のインフルエンザウイルスが存在するが、銀イオンがこれらスパイクに吸着して、その機能を失わせることが想像され、変異したインフルエンザウイルスも含めた多種のインフルエンザ型ウイルスを不活化できることを示唆している。その結果を表4に示す。
(2)宿主細胞検証試験
(2-1)細胞毒性確認試験
ウイルス不活化機能を有する本薬剤が、同時に人に対して安全であるかを確認する。上記抗ウイルス試験溶液0.5mLを、薬剤不活性化剤4.5mLに加えて混合する。これをプラーク測定法と同様に細胞を染色し、細胞毒性の有無を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。この試験結果、本試料は生理食塩水同様にイヌ腎臓由来細胞に対して毒性を示さない安全な剤であることが分かった。これを表5に示す。
(2-1)細胞毒性確認試験
ウイルス不活化機能を有する本薬剤が、同時に人に対して安全であるかを確認する。上記抗ウイルス試験溶液0.5mLを、薬剤不活性化剤4.5mLに加えて混合する。これをプラーク測定法と同様に細胞を染色し、細胞毒性の有無を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。この試験結果、本試料は生理食塩水同様にイヌ腎臓由来細胞に対して毒性を示さない安全な剤であることが分かった。これを表5に示す。
(2-2)ウイルスへの細胞感受性確認試験
これら試験に使用したウイルスが規定された試験方法において適正な感受性を維持しているかを確認した。上記抗ウイルス溶液1.0mLを薬剤不活性化剤9mLに加えて混合し、混合液から5mLを採取して試験管に移した。ここでA型インフルエンザウイルス(H3N2型)懸濁液(4~6×104PFU/mL)となるように調製し、この懸濁液0.05mLを上記試験管へ加えた。25℃で30分間静置し、プラーク法にてウイルス感染価を測定し、ウイルスへの細胞感受性の低下がないことを確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。使用したウイルスは十分な活性を有しており、感受性の低下は見られなかった。
これらの結果から本剤は改めて安全性が高く、かつウイルスには十分な不活化作用を有していることが分かった。結果を表5に示す。
これら試験に使用したウイルスが規定された試験方法において適正な感受性を維持しているかを確認した。上記抗ウイルス溶液1.0mLを薬剤不活性化剤9mLに加えて混合し、混合液から5mLを採取して試験管に移した。ここでA型インフルエンザウイルス(H3N2型)懸濁液(4~6×104PFU/mL)となるように調製し、この懸濁液0.05mLを上記試験管へ加えた。25℃で30分間静置し、プラーク法にてウイルス感染価を測定し、ウイルスへの細胞感受性の低下がないことを確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。使用したウイルスは十分な活性を有しており、感受性の低下は見られなかった。
これらの結果から本剤は改めて安全性が高く、かつウイルスには十分な不活化作用を有していることが分かった。結果を表5に示す。
以上の試験結果からも、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物を用いた抗菌液は、広範な抗菌スペクトルを有しており、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌等のグラム陰性菌に対して強い抗菌効果を有していた。また、黄色ブドウ球菌、枯草菌等のグラム陽性菌、カンジダ等の病原性酵母、また白癬菌、クロコウジカビ等の真菌に対しても同様に抗菌効果を有していた。また表3~5から、本発明の抗ウイルス溶液は、細胞毒性を有さず、インフルエンザウイルス等のウイルスに対して顕著な不活化効果を示していた。
(2)ネココロナウイルス(Feline infectious peritonitis virus ATCC VR-2127)における抗ウイルス性試験
コロナウイルスと上記インフルエンザウイルスはその表面のタンパク構成(エンベロープ)が変わっている。抗ウイルス薬剤の中には、効果が前者では発揮されても後者では効果がでない場合もある。一般にコロナウイルスに十分な抗ウイルス効果を発揮できる薬剤は少ない。ここで実施例10で使用したクエン酸水素二銀含有組成物溶液(銀濃度2480ppm)を用いて抗ウイルス性試験を実施した。この原液20.2mlをイオン交換水480mlに加え24.8倍希釈し、銀濃度100ppm溶液で抗ウイルス試験溶液(銀100ppm)を得た。銀濃度100ppmは多くの実用化が検討される製品では銀濃度10~100ppmで使用される場合が多いためである。この抗ウイルス試験溶液9mLに1.6×108PFU/mLのウイルス懸濁液1.0mLを加え、25℃で30分および60分静置して試験液を得た。静置後の試験液から0.5mLを採取し、薬剤不活性化剤(0.05% Tween80含有の0.85%の生理食塩水)4.5mLに加えて混合した。こうすることで薬剤のウイルスとの反応を停止させ、生残ウイルスをプラーク法にてウイルス感染価を評価した。30分後には350(PFU/mL)、すなわち生残ウイルスを対照試料の180万個(PFU/mL)対して350(PFU/mL)すなわち5000分の1にまで減少させ、60分後にはウイルスを完全に不活化(検出限界以下)している。病原性コロナウイルスCOVID-19で試験することはできないが、それと構造的に類似したネココロナウイルスで試験した。本剤は実用的に十分なウイルス不活化性能を有していることが分かった。結果を表6に示す。
コロナウイルスと上記インフルエンザウイルスはその表面のタンパク構成(エンベロープ)が変わっている。抗ウイルス薬剤の中には、効果が前者では発揮されても後者では効果がでない場合もある。一般にコロナウイルスに十分な抗ウイルス効果を発揮できる薬剤は少ない。ここで実施例10で使用したクエン酸水素二銀含有組成物溶液(銀濃度2480ppm)を用いて抗ウイルス性試験を実施した。この原液20.2mlをイオン交換水480mlに加え24.8倍希釈し、銀濃度100ppm溶液で抗ウイルス試験溶液(銀100ppm)を得た。銀濃度100ppmは多くの実用化が検討される製品では銀濃度10~100ppmで使用される場合が多いためである。この抗ウイルス試験溶液9mLに1.6×108PFU/mLのウイルス懸濁液1.0mLを加え、25℃で30分および60分静置して試験液を得た。静置後の試験液から0.5mLを採取し、薬剤不活性化剤(0.05% Tween80含有の0.85%の生理食塩水)4.5mLに加えて混合した。こうすることで薬剤のウイルスとの反応を停止させ、生残ウイルスをプラーク法にてウイルス感染価を評価した。30分後には350(PFU/mL)、すなわち生残ウイルスを対照試料の180万個(PFU/mL)対して350(PFU/mL)すなわち5000分の1にまで減少させ、60分後にはウイルスを完全に不活化(検出限界以下)している。病原性コロナウイルスCOVID-19で試験することはできないが、それと構造的に類似したネココロナウイルスで試験した。本剤は実用的に十分なウイルス不活化性能を有していることが分かった。結果を表6に示す。
(2)宿主細胞検証試験
(2-1)細胞毒性確認試験
ウイルス不活化能を有する本薬剤が人に対して安全であるかを確認する。上記抗ウイルス試験溶液0.5mLを、薬剤不活性化剤4.5mLに加えて混合する。これをプラーク測定法と同様に細胞を染色し、細胞毒性の有無を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。この試験結果、本試料は生理食塩水同様にイヌ腎臓由来細胞に対して毒性を示さない安全であることが分かった。これを表7に示す。
(2-1)細胞毒性確認試験
ウイルス不活化能を有する本薬剤が人に対して安全であるかを確認する。上記抗ウイルス試験溶液0.5mLを、薬剤不活性化剤4.5mLに加えて混合する。これをプラーク測定法と同様に細胞を染色し、細胞毒性の有無を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。この試験結果、本試料は生理食塩水同様にイヌ腎臓由来細胞に対して毒性を示さない安全であることが分かった。これを表7に示す。
(2-2)ウイルスへの細胞感受性確認試験
これら試験に使用したウイルスが規定された試験方法において適正な感受性を維持しているか確認した。上記抗ウイルス溶液1.0mLを薬剤不活性化剤9mLに加えて混合し、混合液から5mLを採取して試験管に移した。ここでネココロナウイルス懸濁液(4~6×104PFU/mL)となるように調製し、この懸濁液0.05mLを上記試験管へ加えた。25℃で30分間静置し、プラーク法にてウイルス感染価を測定し、ウイルスへの細胞感受性の低下を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。使用したウイルスは十分な活性を有しており、感受性の低下は見られなかった。この結果、本剤は安全性が高く、かつウイルスには十分な不活化作用を有していることが分かった。結果を表7に示す。
これら試験に使用したウイルスが規定された試験方法において適正な感受性を維持しているか確認した。上記抗ウイルス溶液1.0mLを薬剤不活性化剤9mLに加えて混合し、混合液から5mLを採取して試験管に移した。ここでネココロナウイルス懸濁液(4~6×104PFU/mL)となるように調製し、この懸濁液0.05mLを上記試験管へ加えた。25℃で30分間静置し、プラーク法にてウイルス感染価を測定し、ウイルスへの細胞感受性の低下を確認した。対照としてリン酸緩衝生理食塩水を使用した。使用したウイルスは十分な活性を有しており、感受性の低下は見られなかった。この結果、本剤は安全性が高く、かつウイルスには十分な不活化作用を有していることが分かった。結果を表7に示す。
表3から、本発明の新規なクエン酸水素二銀含有組成物を用いたクエン酸水素二銀含有組成物抗菌液は、各種の細菌に対して広範な抗菌スペクトルを有しており、なかでも大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌等のグラム陰性菌に対して強い抗菌効果を有していた。また、黄色ブドウ球菌、枯草菌等のグラム陽性菌、カンジダ等の病原性酵母、白癬菌、クロコウジカビ等の真菌に対しても同様に抗菌効果を有し有用な抗菌剤として効果を発揮することが分かった。
また表4~7から、本発明のこれら新規なクエン酸水素二銀含有組成物粉末を抗ウイルス剤として用いた場合は、細胞毒性を有さず、インフルエンザウイルスやコロナウイルス等のウイルス種に対して顕著な不活化効果を示し、有用な抗ウイルス剤として効果を発揮することが分かった。本剤は実用的な抗菌剤および抗ウイルス剤である。
また表4~7から、本発明のこれら新規なクエン酸水素二銀含有組成物粉末を抗ウイルス剤として用いた場合は、細胞毒性を有さず、インフルエンザウイルスやコロナウイルス等のウイルス種に対して顕著な不活化効果を示し、有用な抗ウイルス剤として効果を発揮することが分かった。本剤は実用的な抗菌剤および抗ウイルス剤である。
<市販クエン酸二水素銀水溶液の分析>
市販のクエン酸二水素銀水溶液(Ciba Specialty Chemical社製、「TINOSAN SDC」)の銀濃度をICP分析して測定した。銀濃度は2700ppmであった。また本試料を50ml採取し、減圧下40℃で2週間乾燥させて粉末上のクエン酸銀粉末を得た。得られたクエン酸銀粉末のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀とのモル比を求めようとしたが、共存するクエン酸濃度が6wt%と記載されおり、乾燥粉末中約90wt%がクエン酸である。このためクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀のモル比は本特許で用いた計算方法では求めることができなかった。
市販のクエン酸二水素銀水溶液(Ciba Specialty Chemical社製、「TINOSAN SDC」)の銀濃度をICP分析して測定した。銀濃度は2700ppmであった。また本試料を50ml採取し、減圧下40℃で2週間乾燥させて粉末上のクエン酸銀粉末を得た。得られたクエン酸銀粉末のクエン酸二水素銀とクエン酸水素二銀とのモル比を求めようとしたが、共存するクエン酸濃度が6wt%と記載されおり、乾燥粉末中約90wt%がクエン酸である。このためクエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀のモル比は本特許で用いた計算方法では求めることができなかった。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法は、クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀を回収した後の反応母液を再利用することができ、高価な銀のロスを少なくした効率的なクエン酸銀の製造方法であり、量産性に優れている。また、溶解性に優れた粉末状のクエン酸水素二銀含有組成物を簡便に、かつ高効率で得ることができる。さらに、本発明の製造方法を用いれば、クエン酸水素二銀に、作業性の良くないクエン酸三銀が混入した場合であっても、ろ過操作で当該含有組成物を得ることが可能となり、工業的な製造方法としての極めて有用である。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は、銀化合物に由来する銀イオンにより、菌の種類の変化、及び抗生物質による細菌の耐性獲得の有無にかかわらず抗菌効果を発揮することができる。また、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物の粉末を、水又はクエン酸溶液により任意の銀イオン濃度に希釈し調整した抗菌剤又は抗ウイルス剤は、塗布等により被付着対象面をこれらで被覆し、その被付着対象面の水分が揮発した跡には、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物が均一な銀イオン濃度で且つ皮膜状で残留する。更にその上から再消毒によりアルコール等で被付着対象面が再塗布されたとしても、そのアルコール等が揮発すればそのままに残留するので、水等で被対象面を洗い落とさない限り、その抗菌剤及び抗ウイルス剤の効果はいつまでも持続する。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は高い持続性と幅広い抗菌スペクトルを有し、さらにウイルスの不活化活性を有することから抗菌剤又は抗ウイルス剤として、医療分野では医薬品として医療用殺菌剤、創傷被覆剤、熱傷被覆剤、褥瘡被覆剤、胃ろう・腸瘻及びPEG等、カテーテル、留置針、患部被覆用ガーゼ・包帯・ドレッシング・ギプス包帯等のあらゆる商品形態での抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。また、人の触れる可能性ある医療機器、事務機器、家電製品、ロッカー、院内医療従事者身辺衣服全般・マスク・防護ゴーグル・手術帽・手袋・予防衣・エプロン等、院内病床ベッド・毛布・シーツ・毛布カバー・枕・枕カバー・仕切カーテン等、及び患者部屋・集中治療室・診察室・治療室・検査室・理学療法室・廊下・医局・薬局・事務局・食堂・厨房・浴室・便所・待合室等、また医療廃棄物及び洗濯物からの二次感染を防止するあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物はパーソナルケア分野では、顔・頭部・手・足・全身・毛髪・体毛・皮膚の消毒用品、婦人用衛生用品・インティメートケア用品・フットケア用品・練り歯磨き等オーラルケア用品・デンタルフロス用品・日焼け止め・アフターサンケア用品・リップスティック用品に関わる。化粧料分野では基礎化粧品・メークアップ・脇下消臭剤・脇下制汗剤・シャンプー・リンス・コンディショナー・トリートメント・クレンジング剤に関わる。医療分野では育毛増毛剤・除毛剤・脱色剤・ヘアカラー剤・抗座瘡剤・口腔内・肛門・尿道・膣等の消毒に関わるあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は軍隊及び自衛隊全活動域、警察全活動域、海上保安庁全活動域、消防及び救急隊全活動域及び、幼稚園・保育園・育児施設・遊戯類玩具類や学校及びそれ等の寮・食堂等の全活動域、更に家庭、病院、介護施設、ホテル、理美容室、理髪店、料理店、スポーツジム、事務所、作業所、工場、公共施設等及び移動手段である飛行機、ヘリコプター、列車、バス、モノレール、ゴンドラ、船舶、自動車等の内部の人が触れるあらゆる物品および空調内部・フィルター等に使用することができる。
さらに具体的な例を挙げると、ドア、家具、ファブリック製品、家電、スィッチ、食器、調理器具、調理台、シンク等、床面、壁面、ガラス窓、浴槽、便器、寝具類、乳児・幼児向け用具・玩具類及び機器類・装置類・周辺機器・道具類・デスク・デスク周辺機器・自動車内部の部材・衣服類・マスク・防護ゴーグル・手袋・帽子・靴類・エプロン等に用いることができる。洗剤・汚れ浮遊剤・蛍光増白剤・研磨剤等を含む表面清掃組成物やワックス類等と併用した新機能剤商品の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は食品加工工場分野での、機械部品・その周辺機器・用具類・空調内部及びフィルター等及び食品接触内面工程・食品包材内部等の衛生維持管理、全ての作業環境・クリーン環境保全設備・物品・表面・空間等の衛生維持管理、及び作業員の身にまとう全ての衣服・帽子・マスク・防護ゴーグル・手袋・靴等の衛生維持管理に向けたあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成物として用いる事を可能とする。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は農業分野では、収穫した果実類・野菜類・根菜類・根茎類・球根類及び魚介類、肉類全般の微生物汚染の防御および鮮度保持、及び穀物等のカビ・細菌・ウイルスを制御するために使用する抗生物質や有機系農薬に代わる病害防止剤、また土壌病害菌のカビ・細菌・ウイルス用有機系農薬に代わる安全性の高い農薬等とした商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤として用いる事を可能とする。
畜産分野では、食肉解体工程での食肉の触れる全ての工程の物品、表面・空間及び食肉自体の表面、機械部品・その周辺機器・空調内部及びフィルター・用具類等及び食品接触内面工程等の衛生維持管理、及び全ての作業環境・クリーン環境保全設備・物品・表面・空間等の衛生維持管理、また作業員の身にまとう全ての衣服・帽子・マスク・防護ゴーグル・手袋・靴等の衛生維持管理、更にはあらゆるカビ・細菌・ウイルスの原因による畜産伝染病(牛皮膚真菌症等、乳牛乳房炎等、鳥インフル・豚コレラ等)に向けたあらゆる動物薬等の商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成剤として用いる事を可能とする。
畜産分野では、食肉解体工程での食肉の触れる全ての工程の物品、表面・空間及び食肉自体の表面、機械部品・その周辺機器・空調内部及びフィルター・用具類等及び食品接触内面工程等の衛生維持管理、及び全ての作業環境・クリーン環境保全設備・物品・表面・空間等の衛生維持管理、また作業員の身にまとう全ての衣服・帽子・マスク・防護ゴーグル・手袋・靴等の衛生維持管理、更にはあらゆるカビ・細菌・ウイルスの原因による畜産伝染病(牛皮膚真菌症等、乳牛乳房炎等、鳥インフル・豚コレラ等)に向けたあらゆる動物薬等の商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成剤として用いる事を可能とする。
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は工業分野として、冷却塔・乾燥機及びコンプレッサー等のフィルター・冷却水、用水プール、遊泳用プール、温水システム、空調システム・温泉・鉱泉、配管・タンク・水処理機器・周辺機器・ポンプ等水処理装置等や防腐剤・防カビ剤・抗微生物薬等に向けたあらゆる商品形態の抗菌剤又は抗ウイルス剤の組成剤として用いる事を可能とする、等々の様々な産業上の利用が可能である
本発明のクエン酸水素二銀含有組成物は使用態様における使用方法としては、あらゆるものの表面に噴霧、塗布、スプレー、浸漬、転写等の方法により皮膜化する商品形態、又はあらゆる液状、固体、半固体、ゲル、ゾル、スティック、カプセル状でその商品形状に合わせた使用方法に準ずる商品形態、徐放効果や緊急時の緊急処置効果を持たせた繊維自体や袋状・容器・カプセル等にこれを内包させた組成剤の商品形態等、如何なる商品形態の使用方法でも構わない。
また、本発明の新規なクエン酸水素二銀含有組成物の粉末をクエン酸溶液に溶解して消臭剤として用いれば、銀由来の酸化力を有しているため、悪臭の原因となる硫黄系ガス、アミン系ガス、アルデヒド系ガス、プロピオン酸、イソ吉草酸等の成分と反応して無臭化させることもでき、消臭剤としての効果を発揮することが可能である。
本発明の製造方法によって得られるこの新規なクエン酸水素二銀含有組成物粉末を抗ウイルス剤として用いれば、本剤は例えばA型インフルエンザウイルス(H3N2)と同様のエンベロープを有する高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の原因であるH5N1亜型ウイルスのような変異ウイルス株も不活化させることが可能となる有用な抗ウイルス剤として効果を発揮することができる。また重症急性呼吸器症候群原因ウイルス(SARS)、又は病原性コロナウイルスCOVID-19もインフルエンザのそれとは異なるスパイクのタンパク構造を有しているが、やはり銀イオンに対して感受性のあるエンベロープを有していれば同様に不活化させることも可能と考えられる。
従って、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤及びその製造方法は、産業上極めて有用なものである。
従って、本発明のクエン酸水素二銀含有組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた抗菌剤又は抗ウイルス剤及びその製造方法は、産業上極めて有用なものである。
Claims (7)
- (1)溶媒中に、クエン酸水素二銀が飽和量以上となる量の銀化合物及びクエン酸を加えて反応液とする工程、
(2)前記反応液に塩基剤を加えて、pHを2.0~5.5に調製し、クエン酸水素二銀含有組成物を析出させる工程、及び
(3)析出したクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程、
を備える、クエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。 - 前記クエン酸水素二銀含有組成物が、クエン酸二水素銀又はクエン酸三銀をさらに含有する組成物であり、組成物中の銀濃度が36.1wt%~63.1wt%である、請求項1に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
- 前記銀化合物が硝酸銀である、請求項1に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。
- 前記工程(1)~(3)の後に、
(4)反応液に、前記工程(1)~(3)の操作を繰り返しさらにクエン酸水素二銀含有組成物を回収する工程
を備える、請求項1に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載のクエン酸水素二銀含有組成物の製造方法によってクエン酸水素二銀含有組成物を製造し、次いで、得られたクエン酸水素二銀含有組成物と水又はクエン酸溶液とを混合する工程を備える、抗菌剤又は抗ウイルス剤の製造方法。
- クエン酸水素二銀及びクエン酸二水素銀、又はクエン酸水素二銀及びクエン酸三銀からなる組成物であって、その銀濃度が37.2wt%以上57.9wt%以下である組成物。
- 請求項6に記載の組成物を含んでなる、抗菌剤又は抗ウイルス剤。
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