JP2022161252A - 植物病害の防除剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 植物病害に対して防除効果を有する物質を同定し、当該物質を利用した植物病害の防除剤及び防除方法を提供すること。【解決手段】 プロアントシアニジンと金属化合物とを併用した場合に、これら物質を単独で用いた場合に比べ、植物病害に対するより優れた防除効果を発揮することを見出した。【選択図】 なし

Description

本発明は、プロアントシアニジンと、金属又は該金属を含む化合物(金属キレート、金属酸化物等)とを有効成分とする植物病害の防除剤、及び、当該防除剤を植物に施用することを含む植物病害の防除方法に関する。
人類は食料や有用物質の生産の多くを植物に依存している。世界の農業生産において、植物病原体(糸状菌等の真菌、細菌、ウイルス等)が引き起こす植物病害により世界の食糧生産の15%が損失し、世界全体で年間に植物病害により約2,200億ドルの経済的被害があると見積もられている。植物病害は植物の生産力を大きく損なう主要な要因のひとつであり、仮に、植物病害に対する保護を実施せずに栽培を行うと収穫高が70%減収すると予想されている。このように植物病害の防除による作物収量の損失の削減は、作物の大量栽培による増産に匹敵する効果を有している。
このため、植物病害から作物を保護するための様々な防除剤が開発されてきた。例えば、真菌病や細菌病等の植物病原菌の感染による植物病害に対しては、抗生物質であるカスガマイシンやストレプトマイシンを主成分とする防除剤、ストロビルリン系殺菌剤(QoI剤)、コハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI剤)等の防除剤が利用されている。しかしながら、これら防除剤には、数年で耐性菌が発達し、病害防除が困難になるという問題が指摘されている。
一方、植物ウイルスの感染による植物病害の防除剤としては、日本においてレンテミンが農薬登録されているものの、特効薬となる化学農薬は、いまだ存在しない(レンテミンは、野田食菌工業(株)の登録商標。農薬登録第15584号、第17774号、第19439号、第19440号)。
このような状況下、本発明者は、プロアントシアニジン、又は金属キレート若しくは金属酸化物が植物病害に対して防除効果があることを見出し、それらを植物病害に対する防除剤として利用することを提案している(特許文献1~3)。
特開2017-178838号公報 特開2020-002016号公報 特開2020-132552号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、植物病害に対して優れた防除効果を有する物質を同定し、当該物質を利用した植物病害の防除剤及び防除方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、プロアントシアニジンと金属化合物との混合物(月桃由来プロアントシアニジンと、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、又はグルコン酸銅との混合物)は各々、プロアントシアニジン又はこれら金属化合物を単独で施用した場合と比して、植物ウイルスに対してより強い防除効果を示すことを明らかにした。さらに、これら薬剤を直接処理した部位のみならず、その周辺の部位にも防除効果が発揮されることも明らかになった。また同様に、植物病原細菌及び植物病原真菌に対しても、単独施用と比して、プロアントシアニジンと金属化合物との混合物はより強い防除効果を示すことも、本発明者らは明らかにした。さらに、プロアントシアニジンと金属化合物との混合物において、植物における薬害が発生しないことも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、プロアントシアニジンと金属又は該金属を含む化合物との混合物を有効成分とする、植物病害の防除剤、及び該防除剤を植物に施用することを含む植物病害の防除方法に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
<1> プロアントシアニジンと、金属又は該金属を含む化合物とを、有効成分とする、植物病害の防除剤。
<2> 前記金属が、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも1の金属である、<1>に記載の防除剤。
<3> 前記金属を含む化合物が、金属キレート及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1の化合物である、<1>又は<2>に記載の防除剤。
<4> 前記金属を含む化合物が、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅及び硫酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1の化合物である、<1>~<3>のうちのいずれか一項に記載の防除剤。
<5> 前記植物病害が、植物ウイルス病、植物真菌病及び植物細菌病からなる群から選択される少なくとも1の病害である、<1>~<4>のうちのいずれか一項に記載の防除剤。
<6> <1>~<5>のうちのいずれか一項に記載の防除剤を植物に施用することを含む、植物病害の防除方法。
本発明によれば、植物病害を防除することが可能である。さらに、本発明によれば、葉の萎縮や斑点の発生等の薬害を生じさせることなく、安全に防除することが可能である。さらにまた、本発明による防除効果は、それを直接散布した葉のみならず、その上位葉にも認められたことから、植物の免疫力(病原に対する抵抗性)の向上を引き起こすことが考えられる。したがって、本発明によれば、非常に効果的に防除効果をもたらすことが可能である。
月桃プロアントシアニジン(PAC)及び各種金属キレートの併用による、植物ウイルスの感染抑制における相乗効果を示すグラフである。 月桃プロアントシアニジンと硫酸亜鉛又はグルコン酸亜鉛との併用による、植物ウイルスの感染抑制における相乗効果を示すグラフである。 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の併用による、黒斑細菌病菌の感染抑制における相乗効果を示すグラフである。 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の併用による、炭疽病菌の感染抑制における相乗効果を示すグラフである。 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の併用による、褐色輪紋病菌の感染抑制における相乗効果を示すグラフである。
<防除剤>
後述の実施例に示すとおり、プロアントシアニジンと金属キレート又は金属酸化物との混合物が、植物病害に対する防除効果を有することが明らかになった。したがって、本発明は、プロアントシアニジンと、金属又は該金属を含む化合物とを、有効成分とする、植物病害の防除剤を提供する。
(プロアントシアニジンについて)
本発明の防除剤において、その有効成分の1つとして含有されるプロアントシアニジンは、後述の実施例に示すとおり、金属又は該金属を含む化合物(以下、「金属化合物等」とも称する)と併用することにより、単独での施用と比して、より顕著に植物病害を防除することが可能となる。
本発明において「プロアントシアニジン」とは、カテキンやエピカテキンといったフラバン-3-オール類が複数結合した化合物である。本発明に用いるプロアントシアニジンは、植物病害の防除効果を奏せるものであれば特に制限はなく、人工的に合成された化合物であってもよいが、本発明におけるプロアントシアニジンの好ましい形態は、ショウガ科ハナミョウガ属(アルピニア属)の月桃等から抽出、精製される、天然由来の精製物(植物精製物)である。
アルピニア(Alpinia)属植物としては、月桃、クマタケラン、アオノクマタケラン及びヤクチ等、並びにこれらの交雑種が挙げられる。非可食性バイオマスを利用できる観点からも好適に採用される。本発明において、月桃には、沖縄県のシマ月桃、奄美大島のシマ月桃等のシマ月桃(Alpinia zerumbet(Pers.)B.L.Burtt&R.M.Sm.)、北大東島及び宮古島等のタイリン月桃(ハナソウカ)、タチバナ月桃、台湾のタイリン月桃、ウライ月桃、及び屯鹿月桃等、並びにこれらの交雑種が含まれる。また、クマタケランには、クマタケラン(Alpinia formosana)、シマクマタケラン(Alpinia boninensis)及びイリオモテクマタケラン(Alpinia flabellata)等、並びにこれらの交雑種が含まれる。中でも、月桃がより好適である。
なお、本発明において、精製物は、完全な精製物であっても、粗精製物であってもよい。また、精製物は、透析等により不純物を取り除いた後のプロアントシアニジンを含むものであり、当該プロアントシアニジンを含む液であっても乾燥物であってもよい。
本発明にかかる「プロアントシアニジン」の精製は、当業者であれば、国際公開第2017/125993号、特許文献2等に記載の方法を参考にして行なうことができる。例えば、破砕機を利用することにより、植物を物理的に破砕することによって抽出することができる。さらに、このようにして得られた植物の搾汁液を、逆相担体にかけ精製してもよい。かかる場合の溶出溶媒としては特に制限はないが、例えば、アセトニトリルが挙げられる。アセトニトリルによる溶出を行う場合、アセトニトリル濃度は、通常5%以上、好ましくは5%~30%であり、より好ましくは5%~20%である。40%以上の濃度のアセトニトリルを用いてもよいが、抽出物において非活性成分の割合が高まることが考えられる。
また、プロアントシアニジンは、アルコールによって抽出することもできる。抽出に供される植物の形体は特に限定されるものでないが、好ましくは茎葉部分であり、出来る限り細分化することが望ましい。そして、このように調製された植物を、例えば、アルコール水溶液に浸漬することでプロアントシアニジンを抽出することができる。抽出に用いるアルコールとしては特に制限はないが、例えば、エタノールが挙げられる。この際のアルコールの濃度は、通常、40%~80%であり、好ましくは60%~80%である。また、浸漬時間は24時間であり、好ましくは8~16時間、より好ましくは12時間である。
さらに、より精製する場合には、このようにして得られた画分から、前記有機溶媒(アセトニトリル、エタノール等のアルコール)を除去(例えば、エバポレーター(例えば、50℃、15分)にて留去)したのち、残った溶液を、分画分子量3500以上(好ましくは、8500以上、より好ましくは9000以上であることが好ましく、さらに好ましくは10000以上)の透析膜を用い、精製することもできる。さらにまた、このようにして得られる透析内液を凍結乾燥することで、プロアントシアニジン精製物(乾燥物)を得ることもできる。
このようにして得られる精製物(抽出液)に含まれるプロアントシアニジンの濃度としては、通常0.1mg/ml以上であり、好ましくは0.3mg/ml以上であり、より好ましくは0.5mg/ml以上(例えば、1mg/ml以上、5mg/ml以上、10mg/ml以上、20mg/ml以上)である。一方、薬害等の負の影響を生じさせないためには、前記精製物に含まれるプロアントシアニジンの濃度は、通常50mg/ml以下とすることが好ましいと考えられる。また、プロアントシアニジンの精製物は、通常、プロアントシアニジンを、乾燥重量で1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%(例えば、20%以上、30%以上、50%以上)含む。
本発明にかかる「プロアントシアニジン」の分子量としては、植物病害の防除活性を発揮し得る限り特に制限はないが、例えば、3500(4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上等)、好ましくは8500以上、より好ましくは9000以上であることが好ましく、さらに好ましくは10000以上、より好ましくは11000以上、さらに好ましくは12000以上、より好ましくは13000以上である。なお、プロアントシアニジンの分子量は、通常25000以下となる。また、プロアントシアニジンの分子量は、ポリスチレン等を標品とした高速液体クロマトグラフ(HPLC)等による公知の方法により求めることができる。
本発明にかかる「プロアントシアニジン」は、末端構造が実質的にエピカテキンであることが好ましい。ここで「実質的に」とは、末端構造におけるエピカテキンとカテキンの割合の合計に対するエピカテキンの割合が、少なくとも95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)であることを意味する。このような末端構造を有するプロアントシアニジンの例としては、シマ月桃由来のプロアントシアニジンが挙げられる。なお、プロアントシアニジンの構造は、NMR等の公知の分析方法により特定することができる。
また本発明において、プロアントシアニジンは、1種単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
(金属化合物等について)
本発明の防除剤において、その有効成分の1つとして含有される「金属化合物等(金属又は該金属を含む化合物)」は、後述の実施例に示すとおり、プロアントシアニジンと併用することにより、金属化合物単独での施用と比して、より顕著に植物病害を防除することが可能となる。
本発明の防除剤において含有され得る「金属」は、本発明の防除剤がその効果を奏せる限り、特に制限はなく、また半金属も含まれる。本発明にかかる「金属」としては、例えば、亜鉛、銅、鉄、カリウム、マンガン、モリブデン、マグネシウム、ケイ素、ホウ素、カルシウム、コバルト、ニッケルが挙げられる。これらの中で、植物の生育に欠かせない元素であり、植物に対する毒性が低いことから、好ましくは、亜鉛、銅である。
「金属を含む化合物」は、本発明の防除剤がその効果を奏せる限り、特に制限はなく、例えば、前記金属の、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、過ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩等の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物等)、酸ハロゲン化物、アルコキシドが挙げられる。これらの中で、優れた防除効果と毒性の低さを兼ね備えていることから、好ましくは金属酸化物であり、より好ましくは金属硫酸塩であり、さらに好ましくは硫酸亜鉛である。
また、金属イオンをそのまま(無機のまま)土壌に与えた場合、その金属イオンは土壌中のリン酸等と化合して不溶性の沈殿を形成し、所望の効果を十分に得ることができない場合がある。そこで、予めキレート剤と化合させてキレートを作製し、それを施肥することにより他の成分との化合を防止して本来の肥効を発揮させることができる。また、金属のキレートは植物に吸収され易いという性質を持つ。このような観点から、本発明では、キレートされた金属も、本発明にかかる金属を含む化合物として、好適に用いることができる。なお、本発明においては、金属のキレート化合物又はキレート塩を、金属キレート、金属錯体又は金属キレート錯体とも称する。
金属のキレート剤としては、例えば、グルコン酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸、Ethylendiaminetetraacetic acid)、DTPA(ジエチレントリアミンペンタアセテート酸、Diethylenetriamine pentaacetic acid)、NTA(ニトリロ三酢酸、Nitrilotriacetic acid)、EDDS(エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸、Ethylenediamine-N,N’-disuccinic acid)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)、クエン酸、蟻酸、フィチン酸、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリンが挙げられる。これらの中で、植物に対する毒性が低いことから、好ましくはグルコン酸である。グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅は、優れた防除効果と毒性の低さを兼ね備えていることから、本発明の防除剤の有効成分として最も好適に用いることができる。なお、汎用性の観点からは、EDTA系キレート剤を好適に用いることができ、自然分解性の観点からはEDDS等を好適に用いることができる。
また本発明において、金属化合物等は、1種単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
(その他の成分について)
本発明の防除剤の剤型は、後述の施用方法等に応じて各種の形態を採ることができる。例えば、乳剤、油剤、エアゾール、フロアブル剤等の液剤の他、水和剤、水溶剤、粉剤、粒剤、錠剤等が挙げられる。散布等により植物体へ施用する場合には、液剤、又は施用時に液状にすることができる剤型が好ましい。
また、その剤型や形状等に応じて、本発明の防除剤においては、植物病害の防除効果が阻害されない限り、他の任意成分を含んでもよい。他の任意成分としては、例えば、担体、展着剤、乳化剤、分散剤、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、稀釈剤、賦形剤を挙げることができる。
液体担体としては、前記プロアントシアニジン及び金属化合物等を、溶解又は分散するための溶媒を挙げることができ、例えば、水;1-プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコール;キシレン等の炭化水素類が挙げられる。固体担体としては、例えば、カオリン、アタパルジャイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、タルク、ゼオライトが挙げられる。
前記展着剤、乳化剤及び分散剤としては、通常、界面活性剤が用いられる。「界面活性剤」としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)、アニオン性界面活性剤(例えば、高級アルコール硫酸ナトリウム、ポリナフチルメタンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム等)、カチオン性界面活性剤(例えば、ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド)、シリコン系界面活性剤(例えば、ポリオキシアルキレンオキシプロピルヘプタメチルトリシロキサン、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン)、両性界面活性剤等を挙げることができる。また非イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤と組み合わせて用いることもできる。
本発明の防除剤においては、植物病害の防除効果が阻害されない限り、前記プロアントシアニジン及び金属化合物等の他、他の有効成分を含有していてもよい。例えば、植物病害に対する防除効果をさらに高めるため、あるいは、適用対象とする植物病害の範囲を広げるため、レンテミン等の既知の薬剤と組み合わせて用いることができる。また、植物ウイルスは、虫媒感染する例もあることから、既知の殺虫剤、殺ダニ剤、抗菌剤等と組み合わせて用いることもできる。また、植物真菌病又は植物細菌病に対する防除効果をさらに高めるため、あるいは、適用対象とする植物病害の範囲を広げるため、既知の殺菌性農薬と組み合わせて用いることができる。なお、本発明の防除剤において、グリシンは含有しないことが望ましい。
<防除方法>
本発明は、上述の防除剤を植物に施用することを含む、植物病害の防除方法も提供する。
本発明において、「植物病害」は、病原体(ウイルス、細菌、真菌等)によって引き起こされる植物の病気を意味し、特に制限はないが、例えば、植物に感染するウイルスによって引き起こされる植物ウイルス病、植物に感染する細菌によって引き起こされる植物細菌病、植物に感染する真菌によって引き起こされる植物真菌病が挙げられる。
また、本発明の防除剤における植物病原体に対する防除作用は、当該病原体の感染を抑制・阻害させる作用、増殖・伸展・移動を抑制又は阻害する作用、及び死滅させる作用を含む。
本発明の防除剤を適用する「植物ウイルス病」としては、例えば、トバモウイルス属ウイルス、ポテックスウイルス属ウイルス、カルラウイルス属ウイルス、ククモウイルス属ウイルス、カルモウイルス属ウイルス、ポティウイルス属ウイルス、又はベゴモウイルス属ウイルスの感染により発症する病気が挙げられる。
「トバモウイルス属ウイルス」としては、例えば、トマトモザイクウイルス(ToMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(KGMMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)、スイカ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)が挙げられる。「ポテックスウイルス属ウイルス」としては、例えば、オオバコモザイクウイルス(PlAMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)が挙げられ、「カルラウイルス属ウイルス」としては、例えば、ジャガイモMウイルス(PVM)が挙げられる。「ククモウイルス属ウイルス」としては、例えば、キュウリモザイクウイルス(CMV)が挙げられ、「カルモウイルス属ウイルス」としては、例えば、メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)が挙げられる。「ポティウイルス属ウイルス」としては、例えば、ジャガイモYウイルス(PVY)、ウメ輪紋ウイルス(PPV)が挙げられ、「ベゴモウイルス属ウイルス」としては、例えば、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の防除剤が対象とする植物ウイルス病は、好ましくは、各種モザイクウイルスやジャガイモXウイルス等の感染により発症するモザイク病である。
本発明の防除剤を施用する植物は、上記植物ウイルスが感染するものであれば特に制限はないが、例えば、ナス科植物(タバコ、トマト、ナス、ジャガイモ、ピーマン、トウガラシ、ペチュニア等)、ウリ科植物(キュウリ、ウリ、カボチャ、メロン、スイカ等)、イネ科植物(イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、コウリャン、芝草等)、アブラナ科植物(ハクサイ、キャベツ、ダイコン、チンゲンサイ、コマツナ、ブロッコリー、アブラナ等)、マメ科植物(ダイズ、落花生、エンドウ、インゲンマメ、ソラマメ等)、バラ科植物(イチゴ、リンゴ、ナシ、モモ、ウメ、バラ、サクラ等)、ヒルガオ科植物(サツマイモ等)、ユリ科植物(ネギ、タマネギ、ユリ、チューリップ等)、キク科植物(レタス、キク、ガーベラ等)、ブドウ科植物(ブドウ等)、ナデシコ科植物(カーネーション等)、ラン科植物(カトレア、シンビジウム等)、リンドウ科植物(トルコギキョウ等)、イソマツ科植物(スターチス等)が挙げられる。
このように本発明の防除剤は、ナス科植物、ウリ科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、マメ科植物、バラ科植物、ヒルガオ科植物、ユリ科植物、キク科植物、ブドウ科植物、ナデシコ科植物、ラン科植物、リンドウ科植物、イソマツ科植物等、広範囲に適用することができる。植物ウイルスと宿主植物との関係については、日本植物病名データベース(農業生物資源ジーンバンク)を参照のこと。
本発明の防除剤の適用対象となる「植物病原細菌」としては、例えばPseudomonas属菌、Erwinia属菌、Xanthomonas属菌、Ralstonia属菌、Streptomyces属菌、Clavibacter属菌、Agrobacterium属菌、Curtobacterium属菌、Acidovorax属菌、Burkholderia属菌が挙げられるが、これらに制限されない。
具体的な「植物病原細菌」としては、例えば、アブラナ科植物黒斑細菌病菌(Pseudomonas syringae pv.maculicola、Pseudomonas cannabina pv.alisalensis)、トマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv.tomato)、トマト斑点細菌病菌(Xanthomonas campestris pv.vesicatoria)、レタス及びハクサイ等の腐敗病菌(Pseudomonas cichorii、Pseudomonas marginalis、Pseudomonas viridiflava)、モモせん孔細菌病菌(Xanthomonas arboricola pv.pruni、Pseudomonas syringae pv.syringae、Brenneria nigrifluens、Erwinia nigrifluens)、アカクローバ斑点細菌病菌・アズキ褐斑細菌病菌・カンキツ褐斑細菌病菌等(Pseudomonas syringae pv.syringae)、ダイズ斑点細菌病菌(Pseudomonas savastanoi pv.glycinea)、キュウリ斑点細菌病菌(Pseudomonas syringae pv.lachrymans)、タバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv.tabaci)、エンドウつる枯細菌病菌(Pseudomonas syringae pv.pisi)、キウイフルーツかいよう病菌(Pseudomonas syringae pv.actinidiae)、ハクサイ・キャベツ・ダイコン・レタス等軟腐病菌(Erwinia carotovora)、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv.oryzae)、ダイズ葉焼病菌(Xanthomonas campestris pv.glycinea、Xanthomonas axonopodis pv.glycinea)、キャベツ・ブロッコリー等アブラナ科植物黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv.campestris)、レタス斑点細菌病菌(Xanthomonas axonopodis pv.vitians)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas citri subsp.citri)、トマト・ナス・ピーマン・イチゴ・ショウガ青枯病菌(Ralstonia solanacearum)、ジャガイモそうか病菌(Streptomyces spp.)、トマトかいよう病菌(Clavibacter michiganensis subsp. michiganensis)、キク科・バラ科植物等根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciens)、メロン毛根病菌(Agrobacterium rhizogenes)、ブドウ根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium vitis、Rhizobium radiobacter)、インゲンマメ萎ちょう細菌病菌(Curtobacterium flaccumfaciens pv.flaccumfaciens)、チューリップかいよう病菌(Curtobacterium flaccumfaciens pv.oortii)、スイカ果実汚斑細菌病菌(Acidovorax avenae subsp.citrulli)、イネ褐条病菌・トウモロコシ褐条病菌(Acidovorax avenae subsp.avenae)、イネもみ枯細菌病菌(Burkholderia glumae)、イネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii)、ジャガイモ黒あし病菌(Pectobacterium carotovorum、Pectobacterium atrosepticum)が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の防除剤が対象とする植物細菌病は、好ましくは、アブラナ科植物黒斑細菌病菌(Pseudomonas cannabina pv.alisalensis、Pseudomonas syringae pv.maculicola)の感染により発症する黒斑細菌病である。
また、本発明の防除剤の適用対象となる「植物病原真菌」としては、例えば、Colletotrichum属菌、Phytophthora属菌、Podosphaera属菌、Sphaerotheca属菌、Leveillula属菌、Oidium属菌、Oidiopsis属菌、Erysiphe属菌、Uncinula属菌、Botrytis属菌、Fusarium属菌、Pyricularia属菌、Fulvia属菌、Pseudocercospora属菌、Gibberella属菌、Monographella属菌、Pestalotiopsis属菌、Corynespora属菌、Puccinia属菌、Alternaria属菌、Plasmopara属菌、Bremia属菌、Peronospora属菌、Cochliobolus属菌、Rhizoctonia属菌、Sclerotinia属菌、Verticillium属菌、Venturia属菌、Monilinia属菌、Cercospora属菌、Leptosphaeria属菌が挙げられるが、これらに制限されない。
具体的な「植物病原真菌」としては、例えば、アブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)、ウリ類炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)、イチゴ炭疸病菌(Colletotorichum acutatum、Colletotrichum gloeosporioides種複合体;C.aenigma、C.fructicola、C.siamense)、ダイコン炭疽病菌(Colletotrichum incanum、Colletotrichum dematium)、ブドウ晩腐病菌(Glomerella cingulata、Colletotrichum fioriniae)、イネ科植物炭疽病菌(Colletotrichum graminicola)、野菜・他の宿主植物の炭疽病菌(Colletotrichum spp.)、トマト褐色輪紋病菌・キュウリ褐斑病菌・ピーマン黒枯病菌・シソ斑点病菌・サルビア斑点病菌(Corynespora cassiicola)、ジャガイモ・トマト疫病菌(Phytophthora infestans)、イチゴ疫病菌(Phytophthora nicotianae、Phytophthora cactorum、 Phytophthora sp.)、サトイモ疫病菌(Phytophthora colocasiae)、野菜・観賞植物・タバコ・他の宿主植物の疫病菌(Phytophthora spp.)、イチゴうどんこ病菌(Podosphaera aphanis、Sphaerotheca aphanis、Sphaerotheca humuli)、トマトうどんこ病菌(Leveillula taurica、Oidium sp.、Oidium lycopersici、Oidium neolycopersici)、キュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea、Sphaerotheca cucurbitae、Oidiopsis sicula、Erysiphe polygoni、Oidium sp.)、オオムギ・コムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、ブドウうどんこ病菌(Erysiphe necator、Uncinula necator)、エンドウうどんこ病菌(Erysiphe pisi)、カボチャうどんこ病菌(Sphaerotheca cucurbitae、Oidium citrulli)、ナスうどんこ病菌(Erysiphe cichoracearum、Sphaerotheca fuliginea、Oidiopsis sicula)、野菜・観賞用植物・他の宿主植物のうどんこ病病菌、トマト・イチゴ・キュウリ・野菜・ブドウ・他の宿主植物の灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、イチゴ萎黄病菌(Fusarium oxysporum f.sp.fragariae)、イネいもち病菌(Pyricularia grisea(P.oryzae))、トマト葉かび病菌(Fulvia fulva)、トマトすすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)、コムギ赤かび病菌(Gibberella zeae、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Fusarium crookwellense、Monographella nivalis)、チャ輪斑病菌(Pestalotiopsis longiseta、Pestalotiopsis theae)、ダイズ急性枯死症菌(Fusarium tucumaniae、Fusarium virguliforme)、オオムギ・コムギの黒さび病菌(Puccinia graminis)、オオムギ・コムギの黄さび病菌(Puccinia striiformis Westendorp var.striiformis)、オオムギの小さび病菌(Puccinia hordei Otth)、コムギの赤さび病菌(Puccinia recondita Roberge ex Desmazieres)、ネギ類さび病菌(Puccinia allii)、キク類白さび病菌(Puccinia horiana Hennings)、コーヒー・西洋なし・リンゴ・落花生・野菜・観賞用植物・他の宿主植物のさび病菌、ナシ黒斑病菌(Alternaria alternata)、キャベツ黒すす病菌(Alternaria brassicicola)、ハクサイ黒斑病菌(Alternaria brassicae、Alternaria brassicicola、Alternaria japonica)、その他の野菜(例えば、キュウリ・アブラナ科野菜)・リンゴ・トマト・他の宿主植物の黒斑病菌(Alternaria spp.)、ブドウベト病菌(Plasmopara viticola)、レタスベト病菌(Bremia lactucae)、キュウリべト病菌(Pseudoperonospora cubensis)、ハクサイベト病菌(Peronospora parasitica)、ダイズ・タバコ・タマネギ・他の宿主植物のべと病菌(Peronospora spp.)、イネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)、キュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum)、トマト萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici)、イネばか苗病菌(Gibberella fujikuroi)、キュウリ、ナスなどリゾクトニア苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)、トマト小粒菌核病菌(Sclerotinia minor)、ジャガイモ半身萎ちょう病菌(Verticillium albo-atrum、Verticillium dahliae、Verticillium nigrescens、Verticillium tricorpus)、トマト輪紋病菌(Alternaria solani)、野菜類菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、リンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、モモ灰星病菌(Monilinia fructicola)、ダイズ紫斑病菌(Cercospora kikuchii)、テンサイ褐斑病菌(Cercospora beticola)、コムギふ枯病菌(Leptosphaeria nodorum)が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の防除剤が対象とする植物真菌病は、好ましくは、Colletotrichum属に属する真菌の感染により発症する炭疽病、Corynespora cassiicolaの感染により発症するトマト褐色輪紋病菌、キュウリ褐斑病菌、ピーマン黒枯病菌、シソ斑点病菌、サルビア斑点病菌が挙げられる。
植物病原細菌又は植物病原真菌(これらを「植物病原菌」とも総称する)の防除を行う植物の代表的なものとしては、例えば、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、タバコ、ジャガイモ等のナス科植物、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ科植物、イチゴ、リンゴ、ナシ、ウメ、モモ等のバラ科植物、ハクサイ、ダイコン、チンゲンサイ、キャベツ、コマツナ、シロイヌナズナ等のアブラナ科植物、ダイズ、エンドウ、インゲンマメ等のマメ科植物、イネ、コムギ、オオムギ等のイネ科植物、サトイモ等のサトイモ科植物、ネギ、タマネギ、ユリ、チューリップ等のユリ科植物、レタス、キク、ガーベラ等のキク科植物、ブドウ等のブドウ科植物が挙げられるが、本発明は、上記植物病原菌が感染する、その他多くの植物にも広範に適用できる。なお、植物病原菌と宿主植物との関係については、日本植物病名データベース(農業生物資源ジーンバンク)を参照のこと。
本発明の防除剤の植物への施用方法は特に制限されず、例えば、散布、塗布、浸漬等が挙げられる。また、対象植物を、土壌で栽培するのであれば土壌中に、また水耕栽培であれば水耕液中に、添加すること等も考えられる。植物組織培養を行っている場合には、その培地への添加等も考えられる。本発明の防除剤が施用されている領域では非常に高い防除効果が認められることから、施用方法としては、散布や塗布等による植物体の全体や葉への施用、種子や球根等への浸漬が好ましい。本発明の防除剤は、施用された部位の周辺部位においても、植物病害に対する防除効果を示すことができる点で有利である。
本発明の防除剤の植物への施用時期は特に制限されないが、予防的な防除が最も有効である。具体的には、育苗期から収穫前にかけての施用が有効である。また、防除剤の施用回数に、特に制限はない。
施用時における各有効成分の濃度は、植物病害に対して防除効果を有する量であれば特に制限はなく、植物体への薬害等も考慮し、当業者であれば、適宜調整することができる。
プロアントシアニジンであれば、好ましくは10~5000ppmであり、より好ましくは100~2000ppm、さらに好ましくは300~1000ppmである。また、本発明の防除剤において、プロアントシアニジンと混用する場合の、金属化合物等の量は、好ましくは0.05~50mM、より好ましくは0.1~10mM、さらに好ましくは0.1~5mMである。例えば、硫酸亜鉛であれば、好ましくは0.1~50mM、より好ましくは0.5~10mM、さらに好ましくは0.5~5mMである。金属キレートであれば、好ましくは0.05~50mMである。より具体的に、グルコン酸亜鉛であれば、より好ましくは0.05~40mM、さらに好ましくは0.1~10mM、より好ましくは1~10mMである。グルコン酸銅であれば、好ましくは0.05~10mM、さらに好ましくは0.1~10mM、より好ましくは0.3~5mMである。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(月桃由来プロアントシアニジン精製物の調製)
沖縄県国頭郡産シマ月桃の搾汁液(120ml)を、逆相担体(日本ウォーターズ(株)製Sep-Pak C18(35cc))にかけ、超純水(100ml)で洗浄した後、20%アセトニトリル(100ml)で、溶出した画分を得た。得られた画分に含まれるアセトニトリルを、エバポレーター(50℃、15分)にて留去したのち、残った溶液を、分画分子量10,000の透析膜(スペクトラム社製)に入れ、蒸留水(4L×4回)に対して透析した。得られた透析内液を、凍結乾燥(4日間)し、月桃由来プロアントシアニジン精製物(492.7mg)を得た。以下の実施例において、本月桃由来プロアントシアニジン精製物(以下「月桃プロアントシアニジン」とも称する)を使用した。
[実施例1] 月桃プロアントシアニジン及び金属キレートの併用による植物ウイルスの感染抑制における相乗効果
月桃プロアントシアニジンとキレート金属とを混合して用いること(混用)によって、植物ウイルス病防除において相乗効果が得られるかについて、トマトモザイクウイルス(ToMV)-ベンサミアーナタバコ評価系を用いて評価した。
先ず、植物材料として、ベンサミアーナタバコを、ピートモス(スーパーミックスA、サカタのタネ):ホワイトバーミキュライト(A-2、旭工業株式会社):黒曜石パーライト(フヨーライト3号、芙蓉パーライト株式会社)=2:1:1に1鉢あたり1粒を播種し、24℃にて24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)で栽培して用いた。
終濃度500ppm 月桃プロアントシアニジン(PAC)、金属キレート(終濃度1mM グルコン酸亜鉛(ZnGluc)、若しくは終濃度1mM グルコン酸銅(CuGluc))溶液、終濃度500ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度1mM グルコン酸亜鉛の混合溶液、又は終濃度500ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度1mM グルコン酸銅の混合溶液に、展着剤である0.01%マイリノー(日本農薬株式会社製、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル含有展着剤、水(DDW)にて希釈して使用)を添加し、被験薬剤として調製した。また、終濃度0.01%マイリノーのみを添加した水溶液をコントロールとして用いた。
そして、このようにして調製した各薬剤を、前記播種して21日間後に、3番目の葉はまだ小さいが、3枚の本葉が展開しているベンサミアーナタバコ全体の茎葉に噴霧処理を行い、24℃にて24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)で静置した。その3日後、成熟した3番目の葉にToMVを接種し、24℃にて24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)にて静置した。
なお、ToMVは、ToMV-GFP(緑色蛍光蛋白質GFPを付加したウイルス)をコードするプラスミド(pTLBN.G3。Kubota K.ら、J Virol.2003 Oct;77(20):11016-26 参照)2μgを鋳型として、RNAのin vitro転写合成キット(製品名:AmpliCap-Max T7 High Yield Message Maker Kits、CellScript社製)を用い、転写合成することにより、調製した。そして、そのRNA転写物を40倍に希釈して、カーボランダム(600メッシュ、ナカライテスク株式会社製)を用い、ベンサミアーナタバコの前記3番目の葉の2ヶ所に10μlずつ塗布することにより、前記ウイルスの接種を行った。
ウイルスの接種から3日後に、ToMVの感染、増殖部位に一致する、GFPの蛍光斑点をカウントし、各薬剤のウイルスの感染抑制率を検定した。なお、感染抑制率(防除価)は、以下の式から算出した。
感染抑制率(防除価)%=100-{(処理植物の蛍光斑点数の平均)/(コントロール処理植物の蛍光斑点数の平均)}×100。
その結果、図1に示すとおり、月桃プロアントシアニジン、グルコン酸亜鉛、又はグルコン酸銅の単独処理によるウイルス防除効果が認められた。さらに、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸亜鉛を併用、又は、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅を併用することによって、より強いウイルス防除効果が奏されることを見出した。
特許文献1~3に示すとおり、月桃プロアントシアニジン、グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅は、各々単独で強力な植物病害に対する防除効果を有することを、本発明者らは明らかにしている。しかしながら、これらの併用は、これよりも更に優れた効果を奏せることも明らかになった。
また、図には示していないが、ウイルス感染後6日の時点では、通常であれば、ウイルスの感染は上位葉にも移行し、4番目以降の葉でも、ウイルス由来のGFP蛍光を検出することができる。しかし、前記薬剤を散布したベンサミアーナタバコにおいては、これら上位葉におけるGFP蛍光が抑制されていた。このように月桃プロアントシアニジン及び金属キレートの混合物によるウイルス防除効果は、それらを直接散布した葉のみならず、その上位葉にも認められたことから、これら薬剤は、植物の免疫力(病原に対する抵抗性)の向上性を引き起こすことが考えられる。
さらに、図には示していないが、月桃プロアントシアニジン及び金属キレートの併用による薬害(葉における白色斑点、萎れ等)は認められなかった。
[実施例2] 月桃プロアントシアニジンと硫酸亜鉛又はグルコン酸亜鉛との併用による植物ウイルスの感染抑制における相乗効果
終濃度333ppm若しくは終濃度500ppm 月桃プロアントシアニジン、終濃度1mM 硫酸亜鉛(ZnSO)、終濃度1mM若しくは終濃度5mM グルコン酸亜鉛、終濃度333ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度1mM 硫酸亜鉛の混合溶液、終濃度333ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度1mM グルコン酸亜鉛の混合溶液、又は終濃度500ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度5mM グルコン酸亜鉛の混合溶液に、終濃度が0.01%になるようにマイリノーを添加し、各被験薬剤を調製した。
そして、実施例1に記載のToMV-ベンサミアーナタバコ評価系を用い、これら薬剤についての植物ウイルス病防除効果を評価した。また、終濃度0.01%マイリノーのみを添加した水溶液をコントロールとして用いた。
その結果、図2に示すとおり、月桃プロアントシアニジン、硫酸亜鉛、又はグルコン酸亜鉛の単独処理によるウイルス防除効果が認められた。さらに、月桃プロアントシアニジン及び硫酸亜鉛を併用、又は、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸亜鉛を併用することによって、より強いウイルス防除効果が奏されることを見出した。また、図には示していないが、これら混合薬剤においても、上位葉におけるウイルス感染の抑制が認められた。さらに、硫酸亜鉛と月桃プロアントシアニジンとの併用においても、実施例1に示したグルコン酸銅又はグルコン酸亜鉛との併用同様に、薬害は認められなかった。
[実施例3] 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の併用による植物病原細菌の感染抑制における相乗効果
先ず、植物材料として、ハクサイ(品種:黄ごころ85、タキイ種苗)を、ピートモス(スーパーミックスA、サカタのタネ):ホワイトバーミキュライト(A-2、旭工業株式会社):黒曜石パーライト(フヨーライト3号、芙蓉パーライト株式会社)=2:1:1に1鉢あたり3粒を播種し、24℃にて24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)で栽培して用いた。
終濃度1000ppm 月桃プロアントシアニジン、終濃度0.3mM グルコン酸銅溶液、又は終濃度1000ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度0.3mM グルコン酸銅の混合溶液に、展着剤であるマイリノーを終濃度が0.01%になるように添加し、各被験薬剤を調製した。また、終濃度0.01%マイリノーのみを添加した水溶液をコントロールとして用いた。
このようにして調製した各薬剤を、前記播種して14日後のハクサイに噴霧した。その噴霧処理の2日後に5×10cfu/mlに調製したアブラナ科植物黒斑細菌病菌 Pseudomonas cannabina pv. alisalensisを噴霧接種し、湿室下で24℃、24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)に静置した。そして、接種して5日後に病徴の検定(発病調査)を行なった。また、コントロールに対する感染抑制率(防除価)を算出した。
発病調査の結果に基づく発病度は、以下の式で表される。
発病度={(1n+2n+3n+4n+5n)/(5×調査数)}×100
発病調査は、発病の程度を以下の5つに区分して行なった。
0:病徴なし、1:微小斑点、2:葉の25%未満の面積に病斑が認められる、3:葉の25%以上50%未満の面積に病斑が認められる、4:葉の50%以上の面積に病斑が認められる、5:枯死
からnは前記発病の程度を示した各個体数を示す。
防除価は以下の式で表される。
防除価={1-処理区の発病度/無処理区の発病度)}×100。
その結果、図3に示すとおり、月桃プロアントシアニジン又はグルコン酸銅の単独処理区と比較して、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の混合液処理区において、より強い防除効果が黒斑細菌病に対しても認められた。
また、図には示していないが、上記ベンサミアーナタバコ同様に、ハクサイにおいても、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の混合液処理区では薬害が認められなかった。
[実施例4] 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅による植物病原真菌の感染抑制における相乗効果
実施例3に記載の方法において、5×10cfu/ml アブラナ科植物黒斑細菌病菌の代わりに、5.3×10個/mlに調製したアブラナ科野菜類炭疽病菌 Colletotrichum higginsianumを、前記噴霧処理の2日後に噴霧接種し、各薬剤の防除価を算出した。
その結果、図4に示すとおり、月桃プロアントシアニジン又はグルコン酸銅の単独処理区と比較して、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の混合液処理区において、より強い防除効果が炭疽病に対しても認められた。また、前記混合液処理区においても、薬害(ハクサイの葉における白色斑点等)は認められなかった。
[実施例5] 月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の併用による植物病原真菌の感染抑制における相乗効果
先ず、植物材料として、トマト(品種:レジナ、サカタのタネ)を、ピートモス(スーパーミックスA、サカタのタネ):ホワイトバーミキュライト(A-2、旭工業株式会社):黒曜石パーライト(フヨーライト3号、芙蓉パーライト株式会社)=2:1:1に1鉢あたり3粒を播種し、24℃にて24時間の明暗サイクル(明時間16時間及び暗時間8時間)で栽培して用いた。
終濃度1000ppm 月桃プロアントシアニジン、終濃度0.3mM グルコン酸銅溶液、又は、終濃度1000ppm 月桃プロアントシアニジン及び終濃度0.3mM グルコン酸銅の混合溶液に、展着剤であるマイリノーを終濃度が0.01%になるように添加し、各被験薬剤を調製した。また、終濃度0.01%マイリノーのみを添加した水溶液をコントロールとして用いた。
このようにして調製した各薬剤を、前記播種して10日間後に1鉢当たり2個体になるように間引きを行い、前記条件下でさらに9日間栽培したトマトに噴霧した。その噴霧処理2日後に1.19×10個/mlに調製したトマト褐色輪紋病菌(Corynespora cassiicola)を噴霧接種し、8日後に病徴の検定(発病調査)を行なった。また、コントロールに対する感染抑制率(防除価)を算出した。
発病調査の結果に基づく発病度は、以下の式で表される。
発病度={(1n+2n+3n+4n+5n)/(5×調査数)}×100
発病調査は発病程度を以下の5つに区分して調査した。
0:病徴なし、1:微小斑点、2:葉の25%未満の面積に病斑が認められる、3:葉の25%以上50%未満の面積に病斑が認められる、4:葉の50%以上の面積に病斑が認められる、5:枯死又は落葉
からnは前記発病の程度を示した各個体数を示す。
防除価は以下の式で表される。
防除価={1-処理区の発病度/無処理区の発病度)}×100。
その結果、図5に示すとおり、月桃プロアントシアニジン又はグルコン酸銅の単独処理区と比較して、月桃プロアントシアニジン及びグルコン酸銅の混合液処理区において、より強い防除効果が褐色輪紋病に対しても認められた。
以上説明したように、本発明によれば、植物病害に対して優れた防除効果を発揮することが可能となる。そして、当該防除効果は、プロアントシアニジン又は金属化合物を単独で用いた場合に比べてより優れたものであり、また施用した部位のみならず、その周辺部位にも及ぶものである。さらに、本発明は薬害を生じさせ難いものでもある。よって、本発明は、安全性と効果を兼ね備えた農薬として、農業分野において大きく貢献し得るものである。

Claims (6)

  1. プロアントシアニジンと、金属又は該金属を含む化合物とを、有効成分とする、植物病害の防除剤。
  2. 前記金属が、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも1の金属である、請求項1に記載の防除剤。
  3. 前記金属を含む化合物が、金属キレート及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1の化合物である、請求項1又は2に記載の防除剤。
  4. 前記金属を含む化合物が、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅及び硫酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1の化合物である、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の防除剤。
  5. 前記植物病害が、植物ウイルス病、植物細菌病及び植物真菌病からなる群から選択される少なくとも1の病害である、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の防除剤。
  6. 請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の防除剤を植物に施用することを含む、植物病害の防除方法。
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