JP2022157142A - コンピュータプログラム、シミュレーション方法、及びシミュレーション装置 - Google Patents

コンピュータプログラム、シミュレーション方法、及びシミュレーション装置 Download PDF

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Abstract

【課題】全固体電池に適用することができ、電池の内部応力に依存するパラメータを基に、電気化学現象のシミュレーションを実行できるコンピュータプログラム、シミュレーション方法、及びシミュレーション装置を提供する。【解決手段】コンピュータに、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理を実行させる。全固体電池のモデルとして、球体の活物質粒子と固体電解質とが接触したモデルを設定し、境界条件を与える。全固体電池のモデルや境界条件は事前に設定されていてもよい。【選択図】図8

Description

本発明は、コンピュータプログラム、シミュレーション方法、及びシミュレーション装置に関する。
イオン導体として有機溶媒を用いる電解液系リチウムイオン電池が広く普及している。携帯電話機やデジタルカメラ・ビデオなどのモバイルバッテリー用途だけでなく、自動車や鉄道等のエネルギ供給源としても、電解液系リチウムイオン電池は活用されている。
このような電解液系リチウムイオン電池に代わる電池として、近年、全固体電池の開発が進められている。全固体電池は、形状に制約がなく、内部短絡に強く、熱に強いなどの特徴を有する。
特開2012-154665号公報 特開2016-065828号公報 特開2019-148537号公報
電解液系リチウムイオン電池については、全世界で開発・製造が進んでおり、電圧-電流特性などの充放電特性を表現する電気化学シミュレーションモデルも実績のあるものが複数存在する(例えば、特許文献1-3を参照)。
しかしながら、全固体電池については、電池内部の挙動を推定するシミュレーションモデルは現時点では存在しておらず、メカニズムが異なる電解液系リチウムイオン電池のシミュレーションモデルを流用することもできない。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、全固体電池に適用することができ、電池の内部応力に依存するパラメータを基に、電気化学現象のシミュレーションを実行できるコンピュータプログラム、シミュレーション方法、及びシミュレーション装置を提供することを目的とする。
コンピュータプログラムは、コンピュータに、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理を実行させる。
シミュレーション方法は、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理をコンピュータにより実行する。
シミュレーション装置は、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする演算部を備える。
上記構成によれば、全固体電池に適用することができ、電池の内部応力に依存するパラメータを基に、電気化学現象のシミュレーションを実行できる。
実施の形態1に係る推定装置の内部構成を示すブロック図である。 蓄電素子の構成を説明する説明図である。 固体電解質層の内部構成を説明する説明図である。 有効拡散係数の計算手法を説明する説明図である。 全固体電池における有効拡散係数の計算手法を説明する説明図である。 全固体電池における有効拡散係数の計算結果を示す図である。 接触面積比率と有効拡散係数との関係を示すグラフである。 実施の形態1に係る推定装置が実行する演算処理の実行手順を説明するフローチャートである。 実施の形態2に係る推定装置が実行する演算処理の実行手順を説明するフローチャートである。 蓄電素子の内部応力と内部抵抗との関係を示すグラフである。 実施の形態3に係る推定装置の内部構成を示すブロック図である。 内部応力の推定手順を説明するフローチャートである。
コンピュータプログラムは、コンピュータに、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理を実行させる。
全固体電池は、電解液系リチウムイオン電池と異なり、活物質粒子と固体電解質との接触面積を積極的に大きくしようとしない限り、接触抵抗が大きい。すなわち、全固体電池は、外部から圧力を加え、活物質粒子と固体電解質との接触面積を増大させることによって、電気が流れやすいという特徴を有する。
上記の構成によれば、全固体電池の特徴的なパラメータの1つである接触面積を基に、全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
コンピュータプログラムにおいて、前記シミュレーションモデルは、前記接触面積と前記活物質粒子の有効拡散係数との関係を規定してあり、前記接触面積の値に基づき、前記活物質粒子の有効拡散係数を推定する処理を前記コンピュータに実行させてもよい。この構成によれば、接触面積の値と活物質粒子の有効拡散係数とを紐付けることにより、接触面積の値から全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
コンピュータプログラムにおいて、前記シミュレーションモデルは、前記接触面積と前記活物質粒子の有効イオン伝導度との関係を規定してあり、前記接触面積の値に基づき、前記活物質粒子の有効イオン伝導度を推定する処理を前記コンピュータに実行させてもよい。この構成によれば、接触面積の値と活物質粒子の有効イオン伝導度とを紐付けることにより、接触面積の値から全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
コンピュータプログラムにおいて、前記接触面積は、前記全固体電池の内部応力の関数であり、前記内部応力の値に基づき、前記全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理を前記コンピュータに実行させてもよい。この構成によれば、接触面積の値と内部応力の値とを紐付けることにより、内部応力の値から全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
コンピュータプログラムにおいて、前記全固体電池に発生する歪みを計測する歪みセンサから、前記歪みに係る計測データを取得し、前記全固体電池の内部の力学的状態を表すモデルを用いて、取得した計測データに基づき、前記全固体電池の内部応力を推定する処理を前記コンピュータに実行させてもよい。この構成によれば、センサによって計測できる歪みのデータに基づき、内部応力を推定し、推定した内部応力の値から全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
コンピュータプログラムにおいて、前記全固体電池の内部抵抗は、前記内部応力の関数であり、前記内部応力の値に基づき、前記内部抵抗の値を推定する処理を前記コンピュータに実行させてもよい。この構成によれば、内部応力の値と内部抵抗の値とを紐付けることにより、全固体電池の内部抵抗を推定できる。
シミュレーション方法は、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理をコンピュータにより実行する。
この構成によれば、全固体電池の特徴的なパラメータの1つである接触面積を基に、全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
シミュレーション装置は、活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする演算部を備える。
この構成によれば、全固体電池の特徴的なパラメータの1つである接触面積を基に、全固体電池の電気化学現象をシミュレートできる。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る推定装置1の内部構成を示すブロック図である。推定装置1は、例えば、演算部(推定部)11、記憶部12、操作部13、及び出力部14を備える。推定装置1は、予め設定された情報又は操作部13を通じて入力された情報に基づき、後述する蓄電素子2(図2を参照)の電気化学現象を推定する。
演算部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える演算回路である。演算部11が備えるCPUは、ROMや記憶部12に格納された各種コンピュータプログラムを実行し、上述したハードウェア各部の動作を制御することによって、装置全体を、蓄電素子2の電気化学現象を推定するための状態推定器として機能させる。
代替的に、演算部11は、複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性または不揮発性のメモリ等を備える任意の処理回路または演算回路であってもよい。また、演算部11は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えてもよい。
記憶部12は、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの記憶装置を備える。記憶部12には、各種のコンピュータプログラム及びデータが記憶される。記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムは、シミュレーションモデルMD1を用いて、蓄電素子2の電気化学現象を推定する処理をコンピュータに実行させるための推定プログラムPG1を含む。シミュレーションモデルMD1は、推定プログラムPG1の中において記述されてもよい。記憶部12に記憶されるデータには、シミュレーションモデルMD1において用いられるパラメータ、推定プログラムPG1において用いられるパラメータ、演算部11によって生成されるデータなどが含まれる。
推定プログラムPG1は、MATLAB(登録商標)、Amesim(登録商標)、Twin Builder(登録商標)、MATLAB&Simulink(登録商標)、Simplorer(登録商標)、ANSYS(登録商標)、Abaqus(登録商標)、Modelica(登録商標)、VHDL-AMS(登録商標)、C言語、C++、Java(登録商標)などの市販の数値解析ソフトウェア又はプログラミング言語によって記述されてもよい。数値解析ソフトウェアは、1D-CAEと称される回路シミュレータであってもよく、3D形状で行う有限要素法や有限体積法などのシミュレータであってもよい。代替的に、これらに基づいた縮退モデル(ROM : Reduced-Order Model)を用いてもよい。
推定プログラムPG1を含むコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体Mにより提供される。記録媒体Mは、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カードなどの可搬型メモリである。演算部11は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体Mから所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部12に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
操作部13は、各種の操作装置を接続するためのインタフェースを備える。操作装置は、キーボード、マウス、タッチパネルなど、ユーザの操作を受付けるための装置である。操作部13は、操作装置を通じて受付けた操作情報を演算部11へ出力する。
出力部14は、外部装置を接続する接続インタフェースを備える。出力部14に接続される外部装置は、液晶ディスプレイなどを備える表示装置140である。この場合、演算部11は、推定した蓄電素子2の電気化学現象に関する情報を出力部14から出力することによって、当該情報を表示装置140に表示させる。代替的に、推定装置1が表示装置140を内蔵してもよい。
更に、出力部14は、外部装置と通信するための通信インタフェースを備えてもよい。出力部14に通信可能に接続される外部装置は、蓄電素子2の状態を監視する監視サーバである。代替的に、出力部14に通信可能に接続される外部装置は、蓄電素子2から供給される電力により動作する携帯端末や電気自動車などの制御装置であってもよい。
以下、推定装置1のシミュレーション対象である蓄電素子2について説明する。
図2は蓄電素子2の構成を説明する説明図である。蓄電素子2は、例えば、正極集電体層21、正極活物質層22、固体電解質層23、負極活物質層24、及び負極集電体層25からなる積層体を含む全固体電池である。
正極集電体層21は、金属箔、金属メッシュ等により構成される。正極集電体層21を構成する金属は、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の良好な導電性を有する金属である。正極集電体層21の表面には、接触抵抗を調整するためのコート層が形成されていてもよい。コート層の一例は炭素コートである。正極集電体層21の厚みは特に限定されるものではなく、例えば0.1μm以上1mm以下である。
正極活物質層22は、少なくとも正極活物質を含む層である。正極活物質層22は、正極活物質の他に、固体電解質、導電助剤、及びバインダなどを含んでもよい。正極活物質層22は、例えば0.1μm以上1mm以下の厚みを有する。
正極活物質には、全固体電池に使用できる適宜の正極活物質が用いられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物が、正極活物質として用いられる。正極活物質は、例えば、平均粒径(D50)が0.5μm以上20μm以下の粒子である。正極活物質を構成する粒子は、一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。正極活物質は、粒子に限らず、薄膜状であってもよい。正極活物質層22に含まれる固体電解質には、イオン伝導度が比較的高く、耐熱性に優れた無機固体電解質が用いられる。このような無機固体電解質として、ランタンジルコン酸リチウム等の酸化物固体電解質やLi2 S-P25 等の硫化物固体電解質を使用できる。導電助剤には、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が用いられる。バインダには、ブタジエンゴム(BR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の材料が用いられる。
固体電解質層23は、少なくとも固体電解質を含む層である。固体電解質層23は、固体電解質の他に、バインダなどを含んでもよい。固体電解質層23は、例えば0.1μm以上1mm以下の厚みを有する。固体電解質層23に含まれる固体電解質には、上述した酸化物固体電解質や硫化物固体電解質などの無機固体電解質が用いられる。バインダには、正極活物質層22に用いられるバインダと同様のものが用いられる。
負極活物質層24は、少なくとも負極活物質を含む層である。負極活物質層24は、負極活物質の他に、固体電解質、導電助剤、及びバインダなどを含んでもよい。負極活物質層24は、例えば0.1μm以上1mm以下の厚みを有する。
負極活物質には、全固体電池に使用できる適宜の負極活物質が用いられる。例えば、金属活物質及びカーボン活物質が負極活物質として用いられる。金属活物質としては、Li、In、Al、Si、Sn等を挙げることができる。金属活物質は、金属単体に限らず、金属複合酸化物であってもよい。カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。負極活物質は、例えば、平均粒径(D50)が0.5μm以上20μm以下の粒子である。負極活物質を構成する粒子は、一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。負極活物質は、粒子に限らず、薄膜状であってもよい。負極活物質層24に用いられる固体電解質、導電助剤、及びバインダには、正極活物質層22に用いられる固体電解質、導電助剤、及びバインダと同様のものが適宜用いられる。
負極集電体層25は、金属箔、金属メッシュ等により構成される。負極集電体層25を構成する金属は、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の良好な導電性を有する金属である。負極集電体層25の表面には、接触抵抗を調整するためのコート層が形成されていてもよい。コート層の一例は炭素コートである。負極集電体層25の厚みは特に限定されるものではなく、例えば0.1μm以上1mm以下である。
蓄電素子2は、拘束部材3によって拘束される。拘束部材3は、例えば、蓄電素子2を収容するケース31と、ケース31内に圧縮された状態にて配置される弾性部材32とを備える。ケース31は、例えば直方体状の容器であり、底面部311と側面部312とにより構成されるケース本体310と、ケース本体310の開口を閉塞する蓋体313とを備える。ケース本体310(底面部311及び側面部312)並びに蓋体313は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属によって形成される。代替的に、ケース本体310(底面部311及び側面部312)並びに蓋体313は、樹脂によって形成されてもよい。ケース本体310は、蓄電素子2が収容された後、蓋体313によって密閉される。
弾性部材32は、蓄電素子2の最下層(図2の例では正極集電体層21)と底面部311との間、及び、蓄電素子2の最上層(図2の例では負極集電体層25)と蓋体313との間に、圧縮された状態にて配置される。弾性部材32は例えばゴム状のシートである。弾性部材32は、その弾性力によって、蓄電素子2に積層方向(図の上下方向)の拘束力を付与する。
図2の例では、ケース31の内部に弾性部材32を配置することによって、蓄電素子2に対して拘束力を付与する構成とした。代替的に、ケース31内に高圧の流体を充填することによって蓄電素子2に拘束力を付与してもよい。この場合、流体としては、電池材料に対して不要な反応を生じさせないものが好ましい。例えば、窒素等の不活性ガスや乾燥空気等が用いられる。代替的に、蓄電素子2を積層方向の両側から板部材によって挟み込み、蓄電素子2に拘束力が付与された状態にて板部材同士を連結することによって、蓄電素子2に拘束力を付与する構成としてもよい。
図3は固体電解質層23の内部構成を説明する説明図である。図3の例では、活物質粒子をハッチングを付した球として示し、固体電解質をハッチングを付していない球として示している。簡略化のために、図3では、導電助剤及びバインダを省略している。粒子状の活物質(活物質粒子)を含む全固体電池では、図中の黒丸にて示すように、活物質粒子と固体電解質とが微小な接触面積(点)で接触した状態にある。固体電解質と活物質粒子との接触面積は、蓄電素子を拘束する拘束力や内部応力によって変化する。
従来の電解液系リチウムイオン電池では、活物質粒子の周囲が電解液によって満たされており、活物質粒子の全表面が電解液と接触した状態にある。この場合、見かけの拡散係数(有効拡散係数)やイオン伝導度(有効イオン伝導度)は、真の拡散係数やイオン伝導度と一致する。
これに対し、全固体電池では、活物質粒子と固体電解質とが接触する微小面積でしかイオンのやり取りがないため、見かけの拡散係数(有効拡散係数)やイオン伝導度(有効イオン伝導度)は、真の拡散係数やイオン伝導度よりも小さくなると予測される。しかしながら、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積と、有効拡散係数や有効イオン伝導度との関係についての実証例は、現時点では存在していない。
本願発明者らは、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積と、有効拡散係数や有効イオン伝導度との関係を数値計算(シミュレーション)により見出した。実施の形態では、これらの関係を用いて、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積(若しくは蓄電素子2の内部応力)を基に、蓄電素子2の電気化学現象を推定するシミュレーション手法を提案する。
以下、参考例として、電解液系リチウムイオン電池に関し、電解液の有効拡散係数を求めるための計算手法について説明する。
図4は有効拡散係数の計算手法を説明する説明図である。図4は電解液系リチウムイオン電池の正極を簡略化したモデルを表す。図4は、正極の内部に複数の活物質粒子が存在し、その内部及び周囲が電解液によって満たされている状態を示している。正極の厚みをL(m)とし、図中の破線により示される伝導経路の長さをl(m)としたとき、間隙・活物質粒子による屈曲度τは、τ=l/Lと記述される。このとき、有効拡散係数Dl,eff (m2-1)と真の拡散係数Dl (m2-1)との関係は、次式により表される。εは電解液の体積占有率を表す。
Figure 2022157142000002
同様に、電解液の有効イオン伝導度σl,eff (Sm-1)と真のイオン伝導度σl (Sm-1)との関係は、次式により表される。
Figure 2022157142000003
図4に示すモデルの上辺を電解液の流入口、下辺を流出口(観測点)とし、適宜の境界条件を与えることにより、観測点での電解液の流速が算出される。境界条件として、例えば、流入口における電解液の濃度(例えば1000mol m-3 )、及び流出口における電解液の濃度(例えば0mol m-3 )が与えられる。
観測点における電解液の流速をJl 、電解液の濃度cl としたとき、流速Jl と濃度cl との関係は、次式により表される。Dl,eff は有効拡散係数を表す。電解液の有効拡散係数Dl,eff は数3に基づいて算出される。
Figure 2022157142000004
全固体電池では、活物質粒子の一部が固体電解質と接触した状態にあり、その内部及び周囲は電解質によって満たされていない。そのため、電解液系リチウムイオン電池のおける有効拡散係数の計算手法を、そのまま全固体電池に適用することはできない。そこで、本願発明者らは、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積という概念を導入し、接触面積に応じて変化する有効拡散係数をシミュレーションにより算出する手法を提案する。
図5は全固体電池における有効拡散係数の計算手法を説明する説明図である。実施の形態において、全固体電池の活物質粒子は球体として仮定される。推定装置1の演算部11は、この球体において、球体表面を流入口、球体内部に設定した同心球の表面を観測点として設定し、境界状態を与えた場合における、観測点での流速JAM(mol m-2-1)を算出する。観測点は、例えば、球体の半分の半径を有する同心球の表面として設定される。境界条件として、球体の周囲に例えば1000mol m-3の濃度、球体の内部に例えば0mol m-3の濃度が与えられる。流速JAMと有効拡散係数DAM,effとの関係は、数4によって表される。ここで、cAMは活物質の濃度である。演算部11は、算出した流速JAMを数4に代入し、活物質の有効拡散係数DAM,effを算出する。
Figure 2022157142000005
図6は全固体電池における有効拡散係数の計算結果を示す図である。図6Aは球体として仮定した全固体電池の活物質を表現するために、回転軸を中心に回転させて作成した球体であり、球体表面の全てが電解質と接触している場合の計算結果を示している。球体表面の全てが電解質に接触している場合、観測点に均一な流れ込みが発生するので、活物質の拡散係数とその有効拡散係数とは同一になると予測される。実際に計算を行ったところ、有効拡散係数DAM,effは、1.0×10-13 (m2-1)となり、活物質の拡散係数DAMと同一の値となった。これにより、計算手法の妥当性が示された。
図6Bは球の中心を通る対称軸に対して半頂角10度で回転させて作成した円錐で切り取られた球冠のうち、球表面に含まれる表面積が電解質と接触している場合の計算結果を示している。半頂角10度の場合、有効拡散係数DAM,effは、3.8×10-15 (m2-1)となり、活物質の拡散係数DAMよりも2桁程度小さな値となった。
図6Cは半頂角5度の場合の計算結果を示している。半頂角5度の場合、有効拡散係数DAM,effは、1.9×10-15 (m2-1)となり、半頂角10度の場合と比較して更に小さな値となった。
図7は接触面積比率と有効拡散係数との関係を示すグラフである。図7に示すグラフの横軸及び縦軸は共に対数軸であり、横軸は接触面積比率、縦軸は有効拡散係数(m2 /s)を表す。接触面積比率は、球の表面積に対する球の表面に含まれる球冠の面積の比率であり、活物質と固体電解質との接触の度合いを表すパラメータである。横軸の接触面積比率に活物質を仮定した球の表面積を乗じることによって、接触面積が得られる。図7に示す対数軸プロットにより、接触面積と有効拡散係数との間の関係は、数5により定式化されることが分かる。X線CT像などを解析して実施に接触面積を見積もることができるほか、接触面積に影響を及ぼすパラメータも使うことができる。例えば、プレス成型して得られる電極の場合には、電極合材の残存空隙率などの値を用いてもよい。
Figure 2022157142000006
ここで、DAM,effは有効拡散係数、xは接触面積を表す。a,b,cは係数である。係数a,b,cは、グラフ上の各点を通る近似曲線(図7に示す対数プロットでは直線)を求めることによって算出される。近似曲線は最小二乗法など公知の手法を用いて求められる。
演算部11は、算出した有効拡散係数DAM,effの値に基づき、有効イオン伝導度σAM,effを算出してもよい。Einsteinの関係式により、イオン伝導度σと拡散係数Dとの関係は、数6により記述される。
Figure 2022157142000007
ここで、σはイオン伝導度(S m-1)、zはイオンの電荷(無次元)、Fはファラデー定数(C mol-1)、Dは拡散係数(m2-1)、cはリチウム濃度(mol m-3)、Rは気体定数(m2 kg s-1-1 mol-1)、Tは温度(K)を表す。
演算部11は、数6の拡散係数Dに、接触面積から算出した有効拡散係数DAM,effの値を代入することにより、有効イオン伝導度σAM,effを算出できる。有効イオン伝導度σAM,effは、蓄電素子2の電気抵抗に影響を与える物理量である。すなわち、推定装置1は、全固体電池における活物質粒子と固体電解質との接触面積を基に、蓄電素子2における電気化学現象を推定できる。
以下、推定装置1が実行する演算の実行手順について説明する。
図8は実施の形態1に係る推定装置1が実行する演算処理の実行手順を説明するフローチャートである。推定装置1の演算部11は、全固体電池のモデルとして、球体の活物質粒子と固体電解質とが接触したモデルを設定し、境界条件を与える(ステップS101)。全固体電池のモデルや境界条件は事前に設定され、記憶部12にされていてもよい。この場合、演算部11は、事前に設定されているモデル及び境界条件を記憶部12から読み出せばよい。代替的に、演算部11は、操作部13を通じて、モデル及び境界条件の設定を受け付けてもよい。
次いで、演算部11は、接触面積(半頂角)の設定を受付ける(ステップS102)。接触面積は、蓄電素子2の内部応力を想定して設定されるとよい。また、蓄電素子2のSEM画像(SEM:Scanning Electron Microscope)を解析することによって得られる現実の値を与えてもよい。シミュレーションに用いる接触面積の値は記憶部12に事前に記憶されていてもよく、計算時に操作部13を通じて与えられてもよい。
次いで、演算部11は、ステップS102で設定された接触面積を有する球体の表面部分から観測点に流れ込む流速を算出することによって、有効拡散係数を算出する(ステップS103)。流速と有効拡散係数との関係は数4によって表され、有効拡散係数は濃度勾配の係数として算出される。
次いで、演算部11は、ステップS103で算出した有効拡散係数を用いて、有効イオン伝導度を算出する(ステップS104)。有効拡散係数と有効イオン伝導度との関係は数6によって表される。
図8に示すフローチャートでは、演算部11は、有効拡散係数及び有効イオン伝導度の双方を算出する構成としたが、何れか一方のみを算出する構成としてもよい。
また、演算部11は、算出した有効拡散係数又は有効イオン伝導度から、蓄電素子2の電気化学現象に関する他の物理量を推定してもよい。例えば、一般的な伝導度σ(S m-1)と内部抵抗Rohm (Ω)との間には、Lを長さ(m)、Aを断面積(m2 )として、Rohm =L/(σ×A)の関係があるので、演算部11は、この関係式を用いて、蓄電素子2の内部抵抗を推定してもよい。
次いで、演算部11は、算出した有効拡散係数及び有効イオン伝導度の情報を出力部14より出力する(ステップS105)。演算部11は、算出した有効拡散係数及び有効イオン伝導度の値を出力してもよく、数値範囲を出力してもよい。代替的に、演算部11は、接触面積に対して有効拡散係数及び有効イオン伝導度をプロットしたグラフを出力してもよい。
以上のように、実施の形態1では、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積を考慮しながら、有効拡散係数や有効イオン伝導度などの、蓄電素子2の電気化学に関する物理量を推定することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、蓄電素子2の内部応力を基に、有効拡散係数や有効イオン伝導度を算出する構成について説明する。
実施の形態1では、活物質粒子と固体電解質との間の接触面積と、有効拡散係数や有効イオン伝導度との関係について説明した。例えば、数4は、接触面積xと有効拡散係数DAM,effとの関係を表しているが、接触面積に代えて圧縮応力を用いてもよい。応力は、荷重に対して部材内部に生じる抵抗力であり、荷重を部材面積で除算した単位面積あたりの力である。球状の弾性体同士が接触する部分にかかる応力に関しては、ヘルツ理論を適用できる。ヘルツ理論に依れば、接触する部分の圧縮応力は、数7により記述される。
Figure 2022157142000008
ここで、Sp は圧縮応力(Pa)、Fは荷重(N)、rは接触面の半径(m)である。数7を用いて数5を書き換えた場合、有効拡散係数DAM,effと圧縮応力Sp との関係が得られる。推定装置1の演算部11は、接触面積xに代えて圧縮応力Sp を与えることにより、活物質粒子の有効拡散係数DAM,effを算出してもよい。
更に、演算部11は、算出した有効拡散係数DAM,effを数6に代入し、有効イオン伝導度σAM,effを算出してもよい。
図9は実施の形態2に係る推定装置1が実行する演算処理の実行手順を説明するフローチャートである。推定装置1の演算部11は、全固体電池のモデルとして、球体の活物質粒子と固体電解質とが接触したモデルを設定し、境界条件を与える(ステップS201)。全固体電池のモデルや境界条件は事前に設定され、記憶部12にされていてもよい。この場合、演算部11は、事前に設定されているモデル及び境界条件を記憶部12から読み出せばよい。代替的に、演算部11は、操作部13を通じて、モデル及び境界条件の設定を受け付けてもよい。
次いで、演算部11は、内部応力の設定を受付ける(ステップS202)。シミュレーションに用いる内部応力の値は記憶部12に事前に記憶されていてもよく、計算時に操作部13を通じて与えられてもよい。
次いで、演算部11は、活物質粒子と固体電解質との接触部分から観測点に流れ込む流速を算出することによって、有効拡散係数を算出する(ステップS203)。流速と有効拡散係数との関係は数4によって表される。演算部11は、数4に基づき、濃度勾配の係数として有効拡散係数を算出できる。
次いで、演算部11は、ステップS203で算出した有効拡散係数を用いて、有効イオン伝導度を算出する(ステップS204)。有効拡散係数と有効イオン伝導度との関係は数6によって表される。演算部11は、数6に基づき、有効イオン伝導度を算出できる。
次いで、演算部11は、算出した有効拡散係数及び有効イオン伝導度の情報を出力部14より出力する(ステップS205)。演算部11は、算出した有効拡散係数及び有効イオン伝導度の値を出力してもよく、数値範囲を出力してもよい。代替的に、演算部11は、接触面積に対して有効拡散係数及び有効イオン伝導度をプロットしたグラフを出力してもよい。
図9のフローチャートにおいて、演算部11は、有効拡散係数及び有効イオン伝導度の双方を算出する構成としたが、有効拡散係数及び有効イオン伝導度の何れか一方のみを算出する構成としてもよい。
演算部11は、蓄電素子2の内部応力を基に内部抵抗を推定してもよい。図10は蓄電素子2の内部応力Sp と内部抵抗Rohm との関係を示すグラフである。グラフの横軸は蓄電素子2の内部応力Sp を表し、縦軸は蓄電素子2の内部抵抗Rohm を表す。図10のグラフに示すように、圧縮応力が高くなる程、内部抵抗は低くなるという実験事実を考慮して、Rohm の関数形は、∂Rohm /∂Sp ≧0となるように定められる。Rohm は上にも下にも有界な関数であってもよく、下限値は0より大きく、上限値は十分に大きな値であることが望ましい。推定装置1の記憶部12には、内部応力Sp を内部抵抗Rohm に変換する関数が記憶されてもよく、内部応力Sp を内部抵抗Rohm に変換する変換テーブルが記憶されてもよい。
推定装置1は、予め定めた関数(又はテーブル)に従って、内部応力Sp の値を内部抵抗Rohm の値に変換する。推定装置1は、変換後に得られる内部抵抗Rohm の値を用い、正極及び負極の平衡電位や活性化過電圧を含む蓄電素子2の電気化学現象に係る物理量を推定してもよい。推定手法には、例えば、特願2020-160971号に記載の手法が用いられる。
以上のように、実施の形態2では、蓄電素子2の内部応力を考慮しながら、有効拡散係数や有効イオン伝導度などの、蓄電素子2の電気化学に関する物理量を推定することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、内部応力の推定手法について説明する。
図11は実施の形態3に係る推定装置1の内部構成を示すブロック図である。推定装置1は、上述した演算部11、記憶部12、操作部13、及び出力部14に加え、入力部15を備える。
入力部15は、各種センサを接続するためのインタフェースを備える。入力部15には、蓄電素子2に発生する歪みを計測する歪みセンサS1が接続される。歪みセンサS1は、蓄電素子2の歪みが現れる箇所に取り付けられる。例えば、歪みセンサS1は、蓄電素子2を収容するケース31の側面部312に取り付けられる。代替的に、歪みセンサS1は、ケース31の底面部311や蓋体313に取り付けられてもよく、蓄電素子2に直接的に取り付けられてもよい。演算部11は、入力部15を通じて、歪みセンサS1によって計測される歪みの計測データを取得する。
入力部15には、蓄電素子2の温度を計測する温度センサS2、蓄電素子2の環境温度を計測する温度センサS3などが接続されてもよい。温度センサS2は、蓄電素子2又は蓄電素子2を収容するケース31の適宜箇所に設けられ、蓄電素子2の温度を計測するセンサである。温度センサS3は、蓄電素子2の周囲に設けられ、蓄電素子2の周囲の温度(環境温度)を計測するセンサである。温度センサS2,S3には、熱電対、サーミスタなどの既存のセンサが用いられる。演算部11は、気象サーバなどの外部サーバから環境温度のデータを取得してもよい。
入力部15には、蓄電素子2に流れる電流を計測する電流計S4、蓄電素子2の電圧を計測する電圧計S5が接続されてもよい。
実施の形態3に係る推定装置1は、歪み等の計測データに基づき、蓄電素子2の内部応力を推定する。すなわち、実施の形態3では、推定装置1の一部を状態推定器(オブザーバ)として機能させる。推定装置1は、非線形フィルタを利用して、数8の状態方程式及び数9の観測方程式により表される時系列モデルの時間更新を逐次計算することによって、内部応力Sp の時間推移を導出する。
状態方程式は、数8のように記述される。
Figure 2022157142000009
ここで、xk は状態量を要素に持つベクトル(状態ベクトル)、vk は外乱量を要素に持つベクトル(外乱ベクトル)である。kは時間ステップを表す。fは各状態量の非線形変換を表す。外乱項は一部又は全部の要素を0にして計算してもよい。
状態量に含まれるεiso,e は孤立化による固有歪みを表す。孤立化とは、充放電の際に活物質粒子に電荷担体(例えばリチウム原子)が挿入離脱することによって、膨張収縮が起こり、これにより活物質粒子が割れる現象を表す。活物質粒子が割れることによって体積が増すため、蓄電素子2の内部に固有歪みが発生する。
εpre,e は析出物の成長による固有歪みを表す。例えば、蓄電素子2の負極にリチウム金属が用いられている場合、長期間にわたる充放電の繰り返しによって、負極表面には析出物が析出することがある。析出物の一例は、疎なリチウム金属である。析出物は不動体被膜(SEI被膜)などであってもよい。この析出物の成長によって、蓄電素子2の内部に固有歪みが発生する。
εrefは蓄電素子2の歪みを表す。εref には、歪みセンサS1による計測値が用いられる。Sp は蓄電素子2の内部応力を表す。内部応力Sp は、蓄電素子2の内部の力学的状態(力のつり合い)を考慮し、孤立化による固有歪みεiso 、析出物の成長による固有歪みεpre 、及び歪みセンサS1の計測値として得られる歪みεref の関数として表される。
観測方程式は、数9のように記述される。
Figure 2022157142000010
ここで、yk は観測値、CT は観測ベクトルである。観測方程式についても外乱ベクトルを加えてもよい。
以下、非線形フィルタの一例として、アンサンブルカルマンフィルタを用いて、時間更新を逐次計算する手法について説明する。
図12は内部応力の推定手順を説明するフローチャートである。推定装置1の演算部11は、k=1の初期値を与える(ステップS301)。演算部11は、歪みセンサS1を用いて予め計測した歪みの計測値をεref kの初期値として与え、孤立化による固有歪みεiso,e k、析出物の成長による固有歪みεpre,e k、内部応力Sp kの初期値として予め設定した仮の値を与えればよい。
次いで、演算部11は、各状態変数について、N個の粒子を発生させる(ステップS302)。ここで、Nは、102 ~106 程度の数である。
次いで、演算部11は、i=1,2,…,Nについて、vk に相当する乱数を発生させる(ステップS303)。vk は正規分布に従うものとし、分散は既知とする。
演算部11は、全てのN個の粒子について、数10に基づく演算を実行し、粒子の状態を次の時間ステップにおける粒子の状態に更新する(ステップS304)。
Figure 2022157142000011
演算部11は、i=1,2,…,Nの各粒子の状態ベクトルと、全粒子の状態ベクトルの平均値との差xk (i)_barを算出する(ステップS305)。xk (i)_barは、数11によって表される。
Figure 2022157142000012
演算部11は、全ての粒子に関する状態量予測値の共分散行列Pk を算出する(ステップS306)。共分散行列Pk は、数12によって表される。
Figure 2022157142000013
演算部11は、入力部15を通じて歪みセンサS1のセンサ出力を取得する(ステップS307)。取得した歪みセンサS1のセンサ出力は、時間ステップkにおける各粒子の観測値yk iを与える。
演算部11は、i番目の粒子の時間ステップkにおける観測誤差rk iを算出する(ステップS308)。ここで、wk は観測外乱である。観測誤差rk iは、数13によって表される。
Figure 2022157142000014
演算部11は、時間ステップkにおけるカルマンゲインKk を算出する(ステップS309)。カルマンゲインKk は、数14によって表される。
Figure 2022157142000015
演算部11は、i番目の粒子の推定値xk (i)_hatを算出する(ステップS310)。推定値xk (i)_hatは、数15によって表される。すなわち、演算部11は、数10の最初の予測値を、数13の観測誤差rk iと数14のカルマンゲインKk とを用いて修正する。
Figure 2022157142000016
演算部11は、各粒子の平均値xk _hatを算出する(ステップS311)。各粒子の平均値xk _hatは、アンサンブルカルマンフィルタによって得られる状態ベクトル推定値を表し、次式によって算出される。
Figure 2022157142000017
数16によって得られる推定値(各粒子の平均値xk _hat)には、内部応力Sp の推定値が含まれる。
次いで、演算部11は、演算を終了するか否かを判断する(ステップS312)。例えば、ユーザから終了指示が与えられた場合、演算部11は、演算を終了すると判断する。演算を終了しないと判断した場合(S312:NO)、演算部11は、処理をステップS302へ戻し、次の時間ステップにおける演算を実行する。
演算部を終了すると判断した場合(S312:YES)、演算部11は、推定した内部応力Sp に関する情報を出力部14から出力し(ステップS313)、本フローチャートによる処理を終了する。演算部11が出力する内部応力Sp に関する情報は、内部応力の値そのものであってもよく、内部応力を基に導出される物理量(例えば、蓄電素子2の内部抵抗)であってもよい。更に、演算部11が出力する内部応力Sp に関する情報は、内部応力Sp の時間推移を示すグラフであってもよく、応力分布を示す2次元又は3次元のグラフやコンターマップであってもよい。
以上のように、推定装置1は、アンサンブルカルマンフィルタを利用して蓄電素子2の内部応力Sp を推定する。アンサンブルカルマンフィルタは、非線形性や非ガウス性を有する状態空間モデルを対象としたフィルタ手法であり、より一般的な状態空間モデルを対象とすることができる。アンサンブルカルマンフィルタは、アルゴリズムが比較的単純であり、推定装置1に容易に実装できる。
図12のフローチャートでは、一例として、アンサンブルカルマンフィルタによる演算手法について説明した。代替的に、推定装置1は、粒子フィルタ、拡張カルマンフィルタ、無香料カルマンフィルタなどの非線形フィルタを用いて、蓄電素子2の内部応力σinを推定してもよい。
実施の形態3では、蓄電素子2に歪みが発生する要因として、物質粒子の孤立化と、析出物の成長とを考慮したが、更に、熱膨張に伴う固有歪みを考慮してもよい。
推定装置1は、推定した内部応力Sp を用いて、有効拡散係数、有効イオン伝導度、内部抵抗などの蓄電素子2の電気化学現象を推定すればよい。
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、蓄電素子2は、複数のセルを直列に接続したモジュール、複数のモジュールを直列に接続したバンク、複数のバンクを並列に接続したドメイン等であってもよい。
1 推定装置
2 蓄電素子
3 拘束部材
11 演算部
12 記憶部
13 操作部
14 出力部
15 入力部
21 正極集電体層
22 正極活物質層
23 固体電解質層
24 負極活物質層
25 負極集電体層
31 ケース
32 弾性部材
310 ケース本体
311 底面部
312 側面部
313 蓋体
MD1 シミュレーションモデル
PG1 推定プログラム

Claims (8)

  1. コンピュータに、
    活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする
    処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
  2. 前記シミュレーションモデルは、前記接触面積と前記活物質粒子の有効拡散係数との関係を規定してあり、
    前記接触面積の値に基づき、前記活物質粒子の有効拡散係数を推定する処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1に記載のコンピュータプログラム。
  3. 前記シミュレーションモデルは、前記接触面積と前記活物質粒子の有効イオン伝導度との関係を規定してあり、
    前記接触面積の値に基づき、前記活物質粒子の有効イオン伝導度を推定する処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1に記載のコンピュータプログラム。
  4. 前記接触面積は、前記全固体電池の内部応力の関数であり、
    前記内部応力の値に基づき、前記全固体電池の電気化学現象をシミュレートする処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項3の何れか1つに記載のコンピュータプログラム。
  5. 前記全固体電池に発生する歪みを計測する歪みセンサから、前記歪みに係る計測データを取得し、
    前記全固体電池の内部の力学的状態を表すモデルを用いて、取得した計測データに基づき、前記全固体電池の内部応力を推定する
    処理を前記コンピュータに実行させるための請求項4に記載のコンピュータプログラム。
  6. 前記全固体電池の内部抵抗は、前記内部応力の関数であり、
    前記内部応力の値に基づき、前記内部抵抗の値を推定する処理を前記コンピュータに実行させるための請求項4又は請求項5に記載のコンピュータプログラム。
  7. 活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする
    処理をコンピュータにより実行するシミュレーション方法。
  8. 活物質粒子と固体電解質との接触面積をパラメータに含むシミュレーションモデルを用いて、前記固体電解質を含む全固体電池の電気化学現象をシミュレートする演算部
    を備えるシミュレーション装置。
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