JP2022150673A - アンギュラ玉軸受用保持器、並びに、アンギュラ玉軸受及びその製造方法 - Google Patents

アンギュラ玉軸受用保持器、並びに、アンギュラ玉軸受及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】玉数を増大しやすく、かつ、ア軸方向に重ね合わされた状態から1個だけを容易に分離することができる構造を実現する。【解決手段】柱部28は、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合う一対のポケット29同士を連通する切り欠き30を有する。柱部28のうちで切り欠き30よりも径方向内側に位置する内側柱片31の軸方向一方側の端面の少なくとも一部を、柱部28のうちで切り欠き30よりも径方向外側に位置する外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置させる。【選択図】図2

Description

本発明は、アンギュラ玉軸受用保持器、並びに、前記アンギュラ玉軸受用保持器を備えたアンギュラ玉軸受及びその製造方法に関する。
例えば、自動車用のハブユニット軸受に用いられるアンギュラ玉軸受においては、冠型のアンギュラ玉軸受用保持器を用いて、複数個の玉を円周方向等間隔に配置し、それぞれの玉を転動自在に保持することが行われている。冠型のアンギュラ玉軸受用保持器は、円環状のリム部と、リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長した複数本の柱部と、円周方向に隣り合う1対の柱部とリム部とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケットとを備える。
アンギュラ玉軸受などの転がり軸受は、基本動定格荷重Crを表す下記の式(1)を利用して、軸受の選定に必要な定格荷重を求めることが行われている。
Cr=b(icоsα)0.72/3Dw1.8・・・(1)
ここで、式(1)中、b及びfは、軸受の材料、形状、製造品質で定まる定数であり、iは、1個の軸受内の転動体の列数であり、αは、接触角であり、Zは、1列に含まれる転動体の数であり、Dwは、転動体の直径である。
上記式(1)によれば、1列に含まれる玉数(Z)を増やすことで、アンギュラ玉軸受の基本動定格荷重Crを向上することが可能になり、軸受寿命を延長できることになる。
特開2019-173966号公報(特許文献1)には、柱部の軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合う一対のポケット部同士を連通する切り欠きを有する、車輪用軸受装置用の冠型のアンギュラ玉軸受用保持器が記載されている。特開2019-173966号公報に記載のアンギュラ玉軸受用保持器によれば、円周方向に隣り合う玉同士の間の距離を縮めることができるため、玉数を増やしやすい。
特開2019-173966号公報
特開2019-173966号公報に記載のアンギュラ玉軸受用保持器は、アンギュラ玉軸受の組立作業の作業性を向上させる面からは、改良の余地がある。この理由について、図6を用いて説明する。
図6は、特開2019-173966号公報に記載のアンギュラ玉軸受用保持器である保持器100を軸方向に重ね合わせた様子を示している。保持器100は、円環状のリム部101と、リム部101の円周方向複数箇所から軸方向一方側(図6の上側)にそれぞれ伸長した複数本の柱部102と、円周方向に隣り合う1対の柱部102とリム部101とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケット103とを備える。柱部102は、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合う一対のポケット103同士を連通する切り欠き104を有する。
ここで、保持器100は、所定の個数を軸方向に重ね合わされた状態で包装(いわゆる棒巻き包装)されて、保持器の製造工場から出荷され、アンギュラ玉軸受の組立工場に輸送される。アンギュラ玉軸受の組立工場では、棒巻き包装された複数個の保持器100は、包装を外した後、軸方向に積み重ね合わされた状態のまま、定配装置にセットされて、該定配装置から、軸受を組み立てるために、1個ずつ分離して取り出される。
従来の保持器100においては、柱部102のうちで切り欠き104よりも径方向内側に位置する内側柱片105の軸方向一方側の端面が、柱部102のうちで切り欠き104よりも径方向外側に位置する外側柱片106の軸方向一方側の端面よりも軸方向他方側に位置している。したがって、軸方向に重ね合わされた保持器100のうち、例えば最下方にある1個の保持器100を径方向に押し出すだけでは、1個の保持器100を残りの保持器100から分離することができない。すなわち、軸方向に重ね合わされた保持器100のうち、1個の保持器100を径方向に押し出そうとしても、該1個の保持器100の外側柱片106の軸方向一方側の端部が、軸方向一方側に隣接する保持器100のリム部101に干渉(接触)してしまい、径方向に抜くように取り出すことができない。
このため、図6に示すように、保持器100の柱部102に、定配装置の爪107を引っ掛けることにより、1個の保持器100を残りの保持器100から、一旦、軸方向に分離する必要がある。すなわち、軸方向に重ね合わされた保持器100を、軸方向一方側を上側に向けた状態で定配装置にセットし、爪107を、軸方向に重ね合わされた保持器100のうち、最も下側の保持器100の外側柱片106の軸方向一方側の端面に引っ掛け、最も下側の保持器100を下方に離脱させることにより、残りの保持器100から分離する。
ただし、この場合、軸方向に重ね合わされた保持器100を定配装置にセットする際に、定配装置の爪107と、保持器100の柱部102との円周方向に関する位相を合わせる必要がある。定配装置の爪107と、保持器100の柱部102との円周方向に関する位相がずれると、1個の保持器100を残りの保持器100から分離する際に、保持器100を分離できなかったり、保持器100が落下したりするなどして、組立ラインが停止してしまう可能性がある。
軸方向に重ね合わされた保持器100を、軸方向一方側を下側に向けた状態で定配装置にセットし、かつ、円周方向に関する幅寸法が大きい爪を有する定配装置を使用すれば、定配装置の爪と、保持器100の柱部102との円周方向に関する位相を合わせる必要はなくなる。ただし、玉を、保持器100のポケット103の内側に挿入する作業は、保持器100を、軸方向一方側を上側に向け、かつ、円周方向に隣り合う一対の柱部102の軸方向一方側の端部同士の間隔を弾性的に拡げた状態で、玉を、上側かつ径方向内側からポケット103の内側に押し込むことによって行われる。したがって、軸方向に重ね合わされた保持器100を、軸方向一方側を下側に向けた状態で定配装置にセットした場合、取り出した保持器100の上下を反転させる必要が生じ、その分だけ、アンギュラ玉軸受の製造コストが上昇してしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、玉数を増大しやすく、かつ、軸方向に重ね合わされた状態から1個だけを容易に分離することができる、アンギュラ玉軸受用保持器を提供することを目的とする。
本発明のアンギュラ玉軸受用保持器は、
円環状のリム部と、
凹曲面状の円周方向側面を有し、前記リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長する複数本の柱部と、
円周方向に隣り合う一対の前記柱部と前記リム部とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケットと、
を備える。
特に本発明のアンギュラ玉軸受用保持器においては、前記柱部は、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合う一対の前記ポケット同士を連通する切り欠きを有しており、
前記柱部のうちで前記切り欠きよりも径方向内側に位置する内側柱片の軸方向一方側の端面の少なくとも一部が、前記柱部のうちで前記切り欠きよりも径方向外側に位置する外側柱片の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置している。
本発明のアンギュラ玉軸受用保持器の一態様では、前記内側柱片の軸方向一方側の端面のうちの径方向外側部分が、前記内側柱片の軸方向一方側の端面のうちの径方向内側部分よりも軸方向一方側に位置している。
本発明のアンギュラ玉軸受は、
内周面にアンギュラ型の外輪軌道を有する外輪と、
外周面にアンギュラ型の内輪軌道を有する内輪と、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数個の玉と、
前記玉を転動自在に保持するための保持器と、を備え、
前記保持器が、本発明のアンギュラ玉軸受用保持器により構成されている。
本発明のアンギュラ玉軸受の組立方法は、本発明のアンギュラ玉軸受を組み立てるための方法であって、軸方向に重ね合わされた複数個の前記アンギュラ玉軸受用保持器のうち、最も軸方向他方側に位置するアンギュラ玉軸受用保持器を、径方向に押し出すことにより、残りの前記アンギュラ玉軸受から分離して取り出す工程を備える。
本発明のアンギュラ玉軸受用保持器によれば、玉数を増大しやすく、かつ、軸方向に重ね合わされた状態から1個だけを容易に分離することができる。
図1は、実施の形態の第1例に係る保持器を組み込んだハブユニット軸受を示す断面図である。 図2は、図1のX部拡大図である。 図3は、前記第1例に係る保持器を複数個軸方向に重ね合わせ、定配装置にセットした様子を示す断面図である。 図4は、実施の形態の第2例を示す、図2に相当する図である。 図5は、前記第2例に係る保持器を複数個軸方向に重ね合わせ、定配装置にセットした様子を示す断面図である。 図6は、従来構造の保持器を複数個軸方向に重ね合わせ、定配装置にセットした様子を示す断面図である。
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1~図3を用いて説明する。本例は、本発明のアンギュラ玉軸受用保持器を備えるアンギュラ玉軸受を、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受(複列のアンギュラ玉軸受)に適用した例である。以下、まず、ハブユニット軸受1の全体構造を説明した後、アンギュラ玉軸受用保持器5の詳細について説明し、さらに、ハブユニット軸受1の組立工場において、軸方向に重ね合わされた複数個のアンギュラ玉軸受用保持器5から1個のアンギュラ玉軸受用保持器5を分離する方法について説明する。
<ハブユニット軸受1の全体構造>
ハブユニット軸受1は、駆動輪用かつ第3世代のハブユニット軸受であって、外輪2と、ハブ3と、複数個の玉4と、一対のアンギュラ玉軸受用保持器5とを備える。
外輪2は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。外輪2は、内周面に、複列の外輪軌道6a、6bを有し、かつ、内周面のうち、軸方向内側の外輪軌道6aの軸方向内側に隣接する部分と軸方向外側の外輪軌道6bの軸方向外側に隣接する部分とに、大径側外輪溝肩部37をそれぞれ有する。また、外輪2は、軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ7を有する。静止フランジ7は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する支持孔8を有する。
本例では、支持孔8は、ねじ孔により構成されている。外輪2は、懸架装置のナックルに備えられた通孔を挿通した支持ボルトを、静止フランジ7の支持孔8に軸方向内側から螺合することで、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
なお、軸方向に関して「内」とは、ハブユニット軸受1を自動車に組み付けた状態で車体の中央側となる、図1および図2の右側をいう。反対に、ハブユニット軸受1を自動車に組み付けた状態で車体の外側となる、図1および図2の外側を、軸方向に関して「外」という。
ハブ3は、外周面に、複列の内輪軌道9a、9bを有し、外輪2の径方向内側に外輪2と同軸に配置される。ハブ3は、外輪2の軸方向外側の端部よりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ10を有し、かつ、軸方向外側の端部に、円筒状のパイロット部11を有する。
回転フランジ10は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔12を有する。取付孔12のそれぞれには、ディスクやドラムなどの制動用回転体、および、車輪を構成するホイールを、回転フランジ10に対し結合固定するためのスタッド13が圧入(セレーション嵌合)されている。すなわち、本例では、取付孔12は、圧入孔により構成されている。
制動用回転体およびホイールは、それぞれの中心部に備えられた中心孔にパイロット部11を挿通し、かつ、それぞれの径方向中間部の円周方向複数箇所に備えられた通孔に、スタッド13を挿通した状態で、スタッド13の先端部にハブナットを螺合することにより、回転フランジ10に結合固定される。
なお、回転フランジの取付孔を、ねじ孔により構成することもできる。この場合には、制動用回転体に備えられた通孔と、ホイールに備えられた通孔とを挿通したハブボルトを、取付孔に螺合することにより、制動用回転体および車輪を回転フランジに結合固定する。
本例のハブ3は、内輪14とハブ輪15とを組み合わせてなる。
内輪14は、軸受鋼などの硬質金属により構成されている。内輪14は、外周面に、複列の内輪軌道9a、9bのうちの軸方向内側の内輪軌道9aを有する。
ハブ輪15は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。ハブ輪15は、外周面の軸方向中間部に、複列の内輪軌道9a、9bのうちの軸方向外側の内輪軌道9bを有する。ハブ輪15は、軸方向外側の内輪軌道9bよりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ10を有し、かつ、軸方向外側の端部に、円筒状のパイロット部11を有する。
また、ハブ輪15は、軸方向外側の内輪軌道9bよりも軸方向内側に位置する部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さく、内輪14が外嵌される小径筒部16を有する。ハブ輪15は、小径筒部16の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、内輪14の軸方向内側の端面を押え付けるかしめ部17をさらに有する。すなわち、本例のハブ3は、ハブ輪15の小径筒部16に内輪14を外嵌した状態で、小径筒部16の軸方向外側の端部に存在する段差面18と、かしめ部17との間で内輪14を軸方向両側から挟持して、内輪14とハブ輪15とを結合固定することにより構成される。ただし、内輪とハブ輪とは、ナットや圧入により結合固定することもできる。
玉4のそれぞれは、複列の外輪軌道6a、6bと複列の内輪軌道9a、9bとの間に、それぞれ複数個ずつ、アンギュラ玉軸受用保持器5により保持された状態で転動自在に配置されている。これにより、ハブ3は、外輪2の径方向内側に回転自在に支持される。
なお、本例のハブユニット軸受1は、軸方向内側列の玉4のピッチ円直径と、軸方向外側列の玉4のピッチ円直径とが等しい、等径PCD型の構造を有する。ただし、本発明は、軸方向内側列の玉のピッチ円直径が、軸方向外側列の玉のピッチ円直径よりも小さい、あるいは、大きい、異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
本例のハブユニット軸受1は、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、かつ、玉4が配置された、円筒状の転動体設置空間19の軸方向両側の開口を塞ぐシール装置20a、20bをさらに備える。すなわち、シール装置20a、20bにより、転動体設置空間19内に封入したグリースの漏洩を防止し、かつ、転動体設置空間19内に、泥水などの異物が侵入することを防止している。
シール装置20a、20bのうち、軸方向内側のシール装置20aは、ハブ3の軸方向内側の端部に外嵌固定された断面略L字形のスリンガ21と、それぞれの先端部を、スリンガ21の表面に全周にわたって摺接させた複数本の接触式のシールリップ22を有するシールリング23とを備える。すなわち、軸方向内側のシール装置20aは、組み合わせシールリングにより構成されている。
シール装置20a、20bのうち、軸方向外側のシール装置20bは、外輪2の軸方向外側の端部に内嵌固定された断面略L字形の芯金24と、それぞれの先端部を、ハブ3の軸方向中間部外周面または回転フランジ10の軸方向内側面に全周にわたって摺接させた複数本の接触式のシールリップ25を有するシール材26とを備える。すなわち、軸方向外側のシール装置20bは、シールリングにより構成されている。
<アンギュラ玉軸受用保持器5の構造>
次に、アンギュラ玉軸受用保持器5について、詳しく説明する。
なお、アンギュラ玉軸受用保持器5に関して、軸方向、径方向および円周方向とは、特に断らない限り、アンギュラ玉軸受用保持器5を構成するリム部27の軸方向、径方向および円周方向をいう。また、軸方向に関して、ポケット29の開口部側を一方側といい、リム部27側を他方側という。
また、本例のハブユニット軸受1に組み込まれる一対のアンギュラ玉軸受用保持器5は、軸方向に関して互いに逆向きに組み付けられている。換言すれば、図1中で右側に位置する軸方向内側のアンギュラ玉軸受用保持器5は、図1中で左側に位置する軸方向外側のアンギュラ玉軸受用保持器5と同一形状のアンギュラ玉軸受用保持器5を軸方向に関して反転させて使用している。すなわち、軸方向内側のアンギュラ玉軸受用保持器5に関しては、軸方向内側が軸方向一方側に相当し、かつ、軸方向外側が軸方向他方側に相当する。これに対し、軸方向外側のアンギュラ玉軸受用保持器5に関しては、軸方向外側が軸方向一方側に相当し、かつ、軸方向内側が軸方向他方側に相当する。
アンギュラ玉軸受用保持器5は、合成樹脂を射出成形(アキシアルドロー成形)することにより全体が一体に造られた、いわゆる冠型のアンギュラ玉軸受用保持器であって、全体として略円すい台形状を有する。
アンギュラ玉軸受用保持器5を構成する合成樹脂としては、ポリアミド66(PA66)の他、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、フェノール樹脂(PF)などの各種の合成樹脂を採用することができる。これらの合成樹脂には、必要に応じて、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などの各種の強化繊維を混入することができる。
アンギュラ玉軸受用保持器5は、リム部27と、複数本の柱部28と、複数個のポケット29とを備える。
リム部27は、円環状に構成されている。リム部27は、円筒面状の内周面を有し、かつ、ハブ3の外周面のうちの複列の内輪軌道9a、9b同士の間部分の外径よりも大きい内径を有する。また、リム部27は、円筒面状の外周面を有し、かつ、外輪2の内周面のうちの複列の外輪軌道6a、6b同士の間部分の内径よりも小さい外径を有する。リム部27の軸方向一方側の側面の円周方向等間隔複数箇所には、柱部28の軸方向他方側の端部が接続されており、かつ、リム部27の軸方向一方側の側面のうち、柱部28から円周方向に外れた部分のそれぞれは、凹曲面状に構成されている。リム部27の軸方向他方側の側面は、リム部27の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面により構成されている。
複数本の柱部28のそれぞれは、凹曲面状の円周方向側面を有し、前記リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側に伸長する。柱部28の径方向内側面は、リム部27の内周面から軸方向一方側に伸長しており、リム部27の内周面と同一仮想円筒面上に存在している。柱部28の径方向外側面は、軸方向一方側に向かうほど径方向外側に伸長した略円弧形の断面形状を有する軸方向他方側部分と、リム部27の中心軸を中心とする円筒面状の軸方向一方側部分とからなる。このため、柱部28は、軸方向他方側部分において、軸方向一方側に向かうほど径方向幅が大きくなっている。
複数個のポケット29のそれぞれは、玉4を転動自在に保持する部分であって、円周方向に隣り合う一対の柱部28とリム部27とにより三方が囲まれた部分に備えられている(画成されている)。ポケット29の内面は、円周方向に対向するそれぞれが凹曲面状の一対の柱部28の円周方向側面と、リム部27の軸方向一方側の側面のうちで柱部28から円周方向に外れた部分に備えられた凹曲面状の部分とにより、部分球状凹面状または部分円筒凹面状に構成されており、玉4の転動面の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する。ポケット29の中心Cは、ポケット29内に保持される玉4の中心Oと実質的に一致している。
柱部28の円周方向側面は、径方向中間部(中央部)から径方向両側に向かうほど、ポケット29の内側に張り出すように湾曲している。これにより、円周方向に隣り合う一対の柱部28の円周方向側面同士の間隔(ポケット29の開口幅)は、柱部28の径方向外側の端部および径方向内側の端部において、玉4の直径よりも小さくなっている。このため、玉4が、ポケット29の内側から径方向外側および径方向内側に抜け出ることが防止される。
柱部28の円周方向側面は、軸方向中間部から軸方向両側に向かうほど、ポケット29の内側に張り出すように湾曲している。これにより、円周方向に隣り合う一対の柱部28の円周方向側面同士の間隔は、柱部28の軸方向一方側の端部および軸方向他方側の端部において、玉4の直径よりも小さくなっている。このため、玉4が、ポケット29の内側から軸方向一方側に抜け出ることが防止される。
本例のアンギュラ玉軸受用保持器5においては、柱部28は、玉4のピッチ円が通過する部分を含む軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合うポケット29同士を連通する切り欠き30を有する。換言すれば、切り欠き30は、柱部28の軸方向一方側の端面および円周方向両側面に開口している。切り欠き30は、柱部28の軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲を、円周方向から見て略U字形に切り欠いている。すなわち、切り欠き30は、少なくとも軸方向他方側部分において、軸方向一方側に向かうほど径方向に関する開口幅が大きくなっている。
さらに、柱部28は、軸方向一方側部分のうちで切り欠き30を挟んだ径方向両側部分に、内側柱片31と外側柱片32とを有する。すなわち、柱部28は、軸方向一方側部分のうちで切り欠き30よりも径方向内側に位置する部分に内側柱片31を有し、かつ、軸方向一方側部分のうちで切り欠き30よりも径方向外側に位置する部分に外側柱片32を有する。
そして、内側柱片31の軸方向一方側の端面の少なくとも一部が、外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置している。本例では、内側柱片31の軸方向一方側の端面は、全体が、アンギュラ玉軸受用保持器5の中心軸に直交する同一の仮想平面上に存在し、かつ、外側柱片32の軸方向一方側の端面は、全体が、アンギュラ玉軸受用保持器5の中心軸に直交する同一の仮想平面上に存在している。したがって、本例では、内側柱片31の軸方向一方側の端面全体が、外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置している。
なお、本例では、外側柱片32の軸方向一方側の端部の内径が、リム部27の外径よりも大きくなっている。
図3に示す上方2つのアンギュラ玉軸受用保持器5のように、アンギュラ玉軸受用保持器5は、内側柱片31の軸方向一方側の端面を、別のアンギュラ玉軸受用保持器5のリム部27の軸方向他方側の端面に突き当てることにより、所定の個数を軸方向に重ね合わされる。この状態で包装(いわゆる棒巻き包装)され、アンギュラ玉軸受用保持器5の製造工場から出荷されて、ハブユニット軸受1の組立工場に輸送される。
<棒巻き包装されたアンギュラ玉軸受用保持器5の分離方法>
ハブユニット軸受1の組立工場では、棒巻き包装された複数個のアンギュラ玉軸受用保持器5は、包装を取り除かれた後、軸方向に重ね合わされた状態のまま、定配装置33にセットされ、該定配装置33から1個ずつ分離して取り出される。
定配装置33は、載置面34と、自身の中心軸を上下方向に向けた状態で、載置面34の上方に備えられたガイド筒35と、載置面34に沿って水平方向に変位する押し出し部36とを有する。
棒巻き包装された複数個のアンギュラ玉軸受用保持器5は包装を取り除かれた後、軸方向に重ね合わされた状態のまま、図3に示すように、軸方向一方側を上側に向けた状態で、ガイド筒35の内側に挿入され、かつ、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5の軸方向他側の端面が載置面34に載置される。この状態で、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5を、押し出し部36により水平方向、すなわちアンギュラ玉軸受用保持器5の径方向に押し出すことによって、上側に積み重ねられた残りのアンギュラ玉軸受用保持器5から分離して取り出す。なお、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5が取り出され、押し出し部36が後退すると、上側に積み重ねられた残りのアンギュラ玉軸受用保持器5が重力の作用によって下方に変位する。要するに、いわゆるだるま落としの要領で、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5を、径方向に抜くようにして取り出すと、その上側に積み重ねられたアンギュラ玉軸受用保持器5が落下する。
本例のアンギュラ玉軸受用保持器5は、柱部28のうち、内側柱片31の軸方向一方側の端面が、外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置している。このため、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5を径方向に押し出した場合に、外側柱片32の軸方向一方側の端部が、上側に隣接するアンギュラ玉軸受用保持器5のリム部27に干渉(衝突)することはない。したがって、最も下側のアンギュラ玉軸受用保持器5を径方向に押し出すだけで、該アンギュラ玉軸受用保持器5を径方向に抜くように取り出すことができる。要するに、本例によれば、従来の保持器100を、爪107を有する定配装置によって、残りの保持器100から分離する場合のように、爪107と柱部102との円周方向に関する位相を合わせたり上下を反転させたりする必要がなく、分離作業を簡単に行うことができる。
分離された1個のアンギュラ玉軸受用保持器5は、ハブユニット軸受1の組立ラインにおいて、ポケット29のそれぞれに、玉4が挿入される。具体的には、定配装置33により分離され、かつ、軸方向一方側が上側を向いたアンギュラ玉軸受用保持器5の円周方向に隣り合う一対の柱部28の軸方向一方側の端部同士の間隔を弾性的に広げ、玉4を、上側かつ径方向内側から押し込むことで、ポケット29に玉4を挿入する。
すなわち、本例によれば、1個のアンギュラ玉軸受用保持器5を分離した後、玉4をポケット29の内側に挿入する際に、アンギュラ玉軸受用保持器5の上下を反転させることなく、そのまま、玉4の挿入作業を行うことができる。このため、ハブユニット軸受1の製造コストが徒に増大することはない。
ポケット29のそれぞれに玉4が挿入された一対のアンギュラ玉軸受用保持器5は、外輪2の複列の外輪軌道6a、6bの内側に配置される。このために、まず、アンギュラ玉軸受用保持器5のポケット29のそれぞれに保持された玉4を径方向内側に寄せて、アンギュラ玉軸受用保持器5の中心軸を中心とする玉4の外接円直径を、大径側外輪溝肩部37の内径よりも小さくする。この状態で、アンギュラ玉軸受用保持器5および該アンギュラ玉軸受用保持器5に保持された玉4を、大径側外輪溝肩部37の径方向内側を通過させる。その後、玉4を径方向内側に押圧する力を解放して自由状態とすることで、アンギュラ玉軸受用保持器5の中心軸を中心とする玉4の外接円直径を、大径側外輪溝肩部37の内径よりも大きくする。これにより、外輪2に対し、アンギュラ玉軸受用保持器5および該アンギュラ玉軸受用保持器5に保持された玉4を、不用意に分離しない状態で組み付ける。
次いで、互いに組み合わされた外輪2と一対のアンギュラ玉軸受用保持器5および複数個の玉4との径方向内側に、ハブ輪15を挿通し、さらに、ハブ輪15の小径筒部16に内輪14を外嵌する。そして、ハブ輪15の軸方向内側の端部を径方向外側に向けて塑性変形させることにより、かしめ部17を形成し、内輪14とハブ輪15を結合固定してハブ3を構成する。以上のようにして、ハブユニット軸受1を組み立てる。なお、ハブユニット軸受1を組み立てる手順は、矛盾を生じない限り、適宜順番を入れ替えたり同時に実施したりすることができる。
本発明を実施する場合に、切り欠きを、すべてのポケットのそれぞれと円周方向に整合する位置に形成することもできるし、切り欠きを、ポケットに対して間欠的(1つおきのポケットと整合する位置または複数おきのポケットと整合する位置)に形成することもできる。
本発明のアンギュラ玉軸受は、駆動輪用のハブユニット軸受に限らず、従動輪用のハブユニット軸受に適用することもできる。また、本発明のアンギュラ玉軸受は、第3世代のハブユニット軸受に限らず、例えば、第1世代のハブユニット軸受、第2世代のハブユニット軸受などの、他の世代のハブユニット軸受に適用することもできる。さらに、本発明のアンギュラ玉軸受は、ハブユニット軸受に限らず、各種機械装置に組み込まれる単列または複列のアンギュラ玉軸受に適用することができる。
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図4および図5を用いて説明する。本例のアンギュラ玉軸受用保持器5aにおいては、内側柱片31aの軸方向一方側の端面のうちの径方向外側部分が、径方向内側部分よりも軸方向一方側に位置している。換言すれば、内側柱片31aの軸方向一方側の端面のうちの径方向内側部分を、径方向外側部分よりも軸方向他方側にオフセットさせている。
具体的には、内側柱片31aは、軸方向一方側の端面のうちの径方向外側部分に外側端面38を有し、かつ、軸方向一方側の端面のうちの径方向内側部分に、外側端面38よりも軸方向他方側に位置する内側端面39を有する。さらに、内側柱片31aは、外側端面38の径方向内側の端部と内側端面39の径方向外側の端部とを接続する接続面部40を有する。
なお、本例では、外側端面38は、アンギュラ玉軸受用保持器5aの中心軸に直交する平坦面により構成されており、かつ、内側端面39は、アンギュラ玉軸受用保持器5aの中心軸に直交する平坦面により構成されている。また、接続面部40は、軸方向一方側に向かうほど内径が大きくなる方向に傾斜した円すい凹面により構成されている。ただし、接続面部40を、径方向内側を向いた円筒面により構成することもできる。
本例では、内側柱片31aの軸方向一方側の端面のうち、径方向外側部分に備えられた外側端面38を、外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置させている。なお、内側柱片31aの軸方向一方側の端面のうち、径方向内側部分に備えられた内側端面39は、外側柱片32の軸方向一方側の端面よりも軸方向他方側に位置している。
また、内側柱片31aの軸方向一方側の端面のうちの径方向内側部分に備えられた内側端面39を、径方向外側部分に備えられた外側端面38よりも軸方向他方側に位置させている。これにより、内側柱片31aの軸方向一方側の端部の径方向内側部分が、内輪軌道9a(9b)に干渉することを防止することができ、その分、外側端面38の軸方向位置を軸方向一方側にずらすことができる。換言すれば、内側柱片31aの径方向外側部分の軸方向長さを長くすることができる。そして、外側端面38の軸方向位置を軸方向一方側にずらすことができる分、外側柱片32の軸方向一方側の端面の軸方向位置を軸方向一方側にずらすことができる(外側柱片32の軸方向長さを長くすることができる)。この結果、ポケット29aの内面を構成する柱部28aの円周方向両側面の面積を大きくすることができて、ポケット29aによる玉4の保持力を向上することができる。これにより、アンギュラ玉軸受用保持器5aに玉4を組み込んだ状態で運搬したり、玉4を保持したアンギュラ玉軸受用保持器5aを外輪2に組み付けたりする際に、玉4のポケット29aからの脱落を防止することができる。なお、内側柱片31aの軸方向一方側の端面の径方向中間部から径方向内側部分にかけての範囲を、内側端面39および接続面部40に代えて、軸方向一方側に向かうほど内径が大きくなる方向に傾斜した傾斜面により構成することもできる。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4 玉
5、5a アンギュラ玉軸受用保持器
6a、6b 外輪軌道
7 静止フランジ
8 支持孔
9a、9b 内輪軌道
10 回転フランジ
11 パイロット部
12 取付孔
13 スタッド
14 内輪
15 ハブ輪
16 小径筒部
17 かしめ部
18 段差面
19 転動体設置空間
20a、20b シール装置
21 スリンガ
22 シールリップ
23 シールリング
24 芯金
25 シールリップ
26 シール材
27 リム部
28、28a 柱部
29、29a ポケット
30 切り欠き
31、31a 内側柱片
32 外側柱片
33 定配装置
34 載置面
35 ガイド筒
36 押し出し部
37 大径側外輪溝肩部
38 外側端面
39 内側端面
40 接続面部
100 保持器
101 リム部
102 柱部
103 ポケット
104 切り欠き
105 内側柱片
106 外側柱片
107 爪

Claims (4)

  1. 円環状のリム部と、
    凹曲面状の円周方向側面を有し、前記リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長する複数本の柱部と、
    円周方向に隣り合う一対の前記柱部と前記リム部とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケットと、
    を備え、
    前記柱部は、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、円周方向に隣り合う一対の前記ポケット同士を連通する切り欠きを有しており、
    前記柱部のうちで前記切り欠きよりも径方向内側に位置する内側柱片の軸方向一方側の端面の少なくとも一部が、前記柱部のうちで前記切り欠きよりも径方向外側に位置する外側柱片の軸方向一方側の端面よりも軸方向一方側に位置している、
    アンギュラ玉軸受用保持器。
  2. 前記内側柱片の軸方向一方側の端面のうちの径方向外側部分が、前記内側柱片の軸方向一方側の端面のうちの径方向内側部分よりも軸方向一方側に位置している、
    請求項1に記載のアンギュラ玉軸受用保持器。
  3. 内周面にアンギュラ型の外輪軌道を有する外輪と、
    外周面にアンギュラ型の内輪軌道を有する内輪と、
    前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数個の玉と、
    前記玉を転動自在に保持するための保持器と、を備え、
    前記保持器が、請求項1または2に記載したアンギュラ玉軸受用保持器である、
    アンギュラ玉軸受。
  4. 請求項3に記載のアンギュラ玉軸受の組立方法であって、
    軸方向に重ね合わされた複数個の前記アンギュラ玉軸受用保持器のうち、最も軸方向他方側に位置するアンギュラ玉軸受用保持器を、径方向に押し出すことにより、残りの前記アンギュラ玉軸受から分離して取り出す工程を備える、
    アンギュラ玉軸受の組立方法。
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