JP2022139042A - ホスファチジルグリセロールの定量方法および定量用キット - Google Patents

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真也 森田
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Abstract

【課題】本発明は、PGに特異的な定量方法および定量用キットを提供することを課題とする。【解決手段】本発明者は、PG特異的なホスホリパーゼCを用いてPGを特異的に定量することを着想した。1つの局面において本発明は、試料中のPGを定量する方法を提供する。本発明のPG定量方法の利点は、従来の定量方法(薄層クロマトグラフィー、質量分析など)と比較して簡便で、コストも安く、かつ血液などの種々の成分が混合した生物試料を利用できる点にある。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物等1)日本農芸化学会東北支部第115回大会要旨集オンライン公開(公開日:令和2年11月7日) (刊行物等2)日本農芸化学会東北支部第115回大会発表(公開日:令和2年11月7日) (刊行物等3)2020年度第2回脂質駆動学術産業創生研究部会講演会要旨集オンライン公開(公開日:令和3年1月20日) (刊行物等4)2020年度第2回脂質駆動学術産業創生研究部会講演会発表(公開日:令和3年1月27日) (刊行物等5)日本農芸化学会2021年度大会要旨集公開(公開日:令和3年3月5日)
本発明は、ホスファチジルグリセロールの定量方法および定量用キットに関する。
ホスファチジルグリセロール(PG)は肺胞を構成する肺サーフェクタントの重要な成分であり、肺サーフェクタントの欠如は、特に新生児において呼吸窮迫症候群を引き起こすことが知られている。また近年、ミトコンドリアの機能低下が老化や疾患に関与し、ミトコンドリア内膜に局在するPGなどのリン脂質がその機能に深く関係することが報告されている。そのため、簡便なPGの定量方法が開発が必要とされている。
今日まで、PGの定量は、主に薄層クロマトグラフィ―/リン定量法により行われてきた。この定量法は検出感度および検出精度が低く、時間および熟練の技術を必要とした。高速液体クロマトグラフィーを用いた定量ではアシル基の種類が定量結果に影響するため、定量性は低かった。質量分析ではアシル基の種類を区別してPGが検出されるため、PGの総量としての測定は困難であり、種々のアシル基を含有し得る細胞内や各種サンプル中のPGの測定において不利となった。
ここで、リン脂質を定量する簡便な方法としては、リン脂質を基質とする酵素を用いた酵素法も用いられてきた。しかしながら、同じくリン脂質であるカルジオリピン(CL)についての酵素に依る定量方法は知られているものの(国際公開第2015/151801号)、PGを特異的に定量する方法についての報告は本発明者が知る限りなかった。
国際公開第2015/151801号
本発明は、PGに特異的な定量方法および定量用キットを提供することを課題とする。
本発明者は、PG特異的なホスホリパーゼCを用いてPGを特異的に定量することを着想した。
代表的な実施形態としては:
(1)(a)試料に、PG特異的なホスホリパーゼCを反応させ、PGをグリセロールリン酸とジアシルグリセロールに分解する工程
(b)生じたグリセロールリン酸にグリセロールリン酸オキシダーゼ(GPO)を反応させ、過酸化水素を発生させる工程
(2)生じた過酸化水素とペルオキシダー(POD)によりに色素を酸化し、色素の蛍光、吸光、または発光の強度を測定することでPGを定量する工程
を含む方法が挙げられる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の工程を有する、試料中のホスファチジルグリセロールの定量方法:
(1)(a)試料に、ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを反応させる工程、および
(2)反応により生じた化合物の量を測定する工程。
(項目2)
工程(1)において、(b1)グリセロールリン酸オキシダーゼを反応させる工程、(b2)グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼを反応させる工程、または(b3)アルカリフォスファターゼを反応させる工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(2)における測定が、前記化合物に起因する蛍光、吸光、または発光の強度を測定することによる、項目1~2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
生体試料中のホスファチジルグリセロールの量を被験体における疾患の状態の指標として用いる方法であって、
(a)ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを用いて前記被験体由来の生体試料におけるホスファチジルグリセロールを定量する工程と、
(b)前記ホスファチジルグリセロールの量を参照値と比較する工程
とを含み、前記参照値と比較した前記ホスファチジルグリセロールの量の差異が、前記疾患の状態の指標となる方法。
(項目5)
前記疾患が自己免疫性疾患、および呼吸窮迫症候群からなる群から選択される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記生体試料が前記被験体の血液、尿、羊水、細胞、または細胞破砕物、あるいは各種生物由来サンプルである、項目4または5に記載の方法。
(項目7)
前記ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCが、ホスファチジルグリセロールに対する基質特異性を有し、カルジオリピンと実質的に反応しない、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
定量されるホスファチジルグリセロールが、種々のアシル基を有するホスファチジルグリセロールの総量である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを含む、ホスファチジルグリセロールの定量用キット。
本発明の代表的な実施形態についての模式図。
図2は、培地の種類とPG-PLCの活性の関係を示す。ISP2培地を用いて培養した場合のPG-PLC活性を100%として正規化した。
図3は、精製PG-PLCのSDS-PAGE(分離ゲル濃度12%)分析結果を示す。レーンM:マーカー、レーン1:精製PG-PLC(0.03mg-protein/ml、0.3μg-protein)。
図4-1は、PLC活性に対するpHの影響を示す。POPGを基質として用い、酵素活性は0.16Mの各種バッファー中、37℃で測定した。用いたバッファーはAc-Na(〇)、BisTris-HCl(△)、MES-NaOH(●)、またはTris-HCl(□)である。
図4-2は、PLC活性に対する温度の影響を示す。POPGを基質として用い、酵素活性は各温度で0.16M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。
図5-1は、PLCのpH安定性を示す。精製酵素サンプルを50mMの各バッファー中、4℃で4時間インキュベートした。残存活性を、POPGを基質として用い、55℃で0.16M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。インキュベーションに用いたバッファーはAc-Na(□)、MES-NaOH(△)、またはTris-HCl(〇)である。
図5-2は、PLCの温度安定性を示す。精製酵素サンプルを各温度で50mM MES-NaOH(pH6.0)中で30分間インキュベートした。残存活性を、POPGを基質として用い、55℃で0.16M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。
図6-1は、POPGを基質として用いた際のPG-PLC活性に対する金属イオンの影響を示す。酵素活性は55℃、0.14M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。
図6-2は、POPGを基質として用いた際のPG-PLC活性に対する界面活性剤の影響を示す。酵素活性は55℃、0.14M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。
図7は、精製酵素サンプルの基質特異性を示す。酵素(PLC)活性は55℃、0.16M MES-NaOH(pH6.0)中で測定した。
図8は、LC-MS解析により得られたペプチドの配列、およびこれらのペプチド配列と合致するデータベースから得られたタンパク質配列を示す。
図9は、DNAシークエンシングにより得られたPG-PLC遺伝子のタンパク質配列を示す。
図10-1は、20℃培養の培養上清を用いた酵素反応(基質POPG、反応温度45℃、緩衝液:0.16M MES-NaOH(pH6.0)。横軸は酵素反応時間、縦軸はG3P生成量を示す。
図10-2は、30℃培養の粗タンパク質液(CFE)を用いた酵素反応(基質POPG、反応温度45℃、緩衝液:0.16M MES-NaOH(pH6.0)。横軸は酵素反応時間、縦軸はG3P生成量を示す。
SwissModelを利用したPG-PLCの予測立体構造に基づく、基質結合に関与すると推定されたアミノ酸残基を示す。当該アミノ酸残基を枠で囲っている。
[用語の定義]
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本明細書において「約」は、特に別の定義が示されない限り、示された値±10%を指す。
本明細書において「リン脂質」は、リン酸エステルおよびホスホン酸エステルを有する脂質の総称である。脂質二重膜から成る細胞膜の主成分であり、グリセロールを骨格とするグリセロリン脂質はその1種である。
グリセロリン脂質:
Figure 2022139042000001

グリセロリン脂質では、グリセロールのsn-1位とsn-2位とに脂肪酸が、sn-3位にリン酸が結合している。このリン酸に結合するリン脂質親水部分(上記の構造式中のX)により、グリセロリン脂質はさらに分類される。最も単純にリン脂質親水部分が水素であればホスファチジン酸(PA)、コリンであればホスファチジルコリン(PC)、エタノールアミンであればホスファチジルエタノールアミン(PE)、セリンであればホスファチジルセリン(PS)、イノシトールであればホスファチジルイノシトール(PI)、グリセロールであればホスファチジルグリセロール(PG)と称される。したがって、本明細書において「ホスファチジルグリセロール(PG)」とは、グリセロールのsn-1位とsn-2位とに脂肪酸がエステル結合し、sn-3位にリン酸がエステル結合し、さらにリン酸にグリセロールが結合したリン脂質を指す。
ホスファチジルグリセロール:
Figure 2022139042000002

また、特殊な構造を有するリン脂質として「カルジオリピン」(別名ジホスファチジルグリセロール;CL)が知られている。これは2つのPAがグリセロールで連結しており、四本のアシル鎖に由来する疎水性と2つのリン酸の負電荷を帯びた極性を示す構造を有するリン脂質であり、PGのpKaが約3であることからCLも同様にpH3以上では50%以上が負電荷を帯びていると考えられている。
本発明のPGに含まれる2本のアシル基は、同一のアシル基であってもよく、異なるアシル基であってもよい。また、飽和していても不飽和であってもよい。1つの実施形態において、本発明のPGに含まれるアシル基は、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸などの飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ゴンド酸、エルカ酸、またはネルボン酸などの1価不飽和脂肪酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、またはドコサペンタエン酸などのn-6(ω6)系列の多価不飽和脂肪酸、あるいはα-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸などのn-3(ω3)系列の多価不飽和脂肪酸に由来してもよいが、これらに限定されない(木原章雄,「脂肪酸の多彩な代謝,生理機能と関連疾患」,生化学,82(7),591-605,(2010))。一般にホスホリパーゼは、リン脂質に含まれるアシル基が上記のいずれであっても加水分解能を有し得る。
本明細書において「ホスホリパーゼ」は、グリセロリン脂質を加水分解する酵素を指す。ホスホリパーゼはグリセロリン脂質を加水分解する部位により分類され、ホスホリパーゼA1はグリセロールのsn-1位のエステル結合を分解し、ホスホリパーゼA2はグリセロールのsn-2位のエステル結合を分解し、ホスホリパーゼBはグリセリンのsn-1位およびsn-2位の両方のエステル結合を分解し、いずれも脂肪酸を遊離する。ホスホリパーゼCは、グリセロールとXを結ぶホスホジエステル結合のグリセロール骨格側のエステル結合を分解し、ホスホリパーゼDはホスホジエステル結合のグリセロール骨格とは反対側のエステル結合を分解する。したがって、本明細書において「ホスホリパーゼC(PLC)」は、グリセロリン脂質を加水分解するホスホリパーゼのなかでも、グリセロール骨格に結合したホスホジエステル結合のグリセロール骨格側のエステル結合を分解し、リン酸が結合したリン脂質親水部分(リン酸エステル化合物)、およびジアシルグリセロールを産出する酵素を指す。
PLCによる加水分解様式:
Figure 2022139042000003
本明細書において「グリセロールリン酸」は、グリセロールの3つのヒドロキシ基のいずれかがリン酸基に置換された分子を指し、代表的なものとして「sn-グリセロール-1-リン酸(G1P)」および「sn-グリセロール-3-リン酸(G3P)」の鏡像異性体が挙げられる。
sn-グリセロール-1-リン酸:
Figure 2022139042000004

sn-グリセロール-3-リン酸:
Figure 2022139042000005
本明細書において「ジアシルグリセロール」(DG)は、ジグリセリドとも称される、グリセロールの脂肪酸エステルのうちアシル基2個が結合しているものを指す。中でも、以下の化学式で表される1,2-ジアシルグリセロールはリン脂質またはトリグリセリドの生合成の中間体として重要であることが知られている。
ジアシルグリセロール:
Figure 2022139042000006

(式中、RおよびRは、それぞれ任意のアシル基である)
上記の用語の定義で記載したように、PLCは、グリセロール骨格に結合したホスホジエステル結合のグリセロール骨格側のエステル結合を分解し、リン酸が結合したリン脂質親水部分、およびDGを産出する。PGをPLCで加水分解すると、以下の反応式のように、DGとグリセロールリン酸とが生じる。
Figure 2022139042000007

(式中、RおよびRは、それぞれ任意のアシル基である)
一般に酵素は、化学反応を触媒し、その反応の種類に対する特異性と基質に対する特異性とを有する。本明細書において酵素が「基質特異的」であるとは、その酵素が特定の化学物質に対して選択的に化学反応を触媒すること、つまり酵素が特定の化学物質以外の化学物質に対して化学反応を触媒しないか、触媒の程度が十分に弱いことを意味する。本明細書において、ある酵素またはポリペプチドが「ホスファチジルグリセロールに対して基質特異的」、「ホスファチジルグリセロール特異的」または「PG特異的」であるとは、例えば、その酵素またはポリペプチドのpH6.0、55℃、5分間の条件におけるPGの加水分解能を100%とした場合に、PG以外の基質に対する加水分解能が高くとも約30%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、または約0%であることにより定められてよい。ここで、PG以外の基質はリン脂質であり、例えば、PA、PE、PC、CL、PS、およびPIからなる群から選択されてよく、好ましくはCLである。さらに好ましい実施形態において、他の基質は、PA、PE、PC、CL、PS、およびPIを含んでよい。
本明細書においてアミノ酸配列の「同一性」とは、複数のアミノ酸配列を比較したときに、アミノ酸が同一である残基の割合を指す。なお、アミノ酸配列の相同性においては、複数のアミノ酸配列を比較したときに、アミノ酸が同一であるか、またはアミノ酸が同一ではないが同じ性質を持つアミノ酸である場合には相同として扱い、相同な残基の割合を指す。
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件においてハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、ゲノムあるいはその消化物、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0M NaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC(saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ストリンジェントな条件は、通常、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より約5℃~約30℃、好ましくは約10℃~約25℃低い温度であって、特異的なハイブリッドが形成される条件であり、例えばJ.Sambrookら,Molecular Cloning,ALaboratory Mannual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている条件が挙げられる。また、例えば、90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件であってもよい。具体的には、例えば、完全ハイブリッドのTm~(Tm-30)℃、好ましくはTm~(Tm-20)℃の温度範囲で、かつ1×SSC(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、好ましくは0.1×SSCに相当する塩濃度でハイブリダイズを行う条件が挙げられる。
[実施形態]
PGの定量方法
1つの局面において本発明は、試料中のPGを定量する方法を提供する。本発明のPG定量方法の利点は、従来の定量方法(薄層クロマトグラフィー、質量分析など)と比較して簡便で、コストも安く、かつ血液などの種々の成分が混合した生物試料を利用できる点にある。
1つの実施形態において、本発明の方法は、(1)(a)試料に、PG特異的なPLCを反応させる工程を包含する。PG特異的なPLCは、PG以外のリン脂質(CLなど)を基質としないため、PG量に比例してグリセロールリン酸が生じる。PG特異的なPLCとしては、その基質特異性と酵素活性があればいかなるものでもよい。1つの実施形態において、PG特異的なPLCは合成ポリペプチドであってもよく、動植物・微生物に由来してもよい。好ましくは微生物に由来するPLCであり、特に好ましくは、放線菌由来のPLCが好ましい。生物由来のPLCに対してアミノ酸の欠失・置換・付加を施した人為的なPLCであってもよい。
1つの実施形態において、本発明の方法で用いるPG特異的なPLCは、そのポリペプチドをコードするベクターを形質導入された宿主生物(大腸菌など)により発現され、その後、回収・精製されたタンパク質であってよい。タグなどを含む特定のポリペプチドを発現するベクターの作成方法、ベクターの導入法(電気穿孔法、ウイルスによる遺伝子導入法、リポフェクション法など)、発現されたタンパク質の回収・精製方法(アフィニティークロマトグラフィー法など)は本分野で公知である。そのポリペプチドを本来有していた特定の菌ではなく、大腸菌のような扱いの確立された系を用いて大量に発現・精製されたポリペプチドを利用することで、コスト削減だけでなく、ポリペプチドの品質が一定になり定量が安定したものになる。また、無細胞タンパク質合成を用いて同様に生産しても良い.
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、PG特異的なPLCとして放線菌由来の配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチドにコードされた、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドがある(特願2020-149237)。このポリペプチドは、PGの加水分解能を100%とした時にPE、PC、CL、PS、およびPIに対する加水分解能がいずれも5%以下という、PGに対する高い基質特異性を有する。
したがって、1つの実施形態において、本発明の方法で用いるPG特異的なPLCは、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列、または(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換または付与されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよく、アミノ酸を欠失、置換または付与する方法は当業者に公知である。1つの実施形態において、PG特異的なPLCが含み得る欠失、置換または付与されたアミノ酸の数は、機能が大きく変化しなければ(実質的に同等の機能であれば)、つまり基質特異性が、例えばpH6.0、55℃、5分間の条件におけるPGの加水分解能を100%とした場合に、この条件における他の基質(PA、PE、PC、CL、PS、およびPIのうちの1または複数)に対する加水分解能が高くとも30%以下であれば、100個以上であってよく、150個以下、140個以下、130個以下、120個以下、110個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、10個以下であってもよく、好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個である。また、アミノ酸の変異は人為的な変異であってもよく、自然界で発生した変異であってもよい。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。同一性は、本発明において意図される基質特異性を有する限りにおいて、少なくとも約80%であってよく、好ましくは少なくとも約90%であってよく、さらに好ましくは、少なくとも約95%であってよい。
特定の酵素を基にして同一の機能を有する新たな酵素を作成する方法は本分野において公知であり、例えば、完全コンセンサス法および祖先型配列法が知られている。完全コンセンサス法では、機能の近いタンパク質の配列を複数比較し、共通するアミノ酸残基は優れた生物活性を与えるという仮定の下に新たなポリペプチド配列を作製する。また、祖先型配列法は、配列の複数比較と生物の系統に関する情報とを組み合わせ、これらの生物に共通する祖先が有していたであろう配列を予想するものであり、高温高圧な過酷な環境に生きていた生物の祖先の有するタンパク質は優れた安定性を有していたであろうという仮定に基づく。本分野においては、短鎖型L-スレオニン脱水素酵素(約350アミノ酸長)に対して100個以上のアミノ酸変異を加えても基質特異性および比活性は維持されたことが報告されている(Nakano S.et.al.,Benchmark Analysis of Native and Artificial NAD+-Dependent Enzymes Generated by a Sequence-Based Design Method with or without Phylogenetic Data.Biochemistry 2018,372-3732)。この文献では、X線構造解析などの複雑な実験手法に依らず、BLAST検索によりインターネットから得られた機能の近いタンパク質の配列を基に、完全コンセンサス設計法または祖先型設計法を適用し、優れた生物活性を有するであろうセリンデヒドロゲナーゼ(TDH)の配列を予想した。そしてこの予想に基づいて、野生型と比べて最大で112/318アミノ酸の置換を有する酵素(相同性65%)を実際に作製したところ、基質特異性および反応速度が維持されたことが記載されている。
さらに、中野ら(2019年)”Following the Evolutionary Track of a High Specific L-Arginine Oxidase by Reconstruction and Biochemical Analysis of Ancestral and Native Enzymes.”では、L-アルギニンオキシダーゼ(AROD)に祖先型設計法を適用し、生物活性を有するであろう配列として野生型と比較して73%または78%の相同性を有する配列を予測し、実際にこの配列を有する酵素が基質特異性および酵素活性を維持したことが報告されている。中野ら(2019年)”Deracemization and Stereoinversion to Aromatic D-Amino Acid Derivatives with Ancestral L-Amino Acid Oxidase.”では、L-アミノ酸オキシダーゼ(LAAO)に祖先型設計法を適用して生物特性を有する配列を予想し、実際にこの配列を有する酵素が基質特異性を維持したことが記載されている。齋藤ら(2018年)”Streptomyces sp. NT1株由来L-グルタミン酸オキシダーゼのフルコンセンサス設計による耐熱性の向上”では、放線菌のL-グルタミン酸オキシダーゼにフルコンセンサス法を適用し、690アミノ酸の内の104か所(相同性85%)を有する配列が生物活性を有することを予測し、実際にこれが高い酵素活性と基質特異性を維持したことを報告している。城戸ら(2020年)”AirID, a novel proximity biotinylation enzyme, for analysis of protein-protein interactions.”では、ビオチンリガーゼに対して祖先型設計法を適用して、野生型と比較して82%の相同性を有する配列を生物活性を有するものと予想し、これが基質特異性および酵素活性を維持したことを報告している。
まとめると、これらの先行技術文献では、配列データベースから入手した種々のポリペプチドの配列情報に基づき、目的の生物活性を有し基質特異性および酵素活性を維持した酵素を設計することに成功している。特に中野ら(2018年)では、配列情報に基づいた設計に加え、立体構造解析による情報も組み合わせてから実際に酵素を作成し、『これら両方の方法は、タンパク質の配列情報さえあればよいため、利用しやすく汎用性に優れる』と述べ、完全コンセンサス法および祖先型配列法という配列情報に基づいた方法が当業者にとって簡便であることも記載している。さらにこれらの先行技術文献では、計5種の酵素について配列情報と立体構造との組み合わせにより酵素の設計を行い、5種のすべてにおいて基質特異性を維持した酵素が得られたことを報告している。そのため、当業者であれば、これら5種以外の酵素でもこの方法が有効であることを容易に理解できる。したがって、当業者であれば、目的の酵素活性・基質特異性を有するポリペプチドを基にして、立体構造モデルと配列情報とを利用して、基になったポリペプチドからは低い同一性を有するにもかかわらず同一の生物活性を有するポリペプチドを予想し、過度な労力なく、これを実際に作製することが可能であることが理解されよう。
さらに、配列番号2のポリペプチドに関しては、複数の金属イオン要求性ホスホエステラーゼをモデルとした立体構造モデルの解析により基質結合部位および活性中心アミノ酸残基が推測されており(特願2020-149237)、当業者であれば、これらの情報を基にして同一の酵素活性を有する同一性の低いポリペプチドを作成できる。本発明において使用するPG特異的なPLCの基質結合部位は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の、56L,59FVG61,204IPGI207,209AW210,および316GGFA320に相当するアミノ酸を含んでもよく、または、これらのアミノ酸から選択されてもよい。これらのアミノ酸残基は疎水性であることから、PGのアシル基に相互作用すると考えられる。1つの実施形態において、PG特異的なPLCは基質と相互作用する触媒残基を有する。触媒残基は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列のH43、およびH409に相当するアミノ酸を含んでもよく、または、これらのアミノ酸から選択されてもよい。1つの実施形態において、基質と相互作用する活性中心アミノ酸残基を有する。活性中心アミノ酸残基は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の、D41、D103、N191、H364、およびH407に相当するアミノ酸残基を含んでもよく、またはこれらのアミノ酸から選択されてもよく、触媒残基を含んでもよい。基質結合部位は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の、40T~75T、100T~120L、184P~197V、205P~227K、266F、271L、296Y~297Y、310L~322S、363S~366T、378R~384R、406G~409H、および432S~435Dに相当するアミノ酸を含んでもよく、または、これらのアミノ酸から選択されてもよい。1つの実施形態において、本発明において使用するPG特異的なPLCは、1つまたは複数の原核生物由来亜鉛依存性ホスホリパーゼCシグネチャー(H-Y-x-[GT]-D-[LIVMAF]-[DNSH]-x-P-x-H-[PA]-x-N;Kim,Y.G.et al.,Structural and Functional Analysis of the Lmo2642 Cyclic Nucleotide Phosphodiesterase from Listeria Monocytogenes.Protein(2011))を有してもよい。
ここで、本願明細書において、「あるアミノ酸残基に相当するアミノ酸」とは、あるポリペプチドAと別のポリペプチドBとを比較する際にポリペプチドAにおいてあるアミノ酸残基A’が基質との相互作用において重要な残基であった場合に、ポリペプチドBにおいてアミノ酸残基A’と同様の基質と相互作用するアミノ酸残基B’を意味する。そのため、例えば、ポリペプチドAがシグナル配列を含むがポリペプチドBが含まなかったために、ポリペプチドAにおけるアミノ酸残基A’の一次構造的位置(つまりN末端から数えたときのアミノ酸残基番号)と、これに相当するポリペプチドBにおけるアミノ酸残基B’の位置とが異なる場合であっても、基質との相互作用における役割が同様であれば、アミノ酸残基B’はアミノ酸残基A’に相当するアミノ酸であると言える。
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、配列番号2の一部のアミノ酸配列(配列番号5)については、種々の放線菌の有するタンパク質間で保存されていると判明しており、基質結合部位、活性中心アミノ酸残基、および触媒残基は、この保存された配列に含まれる。そのため、例えば、ある特定のポリペプチドの基質結合部位に属する残基A’について、このアミノ酸残基が保存され、他の放線菌のポリペプチドにおいて、一次構造的位置が異なるが基質結合における役割が同様であるアミノ酸残基B’が存在することが容易に推測される。つまり、当業者は当該タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)から容易に立体構造を予測でき、かなりの精度で構成アミノ酸の空間的位置を予測可能であるため、3次元構造上類似位置に配置されるアミノ酸残基をある程度特定できる。したがって、基質結合部位、活性中心残基、および触媒中心を含む保存された配列に含まれるアミノ酸残基について、原核生物間では、あるいは少なくとも放線菌間では、相当あるいは類似するアミノ酸残基が存在し、配列比較によりこれを見出すことができる。さらには全生物間においても、基質結合部位、活性中心残基、および触媒中心を含むアミノ酸残基が種の近縁性に応じて保存され、あるアミノ酸残基に相当あるいは類似するアミノ酸を見出すことが可能であろう。これはタンパク質の進化の観点からも当然の現象として広く認知され、普遍性があるとも言える.
以上の先行技術から、当業者であれば、配列番号2のポリペプチドを基にして、少なくとも約80%の配列の同一性を有する、PG定量に十分使用できる酵素活性・基質特異性を有するポリペプチドを容易に作成することができることに留意されたい。
さらに当業者であれば、配列番号1のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドと同一の酵素活性・基質特異性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1のポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチドも作成できる。1つの実施形態において、本発明において使用するPG特異的な酵素は、(a)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、(b)配列番号1で表される塩基配列において1個以上の塩基が欠失、置換または付与された塩基配列を含むポリヌクレオチド、(c)配列番号1で表される塩基配列と同義なコドンを含む塩基配列を含むポリヌクレオチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも約80%の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド、およびの(e)配列番号1で表される塩基配列と相同的な配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、によりコードされてもよい。ストリンジェントな条件は本明細書で定義されている。1つの実施形態において、PG特異的PLCは(b)配列番号1で表される塩基配列において1個以上の塩基が欠失、置換または付与された塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされてよく、塩基を欠失、置換または付与する方法は当業者に公知である。1つの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドが含み得る欠失、置換または付与された塩基の数は、発現されるポリペプチドの機能が大きく変化しなければ(実質的に同等の機能であれば)、つまり基質特異性が、例えばpH6.0、55℃、5分間の条件におけるPGの加水分解能を100%とした場合に、この条件における他の基質(PA、PE、PC、CL、PS、およびPIのうちの1または複数)に対する加水分解能が高くとも30%以下であれば、300個以上であってよく、350個以下、340個以下、330個以下、320個以下、310個以下、300個以下、290個以下、280個以下、270個以下、260個以下、250個以下、240個以下、230個以下、220個以下、210個以下、200個以下、190個以下、180個以下、170個以下、160個以下、150個以下、140個以下、130個以下、120個以下、110個以下であってよく、好ましくは100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、20個以下であってよく、さらに好ましくは10個以下である。また、塩基の変異は、人為的な変異であってもよく、自然界で発生した変異であってもよい。同一性は、コードされるポリペプチドが本発明において意図される基質特異性を有する限りにおいて、少なくとも約80%であってよく、好ましくは少なくとも約90%であってよく、さらに好ましくは、少なくとも約95%、であってよい。
代表的な実施形態において、PG特異的なPLCは、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上50個以下のアミノ酸が欠失、置換または付与されたアミノ酸配列を含むポリペプチド、または(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよい。代表的な実施形態において、PG特異的なPLCは、(a)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、(b)配列番号1で表される塩基配列において1個以上150個以下の塩基が欠失、置換または付与された塩基配列を含むポリヌクレオチド、(c)配列番号1で表される塩基配列と同義なコドンを含む塩基配列を含むポリヌクレオチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされてよい。
1つの実施形態において、工程(1)(a)で生じたグリセロールリン酸にさらなる酵素を反応させてもよい。これにより、グリセロールリン酸から定量方法が広く知られた化合物(過酸化水素およびNADHなど)を得ることができる。さらなる酵素反応工程としては、(b1)グリセロールリン酸オキシダーゼ(GPO)を反応させる工程、(b2)グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ(GPH)を反応させる工程、および(b3)アルカリフォスファターゼ(AP)を反応させる工程が挙げられる。
グリセロールリン酸オキシダーゼは、グリセロールリン酸を酸化して過酸化水素とジヒドロキシアセトンリン酸を生じさせる酵素である。
Figure 2022139042000008

グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼは、グリセロールリン酸を脱水素化してNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)をNADHに還元する酵素である。
Figure 2022139042000009

アルカリフォスファターゼは、グリセロールリン酸のリン酸エステル結合を切断してグリセロールとリン酸とに分解する化合物である。1つの実施形態において、この工程により生じたグリセロールにグリセロールオキシダーゼを作用させて過酸化水素を得てもよく、グリセロールデヒドロゲナーゼを反応させてNADからNADHを得てもよい。
Figure 2022139042000010
1つの実施形態において、本発明の定量方法は(2)反応により生じた化合物の量を測定する工程を包含する。反応化合物の定量は本分野において公知のいかなる方法を用いてもよく、過酸化水素を色素と反応させて得られる蛍光、吸光、または発光の強度を測定する方法が知られている。なお、反応によりNADHが得られていた場合には、NADHにNADHオキシダーゼを反応させることで過酸化水素が得られる。過酸化水素を定量するための代表的なものとしては、ペルオキシダーゼ(POD)により試薬を酸化して試薬の色変化や呈色の程度を測定するものであり、トリンダー試薬と称されるフェノール系化合物と4-アミノアンチピリン(4-AA)を縮合させてキノイミン色素を生成させる方法、ADHP(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)などの化合物に過酸化水素を反応させて蛍光化合物を生成させてその蛍光強度を測定する方法、酵素反応により遊離した無機リン酸を呈色するモリブデンブルー法、およびマラカイトグリーン法などが知られている。NADHを定量するための代表的なものとしては、これらの反応では、PG1分子からグリセロールリン酸1分子が生じ、過酸化水素1分子が生じ、色素1分子が生じるため、PG量の既知な試料を用いて検量線を作成して試料由来の蛍光などを比較することでPG量を定量できる。
1つの実施例において、各工程は同時に施してもよく、逐次的に施してもよい。1つの実施形態において、工程(1)の前に試料を前処理する工程を包含してもよく、前処理としては、試料中に存在するグリセロールリン酸(GP)、過酸化水素、またはNADHを除去する工程、例えば先述のGPOを用いて内在性(既にサンプル中に含まれていた持込分)のGPを酸化して除去(本反応に影響しないように)するなど、酵素反応に適した濃度まで希釈・濃縮する工程、加熱殺菌する工程、リン脂質を抽出する工程などが挙げられる。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、試料が生物由来である場合には、生物が本来持つ定量に影響し得る分子を除去するためにリン脂質を抽出することが考えられる。生物試料から脂質のみを抽出する方法は本分野において公知であり、Bligh-Dyer法およびFolch法などが知られている。
本発明における試料としては、PGの定量の必要があれば生物由来であってもそうでなくてもよく、細胞、細胞の培養液、細胞の懸濁液、細胞破砕物など、ヒトなどの動物の組織に由来する液体(血液、尿、羊水、髄液、唾液など)、植物に由来する液体、動植物由来の加工物、細菌由来の加工物、サプリメント、食品、医薬組成物などが挙げられる。特に生物由来の試料の場合、種々のアシル基を有する複数種のPGが含まれる。本発明の定量方法ではこれらの総量を定量できるため、PGの総量を知りたい場合には有効である。
各酵素反応の反応条件は、使用する酵素の特性に合わせて適宜設定してよい。至適pHの一例としてはpH約4~約10であり、pH約5.5~約6.5の範囲である。1つの実施形態において、至適pHの下限はpH約4であり、好ましくはpH約5であり、さらに好ましくはpH約5.5である。上限は、pH約10であり、好ましくはpH約8.5であり、さらに好ましくはpH約6.5である。至適温度の一例としては37℃付近、または細菌由来の酵素であれば50℃以上である。1つの実施形態において至適温度は約53~約57℃である。1つの実施形態において、至適温度の下限は、約30℃であり、好ましくは約37℃であり、特に好ましくは約50℃である。上限は、約70℃であり、好ましくは約65℃であり、特に好ましくは約60℃である。
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドの反応時間は、PGの意図した分解が達成できる範囲で変更してもよい。反応時間は、約15秒以上、好ましくは約1分以上、更に好ましくは約3分以上である。反応時間の上限は特にないが、好ましくは約30分以下、更に好ましくは約15分以下、特に好ましくは約10分以下であり得る。酵素反応における酵素濃度も基質濃度と費用に合わせて適宜設定してもよく、一例として、約0.1U/mL、約0.5U/mL、約1U/mL、約5U/mL、約10U/mL、約10U/mL、約100U/mL、約500U/mL、約1000U/mLである。
1つの実施形態において、酵素を含む溶液の組成は使用する酵素に合わせて適宜設定され得る。溶液はバッファーを含んでもよく、例えば、酢酸バッファー(Ac-Na)、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、クエン酸リン酸バッファー、ホウ酸バッファー、酒石酸バッファー、Trisバッファー(Tris-HCl)、Bis-Trisバッファー、MESバッファー(MES-NaOH)、HEPESバッファー、またはリン酸バッファーなどがある。1つの実施形態において、溶液は金属イオンまたは金属イオンのキレーターを含んでもよく、金属イオンとしては、Al3+、Ca2+、Mg2+、Li2+、Na、Mn2+、Fe3+、Li、Cu2+、Co2+、またはZn2+などであってよいが、これらに限定されない。金属イオンのキレーターとしては、EDTA、EGTA、BAPTA、DTPA、HEDTA、NTA、DTPA、GLDA、TTHA、HIDA、またはDHEGなどであってよいが、これらに限定されない。1つの実施形態において、溶液は、界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤としては、Triton(登録商標) X-100、Triton(登録商標)X-114、ノニデットP40、Tween(登録商標)20、デオキシコール酸ナトリウム、Tween(登録商標)80、Briji35、およびコール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、本発明のPGの定量方法を用いてCLの量を求めることもできる。既存の酵素法による定量ではPGとCLとを区別できず、PGとCLの合計濃度しか測定できなかった。この既存の定量方法によって求めた生体試料中のPGとCLの合計量から、本発明によって求めたPG量を差し引くことにより、CL量を求めることができる。
PG量を疾患の状態の指標として使用する方法
1つの局面において、本発明は、生体試料中のPG量を被験体における疾患の状態の指標として用いる方法を提供する。PGおよびCLの関与が推察されている疾患について、先行技術文献を引用しながら記載する。当業者であれば、以下の知見に基づきPG量と疾患の状態が関連することを理解できる。
本明細書において「抗リン脂質抗体」とは、リン脂質またはリン脂質・タンパク質複合体に対する抗体を指す。「抗リン脂質抗体症候群」とは、抗リン脂質抗体により引き起こされる、後天性の血栓傾向を示す自己免疫疾患を指す。リン脂質・プロトロンビン複合体などに結合する自己抗体である病原性抗リン脂質抗体は、血栓傾向を惹起して脳梗塞・下肢静脈血栓などを誘発し、また、習慣性流産への危険因子としても注目されている。血清中の抗リン脂質抗体の濃度は、抗リン脂質抗体症候群の検査指標として用いられている。
本明細書において「呼吸窮迫症候群」とは、新生児にみられる呼吸窮迫症候群と成人の急性呼吸窮迫症候群を合わせた呼吸困難を主症状とした疾患を指し、肺胞が潰れることを防ぐ肺サーフェクタントが不足していることに起因する。肺サーフェクタントは脂質とタンパク質とからなり、構成脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルグリセロール、およびパルミチン酸である。肺サーフェクタントは、これらのリン脂質が疎水部を肺胞腔側に、親水部を上皮細胞側に配列した単分子膜である(中原広道,「新規人工調製肺サーフェクタントの研究と高機能性特化への応用展開」,薬学雑誌,132(2),817-822(2012))。このような構造を取った単分子膜において、DPPCは、肺を縮小する際に肺胞表面の表面張力をほぼ0mN/mにまで引き下げ、他方、強い陰イオン性脂質であるPGは、肺を膨らます際に陽イオン性のタンパク質と相互作用して肺の再展開を助ける。この肺サーフェクタントが欠如すると呼吸困難が起こり、特に肺サーフェクタントの分泌が十分になる前に生まれた新生児においては呼吸窮迫症候群を、成人において肺の障害により肺サーフェクタントの機能が低下すると急性呼吸窮迫症候群を引き起こす。羊水に含まれるPG濃度と呼吸窮迫症候群の関連が示唆されており、生体中のPG量は、呼吸窮迫症候群の指標として用いられ得ると考えられる。
CLがミトコンドリアの機能維持に必要であることが知られている。ここでCLは、以下に述べる合成経路によりPGから合成されることが調べられている。
(1)ホスファチジン酸およびCTPから、CDP-ジアシルグリセロールが合成される(CDP-DAG合成酵素1/2,CDS1/2)
(2)CDP-ジアシルグリセロールのCMPがグリセロール-3-リン酸に置換され、ホスファチジルグリセロールリン酸が合成される(PGP合成酵素1,PGS1)
(3)ホスファチジルグリセロールリン酸のリン酸が除去され、ホスファチジルグリセロールが合成される(PGP脱リン酸化酵素,PTPMT1)
(4)(2)のCDP-ジアシルグリセロールのCMPが(3)のホスファチジルグリセロールに置換され、カルジオリピンが合成される(CL合成酵素1,CLS1)
(5-7)カルジオリピンのアシル基が変換されて種々のアシル基を有するカルジオリピンに再構成される
カルジオリピンの合成経路:
Figure 2022139042000011
この代謝経路において酵素が欠損または機能低下すると、ミトコンドリアの機能が低下し様々な異常が発生することが報告されている。ホスファチジルグリセロールリン酸を合成するPGS1を欠損したげっ歯類由来のCHO細胞では、ミトコンドリア膜におけるPGおよびCLが減少し、ミトコンドリアの形態異常およびATP合成能力の低下が起こり、細胞の増殖能が低下することが報告されている。ホスファチジルグリセロールリン酸からPGを合成するPTPMT1を欠損したマウスは胎生致死であり、PGの減少が観察され、さらにミトコンドリアの形態と機能とに異常を示したことが報告されている(Zhang J.et al.,”Mitochondrial phosphatase PTPMT1 is essential for cardiolipin biosynthesis.”Cell Metab.13,690-700(2011))。さらに、PGからCLを合成する酵素を欠いた酵母では、ミトコンドリアのATP合成能が低下したことも報告されている(Jiang F.et al.,”Absence of cardiolipin in the crd1 null mutant results in decreased mitochondrial membrane potential and reduced mitochondrial function.”J.Biol.Chem.275(29),22387-22394(2000))。このように、CLだけでなくPGも、さらにはその合成経路にかかわる種々の酵素も、ミトコンドリアの機能に影響することが報告されている。従って、本発明のPGおよび/またはCLの定量法は、ミトコンドリアにおけるPGおよび/またはCLの定量のために使用され得る。
光合成への関与
シアノバクテリアおよび植物の葉緑体にはPGが多量に含まれ、光合成においてホスファチジルグリセロールが重要な役割を果たすと考えられている(Wada H.and Murata N.,”The essential role of phosphatidylglycerol in photosynthesis.”Photosynth,Res.,92,205-215(2007))。1つの実施形態において、植物におけるPG量を定量することで、植物の状態を判断するための指標とすることが考えられる。
定量用キット
本発明のPG定量用のキットはPG特異的なPLCを含むことを特徴とする。好ましくは、さらにグリセロールリン酸オキシダーゼ、グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、またはアルカリフォスファターゼを含む。アルカリフォスファターゼを使用する場合、グリセロールオキシダーゼまたはグリセロールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。本発明のキットは、各種酵素を酵素液として含んでもよく、乾燥形態で含んでもよい。緩衝剤、金属塩、および/または界面活性剤をさらに含んでもよい。
以下に、本発明をさらに理解するための実施例を記載する。しかし、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1:PG-PLC生産菌の獲得を目的としたスクリーニングとPG-PLC生産菌の属種決定のための分類学上の同定]
(実験方法)
実験に使用した試薬は以下の通りである。Bacto-Malt extract(Becton Dickinson、型番218630)、Yeast Extract BSP-B(オリエンタル酵母工業)、L-α-Phosphatidylglycerol, Egg(PG、Avanti Polar Lipids Inc.)、Peroxidase(POD、オリエンタル酵母工業株式会社、型番46261003)、L-α-glycerophosphate oxidase(GPO、東洋紡株式会社、型番G3O-321)、4-Aminoantipyrine(4-AA、ナカライテスク、型番01907)、N,N-Bis(4-sulfobutyl)-3-methylaniline, disodium salt(TODB、同仁化学研究所、型番OC22)、その他、特に記載のない試薬は全て市販特級品を使用した。
目的酵素の生産菌のスクリーニング
(1)培養
1)試験管(Φ18×180mm)にISP2培地5mlとガラスビーズ(Φ4mm)3粒を入れ、オートクレーブ滅菌(121℃,15min)した。
2)滅菌した培地にスクリーニング菌株のグリセロールストック懸濁液を1%(v/v)植菌し、28℃、160spm、往復振とう培養を行った。
(2)PLC測定法
PLCがPGに作用すると、PGがラセミ体である場合、DGと、2種のグリセロールリン酸(G1PおよびG3P)が生じる。中でもG3Pは、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)によって酸化され過酸化水素を生じる。生成した過酸化水素はペルオキシダーゼ(POD)の作用により4-アミノアンチピリン(4-AA)とN,N-Bis(4-sulfobutyl)-3-methylaniline,disodium salt(TODBとを定量的に酸化縮合させ赤紫色のキノイミン色素を生成する。この呈色の強度を、500~630nm、特に550nmの吸光度(A550)を測定することで、PLCの加水分解能を測定できることが知られている。この酵素による測定法を用いて、スクリーニング菌株の培養液の上清にPGを加水分解するPLCが存在しているか調べた。なお、1minに1μmolのG3Pを生成する酵素量を1Uと定義した。
Figure 2022139042000012
(結果と考察)
PLC生産菌の取得と分類学上の同定
(1)スクリーニング計72菌株した結果、NT115株の培養上清中にPG-PLC活性を見い出した。簡易形態観察の結果、NT115株はISP2寒天培地上で円形の中央陥没上のコロニーを示し、表面の色調は白色、裏面は茶色を示した。また、微視的観察の結果、気菌糸を形成し、連鎖胞子の観察が見られた。テクノスルガ・ラボ微生物同定システムを用いた、DB-BAおよび国際塩基配列データベースに対するBLAST相同性検査を基に解析した分子系統樹において、NT115株はAmycolatopsis属が構成するクラスター内に含まれたが、既知の種とは異なる分子系統学的位置を示した。よって、今回の16SrDNA部分塩基配列解析の結果からは、NT115株はAmycolotopsis sp.と帰属した。また、この結果は、簡易形態観察の結果とも一致した。
[実施例2:NT115株が菌体外に分泌生産するPLCの精製]
(実験方法)
Amycolatopsis sp.NT115株PLCの精製
(1)培養
試験管(Φ18×180mm)にISP2培地5mlとガラスビーズ(Φ4mm)3粒を入れ、オートクレーブ滅菌(121℃,15min)した。冷却後、クリーンベンチ内でNT115株の10%(v/v)グリセロールストック懸濁液50μlを植菌し、28℃,160spmで2日間往復振とう培養し、前培養液とした。500ml容三角フラスコにISP2培地100mlとステンレスコイルを入れたものを10本用意し、オートクレーブ滅菌した。クリーンベンチ内で培地に前培養液を1%(v/v)植菌し、28℃,160rpmで72時間旋回振とう培養した。
(2)硫酸アンモニウム(AS)分画
(1)の培養液を遠心分離(18,800×g,10min)し、培養上清を得た。培養上清に20%飽和となるように飽和AS水溶液(4℃保存)を加えた。1時間静置した後、生じた沈殿物を遠心分離(18,800×g,10min)により回収した。
(3)PLC活性
以下の実験では、実施例1と同様に酵素反応によりPLC活性値を算出した。
(4)PPG-Toyopearlカラムクロマトグラフィー
回収した沈殿物を1M AS/20 mM Tris-HCl(pH7.0)で溶解した(フィルター、遠心分離なし)。
1)表1の条件でPPG-Toyopearlカラムクロマトグラフィーを行った。
A sol.:1M AS/20mM Tris-HCl(pH7)
Bsol.:20mM Tris-HCl(pH 7)
Column volume:15ml(=Φ2.5cm, H=3.0cm)
Elution1:linear gradient of 1 to 0M AS
with 4CV
Elution2:100% B sol. with 4CV
Fraction:6ml
表1:PPG-Toyopearlカラムクロマトグラフィーの条件
Figure 2022139042000013

2)各フラクションのPLC活性(基質;PG)を測定し、2.5U/ml以上の活性を示したフラクションを回収した(PPG画分)。
(5)透析
PPG画分を透析膜(三光純薬、セルロースチューブ36/32)に移し、サンプル量の10倍量の20mM Tris-HCl(pH9.0)で2回透析(buf交換;1h,12h)した。
(6)Giga Cap Q-Toyopearlカラムクロマトグラフィー
1)透析内液を回収し、Giga Cap Q-Toyopearl(以下GCQと略す)にロードした。サンプルはフィルターろ過、遠心分離なしでカラムロードし、表2の条件でGCQカラムクロマトグラフィーを行った。
Asol.:20mM Tris-HCl(pH9.0)
B sol.:0.5M NaCl/20mM Tris-HCl(pH9.0)
Column volume:15ml(=Φ2.5cm, H=3.0cm)
Elution:linear gradient of 0 to 0.5M NaCl with 10CV
Fraction:5ml
表2:Giga Cap Q-Toyopearlカラムクロマトグラフィーの条件
Figure 2022139042000014

2)各フラクションのPG-PLC活性を測定し、活性のあったフラクションをGCQ画分とした。
(7)ゲルろ過クロマトグラフィー
Amicon-30K(15mL)を用いてGCQ画分を500μlまで濃縮した。濃縮サンプルは、0.45μmフィルターろ過後、Superdex 200 increase 10/300 GL(Spd 200 Inc)にロードした。
1)以下の条件と表3に示す条件でカラムクロマトグラフィーを行った。
A sol.:0.15M NaCl/Tris-HCl(pH8.0)
Column volume:24ml(=Φ1.0cm, H=30cm)
Elution:0.15M NaCl with 1.5CV
Fraction:0.5ml
表3:ゲルろ過クロマトグラフィーの条件
Figure 2022139042000015

2)各フラクションのPG-PLC活性を測定し、Amicon-30Kにより20mM Tris-HCl(pH7.0)にbuffer交換を行い、精製PG-PLCとした。
タンパク質濃度の定量
BCA Protein Assay Reagentキット(ThermoFisher)を使用し、取扱説明書に従って562nmにおける吸光度(A562)を測定し、タンパク質濃度を定量した。
SDS-PAGE分析
Laemmliの方法に従い、SDS-PAGE法を行った。タンパク質バンドの検出には銀染色キット(アプロサイエンス)を使用し、取扱説明書に従って行った。
(結果と考察)
ISP2培地で2日間培養した(図2)上清から、PG-PLCを2981倍まで精製することができ(表4)、比活性は6.19 U/mg-proteinとなった。SDS-PAGE分析では分子量は約54kDaの単一バンドとして検出された(図3)。
表4:NT115株由来PG-PLCの精製結果
Figure 2022139042000016
[実施例3:PG-PLCの諸特性解析]
(実験方法)
基質特異性試験以外は、実施例1に記載の方法により酵素活性を測定した。基質特異性試験では、基質として1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphoglycerol(POPG)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphocholine(POPC)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphoethanolamine(POPE)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphoinositol(POPI)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphoserine(POPS)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phopsphate(POPA)、cardiolipin(CL)、L-α-phosphatidyglycerol(PG)を使用した。その他にBIOMOL Green(登録商標)Reagent(Enzo Life science、以下BGと略記)、Alkaline phosphatase(オリエンタル酵母工業、仔ウシ小腸由来、以下CIAPと略記)を使用した。酵素反応液に加える酵素液(精製PG-PLCサンプル)は0.05U/ml, 1.50U/mg-protein以上のものを使用し、基質消費が10%程度以下となるように適宜希釈した。
1)酵素反応におけるpH、温度の影響、pHおよび温度安定性試験
酢酸-酢酸ナトリウム(pH4.0~5.5,以下Ac-Naと略す)、MES-NaOH(pH5.5~7.0)、Tris-HCl(pH7.0~9.0)を使用する温度でpH調整し、酵素反応あるいは酵素に及ぼすpHおよび温度(図4-1、図4-2)の影響と安定性(図5-1、図5-2)について調べた。
2)PLC活性に対する金属イオン、界面活性剤の影響については0.14M MES-NaOH(pH6.0)、55℃の条件下で金属イオン(図6-1)、界面活性剤(図6-2)の影響を調べた。
3)PLCの基質特異性試験
各基質とPLCとを反応させ、各基質に対する酵素活性を調べた。酵素反応により生じるグリセロールリン酸など対応するリン酸モノエステルを脱リン酸化酵素であるCIAPにより遊離した無機リン酸(Pi)を定量した。ただし、POPAは脱リン酸化酵素処理せず、そのままPG-PLCによって遊離される無機リン酸(Pi)を定量した。無機リン酸の定量は、BG試薬を使用して取扱説明書に従い、620nmにおける吸光度(A620)を測定して行った。
(結果と考察)
以下に示す各データは、特に記載がない場合は全て3回試験した結果を平均値±標準偏差(SD)で示す。
pH、温度の酵素反応と酵素の安定性への影響
各pHにおけるPLC活性(37℃)を調べたところ、弱酸性域pH5.0~pH6.0で高い活性を示し、MES-NaOH(pH6.0)で最も高い活性を示した(図4-1)。pH6.0で各温度における活性を調べたところ55℃で最大活性を示し、20℃では約30%、70℃では約40%の相対活性を示した(図4-2)。基質調製に使用したTriton(登録商標) X-100の曇点は63℃であることから60℃以下においてはPLC活性の特徴を示していると考えられる。
図5-1に示すようにpH4.0からpH9.0という広範囲でpHが安定であった。また温度安定性試験では、図5-2に示すように50℃まで安定であり、60℃で活性が半減した。
金属イオンの影響
図6-1に示すように、EDTAの存在下でも活性を示し、Ca2+によってわずかに活性が向上し、Al3+の存在下で約1.3倍活性が向上した。また、図6-2に示すように試験した条件においてはTriton(登録商標) X-100が最も良好な結果を示した。
基質特異性
図7に示すようにPC、PE、CLには全く活性を示さなかった他、PAにも全く活性を示さず(データ示さず)、PG以外にはほとんど作用しなかったことから本酵素はPG特異的PLCであると判断できる。
[実施例4:PG-PLCの配列]
(実験方法)
ペプチドの配列決定
SDS-PAGEによりPG-PLCを泳動後、バンドを切り出し、株式会社アンテグラルにてトリプシン処理およびLC-MS解析を行い、アミノ酸配列を解析した。LC-MS解析により得られたペプチドの配列、およびこれらのペプチド配列と合致するデータベースから得られたタンパク質配列を図8に示す。グレーハイライト部分が本酵素のペプチド配列と一致した配列である。計11本のペプチド配列が解読され、それらすべてのペプチドのアミノ酸配列がWP_037369513.1として公共データベースに登録されているAmycolatopsis orientalis由来メタロホスホエステラーゼ中の配列と一致した。
アミノ酸配列番号6から配列番号5のフォワードプライマーを、アミノ酸配列番号8から配列番号7のリバースプライマーを設計し、PCRを行った。PCR条件は下記の通りである。
94℃、1分→(98℃、10秒→55℃、15秒→68℃、45秒)を25サイクル、68℃、5分
PCRによって得られた増幅断片をクローニングベクターpMD20(タカラバイオ)に連結し、大腸菌DH5アルファを形質転換、培養し、組換えプラスミドを回収、精製した。それをDNAシーケンサーで解析することで本酵素遺伝子の一部の塩基配列(配列番号9,10)を解読した。次に、5’、3’未解読領域を解読するため配列番号11,12のプライマーセットによりインバースPCR(iPCR)を行った。iPCR条件は下記の通りである。
94℃、1分→(98℃、10秒→57℃、15秒→68℃、2.5分)を25サイクル、68℃、5分
iPCR反応液をカラム精製し、シーケンスをした。解析結果から、5’、3’未解読領域を解読し、本酵素遺伝子の全長配列(配列番号1、2の配列に、配列番号3、4のシグナル配列が付与されたもの)を解読し、図9に示すアミノ酸配列を得た。図9に示すアミノ酸配列の内、25アミノ酸からなるシグナル配列を配列番号4、その塩基配列を配列番号3として示し、514アミノ酸からなる成熟タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2、その塩基配列を配列番号1として示す。
[実施例5:異種組換えPG-PLCの製造および大腸菌PGの分解]
実施例4で得られた、配列番号1に記載のPG-PLCをコードするDNAを、配列番号13、14のプライマーを用いてPCR増幅し、ゲル電気泳動し、増幅バンドを切り出し精製した。PCR条件は下記の通りである。
94℃、1分→(98℃、10秒→64℃、15秒→68℃、1分15秒)を25サイクル、68℃、5分
同様にpET-24a(+)をHindIII消化後にゲル電気泳動し、切り出し精製した。両者を混合し、Infusion Cloningキット(タカラバイオ)を用いてpET-24a(+)のHindIIIサイトに挿入し、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むPG-PLC/pET-24a(+)を作成した。そのため、PG-PLC成熟配列のN末端側にはマルチクローニングサイト(MCS)由来MASMTGGQQMGRGSQFQLRRQからなる21アミノ酸が付加した状態である。
PG-PLC/pET-24a(+)を、Zip Competent Cell BL21(DE3)(バイオダイナミクス、品番:DS255)に形質転換し、終濃度50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養し、PG-PLC/pET-24a(+)/BL21(DE3)を得た。これを、同じくカナマイシンを50μg/mLの終濃度で含むOvernight express instant TB medium 5 mL(液体培地)に植菌し、20℃あるいは30℃で1日間培養し、PG-PLCを発現させた。20℃で培養した培養液を遠心分離して培養上清を得、また、30℃で培養した培養液を遠心分離してPG-PLC/pET-24a(+)/BL21(DE3)菌体と培養上清を回収し得られた菌体を緩衝液に懸濁して超音波破砕し、これを遠心分離して上清を得、粗タンパク質液(CFE)とした。
20℃の培養上清、または30℃のCFEを酵素液として、POPGを基質として用いて、実施例1に記載の加水分解能の測定方法によりPG-PLCの酵素活性を測定した。そうしたところ、いずれの反応液において時間依存的にG3Pの濃度が上昇し、G3P濃度は反応時間に比例した(図10-1、図10-2)。これにより、E.coliにおいてPG-PLCが異種発現されたことが確認できた.20℃の培養上清は1.4U/L、30℃のCFEは1U/Lであった.
MCSに外来遺伝子を含まない空のpET-24a(+)ベクターで形質転換し、培養した組換えE.coli BL21(DE3)を遠心分離により回収し、得られた菌体を水あるいは緩衝液で懸濁し、それを超音波破砕してE.coli破砕液を得た。この破砕液5μLに、精製した親酵素、あるいは、20℃の培養上清、または30℃のCFEを混合し、pH6.0(MES-NaOH)、45℃で30分間反応させ、実施例1に記載の加水分解能の測定方法によりPG-PLCの酵素活性を測定した。そうしたところ、いずれの反応液においてもG3Pの生成が確認できた。一例として、上記条件のもと、精製した親酵素を用いた場合、30分間で熱失活酵素をブランクとして算出したΔA550は0.159であった。これにより、E.coli破砕液に含まれるE.coli膜由来PGが当該PG-PLCの作用により加水分解され、グリセロールリン酸が生成したことが確認された。
[実施例6:触媒(活性)中心部位および基質結合部位の推定]
PG-PLCの触媒(活性)中心部位および基質結合部位を推定するために、データベース上の構造および配列が既存のタンパク質をもとにPG-PLCの3次元的(立体)構造を予測し、これに基づいて酵素の触媒(活性)中心部位および基質結合部位となるアミノ酸を推定した。
まず、タンパク質のドメイン・モチーフのデータベースであるPfamおよびタンパク質の立体構造・ファミリーのデータベースであるCATHを用いて、PG-PLCが属するタンパク質ファミリーを調べた。そうしたところ、いずれのデータベースを用いても、PG-PLCは金属イオン要求性ホスホエステラーゼに属すると推定され、原核生物由来の亜鉛依存(要求)性ホスホリパーゼCシグネチャー(H-Y-x-[GT]-D-[LIVMAF]-[DNSH]-x-P-x-H-[PA]-x-N)に属する配列を5つ有していた。さらに、このファミリーに属するタンパク質の3次元的(立体)構造を比較したところ、構造が類似していた。これらの結果から、PG-PLCと金属イオン要求性ホスホエステラーゼとでは3次元的(立体)構造に類似性があり、そのため、金属イオン要求性ホスホエステラーゼをモデルにしてPG-PLCの構造が推定できると考えた。
PG-PLCの構造を予想するために、タンパク質立体構造のデータベースであるSwissModelを用いてアミノ酸配列の類似した3次元的(立体)構造既知のタンパク質を調べた。そうしたところ、2xmoという金属イオン要求性ホスホエステラーゼが見出され、2xmoの立体構造に基づいてPG-PLCの立体構造モデルを得た。2xmoの立体構造との比較から、PG-PLCにおいてリン酸と相互作用する活性中心残基を推定したところ、D41/H43/D103/N191/H364/H407/H409のヒスチジン(H)およびアスパラギン酸(D)が活性中心残基であると予想され、中でもリン酸との距離が近いH43およびH409が触媒残基であると推定した。
次に、基質結合部位を予想するために、PG-PLCの立体構造モデルと、構造既知の4種類のPLCとを比較した。そうしたところ、いずれのPLCもタンパク質の中央付近に酸性アミノ酸の多いポケットを有し、このポケットに基質が結合すると考えられた。さらに、構造既知のPG非特異的PLC(例えば、PC特異的PLCなど)における基質の位置をPG-PLCにあてはめ、基質と接触するアミノ酸残基を推定したところ、図11に得られるアミノ酸残基が基質と接触し、基質結合部位に当たると推定できた(配列番号2で表されるアミノ酸配列の、40T~75T、100T~120L、184P~197V、205P~227K、266F、271L、296Y~297Y、310L~322S、363S~366T、378R~384R、406G~409H、および432S~435D)。中でも、非極性アミノ酸である56L/59FVG61/204IPGI207/209AW210/316GGFA320は、PGのアシル基に結合するアミノ酸残基であると考えられる。
さらに、これらの基質結合部位、活性中心アミノ酸残基、および触媒残基が放線菌間で保存されている調べるため、配列番号2の部分配列について、種々の放線菌間でBLASTを用いて配列を比較した。そうしたところ、配列番号2の35~488位のアミノ酸(AFV・・・SYN;配列番号16)において、25種を超える放線菌間で高い配列の相同性と類似性が見られ、基質結合部位、活性中心アミノ酸残基、および触媒残基が少なくとも放線菌間で種を超えて保存されていることが示された。また、Pfamによる解析では配列番号2の36~409位のアミノ酸がMetallophosモチーフ(Pfam accession ID: PF00149)として帰属された。
[実施例7:組換え型タンパク質によるPGの定量]
(材料と方法)
実施例7において使用する試薬を以下に示す。
放線菌由来のPG特異的PLC(アミノ酸配列は配列番号2)
卵由来ホスファチジルグリセロール(L-α-Phosphatidylglycerol,Egg,Avanti Polar Lipids Inc.)
その他、特に記載のない試薬は全て市販特級品を使用する。その他の試薬については実施例1、3と同じものを使用する。
PG特異的PLCの作成
配列番号2のタンパク質の、N末端あるいはC末端にHisタグを融合させたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをpET-24a(+)ベクターに組み込み、E.coliに形質導入してタンパク質を発現させる。実施例5と同様にして調製した培養上清およびCFEを回収し、Hisタグを用いたアフィニティークロマトグラフィー(Cytiva、製品番号29051021および17524801)によりタンパク質を精製する。精製プロトコルは製品説明書に従う。
PGの定量
5μlの酵素液(例、0.2U/mL PG特異的PLC(1Uとは、1分間に1μmolのグリセロールリン酸を生成する酵素量である))、40μlの0.2M MES-NaOH(pH6.0)、終濃度既知の0~1000μM PG水溶液(0.01% Triton(登録商標) X-100で可溶化)5μlを添加し、37~55℃で30分間インキュベートする。100℃、5分間の加熱によりPG特異的PLCを失活させた後、本反応液5μLをAP反応液(94μL CIAP buffer,1μLの1600U/mL CIAP)95μLに加えて56℃、10分間インキュベートすることにより脱リン酸化を行う。本脱リン酸化液75μLを150μLのBG試薬と混合し、室温(25℃)で20分間インキュベートすることにより、遊離した無機リン酸を呈色させる。呈色の強度を620nmにおける吸光度としてマイクロプレートリーダー(ThermoFisher,MULTISCAN FC)を用いて測定する。AP Bufferなどの各反応液の組成を以下に示す。
Figure 2022139042000017
[結果]
PG量と呈色強度の関係
0μM~1000μMのうちのいくつかの終濃度のPG水溶液を用いて検量線を作成する。PG量に応じて呈色強度の増加が見られる。
配列番号1:Amycolatopsis sp.由来のPG-PLCの塩基配列
配列番号2:Amycolatopsis sp.由来のPG-PLCの成熟タンパク質配列
配列番号3:Amycolatopsis sp.におけるPG-PLCのシグナル配列の塩基配列
配列番号4:Amycolatopsis sp.におけるPG-PLCのシグナル配列
配列番号5:PG-PLCの配列特定のためのフォワードプライマー
配列番号6:配列番号5のプライマーに対応するアミノ酸配列
配列番号7:PG-PLCの配列特定のためのリバースプライマー
配列番号8:配列番号7のプライマーに対応するアミノ酸配列
配列番号9:特定されたPG-PLCの部分塩基配列
配列番号10:特定されたPG-PLCの部分アミノ酸配列
配列番号11:PG-PLCの配列特定のためのiPCR用プライマー1
配列番号12:PG-PLCの配列特定のためのiPCR用プライマー2
配列番号13:サブクローニングのためのフォワードプライマー
配列番号14:サブクローニングのためのリバースプライマー
配列番号15:大腸菌発現の際にPG-PLCのN末端に付与したMCS由来21アミノ酸を含むアミノ酸配列
配列番号16:PG-PLC中の種間で保存性が高いことが確認された配列

Claims (9)

  1. 以下の工程を有する、試料中のホスファチジルグリセロールの定量方法:
    (1)(a)試料に、ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを反応させる工程、および
    (2)反応により生じた化合物の量を測定する工程。
  2. 工程(1)において、(b1)グリセロールリン酸オキシダーゼを反応させる工程、(b2)グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼを反応させる工程、または(b3)アルカリフォスファターゼを反応させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(2)における測定が、前記化合物に起因する蛍光、吸光、または発光の強度を測定することによる、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
  4. 生体試料中のホスファチジルグリセロールの量を被験体における疾患の状態の指標として用いる方法であって、
    (a)ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを用いて前記被験体由来の生体試料におけるホスファチジルグリセロールを定量する工程と、
    (b)前記ホスファチジルグリセロールの量を参照値と比較する工程
    とを含み、前記参照値と比較した前記ホスファチジルグリセロールの量の差異が、前記疾患の状態の指標となる方法。
  5. 前記疾患が自己免疫性疾患、および呼吸窮迫症候群からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記生体試料が前記被験体の血液、尿、羊水、細胞、または細胞破砕物、あるいは各種生物由来サンプルである、請求項4または5に記載の方法。
  7. 前記ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCが、ホスファチジルグリセロールに対する基質特異性を有し、カルジオリピンと実質的に反応しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 定量されるホスファチジルグリセロールが、種々のアシル基を有するホスファチジルグリセロールの総量である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. ホスファチジルグリセロール特異的なホスホリパーゼCを含む、ホスファチジルグリセロールの定量用キット。
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