JP2022119739A - 弾性材料、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオマテリアルとして有用な新規な生体機能性材料を提供すること。【解決手段】エラスチン、コラーゲン、キトサン、及び溶媒を含有するゲル状弾性材料であり、例えば、エラスチン、コラーゲン及びキトサンが、クエン酸により架橋されているものが好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、エラスチン、コラーゲン及びキトサンを用いた弾性材料、及びその製造方法に関する。
人の損傷した組織を再生させて治療する再生医療の産業分野においては、人体に適合するバイオマテリアルが求められている。再生医療に用いられるバイオマテリアルに求められる性能としては、人体に対して安全であり、強度及び弾力性を兼ね備えていることが挙げられ、これらの性能を備えたマテリアルの開発が望まれている。
現在までに開発されたバイオマテリアル、例えば、人工血管やドラッグデリバリーシステム(DDS)担体用材料には、それらの使用目的や機能を達成するために有用な有機化合物の人工的なポリマーなどが使用されている。これらは、生体に含まれない成分からなるため、永久的な使用が困難で、さらに人体に対する安全性も低いことが問題である。
一方、血管や肺など、生体の弾性組織に存在するエラスチンは、身体の弾力を生み出すタンパク質であり、これまでバイオマテリアルの素材として期待されてきたが、不溶性であることを理由に研究が遅れたことなどから、コストや技術的問題を克服できず、バイオマテリアル素材としての利用はほとんどない。
また、コラーゲン(ゼラチン)等の生体由来の高分子タンパク質を用いた素材も検討されてきたが(例えば、特許文献1、2参照)、コラーゲンは、硬さ(剛性)を有しており、弾力性に劣るという問題や、強度が低い(硬い素材は脆い)等の問題から、汎用的に利用されるには至っていない。
本発明の課題は、バイオマテリアルとして有用な新規な生体機能性材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エラスチン、コラーゲン、及びキトサンの3種の素材を用いて製造した弾性材料が、優れた生体機能材料となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]エラスチン、コラーゲン、キトサン、及び溶媒を含有することを特徴とする弾性材料。
[2]前記溶媒の含有量が5~80w/w%であることを特徴とする[1]記載の弾性材料。
[3]前記エラスチン、コラーゲン及びキトサンが架橋されていることを特徴とする[1]又は[2]記載の弾性材料。
[4]クエン酸又はその塩を用いた架橋であることを特徴とする[3]記載の弾性材料。
[5]架橋可逆性を有することを特徴とする[4]記載の弾性材料。
[1]エラスチン、コラーゲン、キトサン、及び溶媒を含有することを特徴とする弾性材料。
[2]前記溶媒の含有量が5~80w/w%であることを特徴とする[1]記載の弾性材料。
[3]前記エラスチン、コラーゲン及びキトサンが架橋されていることを特徴とする[1]又は[2]記載の弾性材料。
[4]クエン酸又はその塩を用いた架橋であることを特徴とする[3]記載の弾性材料。
[5]架橋可逆性を有することを特徴とする[4]記載の弾性材料。
[6]6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の伸長率が10%以上であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか記載の弾性材料。
[7]6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の最大応力が0.5MPa以上であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか記載の弾性材料。
[7]6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の最大応力が0.5MPa以上であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか記載の弾性材料。
[8]エラスチン、コラーゲン、及びキトサンを溶媒中で混合した後、固化することを特徴とする弾性材料の製造方法。
[9]前記固化に際して、低温乾燥処理、及び架橋処理の少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする[8]記載の弾性材料の製造方法。
[10]低温乾燥処理が、0超~15℃下の乾燥処理であることを特徴とする[9]記載の弾性材料の製造方法。
[11]コラーゲン濃度1~30w/v%となるようにコラーゲンを溶媒中に添加することを特徴とする[8]~[10]のいずれか記載の弾性材料の製造方法。
[9]前記固化に際して、低温乾燥処理、及び架橋処理の少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする[8]記載の弾性材料の製造方法。
[10]低温乾燥処理が、0超~15℃下の乾燥処理であることを特徴とする[9]記載の弾性材料の製造方法。
[11]コラーゲン濃度1~30w/v%となるようにコラーゲンを溶媒中に添加することを特徴とする[8]~[10]のいずれか記載の弾性材料の製造方法。
[12]エラスチン、コラーゲン、及びキトサンを含有することを特徴とする弾性材料製造用組成物。
[13]前記エラスチン、コラーゲン、及びキトサンが、固形分換算で、80質量%以上含有されていることを特徴とする[12]記載の弾性材料製造用組成物。
[13]前記エラスチン、コラーゲン、及びキトサンが、固形分換算で、80質量%以上含有されていることを特徴とする[12]記載の弾性材料製造用組成物。
本発明によれば、バイオマテリアルとして有用な新規な生体機能性材料を提供することができる。
本発明の弾性材料は、エラスチン、コラーゲン、キトサン、及び溶媒を含有することを特徴とする。本発明の弾性材料は、エラスチン、コラーゲン、キトサンの3成分の分子間の疎水性相互作用および水素結合を基本として形成された微細な三次元網目構造を有している。なお、以下の説明において、エラスチン、コラーゲン及びキトサンの3成分を、本発明の3成分ということがある。
本発明の弾性材料は、人体に対する安全性が高く、強度及び弾力性を兼ね備えている。したがって、バイオマテリアルとして有用である。例えば、生体組織同士の癒着を防止する癒着防止材(癒着防止膜)、止血用接着材(止血用接着膜)、人工血管等として用いることができる。また、薬剤等を含侵させるドラッグデリバリーシステム担体にも使用できる。また、創傷被覆材、フェイスマスク基材等の皮膚外用材として用いることもできる。さらに、経口用として用いることもできる。
本発明の弾性材料は、6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の伸長率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましく、200%以上であることが特に好ましく、300%以上であることが最も好ましい。また、6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の最大応力が0.5MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましく、1.5MPa以上であることがさらに好ましく、2.0MPa以上であることが特に好ましい。
エラスチンは、動物、特に哺乳動物の皮膚の真皮、靭帯、腱、血管、肺等の組織の中に存在するタンパク質であり、抗原性が低く、安定なタンパク質であることが報告されている。本発明におけるエラスチンとしては、このような動物由来のエラスチンを用いることができ、市販品を用いてもよい。また、本発明におけるエラスチンは、水溶性のものが好ましい。水溶性エラスチンは、親水性アミノ酸を多く含むゼラチン分子と相互作用しやすく、より弾力性を有する3次元的な立体構造を容易に構築できると考えられる。水溶性エラスチンとしては、例えば、動物生体組織から、酸又はアルカリによる加水分解や酵素処理により得たものが好ましい。具体的には、例えば、特許第4078431号や特許第6712014号に記載の方法を用いて得ることができる。他の成分と共にエラスチンを含有することにより、強度及び弾力性を兼ね備えた材料とすることができる。
また、エラスチンは、デスモシン類(Des+Ide)による架橋構造を有する。エラスチン構成全アミノ酸組成中のデスモシン類の含有量としては、0.1w/w%以上であることが好ましく、0.5w/w%以上であることがより好ましく、1.0w/w%以上であることがさらに好ましく、2.0w/w%以上であることが特に好ましい。
弾性材料中のエラスチンの含有量としては、1~80w/w%であることが好ましく、5~70w/w%であることがより好ましい。低温乾燥処理により製造する場合(実施例1参照)は、エラスチンの量は比較的多い方が好ましく、20~80w/w%が好ましく、30~80w/w%がより好ましい。従って、本発明の3成分として考えた場合は、各成分を混合する際の割合(w/v%)について、コラーゲンとエラスチンの量が同等もしくはエラスチンの量がコラーゲンより多い方が、より高い弾力性を発揮することができる。一方、クエン酸等の有機酸で架橋を行う場合(実施例2及び実施例3参照)は、十分な弾力性を付与するために、エラスチンの量は比較的少ない方が好ましく、架橋に用いる弾性材料のエラスチンの含有量は、5~50w/w%が好ましく、5~40w/w%がより好ましい。本発明の3成分として考えた場合は、各成分を混合する際の割合(w/v%)について、コラーゲンとエラスチンの量が同等もしくはコラーゲンの量がエラスチンより多い方が、より高い弾力性を発揮することができる。エラスチンの含有量がこの範囲にあることにより、コラーゲンがゲル化する際にランダム構造から本来の三重らせん構造からなる完全な剛体となることを妨げ、コラーゲンとキトサンによって弾性材料に適度な剛性(強度)を付与し、また、エラスチンが各成分間を橋渡しするように相互作用(主として疎水性相互作用と水素結合)して新たに形成されたコラーゲンのみからなるものとは異なる三次元の網目構造により、弾性材料に適度な弾力性を付与する。尚、低温乾燥処理を行う場合、クエン酸等の有機酸で架橋する場合のいずれにおいても、キトサンの量はコラーゲン及びエラスチンのいずれの量よりも少ない割合で含まれることが好ましい。
コラーゲンは、動物、特に哺乳動物や魚類の骨や軟骨、皮膚、内臓等に存在するタンパク質である。本発明のコラーゲンとしては、このような動物由来のコラーゲンを用いることができ、市販品を用いてもよい。また、本発明のコラーゲンは、水溶性のものが好ましく、本発明のコラーゲンには、天然コラーゲンを熱変性させて得られたゼラチンを含む。
弾性材料中のコラーゲン(ゼラチン)の含有量としては、5~80w/w%であることが好ましく、10~70w/w%であることがより好ましく、10~60w/w%であることがさらに好ましい。コラーゲンの含有量がこの範囲にあることにより、弾性材料に適度な剛性や弾力性を付与すると共に、コラーゲン分子がキトサン及びエラスチンと強く相互作用(主として疎水性相互作用と水素結合)し、弾性材料に適度な剛性(強度)を付与する。なお、架橋に用いる際も、上記含有量の弾性材料を用いることが好ましい。
キトサンは、グルコサミンがβ1,4結合によって連結した構造を有する多糖類である。本発明におけるキトサンとしては、例えば、エビ、カニ等の甲殻類の外骨格から得られるキチンを脱アセチル化したものを用いることができ、市販品を用いてもよい。キトサンの脱アセチル化度については、特に制限されず、例えば、脱アセチル化度50~100%、好ましくは80~100%のものを用いることができる。
弾性材料中のキトサンの含有量としては、0.1~25w/w%であることが好ましく、0.5~20w/w%であることが好ましく、0.5~15w/w%であることがさらに好ましい。キトサンの含有量がこの範囲にあることにより、キトサンがコラーゲン及びエラスチンと強く相互作用(主として疎水性相互作用と水素結合)し、弾性材料に適度な剛性(強度)を付与すると共に、水酸基やアミノ基などの親水基の存在によりそれらが水分子と結合し保水作用を有することで弾性素材に適度な保湿性を付与する。弾性材料は、キトサンにより保湿性を担保できるため、長期にわたって強度及び弾力性を保持することができる。なお、架橋に用いる際も、上記含有量の弾性材料を用いることが好ましい。
本発明の弾性材料における溶媒(分散媒を含む)としては、水、含水エタノール等の水溶性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。溶媒の含有量としては、本発明の材料がゲル状となる範囲が好ましく、例えば、弾性材料中、例えば、5~80w/w%であり、5~70w/w%であることが好ましく、10~65w/w%であることがより好ましく、15~60w/w%であることがさらに好ましく、15~40w/w%が特に好ましい。なお、架橋に用いる際も、上記含有量の弾性材料を用いることが好ましい。
本発明の弾性材料は、エラスチン、コラーゲン、及びキトサンを含有する原料組成物(弾性材料製造用組成物)を溶媒中で混合した後、固化(ゲル化)することにより得ることができる。弾性材料製造用組成物としては、例えば、本発明の3成分を含む混合粉体を挙げることができる。
弾性材料製造用組成物におけるエラスチン、コラーゲン、及びキトサンの本発明の3成分の含有量としては、固形分換算で、80w/w%以上であることが好ましく、90w/w%以上であることがより好ましく、95w/w%以上であることがさらに好ましく、99w/w%以上であることが特に好ましい。これら本発明の3成分以外の他の成分としては、例えば、弾性材料自体の性能の維持向上のための安定化剤、保存剤、酸化防止剤、耐候剤、着色剤、香料等を挙げることができる。また、使用時に生体に対して所定の効能を付与するための抗菌性物質や抗炎症剤等の医薬品、グリシン等のアミノ酸、ビタミン、ミネラル等を挙げることができる。
上記のように、弾性材料製造用組成物を用いて弾性素材を製造するためには固化することが必要であり、コラーゲンの溶媒に対する添加量としては、コラーゲン濃度が1~30w/v%、好ましくは10~30w/v%、より好ましくは15~30w/v%となるように添加することが好ましい。高濃度のコラーゲン溶液を用いることにより、より優れたゲル状の弾性材料とすることができる。なお、以下の説明において、ゲル状の弾性材料をゲル状弾性材料、ゲル状材料ということがある。
本発明の3成分を固化(ゲル化)する方法としては、特に制限されるものではなく、低温乾燥処理や架橋処理を挙げることができる。これにより、より優れた強度及び弾力性を備えた材料とすることができる。
低温乾燥処理としては、例えば、0超~15℃、好ましくは1~10℃の低温下、緩慢に乾燥することが好ましい。低温乾燥処理は、弾性材料中の溶媒の含有率が、例えば5~80w/w%、好ましくは5~70w/w%、より好ましくは10~65w/w%、さらに好ましくは15~60w/w%、特に好ましくは15~40w/w%となるように乾燥させる。
また、架橋処理としては、各種架橋剤を用いた方法などを用いることができる。架橋処理は、本発明の3成分を混合した後に行うことができ、上記低温乾燥処理により固化(ゲル化)した後に架橋処理してもよい。後者の場合、例えば、ゲル状物の溶媒含有率が40超~90w/w%、60超~90w/w%の状態のものであってもよい。
架橋剤としては、生体に対して安全性の高いものが好ましく、例えば、クエン酸、フェルラ酸、タンニン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、アスコルビン酸、フマル酸、フィチン酸、カフェオイルキナ酸等の有機酸、又はこれらの塩を挙げることができ、これらの中でも、高い架橋可逆性を示すことから、クエン酸が特に好ましい。
上記のように、本発明のクエン酸を用いて架橋した弾性材料は、架橋可逆性を有する。すなわち、架橋した弾性材料から、一旦、架橋剤としてのクエン酸を除去することができ、再度、クエン酸により架橋することにより、強度及び弾力性が復元される。
可逆的な架橋弾性材料は、生体内での迅速な生分解性能や高い安全性を有する、生体環境適合性の高い材料であると考えられる。また、このような性質は、激しい可動による損傷を受けても、少量の水分と加温で欠損箇所に被膜ができる。また、クエン酸架橋された弾性材料は、未架橋の弾性材料よりも、生体内で、より長時間、所定の強度及び弾力性を保持した状態で残存することが期待される。
通常の架橋された弾性材料では、生体中に埋め込んだ際に、激しい運動などにより、破損、穿孔、保護部位からのずれが予想される。その場合、再手術によるフィルムの交換が必要になる。これに対して、脱架橋可能な本発明の弾性材料においては、患部の激しい動きに対して生体内の水分を吸収し、脱架橋され緩やかに溶け出すことができる。その結果、少量の水分と加温により溶けた成分が欠損箇所に皮膜を作ることができるので、破損部分の修復、保護部位の接着性が高まると予想される。
通常の架橋された弾性材料では、生体中に埋め込んだ際に、激しい運動などにより、破損、穿孔、保護部位からのずれが予想される。その場合、再手術によるフィルムの交換が必要になる。これに対して、脱架橋可能な本発明の弾性材料においては、患部の激しい動きに対して生体内の水分を吸収し、脱架橋され緩やかに溶け出すことができる。その結果、少量の水分と加温により溶けた成分が欠損箇所に皮膜を作ることができるので、破損部分の修復、保護部位の接着性が高まると予想される。
本発明の弾性材料の形状としては、シート状、糸状、棒状、ペレット状、チューブ状等、特に制限されない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は実施例に限定して解釈されるものではない。本実施例においては、コラーゲンと同等の特性を有するゼラチンを用いて試験を行なった。以下、特に断りがない限り、「%」は、「w/v%」を表す。
[実施例1]
<低温緩慢乾燥によるゲル状材料の作製>
エラスチン(8%、16%、25%)、ゼラチン(5%、10%、20%)、及びキトサン(1%)を水と混合した後、4℃で、当初含水率の20%の含水率まで緩慢乾燥させて、実施例1のゲル状弾性材料を得た。具体的には、固化した直後のゲル状弾性材料の重量実測値aから、目的の残存水分量(初期水分量を100%としたときの初期水分比(20%))になるゲル重量を計算により求め、その重量になるまで乾燥させた。本実施例で用いたエラスチンは、豚大動脈由来のエラスチンであり、エラスチン構成全アミノ酸組成中のデスモシン類(Des+Ide)の含有量は、約2.5w/w%であった(以下同様)。
<低温緩慢乾燥によるゲル状材料の作製>
エラスチン(8%、16%、25%)、ゼラチン(5%、10%、20%)、及びキトサン(1%)を水と混合した後、4℃で、当初含水率の20%の含水率まで緩慢乾燥させて、実施例1のゲル状弾性材料を得た。具体的には、固化した直後のゲル状弾性材料の重量実測値aから、目的の残存水分量(初期水分量を100%としたときの初期水分比(20%))になるゲル重量を計算により求め、その重量になるまで乾燥させた。本実施例で用いたエラスチンは、豚大動脈由来のエラスチンであり、エラスチン構成全アミノ酸組成中のデスモシン類(Des+Ide)の含有量は、約2.5w/w%であった(以下同様)。
製造したゲル状弾性組成物の各成分の含有割合は、以下の表1に示す通りである。
製造したゲル状弾性組成物の各成分の含有割合は、固化した直後のゲル状弾性材料の重量実測値a(乾燥前のゲル状弾性材料を実際に測定した重量)に基づいて算出されたものである。尚、当初%とは、各成分を混合する際の割合(w/v%)である。
エラスチン量=重量実測値a×エラスチン当初%
ゼラチン量=重量実測値a×ゼラチン当初%
キトサン量=重量実測値a×キトサン当初%
水分量=重量実測値a-エラスチン量-ゼラチン量-キトサン量
製造したゲル状弾性組成物の各成分の含有割合は、固化した直後のゲル状弾性材料の重量実測値a(乾燥前のゲル状弾性材料を実際に測定した重量)に基づいて算出されたものである。尚、当初%とは、各成分を混合する際の割合(w/v%)である。
エラスチン量=重量実測値a×エラスチン当初%
ゼラチン量=重量実測値a×ゼラチン当初%
キトサン量=重量実測値a×キトサン当初%
水分量=重量実測値a-エラスチン量-ゼラチン量-キトサン量
得られたゲル状弾性材料を6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で打ち抜いて、引張試験機(精密万能試験機(オートグラフ EZ-LX 1kN((株)島津製作所製))を用いて引張試験を行った。伸長率は、標線間の移動量から算出した。なお、引張試験は、一般財団法人化学物質評価研究機構(CERI)へ委託して行った(実施例2及び3も同様)。
表2に、低温緩慢乾燥した実施例1のゲル状弾性材料の引張試験結果を示す。尚、表中に表記されているDEは低温緩慢乾燥を意味する略語であり、後述するCAはクエン酸架橋処理を意味する略語である。
表1に示す成分比で作製した実施例1の各種のゲル状弾性材料については、表2に示すように、エラスチン含有量が8%から25%に増加するにつれて最大応力及び伸長率が増加傾向を示した。すなわち、低温緩慢乾燥により製造された実施例1のゲル状弾性材料においては、エラスチン濃度依存的に、強度及び弾力性(伸長性)が付加されることが示された。
[実施例2]
<クエン酸架橋によるゲル状材料の作製>
エラスチン(8%、16%、25%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%、5%)を水と混合した後、4℃で24時間、冷却固化させて得たゲル状材料(当初含水率比ほぼ100%)を、1.2Mクエン酸溶液(pH7.2)に室温、72時間浸潤して、実施例2のゲル状弾性材料を得た。得られたゲル状弾性材料を用いて、実施例1と同様に引張試験を行った。
<クエン酸架橋によるゲル状材料の作製>
エラスチン(8%、16%、25%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%、5%)を水と混合した後、4℃で24時間、冷却固化させて得たゲル状材料(当初含水率比ほぼ100%)を、1.2Mクエン酸溶液(pH7.2)に室温、72時間浸潤して、実施例2のゲル状弾性材料を得た。得られたゲル状弾性材料を用いて、実施例1と同様に引張試験を行った。
架橋に用いたゲル状弾性組成物の各成分の含有割合は、以下の表3に示す通りである。
表4に、クエン酸架橋した実施例2のゲル状弾性材料の引張試験結果を示す。
表3に示す成分比で作製した実施例2の各種のゲル状弾性材料については、表4に示すように、実施例1の低温緩慢乾燥ゲル状弾性材料に比して、最大応力及び伸長率が大きく向上した。
以上より、ゲル状材料に含まれる各成分をクエン酸により架橋することにより、強度及び弾力性(伸長性)が付加されることが示された。
以上より、ゲル状材料に含まれる各成分をクエン酸により架橋することにより、強度及び弾力性(伸長性)が付加されることが示された。
[実施例3]
<低温緩慢乾燥クエン酸架橋によるゲル状材料の作製>
実施例1と同様に当初含水率の20%の含水率まで低温緩慢乾燥させたゲル状材料(エラスチン8%、16%、25%)を、実施例2と同様にクエン酸架橋して、実施例3のゲル状弾性材料を得た。得られたゲル状弾性材料を用いて、実施例1と同様に引張試験を行った。
<低温緩慢乾燥クエン酸架橋によるゲル状材料の作製>
実施例1と同様に当初含水率の20%の含水率まで低温緩慢乾燥させたゲル状材料(エラスチン8%、16%、25%)を、実施例2と同様にクエン酸架橋して、実施例3のゲル状弾性材料を得た。得られたゲル状弾性材料を用いて、実施例1と同様に引張試験を行った。
架橋に用いたゲル状弾性組成物の各成分の含有割合は、以下の表5に示す通りである。
表6に、低温緩慢乾燥後にクエン酸架橋した実施例3のゲル状弾性材料の引張試験結果を示す。
表5に示す成分比で作製した実施例3の各種のゲル状弾性材料については、表6に示すように、実施例1の低温緩慢乾燥ゲル状弾性材料に比して、最大応力及び伸長率が大きく向上した。
以上より、乾燥したゲル状材料においても、ゲル状材料に含まれる各成分をクエン酸により架橋することにより、強度及び弾力性(伸長性)が付加されることが示された。また、クエン酸で架橋する場合、エラスチン量が比較的少ない場合に、高い最大応力及び伸長率を示す傾向が明らかとなった。
以上より、乾燥したゲル状材料においても、ゲル状材料に含まれる各成分をクエン酸により架橋することにより、強度及び弾力性(伸長性)が付加されることが示された。また、クエン酸で架橋する場合、エラスチン量が比較的少ない場合に、高い最大応力及び伸長率を示す傾向が明らかとなった。
また、以下に、実施例1~3の製造方法において、エラスチン無配合の場合と、エラスチンを8%配合(当初)の場合の弾性率を比較した表を示す。表7~9に示すように、エラスチンを配合することにより、伸長率が大きく向上することが示された。
[実施例4]
<可逆架橋試験>
エラスチン(8%、16%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%)を水と混合した後、4℃で24時間(当初含水率比ほぼ100%)、冷却固化させて得たゲル状材料を、0.6M、0.8M及び1.2Mのクエン酸溶液に室温、72時間浸潤し、架橋した。なお、比較として、未架橋のゲル状材料も作製した。架橋したゲル状弾性材料の写真を図1に示す。なお、図1中、(1)は未架橋、(2)は0.6Mクエン酸架橋、(3)は0.8Mクエン酸架橋、(4)は1.2Mクエン酸架橋を示す。
<可逆架橋試験>
エラスチン(8%、16%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%)を水と混合した後、4℃で24時間(当初含水率比ほぼ100%)、冷却固化させて得たゲル状材料を、0.6M、0.8M及び1.2Mのクエン酸溶液に室温、72時間浸潤し、架橋した。なお、比較として、未架橋のゲル状材料も作製した。架橋したゲル状弾性材料の写真を図1に示す。なお、図1中、(1)は未架橋、(2)は0.6Mクエン酸架橋、(3)は0.8Mクエン酸架橋、(4)は1.2Mクエン酸架橋を示す。
次に、各架橋ゲル状材料を、37℃で3時間、1×PBS溶液(リン酸緩衝生理食塩水;0.2g/Lリン酸二水素カリウム、0.2g/L塩化カリウム、1.15g/Lリン酸水素二ナトリウム、8g/L塩化ナトリウム)中で脱架橋処理し、各ゲル状材料の状態を観察した。
図2に、1×PBS溶液に3時間浸漬したエラスチン8%含有ゲル状弾性材料の写真を示す。
図2に示すように、未架橋のゲルは、形状が確認できないくらい完全に崩壊し、溶媒が濁った。0.6Mクエン酸架橋ゲルも、若干のゲル崩壊及び溶媒の濁りが確認された。一方、0.8及び1.2Mクエン酸架橋ゲルは、ほとんどが形状を保ち残存していた。したがって、クエン酸架橋ゲルは、未架橋ゲルに比べ、生体内でより長時間残存することが期待される。
図2に示すように、未架橋のゲルは、形状が確認できないくらい完全に崩壊し、溶媒が濁った。0.6Mクエン酸架橋ゲルも、若干のゲル崩壊及び溶媒の濁りが確認された。一方、0.8及び1.2Mクエン酸架橋ゲルは、ほとんどが形状を保ち残存していた。したがって、クエン酸架橋ゲルは、未架橋ゲルに比べ、生体内でより長時間残存することが期待される。
さらに3時間経過後、残存したゲル状材料をPBS溶液から慎重に取り出し、詳細な観察を行った。
図3に、各ゲル状材料の様子を示す。
図3に示すように、各クエン酸架橋ゲルは、3時間経過後においても溶液中に形状を保ち残存した。最大応力及び伸長率は、測定不可能なほど弱く、最大応力0MPa、及び伸長率0%であったことから、脱架橋されていることが示された。
図3に示すように、各クエン酸架橋ゲルは、3時間経過後においても溶液中に形状を保ち残存した。最大応力及び伸長率は、測定不可能なほど弱く、最大応力0MPa、及び伸長率0%であったことから、脱架橋されていることが示された。
その後、脱架橋したゲル状材料を、それぞれ0.8及び1.2Mクエン酸溶液へ、室温、72時間浸潤させ、再架橋した。図4に、再架橋したゲル状弾性材料の写真を示す。
また、反応終了後、再架橋された各ゲル状材料(エラスチン8%(RE-8)、エラスチン16%(RE-16))の引張試験を行った。
表10に、0.8Mクエン酸溶液で再架橋したゲル状弾性材料の引張試験の結果を示し、表11に1.2Mクエン酸溶液で再架橋したゲル状弾性材料の引張試験の結果を示す。なお、本引張試験は、8号型ダンベル試験片(JIS K6251-8)を用いて研究室内に設置された「MCT-2150引張試験機」により引張試験を行い、伸長率の計算は付属ソフトMSAT-Liteにより算出した。また、8%エラスチン含有ゲル状材料を0.8及び1.2Mクエン酸溶液で架橋したゲル状材料(E8CA)を比較対象とした。
エラスチン量8%のRE-8及びE8CAの比較から、0.8Mクエン酸再架橋ゲルでは、最大応力が40%強、1.2Mクエン酸再架橋ゲルでは、最大応力が70%程度まで回復することが確認された。また、伸長率は、70~80%程度まで回復することが確認された。
以上より、クエン酸架橋ゲル状弾性材料は再架橋することが可能であり、その最大応力及び伸長率は、1.2Mクエン酸溶液によって70%程度まで回復することが明らかとなった。
[実施例5]
<グリシン含有ゲル状弾性材料の作製>
エラスチン(8%、16%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%)を、10g又は20g/100mlグリシン水溶液と混合し、4℃で24時間(当初含水率比ほぼ100%)冷却固化させた。次に、4℃で72時間の低温緩慢乾燥、又は1.2Mクエン酸溶液架橋を行ったゲル状弾性材料を作製した。
<グリシン含有ゲル状弾性材料の作製>
エラスチン(8%、16%)、ゼラチン(20%)、及びキトサン(1%)を、10g又は20g/100mlグリシン水溶液と混合し、4℃で24時間(当初含水率比ほぼ100%)冷却固化させた。次に、4℃で72時間の低温緩慢乾燥、又は1.2Mクエン酸溶液架橋を行ったゲル状弾性材料を作製した。
図5に、作製したグリシン含有ゲル状弾性材料の写真を示す。左が10g/100mlグリシン水溶液を用いたものであり、右が20g/100mlグリシン水溶液を用いたものである。また、(1)は未架橋、(2)は低温緩慢乾燥、(3)はクエン酸架橋を示す。
図5に示すように、グリシン含有ゲル状弾性材料において、白い結晶が見られた。これらは、水分の蒸発によるグリシンの析出によるものであると考えられ、本発明のゲル状弾性材料は、水分量に依存してグリシン等の試薬を包埋することができることが示唆された。
その後、作製したグリシン含有ゲル状弾性材料を用いて、手動による引張試験を行った。
未架橋のグリシン含有ゲル状弾性材料(グリシン10g及び20g/ml)は、グリシンを含有しないゲル状弾性材料に比して、若干の伸長性が付加された感触を得た。
本発明の弾性素材製造用組成物は、様々な医用材料としての利用が期待されることから、産業上有用である。
Claims (13)
- エラスチン、コラーゲン、キトサン、及び溶媒を含有することを特徴とする弾性材料。
- 前記溶媒の含有量が5~80w/w%であることを特徴とする請求項1記載の弾性材料。
- 前記エラスチン、コラーゲン及びキトサンが架橋されていることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性材料。
- クエン酸又はその塩を用いた架橋であることを特徴とする請求項3記載の弾性材料。
- 架橋可逆性を有することを特徴とする請求項4記載の弾性材料。
- 6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の伸長率が10%以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の弾性材料。
- 6号型ダンベル試験片(JIS K6251-6)で引張試験を行った場合の最大応力が0.5MPa以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載の弾性材料。
- エラスチン、コラーゲン、及びキトサンを溶媒中で混合した後、固化することを特徴とする弾性材料の製造方法。
- 前記固化に際して、低温乾燥処理、及び架橋処理の少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする請求項8記載の弾性材料の製造方法。
- 低温乾燥処理が、0超~15℃下の乾燥処理であることを特徴とする請求項9記載の弾性材料の製造方法。
- コラーゲン濃度1~30w/v%となるようにコラーゲンを溶媒中に添加することを特徴とする請求項8~10のいずれか記載の弾性材料の製造方法。
- エラスチン、コラーゲン、及びキトサンを含有することを特徴とする弾性材料製造用組成物。
- 前記エラスチン、コラーゲン、及びキトサンが、固形分換算で、80質量%以上含有されていることを特徴とする請求項12記載の弾性材料製造用組成物。
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