JP2022115739A - 発振器 - Google Patents

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Abstract

【課題】クロストークを低減することができる発振器を提供する。【解決手段】発振器は、SQUID102と、前記SQUID102に接続された伝送線路103aと、グランドプレーン106と、前記発振器の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍に設けられ、前記伝送線路103aの両脇に存在する前記グランドプレーン106をつなぐ第一の接続回路107aとを有する。【選択図】図10A

Description

本発明は、発振器に関し、特に、超伝導量子回路のクロストークを低減するための技術に関する。
複数の量子ビットが集積されている量子回路のチップにおいて、クロストークを低減することは重要な課題である。ここでクロストークとは、例えば、ある量子ビットに制御信号を入力した際に、何らかの原因でその制御信号が別の量子ビットとカップルしてしまい、別の量子ビットをも意図せず制御してしまうことである。具体的には、例えば、別の量子ビットの共振周波数を変えてしまうことである。実験では、DC(Direct Current:直流電流)の制御信号を量子ビットに入力した場合にも、20 GHzなどの高周波の制御信号を量子ビットに入力した場合にも、クロストークが観測されている。
超伝導量子回路のチップは、例えばコプレナウェーブガイドの構造を用いて作製される。特許文献1は、そのような量子回路のチップにおいて、クロストークを低減することができる技術を開示している。この文献に記載された構成では、エアブリッジを用いて、コプレナウェーブガイドの芯線の両側のGND(グランド)を電気的に接続することにより、芯線の両側のGNDを等電位に保つようにしている。これによって、スロットラインモードが抑制され、その結果、クロストークを低減できる。
特表2018-524795号公報
しかしながら、超伝導量子回路は、研究及び開発において、発展の途上の技術であり、クロストークの低減に関する新規な技術の提供が求められている。
本開示はこのような問題を解決するためになされたものであり、クロストークを低減することができる発振器を提供することを目的とする。
本開示の第1の態様にかかる発振器は、
SQUIDと、
前記SQUIDに接続された伝送線路と、
グランドプレーンと、
前記発振器の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍に設けられ、前記伝送線路の両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ第一の接続回路とを有する。
上述の構成によれば、クロストークを低減することができる発振器を提供することができる。
2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトを示す図である。 2 bitの分布定数型の超伝導量子回路の等価回路図である。 2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトのSQUID付近の拡大図である。 2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトのSQUID付近の拡大図である。 第一の量子ビットの制御ラインから第一の量子ビットに20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 λ/4線路の全体にわたって、20 GHzに対応する波長の1/10以下の間隔でエアブリッジを設置した場合のチップレイアウトを示す図である。 λ/4線路の全体にわたってエアブリッジを設置した場合に、第一の量子ビットの制御ラインから第一の量子ビットに20 GHzの制御信号を入力したときのシミュレーション結果を示すグラフである。 第一の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトを示す図である。 第一の実施形態の超伝導回路の等価回路図である。 第一の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトの第一の量子ビット付近の拡大図である。 第一の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトのSQUID付近の拡大図である。 第一の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトのSQUID付近の拡大図である。 第一の実施形態の超伝導回路において、第一の量子ビットの制御ラインから第一の量子ビットに20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 第二の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトを示す図である。 第二の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトの第一の量子ビット付近の拡大図である。 第二の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトの第二の量子ビットのSQUID付近の拡大図である。 第二の実施形態の超伝導回路において、第一の量子ビットの制御ラインから第一の量子ビットに20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 図1に示した量子回路における第二の量子ビットのレイアウトを示す図である。 図1に示した量子回路における第二の量子ビットの等価回路図である。 第二の実施形態の第二の量子ビットのレイアウトを示す図である。 第二の実施形態の第二の量子ビットの等価回路図である。 エアブリッジを設置していない第二の量子ビットの共振周波数を設定する場合の動作を説明する図である。 GNDプレーンにクロストークの原因となるDC電流が流れている場合の、エアブリッジを設置していない第二の量子ビットの動作を説明する図である。 第二の実施形態の第二の量子ビットの共振周波数を設定する場合の動作を説明する図である。 GNDプレーンにクロストークの原因となるDC電流が流れている場合の、第二の実施形態の第二の量子ビットの動作を説明する図である。 シミュレーションの対象とした6種類の構成例を示す図である。 6種類の構成に対するシミュレーション結果を示すグラフである。 第二の実施形態の第二の変形例の超伝導回路のチップレイアウトを示す図である。 第二の実施形態の第二の変形例の超伝導回路の等価回路図である。 第三の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトの第一の量子ビットのSQUID付近の拡大図である。 第三の実施形態の超伝導回路の等価回路図である。 第四の実施形態の超伝導回路のチップレイアウトの第一の量子ビットのSQUID付近の拡大図である。 第四の実施形態の超伝導回路の等価回路図である。 集中定数型の超伝導量子ビットの等価回路図である。 集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第五の実施形態にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第五の実施形態にかかる集中定数型の超伝導量子ビットの別のレイアウトを示す図である。 第五の実施形態の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第六の実施形態にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第七の実施形態にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第五の実施形態の第一の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットの等価回路図である。 第五の実施形態の第一の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第五の実施形態の第一の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットの別のレイアウトを示す図である。 第五の実施形態の第二の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットの等価回路図である。 第五の実施形態の第二の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットのレイアウトを示す図である。 第五の実施形態の第二の変形例にかかる集中定数型の超伝導量子ビットの別のレイアウトを示す図である。 第八の実施形態にかかる量子ビットの一部を形成したチップのレイアウトを示す図である。 第八の実施形態にかかる量子ビットの一部を形成した基板のレイアウトを示す図である。 第八の実施形態にかかる量子ビットの一部を形成したチップと基板をフリップチップ接続した構造の断面図である。 制御ラインの両脇のGNDプレーンを接続する場合のチップのレイアウトを示す図である。 制御ラインの両脇のGNDプレーンを接続する場合の基板のレイアウトを示す図である。 U字状の制御ラインが用いられる場合のチップのレイアウトを示す図である。 U字状の制御ラインが用いられる場合の基板のレイアウトを示す図である。 直線状の制御ラインが用いられる場合のチップのレイアウトを示す図である。 直線状の制御ラインが用いられる場合の基板のレイアウトを示す図である。 図41で示したレイアウトに、説明のための描画を追加した図である。 図49で示した基板のGNDプレーンにクロストークの原因となる電流が流れてしまった場合の問題を説明する図である。 第九の実施形態にかかる基板のレイアウトを示す図である。 図51に示す基板のGNDプレーンに電流が流れてしまった場合の影響について説明する図である。 第九の実施形態の第一の変形例にかかる基板のレイアウトを示す図である。 チップと基板を、バンプを用いてフリップチップ接続した構造の断面図である。 第九の実施形態の第二の変形例にかかる基板のレイアウトを示す図である。 第九の実施形態の第三の変形例にかかる基板のレイアウトを示す図である。 第九の実施形態のその他の変形例にかかる基板のレイアウトを示す図である。 第九の実施形態のその他の変形例にかかる基板のレイアウトを示す図である。
以下の説明において、ジョセフソン接合とは、第1の超伝導体と第2の超伝導体で薄い絶縁膜を挟んだ構造を有する素子をいう。また、SQUID(超伝導量子干渉計; Superconducting QUantum Interference Device)とは、2つのジョセフソン接合を超伝導線路によりループ状につないだ素子である。また、以下で説明される回路の一部または全部は、例えば、超伝導体により形成した線路(配線)を用いて構成され、超伝導状態を実現するため、例えば10mK(ミリケルビン)程度の温度環境において利用される。
[事前の検討]
まず、複数の量子ビットが集積された超伝導量子回路のチップにおけるクロストークの問題について述べる。
複数の量子ビットが集積された量子回路のチップの一例として、図1に、2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトを示す。図2には、図1の2 bitの分布定数型の超伝導量子回路の等価回路図を示す。この2 bitの分布定数型の超伝導量子回路は、第一の量子ビット1001と第二の量子ビット1002がキャパシタ1303を介して結合している構成を有する。第一の量子ビット1001も第二の量子ビット1002も同様の構成である。第一の量子ビット1001は、SQUID 1102の両端にふたつの分布定数線路が接続された構成を有する。これらの分布定数線路は、第一の量子ビット1001の動作周波数に対応する波長の1/4の長さに対応する長さを有するので、以下ではλ/4線路1103a、および、λ/4線路1103bと呼ぶ。第一の量子ビット1001の動作周波数が10 GHz程度の場合、λ/4線路1103a、および、λ/4線路1103bの長さは2~3 mm程度である。SQUID 1102には制御ライン1104が磁気的に結合している。言い換えれば、制御ライン1104とSQUID 1102とは相互インダクタンスにより非接触に磁気結合している。制御ライン1104からDCの制御信号を入力することにより、第一の量子ビット1001の共振周波数を設定することができる。制御ライン1104に、ある共振周波数に設定するためのDCの制御信号を入力した状態で、制御ライン1104に、さらに、設定した共振周波数の2倍の周波数の制御信号を入力することにより第一の量子ビット1001を発振させることができる。第一の量子ビット1001の動作周波数(設定した共振周波数)は、例えば10 GHz程度である。したがって、第一の量子ビット1001を動作させるときには、制御ライン1104から、DCの制御信号と20 GHz程度の高周波の制御信号を重ね合わせた信号を入力する。第二の量子ビット1002の構成と動作のさせ方は第一の量子ビット1001と同様であるので詳細な説明は省略する。
図に示した構成では、プリント基板(PCB: printed circuit board)1005の配線にボンディングワイヤ1006を用いて電気的に接続されたチップ1004上に、第一の量子ビット1001と第二の量子ビット1002が存在する。第二の量子ビット1002は、SQUID 1202、λ/4線路1203a、λ/4線路1203bを有する。SQUID 1202には制御ライン1204が磁気的に結合している。なお、第一の量子ビット1001のλ/4線路1103aの一端はSQUID 1102と接続しており、λ/4線路1103aの他端はキャパシタ1301と接続している。また、第一の量子ビット1001のλ/4線路1103bの一端はSQUID 1102と接続しており、λ/4線路1103bの他端はキャパシタ1303と接続している。同様に、第二の量子ビット1002のλ/4線路1203aの一端はSQUID 1202と接続しており、λ/4線路1203aの他端はキャパシタ1302と接続している。また、第二の量子ビット1002のλ/4線路1203bの一端はSQUID 1202と接続しており、λ/4線路1203bの他端はキャパシタ1303と接続している。図2に示すように、SQUID 1102は、ジョセフソン接合1105aとジョセフソン接合1105bとがループ状に接続された素子であり、その両端は、λ/4線路1103a、1103bと接続している。同様に、SQUID 1202は、ジョセフソン接合1205aとジョセフソン接合1205bとがループ状に接続された素子であり、その両端は、λ/4線路1203a、1203bと接続している。
図3Aに、図1における第一の量子ビット1001のSQUID 1102の付近の拡大図を示す。また、図3Bに、図1における第二の量子ビット1002のSQUID 1202の付近の拡大図を示す。ここでは、図3Aの第一の量子ビット1001について説明し、同様の説明が可能である量子ビット1002については説明を省略する。
制御ライン1104の先端部は第一の分岐ライン11041と第二の分岐ライン11042に分岐しており、このうち第一の分岐ライン11041はSQUID 1102と磁気結合するようにするために、SQUID 1102の近くにレイアウトされている。一方、第二の分岐ライン11042はSQUID 1102と磁気結合しないようにするために、SQUID 1102から離れたところにレイアウトされている。
制御ライン1104及びλ/4線路1103a、1103bは、コプレナウェーブガイドとして構成されている。コプレナウェーブガイドとして構成された線路の周囲にはGND(グランド)プレーン1106が存在する。第一の分岐ライン11041と第二の分岐ライン11042は、いずれもこのGNDプレーン1106に接続している。なお、このような分岐により、制御ライン1104の両サイドのGNDプレーン1106にそれぞれ流れる、制御ライン1104からの電流の偏りが抑えられる。
なお、図3Aにおいて、符号11031aは、λ/4線路1103aの芯線を表し、符号11031bは、λ/4線路1103bの芯線を表している。同様に、図3Bにおいて、符号12031aは、λ/4線路1203aの芯線を表し、符号12031bは、λ/4線路1203bの芯線を表している。さらに、図3Bにおいて、符号12041及び符号12042は、制御ライン1204の第一の分岐ラインと第二の分岐ラインを表し、符号1206は、GNDプレーンを表す。
クロストークとは、例えば第一の量子ビット1001に制御ライン1104からDCまたは高周波の制御信号を入力したときに、その制御信号が何らかの原因で第二の量子ビット1002のSQUID 1202と結合してしまい、第二の量子ビット1002が影響を受けてしまうというものである。具体的には、例えば第二の量子ビット1002の共振周波数が変わってしまうというものである。
このクロストークの原因を理解するために電磁界解析ソフトウエアを用いたシミュレーションを行った。ここでは、アンシス・ジャパン株式会社製のANSYS HFSSを用いてシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、第一の量子ビット1001の制御ライン1104から、第一の量子ビット1001に20 GHzの制御信号を入力すると、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aに沿って強い電流が流れた。そして、さらに次のような結果が得られた。図4は、第一の量子ビット1001の制御ライン1104から、第一の量子ビット1001に20 GHzの制御信号を入力した場合に、第一の量子ビット1001のSQUID 1102に流れる電流と、第二の量子ビット1002のSQUID 1202に流れる電流を示すグラフである。なお、図4のグラフにおいて、横軸は、制御信号の位相を示している。縦軸は電流の大きさを示している。図4のように、第一の量子ビット1001のSQUID 1102には、位相によって正弦波状に変動する電流が流れる。なお、図4の縦軸は、最大値が1になるように規格化されている。第一の量子ビット1001のSQUID 1102は、制御ライン1104と磁気結合するように設計されているため、第一の量子ビット1001のSQUID 1102に電流が流れるのは狙った通りの動作である。しかしながら、図4に示されるように、本来、電流が流れてはいけないはずの第二の量子ビット1002のSQUID 1202にも電流が流れてしまっている。第二の量子ビット1002のSQUID 1202に流れる電流の最大値は0.32であり、つまり、第一の量子ビット1001のSQUID 1102に流れる電流の32 %もの大きな電流が流れてしまっている。つまり、第二の量子ビット1002のSQUID 1202が高周波のクロストークの影響を受けてしまっていることがわかる。
図4の結果は、制御ライン1104から20 GHzの高周波の制御信号を入力すると、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aに沿って高周波の電磁場が伝搬してしまうことを示している。これは、等電位であってほしいλ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aの芯線11031a, 11031b, 12031b, 12031aの両側のGNDプレーン1106, 1206に電位差が発生してしまうことが原因だと考えられる。したがって、この問題を解決するには、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aの芯線11031a, 11031b, 12031b, 12031aの両側のGNDプレーン1106, 1206を電気的に短絡すればよい。具体的には、これは、例えば、特許文献1にも記載されているように、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aのところどころにエアブリッジを設置することにより達成できると考えられる。その際、エアブリッジを設置する間隔は、例えば、伝搬する電磁場の波長より十分短くするという方法がある。ここで一例として検討している制御信号の周波数は20 GHzなので、シリコン基板上での波長は約5.9 mmである。それより十分短い間隔、例えば600 μm(波長の約1/10)以下の間隔でエアブリッジを設置することを考える。なお、ここで、エアブリッジとは、導電性の材料、例えば金属で作製された構造であり、芯線の両側のGNDプレーンを電気的に接続する構造である。エアブリッジは、芯線に接触せず、芯線と立体的に交差する構造になっている。そのため、エアブリッジと芯線は電気的に接続されていない。エアブリッジと芯線の間は、一般に空気または真空である。超伝導量子回路の場合は、エアブリッジと芯線の間は真空である。ただし、エアブリッジは一般に半導体のプロセス技術を用いて作製されるが、エアブリッジを作製する過程で、エアブリッジの周辺にレジストなどの誘電体が残留してしまう可能性はある。
図5に、そのような考え方に従って、20 GHzに対応する波長より十分短い間隔で、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aに対してエアブリッジ1107a~1107m、および、1207a~1207mを設置した場合のチップレイアウトを示す。また、図6には、図5に示した構成において、第一の量子ビット1001の制御ライン1104から第一の量子ビット1001に20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーション結果を示す。エアブリッジ1107a~1107m、および、1207a~1207mを設置したことにより、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aに沿って流れる電流は抑制され、その結果、図6に示すように、第二の量子ビット1002のSQUID 1202に流れる電流は第一の量子ビット1001のSQUID 1102に流れる電流の約1%に低下した。したがって、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aの全体にわたって、制御信号の波長よりも十分短い間隔でエアブリッジ1107a~1107m、および、1207a~1207mを複数設置することにより、高周波のクロストークを大幅に抑制できることが分かる。
しかし、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aの全体にわたってエアブリッジを形成すると量子ビットのQ値(Quality factor)が低下してしまう恐れがある。その原因として考えられるのは、エアブリッジを作製した際に残留してしまうレジストなどの誘電体による誘電損失がある。量子ビットの動作時には、量子ビットに定在波が発生する。この定在波は量子ビット全体にわたって発生するため、量子ビットの動作時にはλ/4線路上にも電場が発生している。そのため、λ/4線路1103a, 1103b, 1203b, 1203aの全体にわたってエアブリッジを形成すると、λ/4線路上に発生した電場がエアブリッジの近辺に残留している誘電体の内部にも広がることにより、誘電体における誘電損失がQ値の低下を引き起こす原因になり得る。そこで、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、クロストークを低減することができる実施形態について説明する。
[第一の実施形態]
図7は、第一の実施形態にかかる超伝導回路(発振器)を2個集積した、2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトである。ここで説明される超伝導回路は、発振するため、発振器とも称される。図8には、図7の2 bitの分布定数型の超伝導量子回路の等価回路図を示す。第一の実施形態の超伝導回路は、超伝導量子ビットであり、具体的には、図8に示す等価回路図における第一の量子ビット1または第二の量子ビット2である。図7、および、図8の2 bitの分布定数型の超伝導量子回路は、第一の量子ビット1と第二の量子ビット2がキャパシタ303を介して結合している構成を有する。第一の量子ビット1も第二の量子ビット2も同様の構成である。
第一の量子ビット1は、SQUID 102の両端にふたつの分布定数線路(伝送線路)が接続された構成を有する。これらの分布定数線路は、第一の量子ビット1の動作周波数(共振周波数)に対応する波長の1/4の長さに対応する長さを有するので、以下ではλ/4線路103a、および、λ/4線路103bと呼ぶ。第一の量子ビット1の動作周波数が10 GHz程度の場合、λ/4線路103a、および、λ/4線路103bの長さは2~3 mm程度である。SQUID 102には制御ライン104が磁気的に結合している。言い換えれば、制御ライン104とSQUID 102とは相互インダクタンスにより非接触に磁気結合している。制御ライン104からDCの制御信号を入力することにより、第一の量子ビット1の共振周波数を設定することができる。制御ライン104に、ある共振周波数に設定するためのDCの制御信号を入力した状態で、制御ライン104に、さらに、設定した共振周波数の2倍の周波数の制御信号を入力することにより第一の量子ビット1を発振させることができる。第一の量子ビット1の動作周波数(設定した共振周波数)は、例えば10 GHz程度である。したがって、第一の量子ビット1を動作させるときには、制御ライン104から、DCの制御信号と20 GHz程度の高周波の制御信号を重ね合わせた信号を入力する。第二の量子ビット2の構成と動作のさせ方は第一の量子ビット1と同様であるので詳細な説明は省略する。
図7に示した構成では、プリント基板5の配線にボンディングワイヤ6を用いて電気的に接続されたチップ4上に、第一の量子ビット1と第二の量子ビット2が存在する。第二の量子ビット2は、SQUID 202、λ/4線路203a、λ/4線路203bを有する。SQUID 202には制御ライン204が磁気的に結合している。なお、第一の量子ビット1のλ/4線路103aの一端はSQUID 102の一端と接続しており、λ/4線路103aの他端はキャパシタ301と接続している。また、第一の量子ビット1のλ/4線路103bの一端はSQUID 102の他端と接続しており、λ/4線路103bの他端はキャパシタ303と接続している。同様に、第二の量子ビット2のλ/4線路203aの一端はSQUID 202の一端と接続しており、λ/4線路203aの他端はキャパシタ302と接続している。また、第二の量子ビット2のλ/4線路203bの一端はSQUID 202の他端と接続しており、λ/4線路203bの他端はキャパシタ303と接続している。
図8に示すように、SQUID 102は、ジョセフソン接合105aとジョセフソン接合105bとがループ状に接続された素子であり、その両端は、λ/4線路103a、103bと接続している。同様に、SQUID 202は、ジョセフソン接合205aとジョセフソン接合205bとがループ状に接続された素子であり、その両端は、λ/4線路203a、203bと接続している。また、後述するように、本実施形態では、第一の量子ビット1のためにエアブリッジ107(図7参照)が所定の位置に設けられ、第二の量子ビット2のためにエアブリッジ207(図7参照)が所定の位置に設けられている。
図9に、図7のチップレイアウトにおける第一の量子ビット1の付近の拡大図を示す。また、図10Aには、図7のチップレイアウトにおける第一の量子ビット1のSQUID 102の付近の拡大図を示す。また、図10Bに、図7のチップレイアウトにおける第二の量子ビット2のSQUID 202の付近の拡大図を示す。
ここでは第一の量子ビット1について説明し、同様の説明が可能である量子ビット2については説明を省略する。制御ライン104の先端部は分岐点108で、第一の分岐ライン1041と第二の分岐ライン1042に分岐しており、このうち第一の分岐ライン1041はSQUID 102と磁気結合するようにするために、SQUID 102の近くにレイアウトされている。一方、第二の分岐ライン1042はSQUID 102と磁気結合しないようにするために、SQUID 102から離れたところにレイアウトされている。具体的には、第一の分岐ライン1041がSQUID 102と磁気結合するようにしつつ、第二の分岐ライン1042がSQUID 102と磁気結合しないようにするために、第一の分岐ライン1041は、SQUID 102に沿って配線されており、第二の分岐ライン1042は、第一の分岐ライン1041とは逆方向に配線されている。
制御ライン104及びλ/4線路103a、103bは、コプレナウェーブガイドとして構成されている。コプレナウェーブガイドとして構成された線路の周囲にはGNDプレーン106が存在する。第一の分岐ライン1041と第二の分岐ライン1042は、いずれもこのGNDプレーン106に接続している。
なお、図において、符号1031aはλ/4線路103aの芯線を表し、符号1031bはλ/4線路103bの芯線を表し、符号2031aは、λ/4線路203aの芯線を表し、符号2031bはλ/4線路203bの芯線を表している。さらに、符号2041及び符号2042は、制御ライン204の第一の分岐ラインと第二の分岐ラインを表しており、符号208は分岐点を表し、符号206はGNDプレーンを表している。
第一の実施形態による超伝導量子ビットと、図3A及び図3Bを用いて説明した超伝導量子ビットとの違いは、そのレイアウトにある。具体的には、第一の実施形態による超伝導量子ビットは、エアブリッジの配置の仕方が、図3A及び図3Bを用いて説明した超伝導量子ビットと異なる。図9及び図10Aのように、第一の実施形態による第一の量子ビット1では、λ/4線路103a、103b上には、量子ビットの動作時に量子ビットに生成される定在波の電場の節の近傍だけに、エアブリッジ107a、107bが設置されている。つまり、λ/4線路103a、103bに対しては、超伝導量子ビット(発振器)の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍にだけ、エアブリッジ107a、107bが設置されている。言い換えれば、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所の近傍のみに、エアブリッジ107a、107bが設置されている。さらに言い換えれば、λ/4線路103a、103b上には、キャパシタ301、303との接続箇所から最も離れた位置の近傍のみに、エアブリッジ107a、107bが設置されている。具体的には、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所に可能な限り近い位置にのみエアブリッジ107a、107bを設置するのが好ましい。例えばλ/4線路103a、103b上には、λ/4線路103a、103bとSQUID 102との接続箇所から、λ/4線路103a、103bの長さの1/20以下の位置にのみ、エアブリッジ107a、107bを設置するのが好ましい。より好ましくは、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所から、λ/4線路103a、103bの長さの1/30以内の位置のみにエアブリッジ107a、107bが設置されている。図9及び図10Aに示した例では、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所から約60 μmの位置(言い換えれば、λ/4線路103a、103b上の位置であって、SQUID 102との接続箇所からλ/4線路103a、103bの長さのおよそ1/30の距離の位置)にのみ、エアブリッジ107a、107bを設置した。
本実施形態において、エアブリッジの長さ、言い換えれば、エアブリッジの一端がGNDプレーンと接続されている場所から、エアブリッジの他端がGNDプレーンと接続されている場所までの長さは、短いほど好ましい。具体的には、エアブリッジの長さは、制御ラインから入力する高周波の制御信号のチップ上における波長の1/10以下であることが好ましく、1/30以下であることがより好ましく、1/50以下であることがさらに好ましい。例えば制御信号の周波数が20 GHzの場合、チップ上における制御信号の波長は約5.9 mmであるから、その場合、エアブリッジの長さとしては、590 μm以下であることが好ましく、196 μm以下であることがより好ましく、118 μm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書で述べる第一の実施形態以外のすべての実施形態及び変形例においても、エアブリッジの好ましい長さは上記の通りである。
なお、本実施形態においては、エアブリッジの長さを62 μmとした。この長さは、20 GHzの制御信号のチップ上における波長の約1/95である。本明細書で述べる第一の実施形態以外のすべての実施形態及び変形例においても、エアブリッジの長さを62 μmとした。
第一の量子ビット1の動作時に第一の量子ビット1に生成される定在波は、λ/4線路103a、103b上の、キャパシタ301、303との接続箇所付近で電場の腹を形成し、λ/4線路103a、103b上の、SQUID 102との接続箇所付近で電場の節を形成する。言い換えれば、λ/4線路103a、103b上では、キャパシタ301、303との接続箇所付近の電場の振幅が最も大きく、キャパシタ301、303から離れるにしたがって電場の振幅は小さくなり、SQUID 102との接続箇所付近で電場の振幅は最も小さくなる。第一の実施形態では、λ/4線路上には、この定在波の電場の節の近傍、つまり電場が最も弱いところの近傍にのみエアブリッジ107a、107bを設置する。そうすることにより、第一の量子ビット1の動作時に第一の量子ビット1に生成される定在波の電場のほとんどの成分はエアブリッジ107a、107bから遠く離れることとなる。このため、エアブリッジ107a、107bにレジストなどの誘電体が残留してしまっている場合であっても、その残留物内に広がる電場を極力小さくすることができる。したがって、誘電損失を低減することが可能であり、その結果、第一の量子ビット1のQ値の低下を抑制できる、という効果がある。なお、説明は省略するが、第二の量子ビット2にも、第一の量子ビット1と同様に、エアブリッジ207a、207bを配置する。
図9のように、第一の実施形態の超伝導回路では、λ/4線路上に設置したエアブリッジ107a、107bに加え、さらに、制御ライン104にも任意の位置にエアブリッジ107c~107hを設置している。λ/4線路103a、103bとは異なる方向に延在している制御ライン104はλ/4線路103a、103bから遠く離れているため、制御ライン104にエアブリッジ107c~107hを設置しても、第一の量子ビット1のQ値に直接の影響を与えない。言い換えれば、制御ライン104にエアブリッジ107c~107hを配置しても、第一の量子ビット1のQ値の低下を引き起こさない。なお、より詳細には、エアブリッジ107c~107hは、制御ライン104のうち、第一の分岐ライン1041及び第二の分岐ライン1042以外の部分である非分岐部分に設けられている。本実施形態では、同様に、第二の量子ビット2の制御ライン204にもエアブリッジ207cなどが設置されている。
上述の通り、本実施形態では、λ/4線路103a、103b、203a、203b上には電場の節の近傍にしかエアブリッジ107a、107b、207a、207bを設置していない。これにより、第一の量子ビット1及び第二の量子ビット2のQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを抑制することができる。ここで、シミュレーション結果について示す。第一の実施形態の構成において、第一の量子ビット1の制御ライン104から第一の量子ビット1に20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーションの結果を図11に示す。図11に示すように、第二の量子ビット2のSQUID 202に流れる電流は、第一の量子ビット1のSQUID 102に流れる電流の1%以下となった。このことから、第一の実施形態の超伝導回路を用いれば、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを大幅に低減できる、という効果がある。
なお、上述した超伝導回路、すなわち、発振器は、次のように言い表すこともできる。発振器は、SQUIDと、SQUIDに接続された伝送線路(分布定数線路)と、GNDプレーンと、接続回路とを有する。ここで、接続回路は、伝送線路の両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ回路であり、伝送線路を跨いでGNDプレーンを接続する上述したエアブリッジがこれに該当する。そして、この接続回路は、発振器の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍に対応する位置に設けられている。このような構成によれば、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、クロストークを低減することができる。なお、クロストークの低減のために、SQUIDに磁気結合し制御信号が入力される制御ラインに対しても、接続回路(エアブリッジ)が設けられてもよい。すなわち、発振器は、制御ラインの両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ接続回路(制御ラインを跨いでGNDプレーンを接続するエアブリッジ107cなどの回路)をさらに有してもよい。
[第二の実施形態]
次に、第二の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成要素については、適宜、説明を省略する。図12は、第二の実施形態にかかる超伝導回路(発振器)を2個集積した、2 bitの分布定数型の超伝導量子回路のチップレイアウトである。図12に示したチップレイアウトは、SQUID 102及びSQUID 202付近の構成が第一の実施形態と異なっている。この違いについては、拡大図を用いて後述する。第二の実施形態の超伝導回路は、超伝導量子ビットであり、その等価回路図は図8と同様であるので、ここでは等価回路図の説明は省略する。この第二の実施形態による量子ビットを2個、キャパシタ303を介して結合させて構成した2 bitの分布定数型の超伝導量子回路をチップにレイアウトしたものが図12で示したチップレイアウトである。
第二の実施形態による超伝導量子ビットと第一の実施形態の超伝導量子ビットとの違いは、エアブリッジの配置の仕方にある。図13に、図12のチップレイアウトにおける第一の量子ビット1の付近の拡大図を示す。図13のように、第二の実施形態の超伝導回路は、第一の実施形態と同様に、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所に可能な限り近い場所にのみエアブリッジ107a、107bが設置され、さらに制御ライン104にもエアブリッジ107c~107hが設置されている。しかし、第二の実施形態では、λ/4線路103a、103b上に設置するエアブリッジ107a、107bの位置に、ある制約を設けることが第一の実施形態と異なる。これを説明する。図14は、図12のチップレイアウトにおける第二の量子ビット2のSQUID 202の付近の拡大図を示す。なお、第一の量子ビット1に対するエアブリッジ107a、107bの位置は、第二の量子ビット2に対するエアブリッジ207a、207bの位置と同様である。
第一の実施形態で設置したエアブリッジ207a、207bは、図10Bのように、制御ライン204の分岐点208から等しい距離の位置に設置しなくてもよかったが、第二の実施形態では、図14のように、エアブリッジ207a、207bを、制御ライン204の分岐点208から等しい距離の位置に設置する。換言すると、互いに同じ長さを有する第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042のそれぞれの終端の箇所、すなわち、第一の分岐ライン2041のGNDプレーン206との接地箇所及び第二の分岐ライン2042のGNDプレーン206との接地箇所に設置する。具体的には、図14に示したように、第二の実施形態では、λ/4線路203a、203b上の、制御ライン204の分岐点208から等しい距離であるふたつの場所に、エアブリッジ207a、207bを設置する。ここで等しい距離と記載したが、それは理想的な場合であって、実際には、±10%以下の製造誤差を許容する。すなわち、両者の差が、いずれか一方の長さの10%以下であってもよい。このように、本実施の形態では、エアブリッジ207a、207bの設置位置は、分岐点208からの距離が略同じであればよい。第一の実施形態では、λ/4線路203a、203b上の、SQUID 202との接続箇所の近傍のエアブリッジ207a、207bの置き方について、SQUID 202にできるだけ近いように配置することだけを規定した。そのため図10Bのように、λ/4線路203a、203b上の、SQUID 202との接続箇所近傍のふたつのエアブリッジ207a、207bの位置は、制御ライン204の分岐点208から、必ずしも等距離でなくてもよかった。この点が第一の実施形態と第二の実施形態との違いである。
ここで、第一の分岐ライン2041に流れる電流と第二の分岐ライン2042に流れる電流が等量で逆向きになるように、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042が配置されている。具体的には、図に示すように、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042は左右対称の構成となっている。第一の分岐ライン2041は、SQUID 202に沿って配線されており、第二の分岐ライン2042は、第一の分岐ライン2041とは逆方向に配線されている。このため、第一の分岐ライン2041がSQUID 202と磁気結合するようにしつつ、第二の分岐ライン2042がSQUID 202と磁気結合しないように構成されている。より詳細には、例えば、図14のように、制御ライン204はT字形状の線路であり、分岐点208で分岐した第一の分岐ライン2041及び第二の分岐ライン2042は直線状に並んでいる。すなわち、第一の分岐ライン2041と制御ライン204の非分岐部分とがなす角が90度であり、第二の分岐ライン2042と制御ライン204の非分岐部分とがなす角が90度であり、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042とがなす角が180度である。これらの角度は理想的な場合の値であり、実際にはこれら角度の±10%以下の製造誤差を許容する。
なお、SQUID 202と、λ/4線路203a、203bと、制御ライン204の位置関係は、図14に示すように、例えば次の通りである。λ/4線路203a、203bとSQUID 202は、SQUID 202の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、第一の分岐ライン2041及び第二の分岐ライン2042も、この第一の方向(図面の上下方向)に配線されている。なお、制御ライン204の非分岐部分は、SQUID 202の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在しており、SQUID 202から遠ざかるように分岐点208から延びている。つまり、制御ライン204の非分岐部分は、分岐点208を基準として、SQUID 202とは逆側に配線されている。第一の分岐ライン2041は、SQUID 202と対向する位置に存在するが、第二の分岐ライン2042は、SQUID 202と対向しない位置に存在している。
第二の実施形態で上述のような構成にした狙いについては後述するが、まず、第二の実施形態において、第一の量子ビット1の制御ライン104から第一の量子ビット1に20 GHzの制御信号を入力した場合のシミュレーション結果を図15に示す。図15のように、第一の量子ビット1の制御ライン104から20 GHzの高周波の制御信号を入力した場合、第二の量子ビット2のSQUID 202に流れる電流は、第一の量子ビット1のSQUID 102に流れる電流の1%以下となる。つまり、第一の実施形態と同様に、第二の実施形態でも大幅に高周波のクロストークを抑制できることがわかる。このことから、第二の実施形態は、第一の実施形態と同様に量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを抑制できる、という効果がある。
[第二の実施形態のさらなる効果について]
次に、第二の実施形態の狙いについて述べる。ここまで、制御ラインから20 GHzなどの高周波の制御信号を入力した場合のクロストークを抑制する手段について述べたが、実験では、制御ラインからDCの制御信号を入力した場合にもクロストークが観測されている。この原因は、例えば、DCの制御信号が第一の量子ビット1の制御ライン104を流れた後、GNDプレーンを流れるときに生成する磁場を、第二の量子ビット2のSQUID 202が感じてしまうことにあると考えられる。つまり、ここまで述べたλ/4線路に沿って伝搬する高周波のクロストークとは発生のメカニズム(言い換えればクロストークを引き起こす電流の伝搬の経路や伝搬の仕方)が異なると考えられる。第二の実施形態は、これまで述べた高周波のクロストークだけではなく、DCのクロストーク(正確には、GNDプレーンを電流が流れることによって発生するクロストーク)をも抑制することを狙った実施形態である。以下、これについて、詳細を説明する。
図16Aは、図1に示した量子回路における第二の量子ビット1002、つまりエアブリッジを設置しない場合の第二の量子ビット1002のレイアウトを示す図であり、図16Bはその等価回路図である。また、図16Cは第二の実施形態の第二の量子ビット2のレイアウトを示す図であり、図16Dはその等価回路図である。図16C,図16Dのように、第二の実施形態では、制御ライン204の分岐点208から等距離になるように、λ/4線路203a、203b上の、SQUID 202との接続箇所の近傍にエアブリッジ207a、207bを配置されている。これにより、GNDプレーン206 - エアブリッジ207a - GNDプレーン206 - 第二の分岐ライン2042 - 第一の分岐ライン2041 - GNDプレーン206 - エアブリッジ207b - GNDプレーン206という超伝導ループ209(図16C,図16Dの点線で示されるループ回路)が、SQUID 202の外側を囲むように形成されている。すなわち、超伝導ループ209は、GNDプレーン206、エアブリッジ207a、207b、第一の分岐ライン2041、及び第二の分岐ライン2042を用いた超伝導体の回路である。なお、超伝導ループは、超伝導ループ回路とも称される。このように、超伝導ループ209上に、制御ライン204の第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042が配置されている。超伝導に特有の性質として、超伝導ループの内側を貫く磁束は保存されなければならない、という性質がある。第二の実施形態では、この超伝導特有の性質を利用する。なお、このように、第一の実施形態では特に限定されなかったが、本実施形態では、第二の量子ビット2に関し、エアブリッジ207a、207b、GNDプレーン206、制御ライン204は、超伝導体である。これは、第一の量子ビット1に関しても同様である。
図17A及び図17Bは、エアブリッジを設置していない第二の量子ビット1002の動作を説明するための図である。図17Aは、量子ビット1002の共振周波数を設定する場合の動作を説明する図であり、図17BはGNDプレーン1206にクロストークの原因となるDC電流が流れている場合の量子ビット1002の動作を説明する図である。
まず図17Aを参照すると、エアブリッジを設置していない量子ビット1002の場合、量子ビット1002の共振周波数の制御は、次のように行われる。すなわち、制御ライン1204からDCの制御電流(制御信号)I0を入力すると、I0は、第一の分岐ライン12041と第二の分岐ライン12042により、I1とI2に分流する。これにより、I1が生成する磁束G1の一部がSQUID 1202のループを貫く。SQUIDに特有の性質として、SQUIDのループを貫く磁束は、磁束量子の整数倍でなければならない、という性質がある。このため、I1が生成する磁束G1のうちSQUID 1202のループを貫く磁束が磁束量子のちょうど整数倍にならない場合、SQUID 1202のループを貫く磁束がトータルで磁束量子の整数倍になるように、SQUID 1202に周回電流が流れる。この周回電流が生成する磁束は図において符号G3で示されている。なお、符号G2は、I2が生成する磁束を表す。これに対し、I1が生成する磁束G1のうちSQUID 1202のループを貫く磁束が磁束量子のちょうど整数倍であるときは、SQUID 1202に周回電流は流れない。制御電流I0の大きさや向きを変えることにより、I1の大きさや向きも変わり、I1が生成する磁束G1のうちSQUID 1202のループを貫く磁束の大きさや向きを変えることができ、したがってSQUID 1202に流れる周回電流の大きさや向きを変えることができる。このように、SQUID 1202に流れる周回電流、すなわちジョセフソン接合 1205a、1205bに流れる電流の大きさや向きを、制御電流I0の大きさや向きによって制御することができる。ジョセフソン接合の等価インダクタンスはジョセフソン接合を流れる電流の大きさで制御できるので、制御電流I0の大きさや向きを変えることによってジョセフソン接合1205a、1205bの等価インダクタンスを制御することができる。したがってSQUID 1202の実効インダクタンスを制御することができ、それにより第二の量子ビット1002の共振周波数を制御できる。つまり、SQUID 1202の実効インダクタンスを変えることによって、SQUID 1202とλ/4線路1203a、1203bからなる第二の量子ビット1002のトータルのインダクタンスを変えることができるので、第二の量子ビット1002の共振周波数を変えることができる。一方、I2とSQUID 1202が離れているため、I2が生成する磁束G2は、SQUID 1202のループをほとんど貫かない。ここで、超伝導体には完全反磁性という性質があるため、磁場は超伝導体を貫くことができない。そのため、磁場は超伝導体が存在しないところしか貫けない。このため、I2が生成する磁束G2は、主にλ/4線路1203a、1203bの芯線12031a、12031bとGNDプレーン1206の間のギャップを貫くこととなり、I2が生成する磁束G2はSQUID 1202に対して何の作用も起こさない。ここまで説明した動作は、狙った通りの動作である。
一方、図17Bを参照して、エアブリッジを設置していない量子ビット1002において、GNDプレーン1206にクロストークの原因となるDC電流が流れている場合を考える。これは例えば、図1の2 bitの分布定数型の量子回路において、第一の量子ビット1001に入力したDCの制御電流が制御ライン1104からGNDプレーン1106へ流れた後、GNDプレーン1206に流れることを想定している。図17BのようにGNDプレーン1206にクロストークの原因となるDC電流IR1が流れている場合、IR1が生成する磁束G4の一部がSQUID 1202のループを貫く。このSQUID 1202のループを貫く磁束の大きさや向きに従って、上述のようにSQUID 1202に周回電流が流れるため、ジョセフソン接合 1205a、1205bに電流が流れてしまう。そのため、SQUID 1202の実効インダクタンスが電流IR1によって変動してしまい、それにより第二の量子ビット1002の共振周波数が変動してしまう。これがDCのクロストークのメカニズムであり、このようなDCのクロストークは、第一の量子ビット1001にDCの制御電流を入力した際に第二の量子ビット1002で観測され得るものであり、実験でも観測されている。なお、図17Bにおいて、周回電流が生成する磁束は符号G5で示されている。
これに対して、第二の実施形態の第二の量子ビット2の動作について説明する。図18A及び図18Bは、第二の実施形態の第二の量子ビット2の動作を説明するための図である。図18Aは、第二の量子ビット2の共振周波数を設定する場合の動作を説明する図であり、図18BはGNDプレーン206にクロストークの原因となるDC電流が流れている場合の量子ビット2の動作を説明する図である。
まず図18Aを参照すると、第二の実施形態の第二の量子ビット2の共振周波数の制御は次のように行われる。すなわち、制御ライン204からDCの制御電流I0を供給すると、I0は、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042により、I1とI2に分流する。これにより、I1が生成する磁束G1の一部がSQUID 202のループを貫く。このSQUID 202のループを貫く磁束の大きさや向きに従って、上述のようにSQUID 202に周回電流が流れるため、ジョセフソン接合205a、205bに電流が流れる。したがって、制御電流I0の大きさや向きを変えることによってSQUID 202の実効インダクタンスを制御することができ、それにより第二の量子ビット2の共振周波数を制御できる。この周回電流が生成する磁束は図において符号G3で示されている。一方、I2とSQUID 202が離れているため、I2が生成する磁束G2は、SQUID 202のループをほとんど貫かない。I2が生成する磁束G2は、主にλ/4線路203a、203bの芯線2031a、2031bとGNDプレーン206の間のギャップを貫くので、SQUID 202に対して何の作用も起こさない。なお、第二の実施形態では、λ/4線路203a、203b上の、SQUID 202との接続箇所の近傍のエアブリッジ207a、207bを、制御ライン204の分岐点208から等距離になるように設置したため、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042は同一の形状をしており、同一のインダクタンスを有する。上述のように超伝導ループ209の内側を貫く磁束は保存されなければならないという超伝導特有の性質がある。しかし、I1とI2は大きさが同じで逆向きになるので、超伝導ループ209の内側のエリアにI1が生成する磁束G1(磁束=電流×インダクタンス)とI2が生成する磁束G2は等量で逆向きとなるため互いにキャンセルしあう。このため、超伝導ループ209の内側のエリアの磁束はゼロのまま保存される。したがって、制御電流を入力した場合でも超伝導ループ209には遮蔽電流は生成されない。よって、共振周波数が、意図しない周波数に設定されることはない。
一方、図18Bを参照して第二の実施形態の第二の量子ビット2において、GNDプレーン206にクロストークの原因となるDC電流が流れている場合を考える。図18BのようにGNDプレーン206にクロストークの原因となるDC電流IR1が流れている場合、IR1が生成する磁束G4の一部がSQUID 202のループを貫く。しかし、上述したように、超伝導ループ209の内側の磁束は保存されなければならないという超伝導特有の性質があるため、図18Bのように遮蔽電流IS1が流れる。すなわち、遮蔽電流IS1が、GNDプレーン206、エアブリッジ207b、GNDプレーン206、第一の分岐ライン2041、第二の分岐ライン2042、GNDプレーン206、エアブリッジ207a、GNDプレーン206の経路で流れる。遮蔽電流IS1が超伝導ループ209の内側に生成する磁束G6は、電流IR1が超伝導ループ209の内側に生成する磁束と完全にキャンセルされることとなる。これは、上述した通り、超伝導ループ内の磁束が保存されなければならないという超伝導特有の性質があるためである。遮蔽電流IS1が生成する磁束G6の一部はSQUID 202のループを貫く。クロストークの原因となる電流IR1がSQUID 202のループ内に生成する磁束G4と、遮蔽電流IS1がSQUID 202のループ内に生成する磁束G6は向きが逆である。したがって、SQUID 202のループ内では、クロストークの原因となる電流IR1が生成する磁束G4と遮蔽電流IS1が生成する磁束G6がキャンセルしあうため、SQUID 202のループを貫く磁束はゼロまたは非常に小さくなる。少なくとも、遮蔽電流IS1の効果により、SQUID 202のループを貫く磁束は、クロストークの原因となるIR1が生成した磁束のうちSQUID 202のループを貫く磁束よりも小さな磁束になる。その結果、クロストークの原因となる電流IR1によるSQUID 202の実効インダクタンスの変動、すなわち第二の量子ビット2の共振周波数の変動を、遮蔽電流IS1の効果により抑制できる。つまり、DCのクロストークを抑制できる。
このように、第二の実施形態は、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、λ/4線路に沿って伝搬する高周波のクロストークを抑制できるだけでなく、DC電流がGNDプレーンを伝搬することにより発生する、DCのクロストークをも抑制できる。
なお、制御ラインの制御電流(制御信号)に起因して超伝導ループ209に遮蔽電流が流れないように制御ライン204が配置されることが好ましい。すなわち、本実施形態のように、制御ライン204に流れる制御電流(制御信号)により、大きさが同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ209を貫くように、制御ライン204が配置されることが好ましい。なお、これら2種類の磁束の大きさは完全に同じでなくてもよく、誤差を許容する。すなわち、これら2種類の磁束は、略同じ大きさの磁束であってもよい。例えば、両者の差が、いずれか一方の大きさの10%以下であってもよい。しかしながら、大きさが略同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ209を貫くような構成は、クロストークの原因となる電流IR1の影響を抑制する構成として好ましい構成であるものの、必ずしも必須な構成ではない。したがって、上述した効果を奏しうる超伝導回路、すなわち、発振器は、次のように言い表すこともできる。発振器は、SQUIDと、SQUIDに接続された伝送線路(分布定数線路)と、GNDプレーンと、接続回路とを有する。ここで、SQUIDに対し、2本の伝送線路が接続されており、一方の伝送線路は、SQUIDの一端に接続され、他方の伝送線路は、SQUIDの他端に接続されている。そして、接続回路は、伝送線路の両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ回路であり、2本の伝送線路のそれぞれに対して設けられている。この接続回路は、発振器の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍に設けられている。そして、発振器には、GNDプレーン及び接続回路を用いた超伝導ループ回路が、SQUIDを囲むように設けられている。このような構成によれば、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、λ/4線路に沿って伝搬する高周波のクロストークを抑制でき、かつ、DC電流がGNDプレーンを伝搬することにより発生するDCのクロストークをも抑制できる。
ところで、発明者は、本実施形態において、制御ライン104に対して設けるエアブリッジの位置についてシミュレーションを行った。以下、制御ライン104に対して設けるエアブリッジの位置についてのシミュレーション結果について説明する。このシミュレーションでは、第二の実施形態において、制御ライン上に設置するエアブリッジを1個にした場合について、シミュレーションを行った。特に、制御ライン上に設置するエアブリッジの位置を変えた場合に、クロストークの抑制効果がどのように変わるかをシミュレーションで調べた。なお、以下の説明では、第一の量子ビットに対するシミュレーションについて説明し、同様の結果が得られる第二の量子ビットについてのシミュレーションについては説明を省略する。
図19は、シミュレーションを行った6種類の構成を示す図である。図19には、第二の実施形態において、制御ライン上に設置するエアブリッジの個数を1個にした場合の構成例として、6種類の構成例が示されている。この6種類の構成例は、制御ライン104の分岐点108から、制御ライン104上のエアブリッジ107cまでの距離が異なっている。具体的には、分岐点108からエアブリッジ107cまでの制御ライン104上の距離が、約λ/4(ケース1)、約λ/6(ケース2)、約λ/10(ケース3)、約λ/20(ケース4)、約λ/50(ケース5)、約λ/100(ケース6)の6種類のケースについてシミュレーションを行った。ここで、λは、制御ライン104から入力する20 GHzの信号のチップ上での波長で、本実施形態では、λは約5.9 mmである。このシミュレーションでは、第一の量子ビット1の制御ライン104に20 GHzの制御信号を入力したときに、第二の量子ビット2のSQUID 202に流れる電流が、第一の量子ビット1のSQUID 102に流れる電流の何%になるかを調べた。このパーセンテージの値が大きいほど、クロストークの影響が大きく、このパーセンテージが小さいほど、クロストークの影響が小さい(つまりクロストーク抑制効果が高い)ことを示す。
シミュレーションの結果を図20に示す。図20は、上述した6種類のケースについての結果をグラフで示している。図20のグラフにおいて、横軸は、制御ライン104の分岐点108から、制御ライン104上に設置したエアブリッジ107cまでの距離(単位はmm)を、20 GHzの信号のチップ上での波長(5.9 mm)で割ったものである。また、図20において、縦軸は、第二の量子ビット2のSQUID 202に流れる電流の、第一の量子ビット1のSQUID 102に流れる電流に対する割合をパーセンテージであらわしたものである。図20にプロットされている各点は、右側から順に、上述したケース1、ケース2、ケース3、ケース4、ケース5、ケース6に対応している。
図20の結果が示すように、第二の実施形態において、制御ライン上に設置するエアブリッジを1個だけにした場合、制御ライン上に設置するエアブリッジが、制御ラインの分岐点に近いよりも、分岐点から遠い方が、クロストークの抑制効果が高いことが分かる。なお、図20から、クロストークを10%未満に抑制するためには、制御ライン上に設置するエアブリッジから制御ラインの分岐点までの距離が、制御信号の波長の1/20以上であること(図20の横軸の値が0.05以上であること)が好ましいことが分かる。以上のことを踏まえると、次のようなことが言える。制御ライン上に1個だけエアブリッジを設置する場合、クロストーク抑制効果を高めるためには、制御ライン上に設置するエアブリッジから制御ラインの分岐点までの距離が長いほど好ましい。例えば、制御ライン上に設置するエアブリッジから制御ラインの分岐点までの距離が、制御ラインから入力する高周波の制御信号(量子ビットの動作周波数の2倍の周波数の制御信号)のチップ上における波長の1/20以上であることが好ましい。換言すると、このエアブリッジから分岐点までの制御ライン上の距離が、制御信号の波長の1/20以上であることが好ましい。より好ましくは、制御ライン上に設置するエアブリッジから制御ラインの分岐点までの距離が、この波長の1/10以上であるとよい。なお、第二の実施形態において、制御ライン上に設置するエアブリッジの個数は2個以上であってもよい。なお、制御ライン上に設置するエアブリッジの上述した位置は、第一の実施形態において採用されてもよい。
[第二の実施形態の第一の変形例]
第二の実施形態では、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042は同一の形状をしており、同一のインダクタンスを有していた。しかし、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042が同一の形状をしていなくても、第二の実施形態と同様の効果が得られる。言い換えれば、第一の分岐ライン2041と第二の分岐ライン2042が同一のインダクタンスを有していなくても、制御ライン204に流れる制御電流(制御信号)により、大きさが同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ209を貫くようにすることができる。すなわち、他の構成によっても、第二の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。そのような第二の実施形態の変形例の一例として、例えば、エアブリッジ207a、207bを、制御ライン204の分岐点208から等距離になるように設置するが、第一の分岐ライン2041よりも第二の分岐ライン2042のほうが線幅を広くした場合を考える。つまり、第一の分岐ライン2041のインダクタンスL1よりも第二の分岐ライン2042のインダクタンスL2のほうが小さい場合を考える。この場合、制御ライン204から入力した制御電流I0は、第一の分岐ライン2041に流れる電流I1と第二の分岐ライン2042に流れる電流I2に分流するが、電流はインダクタンスの逆数の比で分流する。つまりI1 : I2 = L2 :L1となる。ゆえにI1L1 = I2L2である。したがって、第一の分岐ライン2041(インダクタンスL1)に流れる電流I1が生成する磁束I1L1(I1とL1の積)と第二の分岐ライン2042(インダクタンスL2)に流れる電流I2が生成する磁束I2L2(I2とL2の積)は、L1とL2がいかなる値であっても等しい。ここで、第一の分岐ライン2041がGNDに接地される場所と第二の分岐ライン2042が接地される場所に、すなわち、各分岐ラインの終端の位置にエアブリッジ207a、207bが配置されているので、制御電流により発生する超伝導ループ209の内側を貫く磁束は磁束I1L1と磁束I2L2となる。このため、超伝導ループ209の内側のエリアにI1が生成する磁束(磁束=電流×インダクタンス)とI2が生成する磁束は等量で逆向きとなるため互いにキャンセルしあう。このため、上述のように超伝導ループ209の内側を貫く磁束は保存されなければならないという超伝導特有の性質があるが、超伝導ループ209の内側のエリアの磁束はゼロのまま保存される。このため、制御電流を入力した場合に超伝導ループ209に、制御電流に起因した遮蔽電流は生成されないため、よって、共振周波数の設定に影響を与えない。
[第二の実施形態の第二の変形例]
図21は、第二の変形例にかかる超伝導回路のレイアウトである。また、図22は、第二の変形例にかかる超伝導回路の等価回路図である。本変形例にかかる超伝導回路も、上述した実施の形態と同様、超伝導量子ビットとして用いることができる。ここでは、上述した実施の形態の説明と同様、一つの量子ビットの構成について、図面を参照して具体的に説明し、同様の構成である他の量子ビットについては、説明を省略する。また、第二の実施形態の同様な構成については適宜説明を省略し、異なる点について具体的に説明する。上述した実施形態では、制御ライン204の終端側が分岐し、制御ライン204の2つの終端は、それぞれ、制御ライン204の両脇に存在するGNDプレーン206に接続していた。これに対し、本変形例では、制御ライン204の終端側は分岐しておらず、制御ライン204の終端は、当該制御ライン204の両脇に存在するGNDプレーン206の片方とだけ接続している。すなわち、本変形例では、制御ライン204は、分岐のない一本の線路である。なお、制御ライン204の終端側は、制御ライン204がSQUID 202と磁気結合するように、SQUID 202に沿って配線されている。図に示した例では、制御ライン204は、L字形状の線路であり、より詳細には次のような構成となっている。すなわち、図21の制御ライン204は、SQUID 202に沿って第一の方向(図面の上下方向)に延在する部分と、第二の方向(図面の左右方向)に延在する部分とを備えたL字形状の線路である。つまり、図21の制御ライン204は、SQUID 202の付近で90度に折れ曲がっており、制御ライン204の第二の方向に延在する部分は、SQUID 202から離れる方向へ延びている。
本変形例にかかる超伝導量子ビットでは、エアブリッジ207a、207b、207cによって、SQUID 202の外側を囲むように超伝導ループ209が形成されている。つまり、本変形例において、超伝導ループ209は、GNDプレーン206、及びエアブリッジ207a、207b、207cを用いた超伝導体の回路である。図21に示した構成では、第一または第二の実施形態と同様、エアブリッジ207a、207bは、SQUID 202と近接した位置に設けられている。エアブリッジ207aは、λ/4線路203aの両脇に存在するGNDプレーン206をつなぐ超伝導体の接続回路であり、エアブリッジ207bは、λ/4線路203bの両脇に存在するGNDプレーン206をつなぐ超伝導体の接続回路である。また、エアブリッジ207cは、制御ライン204の両脇に存在するGNDプレーン206をつなぐ超伝導体の接続回路である。
本変形例においても、第一および第二の実施形態と同様に、λ/4線路203a、203b上には、SQUID 202との接続箇所に可能な限り近い場所にのみエアブリッジ207a、207bが設置されている。そのため、本変形例においても、第一および第二の実施形態で述べたような効果、すなわち、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを低減するという効果が得られる。
また、本変形例においても、SQUID 202の外側を超伝導ループ209が囲むような構造にしたため、第二の実施形態で述べたような効果、すなわち、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークを遮蔽電流の働きによって抑制する効果が得られる。
ここで、第二の実施の形態では、第一の分岐ライン2041及び第二の分岐ライン2042を用いた超電導ループ回路が形成されていたが、本変形例では、そのような超電導ループ回路は形成されていない。第一の分岐ライン2041及び第二の分岐ライン2042を用いて超電導ループ回路を形成した場合であっても、理論的には、上述した通り、制御ライン204を流れる制御電流に起因した遮蔽電流は生成されない。しかしながら、何らかの原因により、もしも、制御電流に起因した遮蔽電流が生じた場合には、遮蔽電流に起因する磁束がSQUID 202に大きく作用する恐れがある。これは、線状に構成されている第一の分岐ライン2041とSQUID 202との間には大きな相互インダクタンスが存在するためである。この遮蔽電流に起因する磁束がSQUID 202に作用すると、共振周波数を意図した値に設定することが阻害されてしまう。また、何らかの原因により、もしも、第二の分岐ライン2042を流れる制御電流が生成する磁束が、SQUID 202のループを貫いてしまった場合にも、共振周波数を意図した値に設定することが阻害されてしまう。これに対し、本変形例では、SQUID 202を囲む超伝導ループ209は、第一の分岐ライン2041及び第二の分岐ライン2042を用いていない。すなわち、上述の通り、GNDプレーン206、及びエアブリッジ207a、207b、207cにより構成される超伝導ループ209がSQUID 202を囲んでいる。このため、第二の実施形態で示した構成に比べ、共振周波数を意図した値に設定することが阻害されてしまうことを抑制することができる。また、制御ライン204を分岐させないことにより、SQUID 202への磁束の印加に寄与する制御電流を、制御ライン204を分岐させる場合に比べ増加させることができる。
[第三の実施形態]
図23は、第三の実施形態の超伝導回路のレイアウトである。また、図24は、第三の実施形態の超伝導回路の等価回路図である。第三の実施形態の超伝導回路は、上述した実施の形態と同様、超伝導量子ビットである。本実施形態の説明においても、上述した実施の形態の説明と同様、一つの量子ビットの構成について、図面を参照して具体的に説明し、同様の構成である他の量子ビットについては、説明を省略する。なお、これは、特に言及しない限り、後述する他の実施形態等の説明においても同様である。図24の等価回路図は、図8における第一の量子ビット1または第二の量子ビット2の等価回路図と比べると、制御ラインの構成が異なる以外は同様である。具体的には、第三の実施形態による超伝導量子ビットでは、第一および第二の実施形態の超伝導量子ビットと異なり、制御ライン104が分岐していない。そして、第三の実施形態による超伝導量子ビットでは、エアブリッジ107a、107b、107cによって、SQUID 102の外側を囲むように超伝導ループ109が形成されている。つまり、本実施形態において、超伝導ループ109は、GNDプレーン106、及びエアブリッジ107a、107b、107cを用いた超伝導体の回路である。そして、制御ライン104は、超伝導ループ109の外側から超伝導ループ109の内側に入ってゆき、超伝導ループ109の内側で折り返して、また超伝導ループ109の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、本実施の形態では、制御ライン104は、SQUID 102の付近で折り返すようにU字状に配線されている。本実施形態において、エアブリッジ107a、107bは、第一または第二の実施形態と同様、SQUID 102と近接した位置に設けられている。本実施形態において、エアブリッジ107cは、第一および第二の実施形態と同様、制御ライン104を跨いでGNDプレーン106を接続する。ただし、本実施形態において、エアブリッジ107cは、U字状の制御ライン104の往路と復路の2本の両脇に存在するGNDプレーン106をつなぐ超伝導体の接続回路である。
なお、SQUID 102と、λ/4線路103a、103bと、制御ライン104の位置関係は、図23に示すように、例えば次の通りである。λ/4線路103a、103bとSQUID 102は、SQUID 102の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、制御ライン104は、SQUID 102の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在しており、SQUID 102の付近で折り返している。つまり、制御ライン104は、折り返し部分を基準として、SQUID 102とは逆側に配線されている。
第三の実施形態においても、第一および第二の実施形態と同様に、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所に可能な限り近い場所にのみエアブリッジ107a、107bが設置されている。そのため、第三の実施形態においても、第一および第二の実施形態で述べたような効果、すなわち、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを低減するという効果が得られる。
また、第三の実施形態においても、SQUID 102の外側を超伝導ループ109が囲むような構造にしたため、第二の実施形態で述べたような効果、すなわち、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークを遮蔽電流の働きによって抑制する効果が得られる。また、図23に示したように、量子ビットを制御する際に、制御ライン104から制御電流I0を供給すると、I0が生成する磁束は制御ライン104の右側と左側で等量かつ逆向きになる。このため、超伝導ループ109の内側にI0が生成する磁束G0a, G0bはトータルでゼロまたは非常に小さくすることができる。そのため、制御ライン104から制御電流I0を入力した場合に超伝導ループに生成される遮蔽電流をゼロにする、または非常に小さくできる。よって、共振周波数の設定に影響を与えない。
[第四の実施形態]
図25は、第四の実施形態の超伝導回路のレイアウトである。また、図26は、第四の実施形態の超伝導回路の等価回路図である。第四の実施形態の超伝導回路は、上述した実施の形態と同様、超伝導量子ビットである。本実施形態の説明においても、上述した実施の形態の説明と同様、一つの量子ビットの構成について、図面を参照して具体的に説明し、同様の構成である他の量子ビットについては、説明を省略する。図26の等価回路図は、図8における第一の量子ビット1または第二の量子ビット2の等価回路図と比べると、制御ラインの構成が異なる以外は同様である。具体的には、第四の実施形態による超伝導量子ビットでは、第一および第二の実施形態の超伝導量子ビットと異なり、制御ライン104が分岐していない。そして、第四の実施形態による超伝導量子ビットでは、エアブリッジ107a、107b、107c、107dによって、SQUID 102の外側を囲むように超伝導ループ109が形成されている。つまり、本実施形態において、超伝導ループ109は、GNDプレーン106、及び、エアブリッジ107a、107b、107c、107dを用いた超伝導体の回路である。そして、制御ライン104は、超伝導ループ109の外側から超伝導ループ109の内側に入ってゆき、また超伝導ループ109の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、本実施形態では、制御ライン104は、SQUID 102と接続された2本の伝送線路(λ/4線路103a、103b)のうちの一方と立体交差して直線状に配線されている。より詳細には、図25に示すように制御ライン104の途中には、λ/4線路103bを跨ぐために、エアブリッジ107eが設けられている。つまり、エアブリッジ107eにより、制御ライン104とλ/4線路103bは立体交差している。本実施形態において、エアブリッジ107a、107bは、第一及び第二の実施形態と同様、SQUID 102と近接した位置に設けられている。本実施形態において、エアブリッジ107c, 107dは、第一および第二の実施形態と同様、制御ライン104の両脇に存在するGNDプレーン106を、制御ライン104を跨いで接続する。エアブリッジ107c, 107dは、制御ライン104とλ/4線路103bとが立体交差する位置の両脇に設けられている。
なお、SQUID 102と、λ/4線路103a、103bと、制御ライン104の位置関係は、図25に示すように、例えば次の通りである。λ/4線路103a、103bとSQUID 102は、SQUID 102の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、制御ライン104は、SQUID 102の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に、λ/4線路103bと立体交差しつつ延在している。換言すると、制御ライン104は、伝送線路及びSQUIDが並ぶ方向と交差する方向に、伝送線路を跨いで配線されている。
第四の実施形態においても、第一、および、第二、および、第三の実施形態と同様に、λ/4線路103a、103b上には、SQUID 102との接続箇所に可能な限り近い場所にのみエアブリッジ107a、107bが設置されている。そのため、第四の実施形態においても、第一、および、第二、および、第三の実施形態で述べたような効果、すなわち、量子ビットのQ値の低下を抑制しつつ、高周波のクロストークを低減するという効果が得られる。
また、第四の実施形態においても、SQUID 102の外側を超伝導ループ109が囲むような構造にしたため、第二、及び第三の実施形態で述べた効果、すなわち、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークを遮蔽電流の働きによって抑制する効果が得られる。また、図25に示したように、量子ビットを制御する際に、制御ライン104から制御電流I0を供給すると、I0が生成する磁束は制御ライン104の右側と左側で等量かつ逆向きになる。このため、超伝導ループ109の内側にI0が生成する磁束G0a, G0bはトータルでゼロまたは非常に小さくすることができる。そのため、制御ライン104から制御電流I0を入力した場合に超伝導ループに生成される遮蔽電流をゼロにする、または非常に小さくできる。よって、共振周波数の設定に影響を与えない。
[その他の構成]
第一、第二、第三、および、第四の実施形態において、λ/4線路の芯線の両側のGNDプレーンを電気的に短絡する接続回路として、エアブリッジを用いたが、エアブリッジの材料としては、導電体ならば何でもよい。しかし、芯線の両側のGNDプレーンの電位を可能な限り等電位にするためには電気抵抗の小さな導電体ほど好ましく、量子回路を動作させる温度(10 mK程度)において超伝導体になる材料であることが最も好ましい。なお、遮蔽電流を利用したDCクロストークの抑制効果を得るためには、超伝導体による超伝導ループ回路が必要であるため、超伝導ループ回路を構成するエアブリッジ及びGNDプレーンは超伝導体である必要がある。量子回路を動作させる温度において超伝導体になる材料としては、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)やこれらを含む合金などが挙げられる。また、エアブリッジではなく、ボンディングワイヤを用いて、λ/4線路又は制御ラインの両側のGNDを電気的に短絡してもよい。ボンディングワイヤの材料も導電体ならば何でもよいが、電気抵抗が小さな導電体ほど好ましく、量子回路を動作させる温度において超伝導体になる材料であることが最も好ましい。ボンディングワイヤを用いる場合も、遮蔽電流を利用したDCクロストークの抑制効果を得るためには、ボンディングワイヤは超伝導体でなければならない。量子回路を動作させる温度において超伝導体になる材料としては、アルミニウム(Al)などが挙げられる。また、エアブリッジではなく、次のような接続回路が用いられてもよい。すなわち、λ/4線路の芯線の両側のGNDプレーンにそれぞれTSV(Through Silicon Via; シリコン貫通電極)が形成され、チップの裏面でこれらのTSVを電気的に接続する配線が形成された構造が接続回路として用いられてもよい。このような構造によっても、λ/4線路の芯線に接触せずにλ/4線路の芯線と立体的に交差する接続回路を実現することができる。TSV及びチップ裏面の配線の材料としては、導電体ならば何でもよい。しかし、芯線の両側のGNDプレーンの電位を可能な限り等電位にするためには電気抵抗の小さな導電体ほど好ましく、量子回路を動作させる温度(10 mK程度)において超伝導体になる材料であることが最も好ましい。なお、遮蔽電流を利用したDCクロストークの抑制効果を得るためには、超伝導体による超伝導ループ回路が必要であるため、超伝導ループ回路を構成するTSV及びチップ裏面の配線及びGNDプレーンは超伝導体である必要がある。量子回路を動作させる温度において超伝導体になる材料としては、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)やこれらを含む合金などが挙げられる。また、量子回路を形成したチップを、インターポーザなどの基板に対してフリップチップ接続したような構成において、エアブリッジを用いる代わりに、チップと基板を接続するためのバンプと基板上の配線が用いられてもよい。すなわち、バンプと基板上の配線により、チップ上のλ/4線路又は制御ラインの両側のGNDプレーンを電気的に短絡してもよい。この場合もバンプや基板上の配線の材料は導電体ならば何でもよいが、電気抵抗の小さな導電体ほど好ましく、量子回路を動作させる温度において超伝導体である材料が最も好ましい。量子回路を動作させる温度において超伝導体になる材料としては、バンプはインジウム(In)などが挙げられ、インターポーザの配線としては、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)などが挙げられる。この場合も、遮蔽電流を利用したDCクロストークの抑制効果を得るためには、バンプと基板上の配線は超伝導体でなければならない。
また、第一、第二、第三、および、第四の実施形態において、複数の量子ビットが集積された量子回路の例として、2 bitの分布定数型の量子回路を用いて実施形態を述べてきた。しかしながら、集積される量子ビットの数は2個でなくてもよく、3個以上の任意の個数の分布定数型の量子ビットを集積した量子回路にも、これらの実施形態を適用でき、同様の効果を得ることができる。
また、ここまで分布定数型の量子ビットについて述べてきたが、GNDプレーンに電流が流れてしまうことに起因するクロストークを超伝導ループの遮蔽効果によって低減するというアイデアは、集中定数型の量子ビットにも適用可能である。以下では、集中定数型の量子ビットについて説明する。
図27は、集中定数型の量子ビット2000の等価回路図の例である。集中定数型の量子ビット2000は、SQUID 2001の各端子をキャパシタ2003の各端子と超伝導配線で接続したループ状の回路である。換言すると、SQUID 2001の入出力端子は、キャパシタ2003でシャントされている。つまり、キャパシタ2003とSQUID 2001とを環状に接続することにより、SQUID 2001をループの線路上に取り込んだループ回路が構成されているとも言える。SQUID 2001は2個のジョセフソン接合2002aと2002bとを含むループ状の回路である。すなわち、2個のジョセフソン接合2002aと2002bとが環状に接続されることにより、SQUID 2001が構成されている。SQUID 2001の片方の端子は接地されていてもよい。SQUID 2001には、制御ライン2004が磁気結合している。言い換えれば、制御ライン2004とSQUID 2001は、相互インダクタンスにより非接触に磁気結合している。
図2の分布定数型の量子ビットでは、SQUIDとλ/4線路を用いて共振器を構成していたが、図27に示すように、集中定数型の量子ビット2000は、SQUID 2001の実効インダクタンスとキャパシタ2003でLC共振回路を構成する点が分布定数型の量子ビットと異なる。図2に示したような分布定数型の量子ビットは、量子ビットの動作周波数に対応する波長の長さと同程度のサイズとなるため、量子ビットの大きさが非常に大きい。これに対し、図27に示したような集中定数型の量子ビット2000では分布定数線路を用いないため、量子ビット2000の動作周波数に対応する波長に比べて非常に小さい回路で量子ビットを実現できる。このため、多数の量子ビット2000を集積する際に、小さな面積に多数の量子ビット2000を集積できるという利点がある。
集中定数型の量子ビット2000の動作のさせ方は、図2の分布定数型の量子ビットと同様である。すなわち、制御ライン2004からDCの制御信号を入力することにより、量子ビット2000の共振周波数を設定することができる。制御ライン2004に、ある共振周波数に設定するためのDCの制御信号を入力した状態で、制御ライン2004に、さらに、設定した共振周波数の2倍の周波数の制御信号を入力することにより量子ビット2000を発振させることができる。量子ビット2000の動作周波数(設定した共振周波数)は、例えば10 GHz程度である。したがって、量子ビット2000を動作させるときには、制御ライン2004から、DCの制御信号と20 GHz程度の高周波の制御信号を重ね合わせた信号を入力する。なお、このように、集中定数型の量子ビットは、制御ラインからの制御信号によって発振する。このため、集中定数型の量子ビットを含む構成について、発振器と称されてもよい。
図28は、図27の集中定数型の量子ビット2000のレイアウトの例である。この例では、シリコン基板上に超伝導材料(例えばニオブやアルミニウムなど)の薄膜を形成して、コプレナウェーブガイドの構造の量子ビット2000を実現している。図28に示すように、量子ビット2000では、GNDプレーン2006に空けた十字形の領域の内側に、十字形の電極(導電部材とも称す)2005が形成されている。すなわち、GNDプレーン2006は、電極2005の周りに、電極2005を囲うように配置されている。なお、GNDプレーン2006と電極2005とは離れており、両者の間には隙間が存在する。電極2005の一端は、2本の細い電極を用いてGNDプレーン2006と接続されており、この2本の細い電極の一方の途中にジョセフソン接合2002aが設けられ、他方の途中にジョセフソン接合2002bが設けられている。このような構成により、電極2005とGNDプレーン2006と2個のジョセフソン接合2002aと2002bでSQUID 2001を構成している。すなわち、SQUID 2001は、SQUID 2001を構成する2個のジョセフソン接合2002aと2002bをループ状に接続するために、電極2005及びGNDプレーン2006を用いている。このように、SQUID 2001の一端は、電極2005と接続し、他端はGNDプレーン2006と接続している。なお、SQUID 2001が、電極2005とGNDプレーン2006との間に配置されているとも言える。このように、量子ビット2000において、図28に示すように十字形の電極2005における外側に突き出た部分である4つの端部(すなわち、十字状の電極2005の4本の腕の先端)のうちの一つに、SQUID 2001が、GNDプレーン2006と橋渡しをするように接続されている。十字形の電極2005とGNDプレーンの間には空隙があるので、この電極2005とGNDプレーン2006の間にはキャパシタ2003が形成される。また、SQUID 2001の近くには、直線状に制御ライン2004が配置されている。すなわち、図28において、十字形の電極2005の下側に配置した横長の電極が制御ライン2004である。制御ライン2004に電流を流すと、制御ライン2004に流れる電流が生成する磁束の一部がSQUID 2001のループを貫くため、SQUID 2001の実効インダクタンスを制御したり、量子ビット2000を発振させたりすることができる。
図28のレイアウトでは、ここまで述べたクロストークの影響、特にGNDプレーンに電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を受けやすい。それは、複数の量子ビット2000を集積したチップにおいて、ある量子ビット2000に例えばDCの制御電流を入力した際に、その制御電流が制御ラインを流れた後、GNDプレーンを流れたときに生成する磁場を別の量子ビット2000のSQUID 2001が感じてしまうことにより起こり得る。そのようなクロストークの影響を低減するために上述した方法と類似の方法を適用することができる。以下、集中定数型の量子ビットにおいてクロストークの影響を低減するための実施形態について説明する。
[第五の実施形態]
図29は、第五の実施形態にかかる量子ビットのレイアウトを示す図である。以下、図28に示した構成との差違について説明し、同様の構成にいては適宜説明を省略する。本実施形態にかかる集中定数型の量子ビット2000の等価回路図は、図27と同様であるため、図28に示したレイアウトについて説明する。本実施形態でも、コプレナウェーブガイドの構造の量子ビット2000が示される。このため、図29に示すように、電極2005、及び制御ライン2004は、コプレナウェーブガイドとして構成されており、コプレナウェーブガイドとして構成された線路の周囲には超伝導体のGNDプレーン2006が存在する。本実施形態でも、図29に示すように、量子ビット2000では、GNDプレーン2006に空けた十字形の領域の内側に、十字形の電極(導電部材とも称す)2005が形成されている。すなわち、GNDプレーン2006は、電極2005の周りに、電極2005を囲うように配置されている。また、GNDプレーン2006と電極2005の間には空隙が存在し、この空隙により、電極2005とGNDプレーン2006の間にはキャパシタ2003が形成される。また、本実施形態でも、量子ビット2000において、十字形の電極2005における外側に突き出た部分である4つの端部(すなわち、十字状の電極2005の4本の腕の先端)のうちの一つに、SQUID 2001が、GNDプレーン2006と橋渡しをするように接続されている。ただし、SQUID 2001は、一端が電極2005と直接接続されているが、他端は、1本の細い電極2008を介して、GNDプレーン2006と接続している。なお、電極2008は、接続導電部材もしくは導電線路と称されてもよい。図29に示す例では、電極2005、SQUID 2001、及び電極2008は、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。換言すると、SQUID 2001、及び電極2008は、十字状の電極2005の4本の腕のうち、SQUID 2001が接続している腕の伸びる方向に並んでいる。なお、本実施形態においても、SQUID 2001は、2本の細い電極の一方の途中に設けられたジョセフソン接合2002aと、他方の途中に設けられたジョセフソン接合2002bとにより構成されている。つまり、本実施形態では、SQUID 2001は、SQUID 2001を構成する2個のジョセフソン接合2002aと2002bをループ状に接続するために、電極2005及び電極2008を用いている。よって、上述の通り、SQUID 2001の一端は、電極2005と接続し、他端は電極2008を介してGNDプレーン2006と接続している。なお、SQUID 2001が、電極2005とGNDプレーン2006との間に配置されているとも言える。
図29に示すように、本実施形態では、制御ライン2004は、SQUID 2001の横に配置されており、制御ライン2004の先端は、分岐点2108で、第一の分岐ライン20041と第二の分岐ライン20042に分岐している。そして、第一の分岐ライン20041とSQUID 2001が磁気結合するようにするために、第一の分岐ライン20041はSQUID 2001の近くに配置されている。一方、第二の分岐ライン20042とSQUID 2001が磁気結合しないようにするために、第二の分岐ライン20042はSQUID 2001から離れたところに配置されている。具体的には、第一の分岐ライン20041がSQUID 2001と磁気結合するようにしつつ、第二の分岐ライン20042がSQUID 2001と磁気結合しないようにするために、これらの分岐ラインは次のように配線されている。すなわち、第一の分岐ライン20041は、SQUID 2001に沿って配線されており、第二の分岐ライン20042は、第一の分岐ライン20041とは逆方向に、電極2008に沿って配線されている。第一の分岐ライン20041と第二の分岐ライン20042は、いずれもGNDプレーン2006に接続している。
制御ライン2004はT字形状の線路であり、分岐点2108で分岐した第一の分岐ライン20041及び第二の分岐ライン20042は直線状に並んでいる。ここで、SQUID 2001と、電極2005と、制御ライン2004の位置関係は、図29に示すように、例えば次の通りである。電極2005とSQUID 2001は、上述の通り、SQUID 2001の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、第一の分岐ライン20041及び第二の分岐ライン20042も、この第一の方向(図面の上下方向)に配線されている。なお、制御ライン204の非分岐部分(すなわち、制御ライン2004のうち、第一の分岐ライン20041及び第二の分岐ライン20042以外の部分)は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在しており、SQUID 2001から遠ざかるように分岐点2108から延びている。つまり、制御ライン2004の非分岐部分は、分岐点2108を基準として、SQUID 2001とは逆側に配線されている。第一の分岐ライン20041は、SQUID 2001と対向する位置に存在するが、第二の分岐ライン20042は、SQUID 2001と対向しない位置に存在している。
また、本実施形態では、エアブリッジ2007aが、SQUID 2001の、電極2005側の端子の近傍に設けられている。エアブリッジ2007aは、SQUID 2001と電極2005の接続箇所の両側に存在するGNDプレーン2006をつなぐ超伝導体の接続回路である。図29に示した構成では、エアブリッジ2007aは、電極2005とSQUID 2001との接続部分の近傍を跨いで、この接続部分の両側に存在するGNDプレーン2006を接続する。より詳細には、エアブリッジ2007aは、SQUID 2001と接続している、電極2005の端部を跨いで、この端部の両側に存在するGNDプレーン2006を接続する。これにより、本実施形態では、エアブリッジ2007a、GNDプレーン2006、第一の分岐ライン20041、及び第二の分岐ライン20042によって、SQUID 2001を囲むように超伝導ループ2009が形成されている。具体的には、この超伝導ループ2009は、SQUID 2001と細い電極2008を囲んでいる。超伝導ループ2009を構成するエアブリッジ2007a、GNDプレーン2006、第一の分岐ライン20041、及び第二の分岐ライン20042は、いずれも超伝導体である。超伝導ループ2009を構成する第一の分岐ライン20041及び第二の分岐ライン20042は、同一の形状となっている。このように、本実施形態では、SQUID 2001を囲む超伝導ループ2009が存在するため、クロストークの影響を低減することができる、という効果を得られる。また、超伝導ループ2009において、第一の分岐ライン20041と第二の分岐ライン20042は同一の形状をしているので、制御ライン2004から入力した電流は第一の分岐ライン20041と第二の分岐ライン20042とに等量で逆向きに分流する。このため、制御ライン2004に制御電流を入力することによる超伝導ループ2009における遮蔽電流の発生は抑制され、共振周波数が、意図しない周波数に設定されることが抑制される。
なお、図30のように、さらに制御ライン2004の非分岐部分の芯線の両脇のGNDプレーン2006を接続するエアブリッジ2007bが追加されてもよい。
[第五の実施形態の変形例]
図31は、第五の実施形態の変形例にかかる集中定数型の量子ビットのレイアウトである。以下、第五の実施形態と異なる点について具体的に説明する。第五の実施形態では、制御ライン2004の終端側が分岐し、制御ライン2004の2つの終端は、それぞれ、制御ライン2004の両脇に存在するGNDプレーン2006に接続していた。これに対し、本変形例では、制御ライン2004の終端側は分岐しておらず、制御ライン2004の終端は、当該制御ライン2004の両脇に存在するGNDプレーン2006の片方とだけ接続している。すなわち、本変形例では、制御ライン2004は、分岐のない一本の線路である。なお、制御ライン2004の終端側は、制御ライン2004がSQUID 2001と磁気結合するように、SQUID 2001に沿って配線されている。図に示した例では、制御ライン2004は、L字形状の線路であり、より詳細には次のような構成となっている。すなわち、図31の制御ライン2004は、SQUID 2001に沿って第一の方向(図面の上下方向)に延在する部分と、第二の方向(図面の左右方向)に延在する部分とを備えたL字形状の線路である。つまり、図31の制御ライン2004は、SQUID 2001の付近で90度に折れ曲がっており、制御ライン2004の第二の方向に延在する部分は、SQUID 2001から離れる方向へ延びている。なお、図31に示した例では、制御ライン2004は、L字形状であるが、制御ライン2004は、第一の方向(図面の上下方向)に延在する直線状の線路であってもよい。
本変形例にかかる超伝導量子ビットでは、エアブリッジ2007a、2007bにより、SQUID 2001の外側を囲むように超伝導ループ2009が形成されている。つまり、本変形例において、超伝導ループ2009は、GNDプレーン2006、及びエアブリッジ2007a、2007bを用いた超伝導体の回路である。図31に示した構成では、エアブリッジ2007aは、第五の実施形態と同様、SQUID 2001の、電極2005側の端子の近傍に設けられている。エアブリッジ2007aは、SQUID 2001と電極2005の接続箇所の両側に存在するGNDプレーン2006をつなぐ超伝導体の接続回路である。また、エアブリッジ2007bは、制御ライン2004の両脇に存在するGNDプレーン2006をつなぐ超伝導体の接続回路である。
本変形例においても、SQUID 2001を囲む超伝導ループ2009が存在するため、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができる、という効果を得られる。
ここで、第五の実施の形態では、第一の分岐ライン20041及び第二の分岐ライン20042を用いた超電導ループ回路が形成されていたが、本変形例では、そのような超電導ループ回路は形成されていない。このため、第二の実施形態の第二の変形例の説明で述べたとおり、共振周波数を意図した値に設定することが阻害されてしまうことを抑制することができる。また、制御ライン2004を分岐させないことにより、SQUID 2001への磁束の印加に寄与する制御電流を、制御ライン2004を分岐させる場合に比べ増加させることができる。
[第六の実施形態]
次に、集中定数型の量子ビットにおいてクロストークの影響を低減するための他の実施形態について説明する。図32は、第六の実施形態にかかる集中定数型の量子ビットのレイアウトである。以下、第五の実施形態と異なる点について具体的に説明する。図32に示すように、本実施形態では、第五の実施形態と異なり、制御ライン2004が分岐していない。また、本実施形態では、エアブリッジ2007a、2007bにより、SQUID 2001の外側を囲むように超伝導ループ2009が形成されている。つまり、本実施形態において、超伝導ループ2009は、GNDプレーン2006、及びエアブリッジ2007a、2007bを用いた超伝導体の回路である。そして、制御ライン2004は、超伝導ループ2009の外側から超伝導ループ2009の内側に入ってゆき、超伝導ループ2009の内側で折り返して、また超伝導ループ2009の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、本実施の形態では、制御ライン2004は、SQUID 2001の付近で折り返すようにU字状に配線されている。本実施形態において、エアブリッジ2007aは、第五の実施形態と同様、SQUID 2001の、電極2005側の端子の近傍に設けられている。エアブリッジ2007bは、制御ライン2004を跨いでGNDプレーン106を接続する。具体的には、エアブリッジ2007bは、U字状の制御ライン104の往路と復路の2本の両脇に存在するGNDプレーン2006をつなぐ超伝導体の接続回路である。
なお、SQUID 2001と、電極2005と、制御ライン2004の位置関係は、図32に示すように、例えば次の通りである。電極2005とSQUID 2001は、SQUID 2001の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、制御ライン2004は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在しており、SQUID 2001の付近で折り返している。つまり、制御ライン2004は、折り返し部分を基準として、SQUID 2001とは逆側に配線されている。このように、本実施形態の制御ライン2004及び超伝導ループ2009の構造は、第三の実施形態(分布定数型の量子ビットの実施形態)のそれらと同様の構造となっている。
本実施形態においても、SQUID 2001を囲む超伝導ループ2009が存在するため、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができる、という効果を得られる。また、第三の実施形態と同様の理由により、制御ライン2004に制御電流を入力することによる超伝導ループ2009における遮蔽電流の発生は抑制され、共振周波数が、意図しない周波数に設定されることが抑制される。
[第七の実施形態]
次に、集中定数型の量子ビットにおいてクロストークの影響を低減するための他の実施形態について説明する。図33は、第七の実施形態にかかる集中定数型の量子ビットのレイアウトである。以下、第五の実施形態と異なる点について具体的に説明する。図33に示すように、本実施形態では、第五の実施形態と異なり、制御ライン2004が分岐していない。また、本実施形態では、エアブリッジ2007a、2007b、2007cにより、SQUID 2001の外側を囲むように超伝導ループ2009が形成されている。つまり、本実施形態において、超伝導ループ2009は、GNDプレーン2006、及びエアブリッジ2007a、2007b、2007cを用いた超伝導体の回路である。そして、制御ライン2004は、超伝導ループ2009の外側から超伝導ループ2009の内側に入ってゆき、また超伝導ループ2009の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、制御ライン2004は、SQUID 2001と接続された電極2008と立体交差して直線状に配線されている。なお、制御ライン2004は、SQUID 2001と立体交差して直線状に配線されてもよい。より詳細には、図33に示すように制御ライン2004の途中には、電極2008もしくはSQUID 2001を跨ぐために、エアブリッジ2007dが設けられている。つまり、エアブリッジ2007dにより、制御ライン2004と電極2008もしくはSQUID 2001とは、立体交差している。本実施形態において、エアブリッジ2007aは、第五の実施形態と同様、SQUID 2001の、電極2005側の端子の近傍に設けられている。エアブリッジ2007b、2007cは、制御ライン2004の両脇に存在するGNDプレーン106を接続する。エアブリッジ2007b、2007cは、制御ライン2004と電極2008もしくはSQUID 2001とが立体交差する位置の両脇に設けられている。
なお、SQUID 2001と、電極2005と、制御ライン2004の位置関係は、図33に示すように、例えば次の通りである。電極2005とSQUID 2001と電極2008は、SQUID 2001の付近において、第一の方向(図面の上下方向)に並んでいる。また、制御ライン2004は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に、電極2008もしくはSQUID 2001と立体交差しつつ延在している。換言すると、制御ライン2004は、電極2005及びSQUID 2001が並ぶ方向と交差する方向に、電極2008もしくはSQUID 2001を跨いで配線されている。このように、本実施形態の制御ライン2004の構造及び超伝導ループ2009の構造は、第四の実施形態(分布定数型の量子ビットの実施形態)のそれらと同様の構造となっている。
本実施形態においても、SQUID 2001を囲む超伝導ループ2009が存在するため、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができる、という効果を得られる。また、第四の実施形態と同様の理由により、制御ライン2004に制御電流を入力することによる超伝導ループ2009における遮蔽電流の発生は抑制され、共振周波数が、意図しない周波数に設定されることが抑制される。
以上、第五の実施形態から第七の実施形態について説明したが、これらの実施形態で示された集中定数型の回路、すなわち、上述した構成を備える量子ビットを含む発振器は、次のように言い表すこともできる。発振器は、GNDプレーン(GNDプレーン2006)と、導電部材(電極2005)と、SQUID(SQUID 2001)と、第一の接続回路(エアブリッジ2007a)と、超伝導ループ回路(超伝導ループ2009)とを有する。ここで、GNDプレーンは、超伝導体で構成されている。また、導電部材は、このGNDプレーンに、間隔をあけて囲まれている。なお、この発振器において、GNDプレーンと導電部材との空隙によりキャパシタ(キャパシタ2003)が構成される。また、SQUIDは、一端が導電部材と接続され、他端がGNDプレーンと接続している。第一の接続回路は、導電部材とSQUIDとの接続部分の近傍の両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ超伝導体の回路である。そして超伝導ループ回路は、GNDプレーン及び第一の接続回路を用いた回路であって、SQUIDを囲む。このような発振器によれば、SQUIDを囲む超伝導ループにより、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができる。また、この発振器において、制御ラインに流れる制御信号により、大きさが同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ回路を貫くように、制御ライン(制御ライン2004)が配置されていてもよい。この制御ラインは、SQUIDに磁気結合しており、制御信号が入力される。なお、上述した2種類の磁束の大きさは完全に同じでなくてもよく、誤差を許容する。すなわち、これら2種類の磁束は、略同じ大きさの磁束であってもよい。例えば、両者の差が、いずれか一方の大きさの10%以下であってもよい。このようにすることで、制御ラインに制御信号を入力することによる超伝導ループ回路における遮蔽電流の発生は抑制され、共振周波数が、意図しない周波数に設定されることが抑制される。
また、特に、第五の実施形態で示された発振器は、次のような特徴を有した発振器として説明することもできる。すなわち、第五の実施形態で示された発振器は、上述した発振器において、制御ラインが、当該制御ライン上の分岐点から、第一の分岐ラインと第二の分岐ラインに分かれている。ここで、第一の分岐ラインが、SQUIDに沿って配線されており、第二の分岐ラインが、第一の分岐ラインとは逆方向に配線されている。そして、超伝導ループ回路は、GNDプレーン、第一の接続回路、第一の分岐ライン、及び第二の分岐ラインを用いた回路である。さらに、超伝導ループ回路に用いられる第一の分岐ラインの長さと超伝導ループ回路に用いられる第二の分岐ラインの長さが同じである。なお、第一の分岐ラインの長さと第二の分岐ラインの長さは完全に同じでなくてもよく、誤差を許容する。すなわち、これら2つラインの長さは、略同じであってもよい。例えば、両者の差が、いずれか一方の長さの10%以下であってもよい。このような構成によれば、制御ラインに流れる制御信号により、大きさが略同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ回路を貫くような、制御ラインの配置例を提供できる。なお、この発振器は、制御ラインの両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ接続回路(制御ラインを跨いでGNDプレーンを接続するエアブリッジ2007b)を有してもよい。
また、特に、第六の実施形態で示された発振器は、次のような特徴を有した発振器として説明することもできる。すなわち、第六の実施形態で示された発振器は、上述した発振器において、制御ラインが、SQUIDの付近で折り返すようにU字状に配線されている。また、この発振器は、U字状の制御ラインの往路と復路の2本の両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ超伝導体の第二の接続回路(制御ラインを跨いでGNDプレーンを接続するエアブリッジ2007b)を有している。そして、超伝導ループ回路は、GNDプレーン、第一の接続回路、及び第二の接続回路を用いた回路である。このような構成によれば、制御ラインに流れる制御信号により、大きさが同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ回路を貫くような、制御ラインの配置例を提供できる。
また、特に、第七の実施形態で示された発振器は、次のような特徴を有した発振器として説明することもできる。すなわち、第七の実施形態で示された発振器は、上述した発振器において、制御ラインが、SQUIDの他端とGNDプレーンとを接続するための接続導電部材(電極2008)もしくはSQUIDと立体交差して直線状に配線されている。また、この発振器は、制御ラインの両脇に存在するGNDプレーンをつなぐ超伝導体の第二の接続回路(制御ラインを跨いでGNDプレーンを接続するエアブリッジ2007b、2007c)を有している。第二の接続回路は、制御ラインと接続導電部材もしくはSQUIDとが立体交差する位置の両脇にそれぞれ設けられている。そして、超伝導ループ回路は、GNDプレーン、第一の接続回路、及び第二の接続回路を用いた回路である。このような構成によれば、制御ラインに流れる制御信号により、大きさが同じであり向きが逆である2種類の磁束が超伝導ループ回路を貫くような、制御ラインの配置例を提供できる。
[第五から第七の実施形態の第一の変形例]
上述した第五から第七の実施形態について、次のような変形例を提供することも可能である。なお、ここでは、第五の実施形態に対する変形例について説明するが、第六の実施形態及び第七の実施形態についても同様の変形例が可能である。
図34は、第五の実施形態の第一の変形例にかかる集中定数型量子ビット2000の等価回路図を示す。この量子ビット2000は、SQUID 2001とキャパシタ2003から構成されるループに線形のインダクタ2010が挿入されている点で、図27に示した集中定数型の量子ビット2000と異なっている。図27の集中定数型の量子ビット2000は、量子計算機に適用するには非線形性が高すぎるという課題がある。ここで量子ビットを構成する回路の非線形性とは、量子ビットを構成する回路のハミルトニアンの非線形項の係数により定義される係数(非線形係数)で定量づけられるものである。図34に示した量子ビット2000では、線形のインダクタ2010のインダクタンスにより、非線形係数を調整することができる。また、このため、キャパシタ2003のキャパシタンスを大きくすることなく、非線形性を低下させることができるため、量子ビットを構成する回路における損失の増大を抑制することもできる。図34の量子ビット2000のレイアウトを図35に示す。図35のレイアウトは、電極2005の線形インダクタンスが所定の値となるよう、電極2005の形状が調整されている点で、図29のレイアウトと異なっている。このように、本変形例では、電極2005を所定のインダクタンスを有する線形インダクタとして用いている。図35に示した例では、具体的には、図29に比べて電極2005の十字形の腕の部分の幅を狭くすることにより、電極2005の線形インダクタンスを図29のレイアウトに比べて大きくしている。図35に示したレイアウトは、上述の点を除き、図29に示したレイアウトと同様になっている。このため、本変形例においても、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができるとともに、制御電流に起因して超伝導ループに発生する遮蔽電流により共振周波数が意図しない周波数に設定されることを抑制できる。
なお、図36のように、さらに制御ライン2004の非分岐部分の芯線の両脇のGNDプレーン2006を接続するエアブリッジ2007bが追加されてもよい。
[第五から第七の実施形態の第二の変形例]
上述した第五から第七の実施形態について、次のような変形例を提供することも可能である。なお、ここでは、第五の実施形態に対する変形例について説明するが、第六の実施形態及び第七の実施形態についても同様の変形例が可能である。
図37は、第五の実施形態の第二の変形例にかかる集中定数型量子ビット2000の等価回路図を示す。この量子ビット2000は、SQUID 2001とキャパシタ2003から構成されるループにジョセフソン接合2011が挿入されている点で、図27に示した集中定数型の量子ビット2000と異なっている。上述の通り、図27の集中定数型の量子ビット2000は、量子計算機に適用するには非線形性が高すぎるという課題がある。図37に示した量子ビット2000では、SQUID 2001とキャパシタ2003から構成されるループへのジョセフソン接合2011の追加により、非線形係数を調整することができる。また、非線形性を低下させるために、キャパシタ2003のキャパシタンスを大きくする必要がないため、量子ビットを構成する回路における損失の増大を抑制することもできる。図37の量子ビット2000のレイアウトを図38に示す。図38のレイアウトは、細い電極2008の途中にジョセフソン接合2011が追加されている点で、図29のレイアウトと異なっている。すなわち、本変形例では、SQUID 2001は、ジョセフソン接合2011を介して、GNDプレーン2006と接続している。図37に示したレイアウトは、上述の点を除き、図29に示したレイアウトと同様になっている。このため、本変形例においても、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができるとともに、制御電流に起因して超伝導ループに発生する遮蔽電流により共振周波数が意図しない周波数に設定されることを抑制できる。
なお、図39のように、さらに制御ライン2004の芯線の両脇のGNDプレーン2006を接続するエアブリッジ2007bが追加されてもよい。
[第五から第七の実施形態の第三の変形例]
上述した第五から第七の実施形態について、次のような変形例を提供することも可能である。本変形例は、SQUID 2001を構成する2個のジョセフソン接合2002a、2002bの臨界電流値を異なる値にしている点で、上述した第五から第七の実施形態と異なっている。このような構成にすることにより、SQUID 2001及びキャパシタ2003から構成されるループ回路の共振周波数と、SQUID 2001に印加される磁場との関係を示す関数(共振周波数の磁場依存性を示す関数)に、変曲点を設けることができる。このため、この変曲点を動作点に設定して量子ビット2000を動作させることにより、交流の制御信号による周期的な磁場の変動にともなう共振周波数の変動において、共振周波数の変動の偏りを抑制することができる。このため、共振周波数の変動に偏りが生じる場合の悪影響を抑制できる。なお、ジョセフソン接合の臨界電流値を変えるためには、例えばジョセフソン接合の面積を変えればよい。すなわち、異なる面積を有する2つのジョセフソン接合を用いれば、異なる臨界電流値を有するジョセフソン接合2002a、2002bを実現することができる。
本変形例においても、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができるとともに、制御電流に起因して超伝導ループに発生する遮蔽電流により共振周波数が意図しない周波数に設定されることを抑制できる。
なお、本変形例においても、さらに制御ライン2004の芯線の両脇のGNDプレーン2006を接続するエアブリッジ2007bが追加されてもよい。
[第八の実施形態]
ここまで、チップ上に形成した分布定数型又は集中定数型の量子ビットについて述べたが、量子回路を形成したチップをインターポーザなどの基板にフリップチップ接続したような構成において、クロストークを抑制する構成が実現されてもよい。すなわち、上述したように、エアブリッジを用いる代わりに、チップと基板を接続するためのバンプと、基板上の配線とが用いられてもよい。第八の実施形態として、そのような構成の例を述べる。なお、フリップチップ接続はフリップチップ実装と称されてもよい。
本実施形態では、第五の実施形態で説明した回路を、チップ2018を基板2019にフリップチップ接続した構成で実現する。図40は、量子ビット2000の一部を形成したチップ2018を示す図である。このチップ2018の上には、超伝導材料を用いて、GNDプレーン2006、電極2005、SQUID 2001などが形成されている。これらの配置は、第五の実施形態と同様であるため、説明を省略する。本実施形態の回路の等価回路図は図27と同様であり、チップ2018には、その等価回路図の一部が形成されている。具体的には、チップ2018には、GNDプレーン2006、電極2005、SQUID 2001、電極2008が形成されている。また、チップ2018には、GNDプレーン2006と電極2005との間の空隙により、キャパシタ2003が形成されている。チップ2018はインターポーザなどの基板に、バンプを用いてフリップチップ接続されており、図40において符号2012aと2012bは、そのバンプを接続する位置を示している。図40に示されるように、これらのバンプ(後述するバンプ2022a、2022b)は、電極2005のSQUID 2001との接続箇所の近傍の両脇に設けられる。すなわち、これらのバンプの位置は、第五の実施形態において、エアブリッジ2007aがGNDプレーン2006と接続する箇所に対応している。
図41は、チップ2018がフリップチップ接続される、インターポーザなどの基板2019を示す図である。フリップチップ接続では、図40に示されるチップ2018の平面と図41に示される基板2019の平面が対向するように、バンプ(後述するバンプ2022a、2022b)を介して接続される。基板2019の上には、超伝導材料を用いて、基板のGNDプレーン2015、及び、制御ライン2016が形成されている。制御ライン2016の先端は、分岐点20170で、第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bに分岐している。そして、第一の分岐ライン2017aとSQUID 2001が磁気結合するようにするために、第一の分岐ライン2017aはSQUID 2001の近くに配置されている。一方、第二の分岐ライン2017bとSQUID 2001が磁気結合しないようにするために、第二の分岐ライン2017bはSQUID 2001から離れたところに配置されている。具体的には、第一の分岐ライン2017aがSQUID 2001と磁気結合するようにしつつ、第二の分岐ライン2017bがSQUID 2001と磁気結合しないようにするために、これらの分岐ラインは次のように配線されている。すなわち、基板2019の第一の分岐ライン2017aは、チップ2018のSQUID 2001に沿って配線されており、基板2019の第二の分岐ライン2017bは、第一の分岐ライン2017aとは逆方向に、チップ2018の電極2008に沿って配線されている。第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bは、いずれもGNDプレーン2015に接続している。第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bは、左右対称なラインであり、図41に示した例では、互いに逆向きに巻くような形状となっている。具体的には、第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bは、分岐点20170から第一の方向(図面の上下方向)に所定の長さだけ延在しつつ、それぞれの先端は、制御ライン2016の非分岐部分が分岐点20170から延在する方向(図面の左方向)に所定の長さだけ延在している。すなわち、図41に示した例では、第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bは、非分岐部分が延在する方向に折り返されている。しかしながら、これは一例に過ぎず、第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bは、折り返さなくてもよい。すなわち、制御ライン2016は、分岐点20170で第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bに分岐するT字形状の線路であってもよい。なお、制御ライン2016の非分岐部分とは制御ライン2016のうち、第一の分岐ライン2017a及び第二の分岐ライン2017b以外の部分をいう。制御ライン2016の非分岐部分は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在している。ここで示した例では、具体的には、図40及び図41からわかるように、制御ライン2016の非分岐部分は、SQUID 2001と電極2008の接続箇所を横切るように延在している。
図41において、符号2013aと2013bは、上述したバンプを接続する位置を示している。なお、図41に示した例では、符号2013aと2013bで示されるバンプの接続位置は、周囲に空隙が設けられたブリッジ電極(導電部材)2014内に位置しているが、ブリッジ電極2014の周囲に空隙が設けられていなくてもよい。つまり、GNDプレーン2015に、バンプが接続されてもよい。なお、ブリッジ電極2014は、超伝導体である。
図42は、チップ2018と基板2019をバンプ2022a、2022bを用いてフリップチップ接続した構造の断面図であり、具体的には図40及び図41におけるA-A’切断線による断面図を示している。なお、図42において、符号2020は、チップ2018のシリコン基板を示し、符号2021は、基板2019のシリコン基板を示している。また、図42に示すように、チップ2018と基板2019の間の距離をdとする。また、図42には明示していないが、基板2019はさらにTSV(Through Silicon Via;シリコン貫通電極)を有していてもよい。TSVは例えば、基板2019の裏面(図42における基板2019の下側の面)に形成した基板裏面のGNDプレーンと、基板2019の表面(図42における基板2019の上側の面)に形成した基板表面のGNDプレーン2015とを電気的に接続する役割を果たすことができる。あるいは、TSVは、例えば、基板2019の裏面に形成した基板裏面の制御ラインと、基板2019の表面に形成した基板表面の制御ライン2016とを電気的に接続する役割を果たすことができる。図42のように、チップ2018のGNDプレーン2006-バンプ2022a-基板2019のブリッジ電極2014-バンプ2022b-チップ2018のGNDプレーン2006という電気的に接続された回路が形成されており、この回路が、エアブリッジと同様の機能を果たす。このため、チップ2018のGNDプレーン2006、バンプ2022a、2022b、基板2019のブリッジ電極2014を用いて、SQUID 2001の外側を囲む超伝導ループ2009が形成される。よって、本実施形態においても、GNDプレーンを電流が流れてしまうことに起因するクロストークの影響を低減することができる。
なお、図41の制御ライン2016から制御信号を入力すると、制御信号は第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ライン2017bに分流して流れる。第一の分岐ライン2017aは図40のSQUID 2001の直下に位置するようにしているため、第一の分岐ライン2017aに流れた電流が生成する磁束をSQUID 2001が感じる。一方、第二の分岐ライン2017bはSQUID 2001の直下に位置していないため、第二の分岐ライン2017bに流れる電流はSQUID 2001にほとんど何も作用しない。そして、第一の分岐ライン2017aと第二の分岐ラインは逆向きに巻くような形状にしているため、第一の分岐ライン2017aに流れる電流が生成する磁束と第二の分岐ライン2017bに流れる電流が生成する磁束は、二本の分岐ラインの内側では等量で逆向きになる。このため、本実施の形態でも、制御電流に起因して超伝導ループに発生する遮蔽電流により共振周波数が意図しない周波数に設定されることを抑制できる。
なお、図40~図42では、第五の実施形態のように制御ラインが分岐する構成を有する集中定数型の量子ビットを例にしたが、同様に、既に述べた様々な量子ビットについても、フリップチップ接続を用いた構成を提供することができる。例えば、他の形状の制御ラインを用いる集中定数型の量子ビットや、分布定数型の量子ビットに対しても、フリップチップ接続を用いた構成を提供することができる。以下、フリップチップ接続を用いた量子ビットのそのような他の構成について、いくつか例示する。
図30のように制御ラインの両脇のGNDプレーンを接続する場合のチップ及び基板の構成について説明する。制御ラインの両脇のGNDプレーンを接続する場合のチップのレイアウトを図43に示す。また、制御ラインの両脇のGNDプレーンを接続する場合の基板のレイアウトを図44に示す。以下、上述した図40及び図41と異なる点について説明する。制御ライン2016の両脇のGNDプレーン2015の接続を実現するために、基板2019の制御ライン2016の両脇のGNDプレーン2015をチップ2018のブリッジ電極(導電部材)2014aと接続するためのバンプが、チップ2018と基板2019の間に設けられる。図43において、符号2012cと2012dが、チップ2018における、これらバンプの接続位置を示す。また、図44において、符号2013cと2013dが、基板2019における、これらバンプの接続位置を示す。なお、図43に示した例では、バンプの接続位置は、周囲に空隙が設けられたブリッジ電極2014a内に位置しているが、ブリッジ電極2014aの周囲に空隙が設けられていなくてもよい。つまり、GNDプレーン2006に、バンプが接続されてもよい。なお、ブリッジ電極2014aは、超伝導体である。このため、上述したバンプと、チップ2018のブリッジ電極2014aが、図30におけるエアブリッジ2007bの役割を果たす。このように、図43のチップと図44の基板をフリップチップ接続することにより、図30に示した実施形態と同様の構成を立体的な回路で実現することができ、図30の実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、図32のようにU字状の制御ラインが用いられる場合のチップ及び基板の構成について説明する。U字状の制御ラインが用いられる場合のチップのレイアウトを図45に示す。また、U字状の制御ラインが用いられる場合の基板のレイアウトを図46に示す。以下、上述した図40及び図41と異なる点について説明する。
図45は、量子ビット2000の一部を形成したチップ2018を示す図である。このチップ2018の上には、超伝導材料を用いて、GNDプレーン2006、電極2005、SQUID 2001が形成されている。これらの配置は、第六の実施形態と同様であるため、説明を省略する。図45において符号2012aと2012bは、バンプを接続する位置を示しており、その位置は、図40に示した位置と同様である。
図46は、チップ2018がフリップチップ接続される、インターポーザなどの基板2019を示す図である。基板2019の上には、超伝導材料を用いて、基板のGNDプレーン2015、及び、制御ライン2016が形成されている。後述する超伝導ループ2009を基板2019に投影して考えると、制御ライン2016は、投影された超伝導ループ2009の外側から超伝導ループ2009の内側に入ってゆき、超伝導ループ2009の内側で折り返して、また超伝導ループ2009の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、制御ライン2016は、SQUID 2001の付近で折り返すようにU字状に配線されている。制御ライン2016は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に延在しており、SQUID 2001の付近で折り返している。
図46において、符号2013aと2013bは、上述したバンプを接続する位置を示している。なお、図46に示した例では、符号2013aと2013bで示されるバンプの接続位置は、周囲に空隙が設けられたブリッジ電極(導電部材)2014内に位置しているが、ブリッジ電極2014の周囲に空隙が設けられていなくてもよい。つまり、GNDプレーン2015に、バンプが接続されてもよい。なお、ブリッジ電極2014は、超伝導体である。
図45及び図46からわかるように、チップ2018のGNDプレーン2006-バンプ-基板2019のブリッジ電極2014-バンプ-チップ2018のGNDプレーン2006という電気的に接続された回路が形成されている。このため、チップ2018のGNDプレーン2006、バンプ、基板2019のブリッジ電極2014を用いて、SQUID 2001の外側を囲む超伝導ループ2009が形成される。なお、このことから明らかなように、フリップチップ接続による構成の場合、図32におけるエアブリッジ2007bの役割をになう構造は不要である。
このように、図45のチップと図46の基板をフリップチップ接続することにより、第六の実施形態と同様の構成を立体的な回路で実現することができ、第六の実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、図33のように直線状の制御ラインが用いられる場合のチップ及び基板の構成について説明する。直線状の制御ラインが用いられる場合のチップのレイアウトを図47に示す。また、直線状の制御ラインが用いられる場合の基板のレイアウトを図48に示す。以下、上述した図40及び図41と異なる点について説明する。
図47は、量子ビット2000の一部を形成したチップ2018を示す図である。このチップ2018の上には、超伝導材料を用いて、GNDプレーン2006、電極2005、SQUID 2001、電極2008が形成されている。これらの配置は、第七の実施形態と同様であるため、説明を省略する。図47において符号2012aと2012bは、バンプを接続する位置を示しており、その位置は、図40に示した位置と同様である。
図48は、チップ2018がフリップチップ接続される、インターポーザなどの基板2019を示す図である。基板2019の上には、超伝導材料を用いて、基板のGNDプレーン2015、及び、制御ライン2016が形成されている。後述する超伝導ループ2009を基板2019に投影して考えると、制御ライン2016は、投影された超伝導ループ2009の外側から超伝導ループ2009の内側に入ってゆき、また超伝導ループ2009の外側に出てゆくような形状をしている。すなわち、制御ライン2016は、SQUID 2001と接続された電極2008もしくはSQUID 2001の上を超えて直線状に配線されている。制御ライン2016は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に、電極2008もしくはSQUID 2001と立体交差しつつ延在している。換言すると、制御ライン2016は、電極2005及びSQUID 2001が並ぶ方向と交差する方向に、電極2008もしくはSQUID 2001の上を超えるように配線されている。
図48において、符号2013aと2013bは、上述したバンプを接続する位置を示している。なお、図48に示した例では、符号2013aと2013bで示されるバンプの接続位置は、周囲に空隙が設けられたブリッジ電極(導電部材)2014内に位置しているが、ブリッジ電極2014の周囲に空隙が設けられていなくてもよい。つまり、GNDプレーン2015に、バンプが接続されてもよい。なお、ブリッジ電極2014は、超伝導体である。
図47及び図48からわかるように、チップ2018のGNDプレーン2006-バンプ-基板2019のブリッジ電極2014-バンプ-チップ2018のGNDプレーン2006という電気的に接続された回路が形成されている。このため、チップ2018のGNDプレーン2006、バンプ、基板2019のブリッジ電極2014を用いて、SQUID 2001の外側を囲む超伝導ループ2009が形成される。なお、このことから明らかなように、フリップチップ接続による構成の場合、図33におけるエアブリッジ2007b、2007cの役割をになう構造は不要である。
このように、図47のチップと図48の基板をフリップチップ接続することにより、第七の実施形態と同様の構成を立体的な回路で実現することができ、第七の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第九の実施形態]
以下では、チップ2018を基板2019にフリップチップ接続した構成における別の実施の形態について第九の実施形態として説明する。第九の実施形態の詳細について説明する前に、まず、第八の実施形態に対する考察を述べる。
図49は、図41で示したレイアウトに、説明のための描画を追加した図である。具体的には、チップ2018のSQUID 2001を基板2019に投影する描画が追加された図である。なお、後述するいくつかの図においても、同様に、チップ2018のSQUID 2001を基板2019に投影する描画が追加されている。
図49に示すように、第八の実施形態による基板2019上には、基板2019上で閉じている超伝導ループ2500が形成されている。この超伝導ループ2500はこれまで述べた、超伝導ループ2009とは別の超伝導ループである。チップ2018を基板2019にフリップチップ接続した構成において、量子回路を動作させると、基板2019のGNDプレーン2015に電流が流れてしまうことがあり得る。これは、例えば、基板2019上の制御ライン2016に制御電流を入力した際に、その制御電流が制御ライン2016を流れた後、基板2019のGNDプレーン2015に流れること等により、発生する。これまでは、チップ2018のGNDプレーン2006を電流が流れてしまうことに起因するクロストークを抑制するための構成を述べた。これに対し、第九の実施形態では、基板2019のGNDプレーン2015を電流が流れてしまうことに起因するクロストークを抑制するための構成について示す。
図50は、図49で示した基板2019のGNDプレーン2015にクロストークの原因となる電流IR1が流れてしまった場合の問題を説明する図である。この場合、IR1が生成する磁束G10の一部が基板2019の超伝導ループ2500を貫く。基板2019の超伝導ループ2500の内側を貫く磁束は保存されなければならないため、図50に示したような遮蔽電流IS1が流れる。これにより、IS1が磁束G11を生成し、基板2019の超伝導ループ2500内に生成する磁束G11は、IR1が基板2019の超伝導ループ2500内に生成する磁束G10をキャンセルする。しかし図50に示したように、遮蔽電流IS1の経路は、SQUID 2001の非常に近くを通るため、遮蔽電流IS1が生成する磁束G11の一部をチップ2018上のSQUID 2001が感じてしまう可能性がある。そうするとSQUID 2001が制御されてしまう(例えば量子ビットの共振周波数が変動してしまう)。このような可能性をできるだけ排除した基板のレイアウトをすることが好ましい。
図51はそのような基板のレイアウトの例であり、第九の実施形態にかかる基板2019のレイアウトである。図51に示した構成では、基板2019のGNDプレーン2015とチップ2018のGNDプレーン2006を接続するバンプを用いることにより、超伝導ループ2600が形成されている。図51において、符号2012e、2012fが、これらバンプを接続する位置を示している。図51に示すように、本実施形態では、GNDプレーン2015は、基板2019に投影されたSQUID 2001の領域及びその周辺領域が切り抜かれている。すなわち、GNDプレーン2015は、基板2019に投影されたSQUID 2001から所定の間隔をあけるように、所定の形状(図51に示した例では矩形)に切り抜かれたような形状となっている。なお、本実施形態では、制御ライン2016の通り道を確保するために、GNDプレーン2015は、当該矩形の外側が、制御ライン2016に沿って切り抜かれたような形状となっている。
超伝導ループ2600は、上述した矩形の外周に相当する形状を有するループ回路であり、基板2019と、上述したバンプと、チップ2018を用いた立体的な超伝導ループである。バンプは、図51において、符号2012e、2012fで示されるように、制御ライン2016を跨いで、超伝導ループ2600を形成するために、制御ライン2016の両脇に設けられている。図51に示した例では、具体的には、上述した矩形の近傍に設けられている。このような構成により、基板2019のGNDプレーン2015と、バンプと、チップ2018のGNDプレーン2006を用いた立体的な超伝導ループ2600が構成されている。なお、超伝導ループ2600のうち、制御ライン2016を跨ぐ線路が、バンプ及びチップ2018のGNDプレーン2006を用いて実現されており、残りの線路は基板2019のGNDプレーン2015により実現されている。すなわち、超伝導ループ2600は、基板2019が有するGNDプレーン2015と、制御ライン2016の両脇に存在する基板2019のGNDプレーン2015をつなぐ接続回路(バンプ及びチップ2018のGNDプレーン2006)とを用いた回路である。なお、超伝導ループ2600は、図51に示すようにSQUID 2001が存在する領域に対応する基板2019における領域(投影されたSQUID 2001が存在する領域)を、所定の間隔(図51のg1, g2, g3, g4参照)をあけて囲む回路である。制御ライン2016は分岐しておらず、直線状である。制御ライン2016は、基板2019の超伝導ループ2600の外側から超伝導ループ2600の内側に入り、超伝導ループ2600(基板2019のGNDプレーン2015)に接続している。つまり、直線状の制御ライン2016は、超伝導ループ2600(上述した矩形)を横断するように設けられている。より詳細には、制御ライン2016は、SQUID 2001と接続された電極2008もしくはSQUID 2001の上を超えて直線状に配線されている。制御ライン2016は、SQUID 2001の付近において、第二の方向(図面の左右方向)に、電極2008もしくはSQUID 2001と立体交差しつつ延在している。換言すると、制御ライン2016は、電極2005及びSQUID 2001が並ぶ方向と交差する方向に、電極2008もしくはSQUID 2001の上を超えるように配線されている。
第九の実施形態にかかる構成によれば、投影されたSQUID 2001の位置から遠い位置に、基板2019の超伝導ループ2600を配置することができる。このため、図52に示すように、基板2019のGNDプレーン2015にクロストークの原因となる電流IR1が流れてしまった場合であっても、それによって基板2019の超伝導ループ2600に流れる遮蔽電流IS1が生成する磁束G11は、SQUID 2001に影響を与えない。または、与えたとしても、図50に示したレイアウトの構成よりは、その影響を低減できるという効果がある。
ここで、チップと基板の間の距離をd(図42参照)とした場合、超伝導ループ2600(上述した矩形)の各辺と、投影されたSQUID 2001の各辺との間の距離、すなわち図51におけるg1、g2、g3、g4は、できるだけ大きい方が好ましい。つまり、SQUID 2001と、超伝導ループ2600との離隔距離は、できるだけ大きい方が好ましい。例えば、g1、g2、g3、g4は少なくともd以上であることが好ましく、2d以上であることがより好ましく、3d以上であることがさらに好ましい。
[第九の実施形態の第一の変形例]
第九の実施形態の第一の変形例について説明する。なお、第九の実施形態と同様な構成については適宜説明を省略する。図53は、第九の実施形態の第一の変形例にかかる基板2019のレイアウトである。また、図54は、チップ2018と基板2019をバンプ2022a、2022bを用いてフリップチップ接続した構造の断面図であり、具体的には図53におけるB-B’切断線による断面図を示している。図53に示すように、制御ライン2016は基板2019の超伝導ループ2600の内側のみに配置されてもよい。この場合、図54に示すように、制御ライン2016は、基板2019の裏面から、基板2019を貫通するTSV 2016aを通って基板2019の表面に達し、基板2019の表面の制御ライン用の配線を通って、TSV 2016bを通って基板2019の裏面に帰ってゆくという構成である。なお、基板2019の裏面は、図54では、基板2019の下側の面をいい、基板2019の表面は、図54では、基板2019の上側の面をいう。また、図54において、符号2016cは、基板2019の裏面の制御ライン用の配線を示す。また、図54に示した構成では、基板2019の表面のGNDプレーン2015は、TSV 2015aを介して、基板2019の裏面のGNDプレーン2015bと接続している。
第九の実施形態では、超伝導ループ2600は、一部に、チップ2018のGNDプレーン2006を用いたが、本変形例では、図53に示すように、超伝導ループ2600は基板2019上で閉じている。すなわち、本変形例では、図53に示すように、超伝導ループ2600は、SQUID 2001が存在する領域に対応する基板2019における領域を所定の間隔をあけて完全に囲む、基板2019のGNDプレーン2015である。このような構成でも、第九の実施形態と同様の効果が得られる。
[第九の実施形態の第二の変形例]
第九の実施形態の第二の変形例について説明する。なお、第九の実施形態の第一の変形例と同様な構成については適宜説明を省略する。図55は、第九の実施形態の第二の変形例にかかる基板2019のレイアウトである。
制御ライン2016を流れる電流はDCと20 GHzなどの高周波の電流を重ね合わせた電流であるため、制御ライン2016には高周波の信号が流れる。そのため、制御ライン2016の高周波における伝送特性を良好にしたほうが好ましい。通常、制御ライン2016に信号を供給する信号源装置のインピーダンスは50 Ωなので、制御ライン2016の特性インピーダンスも50 Ωにできるだけ近い値にすることが、高周波における制御ライン2016の伝送特性を良好にするためには必要である。第九の実施形態の第一の変形例では、制御ライン2016からGNDプレーン2015までがやや遠いため、制御ライン2016の特性インピーダンスが50 Ωより高くなってしまう場合がある。特に、図53に示されるように、制御ライン2016の両側(図53において制御ライン2016の上側及び下側)において、制御ライン2016からGNDプレーン2015までが遠い。図53に示すような構造で、制御ライン2016の特性インピーダンスが50 Ωより高くなってしまった場合、制御ライン2016の特性インピーダンスを下げて、50 Ωに近づけることが好ましい。このためには、制御ライン2016の両側のGNDを図53に示す構成よりも制御ライン2016に近づけて配置する必要がある。第九の実施形態の第二の変形例では、図55に示すように、制御ライン2016の両側の、GNDプレーン2015よりも制御ライン2016に近いところにGND(GNDライン2015c)を配置している。すなわち、制御ライン2016の両脇に、制御ライン2016に沿ってGNDライン2015cが設けられている。これにより、制御ライン2016の特性インピーダンスを所定の値(例えば50 Ω)に近い値になるようにしている。そのため、第一の変形例の構成よりも高周波における制御ライン2016の伝送特性が向上することが期待できる。なお、上述したGNDライン2015cは、TSV 2015dを介して、基板2019の裏面のGNDプレーンと接続している。また、制御ライン2016は、TSV 2016a(TSV 2016b)を介して、基板2019の裏面の制御ライン用の配線と接続している。そして、制御ライン2016とGNDライン2015cは、基板2019のチップ2018と対向する面において超伝導ループ2600の内側に配線されている。そして、制御ライン2016は、基板2019の内部を貫通するTSV 2016a(TSV 2016b)と接続され、GNDライン2015cは、基板2019の内部を貫通するTSV 2015dと接続され、TSV 2015dはTSV 2016a(TSV 2016b)に沿って設けられている。
[第九の実施形態の第三の変形例]
第九の実施形態の第三の変形例について説明する。なお、第九の実施形態の第二の変形例と同様な構成については適宜説明を省略する。図56は、第九の実施形態の第三の変形例にかかる基板2019のレイアウトである。図56に示した構成も上述した第二の変形例と同様に、制御ライン2016の特性インピーダンスを所定の値(例えば50 Ω)に近い値にするための構造である。図55に示した構成では、制御ライン2016のためのTSV 2016a及びTSV 2016bのそれぞれの両側に2つのGND用のTSV 2015dを配置していた。これに対し、図56に示す構成では、制御ライン2016のためのTSV 2016a及びTSV 2016bのそれぞれの周囲に、4個のGND用のTSV 2015dを配置している。なお、基板2019の表面において、制御ライン2016を囲むように、GNDライン2015cは配線されている。
ところで、制御ライン用のTSVの周囲を完全に取り囲むようにGND用のTSVを配置して、同軸ケーブルのようなTSVの構造にすることが、制御ライン2016の高周波特性を良好にするには最も好ましい。つまり、中空の円筒の形状をしたGND用のTSVと、その中空であるところを通り、かつ、GND用のTSVとはシリコンを介して電気的に絶縁されている制御ライン用のTSVとを有する二重構造のTSVを用いることが制御ラインの高周波特性を良好にするには最も好ましい。しかしそのような同軸状のTSVを形成することが困難である場合は、例えば図56のように制御ライン2016用のTSV 2016a (TSV 2016b)の周囲に4個のGND用のTSV 2015dを配置することにより、近似的に同軸構造に近い構造にすることにより、高周波特性は良好になる。図55のような2個のGND用TSV 2015dを配置するよりも、図56のように4個のGND用TSV 2015dを配置したほうが、TSVが同軸構造に近い形状になるので、制御ライン2016の高周波特性は図55の構成よりも図56の構成の方がさらに良好になることが期待できる。このように、TSV 2015dは、TSV 2016a (TSV 2016b)を囲むように、一つのTSV 2016a (TSV 2016b)に対して複数設けられてもよい。なお、TSV 2016a (TSV 2016b)の周囲を囲むTSV 2015dの数は、2個や4個に限られず、3個でも5個以上でもよい。
[第九の実施形態のその他の変形例]
第九の実施形態のその他の変形例としては、図57、図58に示すような構成も考えられる。これらの例は、制御ライン2016の形状が、U字状になっている点を除き、第九の実施形態と同様である。すなわち、図57または図58に示すように、制御ライン2016は、基板2019の超伝導ループ2600の外側から基板2019の超伝導ループ2600の内側に入ってきて、基板2019の超伝導ループ2600の内側で折り返してから超伝導ループ2600の外側に出てゆく構造でもよい。また、図57、図58に示すような構成においても、図53、図55、図56に示した構成のように、TSVを用いることによって制御ライン2016を基板2019の超伝導ループ2600の内側にのみ配置してもよい。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した発振器は、任意の用途に用いることができる。例えば、上述した発振器は、位相検波器として用いられてもよいし、量子計算機として用いられてもよい。
1、2 量子ビット
102 SQUID
103a、103b λ/4線路
104 制御ライン
106 GNDプレーン
107 エアブリッジ
108 分岐点
109 超伝導ループ
202 SQUID
203a、203b λ/4線路
204 制御ライン
206 GNDプレーン
207 エアブリッジ
208 分岐点
209 超伝導ループ
301、302、303 キャパシタ
1001、1002 量子ビット
1041、1042 分岐ライン
1102 SQUID
1103a、1103b λ/4線路
1104 制御ライン
1106 GNDプレーン
1107 エアブリッジ
1202 SQUID
1203a、1203b λ/4線路
1204 制御ライン
1206 GNDプレーン
2000 量子ビット
2001 SQUID
2002a、2002b ジョセフソン接合
2003 キャパシタ
2004 制御ライン
2005 電極
2006 GNDプレーン
2007 エアブリッジ
2008 電極
2009 超伝導ループ
2010 インダクタ
2011 ジョセフソン接合
2014、2014a ブリッジ電極
2015 GNDプレーン
2015a TSV
2015b GNDプレーン
2015c GNDライン
2015d TSV
2016 制御ライン
2016a、2016b TSV
2017a、2017b 分岐ライン
2018 チップ
2019 基板
2020、2021 シリコン基板
2022a、2022b バンプ
2041、2042 分岐ライン
2108 分岐点
2500、2600 超伝導ループ
11041、11042 分岐ライン
20041、20042 分岐ライン
20170 分岐点

Claims (10)

  1. 発振器であって、
    SQUIDと、
    前記SQUIDに接続された伝送線路と、
    グランドプレーンと、
    前記発振器の発振時に発生する定在波の電場の節の近傍に設けられ、前記伝送線路の両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ第一の接続回路と
    を有する発振器。
  2. 前記第一の接続回路は、前記伝送線路と前記SQUIDの接続箇所から、前記伝送線路の長さの1/20以下の位置に設けられている
    請求項1に記載の発振器。
  3. 前記SQUIDに磁気結合し、制御信号が入力される制御ラインと、
    前記制御ラインの両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ第二の接続回路と
    を有する請求項1又は2に記載の発振器。
  4. 前記SQUIDに対し、2本の前記伝送線路が接続されており、一方の前記伝送線路は、前記SQUIDの一端に接続され、他方の前記伝送線路は、前記SQUIDの他端に接続され、
    前記第一の接続回路は、2本の前記伝送線路のそれぞれに対して設けられており、
    前記グランドプレーン及び前記第一の接続回路は、超伝導体であり、
    前記発振器は、前記グランドプレーン及び前記第一の接続回路を用いた超伝導ループ回路を備え、
    前記超伝導ループ回路は、前記SQUIDを囲む
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発振器。
  5. 前記SQUIDに磁気結合し、制御信号が入力される制御ラインと、
    前記制御ラインの両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ超伝導体の第二の接続回路と
    を有し、
    前記制御ラインの終端側は、前記SQUIDに沿って配線され、前記制御ラインの終端は、当該制御ラインの両脇に存在する前記グランドプレーンの片方と接続しており、
    前記超伝導ループ回路は、前記グランドプレーン、前記第一の接続回路、及び前記第二の接続回路を用いた回路である
    請求項4に記載の発振器。
  6. 前記SQUIDに磁気結合し、制御信号が入力される制御ラインを有し、
    前記制御ラインに流れる前記制御信号により、大きさが略同じであり向きが逆である2種類の磁束が前記超伝導ループ回路を貫くように、前記制御ラインが配置されている
    請求項4に記載の発振器。
  7. 前記制御ラインは、超伝導体であり、当該制御ライン上の分岐点から、第一の分岐ラインと第二の分岐ラインに分かれており、
    前記第一の分岐ラインは、前記SQUIDに沿って配線されており、
    前記第二の分岐ラインは、前記第一の分岐ラインとは逆方向に配線されており、
    2本の前記伝送線路のそれぞれに対して設けられ前記第一の接続回路のそれぞれの設置位置は、前記分岐点からの距離が略同じであり、
    前記超伝導ループ回路は、前記グランドプレーン、前記第一の接続回路、前記第一の分岐ライン、及び前記第二の分岐ラインを用いた回路である
    請求項6に記載の発振器。
  8. 前記制御ラインの両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ第二の接続回路を有し、
    前記第二の接続回路から前記分岐点までの前記制御ライン上の距離が、前記制御信号の波長の1/20以上である
    請求項7に記載の発振器。
  9. 前記制御ラインは、前記SQUIDの付近で折り返すようにU字状に配線されており、
    前記発振器は、U字状の前記制御ラインの往路と復路の2本の両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ超伝導体の第二の接続回路を有し、
    前記超伝導ループ回路は、前記グランドプレーン、前記第一の接続回路、及び前記第二の接続回路を用いた回路である
    請求項6に記載の発振器。
  10. 前記制御ラインは、一方の前記伝送線路と立体交差して直線状に配線されており、
    前記発振器は、前記制御ラインの両脇に存在する前記グランドプレーンをつなぐ超伝導体の第二の接続回路を有し、
    前記第二の接続回路は、前記制御ラインと前記伝送線路とが立体交差する位置の両脇にそれぞれ設けられており、
    前記超伝導ループ回路は、前記グランドプレーン、前記第一の接続回路、及び前記第二の接続回路を用いた回路である
    請求項6に記載の発振器。
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