JP2022113592A - ヨウ素取得方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヨウ素取得装置の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素の収率を特に優れたものとすることができるヨウ素取得方法を提供すること。【解決手段】本発明のヨウ素取得方法は、かん水からヨウ素を取得する方法であって、前記かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程と、前記前処理工程を経て得られた前処理かん水を使用してヨウ素を取得するヨウ素取得工程とを有する。前記マンガン酸化物は、活性化処理剤に接触することによって活性化されたものであることが好ましい。前記活性化処理剤は、塩素系活性化処理剤であることが好ましい。前記前処理かん水中における重金属の含有量は、全鉄が0.10mg/L未満、全マンガンが0.05mg/L未満であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、かん水からヨウ素を取得するヨウ素取得方法に関する。
ヨウ素は、海水中にも含まれる一般的な元素であるが、地球上で資源としての存在は偏っており、天然ガスや石油に付随して産出するかん水(鹹水)やチリの硝石鉱石中にのみ高濃度で存在することが知られている。
硝石鉱石から分離する方法を別にすれば、ヨウ素は、主に、水溶性天然ガスとともに地下の透水性の地層から汲み上げられ、天然ガスを分離した後のヨウ化物イオンを含有するかん水を原料として、これから分離する方法により工業的に製造される。
かん水を原料に使用して分子状ヨウ素(I;以下、単にヨウ素ということがある)を製造する方法として、ブローイングアウト法及びイオン交換樹脂法が工業的に実施されている(非特許文献1参照)。
海宝龍夫 「ヨウ素の本」 日刊工業新聞社2015年6月25日発行 p.16~23
ヨウ素原子を含有する天然の地下かん水(以下、単に「かん水」という)からのヨウ素の工業的な採取においては、かん水に含有されるヨウ素成分を損失なく効率的に取得することが求められる。特に、資源保護の観点等からも、天然資源であるヨウ素の収率のさらなる向上が求められている。
また、従来においては、ヨウ素の取得において、かん水中に含まれる他の成分が不溶化して析出し、装置を汚染するという問題があった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の本発明により実現することができる。
(1) かん水からヨウ素を取得するヨウ素取得方法であって、
前記かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程と、
前記前処理工程を経て得られた前処理かん水を使用してヨウ素を取得するヨウ素取得工程とを有する、ヨウ素取得方法。
(2) 前記マンガン酸化物は、活性化処理剤に接触することによって活性化されたものである、上記(1)に記載のヨウ素取得方法。
(3) 前記活性化処理剤は、塩素系活性化処理剤である、上記(2)に記載のヨウ素取得方法。
(4) 前記前処理工程に供される前記かん水中の全有機炭素(TOC)が10mg/L以上である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のヨウ素取得方法。
(5) 前記ヨウ素取得工程は、ブローイングアウト法によりヨウ素を取得する工程である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のヨウ素取得方法。
本発明によれば、ヨウ素取得装置の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素の収率を特に優れたものとすることができるヨウ素取得方法を提供することができる。
図1は、本発明のヨウ素取得方法の好適な実施形態の一例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のヨウ素取得方法の好適な実施形態の一例を示す図である。
本発明のヨウ素取得方法は、かん水からヨウ素を取得する方法であって、前記かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程と、前記前処理工程を経て得られた前処理かん水を使用してヨウ素を取得するヨウ素取得工程とを有する。
これにより、ヨウ素取得装置の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素の収率を特に優れたものとすることができるヨウ素取得方法を提供することができる。
これに対し、例えば、かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程を省略して、ヨウ素取得工程に供されるかん水中に、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を直接添加した場合には、かん水からのヨウ素収率が低下する。さらにはかん水に含まれる他の成分が不溶化して析出しヨウ素取得装置を汚染する。
[1]かん水について
本発明で使用されるかん水は、ヨウ化物イオン(I)を含有する天然の塩水である。経済的に好ましくは、地下のかん水帯水層から揚水された後、溶存する天然ガスを天然ガス分離装置により分離取得した後に残ったかん水である。さらに本発明では、複数の坑井から随時集めた混合かん水等、ヨウ化物イオン濃度、被酸化物濃度、pHの値に変動がある地下かん水も使用することができる。
かん水に含有されるヨウ化物イオンの含有量は、特に限定されないが、20mg/L以上であることが好ましく、30mg/L以上であることがより好ましく、40mg/L以上であることがさらに好ましい。
本発明において、単に「ヨウ素」の記載は、化学式でIと示される分子状ヨウ素を意味する。
地下から揚水されたかん水は、一般に、天然の水溶性高分子を含有する。含有される水溶性高分子としては、例えば、水酸基やカルボキシル基を有する多糖類、フミン酸やフルボ酸等のフミン質、タンパク質等が挙げられる。
かん水中に含有される水溶性高分子の分子量は、例えば、500以上2,000,000以下の範囲である。
[2]水処理について
地下かん水に対しては、後に詳述するような各工程を施す前に、かん水中の砂、浮遊物質等の不純物を除去する水処理を施してもよい。水処理としては、例えば、濾過処理、曝気処理等が挙げられる。
このような水処理を行うことにより、例えば、かん水中に含まれる不溶物やヨウ素の取得過程において発生しうる不溶物の原因物質を効率よく除去することができ、のちに詳述する前処理工程での処理効率をより優れたものとすることができ、ヨウ素の取得率をさらに高めたり、ヨウ素取得方法に要する時間を短縮したりすることにより、ヨウ素の生産性をさらに優れたものとすることができる。
特に、濾過処理を行うことにより、ヨウ素取得工程で用いる装置や配管における汚染や閉塞の発生をより好適に防止することができる。
また、かん水に対して空気や酸素による曝気処理を行うことにより、例えば、かん水中に含まれる鉄イオンを鉄水酸化物等として析出させ、このような析出物(不溶物)を、濾過材を用いて濾過除去することも好ましい。
これにより、ヨウ素取得工程で用いる装置や配管における汚染や閉塞の発生をさらに好適に防止することができる。
濾過処理は、例えば、地下から揚水したかん水に対して凝集沈殿濾過、砂濾過、多孔濾過膜等の濾過処理を単独で又は組み合わせて行うことにより実施できる。
多孔濾過膜の孔径は、特に限定されないが、除去性能と透過水量とのバランスから、平均孔径0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
濾過材としては、例えば、砂、石炭、活性炭、無機酸化物もしくは樹脂等の粒子、精密濾過膜もしくは限外濾過膜等の多孔濾過膜等を用いることができる。
このような水処理には、濾過処理装置と曝気処理装置の一方又は両者を併せて備えた不溶物除去装置が好適に使用される。
[3]前処理工程
前処理工程では、かん水をマンガン酸化物に接触させる処理を行う。
前処理工程により、かん水中に含有する重金属は析出して液相から除去され、また、水溶性高分子が変性されヨウ素との反応活性が低下するものと考えられる。
以下、マンガン酸化物に接触させた後のかん水、すなわち、前処理工程による処理が施されたかん水を「前処理かん水」と言う。
前処理工程に供されるかん水は、水処理を行った場合であっても、重金属を含有しており、全鉄の含有量は、通常、0.10mg/L以上であり、全マンガンの含有量は、通常、0.05mg/L以上である。
また、前処理工程に供されるかん水は、水処理を行った場合であっても、水溶性高分子を含有し、その指標である全有機炭素濃度(TOC:Total Organic Carbon)は、通常、10mg/L以上であり、より具体的には、例えば、20mg/L以上200mg/L以下である。
上記のように、重金属の含有量、全有機炭素濃度が比較的高いかん水を用いた場合、従来においては、ヨウ素取得装置の汚染が特に生じやすく、また、かん水からのヨウ素の収率が低下しやすいという問題があったが、本発明によれば、ヨウ素取得装置の汚染を十分に防止しつつ、かん水からのヨウ素の収率を特に優れたものとすることができる。すなわち、上記のように、重金属の含有量、全有機炭素濃度が比較的高いかん水を用いた場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
前処理工程においては、マンガン酸化物により、かん水に含有される鉄イオンやマンガンイオン等の重金属イオンの酸化が進行し、金属酸化物や金属水酸化物等を生成する。これらは、不溶物として吸着、除去することができる。
前処理工程において使用されるマンガン酸化物としては、例えば、MnO(xは、1以上2以下の数)で表される固体状の酸化マンガンが使用でき、より具体的には、α型、β型、ε型、γ型、λ型、δ型もしくはR型の結晶構造を有する酸化マンガン又はこれらのうちから選択される2種以上の組み合わせが使用できる。より具体的には、例えば、β型二酸化マンガンとγ型二酸化マンガンとの複合物を使用することができる。
また、酸化マンガンを含むマンガン鉱石を使用することもできる。
さらに、マンガン以外の金属を含む酸化マンガンの複合体を使用することもできる。
さらに、酸化マンガンを担体に担持させた担持体(例えば、粉状、粒状、ハニカム状等の担持体)が使用できる。
担体としては、例えば、アンスラサイト、ゼオライト、その他のセラミックス等が使用できる。酸化マンガン又は酸化マンガンの担持体を成形した成形物も使用することができる。
粉末状のマンガン酸化物を用いる場合、当該マンガン酸化物の粒径は、特に限定されないが、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。
また、粉末状のマンガン酸化物を用いる場合、当該マンガン酸化物のかさ密度は、特に限定されないが、1.0g/cm以上であることが好ましく、1.4g/cm以上であることがより好ましい。
また、マンガン酸化物としては、多孔質体を用いてもよい。
これにより、マンガン酸化物の単位体積当たりの表面積をより大きいものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
マンガン酸化物は、活性化処理剤に接触することによって活性化されたものであることが好ましい。
これにより、かん水に含有される重金属イオン及び水溶性高分子に対する酸化活性をさらに顕著なものとすることができる。
マンガン酸化物の活性化処理に使用される活性化処理剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過酸化水素、過硫酸塩、オゾン等が挙げられ、費用及び酸化活性の点から、次亜塩素酸ナトリウム、塩素等の塩素系活性化処理剤が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
活性化処理剤は前処理に供する前のかん水に混合して使用してもよい。その場合、活性化処理工程を削減もしくは活性化する頻度を減少させることができる。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。また、本発明のヨウ素取得方法で使用したマンガン酸化物の活性が低下した場合であっても、再賦活化、再利用を好適に行うことができる。
マンガン酸化物に活性化処理剤を接触させる温度は、特に限定されないが、5℃以上40℃以下であることが好ましい。
マンガン酸化物に活性化処理剤を接触させる時間は、特に限定されないが、10時間以下であることが好ましく、0.1時間以上3.5時間以下であることがより好ましい。
活性化処理剤を接触させた後のマンガン酸化物は、活性化処理剤を含まない水で洗浄してその固体表面に残留する活性化処理剤を除去することが好ましい。
前処理工程は、例えば、マンガン酸化物を充填した前処理槽にかん水を通水することによって実施することができる。
前処理槽へのかん水の通水流速は、特に限定されないが、空間速度で、1Hr-1以上200Hr-1以下であることが好ましく、5Hr-1以上100Hr-1以下であることがより好ましい。
前処理工程に供するかん水(例えば、前処理槽へ通水するかん水)のpHは、特に限定されないが、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
また、かん水のpHを調整するために、塩酸、硫酸等のpH調整剤を添加してもよい。
前処理工程でのかん水の温度(例えば、前処理槽におけるかん水の温度)は、特に限定されないが、0℃以上60℃以下であることが好ましい。
複数の前処理槽をかん水の流れに沿って直列に配置してもよい。
これにより、前処理槽の管理が容易になる。前処理槽の下流側に金属酸化物や金属水酸化物等の不溶物を濾過する濾過装置を備えていてもよい。
前処理工程において、マンガン酸化物は、かん水の通水に対して継続して使用することができる。長時間の通水によりマンガン酸化物の活性は次第に低下するが、そのときは、マンガン酸化物に活性化処理剤を接触させる活性化処理を行うことにより再賦活化、再利用することができる。
本発明の好ましい実施態様は、マンガン酸化物を充填した複数の前処理槽を並列して配置し、かん水の通水を、活性なマンガン酸化物を充填した前処理槽に順次切り替えてゆく方法である。すなわち、マンガン酸化物の活性が低下した前処理槽にはかん水の通水を停止し、他の前処理槽を使って前処理を行う。その間、活性が低下した前処理槽には活性化処理剤を供給する活性化処理を行い、マンガン酸化物を再賦活化して、次の切り替えによるかん水の通水に備える。
前処理工程により、かん水に含有される重金属の濃度が減少する。前処理工程により得られる前処理かん水中における重金属の含有量は、全鉄が0.10mg/L未満、全マンガンが0.05mg/L未満であることが好ましい。
これにより、ヨウ素取得装置の汚染をより効果的に防止することができる。
上記のように、前処理工程により得られる前処理かん水中における全鉄の含有量は、0.10mg/L未満であることが好ましいが、0.05mg/L未満であることがより好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
また、上記のように、前処理工程により得られる前処理かん水中における全マンガンの含有量は、が0.05mg/L未満であることが好ましいが、0.01mg/L未満であることがより好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
前処理工程は、かん水に含有される水溶性高分子を必ずしも完全に分解されるまで酸化するものではない。
前処理工程において、マンガン酸化物による水溶性高分子の変性が起こり、水溶性高分子の構造及び物性が変化して、水溶性高分子の有するヨウ素との化学的又は物理的な結合力が低下するものと考えられる。
[4]ヨウ素取得工程
前処理工程を経た前処理かん水は、ヨウ素取得工程に供され、当該前処理かん水からヨウ素を分離して取得する。
より具体的には、ヨウ素取得工程において、かん水に含有されるヨウ化物イオンは、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤による酸化反応を受けて分子状ヨウ素(I)に転化する。以下、酸化剤によってヨウ化物イオンが酸化されて分子状ヨウ素を含有するかん水を「酸化かん水」と言いう。
本発明において、前処理工程を経て得られる前処理かん水は、重金属の含有量、水溶性高分子のヨウ素との反応活性が低減したものであるため、ヨウ素取得工程において、ヨウ化物イオンが好ましくない副反応(例えば、有機物との反応等)が進行することを効果的に防止することができ、ヨウ素の収率が優れたものとなると考えられる。
ヨウ素取得工程においては、ブローイングアウト法及びイオン交換樹脂法に例示されるヨウ素取得方法を用いて、前処理かん水に含有されるヨウ化物イオンからヨウ素を取得することができる。ヨウ素取得工程を実施する装置をヨウ素取得装置という。
本発明は、ブローイングアウト法及びイオン交換樹脂法によるヨウ素取得装置において、ヨウ素収率向上の効果が有意に現れる。
特に、ヨウ素取得工程をブローイングアウト法により行うことにより、イオン交換樹脂法と比較して、経済的に大量の水を処理してヨウ素を取得できる。また、前処理工程を実施せずブローイングアウト法を行う場合と比較して、ヨウ素取得装置であるヨウ素放散塔の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素収率を特に優れたものとすることができる。
また、ヨウ素取得工程をイオン交換樹脂法により行うことにより、ブローイングアウト法と比較して、経済的に少量の水を処理してヨウ素を取得できる。また、前処理工程を実施せずイオン交換樹脂法を行う場合と比較して、ヨウ素取得装置であるヨウ素吸着塔の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素収率を特に優れたものとすることができる。
ブローイングアウト法は、前処理かん水に酸化剤を加えた後、生成した分子状ヨウ素を空気の吹き込みにより揮散させ、還元剤を含有する吸収液に吸収させ、吸収液に酸化剤を加えて再酸化してヨウ素を取得する方法である。
ブローイングアウト法によるヨウ素取得工程は、具体的には、前処理かん水に、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤を混合してヨウ素を含有する酸化かん水を生成する酸化工程と、前記酸化工程後の酸化かん水を、ブロワーを備えた放散塔に送り、空気等の気体を吹き込んでヨウ素を気化させる放散工程と、前記放散工程で放散塔から放出されたヨウ素を含む気体を吸収塔にて、例えば、亜硫酸、(重)亜硫酸ナトリウム等の還元剤を含む水溶液に接触させることにより高濃度のヨウ化物イオンを含有する吸収液を得る吸収工程と、得られた吸収液に、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を加えて固体状のヨウ素を生成させて取得する晶析工程を含む、かん水からヨウ素を取得する工程である。
ブローイングアウト法における酸化剤の混合による酸化工程は、酸化剤が添加された酸化かん水のpHが酸性域又は中性域となる条件で行うことが好ましい。より具体的には、酸化工程における酸化かん水のpHは、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
イオン交換樹脂法は、前処理かん水に酸化剤を加えた後、生成した分子状ヨウ素を経てポリヨウ素イオンが生成する。ポリヨウ素イオンを含有する酸化かん水をイオン交換樹脂に接触させ、吸着されたポリヨウ素イオンを溶離し、溶離液に酸化剤を加えて再酸化してヨウ素を取得する方法である。
イオン交換樹脂法によるヨウ素取得工程は、具体的には、前処理かん水に、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤を混合してI 等のポリヨウ素イオンを生成する酸化工程と、前記酸化工程後のポリヨウ素イオン含有かん水を陰イオン交換樹脂が充填された吸着塔に送り、ポリヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着する吸着工程と、陰イオン交換樹脂を溶離塔に送ってこれに吸着されたポリヨウ素イオン、例えば、亜硫酸、(重)亜硫酸ナトリウム等の溶離剤との接触により溶離させる溶離工程と、溶離液に、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を加えて固体状のヨウ素を生成させて取得する晶析工程を含む、かん水からヨウ素を取得する工程である。
イオン交換樹脂法における酸化剤による酸化工程は、酸化剤が添加された酸化かん水のpHが酸性域又は中性域となる条件で行うことが好ましい。より具体的には、酸化工程における酸化かん水のpHは、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
また、ヨウ素取得工程においては、かん水中に含有される水溶性高分子と化学的又は物理的に結合して有機化合物を形成しているヨウ素(以下、有機化ヨウ素という)が生成する。本発明者の検討によれば、酸化かん水中の有機化ヨウ素は、ブローイングアウト法の放散工程において気化し難く、イオン交換樹脂法の吸着工程において陰イオン交換樹脂に吸着し難い性質を有し、利用されることなく排出される。そのため、ヨウ素取得工程における有機化ヨウ素の生成は、ヨウ素の収率を低下せしめる。
一方、本発明においては、有機化ヨウ素の生成が抑制される。その原因として、かん水が前処理工程を経ることにより、かん水中の水溶性高分子の分子鎖又は官能基がマンガン酸化物による酸化を受けて、少なくとも一部の水溶性高分子においてその一次構造もしくは高次構造が変化又は低分子化することで不活性となり、ヨウ素と安定な化学的又は物理的な結合を最早形成し得なくなる機構が推定される。なお、前処理工程を経ることにより水溶性高分子が変性していると推定されるが、かん水の色は除色されない場合もある。
要するに、本発明の前処理工程を経た処理かん水は、前処理工程を経ないかん水と比較して、ヨウ素取得工程において、有機化ヨウ素濃度が減少し、かつ分子状ヨウ素濃度が有意に増加する。その結果、ヨウ素取得工程において、かん水に含有されるヨウ化物イオンからのヨウ素の収率が向上する。
地下から揚水された天然のかん水に重金属及び水溶性高分子が含有されることは知られているが、このことがヨウ素の取得に関係することは知られておらず、さらに、かん水をマンガン酸化物に接触させることにより、ヨウ素取得工程においてヨウ素の収率が向上することは知られていなかった。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、本発明の趣旨に沿った範囲内で条件を変更したり、他の工程を加えたりする、等の改変を加えることは差し支えない。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[5]ヨウ素取得方法の実施
(実施例1)
まず、内径30mmのガラス製クロマト管(ガラスフィルター付き)に、マンガン酸化物としてマンガン酸化物A(酸化マンガン(MnO;xは1以上2以下の数)を担持したセラミック粒体(株式会社トーケミ製、商品名ラジカルライトUC3))を見かけ容量で100mL充填し、前処理槽を作製した。これをイオン交換水で逆流洗浄後、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液6.76gを混合した水3Lを空間速度10Hr-1で通水して活性化処理を行った。さらにイオン交換水で逆流洗浄し、賦活されたマンガン酸化物が充填された前処理槽を作製した。
次に、空気を用いて曝気する曝気処理及びアンスラサイトによる濾過処理を行ったかん水A(ヨウ化物イオン含有量35mg/L、TOC40mg/L、全鉄含有量0.15mg/L、全マンガン含有量0.10mg/L)を、前記のようにして作製した前処理槽に空間速度60Hr-1、25~30℃で連続して通水することにより前処理工程を行った。
かん水通水開始から60分~120分の60分間の前処理槽の出口から出た前処理かん水を集めて採取した。
採取した前処理かん水を使用して、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、分子状ヨウ素を生成させる酸化反応を行ってブローイングアウト法によるヨウ素取得工程を行い、ヨウ素を得た。その結果を表1に示す。なお、ヨウ素取得工程後に排出されたかん水のTOC40mg/L、全鉄含有量0.05mg/L、全マンガン含有量0.01mg/Lであった。
(実施例2)
前処理工程で用いるマンガン酸化物をマンガン酸化物B(酸化マンガン(MnO;xは1以上2以下の数)を担持したセラミック粒体(日本原料株式会社製、商品名ニューカラーカッターライト)に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。その結果を表1に示す。
(実施例3)
前処理工程に供する前のかん水に、空気を用いて曝気する曝気処理及びアンスラサイトによる濾過処理を行った後、pH調整のため添加剤として硫酸を添加してpH6.0に調整したかん水を使用した以外は、前記実施例1と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。その結果を表1に示す。
(実施例4)
前処理工程で通水するかん水に、かん水B(ヨウ化物イオン含有量38mg/L、TOC50mg/L、全鉄含有量0.35mg/L、全マンガン含有量0.25mg/L)を使用した以外は、前記実施例1と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。その結果を表2に示す。なお、ヨウ素取得工程後に排出されたかん水のTOC50mg/L、全鉄含有量0.10mg/L、全マンガン含有量0.01mg/Lであった。
(比較例1)
前処理工程を省略した以外は、前記実施例1と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。
すなわち、空気を用いて曝気する曝気処理及びアンスラサイトによる濾過処理を行ったかん水Aを使用して、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、分子状ヨウ素を生成させる酸化反応を行ってブローイングアウト法によるヨウ素取得工程を行い、ヨウ素を得た。その結果を表1に示す。なお、ヨウ素取得工程後に排出されたかん水のTOCは40mg/L、全鉄含有量0.15mg/L、全マンガン含有量0.10mg/Lであった。
(比較例2)
前処理工程において、マンガン酸化物の代わりに、無煙炭(株式会社トーケミ製、商品名アンスラサイト0.6mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。その結果を表1に示す。
(比較例3)
前処理工程を省略した以外は、前記実施例4と同様にしてヨウ素取得方法を実施して、ヨウ素を得た。
すなわち、空気を用いて曝気する曝気処理及びアンスラサイトによる濾過処理を行ったかん水Bを使用して、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、分子状ヨウ素を生成させる酸化反応を行ってブローイングアウト法によるヨウ素取得工程を行い、ヨウ素を得た。その結果を表2に示す。なお、ヨウ素取得工程後に排出されたかん水のTOCは50mg/L、全鉄含有量0.35mg/L、全マンガン含有量0.25mg/Lであった。
前記各実施例及び各比較例について、かん水Aを使用した場合のヨウ素取得方法での処理条件を表1にまとめて示し、かん水Bを使用した場合のヨウ素取得方法での処理条件を表2にまとめて示す。
また、酸化工程で採取したかん水(酸化かん水)についての分子状ヨウ素(I)濃度、有機化ヨウ素濃度、全ヨウ素濃度の値を表1及び表2にまとめて示す。
また、ヨウ素取得工程で採取したかん水(ヨウ素取得後かん水)についての、有機化ヨウ素濃度、全ヨウ素濃度の値を表1及び表2にまとめて示す。
また、前記各実施例及び各比較例について、かん水Aもしくはかん水Bに含有されるヨウ化物イオンに対する、ヨウ素取得方法を実施することにより最終的に取得されたヨウ素(I)の割合(ヨウ素収率)、及び、ヨウ素取得方法実施後におけるヨウ素取得装置の目視による汚染の有無を表1及び表2にまとめて示す。
Figure 2022113592000001
Figure 2022113592000002
表1及び表2から明らかなように、前記各実施例では優れた結果が得られたのに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
本発明を実施することで、ヨウ素取得工程において有機化ヨウ素の生成が抑制されかつ分子状ヨウ素濃度が有意に増加する。その結果、ヨウ素取得工程において、かん水に含有されるヨウ化物イオンからのヨウ素の収率が向上する。
本発明のヨウ素取得方法は、かん水からヨウ素を取得する方法であって、前記かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程と、前記前処理工程を経て得られた前処理かん水を使用してヨウ素を取得するヨウ素取得工程とを有する。
本発明のヨウ素取得方法によれば、ヨウ素取得装置の汚染の防止を図りつつ、かん水からのヨウ素の収率を特に優れたものとすることができるヨウ素取得方法を提供することができる。
したがって、本発明のヨウ素取得方法は、産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. かん水からヨウ素を取得するヨウ素取得方法であって、
    前記かん水をマンガン酸化物に接触させる前処理工程と、
    前記前処理工程を経て得られた前処理かん水を使用してヨウ素を取得するヨウ素取得工程とを有する、ヨウ素取得方法。
  2. 前記マンガン酸化物は、活性化処理剤に接触することによって活性化されたものである、請求項1に記載のヨウ素取得方法。
  3. 前記活性化処理剤は、塩素系活性化処理剤である、請求項2に記載のヨウ素取得方法。
  4. 前記前処理工程に供される前記かん水中の全有機炭素(TOC)が10mg/L以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のヨウ素取得方法。
  5. 前記ヨウ素取得工程は、ブローイングアウト法によりヨウ素を取得する工程である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヨウ素取得方法。
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