JP2022108557A - 通信用電線 - Google Patents

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【課題】本開示にかかる通信用電線は、外部導体におけるリターンパスとしての機能を、ノイズ遮蔽体とは別の部材により実現した通信用電線を提供することができる。【解決手段】内部導体10と、前記内部導体の外周を被覆する絶縁被覆12と、前記絶縁被覆12の外周を被覆する金属箔13と、導体線より構成され、前記内部導体10と軸線を並走させて、前記金属箔13の外側に配置された外部導体11と、磁性材料を含有し、前記内部導体10と前記絶縁被覆12と前記金属箔13と前記外部導体11を含む集合体の外周を被覆する磁性シース層14と、を備える通信用電線1とする。【選択図】図1

Description

本開示は、通信用電線に関する。
自動車等の分野において、高速通信の需要が増している。自動運転技術の導入や車載機器の高機能化に伴い、自動車内における通信線のデータ送信量が増加しているため、電気信号をより速く、正確に伝送する必要があるからである。高速通信に用いられる通信用電線の一種として、特許文献1に開示されるように、中心導体と、絶縁体と、銅線編組からなる外部導体から構成される伝導部分と、伝導部分を覆うシースからなる同軸ケーブルを挙げることができる。特許文献1では、シースの表面のうち少なくとも表側の一部に、磁気損失膜が形成されている。この種の同軸ケーブルは、シースが磁性材料を含有することで、ノイズ遮蔽効果を示すので、ノイズの影響を低減した高速通信を可能とする。
特開2001-283652号公報
従来の同軸ケーブルにおいては、外部導体である金属編組が、ノイズに対するシールド効果と、中心導体を伝送される電気信号のリターンパスとしての機能との、両方の役割を担うことができる。しかし、特許文献1に記載されるように、通信用電線に設けるシース層に磁性材料を用い、ノイズ遮蔽効果を発揮させる場合には、上記金属編組の役割のうち、ノイズに対するシールド効果の少なくとも一部を、そのシース層に担わせられる可能性がある。すると、外部導体に相当する導電材料として、信号のリターンパスとしての機能を担う事ができれば、従来一般の金属編組以外の多様な部材を適用できる可能性がある。
以上に鑑み、外部導体におけるリターンパスとしての機能を、ノイズ遮蔽体とは別の部材により実現した通信用電線を提供することを課題とする。
本開示にかかる通信用電線は、内部導体と、前記内部導体の外周を被覆する絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周を被覆する金属箔と、導体線より構成され、前記内部導体と軸線を並走させて、前記金属箔の外側に配置された外部導体と、磁性材料を含有し、前記内部導体と前記絶縁被覆と前記金属箔と前記外部導体を含む集合体の外周を被覆する磁性シース層と、を備える通信用電線。
本開示にかかる通信用電線は、外部導体におけるリターンパスとしての機能を、ノイズ遮蔽体とは別の部材により実現した通信用電線を提供することができる。
図1は、本開示の実施形態にかかる通信用電線の構成を示す断面図である。 図2は、本開示の実施形態にかかる通信用電線の斜視図である。 図3は、金属編組を有する従来の同軸電線の構成を示す断面図である。 図4は、実施例に使用した各試料の構成を示す断面図と、各試料の評価結果をまとめた表である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を説明する。
本開示の実施形態にかかる通信用電線は、内部導体と、前記内部導体の外周を被覆する絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周を被覆する金属箔と、導体線より構成され、前記内部導体と軸線を並走させて、前記金属箔の外側に配置された外部導体と、磁性材料を含有し、前記内部導体と前記絶縁被覆と前記金属箔と前記外部導体を含む集合体の外周を被覆する磁性シース層と、を備えている。
通信用電線は、内部導体と絶縁被覆と外部導体とを含む集合体の外周に、磁性材料を有する磁性シース層を備えている。磁性材料が、ノイズの原因となる電磁波を吸収することにより、磁性シース層がノイズ遮蔽性を示し、外部からのノイズの侵入、および外部へのノイズの放出を、金属箔と併せて抑制することができる。外部導体がリターンパスの機能を果たすことによって、ノイズ遮蔽を担う部材とリターンパスを担う部材とに、部材の役割をそれぞれ分担することができる。
前期通信用電線は、金属素線の編組体を有さないものであるとよい。従来一般の同軸電線において編組体が担う、リターンパスの経路としての役割と、ノイズに対するシールド効果を、外部導体と、磁性シース層が、それぞれ担うため、金属素線よりなる編組体を別途設ける必要はない。金属素線の編組体を省くことによって、通信用電線を軽量化および細径化できる。
前期内部導体と前期外部導体は、単位長さあたりの電気抵抗値が同じ値であるとよい。それら2種の導体が有する、単位長さあたりの電気抵抗値が同じ値であることによって、内部導体と外部導体において、挿入損失等の伝送特性を相互に揃えることができる。
前記内部導体と前記外部導体は、同一の導体線として構成されているとよい。同一の導体線から内部導体と外部導体が構成されることによって、内部導体と外部導体の伝送特性を簡便に揃えることができる。
前記外部導体は、前記金属箔の外周に接して配置されるとよい。すると、通信用電線は高いノイズ遮蔽効果が得られ良好な通信特性を示すものとなる。
前記外部導体を構成する導体線は、1本のみ設けられており、外周を被覆する絶縁被覆を有さないとよい。リターンパスとしての役割を外部導体が担うことに鑑みると、外部導体は1本あれば十分であり、外部導体が1本のみであることによって、通信用電線は軽量性を高めることができる。さらに、外部導体は、磁性シース層によって、内部導体および通信用電線の外部との部材に絶縁性が保たれるので、個別に絶縁被覆を施されている必要はなく、絶縁被覆を有さないことによって、軽量性をいっそう増すことができる。
前記磁性シース層において、前記磁性材料は粉末の形態で高分子材料中に分散されているとよい。磁性材料が高分子材料中に分散されていることによって、通信用電線の柔軟性を確保しながら、高い均一性をもって磁性材料を分布させ、磁性シース層において、ノイズ遮蔽性を発揮させることができる。
前記通信用電線は、前記磁性シース層の外周を被覆して、高分子材料を含有し、かつ磁性材料を含まない、アウターシース層をさらに備えるとよい。磁性シース層の外周にアウターシース層を備えることによって、通信用電線は高い柔軟性を確保できると共に、磁性シース層を保護することができるため、アウターシース層が無い場合と比べると、ノイズ遮蔽効果をより長く安定的に持続させることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を用いて、本開示の一実施形態にかかる通信用電線について詳細に説明する。本明細書において、各種特性は特記しない限り、室温、大気中にて測定される値である。また、本開示において、軸線とは、通信用電線やそこに含まれる内部導体、外部導体が伸長している方向を示している。
(通信用電線の全体構成)
図1に、本開示の実施形態にかかる通信用電線1を、軸線方向に対して垂直に切断した断面図を示す。また、図2に、本開示にかかる通信用電線1の斜視図を示す。通信用電線1は、信号線として、内部導体10を有している。内部導体10の外周は絶縁被覆12によって被覆され、その外周をさらに金属箔13が被覆している。さらに、線状に延びた導体線として構成された線状外部導体11が、金属箔13の外周に接し、金属箔13と導通するように配置されている。内部導体10を絶縁被覆12および金属箔13で被覆したもの(金属箔付き絶縁電線)と、線状外部導体11との集合体の外周が、磁性シース層14によって被覆されている。さらに、磁性シース層14の外周がアウターシース層15によって被覆される。なお、「編組構造を有する外部導体」と、「編組構造を有さない本開示にかかる外部導体」とを区別するために、以降は、本開示の外部導体を「線状外部導体」と記載することにする。
通信用電線1においては、上記で述べた構成の他に、各部材の間や外周に、適宜他の部材を設けても良い。ただし、通信用電線1の軽量性と細径性を高める観点から、上記で述べた以外の部材は設けないことが好ましい。また、通信用電線1を構成する上記各部材の中で、アウターシース層15は、それが果たす機能の観点から、設けることが好ましく、以下ではアウターシース層15を設ける形態について説明するが、適宜省略してもよい。以下、通信用電線1の各構成部材について、詳細に説明する。
(内部導体および外部導体)
内部導体10および線状外部導体11は、巻きつけ構造や編込み構造などを有さず、通信用電線1の軸線方向に沿って伸びた線状の導体線として構成されている。内部導体10と線状外部導体11は、図2に示すように軸線方向を相互に並走させている。内部導体10は、電気信号を入力して伝達する伝送経路となり、線状外部導体11は、所定の基準電位に接続されて、信号のリターンパスとなる。通信用電線1は、内部導体10および線状外部導体11を、複数本備えても良いが、内部導体10および線状外部導体11をそれぞれ1本ずつ備えていれば、電気信号を伝送することができるため、通信用電線1の構造の簡素化と軽量化の観点から、1本ずつ備えていることが望ましい。
内部導体10および線状外部導体11は、単線よりなってもよいが、屈曲時の柔軟性を高める等の観点から、それぞれ、複数の導体線が撚り合わせられた撚り線として構成されることが好ましい。この場合に、導体線を撚り合わせた後に、圧縮成形を行い、圧縮撚線としてもよい。内部導体10および線状外部導体11が撚線よりなる場合に、それぞれ、全て同じ種類の金属素線よりなっても、2種以上の金属素線よりなっても良い。
内部導体10と線状外部導体11は、挿入損失をはじめとする電気信号の伝送特性を相互に揃える観点から、同一の導体線、つまり構成材料および用いる素線径および素線本数等の各構成が相互に同じ導体線で構成されることが望ましいが、単位長さあたりの電気抵抗値(単位:Ω/m)が相互に同じであれば、相互に異なる導体線より構成されていてもよい。例えば、内部導体10の外径が線状外部導体11より太くなったとしても、線状外部導体11の方を導電性の高い材料で構成する等して、単位長さあたりの電気抵抗値(単位:Ω/m)が同等の値になるようにすればよい。ここで、内部導体10と線状外部導体11の単位長さあたりの電気抵抗値が同じである状態に、±1%程度の誤差を含みうるものとする。
内部導体10および線状外部導体11を構成する材料は特に限定されないが、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、および、それらの金属合金を適用できるが、電気伝導性および材料強度等に優れる点で、銅合金が望ましい。
線状外部導体11は、内部導体10のように外周を絶縁材料で被覆されていてもよいが、磁性シース層14によって通信用電線1の外部の部材や内部導体10と絶縁されるため、個別に絶縁被覆される必要はなく、通信用電線1の軽量化の観点から、被覆されていないことが望ましい。さらに、通信用電線1の軽量化の観点から、複数本の素線が撚り合わせられた撚線構造以外の複合構造、例えば編組体のように複数本の金属素線を編んだ網状構造を有さず、線状の構造を備えることが望ましい。
(絶縁被覆)
絶縁被覆12は、絶縁性の高分子材料よりなることが好ましい。高分子材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等をあげることができる。中でも、誘電損失による伝送信号の透過損失を低減する観点から、高分子材料として、低分子極性のものを用いることが好ましい。特に、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン等、無極性の高分子材料を用いることが好ましい。高分子材料は、一種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。絶縁被覆12は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。ただし、絶縁被覆12は、絶縁被覆12の外周に設けられる磁性シース層14に含有されるような、磁性材料よりなる添加剤は含有しないほうがよい。
(金属箔)
通信用電線1は、絶縁被覆12と磁性シース層14の間に、金属箔13を備える。金属箔13を備えることにより、内部導体10に伝送される電気信号の電磁界漏出を防ぎ、内部から外部へ漏出する電磁界による干渉を防ぐことに加えて、内部導体10に伝送される電気信号の電気エネルギー損失を低減することができる。さらに、電線外部からの電磁波ノイズの干渉により、内部導体10を伝送される電気信号への影響を抑制することができる。金属箔13は、導電性の高い金属よりなることが好ましい。銅、アルミニウム、およびそれら金属の合金などを挙げることができる。また、金属箔13は、独立した金属薄膜よりなる形態のほか、高分子フィルム等の基材に、蒸着、めっき、接着等によって金属層が結合されたものであってもよい。図1に示すように、金属箔13は、線状外部導体11に接触させて配置する。これにより、金属箔13と線状外部導体11が導通し、線状外部導体11を通じて金属箔13をグラウンド電位に接続することができる。
(磁性シース層)
磁性シース層14は、本実施形態にかかる通信用電線1において、絶縁被覆12に被覆されている内部導体10と、金属箔13と、そして線状外部導体11、の集合体の外周を被覆して設けられている。なお、絶縁被覆12に被覆されている内部導体10と、金属箔13よりなる集合体を、以後は、金属箔付き絶縁電線と記載することにする。磁性シース層14は、その金属箔付き絶縁電線と線状外部導体11との集合体の表面に密着して、それらの集合体の外周を被覆している。
磁性シース層14は、磁性材料を含有していることから、ノイズを遮蔽するシールド効果を有する。磁性シース層に含有される磁性材料における磁性損失により、ノイズの原因となりうる高周波の電磁波が吸収され、減衰されるからである。
磁性シース層14に含有される磁性材料は、好ましくは強磁性、特に軟磁性を有する金属、または含金属化合物である。高いノイズ遮蔽性を示す軟磁性材料として、鉄(純鉄または少量の炭素を含む鉄)、ケイ素鋼、Fe-Si-Al合金(センダスト)、Fe-Cr-Al-Si合金やFe-Cr-Si合金等の磁性ステンレス鋼、Fe-Ni系合金(パーマロイ)、フェライト等を例示することができる。これらの材料の中で、ノイズ遮蔽性にとりわけ優れる等の観点から、Fe-Si-Al合金もしくはNiZnフェライトを用いることが特に好ましい。磁性材料は、1種のみを用いても、混合等により、2種以上を合わせて用いてもよい。
磁性シース層14の柔軟性を確保する、線状外部導体11に対して絶縁性を確保する等の観点から、磁性材料は、粒子状(粉末状)となって、磁性シース層14に含有されていることが好ましい。例えば、高分子材料等、非磁性材料よりなるマトリクス材料の中に、粒子状の磁性材料が分散されている形態を、好ましいものとして挙げることができる。粒子状の磁性材料が高分子材料に分散された磁性シース層14は、押出成形体として好適に形成することができる。
磁性シース層14に含まれる磁性材料は、十分なノイズ遮蔽効果を保ちつつ、通信用電線1に柔軟性を付与する観点から、磁性体の種類に関係なく、磁性シース層14に対して、100質量%以上800質量%以下含まれることが望ましい。
磁性シース層14を構成する高分子材料としては、絶縁被覆12を構成する高分子材料と同様に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等を挙げることができる。中でも、柔軟性に優れる等の点から、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等のエラストマーや、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、さらには耐熱性確保の観点から、ポリプロピレン等のポリオレフィンを併用することが好ましい。高分子材料は、1種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。磁性シース層は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
磁性シース層14の厚さは、ノイズ遮蔽効果を高める観点から、0.10mm以上とするとよい。一方、通信用電線1の大径化を避ける観点から、その厚さは、0.50mm以下としておくとよい。通信用電線1が備える磁性シース層14は、従来一般の同軸電線に使用される編組のような、他のシールド体を用いずとも、十分に高いノイズ遮蔽効果を示す。
(アウターシース層)
本実施形態にかかる通信用電線1は、磁性シース層14の外周面が、通信用電線1全体の外周面として、外部の環境に露出したものであってもよいが、磁性シース層14の外周に、アウターシース層15を設けることが好ましい。アウターシース層15においては、磁性材料を含有しない。
アウターシース層15は、磁性シース層14およびさらに内側の各構成部材を、外部の物体との接触等から、物理的に保護する役割を果たす。また、磁性シース層14においては、磁性材料の含有により、硬度が高くなり、亀裂や割れ等の損傷が発生しやすくなる場合があるが、磁性シース層14がアウターシース層15で被覆されていることで、磁性シース層14に割れや亀裂等の損傷が生じることがあっても、その損傷が進展し、大きな空隙の形成に至るのを、抑制することができる。すると、損傷の進展によって、磁性シース層14の面に空隙が形成され、その空隙を介して電磁波が漏洩することで、磁性シース層14のノイズ遮蔽性能が低下する事態が、起こりにくくなる。
アウターシース層15を構成する好適な材料としては、高分子材料を挙げることができる。高分子材料の具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等を挙げることができる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を用いることが好ましい。高分子材料は、1種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。アウターシース層15は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。ただし、アウターシース層15は、磁性材料よりなる添加剤は、含有しない方がよい。
アウターシース層15の厚さは特に限定されないが、磁性シース層14に対する保護性能の観点から、0.10mm以上とするとよい。一方、通信用電線1の大径化を避ける観点から、その厚さは、0.50mm以下としておくとよい。
本開示の通信用電線1は、上記に述べた構成を有することにより、線状外部導体11がリターンパスとして内部導体10と共に電気信号の伝送に寄与する。一方で、磁性シース層14がノイズに対するシールドとしての役割を果たすことで、ノイズの影響を低減した高速通信を可能とする。ここで、従来の形態の通信用電線1’を、図3を用いて説明する。図3は通信用電線1’を軸線方向に対して垂直に切断した切断面を示す。通信用電線1’は、本開示の形態と異なり、線状外部導体11を備えない代わりに、金属箔13の外周に編組体16を備える。編組体16は、複数の金属素線を編んで作製されるので、リターンパスとしての外部導体の機能と、ノイズ遮蔽性能を有する。しかし、編組体16を備える通信用電線1’は、外径が大径化し重量化する。
これに対し、本開示の通信用電線1は、磁性シース層14が単独で十分に高いノイズ遮蔽性能を示す上、線状外部導体11がリターンパスとして機能するため、編組体16を別途設ける必要はない。線状外部導体11は編組体16と異なり、通信用電線1を大径化、重量化させるものではないので、通信用電線1は細径化、軽量化を達成することができる。
以下に本願の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。本実施例において、各特性の評価は、室温、大気中において行っている。
<試料の作製>
以下に示すような構成を有する通信用電線の試料A1、A2、B1~B4を作成した。下に、各試料について、通信用電線の構成要素を内側に位置する部材から順に列挙している。磁性シース層およびアウターシース層は下の表1に示すような配合比で各成分が混合されている。試料A1および試料B1の磁性シース層は、表1の組成1を、試料A2および試料B2の磁性シース層は、表1の組成2を有している。下記に記されている構造1~4は、図4に記されている図を指す。
・試料A1、A2[構造1]:内部導体、絶縁被覆、金属箔、線状外部導体、磁性シース層、アウターシース層
・試料B1、B2[構造2]:内部導体、絶縁被覆、金属箔、編組体、磁性シース層、アウターシース層
・試料B3[構造3]:内部導体、絶縁被覆、金属箔、線状外部導体、アウターシース層
・試料B4[構造4]:内部導体、絶縁被覆、金属箔、編組体、アウターシース層
以下、各試料の作製方法について説明する。
(1)試料A1および試料A2の作製
・内部導体、絶縁被覆、および線状外部導体の作製
7本の銅合金素線を撚り合わせて、断面積0.18mmの導体線を作成した。得られた内部導体の外周に、ポリプロピレンを押し出し成形することで、0.55mmの厚さの絶縁被覆を有する絶縁電線を作製した。得られた絶縁電線の外径は1.64mmである。圧延銅とポリエチレンテレフタレート(PET)の2層からなる厚さ21μmの金属箔で、得られた絶縁電線の外周部をさらに被覆して、金属箔付き絶縁電線を得た。合わせて、内部導体と同一の導体線を線状外部導体として準備した。線状外部導体は、絶縁被覆で外周を覆っていない。
・磁性シース層およびアウターシース層の作成
線状外部導体を、内部導体と軸方向を並走させ、かつ、金属箔の外周に接するように配置した。絶縁電線を覆う金属箔および線状外部導体の外周を全て覆うように、表1に記載されている混合成分を押し出し成形することで、金属箔からアウターシース層までの厚さが0.28mmの磁性シース層を得た。さらに、磁性シース層の外周においても、表1に記載されている混合成分を押し出して、厚さ0.28mmのアウターシース層を作製した。
(2)試料B1および試料B2の作製
・内部導体、絶縁被覆、および編素体の作製
試料A1および試料A2と同様の手法で、内部導体を絶縁被覆で覆い、その外周を金属箔でさらに覆って金属箔付き絶縁電線を得た。そして、19.5mmピッチ、編組密度94%の素線径0.10mmのスズめっき軟銅線(TA)を打数16本、持ち数5本で編んで、編組体を作製し、金属箔の外周をさらに被覆した。
・磁性シース層およびアウターシース層の作成
試料A1およびA2を作製したときと同様の手法で、磁性シース層とアウターシース層を作製した。ただし、試料B1および試料B2は線状外部導体を有さないので、磁性シース層は編組体の外周を被覆するように形成した。
(3)試料B3およびB4の作製
試料B3は、試料A1、A2と同様の手法で、金属箔付き絶縁電線と線状外部導体を作製し、得られた金属箔付き絶縁電線と線状外部導体の集合体の外周に、試料A1、A2と同様の手法で、アウターシース層を形成した。磁性シース層は設けておらず、上記集合体の外周を直接アウターシース層が被覆する形態とした。試料B4は、試料B1、B2と同様の手法で編組体を備えた金属箔付き絶縁電線を作製し、編組体の外周に、試料A1、A2と同様の手法で、アウターシース層を形成した。こちらも磁性シース層は設けておらず、編組体の外周を直接アウターシース層が被覆する形態とした。試料B3および試料B4において、アウターシース層の厚さは、試料A1、A2、B1、B2における、磁性シース層とアウターシース層を足し合わせた層の厚さと同じになるようにした。
表1に記載されているアウターシース層や磁性シース層の構成材料には、下記を用いた。
・NiZnフェライト粉:JFEケミカル社製、「KNI-109」
・Fe-Si-Al合金:山陽特殊製鋼社製、「FME3D-AH」
・水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、「キスマ5」
・TPO:ライオンデル・バセル社製、「Adflex Q200F」
・PP1:エクソンモービル社製、「サントプレーン 203-40」
・PP2:日本ポリプロ社製、「ノバテックBC06C」
・エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA):NUC社製、「NUC6940」
・水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS):旭化成社製、「タフテックM1913」
Figure 2022108557000002
<評価方法>
上記で作製した試料A1、A2、B1~B4の通信用電線を、国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格のうち、車載受信機保護のための妨害波の推奨限度値および測定法の規格であるCISPR25規格に準拠した放射エミッション評価により、ノイズ遮蔽性の効果を評価した。評価方法は、電波暗室内に設置した実験台に銅板を敷設し、さらに銅板の上から厚さ5cmの発泡スチロールを敷設する。長さ1500mmの電線を発泡スチロールの上に直線状に置き、外部電極を用いて、電線に信号を印加する。電線の中央部を基準として、電線の長手方向と垂直に1m離れた位置にホーンアンテナを設置する。なお、このホーンアンテナの床面からの高さは、電線と同じ高さとする。電線に信号を印加した際に生じた電磁ノイズのうち、ホーンアンテナが検出した放射ノイズ量を、電線の放射エミッション評価とした。
CISPR25規格に準拠し、ホーンアンテナで検出した放射ノイズのうち、1.6GHzにおけるノイズ量が、10dB(μV/m)未満の場合を「非常に良い」として、「A」、16dB(μV/m)未満の場合を「良い」として、「B」、22dB(μV/m)未満の場合を「悪い」として、「C」、28dB(μV/m)以上の場合を「非常に悪い」として、「D」と評価し、図4に示した。
放射エミッション評価に加えて、作製した試料それぞれの外径と質量を測定し、試料間で比較を行った。質量については、測定結果をもとに単位長さあたりの質量(g/m)を算出した。
<結果>
図4に、試料A1、試料A2および試料B1~B4における、ノイズ遮蔽性の評価結果と、各試料の外径および単位長さあたりの質量(g/m)を示す。図4中に、各電線の断面構造を図示しており、それらの断面構造に付したハッチングは、図1、3中のものと対応しており、同じ部材を同じハッチングにて表示している。
試料A1、A2、B1、B2の構造について説明する。試料A1と試料A2が、編組体を有さずに線状外部導体を備えているのに対し、試料B1と試料B2は、編組体を備えているが線状外部導体を有していない。磁性シース層の構成材料は、試料A1と試料B1で、また試料A2と試料B2で、同じになっている。
試料A1と試料B1を比較すると、放射エミッション評価は、両者とも評価が「B」であり、良好なノイズ遮蔽性能を備えている。しかし、電線の外形は、試料A1の外径が2.8mmであるのに対し、試料B1の外径は3.2mmであり、試料A1は試料B1より電線の外径が小さい。さらに、試料の単位長さあたりの電線質量(g/m)においては、試料A1の20g/mに対し、試料B1は28g/mであり、試料B1と比較すると試料A1は軽量性に優れることがわかる。次に、試料A2と試料B2を比較する。放射エミッションの評価は、両者とも評価が「A」であり、非常に良好なノイズ遮蔽性能を備えている。電線の外径は、試料A2の外径が2.8mmであるのに対し、試料B2の外径は3.2mmであり、試料A2は試料B2より電線の外径が小さい。さらに、試料の単位長さあたりの電線質量(g/m)は、試料A2の19g/mに対し、試料B1が27g/mであり、試料B2と比較すると試料A2は軽量性に優れることがわかる。
以上のように、編組体を有する試料B1、B2と比較して、編組体のかわりに線状外部導体を有する試料A1、A2のほうが、電線の外径および試料の単位長さあたりの電線質量が軽いことから、編組体のかわりに線状外部導体を備えることにより、電線の細径化と軽量化が可能になることがわかる。一方、ノイズ遮蔽効果においては、編組体を有する試料B1,B2と、編組体を有さない試料A1、A2との間に、ノイズ遮蔽効果に大きな差は見られなかったので、ノイズ遮蔽性能は磁性シース層のみで十分であることが分かる。
次に、試料A1、A2と、磁性シース層を有さない試料B3および試料B4を比較する。試料A1,A2と試料B3の構造上の違いは、磁性シース層の有無のみにある。放射エミッション評価は、磁性シース層を有する試料A1、A2が良好(BまたはA)であるのに対し、磁性シース層を有さない試料B3は「D」であり、試料B3はノイズ遮蔽性能が著しく劣る。一方、電線の外径は試料A1、A2、B3全て同じ太さであり、試料の長さあたりの電線質量も大きな差は見られない。以上より、試料A1,A2のように磁性シース層を有することで、通信用電線は高いノイズ遮蔽性能を獲得することができる一方、磁性シース層の設置は、電線の外径や質量には大きな影響を与えないことが分かる。
一方、試料A1、A2と、編組体を有するが、線状外部導体および磁性シース層を備えない試料B4を比較すると、放射エミッション評価の値は、磁性シース層を有さない試料B4が「C」であり、ノイズ遮蔽性能が試料A1、A2より大きく劣る。つまり、試料A1、A2に設けられる磁性シース層は、単独で、試料B4に設けられる金属編組層よりも高いノイズ遮蔽効果を示す。磁性シース層を金属編組体のみで代用することは、ノイズ遮蔽性の観点から難しい。また、電線の外径は、試料A1,A2が2.8mmであるのに対し、試料B4は3.2mmであり、試料B4は試料A1、A2より外径が大きい。試料の単位長さあたりの電線の質量は、試料A1が20g/m、試料A2が19g/mであるのに対し、試料B4は25g/mであり、試料A1、A2と比較すると試料B4は軽量性に劣る。つまり、試料A1、A2に設けられる磁性シース層は、試料B4に設けられる金属編組層に比べて、電線の径や質量を小さく抑えながら、高いノイズ遮蔽効果を発揮するものとなっている。
以上の結果に示されるように、通信用電線において、磁性シースを設ければ、金属編組体を省略しても、十分に高いノイズ遮蔽効果が得られる。金属編素体を省略することで、通信用電線において、細径化と軽量化を達成することができる。金属編素体が従来一般の同軸通信線において果たしてきた信号のリターンパスとしての役割は、線状の外部導体に担わせることができる。線状外部導体は、線状の導体線であるため、金属編素体とは異なり、通信用電線の細径化および軽量化にほとんど影響を与えない。
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 通信用電線
1’ 通信用電線
10 内部導体
11 線状外部導体
12 絶縁被覆
13 金属箔
14 磁性シース層
15 アウターシース層
16 編組体

Claims (8)

  1. 内部導体と、
    前記内部導体の外周を被覆する絶縁被覆と、
    前記絶縁被覆の外周を被覆する金属箔と、
    導体線より構成され、前記内部導体と軸線を並走させて、前記金属箔の外側に配置された外部導体と、
    磁性材料を含有し、前記内部導体と前記絶縁被覆と前記金属箔と前記外部導体を含む集合体の外周を被覆する磁性シース層と、を備える通信用電線。
  2. 前記通信用電線は、金属素線の編組体を有さない、請求項1に記載の通信用電線。
  3. 前記内部導体と前記外部導体は、単位長さあたりの電気抵抗値が同じである、請求項1および請求項2に記載の通信用電線。
  4. 前記内部導体と前記外部導体は、同一の導体線として構成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信用電線。
  5. 前記外部導体は、前記金属箔の外周に接して配置される、請求項4に記載の通信用電線。
  6. 前記外部導体を構成する前記導体線は、1本のみ設けられており、外周を被覆する絶縁被覆を有さない、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信用電線。
  7. 前記磁性シース層において、前記磁性材料は粉末の形態で高分子材料中に分散されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信用電線。
  8. 前記通信用電線は、前記磁性シース層の外周を被覆して、高分子材料を含有し、かつ磁性材料を含まない、アウターシース層をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の通信用電線。
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