JP2022104522A - リグニン組成物及びその使用 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1にはノボラック型フェノール樹脂にリグニンを添加した成形材料は、樹脂の流れが悪く、詰まりが発生して成形できなかったが、ノボラック型フェノール樹脂にリグニン、フェノール又はフェノール誘導体及びアルデヒド類を有機酸の存在下で反応させる製法により得られたリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂を添加した成形材料は、成形性が改善すること等が開示されている。しかしながら、特許文献1では、通常のノボラック型フェノール樹脂に対して曲げ強さがやや低下しており、また揮発性有機塩基等によるリグニンの二次処理が必要となる可能性が高いという問題や、また、毒性の強いホルムアルデヒドの使用という問題があった。
また、特許文献2にはリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させることで、摩擦材成形時の熱流動性が良好となり、摩擦特性が改善すること等が開示されている。しかしながら、特許文献2では、メタノール、エタノール、アセトン、及びテトラヒドロフラン等によるリグニンの精製という前処理が実質的には必要となるという問題、また、毒性の強いホルムアルデヒドの使用という問題があった。
そこで、本発明の目的は、熱硬化性樹脂等に添加した際、成形に適した流動性を付与できるリグニン組成物を提供することである。
1.下記式(1)で表される化合物を2種以上含有し、前記化合物の総含有量が0.06質量%以上である、リグニン組成物。
2.重量平均分子量(Mw)が、1,000~3,000である、1に記載のリグニン組成物。
3.分子量分布(Mw/Mn)が、2.2~3.5である、1又は2に記載のリグニン組成物。
4.前記式(1)で表される化合物の総含有量が、5質量%以下である、1~3のいずれかに記載のリグニン組成物。
5.下記化合物(2)の含有量が、0.1質量%以下である、1~4のいずれかに記載のリグニン組成物。
7.軟化点が100℃以上250℃未満である、1~6のいずれかに記載のリグニン組成物。
8.ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した、リグニン組成物の分子量LogM2.4~2.6に存在する微分分布値(dw/dLogM)のピークの最大値が50以上150以下であるか、又は分子量LogM2.4~2.55における積分分布値(%)の差分が5以上15以下である、リグニン組成物。
9.1~8のいずれかに記載のリグニン組成物と、熱硬化性樹脂とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
10.熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂成形材料において、架橋反応を促進するための、1~8のいずれかに記載のリグニン組成物の使用。
11.前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂及びポリイミドから選択されるいずれか1種以上である、10に記載のリグニン組成物の使用。
12.熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂成形材料において、1~8のいずれかに記載のリグニン組成物を用いて、架橋反応を促進させる方法。
13.1~8のいずれかに記載のリグニン組成物を含む、熱硬化性樹脂用改質剤又は架橋反応促進剤。
14.1~8のいずれかに記載のリグニン組成物と、ゴム材料とを含む、ゴム組成物。
15.9に記載の熱硬化性樹脂組成物又は14に記載のゴム組成物を、硬化して得られる成形体。
16.有機溶媒を含む溶媒を用いて、リグニン含有材料からリグニン由来の抽出物を含むリグニン組成物を抽出する抽出工程を有する、1~8のいずれかに記載のリグニン組成物の製造方法。
本発明の一実施形態に係るリグニン組成物は、下記式(1)で表される化合物を2種以上含有し、該化合物の総含有量が0.06質量%以上である。
ただし、R11~R15のうちの少なくとも一つは水素原子であり、R16~R20のうちの少なくとも一つは水素原子である。)
これら好適な炭化水素基は、いずれも飽和であっても不飽和であってもよい。
炭素数1~15の炭化水素エーテル基は、好ましくは炭素数1~10の直鎖状又は分岐状の炭化水素エーテル基であり、より好ましくは炭素数1~5の直鎖状又は分岐状の炭化水素エーテル基であり、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖状の炭化水素エーテル基である。
これら好適な炭化水素エーテル基の炭化水素は、いずれも飽和であっても不飽和であってもよい。
また、炭化水素エーテル基の炭化水素が飽和であるとは、-(CH2)a-、及び-(CH2)b-のいずれもが飽和炭化水素であることを示し、炭化水素エーテル基の炭化水素が不飽和であるとは、-(CH2)a-、又は-(CH2)b-のいずれかが不飽和炭化水素であることを示す。
また、炭化水素エーテル基が-(CH2)a-O-(CH2)b-で表される場合、炭化水素エーテル基の炭素数は、(a+b)で表される数である。
リグニン組成物に含まれるフェノール2量体の種類及びその含有量は、液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC/MS)で確認する。
液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC/MS)による測定をリグニン組成物について行った場合、リグニン組成物全体に占める、フェノール2量体の含有量を算出できる。
また、液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC/MS)による測定をリグニン組成物について行った場合、当該リグニン組成物と、フェノール樹脂等のその他の成分との含有割合に応じて、後述する熱硬化性樹脂組成物全体に占めるフェノール2量体の含有量を算出できる。
LC/MSではリグニン組成物に、式(1)で表される化合物として、下記化合物(a)~(h)が含まれていると仮定する。検出限界以下、すなわち、対象化合物の含有量が0.001質量%未満である場合は、リグニン組成物は該対象化合物を含まないと判断する。測定の詳細は実施例に記載する。
なお、前述したLC/MSで特定される、化合物(a)~(h)の各々の含有量には、各化合物と分子量が同じで結合位置が異なる異性体の含有量も含まれる。
また、上記総含有量は5質量%以下であってもよく、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよい。使用する熱硬化性樹脂や成形条件等に合わせて、適宜調整することができる。
リグニン組成物の各分子量は、後述する実施例に記載するようにGPCにより測定する。
化合物(2)の含有量は後述する実施例に記載する方法により測定する。
フェノールの含有量は後述する実施例に記載する方法により測定する。
軟化点は後述する実施例に記載する方法により測定する。
GPCで測定した、リグニン組成物の分子量LogM2.4~2.6に存在する微分分布値(dw/dLogM)のピークの最大値が50以上150以下であることにより、熱硬化性樹脂に配合した際の流動性を維持できる。上記最大値は130以下であってもよく、110以下であってもよい。
同様に、分子量LogM2.4~2.55における積分分布値(%)の差分が5以上15以下であることにより、熱硬化性樹脂に配合した際の流動性を維持できる。上記積分分布値は7以上であってもよく、8以上であってもよい。また、13以下であってもよく、12以下であってもよい。
R31~R35が炭素数1~15の炭化水素基である場合の炭化水素基としては、前述した式(1)におけるR11~R20と同様である。また、R31~R35が炭素数1~15の炭化水素エーテル基である場合の炭化水素エーテル基としては、前述した式(1)におけるR11~R20と同様である。また、R31~R35がカルボニル基を含む基である場合のカルボニル基を含む基としては、前述した式(1)におけるR11~R20と同様である。
Rcは、水酸基、アルコキシ基、アミノ基又はチオール基を示す。
なお、上記式(A)中のXは炭素原子に結合していることを示し、Yは水素原子又は炭素原子に結合していることを示す。
リグニン含有材料は、リグニンを含有する材料であれば格別限定されない。
一実施形態において、リグニン含有材料は、バイオマス及びバイオマス残渣からなる群から選択される1以上である。
バイオマス残渣としては、例えば木本系バイオマス及び草本系バイオマス等のような植物系バイオマス由来のものが挙げられる。
例えば、バイオマス残渣としては、植物系バイオマスの糖化残渣及び発酵残渣(第2世代エタノール糖化残渣、第2世代エタノール発酵残渣等)、黒液(サルファイトリグニン、クラフトリグニン、ソーダリグニン、オルガノソルブリグニン等)等が挙げられ、これらのいずれか1種以上を使用することができる。これらの中でも、入手容易性、リグニン組成物の品質、及び経済性の観点から、リグニン含有材料として、植物系バイオマスの糖化残渣及び発酵残渣のいずれか1種以上を使用することが好ましい。
木本系バイオマスとしては、例えば、スギ、ヒノキ、ヒバ、サクラ、ユーカリ、ブナ、タケ等のような針葉樹、広葉樹が挙げられる。
草本系バイオマスとしては、例えば、パームヤシの樹幹・空房、パームヤシ果実の繊維及び種子、バガス(さとうきび及び高バイオマス量さとうきびの搾り滓)、ケーントップ(さとうきびのトップ及びリーフ)、エナジーケーン、稲わら、麦わら、トウモロコシの穂軸・茎葉・残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、ヤトロファ種の皮及び殻、カシュー殻、スイッチグラス、エリアンサス、高バイオマス収量作物、エネルギー作物等が挙げられる。
これらのなかでも、草本系バイオマスであることが好ましく、パームヤシの空房、パームヤシ果実の繊維及び種子、麦わら、トウモロコシの穂軸・茎葉・残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、バガス、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、ケーントップ、エナジーケーン、それら有用成分抽出後の残渣がより好ましく、パームヤシの空房、トウモロコシの穂軸・茎葉・残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、バガス、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、ケーントップ、エナジーケーン、これら有用成分抽出後の残渣がより好ましい。なお、上記有用成分には、例えば、ヘミセルロース、糖質、ミネラル、水分等が含まれる。
バガスには、5~30質量%程度のリグニンが含まれる。また、バガス中のリグニンは基本骨格として、H核、G核及びS核の全てを含む。
植物系バイオマスは、粉砕されたものを用いることもできる。また、ブロック、チップ、粉末、又は水が含まれた含水物のいずれの形態でもよい。
植物系バイオマスの糖化残渣は、リグニンを主成分とし、分解有機物や触媒、酵素、灰分、セルロース等が含まれている。また、植物系バイオマスの発酵残渣は、リグニンを主成分とし、分解有機物や触媒、酵素、酵母、灰分、セルロース等が含まれている。
植物系バイオマスの糖化残渣及び発酵残渣のいずれか1種以上を原料とし、例えば水酸基及びエーテル結合からなる群から選択される1種以上を有する化合物(以下、「有機溶媒A」ともいう。)を含む溶媒を添加する。有機溶媒Aを含む溶媒は、典型的には、少なくとも前述した式(I)で表される化合物を含む。有機溶媒Aについては、後の「溶媒」の項目において詳述する。
約2~4時間加熱を継続した後、加熱液は不溶物を含んでいるため、No.2濾紙を用いて濾過する。濾過固体は未抽出成分と無機夾雑物である。濾過液は減圧下で蒸留し、溶媒を除去する。蒸留で除去しきれない溶媒は真空乾燥することで除去される。分離される固体はリグニン組成物である。
抽出に用いる溶媒は、有機溶媒を含む。有機溶媒を含む溶媒は、前述したように、典型的には上記式(I)で表される化合物を含む。上記式(I)で表される化合物以外の有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、及びトルエン等の式(I)で表される化合物以外の芳香族類等が挙げられる。
水酸基を2つ有する有機溶媒Aとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、水酸基を3つ有する有機溶媒Aとしては、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ヘプタトリオール、1,2,4-ヘプタトリオール、1,2,5-ヘプタトリオール、2,3,4-ヘプタトリオール等が挙げられる。水酸基を4つ有する有機溶媒Aとしては、例えば、ペンタエリスリトール、エリトリトール等が挙げられる。水酸基を5つ有する有機溶媒Aとしては、例えば、キシリトール等が挙げられる。水酸基を6つ有する有機溶媒Aとしては、例えば、ソルビトール等が挙げられる。
R-OH (II)
(式(II)において、Rは、炭素数1~10のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基である。)
特にアルキル基の炭素数を2以上とすることで、リグニン由来の抽出物が親水性に変性されることをより顕著に防止することが期待できる。また、炭素数が2以上、3以上、さらには4以上と大きくなる程、そのような効果がさらに顕著に発揮されることが期待できる。
Rが炭素数1~10のアルキル基である式(II)で表される化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール、1-ペンチルアルコール、2-ペンチルアルコール、3-メチル-1-ブチルアルコール、1-ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、1-へプチルアルコール、1-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール等からなる群から選ばれる1種以上であり、好ましくはメタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、及び2-プロピルアルコールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはメタノール、エタノール、及び2-プロピルアルコールからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはエタノールである。
上記式(I)で表される化合物は、R31、R33及びR35のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、R31、R33及びR35の全てが水素原子であることがより好ましい。
好ましくはフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カルダノール、4-オクチルフェノール、4-ノニルフェノール、アニソールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、アニソールからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、アニソールからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはフェノール、アニソールからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはフェノールである。
有機溶媒として、式(I)で表される化合物を用いる場合は、リグニンと式(I)で表される化合物とが反応することによって、リグニン中の式(A)で表されるリグニン基本骨格における置換基R3及びR4が、式(I)で表される化合物に由来する構造へ転移する置換反応が生じることが期待できる。
有機溶媒Aとして、例えば、Rが炭素数1~10のアルキル基である式(II)で表される化合物から選択される1種又は2種以上と、Rが置換若しくは無置換のフェニル基である式(II)で表される化合物(すなわち、式(I)で表される化合物)から選択される1種又は2種以上とを併用してもよい。具体例を挙げれば、エタノールとフェノールとを併用することができる。
他の有機溶媒は格別限定されず、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、及びトルエン等の式(I)で表される化合物以外の芳香族類等が挙げられる。他の有機溶媒は、1種又は2種以上を併用してもよい。
抽出に用いる溶媒における有機溶媒に対する水の割合は、例えば、有機溶媒100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、50質量部以上又は70質量部以上であり得、また、900質量部以下、700質量部以下、400質量部以下、300質量部以下又は100質量部以下であり得る。
本発明における抽出とは、リグニン以外の成分を含有するリグニン含有材料からリグニン由来の抽出物を含むリグニン組成物を抽出することをいう。
一実施形態における「抽出」とは、リグニン含有材料がリグニンを含有する固形物である場合にリグニンを含有する固形物からリグニン組成物を抽出するものを指し、既にリグニンの全部が溶解された溶液(例えば塩基性化合物を含む水溶液)に有機溶媒を加えるものではない。かかる実施形態において、抽出前のリグニン含有材料(有機溶媒を加える前のリグニン含有材料)は、
リグニンを含有する固形物と、既に溶媒に溶解されたリグニンとを含むか、又は
リグニンを含有する固形物を含み、既に溶媒に溶解されたリグニンを含まない。
抽出に際して、リグニン含有材料に対して添加する溶媒の添加量は格別限定されない。
リグニン含有材料中のリグニンに対する溶媒の質量比[溶媒/リグニン]は、例えば、0.1以上であり得、また、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下、0.7以下又は0.5であり得る。
上述した抽出は、無触媒又は触媒下で行うことができる。触媒としては、例えば酸触媒等が挙げられる。酸触媒としては、リン酸、リン酸エステル、塩酸、硫酸、及び硫酸エステル等の無機酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。酸触媒は、1種又は2種以上を併用してもよい。
酸触媒は、リグニン及び溶媒の合計量を100質量部としたときに、例えば、0質量%超、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であり得、また、5.0質量%以下、3.0質量%以下又は2.6質量%以下であり得る。
抽出を無触媒で進行させる場合は、例えば抽出工程後の後処理(精製工程)を省略することができる。
抽出圧力は、適宜設定可能であり、例えば、0.1MPa以上、0.5MPa以上又は1.0MPa以上であり得、また、10MPa以下、5MPa以下、4MPa以下又は3MPa以下であり得る。
リグニン組成物は、上述の抽出により製造されるが、必要に応じて、抽出後に精製してもよい。以下に精製の一例について説明する。
固液分離を行う方法は特に限定されないが、濾過、フィルタープレス、遠心分離、脱水等を挙げることができる。
固液分離に用いる固液分離装置としては、特に限定されないが、例えば、フィルター等を用いる濾過装置、真空ろ過機、遠心分離機、スクリューデカンタ、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機等の脱水機、振動篩等を用いることができる。遠心分離機としては、例えばデカンタ型、ディスク型等が挙げられる。これらの固液分離装置は単独で用いてもよく、2以上の装置を組み合わせて用いてもよい。
前述した固液分離装置を用いて固液分離を行うことで、リグニン組成物中に含まれる、未抽出成分や無機夾雑物等の固体を、効率的に且つ効果的に除去することができる。このため、後述する蒸留や減圧乾固を行って得られたリグニン組成物について、再沈殿を行わなくても、リグニン含有材料に含まれていたリグニン以外の成分の含有量が効果的に低減された、リグニン組成物を得ることができる。
乾燥工程は、例えば0.1~10kPa程度、通常1.0~5.0kPa程度の減圧下、50~250℃程度、通常100~180℃程度に加熱して、固体あるいは溶融状態で、真空乾燥等の減圧乾固を行うことにより行ってもよい。また、乾燥工程は、蒸留後の加熱された流動状態にあるリグニン組成物を、そのまま同様の真空乾燥等の減圧乾固をすることにより、行ってもよい。
また、乾燥工程は、前述した減圧乾固には限られず、例えば常圧下、不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下)で、リグニン組成物に送風し、リグニン組成物中に残留する溶媒を除去することにより行ってもよい。
乾燥に用いる乾燥装置としては、例えばディスクドライヤー、ドラムドライヤー等の薄膜式乾燥機、パドルドライヤー、攪拌ドライヤー、脱揮用押出機、二軸連続式ニーダ等が挙げられる。これらの乾燥装置は単独で用いてもよく、2以上の装置を組み合わせて用いてもよい。
前述した乾燥装置を用いて乾燥を行うことで、リグニン組成物中に残留する溶媒を、効率的に且つ効果的に除去することができる。このため、乾燥工程を経て得られたリグニン組成物について、再沈殿を行わなくても、抽出工程で用いた有機溶媒等の溶媒成分の残留量が効果的に低減されたリグニン組成物を得ることができる。
また、精製工程において、上記濾過、蒸留、減圧乾固はいずれか1つ又は2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物(成形材料)は、上述した本発明のリグニン組成物と、熱硬化性樹脂とを含む。なお、熱硬化性樹脂の製造過程でリグニン組成物を使用することも含む。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミドが挙げられる。
これら熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でもリグニンと化学構造が類似して相溶性の良好なクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
一実施形態において、熱硬化性樹脂組成物には、充填材をさらに含有させてもよい。充填材は、無機充填材であっても有機充填材であってもよい。
無機充填材としては、球状又は破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラスフレーク、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、酸化マグネシウム等が挙げられる。
また有機充填材としては炭素繊維、アラミド繊維、紙粉、木粉、セルロース繊維、セルロース粉、籾殻粉、果実殻・ナッツ粉、キチン粉、澱粉等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物には硬化剤をさらに含有させてもよい。
熱硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合には、硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)、ヘキサホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂がウレタン樹脂の場合には、硬化剤として、ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(MDI-CR)、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)等の芳香族ポリイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合には、リグニン組成物が硬化剤として用いられ、この場合には、エポキシ樹脂とノボラック系フェノール樹脂とを併用してもよい。
硬化剤に加え、さらに硬化速度及び硬化度を増進するためには、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウム等の無機塩基、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛等のルイス酸、トリエチルアミン等の触媒、ジルコニウム、アルミニウム等の有機金属系触媒、ジブチルスズラウレート、DBUのフェノール塩、オクチル酸塩、アミン類、イミダゾール類、アンモニウム塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩等を用いてもよい。これらは、1種又は2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、該熱硬化性樹脂組成物から得られる成形体の特性を損ねない範囲で各種添加剤を添加することができる。また、目的に応じてさらに、相溶化剤、界面活性剤等を添加することができる。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂に無水マレイン酸やエポキシ等を付加し極性基を導入した樹脂、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、市販の各種相溶化剤を併用してもよい。
また、界面活性剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の直鎖脂肪酸、またロジン類との分岐・環状脂肪酸等が挙げられるが、特にこれに限定されない。
熱硬化性樹脂組成物に用いられる各成分の配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、ロール混練機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常100~300℃の範囲で適宜選択される。
熱硬化性樹脂組成物を成形する方法としては特に限定されない。例えば、プレス成形法、射出成形法、トランスファ成形法、中型成形、FRP成形法等が挙げられる。
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上述した本発明のリグニン組成物と、ゴム材料とを含む。
ゴム材料としては、例えば、各種天然ゴム、各種合成ゴム等が挙げられる。具体的には、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)が挙げられる。これらは1種で使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
充填剤の含有量は、ゴム材料100質量部に対して、10~150質量部が好ましい。
架橋剤としては、ゴム材料及びリグニン組成物のいずれか一方又は双方と架橋し得るものであれば、特に限定されない。
さらに、ゴム組成物は、例えば、軟化剤、粘着付与剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、硫黄又はその他の加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、過酸化物、酸化亜鉛、ステアリン酸を含んでいてもよい。
本実施形態のゴム組成物を硬化して得られる成形体は、タイヤ等に使用できる。
実施例1
(1)抽出工程
非食系植物バイオマスの糖化残渣(リグニン含有量:68質量%)100質量部(リグニンとして68質量部)と、フェノール272質量部とを、撹拌可能な耐圧容器に入れて、0.8MPa、220℃で4時間加熱及び撹拌した。
(2-1)濾過
アセトンで希釈後、No.2濾紙を組込んだ加圧濾過器に、上記抽出工程で得られた抽出液を入れ、圧縮空気又は窒素で0.1~0.4MPaに加圧し、濾過した。
上記(2-1)で得た濾液を、エバポレーターを用い、減圧下(5~10kPa)、加熱(40~60℃)して減圧蒸留し、アセトンを除去した。また、エバポレーターを用い、減圧下加熱(100~140℃)して減圧蒸留し、フェノールを除去した。
上記(2-2)で残留したフェノールを除去するため、減圧下(1.0~5.0kPa)、加熱(120~150℃)して真空乾燥し、フェノールを除去し、リグニン組成物を得た。
フェノールを245質量部、水を27質量部、抽出圧力を1.7MPa、抽出時間を2時間とした以外は、実施例1と同様に行い、リグニン組成物を得た。
フェノールを55質量部、水を27質量部、エタノールを190質量部、抽出圧力を2.8MPa、抽出時間を2時間とした以外は、実施例1と同様に行い、リグニン組成物を得た。
バガス(サトウキビの搾りカスを乾燥させたもの)500gを、1-ブタノール2100mLと水3300mLの存在下で、200℃、2時間、熱処理した。濾過(No.2濾紙)し、セルロース含有固形物を除去した。濾液から水層を分離し、1-ブタノール層を取り出した。取り出した1-ブタノール層を濃縮し、乾固することでリグニンを得た。
クラフトリグニン(SIGMA-ALDRICH社製のLignin,alkali(製品番号370959))について評価した。
実施例1~3、比較例1、2のリグニン組成物等について、下記事項を評価した。
(1)平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mz及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。具体的に、試料をテトラヒドロフランに溶解させて測定サンプルを調製した。スチレン系ポリマー充填剤を充填した有機系汎用カラムである「TSKgelGMHXL(東ソー株式会社製)」2本と「G2000HXL(東ソー株式会社製)」とを、直列に接続したGPCシステム「HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)」又は「HLC-8420GPC(東ソー株式会社製)」に、測定サンプル100μLを注入し、40℃で溶離液のテトラヒドロフランを1.0mL/minで展開し、示差屈折率(RI)を利用して保持時間を測定した。
別途作製した標準ポリスチレンの保持時間と分子量の関係を示した検量線から、試料の各平均分子量を算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレンとしては、以下を使用した。
検量線用標準ポリスチレン:東ソー株式会社製、「TSKgel」(重量平均分子量:590(タイプA-500)、1,010(タイプA-1000)、2,630(タイプA-2500)、5,970(タイプA-5000)、10,200(タイプF-1)、18,100(タイプF-2)、37,900(タイプF-4)、96,400(タイプF-10)、190,000(タイプF-20)、427,000(タイプF-40)、706,000(タイプF-80)、1,090,000(タイプF-128)、4,480,000(タイプF-450))
なお、比較例2のクラフトリグニンは、テトラヒドロフランに一部不溶成分が発生したため、可溶分を分析の対象とした。
(a)分子量LogM2.4~2.6におけるピーク最大値の分子量LogM
(分子量LogM2.4~2.6ピーク)
GPCで求めた試料の分子量のチャート(y軸はdw/dLogM、x軸はLogMがプロットされたもの)の分子量LogM2.4~2.6において、微分分布値(dw/dLogM)のピーク最大値を示す分子量LogMの値を「分子量LogM2.4~2.6ピーク」とした。
(b)微分分布値(dw/dLogM)最大値
GPCで求めた試料の分子量のチャート(y軸はdw/dLogM、x軸はLogMがプロットされたもの)において、分子量LogM2.4~2.6に存在する微分分布値(dw/dLogM)のピークの最大値を「微分分布値(dw/dLogM)最大値」とした。
図1に、実施例1の試料について、GPCで求めた分子量の微分分布値のチャート(y軸はdw/dLogM、x軸はLogMがプロットされたもの)を示す。
図1中、分子量LogM2.4~2.6において、微分分布値(dw/dLogM)のピークはLogM=2.5に現れており、その微分分布値(dw/dLogM)を、「微分分布値(dw/dLogM)最大値」とした。
(c)分子量LogM2.4積分分布値(%)、分子量LogM2.55積分分布値(%)
GPCで求めた試料の分子量のチャート(y軸は積分分布値(%)、x軸はLogMがプロットされたもの)において、分子量LogM2.4における積分分布値(%)、及び分子量LogM2.55における積分分布値(%)を、それぞれ「分子量LogM2.4積分分布値」、「分子量LogM2.55積分分布値」とした。
(d)積分分布値(%)2.55-2.4
分子量LogM2.55の積分分布値(%)から分子量LogM2.4の積分分布値(%)を差し引いた差分の数値を「積分分布値(%)2.55-2.4」とした。
図2に、実施例1の試料について、GPCで求めた分子量の積分分布値のチャート(y軸は積分分布値(%)、x軸はLogMがプロットされたもの)を示す。
図2中、分子量LogM2.4における積分分布値は4.8(%)であり、分子量LogM2.55における積分分布値は、16.8(%)であり、これらの差分(分子量LogM2.55積分分布値(%)-分子量LogM2.4積分分布値(%))を、「積分分布値(%)2.55-2.4」とした。
フェノールの含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。具体的にリグニン組成物等の試料50mgをテトラヒドロフラン0.5mLに溶解させ、水/アセトニトリルが4/1(体積比)の混合溶媒を4.5mL加え、30分間撹拌し、上澄みをろ過し、測定サンプルを調整した。BEH C18(1.7μm×2.1mm×50mm)カラムを接続した「ACQUITY UPLC H-CLASS」に、測定サンプル1μLを注入した。カラム温度を40℃に設定し、移動相には2mM酢酸アンモニウム水溶液(A)、アセトニトリル(B)の混合溶媒を使用し、流量比(A:B)を80:20から10:90に徐々に変化させるグラジエント法を用い、検出部に紫外可視分光(UV)検出器280nmを用いて測定した。別途作製した標準フェノール溶液の検量線から、試料中のフェノール含有率を算出した。
フェノール2量体の含有率は、液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC/MS)を用いて測定した。具体的に、リグニン組成物等の試料50mgをテトラヒドロフラン0.5mLに溶解させ、水/アセトニトリルが4/1(体積比)の混合溶媒を4.5mL加え、30分間撹拌し、上澄みをろ過し、測定サンプルを調製した。分離部にBEH C18(1.7μm×2.1mm×50mm)カラムを接続した「ACQUITY UPLC H-CLASS」、検出部に「Xevo G2-XS QTof」を搭載したLC-MSシステムに測定サンプル1μLを注入した。カラム温度は40℃に設定し、移動相には2mM酢酸アンモニウム水溶液(A)とアセトニトリル(B)の混合溶媒を使用し、流量比(A:B)を80:20から10:90に徐々に変化させるグラジエント法を用いて2量体成分を分離した。
得られた2量体成分を、エレクトロスプレーでイオン化した後、ネガティブモードの四重極-飛行時間型質量分析計を利用して、質量電荷比が50から1000までの範囲を測定した。
化合物は全て脱プロトン体で検出されると仮定して、質量電荷比から、試料に含まれる2量体の構造を下記化合物(a)~(h)及び化合物(2)と決定した。各化合物の構造に相当する質量電荷比でクロマトグラムを抽出し、ピーク面積を算出した。
別途作製した標準2,2’-ジヒドロキシジフェニルメタン溶液の検量線から、試料中のフェノール2量体成分の含有率を算出した。
リグニン組成物等の試料を乳鉢で粉砕し、砕いた試料をアルミ製カップ(円形上部φ60、下部φ53×深さ15mm)に10~20mgに入れた。試料を入れたアルミ製カップをホットプレート(IKA C-MAG HP7)に置き、アルミ箔で蓋をした。100℃まで加熱後、10℃刻みに温度を上げ、目視観察を行い、目視により溶解した温度を軟化点として採用した。
バイアル瓶に、リグニンまたはフェノール樹脂100重量部とヘキサメチレンテトラミン(試薬特級)15重量部を配合し、メタノール及びアセトンを各500重量部ずつ添加後、5分間振とうした。その後、バイアル瓶を40℃で加温し、さらにメタノール100重量部を加えて振とうし、固体分を完全に溶解させた。得られた溶液を一晩風乾後、40℃の真空乾燥器で完全に溶媒を除去した。得られたリグニン/ヘキサメチレンテトラミン混合物を乳鉢で粉砕し、測定試料を得た。
示差走査熱量測定(DSC)は、日立ハイテクサイエンス製:GCA―0017を用いて測定した。上述の方法で調製した測定試料10mgをAl密封式容器(15μL)に封入し、測定範囲:30~240℃、測定雰囲気:窒素(100mL/min)の条件で測定した。リファレンスとしてAl2O3(10mg)を用いた。得られた結果から、硬化発熱ピーク温度および発熱量を算出した。
参考として、フェノール樹脂(住友ベークライト社製、製品名:PR-53195)のDSCのピーク温度は143℃であり、ピーク面積は117J/gであった。
評価結果を表1に示す。
また、比較例1のリグニンに比べ、実施例2のリグニン組成物は、ピーク面積が広い(すなわち、反応熱が大きい)。これは、反応性が高いことを示すものである。これにより、実施例2のリグニン組成物を熱硬化性樹脂成形材料に用いた場合、架橋反応が促進されることが期待される。
実施例4
(1)樹脂組成物の調製
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、フェノール樹脂(住友ベークライト社製、製品名:PR-53195、軟化点115℃)と、実施例1で作製したリグニン組成物とを、質量比(フェノール樹脂:リグニン組成物)が7:3となるように仕込んだ。130℃に加熱し、溶融状態で30分間撹拌混合した。処理物をフラスコから溶融状態で取り出し、リグニン組成物及びフェノール樹脂の混合物を得た。
得られた混合物50質量部に、ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤:関東化学社製)7質量部を常温で添加し、らいかい機を用いて5分間混合した。
その後、充填材として、ガラス繊維(ガラスミルドファイバー、日東紡績(株)製、PF80E-401)50質量部と、添加剤として、ステアリン酸マグネシウム(滑剤:ADEKA社製)1質量部及び酸化マグネシウム(促進剤:共和化学工業社製)1質量部とを配合し、らいかい機を用いて約5分間混合した。
得られた混合物を加熱ロールにて120℃で7分間混練し、冷却後に粉砕して、樹脂組成物(成形材料)を得た。樹脂組成物の組成を表2に示す。
得られた樹脂組成物を、室温下15tfで圧縮しタブレットを作製した。熱風循環式オーブンにて90℃で10分間予備加熱(プレヒート)した後に、トランスファー成形機(MF-O15:株式会社マルシチ製)に投入した。
スパイラルフロー用の金型に対して、165℃、40MPa、5分間の条件で成形し、樹脂組成物が流動した長さを測定した。評価結果を表2に示す。
上記(1)で調製した樹脂組成物を、室温下15tfで圧縮しタブレットを作製した。タブレットを熱風循環式オーブンにて90℃で10分間プレヒートした後、トランスファー成形機(MF-O15:株式会社マルシチ製)に投入した。
試験片用金型(10mm×80mm×厚さ4mm)に対して、165℃、40MPa、3分間の条件で、トランスファー成形した。その後、180℃で8時間加熱処理することにより、成形体(フェノール変性リグニン樹脂組成物の硬化物)を得た。
上記(3)で得た成形体(試験片)について、JIS K 7171「プラスチック-曲げ特性の求め方」に準拠して、曲げ弾性率、曲げ強度及び曲げ歪みを測定した。具体的には、万能材料試験機(5966型インストロン社製)にて、2mm/分の速度、支点間距離64mmで荷重をかけて三点曲げ試験を行った。
A:良好
B:金型から少し溢れるが問題のない品質
C:一部ショート
D:完全にショート
E:金型から溢れ出て、許容範囲できない品質
さらに、X線CTにより成形体内部のボイドを目視で評価した。成形体内部に一様にボイドがあるものを「Y」とし、ボイドがないもの、もしくはボイドが成形体内の一部にしかないものを「X」とした。
評価結果を表2に示す。
樹脂組成物の調製において、実施例1で作製したリグニン組成物の代りに、実施例2、3、比較例1及び2のリグニン組成物又はリグニンを使用した他は、実施例4と同様にして、樹脂組成物及び成形体を作製し、評価した。
Claims (16)
- 下記式(1)で表される化合物を2種以上含有し、
前記化合物の総含有量が0.06質量%以上である、リグニン組成物。
- 重量平均分子量(Mw)が、1,000~3,000である、請求項1に記載のリグニン組成物。
- 分子量分布(Mw/Mn)が、2.2~3.5である、請求項1又は2に記載のリグニン組成物。
- 前記式(1)で表される化合物の総含有量が、5質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のリグニン組成物。
- 遊離フェノール単量体の含有量が、0.02質量%以上5.0質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のリグニン組成物。
- 軟化点が100℃以上250℃未満である、請求項1~6のいずれかに記載のリグニン組成物。
- ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した、リグニン組成物の分子量LogM2.4~2.6に存在する微分分布値(dw/dLogM)のピークの最大値が50以上150以下であるか、又は分子量LogM2.4~2.55における積分分布値(%)の差分が5以上15以下である、リグニン組成物。
- 請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物と、熱硬化性樹脂とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
- 熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂成形材料において、架橋反応を促進するための、請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物の使用。
- 前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂及びポリイミドから選択されるいずれか1種以上である、請求項10に記載のリグニン組成物の使用。
- 熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂成形材料において、請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物を用いて、架橋反応を促進させる方法。
- 請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物を含む、熱硬化性樹脂用改質剤又は架橋反応促進剤。
- 請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物と、ゴム材料とを含む、ゴム組成物。
- 請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項14に記載のゴム組成物を、硬化して得られる成形体。
- 有機溶媒を含む溶媒を用いて、リグニン含有材料からリグニン由来の抽出物を含むリグニン組成物を抽出する抽出工程を有する、請求項1~8のいずれかに記載のリグニン組成物の製造方法。
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