JP2022103718A - シート及び積層体 - Google Patents

シート及び積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP2022103718A
JP2022103718A JP2020218518A JP2020218518A JP2022103718A JP 2022103718 A JP2022103718 A JP 2022103718A JP 2020218518 A JP2020218518 A JP 2020218518A JP 2020218518 A JP2020218518 A JP 2020218518A JP 2022103718 A JP2022103718 A JP 2022103718A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
fiber
cellulose fiber
cellulose
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020218518A
Other languages
English (en)
Inventor
紅 酒井
Ko Sakai
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oji Holdings Corp
Original Assignee
Oji Holdings Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Holdings Corp filed Critical Oji Holdings Corp
Priority to JP2020218518A priority Critical patent/JP2022103718A/ja
Publication of JP2022103718A publication Critical patent/JP2022103718A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】本発明は、繊維幅が10μm以上の繊維状セルロースと、繊維幅が1μm以下の微細繊維状セルロースを含むシートであって、樹脂との密着性が良好なシートを提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維とを含むシートであって、第1のセルロース繊維及び第2のセルロース繊維の少なくとも一方は、硫黄オキソ酸基を有し、シートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が10以下であり、シートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が100以上である、シートに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、シート及び積層体に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10~50μmの繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースは、新たな素材として注目されており、その用途は多岐にわたる。例えば、微細繊維状セルロースを含むシートや不織布、樹脂複合体の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、セルロース繊維からなる微多孔膜であって、1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量に対して1重量%以上含まれている微多孔膜が開示されている。また、特許文献2には、数平均繊維幅2nm以上1000nm未満の第1の繊維と、数平均繊維幅1000nm以上100000nm以下であり、かつ数平均繊維長が0.1~20mmである第2の繊維とを含む不織布が開示されている。さらに、特許文献3には、セルロースナノファイバーとパルプを含むセルロース繊維を主成分とし、所定の弾性率を有するセルロースナノファイバー成形体が開示されている。また、特許文献4には、平均繊維径0.1~50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを含む不織布が開示されている。
特開2014-210987号公報 特開2015-4140号公報 特許第6313512号公報 特開2012-36518号公報
上述したように、各種セルロース繊維を含むシートが知られている。しかしながら、本発明者らは、このようなシートに樹脂を積層した場合、樹脂との密着性に課題があることを突き止めた。
そこで本発明は、繊維幅が10μm以上の繊維状セルロース(パルプ)と、繊維幅が1μm以下の微細繊維状セルロースを含むシートであって、樹脂との密着性が良好なシートを提供することを目的とする。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維とを含むシートであって、
第1のセルロース繊維及び第2のセルロース繊維の少なくとも一方は、硫黄オキソ酸基を有し、
シートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が10以下であり、シートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が100以上である、シート。
[2] シートは単層シートである、[1]に記載のシート。
[3] 第1のセルロース繊維の含有量が、セルロース繊維の全質量に対して10質量%以上である[1]又は[2]に記載のシート。
[4] 第1のセルロース繊維の含有量が、セルロース繊維の全質量に対して70質量%以上である[1]~[3]のいずれかに記載のシート。
[5] ヘーズが20%以上である[1]~[4]のいずれかに記載のシート。
[6] 全光線透過率が70%以上である[1]~[5]のいずれかに記載のシート。
[7] 透気度が10000秒以上である[1]~[6]のいずれかに記載のシート。
[8] 第1のセルロース繊維は硫黄オキソ酸基を有し、硫黄オキソ酸基の導入量は0.30mmol/g以上である[1]~[7]のいずれかに記載のシート。
[9] 第1のセルロース繊維の保水度が220%以上である[1]~[8]のいずれかに記載のシート。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のシートの少なくとも一方の面上に樹脂層を有する、積層体。
[11] シートと樹脂層の間にさらに接着層を有する[10]に記載の積層体。
本発明によれば、樹脂との密着性が良好なシートが得られる。
図1は、実施例6のシートに発生した撚れの一例を示す写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(シート)
本発明は、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維とを含むシートに関する。ここで、第1のセルロース繊維及び第2のセルロース繊維は、硫黄オキソ酸基を有する。そして、シートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度は10以下であり、シートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度は100以上である。なお、本明細書において、繊維幅が1000nm以下のセルロース繊維を微細繊維状セルロースと呼ぶこともある。また、本明細書においては、上記シートを繊維シートと呼ぶこともある。
本発明のシートは、上記構成を有するものであるため、樹脂との密着性が良好である。具体的には、本発明のシート上に樹脂層を積層し、熱プレス(例えば、プレス圧0.5MPa以上)した後の、樹脂層とシートの密着性が良好であり、層間に剥離が生じず、積層構造が維持される。
本発明のシートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度は10秒以下であり、8秒以下であることが好ましく、6秒以下であることがより好ましく、4秒以下であることがさらに好ましい。なお、本発明のシートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度は0秒であってもよい。また、本発明のシートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度は100以上であり、500秒以上であることが好ましく、1000秒以上であることがより好ましく、1500秒以上であることがさらに好ましく、2000秒以上であることが特に好ましい。
本発明のシートにおいては、JIS P 8155:2010に準拠して測定したシートの両表面の平滑度に差がある。本明細書においては、シートにおいて平滑度が小さい方の面を粗面と言い、平滑度が大きい方の面を平滑面と言う。なお、平滑面の平滑度/粗面の平滑度の値が10以上の場合、シートの両表面の平滑度に差があり、シートに表裏差があると言える。ただし、平滑度の値が0秒の場合は、平滑度1秒として平滑面の平滑度/粗面の平滑度の値を計算する。平滑面の平滑度/粗面の平滑度の値は、100以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。
本発明のシートのヘーズは、20%以上であることが好ましい。本発明のシートのヘーズは、セルロース繊維として主に微細繊維状セルロースを含むシートよりは高くなっていてもよい。また、本発明のシートのヘーズは、90%以下であってもよく、85%以下であってもよく、80%以下であってもよい。本発明のシートのヘーズを上記上限値以下とすることで、従来のグラシン紙やグラファン紙と比較して透明性に優れたシートが得られる。なお、シートのヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠し、たとえばヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて測定される値である。
本発明のシートの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。ここでシートの全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠し、たとえばヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて測定される値である。
さらに、本発明のシートはバリア性にも優れている。本発明のシートにおいては、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維を併用しているため、セルロース繊維を高密度化することができ、その結果、バリア性が高められる。具体的には、本発明のシートの透気度は、10000秒以上であることが好ましく、50000秒以上であることがより好ましく、100000秒以上であることがさらに好ましい。シートの透気度は、たとえばJ.TAPPI-5-2:2000の王研式透気度法に準拠し、算出することができる。
本発明のシートは、低坪量であるから軽量である。従来、グラシン紙やグラファン紙を製造する際には、透明性やバリア性を向上させるために、セルロース繊維を高密度化することが検討されており、抄紙工程の後工程でカレンダー処理を施すことが常法として行われていた。しかし、カレンダー処理の作業性を確保するためには、低坪量化には限界があった。一方、本発明のシートにおいては、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維を併用しているため、カレンダー処理を施さずとも透明性やバリア性に優れたシートが得られ、その結果、低坪量化が可能となる。このため、シートの軽量化が達成される。本発明は、このように、通常はトレードオフの関係にある低坪量化と高バリア性を両立し得たものである。具体的には、本発明のシートの坪量は、40g/m以下であることが好ましく、30g/m以下であることがより好ましく、20g/m以下であることがさらに好ましい。シートの坪量は、たとえばJIS P 8124:2011に準拠し、算出することができる。なお、シートの坪量は、シートに求められる性能などに応じて、適宜調整することが可能であり、厚物シートが求められる用途においては、坪量は40g/m超であってもよい。
本発明のシートの厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。またシートの厚みの上限値は、特に限定されないが、たとえば1000μmとすることができる。シートの厚みは、たとえばJIS P 8118:2014に準拠し、測定する。
本発明のシートの密度は、0.1g/cm以上であることが好ましく、0.2g/cm以上であることがより好ましく、0.3g/cm以上であることがさらに好ましい。また、シートの密度の上限値は、特に限定されないが、たとえば5.0g/cm以下であることが好ましい。ここで、シートの密度は、JIS P 8124:2014に準拠して坪量を測定し、JIS P 8118:2014に準拠してシートの厚みを測定し、これらの値から算出したものである。なお、シートの密度は、シートに求められる性能などに応じて、たとえばカレンダー処理等を施すことにより適宜調整してもよい。
本発明のシートは、単層シートである。具体的には、単層のシート内に、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維の両方がランダムに存在している。
(第1のセルロース繊維)
本発明のシートは、第1のセルロース繊維を含む。ここで、第1のセルロース繊維は、繊維幅が10μm以上のセルロース繊維である。第1のセルロース繊維の繊維幅は10μm以上であればよいが、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。なお、第1のセルロース繊維の繊維幅は100μm以下であることが好ましい。本明細書では、第1のセルロース繊維を粗大セルロース繊維又はパルプともいう。
第1のセルロース繊維の繊維幅は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS-200形)を用いて測定することができる。ここで、第1のセルロース繊維の繊維幅とは、セルロース繊維の幹繊維における繊維幅である。たとえば、セルロース繊維がフィブリル化セルロース繊維である場合には、フィブリル化して分枝化した繊維の繊維幅ではなく、主軸を構成している幹繊維の繊維幅を第1のセルロース繊維の繊維幅という。
第1のセルロース繊維の繊維原料としては、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプおよび脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。第1のセルロース繊維として上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
第1のセルロース繊維は、硫黄オキソ酸基を有することが好ましい。なお、本明細書において、硫黄オキソ酸基には、硫黄オキソ酸に由来する置換基も含まれる。第1のセルロース繊維が硫黄オキソ酸基を有することにより、例えば、シートの製造工程において、シートに撚れが発生することを抑制することができる。
硫黄オキソ酸基(硫黄オキソ酸基又は硫黄オキソ酸基に由来する置換基)は、例えば下記式(2)で表される置換基である。各繊維状セルロースには、下記式(2)で表される置換基が複数種導入されていてもよい。この場合、複数導入される下記式(2)で表される置換基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2022103718000001
上記構造式中、bおよびnは自然数であり、pは0または1であり、mは任意の数である(ただし、1=b×mである)。なお、nが2以上である場合、複数あるpは同一の数であってもよく、異なる数であってもよい。上記構造式中、βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、有機オニウムイオンを挙げることができる。有機オニウムイオンとしては、例えば、有機アンモニウムイオンや有機ホスホニウムイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、例えば、脂肪族アンモニウムイオンや芳香族アンモニウムイオンを挙げることができ、有機ホスホニウムイオンとしては、例えば、脂肪族ホスホニウムイオンや芳香族ホスホニウムイオンを挙げることができる。無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属のイオン、水素イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。なお、繊維状セルロースに上記式(2)で表される複数種の置換基が導入される場合には、複数存在するβb+はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βb+を含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、又はカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
第1のセルロース繊維が硫黄オキソ酸基を有する場合、第1のセルロース繊維の硫黄オキソ酸基の導入量は、セルロース繊維1g(質量)あたり0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.30mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることが一層好ましく、0.90mmol/g以上であることが特に好ましい。また、第1のセルロース繊維の硫黄オキソ酸基の導入量は、セルロース繊維1g(質量)あたり5.00mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。ここで、単位mmol/gは、たとえば硫黄オキソ酸基の対イオンが水素イオン(H)であるときの第1のセルロース繊維の質量1gあたりの置換基量を示す。硫黄オキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、シートの製造工程において、シートに撚れが発生することをより効果的に抑制することができる。
繊維状セルロースに対する硫黄オキソ酸基の導入量は、繊維状セルロースを過塩素酸と濃硝酸を用いて湿式灰化した後に、適当な倍率で希釈してICP発光分析により硫黄量を測定することで算出することができる。硫黄量を、供試した繊維状セルロースの絶乾質量で除した値が硫黄オキソ酸基量(単位:mmol/g)である。
なお、第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維が混在している場合には、遠心分離法により分離回収のうえ、前述した方法にて硫黄オキソ酸基導入量を測定する。遠心分離は、第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維が混在したセルロース分散液を固形分濃度0.2質量%に調整し、冷却高速遠心分離機(コクサン社、H-2000B)を用い、12000G、10分の条件で行う。その後、得られる沈降固形分を第1のセルロース繊維、上澄み液を第2のセルロース繊維として回収する。
第1のセルロース繊維の保水度は、220%以上であることが好ましく、230%以上であることがより好ましく、240%以上であることがさらに好ましく、250%以上であることが一層好ましく、280%以上であることが特に好ましい。また、第1のセルロース繊維の保水度は、600%以下であることが好ましい。第1のセルロース繊維の保水度は、J.TAPPI-26:2000に準拠して測定した値である。なお、第1のセルロース繊維の保水度は、シート化する前の第1のセルロース繊維の保水度であるが、シート化後の第1のセルロース繊維の保水度が上記範囲を満たすものであってもよい。
第1のセルロース繊維の含有量は、シートに含まれるセルロース繊維の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、第1のセルロース繊維の含有量は、シートに含まれるセルロース繊維の全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
<第1のセルロース繊維の製造工程>
<硫黄オキソ酸基導入工程>
第1のセルロース繊維の製造工程は、硫黄オキソ酸基導入工程を含むことが好ましい。硫黄オキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と硫黄オキソ酸が反応することで、硫黄オキソ酸基を有するセルロース繊維(硫黄オキソ酸基導入繊維)を得ることができる。硫黄オキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、硫黄オキソ酸基導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、硫黄オキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係る硫黄オキソ酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態、湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、特に乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、特に限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、特に水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、特に限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、硫黄原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、硫酸もしくはその塩、亜硫酸もしくはその塩、硫酸アミドなどが挙げられるが特に限定されない。硫酸としては、種々の純度のものを使用することができ、例えば96%硫酸(濃硫酸)を使用することができる。亜硫酸としては、5%亜硫酸水が挙げられる。硫酸塩又は亜硫酸塩としては、硫酸塩又は亜硫酸塩のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。硫酸アミドとしては、スルファミン酸などを使用することができる。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、特に限定されないが、たとえば化合物Aの添加量を硫黄原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対する硫黄原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対する硫黄原子の添加量を上記範囲内とすることにより、第1のセルロース繊維の収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対する硫黄原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1-フェニル尿素、1-ベンジル尿素、1-メチル尿素、および1-エチル尿素などが挙げられる。反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、特に限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
硫黄オキソ酸基導入工程においては、セルロース原料に硫黄オキソ酸、並びに、尿素及び/又は尿素誘導体を含む水溶液を混合した後、当該セルロース原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、硫黄オキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱処理温度は、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
加熱処理工程では、実質的に水分がなくなるまで加熱をすることが好ましい。このため、加熱処理時間は、セルロース原料に含まれる水分量や、硫黄オキソ酸、並びに、尿素及び/又は尿素誘導体を含む水溶液の添加量によって、変動するが、例えば、10秒以上10000秒以下とすることが好ましい。加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、例えば熱風乾燥装置、撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
<洗浄工程>
本実施形態における第1のセルロース繊維の製造方法においては、必要に応じて硫黄オキソ酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶剤により硫黄オキソ酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、特に限定されない。
<アルカリ処理工程>
本実施形態における第1のセルロース繊維の製造方法においては、必要に応じて洗浄後の硫黄オキソ酸基導入繊維に対して、アルカリ処理を行ってもよい。この場合、洗浄後の硫黄オキソ酸基導入繊維を10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nのアルカリ溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下に調整することが好ましい。アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶剤のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶剤などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程における硫黄オキソ酸基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえば硫黄オキソ酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
なお、アルカリ処理工程の後には、さらに上述した洗浄工程を設けてもよい。
(第2のセルロース繊維)
本発明のシートは、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維(微細繊維状セルロース)を含む。第2のセルロース繊維の繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。なお、第2のセルロース繊維は、たとえば単繊維状のセルロースである。
第2のセルロース繊維の繊維幅は、1000nm以下であればよく、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが一層好ましく、50nm以下であることがより一層好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。本発明のシートは、このように繊維幅が小さい微細繊維状セルロースを、第1のセルロース繊維(粗大セルロース繊維)と併用することで、樹脂との密着性を効果的に高めることができる。また、繊維幅が小さい微細繊維状セルロースを、硫黄オキソ酸基を有する第1のセルロース繊維(粗大セルロース繊維)と併用することで、シートの製造工程において、シートに撚れが発生することを抑制することができる。
第2のセルロース繊維の繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の第2のセルロース繊維の水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。
第2のセルロース繊維の繊維長は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、第2のセルロース繊維の結晶領域の破壊を抑制できる。また、第2のセルロース繊維のスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、第2のセルロース繊維の繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
第2のセルロース繊維はI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、第2のセルロース繊維がI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
第2のセルロース繊維に占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
第2のセルロース繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は、特に限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、第2のセルロース繊維を含有するシートを形成しやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば第2のセルロース繊維を水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における第2のセルロース繊維は、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。特に、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い第2のセルロース繊維は、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
本実施形態における第2のセルロース繊維は、硫黄オキソ酸基を有することが好ましい。なお、本明細書において、硫黄オキソ酸基には、硫黄オキソ酸に由来する置換基も含まれる。
第2のセルロース繊維が有する硫黄オキソ酸基は、第1のセルロース繊維が有する硫黄オキソ酸基と同様である。なお、本実施形態には、(1)第1のセルロース繊維のみが硫黄オキソ酸基を有する態様、(2)第2のセルロース繊維のみが硫黄オキソ酸基を有する態様、(3)第1のセルロース及び第2のセルロース繊維が硫黄オキソ酸基を有する態様がある。シートの撚れを抑制する観点から、本実施形態は、(1)第1のセルロース繊維のみが硫黄オキソ酸基を有する態様、もしくは(3)第1のセルロース及び第2のセルロース繊維が硫黄オキソ酸基を有する態様が好ましい。
第2のセルロース繊維が硫黄オキソ酸基を有する場合、第2のセルロース繊維に対する硫黄オキソ酸基の導入量は、たとえば第2のセルロース繊維1g(質量)あたり0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.30mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることが一層好ましく、0.90mmol/g以上であることが特に好ましい。また、第2のセルロース繊維の硫黄オキソ酸基の導入量は、セルロース繊維1g(質量)あたり5.00mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。ここで、単位mmol/gは、たとえば硫黄オキソ酸基の対イオンが水素イオン(H)であるときの第2のセルロース繊維の質量1gあたりの置換基量を示す。
第2のセルロース繊維に対する硫黄オキソ酸基の導入量の測定方法は、第1のセルロース繊維における硫黄オキソ酸基の導入量の測定方法と同様である。
第2のセルロース繊維の含有量は、シートに含まれるセルロース繊維の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2のセルロース繊維の含有量は、シートに含まれるセルロース繊維の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
<微細繊維状セルロースの製造工程>
<繊維原料>
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。セルロースを含む繊維原料としては、特に限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
<硫黄オキソ酸基導入工程>
微細繊維状セルロースの製造工程は、硫黄オキソ酸基導入工程を含んでもよい。この場合、硫黄オキソ酸基導入工程は、第1のセルロース繊維の製造工程における硫黄オキソ酸基導入工程と同様の工程である。
<洗浄工程>
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じて硫黄オキソ酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、第1のセルロース繊維の製造工程における洗浄工程と同様の工程である。
<アルカリ処理工程>
微細繊維状セルロースを製造する場合、硫黄オキソ酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法は、第1のセルロース繊維の製造工程におけるアルカリ処理の方法と同様である。
なお、アルカリ処理工程の後には、さらに上述した洗浄工程を設けてもよい。
<解繊処理>
繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、繊維を分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶剤などの有機溶剤から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶剤としては、特に限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。また、繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、例えば水素結合性のある尿素などの繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
(比率)
第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維の質量比率(第1のセルロース繊維:第2のセルロース繊維)は、30:70~90:10であることが好ましく、40:60~90:10であることがより好ましく、60:40~90:10であることがさらに好ましく、70:30~90:10であることが特に好ましい。ここで、シート中の第1のセルロース繊維は、たとえば走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S-3600N)にて観察することが可能である。また、第2のセルロース繊維は、たとえば高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(日立製作所製、S-5200)にて観察することが可能である。このような観察により、各繊維の体積比率から質量比率を算出してもよい。但し、後述するようなシートの製造工程における、各セルロース繊維の混合比は、シートにおける第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維の比率と同等である。
(その他の繊維)
本発明のシートは第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維以外に、その他のセルロース繊維を含んでいてもよい。その他のセルロース繊維としては、たとえば第1のセルロース繊維を叩解して繊維幅を1μmより大きく10μm未満とした、高叩解パルプを挙げることができる。ここで、その他の繊維の繊維幅とは、セルロース繊維の幹繊維における繊維幅である。たとえば、その他の繊維がフィブリル化セルロース繊維である場合には、フィブリル化して分枝化した繊維の繊維幅ではなく、幹繊維の繊維幅をその他の繊維の繊維幅という。
その他のセルロース繊維の叩解は、たとえば解繊処理装置を用いて行うことができる。解繊処理装置としては特に限定されない。例えば、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、クレアミックス、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
(親水性高分子/親水性低分子化合物)
本発明のシートは、親水性高分子をさらに含んでいてもよい。親水性高分子とは、一般に水に溶解、膨潤、または濡れやすい高分子化合物のことである。親水性高分子としては、分子構造中に、カルボキシ基、スルホン基、またはアミノ基などのイオン性基を有する高分子化合物、水酸基、アミド基、エーテル基、またはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等の非イオン性の親水性基を有する高分子化合物が例示される。但し、本明細書において、親水性高分子には上述したセルロース繊維は含まれない。
親水性高分子としては、たとえばカルボキシビニルポリマー;ポリビニルアルコール;ポリビニルブチラール;メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリビニルメチルエーテル;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;アクリル酸アルキルエステル共重合体;ウレタン系共重合体;変性ポリエステル;変性ポリイミド;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコール;ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等のポリカチオン;ポリアニオン;両性イオン型のポリマー;キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、アルギン酸の金属塩、プルラン、およびペクチンなどに例示される増粘多糖類;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒロドキシエチルセルロースなどに例示されるセルロース誘導体;カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、デキストリン、およびアミロースなどに例示されるデンプン類;ポリグリセリンなどに例示されるグリセリン類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩;カゼインなどに例示されるタンパク質類等を挙げることができる。また、親水性高分子は、これらの親水性高分子の共重合体であってもよい。
また、本発明のシートは、親水性高分子の代わりに親水性の低分子化合物を含んでいてもよい。親水性の低分子化合物としては、グリセリン、ジグリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトールなどを挙げることができるが、特に限定されない。
シート中における親水性高分子又は親水性低分子化合物の含有量は、セルロース繊維100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましい。また、親水性高分子の含有量は、セルロース繊維100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。親水性高分子又は親水性低分子化合物の含有量を上述の範囲とすることにより、シートの強度をより効果的に向上させることができる。
(紙力増強剤)
本発明のシートは、紙力増強剤をさらに含むものであることが好ましい。これにより、シートの強度をさらに向上させることが可能となる。紙力増強剤としては、乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル樹脂等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピハロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。中でも、本発明のシートは、ポリアミンポリアミドエピハロヒドリンを含有することが好ましい。
ポリアミンポリアミドエピハロヒドリンは、脂肪族二塩基性カルボン酸又はその誘導体と、ポリアルキレンポリアミンを加熱縮合させてポリアミドポリアミンを合成し、次いで該ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンを反応させることで得られるカチオン性熱硬化性樹脂である。なお、ポリアミンポリアミドエピハロヒドリンは水性樹脂であるから、シート形成用スラリーにはポリアミンポリアミドエピハロヒドリンを水溶液として添加することもできる。
ポリアミンポリアミドエピハロヒドリンとしては、例えば、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミンポリアミドエピブロモヒドリン、ポリアミンポリアミドエピヨードヒドリン等を挙げることができる。
シート中における紙力増強剤の含有量は、セルロース繊維100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、紙力増強剤の含有量は、セルロース繊維100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。紙力増強剤の含有量を上述の範囲とすることにより、シートの強度をより効果的に向上させることができる。
(任意成分)
本発明のシートには、上述した成分以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、たとえば、防腐剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、安定剤、界面活性剤、サイズ剤、凝結剤、歩留まり向上剤、嵩高剤、濾水性向上剤、pH調整剤、蛍光増白剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、消泡剤、保水剤、分散剤等を挙げることができる。
シート中に含まれる上記任意成分の含有量は、シートの全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
(シートの製造方法)
本発明のシートの製造方法は、繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維と、を含むスラリーからシートを形成する工程を含む。ここで、第1のセルロース繊維及び第2のセルロース繊維の少なくとも一方は、硫黄オキソ酸基を有する。中でも、第1のセルロース繊維は硫黄オキソ酸基を有することが好ましい。
シートの製造工程においては、シートを形成する工程において、シートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が10以下となり、シートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が100以上となる工程や条件が採用される。例えば、第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維を含むスラリーを抄紙し、シートを形成した後にシートの一方の面のみにカレンダー処理を施す方法や、シートの一方の面のみに微細凹凸構造を形成する方法、第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維を含むスラリーを基板上に塗工する方法等を適宜選択することで、シートの両面の平滑度を所望の条件とすることができる。
第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維を分散させたスラリー中に含まれる固形分濃度は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、スラリー中に含まれる固形分濃度は、0.01質量%以上であることが好ましい。
ここで、第1のセルロース繊維の保水度は、220%以上であることが好ましく、230%以上であることがより好ましく、240%以上であることがさらに好ましい。また、第1のセルロース繊維の保水度は、600%以下であることが好ましい。なお、第1のセルロース繊維の保水度は、J.TAPPI-26:2000に準拠して測定した値である。本発明のシートの製造工程では、保水度が220%以上の第1のセルロース繊維を用いることにより、繊維が均一に分散したスラリーを得ることができる。また、保水度が220%以上の第1のセルロース繊維を用いることにより、セルロース繊維濃度が高いスラリーにおいても、セルロース繊維が凝集することを抑制できる。
<抄紙工程>
第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維を含むスラリーを抄紙する場合、抄紙機によりスラリーを抄紙する。抄紙工程で用いられる抄紙機としては、特に限定されないが、たとえば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等の公知の抄紙方法を採用してもよい。
抄紙工程は、スラリーをワイヤーにより濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、このシートをプレス、乾燥することにより行われる。スラリーを濾過、脱水する際に用いられる濾布としては、特に限定されないが、たとえば繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないものであることがより好ましい。このような濾布としては、特に限定されないが、たとえば有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。本実施形態においては、たとえば孔径0.1μm以上20μm以下であるポリテトラフルオロエチレンの多孔膜や、孔径0.1μm以上20μm以下であるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
シート化工程において、スラリーからシートを製造する方法は、たとえばセルロース繊維を含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させてシートを生成する乾燥セクションとを備える製造装置を用いて行うことができる。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
抄紙工程において用いられる脱水方法としては、特に限定されないが、たとえば紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられる。これらの中でも、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、さらにロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、抄紙工程において用いられる乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば紙の製造で用いられている方法が挙げられる。これらの中でも、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどを用いた乾燥方法がより好ましい。
このような抄紙工程の後には、得られたシートの一方の面にカレンダー処理を施してもよい。また、一方の面を再湿潤液により再湿潤させ、キャストドラムに圧着するリウェットキャスト処理を施してもよい。これらにより、シートの一方の面のみの平滑度を100以上としてもよい。また、抄紙工程の後には、得られたシートの一方の面に微細凹凸構造を形成する工程を設けてもよい。例えば、サンドブラスト処理や、微細凹凸構造を有するローラー等を用いた転写処理工程等を設けることで、シートの一方の面のみの平滑度を10以下としてもよい。
<塗工工程>
第1のセルロース繊維と第2のセルロース繊維を含むスラリーを基材上に塗工する工程(塗工工程)では、たとえば繊維状セルロースを含むスラリー(塗工液)を基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得ることができる。また、塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
塗工工程で用いる基材の材質は、特に限定されないが、スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、特に限定されない。たとえばポリプロピレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
塗工工程において、スラリーの粘度が低く、基材上で展開してしまう場合には、所定の厚みおよび坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠としては、特に限定されないが、たとえば乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。このような観点から、樹脂板または金属板を成形したものがより好ましい。本実施形態においては、たとえばポリプロピレン板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリカーボネート板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板、およびこれらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したものを用いることができる。
スラリーを基材に塗工する塗工機としては、特に限定されないが、たとえばロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。シートの厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが特に好ましい。
スラリーを基材へ塗工する際のスラリー温度および雰囲気温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましく、15℃以上50℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上40℃以下であることが特に好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、スラリーをより容易に塗工できる。塗工温度が上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が好ましくは5g/m以上500g/m以下となるように、より好ましくは10g/m以上300g/m以下となるように、スラリーを基材に塗工することが好ましい。なお、塗工工程は、例えば坪量が30g/m以下といった薄膜シートを製造することも可能である。
塗工工程は、上述のとおり、基材上に塗工したスラリーを乾燥させる工程を含む。スラリーを乾燥させる工程は、特に限定されないが、たとえば非接触の乾燥方法、もしくはシートを拘束しながら乾燥する方法、またはこれらの組み合わせにより行われる。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば熱風、赤外線、遠赤外線もしくは近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、または真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、特に限定されないが、たとえば赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができる。
加熱乾燥法における加熱温度は、特に限定されないが、たとえば20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができる。また、加熱温度を上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制およびセルロース繊維の熱による変色の抑制を実現できる。
(用途)
本発明のシートの用途は特に限定されない。例えば、シートは、包装紙、トレーシングペーパー、クッキングシート、薬包紙、電池用セパレータ、フィルター、全熱交換用ライナー、振動板、プレス成形用部材、フレキシブル基板、樹脂複合材、強化繊維プラスチック積層体等の用途に適している。
(積層体)
本発明のシートは、樹脂との密着性が良好であるため、樹脂層との積層体を形成する用途に好ましく用いられる。すなわち、本発明は、上述したシートの少なくとも一方の面上に樹脂層を有する積層体に関するものであってもよい。
積層体に含まれ得る樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリル及びポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、例えば特開2010-023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
樹脂層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合又は、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
なお、シートと樹脂層の間には、接着層もしくは樹脂塗工層が設けられていてもよく、また接着層や樹脂塗工層が設けられておらず、シートと樹脂層が直接密着をしていてもよい。
シートと樹脂層の間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤として、例えば、アクリル樹脂を挙げることができる。また、アクリル樹脂以外の接着剤としては、例えば、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
シートと樹脂層の間に樹脂塗工層が設けられる場合は、樹脂塗工層を構成する成分としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、あるいは有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした樹脂等を挙げることができる。また、このような樹脂を塗工する際には、樹脂塗工液中に必要に応じて密着助剤を含有させてもよい。密着助剤としては、例えば、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基及びシラノール基から選択される少なくとも1種を含む化合物や、有機ケイ素化合物が挙げられる。中でも、密着助剤はイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)及び有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、シランカップリング剤縮合物や、シランカップリング剤を挙げることができる。なお、このような密着助剤は、積層体に含まれ得る樹脂層に含まれていてもよい。
シートと樹脂層の間に接着層や樹脂塗工層が設けられていない場合は、樹脂層の表面に親水化処理等の表面処理を行ってもよい。また、樹脂層の表面には、親水化処理以外の表面処理を施してもよく、このような処理方法としては、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を挙げることができる。
積層体には、無機層が含まれていてもよい。このような無機層は、繊維シート上に積層されるものであってもよく、樹脂層上に積層されるものであってもよい。
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;又はこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、又はこれらの混合物が好ましい。
無機層の形成方法は、特に限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat-CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。成膜速度が遅いという欠点はあるが、プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
<第1のセルロース繊維(1)の作製>
[硫酸化パルプの作製]
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/mシート状、離解してJIS P 8121-2:2012に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対して、硫酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、アミド硫酸と尿素の混合溶液を添加して、アミド硫酸38質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で20分間加熱し、パルプ中のセルロースに硫酸基を導入し、硫酸化パルプを得た。
[洗浄処理]
次いで、得られた硫酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、硫酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
[中和処理]
次いで、洗浄後の硫酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後の硫酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、攪拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下の硫酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該硫酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施された硫酸化パルプを得た。
次いで、中和処理後の硫酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。これにより得られた硫酸化パルプに対しFT-IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1220‐1260cm-1付近に硫酸基に基づく吸収が観察され、パルプに硫酸基が付加されていることが確認された。また、得られた硫酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。得られた硫酸化パルプは、後述する[硫酸基量の測定]に記載の測定方法で硫酸基量を測定し、1.47mmol/gだった。また、後述する測定方法で測定される繊維幅は30μmであった。得られた硫酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度2質量%の第1のセルロース繊維(1)を含む、第1のセルロース繊維分散液(1)を得た。
<第2のセルロース繊維(1)の作製>
[微細化]
上記方法にて得られた第1のセルロース繊維分散液(1)を、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、第2のセルロース繊維(1)を含む、第2のセルロース繊維分散液(1)を得た。X線回折装置により、この第2のセルロース繊維(1)がセルロースI型結晶を維持していることが確認された。後述する[硫黄オキソ酸基量の測定]に記載の測定方法で測定される硫酸基量は、1.47mmol/gだった。また、後述する測定方法で測定される繊維幅は2~5nmであった。
<シート化>
第1のセルロース繊維(1)が75質量部、第2のセルロース繊維(1)が25質量部、ポリビニルアルコールが10質量部、ポリアミンポリアミド・エピクロロヒドリンが5質量部となるように、第1のセルロース繊維分散液(1)と、第2のセルロース繊維分散液(1)と、ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業製、ゴーセネックス Z-200)と、ポリアミンポリアミド・エピクロロヒドリン溶液(荒川化学工業製、アラフィックス 255)を混合して塗工液1を得た。塗工液1の固形分濃度は0.5質量%に調製した。
次いで、得られるシート(上記塗工液の固形分から構成される層)の坪量が25g/mになるように塗工液1を計量して、市販のアクリル板に塗工し、50℃の恒温乾燥機にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が250mm×250mm、高さ5cmの金枠)を配置した。次いで、上記アクリル板から乾燥後のシートを剥離し、第1のセルロース繊維(1)と第2のセルロース繊維(1)を含有するシートを得た。なお、アクリル板に接触していた面を平滑面、アクリル板への接触面とは反対側の面(非接触面)を粗面として、後述する方法で平滑度を測定した。
<積層体の製造>
上記で得られたシートを、カッターで裁断し、寸法100mm×100mmの断片を作製した。シート断片の粗面に、同じ寸法に裁断した下記に記載する市販の樹脂板それぞれを重ね合わせた。次いで、重ね合わせたシート断片と樹脂板を、厚み2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟み、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP-WCH)に挿入した。上記ミニテストプレスを3MPaのプレス圧力下、3分かけて所定の温度(下記に記載のプレス温度)まで昇温し、この状態で5分間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。上記の手順により、樹脂板とシートで構成された積層体を得た。
・ABS樹脂板 …厚み:1.5mm、プレス温度:150℃
・EVA樹脂シート …厚み:0.8mm、プレス温度:150℃
・アクリル板 …厚み:2.0mm、プレス温度:150℃
・ポリカーボネート樹脂板 …厚み:2.0mm、プレス温度:150℃
・PET樹脂板 …厚み:0.5mm、プレス温度:180℃
(実施例2)
シート化工程において、シートの坪量が100g/mになるように塗工液1を計量した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例3)
シート化工程において、シートの坪量が180g/mになるように塗工液1を計量した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例4)
シート化工程において、シートの坪量が100g/mになるように塗工液1を計量して、市販のアクリル板に塗工し、50℃の恒温乾燥機にて乾燥した。次いで、乾燥したシート上に、再度、得られるシートの坪量が100g/mになるように塗工液1を計量して塗工し、50℃の恒温乾燥機にて乾燥させることで、得られるシートの合計の坪量が200g/mになるシートを作製した。次いで、上記アクリル板から乾燥後のシートを剥離し、第1のセルロース繊維(1)と第2のセルロース繊維(1)を含有するシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例5)
<シート化>
実施例1と同様にして、第1のセルロース繊維(1)と第2のセルロース繊維(1)を含有するシートを得た。
<樹脂塗工>
溶媒溶解性を高めた特殊ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、ユピゼータ2136)15質量部、トルエン57質量部、メチルエチルケトン28質量部を混合し、樹脂組成物を得た。次いで、上記樹脂組成物に密着助剤としてイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTPA-100)を2.25質量部添加して混合し、上記で得られたシートの粗面に、バーコーターにて塗布した。さらに100℃で1時間加熱して硬化させ、樹脂層を形成した。上記の手順により、繊維層(セルロース繊維含有層)の粗面に樹脂層が塗工された樹脂塗工シートを得た。
<積層体の製造>
得られた樹脂塗工シートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例6)
<第1のセルロース繊維(2)の作製>
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/mシート状、離解してJIS P 8121-2:2012に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%の第1のセルロース繊維(2)を含む、第1のセルロース繊維分散液(2)を得た。第1のセルロース繊維(2)の繊維幅は29μmであり、後述する[カルボキシ基量の測定]に記載の測定方法で測定されるカルボキシ基量は、0.03mmol/gだった。
<シート化及び積層体の製造>
シート化工程において、第1のセルロース繊維(1)に代えて第1のセルロース繊維(2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例7)
<第2のセルロース繊維(2)の作製>
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)をダブルディスクリファイナーにて変則フリーネスが100mlになるまで叩解し、固形分濃度が2質量%のパルプ分散液を得た。パルプ分散液を固形分濃度が0.2質量%になるようにイオン交換水で希釈し、NiroSoavi社製コウアツホモジナイザー「Panda Plus2000」により処理圧力120MPaで3回の微細化処理を行い、第2のセルロース繊維(2)を含む、第2のセルロース繊維分散液(2)を得た。得られた第2のセルロース繊維(2)の繊維幅は130nmであり、後述する[カルボキシ基量の測定]に記載の測定方法で測定されるカルボキシ基量は、0.03mmol/gだった。
<シート化及び積層体の製造>
シート化工程において、第2のセルロース繊維(1)に代えて第2のセルロース繊維(2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(比較例1)
シート化工程において、第2のセルロース繊維が100質量部、ポリビニルアルコールが40質量部、ポリアミンポリアミド・エピクロロヒドリンが5質量部となるように配合して塗工液2を得た。塗工液2を用いた以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。比較例1のシートでは、セルロース繊維として、第2のセルロース繊維のみを含む。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(比較例2)
シート化工程において、シートの坪量が100g/mになるようにした以外は、比較例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
(比較例3)
シート化工程において、シートの坪量が180g/mになるようにした以外は、比較例1と同様にしてシートを得た。また、得られたシートから実施例1と同様にして積層体を得た。
<測定方法>
(硫黄オキソ酸基量の測定)
得られたセルロース繊維を過塩素酸と濃硝酸を用いて湿式灰化した後に、適当な倍率で希釈してICP発光分析により硫黄量を測定した。この硫黄量を、供試したセルロース繊維の絶乾質量で除した値を硫黄オキソ酸基量(単位:mmol/g)とした。
(カルボキシ基量の測定)
得られた第1のセルロース繊維(2)及び第2のセルロース繊維(2)のカルボキシ基量は、TAPPI Test Method T237 cm-08(2008)に従って測定した。
<第1のセルロース繊維の繊維幅の測定>
第1のセルロース繊維の繊維幅は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS-200形)を用いて測定することにより求めた。
<第2のセルロース繊維の繊維幅の測定>
第2のセルロース繊維の繊維幅を下記の方法で測定した。湿式微粒化装置にて処理をして得られた上記微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL-2000EX)により観察した。
(坪量)
JIS P 8124:2011に準拠してシートの坪量を測定した。
(紙厚)
JIS P 8118:2014に準拠してシートの厚みを測定した。
(密度)
JIS P 8124:2011に準拠してシートの坪量を測定し、JIS P 8118:2014に準拠してシートの厚みを測定し、これらの値からシートの密度を算出した。
(平滑度)
JIS P 8155:2010に準拠してシートの両表面の平滑度をそれぞれ測定した。平滑面の平滑度/粗面の平滑度の値が10以上の場合を表裏差有、10未満の場合を表裏差無とした。ただし、平滑度の値が0秒の場合は、平滑度1秒として平滑面の平滑度/粗面の平滑度の値を計算した。
(透気度)
J.TAPPI-5-2:2000の王研式透気度法に準拠してシートの透気度を測定した。
(ヘーズ及び全光線透過率)
JIS K 7136:2000に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150 )を用いてシートのヘーズを測定した。また、JIS K 7361-1:1997に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いてシートの全光線透過率を測定した。
(樹脂密着性)
実施例及び比較例で得た樹脂板と繊維シートの積層体の密着性を、以下の手順で評価した。樹脂層と繊維シートの積層体を、曲げ試験機(テンシロンRTC-1250A)の三点曲げ治具上に静置した。三点曲げ冶具のスパン長を300mm、試験速度を5mm/分に設定し、曲げ応力を付与した。曲げ破壊に至った後に樹脂層と繊維シートの積層体を観察し、以下の基準に従って評価を行った。
○:層間に剥離が認められず、積層構成を維持している。
×:層間の少なくとも一部に剥離が認められ、層が分離しており、積層構成が維持されていない。
(シート外観)
作製したシート(サイズ縦18cm、横18cm)20枚(総面積0.648m分)、における撚れ個数を目視にて確認した。1mあたりの撚れの個数に換算した。なお、「撚れ」とは、図1の点線枠内に示されるようなシート表面に確認される白い塊部分のことをいう。
(保水度)
J.TAPPI-26:2000に準拠して第1のセルロース繊維の保水度を測定した。
Figure 2022103718000002
Figure 2022103718000003
実施例で得られたシートは樹脂との密着性が良好であった。一方、比較例で得られたシートにおいては樹脂との密着性が劣っていた。
なお、第1のセルロース繊維として硫黄オキソ酸基を有するセルロース繊維を用いた実施例では、シート中の撚れの発生も抑制されていた。

Claims (11)

  1. 繊維幅が10μm以上の第1のセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維とを含むシートであって、
    前記第1のセルロース繊維及び前記第2のセルロース繊維の少なくとも一方は、硫黄オキソ酸基を有し、
    前記シートの一方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が10以下であり、前記シートの他方の面のJIS P 8155:2010に準じて測定した平滑度が100以上である、シート。
  2. 前記シートは単層シートである、請求項1に記載のシート。
  3. 前記第1のセルロース繊維の含有量が、セルロース繊維の全質量に対して10質量%以上である請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記第1のセルロース繊維の含有量が、セルロース繊維の全質量に対して70質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のシート。
  5. ヘーズが20%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のシート。
  6. 全光線透過率が70%以上である請求項1~5のいずれか1項に記載のシート。
  7. 透気度が10000秒以上である請求項1~6のいずれか1項に記載のシート。
  8. 前記第1のセルロース繊維は硫黄オキソ酸基を有し、前記硫黄オキソ酸基の導入量は0.30mmol/g以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のシート。
  9. 前記第1のセルロース繊維の保水度が220%以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のシート。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のシートの少なくとも一方の面上に樹脂層を有する、積層体。
  11. 前記シートと前記樹脂層の間にさらに接着層を有する請求項10に記載の積層体。
JP2020218518A 2020-12-28 2020-12-28 シート及び積層体 Pending JP2022103718A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020218518A JP2022103718A (ja) 2020-12-28 2020-12-28 シート及び積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020218518A JP2022103718A (ja) 2020-12-28 2020-12-28 シート及び積層体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022103718A true JP2022103718A (ja) 2022-07-08

Family

ID=82279646

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020218518A Pending JP2022103718A (ja) 2020-12-28 2020-12-28 シート及び積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022103718A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7006278B2 (ja) シート
CN110959044B (zh) 含纤维状纤维素的组合物、其制造方法和膜
WO2019043782A1 (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JP6540925B1 (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JPWO2017135413A1 (ja) 樹脂複合体及び樹脂複合体の製造方法
JP2019031770A (ja) シート
JP6733627B2 (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JP7334773B2 (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
KR102494816B1 (ko) 시트
JP7119609B2 (ja) シート及びシートの製造方法
JP2022103718A (ja) シート及び積層体
JP6607327B1 (ja) シート
JP2020172738A (ja) シート及びシートの製造方法
JP6617843B1 (ja) シート
WO2021002273A1 (ja) シート及び積層体
JP6741106B1 (ja) シート及びシートの製造方法
JP6540924B1 (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JP6575700B1 (ja) シート
JP6828759B2 (ja) シート及び積層体
JP7346870B2 (ja) シートの製造方法及びシート
WO2019203239A1 (ja) シート及び積層体
JP2020204041A (ja) 繊維状セルロース、繊維状セルロース含有物、成形体及び繊維状セルロースの製造方法
JP2020164726A (ja) シート
JP2020165063A (ja) 組成物
JP2020128507A (ja) 繊維状セルロース含有組成物及び塗料

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231106