以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
以下、標的粒子および該標的粒子とサイズの異なる非標的粒子が分散したサンプル液から該標的粒子を分離(分画)するための、本発明が適用された粒子分離装置の実施形態として、血球を非標的粒子として、血中循環腫瘍細胞(CTC)を標的粒子として含む血液由来の液をサンプル液とし、該サンプル液から血中循環腫瘍細胞を分離するCTC分離装置について説明する。
ただし、本発明は、血中循環腫瘍細胞を分離するものに限定されず、血中循環腫瘍細胞以外の細胞を標的粒子として、該標的粒子とサイズの異なる細胞を非標的粒子として含む体液(血液、リンパ液、唾液、尿、涙等を含む)から標的粒子に係る細胞を分離するものに適用可能である。また、標的粒子および非標的粒子としては、細胞にも限定されず、サイズの異なる2種以上の粒子が分散した液体中から標的粒子に係る粒子を分離するものに広く適用可能である。なお、ここでいう「分散」とは、粒子(細胞)が液体中に粒子単体で浮遊している場合のみならず、その一部または全部がクラスターとして浮遊している場合が含まれ、また、液体中に散らばって浮遊している場合のみならず、ある程度沈降している場合も含まれる。対象とする標的粒子および非標的粒子の粒径は、0.1~1000μm程度である。
さらに、本発明において、サンプル液は分離対象である標的粒子を含むものであればよく、該標的粒子とサイズの異なる非標的粒子は、必ずしも含んでいる必要はない。例えば、単一サイズの粒子または所定のサイズ以上の粒径を有する複数種の粒子を含むバッファ液の交換(粒子を含むバッファ液をサンプル液として、該サンプル液と成分の異なるまたは同一の他のバッファ液に該粒子を移す)を行う場合や粒子の濃度の濃縮を行う場合にも、本発明は適用可能である。ここでいう「濃縮」とは、粒子分離の一態様であり、標的粒子を含むサンプル液等の液体を、標的粒子の濃度が上昇した液体と該標的粒子がほぼ除去された液体とに分離して標的粒子の濃度が上昇した液体を回収することを意味する。また、「標的粒子」とは分離の対象の粒子という意味であり、何らかの利用(例えば検査)に供するために分離回収したい粒子という意味のみならず、不要なために分離除去したい(取り除きたい)粒子という意味も含まれる。また、「標的粒子がほぼ除去された液体」とは、標的粒子を実質的に含まない液体(標的粒子をごく僅かにしか含まない液体、または、理想的には標的粒子をまったく含まない液体)を意味しており、「標的粒子の濃度が上昇した液体」と比較して「標的粒子の濃度が低下した液体」と表現することができる。
<第1実施形態>
図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る基本的な概念について説明する。図1は、本発明の第1実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態における粒子分離装置10は、サンプル液収容部11、第1分離部20、標的粒子濃縮液収容部12、標的粒子除去液回収部13、バッファ液収容部14、第2分離部30、第2標的粒子除去液回収部15、バッファ液回収部16を概略備えて構成されている。
サンプル液収容部11は、分離対象である標的粒子を含むサンプル液Saが収容される容器であり、例えばシリンジのバレル等によって構成することができる。サンプル液Saは、分離対象である標的粒子を含むものであればよいが、血中循環腫瘍細胞を標的粒子とする場合には、例えば血中循環腫瘍細胞を含む血液に抗凝固剤として終濃度2mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加えたもの等を用いることができる。
サンプル液収容部11の収容空間は、気密状態とすることができるようになっている。さらに、図1に模式的に示されているように、サンプル液収容部11の収容空間に連通した不図示の圧力発生装置(空圧ポンプ)等により、サンプル液収容部11内の気圧(気圧A)を制御できるようになっている。一例として、サンプル液収容部11の上方に位置する開口部に、不図示の圧力発生装置に接続された送気チューブが貫通した蓋(バレル上部を密閉するアダプタ)を着脱可能に装着できるようにし、この蓋をサンプル液Saが収容されたサンプル液収容部11に装着することで、サンプル液収容部11の収容空間を気密状態とし、かつ、サンプル液収容部11内の気圧Aを制御することができる。
また、サンプル液収容部11には、収容されたサンプル液Saが排出可能となる位置(例えば、サンプル液収容部11の底面)に、サンプル液Saを排出するための排出口が設けられている。サンプル液収容部11の排出口は、第1管路41の一端に接続されている。
第1分離部20は、DLD法の基本的な構造に基づいて設計されており、複数の微細なピラー(マイクロピラー)が配設されたDLDマイクロ流路構造を有している(後述する図2を参照)。
第1分離部20は、液体導入口としてサンプル液導入口21を備え、液体排出口として標的粒子濃縮液排出口22および標的粒子除去液排出口23を備えている。サンプル液導入口21は第1管路41の他端に接続されており、サンプル液収容部11の排出口から排出されたサンプル液Saが、第1管路41を通じてサンプル液導入口21へ導入されるようになっている。また、標的粒子濃縮液排出口22は第2管路42の一端に接続されており、標的粒子除去液排出口23は第3管路43の一端に接続されている。
第1分離部20は、サンプル液導入口21から導入されたサンプル液Saを流通させて、標的粒子の濃度が上昇した液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離する。標的粒子の濃度が上昇した液は標的粒子濃縮液Sbとして標的粒子濃縮液排出口22から排出され、標的粒子がほぼ除去された液は標的粒子除去液Scとして標的粒子除去液排出口23から排出される。第1分離部20は標的粒子を濃縮する濃縮チップとしての機能を有し、サンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを排出することができる。なお、第1分離部20の詳細な構成および機能については、図3および図4を参照しながら後述する。
標的粒子濃縮液収容部12は、第1分離部20から排出された標的粒子濃縮液Sbを収容する容器であり、例えばシリンジのバレル等によって構成することができる。標的粒子濃縮液収容部12の収容空間には第2管路42の他端が連通されており、第1分離部20の標的粒子濃縮液排出口22から排出された標的粒子濃縮液Sbが、第2管路42を通じて標的粒子濃縮液収容部12内へ導入されるようになっている。
標的粒子濃縮液収容部12の収容空間は、気密状態とすることができるようになっている。さらに、図1に模式的に示されているように、標的粒子濃縮液収容部12の収容空間に連通した不図示の圧力発生装置(空圧ポンプ)等により、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧(気圧B)を制御できるようになっている。一例として、標的粒子濃縮液収容部12の上方に位置する開口部に、不図示の圧力発生装置に接続された送気チューブおよび第2管路42が貫通した蓋(バレル上部を密閉するアダプタ)を着脱可能に装着できるようにし、この蓋を標的粒子濃縮液収容部12に装着することで、標的粒子濃縮液収容部12の収容空間を気密状態とし、かつ、標的粒子濃縮液収容部12の気圧Bを制御することができる。
また、標的粒子濃縮液収容部12には、収容された標的粒子濃縮液Sbが排出可能となる位置(例えば、標的粒子濃縮液収容部12の底面)に、標的粒子濃縮液Sbを排出するための排出口が設けられている。標的粒子濃縮液収容部12の排出口は、第4管路44の一端に接続されている。
標的粒子除去液回収部13は、第1分離部20から排出された標的粒子除去液Scを収容する容器であり、例えばシリンジのバレル等によって構成することができる。標的粒子除去液回収部13の収容空間には第3管路43の他端が連通されており、第1分離部20の標的粒子除去液排出口23から排出された標的粒子除去液Scが、第3管路43を通じて標的粒子除去液回収部13内へ導入されるようになっている。
標的粒子除去液回収部13の収容空間は、気密状態とすることができるようになっている。さらに、図1に模式的に示されているように、標的粒子除去液回収部13の収容空間に連通した不図示の圧力発生装置(空圧ポンプ)等により、標的粒子除去液回収部13内の気圧(気圧B)を制御できるようになっている。一例として、標的粒子除去液回収部13の上方に位置する開口部に、不図示の圧力発生装置に接続された送気チューブおよび第3管路43が貫通した蓋(バレル上部を密閉するアダプタ)を着脱可能に装着できるようにし、この蓋を標的粒子除去液回収部13に装着することで、標的粒子除去液回収部13の収容空間を気密状態とし、かつ、標的粒子除去液回収部13内の気圧Bを制御することができる。
バッファ液収容部14は、バッファ液Baを収容する容器であり、例えばシリンジのバレル等によって構成することができる。バッファ液Baは、液体であれば特に限定されず、例えばPBSまたはグリセリン含有PBS等を用いることができる。なお、緩衝作用のある液体を用いることが多いため便宜上バッファ液と呼んでいるが、本明細書における「バッファ液」は緩衝作用のない液体も含む。
バッファ液収容部14の収容空間は、気密状態とすることができるようになっている。さらに、図1に模式的に示されているように、バッファ液収容部14の収容空間に連通した不図示の圧力発生装置(空圧ポンプ)等により、バッファ液収容部14内の気圧(気圧B)を制御できるようになっている。一例として、バッファ液収容部14の上方に位置する開口部に、不図示の圧力発生装置に接続された送気チューブが貫通した蓋(バレル上部を密閉するアダプタ)を着脱可能に装着できるようにし、この蓋をバッファ液Baが収容されたバッファ液収容部14に装着することで、バッファ液収容部14の収容空間を気密状態とし、かつ、バッファ液収容部14内の気圧Bを制御することができる。
また、バッファ液収容部14には、収容されたバッファ液Baが排出可能となる位置(例えば、バッファ液収容部14の底面)に、バッファ液Baを排出するための排出口が設けられている。バッファ液収容部14の排出口は、第5管路45の一端に接続されている。
第2分離部30は、DLD法の基本的な構造に基づいて設計されており、複数の微細なピラー(マイクロピラー)が配設されたDLDマイクロ流路構造を有している(後述する図2を参照)。
第2分離部30は、液体導入口として標的粒子濃縮液導入口31およびバッファ液導入口32を備え、液体排出口として第2標的粒子除去液排出口33およびバッファ液排出口34を備えている。標的粒子濃縮液導入口31は第4管路44の他端に接続されており、標的粒子濃縮液収容部12の排出口から排出された標的粒子濃縮液Sbが、第4管路44を通じて標的粒子濃縮液導入口31へ導入されるようになっている。バッファ液導入口32は第5管路45の他端に接続されており、バッファ液収容部14の排出口から排出されたバッファ液Baが、第5管路45を通じてバッファ液導入口32へ導入されるようになっている。また、第2標的粒子除去液排出口33は第6管路46の一端に接続されており、バッファ液排出口34は第7管路47の一端に接続されている。
第2分離部30は、標的粒子濃縮液導入口31から導入された標的粒子濃縮液Sbおよびバッファ液導入口32から導入されたバッファ液Baを並行して流通させて標的粒子濃縮液Sbに含まれる標的粒子をバッファ液Baへ移動させることで、標的粒子を含むバッファ液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離する。標的粒子がほぼ除去された液は第2標的粒子除去液Sdとして第2標的粒子除去液排出口33から排出され、標的粒子を含むバッファ液は回収バッファ液Bbとしてバッファ液排出口34から排出される。第2分離部30は標的粒子を回収バッファ液Bb内に取り出す分取チップとしての機能を有している。なお、第2分離部30の詳細な構成および機能については、図5を参照しながら後述する。
第2標的粒子除去液回収部15は、第2分離部30から排出された第2標的粒子除去液Sdを収容する容器である。第2標的粒子除去液回収部15の収容空間には第6管路46の他端が連通されており、第2分離部30の第2標的粒子除去液排出口33から排出された第2標的粒子除去液Sdが、第6管路46を通じて第2標的粒子除去液回収部15内へ導入されるようになっている。第2標的粒子除去液回収部15の収容空間は気密である必要はなく、第2標的粒子除去液回収部15内の気圧は大気圧と等しくてもよい。
バッファ液回収部16は、第2分離部30から排出された回収バッファ液Bbを収容する容器である。バッファ液回収部16の収容空間には第7管路47の他端が連通されており、第2分離部30のバッファ液排出口34から排出された回収バッファ液Bbが、第7管路47を通じてバッファ液回収部16内へ導入されるようになっている。バッファ液回収部16に収容された回収バッファ液Bbは、例えばサンプル液Sa中の標的粒子の数を測定するために使用され得る。バッファ液回収部16の収容空間は気密である必要はなく、バッファ液回収部16内の気圧は大気圧と等しくてもよい。
第1分離部20および第2分離部30の構成および機能について説明する。図2は、本発明に係るDLDマイクロ流路の粒子分離の原理を示す模式図である。
第1分離部20および第2分離部30は、DLD法の基本的な構造に基づいて設計されている。第1分離部20および第2分離部30はそれぞれ、例えば非特許文献1に記載されているようなDLD法の原理に基づいて複数の微細なピラー(マイクロピラー)が配設されたDLDマイクロ流路構造を有している。
DLD法によれば、図2に示すように、所定の規則に従って配設された複数のピラーPからなるピラー群に粒子の分散液を流した場合には、小さい粒子は流れの方向に沿って進み、大きい粒子はピラーPの存在によって流れの方向に沿う進行を妨げられる結果として、流れの方向に対して斜めに進む。ピラーPの間隔Gとシフト量dとで決まるしきい値を適宜設定することにより、しきい値未満の径の粒子としきい値以上の径の粒子とを分離することができる。
図3および図4を参照しながら、第1分離部20の構成および機能について説明する。図3は、本発明の第1実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)で用いられる第1分離部の構成の一例を示す図である。図4は、本発明の第1実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)で用いられる第1分離部内のDLD流路部の構成の一例を示す図である。
第1分離部20は、図3に示されているように、1つのサンプル液導入口21と、2つの排出口(標的粒子濃縮液排出口22および標的粒子除去液排出口23)と、DLD流路部24と、合流用流路25とを備えて構成されている。
DLD流路部24は、複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を有している。DLD流路部24の上流側には、サンプル液導入口21が配置されており、サンプル液導入口21から導入された標的粒子を含むサンプル液Saが、DLD流路部24内に形成されているDLDマイクロ流路を流通できるようになっている。
DLD流路部24内には、図4に示されているように、複数本(例えば10本)のDLDマイクロ流路(鏡像となるDLDマイクロ流路を含む)が並列に配置されている。各DLDマイクロ流路において、サンプル液Saに含まれる比較的大きい径の標的粒子(例えば12~15μm程度の血中循環腫瘍細胞)は、サンプル液Saの流れ方向に対して斜めに進み、サンプル液Saの流れ方向に対して垂直方向の一方側(鏡像では反対側)に集まるように移動する。その結果、各DLDマイクロ流路の下流側では所定の位置に標的粒子が集まり、サンプル液Saは、標的粒子の濃度が上昇した液と、標的粒子がほぼ除去された液とに分離される。
合流用流路25は標的粒子の濃度が上昇した液を合流させるための流路である。各DLDマイクロ流路におけるサンプル液の流通により得られる標的粒子の濃度が上昇した液は合流用流路25を通って合流して、2つの排出口のうちの一方の排出口(標的粒子濃縮液排出口22)から標的粒子濃縮液Sbとして排出される。
一方、各DLDマイクロ流路におけるサンプル液の流通により得られる標的粒子がほぼ除去された液はDLD流路部24内で合流して、2つの排出口のうちの他方の排出口(標的粒子除去液排出口23)から標的粒子除去液Scとして排出される。
このように、第1分離部20は標的粒子を濃縮する濃縮チップとしての機能を有し、サンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを排出することができる。例えば、第1分離部20は、標的粒子濃縮液Sbの量を、サンプル液導入口21から導入されたサンプル液Saの量の1/10程度まで減量させることができる。
第1分離部20はサンプル液Saのみが導入される構成であり、DLDマイクロ流路全体をサンプル液Saの流通(処理)に用いることができるため、2種の液体(サンプル液Saとバッファ液)が導入される構成と比べて、サンプル液Saの処理速度を速くすることができる。また、第1分離部20はサンプル液Saのみが導入される構成であり、サンプル液Saのみを各DLDマイクロ流路に分配すればよいため、2種の液体(サンプル液Saとバッファ液)が導入される構成と比べて、DLDマイクロ流路を並列化しても構造が複雑化しにくく、さらに、バッファ液の流量をサンプル液Saの流量に応じて調節する必要が無い。第1分離部20はDLDマイクロ流路を並列化することで大量のサンプル液Saを短時間かつ高速で処理することができ、第1分離部20における液体(サンプル液Sa)の処理速度(流速)は、第2分離部30に比べて大幅に速く、その処理速度は、例えば毎分2mLである。
図1に示す粒子分離装置10に組み込まれた第1分離部20は、サンプル液収容部11に収容されているサンプル液Saがサンプル液導入口21へ導入されると、標的粒子濃縮液排出口22から標的粒子濃縮液収容部12内へ標的粒子濃縮液Sbを排出し、標的粒子除去液排出口23から標的粒子除去液回収部13内へ標的粒子除去液Scを排出することができる。
図5を参照しながら、第2分離部30の構成および機能について説明する。図5は、本発明の第1実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)で用いられる第2分離部の構成の一例を示す図である。
第2分離部30は、図5に示されているように、標的粒子濃縮液導入口31と、バッファ液導入口32と、第2標的粒子除去液排出口33と、バッファ液排出口34と、DLD流路部35とを備えて構成されている。
DLD流路部35は、複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を有している。DLD流路部35の上流側には、標的粒子濃縮液導入口31およびバッファ液導入口32が配置されており、標的粒子濃縮液導入口31から導入された標的粒子を含む標的粒子濃縮液Sbと、バッファ液導入口32から導入されたバッファ液Baとが、DLD流路部35内に形成されているDLDマイクロ流路を流通できるようになっている。
DLD流路部35内には、DLDマイクロ流路が配置されている。DLDマイクロ流路において、標的粒子濃縮液Sbに含まれる比較的大きい径の標的粒子(例えば12~15μm程度の血中循環腫瘍細胞)は、標的粒子濃縮液Sbの流れ方向に対して斜めに進み、該標的粒子濃縮液Sbに接しながら層流として並行して流れるバッファ液Baに移動する。一方、DLDマイクロ流路において、標的粒子濃縮液Sbに含まれる比較的小さい径の非標的粒子(例えば8μm程度の血球)は、標的粒子濃縮液Sbの流れ方向に沿って進む。その結果、DLDマイクロ流路の下流側では、標的粒子濃縮液Sbからバッファ液Baに移動した標的粒子を含む回収バッファ液Bbと、標的粒子がほぼ除去された第2標的粒子除去液Sdとに分離される。
DLDマイクロ流路における液体流通により得られる標的粒子がほぼ除去された第2標的粒子除去液Sdは、第2標的粒子除去液排出口33から排出される。一方、DLDマイクロ流路における液体流通により得られる標的粒子を含む回収バッファ液Bbは、バッファ液排出口34から排出される。
なお、DLDマイクロ流路内において、標的粒子濃縮液Sbとバッファ液Baとは、互いに接しながら層流として並行して流れる際に互いに僅かに混入し合うため、第2標的粒子除去液排出口33から排出される第2標的粒子除去液Sdには回収バッファ液Bbの一部が含まれ、バッファ液排出口34から排出される回収バッファ液Bbには第2標的粒子除去液Sdの一部が含まれる場合がある。
このように、第2分離部30は、標的粒子濃縮液Sbに含まれる標的粒子をバッファ液Baに移動させることで、標的粒子を回収バッファ液Bb内に取り出す分取チップとしての機能を有している。第2分離部30における液体(標的粒子濃縮液Sb)の処理速度は、第1分離部20に比べて遅く、その処理速度は、例えば毎分0.1mLである。
図1に示す粒子分離装置10に組み込まれた第2分離部30は、標的粒子濃縮液収容部12に収容されている標的粒子濃縮液Sbが標的粒子濃縮液導入口31へ導入され、バッファ液収容部14に収容されているバッファ液Baがバッファ液導入口32へ導入されると、第2標的粒子除去液排出口33から第2標的粒子除去液回収部15内へ第2標的粒子除去液Sdを排出し、バッファ液排出口34からバッファ液回収部16内へ回収バッファ液Bbを排出することができる。
図1に示す粒子分離装置10の動作例について説明する。
初めに、すべてのDLD流路部とそれらの液体導入管路(第1管路41、第4管路44、第5管路45)等を液体(例えばバッファ液)で満たすことが好ましい。その後、サンプル液Saをサンプル液収容部11に、バッファ液Baをバッファ液収容部14に収容する。サンプル液収容部11内の気圧Aを標的粒子濃縮液収容部12内の気圧B(例えば大気圧)、標的粒子除去液回収部13内の気圧B(例えば大気圧)およびバッファ液収容部14内の気圧B(例えば大気圧)より高くすると、サンプル液収容部11に収容されているサンプル液Saが、第1管路41を介して第1分離部20内に圧送される。第1分離部20に導入されたサンプル液Saは、標的粒子の濃度が上昇した液(標的粒子濃縮液Sb)と標的粒子がほぼ除去された液(標的粒子除去液Sc)とに分離された後、標的粒子濃縮液Sbは標的粒子濃縮液収容部12内に排出され、標的粒子除去液Scは標的粒子除去液回収部13内に排出される。
標的粒子濃縮液収容部12に標的粒子濃縮液Sbが適量溜まった状態で、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧B、標的粒子除去液回収部13内の気圧Bおよびバッファ液収容部14内の気圧Bを、第2標的粒子除去液回収部15内の気圧(例えば大気圧)およびバッファ液回収部16内の気圧(例えば大気圧)よりも高くすることで、標的粒子濃縮液収容部12に収容されている標的粒子濃縮液Sbおよびバッファ液収容部14に収容されているバッファ液Baが、それぞれ第4管路44および第5管路45を介して第2分離部30内に圧送される。第2分離部30に導入された標的粒子濃縮液Sbおよびバッファ液Baは、標的粒子を含むバッファ液(回収バッファ液Bb)と標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sd)とに分離された後、第2標的粒子除去液Sdは第2標的粒子除去液回収部15内に排出され、回収バッファ液Bbはバッファ液回収部16内に排出される。
第2標的粒子除去液回収部15内の気圧およびバッファ液回収部16内の気圧を例えば大気圧とし、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧B、標的粒子除去液回収部13内の気圧Bおよびバッファ液収容部14内の気圧Bを大気圧より高くし(気圧B>大気圧)、さらに、サンプル液収容部11内の気圧Aを気圧Bより高くする(気圧A>気圧B)ことで、各収容部内の液体が粒子分離の作用を受ける方向へ連続して圧送され、連続した粒子分離が実現されるようになる。一例として、気圧Aおよび気圧Bは1.5~2.5気圧(ただし気圧A>気圧B)に設定される。
標的粒子濃縮液収容部12内の気圧および標的粒子除去液回収部13内の気圧を等圧(気圧B)とすることで、標的粒子濃縮液Sbおよび標的粒子除去液Scが偏りなく適切に第1分離部20から排出されるようになる。さらに、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧およびバッファ液収容部14内の気圧を等圧(気圧B)とすることで、バッファ液Baおよび標的粒子濃縮液Sbを同じ流量で適切に第2分離部30内に導入できるようになる。標的粒子濃縮液収容部12内の気圧、標的粒子除去液回収部13内の気圧およびバッファ液収容部14内の気圧は、標的粒子濃縮液収容部12、標的粒子除去液回収部13およびバッファ液収容部14を、同一の圧力発生装置に接続して等圧(気圧B)となるように構成されてもよい。また、標的粒子濃縮液収容部12、標的粒子除去液回収部13およびバッファ液収容部14を、気体が流通する管路で接続して等圧となるようにしたうえで、その管路に圧力発生装置を接続して気圧Bを制御するように構成されてもよい。さらに、標的粒子濃縮液収容部12、標的粒子除去液回収部13およびバッファ液収容部14を、気体が流通する管路で接続して等圧となるようにしたうえで、第1分離部20から標的粒子濃縮液Sbが標的粒子濃縮液収容部12へ、標的粒子除去液Scが標的粒子除去液回収部13へそれぞれ排出されることによって、間接的に気圧Bが高まるように構成されてもよい。
図1に示す粒子分離装置10の動作を中断または中止させる場合には、サンプル液収容部11内の気圧A、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧B、標的粒子除去液回収部13内の気圧B、バッファ液収容部14内の気圧Bをすべて大気圧とすればよい(気圧A=気圧B=大気圧)。気圧Aおよび気圧Bを大気圧にすると上流側と下流側との圧力差がなくなり、液体の圧送を停止させることができる。
図1に示す粒子分離装置10は、第1分離部20における処理および第2分離部30における処理の2段階の処理が行われるように構成されている。第1分離部20は、速い処理速度でサンプル液Saから標的粒子濃縮液Sbを得ることができる。標的粒子濃縮液Sbは、サンプル液Saと比べて大幅に減量され、標的粒子が濃縮された液体である。第1分離部20でサンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを得てから、得られた標的粒子濃縮液Sbを第2分離部30内に導入することで、第2分離部30における処理(標的粒子の分取)に要する時間が大幅に短縮され、大量のサンプル液を短時間かつ高速で処理できるようになる。
また、本実施形態においては、任意選択的に、標的粒子濃縮液収容部12に収容されている標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出する液面センサ51が設けられてもよい。液面センサ51は、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば標的粒子濃縮液収容部12の外部から光や超音波等を照射して、その透過光や反射波等から標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを測定することが可能な非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ51により検出される標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを監視することで、標的粒子濃縮液収容部12に収容されている標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを一定レベルに維持し、標的粒子濃縮液Sbを適量に保つことができるようになる。例えば、液面センサ51によって標的粒子濃縮液Sbの液面レベルが所定レベル(降下しきい値)より降下したことが検出された場合には、標的粒子濃縮液Sbの量を増加させるようにしてもよい。この場合、サンプル液収容部11内の気圧Aを高くする、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧Bを低くする、またはその両方を行って気圧Aと気圧Bとの差を大きくすることで、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを上昇させることができる。また、例えば、液面センサ51によって標的粒子濃縮液Sbの液面レベルが所定レベル(上昇しきい値)より上昇したことが検出された場合には、標的粒子濃縮液Sbの量を減少させるようにしてもよい。この場合、サンプル液収容部11内の気圧Aを低くする、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧Bを高くする、またはその両方を行って気圧Aと気圧Bとの差を小さくすることで、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを降下させることができる。
標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを上昇または降下させるために気圧Aおよび/または気圧Bを調整する方法は、特に限定されるものではない。一例として、圧力発生装置から供給される空気圧を手動で調整してもよく、液面センサ51により検出された液面レベルに応じて圧力発生装置から供給される空気圧を自動で調整できるようにしてもよい。また、好適には、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧Bを調整する場合には、標的粒子除去液回収部13内の気圧Bおよびバッファ液収容部14内の気圧Bも同時かつ同様に調整して、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧、標的粒子除去液回収部13内の気圧、バッファ液収容部14内の気圧が等圧(気圧B)となるようにしてもよい。
次に、図6を参照しながら、本実施形態の派生例について説明する。図6は、本発明の第1実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)の構成の派生例を示す図である。なお、図6の説明に際し、図1と同様の構成要素については説明を簡略化または省略することがある。
図6に示す粒子分離装置100は、図1に示す粒子分離装置10と同様、サンプル液収容部11、第1分離部20、標的粒子濃縮液収容部12、標的粒子除去液回収部13、バッファ液収容部14、第2分離部30、第2標的粒子除去液回収部15、バッファ液回収部16を概略備えて構成されている。
図6に示す粒子分離装置100は、さらに、液面センサ51~56、圧力発生装置71、72、バッファ液供給部73、チューブポンプ74、制御部75を備えている。
液面センサ51は、図1に示すものと同様であり、標的粒子濃縮液収容部12に収容されている標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ51は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出した標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。上述したように、液面センサ51は、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ52は、バッファ液収容部14に収容されているバッファ液Baの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ52は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出したバッファ液Baの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。液面センサ52は、バッファ液Baの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ53は、サンプル液収容部11に収容されているサンプル液Saの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ53は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出したサンプル液Saの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。液面センサ53は、サンプル液Saの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ54は、標的粒子除去液回収部13に収容されている標的粒子除去液Scの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ54は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出した標的粒子除去液Scの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。液面センサ54は、標的粒子除去液Scの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ55は、第2標的粒子除去液回収部15に収容されている第2標的粒子除去液Sdの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ55は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出した第2標的粒子除去液Sdの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。液面センサ55は、第2標的粒子除去液Sdの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
液面センサ56は、バッファ液回収部16に収容されている回収バッファ液Bbの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ56は、不図示の信号線を介して制御部75に接続されており、検出した回収バッファ液Bbの液面レベルを含む信号を制御部75へ出力できるように構成されている。液面センサ56は、回収バッファ液Bbの液面レベルを検出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば非接触式センサを用いることができ、複数設けられてもよい。
圧力発生装置71は、サンプル液収容部11内の気圧(気圧A)を所望の気圧に制御することが可能な装置である。また、圧力発生装置72は、標的粒子濃縮液収容部12内の気圧B、標的粒子除去液回収部13内の気圧Bおよびバッファ液収容部14内の気圧Bを等圧かつ所望の気圧となるよう制御することが可能な装置である。圧力発生装置71、72は、それぞれ信号線81、82を介して制御部75に接続されており、制御部75による動作制御が可能なように構成されている。圧力発生装置71、72は、圧縮空気を発生できるものであれば特に限定されず、可動部としてローターを備える電動ロータリーポンプ、可動部としてダイヤフラムを備える電動ダイヤフラムポンプ、可動部としてプランジャーを備える電動プランジャーポンプ、可動部としてピストンを備える電動ピストンポンプ等を用いることができる。
バッファ液供給部73は、バッファ液収容部14内にバッファ液Baを補充することが可能な装置である。バッファ液供給部73は、信号線83を介して制御部75に接続されており、制御部75による動作制御が可能なように構成されている。バッファ液供給部73は、バッファ液収容部14内にバッファ液Baを補充できるものであれば特に限定されない。
チューブポンプ74は、サンプル液収容部11内にサンプル液Saを補充することが可能な装置である。チューブポンプ74は、信号線84を介して制御部75に接続されており、制御部75による動作制御が可能なように構成されている。チューブポンプ74は、例えば、サンプル液Saが送通可能なチューブ、チューブを押し潰しながら回転するローラーを備えたローター等により構成されており、ローターの連続した回転動作によりチューブ内のサンプル液Saをサンプル液収容部11内に送り出すことができるようになっている。
制御部75は、液面センサ51~56、圧力発生装置71、72、バッファ液供給部73、チューブポンプ74と接続されており、液面センサ51~56から供給された各収容部または回収部内の液体の液面レベルに基づいて、圧力発生装置71、72、バッファ液供給部73、チューブポンプ74の動作制御を行って、各収容部または回収部内の液体の量を調整するように構成されている。制御部75は、例えばCPU等のプロセッサにより構成されており、各収容部または回収部内の液体の液面レベルに応じた圧力発生装置71、72、バッファ液供給部73、チューブポンプ74の動作制御手順が規定されたプログラム命令を実行することで、圧力発生装置71、72、バッファ液供給部73、チューブポンプ74が所望の動作を行うよう制御することができる。なお、図6に示す粒子分離装置100は、各液面センサ51~56や動作制御対象の各装置に対応した複数の制御部75を備えていてもよい。
図6に示す粒子分離装置100の動作例について説明する。
図6に示す粒子分離装置100において、サンプル液Saから粒子分離を行って、標的粒子を含む回収バッファ液Bbを得る過程は、図1に示す粒子分離装置10と同様である。すなわち、図6に示す粒子分離装置100では、図1に示す粒子分離装置10と同様に、サンプル液収容部11に収容されているサンプル液Saが第1分離部20へ導入されると、標的粒子濃縮液Sbおよび標的粒子除去液Scを排出し、さらに、標的粒子濃縮液Sbおよびバッファ液Baが第2分離部30へ導入されると、第2標的粒子除去液Sdおよび回収バッファ液Bbを排出することができる。
液面センサ51は、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを所定周期で検出し、検出された液面レベルを含む信号を制御部75に出力する。
液面センサ51によって標的粒子濃縮液Sbの液面レベルが所定レベル(降下しきい値)より降下したことが検出された場合、制御部75は、圧力発生装置71に対して気圧Aを所定値まで高くするよう指示を行うか、圧力発生装置72に対して気圧Bを所定値まで低くするよう指示を行うか、またはその両方を行うことで、気圧Aと気圧Bとの差を大きくする。その結果、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを上昇させることができる。
また、液面センサ51によって標的粒子濃縮液Sbの液面レベルが所定レベル(上昇しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、圧力発生装置71に対して気圧Aを所定値まで低くするよう指示するか、圧力発生装置72に対して気圧Bを所定値まで高くするよう指示するか、またはその両方を行うことで、気圧Aと気圧Bとの差を小さくする。その結果、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを降下させることができる。
このように、液面センサ51による液面レベルの検出結果に基づいて、制御部75が圧力発生装置71、72の動作制御を行うことで、オペレータが常時監視を行う必要をなくし、標的粒子濃縮液収容部12内の標的粒子濃縮液Sbを適量に保つことができるようになる。
液面センサ52は、バッファ液Baの液面レベルを所定周期で検出し、検出された液面レベルを含む信号を制御部75に出力する。
液面センサ52によってバッファ液Baの液面レベルが所定レベル(下限しきい値)より降下したことが検出された場合、制御部75は、バッファ液供給部73に対して、一定量のバッファ液Baの補充を行うよう指示する。その結果、バッファ液Baの液面レベルを上昇させることができる。なお、制御部75は、圧力発生装置71、72の動作制御を行って気圧Aおよび気圧Bを大気圧にして粒子分離装置100の動作を一時的に中断させたうえで、バッファ液供給部73に対してバッファ液Baの補充指示を行ってもよく、あるいは、警告音の出力や発光等によりオペレータの注意を促して、バッファ液Baの補充を行わせるようにしてもよい。
このように、液面センサ52による液面レベルの検出結果に基づいて、制御部75がバッファ液供給部73の動作制御を行うことで、オペレータが常時監視を行う必要をなくし、バッファ液収容部14内のバッファ液Baを適量に保つことができるようになる。
液面センサ53は、サンプル液Saの液面レベルを所定周期で検出し、検出された液面レベルを含む信号を制御部75に出力する。
液面センサ53によってサンプル液Saの液面レベルが所定レベル(下限しきい値)より降下したことが検出された場合、制御部75は、チューブポンプ74に対して、一定量のサンプル液Saの補充を行うよう指示する。その結果、サンプル液Saの液面レベルを上昇させることができる。なお、制御部75は、圧力発生装置71、72の動作制御を行って気圧Aおよび気圧Bを大気圧にして粒子分離装置100の動作を一時的に中断させたうえで、チューブポンプ74に対してサンプル液Saの補充指示を行ってもよく、あるいは、警告音の出力や発光等によりオペレータの注意を促して、サンプル液Saの補充を行わせるようにしてもよい。
このように、液面センサ53による液面レベルの検出結果に基づいて、制御部75がチューブポンプ74の動作制御を行うことで、オペレータが常時監視を行う必要をなくし、サンプル液収容部11内のサンプル液Saを適量に保つことができるようになる。
また、液面センサ54~56はそれぞれ、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sd、回収バッファ液Bbの液面レベルを所定周期で検出し、検出された液面レベルを含む信号を制御部75に出力する。
液面センサ54によって標的粒子除去液Scの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、標的粒子除去液回収部13内から標的粒子除去液Scを回収する。また、液面センサ55によって第2標的粒子除去液Sdの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、第2標的粒子除去液回収部15内から第2標的粒子除去液Sdを回収する。また、液面センサ56によって回収バッファ液Bbの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、バッファ液回収部16内から回収バッファ液Bbを回収する。なお、制御部75は、圧力発生装置71、72の動作制御を行って気圧Aおよび気圧Bを大気圧にして粒子分離装置100の動作を一時的に中断させたうえで、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sd、回収バッファ液Bbの回収指示を行ってもよく、あるいは、警告音の出力や発光等によりオペレータの注意を促して、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sd、回収バッファ液Bbの回収を行わせるようにしてもよい。
このように、液面センサ54~56により検出される液面レベルを監視することで、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sd、回収バッファ液Bbを適切なタイミングで回収することができるようになる。
図6に示す粒子分離装置100では、合計6箇所に液面センサ51~56を設けているが、すべての液面センサ51~56を設ける必要はなく、液面センサ51~56のうちのいずれか1つのみの液面センサ、または、液面センサ51~56から任意に選択された複数の液面センサを設けてもよい。例えば、液面センサ51~53を設ける一方、液面センサ54~56を設けないようにしてもよい。この場合、液面センサ52、53の検出結果に基づいてバッファ液Baまたはサンプル液Saを補充する際に、標的粒子除去液Scの回収、第2標的粒子除去液Sdの回収、回収バッファ液Bbの回収を同時に行うようにしてもよい。
図6に示す粒子分離装置100においても、図1に示す粒子分離装置10と同様、第1分離部20でサンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを得てから、得られた標的粒子濃縮液Sbを第2分離部30内に導入することで、第2分離部30における処理(標的粒子の分取)に要する時間が大幅に短縮され、大量のサンプル液を短時間かつ高速で処理できるようになる。さらに、各収容部または回収部内の液体の液面レベルを液面センサ51~56で検出し、各収容部または回収部内の液体が適量となるように制御することで、オペレータが常時監視を行うことなく大量のサンプル液の処理を自動化できるようになる。
<第2実施形態>
図7および図8を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る基本的な概念について説明する。図7は、本発明の第2実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)の構成の一例を示す図である。図8は、本発明の第2実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)で用いられる第1分離部の構成の一例を示す図である。なお、図7の説明に際し、図1と同様の構成要素については説明を簡略化または省略することがある。
図7に示すように、本実施形態における粒子分離装置200は、サンプル液収容部211、第1分離部20a、標的粒子濃縮液収容部212、標的粒子除去液回収部213、第2分離部20b、第2標的粒子濃縮液回収部214、第2標的粒子除去液回収部215を概略備えて構成されている。
サンプル液収容部211は、図1に示すサンプル液収容部11と同様の構成要素である。サンプル液収容部211には、分離対象である標的粒子を含むサンプル液Saが収容される。サンプル液Saを排出するための排出口は、第1管路241の一端に接続されている。
第1分離部20aは、液体導入口としてサンプル液導入口21aを備え、液体排出口として標的粒子濃縮液排出口22aおよび標的粒子除去液排出口23aを備えている。サンプル液導入口21aは第1管路241の他端に接続されており、サンプル液収容部211の排出口から排出されたサンプル液Saが、第1管路241を通じてサンプル液導入口21aへ導入されるようになっている。また、標的粒子濃縮液排出口22aは第2管路242の一端に接続されており、標的粒子除去液排出口23aは第3管路243の一端に接続されている。
第1分離部20aは、図8に示されているように、図3および図4に示す濃縮チップを複数設けてかつ並列化してある。図8に示す第1分離部20aは濃縮チップが3つであるが、これに限定されることなく、任意の数の濃縮チップを並列化することができる。サンプル液導入口21aから導入されたサンプル液Saはそれぞれの濃縮チップに分配され、それぞれの濃縮チップにおいて標的粒子の濃度が上昇した液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離され、それぞれの濃縮チップから排出される標的粒子の濃度が上昇した液を合流させた標的粒子濃縮液Sbが標的粒子濃縮液排出口22aから排出され、それぞれの濃縮チップから排出される標的粒子がほぼ除去された液を合流させた標的粒子除去液Scが標的粒子除去液排出口23aから排出される。
第1分離部20aはサンプル液Saのみが導入される構成であり、DLDマイクロ流路全体をサンプル液Saの流通(処理)に用いることができるため、2種の液体(サンプル液Saとバッファ液)が導入される構成と比べて、サンプル液Saの処理速度を速くすることができる。また、第1分離部20aはサンプル液Saのみが導入される構成であり、サンプル液Saのみを各チップに分配すればよいため、2種の液体(サンプル液Saとバッファ液)が導入される構成と比べて、チップを並列化しても構造が複雑化しにくく、さらに、バッファ液の流量をサンプル液Saの流量に応じて調節する必要が無い。第1分離部20aはチップを並列化することで大量のサンプル液Saを短時間かつ高速で処理することができる。
標的粒子濃縮液収容部212は、図1に示す標的粒子濃縮液収容部12と同様の構成要素である。標的粒子濃縮液収容部212の収容空間には、第2管路242の他端が連通されており、第1分離部20aから排出された標的粒子濃縮液Sbが収容される。標的粒子濃縮液Sbを排出するための排出口は、第4管路244の一端に接続されている。
標的粒子除去液回収部213は、図1に示す標的粒子除去液回収部13と同様の構成要素である。標的粒子除去液回収部213の収容空間には、第3管路243の他端が連通されており、第1分離部20aから排出された標的粒子除去液Scが収容される。
第2分離部20bは、液体導入口として標的粒子濃縮液導入口21bを備え、液体排出口として第2標的粒子濃縮液排出口22bおよび第2標的粒子除去液排出口23bを備えている。標的粒子濃縮液導入口21bは第4管路244の他端に接続されており、標的粒子濃縮液収容部212の排出口から排出された標的粒子濃縮液Sbが、第4管路244を通じて標的粒子濃縮液導入口21bへ導入されるようになっている。また、第2標的粒子濃縮液排出口22bは第5管路245の一端に接続されており、第2標的粒子除去液排出口23bは第6管路246の一端に接続されている。
第2分離部20bは、図1に示す第1分離部20と同様に、図3および図4に示す濃縮チップとしての機能を有している。第2分離部20bは、標的粒子濃縮液導入口21bから導入された標的粒子濃縮液Sbを、標的粒子の濃度が上昇した液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離する。標的粒子の濃度が上昇した液は第2標的粒子濃縮液Seとして第2標的粒子濃縮液排出口22bから排出され、標的粒子がほぼ除去された液は第2標的粒子除去液Sfとして第2標的粒子除去液排出口23bから排出される。第2標的粒子濃縮液Seは、標的粒子濃縮液Sbと比べて大幅に減量され、標的粒子がさらに濃縮された液体である。
第2標的粒子濃縮液回収部214は、第2分離部20bから排出された第2標的粒子濃縮液Seを収容する容器である。第2標的粒子濃縮液回収部214の収容空間には第5管路245の他端が連通されており、第2分離部20bの第2標的粒子濃縮液排出口22bから排出された第2標的粒子濃縮液Seが、第5管路245を通じて第2標的粒子濃縮液回収部214内へ導入されるようになっている。第2標的粒子濃縮液回収部214の収容空間は気密である必要はなく、第2標的粒子濃縮液回収部214内の気圧は大気圧と等しくてもよい。
第2標的粒子除去液回収部215は、第2分離部20bから排出された第2標的粒子除去液Sfを収容する容器である。第2標的粒子除去液回収部215の収容空間には第6管路246の他端が連通されており、第2分離部20bの第2標的粒子除去液排出口23bから排出された第2標的粒子除去液Sfが、第6管路246を通じて第2標的粒子除去液回収部215内へ導入されるようになっている。第2標的粒子除去液回収部215の収容空間は気密である必要はなく、第2標的粒子除去液回収部215内の気圧は大気圧と等しくてもよい。
図7に示す粒子分離装置200の動作例について説明する。
初めに、すべてのDLD流路部とそれらの液体導入管路(第1管路241、第4管路244)等を液体(例えばバッファ液)で満たすことが好ましい。その後、サンプル液Saをサンプル液収容部211に収容する。サンプル液収容部211内の気圧Aを標的粒子濃縮液収容部212内の気圧B(例えば大気圧)および標的粒子除去液回収部213内の気圧B(例えば大気圧)より高くすると、サンプル液収容部211に収容されているサンプル液Saが、第1管路241を介して第1分離部20a内に圧送される。第1分離部20aに導入されたサンプル液Saは、標的粒子の濃度が上昇した液(標的粒子濃縮液Sb)と標的粒子がほぼ除去された液(標的粒子除去液Sc)とに分離された後、標的粒子濃縮液Sbは標的粒子濃縮液収容部212内に排出され、標的粒子除去液Scは標的粒子除去液回収部213内に排出される。
標的粒子濃縮液収容部212に標的粒子濃縮液Sbが適量溜まった状態で、標的粒子濃縮液収容部212内の気圧Bおよび標的粒子除去液回収部213内の気圧Bを、第2標的粒子濃縮液回収部214内の気圧(例えば大気圧)および第2標的粒子除去液回収部215内の気圧(例えば大気圧)よりも高くすることで、標的粒子濃縮液収容部212に収容されている標的粒子濃縮液Sbが、第4管路244を介して第2分離部20b内に圧送される。第2分離部20bに導入された標的粒子濃縮液Sbは、標的粒子の濃度が上昇した液(第2標的粒子濃縮液Se)と標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sf)とに分離された後、第2標的粒子濃縮液Seは第2標的粒子濃縮液回収部214内に排出され、第2標的粒子除去液Sfは第2標的粒子除去液回収部215内に排出される。
第2標的粒子濃縮液回収部214内の気圧および第2標的粒子除去液回収部215内の気圧を例えば大気圧とし、標的粒子濃縮液収容部212内の気圧Bおよび標的粒子除去液回収部213内の気圧Bを大気圧より高くし(気圧B>大気圧)、さらに、サンプル液収容部211内の気圧Aを気圧Bより高くする(気圧A>気圧B)ことで、各収容部内の液体が粒子分離の作用を受ける方向へ連続して圧送され、連続した粒子分離が実現されるようになる。また、気圧Aおよび気圧Bを大気圧とすることで、粒子分離装置200の動作を中断または中止させることができる。
標的粒子濃縮液収容部212内の気圧および標的粒子除去液回収部213内の気圧を等圧(気圧B)とすることで、標的粒子濃縮液Sbおよび標的粒子除去液Scが偏りなく適切に第1分離部20aから排出されるようになる。標的粒子濃縮液収容部212内の気圧および標的粒子除去液回収部213内の気圧は、標的粒子濃縮液収容部212および標的粒子除去液回収部213を、同一の圧力発生装置に接続して等圧(気圧B)となるように構成されてもよい。また、標的粒子濃縮液収容部212および標的粒子除去液回収部213を、気体が流通する管路で接続して等圧となるようにしたうえで、その管路に圧力発生装置を接続して気圧Bを制御するように構成されてもよい。さらに、標的粒子濃縮液収容部212および標的粒子除去液回収部213を、気体が流通する管路で接続して等圧となるようにしたうえで、第1分離部20aから標的粒子濃縮液Sbが標的粒子濃縮液収容部212へ、標的粒子除去液Scが標的粒子除去液回収部213へそれぞれ排出されることによって、間接的に気圧Bが高まるように構成されてもよい。
図7に示す粒子分離装置200は、第1分離部20aにおける処理および第2分離部20bにおける処理の2段階の処理が行われるように構成されている。第1分離部20aは、速い処理速度でサンプル液Saから標的粒子濃縮液Sbを得ることができる。標的粒子濃縮液Sbは、サンプル液Saと比べて大幅に減量され、標的粒子が濃縮された液体である。第1分離部20aでサンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを得てから、得られた標的粒子濃縮液Sbを第2分離部20bに導入することで、第2分離部20bにおける処理(標的粒子の濃縮および標的粒子の除去)に要する時間が大幅に短縮され、大量のサンプル液を短時間かつ高速で処理できるようになる。
また、本実施形態においては、任意選択的に、標的粒子濃縮液収容部212に収容されている標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出する液面センサ51を設け、標的粒子濃縮液Sbの液面レベルの検出結果に基づいて、標的粒子濃縮液収容部212内の標的粒子濃縮液Sbを適量に保つようにしてもよい。
次に、図9を参照しながら、本実施形態の派生例について説明する。図9は、本発明の第2実施形態における粒子分離装置(CTC分離装置)の構成の派生例を示す図である。なお、図9の説明に際し、図6および図7と同様の構成要素については説明を簡略化または省略することがある。
図9に示す粒子分離装置300は、図7に示す粒子分離装置200と同様、サンプル液収容部211、第1分離部20a、標的粒子濃縮液収容部212、標的粒子除去液回収部213、第2分離部20b、第2標的粒子濃縮液回収部214、第2標的粒子除去液回収部215を概略備えて構成されている。
図9に示す粒子分離装置300は、さらに、図6に示す粒子分離装置100の構成の一部と同様、液面センサ51、53~56、圧力発生装置71、72、チューブポンプ74、制御部75を備えている。
液面センサ51は、図7に示すものと同様であり、標的粒子濃縮液収容部212に収容されている標的粒子濃縮液Sbの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ53は、サンプル液収容部211に収容されているサンプル液Saの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ54は、標的粒子除去液回収部213に収容されている標的粒子除去液Scの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ55は、第2標的粒子除去液回収部215に収容されている第2標的粒子除去液Sfの液面レベルを検出する機能を有している。液面センサ56は、第2標的粒子濃縮液回収部214に収容されている第2標的粒子濃縮液Seの液面レベルを検出する機能を有している。
圧力発生装置71は、サンプル液収容部211内の気圧(気圧A)を所望の気圧に制御することが可能な装置である。また、圧力発生装置72は、標的粒子濃縮液収容部212内の気圧Bおよび標的粒子除去液回収部213内の気圧Bを等圧かつ所望の気圧となるよう制御することが可能な装置である。
制御部75は、液面センサ51、53~56、圧力発生装置71、72、チューブポンプ74と接続されており、液面センサ51、53~56から供給された各収容部または回収部内の液体の液面レベルに基づいて、圧力発生装置71、72、チューブポンプ74の動作制御を行って、各収容部または回収部内の液体の量を調整するように構成されている。制御部75は、例えばCPU等のプロセッサにより構成されており、各収容部または回収部内の液体の液面レベルに応じた圧力発生装置71、72、チューブポンプ74の動作制御手順が規定されたプログラム命令を実行することで、圧力発生装置71、72、チューブポンプ74が所望の動作を行うよう制御することができる。
液面センサ51による液面レベルの検出結果に基づいて、制御部75が圧力発生装置71、72の動作制御を行うことで、オペレータが常時監視を行う必要をなくし、標的粒子濃縮液収容部212内の標的粒子濃縮液Sbを適量に保つことができるようになる。液面センサ53による液面レベルの検出結果に基づいて、制御部75がチューブポンプ74の動作制御を行うことで、オペレータが常時監視を行う必要をなくし、サンプル液収容部211内のサンプル液Saを適量に保つことができるようになる。
液面センサ54によって標的粒子除去液Scの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、標的粒子除去液回収部213内から標的粒子除去液Scを回収する。また、液面センサ55によって第2標的粒子除去液Sfの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、第2標的粒子除去液回収部215内から第2標的粒子除去液Sfを回収する。また、液面センサ56によって第2標的粒子濃縮液Seの液面レベルが所定レベル(上限しきい値)より上昇したことが検出された場合、制御部75は、不図示の回収機構を制御して、第2標的粒子濃縮液回収部214内から第2標的粒子濃縮液Seを回収する。なお、制御部75は、圧力発生装置71、72の動作制御を行って気圧Aおよび気圧Bを大気圧にして粒子分離装置300の動作を一時的に中断させたうえで、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sf、第2標的粒子濃縮液Seの回収指示を行ってもよく、あるいは、警告音の出力や発光等によりオペレータの注意を促して、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sf、第2標的粒子濃縮液Seの回収を行わせるようにしてもよい。液面センサ54~56により検出される液面レベルを監視することで、標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sf、第2標的粒子濃縮液Seを適切なタイミングで回収することができるようになる。
図9に示す粒子分離装置300では、合計5箇所に液面センサ51、53~56を設けているが、すべての液面センサ51、53~56を設ける必要はなく、液面センサ51、53~56のうちのいずれか1つのみの液面センサ、または、液面センサ51、53~56から任意に選択された複数の液面センサを設けてもよい。例えば、液面センサ51、53を設ける一方、液面センサ54~56を設けないようにしてもよい。この場合、液面センサ53の検出結果に基づいてサンプル液Saを補充する際に、標的粒子除去液Scの回収、第2標的粒子除去液Sfの回収、第2標的粒子濃縮液Seの回収を同時に行うようにしてもよい。
図9に示す粒子分離装置300においても、図7に示す粒子分離装置200と同様、第1分離部20aでサンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを得てから、得られた標的粒子濃縮液Sbを第2分離部20b内に導入することで、第2分離部20bにおける処理(標的粒子の濃縮および標的粒子の除去)に要する時間が大幅に短縮され、大量のサンプル液を短時間かつ高速で処理できるようになる。さらに、各収容部または回収部内の液体の液面レベルを液面センサ51、53~56で検出し、各収容部または回収部内の液体が適量となるように制御することで、オペレータが常時監視を行うことなく大量のサンプル液の処理を自動化できるようになる。
上述した第1実施形態における粒子分離装置10、100では、前段に濃縮チップ、後段に分取チップを配置して、標的粒子をバッファ液内に取り出すことができるように構成されている。これに対して、第2実施形態における粒子分離装置200、300では、前段に並列化した濃縮チップ、後段に濃縮チップを配置しており、標的粒子をバッファ液内に取り出すことはできないが、より短時間かつ高速でサンプル液Saから標的粒子を除去することができるように構成されている。
上述した粒子分離装置10、100では、第1分離部20に1つの濃縮チップを設けているが、粒子分離装置200、300の第1分離部20aと同様にチップを複数設けてかつ並列化してもよい。また、粒子分離装置200、300では、第1分離部20aに濃縮チップを複数設けてかつ並列化しているが、より多数のDLDマイクロ流路を並列化した大型の濃縮チップ1つとしてもよく、大型の濃縮チップを並列化してもよい。第1分離部20、20aはサンプル液Saのみが導入される構成であり、サンプル液Saのみを各DLDマイクロ流路または各チップに分配すればよいため、2種の液体(サンプル液Saとバッファ液)が導入される構成と比べて、DLDマイクロ流路またはチップを並列化しても構造が複雑化しにくく、さらに、バッファ液の流量をサンプル液Saの流量に応じて調節する必要が無い。第1分離部20、20aにおいて、濃縮チップ内のDLDマイクロ流路の並列化と濃縮チップの並列化とを適切に組み合わせることで、大量のサンプル液を短時間かつ高速で処理できるようになる。
また、上述した粒子分離装置10、100、200、300を、血液透析装置、アフェレシス装置、人工心肺装置等に利用される血液を体外へ取り出したのち再び体内へ戻す機構と組み合わせて、体外へ取り出した血液(サンプル液Sa)から標的粒子が除去された液体(標的粒子除去液Sc、第2標的粒子除去液Sd、Sf)を体内へ戻すことで、血中循環腫瘍細胞等のような特定サイズ以上の粒径を有する標的粒子を血液から分離(除去、分取、濃縮)できるようにしてもよい。
以下、本発明に係る粒子分離装置の作用について説明する。
本発明に係る粒子分離装置10、100、200、300は、標的粒子を含むサンプル液Saを流通させる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路を備える第1分離部20、20aと、第1分離部20、20aに接続されており、第1分離部20、20aから排出された標的粒子濃縮液Sbを流通させる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路を備える第2分離部30、20bとを有している。第1分離部20、20aは、サンプル液Saが導入されるサンプル液導入口21、21aと、DLDマイクロ流路構造を備え、サンプル液導入口21、21aから導入されたサンプル液Saを流通させて標的粒子の濃度が上昇した液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離するDLD流路部24と、DLD流路部24で分離された標的粒子の濃度が上昇した液(標的粒子濃縮液Sb)を排出する標的粒子濃縮液排出口22、22aと、DLD流路部24で分離された標的粒子がほぼ除去された液(標的粒子除去液Sc)を排出する標的粒子除去液排出口23、23aとを備えている。
上記の構成によれば、第1分離部20、20aがサンプル液Saを標的粒子の濃度が上昇した液(標的粒子濃縮液Sb)と標的粒子がほぼ除去された液(標的粒子除去液Sc)とに分離して、サンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを排出し、第2分離部30、20bが、この標的粒子濃縮液Sbに係る処理を行うことで、第2分離部30、20bによる処理時間が大幅に短縮され、大量のサンプル液Saを短時間かつ高速で処理できるようになる。
第1実施形態に係る粒子分離装置10、100では、第2分離部30が、第1分離部20の標的粒子濃縮液排出口22から排出される標的粒子濃縮液Sbが導入される標的粒子濃縮液導入口31と、バッファ液Baが導入されるバッファ液導入口32と、DLDマイクロ流路構造を備え、標的粒子濃縮液導入口31から導入された標的粒子濃縮液Sbとバッファ液導入口32から導入されたバッファ液Baとが接するように並行して流通させて標的粒子を含むバッファ液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離するDLD流路部35と、DLD流路部35で分離された標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sd)を排出する第2標的粒子除去液排出口33と、DLD流路部35で分離された標的粒子を含むバッファ液(回収バッファ液Bb)を排出するバッファ液排出口34とを備えていてもよい。
上記の構成によれば、第2分離部30が、サンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbに含まれる標的粒子をバッファ液Baに移動させて、標的粒子を含むバッファ液(回収バッファ液Bb)と標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sd)とに分離できるようになる。
第2実施形態に係る粒子分離装置200、300では、第2分離部20bが、第1分離部20aの標的粒子濃縮液排出口22aから排出される標的粒子濃縮液Sbが導入される標的粒子濃縮液導入口21bと、DLDマイクロ流路構造を備え、標的粒子濃縮液導入口21bから導入された標的粒子濃縮液Sbを流通させて標的粒子の濃度が上昇した液と標的粒子がほぼ除去された液とに分離するDLD流路部24と、DLD流路部24で分離された標的粒子の濃度が上昇した液(第2標的粒子濃縮液Se)を排出する第2標的粒子濃縮液排出口22bと、DLD流路部24で分離された標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sf)を排出する第2標的粒子除去液排出口23bとを備えていてもよい。
上記の構成によれば、第2分離部20bが、サンプル液Saと比べて大幅に減量された標的粒子濃縮液Sbを、標的粒子の濃度がさらに上昇した液(第2標的粒子濃縮液Se)と標的粒子がほぼ除去された液(第2標的粒子除去液Sf)とに分離できるようになる。
以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。