JP2022096064A - セメントクリンカ製造システム - Google Patents

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淳一 寺崎
Junichi Terasaki
知久 吉川
Tomohisa Yoshikawa
貴之 木村
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Abstract

【課題】排ガスの一部について炭酸ガス濃度を大きくして、高濃度の炭酸ガスを含むガスを得ることができるセメントクリンカ製造システムを提供する。【解決手段】セメントクリンカ原料を予熱するためのサイクロン式予熱装置2と、予熱されたセメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルン3と、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉4と、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラー5と、ロータリーキルン3で生じた排ガスを排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eとを含み、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、支燃性ガスをか焼炉に導くための支燃性ガス供給路8と、か焼炉4で生じた排ガスを排出するためのか焼炉排ガス排出路9(ただし、キルン排ガス排出路6と異なるものに限る。)とを含むセメントクリンカ製造システム1。【選択図】図1

Description

本発明は、セメントクリンカ製造システムに関する。
近年、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。一方、セメント産業は、二酸化炭素の排出量の大きい産業の一つである。
セメントを製造する際に排出される炭酸ガス(気体の二酸化炭素)の全量のうち、セメントの原料として用いられる石灰石の脱炭酸によって排出される炭酸ガスの割合は約60%、製造の際に用いられる燃料の燃焼によって排出される炭酸ガスの割合は約40%である。
燃料の燃焼によって発生する炭酸ガスの低減方法としては、エネルギー効率を改善する方法や、燃料としてバイオマス燃料を使用する方法等が挙げられる。例えば、燃料の燃焼によって発生する炭酸ガス量を低減することができるセメント焼成装置として、特許文献1には、主燃料としての可燃性ガスと、補助燃料としての可燃性廃棄物とをセメントキルン内に吹き込む主バーナーを備えることを特徴とするセメント焼成装置が記載されている。
一方、セメントの原料として、炭酸ガスの発生量が多い石灰石に代わる、炭酸ガス発生量の少ないカルシウム含有原料を用いることは難しいため、石灰石の脱炭酸によって発生する炭酸ガス量を低減することは困難である。
二酸化炭素の排出量を低減する方法として、発生した炭酸ガスを、分離して、回収した後、貯留、隔離、又は有効利用する方法が知られている。
発生した炭酸ガスを分離、回収する方法として、例えば、特許文献2には、製鉄所で発生する副生ガスから化学吸収法にて二酸化炭素を分離回収する方法であって、当該ガスから化学吸収液で二酸化炭素を吸収後、化学吸収液を加熱し二酸化炭素を分離させるプロセスに、製鉄所で発生する500℃以下の低品位排熱を利用または活用することを特徴とする二酸化炭素の分離回収方法が記載されている。
特開2018-52746号公報 特開2004-292298号公報
セメントクリンカを製造する際に発生する排ガスには、炭酸ガスの他に窒素、酸素等が多く含まれているため、上記排ガスから炭酸ガスを分離、回収するには、アミン化合物による化学吸収法等を用いる必要がある。
上記排ガスに含まれている炭酸ガスの濃度を高くすることができれば、炭酸ガスの分離、回収が容易となる。また、上記排ガスに含まれている窒素等の量を少なくすることにより、相対的に、発生する排ガスの体積を小さくすることができ、炭酸ガスを分離、回収するための設備を小さくすることができる。
本発明の目的は、セメントクリンカを製造する際に、排ガスの一部について炭酸ガス濃度を高くして、二酸化炭素の固定化等に利用しやすい高濃度の炭酸ガスを含むガスを得るためのセメントクリンカ製造システムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントクリンカ原料を予熱するためのサイクロン式予熱装置と、予熱されたセメントクリンカ原料を焼成してセメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、ロータリーキルンの前流側に配設された、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、ロータリーキルンの後流側に配設された、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、ロータリーキルンで生じた排ガスを、サイクロン式予熱装置を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路とを含み、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、支燃性ガスをか焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、か焼炉で生じた排ガスを排出するためのか焼炉排ガス排出路(ただし、キルン排ガス排出路と異なるものに限る。)とを含むセメントクリンカ製造システムによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1] セメントクリンカ原料を予熱するためのサイクロン式予熱装置と、上記サイクロン式予熱装置で予熱された上記セメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、上記サイクロン式予熱装置と共に上記ロータリーキルンの前流側に配設された、上記セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、上記ロータリーキルンの後流側に配設された、上記セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、上記ロータリーキルンで生じた排ガスを、上記サイクロン式予熱装置を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路とを含むセメントクリンカ製造システムであって、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、上記支燃性ガス供給装置から上記支燃性ガスを上記か焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、上記か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを排出するためのか焼炉排ガス排出路(ただし、上記キルン排ガス排出路と異なるものに限る。)とを含むことを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
[2] 上記ロータリーキルンで生じた排ガスの一部を、上記サイクロン式予熱装置を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、上記固体分が除かれた上記排ガスを排出すると共に、上記固体分を粗粉と微粉に分級して、上記粗粉を上記セメントクリンカ原料の一部として用い、上記微粉を回収するための塩素バイパス装置を含む前記[1]に記載のセメントクリンカ製造システム。
[3] 上記か焼炉排ガス排出路の中を流通する上記排ガスの一部を、上記支燃性ガス供給路の中を流通する上記支燃性ガスに合流させるための合流用流通路を含む前記[1]又は[2]に記載のセメントクリンカ製造システム。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記か焼炉で生じた上記排ガスの炭酸ガス濃度が、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、80体積%以上になるように、上記支燃性ガスの酸素濃度を調整することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
[5] 前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記か焼炉で生じた上記排ガスを回収して、上記排ガス中の炭酸ガスを利用することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
[6] 水素ガスと、回収された上記排ガス中の炭酸ガスから、触媒を用いてメタンを生成し、生成されたメタンを、上記ロータリーキルン及び上記か焼炉の少なくともいずれか一方の燃料として利用する前記[5]に記載のセメントクリンカ製造方法。
[7] 回収された上記排ガスとカルシウム含有廃棄物を接触させて、上記排ガス中に含まれる炭酸ガスを上記カルシウム含有廃棄物に吸収させた後、炭酸ガスを吸収した上記カルシウム含有廃棄物をセメントクリンカ原料として使用する前記[5]又[6]に記載のセメントクリンカ製造方法。
本発明のセメントクリンカ製造システムによれば、セメントクリンカを製造する際に、排ガスの一部について炭酸ガス濃度を高くして、二酸化炭素の固定化等に利用しやすい高濃度の炭酸ガスを含むガスを得ることができる。
本発明のセメントクリンカ製造システムの一例を模式的に示す図である。
以下、図1を参照にしながら、本発明のセメントクリンカ製造システムについて詳しく説明する。
図1は、本発明のセメントクリンカ製造システムの実施形態の一例を模式的に表したものである。
セメントクリンカ製造システム1は、セメントクリンカ原料を予熱するためのサイクロン式予熱装置2と、サイクロン式予熱装置2で予熱されたセメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルン3と、サイクロン式予熱装置2と共にロータリーキルン3の前流側に配設された、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉4と、ロータリーキルン3の後流側に配設された、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラー5と、ロータリーキルン3で生じた排ガス(以下、「キルン排ガス」と略すことがある。)を、サイクロン式予熱装置2を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eとを含むセメントクリンカ製造システムであって、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置7と、支燃性ガス供給装置から支燃性ガスをか焼炉4に導くための支燃性ガス供給路8と、か焼炉4で生じた排ガス(以下、「か焼炉排ガス」と略すことがある。)を排出するためのか焼炉排ガス排出路9(ただし、キルン排ガス排出路6と異なるものに限る。)とを含むものである。
サイクロン式予熱装置2は、複数のサイクロン式熱交換器2a~2dからなるものである。複数のサイクロン式熱交換器2a~2dは、セメントクリンカ原料を移動するための流路、及び、ロータリーキルン3で生じた排ガスを、複数のサイクロン式熱交換器2a~2dを経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eによって連結されている。サイクロン式熱交換器の数は、特に限定されないが、通常、4~5個である。また、複数のサイクロン式熱交換器は、通常、鉛直方向に配設されている。
セメントクリンカ原料は、サイクロン式予熱装置2の最前流に配設されたサイクロン式熱交換器2aに投入され、サイクロン式熱交換器2a内において、キルン排ガスと熱交換しつつ遠心分離されて、サイクロン式熱交換器2aの下部から、後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2bに投入された後、再び、上記排ガスと熱交換しつつ遠心分離されて、さらに後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2cに投入される。このように、セメントクリンカ原料は、上記排ガスで予熱(加熱)されながら、順次後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2b~2cに移動した後、か焼炉4に投入される。
サイクロン式予熱装置2内において、セメントクリンカ原料は、好ましくは400~750℃、より好ましくは500~725℃、特に好ましくは600~700℃に予熱される。上記温度が400℃以上であれば、か焼炉で脱炭酸を促進するために用いられる燃料の投入量を低減することができる。上記温度が750℃以下であれば、サイクロン式予熱装置2内において、セメントクリンカ原料の脱炭酸が促進されにくくなるため、キルン排ガス中の炭酸ガス濃度が大きくなることを防ぐことができる。
セメントクリンカ原料としては、特に限定されず、セメントクリンカの原料として一般的なものを用いることができる。具体的には、石灰石、土壌、粘土、珪石、鉄原料等の天然原料や、石炭灰、鉄鋼スラグ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰、生コンスラッジ、廃コンクリート微粉等の廃棄物又は副産物等が挙げられる。また、セメントクリンカ原料として、炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物(後述)を用いてもよい。
セメントクリンカ原料は、原料ミルを用いて、各種原料を適切な割合で粉砕、混合した後、サイクロン式予熱装置2に投入される。セメントクリンカ原料の粒度は、セメントクリンカの製造をより容易にする観点から、好ましくは100μm以下である。
また、セメントクリンカ原料の一部(例えば、有機物を多く含む汚染土壌)を、サイクロン式予熱装置2に投入せずに、直接、ロータリーキルン3に投入してもよい。
か焼炉4は、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進する目的で、サイクロン式予熱装置2と共にロータリーキルン3の前流側に配設される。
図1において、か焼炉4は、サイクロン式予熱装置2の後流側から二番目に配設されたサイクロン式熱交換器2cと最後流に配設されたサイクロン式熱交換器2dの間に配設され、サイクロン式熱交換器2a~2cを経由することで予熱されたセメントクリンカ原料は、サイクロン式熱交換器2cからか焼炉4に投入される。か焼炉4に投入されたセメントクリンカ原料は、か焼炉4内において加熱されて、セメントクリンカ原料の脱炭酸が促進される。
ここで、セメントクリンカ原料の脱炭酸とは、セメントクリンカ原料に含まれている石灰石の主成分である炭酸カルシウム(CaCO)を、加熱によって生石灰(CaO)と炭酸ガス(CO)に分解することである。
か焼炉4内で、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを用いてセメントクリンカ原料を加熱する場合、二酸化炭素分圧が高くなる。このため、脱炭酸を促進するために必要な温度が高くなるため、空気を支燃性ガスとして用いる場合よりも、温度を高くする必要がある。このため、セメントクリンカ原料を加熱する温度は、好ましくは850~1,050℃、より好ましくは880~1,000℃、特に好ましくは900~980℃である。上記温度が850℃以上であれば、二酸化炭素分圧が高い雰囲気下においてもセメントクリンカ原料の脱炭酸をより促進することができる。上記温度が1,050℃以下であれば、原料の焼結などにより、閉塞することを防ぐことができる。
セメントクリンカ原料の脱炭酸は、か焼炉4内において、燃料を、支燃性ガスを用いて燃焼して、セメントクリンカ原料を直接的に加熱することによって促進される。
か焼炉において用いられる燃料としては、特に限定されるものではなく、例えば、石炭、重油、天然ガス等の化石燃料;やしがら等のバイオマス;バイオマスをガス化してなるバイオガス;炭酸ガスを原料とするメタネーションによって生成されたメタン等が挙げられる。
バイオマス等のカーボンフリーの燃料を使用すれば、セメントクリンカ製造における二酸化炭素の排出量を、実質的により低減することができる。
か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、空気に比べて酸素濃度を高めたものである。このような支燃性ガスを用いることで、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより高くすることができる。また、上記支燃性ガスを用いることで、燃料の燃焼性がより向上するため、細かく粉砕することが困難であるため従来は使用することが難しかった燃料であっても、使用することができる。
上記支燃性ガスの酸素濃度は、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより高くする観点からは、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくは21体積%以上、より好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上である。また、上記酸素濃度は、燃焼を制御しやすくする観点からは、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、特に好ましくは70体積%以下である。
か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、支燃性ガス供給装置7から供給され、支燃性ガス供給路8によって、か焼炉4に導かれる。
支燃性ガス供給路8は、クリンカクーラー5内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温された空気によって、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスが、間接的に加熱されて昇温するように、配設されていてもよい。また、セメントクーラーの後流側(クリンカクーラーの出口側)の一部分に、支燃性ガス供給路8を通過させることによって、セメントクリンカの熱によって、支燃性ガスを昇温させてもよい。
支燃性ガスを昇温させることによって、か焼炉4で用いられる燃料の投入量を低減することができる。
支燃性ガス供給装置7としては、例えば、酸素タンク、空気から酸素を分離する空気分離装置(Air Separation Unit:ASU)、水の電気分解により酸素を生成させる水電気分解装置などが挙げられる。
空気から酸素を分離する方法としては、深冷分離、吸着分離、及び膜分離等が挙げられる。中でも、多量の酸素を得ることができる観点から、深冷分離が好ましい。
支燃性ガス供給装置7から供給される支燃性ガスは、空気に比べて酸素濃度を高めたものである。上記支燃性ガスは、そのままか焼炉4内で用いてもよいが、か焼炉4内で用いられる前に、その組成を適宜調整してもよい。
例えば、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスの酸素濃度が過度に大きくなって、燃焼の制御が困難となることを防ぎ、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより大きくし、かつ、か焼炉排ガスに残存する酸素の量を小さくする観点から、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、炭酸ガスを混合して、得られた混合ガスを、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスとしてもよい。
さらに、二酸化炭素分圧を下げることにより、脱炭酸を促進するために必要な温度を下げる目的で、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、水蒸気を混合して、得られた混合ガスを、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスとしてもよい。
上記混合ガス(支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、炭酸ガス及び水蒸気の少なくともいずれか一方を混合したもの)の炭酸ガス濃度は、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくはで10~79体積%、より好ましくは20~75体積%、さらに好ましくは30~70体積%である。
さらに、か焼炉4で生じる排ガスの体積をより小さくし、かつ、上記排ガスの炭酸ガス濃度をより大きくする観点から、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体(例えば、窒素)を含まないことが好ましい。上記支燃性ガスの、酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体の濃度は、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、特に好ましくは2体積%以下である。
支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと炭酸ガスを混合する方法の例としては、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、か焼炉排ガスを混合する方法が挙げられる。か焼炉4から排出されたか焼炉排ガスの温度は800℃程度の高温であるため、上記排ガスを用いることで、支燃性ガスを昇温させることができる。
か焼炉排ガスを混合する場合、か焼炉4で生じた排ガスを排出するためのか焼炉排ガス排出路9(ただし、キルン排ガス排出路6a~6eと異なるものに限る。)の中を流通する上記排ガスの一部を、支燃性ガス供給路8の中を流通する支燃性ガス(支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガス)に合流させるための合流用流通路11を配設し、支燃性ガス供給路8の中を流通する支燃性ガスと上記排ガスを混合させればよい。
また、支燃性ガス供給路8が、クリンカクーラー5内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温された空気によって、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスが間接的に加熱されて昇温するように、配設されている場合、上記合流用流通路11は、上記空気を用いて上記支燃性ガスが、間接的に加熱された後の地点において、上記支燃性ガスと上記排ガスの一部が合流するように配設することが好ましい。
か焼炉排ガスは、か焼炉排ガス排出路9から排出される。か焼炉排ガスは、サイクロン、バグフィルター、又は電気集塵機等を用いて除塵された後、さらに水分を除去され、次いで、炭酸ガスを分離、回収される。
なお、か焼炉排ガス排出路9は、ロータリーキルン3で生じた排ガスを排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eとは異なるものである。か焼炉排ガス排出路9とキルン排ガス排出路6a~6eを完全に分けることによって、炭酸ガス濃度の大きいか焼炉排ガスのみを回収することができる。
か焼炉排ガスは、炭酸ガス濃度が高いものであるため、か焼炉排ガスから炭酸ガスを分離、回収することが容易である。か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度は、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、好ましくは80体積%以上、より好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。
上記炭酸ガス濃度は、支燃性ガスの酸素濃度を調整することによって得ることができる。具体的には、支燃性ガスの酸素濃度をより高くすることや、支燃性ガスの酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体(例えば、窒素)の濃度をより低くすることによって、上記炭酸ガス濃度をより高くすることができる。
また、か焼炉排ガスは高温であるため、該排ガスを用いて水を加熱することで水蒸気を発生させ、該水蒸気と水蒸気タービンを用いて発電を行ってもよい。
か焼炉排ガスから酸素、窒素、及び水蒸気等を除去することで、炭酸ガスを精製してもよい。か焼炉排ガス中の炭酸ガスの濃度が高い場合、アミン等の化学吸収剤を用いて炭酸ガスを分離回収することなく、直接圧縮・冷却して液化することにより炭酸ガスを精製することができる。
セメントクリンカ原料は、か焼炉4において脱炭酸が促進された後、加熱後の高温を維持したまま、サイクロン式予熱装置2の最後流に配設されたサイクロン式熱交換器2dに投入され、次いで、ロータリーキルン3に投入される。
なお、か焼炉を、サイクロン式予熱装置とロータリーキルンの間に配設し、セメントクリンカ原料を、か焼炉において脱炭酸が促進された後に、直接ロータリーキルンに投入してもよい(図示せず。)。
ロータリーキルン3において、セメントクリンカ原料を焼成することで、セメントクリンカを得ることができる。セメントクリンカ原料の焼成温度は、セメントクリンカ製造における一般的な温度でよく、通常、1,400℃以上である。
ロータリーキルン3において、セメントクリンカの原料の焼成に用いられる燃料としては、か焼炉4において用いられる燃料と同様のものを使用することができる。また、有機成分を多く含む汚染土壌や廃タイヤ等の破砕しにくい燃料は、ロータリーキルン3の原料投入口から直接投入してもよい。
また、ロータリーキルン3で生じた排ガスは、該排ガスを、サイクロン式予熱装置2を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eの中を流通した後、サイクロン式予熱装置2の上部から排出され、サイクロン、バグフィルター、又は電気集塵機等を用いて除塵された後、煙突から外部へ排出される。
二酸化炭素の排出量をより低減する観点から、キルン排ガスから炭酸ガスを分離、回収してもよい。
キルン排ガスから炭酸ガスを分離、回収する方法の例としては、モノエタノールアミン等を二酸化炭素吸収剤として用いた化学吸収法、生石灰を二酸化炭素吸収剤として用いたカルシウムルーピング、固体吸着法、膜分離法等が挙げられる。
カルシウムルーピングで用いられる生石灰は、石灰石の脱炭酸により得られたものであってもよい。繰り返し使用した石灰石は、最終的にセメントクリンカ原料として用いることができる。
また、キルン排ガスの一部を、サイクロン式予熱装置2を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、固体分が除かれた排ガスを排出すると共に、固体分を粗粉と微粉に分級して、粗粉をセメントクリンカ原料の一部として用い、微粉を回収するための塩素バイパス装置10を配設してもよい。
なお、「粗粉」は、セメントクリンカ原料成分が多く、かつ、塩素が少ない傾向があり、「微粉」は、塩素が多くなる傾向がある。
塩基バイパス装置10は、通常、サイクロン式予熱装置2とロータリーキルン3の接続部分に配設される。塩素バイパス装置10を配設することによって、都市ゴミ焼却灰等の塩素を含有する廃棄物を、セメントクリンカ原料やロータリーキルンの燃料としてより大量に使用することができる。
塩素バイパス装置10から排出されるキルン排ガスは、通常、キルン排ガス排出路6aに戻される。
ロータリーキルン3で得られたセメントクリンカは、ロータリーキルンの後流側に配設された、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラー5に投入されて、冷却される。
か焼炉4及びロータリーキルン3における加熱をより効率的に行う観点から、セメントクリンカの冷却に用いられる空気を、クリンカクーラー5の前流側と後流側に分け、セメントクリンカを冷却した後の後流側の空気を、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスの間接加熱に用いてもよい。
また、前流側と後流側の冷却に用いられるガスを異なるものにしてもよい。具体的には、クリンカクーラー5の前流側を冷却するガスとして空気を使用し、後流側を冷却するガスとして、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスを使用してもよい。
前流側を冷却するガスは、高温のセメントクリンカと熱交換された後、ロータリーキルン3内において燃料を燃焼するための支燃性のガスとして使用される。なお、前流側を冷却するガスは、クリンカクーラー5の入口側で熱交換されるため、後流側を冷却するガスと比較して、熱交換後により高温となる。
また、ロータリーキルン内において燃料を燃焼する際に用いられる空気及び支燃性ガスの加熱、並びに、ロータリーキルン及びか焼炉の加熱の補助として、電気エネルギーを用いて加熱してもよい。電気エネルギーを用いた加熱方法としては、プラズマ加熱、抵抗加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。電気エネルギーとして、再生可能なエネルギーを用いれば、二酸化炭素の排出量をさらに低減することができる。
上述したセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカの製造方法で、か焼炉で4生じた炭酸ガス含有排ガスを回収して、上記排ガス中の炭酸ガスを利用してもよい。
炭酸ガスの利用の一例としては、例えば、メタネーションが挙げられる。なお、メタネーションとは、水素と二酸化炭素を反応させてメタンと水を生成することである。
具体的には、水素ガスと、上記排ガスに含まれる炭酸ガスから、触媒を用いてメタンを生成する方法が挙げられる。
水素ガスは、水を電気分解すること等によって得ることができる。水を電気分解する際の電気エネルギーとして、水力、風力、地熱、又は太陽光等の再生可能なエネルギー由来のものを用いれば、二酸化炭素の排出量をさらに削減することができる。この際、酸素も生成されるが、該酸素は、上述した支燃性ガスに含まれる酸素として使用してもよい。
上記触媒の例としては、Rh/Mn系、Rh系、Ni系、Pd系及びPt系等の触媒が挙げられる。また、上記触媒を担持するための担体を用いてもよい。該担体の例としては、CeO、ZrO、Y、Al、MgO、TiO等が挙げられる。これらは適宜選択して用いればよい。
生成されたメタンは、二酸化炭素の排出量をより小さくする観点から、ロータリーキルン3及びか焼炉4の少なくともいずれか一方の燃料として利用することができる。また、生成されたメタンは、別途、発電用の燃料として用いてもよい。
また、炭酸ガスの利用の他の例としては、カルシウム含有廃棄物の炭酸化が挙げられる。
具体的には、上記排ガスとカルシウム含有廃棄物を接触させて、上記排ガス中に含まれる炭酸ガスをカルシウム含有廃棄物に吸収させる方法である。炭酸ガスを、カルシウム含有廃棄物に吸収させて、固定化することで、大気中への二酸化炭素の排出量を低減することができる。カルシウム含有廃棄物の例としては、廃コンクリート等が挙げられる。
炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物は、上述したセメントクリンカ製造システムにおいて、セメントクリンカ原料として使用してもよい。
また、炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物を、破砕、分級等して、路盤材やコンクリート用骨材等として利用してもよい。さらに、カルシウム含有廃棄物が廃コンクリートである場合、炭酸ガスを吸収した廃コンクリート中のペースト成分のみを分離回収して、セメント原料として利用してもよい。
上述した、メタネーションや、カルシウム含有廃棄物の炭酸化において、炭酸ガス含有排ガスを精製せず(炭酸ガスを分離、除去せず)に、高温のまま直接、メタネーションやカルシウム含有廃棄物の炭酸化に用いることにより、より効率的に、メタネーションや廃コンクリートの炭酸化を行うことができる。
なお、上述したセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカの製造で、か焼炉で4生じた炭酸ガス含有排ガスを、そのまま、貯留、隔離してもよい。
1 セメントクリンカ製造システム
2 サイクロン式予熱装置
2a,2b,2c,2d サイクロン式熱交換器
3 ロータリーキルン
4 か焼炉
5 クリンカクーラー
6a,6b,6c,6d,6e キルン排ガス排出路
7 支燃性ガス供給装置
8 支燃性ガス供給路
9 か焼炉排ガス排出路
10 塩素バイパス装置
11 合流用流通路

Claims (7)

  1. セメントクリンカ原料を予熱するためのサイクロン式予熱装置と、
    上記サイクロン式予熱装置で予熱された上記セメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、
    上記サイクロン式予熱装置と共に上記ロータリーキルンの前流側に配設された、上記セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、
    上記ロータリーキルンの後流側に配設された、上記セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、
    上記ロータリーキルンで生じた排ガスを、上記サイクロン式予熱装置を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路と
    を含むセメントクリンカ製造システムであって、
    空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、
    上記支燃性ガス供給装置から上記支燃性ガスを上記か焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、
    上記か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを排出するためのか焼炉排ガス排出路(ただし、上記キルン排ガス排出路と異なるものに限る。)と
    を含むことを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
  2. 上記ロータリーキルンで生じた排ガスの一部を、上記サイクロン式予熱装置を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、上記固体分が除かれた上記排ガスを排出すると共に、上記固体分を粗粉と微粉に分級して、上記粗粉を上記セメントクリンカ原料の一部として用い、上記微粉を回収するための塩素バイパス装置を含む請求項1に記載のセメントクリンカ製造システム。
  3. 上記か焼炉排ガス排出路の中を流通する上記排ガスの一部を、上記支燃性ガス供給路の中を流通する上記支燃性ガスに合流させるための合流用流通路を含む請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システム。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、
    上記か焼炉で生じた上記排ガスの炭酸ガス濃度が、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、80体積%以上になるように、上記支燃性ガスの酸素濃度を調整することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記か焼炉で生じた上記排ガスを回収して、上記排ガス中の炭酸ガスを利用することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
  6. 水素ガスと、回収された上記排ガス中の炭酸ガスから、触媒を用いてメタンを生成し、生成されたメタンを、上記ロータリーキルン及び上記か焼炉の少なくともいずれか一方の燃料として利用する請求項5に記載のセメントクリンカ製造方法。
  7. 回収された上記排ガスとカルシウム含有廃棄物を接触させて、上記排ガス中に含まれる炭酸ガスを上記カルシウム含有廃棄物に吸収させた後、炭酸ガスを吸収した上記カルシウム含有廃棄物をセメントクリンカ原料として使用する請求項5又6に記載のセメントクリンカ製造方法。
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