JP2022085124A - 燃料供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料が高吐出で供給され、燃料液中に水の微粒子や気泡が生じる場合であっても、燃料に混入した水(含水率)を高精度に検知することが可能な燃料供給装置を提供する。【解決手段】燃料供給路中の燃料に対してテラヘルツ波を出力するテラヘルツ波発信部51、および燃料供給路中の燃料を通過した後のテラヘルツ波を受信するテラヘルツ波受信部56を備えた水検知センサ50と、水検知センサ50のテラヘルツ波受信部51によって受信されたテラヘルツ波の受信信号に基づいて燃料供給路中の燃料の含水率を計測し、給液ノズル25に向けて送液される燃料の異常の有無を判定する水混入検出部と、を備え、燃料供給装置筐体2が、水検知センサ50、ポンプ11、および流量計15が収容されているエリア6と、給液制御部40が収容されているエリア7とに仕切り5で分割され、両エリア6,7間の回路接続はバリア回路70を介して行う。【選択図】図1
Description
本開示は、車両等の供給対象に燃料を供給する燃料供給装置に関する。
ガソリンスタンドのような燃料供給所では、燃料は貯溜タンクに貯蔵されている。供給対象に対する燃料供給は、貯溜タンクに連通接続されて設置された燃料供給装置によって行われる。供給対象に供給された燃料供給量(給液量)は、燃料供給装置によって計測・表示される。
また、貯溜タンクは、貯溜している燃料の増減に伴って容量変化するタンク内の気相部分の圧力を調整できるように、通常、タンク内の気相部分が大気と連通可能な構造になっている。燃料供給所では、貯溜タンクや、貯溜タンクと燃料供給装置との間を連通接続する配管は、通常、燃料供給所の地下等に設置されている。
このような燃料供給所では、貯溜タンク内の気相部分の空気(大気)中に含まれる水蒸気の結露によって、貯蔵されている燃料に水分が混入したり、貯溜タンクや燃料供給装置との間を連通接続する配管に生じた腐食や亀裂によって、タンク外部の地中の水分がタンク内や配管内に浸入したりすることが起こり得る。誤って、許容範囲を超えた水分が混入している燃料を供給対象である車両に供給してしまうと、燃焼不良によってエンジン不調やエンジン停止等の不具合を起こす可能性があった。
そこで、車両等の供給対象に供給する燃料に混入している水を検知する機能を備えて、供給燃料の含水率が所定の含水率を超えたこと、すなわち供給燃料液中に混入している水分が許容範囲を超えたことを検出すると、供給対象に対する燃料供給を停止するように構成された燃料供給装置が開発されている。このような燃料供給装置では、燃料液中への水分の混入を、供給燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定し、その測定値に基づいて検知している。
ところで、トラックやバス等の大型燃料タンクの燃料補給に使用される燃料供給装置では、燃料供給作業時間を短縮するため、単位時間当たりの燃料流量を大きくして高吐出(例えば、流量75L/min)で燃料供給が行われる。
しかし、特許文献1のような水検知機能を備えた燃料供給装置をこのような高吐出型の燃料供給装置に適用しようとした場合、従来の測定方式の水混入検出器で、供給対象に供給する燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定しても、燃料供給路を流れる燃料の流速(単位時間当たりの流量)が大きくなることで燃料の液中に発生する微細な気泡や水の微粒子についても、タンク内や配管内に浸入した水分と同様に検出してしまい、正確な含水率の判定が困難であることが判明した。
例えば、燃料に光を照射して燃料の濁度を測定する場合は、液中に微細な気泡や水の微粒子が発生したときは、これらにより照射光が散乱されるため、透過光の他、散乱光の測定が必須となり、必要なセンサの数が増えるとともに、燃料液中に混入している水分の演算処理も複雑化する課題があった。さらに、可視光を照射する場合、センサを臨ませる燃料供給路部分には可視光が透過する透明性の高い材料を用いることが必須となるが、そのような材料の表面には燃料や水等が付着しやすく、センサを臨ませた表面が汚れたり、計測精度が低下する課題があった。
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、燃料が高吐出で供給され、燃料液中に水の微粒子や気泡が生じる場合であっても、燃料に混入した水(含水率)を高精度に検知することが可能な燃料供給装置を提供することを目的とする。
本開示に係る燃料供給装置は、表示器が設けられた燃料供給装置筐体と、一側が貯溜タンクと連通され、他側が先端に給液ノズルを有する給液ホースの基端と連通され、ポンプおよび流量計が設けられた燃料供給路と、給液ノズルの操作に応じてポンプの駆動を制御するとともに、流量計に付設された流量発信器から出力される流量信号に基づいて供給対象に対する給液量を演算して表示器に表示する給液制御部と、燃料供給路中の燃料に対してテラヘルツ波を出力するテラヘルツ波発信部、および燃料供給路中の燃料を通過した後のテラヘルツ波発信部から出力されたテラヘルツ波を受信するテラヘルツ波受信部を備えた水検知センサと、水検知センサのテラヘルツ波受信部によって受信されたテラヘルツ波の受信信号に基づいて燃料供給路中の燃料の含水率を計測し、給液ノズルに向けて送液される燃料の異常の有無を判定する水混入検出部と、を備え、燃料供給装置筐体の筐体内が、水検知センサ、ポンプ、および流量計が収容されているエリアと、給液制御部が収容されているエリアとに仕切りで分割され、両エリア間の回路接続はバリア回路を介して行われている。
本開示に係る燃料供給装置によれば、供給対象に対する燃料供給が高吐出で行われる場合であっても、燃料に混入した水分(含水率)を高精度に検知することが可能である。
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
以下、本開示に係る燃料供給装置の実施形態について説明する。説明に当たっては、本開示に係る燃料供給装置を、いわゆるガソリンスタンドの給油機に適用した場合を例に、添付図面を参照しながら説明する。なお、本開示に係る燃料供給装置の構成は、供給対象に燃料を供給するための燃料供給装置であれば、ガソリンスタンド以外の燃料供給所の燃料供給装置にも適用可能である。また、図示した給油機の構成は、本開示に係る燃料供給装置の理解のためのものであり、本開示に係る燃料供給装置の構成を適用したガソリンスタンドの給油機の一実施例の構成に過ぎず、決して本開示に係る燃料供給装置の構成を限定的に解釈するために用いられるものではない。すなわち、以下の説明や図面における記述は、本開示の燃料供給装置又はその適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
図1は、本開示の燃料供給装置の一実施の形態に係る給油機の一実施例の構成説明図である。図1では、給油機の一実施例として給油系統を複数備えた給油機を例に、その一部切り欠き断面図が表されている。各給油系統はそれぞれ同様な構成になっている。
給油機1は、給油機筐体2内に、送液機器としてのポンプ11、流量計測機器としての流量計15が設けられた燃料供給路3を備えている。
燃料供給路3の一端側は、地下に設けられた貯溜タンク90から延びる延設配管91と接続され、貯溜タンク90に連通されている。燃料供給路3の他端側は、給油機筐体2から延出された給油ホース21の基端側と接続され、給油ホース21を介して、ホース先端側に設けられた給油ノズル25に連通されている。この場合、貯溜タンク90内には、例えばレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油といった車両用燃料や、例えば灯油といった灯火用燃料が貯溜されている。
ポンプ11は、ポンプ駆動用モータ12により駆動され、貯溜タンク90に貯留されている燃料を汲み上げる。ポンプ駆動回路13は、ポンプ駆動用モータ12と図示せぬポンプ駆動用電源との間に配置され、後述するポンプ駆動信号に基づいてポンプ駆動用電源からポンプ駆動用モータ12にモータ駆動電流を供給する。
流量計15は、ポンプ駆動用モータ12の駆動によって、ポンプ11から給油ホース21を介して給油ノズル25に送液された燃料液量の計測を行う。流量計15には、流量発信器16が付設されている。流量発信器16は、予め定められた単位流量(例えば、0.01L)毎の燃料の流れに応じた流量パルスを生成し、流量計15によって計測された燃料液量に応じた流量パルス信号を出力する。
給油ノズル25には、操作レバーの操作に応動して開閉弁し、車両等の供給対象内における燃料油液の液面がノズル先端の吐出パイプに達すると操作レバーの操作位置にかかわらず閉弁する自動閉弁機構が備えられている。給油ノズル25は、給油機筐体2に設けられたノズル掛け31に対して取り出し・収納自在になっており、給油作業(燃料供給作業)が行われていない間、換言すれば非作業時および待機時は、ノズル掛け31に収納される。ノズル掛け31には、ノズル掛け31に対する給油ノズル25の取り出し・収納を検出するノズルスイッチ32が設けられている。ノズルスイッチ32は、給油ノズル25の取り出し・収納に応じたノズル検知信号を出力する。
また、給油機1の給油機筐体2内には、車両等の供給対象に対する燃料供給作業の実行制御を行い、作業毎に供給対象に供給された燃料液量いわゆる給油量(給液量)を演算する給油制御装置40が設けられている。給油制御装置40は、ノズルスイッチ32から入力されるノズル検知信号に応じてポンプ駆動信号をポンプ駆動回路13に出力制御することによって、ポンプ駆動用モータ12の駆動制御を行い、ポンプ11の送液制御を行う。また、給油制御装置40は、流量発信器16から入力される流量パルス信号に基づいて供給対象に供給された燃料液量いわゆる給油量を演算し、表示器35に表示する。給油制御装置40は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェース等を備えたコンピュータ装置によって構成されている。そして、給油制御装置40は、給油機、販売時点情報管理機、給油管理機といった給油所内機器をネットワーク接続した給油所LAN(SS- Local Area Network)とも通信接続されている。
表示器35は、給油機筐体2に、表示面を筐体外部に臨ませて設けられている。表示器35には、給油制御装置40から、給油量をはじめとした、各種情報の表示データが供給される。
また、給油機筐体2には、給油ノズル25から供給対象に供給される燃料の含水率Rwが異常になったり、その兆候が現れた場合に、異常やその兆候の発生を報知する警報器38も設けられている。警報器38は、例えばブザー等により構成され、各種警報情報に対応した警報発生信号が、給油制御装置40から供給される。
また、給油機1の給油機筐体2内には、燃料供給路3における流量計15の流出側に、供給対象に対する供給燃料液中の含水率Rwを計測するための水検知センサ50が設けられている。水検知センサ50は、テラヘルツ波を発振出力するテラヘルツ波発信部51と、テラヘルツ波発信部51から発振出力されたテラヘルツ波を受信するテラヘルツ波受信部56とを備えている。
図2は、本実施例の給油機における、水検知センサが設けられた燃料供給路部分を模式的に表した断面図である。図2では、燃料の流れ方向に対して垂直な燃料供給路の断面部分が表れている。
図2に示すように、水検知センサ50は、供給対象に供給される燃料が流通する燃料供給路3に設けられたセンサ取付部に、テラヘルツ波発信部51とテラヘルツ波受信部56が所定間隔で互いの発信面と受信面を相対向させるようにして、着脱可能にかつ気液密に固定されている。
この場合、テラヘルツ波発信部51は、テラヘルツ波共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunnel Diode)等を有して構成されたRTD発振器52を備え、所定の周波数のテラヘルツ波を発振出力する機能を有する。図示の例では、RTD発振器52は、筒状のセンサ筐体54の一側開口部を閉塞するように気液密に設けられた隔離板53に、テラヘルツ波の出射面を向けて配置されている。
テラヘルツ波受信部56は、テラヘルツ波共鳴トンネルダイオード等を有して構成されたRTD受信器57を備え、所定の周波数のテラヘルツ波を受信検出する機能を有する。図示の例では、RTD受信器57は、テラヘルツ波発信部51の場合と同様に、筒状のセンサ筐体59の一側開口部を閉塞するように気液密に設けられたが隔離板58に、受信面(テラヘルツ波の入射面)を向けて配置されている。
テラヘルツ波発信部51およびテラヘルツ波受信部56に、テラヘルツ波共鳴トンネルダイオードが適用される場合、テラヘルツ波発信部51およびテラヘルツ波受信部56それぞれの隔離板53、58は、燃料供給路3に所在している燃料との関係で、テラヘルツ波発信部51のテラヘルツ波出射端面、テラヘルツ波受信部56のテラヘルツ波入射端面になる。この隔離板53、58によって、テラヘルツ波発信部51のRTD発振器52およびテラヘルツ波受信部56のRTD受信器57は、供給燃料と接液しないようになっている。
隔離板53、58は、テラヘルツ波を透過し、かつ、燃料及び水と接触しても、変形、膨潤、溶解等の劣化を起こさない材料で構成されている。加えて、給油機1が使用される様々な環境での燃料温度に鑑み、例えば-20℃から40℃の熱耐性がある材料で構成されていることが望ましい。そのような材料として、例えば、フッ素樹脂材を、隔離板53、58全体の材料として用いることができる。
隔離板53、58は、隔離板53、58全体をフッ素樹脂材で構成するのに替えて、ガラスや石英等のテラヘルツ波透過性材料を基板とし、その表面にフッ素樹脂を塗布した構成としてもよい。この場合、テラヘルツ波透過性材料としては、目的とする含水率Rwの測定(例えば、Rw<2%、2%≦Rw<5%、及びRw≧5%の判別)が可能な程度に、テラヘルツ波を減衰させることなく十分透過させることができる材料が用いられ得る。
一例として、隔離板53、58に適用可能なフッ素樹脂として、エチレンテトラフルオロエチレン(以下、ETFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレンの共重合体(PFA)を用いることができる。なお、隔離板53、58に適用可能なフッ素樹脂としては、上記に例示したものに限定されるものではなく、所定のテラヘルツ波透過性、耐油性、耐水性、耐熱性を有し、含水率Rw<2%、2%≦Rw<5%、Rw≧5%の判別が可能な材料であればよい。さらに、フッ素樹脂の中でも、テラヘルツ波が極性分子によって吸収されることから、非極性分子からなるフッ素樹脂が望ましい。
このような隔離板53、58の材料に用いられるフッ素樹脂は、撥油性及び撥水性を有する。燃料や水等の隔離板53、58への付着による汚れやすさの指標として、表面自由エネルギーがある。すなわち、表面自由エネルギーが低いと、燃料や水が付着しにくく、表面自由エネルギーが高いと、燃料や水が付着しやすくなる。したがって、表面自由エネルギーが低いフッ素樹脂を隔離板53、58の材料として用いることで、隔離板53、58の表面の汚れを抑制することができ、これにより含水率Rwの計測精度を上げることができる。
また、隔離板53、58の表面、すなわちテラヘルツ波発信部51の発信面およびテラヘルツ波受信部56の受信面が燃料や水等の付着によって汚れにくいことから、水検知センサ50のメンテナンスや、隔離板53、58等の水検知センサ50の構成部品の交換の頻度を下げることも可能となる。隔離板53、58の形状は、テラヘルツ波発信部51のRTD発振器52およびテラヘルツ波受信部56のRTD受信器57を、供給燃料に接液させない形状であれば、図示の形状でなくてもよい。
給油機1では、水分が混入した燃料を供給対象に大流量・高吐出で給油する際、燃料と水分が混じり合い、液中に水泡や気泡が発生する。これらの水泡や気泡は、従来の供給燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定する水検知センサでは、供給対象に対する供給燃料液中に混入した水分の測定においてノイズの原因となる。このようなノイズの原因になる水泡や気泡の粒子径は、発明者らによる静水下での気泡及び水泡の評価では、およそ200~300μmの範囲である。
これに対し、本実施例の給油機1では、水検知センサ50は、波長が3mm~300μm(周波数が0.1THz~1.0THz)のテラヘルツ波を、テラヘルツ波発信部51から出力し、テラヘルツ波受信部56で受信する。そして、テラヘルツ波の波長(3mm~300μm)は、このような大流量・高吐出で給油する際に燃料液中に発生する水泡や気泡の粒子径(200~300μm程度)と同等か、それよりも十分に長い波長帯である。したがって、テラヘルツ波は、このような大流量・高吐出で給油する際に燃料液中に発生する水泡や気泡による散乱の影響をほとんど受けない。そのため、本実施例の給油機1によれば、燃料を大流量・高吐出で給油する場合においても、精度良く燃料の含水率Rwを計測することが可能である。
次に、テラヘルツ波が燃料液中を伝搬する行程距離、すなわち、燃料供給路3におけるテラヘルツ波が伝搬する部分の流路長(テラヘルツ波が伝搬するテラヘルツ波発信部51とテラヘルツ波受信部56との間の燃料供給路3における検出域の距離)Lについて検討する。テラヘルツ波の燃料液中での伝搬は、流路長(距離)Lが長くなるにつれて、伝搬するテラヘルツ波の減衰量が多くなり、テラヘルツ波の受信量の損失が大きくなるため、含水率Rwの計測精度が低下する。この観点からは、流路長Lは短いほうが好ましい。その一方で、流路長Lが極端に短かくなると、この間に所在する水によるテラヘルツ波の吸収量が減少し、含水率Rwの差に起因する受信強度の差を判別しにくくなる。そのため、センサ取付部によって、燃料供給路3におけるテラヘルツ波が伝搬する部分の流路長Lは、含水率Rwの計測精度が低くならず、かつ、含水率Rwの変化量を判別することができる長さに設定されている。そして、この流路長Lは、テラヘルツ波の周波数と、水の吸収係数に基づいて算出することが可能である。例えば、テラヘルツ波の波長が0.3THzである場合における水の吸収係数は100cm-1である(非特許文献、S.G.Wamen et al, Appl.opt. vol.23, p.1206(1984))。
そこで、本実施例での計測目的とする含水率Rw≧5%を検知するためには、テラヘルツ波の水による吸収が大きいために、流路長Lは短いほうが好ましい。流路長Lをあまりに長くすると、水によるテラヘルツ波の吸収が大きく、テラヘルツ波が全量減衰してしまい、テラヘルツ波を検出できなくなることが生じ得る。したがって、含水率Rwの差に起因する受信強度の差が顕れる範囲で、流路長Lが短い方が、伝搬に伴うテラヘルツ波の損失が少なくなり、受信強度を高められるため、含水率Rwの検出感度を高くすることができる。燃料供給路3の管路幅よりも長い流路長Lを設定することもできるが、検出感度の低下、又は含水率Rwの計測のための部分が大型化するという問題がある。
このようにして燃料供給路3におけるテラヘルツ波が伝搬する部分の流路長Lを適確に設定することによって、燃料の含水率Rwが安全基準を超える5%(第2の閾値)に達したか否かを検出することに加え、安全基準は満たしているが装置の保守点検が必要又は推奨されると判断されるレベル(2%(第1の閾値)≦Rw<5%)にあるか否かについても高精度に検出することが可能となる。高精度な水検知が可能となることで、給油機1、貯溜タンク90、延設配管91といった給油所設備の保守や点検等の対策を早期に施すことができるシステムを提供することができる。
なお、図示は省略するが、RTD発振器52と隔離板53との間、およびRTD受信器57と隔離板58との間にコリメートレンズを配置することもできる。コリメートレンズを配置することで、テラヘルツ波受信部56におけるRTD受信器57でのテラヘルツ波の受信強度を高め、テラヘルツ波をより遠方まで高い強度でテラヘルツ波発信部51から発信することができるようになる。テラヘルツ波受信部56におけるテラヘルツ波の受信強度が十分に高く、含水率Rwの定量が可能であれば、コリメートレンズは用いなくてもよい。
図3は、本実施例の給油機における、水検知センサの回路接続に係る一実施例の説明図である。
テラヘルツ波発信部51およびテラヘルツ波受信部56を有した水検知センサ50は、同じく給油機筐体2内に設けられた水混入検出器60に接続されている。水混入検出器60は、水検知センサ50のテラヘルツ波発信部51およびテラヘルツ波受信部56を作動制御し、水検知センサ50のテラヘルツ波受信部56のRTD受信器57が受信したテラヘルツ波受信信号に基づいて、燃料供給路3を介して供給対象に供給される燃料の含水率Rwを計測し、ポンプ11から流量計15を介して給油ホース21および給油ノズル25に向けて送液される燃料の異常の有無を判定する。水混入検出器60は、図示の例では、センサ駆動・検出回路61と、水混入検出制御回路62とを有する構成になっている。
センサ駆動・検出回路61は、水混入検出制御回路62から、直流バイアス電源(DC Bias)と交流バイアス電源(1MHz + Bias)の供給を受け、水検知センサ50のテラヘルツ波発信部51にRTD発振器52の発振駆動信号を出力する。また、センサ駆動・検出回路61は、水検知センサ50のRTD受信器57から、燃料液中を伝搬してきたテラヘルツ波の検出出力の供給を受け、水混入検出制御回路62にテラヘルツ波受信信号(受信波)を出力する。
水混入検出制御回路62は、センサ駆動・検出回路61、および図示の例ではバリア回路70を介して給油制御装置40と接続され、例えば、増幅回路、AD変換回路、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor、DSP)、シリアル通信回路を有したデジタル信号処理システムで構成されている。水混入検出制御回路62は、バリア回路70を介して、給油制御装置40から駆動電源(DC 12V)の供給を受け、センサ駆動・検出回路61の直流バイアス電源(DC Bias)と交流バイアス電源(1MHz+ Bias)を生成する。また、水混入検出制御回路62は、センサ駆動・検出回路61から供給されるテラヘルツ波受信信号に基づいて、テラヘルツ波発信部51とテラヘルツ波受信部56との間の、テラヘルツ波が伝搬する燃料供給路3の検出域を通過する燃料の含水率Rwを演算し、供給対象に供給される燃料の異常の有無を判定する。
水混入検出制御回路62では、例えば、センサ駆動・検出回路61からのテラヘルツ波受信信号はテラヘルツ波の受信強度に応じた大きさの電圧信号に変換され、このテラヘルツ波の受信強度に応じた大きさの電圧信号から、例えば、供給対象への供給液種や供給燃料の吐出量に応じた検量線に基づいて、供給対象に供給する燃料の含水率Rwを演算する。
図4、図5は、水混入検出検知器の水混入検出制御回路に記憶されている検量線を説明するための模式図である。図4は、供給液種が軽油で吐出流量が75L/minである場合における給油機の給油系統に係る検量線の模式図であり、図5は、供給液種がレギュラーガソリンで吐出流量が40L/minである場合における給油機の給油系統に係る検量線の模式図である。
図4および図5ともに、含水率Rwを様々に変化させた場合における、テラヘルツ波受信信号のテラヘルツ波の受信強度RSをプロットした結果を示したものである。図中、同一の含水率Rwの値に対するテラヘルツ波の受信強度RSの値のばらつき(標準偏差)は、エラーバーで示してある。いずれの供給液種とも、含水率Rwが大きくなるほど、テラヘルツ波受信信号によるテラヘルツ波の受信強度RSは低下する。検量線Cは、このように含水率Rwを様々に変化させた場合における、含水率Rwそれぞれに対応したテラヘルツ波の受信強度RSをプロットした結果を基にして作成される。本実施例の給油機1では、いずれの給油系統とも、検出域の距離L、RTD発振器52の発信端面とRTD受信器57の受信端面との間の距離(テラヘルツ波の伝搬路長さ)を各々所定距離とし、コリメートレンズを使用しない構成、隔離板53、58にはETFEを使用、RTD発振器52の発振周波数が0.3THzで同一であるため、供給液種の違いや吐出流量の大きさの違いによる影響を余り受けずに、含水率Rwが2%未満、2%以上5%未満、5%以上であるかの判定が一次関数(y=ax+b)形式の検量線Cを用いて可能であることが理解される。
このように、図示の水検知センサ50および水混入検出器60の構成によれば、燃料の含水率Rwが、安全基準を超える5%(第2の閾値)に達したか否かを検出することに加え、安全基準は満たしているが装置の保守点検が必要又は推奨されると判断されるレベル(2%(第1の閾値)≦Rw<5%(第2の閾値))にあるか否かについても高精度に検出することが可能となる。
水混入検出制御回路62は、このようにして遂次演算した供給燃料の含水率Rwや判定結果を含水率時間波形出力や判定出力として、バリア回路70を介して、給油制御装置40に供給する。また、水混入検出制御回路62は、給油制御装置40やメンテナンスターミナル81とも、バリア回路70を介して、それぞれシリアル通信接続されている。そして、これら給油制御装置40や、メンテナンスターミナル81にメンテナンス時に接続されるメンテナンス作業用PC82(メンテナンス作業用端末)との間で、水混入検出制御回路62は、各種の制御指示やトレンドデータを含む各種データ情報を交信することができる。
その上で、本実施例の給油機1は、図1に示すように、その給油機筐体2の内部が、仕切り5によって、テラヘルツ波発信部51およびテラヘルツ波受信部56を有する水検知センサ50、供給対象に燃料を送液するポンプ11、供給対象に供給された燃料を計測する流量計15等といった燃料供給路3に直接配設される機器が収容されている第1のエリア6と、給油制御装置40等の燃料供給路3に直接配設する必要のない機器が収容されている第2のエリア7とに分割された構成になっている。そして、仕切り5は、第2のエリア7内に、第1のエリア6内の雰囲気の進入を防ぐことができる構成になっている。
このような給油機筐体2の内部構造に基づき、図3に示した水検知センサ50の回路接続の実施例では、水検知センサ50、および水混入検出器60のセンサ駆動・検出回路61や水混入検出制御回路62が、第1のエリア6内に配設された構成になっている。そして、この場合、第1のエリア6は防爆域(危険エリア)に該当するため、例えば、水検知センサ50は、図2に示すようにモールド樹脂8でモールドされ、水混入検出器60は、第1のエリア6内に配設されたポンプ駆動回路13の場合と同様に、図1に示すように耐圧防爆ボックス9に収容された構成になっている。
これに対し、給油制御装置40、表示器35、警報器38、およびメンテナンスターミナル81(メンテナンス作業用PC82の接続ターミナル)は、図1に示すように第2のエリア7内に配設された構成になっている。そして、この場合、第2のエリア7は非防爆域(非危険エリア)に該当するため、第1のエリア6内に配設された水混入検出器60、ポンプ駆動回路13等とは、バリア回路70を介して信号接続された構成になっている。
その結果、図示の例によれば、水混入検出器60を水検知センサ50の近傍に配置することができ、テラヘルツ波受信部56のRTD受信器57と水混入検出器60のセンサ駆動・検出回路61との間の信号伝送距離を極力短くすることができるので、RTD受信器57から出力される微弱なテラヘルツ波受信信号に対し、信号伝送距離による減衰や信号伝送路からの雑音受信を防ぐことができ、燃料に混入した水(含水率Rw)をより高精度に検知することが可能になる。また、給油制御装置40、およびメンテナンスターミナル81等にあっては、防爆構造を採用しなくても済むようになり、バリア回路70を介して接続された水混入検出器60や水検知センサ50を含め、給油機に備えられている電気機器・回路のメンテナンスを、メンテナンス作業用PC82を使用して、給油制御装置40およびメンテナンスターミナル81が配置された第2のエリア7側からも行えるようになり、メンテナンス作業が容易にかつ効率的に行えるようになる。
次に、本実施例の給油機1に係り、水混入検出器60の含水率Rwの測定に基づく、給油制御装置40による水混入給油作業制御処理について、図6を参照しながら説明する。水混入給油作業制御処理は、例えば、給油機1に電源が供給されている給油機稼働中、または、給油機稼働中においてノズルスイッチ32のノズル検知信号に基づき給油ノズル25がノズル掛け31から取り出された状態になっている給油作業中に、給油制御装置40によって実行される。
図6は、給油制御装置による水混入給油作業制御処理のフローチャートである。
例えば、給油ノズル25がノズル掛け31から取り出されて供給対象に対する給油作業が開始されると、給油制御装置40は、水混入検出器60に、供給燃料の含水率Rwの測定を指示し、水混入検出器60から供給燃料の含水率Rwの演算結果と、その判定出力を読み込む(ステップS11)。
給油制御装置40は、読み込んだ水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが2%未満であるか否かを判別する(ステップS12)。そして、給油制御装置40は、水混入検出器60からの判定出力が含水率Rwが2%未満である場合は(ステップS12のYes)、ステップS11に戻り、水混入検出器60による供給燃料の含水率Rwの演算結果とその判定出力とに基づく水混入給油作業制御処理が継続され、給油作業が継続される。
給油制御装置40は、読み込んだ水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが2%未満でない場合は(ステップS12のNo)、読み込んだ水混入検出器60からの判定出力が含水率Rwが2%以上で5%未満であるか否かを判別する(ステップS13)。そして、給油制御装置40は、水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが2%以上で5%未満である場合は(ステップS13のYes)、供給燃料の含水率Rwは、車両での使用としては許容範囲内であるが、燃料供給装置において保守点検が必要又は推奨されると判断され得るものとして、表示器35及び/又は警報器38を用いて、メンテナンス要請の推奨警報を発する(ステップS14)。そして、この場合も、ステップS11に戻り、水混入検出器60による供給燃料の含水率Rwの演算結果とその判定出力とに基づく水混入給油作業制御処理が継続され、給油作業が継続される。したがって、本実施例では、水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが2%以上で5%未満である場合は(ステップS13のYes)、メンテナンス要請の推奨警報は発しても、給油作業は継続されるので、もし、その判定出力が今回読み込み時だけのイレギュラーな判定結果であるならば、給油制御装置40は、実行中の給油作業や次の給油作業を禁止することはしない。
一方、給油制御装置40は、読み込んだ水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが5%以上であると判別した場合は(ステップS13のNo)、給油制御装置40は、ポンプ駆動回路13に駆動禁止信号を出力して、即時にポンプ11を停止させるとともに、供給燃料の含水率Rwは、車両での使用としては許容範囲外であり、給油機1、貯溜タンク90、延設配管91といった給油所設備装置の保守点検が必要とされるとして、メンテナンス要請の注意警報を発する(ステップS15)。したがって、本実施例では、水混入検出器60からの判定出力が、含水率Rwが5%以上である場合は(ステップS13のNo)、給油制御装置40は、実行中の給油作業だけではなく次以降の給油作業も禁止し、給油機1、貯溜タンク90、延設配管91といった給油所設備装置の保守点検が行われてリセットされるまで、ポンプ11の駆動、すなわち供給対象に対する燃料供給を許可しない。
このように、本実施例の給油機1によれば、水泡や気泡による散乱の影響を殆ど受けずに含水率Rwの測定を行うことができる。これにより、供給対象に対する燃料供給が高吐出で行われる場合であっても、燃料に混入した水分(含水率)を高精度に検知することができ、給油作業における車両等の供給対象に対する水混入事故を正確に防止することができる。また、水検知センサ50は、隔離板53、58がテラヘルツ波の透過性が高い材料で構成され、 かつ、 撥油性と撥水性が高い材料で構成されるため、燃料や水等の汚れがつきにくく、含水率Rwを高精度に検知することが可能となる。
図7は、本実施例の給油機における、水検知センサの回路接続に係る変形例の説明図である。図7において、図3で説明した構成と同一または同様な構成については、図中に同一符号を付し、以下では、重複する説明は省略する。
図7に示す水検知センサ50の回路接続においては、バリア回路70が、水混入検出器60のセンサ駆動・検出回路61と水混入検出制御回路62との間に配置されている。したがって、水混入検出器60のセンサ駆動・検出回路61は、第1のエリア6で耐圧防爆ボックス9に収容されて水検知センサ50の近傍に配置することができ、水混入検出制御回路62は、そのまま第2のエリア7に配置することが可能になる。
これにより、増幅回路、AD変換回路、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、シリアル通信回路を有したデジタル信号処理システムで構成されている水混入検出制御回路62におけるデジタルシグナルプロセッサの処理機能を、給油制御装置40のマイクロプロセッサ、メモリ、インタフェース等を備えたコンピュータ装置で兼用させる場合に適用することができる。
以上、本開示に係る燃料供給装置の実施形態を実施例を挙げて説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本開示に係る燃料供給装置の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 給油機(燃料供給装置)、 2 給油機筐体(燃料供給装置筐体)、
3 燃料供給路、 5 仕切り、 6 第1のエリア、 7 第2のエリア、
8 モールド樹脂、 9 耐圧防爆ボックス、 11 ポンプ、
12 ポンプ駆動用モータ、 13 ポンプ駆動回路、 15 流量計、
16 流量発信器、 21 給油ホース(給液ホース)、
25 給油ノズル(給液ノズル)、 31 ノズル掛け(ノズル収納部)、
32 ノズルスイッチ(ノズル検知器)、 35 表示器、
38 警報器、 40 給油制御装置(給液制御部)、
50 水検知センサ、 51 テラヘルツ波発信部、
52 RTD発振器、 53 隔離板、 54 センサ筐体、
56 テラヘルツ波受信部、 57 RTD受信器、
58 隔離板、 59 センサ筐体、 60 水混入検出器、
61 センサ駆動・検出回路、 62 水混入検出制御回路、 70 バリア回路、
81 メンテナンスターミナル、 82 メンテナンス作業用PC、
90 貯溜タンク、 91 延設配管。
3 燃料供給路、 5 仕切り、 6 第1のエリア、 7 第2のエリア、
8 モールド樹脂、 9 耐圧防爆ボックス、 11 ポンプ、
12 ポンプ駆動用モータ、 13 ポンプ駆動回路、 15 流量計、
16 流量発信器、 21 給油ホース(給液ホース)、
25 給油ノズル(給液ノズル)、 31 ノズル掛け(ノズル収納部)、
32 ノズルスイッチ(ノズル検知器)、 35 表示器、
38 警報器、 40 給油制御装置(給液制御部)、
50 水検知センサ、 51 テラヘルツ波発信部、
52 RTD発振器、 53 隔離板、 54 センサ筐体、
56 テラヘルツ波受信部、 57 RTD受信器、
58 隔離板、 59 センサ筐体、 60 水混入検出器、
61 センサ駆動・検出回路、 62 水混入検出制御回路、 70 バリア回路、
81 メンテナンスターミナル、 82 メンテナンス作業用PC、
90 貯溜タンク、 91 延設配管。
Claims (1)
- 表示器が設けられた燃料供給装置筐体と、
一側が貯溜タンクと連通され、他側が先端に給液ノズルを有する給液ホースの基端と連通され、ポンプおよび流量計が設けられた燃料供給路と、
前記給液ノズルの操作に応じて前記ポンプの駆動を制御するとともに、前記流量計に付設された流量発信器から出力される流量信号に基づいて供給対象に対する給液量を演算して前記表示器に表示する給液制御部と、
前記燃料供給路中の燃料に対してテラヘルツ波を出力するテラヘルツ波発信部、および前記燃料供給路中の燃料を通過した後の前記テラヘルツ波発信部から出力されたテラヘルツ波を受信するテラヘルツ波受信部を備えた水検知センサと、
前記水検知センサの前記テラヘルツ波受信部によって受信されたテラヘルツ波の受信信号に基づいて前記燃料供給路中の燃料の含水率を計測し、前記給液ノズルに向けて送液される燃料の異常の有無を判定する水混入検出部と、
を備え、
前記燃料供給装置筐体の筐体内が、前記水検知センサ、前記ポンプ、および前記流量計が収容されているエリアと、前記給液制御部が収容されているエリアとに仕切りで分割され、両エリア間の回路接続はバリア回路を介して行われている、
燃料供給装置。
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2020
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