JP2022069086A - 液体吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高粘度の液体を吐出可能としながら、装置の大型化を抑制すると共に、メニスカスの微小な制御を行うことができる液体吐出装置を提供する。【解決手段】液体吐出装置10は、液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルに連通する圧力室29が形成された流路形成体と、前記流路形成体に積層され、前記圧力室29を覆う被覆面24a、及び、前記被覆面24aと反対側の対向面24bを有する振動板24と、前記振動板24を挟んで前記圧力室29に対向する当接面23aを有し、前記当接面23aが前記振動板24から離間した退避位置、及び、前記当接面23aが前記振動板24に当接する進出位置の間で前記対向面24bに対して交差する交差方向に変位するアクチュエータ23と、前記対向面24b上において前記圧力室29に重なる位置に配置された圧電素子25と、を備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、液体吐出装置に関する。
従来の液体吐出装置として、例えば、特許文献1の液滴吐出装置が知られている。この液滴吐出装置は、液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する液室と、液室の壁面の一部を構成する振動板と、振動板を介して液室に圧力を付与する伸縮可能なアクチュエータと、を備えている。
特開2020-44805号公報
上記特許文献1の液滴吐出装置では、アクチュエータの先端部を振動板から離してから振動板に衝突させることにより、ノズルの開口におけるメニスカスを振動させて、液滴を吐出させている。このように、アクチュエータを大きく移動させて大きな圧力を液体に与えることにより、高粘度の液体を吐出させることが可能となる一方、装置の小型化やメニスカスの形状を微小に制御することが行い難い。
本発明はこのような事態に鑑み、高粘度の液体を吐出可能としながら、装置の大型化を抑制すると共に、メニスカスの微小な制御を行うことができる液体吐出装置を提供することを目的としている。
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成体と、前記流路形成体に積層され、前記圧力室を覆う被覆面、及び、前記被覆面と反対側の対向面を有する振動板と、前記振動板を挟んで前記圧力室に対向する当接面を有し、前記当接面が前記振動板から離間した退避位置、及び、前記当接面が前記振動板に当接する進出位置の間で前記対向面に対して交差する交差方向に変位するアクチュエータと、前記対向面上において前記圧力室に重なる位置に配置された圧電素子と、を備えている。
本発明は、上記構成を有し、高粘度の液体を吐出可能としながら、装置の大型化を抑制すると共に、メニスカスの微小な制御を行うことができる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明の実施の形態1に係る液体吐出装置を概略的に示す図である。 図1の液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。 図3(a)は、図1のヘッドの一部を概略的に示す断面図である。図3(b)は、図3(a)の対向面、第1保護膜及び当接面の関係を示す図である。 図4(a)は、当接面が退避位置にあるときのヘッドの一部を概略的に示す断面図である。図4(b)は、メニスカス形成駆動信号により圧電素子が駆動したときのヘッドの一部を概略的に示す断面図である。図4(c)は、当接面が第1保護膜に衝突したときのヘッドの一部を概略的に示す断面図である。図4(d)は、当接面が進出位置にあるときのヘッドの一部を概略的に示す断面図である。 図5(a)は、当接面が退避位置にあるときのメニスカスを概略的に示す断面図である。図5(b)は、メニスカス形成駆動信号により圧電素子が駆動したときのメニスカスを概略的に示す断面図である。図5(c)は、当接面が第1保護膜に衝突したときのメニスカスを概略的に示す断面図である。図5(d)は、当接面が進出位置に押し込まれたときのメニスカスを概略的に示す断面図である。 図6(a)は、図1の圧電素子用の駆動信号を示す図である。図6(b)は、図1のアクチュエータ用の駆動信号を示す図である。 変形例1に係る液体吐出装置のヘッドの一部を概略的に示す断面図である。 変形例2に係る液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。 図9(a)は、図8の圧電素子用の駆動信号を示す図である。図9(b)は、図8のアクチュエータ用の駆動信号を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る液体吐出装置10は、図1に示すように、例えば、インク等の液体を被吐出媒体Aに吐出するインクジェットプリンタである。液体吐出装置10は、筐体11、プラテン12、タンク13、ヘッド20、搬送装置40及び制御装置50を備えている。なお、制御装置50の詳細については後述する。
また、プラテン12よりもヘッド20側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置40により被吐出媒体Aを搬送する方向を前と称し、その反対側を後と称する。この前後方向は上下方向に交差(例えば、直交)している。また、上下方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を左右方向と称する。但し、液体吐出装置10の配置方向はこれに限定されない。
筐体11は、その内部に、プラテン12、タンク13、ヘッド20、搬送装置40及び制御装置50を収容している。プラテン12は、平坦な上面を有しており、この上面に被吐出媒体Aが載置される。ヘッド20は、筐体11に固定されており、矩形状であって、左右方向に被吐出媒体Aよりも長く延びている。ヘッド20の下面は、プラテン12の上面に対向している。ヘッド20は複数のノズル21を有しており、複数のノズル21がヘッド20の下面に開口し、このノズル21の開口であるノズル孔21aが下面に設けられる。なお、ヘッド20の詳細については後述する。
搬送装置40は、一対の搬送ローラ41及び搬送モータ42(図2)を有している。一対の搬送ローラ41は、前後方向において互いの間にヘッド20を挟むように配置されており、その中心軸が左右方向に延びている。搬送モータ42は、搬送ローラ41に連結されており、搬送ローラ41を回転させる。これにより、搬送装置40は、プラテン12上において被吐出媒体Aを前方へ搬送する。
タンク13は、例えば、筐体11に脱着可能なインクカートリッジであって、チューブ13aによりヘッド20に接続されている。複数のタンク13は、互いに異なる種類の液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの液体)を貯留しており、ヘッド20に液体を供給する。
<ヘッドの構成>
ヘッド20は、図3(a)及び図3(b)に示すように、流路形成体22、アクチュエータ23、振動板24、第1保護膜26及び圧電素子25を有している。流路形成体22は、例えば、直方体形状であって、プラテン12(図1)の上面に対向する下面、及び、下面と反対側の上面を有している。流路形成体22には液体流路が形成されており、この液体流路は、複数のノズル21、複数の個別流路30、供給マニホールド31を有している。
ノズル21は、例えば、上下方向に延びる中心軸を有し且つ下方ほど縮径する円錐台形状であり、流路形成体22の下面に開口している。複数のノズル21は、例えば、左右方向において互いに間隔を空けて並べられて列を成し、ノズル列を形成している。複数のノズル列が左右方向において被吐出媒体Aよりも長く延びるように、複数のノズル21が配列されている。
供給マニホールド31は、左右方向に延びて、タンク13(図1)からのチューブ13a(図1)、及び複数の個別流路30が接続されている。個別流路30は、供給マニホールド31及びノズル21に接続されており、供給マニホールド31とノズル21との間に絞り流路32、圧力室29及び連通路33を有し、これらはこの順に接続されている。なお、個別流路30は、連通路33を有さずに、ノズル21が圧力室29に接続されていてもよい。
絞り流路32は、その上流端が供給マニホールド31に接続され、その下流端が圧力室29に接続されており、これらの間において前後方向に延びている。前後方向に直交する絞り流路32の断面積は、左右方向に直交する供給マニホールド31の断面積よりも小さい。
圧力室29は、その上流端が絞り流路32に接続され、その下流端が連通路33に接続されており、これらの間において前後方向に延びている。前後方向に直交する圧力室29の断面積は、前後方向に直交する絞り流路32の断面積よりも大きい。また、圧力室29は、流路形成体22の上面に開口しており、楕円形状の上端開口29aを有している。圧力室29におけるスペースは、上下方向に直交する断面が前後方向の径が左右方向の径よりも大きい楕円形の柱形状であって、楕円形状の外周縁29bを有している。
連通路33は、その上流端が圧力室29に接続され、その下流端がノズル21に接続されており、これらの間において上下方向に延びている。上下方向に直交する連通路33の断面積は、左右方向に直交する圧力室29の断面積よりも小さく、上下方向に直交するノズル21の断面積よりも大きい。
振動板24は、シリコン等の非金属、又は、SUS等の金属から成る。例えば、振動板24は、流路形成体22の上面に直交する方向の厚みが薄い平板形状であって、ダイアフラム等の弾性を有する薄膜が用いられ、上下方向に撓み変形可能である。振動板24は、その下面である被覆面24a、及び、被覆面24aとは反対側の対向面24bを有している。
被覆面24aは、流路形成体22の上面に固定されており、圧力室29の上端開口29aを覆う。これにより、圧力室29の上面が被覆面24aにより形成され、圧力室29の側面及び下面は流路形成体22により形成される。この流路形成体22には、上下方向に直交する平面において、圧力室29の周囲を取り囲む楕円形状の外周縁29bが設けられる。
第1保護膜26は、硬度が高く、耐摩耗性を有し、例えば、金属製であって、この金属としては、二酸化タンタル(TaO)及びタンタル等が用いられる。なお、第1保護膜26は、DLC(Diamond-Like Carbon)等の非金属から成る高硬度膜により形成されていてもよい。第1保護膜26は、ウェットプロセス又はドライプロセスにより形成される。
第1保護膜26は、振動板24の対向面24b上に積層されており、対向面24bに直交する上下方向の厚みL1が振動板24の厚みよりも薄い膜であり、例えば、厚みL1は1mm以下である。第1保護膜26は、圧力室29の上端開口29aと同一形状を有しており、例えば、楕円形状である。第1保護膜26は、上端開口29aよりも小さく、上端開口29aと同心になるように配置されている。このため、上方から視て、第1保護膜26の外周縁26aは、圧力室29の外周縁29bの内方にあって、この外周縁29bに沿っている。
アクチュエータ23は、例えば、圧電素子、エアシリンダー、ソレノイド、静電アクチュエータ及び磁歪素子などにより構成されており、一端は筐体11に固定されており、他端に当接面23aを有している。アクチュエータ23は、振動板24を挟んで圧力室29側とは反対側に配置されており、当接面23aが振動板24の対向面24bに対向している。この対向面24bにおいて、当接面23aが当接する領域である当接領域23a1を第1保護膜26が覆っている。このため、当接面23aと当接領域23a1との間に第1保護膜26が配置されている。
当接面23aは、第1保護膜26と同じ形状を有しており、例えば、楕円形状であって、第1保護膜26に対して平行を成している。当接面23aのサイズは、第1保護膜26のサイズと同じ又は第1保護膜26のサイズよりも小さく、楕円形状の第1保護膜26及び圧力室29と同心になるように配置されている。このため、上から視て、当接面23aの外縁23a2は、圧力室29の外周縁29bの内方にあってこの外周縁29bに沿っている。
アクチュエータ23は、制御装置50(図1)に接続されており、制御装置50からの駆動信号に応じて上下方向に伸縮する。これに伴い、当接面23aは、振動板24から離間した退避位置、及び、振動板24に当接する進出位置の間で、対向面24bに交差(例えば、直交)する方向(例えば、上下方向)に撓んで変形する。当接面23aが退避位置から進出位置に移動すると、振動板24が下側に撓んで、圧力室29の容積が減少する。
圧電素子25は、環形状であって、その内周縁及び外周縁が圧力室29と同じ形状であり、例えば、楕円形状である。圧電素子25は、その内側に穴部を有しており、その穴部の径が第1保護膜26の径よりも大きく、その穴部内に第1保護膜26が配置されている。この第1保護膜26は当接領域23a1を覆うため、圧電素子25は、第1保護膜26及び当接領域23a1の周囲を取り囲むように、振動板24の対向面24b上に配置されている。また、圧電素子25は、その外径が圧力室29の上端開口29aの径よりも小さく、圧力室29に同心であって、対向面24b上において振動板24を挟んで圧力室29上に配置されている。上から視て、圧電素子25の外縁が圧力室29の外周縁29bの内方にあってこの外周縁29bに沿っている。
圧電素子25は、共通電極25a、個別電極25b、及び、共通電極25aと個別電極25bとの間に挟まれた圧電体25cを有している。共通電極25aは対向面24b上に積層され、圧電体25cは共通電極25a上に積層され、個別電極25bは圧電体25c上に積層されている。上下方向において共通電極25aと個別電極25bとの間における圧電体25cの厚みL0は、例えば、1μm以上且つ5μm以下である。
圧電素子25は、制御装置50(図1)に接続されており、制御装置50からの駆動信号が印加されると、共通電極25aと個別電極25bとの間において圧電体25cが伸縮する。これに応じて、振動板24は変形して圧力室29の容積を変更することによりノズル孔21aにおけるメニスカスDを所定の形状に形成する。また、振動板24の振動を抑えることにより、メニスカスDの振動を低減して安定化させる。
<制御装置>
制御装置50は、図2に示すように、演算部51、記憶部52、波形生成部53及びインターフェース54を有している。インターフェース54はコンピュータ及びネットワーク等の外部装置Bに接続され、制御装置50は外部装置Bから印刷データ等の各種データをインターフェース54を介して受信する。印刷データは、被吐出媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。
記憶部52は、演算部51にアクセス可能であって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算部51により変換されたデータが例示される。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Bから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
演算部51は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部51は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、アクチュエータ23、圧電素子25及び搬送モータ42を制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置50は、印刷処理及び非吐出フラッシング処理を実行する。
波形生成部53は、アクチュエータ23及び圧電素子25に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部53は、専用の回路であってもよく、演算部51及び記憶部52により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、アクチュエータ23用の吐出波形信号、並びに、圧電素子25用のメニスカス形成波形信号、メニスカス安定化波形信号及び非吐出波形信号を有している。
吐出波形信号は、アクチュエータ23を駆動させる信号であって、吐出される液体の量が異なる複数種類の信号を含んでいる。メニスカス形成波形信号、メニスカス安定化波形信号及び非吐出波形信号は、圧電素子25を駆動させる信号である。メニスカス形成波形信号は、ノズル孔21aにおける所定の形状のメニスカスDを形成するための信号である。メニスカス安定化波形信号は、メニスカスDの振動を抑えてメニスカスDを安定化させるための信号である。非吐出波形信号は、液体をノズル21から吐出しないように、ノズル孔21aにおけるメニスカスDを振動させる非吐出フラッシング処理のための波形信号である。
演算部51は、例えば、複数種類の吐出波形信号から1種類の吐出波形信号を、印刷データに基づいた1滴ごとの液体量に応じてノズル21毎及び駆動周期毎に選択し、アクチュエータ23用の波形選択データを生成する。ここで、演算部51は、印刷する画像において濃度が高いほど、液体量が多い波形信号を選択するように、波形選択データを生成する。
また、演算部51は、アクチュエータ23用の吐出波形信号に応じて、メニスカス形成波形信号、メニスカス安定化波形信号及び非吐出波形信号を選択し、圧電素子25用の波形選択データを生成する。ここで、演算部51は、吐出波形信号の直前にメニスカス形成波形信号の波形選択データを生成し、吐出波形信号の直後にメニスカス安定化波形信号の波形選択データを生成し、このメニスカス安定化波形信号とメニスカス形成波形信号との間であって吐出波形信号が出力されていない間において非吐出波形信号の波形選択データを生成する。
制御装置50は、ヘッド駆動回路55を介してアクチュエータ23及び圧電素子25に接続されている。制御装置50は、波形信号及び波形選択データをヘッド駆動回路55に出力し、ヘッド駆動回路55は波形信号及び波形選択データから駆動信号を生成してアクチュエータ23及び圧電素子25に出力する。この吐出波形信号の吐出駆動信号に応じてアクチュエータ23が駆動する。メニスカス形成波形信号のメニスカス形成駆動信号、メニスカス安定化波形信号のメニスカス安定化駆動信号及び非吐出波形信号の非吐出駆動信号に応じて、圧電素子25が駆動する。これにより、圧力室29の容積が変化して、圧力室29の液体に圧力が付与され、液体がノズル21から吐出されたり、ノズル孔21aのメニスカスDが振動したりする。この記録動作の詳細については後述する。
また、制御装置50は搬送駆動回路56を介して搬送モータ42に接続されており、印刷データに基づいて搬送モータ42の制御データを搬送駆動回路56に出力する。これにより、制御装置50は、搬送モータ42の駆動タイミング、回転速度、回転量等を制御し、印刷データに応じて被吐出媒体Aを前方に搬送する。
このように、制御装置50は、アクチュエータ23により液体を吐出して画像を被吐出媒体Aに記録する記録動作、及び、搬送モータ42による被吐出媒体Aの搬送動作を実行する。この記録動作及び搬送動作を並行して実行することにより、ノズル21から吐出された液体によって形成される画像が被吐出媒体Aにおいて搬送方向に形成されていき、印刷処理が進んでいく。
<記録動作>
記録動作では、例えば、図6(a)及び図6(b)に示すように、制御装置50は、駆動信号に応じてアクチュエータ23及び圧電素子25が駆動して、吐出処理及び非吐出フラッシング処理を実行する。吐出処理では、メニスカス形成駆動信号P1による圧電素子25の駆動、及び、吐出駆動信号Paによるアクチュエータ23の駆動によって、液体をノズル21から吐出する。非吐出フラッシング処理では、吐出処理とこの直後の吐出処理との間の非吐出期間W0における、非吐出駆動信号P3による圧電素子25の駆動によって、メニスカスDを微振動させる。
このメニスカス形成駆動信号P1の波形幅W1よりもメニスカス安定化駆動信号P2の波形幅W2が短く、メニスカス安定化駆動信号P2の波形幅W2よりも非吐出駆動信号P3の波形幅W3が短い。駆動信号の波形幅は、駆動信号がオンされて立上り開始から、オフされて立下り終了までの時間である。非吐出駆動信号P3の波形幅W3の波形幅は非吐出期間W0よりも短い。メニスカス形成駆動信号P1、メニスカス安定化駆動信号P2及び非吐出駆動信号P3の電圧は、互いに等しい。
記録動作では、図4(a)に示すように、当接面23aが第1保護膜26から離れて退避位置に配置されており、振動板24は平坦になっている。この状態では、図5(a)に示すように、ノズル孔21aにおけるメニスカスDは、圧力室29側である上方に窪むように湾曲した所定形状の凹型曲面形状になる。この凹型曲面形状は、例えば、上下方向の寸法が、上下方向に直交する方向の寸法よりも小さい。また、ノズル21を形成する流路形成体22の内面であるノズル壁面22bにおけるメニスカスDはノズル孔21aに位置する。
図6(a)に示すように、制御装置50は、メニスカス形成駆動信号P1を圧電素子25に出力し、吐出処理を開始する。これにより、図4(b)に示すように、圧電素子25が変形して、振動板24が上方に窪むように変形し、圧力室29の容積が拡大し、圧力室29内における液体の圧力が減少する。
これにより、図5(b)に示すように、圧力室29に連通路33を介して連通するノズル孔21aにおけるメニスカスDは、上方に引き込まれる。この際、ノズル壁面22b上を移動する液体の摩擦力、及び、液体の粘性によって、ノズル壁面22b上にはある厚みの液体が留まる。一方、メニスカスDは、ノズル21の中心軸Cに近いほど大きく上方に引き込まれる。このため、ノズル21の中心軸Cでは、メニスカスDが、図5(a)のメニスカスDよりも上方にある。例えば、図5(b)のメニスカスDの凹型曲面形状は、上下方向の寸法が、上下方向に直交する方向の寸法よりも大きい。このメニスカスDの内径は、ノズル21の径よりも小さく、例えば、ノズル21の径の1/4以上且つ1/3以下である。
続いて、制御装置50は、図6(a)のメニスカス形成駆動信号P1のオフ後に、図6(b)に示すように、吐出駆動信号Paをアクチュエータ23に出力する。これにより、当接面23aを退避位置から進出位置に移動するようにアクチュエータ23を制御する。この際、図4(c)に示すように、当接面23aが下方に加速しながら移動し、第1保護膜26に当接して衝突する。この衝撃力が第1保護膜26及び振動板24を介して圧力室29の液体に与えられ、圧力室29内の圧力が急上昇する。この圧力波が圧力室29から連通路33を介してノズル21の液体に伝播する。このため、図5(c)に示すように、上方に引き込まれているメニスカスDにおいてノズル21の中心軸Cの部分がノズル21の下方に突出し、液柱Daが形成される。
さらに、図4(d)に示すように当接面23aが衝突位置から進出位置まで下方に移動すると、振動板24が圧力室29に押し込まれる。これにより、圧力室29の容積が縮小し、ノズル21内の液体が加圧される。図5(d)に示すように、ノズル21の中心軸Cに近いほど液体の流路抵抗が小さいため、ノズル21に中心軸にある液柱Daに大きな圧力が加わり、液柱Daが分離して液滴Dbになって、ノズル孔21aから吐出される。
続いて、図6(a)に示すように、制御装置50は、吐出駆動信号Paのオフにより吐出処理を終了した後に、メニスカス安定化駆動信号P2を圧電素子25に出力する。これにより、圧電素子25が変形して、当接面23aの衝突による振動板24の振動を低減する。このため、液滴Dbの吐出によるメニスカスDの振動が減衰して、メニスカスDが安定化する。このため、次の吐出処理を迅速に行うことができる。
そして、メニスカス安定化駆動信号P2のオフにより、振動板24が平坦に戻り、圧力室29の容積が拡大する。これにより、液体は、供給マニホールド31から絞り流路32、圧力室29及び連通路33を介してノズル21に供給される。これにより液滴Dbが吐出されたノズル孔21aのメニスカスDでは、圧力室29側である上方に窪むように湾曲した安定的な凹型曲面形状に戻る。
続いて、図6(a)に示すように、制御装置50は、非吐出駆動信号P3を圧電素子25に出力して、非吐出フラッシング処理を実行する。これにより、圧電素子25が変形して、ノズル孔21aから液体が吐出しないように、メニスカスDが微振動する。このように、連続する吐出処理と吐出処理との間の非吐出期間においてメニスカスDを微振動させることにより、ノズル21における液体が拡散されて、ノズル孔21aからの液体の乾燥による増粘が低減され、増粘による液体の吐出不良を低減することができる。
上記のように、液体吐出装置10は、液体を吐出するノズル21、及び、ノズル21に連通する圧力室29が形成された流路形成体22と、流路形成体22に積層され、圧力室29を覆う被覆面24a、及び、被覆面24aと反対側の対向面24bを有する振動板24と、振動板24を挟んで圧力室29に対向する当接面23aを有し、当接面23aが振動板24から離間した退避位置、及び、当接面23aが振動板24に当接する進出位置の間で対向面24bに対して交差する交差方向に変位するアクチュエータ23と、対向面24b上において圧力室29に重なる位置に配置された圧電素子25と、を備えている。
これによれば、当接面23aを振動板24に衝突させることにより、高粘度の液体を吐出させることができる。また、圧電素子25の変形により振動板24を変形させることにより、装置の大型化を抑制しながら、メニスカスDの微小な制御を行うことができる。
また、液体吐出装置10では、圧電素子25は、一対の電極25a、25bと、一対の電極25a、25bに挟まれた圧電体25cとを有している。圧電体25cの厚みL0は、1μm以上且つ5μm以下である。このように、圧電体25cが薄いため、装置の小型化を図ることができる。
また、液体吐出装置10では、対向面24bにおいて進出位置にある当接面23aと当接する当接領域23a1に圧電素子25は設けられていない。これにより、当接面23aが圧電素子25に当たらないため、衝突による圧電素子25の破損を低減し、装置の小型化を図ることができる。
また、液体吐出装置10では、圧電素子25は、対向面24bにおいて当接領域23a1の周囲を取り囲む環形状を有している。これにより、当接面23aが圧電素子25に当たらないため、衝突による圧電素子25の破損を低減し、装置の小型化を図ることができる。
また、液体吐出装置10では、対向面24bにおいて進出位置にある当接面23aと当接する当接領域23a1を覆う第1保護膜26を備えている。これにより、当接面23aが第1保護膜26を介して振動板24に当たるため、当接面23aによる衝突から第1保護膜26により振動板24が保護されて、振動板24の破損を低減し、装置の長寿命化を図ることができる。
また、液体吐出装置10では、第1保護膜26の径は当接面23aの径と同じ又は当接面23aの径よりも大きい。これにより、当接面23aが振動板24に直接、当たることを防止し、装置の長寿命化を図ることができる。
また、液体吐出装置10では、圧電素子25は、第1保護膜26の周囲を取り囲む環形状を有し第1保護膜26の外径は圧電素子25の内径よりも小さい。これにより、第1保護膜26が圧電素子25の変位を阻害することを低減することができる。
また、液体吐出装置10では、第1保護膜26の厚みL1は1mm以下である。これにより、第1保護膜26の残留応力を低く抑えられ、第1保護膜26が振動板24を変形したり、振動板24から剥がれたりすることを抑制することができる。
また、液体吐出装置10では、第1保護膜26は金属製である。これにより、第1保護膜26の耐摩耗性に優れており、装置の長寿命化を図ることができる。
また、液体吐出装置10は、制御装置50をさらに備え、制御装置50は、アクチュエータ及び圧電素子25を協働させてノズル21から液体を吐出させる吐出処理、並びに、連続する2つの吐出処理の間の非吐出期間に、圧電素子25を駆動させてノズル21から液体を吐出させずにノズル21の開口のメニスカスDを振動させる非吐出フラッシング処理、を実行し、非吐出フラッシング処理にて圧電素子25を駆動させる駆動信号の波形幅は、非吐出期間よりも短い。このように、非吐出フラッシング処理による液体の吐出への影響を抑えつつ、非吐出フラッシング処理により増粘液体による液体の吐出不良を低減することができる。
<変形例1>
変形例1に係る液体吐出装置10は、実施の形態1において、図7に示すように、当接面23aを覆う第2保護膜34を備えている。
第2保護膜34は、楕円形状であって、当接面23aを覆う。この第2保護膜34は、第1保護膜26よりも小さく、第1保護膜26と同心で且つ平行に配置されており、第1保護膜26に対向している。このため、第2保護膜34が第1保護膜26に当接する際、第2保護膜34の外周縁は第1保護膜26の外周縁26aの内方においてこの外周縁26aに沿っている。よって、当接面23aが第2保護膜34を介して第1保護膜26に当たるため、当接面23aによる衝突から第2保護膜34により当接面23aが保護されて、当接面23aの破損を低減し、液体吐出装置10の長寿命化を図ることができる。
第2保護膜34は、当接面23aに直交する方向の厚みL2が薄い膜であり、厚みL2は1mm以下である。これにより、第2保護膜34の残留応力を低く抑えられ、第2保護膜34が当接面23aから剥がれることを抑制することができる。
第2保護膜34のヤング率は第1保護膜26のヤング率よりも低い。これにより、第1保護膜26よりも軟らかい第2保護膜34が、当接面23aと振動板24との衝突による衝撃を吸収し、当接面23a及び振動板24の破損を低減し、液体吐出装置10の長寿命化を図ることができる。
第2保護膜34は、例えば、金属製であって、この金属としては、アルミニウムが用いられる。この軟らかいアルミニウム製の第2保護膜34が、当接面23aと振動板24との衝突による衝撃を吸収し、当接面23a及び振動板24の破損を低減し、液体吐出装置10の長寿命化を図ることができる。
<変形例2>
変形例2に係る液体吐出装置10では、実施の形態1及び変形例1において制御装置50は、非吐出フラッシング処理にて圧電素子25を駆動させる駆動信号の電圧を、吐出処理にて圧電素子25を駆動させる駆動信号の電圧よりも低い値とする。
例えば、図8に示すように、ヘッド駆動回路55は、複数の電源回路を有している。複数の電源回路は第1電源回路57及び第2電源回路58を含んでおり、第1電源回路57及び第2電源回路58は互いに出力電圧が異なり、例えば、第1電源回路57の出力電圧は第2電源回路58の出力電圧よりも高い。
制御装置50は、圧電素子25用の波形選択データを生成すると共に、圧電素子25用の電圧選択データを生成する。ここで、制御装置50は、メニスカス形成波形信号及びメニスカス安定化波形信号の電圧よりも非吐出波形信号の電圧が低くなるように、各波形信号の電圧選択データを生成する。なお、非吐出波形信号の波形幅は、非吐出期間よりも短ければ、メニスカス形成波形信号の波形幅及びメニスカス安定化波形信号の波形幅と同じであっても異なっていてもよい。また、メニスカス形成波形信号の電圧とメニスカス安定化波形信号の電圧とは、互いに同じであってもよく、又は、互いに異なっていてもよい。
そして、制御装置50は、波形信号、波形選択データ及び電圧選択データをヘッド駆動回路55に出力する。ヘッド駆動回路55では、電圧選択データに基づいて電源回路が選択されて、例えば、メニスカス形成波形信号及びメニスカス安定化波形信号に対しては第1電源回路57が選択され、非吐出波形信号に対しては第2電源回路58が選択される。
そして、ヘッド駆動回路55は、メニスカス形成波形信号及びメニスカス安定化波形信号に対しては、第1電源回路57からの電圧を受けて、波形信号及び波形選択データに基づいて駆動信号を生成して、圧電素子25に出力する。また、ヘッド駆動回路55は、非吐出波形信号に対しては、第2電源回路58からの電圧を受けて、波形信号及び波形選択データに基づいて非吐出駆動信号を生成して、圧電素子25に出力する。
制御装置50は、図9に示すように、吐出駆動信号によりアクチュエータ23が駆動し、メニスカス形成駆動信号P1、メニスカス安定化駆動信号P2及び非吐出駆動信号P3により圧電素子25が駆動する。これにより、圧力室29の容積が変化して、圧力室29の液体に圧力が付与される。ここで、非吐出駆動信号P3の電圧V3がメニスカス形成駆動信号P1の電圧V1及びメニスカス安定化駆動信号P2の電圧V2よりも低いことにより、非吐出駆動信号P3に応じて、液体がノズル21から吐出されずに、ノズル孔21aのメニスカスDが振動する。このため、乾燥による液体の増粘が低減され、増粘による吐出不良が抑制される。また、液体がノズル孔21aから誤って吐出されることを低減することができる。
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例では、液体吐出装置10は、ヘッド20が固定されたラインヘッド方式が用いられた。しかしながら、液体吐出装置10は、キャリッジを備え、キャリッジによりヘッド20を左右方向に移動するシリアルヘッド方式が用いられてもよい。
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。例えば、液体吐出装置10は、第1保護膜26を有さずに第2保護膜34を有していてもよい。
また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の液体吐出装置は、高粘度の液体を吐出可能としながら、装置の大型化を抑制すると共に、メニスカスDの微小な制御を行うことができる液体吐出装置等として有用である。
10 :液体吐出装置
21 :ノズル
22 :流路形成体
23 :アクチュエータ
23a :当接面
23a1 :当接領域
24 :振動板
24a :被覆面
24b :対向面
25 :圧電素子
25c :圧電体
26 :第1保護膜
29 :圧力室
34 :第2保護膜
50 :制御装置

Claims (15)

  1. 液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成体と、
    前記流路形成体に積層され、前記圧力室を覆う被覆面、及び、前記被覆面と反対側の対向面を有する振動板と、
    前記振動板を挟んで前記圧力室に対向する当接面を有し、前記当接面が前記振動板から離間した退避位置、及び、前記当接面が前記振動板に当接する進出位置の間で前記対向面に対して交差する交差方向に変位するアクチュエータと、
    前記対向面上において前記圧力室に重なる位置に配置された圧電素子と、を備えている、液体吐出装置。
  2. 前記圧電素子は、一対の電極と、一対の前記電極に挟まれた圧電体とを有し、
    前記圧電体の厚みは、1μm以上且つ5μm以下である、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記対向面において前記進出位置にある前記当接面と当接する当接領域に前記圧電素子は設けられていない、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記圧電素子は、前記対向面において前記当接領域の周囲を取り囲む環形状を有している、請求項3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記対向面において前記進出位置にある前記当接面と当接する当接領域を覆う第1保護膜を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  6. 前記第1保護膜の径は前記当接面の径と同じ又は前記当接面の径よりも大きい、請求項5に記載の液体吐出装置。
  7. 前記圧電素子は、前記第1保護膜の周囲を取り囲む環形状を有し
    前記第1保護膜の外径は前記圧電素子の内径よりも小さい、請求項5又は6に記載の液体吐出装置。
  8. 前記第1保護膜の厚みは1mm以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  9. 前記第1保護膜は金属製である、請求項5~8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  10. 前記当接面を覆う第2保護膜を備えている、請求項5~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  11. 前記第2保護膜のヤング率は前記第1保護膜のヤング率よりも低い、請求項10に記載の液体吐出装置。
  12. 前記第2保護膜はアルミニウム製である、請求項10又は11に記載の液体吐出装置。
  13. 前記第2保護膜の厚みは1mm以下である、請求項10~12のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  14. 制御装置をさらに備え、
    前記制御装置は、
    前記アクチュエータ及び前記圧電素子を協働させて前記ノズルから前記液体を吐出させる吐出処理、並びに、連続する2つの前記吐出処理の間の非吐出期間に、前記圧電素子を駆動させて前記ノズルから前記液体を吐出させずに前記ノズルの開口のメニスカスを振動させる非吐出フラッシング処理、を実行し、
    前記非吐出フラッシング処理にて前記圧電素子を駆動させる駆動信号の波形幅は、前記非吐出期間よりも短い、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  15. 前記制御装置は、前記非吐出フラッシング処理にて前記圧電素子を駆動させる駆動信号の電圧を、前記吐出処理にて前記圧電素子を駆動させる駆動信号の電圧よりも低い値とする、請求項14に記載の液体吐出装置。
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