JP2022068998A - ロボットハンド、ロボットシステム、ロボットハンドの制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】周囲の物体(環境物体)と衝突した場合であっても、把持物の落下や損傷による被害を最小限に抑制し、作業を継続可能な信頼性の高いロボットハンドおよびロボットハンドの制御方法を提供する。【解決手段】被把持物を把持する複数の指部と、前記複数の指部の各々を互いに独立して駆動する複数の駆動部と、前記指部で把持した被把持物と環境物体との衝突を検出する検出部と、前記検出部からの信号に基づき前記駆動部の駆動量を演算する演算部と、前記演算部からの信号に基づき前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記検出部が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記制御部は前記演算部が演算した駆動量に基づいて前記駆動部を制御し、被把持物と環境物体との衝突の衝撃を軽減するように、前記被把持物を移動させることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、ロボットハンドの構成とその制御に係り、特に、想定外の衝突可能性のある環境下で使用されるロボットハンドに適用して有効な技術に関する。
プラントや原子力発電所のような未知・未整備な環境でロボットが作業を行うには、周囲の物体(環境物体)との衝突を未然に回避、あるいは衝突時の把持物の落下や損傷のような被害を軽減することが望まれている。
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「衝撃を検出した場合にロボットアームの制御モードをインピーダンス制御へと切り替え、衝撃を和らげる方向へ回避するように動作させる制御装置」が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載された衝突回避方法のように衝突後にロボットアームによって回避を試みても、ロボットアームは急に止まることはできないため、把持物の落下や損傷といった被害が免れない問題がある。
そこで、本発明の目的は、周囲の物体(環境物体)と衝突した場合であっても、把持物の落下や損傷による被害を最小限に抑制し、作業を継続可能な信頼性の高いロボットハンドおよびロボットハンドの制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、被把持物を把持する複数の指部と、前記複数の指部の各々を互いに独立して駆動する複数の駆動部と、前記指部で把持した被把持物と環境物体との衝突を検出する検出部と、前記検出部からの信号に基づき前記駆動部の駆動量を演算する演算部と、前記演算部からの信号に基づき前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記検出部が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記制御部は前記演算部が演算した駆動量に基づいて前記駆動部を制御し、被把持物と環境物体との衝突の衝撃を軽減するように、前記被把持物を移動させることを特徴とする。
また、本発明は、(a)被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記被把持物が前記環境物体から受けた力を所定の閾値と比較するステップ、(b)前記(a)ステップにおいて、前記被把持物が前記環境物体から受けた力が前記所定の閾値以上であると判定した場合、前記被把持物が前記環境物体から受けた力の方向と、衝突位置とを推定し、前記被把持物の退避位置を演算するステップ、(c)前記(b)ステップにおいて演算した前記被把持物の退避位置に基づき、前記被把持物の退避経路を演算するステップ、(d)前記(c)ステップにおいて演算した記被把持物の退避経路に基づき、前記被把持物を移動させるステップ、を有するロボットハンドの制御方法である。
本発明によれば、周囲の物体(環境物体)と衝突した場合であっても、把持物の落下や損傷による被害を最小限に抑制し、作業を継続可能な信頼性の高いロボットハンドおよびロボットハンドの制御方法を実現することができる。
これにより、ロボットハンドを用いたロボットシステムの信頼性向上が図れる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
図1から図9Cを参照して、本発明の実施例1に係るロボットハンド及びロボットハンドの制御方法について説明する。
図1は、本実施例のロボットハンド1の概略構成を示す図である。本実施例のロボットハンド1は、図1に示すように、被把持物(ここでは丸軸4を例示)を把持し、かつ移動させることができる複数の指部11A,11Bと、指部11A,11Bの一端部が接続されている基部10と、指部11A,11Bのそれぞれを駆動する指用モータ11A4,指用モータ11B4と、指部11A,11Bを制御するロボットハンド制御部6と、衝突を検知する力センサ12と、衝突退避制御を演算する演算部7から構成される。
演算部7は、力センサ12による衝突検出時に、障害物5との衝突力に応じて衝突退避制御を演算し、ロボットハンド制御部6は、指部11A,11Bを制御して被把持物(丸軸4)を移動させ、衝突被害を軽減する。
図2は、本実施例によるロボットハンド1の具体例を示す斜視図である。本実施例のロボットハンド1は、図2に示すように、被把持物(図示せず)を把持するための複数の指部11A,11B,11Cを備える。
ロボットハンド1は、基部10と、基部10に接続された三本の指部11A,11B,11Cと、基部10に接続された力センサ12とを備える。三本の指部11A,11B,11Cのそれぞれは、互いに異なる1つの指用モータ11A4,11B4,11C4によって独立に駆動される。
基部10には、力センサ12を介してロボットアーム2が接続されている。ロボットハンド1は、ロボットアーム2によって、様々な位置に移動し、様々な姿勢をとることが可能である。ロボットアーム2を制御するために、ロボットアーム制御部(図示せず)が外部に設置されている。また、基部10には、指部11A,11B,11Cの一端部が接続されている。なお、ロボットアーム2に替えて、車輪を有する移動体など、ロボットハンド1の位置や姿勢を変化させる他の手段を用いることもできる。
指部11Aは、リンク11A1、指先接続板11A2、指先部11A3、指用モータ11A4を備える。リンク11A1はアルミ製で、寸法の等しい二本のリンクであり、一本の一端は基部10に回転自由に接続され、もう一本の一端は基部10に指用モータ11A4の出力軸を介して接続されている。両者の残りの一端は指先接続板11A2に回転自由に接続されており、全体で四節平行リンク構造となっている。
指先接続板11A2は、寸法の等しい2枚のアルミ板である。指先部11A3はABS樹脂製で、2枚の指先接続板11A2に挟まれて接続されている。被把持物(図示せず)は、指先部11A3を介してロボットハンド1に把持される。なお、把持時の摩擦力を増すために指先部11A3の把持部の表面にウレタンゴムなどの摩擦素材を設けてもよい。
指用モータ11A4は、DCブラシレスモータであり、その本体は基部10に接続されており、指部11Aを駆動する駆動部である。指用モータ11A4の駆動により、リンク11A1が回転し、指先接続板11A2および指先部11A3が平行に駆動される。指用モータ11A4の内部には回転数センサが搭載され、指用モータ11A4の回転数を計測することができる。
指部11Bと指部11Cも、指部11Aと同様の構成を備える。指部11Bは、リンク11B1、指先接続板11B2、指先部11B3、指用モータ11B4を備える。指部11Cは、リンク11C1、指先接続板11C2、指先部11C3、指用モータ11C4を備える。
図3Aは、ロボットハンド1の指が開いた状態を示す斜視図であり、図3Bは、指が閉じた状態を示す斜視図である。また、図4は、例として丸軸4を把持したロボットハンド1を示す斜視図である。図3Aから図4に示すように、ロボットハンド1の三本の指部11A,11B,11Cにより、被把持物(丸軸4)を把持する。
ロボットハンド1は、指用モータ11A4,11B4,11C4の動作を制御するロボットハンド制御部6(図1参照)を備える。ロボットハンド制御部6は、指用モータ11A4,11B4,11C4と配線で接続され、それぞれの指用モータに流れる電流を計測する電流センサが内蔵されている。各指用モータに対して電流値をフィードバックして電圧を印加する電流サーボ系を構成しており、所望の電流を流すことができる。また、指用モータ11A4,11B4,11C4の回転数センサの値をフィードバックして指令電圧を決める回転角・回転速度サーボ系を構成し、所望の回転角と回転速度を得ることもできる。
ロボットハンド1は、被把持物の把持や周囲の物体(環境物体)との衝突時に、指用モータ11A4,11B4,11C4への適切な電流値、回転角、あるいは回転速度を計算し、ロボットハンド制御部6へ指令信号を出力する演算部7(図1参照)を備える。
なお、ロボットハンド制御部6および演算部7は、基部10の内部などロボットハンド1の内部に設置してもよいし、ロボットハンド1の外部に設置しても良い。
力センサ12は、ロボットハンド1に掛かる並進方向の3軸の力を計測することができる。力センサ12は演算部7へと接続され、演算部7はその出力を取得することができる。
力センサ12の代わりに、衝突を検出する別の装置を用いることもできる。例えば、指部11A,11B,11Cに個別に設置した小型の力センサや、指先部11A3,11B3,11C3の表面に貼り付けられ、圧力を検出する触覚センサなどを用いることもできる。また、指用モータ11A4,11B4,11C4の回転数センサや、ロボットハンド制御部6の電流センサによって、衝突検出を行うこともできる。
以上説明したように、本実施例のロボットハンド1は、被把持物を把持する複数の指部11A,11B,11Cと、複数の指部11A,11B,11Cの各々を互いに独立して駆動する複数の駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)と、指部11A,11B,11Cで把持した被把持物と周囲の物体(環境物体)との衝突を検出する検出部(力センサ12)と、検出部(力センサ12)からの信号に基づき駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)の駆動量を演算する演算部7と、演算部7からの信号に基づき駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)を制御する制御部(ロボットハンド制御部6)を備えており、検出部(力センサ12)が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、制御部(ロボットハンド制御部6)は演算部7が演算した駆動量に基づいて駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)を制御し、被把持物と環境物体との衝突の衝撃を軽減するように、被把持物を移動させる。
以上説明したように、本実施例のロボットハンド1は、被把持物を把持する複数の指部11A,11B,11Cと、複数の指部11A,11B,11Cの各々を互いに独立して駆動する複数の駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)と、指部11A,11B,11Cで把持した被把持物と周囲の物体(環境物体)との衝突を検出する検出部(力センサ12)と、検出部(力センサ12)からの信号に基づき駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)の駆動量を演算する演算部7と、演算部7からの信号に基づき駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)を制御する制御部(ロボットハンド制御部6)を備えており、検出部(力センサ12)が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、制御部(ロボットハンド制御部6)は演算部7が演算した駆動量に基づいて駆動部(指用モータ11A4,11B4,11C4)を制御し、被把持物と環境物体との衝突の衝撃を軽減するように、被把持物を移動させる。
図5及び図6を用いて、被把持物を把持しながらの作業中、衝突を検知した際にロボットハンド1によって退避する方法を説明する。図5は、その制御過程を示すフローチャートであり、図6は、ロボットハンド1及びロボットアーム2の動作を説明する概略図である。以下では一例として、被把持物である丸軸4を、ロボットハンド1及びロボットアーム2によって位置P1から位置P2へと移動させる状況を想定し説明する。
ロボットハンド1が位置P1で被把持物(丸軸4)を把持した状態から、ロボットアーム制御部(図示せず)は位置P2へと移動する運動軌道T1を計画し、移動を開始する(ステップS11)。
演算部7は動作中常に、力センサ12から力を取得し、監視しておく(ステップS13)。衝突を検出せずに目標に到達した場合(YES)、作業を終了する(ステップS12)。
ここで、図6に示すように、運動軌道T1の途中で位置P3に障害物5が存在し、丸軸4が衝突してしまったとする。障害物5を事前に正確に認識できていれば回避することが望ましいが、未知・未整備な環境では、カメラ等で認識を試みていても検出ミス等によって衝突してしまう可能性がある。
そのため、演算部7は、力センサ12により取得した力がある閾値を超えたとき(ステップS13のYES)、衝突したと判断し、ロボットアーム制御部(図示せず)に停止信号を送り、ロボットアーム2を停止させる(ステップS14)。
しかし、ロボットアーム2は慣性が大きいため、急に止まることはできない。そのため、被把持物へ大きな衝撃が加わり、損傷、落下、あるいは把持姿勢が大きく変わってしまい、作業を続行することができなくなる恐れがある。
そこで、本実施例では、ロボットハンド1によって丸軸4を安全な方向へと高速に移動させ、瞬時に障害物5から引き離す(ステップS15~S19)。ステップS15からS19までの詳細は後述するが、流れとしては先ず丸軸4の退避位置を演算し(ステップS15)、退避までの運動プロファイル(運動軌道)を演算(ステップS16)し、運動プロファイル(運動軌道)から指部11A,11B,11Cへの指令を演算、指令して(ステップS17)、被把持物を退避させる。この間にも力センサ12を監視しておき、ある閾値を超えた場合は、衝突したと判断し、退避位置を再演算する(ステップS18)。
ロボットハンド1が指部11A,11B,11Cによって移動させる部分は非常に慣性が小さいため、高速な移動が可能である。退避によって衝撃を大幅に緩和することができ、被把持物(丸軸4)への被害を最小限に留めることができる。
ロボットハンド1による退避完了後、ロボットアーム2が直前に通ってきた運動軌道T1に沿って、位置P3から十分離れた位置P4へと戻り、ロボットハンド1は一時退避させた丸軸4を元の把持状態に戻す。そして衝突位置P3から十分離れた新たな運動軌道T2を新たに計画し、作業を再開する(ステップS110)。その後、再び衝突した場合には、同様の退避と運動軌道の再計画を繰り返し、位置P2に到着した時点で終了する(ステップS12のYES)。
なお、ステップS15及びステップS16において、退避位置及び被把持物(丸軸4)の退避運動プロファイル(運動軌道)をより正確に演算するために、力センサ12は、被把持物(丸軸4)と周囲の物体(環境物体)との衝突を検出した際、被把持物(丸軸4)が周囲の物体(環境物体)から受けた力の方向と、衝突位置を推定する機能を有する。
そして、演算部7は、力センサ12で推定した被把持物(丸軸4)の周囲の物体(環境物体)から受けた力の方向と、衝突位置に基づいて、被把持物(丸軸4)の退避位置を演算する。
次に、図7Aから図7Cを用いて、ロボットハンド1によって丸軸4を安全な方向へと高速に移動させる方法について詳細に説明する(ステップS15~S19)。
図7Aは、図4のロボットハンド1及び丸軸4を正面方向から見た図であり、ロボットハンド1が丸軸4を把持した様子を示している。ハンド座標系(x,y,z)は、ロボットハンド上に設定されている。以下(x、y)平面上で考えるため、z座標は省略することがある。図7Aでは、丸軸4の中心をハンド座標系の(0,0,0)で把持した状態を表している。
移動中の把持方法として、ステップS17~S19を除き、基本的には図7Aの状態で把持をしておく方法がある。この場合、(x,y)平面における衝突時の退避可能距離はどの方向でもほぼ均等であるため、あらゆる方向からの衝突に対処することができる。一方、ロボットアーム2により移動をしているため、ロボットアーム2の進行方向から障害物に衝突する可能性が高い。そこで、進行方向に寄せた位置で丸軸4を把持することで、衝突が予測される方向の退避可能距離を大きくすることもできる。
ステップS13で、衝突して力を(Fx,Fy,Fz)方向に受けたと検知すると、反対の(-Fx,-Fy,-Fz)方向から障害物5が衝突したと考えられる。そこで、丸軸4の(x,y)の退避先を式(1)のように方向が(Fx,Fy)、原点からの距離がrである(Qx,Qy)に設定する。
rはロボットハンド1による操作可能半径であり、指部同士が衝突したり、指部の間から丸軸4が落下しない値を事前に設定しておく。
図7Bは、例としてロボットハンド1がx方向に力を受け、(Qx=r,Qy=0)へと丸軸4を移動させた状態を示す図である。ロボットハンド制御部6は、被把持物(丸軸4)と環境物体との衝突を検出した際、指部11A,11B,11Cによる被把持物(丸軸4)の把持力を弱める。
本実施例によるロボットハンド1では、z方向へと操作することができない。そこで、z方向からの衝突を検出した場合は、瞬時に丸軸4を落とさない程度に把持力を緩めることを上記の方法と組み合わせる。これにより、+z方向から衝突した場合、丸軸が-z方向へと受動的に滑り、衝撃を緩和することができる。
ロボットハンド1で丸軸4を退避させる位置は、丸軸4が衝突の直前にあった位置を退避先とすることもできる。この方法を図6及び図7Cを用いて説明する。ステップS14でロボットアーム2の停止信号を受け取ったロボットアーム制御部(図示せず)は、ステップS11において計画した運動軌道T1のうち丸軸4の衝突直前の運動軌道を、演算部7へと送信する。
演算部7は、運動軌道T1をハンド座標系(x,y)へと射影した運動軌道T1’を演算する。この運動軌道T1’上は、衝突直前に丸軸4が存在した位置であるため、障害物は存在せず、退避するのに安全であると考えられる。そこで、図7Cに示すように、運動軌道T1’上かつ原点からの距離がロボットハンド1の操作可能半径r上にある位置を退避位置(Qx,Qy)と設定すればよい。
次に、図8Aから図8Cを用いて、丸軸4を位置(0,0)から退避目標(Qx,Qy)へと移動させる運動プロファイル(運動軌道)を生成する方法を説明する。できるだけ高速に移動させるため、図8Aに示すように、位置(0,0)から退避目標(Qx,Qy)へ直線的に移動させる。また、図8B及び図8Cに示すように、その速度プロファイルを台形または三角形状に変化させる。
指用モータ11A4,11B4,11C4はDCブラシレスモータなので、概ね最大トルクと最大角速度以内の動作が可能である。従って、丸軸4には概ねある最大速度および最大加速度の以内の運動を発生させることが可能である。従って、最大加速度p1’’→最大速度p’max→最大減速度p2’’という運動は、概ね最速で位置(0,0)から退避目標(Qx,Qy)へと到達させることができる運動である。
最大速度p’maxの決め方としては、指用モータ11A4,11B4,11C4の最大角速度と、リンク11A1のリンク長の積により、指先部11A3,11B3,11C3の最大速度が求まるため、これを最大速度p’maxとして用いることができる。
また、最大加速度p1’’及び最大減速度p2’’の決め方としては、指用モータ11A4,11B4,11C4の最大トルクをリンク11A1のリンク長で割って求まる指部11A,11B,11Cの最大発生力から、丸軸4に与えられる最大合力を求め、丸軸4にかかる重力の運動方向成分を引き、丸軸4と指の質量(慣性モーメントの換算分)の和で割ると、運動方程式より理論的な最大加速度と最大減速度が求まるため、これを最大加速度p1’ ’、最大減速度p2’’として用いることができる。モデル化は簡略化しているため、実際にはこれらを目安として試行錯誤で調整を加えた値を用いることもできる。
図8Bの速度プロファイルは、はじめに丸軸4の最高速度p’maxに到達するまでの時間t1は加速度p1’’にて加速する。その後、最高速度p’maxで時間t2だけ速度を維持し続け、その後、減速度p2’’にて時間t3だけ減速し、速度0で停止する運動である。
時間t1,t2,t3は、式(2),(3),(4)のように設定すると、速度p’の積分値が移動距離rとなり、最終的に丸軸4は(Qx,Qy)で停止する速度プロファイルとなる。但し、この計算でt2<0となる場合、t2=0として、図8Cに示す三角形上の速度プロファイルとする。
このときのt1,t3は式(5)の連立方程式を解き、式(6)(7)のように設定すると、速度p’の積分値がrとなり、最終的に丸軸4が(Qx,Qy)で停止する速度プロファイルとなる。
演算部7は、この速度プロファイルp’(t)をtで積分することで位置プロファイルp(t)を演算する。これらは直線的な運動を表す式なので、図8Aの位置(0,0)から(Qx,Qy)上の平面上の運動に変換し、平面上の速度プロファイル(x’(t),y’(t))及び平面位置プロファイル(x(t),y(t))を演算する。
次に、各時刻における丸軸4の位置(x,y)を指用モータ11A4,11B4,11C4の回転角(θA,θB,θC)に、速度(x’,y’)を回転速度(θA’,θB’,θC’)に変換し、ロボットハンド制御部6へ送信する(ステップS17)。丸軸4の位置から回転角を求める関数を式(8)のようにf(x,y)とすると、速度も式(9)のように、微分を数値計算することで求められる。
図9Aから図9Cを用いて、f(x,y)の計算方法を説明する。図9Aは、f(x,y)を求める方法を示した概念図である。先ず、丸軸4を位置(x,y)に配置し、指部11A,11B,11Cを最も開いたときの位置に指先部11A3,11B3,11C3を配置する。具体的には、丸軸4および指先部11A3,11B3,11C3を図9Aの方向から見たときに、これらを線分の集合として考え、各線分の頂点の座標を保持しておく。なお、図9Aでは説明のために丸軸4の断面形状を円ではなく正六角形として描いているが、より細かく設定することもできる。
次に、各指部11A,11B,11Cを閉じたとき、それぞれが丸軸4に接するまでの移動距離sA,sB,sCを計算する。
図9Cは、各指部11A,11B,11CをそれぞれsA,sB,sCだけ移動したときの状態を示している。指部11Bについては、指先部11B3と丸軸4のそれぞれから二組の線分を抽出し、衝突するまでの距離を計算することを総当たりで行い、その最小距離がsBである。
図9Bはその中で、指先部11B3の線分U1-U2と、丸軸4の線分V1-V2の組を考えたときの概念図である。ここで、線分U1-U2を、指部11Bを閉じる方向である単位方向ベクトルdへ動かしたとき、線分U1-U2と線分V1-V2がどちらかの端点で衝突する。従って、点U1を方向dへ動かしたときの線分V1-V2との交点の距離、点U2を方向dへ動かしたときの線分V1-V2との交点の距離、点V1を方向-dへ動かしたときの線分U1-U2との交点の距離、点V2を方向-dへ動かしたときの線分U1-U2との交点の距離が、sBの候補である。
具体的な求め方としては、例えば点V1を方向-dへ動かしたときの線分U1-U2との交点の距離は、式(10)に示す二元一次方程式を解いてs,tを求める。これが式(11)の条件を満たしていれば、sが答えの距離である。図9Bにおいては上記4つの候補の中で、これが最小である。また、図9Aにおける指部11Bの線分と丸軸4の線分の全ての組の中でも最小であるため、指部11Aが丸軸4に接するまでに閉じる移動距離sBは式(8)及び(9)によって求めたsである。
以上のように移動距離sA,sB,sCを求めると、ここからこれを実現するための指用モータの回転角度θA,θB,θCとの関係が計算できる。
演算部7は、式(8)及び(9)から計算される(θA,θB,θC)と(θA’,θB’,θC’)を、ロボットハンド制御部6へと指令する。ロボットハンド制御部6は、例えばPD制御によって指令された回転角度と回転角速度を目標として各指用モータ11A4,11B4,11C4を制御する。
以上により、丸軸4は目標位置(Qx,Qy)へ退避される。
従って、ロボットハンド制御部6は、被把持物(丸軸4)と環境物体との衝突の可能性が高い方向の予測データに基づいて、ロボットハンド1の中心位置に対し、その衝突方向へ被把持物(丸軸4)を寄せた位置に把持するように複数の指部11A,11B,11Cの位置を制御するようにしてもよい。
図10A及び図10Bを参照して、本発明の実施例2に係るロボットハンド及びロボットハンドの制御方法について説明する。
図10Aは、本実施例のロボットハンド1を示す斜視図である。実施例1のロボットハンド1と異なる点を主に説明する。
本実施例によるロボットハンド1は、図10Aに示すように、基部10と力センサ12の間に手首部13を備える。手首部13は、手首関節131A,131B,131Cを備える。手首関節131Aの一端は基部10に接続され、もう一端は手首関節131Cに回転自在に接続されている。手首関節131Bの一端は手首関節131Cに回転自在に接続され、もう一端は力センサ12に接続されている。
また、手首部13は、手首モータ132A,132Bを備える。手首モータ132Aは手首関節131Aに接続され、その出力軸は手首関節131Cに接続されており、手首関節131Aと131C間の回転駆動力を発生させる。手首モータ132Bは手首関節131Bに接続され、その出力軸は傘歯車133A及び133Bを介して手首関節131Cに接続され、手首関節131Bと手首部131C間の回転駆動力を発生させる。
手首部13の駆動により、実施例1での指部11A,11B,11Cを使用して被把持物を移動させる手段と比較して、被把持物を大きく移動させることができる。
図10Bは、例として下向きに移動させたときのロボットハンド1の斜視図である。例えば、ロボットアーム2の応答性が悪い場合、障害物に衝突してロボットアーム2への停止指示を出した後、指部11A,11B,11Cによって可能な移動量以上にロボットアーム2の手先が移動してしまい、被把持物は再び障害物に衝突してしまう可能性がある。そこで、本実施例のように、大きな可動範囲を有する手首部13を用いて移動を行えば、これを回避することができる。
手首部13による移動時の慣性は、指部11A,11B,11Cによる移動時の慣性より大きいため、被把持物に与えられる加速度は小さくなってしまう。そこで、実施例1の手段と組み合わせて、指部11A,11B,11Cにより初期に大きな加速度を与え、手首部13により大きな移動量を与えるといった手段とすることもできる。
手首モータ132A及び132Bの駆動量を決定する手段は、実施例1と同様の方法を用いることができる。例えば、力センサ12によって衝突方向を検出した際に、その方向へと被把持物が移動するように手首部13を駆動する。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…ロボットハンド、2…ロボットアーム、4…丸軸、5…障害物、6…ロボットハンド制御部、7…演算部、10…基部、11A,11B,11C…指部、11A1,11B1,11C1…リンク、11A2,11B2,11C2…指先接続板、11A3,11B3,11C3…指先部、11A4,11B4,11C4…指用モータ、12…力センサ、13…手首部、131A,131B,131C…手首関節、132A,132B…手首モータ、133A,133B…傘歯車、P1,P2,P3,P4…把持物の位置、T1,T2,T1’…運動軌道、U1,U2,V1,V2…線分の端点。
Claims (10)
- 被把持物を把持する複数の指部と、
前記複数の指部の各々を互いに独立して駆動する複数の駆動部と、
前記指部で把持した被把持物と環境物体との衝突を検出する検出部と、
前記検出部からの信号に基づき前記駆動部の駆動量を演算する演算部と、
前記演算部からの信号に基づき前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記検出部が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記制御部は前記演算部が演算した駆動量に基づいて前記駆動部を制御し、被把持物と環境物体との衝突の衝撃を軽減するように、前記被把持物を移動させることを特徴とするロボットハンド。 - 請求項1に記載のロボットハンドであって、
前記検出部は、被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記被把持物が前記環境物体から受けた力の方向と、衝突位置とを推定する機能を有することを特徴とするロボットハンド。 - 請求項2に記載のロボットハンドであって、
前記演算部は、前記検出部で推定した前記被把持物の前記環境物体から受けた力の方向と、衝突位置に基づいて、前記被把持物の退避位置を演算することを特徴とするロボットハンド。 - 請求項1に記載のロボットハンドであって、
前記制御部は、被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記指部による前記被把持物の把持力を弱めることを特徴とするロボットハンド。 - 請求項1に記載のロボットハンドであって、
前記制御部は、被把持物と環境物体との衝突の可能性が高い方向の予測データに基づいて、前記ロボットハンドの中心位置に対し、その衝突方向へ被把持物を寄せた位置に把持するように前記複数の指部の位置を制御することを特徴とするロボットハンド。 - 請求項1に記載のロボットハンドであって、
前記複数の指部および前記複数の駆動部が一方の面に配置され、前記検出部が他方の面に配置される基部と、
前記検出部と前記基部との間に配置され、前記検出部に対して前記基部を回転自在に接続する手首部と、を備え、
前記検出部が被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記検出部によって検出した衝突方向へ被把持物が移動するように前記手首部を駆動することを特徴とするロボットハンド。 - ロボットアームと、
前記ロボットアームを制御するロボットアーム制御部と、
前記ロボットアームの先端に接続されたロボットハンドと、を備え、
前記ロボットハンドは、請求項1から6のいずれか1項に記載のロボットハンドであることを特徴とするロボットシステム。 - 以下のステップを有するロボットハンドの制御方法;
(a)被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記被把持物が前記環境物体から受けた力を所定の閾値と比較するステップ、
(b)前記(a)ステップにおいて、前記被把持物が前記環境物体から受けた力が前記所定の閾値以上であると判定した場合、前記被把持物が前記環境物体から受けた力の方向と、衝突位置とを推定し、前記被把持物の退避位置を演算するステップ、
(c)前記(b)ステップにおいて演算した前記被把持物の退避位置に基づき、前記被把持物の退避経路を演算するステップ、
(d)前記(c)ステップにおいて演算した記被把持物の退避経路に基づき、前記被把持物を移動させるステップ。 - 請求項8に記載のロボットハンドの制御方法であって、
前記(a)ステップにおいて、被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記ロボットハンドによる前記被把持物の把持力を弱めることを特徴とするロボットハンドの制御方法。 - 請求項8に記載のロボットハンドの制御方法であって、
前記(a)ステップにおいて、被把持物と環境物体との衝突を検出した際、前記ロボットハンドが接続されたロボットアームの制御装置より前記ロボットハンドの直前の位置を受信し、当該直前の位置の方向へ前記被把持物を移動させることを特徴とするロボットハンドの制御方法。
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JP2020177888A JP2022068998A (ja) | 2020-10-23 | 2020-10-23 | ロボットハンド、ロボットシステム、ロボットハンドの制御方法 |
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