JP2022068487A - 変速装置の異常判定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速装置の入力軸の回転速度が基準速度を上回る量自体は正常時と大差ないにもかかわらず、異常が生じている場合にこれを検知することができるようにした変速装置の異常判定装置を提供する。【解決手段】CPUは、変速期間における変速装置の入力軸の回転速度NEから基準速度を減算した値の最大値である吹き量ΔNEの時系列データを取得し(S54)、ニューラルネットワークへの入力変数x(1)~x(n)とする(S56)。CPUは、ニューラルネットワークの出力変数yが閾値yth以上であると判定する場合(S60:YES)、異常がある旨判定する。ニューラルネットワークは、吹き量ΔNEの大きさが正常時と大差ないにもかかわらず、回転速度NEのフィードバック制御との相関がないデータを異常とする訓練データによって学習された学習済みモデルである。【選択図】図4

Description

本発明は、変速装置の異常判定装置に関する。
たとえば下記特許文献1には、変速装置の変速比の切り替え時において、変速装置の入力軸の回転速度が基準速度を所定以上上回る場合に、吹き異常が生じていると判定する装置が記載されている。
特開2009-180340号公報
上記基準速度を上回る量に着目して報知の対象となる異常の有無を判定する場合、上回り量の下限値はある程度大きい値に設定されることとなる。しかし、異常の中には、基準速度を上回る量自体は正常時と大差ない異常が存在することを発明者が見出した。
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.車載原動機と駆動輪との変速比を自動で変更する変速装置を備えた車両に適用され、実行装置と、記憶装置と、を備え、前記記憶装置には、前記変速装置による変速比の切り替え時における前記変速装置の入力軸の回転速度が基準速度を上回る度合いに関する複数回の前記切り替え時の時系列のパターン情報を入力とし、前記変速装置の異常の有無を示す変数を出力変数とする写像を規定する写像データが記憶されており、前記実行装置は、学習処理が実行される状態において前記変速比の複数回の切り替え時の前記回転速度の検出値に基づく前記パターン情報を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得された前記パターン情報を前記写像への入力とし、前記写像の出力に基づき前記変速装置の異常の有無を判定する判定処理と、を実行し、前記学習処理は、前記変速比の切り替え時において前記入力軸の回転速度と前記基準速度との乖離量が所定範囲から外れる場合に前記変速比の次回の切り替え時における操作量を補正する処理である変速装置の異常判定装置である。
上記学習処理によれば、入力軸の回転速度の基準速度からの乖離量を所定範囲内とするように操作量が補正されることから、回転速度のフィードバック制御がなされる。したがって、次回以降の変速比の切り替え時における回転速度の挙動には、フィードバック制御の影響が反映されるはずである。したがって、回転速度の挙動がフィードバック制御との相関を有しないパターンの場合には、何らかの異常が生じていると考えられる。こうした観点から、上記構成では、パターン情報に基づき異常の有無を判定することにより、基準速度を上回る量自体は正常時と大差ないにもかかわらず、異常が生じている場合にこれを検知することができる。
2.前記学習処理は、前記操作量の補正量を、前記変速装置に加わるトルクを示す変数であるトルク変数の値によって分割された複数の領域および変速比の切り替えの種類毎に各別に設定する処理であり、前記複数回の切り替え時の前記回転速度の検出値は、変速比の切り替えの種類が同一であるときの前記回転速度の検出値であって且つ、前記複数の領域のうちの同一の領域における前記回転速度の検出値である上記1記載の変速装置の制御装置である。
変速比の切り替え時において入力軸の回転速度と基準速度との乖離量が所定範囲から外れる場合にこれを抑制する補正量は、変速の種類やトルク変数の値に応じて異なり得る。そのため、上記構成では、トルク変数の値によって分割された領域および変速比の切り替えの種類毎に各別に補正量を設定する。また、上記構成では、トルク変数の値によって分割された領域および変速比の切り替えの種類が同一の回転速度の検出値に基づきパターン情報を取得する。そのため、パターン情報に基づき、回転速度の挙動がフィードバック制御との相関を有しないパターンであるか否かを高精度に把握できる。
一実施形態にかかる異常診断システムの構成を示す図。 同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示すブロック図。 同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるデータ解析センターが実行する処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる吹き量および吹き時間のパターンと異常との関係を示す図。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる異常診断システムの構成を示す。図1に示すように、車両の動力分割装置10は、サンギアS、キャリアCおよびリングギアRを備えた遊星歯車機構を備える。動力分割装置10のキャリアCには、内燃機関12のクランク軸12aが機械的に連結されており、サンギアSには、第1モータジェネレータ14の回転軸14aが機械的に連結されており、リングギアRには、第2モータジェネレータ16の回転軸16aが機械的に連結されている。また、リングギアRには、摩擦係合要素としての、クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2、およびワンウェイクラッチF1を備えた変速装置20を介して駆動輪30が機械的に連結されている。変速装置20は、油圧制御回路22を備えており、油圧制御回路22が備えるソレノイドバルブ24の操作によって、クラッチC1,C2およびブレーキB1,B2の係合状態を切り替えることができる。
変速装置20には、動力分割装置10のキャリアCに従動軸が機械的に連結されたオイルポンプ40が吐出する作動油が供給される。
制御装置50は、車両を制御対象とし、内燃機関12のトルクおよび排気成分比率、第1モータジェネレータ14の回転速度、ならびに第2モータジェネレータ16のトルク等の制御量を制御する。制御装置50は、制御量を制御するために、クランク角センサ60の出力信号Scrや、第1モータジェネレータ14の回転軸14aの回転角度を感知する第1回転角度センサ62の出力信号Sm1、第2モータジェネレータ16の回転軸16aの回転角度を感知する第2回転角度センサ64の出力信号Sm2を参照する。また、制御装置50は、車速センサ66によって検出される車速SPDや、アクセルセンサ68によって検出されるアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCP、油温センサ69によって検出される変速装置20の作動油の温度である油温Toilを参照する。
制御装置50は、CPU52、ROM54、記憶装置55、周辺回路56および通信機58を備えており、それらがローカルネットワーク59を介して通信可能とされている。ここで、周辺回路56は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。制御装置50は、ROM54に記憶されたプログラムをCPU52が実行することにより制御量を制御する。
制御装置50は、通信機58によって、車両VC(1)の外部のグローバルネットワーク70を介して、データ解析センター80と通信可能となっている。データ解析センター80は、複数の車両VC(1),VC(2),…からそれら車両VC内で生成されたデータを取り込み、各種演算を実行する。データ解析センター80は、CPU82、ROM84、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置85、周辺回路86、および通信機88を備えており、それらがローカルネットワーク89を介して通信可能とされている。記憶装置85には、上記各種演算に用いる写像データ85aと、複数の車両VC(1),VC(2),…によって送信されたデータの集合である、ビッグデータ85bとを記憶している。なお、データ解析センター80は、様々な仕様の車両のデータを受信するものであってよいが、以下では、説明の便宜上、複数の車両VC(1),VC(2),…は、同一仕様の車両とする。すなわち、内燃機関12の気筒数、排気量、変速装置20の構造等が同一の車両であるとする。
以下、制御装置50およびデータ解析センター80のそれぞれが実行する処理について詳述する。
(制御装置50が実行する処理)
図2に、制御装置50が実行する処理の一部を示す。図2に示す処理は、ROM54に記憶されたプログラムをCPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
変速比指令値設定処理M10は、アクセル操作量ACCPおよび車速SPDに基づき、変速比の指令値である変速比指令値Vsft*を設定する処理である。開ループ操作量算出処理M12は、変速比の切り替え時において、アクセル操作量ACCPと、油温Toilと、変速比指令値Vsft*および切替変数ΔVsftとに基づき、切替に用いられるソレノイドバルブ24によって調整される油圧の指令値のベース値である油圧指令値P0*を設定する処理である。ここで切替変数ΔVsftは、変速比の切り替えがアップシフトであるかダウンシフトであるかを示す。したがって、変速比指令値Vsft*が3速を示して且つ切替変数ΔVsftがアップシフトである場合、変速比の切り替えの種類(以下、変速の種類)が、3速から4速への切り替えであることを示す。開ループ操作量算出処理M12は、アクセル操作量ACCPと、変速の種類と、油温Toilとを入力変数とし、油圧指令値P0*を出力変数とするマップデータがROM54に予め記憶された状態でCPU52により油圧指令値P0*をマップ演算することにより実現される。なお、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、たとえば、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とするのに対し、一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。
詳しくは、油圧指令値P0*は、図2に示すフェーズ1、フェーズ2、およびフェーズ3のそれぞれにおけるものである。ここで、フェーズ1は、変速比の切り替え指令が出てから予め定められた所定時間が経過するまでの期間である。フェーズ2は、トルク相の終了までの期間であり、フェーズ3は、変速比の切り替えの完了までの期間である。なお、フェーズ3については、マップデータの出力変数の値は、実際には油圧指令値P0*の上昇速度とする。
学習補正量算出処理M14は、内燃機関12のクランク軸12aの回転速度NEと基準速度NE*との差や同差が規定値ΔNthL以上となっている時間に基づき、油圧指令値P0*を補正する学習補正量ΔPを算出する処理である。詳しくは、上記差の最大値が後述の閾値ΔNthよりも小さい上側規定値以上となる場合には、次回の変速時においては上記差が小さくなるように学習補正量ΔPを正の値に算出する処理である。また、上記差の最大値が上側規定値よりも小さい下側規定値以下の場合には、次回の変速時においては上記差が大きくなるように学習補正量ΔPを負の値に算出する処理である。また、上記差が規定値ΔNthL以上となっている時間が後述の閾値Tfthよりも小さい上側規定時間以上となっている場合には、次回の変速時においては上記時間が短くように学習補正量ΔPを正の値に算出する処理である。また、上記時間が上側規定時間よりも短い下側規定時間以下の場合には、次回の変速時においては上記時間が長くなるように学習補正量ΔPを負の値に算出する処理である。
ここで、学習補正量ΔPは、油圧指令値P0*を定めるアクセル操作量ACCP、変速の種類、および油温Toilによって定まる領域毎に各別に学習保持される。本実施形態において、それら領域は、油圧指令値P0*を定める領域と同一であり、図2には、各領域を、「A1,A2,…,B1,B2,…」と記載している。また、回転速度NEは、CPU52により、クランク角センサ60の出力信号Scrに基づき算出される。また、CPU52は、基準速度NE*を、変速比指令値Vsft*、切替変数ΔVsft、および車速SPDを入力として設定する。この処理は、変速比指令値Vsft*、切替変数ΔVsftおよび車速SPDを入力変数とし、基準となる回転速度NEを出力変数とするマップデータがROM54に予め記憶された状態で、CPU52によって基準速度NE*をマップ演算することにより実現できる。
補正処理M16は、油圧指令値P0*に学習補正量ΔPを加算することによって油圧指令値P*を算出する処理である。ここで、学習補正量ΔPは、油圧指令値P0*を定めるアクセル操作量ACCP、変速の種類、および油温Toilによって定まる領域における量が選択的に用いられる。
電流変換処理M18は、油圧指令値P*をソレノイドバルブ24に流れる電流の指令値(電流指令値I*)に変換する処理である。
制御装置50は、変速比指令値Vsft*の値が変化する場合、電流指令値I*を図2に示すようにフェーズ毎に変化させることによって摩擦係合要素を解放状態から締結状態に切り替える。なお、締結状態から解放状態に切り替えられる摩擦係合要素に対応する油圧指令値や電流指令値についても、上記同様のマップデータに基づくマップ演算とすればよい。
図3に、制御装置50が実行する処理の手順を示す。図3に示す処理は、ROM54に記憶されたプログラムをCPU52がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
図3に示す一連の処理において、CPU52は、まず、変速比の切り替え制御時であるか否かを判定する(S10)。そしてCPU52は、切り替え制御時であると判定する場合(S10:YES)、アクセル操作量ACCP、変速比指令値Vsft*、切替変数ΔVsft、および油温Toilを取得する(S12)。また、CPU52は、今回の切り替えに伴って解放状態から締結状態に切り替えられる摩擦係合要素の切り替え用のソレノイドバルブ24に対する電流指令値I*を算出する(S14)。この処理は、図2の電流変換処理M18である。そして、CPU52は、ソレノイドバルブ24に流れる電流が電流指令値I*となるようにソレノイドバルブ24を操作すべく操作信号MSを出力する(S16)。次にCPU52は、回転速度NEおよび基準速度NE*を記憶装置55に記憶する(S18)。CPU52は、S14~S18の処理を、変速が完了するまで実行する(S20:NO)。
CPU52は、変速が完了したと判定する場合(S20:YES)、以下の条件(ア)および条件(イ)の論理和が真であるか否かを判定する(S22)。
条件(ア):S18の処理において記憶した回転速度NEの時系列データの中に、回転速度NEから基準速度NE*を減算した値が、閾値ΔNth以上となるものが存在する旨の条件。
条件(イ):S18の処理において記憶した回転速度NEの時系列データから算出される上記減算した値が規定値ΔNthL以上となる時間が、閾値Tfth以上となる旨の条件である。
閾値ΔNthは、異常と判定するための、回転速度NEが基準速度NE*を上回る量の下限値に応じて設定されている。また、閾値Tfthは、異常と判定するための、上記減算した値が規定値ΔNthL以上となる時間の下限値に応じて設定されている。
CPU52は、論理和が真であると判定する場合(S22:YES)、カウンタCをインクリメントする(S24)。そして、CPU52は、カウンタCが閾値Cth以上であるか否かを判定する(S26)。本実施形態では、閾値Cthとして、たとえば「2」等、複数を想定している。CPU52は、閾値Cth以上であると判定する場合(S26:YES)、異常がある旨判定する(S28)。そしてCPU52は、図1に示す警告灯90を操作して、異常が生じた旨をユーザに報知する報知処理を実行する(S30)。
一方、CPU52は、論理和が偽であると判定する場合(S22:NO)、S18の処理において記憶した回転速度NEから基準速度NE*を減算した値のうちの代表値を吹き量ΔNEとして算出する(S32)。本実施形態では、吹き量ΔNEを、S18の処理において記憶した回転速度NEおよび基準速度NE*の組によって算出される、回転速度NEから基準速度NE*を減算した値のうちの最大値とする。
そしてCPU52は、通信機58を操作して、車両VCの識別記号ID、アクセル操作量ACCP、変速比指令値Vsft*、切替変数ΔVsft、油温Toilおよび吹き量ΔNEを車両VC(1)の外部に送信する(S34)。そして、CPU52は、上記データの送信に対応して外部から異常がある旨の通知があるか否かを判定する(S36)。そしてCPU52は、異常があると判定する場合(S36:YES)、警告灯90を操作して、点検を奨励する通知をする(S38)。
CPU52は、S30,S38の処理が完了する場合や、S36の処理において否定判定する場合には、記憶装置55に記憶されている、回転速度NEおよび基準速度NE*の時系列データを消去する(S40)。
なお、CPU52は、S40の処理を完了する場合や、S10,S26の処理において否定判定する場合には、図3に示す一連の処理を一旦終了する。
(データ解析センター80が実行する処理)
図4に、データ解析センター80が実行する処理の手順を示す。図4に示す処理は、ROM84に記憶されたプログラムをCPU82がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
図4に示す一連の処理において、CPU52は、まず識別記号ID、アクセル操作量ACCP、変速比指令値Vsft*、切替変数ΔVsft、油温Toilおよび吹き量ΔNEを受信し、記憶装置85に記憶する(S50)。次に、CPU52は、今回受信し記憶したデータに該当する変速期間と、変速の種類、アクセル操作量ACCP、および油温Toilによって分割される領域が同一の領域における吹き量ΔNEのうちの、記憶装置85に記憶されている最大値ΔNEmaxを抽出する(S52)。なお、ここでは最大値ΔNEmaxを抽出するための吹き量ΔNEの集合は、識別記号IDが同一のデータである。
次にCPU52は、今回受信し記憶したデータに該当する変速期間と、変速の種類、アクセル操作量ACCP、および油温Toilによって分割される領域が同一の領域における吹き量ΔNEの直近の過去の「n」個のサンプリング値を記憶装置85から読み出す(S54)。ここで、「n」個のサンプリング値は、識別記号IDが同一のデータである。また、「n」は、2以上の自然数である。なお、3以上であることが望ましく、5以上であることがより望ましい。
次にCPU52は、写像データ85aによって規定される写像への入力変数x(1)~x(n+1)に、S52,S54の処理によって取得したデータを代入する(S56)。すなわち、「i=1~n」として、入力変数x(i)に、吹き量ΔNE(i)を代入し、入力変数x(n+1)に、最大値ΔNEmaxを代入する。
次にCPU52は、写像データ85aによって規定される写像に入力変数x(1)~x(n+1)の値を代入することによって、出力変数yの値を算出する(S58)。
本実施形態では、写像として関数近似器を例示し、詳しくは、中間層が1層の全結合順伝搬型のニューラルネットワークを例示する。具体的には、S56の処理により値が代入された入力変数x(1)~x(n+1)とバイアスパラメータであるx(0)とが、係数wFjk(j=1~m,k=0~n+1)によって規定される線形写像にて変換された「m」個の値のそれぞれが活性化関数fに代入されることによって、中間層のノードの値が定まる。また、係数wSjによって規定される線形写像によって中間層のノードの値のそれぞれが変換された値が活性化関数gに代入されることによって、出力変数yの値が定まる。なお、本実施形態では、活性化関数fとして、ハイパボリックタンジェントを例示する。また、活性化関数gとして、ロジスティックシグモイド関数を例示する。
上記写像は、吹き量ΔNEの時系列的パターンによって、回転速度NEが基準速度NE*を閾値Δth以上上回ることがない異常の有無を識別可能なように学習された学習済みモデルである。
図5に、変速の種類、アクセル操作量ACCP、および油温Toilによって分割される領域が同一の領域であって且つ、時系列的に隣り合う変速比の切り替え期間のそれぞれにおける吹き量ΔNEの時系列データと、吹き時間Tfの時系列データとを示す。吹き時間Tfは、回転速度NEが基準速度NE*を所定量以上上回る時間である。ここで所定量は、閾値ΔNthよりも小さい。図5(a1)および図5(a2)は、正常時の吹き量ΔNEおよび吹き時間Tfの時系列データである。ここで、吹き量ΔNEは、閾値ΔNthよりも小さい値で安定している。
図5(b1)および図5(b2)は、それぞれ、吹き量ΔNE、吹き時間Tfが変速期間毎に大きく変動する例を示す。図2に示した学習補正量ΔPによる学習補正処理によれば、吹き量ΔNEや吹き時間Tfは、図5(a1)および図5(a2)に例示する正常の値に収束していくはずである。したがって、図5(b1)および図5(b2)に示す例は、時系列的に1つ前の変速期間における学習補正量ΔPによるフィードバック制御がうまく機能していない異常が生じていると考えられる。
図5(c1)は、吹き量ΔNEが閾値ΔNthに近い状態が継続する例である。吹き量ΔNEが閾値ΔNthに近い状態になる場合、学習補正量ΔPによるフィードバック制御によって、次回の変速期間においては、吹き量ΔNEが小さくなるように制御される。それにもかかわらず、吹き量ΔNEが閾値ΔNthに近い状態が継続するということは、学習補正量ΔPによるフィードバック制御がうまく機能していない異常が生じていると考えられる。
図5(c2)は、吹き時間Tfが閾値Tfthに近い状態が継続する例である。吹き時間Tfが閾値Tfthに近い状態になる場合、学習補正量ΔPによるフィードバック制御によって、次回の変速期間においては、吹き量ΔNEが小さくなるように制御される。それにもかかわらず、吹き時間Tfが閾値Tfthに近い状態が継続するということは、学習補正量ΔPによるフィードバック制御がうまく機能していない異常が生じていると考えられる。
図5(d1)は、吹き量ΔNEが閾値ΔNthよりも十分小さいにもかかわらず、吹き量ΔNEが漸減している例である。吹き量ΔNEが閾値ΔNthよりも十分に小さい場合、学習補正量ΔPによるフィードバック制御によって、次回の変速期間においては、吹き量ΔNEが大きくなるように制御される。それにもかかわらず、吹き量ΔNEが漸減している状態が継続するということは、学習補正量ΔPによるフィードバック制御がうまく機能していない異常が生じていると考えられる。
図5(d2)は、吹き時間Tfが閾値Tfthよりも十分小さいにもかかわらず、吹き時間Tfが漸減している例である。吹き時間Tfが閾値Tfthよりも十分に小さい場合、学習補正量ΔPによるフィードバック制御によって、次回の変速期間においては、吹き時間Tfが大きくなるように制御される。それにもかかわらず、吹き時間Tfが漸減している状態が継続するということは、学習補正量ΔPによるフィードバック制御がうまく機能していない異常が生じていると考えられる。
上記写像データ85aを構成する係数wFjk,wSjの値は、図5(a1)~図5(d1)に例示する時系列データのそれぞれに正常である場合には出力値として「0」が、異常であれば出力値として「1」が紐づけられた訓練データに基づき、教師あり学習によって学習されたものである。
図4に戻り、CPU52は、出力変数yの値が閾値yth以上であるか否かを判定する(S60)。そして、CPU52は、閾値yth以上であると判定する場合(S60:YES)、異常である旨判定する(S62)。そしてCPU52は、通信機88を操作して、S50の処理において受信したデータの送信元の車両VCに、異常である旨を通知する(S64)。
なお、CPU52は、S64の処理を完了する場合や、S60の処理において否定判定する場合には、図4に示した一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
制御装置50のCPU52は、変速比の切り替えの都度、上記条件(ア)および条件(イ)の論理和が連続して閾値Cthに等しい回数だけ真となる場合、異常がある旨をユーザに報知する。また、CPU52は、変速比が切り替えられる都度、その期間における回転速度NEから基準速度NE*を減算した値の最大値として、吹き量ΔNEを算出する。そして、CPU52は、識別記号IDとともに、吹き量ΔNEや、学習補正量ΔPを定義する領域を規定する変数の値である、アクセル操作量ACCP等をデータ解析センター80に送信する。
データ解析センター80のCPU82は、受信したデータを記憶装置85に記憶する。そしてCPU82は、学習補正量ΔPを定義する領域が今回送信されたデータのものと同一である直近の過去の「n-1」個の吹き量ΔNEを抽出し、今回の吹き量ΔNEと併せて、写像データ85aによって規定される写像への入力変数とする。そして、CPU82は、写像の出力変数yの値に基づき、異常の有無を判定する。
このように、吹き量ΔNEの時系列データを用いることにより、S22の処理によっては検知されない、学習補正量ΔPに基づくフィードバック制御が機能しない異常の有無を判定することができる。
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)記憶装置85に記憶されている吹き量ΔNEの中から、学習補正量ΔPが定義される複数の領域のうちの互いに共通の領域に属する吹き量ΔNEを抽出して、写像への入力となる吹き量ΔNEの時系列データとした。これにより、学習補正量ΔPによるフィードバック制御が吹き量ΔNEに、領域毎の状況の相違が影響することを抑制できることから、領域にかかわらず吹き量ΔNEを抽出する場合と比較して、異常の有無を高精度に判定できる。
(2)写像への入力変数に最大値ΔNEmaxを含めた。最大値ΔNEmaxは、その大きさが閾値ΔNthに近い場合や超えている場合には、異常が生じている可能性が高いことを意味し、これにより、過去における異常の兆候に関する情報に基づき異常の有無を判定できることから異常の有無を高精度に判定できる。
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]異常判定装置は、データ解析センター80に対応する。実行装置は、CPU82およびROM84に対応する。記憶装置は、記憶装置85に対応する。学習処理は、学習補正量算出処理M14によって算出された学習補正量ΔPに基づく処理に対応する。取得処理は、S50の処理に対応する。判定処理は、S52~S62の処理に対応する。[2]トルク変数は、アクセル操作量ACCPに対応する。
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
「変速装置の入力軸の回転速度について」
・上記実施形態では、変速装置20の入力軸の回転速度を示す変数として、同変数と強い正の相関を有する回転速度NEを用いたが、これに限らず、たとえば第2モータジェネレータ16の回転軸16aの回転速度としてもよい。
「変速装置の操作量について」
・上記実施形態では、油圧指令値P0*を、アクセル操作量ACCPと変速の種類と油温Toilとに応じて可変設定したが、これに限らない。たとえば、変速装置20に加わるトルクの大きさを示す変数であるトルク変数としては、アクセル操作量ACCPに限らず、たとえば駆動輪30に対する要求トルクであってもよい。また、トルク変数、変速の種類、および油温Toilの3つの変数に応じて油圧指令値P0*を可変設定することも必須ではない。たとえば、油温Toilにかかわらずトルク変数および変速の種類に応じて可変設定してもよい。
・上記実施形態では、油圧指令値P0*を変速装置20の開ループ操作量としたが、これに限らない。たとえば油圧の次元を有した量を扱う代わりに、はじめから電流の次元を有した量を用いてもよい。これは、開ループ操作量算出処理M12が電流指令値のベース値を算出する処理とすることで実現できる。なお、その場合、学習補正量算出処理M14は、たとえば、電流指令値のベース値の補正量を算出することとすればよい。
「学習処理について」
・上記実施形態では、学習補正量を、油圧の次元を有する量としたが、これに限らず、電流の次元を有する量としてもよい。
・上記実施形態では、学習補正量を、アクセル操作量ACCPと変速の種類と油温Toilとに応じて各別に設定したが、これに限らない。たとえば、変速装置20に加わるトルクの大きさを示す変数であるトルク変数としては、アクセル操作量ACCPに限らず、たとえば駆動輪30に対する要求トルクであってもよい。また、トルク変数、変速の種類、および油温Toilの3つの変数に応じて各別の学習補正量を算出することも必須ではない。たとえば、トルク変数および変速の種類に応じて各別の学習補正量を算出するものの、油温Toilに対しては共通の学習補正量を算出してもよい。
・上記実施形態では、油圧指令値P0*を定める領域である、トルク変数、変速の種類、および油温Toilによって区画された領域A1,A2,…毎に、各別の学習補正量を算出したが、これに限らない。たとえば、油圧指令値P0*を定める複数の領域に対して単一の学習補正量を算出してもよい。
・学習処理としては、回転速度NEから基準速度NE*を減算した値の最大値を、上側規定値未満であって下側規定値よりも大きい範囲内に制御するものに限らず、たとえば、上側規定値未満に制御するだけであってもよい。また、学習処理としては、回転速度NEから基準速度NE*を減算した値が規定値ΔNthL以上となっている時間を、上側規定時間未満であって且つ下側規定時間よりも大きい範囲内に制御するものに限らない。たとえば、上側規定時間未満に制御するだけであってもよい。
「パターン情報について」
・回転速度NEが基準速度NE*を上回る度合いに関する複数回の切り替え時のパターン情報としては、吹き量ΔNE(1),…,ΔNE(n)に限らない。たとえば、吹き時間Tf(1),…,Tf(n)であってもよい。またたとえば、吹き量ΔNE(1),…,ΔNE(n)および吹き時間Tf(1),…,Tf(n)であってもよい。
・パターン情報を構成する時系列データとしては、開ループ操作量算出処理M12が油圧指令値P0*を定義する領域が共通の領域に属して且つ学習補正量ΔPが定義される領域が共通の領域に属する吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものに限らない。たとえば、開ループ操作量算出処理M12が油圧指令値P0*を定義する領域と学習補正量算出処理M14が学習補正量ΔPを定義する領域とが異なる場合において、学習補正量算出処理M14が学習補正量ΔPを定義する領域が共通の領域に属する吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものとしてもよい。学習補正量算出処理M14が学習補正量ΔPを定義する領域が共通の領域に属する吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものにも限らない。たとえば、変速の種類が同一の吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものとしてもよい。その際、トルク変数の値によって分割された領域が同一の吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものとすることが望ましく、さらに、油温Toilによって分割された領域が同一の吹き量ΔNEや吹き時間Tfのみからなるものとすることがより望ましい。
・パターン情報としては、吹き量ΔNEの時系列データや、吹き時間Tfの時系列データにも限らない。たとえば、回転速度NEが基準速度NE*を上回る量の積算値、回転速度NEと異常判定値との差の絶対値の積算値、および回転速度NEの時系列的に前後する2つの値同士の差の積算値の3つの変数の組であってもよい。
「写像への入力変数について」
・上記実施形態では、回転速度NEが基準速度NE*を上回る度合いに関する複数回の切り替え時のパターン情報と、最大値ΔNEmaxとを入力変数としたが、これに限らない。たとえば、最大値ΔNEmaxを入力変数に含めなくてもよい。なお、吹き量等の時系列データが入力変数に含まれることが必須ではないことは、「パターン情報について」の欄に記載した通りである。
「写像について」
・ニューラルネットワークとしては、中間層が1層の全結合順伝播型のネットワークに限らない。たとえば、中間層が複数の全結合順伝播型のネットワークであってもよい。
・写像としては、ニューラルネットワークに限らない。たとえば、線形回帰モデルであってもよい。さらに、機械学習による学習済みモデルにも限らない。たとえば、上記「パターン情報について」の欄に記載した3つの変数の組のそれぞれが示す積算値と対応する判定値との大小を比較し、3つの積算値の中に対応する判定値以上となるものがある場合に、異常であると判定してもよい。なお、その場合、判定値を写像データとして記憶装置に記憶しておくことが望ましい。要は、吹き量等の時系列的な挙動が、学習処理による吹き量の制御との相関が低い挙動である場合に異常であると判定すればよい。
「異常判定装置について」
・上記実施形態では、異常判定装置をデータ解析センター80とする例を示したが、これに限らず、たとえば制御装置50を異常判定装置としてもよい。すなわち、図4のS52~S62の処理を制御装置50が実行してもよい。
10…動力分割装置
12…内燃機関
14…第1モータジェネレータ
16…第2モータジェネレータ
20…変速装置
22…ソレノイドバルブ
30…駆動輪
50…制御装置
70…グローバルネットワーク
80…データ解析センター

Claims (1)

  1. 車載原動機と駆動輪との変速比を自動で変更する変速装置を備えた車両に適用され、
    実行装置と、記憶装置と、を備え、
    前記記憶装置には、前記変速装置による変速比の切り替え時における前記変速装置の入力軸の回転速度が基準速度を上回る度合いに関する複数回の前記切り替え時の時系列のパターン情報を入力とし、前記変速装置の異常の有無を示す変数を出力変数とする写像を規定する写像データが記憶されており、
    前記実行装置は、
    学習処理が実行される状態において前記変速比の複数回の切り替え時の前記回転速度の検出値に基づく前記パターン情報を取得する取得処理と、
    前記取得処理によって取得された前記パターン情報を前記写像への入力とし、前記写像の出力に基づき前記変速装置の異常の有無を判定する判定処理と、を実行し、
    前記学習処理は、前記変速比の切り替え時において前記入力軸の回転速度と前記基準速度との乖離量が所定範囲から外れる場合に前記変速比の次回の切り替え時における操作量を補正する処理である変速装置の異常判定装置。
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