JP2022064192A - グラフト共重合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形体にしたときに外観不良を起こしにくいグラフト共重合体及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明は、幹ポリマーと、該幹ポリマーに結合する枝ポリマーとで形成されたグラフト共重合体であって、前記枝ポリマーはポリエステルを含み、下記ゲル含有割合の測定方法で測定されるゲル含有割合が5質量%以下である。<ゲル含有割合の測定方法>濃度が2質量%であるグラフト共重合体のキシレン溶液を、目開きが150μmであるフィルターでろ過した後、前記フィルター上に残ったゲルの乾燥質量を測定し、下記式(1)から算出されるG値をゲル含有割合(質量%)とする。G=(Wg/Wp)×100 (1)(ここで、前記式(1)中、Gはゲル含有割合を、Wgはゲルの乾燥質量を、Wpはゲル含有割合の測定方法で使用したグラフト共重合体の質量を表す)【選択図】なし

Description

本発明は、グラフト共重合体及びその製造方法に関する。
グラフト共重合体は幹ポリマーと該幹ポリマーに共有結合している枝ポリマーとからなる特異な形態を有する共重合体であり、例えば、基板の表面改質及び樹脂の物性改良等、種々の目的で利用されている。グラフト共重合体の製造方法として、幹ポリマーに紫外線、ガンマ線、電子線等を照射することにより、あるいは、ラジカル開始剤を用いることにより、幹ポリマーに活性点を形成させ、これを起点に枝ポリマーの重合反応を行う方法が知られている。その他、重合反応の開始点となり得る官能基を有する幹ポリマーを用いて枝ポリマーの重合反応を行う方法、あるいは、幹ポリマーと枝ポリマーとを化学反応により結合させる方法等も、グラフト共重合体の製造方法として知られている(特許文献1~3等を参照)。
特開2011-184511号公報 特開2015-229689号公報 特開平11-255801号公報
ところで、グラフト共重合体を製造する場合、いわゆるゲルの発生が起こり得る。グラフト共重合体と共存するゲルは、例えば、グラフト共重合体の成形体の外観不良及び機械強度低下等の問題を引き起こし得る。この観点から、ゲルの混入を極力抑制したグラフト共重合体の開発が重要になると考えられる。特許文献1には、ブタジエンゴムにアクリルアミドをグラフト重合する際に、ニトロキシド媒介重合を利用する方法が、特許文献2には、ブタジエンゴムにメタクリル酸メチルをグラフト重合する際に、チオカルボニルチオ化合物存在下でラジカル重合を行う方法が開示されている。特許文献3には、酢酸セルロースにε-カプロラクトンをグラフト重合する技術が開示されている。しかしながら、これらに開示されるいずれの技術においてはゲルの抑制という観点では十分ではなく、このため、成形体の外観不良を引き起こしやすかった。
特に、枝ポリマーとしてポリエステルをグラフト化する場合のゲル化の抑制及び成形体の外観向上については、これまでに十分に検討がなされていなかった。特許文献3に開示されるように、グラフト共重合体の製造において、ε-カプロラクトン等のラクトンモノマーを重合してポリエステルをグラフト化させる場合、金属ハロゲン化物や金属アルコキシド等の金属化合物を使うことが多く、この場合、グラフト共重合体と共にゲルが生成しやすくなる。グラフト共重合体の製造で金属化合物を用いると、斯かる金属化合物は幹ポリマー中の反応開始点となり得る官能基と金属化合物とが反応して架橋体を形成するおそれがあり、これにより、架橋構造体が形成されやすくなるからである。例えば、2-エチルヘキサン酸スズ等を用いてラクトンモノマーのグラフト重合をする方法も考えられるが、この場合、スズを使用することによる環境への影響を懸念する必要があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、成形体にしたときに外観不良を起こしにくいグラフト共重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ゲルを有さないか、もしくはゲル含有割合を特定量の範囲とすることで、上記目的を達成できることを見出し、また、特定の製造条件を採用することによっても上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
幹ポリマーと、該幹ポリマーに結合する枝ポリマーとで形成されたグラフト共重合体であって、
前記枝ポリマーはポリエステルを含み、
下記ゲル含有割合の測定方法で測定されるゲル含有割合が5質量%以下である、グラフト共重合体。
<ゲル含有割合の測定方法>
濃度が2質量%であるグラフト共重合体のキシレン溶液を、目開きが150μmであるフィルターでろ過した後、前記フィルター上に残ったゲルの乾燥質量を測定し、下記式(1)から算出されるG値をゲル含有割合(質量%)とする。
G=(Wg/Wp)×100 (1)
(ここで、前記式(1)中、Gはゲル含有割合を、Wgはゲルの乾燥質量を、Wpはゲル含有割合の測定方法で使用したグラフト共重合体の質量を表す)
項2
グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーに前記枝ポリマーが結合した構造を有する、項1に記載のグラフト共重合体。
項3
前記ポリエステルは環状エステル化合物の開環重合体である、項1又は2に記載のグラフト共重合体。
項4
環状エステル化合物がβ-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン、グリコリド、ラクチド及びトリメチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のグラフト共重合体。
項5
活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物との開環重合反応を金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の存在下で行うことでグラフト共重合体を含む生成物を得る工程を備える、グラフト共重合体の製造方法。
項6
活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物と、金属アルコキシドとが溶解した溶液中での開環重合反応により、グラフト共重合体を含む生成物を得る工程を備え、
前記開環重合反応開始前の前記溶液中の水分量が、当該溶液の全質量に対して100質量ppm以上、10000質量ppm以下である、グラフト共重合体の製造方法。
項7
前記金属アルコキシド中の金属は、スカンジウム、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンである、項5又は6に記載の製造方法。
本発明のグラフト共重合体は、成形体にしたときに外観不良を起こしにくい。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
本発明者らは、ポリエステルを枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造時に、触媒として金属アルコキシドを用いた場合にゲルの生成量が顕著に増えるという知見にたどり着いた。斯かる知見に基づき、本発明者らは鋭意検討し、ポリエステルを枝ポリマーとするグラフト共重合体を、金属アルコキシドが部分的に加水分解及び重縮合した化合物を触媒として用いることで、あるいは、金属アルコキシドを使用する場合には、重合開始前の反応系中の水分量を一定の範囲にして重合反応を行うことで、ゲルの生成量を抑制できることを見出した。
本明細書において、「ゲル」とは、グラフト重合体を可溶な溶媒に溶解させた場合に、溶解せずに溶け残る成分(例えば、膨潤する有機成分)を意味する。
1.グラフト共重合体
本発明のグラフト共重合体は、幹ポリマーと、該幹ポリマーに結合する枝ポリマーとで形成されたグラフト共重合体であって、前記枝ポリマーはポリエステルを含み、かつ、グラフト共重合体において、下記<ゲル含有割合の測定方法>で測定されるゲル含有割合が5質量%以下である。
<ゲル含有割合の測定方法>
濃度が2質量%であるグラフト共重合体のキシレン溶液を、目開きが150μmであるフィルターでろ過した後、前記フィルター上に残ったゲルの乾燥質量を測定し、下記式(1)
G=(Wg/Wp)×100 (1)
から算出されるG値をゲル含有割合(質量%)とする。
ここで、前記式(1)中、Gはゲル含有割合を、Wgはゲルの乾燥質量を、Wpはゲル含有割合の測定方法で使用したグラフト共重合体の質量を表す。ゲル含有割合の測定方法の詳細は、後記実施例で詳述する。
グラフト共重合体は、一つの幹ポリマーと、該幹ポリマーに結合する複数の枝ポリマーとで形成される。特には、枝ポリマーは、共有結合により幹ポリマーに結合している。グラフト共重合体は、幹ポリマーの側鎖が枝ポリマーで置換された構造を有することができる。
斯かる幹ポリマーの側鎖が枝ポリマーで置換された構造としては、例えば、幹ポリマーが活性水素を含有する置換基を有するポリマー由来であり、活性水素を含有する置換基を基点に枝ポリマーがグラフト化された構造を挙げることができる。斯かる構造は具体的に、ポリマー中の前記置換基又は該置換基中の活性水素が、枝ポリマーに置換された構造が挙げられる。言い換えれば、枝ポリマーが結合する前の幹ポリマーは、活性水素を含有する置換基を有するポリマーとすることができる。以下、活性水素を含有する置換基を有するポリマーを「ポリマーP」と表記する。
ポリマーPにおいて、活性水素を有する置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基等を挙げることができ、ヒドロキシ基及びカルボキシ基であることが好ましい。
ポリマーPにおいて、活性水素を含有する置換基は、例えば、ポリマーPの主鎖又は側鎖に存在する。
ポリマーPは、該ポリマーPに存在する前記活性水素が枝ポリマーに置換されることができる構造を有する限りは特に限定されず、例えば、公知の重合体を広く挙げることができる。例えば、ポリマーPとしては、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマー、スチレン系重合体、アクリル系重合体、アクリル酸重合体、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリグリシドール等を挙げることができる。グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーとしては、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。
ポリマーPは、ホモポリマーであってもよいし、共重合体であってもよく、ポリマーPが共重合体である場合は、例えば、オレフィン/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル共重合体、アクリル共重合体等の種々の共重合体を挙げることができる。
ポリマーPの、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマー以外の具体例としては、ポリ4-ヒドロキシスチレン、スチレン/4-ヒドロキシスチレン共重合体、ポリアクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、ポリメタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、ポリアクリル酸、エチレン/アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル/ビニルブチラール/ビニルアルコール共重合体、スチレン/アリルアルコール共重合体、ポリグリシドール、エチレンオキシド/グリシドール共重合体、ポリビニルアニリン、スチレン/ビニルアニリン共重合体、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル/アクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド、ポリ(N-プロピルアクリルアミド)等を挙げることができる。
ポリマーPは、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーであることが好ましい。つまり、前記グラフト共重合体は、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーに前記枝ポリマーが結合した構造を有することが好ましい。なぜなら、グルコース誘導体は生分解性を有することから、グラフト共重合体の枝ポリマーであるポリエステルの生分解性特長を活かすことができるので、グラフト共重合体の生分解性が特に向上しやすいからである。
ポリマーPがグルコース誘導体を構成単位として含むポリマーである場合、ポリマーPは前述のように、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、中でも、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの各種セルロースでは、活性水素を含有する置換基は水酸基となる。ポリマーPは、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーである場合、その置換度は特に限定されない。
グラフト共重合体において、幹ポリマーは、前記ポリマーP中の前記活性水素が枝ポリマーに置換されることにより形成される。従って、グラフト共重合体において、前記ポリマーPが例えばセルロースである場合、グラフト共重合体は、セルロース樹脂に含まれる少なくとも一以上のヒドロキシ基又は該ヒドロキシ基中の水素原子が枝ポリマーに置換された構造を有する。
グラフト共重合体は、ただ1種の幹ポリマーを含むことができ、あるいは、異なる2種以上の幹ポリマーを含むこともできる。
グラフト共重合体において、前記枝ポリマーはポリエステルを含む。ポリエステルは、通常は、幹ポリマーに共有結合により結合して存在する。より具体的には、グラフト共重合体は、前記ポリマーP中の活性水素を有する置換基又は該置換基中の活性水素(例えば、ヒドロキシ基又はヒドロキシ基の水素、もしくは、カルボキシ基又はカルボキシ基の水素)がポリエステルに置換されている。
ポリエステルの種類は特に限定されず、例えば、公知のポリエステルを広く挙げることができる。ポリエステルとしては、環状エステル化合物の開環重合体、ジカルボン酸とジオールの重縮合体、環状酸無水物とエポキシドの共重合体等を挙げることができる。中でも、ポリエステルは、グラフト共重合体を簡便に製造できるという点で、環状エステル化合物の開環重合体であることが好ましい。
前記環状エステル化合物の種類は特に限定されず、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン、グリコリド、ラクチド及びトリメチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。中でも反応性が高いという観点から、前記環状エステル化合物は、ε-カプロラクトン及びラクチドが好ましい。ラクチドはL体、D体、メソ体のいずれでもよいし、これらの混合物でもよい。
ポリエステルは、ホモポリマーであってもよいし、2種以上の単量体で形成されるコポリマーであってもよい。また、グラフト共重合体に含まれる枝ポリマーは、1種又は2種以上とすることができる。
グラフト共重合体は、前記幹ポリマー及び枝ポリマーで形成される限り、例えば、両者の存在割合は特に限定されない。幹ポリマー及び枝ポリマーの両方の特長が発揮されやすくなるという観点で、グラフト共重合体は、幹ポリマーの全質量に対するポリエステル(枝ポリマー)の含有割合が50質量%以上、300質量%以下であることが好ましく、70質量%以上、200質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上、150質量%以下がさらに好ましい。
この幹ポリマーに対する枝ポリマーの含有割合(質量%)は、核磁気共鳴分光分析(NMR分析)及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。なお、グラフト共重合体において、幹ポリマーに対する枝ポリマーの含有割合(質量%)は、「グラフト率」ともいう。
本発明のグラフト共重合体は、ゲル含有割合が5質量%以下であることで、グラフト共重合体を成形体(例えば、フィルム)にしたときに外観不良が起こりにくく、また、機械強度の低下も抑制されやすい。グラフト共重合体は、ゲル含有割合が3質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0質量%であること、つまり、ゲルが含まれないことが特に好ましい。
グラフト共重合体の質量平均分子量は特に制限されず、例えば、50000以上、1000000以下とすることができる。この場合、グラフト共重合体は、より優れた機械物性を有することができ、また、成形性にも優れる。グラフト共重合体の質量平均分子量は100000以上、800000以下であることが好ましく、100000以上、700000以下であることがさらに好ましく、100000以上、500000以下であることが特に好ましい。
本発明のグラフト共重合体は、本発明の効果が阻害されない限り、添加剤等を含むことができる。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の添加剤を広く挙げることができる。具体的には、樹脂の成形加工での際に添加される公知の添加剤をグラフト共重合体に広く適用することができる。添加剤の含有割合も特に限定されず、例えば、公知と同様とすることができる。
本発明のグラフト共重合体の形態は特に限定されず、使用用途に応じて種々の形態とすることができ、例えば、粉末、顆粒、塊状、ペレット状、ストランド状、繊維状、液状、分散体、溶液、成形体等、種々の形態とすることができる。
本発明のグラフト共重合体は、ゲルの含有量が少ないことから、機械強度及び成形加工性に優れる成形体を得るための原料として好適である。グラフト共重合体を用いて得られる成形体の種類は特に限定されず、フィルム、シート、繊維等、種々の成形体を挙げることができる。
グラフト共重合体の製造方法は、得られるグラフト共重合体のゲル含有割合が上記範囲である限りは特に限定されない。例えば、活性水素を含有する置換基を有するポリマー(ポリマーP)の存在下で、ポリエステルの重合反応を行う工程を備える製造方法が挙げられる。具体的には、ポリマーPの存在下で環状エステル化合物の開環重合、ジカルボン酸化合物とジオール化合物との重縮合、環状酸無水物化合物とエポキシドとの共重合等をすることで、グラフト共重合体を得ることができる。中でも、合成が容易という観点から、環状エステル化合物の開環重合による方法が好ましく用いられ、特に、ゲル含有割合がより小さくなりやすいという点で、後記する「製造方法A」又は「製造方法B」によって、グラフト共重合体を製造することが好ましい。
2.グラフト共重合体の製造方法
本発明は、グラフト共重合体の製造方法も包含する。本発明のグラフト共重合体の製造方法は、下記の製造方法A及び製造方法Bを包含する。
製造方法Aは、下記工程Aを備える。
工程A:活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物との開環重合反応を金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の存在下で行うことでグラフト共重合体を含む生成物を得る工程。
他方、製造方法Bは、下記工程Bを備える。
工程B:活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物と、金属アルコキシドとが溶解した溶液中での開環重合反応により、グラフト共重合体を含む生成物を得る工程。特に、斯かる工程Bにおいて、前記開環重合反応開始前の前記溶液中の水分量が、当該溶液の全質量に対して100質量ppm以上、10000質量ppm以下である。
以下、まず工程A及び工程Bの共通事項を説明する。
工程A及び工程Bにおいて、活性水素を含有する置換基を有するポリマーは、前記ポリマーPと同様である。従って、工程A及び工程Bでは、原料としてポリマーPを使用し、このポリマーPがグラフト共重合体における幹ポリマーとを形成する。
ポリマーPの活性水素を含有する置換基は、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基を挙げることができる。
ポリマーPは、グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーであることが好ましい。ポリマーPがグルコース誘導体を構成単位として含むポリマーである場合、ポリマーPは具体的には、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、中でも、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの各種セルロースでは、活性水素を含有する置換基は水酸基となる。
ポリマーPの質量平均分子量は、特に限定されず、目的とするグラフト共重合体の性能に応じて適宜選択することができる。ポリマーPの質量平均分子量は、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、30000以上がさらに好ましい。また、活性水素を含有する置換基を側鎖に有するポリマーの質量平均分子量は、1000000以下が好ましく、750000以下がより好ましく、500000以下がさらに好ましく、300000以下がよりさらに好ましく、200000以下が特に好ましい。
ポリマーPに含まれる前記活性水素(例えば、ヒドロキシ基の水素及びカルボキシ基の水素)の含有量は、特に限定されない。例えば、ポリマーPに含まれる前記活性水素の含有量は、1gのポリマーPあたり0.1mmol以上、20mmol以下が好ましく、0.4mmol以上、10mmol以下がより好ましく、0.7mmol以上、5mmol以下がさらに好ましい。
工程A及び工程Bにおいて、環状エステル化合物は、グラフト共重合体の枝ポリマーを生成させるための原料である。
環状エステル化合物は、前述のポリエステルを形成するための環状エステル化合物と同様である。従って、工程A及び工程Bで使用する環状エステル化合物は、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン、グリコリド、ラクチド及びトリメチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。中でも反応性が高いという観点から、前記環状エステル化合物は、ε-カプロラクトン及びラクチドが好ましい。ラクチドはL体、D体、メソ体のいずれでもよいし、これらの混合物でもよい。
環状エステル化合物は、1種単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することもできる。
工程A及び工程Bにおいて、環状エステル化合物の使用量は特に限定されない。例えば、反応を円滑に進行させると共に、幹ポリマーと枝ポリマー両方の性質が効果的に発現しやすい観点から、100質量部の前記ポリマーPに対して、環状エステル化合物の使用量は50質量部以上、500質量部以下が好ましく、75質量部以上、300質量部以下がより好ましく、90質量部以上、200質量部以下がさらに好ましい。
工程A及び工程Bにおいて、開環重合反応は、必要に応じて反応溶媒を用いることができる。反応溶媒は特に限定されず、例えば、開環重合反応で使用される公知の反応溶媒を広く用いることができる。反応溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジメトキシエタン、ジグリム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、アニソール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルミアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。
反応溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点から、ポリマーPと環状エステル化合物の合計量100質量部に対して、100~10000質量部が好ましい。
(工程A)
次に工程Aについて詳述する。工程Aでは、前記ポリマーPと、前記環状エステル化合物との開環重合反応を、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の存在下で行う。
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、環状エステル化合物の開環重合を開始させるための触媒である。斯かる開環重合は、ポリマーPの活性水素を起点として進行する。
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物において、金属アルコキシドに含まれる金属の種類は、環状エステル化合物の開環重合を開始させることができる限り特に限定されない。金属アルコキシド中の金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛又はチタンであることが好ましい。中でも、金属アルコキシド中の金属は、スカンジウム、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンであることがより好ましく、チタンであることが特に好ましい。また、金属アルコキシドに含まれるアルコキシド部位としては、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、イソブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、2-エチルヘキソキシド等が挙げられる。反応性が高いという観点から、イソプロポキシド、n-ブトキシド、イソブトキシド及び2-エチルヘキソキシドが好ましい。
従って、工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物において、金属アルコキシドとしては、アルミニウムイソプロポキシド、テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)ブタン、ジルコニウムn-ブトキシド等を好ましく使用することができる。
工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、前記属アルコキシドを部分的に加水分解及び重縮合することで準備することができる。金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表すことができる。
Figure 2022064192000001
前記式(1)及び(2)中、Mは金属、Rはアルキル基を示し、mは2~20の整数である。具体的にMは、前記金属アルコキシドに含まれる金属と同様であり、特に前記金属の中でも4価の金属が前記式(1)のMであり、3価の金属が前記式(2)のMである。
また、Rは前記金属アルコキシドに含まれるアルコキシド部位のアルキル基であり、例えば、炭素数1~10の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
前記式(1)及び(2)において、mの値は、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物を形成するために使用する金属アルコキシドの種類、加水分解反応の条件(例えば、水の使用量、溶媒の種類及び使用量、並びに反応温度)等に依拠する。従って、工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、mの値が異なる複数の化合物が混在する場合もある(つまり、工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の分子量は分布を有し得る)。
工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法によって金属アルコキシドの部分加水分解縮合物を入手することができる。例えば、あらかじめ前記金属アルコキシドを加水分解及び重縮合して金属アルコキシドの部分加水分解縮合物を得ることができる。この場合、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合物は単離して用いることができ、あるいは、単離せずに重縮合後の反応液を工程Aにおける金属アルコキシドの部分加水分解縮合物として使用することもできる。あるいは、市販品等から金属アルコキシドの部分加水分解縮合物を入手することもできる。
工程Aにおいて、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の使用量は特に限定されない。例えば、環状エステル化合物の開環重合反応の進行が促進しやすくなるという観点から、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の使用量は、環状エステル化合物1モルに対し、0.0001モル以上が好ましく、0.0002モル以上がより好ましい。また、使用量に見合う効果を得るという観点から、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の使用量は、環状エステル化合物1モルに対し、0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましい。
工程Aにおいて、開環重合反応を行う方法は特に限定されない。例えば、ポリマーPと、環状エステル化合物と、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物と、必要に応じて使用される反応溶媒とを混合して混合物を調製し、この混合物を所定の温度範囲に維持することで、開環重合反応を行うことができる。その他、ポリマーP、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物及び反応溶媒の混合物に、環状エステル化合物を一括または滴下方式で加えることもできる。
工程Aでは、ポリマーPの活性水素を有する置換基と、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物とが反応することで、ポリマーPに開環重合反応を進行させることができる開始点が形成される。この開始点を起点として環状エステル化合物の開環重合反応が進行し、ポリマーP由来の幹ポリマーと、この幹ポリマーからポリエステルが枝ポリマーとして生成する。この結果、ポリマーP由来の幹ポリマーに複数の枝ポリマーが結合してなるグラフト共重合体が生成する。斯かるグラフト共重合体は、ポリマーP中の活性水素を含有する置換基又はその水素原子がポリエステルに置換された構造を有する。
開環重合反応の温度は特に限定されず、例えば、反応時間短縮の観点から50℃以上とすることができ、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、目的物の収率を向上させる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。反応時間は、重合反応条件に応じて適宜決めることができ、通常、1~48時間程度であることが好ましい。
以上の工程Aによって、グラフト共重合体を含む生成物が得られる。斯かる生成物は、必要に応じ、適宜の方法で精製処理等を行うことができ、これによりグラフト共重合体を単離することができる。精製処理の方法は、例えば、公知の方法を広く採用することができ、具体的には、再沈殿法、液々抽出法、吸着法、膜分離法等が挙げられる。
(工程B)
次に工程Bについて詳述する。工程Bでは、前記ポリマーPと、前記環状エステル化合物と、金属アルコキシドとが溶解した溶液中での開環重合反応により、グラフト共重合体を含む生成物を得る。
工程Bで使用する金属アルコキシドは、環状エステル化合物の開環重合を開始させるための触媒である。斯かる開環重合は、ポリマーPの活性水素を起点として進行する。
工程Bで使用する金属アルコキシドは、前述の工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物を得るための金属アルコキシドと同様である。従って、工程Bで使用する金属アルコキシドにおいて、金属の種類、アルコキシド部位も工程Aで使用する金属アルコキシドの部分加水分解縮合物におけるそれらと同様であり、例えば、アルコキシド部位のアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐を有するアルキル基が挙げられる。
工程Bで使用する金属アルコキシドとしては、アルミニウムイソプロポキシド、テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)ブタン、ジルコニウムn-ブトキシド等を好ましく使用することができる。
工程Bで使用する金属アルコキシドの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法によって金属アルコキシドを入手することができる。あるいは、市販品等から金属アルコキシドを入手することもできる。
特に工程Bでは、開環重合反応の原料であるポリマーP及び環状エステル化合物と、必要に応じて使用される反応溶媒とを含む溶液(以下、単に「原料を含む溶液」と表記することがある)中に、金属アルコキシドと水とを含有させる。
この場合、前記開環重合反応開始前の前記原料を含む溶液中の水分量を、該溶液の全質量に対して100質量ppm以上、10000質量ppm以下とする。これによって、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合が進行しやすくなり、結果として開環重合反応が進行しやすくなると共に、ゲル含有割合が5質量%以下であるグラフト共重合体が得られやすい。工程Bにおいて、前記開環重合反応開始前の前記原料を含む溶液中の水分量は、該溶液の全質量に対して300質量ppm以上であることが好ましく、また、8000質量ppm以下であることが好ましく、5000質量ppm以下であることがより好ましい。
ここで、上述の「開環重合反応開始前」とは、原料を含む溶液に金属アルコキシド及び水を加えて溶解させた直後から、開環重合反応が行われる温度に達する時までを意味する。
工程Bにおいて、原料を含む溶液中に、金属アルコキシドと水とを含有させる場合において、金属アルコキシド及び水の使用量は特に限定されない。例えば、金属アルコキシド1モルに対して水の使用量は0.1~400モルが好ましく、0.5~300モルがより好ましく、1~200モルがさらに好ましく、2~100モルが特に好ましい。
工程Bにおいて、環状エステル化合物の開環重合反応の進行が促進しやすくなるという観点から、金属アルコキシドの使用量は、環状エステル化合物1モルに対し、0.0005モル以上が好ましく、0.001モル以上がより好ましい。また、使用量に見合う効果を得るという観点から、金属アルコキシドの使用量は、環状エステル化合物1モルに対し、0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましい。
工程Bにおいて、開環重合反応を行う方法は特に限定されない。例えば、ポリマーPと、環状エステル化合物と、反応溶媒とを混合して溶液を調製し、この溶液中に金属アルコキシドと、水とを加え、次いで、所定の温度範囲に維持することで、開環重合反応を行うことができる。
工程Bでは、ポリマーPの活性水素を有する置換基と、溶液中で金属アルコキシドと水から生成した金属アルコキシドの部分加水分解縮合物とが反応することで、ポリマーPに開環重合反応を進行させることができる開始点が形成される。この開始点を起点として環状エステル化合物の開環重合反応が進行し、ポリマーP由来の幹ポリマーと、この幹ポリマーからポリエステルが枝ポリマーとして生成する。この結果、ポリマーP由来の幹ポリマーに複数の枝ポリマーが結合してなるグラフト共重合体が生成する。斯かるグラフト共重合体は、ポリマーP中の活性水素を含有する置換基又はその水素原子がポリエステルに置換された構造を有する。
開環重合反応の温度は特に限定されず、例えば、反応時間短縮の観点から50℃以上とすることができ、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、目的物の収率を向上させる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。反応時間は、重合反応条件に応じて適宜決めることができ、通常、1~48時間程度であることが好ましい。
工程Bにおいて、開環重合反応温度まで昇温するときの昇温速度は特に限定されない。例えば、開環重合反応に使用するすべての原料を仕込んだ時の反応系の温度が常温以下(例えば35℃以下)であり、そこから1~50℃/分の昇温速度で所望の反応温度に昇温することができる。
以上の工程Bによって、グラフト共重合体を含む生成物が得られる。斯かる生成物は、必要に応じ、適宜の方法で精製処理等を行うことができ、これによりグラフト共重合体を単離することができる。精製処理の方法は、例えば、公知の方法を広く採用することができ、具体的には、再沈殿法、液々抽出法、吸着法、膜分離法等が挙げられる。
上記工程Aを備える製造方法A、又は、上記工程Bを備える製造方法Bで得られるグラフト共重合体は、ゲル含有割合が5質量%以下である。これにより、機械強度及び成形加工性に優れる成形体を得るための原料として好適である。ここでいうゲル含有割合も、前述の<ゲル含有割合の測定方法>で測定されるG値を意味する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(開環重合反応開始前の溶液中の水分量)
開環重合反応開始前の溶液中の水分量は、斯かる溶液の一部を採取し、カールフィッシャー水分計(平沼産業製微量水分測定装置AQ-300)を用いて測定した。測定液は平沼産業製アクアライトRS-A、対極液は平沼産業製アクアライトCNとした。
(グラフト共重合体の質量平均分子量(Mw))
グラフト共重合体の質量平均分子量(Mw)はGPC法により測定した。具体的に、グラフト共重合体の濃度が0.2質量%であるN,N-ジメチルホルムアミド溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、グラフト共重合体の質量平均分子量(Mw)を測定した。この測定値を、同一条件で測定した質量平均分子量が既知のポリスチレンと比較することにより、グラフト共重合体の質量平均分子量Mwを算出した。測定条件は、以下の通りとした。
・カラム:GPCカラム(昭和電工株式会社の商品名、Shodex OHPac SB-804,SB-805)
・カラム温度:40℃
・溶出液:N,N-ジメチルホルムアミド
・流速:1.0mL/min
(ゲル含有割合)
各実施例及び比較例で得られたグラフト共重合体1gをキシレン49gに溶解させて2質量%であるグラフト共重合体のキシレン溶液を、目開き150μmであるフィルターでろ過した。このフィルター上に残ったゲルを50gのキシレンで洗浄後、105℃の雰囲気下で3時間のゲルを乾燥させてから、その質量を測定した。この測定値に基づき、下記式(1)
G=(Wg/Wp)×100 (1)
(ここで、前記式(1)中、Gはゲル含有割合を、Wgはゲルの乾燥質量を、Wpはゲル含有割合の測定方法で使用したグラフト共重合体の質量を表す)
から算出されるG値をゲル含有割合(質量%)とした。
(実施例1)
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けた200mL容セパラブルフラスコ(反応容器)を窒素置換し、ポリマーPとしてエチルセルロース(Mw141000、置換度2.47)15gと、反応用の溶媒としてキシレン150gと、水0.07g(4.1mmol)と、触媒としてテトラn-ブトキシチタン0.09g(0.26mmol)と、環状エステル化合物としてε-カプロラクトン20g(0.17mol)とを仕込み、内温140℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して溶解させた。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、410質量ppmであった。140℃にて開環重合反応を9時間にわたって行った後(工程B)、冷却して内容物を取り出し、50質量%メタノール水溶液200gを加えることで、グラフト共重合体を含む生成物を析出させた。この生成物をろ過、乾燥することで、目的のグラフト共重合体28.6gを得た。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は108質量%、質量平均分子量は382000であり、また、ゲルは見られなかった(つまり、ゲル含有割合は0質量%であった)。
(実施例2)
水を0.02g(1.1mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、125質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は130質量%、質量平均分子量は492700であり、ゲル含有割合は0.7質量%であった。
(実施例3)
水を0.36g(20mmol)に変更し、開環重合反応を26時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、1930質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は99質量%、質量平均分子量は434100であり、また、ゲルは見られなかった(つまり、ゲル含有割合は0質量%であった)。
(実施例4)
水を0.56g(31mmol)に変更し、開環重合反応を30時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、3140質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は122質量%、質量平均分子量は483500であり、また、ゲルは見られなかった(つまり、ゲル含有割合は0質量%であった)。
(実施例5)
水を1.30g(72mmol)に変更し、開環重合反応を40時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、7432質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は55質量%、質量平均分子量は278100であり、また、ゲルは見られなかった(つまり、ゲル含有割合は0質量%であった)。
(実施例6)
触媒をテトラn-ブトキシチタンをテトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン0.15g(0.26mmol)に変更し、開環重合反応を18時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、183質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は107質量%、質量平均分子量は375600であり、ゲル含有割合は0.8質量%であった。
(実施例7)
触媒をテトラn-ブトキシチタンをテトライソプロポキシチタン0.07g(0.26mmol)に変更し、開環重合反応を24時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、240質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は105質量%、質量平均分子量は360700であり、ゲル含有割合は1.1質量%であった。
(実施例8)
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けた200mL容セパラブルフラスコ(反応容器)を窒素置換し、ポリマーPとしてエチルセルロース(Mw141000、置換度2.47)15gと、反応用の溶媒としてキシレン150gと、触媒としてテトラn-ブトキシチタンテトラマー0.06g(0.06mmol)と、環状エステル化合物としてε-カプロラクトン20g(0.17mol)とを仕込み、内温140℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して溶解させた。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、26質量ppmであった。140℃にて開環重合反応を9時間にわたって行った後(工程A)、冷却して内容物を取り出し、50質量%メタノール水溶液200gを加えることで、グラフト共重合体を含む生成物を析出させた。この生成物をろ過、乾燥することで、目的のグラフト共重合体28.6gを得た。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は120質量%、質量平均分子量は379000であり、ゲル含有割合は2.1質量%であった。
(比較例1)
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けた200mL容セパラブルフラスコ(反応容器)を窒素置換し、ポリマーPとしてエチルセルロース(Mw141000、置換度2.47)15gと、反応用の溶媒としてキシレン150gと、触媒としてテトラn-ブトキシチタン0.09g(0.26mmol)と、環状エステル化合物としてε-カプロラクトン20g(0.17mol)とを仕込み、内温140℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して溶解させた。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、85質量ppmであった。140℃にて開環重合反応を9時間にわたって行った後、冷却して内容物を取り出し、50質量%メタノール水溶液200gを加えることで、グラフト共重合体を含む生成物を析出させた。この生成物をろ過、乾燥することで、目的のグラフト共重合体30.0gを得た。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は111質量%、質量平均分子量は414200であり、ゲル含有割合は5.5質量%であった。
(比較例2)
水を2.0g(111mmol)に変更し、開環重合反応を24時間にわたって行ったこと以外は実施例1と同様の方法でグラフト共重合体を得ようとしたが、重合反応が進行しなかった(24時間で反応率10%未満)。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、11156質量ppmであった。
(比較例3)
触媒をテトラn-ブトキシチタンをテトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン0.15g(0.26mmol)に変更したこと以外は比較例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、47質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は107質量%、質量平均分子量は391100であり、ゲル含有割合は6.1質量%であった。
(比較例4)
触媒をテトラn-ブトキシチタンをテトライソプロポキシチタン0.07g(0.26mmol)に変更し、開環重合反応を6時間にわたって行ったこと以外は比較例1と同様の方法でグラフト共重合体を得た。140℃に到達した直後に反応容器内の溶液を採取して全溶液中の水分量を測定したところ、27質量ppmであった。得られたグラフト共重合体を分析したところ、グラフト率は84質量%、質量平均分子量は375600であり、ゲル含有割合は5.3質量%であった。
(フィルム外観の評価)
各実施例及び比較例で得られたグラフト共重合体を、150℃、10MPaで熱プレス成形し、200mm×200mm×0.1mmのフィルムを得た。このフィルムを目視で観察し、下記判定基準に基づいてフィルム外観を評価した。
<判定基準>
◎:フィッシュアイが全く見られなかった。
〇:5カ所以内のフィッシュアイが見られた。
△:10カ所以内のフィッシュアイが見られた。
×:10カ所より多くのフィッシュアイが見られた。
Figure 2022064192000002
表1は、各実施例及び比較例で得られたグラフト共重合体製造時の水分量、物性、並びにフィルム外観の評価結果を示している。
表1からわかるとおり、触媒として部分加水分解物ではなく金属アルコキシドを使用して、かつ、開環重合反応開始前の系中の水分量を100~10000質量ppmに調節してグラフト共重合体を得た場合、ゲル含有量はすべて5質量%以下であった。比較例のように水分量が適切な範囲を超えている場合は、チタンアルコキシドのすべてが加水分解されて重合活性を有さない水酸化チタンや酸化チタンに変化するために、所望のグラフト共重合体が得られないと考えられる。また、実施例8から、チタンアルコキシドの部分加水分解縮合物であるテトラn-ブトキシチタンテトラマーを用いた場合、低い水分量であってもゲル含有量が少ないグラフト共重合体が得られることもわかった。
さらに、実施例で示されているように、ゲル含有割合が少ないグラフト共重合体は、フィルム成形したときに外観不良等の不具合の発生が抑制されることもわかった。

Claims (7)

  1. 幹ポリマーと、該幹ポリマーに結合する枝ポリマーとで形成されたグラフト共重合体であって、
    前記枝ポリマーはポリエステルを含み、
    下記ゲル含有割合の測定方法で測定されるゲル含有割合が5質量%以下である、グラフト共重合体。
    <ゲル含有割合の測定方法>
    濃度が2質量%であるグラフト共重合体のキシレン溶液を、目開きが150μmであるフィルターでろ過した後、前記フィルター上に残ったゲルの乾燥質量を測定し、下記式(1)から算出されるG値をゲル含有割合(質量%)とする。
    G=(Wg/Wp)×100 (1)
    (ここで、前記式(1)中、Gはゲル含有割合を、Wgはゲルの乾燥質量を、Wpはゲル含有割合の測定方法で使用したグラフト共重合体の質量を表す)
  2. グルコース誘導体を構成単位として含むポリマーに前記枝ポリマーが結合した構造を有する、請求項1に記載のグラフト共重合体。
  3. 前記ポリエステルは環状エステル化合物の開環重合体である、請求項1又は2に記載のグラフト共重合体。
  4. 環状エステル化合物がβ-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン、グリコリド、ラクチド及びトリメチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のグラフト共重合体。
  5. 活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物との開環重合反応を金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の存在下で行うことでグラフト共重合体を含む生成物を得る工程を備える、グラフト共重合体の製造方法。
  6. 活性水素を含有する置換基を有するポリマーと、環状エステル化合物と、金属アルコキシドとが溶解した溶液中での開環重合反応により、グラフト共重合体を含む生成物を得る工程を備え、
    前記開環重合反応開始前の前記溶液中の水分量が、当該溶液の全質量に対して100質量ppm以上、10000質量ppm以下である、グラフト共重合体の製造方法。
  7. 前記金属アルコキシド中の金属は、スカンジウム、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンである、請求項5又は6に記載の製造方法。
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