<実施形態1>
本開示の便座カバーを具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図1から図3に示すように、便座30に取り付けられる便座カバー50を例示する。便座30は、便器10の上方に設置される便座装置20に備えられた便座である。以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向とは、便座カバー50を便座30に取り付けた便座装置20を着座状態で使用する使用者から見た前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
便座装置20は、図1から図3に示すように、装置本体21、便座30、便蓋40を備えている。装置本体21は、便器10の後部に配置されて便器10に固定されている。装置本体21は、便座30を回転自在に支持する便座軸部22と、便蓋40を回転自在に支持する便蓋軸部23とを有している。装置本体21の前端部21Aは、前方に張り出している。前端部21Aは、後述する便座30に設けられる一対の便座ヒンジ部36の間に延びている。装置本体21の上面は、後端部21Bにおいて前方に向けて下方に傾斜して形成されている。装置本体21の前端部21Aの上面は、後端部21B側の上面よりも下方に窪んだ段差部21Cを形成している。段差部21Cには倒伏姿勢の便蓋40が収まる。後端部21Bの上面は、倒伏姿勢において段差部21Cに納まった便蓋40の上面に連続する。図2に示すように、装置本体21は、その内部に局部洗浄装置24及び制御部25を収納している。
局部洗浄装置24は、制御部25からの制御信号に基づいて局部を洗浄する。図2に示すように、局部洗浄装置24は、洗浄水が吐出される洗浄ノズル24Aを備えている。洗浄ノズル24Aは、装置本体21から便器10内に向けて前方斜め下方に進退自在である。洗浄ノズル24Aは、洗浄時に便器10内に進出し、局部を洗浄する洗浄水を先端部から前方斜め上方に向けて吐出する。
制御部25は、局部洗浄装置24、便座装置20における他の機能部、各種センサ等を制御する。他の機能部としては、例えば、便器洗浄装置、便座30を自動開閉する便座開閉装置、便蓋40を自動開閉する便蓋開閉装置、便座30を温める便座暖房装置等が挙げられる。
便座30は開閉自在に設けられている。便座30は、図2に示す閉じた状態において、便器10の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。便座30は、図3に示す開いた状態において、便器10の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。便座30は、便座軸部22を中心として、閉じた状態と開いた状態に回転する。例えば、便座30は、リモートコントローラ等の図示しない操作部から入力された信号や人体検知センサの検知信号に基づいて、装置本体21内に組み込まれた便座開閉装置が駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。
便座30は、図4から図6に示すように、着座部31及び便座ヒンジ部36を有している。着座部31及び便座ヒンジ部36は、硬質な樹脂材料によって一体に設けられている。着座部31は、便座30が閉じた状態において、便器10の上端のリム12(図2参照)に沿って配置されている。この状態における着座部31の上側の面は、便座30における着座面30Aである。
着座部31は、中心部に開口を形成した環状に形成されている。具体的には、図4及び図5に示すように、着座部31は、頂点に相当する前部31Aから左右の側部31B,31Cにかけて放物線状に湾曲しつつ後方に延伸するとともに、これら左右の側部31B,31Cの後端を左右方向に延びる後部31Dによって接続した形態である。着座部31中央の開口の形状は、前部31A側に先細りする卵形状をなしている。図5及び図6に示すように、後部31Dにおける後端面31Eの上端31Fは、着座面30Aの後端であり、便座の後端に相当する。後端面31Eは、いわゆる抜き勾配程度の僅かな傾斜を有するものの、前後方向に対して直交する方向に拡がる平坦な面をなしている。後端面31Eの上端31Fは左右方向に水平に延びている。以下の説明において、便座30における周方向及び幅方向とは、図5に示すX方向及びY方向であり、着座部31中心部の開口周縁に沿った方向及び平面視において周方向に交差する方向である。便座30における内側及び外側については、図5に示すY方向における便座30の開口中心側を内側、その反対側を外側とする。
図6から図9に示すように、着座部31は、便座30が閉じた状態において上方を向く上側面32と、中心側を向いた内側面33と、中心とは反対側の外側を向いた外側面34と、を有している。これら上側面32、内側面33、及び外側面34は、便座の上面に相当し、着座面30Aを構成する。上側面32は、幅方向の内側(着座部の中心部側)に向かって下方に傾斜して形成されている。上側面32の傾斜は、着座部31の後部31D側において最も大きくされており、前部31A側に向かうにつれて徐々に緩やかになっている。内側面33の下端、及び外側面34の下端は、それぞれC面取り状に面取りされた形態である。
内側面33は、着座部31の開口周縁において周方向の全周に渡って形成される内向きの面である。図7から図9に示すように、内側面33は、上端から下端に向かって着座部31の中心部側に傾斜している。これによって、内側面33の下端側は、内側面33の上端側よりも中心側に位置している。内側面33の下端部は、C面取りされた部分の上端において、環状をなす便座30の最小内形を構成する。内側面33の最小内形を構成する部分は内周縁33Aである。内側面33の上下方向の高さは、開口周縁の全周に渡って略一定である。
図7から図9に示すように、内側面33は内R面33Bを有している。内R面33Bは内側面33の上端部に形成されている。内R面33Bの下端は、内側面33全体の高さ(内側面33の上下方向の長さ)の中心位置よりも上方に位置している。内R面33Bは、幅方向断面において、内側面33の他の部分や上側面32よりも大きな曲率で湾曲して形成された曲面である。内側面33は、内R面33Bによって、上側面32に連続的に接続している。内R面33Bは、着座部31の前側の領域において一定の曲率で形成されている。内R面33Bは、着座部31の後側の領域において、着座部31の前側の領域における曲率よりも小さな曲率で形成されている。
外側面34は、着座部31における前部31A及び左右の側部31B,31Cに形成される外向きの面である。図7及び図8に示すように、外側面34は、上端から下端に向かって外側方向に傾斜している。これによって、外側面34の下端側は、外側面34の上端側よりも外側に位置している。外側面34の下端部は、C面取りされた部分の上端において、便座30の最大外形を構成する。外側面34の最大外形を構成する部分は外周縁34Aである。外側面34の上下方向の高さは、前端部において最も小さい。外側面34は、前端部から後端部に向かって、下端位置が同等の位置のまま上端位置が上方に傾斜する形態で、上下方向の高さが大きくなっている(図2参照)。外側面34の後端部は、下端位置、上端位置ともに傾斜する形態で後方に向かって斜め上方に延び、便座ヒンジ部36の外側面に連なっている(図4参照)。
図7及び図8に示すように、外側面34は外R面34Bを有している。外R面34Bは外側面34の上端部に形成されている。外R面34Bの下端は、外側面34全体の高さ(外側面34の上下方向の長さ)の中心位置よりも上方に位置している。外R面34Bは、幅方向断面において、外側面34の他の部分や上側面32よりも大きな曲率で湾曲して形成された曲面である。外側面34は、外R面34Bによって、上側面32に連続的に接続している。外R面34Bの幅方向断面における曲率は、全体的に一定である。
図2及び図3に示すように、便座ヒンジ部36は、便座30を装置本体21に対して回転自在に支持している。便座ヒンジ部36は、便座軸部22に対して組み付けられている。便座ヒンジ部36は、着座部31の左右方向における両端部に一対設けられている。便座ヒンジ部36は、着座部31の後端面31Eから後方に突出した形態である(図5参照)。
図1に示すように、便座30は着座センサ38を備えている。着座センサ38は、人の着座の有無を判断するためのセンサである。便座装置20は、着座の有無の判断結果に基づいて、上述の各種機能部の機能が適宜発揮される。本実施形態の場合、着座センサ38は静電容量式のセンサを採用している。
便蓋40は、図2及び図3に示すように、便座30の上方において、開閉自在に設けられている。便蓋40は、閉じた状態において、便器10の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。倒伏姿勢の便蓋40は、後端部において装置本体21の段差部21Cに納まる。これによって、便蓋40の上面は、装置本体21の上面に略面一で連なった面を形成する。便蓋40は、開いた状態において、便器10の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。便蓋40は、便蓋軸部23を中心として、閉じた状態と開いた状態に回転する。例えば、便蓋40は、リモートコントローラ等の図示しない操作部から入力された信号や人体検知センサの検知信号に基づいて図示しない便蓋開閉装置が駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。
図2及び図3に示すように、便蓋40は、便蓋本体部41、便蓋ヒンジ部45、足部46、接触部47を有している。便蓋本体部41及び便蓋ヒンジ部45は、硬質な樹脂材料によって一体に設けられている。便蓋本体部41は、便蓋40が閉じた状態において、便座30における着座部31の上側面32及び開口全域を覆うとともに外側面34を覆っている。便蓋本体部41は、上側面32よりも一回り大きい平板状の上板部42と、上板部42の縁部から下方に延びた垂下片部43とを有している。
便蓋ヒンジ部45は、便蓋40を装置本体21に対して回転自在に支持している。便蓋ヒンジ部45は、便蓋軸部23に対して組み付けられている。便蓋ヒンジ部45は、便蓋本体部41の左右方向における両端部に一対設けられている。便蓋ヒンジ部45は、便蓋本体部41の後端部から後方に突出した形態である。便蓋ヒンジ部45は、便座ヒンジ部36の上面及び外側面を覆っている。
足部46は、図2に示すように、便蓋40が閉じた状態において便蓋本体部41を支持している。足部46の先端部は、合成ゴムなどの弾性を有する樹脂材料によって形成されている。接触部47は、便蓋40及び便座30の双方が開いた状態において、便座30に取り付けられた状態の便座カバー50の着座面60Aに接触する部分である。
便座カバー50は、便座30の着座面30A(便座の上面)に着脱自在に取り付けられる。図4及び図5に示すように、本実施形態において、便座カバー50は、カバー本体60及び粘着部70を有して構成されている。以下の説明において、便座カバー50における周方向及び幅方向とは、便座30と同様に、カバー本体60中心部の開口周縁に沿った方向及び平面視において周方向に交差する方向である。
カバー本体60は、便座30の着座部31と同様に、中心部に開口を形成した環状に形成されている。図4及び図10に示すように、カバー本体60は、一方の面が着座面60Aとされるとともに、この着座面60Aの反対側の面が対向面60Bとされる。対向面60Bは、便座カバー50が便座30に取り付けられた状態において、便座の上面である便座30の着座面30Aに対向する面である。
図4及び図5に示すように、カバー本体60は、カバー前部60C、カバー左側部60D、カバー右側部60E、及びカバー後部60Fを有している。これらカバー前部60C、カバー左側部60D、カバー右側部60E、及びカバー後部60Fは、便座30の着座部31における前部31A、左右の側部31B,31C、及び後部31Dをそれぞれ覆う。図10に示すように、対向面60Bの表面形状は、便座30の着座面30Aと略同形状の表面形状をなしている。ここでいう「略同形状」とは、便座30の着座面30Aの表面形状と雌雄対の関係となる表面形状を意図している。すなわち、対向面60Bの表面形状は、便座30を成形する成形型における着座面30Aを成形する部分の表面形状と略同形状をなしている。これによって、カバー本体60は、対向面60Bを便座30の着座面30Aにぴったりとフィットさせて便座30に取り付けられる。
カバー本体60は、便座30に用いられる材料よりも柔らかい材料を用いてなる。これによって、カバー本体60は、所定のクッション性を有している。具体的には、本実施形態の場合、カバー本体60は、ポリウレタン等の軟質樹脂を発泡成形してなる。詳細には、カバー本体60は、成形型の金型面に未発泡の樹脂材料を予め吹き付けてスキン層を形成したのち、成形型のキャビティ内に樹脂材料を注入して発泡させることによって形成される。これによって、カバー本体60は、平滑なスキン層と発泡層とが一体化された樹脂成型品として形成される。
カバー本体60は異なる厚みで形成されている。カバー本体60の厚みは、カバー前部60Cからカバー後部60Fに向けて徐々に大きくなっている。すなわち、カバー本体60は、カバー前部60Cにおいて比較的薄く、カバー後部60Fにおいて比較的厚くされている。カバー本体60における最も厚みの小さい部分(薄肉部分)はカバー前部60Cに位置している(図8参照)。カバー本体60における最も厚みの大きい部分(厚肉部分T)はカバー後部60Fに位置している(図9参照)。この厚肉部分Tは、想定着座位置に着座した使用者の左右の座骨及び尾骨に対応する部分である。
カバー本体60の厚みとは、便座30に取り付けられた状態において、着座部31と接触する面に対して垂直な方向の厚さである。カバー本体60における薄肉部分の具体的な厚さは、2mmから7mm程度としている。薄肉部分における厚さがこの範囲であれば、便座カバー50を取り付けた状態の便座30において、静電容量式の着座センサ38を正常に機能させることができる。薄肉部分における厚さがこの範囲であれば、便座カバー50を取り付けた状態の便座30において、便座30の暖房機能による熱を着座面60Aに速やかに伝達することができる。これに対し、カバー本体60における厚肉部分の具体的な厚さは、10mmから30mm程度であり、薄肉部分の2倍から5倍程度としている。厚肉部分における厚さがこの範囲であれば、充分なクッション性を確保できる。
図5に示すように、カバー本体60の幅方向の内端(開口側端)は、便座カバー50が便座30に取り付けられた状態において、開口内周縁の全周に渡って、便座30の着座部31の幅方向の内端である内側面33の内周縁33Aよりも外側に位置している。カバー本体60における幅方向内端とは、カバー前部60C,カバー左側部60D、及びカバー右側部60Eにおいては、後述する内側面部62に相当し、カバー後部60Fにおいては、後述する上面部61の前端に相当する。
図5に示すように、カバー本体60の幅方向の外端(外周側の端縁)は、カバー左側部60D、カバー右側部60E、及びカバー後部60Fにおいて、着座部31の外周縁よりも内側に位置している。カバー本体60の幅方向の外端(外周側の端縁)は、カバー前部60Cにおいては、着座部31の外周縁よりも僅かに外側に位置している。カバー本体60における幅方向外端とは、カバー前部60C,カバー左側部60D、及びカバー右側部60Eにおいては、後述する外側面部63に相当し、カバー後部60Fにおいては、後述する上面部61の後端に相当する。
図7から図10に示すように、カバー本体60は、上面部61、内側面部62、及び外側面部63を有している。これら上面部61、内側面部62、及び外側面部63の各表面は着座面60Aを構成し、各裏面は対向面60Bを構成する。上面部61は、便座30の上側面32を覆う部分である。上面部61は、環状をなすカバー本体60において周方向全周に渡って形成されている。上面部61は、幅方向の内側(中心部側)に向かって下方に傾斜して形成されている。上面部61の傾斜は、カバー後部60F側において最も大きくされており、カバー前部60C側に向かうにつれて徐々に緩やかになっている。
内側面部62及び外側面部63は、図7及び図8に示すように、それぞれ上面部61の幅方向の端部からリブ状に突出して形成されている。内側面部62及び外側面部63は、輸送時等、便座に取り付ける前の単体時における曲がりや折れ等を抑制して、カバー本体60の形状を保持するように機能する。内側面部62及び外側面部63は、便座カバー50が便座30に取り付けられた際には、便座30に対しての位置ずれを抑制するように機能する。カバー本体60は、上面部61、内側面部62、及び外側面部63によって、幅方向における断面形状がU字状をなす。内側面部62と外側面部63とを比較すると、全般的に、内側面部62の厚さは、外側面部63の厚さよりも薄肉である。内側面部62の下端(突出端)は、外側面部63の下端よりも下方に位置している。
内側面部62は便座30の内側面33を覆う部分である。内側面部62は、上面部61の幅方向の内端から下方に延びて形成されている。図7及び図8に示すように、内側面部62の内周縁(中心部側の端縁)62Aは、便座30の内周縁33Aよりも外側に位置している。内側面部62は、便座30の内側面33における上端側を部分的に覆う。すなわち、内側面部62の上下方向の大きさは、便座30の内側面33の上下方向の大きさよりも小さい。上述のように、便座30の内側面33は、上端から下端に向かって、カバー本体60の中心部側方向に傾斜して形成されている。このため、内側面部62が内側面33の上端部のみを部分的に覆う構成とすることで、内側面部62に所定の厚みを確保しつつ、内側面部62の内周縁62Aを便座30の内周縁33Aよりも外側に位置させる構成を容易に実現できる。図7及び図8に示すように、内側面部62は、下方に向かうにつれてその厚みが薄くなる形態である。このため、内側面部62を、内側面33の上端部のみを部分的に覆う構成と併せて、下端側に向かうにつれて厚みが小さくなる構成とすることで、内側面部62の内周縁62Aを便座30の内周縁33Aよりも外側に位置させる構成を一層容易に実現できる。
図7及び図8に示すように、内側面部62において、対向面60B(便座の上面に対向する面)の幅方向断面における長さL62は、カバー前部60C側において最も長い。内側面部62の下端は、カバー前部60C側において最も下方に位置している。内側面部62は、カバー本体60の前端部において、上面部61からの突出端である下端の位置が最も下方に位置している。内側面部62における長さL62は、前端部から前後方向の中間部まで略同等である。内側面部62は、前後方向の中間部から後方に向かうにつれて長さL62が徐々に小さくなる。これに伴って、内側面部62の下端は、前後方向の中間部から後方に向かうにつれて徐々に上昇する(図6参照)。
具体的には、図4、図8に示すように、内側面部62は、カバー前部60C側の領域、及び左右のカバー側部60D,60Eの前後方向中間部よりも前方の領域では、内R面33Bの下端よりも下方まで延びて設けられている。内側面部62は、左右のカバー側部60D,60Eの前後方向中間部よりも後方の領域では、後方に向かうにつれてその下端位置と内R面33Bの下端位置との距離の差が徐々に小さくなる。図7に示すように、内側面部62の下端は、カバー後部60F側の領域において、内R面33Bの下端よりも上方に位置する。
内側面部62は、カバー本体60におけるカバー後部60F以外の部位であるカバー前部60C、カバー左側部60D、及びカバー右側部60Eに設けられている。換言すると、内側面部62は、カバー後部60Fには形成されていない。詳細には、図10に示すように、内側面部62は、カバー前部60Cから左右のカバー左側部60D及びカバー右側部60Eに連なって形成されるとともに、カバー後部60Fの左右方向の中心部において形成されていない平面視C字状に設けられている。このため、カバー後部60Fは、内側面部62及び外側面部63の設けられていない部分では、図9に示すように、上面部61によって上側面32のみを覆い、着座部31の内側面33及び外側面34を覆わない構成である。すなわち、この内側面部62が形成されていない部分において、カバー後部60Fの幅方向の内端60Gは、図9に示すように、上面部61の内端である。カバー後部60Fの幅方向の内端60Gは、これに対応する便座30の内端である内側面33の内周縁33Aよりも幅方向外側に位置している。カバー後部60Fの幅方向の内端60Gは、便座30の内端である内側面33の内周縁33Aと幅方向において同等の位置にあってもよい。
図9に示すように、カバー後部60Fは、後方に向かって薄肉になる形態である。カバー後部60Fの上面は、幅方向の内側から外側に向かって、斜め上方に傾斜して形成されている。この傾斜は、カバー後部60Fによって覆われる着座部31の後部31Dの上面における傾斜よりも緩やかな傾斜である。カバー後部60Fは、後端側に向かうにつれて厚みが小さくなる先細り形状の断面となっている。これによって、便座カバー50は、図11に示すように、便座30に取り付けられて便座30を起立姿勢とした状態で、段差部21Cの後端の立面と干渉することがない。すなわち、便座カバー50は、カバー後部60Fを後方に向けて薄肉にしたことによって、便座カバー50の後端部を装置本体21に干渉させ難い構成を実現している。
図9に示すように、カバー後部60Fは、前端側である幅方向内側寄り(開口寄り)の位置において、カバー本体60の他の部分と比較して最も厚肉に形成された部分が設けられている。この部分は上述の厚肉部分Tであり、想定着座位置に着座した使用者の尾骨に対応する部分である。このように、便座カバー50は、カバー本体60における尾骨に対応する部分を最も厚肉に形成して他の部分よりもクッション性を高め、着座時の心地よさの向上を図っている。カバー後部60Fにおける厚肉部分Tよりも前側の部分は、図9に示すように、前方に向かって薄肉に形成されている。
図5に示すように、カバー後部60Fの後端縁60Hは、着座部31の後端面31Eの延伸方向に沿って延びている。これによって、便座カバー50は、便座30との一体感が感じられる良好な意匠性を実現している。カバー後部60Fの後端縁60Hは、平面視直線状に左右方向に延びている。カバー後部60Fの後端縁60Hの前後方向の位置は、着座部31の後端よりも僅かに前方である。
カバー後部60Fの後端縁60Hの上端60Jの高さは、着座部31の後端面31Eの上端31Fの高さと同等である。詳細には、カバー後部60Fの後端縁60Hの上端60Jは、左右方向の中心において着座部31の後端面31Eの上端31Fにおける左右方向の中心の高さと同等である。これによって、便座カバー50を便座30に取り付けた際に便座30との一体感が感じられる良好な意匠を実現している。カバー後部60Fの後端縁60Hの上端60Jは、着座部31の後端面31Eの上端31Fが左右方向に水平に延びているのに対して、左右方向の中心から側方に向かって僅かに高くなっている。換言すると、カバー後部60Fの後端縁60Hの高さは、左右側部に対して中心部が僅かに低い。これによって、便座カバー50の後端部を装置本体21に一層干渉させ難い構成を実現している。
外側面部63は便座30の外側面34を覆う部分である。外側面部63は、上面部61の幅方向の外端から下方に延びて形成されている。図10に示すように、外側面部63は、上面部61の外端のうち、カバー前部60C、カバー左側部60D、及びカバー右側部60Eに相当する部分の外端に形成されている。外側面部63は、カバー後部60Fに相当する部分の外端である後端には形成されていない。外側面部63は、便座30の外側面34における上端側を部分的に覆う。すなわち、外側面部63の上下方向の大きさは、便座30の外側面34の上下方向の大きさよりも小さい。
図7に示すように、外側面部63の外周縁63Aは、便座30の外周縁である外側面34の外周縁34Aよりも内側に位置している。この構成は、カバー前部60Cからカバー左側部60D及びカバー右側部60Eに連なって形成されている外側面部63のうち、カバー左側部60D及びカバー右側部60Eにおける外側面部63に適用されている。上述のように、便座30の外側面34は、上端から下端に向かって外側方向に傾斜して形成されている。このため、外側面34の上端部のみを部分的に覆う構成とすることで、このような外側面部63の外周縁63Aを便座30の外周縁34Aよりも内側に位置させる構成を、外側面部63に所定の厚みを確保しつつ容易に実現することができる。
本実施形態において、外側面部63の外周縁63Aは、カバー前部60Cにおいては、便座30の外周縁である外側面34の外周縁34Aよりも僅かに外側に位置している。これは、カバー前部60Cにおいて、外側面部63の厚み及び突出長さを十分大きくとったことによる。外側面部63は、カバー前部60Cにおいて厚み及び突出長さを十分大きくとったことによって、カバー本体60のカバー前部60Cにおける便座30との位置ずれの抑制を図っている。外側面部63の外周縁63Aは、このカバー前部60Cにおいても、便座30の外周縁34Aよりも内側に位置していてもよい。
本実施形態において、外側面部63の下端は、便座30の外側面34全体の高さの中心位置よりも上方に位置している。具体的には、外側面部63は、便座30の外側面34のうち、上端の外R面34Bのみを覆う構成としたことによって、外側面部63の下端を外側面34の高さの中心位置よりも上方に位置させている。このような構成によって、便座カバー50は、外側面部の下端が便座の外側面全体の高さの中心位置よりも下方に位置している場合と比較して、小型化を図ることができるとともに、便座30に対して装着し易くなる。外側面部63の下端は、外R面34Bの下端位置よりも上方に位置している。これによって、外側面部63の外周縁63Aを便座30の外周縁34Aよりも内側に配置する構成を容易に実現できる。外側面部63が便座30の外側面34のうちの外R面34Bのみを覆う構成の場合、外側面部63の下端位置は、外R面34Bの下端位置と同等の位置にあってもよい。
図10に示すように、粘着部70は、カバー本体60の対向面60Bに設けられている。詳細には、粘着部70は、対向面60Bのうち、カバー本体60の上面部61に対応する部分に設けられている。粘着部70は、基材の両面にアクリル樹脂系の接着剤層を形成したシート状の粘着材を対向面60Bに貼り付けて形成されている。粘着部70は、カバー本体60の周方向に沿って設けられている。粘着部70は、カバー本体60の周方向の略全周に渡って設けられている。換言すると、粘着部70は、カバー本体60の中心部の開口を囲うように設けられている。粘着部70は、便座30に対して貼付と剥離を繰り返し行うことができる粘着面を有する。粘着部70は、カバー本体60が便座30に取り付けられて便座30が開いた状態において、取り付け状態を保持し得る粘着力を有している。
図4、図5、及び図10に示すように、粘着部70は、カバー本体60の周方向に沿って複数に分割されて設けられている。具体的には、粘着部70は、前シート部材71、左シート部材72、右シート部材73、及び後シート部材74の4つのシート状の粘着材を対向面60Bに貼り付けて設けられている。これら前シート部材71、左シート部材72、右シート部材73、及び後シート部材74は、それぞれ便座30の着座部31における前部31A、左側部31B,右側部31C、及び後部31Dの部分に対応して4つに分割された部材である。このように分割することによって、個々のシート部材の貼り付け面の面積が相対的に小さくなる。
上述のように、対向面60Bの表面形状は、便座30の着座面30Aに倣った3次元曲面をなす立体的な形状をなしている。このような複雑な表面形状をなす対向面60Bに対して複数に分割したシート部材を別々に貼り付けることによって、各シート部材に対応する対向面60Bの被貼り付け面における表面形状の変化が相対的に小さくなり、貼り易さを向上させることができる。上述のように、対向面60Bの表面形状は、便座30の着座面30Aに対する雌型状となる形状であり、3次元曲面をなす立体的な形状をなしている。仮にシート部材が分割されていない一体的なものであった場合、そのような立体形状をなす面に正確に貼り付けるのは難しい。本実施形態では、シート状の粘着材をカバー本体60の周方向に沿って複数に分割したことによって、貼り付け作業の容易化を図っている。
粘着部70は、カバー本体60におけるゲート部60Kを覆っている。本実施形態に係るカバー本体60は、上述のように、ポリウレタン等の軟質樹脂を発泡成形してなる。カバー本体60は成形型を用いて成形される。成形型には、成形時にキャビティ内に樹脂材料を注入するための注入孔が形成されている。ゲート部60Kはこの注入孔に相当する部分である。ゲート部60Kは、図10に示すように、カバー本体60のカバー前部60Cにおける対向面60Bに形成される。すなわち、ゲート部60Kは、前シート部材71によって覆われている。カバー本体60の着座面60A及び対向面60Bは、成形型の金型面に倣った平滑面で形成される。これに対して、ゲート部60Kの表面は、成形型における注入孔に相当する部分であり、他の部分とは異なる粗面状の外観となる。このため、シート部材によって覆い隠すことで意匠性の向上を図ることができる。カバー本体60の対向面60Bには、成形型におけるキャビティ内の空気を抜くためのガス抜き孔に相当する部分(図示せず)も形成されており、ゲート部60Kと同様に粘着部70を構成するシート部材によって覆うようにしている。
便座カバー50は目印を備えている。目印は、粘着部70を構成するシート部材71,72,73,74の貼り付け位置を示すものである。目印は対向面60Bに設けられている。本実施形態の場合、目印は、図10に示すように、対向面60Bの表面から突出するリブRである。リブRは、貼り付け後の各シート部材71,72,73,74の内端縁及び周方向の端縁の位置に対応して複数箇所に形成されている。目印としては、このようなリブに限定されず、例えば、刻印等によって、対向面を溝状、穴状等に陥没させた形態であることができる。目印は、例えば、粘着部を構成するシート部材の全体が嵌め込まれるように対向面を段差状に陥没させた形態等であってもよい。目印としては、例えば、シート部材の貼り付け位置を印刷等によって凹凸なく示すものであってもよい。
便座カバー50は非粘着部80を備えている。図10に示すように、非粘着部80は、対向面60Bにおける粘着部70以外の部分に設けられている。非粘着部80は、外周側非粘着部81及び内周側非粘着部82を有している。すなわち、本実施形態では、非粘着部80は、対向面60Bにおける外周寄りの位置及び内周寄りの位置の両方に設けられている。非粘着部としては、便座カバーの対向面の外周寄りの位置及び内周寄りの位置の少なくともいずれかに設けられていればよい。外周側非粘着部81は、対向面60Bにおける粘着部70を構成するシート部材71,72,73,74が貼り付けられた部分よりも外周側の部分である。外周側非粘着部81は、対向面60Bの外周縁部の全周に渡って設けられている。
図10に示すように、外周側非粘着部81は、カバー本体60の後端部であって左右の端部寄りの位置における幅方向の大きさが外周側非粘着部81の他の位置における幅方向の大きさよりも大きくされている。具体的には、図10に示すように、外周側非粘着部81は、等幅部81A及び拡幅部81Bを有している。等幅部81Aは、粘着部70における前シート部材71、左シート部材72、及び右シート部材73の外周側に相当する部分に設けられている。等幅部81Aは、カバー本体60の外周縁に沿って略同等の幅で形成されている。拡幅部81Bは、粘着部70における後シート部材74の外周側に相当する部分に設けられている。拡幅部81Bは、等幅部81Aの後端に連なり、後方に向かうにつれて幅方向の大きさが徐々に大きくなる形態である。
内周側非粘着部82は、対向面60Bにおける粘着部70を構成するシート部材71,72,73,74が貼り付けられた部分よりも内周側の部分である。内周側非粘着部82は、対向面60Bの内周縁部の全周に渡って設けられている。内周側非粘着部82は、外周側非粘着部81よりも小さな面積で設けられている。
図5及び図10に示すように、便座カバー50は表示部Dを備えている。表示部Dは非粘着部80に設けられている。具体的には、表示部Dは、外周側非粘着部81の拡幅部81Bに設けられている。本実施形態の場合、表示部Dは、便座カバー50の品質等に関して、家庭用品品質表示法に基づく文字や記号等からなる情報を表示する。表示部Dにおける文字、記号等の情報は凸版状に形成されている。表示部Dは、カバー本体60の成形時に同時に成形される。表示部としては、例えば、凹版状に形成されたものや印刷によるものであってもよい。
上記構成の便座カバー50の作用及び効果について説明する。便座カバー50はカバー本体60を備えている。カバー本体60はカバー後部60Fを有している。カバー後部60Fは便座の後部である着座部31の後部31Dに取り付けられる。便座30に取り付けられた状態において、カバー後部60Fの幅方向の内端60Gは、着座部31の後部31Dの内端である内側面33の内周縁33Aよりも外側の位置にある。
このように、便座カバー50は、カバー後部60Fの幅方向の内端60Gが便座30の着座部31の後部31Dの内端よりも外側の位置にある。このため、カバー後部の幅方向の内端が便座後部の内端よりも内側(中心部側)に張り出している場合と比較して、着座位置のずれを抑制することができる。すなわち、上記構成によれば、便座カバー50の取り付けの有無に関わらず、便座30後部における内端は便座30の内側面33の内周縁33Aとなるため、着座位置を前方へ移動する必要がない。このため、着座位置のずれを抑制することができる。
例えば、シャワー機能を備える便座装置の場合には、カバー部材後部の幅方向の内端に内側への張り出しがあると、その分シャワーの洗浄飛沫が付着し易くなってしまうとともに、張り出し量によっては、シャワーの噴出を阻害してしまうおそれがある。これに対し、上記構成によれば、便座カバー50の取り付けの有無に関わらず、便座30後部における内端は便座30の内側面33の内周縁33Aとなるため、局部洗浄装置24の洗浄ノズル24Aから噴出するシャワーの洗浄飛沫、便器10から飛散する汚れ等の便座カバー50への付着を抑制することができる。
カバー本体60は、着座面60Aを構成する上面部61、及び上面部61における幅方向の内端から下方に延びた内側面部62を有している。内側面部62は、カバー本体60におけるカバー後部60F以外の部位に設けられている。このため、便座カバー50の便座30に対しての横方向の位置ずれを抑制しつつ、洗浄シャワーの飛沫の付着を抑制できる。
便座30に取り付けられた状態において、カバー後部60Fの上面は、幅方向内側から外側に向かって斜め上方に傾斜して形成されている。このため、洗浄位置のずれを回避することができる。すなわち、便座カバー50に着座した場合、便座30の着座面30Aに直接着座した場合との着座位置のずれの方向は、便座カバー50の厚み方向である。したがって、カバー後部60Fの場合、位置ずれの方向は前方斜め上方である。これは、洗浄シャワーの噴出方向(図1参照)と同様の方向となり、洗浄位置の大きなずれ回避することができる。
便座カバー50は、粘着部70によって便座30に着脱自在に取り付けられる。このため、外側面部63の上下方向の大きさが便座30の外側面34の上下方向の大きさよりも小さい、という構成は、取り付け易さの観点において極めて有効である。すなわち、粘着部70によって便座30に着脱自在に取り付ける場合、外側面部の長さが長いと、意図しない箇所に粘着し易い。しかし、外側面部63の上下方向の大きさを便座30の外側面34の上下方向の大きさよりも小さくすることによって、意図しない箇所に粘着してしまうのを抑制して、貼り易さを向上させることができる。
外側面部63の下端は、便座30の外側面34の高さの中心位置よりも上方に位置している。このため、便座カバー50は、便座30への一層の取り付け易さを実現することができる。
便座30に取り付けられた状態において、左右のカバー側部60D,60Eに相当する部分の外側面部63の外周縁63Aは、便座の外周縁である外側面34の外周縁34Aよりも内側に位置している。すなわち、外側面部63は、左右のカバー側部60D,60Eにおいて、便座30の着座面30Aの平面視における投影面積内に配置される。このため、便座カバー50と便蓋40とが干渉しにくく、便座カバー50を便座30に取り付けた状態であっても、便蓋40を十分に閉じることができる。
便座30の外側面34の上端には、上面に連続するR面として、上側面32に連続する外R面34Bが形成されている。外側面部63の下端は、外R面34Bの下端よりも上方に位置している。このため、便座カバー50は、外側面部63の外方への突出量が抑制され、便座の外周縁よりも内側に位置する構成を容易に実現することができる。
カバー本体60は、上面部61及び外側面部63によって、幅方向における断面形状がL字状をなす。これによって、位置ずれ抑制効果に加えて、便座に取り付ける前の単体時における曲がりや折れ等の変形を抑制することができる。カバー本体60は、更に内側面部62を有している。カバー本体60は、これら上面部61、内側面部62、及び外側面部63によって幅方向における断面形状がU字状をなし、更なる変形抑制効果を発揮できる。
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)カバー本体の構成は上記実施形態の構成に限定されない。カバー本体の形状、材質、便座の上面を覆う範囲、クッション性の有無等は適宜変更可能である。
(2)カバー後部の幅方向の内端は、便座の後部の内端と同等の位置にあってもよい。
(3)カバー本体が内側面部を有する場合、内側面部は、カバー本体におけるカバー後部以外の部位に設けられていることが好ましい。内側面部は、カバー本体におけるカバー後部以外の部位の少なくとも一部に設けられていることができる。
(4)カバー本体が内側面部を有する場合、内側面部は、カバー本体の内周の全周に渡って設けられていてもよい。
(5)便座に取り付けられた状態におけるカバー後部の上面が、幅方向内側から外側に向かって斜め上方に傾斜して形成されることは必須ではない。カバー後部の上面は、便座に取り付けられた状態において平坦面(水平面)をなしていてもよい。
(6)便座カバーは、いわゆる馬蹄形状の便座に取り付けられてもよい。この場合、便座カバーの平面形状は、便座の平面形状に合わせた馬蹄形状であるとよい。