JP2022055242A - 液体噴霧具および液体噴霧方法 - Google Patents

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Hiromi Uchimura
智規 薮谷
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Abstract

【課題】液体を微細な液滴に形成できる簡単な構造を有する液体噴霧具およびこの液体噴霧具を用いた液体噴霧方法を提供する。【解決手段】基材10aの表裏を貫通した貫通孔11hを有する貫通孔領域部11と、貫通孔領域部11に連続した液体供給部12と、を有する本体部10を備え、本体部10は、基材10a内に貫通孔11hに連通する液体Lが毛細管現象によって通液可能な複数の空隙10hを有しており、貫通孔11hは、液体を表面張力によって保持し得る大きさに形成されている。このため本体部10に液体を供給すれば、貫通孔領域部11の貫通孔11h内に液膜Lfを形成させることができので、この液膜Lfから微細な液滴を簡単に形成することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、液体噴霧具および液体噴霧方法に関する。さらに詳しくは、液体を噴霧するのに使用される液体噴霧具およびかかる液体噴霧具による液体噴霧方法に関する。
液体噴霧は産業分野では、塗工、印刷、検査、混合等で汎用される技術である。これまでの液体噴霧のためのデバイスは、超音波印加、二流体ノズル、クロスフローネブライザー、ニューマティック(同軸)ネブライザー、グリッドネブライザー等が知られている(特許文献1~3)。
特開2013-529094号公報 特表2015-138616号公報 特開2019-520485号公報
しかしながら、特許文献1~3のデバイスは、特殊な加工や、特殊な耐圧部品を設けた構造としなければならず、構造上の制約が問題となっている。また、特許文献3のデバイスは、金属板に複数の微細孔を形成した技術であるものの、微細孔に自動的に液体を供給する技術ではない。つまり、特許文献3の技術は、あくまでも金属板に対して加圧ポンプにより加圧された液体を高速で吹き付けることで微細な液滴を形成する技術にすぎない。したがって、従来の技術は、取り扱い性、持ち運び性、コスト性に改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑み、液体を微細な液滴に形成できる簡単な構造を有する液体噴霧具およびこの液体噴霧具を用いた液体噴霧方法を提供することを目的とする。
本発明の液体噴霧具は、基材の表裏を貫通した貫通孔を有する本体部を備えており、該本体部は、前記基材内部に、前記貫通孔に連通する、液体が毛細管現象によって通液可能な複数の空隙を有しており、前記貫通孔は、液体を表面張力によって保持し得る大きさに形成されていることを特徴とする。
本発明の液体噴霧具によれば、本体部の液体供給部に液体の試料(以下、単に液体という)を供給すれば、供給した液体が基材内部を通って貫通孔内に液膜(液相ともいう)を形成させることができので、この液膜から微細な液滴を簡単に形成することができる。
本実施形態の液体噴霧具1の概略説明図である。 図1の本体部10のIIA-IIA線概略断面拡大図であり、(X)、(Y)は、基材10aを他の材質で形成した場合の概略説明図である。 本実施形態の液体噴霧具1の概略平面説明図および概略断面説明図である。 本実施形態の液体噴霧具1の貫通孔11hに形成される液膜Lfの液面形状の変化の概略説明図である。 本実施形態の液体噴霧具1の貫通孔11hが楕円形状をしたものの概略説明図である。 本実施形態の液体噴霧具1の概略説明図である。 本実施形態の液体噴霧具1を利用状況の概略説明図である。 実験結果を示した図である。 実験結果を示した図である。 実験結果を示した図である。 実験結果を示した図である。
つぎに、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態の液体噴霧具は、簡単な構造で液体を微差な液滴に形成できるようにしたことに特徴を有している。
明細書において液体とは、本実施形態の液体噴霧具の供給する際に流動性を有する液状のものであればとくに限定されない。例えば、液体に用いられる溶媒としては、水やアルコール、有機溶媒や工業的に使用される溶剤など様々な溶媒(単独または混合したものでもよい)を採用することができる。また、液体は、含有成分が溶解した状態のものであっても、分散した状態であっても、一部が沈殿した状態であっても、どのような状態でもとくに限定されない。例えば、血液や尿などの体液や、河川などの環境水、工場から排出される工場排水などのほか、人用や動物用などの様々な医療用の薬剤(液体状のものや粉体や固体状のものを水や溶剤などに溶解・分散したものなども含まれる)、食品、工業製品などを試料とすることができるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本実施形態の液体噴霧具の特徴について詳細に説明する前に、まず、液体噴霧具の概略について説明する。
(液体噴霧具1の概略)
液体噴霧具1は、液体が通液可能な基材10aを有する本体部10を備えており、この本体部10は、貫通孔領域部11と、液体供給部12と、を備えている。本体部10の基材10a内部には、液体が毛細管現象によって通液可能な複数の空隙10hが形成されている。そして、本体部10の貫通孔領域部11は、基材10aの表裏を貫通する貫通孔11hを有している。この貫通孔11hの内壁には、複数の空隙10hの開口が形成されている。つまり、基材10a内部に形成された空隙10hは、貫通孔11hに連通するように形成されており、空隙10hの開口が貫通孔11hの内壁面に位置するように形成されている。さらに、この貫通孔10は、液体を表面張力によって保持し得る大きさに形成されている。
以上のごとき構成であるので、液体噴霧具1の液体供給部12に対して所望の液体Lを供給すれば、基材10a内の空隙10hを毛細管現象によって貫通孔領域部11まで移動させることができる。基材10a内には、液体Lが毛細管現象によって通液可能な微細な空隙10hからなる空隙ネットワークが形成されているので、液体Lはこの空隙ネットワークを移動しながら液体L中の不純物(夾雑成分)などが分離・除去されて貫通孔11hまで移動する。つまり、本体部10は、基材10aが有するフィルター機能により液体Lを液体供給部12から貫通孔領域部11まで移動させることができる。具体的には、基材10aが有するフィルター機能により液体L中に存在する複数の成分は、その大きさによって適切に篩分けされる。例えば、供給された液体L中に目的成分と不純物が存在する場合、液体L中の成分が目的成分と不純物に分離除去しながら、貫通孔領域部11まで移動させることができる。
貫通孔領域部11まで到達した液体Lは、貫通孔11hの内壁面に形成された空隙10hの開口から貫通孔11h内に流入する。このとき、空隙10h内を通って空隙10hの開口に到達した液体Lは、まず、表面張力によって貫通孔11hの内壁に沿って貫通孔11hの内壁面に広がる。そして、貫通孔11hの内壁面を覆った液体Lは、貫通孔11hの中心に向かって広がる。貫通孔11hの中心に向かって広がる液体Lの膜は、空気の層を断面円形状にするように貫通孔11hの中心方向に向かって閉じ込めながら広がる。そして、最終的にこの空気の層がはじければ、中心に向かって広がった液体Lが連結して、貫通孔11h内に液体Lの膜(マクロ的には液膜Lfであり、ミクロ的には液相Lfともいえるが、以下では単に液膜Lfという)が形成される。この液膜Lfは、表面張力によって貫通孔11h内に保持されているので、貫通孔11hの表面開口11haおよび裏面開口11hbに保持層などを設けなくても貫通孔11h内において保持された状態を維持できる。
そして、上記のごとく貫通孔11h内に形成させた液膜Lfに対して、本体部10の貫通孔領域部11の一方の面側から他方の面側に向かって空気などを吹き付ければ、他方の面側に向かって液膜Lfからなる液滴を噴霧することができる。
貫通孔11hの数は、とくに限定されないが、複数個形成するのが望ましい。なお、複数とは、2個以上を意味する。
液体噴霧具1の本体部10の基材10a内には、毛細管現象によって液体が通液可能な空隙10hが複数形成されている。このため、一の貫通孔11hに試料が供給されると、隣接する他の貫通孔11hにも自動的に液体Lを移動(つまり展開)させることができる。貫通孔11hに供給された液体Lは、表面張力によって貫通孔11h内に保持されて液膜Lfを形成する。そして、本体部10において、この現象が連続的に行われ、複数の貫通孔11h全体に液体Lの液膜Lfを形成させることができる。この液膜Lfを形成する液体Lの量は、貫通孔11hの大きさや液体Lの性状に依存するが、表面張力により液膜Lfが形成できる非常に少量(例えば1μL~150μL程度)である。
このため、本体部10の一方の面から他方の面に向かって空気等を吹き付ければ、均質な複数の微細な液滴を対象物に対して噴霧することができる。しかも、噴霧後に液膜Lfが消滅したとしても消滅した液膜Lfの貫通孔11h内には、上記のごとく空隙10h開口から液体Lが連続的に供給されるので、すぐにつぎの液膜Lfが形成される。このため、液膜Lfを液滴状に噴霧する場合には連続した操作が可能となる。
しかも、液膜Lfを噴霧状に形成して利用する場合には、均質かつ小さな液滴を簡単に形成することができる。具体的には、上述したように液体噴霧具1の本体部10の貫通孔領域部11の一の面から空気などで吹き付けるだけの簡単な構造で上記のごとき液滴を形成することができる。
このため、噴霧の対象となる対象物に対して適切に液体Lを付着させることができる。このような噴霧の対象はとくに限定されない。しかも、本体部10の基材10a内を移動させることにより液体Lをろ過した状態の液膜Lfを形成させることができるので、噴霧対象に応じて液滴の質を調整することも可能となる。
さらに、液体噴霧具1を分析用機器や噴霧機器の一部に使用する場合には、ネブライザーとして機能させることが可能である。例えば、液体噴霧具1の本体部10の液体供給部12に液剤等を供給する構造にすれば、貫通孔11h内に連続的に液膜Lfを形成させることができる。そして、本体部10の貫通孔領域部11の一の面に向かって空気等を吹き付ければ、他方の面から液剤を霧状に噴霧することができる。しかも、貫通孔11hの大きさを調整すれば、液滴の大きさをコントロールすることができる。さらに、液体噴霧具1の素材を後述するろ紙等にすればコストも安くできるので、使い捨てタイプとして利用することも可能である。
なお、上記例では、本体部10の液体供給部12に対して液体Lを供給する場合について説明したが、貫通孔領域部11の一の箇所に液体Lを供給しても上述した場合と同様に貫通孔11h内に均質に液体Lを展開して液膜Lfを形成させることができるのはいうまでもない。
また、液体供給部12における液体Lの滴下箇所は、液体L中の不純物の量に応じて適宜調整すればよい。例えば、液体L中の不純物が少ない場合には、貫通孔領域部11に近い箇所に供給し、不純物が多い場合には、貫通孔領域部11からできるだけ離れた箇所に滴下すればよい。
(液体噴霧具1の詳細)
つぎに、液体噴霧具1の構造を詳細に説明する。
(基材10a)
液体噴霧具1の本体部10の基材10aは、板状の部材であり、内部に毛細管現象によって液体が通液可能な空隙10hが形成されていれば、材質はとくに限定されない。
基材10aは、透水性材料10bだけを備えた構成としてもよいし、透水性材料10bと不透水性材料10cとを備えた構成としてもよいし、ナノファイバーnfからなるナノファイバー層10dと不透水性材料10cとを備えた構成としてもよいし、透水性材料10bと不透水性材料10cとナノファイバー層10dとを備えた構成としてもよい。なお、各材質についての詳細は後述する。
基材10aの厚みは、貫通孔11h内に形成される液膜Lfの分析に影響しない程度であれば、とくに限定さない。例えば、基材10aの厚み(基材10aの表面10saと裏面10sbとの距離)は、0.01mm~10mm程度となるように形成される。
液体噴霧具1により形成した微細な液滴の大きさは、貫通孔領域部11の貫通孔11hの体積や貫通孔11h内に形成される液膜Lfの体積に影響される。例えば、貫通孔11hの大きさが同じである場合、液膜Lfの液膜長さRを長くなるように液膜Lfを形成すれば液膜長さRに比例した液滴を形成することができる。
なお、例えば、基材10aの材質にもよるが、本体部10の貫通孔領域部11における厚みが10mmよりも厚い場合、液膜Lfを液滴にするためのエネルギーが増加する傾向にある。一方、例えば、貫通孔領域部11における厚みが0.01mmよりも薄くなりすぎると、液膜Lfの液膜長さRが短くなる結果、適切な液滴が形成されな可能性がある。
したがって、適切な液滴を形成するという観点では、液体噴霧具1は、本体部10の貫通孔領域部11における厚みが、例えば、0.01mm以上、10mm以下である。なお、厚みの下限値は、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上ある。また、厚みの上限値は、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下である。
なお、上記例は、本体部10の貫通孔領域部11の厚みが液体Lを供給した際、基材10aの材質が膨潤等により変動しない場合について説明したものである。
具体的には、貫通孔11h内全体を満たすように液体Lを供給して、本体部10の貫通孔領域部11に形成された貫通孔11h内にほぼ均一な液膜Lfを形成する。このとき、液膜Lfの液膜長さRは、乾燥状態の貫通孔11hの貫通軸方向の長さ(つまり本体部10の貫通孔領域部11の厚み方向の距離)とほぼ同じ長さになる。一方、本体部10の基材10aの材質が、液体Lを吸収して膨潤等する場合には、液体Lを上述した場合に供給すれば、本体部10の貫通孔領域部11の厚み方向の距離は、乾燥状態よりも長くなる。このとき、基材10aの膨潤に伴い、貫通孔11hの貫通軸方向の長さも長くなる。
このため、液膜Lfの液膜長さRが長くなる。つまり基材10aが乾燥した状態の貫通孔11hの貫通軸方向の長さよりも長くなる。言い換えれば、基材10aの厚みが薄くても、液体Lにより膨潤等を生じやすい材質を基材10aの材質として採用すれば、貫通孔11hの体積を大きくさせることができるようになる。よって、基材10aの厚みを薄くしても、基材10aの材質を調整することにより、液滴のもととなる液膜Lfの体積を調整することが可能となる。
なお、液体Lの性状により液膜Lfの液膜面Lsが凸状のメニスカス形状になる液体Lを供給すれば、液膜長さRをより長くできる。
(基材10aの大きさ、形状)
本体部10の形状や大きさは、分析に影響しない程度の形状や大きさであれば、とくに限定されない。
例えば、円形状、矩形状、放射形状、らせん形状など様々な形状を採用することができる。また大きさは、用途に応じて適宜調整すればよく、以下に記載の大きさや形状に限定されるものではない。
例えば、液体噴霧具1を噴霧装置等に使用する場合、液体噴霧具1は、装置等にセットできる程度の大きさに形成すればよい。
また、本体部10の形状もとくに限定されない。例えば、一辺が0.1cm~5cm程度の正方形状に形成することができ、長方形状にした場合には、短辺が0.1cm~5cm程度、長辺が0.1cm以上10cm程度となるように形成することができる。さらに、円形状にする場合には、例えば、直径が0.1cm~5cm程度となるように形成することができる。
(基材10a中の空隙10h)
本体部10の基材10aは、内部に上述した液体が毛細管現象によって通液可能な複数の空隙10hが形成されている。
この基材10a内部の空隙10hは、液体が毛細管現象によって通液可能となるように形成されていれば、その空隙の幅はとくに限定されない。例えば、空隙10hの幅が0.1μm~2000μm程度となるように形成することができ、より好ましくは0.2μm~1000μm以下である。そして、より好ましくは0.4μm~1000μm以下、さらに好ましくは1μm以上1000μm以下、さらにより好ましくは1μm以上200μm以下となるように形成する。
そして、基材10a内において、複数の空隙10hが、網目状に形成されている。つまり、基材10a内において、隣接する空隙10h同士が互いに連通するように複数の空隙10hが網目状に形成されている。言い換えれば、基材10a内には、液体が毛細管現象によって通液可能な微細な空隙ネットワークが形成されているのである。
なお、基材10a中に占める複数の空隙10hの割合は、とくに限定されない。
例えば、基材10aの材質としては、透水性材料10bであるセルロース繊維からなる一般的に市販されている実験用のろ紙や、ろ布(フエルト)、不織布等を採用することができる。このような一般的な材質を用いて基材10aを形成した場合、その空隙率(ろ紙等の一定体積あたりの空隙10hの体積が占める割合)は、50%~95%程度である。
例えば、基材10aとしてろ紙を用いた場合、その材質にもよるが、セルロース系であれば60%~95%であり、シリカ系であれば90%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系であれば50%~85%であり、ガラス系であれば80%~90%であり、レーヨン・ポリエステル系不織布であれば80%~90%である。
基材10aは、上述したように、透水性材料10bだけを備えた構成、水性材料12と不透水性材料10cとを備えた構成、ナノファイバー層10dと不透水性材料10cとを備えた構成、全てを備えた構成など、様々な構成にできる。
以下、本体部10の基材10aの材質(透水性材料10b、不透水性材料10c、ナノファイバー層10d)をより具体的に説明する。
(透水性材料10b)
透水性材料10bは、細い繊維fが束状になった繊維集合体であり、水などの液体をその内部に浸透させたり、または表面に沿って流したりできる性質を有するものであれば、とくに限定されない。
なお、基材10aは、透水性材料10bだけを用いてある程度の空隙率を有する構造にしてもよい。このような構造のものとしては、例えば、後述する市販のろ紙を挙げることができる。
透水性材料10bとしては以下のような材質のものを採用することができる。
例えば、透水性材料10bを構成する繊維fとしては、セルロース繊維、繊維、麻繊維、パルプ繊維等の天然素材のもの(天然繊維)のほか、合成樹脂系材料(例えば、ポリエステルや、ナイロン、レーヨン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、カーボンなど)を原料とした合成樹脂製の繊維(化学繊維)やスチールウール、銅、銀などを原料とした金属製の繊維(金属繊維)、ケイ素やチタンなど酸化物、マグネシウムなどの水酸化物、カルシウムなどの炭酸塩、バリウムなどの硫酸塩等の無機化合物系材料を原料とした繊維fなどを採用することができる。もちろん、上述したように2種以上を適宜混合したものも使用することができる。
透水性材料10bは、複数の上記繊維fが束状になった集合体である。そして、透水性材料10bは、繊維f間に、基材10aの空隙10hより狭い幅を有する微細な隙間10bhを有している。この隙間10bhは、例えば、数μm~数十μm程度の幅を有している。このため、透水性材料10bは、水などの液体が接すれば、液体を繊維f間の微細な隙間10bhに浸透させることができる。一旦繊維f間に入り込んだ液体は、この隙間10bhを形成する繊維f表面と液体との表面張力等の相互作用によって自動的に隙間10bh内を移動する。つまり、透水性材料10bは、液体Lが接触すれば内部に浸透させて、毛細管現象により隙間10bhを移動させる機能を有している。
基材10aが、上記のごとき透水性材料10bだけを複数用いて所定の空隙率を有する構造とする。この場合、基材10aの網目状の空隙10hは、透水性材料10b間に形成された複数の空隙10hと透水性材料10b内の複数の隙間10bhとによって形成される。このような構造を有する基材10aとし使用することができるものとしては、例えば、上述した、市販のろ紙(例えば、後述する実施例に記載のろ紙が挙げられる)や、ろ布(フエルト)、不織布などを挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、透水性材料10bには、透水性材料10b自体を製造する際に不純物として混入または意図的に混入させた微細な無機顔料などを含んでいてもよい。なぜなら、このような微細な不純物は液体Lが移動する流路の形成に寄与しないからである。
(不透水性材料10c)
不透水性材料10cは、内部に水などの液体が浸透しない性質を有するものである。
不透水性材料10cは、基材10aにおいて、複数の透水性材料10b間に配置されるものである。
不透水性材料10cの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂製のもののほか、カーボン製、ガラス製、シリカ製、金属製、炭酸カルシウム製、二酸化ケイ素製などを挙げることができる。とくに、試料として血液など動物の体液を用いる場合、これらの液体と反応性の低いPET製の不透水性材料10cを使用するのが好ましい。
不透水性材料10cの形状は、とくに限定されず、塊状や球状、短い繊維状等の種々の形状を有する材料を採用することができる。また、この不透水性材料10cは、繊維状のものを複数からまるように形成したものを採用してもよい。
不透水性材料10cの形状として繊維状を採用する場合、その大きさはとくに限定されない。例えば、繊維状の不透水性材料10cは、繊維径が10μm~500μm程度、繊維長が20μm~5mm程度のものや、繊維径が50μm~100μm程度、繊維長が50μm~1mm程度のものを用いることができる。
基材10aが、上記のごとき繊維状の不透水性材料10cと透水性材料10bとを備えた構造とする。この場合、基材10a内に所定の空隙幅を有する空隙10hを形成し易くなる。そして、基材10aの網目状の空隙10hは、透水性材料10b同士間の空隙10h、透水性材料10bと不透水性材料10c間の空隙10h、不透水性材料10c同士間の空隙10h、および透水性材料10b内の隙間10bhと、によって形成される。このため、基材10a内により複雑な網目状の空隙10hが形成される。
とくに、基材10aが不透水性材料10cと透水性材料10bを用いた構造とすれば、以下の利点を有する。
まず、基材10aが不透水性材料10cを備えている。この透水性材料13は、基材10a内において、複数の透水性材料10b間に配置される。しかも、この複数の不透水性材料10cは、基材10a中に不均一(ランダム)に存在する。
このため、基材10aの内部には、複数の網目状の空隙10hが形成される。つまり、基材10aの内部には、網目状の空隙ネットワークが形成される。そして、この網目状の空隙10hは、液体Lが流れるための空隙10hの幅(つまり流路幅)が、液体Lが流れる方向(流路方向)に向かってより変化する(不均一に変化する)ように形成される。
すると、液体Lを基材10aの貫通孔領域の近くに滴下すれば、滴下された液体Lは基材10a内部へ浸透して、複数の網目状の空隙11内を移動しながら貫通孔11hへ向かう。そして、液体Lは、この網目状の空隙10h内を移動している間に、不純物が分離・除去される。つまり、液体噴霧具1の本体部10の基材10aは、液体L中の不純物等を分離・除去するフィルター機能を有しているのである。
ついで、基材10aが透水性材料10bを備えている。この透水性材料10bは、その内部に、液体Lが毛細管現象により移動することができる複数の隙間10bhを有している。
したがって、基材10aは、不透水性材料10cと、透水性材料10bと、を備えることにより、内部に形成される上記空隙ネットワークをより複雑化させることができる。つまり、液体噴霧具1の本体部10の基材10aは、透水性材料10bを備えることにより、より高いフィルター機能を発揮することができるようになる。
以上のごとく、液体噴霧具1の本体部10の基材10aが有するフィルター機能は、つぎの順に高くなる。まず、透水性材料10bのみで基材10a形成する場合、ついで透水性材料10bと不透水性材料10cを用いて基材10aを形成する場合、そして後述するナノファイバー層10dと不透水性材料10cを用いて基材10aを形成する場合の順に高くなる。言い換えれば、基材10aは、内部の空隙10hの不均一さが、フィルター機能の高くなるのと同様の順に高くなる傾向にある。
このため、液体L中の不純物の量に応じて適宜本体部10の基材10a構造を調整することにより、所望の液体Lからなる液膜Lfを形成させることができる。具体的には、不純物を多く含む液体Lを分析する場合には、透水性材料10bのみを用いて形成する基材10aよりも、透水性材料10bと不透水性材料10cを用いた基材10aや後述するナノファイバー層10dと不透水性材料10cを用いた基材10aを使用するのが好ましい。
(透水性材料10bと不透水性材料10cの配合割合)
基材10aを構成する透水性材料10bと不透水性材料10cの配合割合は、上記フィルター機能を発揮することができれば、とくに限定されない。
例えば、両者の配合割合(質量割合)としては、例えば、透水性材料10b:不透水性材料10c=1:9~9:1となるように配合することができる。
なお、上記例では、不透水性材料10cが透水性材料10bやナノファイバー層10d間に配置される構成の基材10aについて説明したが、基材10aを不透水性材料10cのみを用いて形成してもよい。具体的には、複数の繊維状の不透水性材料10cを絡まるようにしてろ紙のような構造の基材10aを形成してもよい。
(ナノファイバー層10dと不透水性材料10c)
つぎに、基材10aが、ナノファイバー層10dと不透水性材料10cとを備える場合を具体的に説明する。
基材10aは、複数のナノファイバー層10dと複数の不透水性材料10cとを備えることにより、その内部に、複数のナノファイバー層10dと、この複数のナノファイバー層10d間に配置された複数の不透水性材料10cを有する構造になる。この複数のナノファイバー層10dには、後述するように、不透水性材料10cの影響により、表裏を貫通する孔が複数形成されている。
基材10a内には、隣接するナノファイバー層10d間、ナノファイバー層10dと不透水性材料10c間、および隣接する不透水性材料10c間との間に複数の網目状の空隙10h(網目状の空隙ネットワーク)が形成されている。
この複数の不透水性材料10cは、複数のナノファイバー層10dによって束ねられるようにして配置されている。そして、複数の不透水性材料10cを束ねた構造にすることにより、隣接する不透水性材料10c間の距離を短くすることができる。このため、隣接する不透水性材料10c間の空隙10hの幅(流路幅)を小さくすることができる。
したがって、本体部10の基材10aは、ナノファイバー層10dと不透水性材料10cとを備えることにより、内部に形成される複数の空隙10hの流路幅をより複雑化させることができる。つまり、基材10a内に形成される上記空隙ネットワークをさらに複雑化させることができる。
よって、液体噴霧具1の本体部10の基材10aは、ナノファイバー層10dと不透水性材料10cとを備えることにより、より優れたフィルター機能を発揮することができるようになる。
ナノファイバー層10dは、微細繊維であるナノファイバーnfから形成された膜状のものである。具体的には、ナノファイバー層10dは、複数のナノファイバーnfが絡み合って集合した集合体である。
ナノファイバー層10dを構成するナノファイバーnfとしては、合成樹脂製のものや天然素材のものを使用することができる。
天然素材のものとしては、セルロースナノファイバーnfを挙げることができる。このセルロースナノファイバーnfは、その表面に多数の水酸基を有するので、一般的な合成樹脂製のナノファイバーnfに化学的に親水性の官能基を結合させたものに比べて親水性が高い。つまり、水に濡れやすいという性質を有する。
このため、このセルロースナノファイバーnfを用いたナノファイバー層10d(セルロースナノファイバー層10d、単にCNF層10Dということがある)を用いて基材10aを形成することにより、複数のCNF層10D間に形成された空隙10hで発生する毛細管作用をより向上させることができる。
したがって、基材10aが、複数のCNF層10Dを備えることにより、基材10a内部における液体Lの移動をよりスムースにさせることができるという利点が得られる。言い換えれば、基材10aが、複数のCNF層10Dを備えることにより、優れたフィルター機能を発揮しつつ、高い吸水機能を発揮するようになる。
なお、このようなセルロースナノファイバーnfの大きさは、とくに限定されない。
例えば、平均繊維径が1~100nm程度、平均繊維長が100nm~1μm程度のものを使用することができる。
基材10aを構成するナノファイバー層10dの原料となるナノファイバーnfと不透水性材料10cの配合割合は、とくに限定されない。
例えば、セルロースナノファイバーnfと不透水性材料10cを質量割合において、セルロースナノファイバーnf:不透水性材料10c=1:9~9:1となるように配合することができる。
なお、ナノファイバーnfからなるナノファイバー層は、一般的には、水などの液体を通しにくい性質を有している。そして、このようなナノファイバー層だけで基材を形成すれば、基材表面で液体ははじかれてしまい、基材内部へ浸透させることはできない。
一方、液体噴霧具1の本体部10の基材10aは、ナノファイバー層10dの原料となるナノファイバーnfと不透水性材料10cを混合したものを用いて形成される。このため、基材10a内部および基材10a表面に配置されるナノファイバー層10dには、表裏を貫通する微細な孔が複数形成される。
したがって、本体部10の基材10aがナノファイバー層10dを有する構成であっても、液体Lの供給操作において、液体Lを基材10aの表面に滴下すれば、最外層(つまり基材10a表面)に位置するナノファイバー層10dにはじかれることなく基材10a内へ滴下した液体Lを浸透させることができる。
また、上記例では、本体部10の基材10aが、透水性材料10bや不透水性材料10c、ナノファイバー層10dを有する構造について説明したが、基材10aの材質がこれらに限定されるものではなく、上述した空隙10h構造を有していれば、これら以外に様々な添加剤等を含んでもよい。例えば、液体L中の不純物を吸着するものや、着脱機能を有する顔料や、基材の濡れ性を制御するものなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
(形状保持層10e)
液体噴霧具1の本体部10は、基材10a形状を保持するための形状保持層10eを有するようにしてもよい。
具体的には、本体部10は、表面側の基材10aと、この基材10aの下方に位置する基材10aよりも膨潤しにくい材質で形成された形状保持層10eを有する構造としてもよい。より具体的には、本体部10は、形状保持層10eの表面が上層の基材10aの裏面と接するように積層されかつ背面が本体部10の裏面として機能するように形成することができる。そして、この本体部10では、貫通孔11hが、基材10aと形状保持層10eを貫通するように形成されている。つまり、貫通孔11hの背面開口11hbが、本体部10の形状保持層10eの裏面に位置するように形成されている。
例えば、基材10aが液体L中の溶媒等によって膨潤し易い添加剤等(例えば、アクリル酸ポリマーゲルなど)を含む場合、液体Lを供給すると、上記添加剤等によって基材10aが膨潤する可能性がある。基材10aが膨潤すれば、その応力が貫通孔11hに集中しやすくなる。
ここで、基材10aの膨潤に伴い、貫通孔11hの大きさ(例えば、貫通孔11hの開口が変化したり、貫通孔11hの長さ(貫通孔11hの表面開口面と裏面開口面との距離)が変化する可能性がある。かかる現象が生じれば、液体Lを複数の貫通孔11h内に供給して貫通孔11h内に液膜Lfを形成した際、液膜Lfの厚みにばらつきが生じる可能性がある。この状態で液膜Lfを形成すれば、液滴の量や大きさなどにばらつきが生じる可能性がある。
しかしながら、上記のごとく液体噴霧具1の本体部10が形状保持層10eを有する構造とすれば、液体L供給に基づく基材10aの膨潤を形状保持層10eで抑制することができるようになる。このため、本体部10の基材10aが液体Lによって膨潤し易い添加剤等を含有する場合であっても、上記構造となるように形成すれば、液滴の形成を向上ささることが可能となる。
この形状保持層10eは、上述したように基材10aよりも膨潤しにくい材質で形成されていれば、とくに限定されない。
例えば、形状保持層10eは、膨潤しにくい紙製(例えば、耐水性を有する紙製)、プラスチックなどの樹脂製、木製、金属製、ガラスなどの板状の部材を空隙層11aに積層するように貼り合わせて形成してもよい。また、基材10aの裏面側から接着剤やプラスチックなどの樹脂やナノファイバー分散液などを含浸させて基材10aの裏面側に形状保持層10eを形成してもよい。
形状保持層10eを上述した板状の部材を基材10aに積層するように貼り合わせて形成した構成とする場合、この板状の部材の外縁が基材10aの外縁よりも外方に向かって張り出した外縁部を有するように形成することができる。この場合、取り扱う際に、かかる外縁部を把持する部分として利用することができるので、コンタミネーションを防止つつ取り扱い性を向上させることができる。
(貫通孔11h)
本体部10の貫通孔11hは、基材10aの表裏を貫通するように形成されていればよい。
例えば、貫通孔11hは、中心軸CLと基材10aの面方向が直交するように形成してもよく、交差するように形成してもよく、用途に応じて適宜調整すればよい。
例えば、液体噴霧具1は、貫通孔11hは、中心軸CLが基材10aの面方向に対して略直交するように形成するのが好ましい。
具体的には、貫通孔11hは、基材10aの表面に形成された貫通孔11hの表面開口11haの中心と、基材10aの裏面に形成された貫通孔11hの裏面開口11hbの中心を結ぶ貫通孔11hの中心軸CLが基材10a面(表面10saおよび/または裏面10sb)に対して略直交するように、基材10aの表裏を貫通して形成されている。貫通孔11hの中心軸CLが基材面10sa、10sbに対して略直交するように形成することにより、詳細は後述するが、噴霧方向の精度を向上させることができるようになる。
本明細書において、液体Lが複数の貫通孔11h内に略均一に展開されている、とは、各貫通孔11h内に略同じ量の液体Lが供給されて、各貫通孔11h内において略同じ膜厚の液膜Lfが形成された状態を意味しており、貫通孔11h内に展開された液体L量はとくに限定されない。
例えば、各貫通孔11h内全体が液体Lで満たされるように展開された状態や、液体Lが各貫通孔11h内の半分程度に展開された状態や、図示しないが、液体Lが各貫通孔11h内の三分の一程度に添加された状態などを挙げることができる。
また、各貫通孔11hに展開された液体Lの液膜Lfの長さR(具体的には、液膜Lfの膜厚の厚さ方向の長さをいい、以下単に液膜長さRという)は、貫通孔11hの中心軸CLに沿って計測することができる。
例えば、液膜Lfの液膜長さRは、液膜Lfの上面Lsaと貫通孔11hの中心軸CLが交差する点Pと、液膜Lfの底面Lsbと貫通孔11hの中心軸CLが交差する点Qの距離で求めることができる。
例えば、液膜Lfの上面Lsaと基材10aの表面10saが略面一となり、液膜Lfの底面Lsbと基材10aの裏面10sbが略面一となるように貫通孔11h内全体が液体Lで満たされるように展開された場合、液膜Lfの液膜長さRと、貫通孔11hの軸方向の長さ(貫通孔11hの貫通軸方向の長さ)は略同じになる。言い換えれば、液膜Lfの液膜長さRは、基材10aの貫通孔領域における厚さ方向の距離と略同じになる。
一方、液膜Lfの形状は、液体Lの性状により変化する。
例えば、液膜Lfは、液体Lの表面張力により上面Lsaや底面Lsbが凸状のメニスカス形状に形成されることがある。つまり、この液体Lの量が貫通孔11h内で満たされるように本体部10に供給すれば、液膜Lfの液膜長さRは、貫通孔11hの軸方向の長さよりも長くなる。なお、このような凸状のメニスカス形状を形成する液体Lとしては、水を溶媒とする水溶液のものを挙げることができる。
また、その逆に、液膜Lfは、液膜Lfの上面Lsaや底面Lsbが凹状のメニスカス形状に形成されることがある。そして、上記と同様にこの液体Lを貫通孔11h内全体に展開すれば、液膜Lfの液膜長さRは、貫通孔11hの軸方向の長さよりも短くなる。
なお、明細書では、液体Lが貫通孔11h内に満たされた状態における、貫通孔領域部11の貫通孔領域の断面視において、液膜Lfの液面Ls(上面Lsa、底面Lsb)と基材面10s(表面10sa、裏面10sb)は、ほぼフラットな状態にあるという。つまり、上述したような液膜Lfの液面Lsと基材面10sが面一な状態はもちろん、液膜Lfの凸状または凹状に形成されているような状態も、本明細書におけるフラットな状態に含まれる。
なお、本体部10の基材10aの貫通孔11h内に液体L中の目的成分と反応する検出材料を担持させてもよい。
この検出材料としては、液体L中の目的成分により抗原抗体反応や蛍光反応などを生じる様々な反応試薬を適宜選択し採用することができる。この場合、貫通孔11h内に液膜Lfが形成すれば、その液膜Lf中の目的成分と検出材料が反応するようになる。
貫通孔11hは、中心軸CLが上述したように基材10aの基材面10sに対して略直交するように形成されている。なお、本明細書では、この略直交するとは、貫通孔11hのアスペクト比(貫通孔11hの開口幅と貫通孔11hの長さの比)の観点から、両者のなす角が90度±5度を示すことを意味する。この場合、対象物に対して液滴を適切に噴霧することが可能となる。具体的には、液体噴霧具1は、貫通孔11hの中心軸CL方向(貫通軸方向)に沿って液滴を飛ばすことができるので、対象物に対して液滴状の液体Lを適切に噴霧することができる。
(貫通孔11hの形状・大きさ)
貫通孔領域部11の貫通孔11hの大きさや形状は、貫通孔11h内に液体Lを供給した際に表面張力によって液膜Lfが形成された状態を保持し得る機能を有していれば、とくに限定されない。
貫通孔11hの形状としては、円形や楕円形状のほか、矩形状や三角形状等など様々な形状に形成することができる。
例えば、貫通孔11hの形状として、開口11ha、11hbの一部の曲率が他の曲率と比べて大きくなるような三角形状や楕円形状などの非円形状を採用する場合には、基材10a中の空隙10hを移動してきた液体Lが貫通孔11hの内壁面に到達した際に曲率の大きい箇所から貫通孔11h内へ侵入する傾向にある。つまり、非円形状を採用すれば、円形に形成する場合と比べて、液体Lを効率よく貫通孔11h内に展開させやすい傾向にある。
貫通孔11hの大きさは、内部に供給された液体Lを表面張力によって液膜Lfの状態を保持できる大きさであれば、とくに限定されない。
例えば、略円形の貫通孔11hでは、表面開口11haおよび/または裏面開口11hbの大きさが、50μm以上となるように形成するのが好ましい。貫通孔11hの開口の大きさが50μmよりも小さいと貫通孔10の形状を安定させにくい傾向にある。一方、液体Lの粘性にもよるが、貫通孔11hの大きさの上限は上記のごとく液膜Lfを形成することができればとくに限定されないが、例えば、貫通孔11hの開口が、2000μmよりも小さくなるように形成される。
したがって、貫通孔11hの形状が略円形の場合、開口11ha、11hbの内径が50μm~2000μmであり、より好ましくは50μm~1000μmであり、さらに好ましくは100μm~600μmである。
例えば、楕円形状の貫通孔11hでは、開口11ha、11hbの長径(長軸方向の長さ)が50μm~2000μmであり、長径と直交する短径(短軸方向の長さ)が長径よりも短くなるように形成されており、より好ましくは長径が50μm~500μm、単径がこの長径よりも短くなるように形成される。
また、例えば、材質としてセルロース繊維からなるろ紙を基材10aとして採用し、この基材10aに対して楕円形状の貫通孔11hを形成する場合、貫通孔11hは、開口11ha、11hbの長径が300μm~2000μm、短径が250μm~1000μmとなるように形成できる。
また、例えば、材質としてガラス繊維からなるろ紙を基材10aとして採用し、この基材10aに対して楕円形状の貫通孔11hを形成する場合、貫通孔11hは、開口11ha、11hbの長径が350μm~2000μm、短径が300μm~400μmとなるように形成できる。
さらに、例えば、材質としてニトロセルロース繊維からなるろ紙を基材10aとして採用し、この基材10aに対して楕円形状の貫通孔11hを形成する場合、貫通孔11hは、開口11ha、11hbの長径が250μm~2000μm、短径が200μm~300μmとなるように形成できる。
とくに、構造体1を液体噴霧具として利用する場合、液膜Lを液滴の状態のまま対象物に到達させたい場合には、貫通孔11hが一の開口から他方の開口に向かってすり鉢状となるように形成するのが好ましい。つまり貫通孔11の貫通軸方向の形状がすり鉢状となるように形成するのが好ましい。
例えば、貫通孔11hの開口(表面開口11ha、裏面開口11hb)が略円形であり、空気等を吹き付ける側の貫通孔11の開口を表面開口11haとする場合、貫通孔11hが、表面開口11haから裏面開口11hbへ向かってをすり鉢状となるように形成する。つまり、貫通孔11hの表面開口11haの直径が、裏面開口11hbの直径よりも大きくなるように形成する。貫通孔11hをかかる形状に形成すれば、液滴(貫通孔11から空気等により吹出されて液滴状になった液体L)を真っ直ぐに飛ばし易い傾向にある。つまり、液滴が飛散することなく、貫通孔11hの貫通軸に沿って液滴状のまま飛ばし易くなるので、対象物に対して適切に液滴を噴霧し易くなる。
一方、液滴を分散しながら飛散させたい場合には、貫通孔11hの形状を上記とは逆の構造にすればよい。具体的には、貫通孔11hの開口(表面開口11ha、裏面開口11hbへ)が略円形であり、空気等を吹き付ける側の貫通孔11の開口を表面開口11haとする場合、貫通孔11hが、裏面開口11hbから表面開口11haへ向かってをすり鉢状となるように形成する。言い換えれば、逆すり鉢状に形成する。つまり、貫通孔11hの裏面開口11hbの直径が、表面開口11haの直径よりも大きくなるように形成する。貫通孔11hをかかる形状に形成すれば、空気等により液膜Lが吹きだされる際に貫通軸の中心付近はやや真っ直ぐに、その周辺はやや広がりながらふきだすことが可能になる。つまり、液膜Lを液滴状に吹き飛ばす場合と比べて、液滴を広がりながら噴霧することが可能となる。このため、例えば、対象物に対して広い範囲に液滴を噴霧したい場合などには、貫通孔11hを上記構造とするのが好ましい傾向にある。
(貫通孔11hの数)
貫通孔11hは、複数を基材10aの貫通孔領域に形成することがき、その数は、とくに限定されない。
例えば、内径が約250μmの略円形の貫通孔11hの場合または長径が約300μm、短径が約200μmの楕円形状の貫通孔11hの場合、貫通孔領域部11において、貫通孔11hは、100個~1000個/cmとなるように形成することができる。
とくに、貫通孔11hが複数形成されていれば、液膜Lfの数も複数となることから、形成できる液滴数も多くできる。
このため、貫通孔11hを複数形成することにより、対象物に対して噴霧する液滴を多くできるので、液体噴霧具1と対象物との位置合わせが行い易くなる。このため、噴霧操作の操作性を向上させることができるようになる。さらに、貫通孔11hを複数形成することにより、得られる液滴のバラツキを抑制できるので、各貫通孔11hの形状のバラツキをある程度大きくできる。このため、貫通孔11hの加工精度を低くできるので、液体噴霧具1の生産性を向上させることができる。
一方、貫通孔11hを単一の孔とする場合には、基材10aのコストを少なくでき、貫通孔11hの加工時間を少なくできるという利点を有する。
貫通孔11hを形成する方法は、上記大きさや形状にできればとくに限定されない。
例えば、貫通孔10を形成する方法としては、レーザーや機械的パンチング、酸、塩基、有機溶媒等エッチングを用いることができる。とくに、レーザーを用いた形成方法では、基材10aに対して貫通孔11hを略直交するように形成し易いという利点が得られる。
また、本体部10の基材10aの素材として熱に溶けやすいものを採用する場合には、レーザーの熱により素材が溶融して、貫通孔11hの内壁面に形成された空隙10hの開口が閉塞されることがある。このため、このような素材を採用した基材10aに対してレーザー加工を行う場合には、レーザー加工で貫通孔11hを形成した後、内壁面に形成された溶融素材をドリル等で除去する工程を追加するのが望ましい。この場合、貫通孔11hの内壁面に複数の空隙10hの開口を適切に露出させることができるようになる。
(液体拡散防止部材30)
液体噴霧具1の本体部10は、液体供給部12の基材表面10sに液体拡散防止部材30を備えた構造としてもよい。
液体Lを供給する際、液体Lは、基材10a内に浸透する前に基材表面10sを貫通孔領域部11へ向かって移動する現象が発生することがある。かかる現象が発生すれば、供給した液体Lの一部がそのままの状態で貫通孔11h内へ侵入することになる。このため、ろ過した液体Lの液膜Lfを貫通孔11h内に形成することを目的としている場合には、かかる現象の出現は好ましくない。
そこで、本体部10に対して液体Lのろ過機能を適切に発揮させる上では、液体噴霧具1の本体部10は、液体供給部12に供給した液体Lが基材10a内に浸透する前に基材表面10sを貫通孔領域部11へ向かって移動することを防止する機能を有する液体拡散防止部材30を備えた構造とするのが好ましい。この液体拡散防止部材30は、液体供給部12に対して供給した液体Lが基材表面10sを移動して貫通孔領域部11に形成された貫通孔11hに到達するのを防止するための部材である。つまり、液体拡散防止部材30は、未ろ過の液体Lが基材表面10sを上滑りすることを防止するための部材である。
液体拡散防止部材30は、上記機能を発揮するように設けられていればよい。
例えば、液体拡散防止部材30は、本体部10の液体供給部12と貫通孔領域部11の境界部分における基材表面10sを覆うように設けることができる。具体的には、液体拡散防止部材30は、板状またはフィルム状の部材であり、本体部10の軸方向(液体供給部12から貫通孔領域部11に向かう方向)に対して交差するように本体部10(液体供給部12および/または貫通孔領域部11)の軸方向に沿った両端縁同士を連結するように設けることができる。また、例えば、液体拡散防止部材30は、上記機能(未ろ過の液体Lが基材表面10sを上滑りすることを防止する機能)を発揮するものであれば、板状またはフィルム状の液体拡散防止部材30の両端縁が上記本体部10の両端縁近傍に位置するように設けてもよい。
また、液体拡散防止部材30の基材表面10sに設ける位置は、上記境界部分に限定されない。例えば、フィルム状の液体拡散防止部材30を、液体供給部12の液体Lを供給する箇所近傍から近接する貫通孔11hの近傍付近までを覆うように設けてもよい。
液体拡散防止部材30は、上記機能を発揮できる構造であればとくに限定されない。例えば、液体拡散防止部材30は、上述したようにフィルム状や板状の部材などを採用することができるが、かかる部材に限定されず、例えば、基材表面10sの上層部とした構造としてもよい。
液体拡散防止部材30の素材は、とくに限定されない。例えば、プラスチックやナイロン、ポリエチレンなどの合成樹脂のほか、紙、天然樹脂、ガラス、ナノファイバーなどを挙げることができるが、これらに限定されないのはいうまでもない。
なお、上記例では、液体拡散防止部材30を液体供給部12における貫通孔領域部11側に設ける場合について説明したが、上記機能を発揮させることができれば、貫通孔領域部11に設けてもよい。例えば、液体拡散防止部材30は、貫通孔領域部11において、貫通孔11hの周縁部を囲むように設けてもよい。
(カバー部材20)
液体噴霧具1の本体部10は、貫通孔領域部11において、一方および/または他方の面にカバー部材20(表面カバー部材20a、裏面カバー部材20b)を設けてもよい。
例えば、カバー部材20は、本体部10の貫通孔領域部11に形成された貫通孔11hの開口11ha、11hbを覆うように設けることができる。カバー部材20を設けることにより、貫通孔11hの立体的形状を安定化させることができる。
このカバー部材20は、貫通孔11hが位置する箇所に表裏を貫通する孔が形成されている。
なお、この貫通孔11hが位置する箇所とは、個々の貫通孔11hに対応する箇所だけでなく、複数の貫通孔11hをまとめた箇所も含む概念である。例えば、カバー部材20の一の孔の内方に複数の貫通孔11hを位置するように形成したカバー部材を貫通孔領域部11に設けることができる。この場合、噴霧する液滴の範囲を、カバー部材20の孔により調整することができる。
カバー部材20の素材は、とくに限定されず、例えば、プラスチックやガラス、ナノファイバーや金属、木材などを挙げることができる。
<液体噴霧具1を用いた液体噴霧方法>
液体噴霧具1を用いた液体噴霧方法について説明する。
まず、概略を説明する。
液体噴霧具1の液体供給部12に液体Lを供給する。液体Lは、基材10a内を貫通孔領域部11へ向かって移動し、貫通孔領域部11に形成された貫通孔11h内に液膜Lfを形成する。この状態において、貫通孔領域部11の一の面側から他方の面側に向かって空気等を吹き付ける。
すると、空気等により液膜Lfは貫通孔11hから分離され液滴状となり、空気等とともに吹き付け方向に向かって移動する。吹き付け方向に対象物が存在すれば、この対象物に対して液膜Lfから形成された液滴を塗布することができる。
つまり、液体噴霧具1は、液膜Lfを液滴に形成した状態で対象物に対して液滴を噴霧して塗布することができる。しかも、特別な送液装置や微細な液滴を形成するための特別な装置を用いなくても微細な液滴を簡単に形成することができるようにしたことに特徴を有している。
液体噴霧具1の本体部10は、形状保持層10eを有する基材10aを採用することができる。具体的には、基材10aの材質としてろ紙を採用し、この基材10aを形状保持層10eの表面上に積層するようにして本体部10を形成する。
本体部10の大きさおよび形状は、短辺が約50mm、長辺が150mmの長方形状に形成されている。この本体部10は、一の短辺側に一辺が約5mm四方の貫通孔領域部11を有し、この貫通孔領域部11に連続する他方の短辺側に液体供給部12を有するように形成されている。液体供給部12には、基材表面10sに液体拡散防止部材30が設けられている。この液体拡散防止部材30は、一辺が本体部10の短辺の長さと略同じ約5mmの正方形状に形成されている。つまり、本体部10は、液体供給部12の貫通孔領域部11側の基材表面10sが液体拡散防止部材30により覆われた構造となっている。
本体部10の貫通孔領域部11には、各端縁から1mm程度内方に直径100μm~1000μm程度の円形状の貫通孔11hが200個~300個/cm形成されている。
なお、本体部10は、液体拡散防止部材30を設けない構造であってもよい。
(液体Lの展開)
まず、本体部10の液体供給部12に所定量の液体Lを供給して、本体部10の貫通孔領域部11まで液体Lを展開させる。
供給された液体Lは、滴下した表面付近から基材10a内へ浸透する。このとき、一部の液体Lは基材表面10sを滑って貫通孔領域部11へ移動しようとするが、液体拡散防止部材30によりその移動が防止される。このため、供給した全ての液体Lを滴下した付近の基材表面10sから基材10a内へ浸透させることができる。
基材10a内に表面から内部へ浸透した液体Lは、基材10a内に形成された空隙10hを毛細管現象により移動しながら貫通孔領域部11の貫通孔11h内へ向かって移動する。
基材10a内の複数の空隙10hは液体が毛細管現象により通液可能に形成されている。このため、空隙10h内に侵入した液体Lは、自動的に滴下位置から離れるように空隙10h内を移動する。この空隙10hは、複数の貫通孔11hに連通して形成されている。つまり、貫通孔11hの内壁面には、無数の空隙10hの開口が形成されている。
このため、空隙10h内を移動した液体Lが一の貫通孔11hに到達すれば、貫通孔11hの内壁面に形成された空隙10hの開口から貫通孔11hへ侵入し、内壁面に沿って広がるようにして貫通孔11h内へ液体Lが供給される。そして、最終的には、貫通孔11hへ侵入した液体Lは、貫通孔11hの表面張力によって貫通孔11hを塞ぐように液膜Lfを形成する。一方、この貫通孔11hは、複数の空隙10hにより隣接する貫通孔11hと連通されている。
すると、一の貫通孔11h内へ侵入した液体Lは、液膜Lf長さが基材10aの貫通孔領域部11の厚さ(基材10aの厚さ方向の距離)とほぼ同じ程度の長さに保持された状態を維持しながら、隣接する貫通孔11hへ移動する。
このような現象が連続的に生じることによって、液体Lは、本体部10の貫通孔領域部11の貫通孔領域に形成された複数の貫通孔11hへほぼ均一に展開され、各貫通孔11h内にほぼ均一な液膜Lfが形成される。
しかも、貫通孔11hに形成される液膜Lfは、その表面および裏面が貫通孔領域の表面に対してほぼフラットな状態となるように形成されるので、その液膜Lf長さを貫通孔11hの貫通軸方向の線の距離(つまり基材10aの貫通領域の厚さ)とほぼ同じ長さにできる。
したがって、液体噴霧具1の本体部10の液体供給部12に液体Lを滴下するようにして供給すれば、液体Lを、本体部10の基材10a内部に形成された空隙10hを毛細管現象により自動的に移動させながら複数の貫通孔11h内に展開して、各貫通孔11h内に均質な液膜Lfを形成させることができる。つまり、均質な膜厚を有する液膜Lfを本体部10の貫通孔領域部11に複数形成させることができる。
(噴霧方法)
ついで、本体部10の貫通孔領域部11の複数の貫通孔11h内に液膜Lfが形成された状態において、貫通孔領域部11の一の面から他方の面側に向かって空気を吹き付ける。すると、貫通孔11hに形成された液膜Lfは、空気の風圧により貫通孔11hから吹き飛ばされて反対側の面に形成された貫通孔11hの開口から微細な液滴となって空気の進行方向に向かって吹出される(つまり噴霧される)。
この微細な液滴は、貫通孔11hの大きさに依存する傾向にあるので、貫通孔11hの大きさを調整することにより、液滴の大きさを調整することが可能となる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
液体噴霧は産業分野では、塗工、印刷、検査、混合等で汎用される要素技術である。これまでの液体噴霧のためのデバイスは、超音波印加、二流体ノズル、クロスフローネブライザー、ニューマティック(同軸)ネブライザー、グリッドネブライザー等が知られている。ただ、いずれも噴霧部の精密な加工や、耐圧部品が必要であること、別添の送液ポンプ、ガス流路、超音波発生装置が必要になるなど、持ち運び性、コスト性に改善の余地があった。
上記問題を解決するため、紙などの繊維からなる流路を用いて、毛細管現象に基づき試料を送液し、流路先端に調製した穿孔に生じた液膜に気流を送ることで微小な液滴を噴霧できるデバイスを作製する。基材に含まれる空隙により毛細管現象が生じることから、ポンプを利用することなく適切な場所に液体を送液できる。さらに、流路先端に微小な穿孔(本実施形態の貫通孔に相当する)を加工し、表面張力に基づき穿孔に液膜を形成させた後、液膜に空気圧を印可することで微小な液滴を発生させることが可能と考えた。
噴霧基材の基となるろ紙貼合シートを作製した。ろ紙貼合シートはポリスチレン製の耐水基材(プレカットバッキングシート、GL-187,Lohmann社製)上に、ろ紙(クロマトグラフィー用ろ紙、No.590)を貼合した。バッキングシートにはあらかじめ粘着剤が塗工されており、ろ紙を貼合したのち、耐水基材とろ紙の張り合わせを確実にするためにプレスした(プレス圧:0.3kgcm-2)した。
作製したシートに、液膜形成用の穿孔(つまり噴霧基材の表裏を貫通する貫通孔)を加工した。レーザー加工にはユニバーサルシステムズのILS9.75を使用した(レーザー最大出力40w,プロッタースピード 最大3500mms-1)。レーザー加工条件は次のとおりである。レーザー出力10%,速度5%、駆動パルスレートPPI=40とした。レーザーはバッキングシート側から照射した。なお、レーザー出力15%時の孔径はバッキングシート側で331.8μm,ろ紙側で116.3μm(N=6),孔密度7.0個/mm2となった。穿孔はろ紙貼合シート先端から0.5mmのところを上端として、長辺方向に4mm幅で作製した。
基材作製条件で作製された噴霧基材を5(横)×40(縦)mmにカッターを用いて裁断した。小型のガラス容器(容量2mL)に少量(0.3mL)程度の着色された水溶媒(純水に銅フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウムを溶解した試料、濃度10mmol dm-3)を添加し、その容器内に穿孔を形成した噴霧基材を垂直に設置した。なお、噴霧基材の下部と着色液が2mm程度接触する程度の条件で浸漬した。穿孔に空気噴霧器(エアーダスター、AD400FL,株式会社オリエンテック、設定空気圧(約50kPa))を印加した。
図8に示すように試料液は噴霧基材のろ紙部分をポンプ等を用いることなく先端まで進液した。これは、ろ紙内の空隙による毛細管現象に基づき進液しているものと思われる。噴霧基材の穿孔が着色しており、穿孔が液体で充填されていることが示唆された。
液体進液時の噴霧基材の穿孔についての光学顕微鏡観察結果を図9に示す。穿孔内部が着色しており、数百μmの微細孔に液体の表面張力で液膜が形成されているものと思われる。続いて、穿孔に空気を噴霧したところ、孔表面から液滴が噴霧された(図10)。
穿孔出口側に白色の紙を設置し、噴霧された液滴をトラップした。液滴をトラップ後の紙表面の写真を図11に示す。
数百μmから数mm径の液滴が穿孔出口の白色紙に衝突したことが図11から判明した。ろ紙表面に付着した液滴径を光学顕微鏡像から計測したところ308±81μm(n=20)であった。液膜が風圧で穿孔内壁から吹き飛ばされることで出口側から液滴が吐出されるものと思われる。
本発明の液体噴霧具は、医学や、生化学、薬学、化学、環境、食品、工業などの分野に利用される用具として適している。
1 液体噴霧具
10 本体部
10a 基材
10b 透水性材料
10c 不透水性材料
10d ナノファイバー層
10h 基材中の空隙
11 貫通孔領域部
11h 貫通孔
12 液体供給部
Lf 貫通孔内に形成される液膜

Claims (12)

  1. 基材の表裏を貫通した貫通孔を有する貫通孔領域部と、該貫通孔領域部に連続した液体供給部と、を有する本体部を備え、
    該本体部は、
    前記基材内に、前記貫通孔に連通する、液体が毛細管現象によって通液可能な複数の空隙を有しており、
    前記貫通孔は、
    液体を表面張力によって保持し得る大きさに形成されている
    ことを特徴とする液体噴霧具。
  2. 前記本体部は、
    前記基材が、
    毛細管現象によって内部を通液可能な複数の透水性材料を備えている
    ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧具。
  3. 前記本体部は、
    前記基材が、
    毛細管現象によって内部を通液可能な複数の透水性材料と、該透水性材料間に配置された複数の不透水性材料と、を備えており、
    前記空隙が、
    前記透水性材料と前記不透水性材料によって形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧具。
  4. 前記本体部は、
    前記基材が、
    ナノファイバーからなる複数のナノファイバー層と、該複数のナノファイバー層間に配置された不透水性材料と、を備えており、
    前記空隙が、
    前記ナノファイバー層と前記不透水性材料によって形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧具。
  5. 前記本体部の基材は、
    前記基材の表面に位置するナノファイバー層が、該ナノファイバー層を貫通する孔を有している
    ことを特徴とする請求項4記載の液体噴霧具。
  6. 前記本体部は、
    前記基材が、裏面側に形状を保持するための形状保持層を有している
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液体噴霧具。
  7. 前記本体部には、
    前記液体供給部における前記貫通孔領域側に液体拡散防止部材が設けられている
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液体噴霧具。
  8. 前記本体部には、
    前記貫通孔領域部において、一方または他方の面にカバー部材が設けられている
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液体噴霧具。
  9. 前記カバー部材には、
    前記貫通孔領域部の貫通孔が位置する箇所に孔が形成されている
    ことを特徴とする請求項8記載の液体噴霧具。
  10. 前記貫通孔の開口径が、50μm~2000μmである
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の液体噴霧具。
  11. 前記基材が、ろ紙である
    ことを特徴とする請求項2記載の液体噴霧具。
  12. 液体噴霧具を用いて液体を噴霧する方法であって、
    前記液体噴霧具が、請求項1乃至11のいずれかに記載の液体噴霧具であり、
    該液体噴霧具の液体供給部に液体を供給し、該液体噴霧具の貫通孔に形成された液膜に対して空気を吹き付ける
    ことを特徴とする液体噴霧方法。
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