JP2022053089A - 超音波診断装置ファントム用生体擬似物質およびそれを用いて製作した超音波診断装置用ファントム - Google Patents
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Abstract
【課題】 経時変化せず、音速が1500(m/s)以上あり、低粘度で減衰率(伝播損失)が小さい物性を備えた超音波診断装置ファントム用生体擬似物質を提供する。【解決手段】 アルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されており、有機系ゲル膨張媒が、グリム類と、常温で液状であるイオン液体との2液混合物とする。グリム類としては、ジエチレングリコールジメチルエーテルなど多様なものがあり得る。また、イオン液体としては1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドなど多様なものがあり得る。アルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲルは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体など多様なものがあり得る。減衰率や音速の調整にPMMA粉体を分散させても良い。この生体擬似物質を用いてファントムを製作する。【選択図】 図2
Description
特許法第30条第2項適用申請有り IEEE IUS 2019 Glasgow 令和1年10月6日~9日英国スコットランド グラスゴーScottish Event Campusでの学会発表
本発明は、超音波診断装置の性能評価、校正あるいは医師、臨床検査技師の技術訓練の使用目的に適した超音波診断装置ファントム用生体擬似物質に関する。
従来技術において、超音波診断装置ファントム用生体擬似物質としては、寒天やゼラチンを母材とするゲル(特許文献1)、酸性水含有ポリビニルアルコールを母材とするゲル(特許文献2)、ウレタン系水膨潤材樹脂を母材とするゲル(特許文献3)、含水下吸水性樹脂を母材とするゲル(特許文献4)などのヒドロゲルが用いられてきた。これらは例えば、医療用超音波診断装置の性能評価、校正、医師および臨床検査義士の技術訓練等に使用されているが、下記の問題などがあり、不満足なものであった。
一般に、実用的な超音波診断装置ファントムには次のような性質が要求される。
まず、超音波物性のうち伝播速度については、人体組織のそれに近似していると共に超音波の伝播減衰率が人体のそれより小さいことである。従来は母材となるゲルに分散させた粉体で減衰率を調整して人体の伝播減衰率に近づけることを行っていた。なお、これらの超音波物性が長期の貯蔵時間に亘って変化することなく維持されていることも必要な要件となる。
まず、超音波物性のうち伝播速度については、人体組織のそれに近似していると共に超音波の伝播減衰率が人体のそれより小さいことである。従来は母材となるゲルに分散させた粉体で減衰率を調整して人体の伝播減衰率に近づけることを行っていた。なお、これらの超音波物性が長期の貯蔵時間に亘って変化することなく維持されていることも必要な要件となる。
しかしながら、高比率に水を含む寒天、ゼラチンなどのゲル状物質からなる超音波診断装置ファントムや特許文献1のグルコマンナンのゲル状物質からなる超音波診断装置ファントムは、上記の良好な超音波特性を備えているとはいうもののヒドロゲル(含水ゲル)であるために、雑菌増殖、変質、腐敗等の問題があり、しかも機械的強度が弱いため壊れやすいという問題があった。
また、酸性水含有ポリビニルアルコールゲルからなる特許文献2の超音波診断装置ファントムや、ウレタン系含水膨潤ゲルからなる特許文献3の超音波診断装置ファントムや、他の吸水性樹脂を母材とする特許4の超音波診断装置ファントムについても、いずれも水を高比率で含んでいるため、水が蒸発して含水率が経時的に変化することにより超音波特性が変動してしまうという問題があり、かつ、雑菌増殖など不可避の問題がある。
このように、水を含んだヒドロゲルを母材とする超音波診断装置ファントムには、超音波特性の経時変化という不可避の問題が必ず存在する。
このように、水を含んだヒドロゲルを母材とする超音波診断装置ファントムには、超音波特性の経時変化という不可避の問題が必ず存在する。
上記の問題を解決するため、従来技術において、常温で大半ないし全てが液状であるアルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲルを母材とし、その中にウレタン反応に関与しない不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されている超音波診断装置ファントム用ゲルが考案されている。
このゲル母材に含有される有機系ゲル膨張媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルが提案されている(特許文献5)。
このゲル母材に含有される有機系ゲル膨張媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルが提案されている(特許文献5)。
ファントムを用いて超音波診断装置の性能を評価する場合、性能評価の物差しになるファントムに用いる生体擬似物質の特性について統一された規格が必要になる。そこで、IEC国際規格(IEC61685「超音波流速測定システム-流速試験体-」)(非特許文献1)には、下記表1に示した生体擬似物質の物性値が定められている。
このファントムに用いる生体擬似物質の特性のIEC国際規格には、生体擬似物質の音速を1540(m/s)とすることが規定されている。特許文献5に記載された有機系ゲル膨張媒のうち、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルの音速は、N-メチルピロリドンを除いて、いずれも1500(m/s)以下である。ここで、これら有機系ゲル膨張媒を用いたセグメント化ポリウレタンゲルの音速は、ほぼ有機系ゲル膨張媒の音速で決まるため、N-メチルピロリドンを除いて、上記特許文献5に記載された有機系ゲル膨張媒によるセグメント化ポリウレタンゲルでは、[表1]に規定された音速値を満たすことは出来ない。
なお、N-メチルピロリドンのみ、その音速は、1565(m/s)であるので、このN-メチルピロリドンを有機系ゲル膨張媒とするセグメント化ポリウレタンゲルであれば、[表1]に規定された音速の規定値を満たすことができる。しかし、N-メチルピロリドンの有機系ゲル膨張媒の蒸気圧は、他の有機系ゲル膨張媒、例えばテトラエチレングリコールジメチルエーテルの蒸気圧(0.01mmHg)と比較しても、0.29mmHgなる大きな値を呈しており、蒸発により物性が変化してしまう問題がある。
従来技術において、ゲルの音速を向上させる手法として、テトラエチレングリコールジメチルエーテルに、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートなるイオン液体を混合した混合溶液をセグメント化ポリウレタンゲルの膨張媒として用いることにより、そのゲルの音速を1500(m/s)以上にする提案がなされている(非特許文献2)。
ここで、イオン液体は、一般に蒸気圧がほとんど零であるため、常温で長期間放置しても蒸発により減量しない特長がある。そのため、このイオン液体を適用したセグメント化ポリウレタンゲルにおいては、有機系ゲル膨張媒が蒸発することによる特性の変化が起こりにくい特長を有するものとなる。
液体を伝播する音波の損失は、液体の粘度に比例することが知られている(非特許文献2)。1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの粘度は、58.1(mPa・s)で、テトラエチレングリコールジメチルエーテルの粘度3.6(mPa・s)に比べる非常に大きい。そのため、テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの混合溶液の粘度が大きくなり、それを有機系ゲル膨張媒とするセグメント化ポリウレタンゲルの伝播損失(音波の吸収)が可及的に増大して、減衰が規定値を超えるようになった。テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの混合溶液で、音速を1500(m/s)に近づけるため、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート成分を20(重量%)とした場合における減衰を測定して、周波数依存減衰を求めた。その値は、例えば5(MHz)で0.64(dB/cm/MHz)となった。この実験結果から、テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの混合溶液で作成したセグメント化ポリウレタンゲルは、IEC国際規格(非特許文献1)で規定されている0.5(dB/cm/MHz)満たすことができないことは明らである。
上記したように、特許文献5に記載した生体擬似物質の特長を活かしつつ、かつ、非特許文献2に記載された技術を組み合わせることにより、その欠点であった音速についても[表1]に規定された音速値を満たすものが期待される。
しかし、ファントムに用いる生体擬似物質が満たすべき[表1]の特性のIEC国際規格には減衰率に関する基準もある。特許文献5に記載した生体擬似物質に対して、単に非特許文献2に記載された技術を組み合わせても、減衰率(伝播損失)が大きいという問題があることが分かった。
しかし、ファントムに用いる生体擬似物質が満たすべき[表1]の特性のIEC国際規格には減衰率に関する基準もある。特許文献5に記載した生体擬似物質に対して、単に非特許文献2に記載された技術を組み合わせても、減衰率(伝播損失)が大きいという問題があることが分かった。
発明者らは、減衰率(伝播損失)が小さいイオン液体を有機系ゲル膨張媒とすることに着想し、減衰率(伝播損失)が小さく低粘度のイオン液体を選択的に採用することを想起した。
上記したように、低粘度のイオン液体を有機系ゲル膨張媒とすることにより、常温で長期間放置しても蒸発により減量せず、その音速が1500(m/s)以上となり、かつ、低粘度で減衰率(伝播損失)が小さくなるファントムに用いる生体擬似物質を発明した。
上記したように、低粘度のイオン液体を有機系ゲル膨張媒とすることにより、常温で長期間放置しても蒸発により減量せず、その音速が1500(m/s)以上となり、かつ、低粘度で減衰率(伝播損失)が小さくなるファントムに用いる生体擬似物質を発明した。
上記問題点に鑑み、本発明は、有機系ゲル膨潤媒を常温で長期間放置しても蒸発により減量せず、音速が1500(m/s)以上あり、低粘度で減衰率(伝播損失)が小さいという物性を備えた超音波診断装置ファントム用生体擬似物質を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明にかかる超音波診断装置ファントム用生体擬似物質を構成するため、アルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されているものを採用し、その有機系ゲル膨張媒について以下の特徴を持たせた。
まず、アルキレンオキサイドのセグメントを有するものとしては、常温で大半ないし全てが液状であるセグメントであることが必要である。具体的にはエチレンオキサイド(EO)鎖、プロピレンオキサイド(PO)鎖、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体(EO-PO共重合体) 、ブチレンオキサイド(BO)鎖、BO-PO共重合体のいずれかがある。この中でも、特にEO-PO共重合体が好ましい。AOセグメントがEO-PO共重合体であると、EOおよびPOは減衰率が低いことから、種々の特性のファントムを作製する際に、組成検討の自由度が高まるという利点があるからである。
セグメント化ポリウレタンゲルの膨張媒に有用と考えられるグリム類として、ジグリム類(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグリム類(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム類(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)に注目し、さらに現存する多種類のイオン液体については、文献調査と入手したサンプルの実験データから音速が1500(m/s)以上で、かつ低粘度のイオン液体を探索した結果、低粘度のイオン液体(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート)に注目した。それらの物性値を[表2]に示す。
次に、有用と考えられたグリム類およびイオン液体のいずれかを組み合わせた2液混合溶液において、濃度の異なる各種サンプルを作製して、濃度と音速の関係、濃度と密度、および濃度と粘度の関係を測定した。
2液混合溶液の一例として、トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液を取り上げ、イオン液体濃度と音速、密度及び粘度の関係について測定した。測定結果を図2、図3、図4に示す。
これら実験データで見られるように、上記の関係は単純な線形の関係でない。このような関係を計算で算出できる理論も存在しないため、可能性のある種々のグリム類とイオン液体の2液混合溶液を取り上げ、それらのイオン液体濃度と音速、密度及び粘度の関係を実測して求めた。
これら実験データで見られるように、上記の関係は単純な線形の関係でない。このような関係を計算で算出できる理論も存在しないため、可能性のある種々のグリム類とイオン液体の2液混合溶液を取り上げ、それらのイオン液体濃度と音速、密度及び粘度の関係を実測して求めた。
実験結果に基づいて、6種類の2液混合溶液について粘度と音速の関係を求めた。
図5には、(1) ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(2)ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、(3)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(4)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、(5)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(6)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液なる6種類の2液混合溶液について、音速と粘度の関係を示してある。
図5には、(1) ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(2)ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、(3)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(4)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、(5)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(6)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液なる6種類の2液混合溶液について、音速と粘度の関係を示してある。
これらのうち(6)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートからなる2液混合溶液においては、音速1500(m/s)の特性での粘度は8(mPa・s)なる大きな値になっている。このような結果から、テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートからなる2液混合溶液によるセグメント化ポリウレタンゲルの減衰値は大きくなり、IEC国際規格で決められた特性を満たすことが困難であった。
一方、(1)ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(2)ジエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、(3)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液、(4)トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートの2液混合溶液、あるいは(5)テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液等は、音速が1500(m/s)で粘度は5(mPa・s)程度である。
これら5つ挙げた2液混合溶液であれば、それらの2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒として用いて製作したセグメント化ポリウレタンゲルの減衰値が小さくなると期待できる。
なお、セグメント化ポリウレタンゲル中の有機系ゲル膨張媒の含有率は、20~80重量%であることが好ましく、20重量%未満では、アルキレンオキサイド(AO)セグメントやポリマー鎖を十分に伸展させてAOセグメント間やポリマー鎖間を十分に拡張させた状態にすることが難しいため、良好な超音波特性を付与することが困難になる。一方、有機系ゲル膨張媒の含有率が80重量%を上回ると、セグメント化ポリウレタンゲルの強度が低下して脆くなり、簡単に破壊される恐れが生じる。
有機系ゲル膨張媒をセグメント化ポリウレタンゲルに含有させる場合は、セグメント化ポリウレタンゲルに後から有機系ゲル膨張媒を浸透、吸収させる方法を採用してもよいし、また、セグメ
ント化ポリウレタンゲルを形成する際に原料成分に有機系ゲル膨張媒を混合して反応させる方法を採用してもよい。
また、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドとジエチレングリコールジメチルエーテルあるいはトリエチレングリコールジメチルエーテルあるいはテトラエチレングリコールジメチルエーテルとの2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒として用いて製作したセグメント化ポリウレタンゲルの減衰を実測して、周波数依存減衰を比較すると、いずれのものも0.5(dB/cm/MHz)より十分小さいことが確認できた。上記の2液混合溶液で、例えば最も粘度の大きなテトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(20重量%)の2液混合溶液の周波数依存減衰は、6(MHz)で0.1(dB/cm/MHz)であった。
なお、セグメント化ポリウレタンゲル中の有機系ゲル膨張媒の含有率は、20~80重量%であることが好ましく、20重量%未満では、アルキレンオキサイド(AO)セグメントやポリマー鎖を十分に伸展させてAOセグメント間やポリマー鎖間を十分に拡張させた状態にすることが難しいため、良好な超音波特性を付与することが困難になる。一方、有機系ゲル膨張媒の含有率が80重量%を上回ると、セグメント化ポリウレタンゲルの強度が低下して脆くなり、簡単に破壊される恐れが生じる。
有機系ゲル膨張媒をセグメント化ポリウレタンゲルに含有させる場合は、セグメント化ポリウレタンゲルに後から有機系ゲル膨張媒を浸透、吸収させる方法を採用してもよいし、また、セグメ
ント化ポリウレタンゲルを形成する際に原料成分に有機系ゲル膨張媒を混合して反応させる方法を採用してもよい。
また、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドとジエチレングリコールジメチルエーテルあるいはトリエチレングリコールジメチルエーテルあるいはテトラエチレングリコールジメチルエーテルとの2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒として用いて製作したセグメント化ポリウレタンゲルの減衰を実測して、周波数依存減衰を比較すると、いずれのものも0.5(dB/cm/MHz)より十分小さいことが確認できた。上記の2液混合溶液で、例えば最も粘度の大きなテトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(20重量%)の2液混合溶液の周波数依存減衰は、6(MHz)で0.1(dB/cm/MHz)であった。
なお、超音波診断装置用ファントムとして製作する上では、IEC国際規格で規定されている音速、音響インピーダンス(音速と密度の積)、減衰と共に後方散乱波を生じさせるため、生体擬似物質において、上記の有機系ゲル膨張媒を母材ゲルに分散させる必要がある。
そこで、今回取り上げたセグメント化ポリウレタンゲルにおいては、架橋したポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)の微粉体を分散させることにより、音速、音響インピーダンスをIEC国際規格で規定された値に調整することにした。
そこで、今回取り上げたセグメント化ポリウレタンゲルにおいては、架橋したポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)の微粉体を分散させることにより、音速、音響インピーダンスをIEC国際規格で規定された値に調整することにした。
なお、粉体を分散させたゲルの減衰値は、主として粉体の粒径および音響インピーダンスにより決まる。ここで、架橋したPMMA粉体を分散させたセグメント化ポリポリウレタンゲルの密度と音速は、非特許文献3に記載された計算方法、即ち、分散している粉体とゲルの物性値および分散比率から求めることができる。
架橋したPMMA粉体を分散させたセグメント化ポリウレタンゲルの減衰値は、粉体の分散比率と粒径で調整できるので、セグメント化ポリウレタンゲルに粒径5μmの架橋したPMMA粉体を分散させて、減衰がIEC国際規格の規定値になるように調整した。
この場合のセグメント化ポリウレタンゲルに要求される音速は、文献2に記載された計算方法で求められる。
この場合のセグメント化ポリウレタンゲルに要求される音速は、文献2に記載された計算方法で求められる。
また、セグメント化ポリウレタンゲルの音速を決定する液混合溶液のイオン液体濃度は、例えば図2に示したようなイオン液体濃度と音速の関係から与えられる。
本発明による物質は、音速が人体組織の音速(1540m/s)より大きく、低粘度のイオン液体として、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド,1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートに対して、グリム類(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル,ポリエチレングリコールジエチルエーテルから選択されたいずれか単独又はこれらの任意の組み合わせ)のいずれかとの混合溶液としたものをセグメント化ポリウレタンゲル中に膨張媒として添加することにより、長期間に亘りその物性が変化せず、人体組織の音速に近い任意の数値にすることが可能となり、かつ減衰も規定の値にすることができた。例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテルをセグメント化ポリウレタンゲル中に膨張媒として添加して作成したサンプルを41日間室温放置した実験結果(図1)では、重量変化は0.5%以内と実用上ほとんど変化しない結果となっている。また、音速が1500(m/s)に近づけるため、テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの2液混合溶液で1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド成分を20(重量%)とした混合溶液をセグメント化ポリウレタンゲル中に膨張媒として添加して音速測定用のサンプルを作成した。この試料は、セルに密閉した。このサンプル作成当初の音速の測定値は、1513(m/s)であった。常温の室内に45日間放置した後の音速の測定値は、1517(m/s)となった。これらは、測定誤差と同等の値であるため、当該セグメント化ポリウレタンゲルの物性は変化していないと結論付けた。
よって長期間に亘り安定しかつIEC国際規格値に準拠したファントムが初めて実現された。
よって長期間に亘り安定しかつIEC国際規格値に準拠したファントムが初めて実現された。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。
トリエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドからなる2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒としたセグメント化ポリウレタンゲルに粒径5μmの架橋したPMMA粉体を10(重量%)で分散させた物質をファントム用生体擬似物質として製作した。この場合、2液混合溶液の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの濃度を20(重量%)とすることで2液混合溶液の粘度は4(mPa・s)となり2液混合溶液での音波の吸収は微少となり、この生体擬似物質の減衰は架橋したPMMA粉体のみに起因することになる。その結果、減衰は架橋したPMMA粉体の粒径と配合率で決まる。
上記の生体擬似物質の音速、密度、即ちこれらから決まる音響インピーダンスは、下記表3のものとなった。これら数値はIEC国際規格に適合している。また、この生体擬似物質において経時変化は認められなかった。
上記の生体擬似物質の音速、密度、即ちこれらから決まる音響インピーダンスは、下記表3のものとなった。これら数値はIEC国際規格に適合している。また、この生体擬似物質において経時変化は認められなかった。
次に、テトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドからなる2種類の2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒としたセグメント化ポリウレタンゲルに粒径5μmの架橋したPMMA粉体を5( 重量%)で分散させた物質をファントム用生体擬似物質として製作した。この場合、2液混合溶液の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの濃度を20( 重量%)とすることで2液混合溶液の粘度は8(mPa・s)となり2液混合溶液での音波の吸収は微少となり、この生体擬似物質の減衰は架橋したPMMA粉体のみに起因することになる。その結果、減衰は架橋したPMMA粉体の粒径と配合率で決まる。
上記の生体擬似物質の音速、密度、即ちこれらから決まる音響インピーダンスは、下記表4のものとなった。これら数値はIEC国際規格に適合している。
上記の生体擬似物質の基材であるPMMA粉体を含まないテトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドからなる2種類の2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒としたセグメント化ポリウレタンゲルを室内に放置した場合の音速の変化を測定した。この試料の作成当初の音速は、1513 (m/s)で、45日後の音速の測定結果は、1517(m/s)であった。この差異は、測定誤差に起因するものと考えられ、経時変化は認められない。
上記の生体擬似物質の音速、密度、即ちこれらから決まる音響インピーダンスは、下記表4のものとなった。これら数値はIEC国際規格に適合している。
上記の生体擬似物質の基材であるPMMA粉体を含まないテトラエチレングリコールジメチルエーテルと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドからなる2種類の2液混合溶液を有機系ゲル膨張媒としたセグメント化ポリウレタンゲルを室内に放置した場合の音速の変化を測定した。この試料の作成当初の音速は、1513 (m/s)で、45日後の音速の測定結果は、1517(m/s)であった。この差異は、測定誤差に起因するものと考えられ、経時変化は認められない。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、超音波診断装置ファントム用の生体擬似物質として超音波診断装置ファントムの製作に広く適用することができる。
本発明による超音波診断装置ファントム用の生体擬似物質を適用すれば、良好な超音波診断装置ファントムを得ることができる。この製作した超音波診断装置ファントムを用いて超音波診断装置の性能を的確に評価でき、性能の認定および検査に用いることができる。
また、本発明による超音波診断装置ファントムを用いた超音波診断装置の有用な検査体制は、安全で安心な診断に役立つため、医療機関で今後広く利用される。
本発明による超音波診断装置ファントム用の生体擬似物質を適用すれば、良好な超音波診断装置ファントムを得ることができる。この製作した超音波診断装置ファントムを用いて超音波診断装置の性能を的確に評価でき、性能の認定および検査に用いることができる。
また、本発明による超音波診断装置ファントムを用いた超音波診断装置の有用な検査体制は、安全で安心な診断に役立つため、医療機関で今後広く利用される。
Claims (7)
- アルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されており、
前記有機系ゲル膨張媒が、グリム類と、常温で液状であるイオン液体との2液混合物であることを特徴とする超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。 - 前記グリム類が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル,ポリエチレングリコールジエチルエーテルから選択されたいずれか単独又はこれらの任意の組み合わせであり、
前記イオン液体が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネートから選択されたいずれか単独又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。 - 前記アルキレンオキサイドのセグメントを有する前記セグメント化ポリウレタンゲルが、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体 、ブチレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体のいずれかのセグメントを有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。
- 前記有機系ゲル膨張媒が、前記セグメント化ポリウレタンゲル中に、20~80重量%含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。
- 前記セグメント化ポリウレタンゲル中に超音波減衰率を調整する減衰率調整剤が含有されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。
- 前記減衰率調整剤が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、発泡ポリスチレンの架橋もしくは非架橋粒状粒子、又は、ポリエチレン、グラファイト、ガラス、固形状パラフィンワックスの粒状粒子のいずれかであって、1~100μmの平均粒径を有するものである請求項5に記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質。
- 請求項1から6のいずれかに記載の超音波診断装置ファントム用生体擬似物質を用いて製作された超音波診断装置用ファントム。
Priority Applications (1)
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JP2020159700A JP2022053089A (ja) | 2020-09-24 | 2020-09-24 | 超音波診断装置ファントム用生体擬似物質およびそれを用いて製作した超音波診断装置用ファントム |
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JP2020159700A Pending JP2022053089A (ja) | 2020-09-24 | 2020-09-24 | 超音波診断装置ファントム用生体擬似物質およびそれを用いて製作した超音波診断装置用ファントム |
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2020
- 2020-09-24 JP JP2020159700A patent/JP2022053089A/ja active Pending
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