以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る半導体モジュール100の構成を示す。半導体モジュール100は、パワーモジュールであってよく、半導体スイッチ110と、半導体スイッチ110の駆動回路および保護回路等を筐体に内蔵し、または樹脂封止することによりパッケージ化したインテリジェントパワーモジュール(IPM)であってもよい。半導体モジュール100は、半導体スイッチ110のスイッチング速度を指示するための外部端子を追加することなしに、半導体スイッチ110のスイッチング速度を外部から切り替えることを可能とする。半導体モジュール100は、半導体スイッチ110と、駆動部120と、変更部130と、電圧源170と、コンパレータ180とを備える。
半導体スイッチ110は、主端子としてコレクタおよびエミッタ、制御端子としてゲートを有するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を有する。半導体スイッチ110は、本図に示すように、このIGBTと逆並列に接続された還流ダイオードを有してよい。半導体スイッチ110は、コレクタおよびエミッタの各主端子が半導体モジュール100の外部端子CおよびEに接続され、制御端子が駆動部120に接続される。これに代えて、半導体スイッチ110は、主端子としてドレインおよびソース、制御端子としてゲートを有するパワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を有してよい。この場合、半導体スイッチ110は、MOSFETの寄生ダイオードを還流ダイオードとして用いてもよい。
駆動部120は、変更部130に接続される。駆動部120は、半導体モジュール100の外部端子から入力される、半導体スイッチ110のスイッチングを指示する制御信号Vinに応じて、半導体スイッチ110を駆動する。駆動部120は、半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更可能とすべく、複数の駆動回路125a~b(以下、「駆動回路125」とも示す。)を有する。各駆動回路125は、半導体モジュール100内の制御用電源電圧Vcc(以下、「電圧Vcc」とも示す。)を受けて動作する。複数の駆動回路125は、半導体スイッチ110の駆動能力が互いに異なり、これによって半導体スイッチ110のスイッチング速度を異ならせる。本実施形態においては、駆動回路125aは、駆動回路125bよりも駆動能力が高い。これに代えて、駆動回路125aは、駆動回路125bよりも駆動能力が低くてもよい。
変更部130は、制御信号Vinのレベルに応じて、駆動部120による半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更する。本実施形態に係る変更部130は、半導体スイッチ110のオンを指示している場合における制御信号Vinのレベルに応じて、スイッチング速度を変更する。ここで、変更部130は、制御信号Vinのレベルに応じて、複数の駆動回路125のうち半導体スイッチ110の駆動に用いる駆動回路125を変更することにより、半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更する。変更部130は、電圧源135と、コンパレータ140と、ホールド回路145と、変更回路150とを有する。
電圧源135は、複数の駆動回路125のいずれによって半導体スイッチ110を駆動するかの境界とする第1閾値電圧xを発生する。第1閾値電圧xは、第1閾値の一例である。コンパレータ140は、第1コンパレータの一例であり、制御信号Vinのレベルと第1閾値電圧xとを比較する。本実施形態に係るコンパレータ140は、電圧Vccを受けて動作し、正側端子に制御信号Vinの電圧レベル、負側端子に第1閾値電圧xを入力する。コンパレータ140は、制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧xよりも高い場合に論理H(High)、制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧x以下の場合に論理L(Low)の比較結果を出力する。
ホールド回路145は、コンパレータ140に接続され、電圧Vccを受けて動作する。ホールド回路145は、コンパレータ140の比較結果をホールドする。ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオンまたはオフが指示されたことに応じてホールドしたコンパレータ140の比較結果を、半導体スイッチ110が次回以降で少なくとも1回オンまたはオフされるまでの間ホールドしてよい。例えば、ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオンが指示されたことに応じてホールドしたコンパレータ140の比較結果を、ホールド回路145の電源が切れるまでの間、ホールド回路145がリセットされるまでの間、次に半導体スイッチ110がオフされるまでの間、または、次に再び半導体スイッチ110がオンされるまでの間、ホールドしてよい。同様に、ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオフが指示されたことに応じてホールドしたコンパレータ140の比較結果を、ホールド回路145の電源が切れるまでの間、ホールド回路145がリセットされるまでの間、次に半導体スイッチ110がオンされるまでの間、または、次に再び半導体スイッチ110がオフされるまでの間、ホールドしてよい。なお、ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオンが指示されたことに応じてコンパレータ140の比較結果をホールドする場合について以下に説明する。
変更回路150は、ホールド回路145に接続され、コンパレータ140の比較結果に応じて、駆動部120による半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更する。本実施形態においては、コンパレータ140および変更回路150の間にホールド回路145が設けられているので、変更回路150は、ホールド回路145がホールドしたコンパレータ140の比較結果に応じて、駆動部120による半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更する。
変更回路150は、論理否定素子155と、複数のスイッチング素子160a~bとを含む。論理否定素子155は、ホールド回路145に接続され、ホールド回路145がホールドしたコンパレータ140の比較結果の論理値を反転する。複数のスイッチング素子160a~b(以下、「スイッチング素子160」とも示す。)は、コンパレータ180と、複数の駆動回路125との間にそれぞれ配置される。各スイッチング素子160は、コンパレータ180の出力を、対応する駆動回路125へと供給するか否かを切り替える。
スイッチング素子160aは、論理否定素子155に接続され、論理否定素子155の出力が論理Hである場合にコンパレータ180および駆動回路125aの間を接続し、論理否定素子155の出力が論理Lである場合にコンパレータ180および駆動回路125aの間を切断する。これにより、スイッチング素子160aは、制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧x以下であることを示す比較結果、すなわち論理Lである比較結果、がホールド回路145にホールドされている場合に、コンパレータ180および駆動回路125aの間を接続する。
スイッチング素子160bは、ホールド回路145に接続され、ホールド回路145の出力が論理Hである場合にコンパレータ180および駆動回路125bの間を接続し、ホールド回路145の出力が論理Lである場合にコンパレータ180および駆動回路125bの間を切断する。これにより、スイッチング素子160bは、制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧xを超えることを示す比較結果、すなわち論理Hである比較結果、がホールド回路145にホールドされている場合に、コンパレータ180および駆動回路125bの間を接続する。
これにより、変更回路150は、ホールド回路145の出力が論理Lである場合にコンパレータ180および駆動回路125aの間を接続し、コンパレータ180および駆動回路125bの間を切断して、駆動回路125aによって半導体スイッチ110を駆動させる。また、変更回路150は、ホールド回路145の出力が論理Hである場合にコンパレータ180および駆動回路125aの間を切断し、コンパレータ180および駆動回路125bの間を接続して、駆動回路125bによって半導体スイッチ110を駆動させる。
電圧源170は、半導体スイッチ110をオンとするかオフとするかの境界とする第2閾値電圧yを発生する。第2閾値電圧yは、第2閾値の一例である。本実施形態において、第2閾値電圧yは、第1閾値電圧xよりも低い。
コンパレータ180は、第2コンパレータの一例であり、制御信号Vinのレベルを第2閾値電圧yと比較する。本実施形態に係るコンパレータ180は、電圧Vccを受けて動作し、正側端子に制御信号Vinの電圧レベル、負側端子に第2閾値電圧yを入力する。コンパレータ180は、制御信号Vinの電圧レベルが第2閾値電圧yよりも高い場合に論理H、制御信号Vinの電圧レベルが第2閾値電圧y以下の場合に論理Lの比較結果を出力する。
駆動部120は、コンパレータ180の比較結果に応じて、半導体スイッチ110をスイッチングする。本実施形態において、各駆動回路125は、コンパレータ180から対応するスイッチング素子160を介して論理Hの比較結果を受けたことに応じて、半導体スイッチ110をオン状態とすべく半導体スイッチ110の制御端子を論理Hへと切り替える。また、各駆動回路125は、コンパレータ180から対応するスイッチング素子160を介して論理Lの比較結果を受けたことに応じて、半導体スイッチ110をオフ状態とすべく半導体スイッチ110の制御端子を論理Lへと切り替える。
図2は、本実施形態に係る半導体モジュール100の動作例を示す。本図においては、半導体スイッチ110をターンオンさせる場合における、制御信号Vin、半導体スイッチ110の主端子間電圧(コレクタ-エミッタ間電圧)Vce、および半導体スイッチ110の主端子に流れる電流(コレクタ電流)Icの時間変化を、制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧x以下の場合、および制御信号Vinの電圧レベルが第1閾値電圧xを超える場合のそれぞれについて示す。
(1)制御信号Vinの電圧レベル≦第1閾値電圧xの場合
制御信号Vinが論理Lから論理Hへと立ち上がると、制御信号Vinの電圧レベル>第2閾値電圧yとなるので、コンパレータ180は、出力を論理Lから論理Hへと変化させる。ここで、制御信号Vinの論理Hが第1閾値電圧x以下である場合、コンパレータ140は、論理Lの比較結果を出力する。
ホールド回路145は、論理Lの比較結果をホールドする。スイッチング素子160aは、論理否定素子155を介して、この比較結果の論理反転値である論理Hを受け取り、オン状態となる。これにより、駆動回路125aは、コンパレータ180からの論理Hの比較結果を受けて、半導体スイッチ110をターンオンさせるべく制御端子の電圧を上昇させる。なお、半導体スイッチ110はパワー半導体スイッチであってゲート容量が比較的大きい。このため、駆動回路125aが制御端子の電圧の変更を開始してから半導体スイッチ110が状態遷移を開始するまでには、ある程度の遅延がある。スイッチング素子160bは、ホールド回路145から論理Lの比較結果を受け取り、オフ状態となる。これにより、駆動回路125bは、半導体スイッチ110の駆動動作を行わない。この結果、半導体スイッチ110は、比較的駆動能力が高い駆動回路125aによって駆動されて、時刻t1からt2までの比較的短い間で、より大きなスイッチング速度(すなわち、より絶対値が大きな電圧変化率dv/dt)でオフ状態からオン状態へと遷移する。これに伴い、半導体スイッチ110のコレクタ電流Icは、時刻t1からt2までの比較的短い間で0からオン電流まで上昇する。
(2)制御信号Vinの電圧レベル>第1閾値電圧xの場合
制御信号Vinが論理Lから論理Hへと立ち上がると、制御信号Vinの電圧レベル>第2閾値電圧yとなるので、コンパレータ180は、出力を論理Lから論理Hへと変化させる。ここで、制御信号Vinの論理Hが第1閾値電圧xを超える場合、コンパレータ140は、論理Hの比較結果を出力する。
ホールド回路145は、論理Hの比較結果をホールドする。スイッチング素子160aは、論理否定素子155を介して、この比較結果の論理反転値である論理Lを受け取り、オフ状態となる。これにより、駆動回路125aは、半導体スイッチ110の駆動動作を行わない。スイッチング素子160bは、ホールド回路145から論理Hの比較結果を受け取り、オン状態となる。これにより、駆動回路125bは、コンパレータ180からの論理Hの比較結果を受けて、半導体スイッチ110をターンオンさせるべく制御端子の電圧を上昇させる。この結果、半導体スイッチ110は、比較的駆動能力が小さい駆動回路125bによって駆動されて、時刻t1からt3までの比較的長い間で、より小さなスイッチング速度(すなわち、より絶対値が小さな電圧変化率dv/dt)でオフ状態からオン状態へと遷移する。これに伴い、半導体スイッチ110のコレクタ電流Icは、時刻t1からt3までの比較的長い間で0からオン電流まで上昇する。
ここで、半導体スイッチ110をより大きなスイッチング速度でスイッチングさせると、単位時間当たりの電圧および電流変動が大きくなるので、半導体スイッチ110をより小さなスイッチング速度でスイッチングさせた場合と比較して大きなノイズが発生する。その一方で、半導体スイッチ110をより大きなスイッチング速度でスイッチングさせると、遷移期間が短くなり、電力損失が小さくなる。本実施形態に係る半導体モジュール100によれば、半導体スイッチ110のオンオフを制御するための制御信号のレベルを用いて半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更可能とすることにより、専用の端子を設けることなく半導体モジュール100の適用先に応じてスイッチング速度を変更することが可能となる。
以上に示した半導体モジュール100においては、変更部130は、半導体スイッチ110のオンを指示している場合における制御信号Vinのレベルに応じて半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更する。これに代えて、変更部130は、半導体スイッチ110のオフを指示している場合における制御信号Vinのレベルに応じて半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更してもよい。例えば、コンパレータ140は、半導体スイッチ110のオフを指示する場合に0V、半導体スイッチ110のオンを指示する場合に5Vとなる制御信号Vinが入力されている場合には駆動回路125aを選択し、半導体スイッチ110のオフを指示する場合に-5V、半導体スイッチ110のオンを指示する場合に5Vとなる制御信号Vinが入力されている場合には駆動回路125bを選択してもよい。また、半導体モジュール100は、半導体スイッチ110のオンを指示している場合における制御信号Vinのレベルと、半導体スイッチ110の負を指示している場合における制御信号Vinのレベルとの両方に応じて、半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更してもよい。
また、半導体モジュール100は、制御信号Vinのレベルに応じて、半導体スイッチ110のスイッチング速度を3段階以上変更可能であってもよい。例えば、駆動部120は、3以上の駆動回路125を有し、制御信号Vinのレベルが閾値x1以下の場合には第1の駆動回路125、制御信号Vinのレベルが閾値x1を超え閾値x2以下の場合には第2の駆動回路125、制御信号Vinのレベルが閾値x2を超える場合には第3の駆動回路125を選択するようにしてもよい。
図3は、本実施形態の第1変形例に係る駆動部320の構成を示す。駆動部320は、半導体モジュール100の駆動部120の代わりに用いられてよく、半導体モジュール100以外の半導体モジュールに用いられてもよい。以下、駆動部320を半導体モジュール100に適用する場合について説明する。なお、駆動部320の機能および構成は駆動部120と類似するから、相違点を除き説明を省略する。
駆動部320は、複数の駆動回路125a~bに代えて、複数の駆動回路325a~bを有する。駆動回路325aは、制御用の電源電圧Vccと半導体スイッチ110の制御端子との間に主端子間が接続された上側半導体スイッチS1aと、半導体スイッチ110の制御端子とグランドとの間に主端子間が接続された下側半導体スイッチS2aとを含む。上側半導体スイッチS1aは、一例としてn型MOSFETであってよく、下側半導体スイッチS2aは、一例としてp型MOSFETであってよい。
論理Hの制御信号Vinが入力されたことに応じてコンパレータ180から論理Hの信号が入力されると、上側半導体スイッチS1aがオン、下側半導体スイッチS1bがオフとなる。これにより、駆動回路325aは、半導体スイッチ110の制御端子を電圧Vccへとプルアップする。論理Lの制御信号Vinが入力されたことに応じてコンパレータ180から論理Lの信号が入力されると、上側半導体スイッチS1aがオフ、下側半導体スイッチS1bがオンとなる。これにより、駆動回路325aは、半導体スイッチ110の制御端子をグランドへとプルダウンする。
駆動回路325bは、上側半導体スイッチS1aに代えて上側半導体スイッチS1b、下がエア半導体スイッチS2aに代えて上側半導体スイッチS2bを含む。上側半導体スイッチS1bおよび下側半導体スイッチS2bの動作は、上側半導体スイッチS1aおよび下側半導体スイッチS2aと同様である。
ここで、上側半導体スイッチS1bおよび下側半導体スイッチS2bは、上側半導体スイッチS1aおよび下側半導体スイッチS2aと比較して、オン抵抗が大きくなるように設計されている。このため、駆動回路325bは、駆動回路325aと比較して、半導体スイッチ110の制御端子との間で授受する電流の大きさが小さくなり、駆動能力が低くなる。
なお、本例の駆動部320を用いる場合には、上側半導体スイッチS1(aまたはb)のゲートはプルダウン抵抗を介してプルダウンされ、下側半導体スイッチS2(aまたはb)のゲートは上側半導体スイッチS1のゲートとアイソレートされてプルアップ抵抗を介してプルアップされてもよい。これにより、スイッチング素子160aまたはbがオフとなると、対応する駆動回路325の上側半導体スイッチS1はゲートがプルダウンされてオフとなり、対応する下側半導体スイッチS2はゲートがプルアップされてオフとなって、その駆動回路325が半導体スイッチ110の制御端子から切り離される。これにより、駆動部320は、他の駆動回路325によって半導体スイッチ110を駆動することができる。これに代えて、変更部130は、駆動回路325をオンとする場合には上側半導体スイッチS1(aまたはb)および下側半導体スイッチS2(aまたはb)にコンパレータ180からの信号を入力し、駆動回路325をオフとする場合には上側半導体スイッチS1に論理L、下側半導体スイッチS2に論理Hを入力して両方の半導体スイッチをオフとするようにしてもよい。
また例えば、駆動部320は、駆動能力が同じまたは異なる複数の駆動回路325のうち、変更部130から指示された駆動能力に応じた数または組合せの駆動回路325によって半導体スイッチ110を駆動することにより、半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更してもよい。例えば、駆動部320は、ホールド回路145が論理Lを出力している場合には駆動回路325aのみによって半導体スイッチ110を駆動し、ホールド回路145が論理Hを出力している場合には駆動回路325aおよび駆動回路325bの両方を用いて半導体スイッチ110を駆動してもよい。このような形態においても、変更部130は、制御信号Vinのレベルに応じて、駆動回路125aのみの駆動回路と、駆動回路125aおよび駆動回路125bを含む駆動回路とを切り替えるのであるから、複数の駆動回路のうち半導体スイッチ110の駆動に用いる駆動回路を変更するものとなる。
また例えば、変更部130は、駆動回路325のような駆動回路本体と半導体スイッチ110との間に接続するゲート抵抗の大きさを切り替えることにより、異なるゲート抵抗を含む複数種類の駆動回路のうち半導体スイッチ110の駆動に用いる駆動回路を変更してもよい。
図4は、本実施形態の第2変形例に係る駆動部420の構成を示す。駆動部420は、半導体モジュール100の駆動部120の代わりに用いられてよく、半導体モジュール100以外の半導体モジュールに用いられてもよい。以下、駆動部420を半導体モジュール100に適用する場合について説明する。なお、駆動部420の機能および構成は駆動部120と類似するから、相違点を除き説明を省略する。
駆動部420は、複数の駆動回路125a~bに代えて、それぞれが駆動回路として機能する複数の電流源425a~bを有する。複数の電流源425a~bのそれぞれは、カレントミラー回路またはオペアンプ等を用いて実現されてよい。電流源425aは、スイッチング素子160aおよび半導体スイッチ110の制御端子の間に接続される。電流源425aは、スイッチング素子160a側から論理Hの信号を入力すると、予め定められた定電流を半導体スイッチ110へと流す。また、電流源425aは、スイッチング素子160a側から論理Lの信号を入力すると、予め定められた定電流を半導体スイッチ110から引き込む。スイッチング素子160aがオフの場合、電流源425aは、論理Hおよび論理Lの間の電圧レベルの信号を入力し、半導体スイッチ110との間で電流の入出力を行わない。
電流源425bは、スイッチング素子160bおよび半導体スイッチ110の制御端子の間に接続される。電流源425bの動作は、電流源425aと同様である。ここで、電流源425bは、電流源425aと比較して、半導体スイッチ110の制御端子との間で授受する定電流の大きさが小さい。このため、電流源425bは、電流源425aと比較して、駆動能力が低くなる。
図5は、本実施形態の第3変形例に係るホールド回路545の構成を示す。ホールド回路545は、半導体モジュール100のホールド回路145の代わりに用いられてよく、半導体モジュール100以外の半導体モジュールに用いられてもよい。また、ホールド回路545は、駆動部320または駆動部420と共に半導体モジュール100に適用されてもよい。以下、ホールド回路545を半導体モジュール100に適用する場合について説明する。なお、ホールド回路545の機能および構成はホールド回路145と類似するから、相違点を除き説明を省略する。
ホールド回路545は、遅延回路510と、フリップフロップ520とを有する。遅延回路510は、半導体モジュール100の制御用電源電圧Vccを入力し、電圧Vccが論理Hの電圧レベルに遷移したことに応じて立ち上がる信号を予め定められた時間分遅延させる。フリップフロップ520は、Dフリップフロップであり、クロック端子(CLK端子)が遅延回路510に接続され、D入力端子がコンパレータ140に接続される。フリップフロップ520は、遅延回路510によって遅延された信号が立ち上がるタイミングでコンパレータ140からの比較結果をラッチし、電圧Vccが維持されている間ホールドする。そして、フリップフロップ520は、ホールドした比較結果を、Q出力端子から変更回路150へと出力する。
図6は、本実施形態の第3変形例に係るホールド回路545の第1動作例を示すタイミングチャートである。時刻t1において電圧Vccが論理Hレベルの電圧となる。電圧Vccが立ち上がると、半導体モジュール100を制御する装置は、時刻t2以降、半導体モジュール100を動作させるべく制御信号Vinのスイッチングを開始する。ここで、半導体モジュール100を制御する装置は、複数の駆動回路125のうち駆動回路125bを選択するべく制御信号Vinの論理Hの電圧レベルを第1閾値電圧xより高くする。このため、コンパレータ140は、コンパレータ140内の伝搬遅延の後、時刻t3において論理Hの比較結果をフリップフロップ520のD入力端子に供給する。
電圧Vccの立上りから予め定められた遅延時間後である時刻t4において、遅延回路510は、フリップフロップ520のクロック端子を論理Lから論理Hへと立ち上げる。これに応じて、フリップフロップ520は、D入力端子に入力された論理Hの比較結果をラッチし、フリップフロップ520内等での遅延の後、時刻t5においてQ出力端子から出力する。ここで、電圧Vccの論理値は、半導体モジュール100の電源電圧が落とされない限り論理Hのまま維持されるので、ホールド回路545は、電源が切れるまでの間、制御信号Vinの複数サイクルにわたって論理Hの比較結果をホールドし続ける。変更回路150は、フリップフロップ520によってホールドされた論理Hの比較結果を受けて、スイッチング素子160aをオフ、スイッチング素子160bをオンとして駆動回路125bにより半導体スイッチ110を駆動させる。
図7は、本実施形態の第3変形例に係るホールド回路545の第2動作例を示すタイミングチャートである。本図は、制御信号Vinの論理Hの電圧レベルが第1閾値電圧x以下であることに伴う相違以外は図6と同様であるから、以下相違点を除き説明を省略する。
本図においては、時刻t2以降、半導体モジュール100を制御する装置は、複数の駆動回路125のうち駆動回路125aを選択するべく制御信号Vinの論理Hの電圧レベルを第1閾値電圧x以下とする。このため、コンパレータ140は、コンパレータ140内の伝搬遅延の後、時刻t3において論理Lの比較結果をフリップフロップ520のD入力端子に供給する。時刻t4においてクロック端子が論理Lから論理Hへと立ち上げられたことに応じて、フリップフロップ520は、D入力端子に入力された論理Lの比較結果をラッチし、フリップフロップ520内等での遅延の後、時刻t5においてQ出力端子から出力する。変更回路150は、フリップフロップ520によってホールドされた論理Lの比較結果を受けて、スイッチング素子160aをオン、スイッチング素子160bをオフとして駆動回路125aにより半導体スイッチ110を駆動させる。
以上に示したホールド回路545によれば、制御用の電源電圧Vccの立ち上がりに応じて、外部の装置から供給される制御信号Vinに応じた比較結果を電源電圧Vccが落ちるまでの間ホールドすることができる。これにより、半導体モジュール100は、ホールド回路545がホールドした比較結果に応じたスイッチング速度で半導体スイッチ110を駆動し続けることができる。
図8は、本実施形態の第4変形例に係るホールド回路845の構成を示す。ホールド回路845は、半導体モジュール100のホールド回路145の代わりに用いられてよく、半導体モジュール100以外の半導体モジュールに用いられてもよい。また、ホールド回路845は、駆動部320または駆動部420と共に半導体モジュール100に適用されてもよい。以下、ホールド回路845を半導体モジュール100に適用する場合について説明する。なお、ホールド回路845の機能および構成はホールド回路145と類似するから、相違点を除き説明を省略する。
ホールド回路845は、フリップフロップ820を有する。フリップフロップ820は、SR(セット-リセット)フリップフロップであり、電圧Vccを電源電圧として動作する。フリップフロップ820は、S入力端子がコンパレータ140に接続され、R入力端子が半導体モジュール100内のリセット信号(RESET)に接続される。フリップフロップ820は、電源電圧Vccが立ち上がったときにリセットされ、コンパレータ140から論理Hの比較結果が入力されるとセットされて、その比較結果をホールド回路845がリセットされるまでの間ホールドする。
ここで、フリップフロップ820は、電源電圧Vccが立ち上がったときに、デフォルトでリセット状態(Q出力端子=論理L)から動作を開始してもよく、半導体モジュール100内のパワーオンリセット回路からのリセット信号をR入力端子に受けてリセットされてもよい。一旦電源電圧Vccが立ち上がると、フリップフロップ820は、リセットされることなくホールドした比較結果を変更回路150へと供給し続けてよい。
これに代えて、フリップフロップ820は、制御信号Vinの立ち下がりをトリガとして、半導体スイッチ110がターンオフするまでの遅延時間の経過した以降でリセットされてもよい。この場合、半導体モジュール100は、半導体スイッチ110をターンオンしてからターンオフするまでの間は、半導体スイッチ110のターンオンを指示した制御信号Vinのレベルに応じて選択されたスイッチング速度を維持し、次に半導体スイッチ110がターンオンするときには、その際に新たに入力される制御信号Vinのレベルに応じてスイッチング速度を選択し直すことができる。
図9は、本実施形態の第5変形例に係る変更部930を示す。変更部930は、半導体モジュール100の変更部130の代わりに用いられてよく、半導体モジュール100以外の半導体モジュールに用いられてもよい。また、変更部930は、駆動部320または駆動部420と共に半導体モジュール100に適用されてもよい。以下、変更部930を半導体モジュール100に適用する場合について説明する。なお、変更部930の機能および構成は変更部130と類似するから、相違点を除き説明を省略する。
変更部930は、ホールド回路145に代えて、遅延回路945および論理和素子947を有する点で変更部130と相違する。遅延回路945は、コンパレータ140に接続され、コンパレータ140の比較結果を遅延させる。論理和素子947は、コンパレータ140および遅延回路945に接続される。論理和素子947は、コンパレータ140からの比較結果と、遅延回路945により遅延された比較結果との論理和を変更回路150へと出力する。このような構成により、論理和素子947は、コンパレータ140からの論理Hの比較結果が出力された場合に論理Hの出力を開始し、コンパレータ140の出力が論理Lへと変化した後も遅延回路945により遅延された比較結果が論理Hである間は論理Hの出力を維持し続ける。これにより、変更回路150は、遅延回路945が遅延させたコンパレータ140の比較結果に応じて、スイッチング速度を変更することが可能となる。
一例として、遅延回路945は、制御信号Vinが立ち下がってコンパレータ140の出力が論理Hから論理Lへと変化してから、半導体スイッチ110のターンオフが完了するまでの間、コンパレータ140の出力を遅延させてよい。この場合、半導体モジュール100は、半導体スイッチ110をターンオンしてからターンオフするまでの間は、半導体スイッチ110のターンオンを指示した制御信号Vinのレベルに応じて選択されたスイッチング速度を維持し、次に半導体スイッチ110がターンオンするときには、その際に新たに入力される制御信号Vinのレベルに応じてスイッチング速度を選択し直すことができる。
また、遅延回路945は、半導体スイッチ110のオンまたはオフが指示されたことに応じてコンパレータ140が出力する比較結果を、半導体スイッチ110が次回以降で少なくとも1回オンまたはオフされるまで遅延させるようにしてもよい。例えば、ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオンが指示されたことに応じて出力されるコンパレータ140の比較結果を、次に再び半導体スイッチ110がオンされるまでの間、遅延させてよい。同様に、ホールド回路145は、半導体スイッチ110のオフが指示されたことに応じて出力されるコンパレータ140の比較結果を、次に再び半導体スイッチ110がオフされるまでの間、遅延させてよい。なお、論理和素子947に代えて、コンパレータ140の出力でセットし、遅延回路945の出力でリセットするSRフリップフロップ等を用いれば、遅延回路945の遅延時間を制御信号Vinのパルス幅よりも大きくすることも可能である。
以上に示した半導体モジュール100およびその変形例によれば、半導体スイッチ110のオンオフを制御するための制御信号のレベルを用いて半導体スイッチ110のスイッチング速度を変更可能とすることができる。これにより、半導体モジュール100にスイッチング速度の設定専用の端子を設けることなく半導体モジュール100の適用先に応じてスイッチング速度を変更することが可能となる。
なお、以上に示した半導体モジュール100は、説明の便宜上、半導体スイッチ110を1つ備えるものとした。これに代えて、半導体モジュール100は、半導体スイッチ110を複数備えてもよく、複数の半導体スイッチ110の一部または全てに対して上記の構成によってスイッチング速度を変更可能としてよい。このような半導体モジュール100は、一例として、上アーム側の1または複数の半導体スイッチ110と、下アーム側の1または複数の半導体スイッチ110とが直列に接続された単相用のスイッチング回路を1または複数備えるインバータ回路として用いられてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。