JP2022046017A - 抑留予測方法及びシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】掘削時に得られる複数の掘削パラメタに基づいて入力データを生成し、前記入力データを抑留予測モデルに与えて抑留リスクを提供する、抑留予測方法であって、前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成し、現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する。
【選択図】図2
Description
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成し、
現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する。
前記メモリは、
掘削時に得られる複数の掘削パラメタに基づいて入力データを生成する入力データ生成プログラムと、
前記入力データの入力に応じて、抑留リスクを提供する抑留予測プログラムと、
を備え、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
前記入力データ生成プログラムは、前記プロセッサに実行されることで、現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成し、
前記抑留予測プログラムは、前記プロセッサに実行されることで、現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する。
前記プログラムは、プロセッサに実行されることで、当該プロセッサに、
前記複数の掘削パラメタを取得させるに、前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成させ、
現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供させる。
1つの態様では、抑留予測プログラムは、コンピュータ可読媒体に格納された形態で提供される。
1つの態様では、前記抑留リスクは、抑留予兆確率として提供される。
1つの態様では、前記抑留リスクは、抑留予兆確率に基づいて生成されたアラームとして提供される。
1つの態様では、現時点のビット深度の値に対して設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値(現時点以前に取得されたデータである)は、
現時点の直近の所定期間内に得られた第1散布データと、前記第1散布データよりも前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである。
1つの態様では、前記入力データには、相対深度に対するビット回転数の2Dヒストグラム、相対深度に対するドリルパイプの回転トルクの2Dヒストグラム、相対深度に対するフック荷重の2Dヒストグラム、相対深度に対する泥水注入圧の2Dヒストグラムが含まれる。
1つの態様では、前記抑留予測モデルは、教師あり学習モデルである。
1つの態様では、前記抑留予測モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて抑留リスクを提供する。
1つの態様では、前記抑留予測モデルは、教師無し学習モデルである。
抑留リスクに対する各掘削パラメタの寄与度を可視化してディスプレイ上に表示する。
1つの態様では、入力データのうち、アラーム生成に寄与した領域をGrad-CAM (Gradient-based Class Activation Map)を用いて可視化し、アラーム生成の根拠を示す。
複数の掘削パラメタを含む掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
ある時点tのビット深度の値に基づいて設定した相対深度を第1軸とし、前記相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値を第2軸として、ある時点t以前の掘削データを用いて、散布データを取得し、
前記散布データを2Dヒストグラムに変換して入力データを生成する。
掘削データに基づいて生成された入力データは、学習用モデル、学習済みモデルの両方の入力データとして用いられる。
1つの態様では、前記掘削データ(前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値)は、時系列データである。時系列データは所定間隔でサンプリングされており、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応している。
1つの態様では、前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される。
ある時点tの直近の所定期間内に得られた第1散布データと、前記第1散布データより前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである。
複数の掘削パラメタ及び抑留情報を含む学習用掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
ある時点tのビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを生成して入力データとし、
抑留前の一定期間内に予兆が現れると仮定し、学習用掘削データに基づいて生成された入力データに応じて抑留リスクを提供するように学習用モデルに学習させる。
1つの態様では、前記学習用掘削データ(前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値)は、時系列データである。時系列データは所定間隔でサンプリングされており、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応している。
1つの態様では、前記学習用掘削データには、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、ビット深度、フック荷重、泥水注入圧の時系列データを含み、抑留情報(抑留の開始時刻、終了時刻)が記録されており、前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される。
1つの態様では、前記入力データには、相対深度に対するビット回転数の2Dヒストグラム、相対深度に対するドリルパイプの回転トルクの2Dヒストグラム、相対深度に対するフック荷重の2Dヒストグラム、相対深度に対する泥水注入圧の2Dヒストグラムが含まれる。
ある時点tの直近の所定期間内に取得された第1散布データと、前記第1散布データより前に取得された第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである。
後述する実験例では、抑留前の一定期間は6分間であるが、6分間は例示であって、前記「一定期間」の長さは当業者において適宜設定し得る。
1つの態様では、前記学習用モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて学習する。
1つの態様では、自己符号化器(Auto encoder)を用いて、入力データと出力データの誤差が最小化されるような学習モデルを生成する。
複数の掘削パラメタを含む掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
前記掘削データを用いて、現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度を第1軸とし、前記相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値を第2軸として、現時点以前の掘削データを用いて、散布データを取得し、
前記散布データは、現時点の直近の所定期間に取得された第1散布データと、前記第1散布データより前に取得された第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データと前記第2散布データは、識別可能に1つの散布図としてディスプレイに表示される。
1つの態様では、前記第1散布データと前記第2散布データは、色分けして1つの散布図としてディスプレイに表示される。
1つの態様では、前記掘削データは時系列データである。
[A-1]掘削システム
掘削システムは、複数本のドリルパイプを長さ方向に連結して構成されたドリルストリングと、ドリルストリングの下端に設けたビットと、ドリルストリングの上端に設けたトップドライブと、を備えている。掘削は、トップドライブによりドリルストリング及びビットを回転させて、地層を掘り進める作業であり、ドリルパイプを付け足しながら目標深度まで掘進する。また、坑内に掘削流体を循環させることで坑内圧と地層圧とのバランスをとり、坑内事故を防ぐようにしている。以下、掘削システムを構成する各要素について、より詳細に説明する。
掘削作業は、タスクに特有の複数のアクションからなる。典型的な作業としては、掘進(ビットを回転させて掘り進める作業)や揚降管(ドリルストリングの引き抜き作業、降下作業)がある。掘削作業の典型的なアクションを例示する。
泥水をポンピングし、ドリルパイプを回転させながら、ビット深度を増大させる作業である。
(b)Sliding
ドリルパイプを回転させずに、坑内マッドモータによって、ビット深度を増大させる作業である。
(c)Reaming
坑内を安定させるため、泥水をポンピングし、ドリルパイプを回転させながら、ドリルパイプの昇降を繰り返す作業である。
(d)Tripping
坑内を安定させるため、ドリルパイプを回転させずに、ドリルパイプの昇降を繰り返す作業である。ビットは、ポンピングされた泥流体によって坑内マッドモータによって回転する。
(e)Survey
MWD (Measuring While Drilling)ツールを用いて、坑井の方向や傾きを測定する作業である。
(f)Circulation
計測されたサーベイデータを坑内から地表に搬送するために泥流体をポンピングする作業である。
(g)Connection/Disconnection
ドリルパイプの連結、取り外し作業である。
(h)RIH(Run-in-hole)
掘削によって獲得されている坑内のある深さまでドリルストリングを到達させるために、ドリルパイプを連結し、パイプを下降させる作業である。
(i)POOH(Pull-out-of-hole)
坑内のある深さからドリルストリングを引き抜くために、ドリルパイプを取り外し、パイプを上昇させる作業である。
掘削システムは、所定箇所において、複数のセンサや測定器を備えており、掘削作業中に表1に示すようなパラメタを計測し、坑内環境の状態の把握や予測のためにモニタリングする。これらのパラメタの値は時系列データとして取得され、データベースに格納される。なお、表1に示すパラメタは例示であって、掘削パラメタを限定するものではない。
トップドライブにおいて測定された値であり、ドリスストリングないしドリルパイプの回転トルクを示す値である。TD_trqは、坑内状態の影響を強く受けるため、抑留の重要な指標の1つであると考えられる。
(b)TD_spd
トップドライブの速度、すなわち、ドリルビットの回転速度を示す値である。但し、TD_spd(ドリルビットの回転速度を示す値)と実際のトップドライブの回転速度は、坑内マッドモータが使用されている時には同等でない。TD_spdは、実際のトップドライブ速度と坑内マッドモータ速度との合計となる。
(c)Bitdepth
ビット深度は、掘削フロアからドリルストリングの下端までの長さを表す。坑井は必ずしも垂直であるとは限らないので、必ずしも坑井の鉛直距離とは限らない。
(d)Hookheight
フック高は、フックの鉛直方向の位置を表す。フックは、掘削フロアからデリックの上部まで可動であり、例えば、下限位置は0[m]、上限位置では40[m]である。
(e)Hookload
フック荷重は、フックに作用する質量を表す。フック荷重は、例えば、ドリルストリングと地層との摩擦のような坑内状態の影響を受けるので、抑留の重要な指標の1つであると考えられる。
(f)WOB
WOBは、Surface-WOBと称される推定値であり、Downhole-WOBとは区別される。Downhole-WOBは、坑内センサによって測定されるビットにかかる重量の測定値であり、Surface-WOBよりも信頼性が高いが、坑内から地表への信号送信等において、リアルタイム測定は困難である。
(g)MRetFlow
MRetFlowは泥水リターンのパーセンテージ値である。現場での器具に依存して、MRetFlowはリターンラインの泥水面レベルで測定されるか、あるいは、Gumboセパレータのバルブ開口から測定される。
(h)SPP_pressA, SPP_pressB
スタンドパイプ圧は、スタンドパイプのマニホールドで観測される泥水注入圧を示す値である。通常、冗長性のため複数のフローラインがあることから、同じタグネームにおいて、A,Bの2つの測定値がある。スタンドパイプ圧(泥水注入圧)は、抑留の重要な指標の1つであると考えられる。泥水注入圧は、フローラインブロッケージのような坑内状態に対するリアクションを示す。
(i)MPP_SPM1, MPP_SPM2, MPP_SPM3
MPP_SPMは、各泥水タンクで観測されるマッドポンプのストロークの頻度である。通常、冗長性のための2~3個の泥水タンクを備えており、同じタグネームにおいて複数の変数が存在する。
(j)FlowIn
FlowInは、MPP_SPMと対応するタンク容積との積和である推定値である。
抑留は、ドリルストリングが坑内で押さえつけられ、回転および/あるいは引き抜きが出来なくなる事象である。抑留メカニズム及び抑留の原因を表2に示す。
[B-1]全体構成
本実施形態に係る抑留予測システムは、1つあるいは複数のコンピュータから構成されたコンピュータシステムである。図1に示すように、コンピュータは、掘削システムからの掘削データが入力される入力と、掘削データや加工データを含む各種データ、及び、コンピュータを動作させるプログラムが記憶されるメモリと、各種の演算や制御を行うプロセッサと、演算結果を含む各種データを提供する出力と、を備えている。掘削システムにおいて、各センサや測定器によって、各掘削パラメタが測定され、有線又は無線でコンピュータシステムに送信される。掘削システムから得られた掘削データは、コンピュータのメモリに記憶され、所定のプログラムに従って、プロセッサで所定の計算が実行されて、抑留予兆検知が実行され、抑留リスクを代表する抑留予兆確率が提供される。掘削データは、典型的には掘削パラメタの値の時系列データである。本明細書において、時系列データには、時系列データに基づいて算出された時刻情報を含んだ2次データ(例えば、時刻情報を含んだ深度ベースデータ)も含まれる。1つの態様では、コンピュータのメモリには、抑留予兆確率及び所定のアラーム生成条件(閾値や確率値の継続時間等)に基づいてアラームを生成するプログラムが格納されており、アラーム生成プログラムに従って、プロセッサで所定の計算が実行されて、アラーム生成条件を満たす場合に、アラームを生成する。この場合、抑留リスクがアラームの形式として提供される。測定データや演算結果を含む各種データは、モニタリングのため、適宜、ディスプレイに表示され得る。コンピュータシステムが配置される位置は限定されず、掘削現場に配置してもよく、あるいは、掘削現場から離隔した管理ステーションに配置してもよい。コンピュータシステムはクラウドベースでもよい。
複数の企業から提供されたフォーマットが統一された実際の掘削データを用いる。
抑留予兆が、抑留直前の時系列に特徴的に現れているとする仮説を立てて、抑留予測を行った。前処理後のデータを、1時間毎の13変数時系列に分割し、入力データとして保存した。抑留予測において、抑留の予兆は異常であると定義する。抑留直前6分間に得られた入力データを異常とみなしてラベル1(positive)と分類し、それ以前の入力データを正常とみなしてラベル0(negative)と分類した。入力データは固定されたサイズである必要があり、生信号は、入力データのサイズTcを決定することで、処理されて複数の入力データに分割される。実験では、入力データのサイズTcは1時間であり、サンプリング間隔4秒なので、入力データは900データからなる。得られた入力データは、正常あるいは異常に分類される。
抑留予兆が周波数領域に現れると仮説を立て抑留予測を行った。比較実験1における時系列データをパワースペクトルに変換して学習を行った。時系列データから平均を引いて定数を削除して得られた時系列データにFFTを適用し、ナイキスト周波数(0.125Hz)を超える高周波成分をカットオフした。データセットの平均と標準偏差を計算して、zスコア標準化を行って入力データとした(図4右図参照)。結果を表6に示す。6ケース中1ケースにおいてのみ抑留予兆を検知できた。
掘削エンジニアの観点では、現在の各計測値を、同一坑井で得られた過去の同深度における値と比較することにより抑留予兆を確認する。比較実験で採用した「1時間」は参照できる時間として十分ではないと考えられる。掘削エンジニアの知見に基づいた特徴量エンジニアリングにおいて、深度情報に注目した。掘削作業においてはビット交換等で同じ深度を何度も通過する。これにより深度ごとに計測された値の履歴が蓄積されるため、現在の値を同一坑井の近傍深度における履歴と対比することで異常が見えることがある。深度領域というコンセプトを導入することで、同一坑井で得られる長期間の情報を効率的に圧縮する方法を検討した。
掘削データの深度領域における表現方法について、図9に基づいて説明する。掘削時に、複数の掘削パラメタの時系列データを含む掘削データをリアルタイムで取得してコンピュータのメモリに格納する。複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の複数のパラメタ(例えば、ドリルストリングの回転トルク、フック荷重、ビット回転数、泥水注入圧等)を含む(表1参照)。
図9のフローチャートの後半に示すように、ビット深度と各掘削パラメタの散布図に対し、縦軸・横軸のビン数を設定することで2Dヒストグラム(いわば、深度領域2Dヒストグラム)を作成可能である。2Dヒストグラムを、図5右図、図8、図11~図13に示す。これらの2Dヒストグラムは、実際にはカラー画像(RBG画像)である点に留意されたい。図10を参照しつつ、本実施形態に係る深度領域の2Dヒストグラムの作成ステップについて説明する。本実施形態では、掘削エンジニアが注目するパラメタであるビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、ビット深度、フック荷重、泥水注入圧の値を用いて、深度領域の2Dヒストグラムを作成する。すなわち、深度領域におけるビット回転数の2Dヒストグラム、深度領域における回転トルクの2Dヒストグラム、深度領域におけるフック荷重の2Dヒストグラム、深度領域における泥水注入圧の2Dヒストグラムを作成する。
本実施形態に係る3D-CNNモデルは、掘削エンジニアの知見に基づく特徴量エンジニアリングにより得られた深度領域データのパターン学習を行うことで、同一坑井の履歴情報を活かすことを可能とするデータ駆動型抑留予測モデルである。3D-CNNアプローチにおいて、抑留予兆は、深度データに局所的に表れると仮定され、3D-CNNモデルは、局所化された特徴を用いることで、深度領域に特徴が現れる抑留の予兆検知を実行する。
多変数の3Dクリップ(4Dクリップ)を入力とし、3D-CNNモデルを用いて抑留予測を行った(図13参照)。4Dクリップは、低頻度部分の強調、正規化処理を適用後に3D-CNNモデルに入力される。抑留直前6分間に得られた4D-clipをラベル1(positive)、それ以前のものをラベル0(negative)と分類し学習・検証を行った。モデルの出力は、入力クリップが抑留予兆である確率(0~1の連続値)である。
表6は、実験で用いた6つのケースの抑留メカニズム及び抑留予兆の検知の成否を3D-CNNモデル(深度領域)と1D-CNNモデル(周波数領域)で比較して示す。抑留予兆の検知は、抑留直前6分以内における予兆検知である。各モデルは、4秒間隔で抑留リスクを計算し、すなわち、抑留前6分間で90回のアラームを発出する機会がある。抑留前6分以内に少なくとも1回のアラームが生成された場合には、予兆検知が成功したと決定する。1D-CNNモデル(周波数領域)では、6ケース中1ケースにおいてのみ抑留予兆を検知できたのに対して、3D-CNNモデル(深度領域)では、6ケース中3ケースにおいて抑留予兆を検知できた。予兆が緩やかに現れる差圧抑留は、深度データに特徴が現れやすいため深度領域のアプローチが有効であったと考えられる。この3/6という成功率から、本モデルの性能を評価できるものではない点に留意されたい。例えば、抑留の中には突然発生するものもあり、抑留予兆の検知が困難ないし不可能なものもある点に留意されたい。
実験では、教師あり学習モデルを用いて、抑留の開始直前の6分のデータセットにラベル1(positive)のラベルを与えた。抑留予兆が生じていると仮定されるこの6分間という期間は任意である。実際にどの時点で抑留予兆が始まったかを特定することは困難であり、すべての抑留予兆にラベルを与えることはできない。
Claims (27)
- 掘削時に得られる複数の掘削パラメタに基づいて入力データを生成し、前記入力データを抑留予測モデルに与えて抑留リスクを提供する、抑留予測方法であって、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成し、
現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する、
抑留予測方法。 - 現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値は、
現時点の直近の所定期間内に得られた第1散布データと、前記第1散布データよりも前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである、
請求項1に記載の抑留予測方法。 - 前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される、
請求項1、2いずれか1項に記載の抑留予測方法。 - 前記抑留予測モデルは、学習用掘削データに基づいて生成された2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供するように機械学習されている、
請求項1~3いずれか1項に記載の抑留予測方法。 - 前記抑留予測モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて抑留リスクを提供する、
請求項1~4いずれか1項に記載の抑留予測方法。 - 複数の掘削パラメタに基づいて得られた複数の2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクが提供され、
抑留リスクに対する各掘削パラメタの寄与度を可視化して表示する、
請求項5に記載の抑留予測方法。 - プロセッサと、メモリと、を備え、
前記メモリは、
掘削時に得られる複数の掘削パラメタに基づいて入力データを生成する入力データ生成プログラムと、
前記入力データの入力に応じて、抑留リスクを提供する抑留予測プログラムと、
を備え、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
前記入力データ生成プログラムは、前記プロセッサに実行されることで、現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成し、
前記抑留予測プログラムは、前記プロセッサに実行されることで、現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する、
抑留予測システム。 - 現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値は、
現時点の直近の所定期間内に得られた第1散布データと、第1散布データよりも前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである、
請求項7に記載の抑留予測システム。 - 前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される、
請求項7、8いずれか1項に記載の抑留予測システム。 - 前記抑留予測プログラムは、学習用掘削データに基づいて生成された2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供するように生成された推論プログラムである、
請求項7~9いずれか1項に記載の抑留予測システム。 - 前記抑留予測プログラムは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて抑留リスクを提供する、
請求項7~10いずれか1項に記載の抑留予測システム。 - 前記抑留予測プログラムは、複数の掘削パラメタに基づいて得られた複数の2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供し、
前記メモリには、前記プロセッサに実行されることで、抑留リスクに対する各掘削パラメタの寄与度を可視化して表示するプログラムを備えている、
請求項11に記載の抑留予測システム。 - 掘削時に得られる複数の掘削パラメタに基づいて入力データを生成し、前記入力データに基づいて抑留リスクを提供する抑留予測プログラムであって、
前記プログラムは、プロセッサに実行されることで、当該プロセッサに、
前記複数の掘削パラメタを取得させるに、前記複数の掘削パラメタは、ビット深度とビット深度以外の少なくとも1つ掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを入力データとして生成させ、
現時点のビット深度に基づいて生成された前記2Dヒストグラムの入力に応じて、抑留リスクを提供する、
コンピュータに抑留予測を実行させるプログラム。 - 現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値は、
現時点の直近の所定期間内に得られた第1散布データと、第1散布データよりも前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである、
請求項13に記載のコンピュータに抑留予測を実行させるプログラム。 - 前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される、
請求項13、14いずれか1項に記載のコンピュータに抑留予測を実行させるプログラム。 - 複数の掘削パラメタを含む掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
ある時点tのビット深度の値に基づいて設定した相対深度を第1軸とし、前記相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値を第2軸として、ある時点t以前の掘削データを用いて、散布データを取得し、
前記散布データを2Dヒストグラムに変換して入力データを生成する、
抑留予測モデルへの入力データの生成方法。 - 前記散布データは、
ある時点tの直近の所定期間内に得られた第1散布データと、前記第1散布データより前に得られた第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳Dヒストグラムである、
請求項16に記載の抑留予測モデルへの入力データの生成方法。 - 前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される、
請求項16、17に記載の抑留予測モデルへの入力データの生成方法。 - 複数の掘削パラメタ及び抑留情報を含む学習用掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
ある時点tのビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値の2Dヒストグラムを生成して入力データとし、
抑留前の一定期間内に予兆が現れると仮定し、学習用掘削データに基づいて生成された入力データに応じて抑留リスクを提供するように学習用モデルに学習させる、
学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - ある時点tのビット深度の値に基づいて設定した相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値は、
ある時点tの直近の所定期間内に取得された第1散布データと、前記第1散布データより前に取得された第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データに基づく第1の2Dヒストグラムと、前記第2散布データに基づく第2の2Dヒストグラムと、が生成され、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムは色によって識別可能であり、
前記入力データは、前記第1の2Dヒストグラムと前記第2の2Dヒストグラムを重ねた重畳2Dヒストグラムである、
請求項19に記載の学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - 前記学習用モデルは、抑留前の一定期間内に予兆が現れると仮定し、抑留前の一定期間内の入力データに1、抑留前の一定期間内及び抑留状態を除く入力データに0という正解ラベルを与えることで学習される、
請求項19、20いずれか1項に記載の学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - 前記学習用モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて学習する、
請求項19~21いずれか1項に記載の学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - 前記学習用モデルは、学習済モデルが異常データを判別して抑留リスクを提供できるように、学習用掘削データに基づいて生成された入力データであって、抑留前の一定期間内及び抑留状態を除く入力データを正常データとして学習する、
請求項19、20いずれか1項に記載の学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - 前記ビット深度以外の1つの掘削パラメタは、ビット回転数、ドリルパイプの回転トルク、フック荷重、泥水注入圧から選択される、
請求項19~23いずれか1項に記載の学習済み抑留予測モデルの生成方法。 - 複数の掘削パラメタを含む掘削データを取得し、
前記複数の掘削パラメタは、ビット深度と、ビット深度以外の少なくとも1つの掘削パラメタを含み、前記ビット深度の値と前記1つの掘削パラメタの値は時刻情報により対応しており、
前記掘削データを用いて、現時点のビット深度の値に基づいて設定した相対深度を第1軸とし、前記相対深度に対応する前記1つの掘削パラメタの値を第2軸として、現時点以前の掘削データを用いて、散布データを取得し、
前記散布データは、現時点の直近の所定期間に取得された第1散布データと、前記第1散布データより前に取得された第2散布データと、に分けられ、
前記第1散布データと前記第2散布データは、識別可能に1つの散布図としてディスプレイに表示される、
掘削データの圧縮方法。 - 前記第1散布データと前記第2散布データは、色分けして1つの散布図としてディスプレイに表示される、
請求項25に記載の掘削データの圧縮方法。 - 請求項7~12いずれか1項に記載の抑留予測システムを備えた掘削装置。
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