JP2022039803A - 電気回路のシミュレーション方法、及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】安定した数値計算を実現できる電気回路のシミュレーション方法を提供する。【解決手段】方法は、解析対象の空間を定義するステップと、解析対象の空間を有限体積に分割すると同時に時間を離散化するステップと、有限体積及び時間について選点を定めるステップと、有限体積の選点に対し周囲の電荷や電流が遅延を伴って寄与する影響である遅延電位係数および遅延インダクタンスを計算するステップと、集中定数回路の回路網及び集中定数回路が接続される箇所について、集中定数回路と分布定数回路の接続条件に基づき、行列で表された境界条件の式を作るステップと、数値計算の初期値を定めるステップと、境界条件に基づき集中定数回路と分布定数回路の境界部の電位、電流及び電磁界を計算するステップと、分布定数回路内の電位・電流・電磁界を、遅延電位係数及び遅延インダクタンスを含む式に基づいて計算するステップと、を実行する。。【選択図】図5
Description
本発明は、電気回路における伝送線路の電位・電流、素子の電位・電流、及び当該電気回路の内外で発生するノイズを含めた周辺電磁界を包括的に計算する、電気回路のシミュレーション方法、及びプログラムに関する。
従来、機器周辺の電磁界をシミュレーションで調べる場合、(1)機器を構成する回路の情報の入力、(2)集中定数回路理論や多導体伝送線路に関する分布定数回路理論(非特許文献1参照)に基づく伝送線路や素子の電位・電流の計算、(3)電磁界の計算、の順で行っていた。もしくは、伝送線路や素子の電位・電流を初期値とし電磁界を計算していた。もしくは、電源を等価な電磁場源とし電磁界を計算していた。しかし、実際には伝送線路や素子の電位・電流と周辺の電磁界とは相互作用しており、相互作用が考慮されない従来の電磁界計算方法では電磁界を精度よく計算することができなかった。そのため、ひとまずシミュレーションによる計算結果に基づいて回路設計をした上で、結果的に発生してしまった電磁ノイズに対して、経験的に知られている方法や対症療法などによる対策をとるのが一般的であった。
このような中、多導体伝送線路理論とアンテナ理論とを融合し、伝送線路の電位・電流、素子の電位・電流、及びこれらから発生するノイズを含めた電磁界を包括的に計算するための新たな伝送理論が提唱された(例えば特許文献1、特許文献2等を参照)。
この新たな伝送理論は、従来の多導体伝送線路理論にアンテナ理論を取り込んだものであり、マクスウェルの方程式から直接導出されるスカラーポテンシャルUとベクトルポテンシャルAについての方程式を基礎とする。この方程式を解くには、適切な境界条件を与える必要があるところ、特許文献2では、境界条件の計算量を抑制し効率的に計算を実行する手法が提案されている。
ところで、特許文献1等に開示された電気回路の計算で用いる方程式は遅延積分偏微分方程式となるところ、この遅延積分偏微分方程式の時間領域における数値計算では、結果が発散する問題があった。この原因は、積分計算において、遠方からの影響が遅れて発生する遅延時間であり、従来法では空間に依存した遅延時間を踏まえた複雑な計算を避けるべくこの遅延時間を有限体積の中心間の伝搬時間である定数で近似した数値計算を行っていた。
しかし、この近似では非物理的な効果を含んでおり、数値計算の不安定化の原因となっている。そして安定した数値計算を実現するための一般的な対策法は、抵抗成分の追加や、数値計算で用いる刻み幅などのパラメーターを変えるなどの対症療法的な対策となっている。
本発明の課題は、上記の問題を解決し、従来と比べ安定した数値計算を実現することのできる電気回路のシミュレーション方法、及びプログラムを提供することにある。
上記の課題を解決すべく、本発明の電気回路のシミュレーション方法は、コンピュータが、分布定数回路を構成する多導体における電位と電流密度、分布定数回路に接続される集中定数回路を構成する素子における電位と電流、及び各回路からの電磁放射量を計算する、電気回路における電位、電流、及び周辺電磁界の計算方法であって、解析対象の空間を定義するステップと、定義した解析対象の空間を有限体積に分割すると同時に時間を離散化するステップと、離散化した有限体積および時間について選点を定めるステップと、離散化した有限体積の選点に対し周囲の電荷や電流が遅延を伴って寄与する影響である遅延電位係数および遅延インダクタンスを計算するステップと、集中定数回路の回路網及び集中定数回路が接続される箇所について、集中定数回路と分布定数回路の接続条件に基づき、行列で表される境界条件の式を作るステップと、数値計算の初期値を定めるステップと、境界条件に基づき集中定数回路と分布定数回路の境界部の電位、電流、および電磁界を計算するステップと、分布定数回路内の電位・電流・電磁界を、遅延電位係数および遅延インダクタンスを含む式に基づいて計算するステップとを実行することを特徴とする。
本発明では、遅延電位係数および遅延インダクタンスを含む式は、
で表される電位の更新式と、
で表される電流密度の更新式とするとよい。
ただし、Uj,k,l, mは選点(xj, yk, zl, tm)における電位であり、jα(j,k,l,) mは選点(xj, yk, zl, tm)を含む有限体積におけるαで示される方向の電流密度であり、P(j,k,l)(j’,k’,l’) nは、選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延電位係数であり、L(j,k,l)(j’,k’,l’) nは選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延インダクタンスである。
ただし、Uj,k,l, mは選点(xj, yk, zl, tm)における電位であり、jα(j,k,l,) mは選点(xj, yk, zl, tm)を含む有限体積におけるαで示される方向の電流密度であり、P(j,k,l)(j’,k’,l’) nは、選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延電位係数であり、L(j,k,l)(j’,k’,l’) nは選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延インダクタンスである。
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータに上記の電気回路のシミュレーション方法を実行させることを特徴とする。
以下、本発明に係る電気回路のシミュレーション方法について説明する。なお、以下の説明では、シミュレーションの対象とする分布定数回路が3次元の場合を中心に説明するが、本発明に係るシミュレーション方法は2次元の系にも適用可能であり、理解を容易にすべく一部の説明においては2次元の系を例に挙げている。
〔分布定数回路における電位及びベクトルポテンシャルを求める式の導出〕
回路導体内の電位Uと電荷密度q、ベクトルポテンシャルAと電流密度jの数値計算において、以下の方程式を用いる。
なお、上記の式においてεは誘電率、μは透磁率である。また、vは電磁波の伝搬速度であり、導体周囲の誘電率ε、透磁率μ、及び真空中の光速cから導出される。
回路導体内の電位Uと電荷密度q、ベクトルポテンシャルAと電流密度jの数値計算において、以下の方程式を用いる。
本実施形態のシミュレーション方法では、コロケーション法(選点法)を用いた数値計算を行う。具体的には、基底関数には以下のパルス関数を用い、重み関数にはデルタ関数を用い、離散化した微小体積の中心点をとる。
ここで、時間tに関してもパルス関数を基底関数としているので空間と時間を同時に離散化することができる。初期値(m = 0)のときには、全ての変数が0であるものとする。よって、未知数である電荷密度qは以下のように近似できる。
図1は、パルス関数fj(x)fk(y)fl(z)で定義された電位の有限体積とコロケーション法で用いる電位Uと電流密度jの選点の位置関係を示す模式図である。
なお、式(15)においてR(x’-x, y’-y, z’-z)は点(x, y, z)と(x’, y’, z’)の距離を表す。
遅延電位係数Pnの求め方等については後述する。
なお、図1に示したように、電流密度は、電位を計算するために式(5)~(8)のパルス関数によって分割された有限体積の外面の中央において、図1に示した電流の方向で定義される。このため、電流密度が規定される位置は、電位で定義した微小体積に対して、分割幅の半整数だけずれることになる。すなわち、それぞれの方向 α(= x, y, z) におけるズレは式(29)~(31)のαx,αy,αzで表される。このズレを踏まえ境界部でのパルス関数の幅は非境界部の半分となる。初期値(m = 0)のときには、全ての変数が0であるものとする。
式(32),(37)を式(24)に代入することで、ベクトルポテンシャルAを以下のように離散化することができる。このように、式(32)を介して式(25)~(28)のパルス関数を用いることで、空間と時間を同時に離散化することができる。
遅延インダクタンスLnの求め方等については後述する。
以上のようにして、電位UおよびベクトルポテンシャルAは、時間と空間について同時に離散化され、それぞれ遅延電位係数および遅延インダクタンスを用いて表される。
続いて、式(3)(連続の式)と式(4)(オームの法則の式)から、電位Uの更新式および電流密度jの更新式を求める。
なお、式(51)においてα’は電位についての微小体積の分割幅からのα(= x, y, z)方向へのズレを示しており、電流密度の規定位置のズレを表すαとは異なる。α’は式(52)~(54)のように規定される。
なお、上式において、
である範囲(換言すれば、Δt×v≦Δx/2、Δt×v≦Δy/2、Δt×v≦Δz/2を満たす範囲)では、それぞれの場所における電流密度を独立に解くことができる。一方、式(59)を満たさない場合には、電流密度を求めるために連立方程式を解く必要がある。
〔遅延電位係数および遅延インダクタンス〕
図2は、2次元平面の場合の遅延電位係数Pnあるいは遅延インダクタンスLnの概念図を示している。この図では、n個前の時間の値が選点(0,0)に及ぼす影響の範囲を表されている。遅延時間nに応じて、自己と相互の積分範囲が変わる。選点(0, 0)を中心とする円は半径がnΔtvであり、遅延時間nが大きくなるほどその影響の範囲は遠くなる。遅延の影響は、選点と離散化した有限体積の相対的な位置関係で決まるため、図2のように選点(0,0)を中心とする遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnのみを計算すれば良い。その他の選点を中心とする遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnは前記で導出した遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnと同じ相対的な位置関係の値を用いれば良い。本発明ではこのように遅延の影響を遅延電位係数Pnおよび遅延インダクタンスLnとして数値計算に厳密に取り込んでいる。
図2は、2次元平面の場合の遅延電位係数Pnあるいは遅延インダクタンスLnの概念図を示している。この図では、n個前の時間の値が選点(0,0)に及ぼす影響の範囲を表されている。遅延時間nに応じて、自己と相互の積分範囲が変わる。選点(0, 0)を中心とする円は半径がnΔtvであり、遅延時間nが大きくなるほどその影響の範囲は遠くなる。遅延の影響は、選点と離散化した有限体積の相対的な位置関係で決まるため、図2のように選点(0,0)を中心とする遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnのみを計算すれば良い。その他の選点を中心とする遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnは前記で導出した遅延電位係数Pnと遅延インダクタンスLnと同じ相対的な位置関係の値を用いれば良い。本発明ではこのように遅延の影響を遅延電位係数Pnおよび遅延インダクタンスLnとして数値計算に厳密に取り込んでいる。
遅延電位係数Pnを表す式(21)、および遅延インダクタンスLnを表す式(24)は、共通の積分を含んでいる。これらの積分の積分範囲は、選点を中心とする遅延の半径rnの球面(2次元の系の場合は円)と着目している離散化した有限体積の空間とによって囲まれた領域となる。ただし、rn=nΔtvである。例えば、図3に示した2次元の例において、選点(0,0)、(j,k)を中心とする有限体積についての積分範囲は図3の網掛け部のようになる。この網掛け部を遅延カーネルKn
(0,0)(j,k)と表すと、遅延電位係数Pn
(0,0)(j,k)および遅延インダクタンスLn
(0,0)(j,k)はそれぞれ、式(60)および(61)にて求めることができる。
このようにして積分範囲が定まることにより、空間の分割単位(Δx、Δy、Δz)、時間の離散化単位(Δt)、および空間の誘電率・透磁率に基づいて、選点と有限体積の空間の組み合わせ毎に遅延電位係数Pnおよび遅延インダクタンスLnを求めることができる。なお、ここでは理解を容易にすべく2次元の系を用いて遅延電位係数と遅延インダクタンスの計算方法を説明したが、同様の考え方を適用することで上記の遅延電位係数と遅延インダクタンスの計算方法を3次元の系に拡張することができることは言うまでもない。
〔集中定数回路との接続(境界条件)〕
図4は、境界における集中定数回路と分布定数回路内の電位と電流の接続関係を示している。境界条件の立式においては、集中定数回路のノード電位と分布定数回路の電位、集中定数回路の枝電流と分布定数回路の電流を等価に見なす。また、分布定数回路の電流の時間は半整数ずれているため、整数部の電流密度の時間平均と見なす。接続する位置(3次元の系の場合、図4中にAからF)によって境界の電流の向きが変わる。
図4は、境界における集中定数回路と分布定数回路内の電位と電流の接続関係を示している。境界条件の立式においては、集中定数回路のノード電位と分布定数回路の電位、集中定数回路の枝電流と分布定数回路の電流を等価に見なす。また、分布定数回路の電流の時間は半整数ずれているため、整数部の電流密度の時間平均と見なす。接続する位置(3次元の系の場合、図4中にAからF)によって境界の電流の向きが変わる。
上式においてUl, Ilは集中定数回路の未知数である節点電位と枝電流を表している。Alは集中定数回路の節点と枝の接続関係と枝電流の向きを表している。それらの成分は0,1,-1のいずれかであり、行は節点に対応し、列は枝に対応している。例えば、節点pと枝qが接続されていなければ、それに対応するp行目q列目の要素は0である。また、節点と枝が接続され、かつ方向が節点から出ていく向きであれば要素は1となり、節点から入る方向であれば要素は-1となる。Zlは集中定数回路のインピーダンス行列であり、枝を構成する素子の時間領域のインピーダンスを要素に持つ。q列目q行目の要素は、枝qの要素が抵抗であればR、コンデンサであればΔt/(2C)、インダクタンスであれば2L/(Δt)の値を持つ。それ以外は0とする対角行列である。また、Vsは電圧源ベクトルを表しており、枝qを構成する電圧源の値をq番目の要素にもつ。Isは電流源ベクトルを表しており、枝qを構成する電流源の値をq番目の要素にもつ。また式(62)におけるε及びδは、枝qを構成する要素の種類に応じた対角行列である。εは対角行列を表しており、コンデンサである枝qについては-1、コンデンサ以外である枝qについては1をq番目の要素にもつ。また、δは対角行列を表しており、インダクタンスである枝qについては-1、インダクタンス以外である枝qについては1をq番目の要素にもつ。
3次元導体と集中定数回路を接続するために、以下を仮定する。電位の離散点(選点)と集中定数回路のノードを等価にみなす。また、電流密度の離散点に流れる電流と集中定数回路の枝に流れる電流を等価にみなす。3次元導体の境界条件では、電位の更新式を用いて計算を行う。
上の式を接続行列とインピーダンス行列を用いて表す以下のように従来の境界条件と同じ形となり、従来と同様の手法により解くことができる。
ここで、Adは境界の電位Udと電流jdの接続関係を表す行列である。電流の向きはγαで定めているため、Adの要素は1または0となる。行は電位に対応し、列は電流密度に対応している。例えば、点pの電位と点qの電流密度が同じ集中定数回路に接続されていると、p行目q列目の要素は1となる。一方、接続されていなければ0となる。Z0
dは非遅延インピーダンス行列であり、p行目p列目の要素は点pの電位の非遅延インピーダンスγα(j,k,l) (Δt/Δα)P0(j,k,l)(j,k,l)であり、それ以外は0となる対角行列である。また、~Udは境界に寄与する影響を電位源とする遅延ベクトルであり、式(65)の右辺の第3項目と4項目を表している。
また、集中定数回路と分布定数回路の接続関係を表すために、キルヒホッフの法則を用いる。
ここで、 Sαはα(= x, y, z) 方向に対する断面積を成分にもつ対角行列である。γαはα(= x, y, z)方向の電流の向きに応じて符号を変えるための係数を成分に持つ対角行列である。以上の式(62),(66),(67) が境界における条件式となる。
これらの条件式を行列の式で表せば、コンピュータプログラムによる演算により方程式の解を得ることが容易となる。
〔数値計算の手順〕
本発明に係るシミュレーション方法を回路系に適用して計算を行う手順を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
本発明に係るシミュレーション方法を回路系に適用して計算を行う手順を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
解析対象とする空間(すなわち、分布定数回路を構成する3次元導体)を定義する。(ステップS01)。具体的には、図6(a)に2次元の系にて模式的に示したように、空間内の位置を規定する座標系を設定し、その座標系において導体が存在する範囲を規定する。
続いて、パルス関数(式(5)~(8)、式(25)~(28))を用いて、ステップ01で規定した解析対象の空間を複数の有限体積に分割(離散化)すると同時に時間を離散化する(ステップS02)。図6(b)は、図6(a)のように規定された導体を離散化した様子を示す模式図である。
続いて、離散化された有限体積の中心および離散化した時間の1ステップの中で最新の時間(離散化した時間が(m-1)Δt≦t≦mΔtの場合にはmΔt)を選点に定める(ステップS03)。そして、選点と有限体積の相対的な関係で表される、有限体積における電荷や電流が遅延を伴って寄与する影響である遅延電位係数および遅延インダクタンスを積分計算する(ステップS04)。
続いて、境界条件として集中定数回路を分割した空間のいずれかの中心点(つまりいずれかの選点)に接続する。そして、集中定数回路の回路網及び集中定数回路が接続される箇所について、集中定数回路と分布定数回路の接続条件に基づき、境界条件の行列式を作る(ステップS05)。
続いて、数値計算の初期値を定める(ステップS06)。すなわち、時間については初期値m=0とし、各有限体積の各選点について電位および電流の初期値(例えばゼロ)を設定する。そして、境界条件に基づき集中定数回路と分布定数回路の境界部(接続部)の電位・電流・電磁界を計算する(ステップS07)。さらに、3次元導体空間(分布定数回路)内の電位・電流・電磁界を遅延電位係数および遅延インダクタンスを含む式に基づいて計算する(ステップS08)。具体的には、ステップS08においては、電位Uの更新式(式(49))および電流密度jの更新式(式(58))を用いて、各選点についての数値計算を実施するとよい。
ステップS06における計算が終了すると、mが所定値に達したか否かを判定し(ステップS09)、所定値に達していない場合(ステップS09;No)には、mを1増加させて(ステップS10)処理をステップS07に戻す。一方、ステップS09においてmが所定値に達している場合(ステップS09;Yes)、所望の時刻までの計算が終了したものとして、処理を終了する。
以上のようにして、mが0から任意の値まで、mを順次増加させつつ、初期値または既に計算済みの電位・電流・電流密度・電磁界の値を利用して、導体の電位・電流密度、素子の電位・電流、及び当該電気回路の内外で発生するノイズを含めた周辺電磁界を計算することができる。
なお、上記の実施形態では、3次元の分布定数回路を例に説明をしたが、2次元の分布定数回路についても本発明の手法を同様に適用することができる。
[実施例]
図6に示した分布定数回路(幅1mm、長さ20mmの2枚の平板上の線路が重ねて配置された伝送線路)に、50Ωの抵抗を介してパルス電圧(立ち上がり時間tr=0.05ns、平坦時間th=0.05ns、立ち下がり時間tf=0.05ns)を入力したときの応答について、上記実施形態のシミュレーション方法によりシミュレーションを実施した。シミュレーションにおいて、線路間の距離は1.6mm、比誘電率は3.7、比透磁率は1とした。シミュレーションにおいて、分布定数回路をΔx=Δy=0.25mm、Δt=0.80psとして、空間と時間について同時に離散化した。なお、図6に示した分布定数回路において線路の厚みは0.016mmでありΔxおよびΔyと比較して十分に小さいため、厚さ方向(z方向)の変数は一様とみなした。すなわち、z方向の差分は全て0となるので、Δzは数値計算に寄与しない。
図6に示した分布定数回路(幅1mm、長さ20mmの2枚の平板上の線路が重ねて配置された伝送線路)に、50Ωの抵抗を介してパルス電圧(立ち上がり時間tr=0.05ns、平坦時間th=0.05ns、立ち下がり時間tf=0.05ns)を入力したときの応答について、上記実施形態のシミュレーション方法によりシミュレーションを実施した。シミュレーションにおいて、線路間の距離は1.6mm、比誘電率は3.7、比透磁率は1とした。シミュレーションにおいて、分布定数回路をΔx=Δy=0.25mm、Δt=0.80psとして、空間と時間について同時に離散化した。なお、図6に示した分布定数回路において線路の厚みは0.016mmでありΔxおよびΔyと比較して十分に小さいため、厚さ方向(z方向)の変数は一様とみなした。すなわち、z方向の差分は全て0となるので、Δzは数値計算に寄与しない。
図7は、上記の条件でシミュレーションによる、図6における電源側の境界(集中定数回路と接続される位置)における電位差の計算値の変化を示している。図7から、発散することなく数値計算を実施できていることが分かる。
[比較例]
実施例と同様の系を従来のシミュレーション方法(PEEC法;遅延時間を中心点間の伝搬時間(一定値)として近似)にてシミュレーションした結果を図8に示す。図8から、数値計算が不安定であり発散する(解が収束しない)ことがわかる。
実施例と同様の系を従来のシミュレーション方法(PEEC法;遅延時間を中心点間の伝搬時間(一定値)として近似)にてシミュレーションした結果を図8に示す。図8から、数値計算が不安定であり発散する(解が収束しない)ことがわかる。
以上で説明したように、本発明に係る電気回路のシミュレーション方法によれば、安定した数値計算を実現することができる。
また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
本発明の、電気回路のシミュレーション方法は、コンピュータに実行させることが可能である。コンピュータに本発明の、電気回路のシミュレーション方法を実行させる場合、各処理ステップにおける処理内容はプログラムによって記述される。そのプログラムは、例えば、ハードディスク装置に格納されており、実行時には、必要なプログラムやデータがRAM(Random Access Memory)に読み込まれて、そのプログラムがCPUにより実行されることにより、コンピュータ上で各処理内容が実現される。
Claims (3)
- コンピュータが、分布定数回路を構成する多導体における電位と電流密度、前記分布定数回路に接続される集中定数回路を構成する素子における電位と電流、及び各回路からの電磁放射量を計算する、電気回路における電位、電流、及び周辺電磁界の計算方法であって、
解析対象の空間を定義するステップと、
定義した前記解析対象の空間を有限体積に分割すると同時に時間を離散化するステップと、
離散化した有限体積および時間について選点を定めるステップと、
離散化した前記有限体積の選点に対し周囲の電荷や電流が遅延を伴って寄与する影響である遅延電位係数および遅延インダクタンスを計算するステップと、
集中定数回路の回路網及び集中定数回路が接続される箇所について、集中定数回路と分布定数回路の接続条件に基づき、行列で表された境界条件の式を作るステップと、
数値計算の初期値を定めるステップと、
前記境界条件に基づき集中定数回路と分布定数回路の境界部の電位、電流、および電磁界を計算するステップと、
分布定数回路内の電位・電流・電磁界を、前記遅延電位係数および前記遅延インダクタンスを含む式に基づいて計算するステップと
を実行することを特徴とする、電気回路のシミュレーション方法。 - 前記遅延電位係数および前記遅延インダクタンスを含む前記式は、
ただし、Uj,k,l, mは選点(xj, yk, zl, tm)における電位であり、jα(j,k,l,) mは選点(xj, yk, zl, tm)を含む有限体積におけるαで示される方向の電流密度であり、P(j,k,l)(j’,k’,l’) nは、選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延電位係数であり、L(j,k,l)(j’,k’,l’) nは選点(xj, yk, zl, tm)に対する、位置(xj’, yk’, zl’)を含む離散化した有限体積からのnΔtの遅延時間を伴った影響を表す遅延インダクタンスである。 - コンピュータに、請求項1または2に記載のシミュレーション方法を実行させるプログラム。
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