JP2022038886A - 有機ゲルマニウム化合物を含有するマクロファージ極性化剤及びその使用 - Google Patents

有機ゲルマニウム化合物を含有するマクロファージ極性化剤及びその使用 Download PDF

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Junya Azumi
知也 武田
Tomoya Takeda
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Abstract

【課題】がん処置用の医薬組成物を調製する等に利用できる、マクロファージのM1型への極性化を誘導する極性化剤及びSIRPα発現抑制剤、並びに疾患又は状態の処置、特にがんの処置におけるM1極性化剤及びM1極性化されたマクロファージの利用の提供。【解決手段】一般式(I)で表される有機ゲルマニウム化合物を含むマクロファージのM1極性化剤、及び、該マクロファージのM1極性化剤を含有するマクロファージによるがん細胞の貪食を亢進するための組成物。JPEG2022038886000017.jpg4364【選択図】図1

Description

本発明は、有機ゲルマニウム化合物を含有するマクロファージのM1極性化剤及びSIRPα発現抑制剤、並びに疾患又は状態の処置、特にがんの処置におけるM1極性化剤及びM1極性化されたマクロファージの利用に関する。
マクロファージは免疫系において重要な因子の一つであり、局所の環境シグナルに応答してその形態や機能を大きく変化させることができる可塑性を有する。マクロファージは大別して、炎症促進性のM1型と抗炎症性のM2型に分類される。M1型のマクロファージ(M1マクロファージ)は高い抗原提示能と貪食能を有しており、炎症性サイトカインを分泌し、バクテリアやウイルス等の病原体や損傷組織の除去に寄与している。M2型のマクロファージ(M2マクロファージ)は抗炎症性サイトカインや増殖因子の分泌によって損傷の治癒や免疫寛容といった役割を担っている。M1マクロファージとM2マクロファージは、互いに恒常的にバランスを取り合っており、そのバランスが崩れると様々な炎症性疾患が生じる。
マクロファージはがん領域においても重要な役割を果たしている。M1マクロファージは、腫瘍に対して増強された免疫応答及び貪食能を示し、またがんの進展や転移を抑制することから、M1マクロファージを利用したがん治療の様々な取り組みが進められている。しかしながら、M1マクロファージを利用したがん治療には、マクロファージ上のSIRPα(signal regulator protein α)が標的細胞上のCD47と結合することでマクロファージの貪食が抑制されるという課題がある。様々な種類のがん細胞が正常細胞と比べてCD47を高発現しており、CD47-SIRPα免疫チェックポイント経路から貪食回避シグナルを発して、マクロファージによる貪食を免れているものと考えられている。中和抗体等を用いたCD47-SIRPα免疫チェックポイントの阻害は、マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進させ、がんの進展を抑制することが知られている。
また、腫瘍内又はその近傍に存在するTAM(Tumor-Associated Macrophage)と呼ばれるマクロファージはM2様の性質を持っており、抗炎症性サイトカイン等の免疫抑制因子の分泌を介して抗腫瘍免疫を抑制し、TGF-βの分泌を介してがんの転移を促進し、またVEGFの分泌を介して血管新生を亢進する。このようにTAMはがん細胞の増殖に好都合な微小環境を提供することから、TAMの抑制もがん治療において重要な課題となっている。
一方、Ge-132(ポリ-トランス-〔(2-カルボキシエチル)ゲルマセスキオキサン]、レパゲルマニウム、アサイゲルマニウムとも呼ばれる)は、免疫賦活作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用、鎮痛作用、モルヒネとの協調作用といった様々な生理作用を持つ有機ゲルマニウム化合物である。Ge-132の抗腫瘍作用は、その加水分解物である(3-(トリヒドロキシゲルミル)プロパン酸(THGP)を介して発揮され、マウスやラットを用いたインビボ試験において、NK細胞の活性化によって誘導されるIFN-γの分泌増加とそれに伴って起こるマクロファージの活性化によるものであることが明らかにされている(非特許文献1~3)。
H Aso et al., Microbiol Immunol. 1985;29:65-74. 鈴木富士夫ら、癌と化学療法、1987年1月号、14(1):127-34. F Suzuki et al., J Interferon Res. Spring 1984;4(2):223-33.
本発明は、マクロファージのM1型への極性化(M1極性化)を誘導する新たな手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、THGPが特定の条件下でマクロファージのM1極性化を誘導し、マクロファージ上のSIRPαの発現を抑制すること、さらにはマクロファージのM1極性化を介してがん細胞の上皮間葉転換の阻害やCD47の発現抑制をもたらすことを見出し、下記の発明を完成させた。
(1) 一般式(I)
Figure 2022038886000002
の化合物であって、
式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのM1極性化剤。
(2) 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(1)に記載の極性化剤。
(3) 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(1)又は(2)に記載の極性化剤。
(4) 一般式(I)
Figure 2022038886000003
の化合物であって、
式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのSIRPα発現抑制剤。
(5) 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(4)に記載の発現抑制剤。
(6) 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(4)又は(5)に記載の発現抑制剤。
(7) CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するために用いられる、(4)~(6)のいずれか一項に記載の発現抑制剤。
(8) 一般式(I)
Figure 2022038886000004
の化合物であって、
式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのM1極性化を誘導し得る量のIFN-γが存在しない対象又はIFN-γによりマクロファージのM1極性化が誘導されない対象において疾患又は状態の処置に用いるための組成物。
(9) 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(8)に記載の組成物。
(10) 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、(8)又は(9)に記載の組成物。
(11) がん処置用の医薬組成物である、(8)~(10)のいずれか一項に記載の組成物。
(12) マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進するための、(8)~(11)のいずれか一項に記載の組成物。
(13) がん細胞の上皮間葉転換を抑制するための、(8)~(12)のいずれか一項に記載の組成物。
(14) CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するための、(8)~(13)のいずれか一項に記載の組成物。
(15) 50 μM~10 mMの一般式(I)
Figure 2022038886000005
の化合物であって、
式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する培地中でマクロファージ原料細胞を7日間以上培養することを含む、M1極性化されたマクロファージを製造する方法。
(16) 培地が、一般式(I)においてR1、R2及びR3が互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、(15)に記載の方法。
(17) 培地が、一般式(I)においてR1、R2及びR3がいずれも水素である化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、(15)又は(16)に記載の方法。
(18) マクロファージ原料細胞が、マクロファージ前駆細胞、極性化されていないマクロファージ又はM1型以外のサブセットに極性化されたマクロファージである、(15)~(17)のいずれか一項に記載の方法。
(19) 培地が500 μM~5 mMの一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、(15)~(18)のいずれか一項に記載の方法。
(20) 培養が10日間以上行われる、(15)~(19)のいずれか一項に記載の方法。
(21) (15)~(20)のいずれか一項の方法により製造されるM1極性化されたマクロファージ又はその培養上清を含有する、疾患又は状態の処置に用いるための組成物。
(22) がん処置用の医薬組成物である、(21)に記載の組成物。
(23) マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進するための、(21)又は(22)に記載の組成物。
(24) がん細胞の上皮間葉転換を抑制するための、(21)~(23)のいずれか一項に記載の組成物。
(25) CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するための、(21)~(24)のいずれか一項に記載の組成物。
本発明によると、マクロファージのM1極性化を誘導することができ、M1極性化されたマクロファージを製造することができる。このマクロファージは、高い貪食能を有することに加えてSIRPαの発現が抑制されており、またがん細胞に対して上皮間葉転換の阻害やCD47の発現抑制を引き起こすことができることから、がんの処置において有用である。
図1aは、THGP 500μMを含有する培地で0、1、7、10、45、90日間培養したRAW 264.7細胞の明視野顕微鏡での観察画像である。図1bは、対照培地(Ctrl)又はTHGP 500μMを含有する培地で10日間培養したRAW 264.7細胞の明視野顕微鏡での観察画像(矢印は紡錘状細胞を示す)であり、図1cは全細胞に占める紡錘状細胞の割合を示すグラフである。図1dは、THGPで0、1、10、30、40日間培養したRAW 264.7細胞の細胞増殖率を示すグラフである。図1eは対照培地(Ctrl)又はTHGP 500μMを含有する培地で20日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞の、CD86若しくはCD206を免疫染色した、又はDAPIで核染色した蛍光顕微鏡での観察画像であり、図1fはM1/M2比(CD86陽性細胞の割合/CD206陽性細胞の割合)を示すグラフである。 図2aは対照培地(Ctrl、白色のバー)又はTHGP 500μMを含有する培地(黒色のバー)で20日間培養したRAW 264.7細胞におけるM1マクロファージマーカーの相対的遺伝子発現量を、図2bはこれらのRAW 264.7細胞におけるM2マクロファージマーカーの相対的遺伝子発現量を示すグラフである。また図2cは、対照培地(Ctrl)又はTHGP 500μMを含有する培地で20日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞におけるCD86及びCD206のタンパク質発現を解析したウェスタンブロッティング結果を示す画像であり、図2d及び図2eはウェスタンブロッティング結果から定量したCD86及びCD206の相対的タンパク質発現量を示すグラフである。 対照培地(Ctrl)又はTHGP 50、500若しくは5000 μMを含有する培地で4、7又は10日間培養したRAW 264.7細胞におけるM1マクロファージマーカーiNOSの相対的遺伝子発現量を示すグラフである。 図4aは対照培地(Ctrl)又はTHGP 50、500若しくは5000 μMを含有する培地で10日間培養したRAW 264.7細胞にFITC標識ビーズを取り込ませた後の蛍光顕微鏡観察画像であり、図4bはCtrlの蛍光強度を1としたときの相対的蛍光強度のグラフである。図4cは、対照培地で20日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞(RAW C)又はTHGP 500 μM含有培地で20日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞(RAW T)を蛍光標識し、500 μMのTHGP存在下又は非存在下、別の蛍光で標識したB16 4A5細胞と共培養した後の蛍光顕微鏡観察画像である。図4dは、前記共培養により貪食されたB16 4A5細胞(二重染色された細胞)の割合を示すグラフである。 図5aは、500 μMのTHGP存在下又は非存在下でRAW C又はRAW Tと共培養したB16 4A5細胞の傷害の割合を示すグラフである。図5bは、対照培地(control)、THGP 500 μM含有培地、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional mediumを用いて培養したB16 4A5細胞の細胞増殖を示すグラフである。図5cは、対照培地(Ctrl)又はTHGP 500 μM含有培地を用いて培養したB16 4A5細胞の生存率を示すグラフである。図5dは、1.25 μMの5-FUの存在下でRAW C又はRAW Tと共培養したB16 4A5細胞の生存率を示すグラフである。図5eは、1.25 μMの5-FUの存在下(5-FU)又は非存在下(Ctrl)で、対照培地(NC)又はRAW C、RAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium(それぞれRAW C CM、RAW T CM)を用いて培養したB16 4A5細胞の生存率を示すグラフである。 図6aは、RAW C又はRAW Tと共培養したB16 4A5細胞の明視野顕微鏡での観察画像である。図6bは、RAW C(Ctrl)及びRAW T(THGP)におけるSIRP-αの相対的遺伝子発現量を示すグラフである。図6cは、対照培地(Ctrl)、RAW C CM又はRAW T CMで培養したB16 4A5細胞におけるCD47の相対的遺伝子発現量を示すグラフである。 図7aは、RAW C(Ctrl)及びRAW T(THGP)の培養上清中のTGF-β濃度を示すグラフである。図7b及び図7cは、対照培地(Ctrl)、THGP 500 μM含有培地、RAW C CM又はRAW T CMで培養したB16 4A5細胞におけるN-cadherin及びVimentinの相対的遺伝子発現量を示すグラフである。また図7dはこれらのB16 4A5細胞におけるN-cadherinのタンパク質発現を解析したウェスタンブロッティング結果を示す画像であり、図7eはウェスタンブロッティング結果から定量したN-cadherinの相対的タンパク質発現量を示すグラフである。 図8aは対照培地(Ctrl)、THGP 500 μM含有培地、RAW C CM又はRAW T CMで培養したB16 4A5細胞の遊走アッセイ結果を示す画像であり、図8bは図8aの結果から算出した各B16 4A5細胞の遊走能を示すグラフであり、また図8cは各B16 4A5細胞のMMP-2及びMMP-9活性を示すグラフである。図8dは、RAW C CM又はRAW T CMで培養したB16 4A5細胞の接着性を示すグラフである。図8eは、RAW C又はRAW Tと共培養したB16 4A5細胞の侵襲性を示すグラフである。 図9aは、対照培地(Ctrl)、TGF-β含有培地、又はTGF-β・THGP含有培地で培養したB16 4A5細胞の明視野顕微鏡での観察画像である。図9bは、これらのB16 4A5細胞の、N-cadherinを免疫染色した、又はDAPIで核染色した蛍光顕微鏡での観察画像である。図9cは、これらのB16 4A5細胞のウェスタンブロッティング結果から定量したN-cadherinの相対的タンパク質発現量を示すグラフである。図9dは、これらのB16 4A5細胞の侵襲性を示すグラフである。
本発明の第1の態様は、一般式(I)
Figure 2022038886000006
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体のうちの少なくとも1を含有する、マクロファージのM1極性化剤に関する。
化合物
本発明において用いられる化合物は、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体である。ここで重合体は、加水分解により一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを与える重合体である。
一般式(I)の化合物において、R1及びR2は、互いに独立して、水素:フッ素、塩素若しくは臭素等のハロゲン;ニトロ;ヒドロキシ;シアノ;直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1~4個のアルキルであるC1-4アルキル;1若しくは複数のハロゲンで置換された直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1~4個のアルキルであるC1-4ハロアルキル;直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数2~4個のアルケニルであるC2-4アルケニル;1若しくは複数のハロゲンで置換された直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数2~4個のアルケニルであるC2-4ハロアルケニル;直鎖若しくは分岐鎖の炭素数3~4個のアルキニルであるC3-4アルキニル;1若しくは複数のハロゲンで置換された直鎖若しくは分岐鎖の炭素数3~4個のアルキニルであるC3-4ハロアルキニル;-O-C1-4アルキルで表されるC1-4アルコキシ;-O-C1-4ハロアルキルで表されるC1-4ハロアルコキシ;-S-C1-4アルキルで表されるC1-4アルキルチオ;-SO-C1-4アルキルで表されるC1-4アルキルスルフィニル;又は-SO2-C1-4アルキルで表されるC1-4アルキルスルホニルであることができる。
また、R1及びR2は、それらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成してもよい。
4~10員の単環式又は多環式の飽和環は、環構成原子として4~10個の炭素原子を有する、1又は複数の環構造を持つ飽和炭素環であって、例として、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロオクチル、スピロオクチル等が挙げられる。
4~10員の単環式又は多環式の部分飽和環は、環構成原子として4~10個の炭素原子を有する、1又は複数の環構造を持つ部分飽和炭素環であって、例として、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ビシクロオクテニル等が挙げられる。
6~10員の単環式又は多環式の芳香環は、環構成原子として6~10個の炭素原子を有する、1又は複数の環構造を持つ芳香環であって、例として、フェニル、ナフチル、インジル等が挙げられる。
5~10員の単環式又は多環式の窒素、酸素及び硫黄よりなる群から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環は、環構成原子として6~10個の原子を有する、1又は複数の環構造を持つ飽和環、部分飽和環又は芳香環であって、環構成原子のうち1~4個は窒素、酸素及び硫黄よりなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、その他の環構成原子は炭素原子である環である。例として、フラニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、インドリル、キノリル、イソキノリル等が挙げられる。
R1及びR2により形成される環は、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1又は複数の置換基により置換されていてもよい。それぞれの基の詳細は、R1及びR2の説明において記載されているとおりである。
一般式(I)の化合物において、R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである。それぞれの基の詳細は、R1及びR2の説明において記載されているとおりである。
本発明において好適に利用される化合物は、一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体である。
本発明においてより好適に利用される一般式(I)の化合物としては、R1~R3がいずれも水素である化合物(THGP);R1及びR2が、それらが結合している2個の炭素原子と共に5員の単環式飽和環を形成し、R3が水素である化合物(2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸);R1及びR2が、それらが結合している2個の炭素原子と共に6員の単環式飽和環を形成し、R3が水素である化合物(2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸);R1及びR2が、それらが結合している2個の炭素原子と共に8員の多環式飽和環、特にビシクロ[2.2.2]オクタンを形成し、R3が水素である化合物(例として3-(トリヒドロキシゲルミル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸)を挙げることができる。
本発明において、特に好ましい化合物は、THGP若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体である。
本発明は、一般式(I)の化合物の薬学的に許容される塩又はエステルの利用を包含する。かかる塩としては、慣用的な塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例としてナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例としてカルシウム塩及びマグネシウム塩)、アンモニウム塩、又は有機アミン(例としてエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、DIPEA、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、コリン(2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム)、プロカイン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N-メチルモルフォリン、N-メチルピペリジン、アルギニン、リジン及び1,2-エチレンジアミン)が挙げられる。
一般式(I)の化合物の薬学的に許容されるエステルは、一般式(I)のカルボン酸のインビボで加水分解可能なエステルである。かかるエステルとしては、例えばメチル、エチル、tert-ブチルエステル等のC1-4アルキルエステルが好ましい。
一般式(I)の化合物の重合体は、一般式(II)
Figure 2022038886000007
で表すことができる。一般式(II)におけるR1~R3は一般式(I)において説明したとおりであり、nは2以上の整数である。
重合体は、THGPからのGe-132の製造と同様に、水溶液に溶解した状態の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを乾燥させて、分子間で脱水縮合を生じさせる重合反応により得ることができる。重合体は、全ての構成単位が同一であっても異なってもよい。前者の重合体は一種類の、後者の重合体は複数種類の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを溶解した水溶液を乾燥させることにより得ることができる。重合反応は可逆的であることから、重合体を水等の水性媒体に溶解することで、重合体が加水分解され、一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルが得られる。
一般式(I)の化合物の重合体の例としては、Ge-132、特開昭57-102895号公報に記載される直鎖状のリニアポリマーである水溶性有機ゲルマニウム化合物Poly-[(2-carboxyethyl-hydroxygermanium)oxide]、及びMizunoら(J. Pharm. Sci., 2015, 104 (8), 2482-2488.)に記載されるラダー状構造(ゲルマニウムと酸素の8原子で構成される環状構造)を有する水溶性有機ゲルマニウム化合物Propagermanium(3-oxygermylpropionic acid polymer)を挙げることができる。
一般式(I)の化合物の重合体のさらなる例は、一般式(III)
Figure 2022038886000008
の化合物であり、式中、R4、R5及びR6は、互いに独立して水素又は低級アルキルであり、Xは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン又は第四級アンモニウムカチオンである。
一般式(III)におけるR4、R5及びR6は、互いに独立して水素又は低級アルキルである。低級アルキルとは、炭素数が1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個の直鎖又は分岐鎖状のアルキルをいう。好ましい実施形態において、R4、R5及びR6はいずれも水素である。
一般式(III)におけるXは、Na+、K+等のアルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は第四級アンモニウムカチオンである。第四級アンモニウムカチオンは、窒素にアルキル基及び/又はアリール基が4個結合したカチオンであり、本発明において好ましく用いられる第四級アンモニウムカチオンとしては、炭素数が1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個の直鎖又は分岐鎖状である4個のアルキル基が窒素に結合したカチオン、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等を挙げることができる。好ましい実施形態において、XはNa+である。
一般式(III)の化合物の好適な例としては、R4~R6がいずれも水素であり、XがNa+である、1, 7, 9, 15-tetra(2’-sodium carboxyethylgermanium)-3, 5, 11, 13-tetra-[sodium propanato(2-)-C3’, O’]-germanium-2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 17, 18, 19, 20-dodecaoxa-pentacyclo [8.11, 5. 17, 11. 19, 13. 13, 15.] icosane(以下、THGPオクタマーと表記する)を挙げることができる。
一般式(III)の化合物は、一般式(IV)の化合物(式中、R4~R6は一般式(III)の説明において記載されているとおりである)を、水及び水と混和可能な有機溶媒の混合溶媒中で結晶化させることによって製造することができる。
Figure 2022038886000009
一般式(IV)の化合物は、一般式(V)のアクリル酸誘導体とトリクロロゲルマンとを用いて、下のスキームで示されるように合成することができる。
Figure 2022038886000010
一般式(V)のアクリル酸誘導体とトリクロロゲルマンとのハイドロゲルミレーションは、例えば、濃塩酸、ジエチルエーテル又はクロロホルム等を溶媒として用いて25~40℃程度の温度で行うことができる。次いで、ハイドロゲルミレーションにより得られた化合物を、水の存在下で、典型的には水溶液中で、アルカリ金属の水酸化物又はアミンと反応させて加水分解及び中和することによって、一般式(IV)の化合物を調製することができる。
あるいは、Ge-132等の公知のTHGP重合体を、水の存在下でアルカリ金属の水酸化物又はアミンと反応させることによって、式中、R4~R6が水素である一般式(IV)の化合物を調製することもできる。
得られた一般式(IV)の化合物は、次いで、水及び水と混和可能な有機溶媒との混合溶媒中で結晶化される。混合溶媒中の水と有機溶媒との混合比は、1:3~1:20(v/v)であればよく、好ましくは1:3~1:5(v/v)である。用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール又は2-プロパノール等であり、特にエタノールが好ましい。
一般式(IV)の化合物の水溶液に、混合比率が上記の範囲になる量の上記有機溶媒を加えることにより、結晶化のための混合液が調製される。この混合液中の一般式(IV)の化合物の濃度は、2%~12%(w/v)であればよく、好ましくは8%~12%(w/v)である。
上記の混合液を十分に撹拌した後、室温下で12時間以上、好ましくは24時間以上静置することで、一般式(III)の化合物の結晶を析出させることができる。また、結晶化を促すため、一般式(III)の化合物の結晶を種晶として加えてもよい。得られた結晶は、例えば、ろ過、低級アルコール等の有機溶媒による洗浄及び減圧乾燥といった公知の手段によって、混合液から単離精製することができる。
マクロファージの極性化
マクロファージの極性化(polarization)は、マクロファージが局所的な環境要因に応じてその形態や機能を大きく変化させることを意味する。刺激を受けていないマクロファージは、通常、休止状態にあるが(M0マクロファージ)、外部刺激を受けることで、大別してM1型又はM2型(M2a、M2b、M2c及びM2dが存在する)の2つの異なるサブセットへと極性化する。
マクロファージのM1極性化は、IFN-γ単独で、又はIFN-γと他のサイトカイン(TNF-α、GM-CSF等)若しくはLPS等の細菌由来成分との協同作用によって誘導される。M1マクロファージは高い抗原提示能と貪食能を有し、加えてIL-12、IL-1、IL-6、TNF-α等の炎症性サイトカイン、一酸化窒素や活性酸素種等のエフェクター分子を産生する。これにより、M1マクロファージは病原体やがん細胞の排除を促進し、また損傷組織の除去を促進する機能を発揮する。
対照的に、マクロファージのM2極性化は、IL-4、IL-13、TLRアゴニスト、IL-1R、IL-10、TGF-β、グルココルチコイドといった種々の刺激によって誘導される。M2マクロファージは、IL-10等の抗炎症性サイトカインやTGF-βの産生を通じて組織修復を促進し、また免疫応答を抑制する機能を発揮する。TAMは、M2様の表現型を有しており、がん細胞の増殖や転移を促進し、血管新生を亢進し、また癌細胞の薬剤感受性を低下させることが知られている。
M1マクロファージ及びM2マクロファージは、それぞれを特徴づける公知の分子マーカーを指標として定義することができる。M1マクロファージの分子マーカーの例としては、CD80及びCD86等の細胞表面マーカー、TNF-α、IL-1β及びIL-6等のサイトカイン、一酸化窒素合成酵素iNOS(inducible nitric oxide synthase)を挙げることができる。またM2マクロファージの分子マーカーの例としては、CD206及びCD163等の細胞表面マーカー、TGF-β、IL-10等のサイトカイン、CXCL2等のケモカイン、オルニチン産生に関与するアルギニン分解酵素アルギナーゼを挙げることができる。
マクロファージの極性化とは、マクロファージの細胞集団において、特定のサブセットが優勢な状態になることをいう。極性化は、特定のサブセットが他のサブセットに対して優勢な状態であればよく、他のサブセットのマクロファージの細胞数減少や分子マーカー発現低下を必ずしも伴うものではない。
M1極性化剤
本発明のM1極性化剤(単に極性化剤ともいう)は、マクロファージをM1型に極性化することができる。上述のように、従来、M1極性化にはIFN-γが必要であると考えられていたが、本発明のM1極性化剤は、IFN-γが存在しない条件下であってもマクロファージのM1極性化を誘導することができる。
マクロファージのM1極性化は、マクロファージ原料細胞をM1極性化剤で処理すること(極性化処理)により行われる。マクロファージ原料細胞は、単球等のマクロファージ前駆細胞であってもよく、極性化されていないマクロファージ(M0マクロファージ)であってもよい。また、極性化したマクロファージは異なるサブタイプへと再極性化することも可能であることから、マクロファージ原料細胞は、M1型以外のサブセットに極性化されたマクロファージ、典型的にはM2マクロファージであってもよい。
M1極性化後のマクロファージが哺乳動物個体への投与を予定されている場合、マクロファージ原料細胞は、投与が予定されている個体と同一の個体由来であっても異なる個体由来であってもよく、すなわちマクロファージ原料細胞は自家であっても他家であってもよい。マクロファージ原料細胞は、好ましくは同一個体由来、すなわち自家である。マクロファージ原料細胞は、予め、哺乳動物個体の血液、骨髄、脾臓等から採取して調製することができる。
インビトロでの極性化処理は、50 μM~10 mMの一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する培地中で、マクロファージ原料細胞を7日間以上、培養することにより、行うことができる。極性化処理において使用される培地は、マクロファージ原料細胞を培養することができるかぎり制限はなく、例えば、DMEM、MEM、α-MEMおよびRPMI1640等を挙げることができる。培地は、ウシ胎児血清(FBS)等の添加剤を含んでもよいが、IFN-γ等のM1極性化誘導物質を含む必要はない。
培地中の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルの濃度は、50 μM~10 mMであればよく、例えば50 μM~5 mM、好ましくは500 μM~5 mMである。極性化剤として一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルの重合体を用いる場合は、培地に添加した際に培地中の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルの濃度が50 μM~10 mMとなる量を培地に添加すればよい。
極性化処理の培養時間は7日間以上であればよく、好ましくは10日間以上である。培養時間は長期であってもよく、後述の実施例に示すように、本発明者らは120日間培養した場合にもM1極性化が継続することを確認している。経済性を考慮すると、培養はM1極性化が確認された時点で終了すればよい。したがって、培養時間は、例えば7~120日間であり得る。培養時間は、7~90日間、7~45日間、7~40日間、7~30日間又は7~20日間であってもよい。好ましくは、培養時間は、10~120日間、10~90日間、10~45日間、10~40日間、10~30日間又は10~20日間である。
培養時間が10日間未満の場合、培地中の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルの濃度は、低濃度ではM1極性化の程度にばらつきが生じることがあるため、500 μM~10 mMであることが好ましい。
培地中に上記濃度の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルが含まれるかぎり、極性化処理の培養中に、培地交換や継代を行ってもよい。
培養温度やガス濃度は、個々のマクロファージ原料細胞に適したものであればよく、例えば培養は37℃、5% CO2下で行われ得る。
インビボでの極性化処理は、例えば、経口投与の場合で1日あたり5~500 mg/kg体重程度の量の一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を、2~30日間程度、対象に投与することにより、行うことができる。
極性化処理後のマクロファージのM1極性化は、マクロファージ細胞集団におけるM1マクロファージの数がM2マクロファージの数よりも多いことによって確認することができる。あるいは、M1極性化は、マクロファージ細胞集団全体におけるM1マクロファージ分子マーカーの発現上昇の程度がM2マクロファージ分子マーカーの発現上昇の程度よりも大きいことによって、例えばM1マクロファージ分子マーカーの発現が上昇しており、かつM2マクロファージ分子マーカーの発現が変動していない又は低下していることによって、確認することもできる。
後述の実施例に示されるように、本発明の極性化剤は、M1マクロファージを増加させ、M2マクロファージを減少させることができる。したがって本発明は、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含むM1マクロファージ誘導促進剤、及び一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含むM2マクロファージ誘導抑制剤をも別の態様として提供する。
マクロファージSIRPα発現抑制剤及びCD47-SIRPα免疫チェックポイント阻害剤
本発明は、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのSIRPα発現抑制剤を別の態様として提供する。
SIRPαは、マクロファージ等の骨髄系細胞や神経細胞の細胞膜上に高発現する受容体型の膜タンパク質であり、その生理的リガンドはCD47である。CD47は多くのがん細胞の細胞膜上で高発現しており、マクロファージ上のSIRPαと結合することで、マクロファージの食作用を抑制することが知られている。この細胞間シグナルCD47-SIRPα系は、自然免疫系の免疫チェックポイントとして注目されており、CD47-SIRPα免疫チェックポイントの阻害物質は新たながん分子標的薬として期待されている。
ヒトのSIRPαには2つのアイソフォームがあり、マウスのSIRPαには6つのアイソフォームがある。また、ヒトのCD47には3つのアイソフォームがあり、マウスのCD47には5つのアイソフォームがある。National Center for Biotechnology Information(NCBI)のReference Sequence Databaseに登録されている各アイソフォームのアミノ酸配列及びこれをコードするcDNAの塩基配列の情報を表1に示す。
Figure 2022038886000011
本発明のSIRPα発現抑制剤は、マクロファージにおけるSIRPαの発現を抑制することができ、SIRPαの発現が低減されたマクロファージを製造することができる。SIRPαの発現抑制は、50 μM~10 mMの一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含む培地中で、マクロファージ原料細胞を7日間以上、培養することにより行うことができる。マクロファージ原料細胞、培地中の一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルの濃度、培養時間その他の培養条件は、極性化処理において述べたとおりである。
SIRPαの発現抑制は、遺伝子レベルで確認しても、タンパク質レベルで確認してもよい。遺伝子レベルでの発現抑制は、SIRPαをコードする遺伝子の塩基配列情報を利用したハイブリダイゼーション、定量的PCR、RNAシーケンシングその他の特定の遺伝子発現を検出又は定量することのできる一般的な方法により、確認することができる。タンパク質レベルでの発現抑制は、特異抗体を用いた、ELISA、RIA、インサイツハイブリダイゼーション、ウエスタンブロット解析その他の特定のタンパク質発現を検出又は定量することのできる一般的な方法により、確認することができる。
SIRPαの発現が低減されたマクロファージは、がん細胞上のCD47との結合が抑制されることから、CD47-SIRPα免疫チェックポイントを回避することができるものと期待される。したがって、本発明は、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、CD47-SIRPα免疫チェックポイント阻害剤を別の態様として提供する。
CD47-SIRPα免疫チェックポイントの阻害は、CD47-SIRPα間の結合を検出することができるELISAや、CD47が結合したSIRPαからのシグナル伝達を検出することができるセルベースのレポーターアッセイその他の特定のタンパク質間の結合やシグナル伝達を検出又は定量することのできる一般的な方法により、確認することができる。
組成物
上述のとおり、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体によりもたらされるM1極性化マクロファージは、高い貪食能を有し、またSIRPαの発現抑制を介してCD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害することができる。本発明者らは、このM1極性化マクロファージは、その分泌物を介してがん細胞の上皮間葉転換を阻害することができ、またがん細胞上のCD47の発現を抑制し得ることをさらに見出した。
上皮間葉転換は上皮系の細胞が上皮としての形質を失い、間葉系の形質を獲得する現象であり、創傷治癒とそれに伴う組織の線維化に加えて、がんの浸潤や転移にも関与する。がん細胞は上皮間葉転換によって高い転移能、浸潤性、腫瘍形成能のほか、ストレス耐性などを獲得することから、がん細胞の上皮間葉転換の阻害は、がんの転移を抑制し、また薬剤抵抗性を改善することができる。
また、がん細胞上のCD47の発現抑制は、マクロファージ上のSIRPαの発現抑制と相まって、CD47-SIRPα免疫チェックポイントを強力に阻害するものと考えられる。
したがって、一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを体内で長時間マクロファージ原料細胞と共存させることで、体内でマクロファージのM1極性化及びSIRPαの発現抑制が誘導され、さらに誘導されたM1マクロファージによりがん細胞の上皮間葉転換が阻害され、またCD47の発現が抑制されることから、がんを処置することができると考えられる。
なお、THGPの重合体であるGe-132の抗腫瘍作用は公知であるが、その機序は、NK細胞の活性化によって誘導されるIFN-γの分泌増加、及びこれに伴うM1マクロファージの誘導であるとされている。IFN-γが十分に産生されない患者や、IFN-γ刺激によるマクロファージのM1極性化が起こりにくいIFN-γ刺激への応答性の低い患者では、Ge-132は抗腫瘍作用を十分に発揮できないと考えられていた。
しかしながら、本発明によると、THGPを長時間マクロファージ原料細胞と接触させることにより、IFN-γの非存在下であっても、マクロファージのM1極性化を誘導することができる。このことは、従来はTHGPの抗腫瘍作用が発揮されないと考えられていたがん患者においても、THGPが奏功し得ることを意味する。
このように、本発明は、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのM1極性化を誘導し得る量のIFN-γが存在しない対象又はIFN-γによりマクロファージのM1極性化が誘導されない対象において疾患又は状態の処置に用いるための組成物を提供する。
また、一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをインビトロで長時間マクロファージ原料細胞と共存させることで調製されるM1極性化マクロファージも、対象への投与により同様の効果を発揮することが期待される。したがって、本発明はまた、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体によって調製されるM1極性化マクロファージを含有する、疾患又は状態の処置に用いるための組成物を提供する。
加えて、M1極性化マクロファージの培養上清にはマクロファージが産生する様々な液性因子が含まれており、これらも疾患又は状態の処置において有効であると考えられる。したがって、本発明においては、一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをインビトロで長時間マクロファージ原料細胞と共存させることで調製されるM1極性化マクロファージの培養上清を含有する組成物もまた、疾患又は症状の処置のための組成物として利用することができる。培養上清は、極性化処理の培養時の培養上清であっても、M1極性化マクロファージを新たに培養して得られる培養上清であってもよい。
上記の一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する組成物、M1極性化マクロファージを含有する組成物、及びM1極性化マクロファージの培養上清を含有する組成物は、好ましくはがん患者に対して用いられるがん処置用の組成物、特にがん処置用の医薬組成物である。がん処置用の組成物は、マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進させるために、がん細胞の上皮間葉転換を抑制するために、及びCD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するために用いることができる。
また、上記の組成物は、がん以外の、M1マクロファージにより改善又は予防が期待される様々な疾患又は状態の処置において、例えば感染症及び外傷等の処置において、さらには慢性炎症が関与する疾患又は状態、例として慢性炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳卒中等)、神経変性疾患(アルツハイマー病)、メタボリックシンドローム・生活習慣病(肥満、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、非アルコール性脂肪性肝炎等)、排尿障害等)の処置において用いることもできる。
上記の組成物は、疾患又は状態の処置が必要とされる対象、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に適用される。好ましい対象は、ヒトである。
本明細書において用いられる疾患又は状態の処置とは、疾患又は状態の治癒、一時的寛解、改善、予防等を目的とする医薬、医薬部外品、飲食品又は化粧品の適用の際に許容される全てのタイプの介入を包含し、例えば、疾患又は状態の進行の遅延又は停止、病変の退縮又は消失、発症の予防又は再発の防止等を含む。
上記の組成物は、有効量の一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を、あるいは有効量のM1極性化マクロファージを、あるいは有効量のM1極性化マクロファージ培養上清を含有する。ここで「有効量」とは、疾患又は状態の処置に有効な量を意味し、用法、対象の年齢、疾患又は状態の性質、その他の条件等に応じて当業者により適宜決定される。
好ましい実施形態において、一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体の有効量は、例えば経口投与の場合で投与される対象の体重1 kgあたり10μg~300mg、好ましくは500μg~200mg、より好ましくは1mg~100mgであり、培養上清の有効量は、例えば静脈内投与の場合で投与される対象の体重1 kgあたり0.001 mg~100 mg、好ましくは0.002 mg~50 mg、より好ましくは0.005 mg~20 mgである。また好ましい実施形態において、M1極性化マクロファージの有効量は、静脈内投与の場合で投与される対象の体重1 kgあたりM1マクロファージ換算で1×104細胞~1×109細胞、好ましくは1×105細胞~1×108細胞である。これらの有効量は、1回又は複数回に分けて投与することができる。
上記の組成物は、薬学的に許容される担体、緩衝剤、安定剤、保存剤、賦形剤その他の成分を含有することができ、医薬組成物、医薬部外品組成物、飲食品組成物又は化粧品組成物として利用することができる。これらの組成物において許容される成分は組成物の目的ごとに当業者において周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で、例えば医薬組成物の場合には第十七改正日本薬局方その他の規格書に記載された成分から適宜選択して使用することができる。
上記の組成物は、その目的に応じて付加的な手段と組み合わせて用いることができる。例えば組成物が疾患又は状態の処置のための医薬として用いられる場合は、当該疾患又は状態の処置のために有効な他の手段と組み合わせて用いることができる。組成物ががんの処置のための医薬として用いられる場合、化学療法、放射線療法、外科手術又は免疫療法との組み合わせが可能である。
一般式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する組成物の剤形は任意であるが、例えば、経口剤(錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤等)、注射剤、外用剤(スプレー剤、外用液剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤等)等を挙げることができる。組成物の投与経路は特に限定されず、剤形に応じて適宜決定される。好ましい実施形態の一つにおいて、組成物は、経口、静脈内、腹腔内又は経皮的に投与することができる。
また、M1極性化マクロファージを含有する組成物、及びM1極性化マクロファージの培養上清を含有する組成物の剤形も任意であるが、注射剤等の非経口製剤であることが好ましい。これらの組成物は、例えば、静脈内、腹腔内又は患部に対して局所的に投与することができる。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
材料および方法
・細胞培養
マウスマクロファージ由来培養細胞株RAW 264.7及びマウスメラノーマ由来培養細胞株B16 4A5はRiken cell bankから供与された。細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(日水製薬株式会社)を用いて、37℃ 5% CO2下で培養した。細胞がサブコンフルエントに達したら、スクレーパー又は0.25% trypsin /1mM EDTAで剥離し、3~4日おきに1:4~1:8の割合で播種した。
・THGP処理
RAW 264.7細胞のTHGP処理は、50、500又は5000 μMのTHGPを含有する10 % FBS DMEMで3日間ごとに継代しながら培養することによって行った。継代の際のRaw 264.7細胞の播種量は、10 cm dishの場合は1×106 cells、6-well plateの場合は5.0×105 cells / wellであった。
・Conditional mediumの調製
500 μMのTHGPを含有する10 % FBS DMEMで10日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞及びTHGPを含有しない10 % FBS DMEMで10日間以上120日間以内培養したRAW 264.7細胞のそれぞれを10 cm dishに1×106 cells播種し、10 % FBS DMEMで3日間培養した。培養上清を回収し、使用するまで-30℃に保存した。使用時に培養上清を10 % FBS DMEMと1:1の割合で混合し、conditional mediumとした。
・MTSアッセイ
MTSアッセイは、CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay kit(Promega)を用いて、490nmでの吸光度を測定することにより行った。
・免疫蛍光染色
4 %パラホルムアルデヒド in PBS(和光純薬)で細胞を固定し、0.2 % Triton X-100を用いて室温で10分間の透過処理を行い、次いで1.5% BSAを用いて室温で30分間ブロッキングした。一次抗体反応は4℃で一晩、二次抗体反応は室温で1時間行った。一次抗体として、抗B7-2(CD86)抗体(sc-28347)(Santa Cruz)及び抗Mannose Receptor(CD206)抗体(ab64693)(Abcam)、抗N-Cadherin抗体(Cell signaling)を用いた。また、二次抗体にはGoat Anti-Mouse IgG H&L (TexasRED)又はGoat Anti-Rabbit IgG H&L (FITC) (Abcam)を用いた。抗体は、メーカーの推奨濃度に従って、ブロッキングバッファーで希釈して用いた。核はDAPI(同仁化学)で染色した。蛍光顕微鏡Nikon Eclipse TS100、Nikon DS-Fi3(Nikon)を用いて蛍光観察を行い、画像解析ソフトウェアNIS-element(Nikon)によって解析した。
・リアルタイムRT-PCR
Isogen(ニッポンジーン)を用いて細胞からRNAを抽出した。抽出されたRNA 1 μgをtemplateとして、super script III(Invitrogen)を用いて50℃ 1h、95℃ 5 minで逆転写反応を行った。TB Green Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ)を用いて、95℃ 5 sec、60℃ 30 sec、40 cycleでPCR反応を行った。PCR反応に用いたプライマーを表2に示す。Internal controlとしてRPS18を用いて補正した。なお、CD47増幅用プライマーセット及びSIRPα増幅用プライマーセットは、それぞれCD47及びSIRPαの全アイソフォーム共通の配列を増幅するように設計した。
Figure 2022038886000012
・ウェスタンブロット
RIPA bufferを用いて細胞からタンパク質を抽出した。タンパク質はBradford法(Bio-Rad)によって定量した。7 μg(RAW 264.7細胞の場合)又は10 μg(B16 4A5細胞の場合)のタンパク質を用いてSDS-PAGEを行った。PVDF膜にトランスファー後、5 % スキムミルク in TBS-T(森永乳業)を用いてブロッキングを行った。一次抗体反応は4℃で一晩、二次抗体反応は室温で1時間行った。一次抗体として、抗B7-2(CD86)抗体(sc-28347)(Santa Cruz)、抗Mannose Receptor(CD206)抗体(ab64693)(Abcam)、抗N-Cadherin抗体(Cell signaling)、抗β- actin抗体(Abcam)を用いた。また、二次抗体にはGoat Anti-Mouse IgG H&L (HRP) (ab6789)、Goat Anti-Rabbit IgG H&L (HRP) (ab205718)、Donkey Anti-Goat IgG H&L (HRP) (ab205723) (Abcam)を用いた。抗体は、メーカーの推奨濃度に従って、ブロッキングバッファーで希釈して用いた。画像解析ソフトウェアImage-Lab(BioRad)を用いて各バンドを定量し、β-actinで補正した。
・ラテックスビーズの貪食
貪食能の評価は、phagocytosis assay kit(Cayman Chemical Company)を用いて行った。ウサギIgG FITC‐ラテックスビーズを1:200で希釈し、RAW 264.7細胞に1時間貪食させた。核はHoechst 33452(同仁化学)によって染色し、蛍光顕微鏡で観察を行った。撮影した画像をNIS-element(Nikon)によって解析し、FITCが発する蛍光の強度を貪食能の指標とした。
・がん細胞の貪食(蛍光染色)
Cell tracker Green CMFDA Dye(Thermo fisher)で染色したRaw 264.7細胞を、カバーグラスを入れた6-well plateに2×106 cells/well播種し、10 % FBS DMEMで24時間培養した。次いで、Cell tracker Blue CMAC Dye(Thermo fisher)で染色したB16 4A5細胞を、RAW 264.7培養細胞上に2×106 cells/well播種した。37℃で2時間インキュベートした後、細胞を4 %パラホルムアルデヒド in PBS(和光純薬)で固定し、蛍光顕微鏡で観察を行い、撮影した画像をNIS-element(Nikon)によって解析した。青色と緑色で共染色された細胞を、B16 4A5細胞を貪食したRAW 264.7細胞とした。
・がん細胞に対する細胞傷害(MTSアッセイ)
RAW 264.7細胞及びB16 4A5細胞を96-well plateにそれぞれ5×103 cells/well、2.5×103 cells/well播種し、10 % FBS DMEMで48時間共培養した。また、同細胞数のRaw 264.7細胞とB16 4A5細胞のそれぞれを単独で同様に培養した。MTSアッセイによって細胞数を評価した。RAW 264.7細胞により傷害されたB16 4A5細胞の割合は、RAW 264.7細胞及びB16 4A5細胞のそれぞれを単独培養した場合の吸光度の合計から共培養した場合の吸光度を減じた値を、B16 4A5細胞を単独培養した場合の吸光度で除することで算出した。
・ELISA
培養上清中のTGF-βの量は、LEGEND MAX Mouse Latent TGF-β ELISA Kit(BioLegend)を用いて測定した。
・遊走アッセイ
B16 4A5細胞を24-well plateに3.0×105 cells / well播種し、10 % FBS DMEMで24時間培養した。1000 μl ブルーチップを用いて細胞を掻きとった後、PBS (-)で2回洗浄し、試験培地を添加した。添加後0時間、48時間時点での細胞写真を撮影し、画像解析ソフトウェアImage J/Fiji (NIH)を用いて解析した。細胞を掻きとられた部分の面積に対する48時間後に当該部分に存在した細胞の面積を算出して、遊走能の評価指標とした。
・MMP-2及びMMP-9活性
ゼラチンを含む10 %アクリルアミドゲルに培養上清30 μlをアプライし、SDS-PAGEを行った。泳動後のゲルを用いて、Gelatin zymography法によってMMP-2及びMMP-9の活性を評価した。ゲル上のMMP-2及びMMP-9によるゼラチン分解の程度を、対応するバンドの染色強度をImage J/Fijiを用いて画像解析することによって測定し、MMP-2及びMMP-9の活性とした。
・細胞接着性
B16 4A5 細胞を試験培地で72時間培養後、細胞を回収した。回収した細胞を、type I Collagen(和光純薬)をコートした96-well plateに5.0×104 cells / well 播種した。一時間後、wellをPBS (-)で2回洗浄することで接着していない細胞を除去し、MTSアッセイによって接着した細胞数を評価した。
・侵襲性
type I collagenをコートした8 μm pore size PET inserts(BD falcon)を用いたboyden chamber法によって、B16 4A5細胞の侵襲能を評価した。RAW 264.7細胞をCell tracker Green CMFDA Dye(Thermo fisher)で、B16 4A5細胞をCell tracker Blue CMAC Dye(Thermo fisher)で染色し、RAW 264.7細胞1×105 cells、B16 4A5細胞5×104 cellsをboyden chamberの上層に播種した。上層は無血清培地、下層は10 % FBS DMEMで24時間培養した。侵襲せず残った細胞を綿棒によって掻きとった後、4 %パラホルムアルデヒド in PBS(和光純薬)で細胞を固定し、蛍光顕微鏡で観察を行った。青色で染色された細胞をB16 4A5細胞として、一視野に見える細胞数をカウントした。
・統計解析
特に記載がないかぎり、データはn=6で取得し、平均値±標準偏差で示した。平均値間の有意差検定には統計ソフト Excel統計を用いて、2群間の場合はStudentのt検定によって、多群間の場合はDunnett検定によって群間の有意差を検証した。p値0.05未満を群間の有意差(*P <0.05、** P<0.01)とした。
実施例1 THGPによるマクロファージのM1極性化
THGP 500μMを含有する培地でRAW 264.7細胞を最大120日間培養し、THGP処理を行った。対照として、THGP非含有培地での培養も並行して行った。RAW264.7細胞の形態は、THGP処理によって紡錘状の形態へと経時的に変化した(図1a、Day 120の細胞は図に示されないがDay 90の細胞と同様の形態変化を示した)。10日間のTHGP処理後、全細胞に占める紡錘状細胞の割合は、対照培地における割合と比較して約2倍に増加した(図1b、図1c)。紡錘状形態はM1マクロファージの細胞形態であることから、THGP処理によってRAW 264.7細胞がM1マクロファージに分化したことが示唆された。
THGP処理1日目、10日目、30日目及び40日目の細胞を継代し、継代当日、1日後、2日後の細胞をMTSアッセイに供して、細胞増殖率を測定した。10日間以上のTHGP処理により細胞増殖率の低下が認められ、THGP処理の期間が長いほど増殖率は低下した(図1d)。M1マクロファージは増殖が遅いことが報告されており、この増殖率の低下からも、THGP処理によってRAW 264.7細胞がM1マクロファージに分化したことが示唆された。
20日間以上120日間以内のTHGP処理後の細胞について、M1マクロファージのマーカーであるCD86、及びM2マクロファージのマーカーであるCD206の発現を免疫蛍光染色により検出した。THGP処理により、全細胞に占めるCD206陽性細胞の割合が低下し、あわせて、M1/M2比が増加した(図1e、図1f)。このことから、THGP処理によってマクロファージがM1極性化されたことが示された。
さらに、20日間のTHGP処理後の細胞について、M1マクロファージのマーカー(iNOS、CD80、CD86、TNF-α、IL-1β)及びM2マクロファージのマーカー(アルギナーゼ、CD206、CD163、TGF-β、CXCL2)の遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRにより測定した。THGP処理により、M1マクロファージマーカーの遺伝子発現量の増加、及びM2マクロファージマーカーの遺伝子発現量の減少が認められ(図2a、図2b)、THGP処理によるマクロファージのM1極性化が確認された。また、20日間以上120日間以内のTHGP処理後の細胞におけるCD86及びCD206のタンパク質発現も、遺伝子発現と同様の傾向を示した(図2c~図2e)。
実施例2 THGP濃度がマクロファージM1極性化に及ぼす影響
THGP 50、500又は5000 μMを含有する培地でRAW 264.7細胞を4、7又は10日間培養し、THGP処理を行った。対照として、THGP非含有培地での培養も並行して行った。培養後の細胞におけるM1マクロファージマーカーiNOSの遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCRにより測定した。結果を図3に示す。THGP濃度が50 μMの場合、THGP処理細胞のiNOS発現量はいずれの時点でも対照細胞の発現量を上回った。4日目及び7日目のTHGP処理細胞の発現量は大きくばらついていたが、そのばらつきは10日目には小さくなった。THGP濃度が500又は5000 μMの場合、4日目のTHGP処理細胞のiNOS発現量は対照とほぼ同程度であったが、7日目及び10日目の発現量は対照を上回り、用量依存的な増加を示した。このことから、THGP濃度50 μM以上でM1マクロファージの誘導は可能であるが、ばらつきを抑えるには10日間以上処理することが好ましいことが示された。
実施例3 THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージによるがん細胞の傷害
THGP 50、500又は5000 μMを含有する培地でRAW 264.7細胞を10日間培養し、THGP処理を行った。対照として、THGP非含有培地での培養も並行して行った。培養後の細胞にウサギIgG FITC‐ラテックスビーズを加え、異物に対する貪食能を評価した。THGP処理された細胞は、いずれのTHGP濃度であっても貪食能の亢進を示し、亢進の程度は用量依存的であった(図4a、図4b)。
また、THGP 500 μM含有培地でRAW 264.7細胞を20日間以上120日間以内培養し、RAW Tとした。対照として、THGP非含有培地でRAW 264.7細胞を20日間以上120日間以内培養し、RAW Cとした。これらの細胞をCMFDAで染色し、それぞれをCMACで染色したB16 4A5細胞と共培養することで、がん細胞に対する貪食能を評価した。比較のため、500 μMのTHGP存在下でRAW CとB16 4A5細胞とを共培養した群(RAW C+THGP)を設けた。
結果を図4c及び図4dに示す。RAW Cとの共培養ではB16 4A5細胞はほとんど貪食されなかった。THGP存在下でのRAW Cとの共培養では10%程度のB16 4A5細胞が貪食された。これに対し、RAW Tとの共培養では、60%超のB16 4A5細胞が貪食され、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージは高い貪食能を有することが確認された。
THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージのB16 4A5細胞に対する細胞傷害能を共培養下でのMTSアッセイによって評価したところ、図4dに示す蛍光染色結果と同傾向の結果が得られた(図5a)。より詳細な機序解明のため、6-well plateに5×105 cells/well播種して24時間培養したB16 4A5 細胞を、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium、THGP 500 μM含有培地、又はTHGP非含有培地を用いてさらに48時間培養し、細胞増殖をMTSアッセイによって評価した。RAW C及びRAW Tいずれの培養上清もB16 4A5細胞の増殖を抑制したが、両者に差は認められなかった(図5b)ことから、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージのB16 4A5細胞に対する高い細胞傷害能は、その分泌する細胞傷害性サイトカインを介してではなく直接的な貪食によるものであることが示された。また、THGP含有培地で培養したB16 4A5細胞は、THGP非含有培地で培養したB16 4A5細胞と同程度の細胞増殖を示した(図5b、図5c)ことから、THGP自体はB16 4A5細胞の増殖に影響を与えないことが示された。
さらに、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージのB16 4A5細胞に対する細胞傷害能を、共培養の際に5-FUを1.25μMとなるように培地に加えたこと以外は図5aに結果を示した試験と同様にして、MTSアッセイにより評価した。5‐FU存在下でのRAW Cとの共培養は、5-FU存在下での単独培養よりもB16 4A5細胞の生存率を減少させ、さらに5‐FU存在下でのRAW Tとの共培養は5‐FU存在下でのRAW Cとの共培養よりもB16 4A5細胞の生存率を減少させた(図5d)。より詳細な機序解明のため、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium又は対照のTHGP非含有培地に5-FUを1.25μMとなるように加え、これらの培地を用いてB16 4A5細胞を48時間培養し、細胞数をMTSアッセイによって評価した。RAW Cの培養上清は5‐FU存在下でのB16 4A5細胞の生存率を上昇させたが、RAW Tの培養上清にはそのような効果は認められなかった(図5e)。このことから、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージは、THGP非処理のマクロファージで見られたような液性因子を介した薬剤耐性をがん細胞に付与することなく、抗がん剤との併用によって効果的にがん細胞を傷害することが示唆された。
実施例4 THGPによる、及びTHGP処理により調製されたM1極性化マクロファージによるCD47-SIRPα免疫チェックポイント分子の発現抑制
B16 4A5細胞との共培養において、RAW Tは、RAW CよりもB16 4A5細胞周辺に多く集積することが観察されており(図6a)、RAW CよりもB16 4A5細胞に対する認識能が高いことが示唆された。マクロファージががん細胞を認識する機構の一つであるCD47-SIRPαに着目し、RAW C及びRAW TにおけるSIRP-α遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRにより測定したところ、RAW TにおいてSIRP-αの遺伝子発現が抑制されることが示された(図6b)。
また、6-well plateに5×105 cells/well播種して24時間培養したB16 4A5 細胞を、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium又はTHGP非含有培地を用いてさらに48時間培養した。培養後のB16 4A5細胞のCD47遺伝子発現をリアルタイムPCRにより測定したところ、RAW Cの培養上清はB16 4A5細胞のCD47遺伝子発現量を増加させたが、RAW Tの培養上清にはそのような効果は認められなかった(図6c)。このことから、THGPはマクロファージにおけるSIRPα遺伝子発現を抑制すること、及びマクロファージが分泌する液性因子を介してがん細胞のCD47遺伝子発現を抑制することが示された。
実施例5 THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージによるがん細胞の上皮間葉転換抑制
図2bに示すように、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージにおいてTGF-βの遺伝子発現は抑制された。TGF-βのタンパク質レベルでの発現を調べるため、RAW C及びRAW Tをそれぞれ96-well plateに5.0×104 cells /well播種して48時間培養した。回収した培養上清中のTGF-βの量は、遺伝子発現と同様、抑制されていた(図7a)。
次いで、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージが上皮間葉転換に及ぼす作用を評価した。6-well plateに5×105 cells/well播種して24時間培養したB16 4A5 細胞を、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium、THGP 500 μM含有培地又はTHGP非含有培地を用いてさらに48時間培養した。培養後のB16 4A5細胞における間葉系細胞のマーカーであるN-cadherin及びVimentinの遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRにより測定した。
RAW Cの培養上清はB16 4A5細胞のN-cadherin及びVimentin遺伝子発現量を上昇させたが、RAW Tの培養上清にはそのような効果は認められなかった(図7b、図7c)。N-cadherinは、タンパク質レベルでも同様の傾向を示した(図7d、図7e)。このことから、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージは、THGP非処理のマクロファージのように液性因子を介してがん細胞の上皮間葉転換を誘導しないことが示された。THGP処理によってマクロファージがM1に極性化し、これにより上皮間葉転換誘導の主要な因子であるTGF-βの産生が抑制されてがん細胞に対する上皮間葉転換誘導が抑制されたものと推測された。
実施例6 THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージによるがん細胞の転移能抑制
RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium、THGP 500 μM含有培地又はTHGP非含有培地を試験培地として用いて、B16 4A5 細胞の遊走アッセイを行った。RAW Cの培養上清はB16 4A5細胞の遊走能を亢進したが、RAW Tの培養上清にはそのような効果は認められなかった(図8a、図8b)。
また、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional medium、THGP 500 μM含有培地、又はTHGP非含有培地を無血清で試験培地として用いて、B16 4A5 細胞のMMP-2及びMMP-9活性を評価した。RAW Cの培養上清はB16 4A5細胞のMMP-2及びMMP-9活性を亢進したが、RAW Tの培養上清にはそのような効果は認められなかった(図8c)。
次いで、RAW C及びRAW Tそれぞれの培養上清から調製したconditional mediumを試験培地として用いて、B16 4A5 細胞の接着性を評価した。RAW Tの培養上清は、RAW CよりもB16 4A5細胞の接着性を低下させた(図8d)。さらに、boyden chamberを用いたRAW C又はRAW TとB16 4A5 細胞との共培養により、B16 4A5 細胞の侵襲性を評価した。RAW Tは、RAW Cと比較して、B16 4A5細胞の侵襲性を抑制した(図8e)。
これらの結果から、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージは、THGP非処理のマクロファージのように液性因子を介してがん細胞の転移能を亢進しないことが示された。THGP処理によってマクロファージがM1に極性化し、がん細胞に対する上皮間葉転換誘導が抑制され、これに伴ってがん細胞の転移亢進が抑制されたものと推測された。
比較例 がん細胞の上皮間葉転換及び転移能に対するTHGPの直接的な作用の確認
6-well plateにB16 4A5細胞を5×105 cells/well播種し、recombinant mouse TGF-β 10 ng / ml(Biolegend)を含むTHGP非含有培地又は同濃度のTGF-βを含むTHGP 500 μM含有培地で1週間培養することによって、B16 4A5 細胞をTGF-β単独又はTGF-β+THGPの組み合わせで処理した。TGF-β単独処理は間葉系形態の細胞を増加させ(図9a)、また間葉系細胞マーカーN-cadherinのタンパク質発現を亢進することがB16 4A5 細胞の免疫染色及びウェスタンブロット解析により確認された(図9b、図9c)。TGF-β+THGPの組み合わせ処理においても、TGF-β単独処理と同様の効果が確認された。さらに、boyden chamberを用いたB16 4A5 細胞の侵襲性評価においても、TGF-β単独処理とTGF-β+THGP組み合わせ処理の差は認められなかった。このことから、THGPは、直接的にではなく、THGP処理により調製されたM1極性化マクロファージを介してがん細胞に作用して、がん細胞の上皮間葉転換及び転移能を抑制するものと考えられた。
配列番号1 iNOS増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号2 iNOS増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号3 CD80増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号4 CD80増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号5 CD86増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号6 CD86増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号7 TNF-α増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号8 TNF-α増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号9 Arginase増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号10 Arginase増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号11 CD163増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号12 CD163増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号13 CD206増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号14 CD206増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号15 CD47増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号16 CD47増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号17 SIRPA増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号18 SIRPA増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号19 IL-1β増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号20 IL-1β増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号21 TGF-β増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号22 TGF-β増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号23 CXCL2増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号24 CXCL2増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号25 N-cadherin増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号26 N-cadherin増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号27 Vimentin増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号28 Vimentin増幅用リバースプライマーの塩基配列
配列番号29 RPS18増幅用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号30 RPS18増幅用リバースプライマーの塩基配列

Claims (25)

  1. 一般式(I)
    Figure 2022038886000013
    の化合物であって、
    式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
    これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
    R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
    前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのM1極性化剤。
  2. 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項1に記載の極性化剤。
  3. 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項1又は2に記載の極性化剤。
  4. 一般式(I)
    Figure 2022038886000014
    の化合物であって、
    式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
    これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
    R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
    前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのSIRPα発現抑制剤。
  5. 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項4に記載の発現抑制剤。
  6. 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項4又は5に記載の発現抑制剤。
  7. CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するために用いられる、請求項4~6のいずれか一項に記載の発現抑制剤。
  8. 一般式(I)
    Figure 2022038886000015
    の化合物であって、
    式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
    これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
    R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
    前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、マクロファージのM1極性化を誘導し得る量のIFN-γが存在しない対象又はIFN-γによりマクロファージのM1極性化が誘導されない対象において疾患又は状態の処置に用いるための組成物。
  9. 一般式(I)において、R1、R2及びR3が、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項8に記載の組成物。
  10. 一般式(I)において、R1、R2及びR3がいずれも水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を含有する、請求項8又は9に記載の組成物。
  11. がん処置用の医薬組成物である、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進するための、請求項8~11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. がん細胞の上皮間葉転換を抑制するための、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するための、請求項8~13のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 50 μM~10 mMの一般式(I)
    Figure 2022038886000016
    の化合物であって、
    式中、R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
    これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
    R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
    前記化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する培地中でマクロファージ原料細胞を7日間以上培養することを含む、M1極性化されたマクロファージを製造する方法。
  16. 培地が、一般式(I)においてR1、R2及びR3が互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、請求項15に記載の方法。
  17. 培地が、一般式(I)においてR1、R2及びR3がいずれも水素である化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、請求項15又は16に記載の方法。
  18. マクロファージ原料細胞が、マクロファージ前駆細胞、極性化されていないマクロファージ又はM1型以外のサブセットに極性化されたマクロファージである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 培地が500 μM~5 mMの一般式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルを含有する、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 培養が10日間以上行われる、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 請求項15~20のいずれか一項の方法により製造されるM1極性化されたマクロファージ又はその培養上清を含有する、疾患又は状態の処置に用いるための組成物。
  22. がん処置用の医薬組成物である、請求項21に記載の組成物。
  23. マクロファージによるがん細胞の貪食を亢進するための、請求項21又は22に記載の組成物。
  24. がん細胞の上皮間葉転換を抑制するための、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
  25. CD47-SIRPα免疫チェックポイントを阻害するための、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。

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