JP2022036906A - ガス検出材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】目的とするガスを高感度で検出することが可能なガス検出材料を提供する。【解決手段】細孔を有する多孔質ガラス、並びに、前記細孔内に担持されたアルカリ性窒素化合物及びガス検知剤、を備えることを特徴とするガス検出材料。【選択図】図1
Description
本発明は、肺がんセンサー等に使用されるガス検出材料に関する。
肺がんは、死亡率が最も高いがんのひとつである。それは現状の主な検査方法である胸部エックス線撮影では、肺がんの早期発見が困難なことによるものである。そこで、呼気から肺がん患者に特異的に増加する成分を分析することにより、肺がんを早期診断する方法が検討されている。
例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)を用いて、肺がん患者の呼気を分析した結果、健常者と比較し、ノナナール等のアルデヒド系ガスが高濃度で含まれているといった結果が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、GC-MSは大がかりで非常に高価であり、分析に長時間を要するという問題がある。
そこで、小型かつ安価でアルデヒド系ガスを検出することが可能なガス検出材料として、多孔質ガラスの細孔内に、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物、及びガス検知剤としてバニリンを担持させてなるガス検出材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
半田、宮澤、肺がんの呼気分析による診断、医学のあゆみ、Vol.240、No.11、933-935(2012)
特許文献1に開示されたガス検出材料は、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物が空気中の二酸化炭素と反応し、多孔質ガラスの細孔内で炭酸ナトリウム等の粗大析出物を生成する場合がある。そのため、透過率が低下、即ち吸光度が増大し、ガス検出感度が低下するおそれがある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、目的とするガスを高感度で検出することが可能なガス検出材料を提供することを技術課題とする。
本発明のガス検出材料は、細孔を有する多孔質ガラス、並びに、細孔内に担持されたアルカリ性窒素化合物及びガス検知剤、を備えることを特徴とする。
多孔質ガラスの細孔内に担持されたガス検知剤が、触媒であるアルカリ性窒素化合物存在下にてアルデヒド系ガスと反応すると、ガス検知剤の特定波長での吸光度が変化する。この吸光度の変化を測定することにより、ガスを検出することができる。なお、アルカリ性窒素化合物は、水酸化ナトリウム等と比較して炭酸化しにくく、炭酸塩の粗大析出物による吸光度の増大が生じにくいため、ガス検知剤の吸光度の変化を高感度で検出することが可能となる。
本発明のガス検出材料は、アルカリ性窒素化合物は、アザン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及び水酸化第四級アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明のガス検出材料は、ガス検知剤は、バニリン及び/またはバニリン誘導体であることが好ましい。
本発明のガス検出材料は、アルデヒド系ガス検出用であることが好ましい。
本発明によれば、目的とするガスを高感度で検出することが可能なガス検出材料を提供することができる。
本発明のガス検出材料は、多孔質ガラス、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤、を備える。アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤は、多孔質ガラスが有する細孔内に担持されている。
以下に構成要素ごとに説明する。
(多孔質ガラス)
本発明のガス検出材料において、多孔質ガラス(多孔質ガラス部材)は、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤を担持させるための担体としての役割を有する部材である。本発明のガス検出材料は、ガス検知剤の特定波長での吸光度の変化を測定することにより、アルデヒド系ガスを検出するため、低い吸光度、すなわち高い光透過率が要求される。多孔質ガラスは、多孔質高分子材料、多孔質セラミック、シリカゲル等の他の多孔体と比較して、光透過性に優れるため好ましい。
本発明のガス検出材料において、多孔質ガラス(多孔質ガラス部材)は、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤を担持させるための担体としての役割を有する部材である。本発明のガス検出材料は、ガス検知剤の特定波長での吸光度の変化を測定することにより、アルデヒド系ガスを検出するため、低い吸光度、すなわち高い光透過率が要求される。多孔質ガラスは、多孔質高分子材料、多孔質セラミック、シリカゲル等の他の多孔体と比較して、光透過性に優れるため好ましい。
多孔質ガラスは、質量%で、SiO2を50%以上、54%以上、60%以上、70%以上、80%以上、特に85%以上含有することが好ましい。SiO2の含有量が少なすぎると、多孔質ガラスの耐アルカリ性、耐候性、機械的強度が低下しやすくなる。SiO2の含有量の上限は特に限定されないが、他成分の含有量を考慮し、97%以下、96%未満、95%以下、94%以下、特に93%以下であることが好ましい。
多孔質ガラスはZrO2を含有することが好ましい。多孔質ガラスとアルカリ性窒素化合物が反応すると、当該反応にアルカリ性窒素化合物が消費されてしまい、多孔質ガラス内に担持されるアルカリ性窒素化合物の量が低減し、その結果ガス検出材料の機能が低下するおそれがある。一方、多孔質ガラスにZrO2を含有させることにより、多孔質ガラスの耐アルカリ性が向上するため、上記のような不具合が発生しにくくなる。また、多孔質ガラスにZrO2を含有させることにより、アルカリ性窒素化合物やガス検知剤を多孔質ガラスの細孔内に安定的に担持させることが可能となる。ZrO2の含有量は、質量%で、0%以上、0%超、4%以上、5%以上、6%以上、特に7%以上であることが好ましい。ZrO2の含有量の上限は特に限定されないが、多すぎると、多孔質ガラスの製造工程においてガラス母材が失透しやすくなるとともに分相しにくくなる。よって、ZrO2の含有量は30%以下であることが好ましい。
多孔質ガラスは、上記成分以外にも、質量%で、Na2O 0~15%(さらには1~10%)、K2O 0~10%(さらには0超~5%)、P2O5 0~10%(さらには0超~10%、特に0.05~8%)、Al2O3 0~20%(さらには0超~20%、特に1~15%)、TiO2 0~20%(さらには0超~15%、特に1~10%)、及び、RO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0~20%(さらには、0超~15%)を含有していてもよい。これらの成分は、多孔質ガラスを製造するためのガラス母材が含有する成分に由来するものである。
以下に多孔質ガラスの製造方法について説明する。
多孔質ガラスは、例えば、ガラス母材を熱処理してシリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ層の2相に分相させ、一方の相を酸で除去することにより得られる。ガラス母材としては、モル%で、SiO2 40~80%、B2O3 0超~40%、Na2O 0超~20%、Li2O 0~20%、K2O 0~20%、P2O5 0~2%、ZrO2 0~20%、Al2O3 0~10%、RO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種) 0~20%を含有するものが挙げられる。以下に、ガラス母材における各成分の含有量をこのように特定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下のガラス母材における成分含有量に関する説明において、「%」は「モル%」を意味する。
SiO2はガラスネットワークを形成する成分である。SiO2の含有量は40~80%、45~75%、47~60%、特に50~65%であることが好ましい。SiO2の含有量が少なすぎると、多孔質ガラスの耐候性や機械的強度が低下する傾向がある。また、製造工程において、シリカゲルの水和による膨張量が、シリカリッチ相中からNa2O等のアルカリ成分が溶出することによる収縮量より小さくなりやすく、多孔質ガラスに割れが発生しやすくなる。一方、SiO2の含有量が多すぎると、分相しにくくなる。
B2O3はガラスネットワークを形成し、分相を促進する成分である。B2O3の含有量は0超~40%、10~30%、特に15~25%であることが好ましい。B2O3の含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。B2O3の含有量が多すぎると、ガラス母材の耐候性が低下しやすくなる。
Na2Oは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。Na2Oの含有量は0超~20%、3~15%、特に4~10%であることが好ましい。Na2Oの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、Na2Oの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
Li2Oは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。Li2Oの含有量は0~20%、0超~20%、0.3~15%、特に0.6~10%であることが好ましい。Li2Oの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
K2Oは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分であるとともに、分相を促進させる成分である。また、シリカリッチ相中のZrO2含有量を増加させる成分である。そのため、K2Oを含有させることにより、得られる多孔質ガラス中のZrO2含有量が増加し、耐アルカリ性を向上させることができる。K2Oの含有量は0~20%、0超~20%、0.3~5%、特に0.8~3%であることが好ましい。K2Oの含有量が多すぎると、逆に分相しにくくなる。
Li2O+Na2O+K2Oの含有量は0超~20%、0超~18%、2~15%、4~12%、特に5~10%であることが好ましい。Li2O+Na2O+K2Oの含有量が少なすぎると、溶融性を改善したり、分相を促進させる効果を得にくくなる。一方、Li2O+Na2O+K2Oの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。また、Li2O、Na2O及びK2Oのいずれか2種を含有させる場合、その合量は0超~20%、0超~18%、2~15%、4~12%、特に5~10%であることが好ましい。なお本明細書において、「x+y+・・・」は各成分の合量を意味する。ここで、各成分は必須成分でなくてもよく、含有しない(即ち0%の)成分があってもよい。
Na2O/B2O3は0.1~0.5、0.15~0.45、特に0.2~0.4であることが好ましい。このようにすれば、製造工程において、シリカゲルの水和による膨張量と、シリカリッチ相中からNa2Oが溶出することによる収縮量のバランスが取れ、多孔質ガラスに割れが発生しにくくなる。なお本明細書において、「x/y」はxの含有量をyの含有量で除した値を意味する。
(Li2O+Na2O+K2O)/B2O3は0.2~0.5、0.29~0.45、0.31~0.42、特に0.33~0.42であることが好ましい。このようにすれば、製造工程において、シリカゲルの水和による膨張量と、シリカリッチ相中からアルカリ成分が溶出することによる収縮量のバランスが取れ、多孔質ガラスに割れが発生しにくくなる。
P2O5は分相を顕著に促進させる成分である。また、シリカリッチ相中のZrO2含有量を増加させる成分である。そのため、P2O5を含有させることにより、得られる多孔質ガラス部材中のZrO2含有量が増加し、耐アルカリ性を向上させることができる。P2O5の含有量は0~2%、0超~2%、0.01~1.5%、特に0.02~1%であることが好ましい。P2O5の含有量が多すぎると、溶融中に分相しやすくなる。ガラスが溶融中に分相すると、分相状態を制御できず、透明性を有するガラスを得にくくなる。またP2O5の含有量が多すぎると、溶融中に結晶化しやすくなり、この場合も透明性を有するガラスを得にくくなる。
ZrO2はガラス母材の耐候性や多孔質ガラス部材の耐アルカリ性を向上させる成分である。ZrO2の含有量は0~20%、0超~20%、2~15%、特に2.5~12%であることが好ましい。ZrO2の含有量が多すぎると、失透しやすくなるとともに分相しにくくなる。
なおP2O5/ZrO2は、0.005~0.5、特に0.01~0.2であることが好ましい。P2O5/ZrO2が大きすぎると溶融中に分相または結晶化しやすくなり、透明性を有するガラスを得にくくなる。一方、P2O5/ZrO2が小さすぎると分相しにくくなる。
Al2O3は多孔質ガラス部材の耐候性や機械的強度を向上させる成分である。Al2O3の含有量は0~10%、0.1~7%、特に1~5%であることが好ましい。Al2O3の含有量が多すぎると、溶融温度が上昇し溶融性が低下しやすくなる。
RO(RはMg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも1種)は、シリカリッチ相中のZrO2含有量を増加させる成分である。そのため、ROを含有させることにより、得られる多孔質ガラス部材中のZrO2含有量が増加し、耐アルカリ性を向上させることができる。また、ROは多孔質ガラス部材の耐候性を向上させる成分である。ROの含有量(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)は0~20%、1~17%、3~15%、4~13%、5~12%、特に6.5~12であることが好ましい。ROの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。なお、MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量は各々0~20%、1~17%、3~15%、4~13%、5~12%、特に6.5~12であることが好ましい。また、MgO、CaO、SrO及びBaOから選択される少なくとも2種の成分を含有させる場合、その合量は0~20%、1~17%、3~15%、4~13%、5~12%、特に6.5~12であることが好ましい。ROのなかで、多孔質ガラス部材の耐アルカリ性を向上させる効果が特に大きいという点で、CaOを使用することが好ましい。
ガラス母材には、上記成分以外にも下記の成分を含有させることができる。
ZnOはシリカリッチ相中のZrO2含有量を増加させる成分である。また多孔質ガラスの耐候性を向上させる効果もある。ZnOの含有量は0~20%、0~10%、特に0~3%未満であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、分相しにくくなる。
また、TiO2、La2O3、Ta2O5、TeO2、Nb2O5、Gd2O3、Y2O3、Eu2O3、Sb2O3、SnO2及びBi2O3等を各々15%以下、各々10%以下、特に各々5%以下、合量で30%以下の範囲で含有させてもよい。
なお、PbOは環境負荷物質であるため、実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは、意図的に原料として含有させないことを意味し、不可避的不純物の混入を排除するものではない。客観的には含有量が0.1%未満であることを意味する。
上記のガラス組成となるように調合したガラスバッチを、例えば1300~1600℃で4~12時間溶融する。次いで、溶融ガラスを成形した後、例えば400~600℃で10分~10時間徐冷を行うことによりガラス母材を得る。得られたガラス母材の形状は特に限定されないが、平面形状が矩形や円形の板状であることが好ましい。なお、得られたガラス母材を所望の形状にするために、切削、研磨等の加工を施しても構わない。
得られたガラス母材は、アスペクト比が2~1000、特に5~500であることが好ましい。アスペクト比が小さすぎると、酸化ホウ素リッチ相を酸により除去(エッチング)する工程において、ガラス母材の表面と内部にてエッチング速度に大きな差が出るため、多孔質ガラス内部に応力が発生しやすく、割れが発生しやすくなる。一方、アスペクト比が大きすぎると、取り扱いにくくなる。なお、アスペクト比は下記の式により算出する。
アスペクト比=(ガラス母材の底面積)1/2/ガラス母材の厚み
なお、得られたガラス母材の底面積と厚みは、上記アスペクト比となるように適宜調整すればよい。例えば、底面積は1~1000mm2、特に5~500mm2であることが好ましく、厚みは0.1~1mm、特に0.2~0.5mmであることが好ましい。
次に、得られたガラス母材を熱処理し、シリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相の2相に分相(スピノーダル分相)させる。熱処理温度は500~800℃、特に600~750℃であることが好ましい。熱処理温度が高すぎると、ガラス母材が軟化し、所望の形状を得にくくなる。一方、熱処理温度が低すぎると、ガラス母材を分相させにくくなる。熱処理時間は1分以上、10分以上、特に30分以上であることが好ましい。熱処理時間が短すぎると、ガラス母材を分相させにくくなる。熱処理時間の上限は特に限定されないが、長時間熱処理しても分相はある一定以上は進まなくなるため、現実的には180時間以下である。
次に、2相に分相させたガラス母材を酸に浸漬させ、酸化ホウ素リッチ相を除去し、多孔質ガラス(多孔質ガラス部材)を得る。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等を用いることができる。なお、これらの酸を混合して用いてもよい。酸の濃度は0.1~5規定、特に0.5~3規定であることが好ましい。浸漬時間は1時間以上、10時間以上、特に20時間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、エッチングが不十分となり、所望の連続孔を有する多孔質ガラスを得にくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には100時間以下である。酸の温度は20℃以上、25℃以上、特に30℃以上であることが好ましい。酸の温度が低すぎると、エッチングが不十分となり、所望の連続孔を有する多孔質ガラス部材を得にくくなる。酸の温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
なお、ガラス母材を分相させる工程において、ガラス母材の最表面にシリカ含有層(シリカを概ね80モル%以上含有する層)が形成される場合がある。シリカ含有層は酸で除去し難いため、シリカ含有層が形成された際は、分相させたガラス母材を切削または研磨し、シリカ含有層を除去した後に酸に浸漬させると、酸化ホウ素リッチ相を除去しやすくなる。また、シリカ含有層を除去するために、分相後のガラス母材をフッ酸に短時間浸漬させてもよい。
多孔質ガラスの細孔径分布の中央値は、200nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下、50nm以下、45nm以下、特に42nm以下であることが好ましい。このように細孔径分布の中央値を小さくすれば、多孔質ガラスの光透過率が高くなり、ガス検知感度が向上しやすくなる。細孔径分布の中央値の下限は特に限定されないが、現実的には1nm以上、2nm以上、4nm以上、特に7nm以上である。また、孔の形状としては、真球状や略楕円状の孔の連続体や、チューブ状等が挙げられる。なお、多孔質ガラス部材のアスペクト比、底面積、厚み等の寸法はガラス母材と同様である。
多孔質ガラスは、波長400nmにおける厚み0.5mmでの光透過率が0.01%以上、0.02%以上、0.05%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。光透過率が低すぎると、ガス検出材料の担体として使用することが困難となる傾向がある。
さらに、得られた多孔質ガラスの細孔中にZrO2コロイド及び/またはSiO2コロイドが残留する場合は、除去することが好ましい。以下に、ZrO2コロイド、SiO2コロイドの除去方法を説明するが、これらの方法に限定されるものではない。
ZrO2コロイドは、例えば硫酸にて除去することができる。硫酸の濃度は0.1~5規定、特に1~5規定であることが好ましい。硫酸の浸漬時間は1時間以上、特に10時間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、ZrO2コロイドを除去しにくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には、100時間以下である。浸漬温度は20℃以上、25℃以上、特に30℃以上であることが好ましい。浸漬温度が低すぎると、ZrO2コロイドを除去しにくくなる。浸漬温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
SiO2コロイドは、例えばアルカリ水溶液にて除去することができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。なお、これらのアルカリを混合して用いてもよい。アルカリ水溶液の浸漬時間は10分間以上、特に30分間以上であることが好ましい。浸漬時間が短すぎると、SiO2コロイドを除去しにくくなる。浸漬時間の上限は特に限定されないが、現実的には、100時間以下である。浸漬温度は15℃以上、特に20℃以上であることが好ましい。浸漬温度が低すぎると、SiO2コロイドを除去しにくくなる。浸漬温度の上限は特に限定されないが、現実的には、95℃以下である。
(アルカリ性窒素化合物)
アルカリ性窒素化合物は水溶性の化合物であり、水に溶解した状態でpH9以上を示すものを指す。ここで、「水溶性」とは、25℃における100mLの水に対する溶解度が0.1g以上であるものを指す。また、「水に溶解した状態」とは、25℃における100mLの水に対して0.1g以上溶解した状態を指す。
アルカリ性窒素化合物は水溶性の化合物であり、水に溶解した状態でpH9以上を示すものを指す。ここで、「水溶性」とは、25℃における100mLの水に対する溶解度が0.1g以上であるものを指す。また、「水に溶解した状態」とは、25℃における100mLの水に対して0.1g以上溶解した状態を指す。
アルカリ性窒素化合物としては、アザン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、水酸化第四級アンモニウム等が挙げられる。アザンとしては、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラゾン;第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-ペンチルアミン、イソアミルアミン、2-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン;第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ブチルメチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、N-エチルイソアミルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、N-ブチルエチルアミン、2-(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、4-メチルアミノブタノール、イミノジプロピオニトリル、2-エチルアミノエチルアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、3-メチルアミノプロピルアミン、3-(2-ヒドロキシエチルアミノ)プロピルアミン、3-ラウリルアミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、ピペリジン、ピリジン;第三級アミンとしてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、トリイソペンチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、N-メチルジアリルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、3-ジエチルアミノプロパノール、2-ジエチルアミノエチルアミン、2-ジエチルアミノエチルアミン、2-ジイソプロピルアミノエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピルアミノプロピルアミン、3-(ジイソブチルアミノ)プロピルアミン、;水酸化第四級アンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン(水酸化ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)、アセチルコリン、メチルコリン、レシチン等が挙げられる。
(ガス検知剤)
ガス検知剤としては、例えば吸収波長が350~750nmにあり、アルカリ性窒素化合物下でノナナール等のアルデヒド系ガスと反応し、吸光度が変化するものが好ましい。ガス検知剤の具体例としては、バニリン及び/またはバニリン誘導体が挙げられる。バニリン及びバニリン誘導体は、室温で揮発しないため取り扱いやすいという利点がある。なお、これら以外のガス検知剤を使用することも可能である。
ガス検知剤としては、例えば吸収波長が350~750nmにあり、アルカリ性窒素化合物下でノナナール等のアルデヒド系ガスと反応し、吸光度が変化するものが好ましい。ガス検知剤の具体例としては、バニリン及び/またはバニリン誘導体が挙げられる。バニリン及びバニリン誘導体は、室温で揮発しないため取り扱いやすいという利点がある。なお、これら以外のガス検知剤を使用することも可能である。
次に、本発明のガス検出材料の製造方法の一例について説明する。
まず、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤を水等の溶媒と混合し、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤を含んだ混合液を得る。混合液中におけるアルカリ性窒素化合物の濃度は0.1~20規定、特に0.25~18規定が好ましい。アルカリ性窒素化合物の濃度が低すぎると、ガスとガス検知剤との反応が十分に進まないおそれがある。一方、アルカリ性窒素化合物の濃度が高すぎると、多孔質ガラスと反応しやすくなり、多孔質ガラスの機械的強度が低下するおそれがある。
ガス検知剤の添加量(混合液中における含有量)は、多孔質ガラスに対する質量比で、ガス検知剤/多孔質ガラス=0.01~100、特に0.1~10が好ましい。ガス検知剤の添加量が少なすぎると、ガス検出材料の機能が不十分になる傾向がある。一方、ガス検知剤が多すぎると、多孔質ガラスの細孔を塞いでしまうおそれがあり、この場合もガス検出材料の機能が不十分になる傾向がある。
次に、得られた混合液中に、多孔質ガラスを浸漬させることにより、多孔質ガラスの細孔内にアルカリ性窒素化合物及びガス検知剤が担持されたガス検出材料を得る。なお、0.01~100L(好ましくは0.1~10L)の混合液に対して、0.01g~10kg(好ましくは10g~10kg)の多孔質ガラスを浸漬させることが好ましく、浸漬時間は、1秒~50時間であることが好ましい。なお、多孔質ガラスを浸漬させた後、減圧乾燥等により水分を揮発させても構わない。
ガス検出材料におけるアルカリ性窒素化合物の担持量は1μL/m2以上であることが好ましく、5μL/m2以上であることがより好ましく、50μL/m2以上であることがさらに好ましく、200μL/m2以上であることが特に好ましい。ここで、アルカリ性窒素化合物の担持量は、多孔質ガラスの細孔内単位表面積あたりの担持量であり、0℃、1気圧の標準状態(STP:standard temperature and pressure)のガス体積に換算して表した値である。アルカリ性窒素化合物の担持量が少なすぎると、アルカリ性窒素化合物の触媒機能が不十分となり、ガスとガス検知剤の反応が十分に進まないおそれがある。一方、アルカリ性窒素化合物の担持量が多すぎると、アルカリ性窒素化合物が多孔質ガラスと反応しやすくなり、多孔質ガラスの機械的強度が低下するおそれがある。
ガス検出材料におけるアルカリ性窒素化合物やガス検知剤の担持量は、昇温脱離ガス分析により定量することができる。具体的には、ガス検出材料を昇温脱離ガス分析にかけると、昇温にともなって、多孔質ガラスからアルカリ性窒素化合物やガス検知剤が、ガスとして脱離する。脱離ガスを四重極質量分析計で分析することにより、x軸に温度、y軸にガス脱離量を取ったチャートが得られる。当該チャートから、アルカリ性窒素化合物及びガス検知剤の担持量を定量することができる。
上記チャートのピーク位置の温度は、アルカリ性窒素化合物やガス検知剤が多孔質ガラスにどの程度安定に担持しているかの指標となる。ピーク位置の温度が高いほど、アルカリ性窒素化合物やガス検知剤が多孔質ガラスに安定に担持されており、脱離しにくいことを意味している。
例えば、アルカリ性窒素化合物としてアンモニアを使用したガス検出材料を昇温脱離ガス分析にかけた場合、得られるチャートにおいて概ね50~700℃にピーク位置が見られる。ピーク位置の温度は50~500℃、60~450℃、特に70~400℃であることが好ましい。
また、ガス検知剤としてバニリンを使用したガス検出材料を昇温脱離ガス分析にかけた場合、得られるチャートにおいて概ね50~500℃にピーク位置が見られる。ピーク位置の温度は60~450℃、70~400℃、特に80~350℃であることが好ましい。
次に、本発明のガス検出材料を用いたガス検出方法について説明する。
まず、ガス検出材料の特定波長での吸光度を分光光度計等により測定する。例えば、検出すべきガスがアルデヒド系ガスの場合は、波長350~750nmでの吸光度を測定する。
次に、ガス検出材料を測定ガスが封入されたテドラーバッグ等の容器に入れ、1分~500時間放置することにより、ガス検出材料に測定ガスを暴露させる。なお、ガス検出材料と測定ガスとの反応を促進させるために、暴露後のガス検出材料を50~200℃にて5分~1時間加熱しても構わない。
次いで、暴露後のガス検出材料の特定波長での吸光度を分光光度計等により測定し、先に測定したガス検出材料の吸光度と異なれば、測定ガス中に検出すべきガス(例えばアルデヒド系ガス)が含まれていることになる。なお、あらかじめ検出すべきガスの量が既知の標準ガスを用いて、検量線を作成すれば、暴露前後でのガス検出材料の吸光度の差から、検出すべきガスの量を求めることも可能である。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 58%、B2O3 20%、Na2O 6.2%、ZrO2 3%、Al2O3 2%、CaO 9.5%、K2O 1.2%、P2O5 0.1%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1450℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 58%、B2O3 20%、Na2O 6.2%、ZrO2 3%、Al2O3 2%、CaO 9.5%、K2O 1.2%、P2O5 0.1%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1450℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
得られたガラス母材を10mm×10mm×0.5mmのサイズとなるよう切削及び研磨した。その後、電気炉にて680℃で熱処理し、分相させた。分相後のガラス母材を、1規定の硝酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、続いて3規定の硫酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。その後、0.5規定の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)中に5時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。このようにして多孔質ガラスを得た。
得られた多孔質ガラスの断面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、日立製作所社製SU-8220)で観察したところ、スピノーダル分相に基づいたスケルトン構造を有していた。また、得られた多孔質ガラスの組成は、質量%で、SiO2 88%、ZrO2 8%、Al2O3 3%、P2O5 1%であり、細孔径分布の中央径は50nmであった。また、波長420nmにおける厚み0.5mmでの光透過率は約0.03%であった。多孔質ガラスの質量は、53mgであった。
多孔質ガラスのガラス組成は、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所社製 EX-250)により測定した。
細孔径分布の中央値は、細孔径分布測定装置(カンタクローム社製 QUADRASORB SI)により測定した。
光透過率は、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製 UH-4150)により測定した。
(ガス検出材料の作製)
バニリン0.05gと純水5mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液5mlと5.8規定(10質量%、pH=12.0)のアンモニア水溶液10mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
バニリン0.05gと純水5mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液5mlと5.8規定(10質量%、pH=12.0)のアンモニア水溶液10mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
多孔質ガラスを、上記混合溶液15mlに15分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に12時間放置して水分を蒸発させることにより、ガス検出材料を得た。
(ノナナールの検出)
まず、上記で作製したガス検出材料の波長420nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は3.5であった。
まず、上記で作製したガス検出材料の波長420nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は3.5であった。
次に、ガス検出材料をノナナール2.6ppm含有するガスを封入したテドラーバッグに入れ、24時間放置することにより、ガス検出材料にガスを暴露させた。次いで、暴露後のガス検出材料をポリ容器に入れた後、オーブンにて100℃で60分間加熱した。
加熱後のガス検出材料の波長420nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度は4.5と暴露前の吸光度より1.0大きくなった。このことより、ppmオーダーでのノナナールの検出が可能であることが分かった。
<実施例2>
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 58.2%、B2O3 17%、Na2O 5.7%、ZrO2 6%、Al2O3 1.7%、CaO 8.8%、K2O 0.8%、P2O5 0.1%、TiO2 1.7%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 58.2%、B2O3 17%、Na2O 5.7%、ZrO2 6%、Al2O3 1.7%、CaO 8.8%、K2O 0.8%、P2O5 0.1%、TiO2 1.7%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
得られたガラス母材を10mm×10mm×0.5mmのサイズとなるよう切削及び研磨した。その後、電気炉にて695℃で熱処理し、分相させた。分相後のガラス母材を、1規定の硝酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、続いて3規定の硫酸(95℃)中に48時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。その後、0.5規定の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)中に5時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。このようにして多孔質ガラスを得た。
得られた多孔質ガラスの断面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、日立製作所社製SU-8220)で観察したところ、いずれのガラスもスピノーダル分相に基づいたスケルトン構造を有していた。また、得られた多孔質ガラスの組成は、質量%で、SiO2 83.3%、ZrO2 10.6%、Al2O3 2.9%、P2O5 1.7%、TiO2 1.0%、Na2O 0.1%、CaO 0.4%であり、細孔径分布の中央径は35nmであった。また、波長400nmにおける厚み0.5mmでの光透過率は約4%であった。
(ガス検出材料の作製)
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液10mlと表1に示した濃度のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液10mlと表1に示した濃度のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
多孔質ガラスを、上記混合溶液15mlに120分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に24時間放置して水分を蒸発させることにより、ガス検出材料を得た。
得られたガス検出材料(濃度28質量%のアンモニア水溶液を用いて作製したもの)におけるアンモニア担持量を、以下のようにして昇温脱離ガス分析により測定した。石英ガラス容器にガス検出材料を入れ、石英ガラス容器内にヘリウムガスを流した。その状態で、石英ガラス容器の外側からガス検出材料を加熱し、昇温中に石英ガラス容器内から排出されるガスを四重極質量分析計で分析した。結果を表1に示す。また分析により得られたチャートを図1に示す。図1に示すように、50~700℃においてアンモニアの脱離が見られ、脱離量は280℃において最大であった。
(ノナナールの検出)
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は表1に示した通りであった。
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は表1に示した通りであった。
次に、ガス検出材料をノナナール2.6ppm含有するガスを封入したテドラーバッグに入れ、24時間放置することにより、ガス検出材料にガスを暴露させた。次いで、暴露後のガス検出材料をポリ容器に入れた後、オーブンにて100℃で60分間加熱した。
加熱後のガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、表1の通りの変化を示した。このことより、いずれもppmオーダーでのノナナールの検出が可能であることが分かった。
<実施例3>
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 65%、B2O3 25%、Na2O 10%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
(多孔質ガラスの作製)
モル%で、SiO2 65%、B2O3 25%、Na2O 10%のガラス組成になるように調合した原料を白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。原料の溶融に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、得られた溶融ガラスを金属板上に流し出して板状に成形した後、580℃~540℃で30分間徐冷しガラス母材を得た。
得られたガラス母材を10mm×10mm×0.5mmのサイズとなるよう切削及び研磨した。その後、電気炉にて600℃で熱処理し、分相させた。分相後のガラス母材を、0.5規定の硫酸(95℃)中に240時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。このようにして多孔質ガラスを得た。
得られた多孔質ガラスの断面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、日立製作所社製SU-8220)で観察したところ、いずれのガラスもスピノーダル分相に基づいたスケルトン構造を有していた。また、得られた多孔質ガラスの組成は、質量%で、SiO2 100%であり、細孔径分布の中央径は35nmであった。また、波長400nmにおける厚み0.5mmでの光透過率は約50%であった。
(ガス検出材料の作製)
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液10mlと16.5規定(28質量%、pH=12.2)のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。つぎに、バニリン水溶液10mlと16.5規定(28質量%、pH=12.2)のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
多孔質ガラスを、上記混合溶液15mlに120分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に24時間放置して水分を蒸発させることにより、ガス検出材料を得た。
得られたガス検出材料におけるアンモニア担持量を、実施例2と同様にして測定したところ、5μL/m2であった。また、分析により得られたチャートを図2に示す。図2に示すように、50~250℃においてアンモニアの脱離が見られ、脱離量は120℃において最大であった。
(ノナナールの検出)
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は0.3であった。
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は0.3であった。
次に、ガス検出材料をノナナール2.6ppm含有するガスを封入したテドラーバッグに入れ、24時間放置することにより、ガス検出材料にガスを暴露させた。次いで、暴露後のガス検出材料をポリ容器に入れた後、オーブンにて100℃で60分間加熱した。
加熱後のガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度は0.5と暴露前の吸光度より0.2大きくなった。このことより、ppmオーダーでのノナナールの検出が可能であることが分かった。
実施例2と実施例3で得られたガス検出材料におけるアンモニア担持量を比較すると、上記の通り、実施例2のガス検出材料は、実施例3のガス検出材料と比較して、約50倍以上のアンモニアを担持していた。また、昇温脱離ガス分析で得られたチャートを比較しても、実施例2のピーク温度が、実施例3のピーク温度より高かった。これらのことから、実施例2のガス検出材料のほうが、実施例3と比較して、アンモニアを安定的に担持していることがわかる。
<実施例4>
(多孔質ガラスの作製)
実施例2と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(多孔質ガラスの作製)
実施例2と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(ガス検出材料の作製)
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。次に、バニリン水溶液10mlと16.5規定(28質量%)のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
バニリン0.1gと純水10mlを混合し、バニリン水溶液を得た。次に、バニリン水溶液10mlと16.5規定(28質量%)のアンモニア水溶液5mlを混合し、混合溶液15mlを得た。
多孔質ガラスを、上記混合溶液15mlに120分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に24時間放置して水分を蒸発させた。その後、多孔質ガラスをアルミラミネートパックに真空封入し、室温で1か月間放置した。ここで、多孔質ガラスをアルミラミネートパックに真空封入したのは、バニリンが空気中のガスに曝されて変質することを抑制するためである。
得られたガス検出材料におけるアンモニア担持量を、実施例2と同様にして測定したところ、265μL/m2であった。また、分析により得られたチャートを図3に示す。図3に示すように、70~700℃においてアンモニアの脱離が見られ、脱離量は280℃において最大であった。
(ノナナールの検出)
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は1.4であった。
まず、上記で作製したガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、吸光度(a.u.)は1.4であった。
次に、ガス検出材料をノナナール2.6ppm含有するガスを封入したテドラーバッグに入れ、24時間放置することにより、ガス検出材料にガスを暴露させた。次いで、暴露後のガス検出材料をポリ容器に入れた後、オーブンにて100℃で60分間加熱した。
加熱後のガス検出材料の波長400nmでの吸光度を分光光度計により測定したところ、1.76であった。このことより、ガス検出材料を作製して1か月経過した後も、ガス検出能を示すことがわかった。
<参考実験例1>
以下に、使用するアルカリ性化合物の種類に応じた、多孔質ガラスへの影響の違いを示すための参考実験例について記載する。
以下に、使用するアルカリ性化合物の種類に応じた、多孔質ガラスへの影響の違いを示すための参考実験例について記載する。
(試料の作製)
実施例1と同様の方法により得られた多孔質ガラスを、5.8規定(10質量%)のアンモニア水溶液15mLに30分間浸漬した。また、実施例1と同様の方法により得られた別の多孔質ガラスを、1.5規定(6質量%)の水酸化ナトリウム水溶液15mLに30分間浸漬した。浸漬後の各多孔質ガラスを減圧下で12時間放置して水分を蒸発させることにより、アンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスを得た。
実施例1と同様の方法により得られた多孔質ガラスを、5.8規定(10質量%)のアンモニア水溶液15mLに30分間浸漬した。また、実施例1と同様の方法により得られた別の多孔質ガラスを、1.5規定(6質量%)の水酸化ナトリウム水溶液15mLに30分間浸漬した。浸漬後の各多孔質ガラスを減圧下で12時間放置して水分を蒸発させることにより、アンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスを得た。
(吸光度変化の測定)
得られたアンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスについて、波長550nmでの吸光度を分光光度計により測定した。また、それぞれ空気中で3時間保持した後、同様にして吸光度を測定した。3時間保持前後での吸光度の変化量は、アンモニア担持多孔質ガラスは0、水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスは1.1であった。
得られたアンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスについて、波長550nmでの吸光度を分光光度計により測定した。また、それぞれ空気中で3時間保持した後、同様にして吸光度を測定した。3時間保持前後での吸光度の変化量は、アンモニア担持多孔質ガラスは0、水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスは1.1であった。
(析出結晶の評価)
アンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスに関し、減圧乾燥直後と空気中で3時間保持した後のそれぞれについて、X線回折測定を行い、結晶構造を解析した。アンモニア担持多孔質ガラスは、減圧乾燥直後及び3時間保持後ともに非晶質で結晶の析出は見られなかった。一方、水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスは、減圧乾燥直後は非晶質であり結晶は析出していなかったが、空気中で3時間保持した後は炭酸ナトリウム結晶が析出していた。この炭酸ナトリウム結晶が吸光度変化の原因になったと考えられる。
アンモニア担持多孔質ガラスと水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスに関し、減圧乾燥直後と空気中で3時間保持した後のそれぞれについて、X線回折測定を行い、結晶構造を解析した。アンモニア担持多孔質ガラスは、減圧乾燥直後及び3時間保持後ともに非晶質で結晶の析出は見られなかった。一方、水酸化ナトリウム担持多孔質ガラスは、減圧乾燥直後は非晶質であり結晶は析出していなかったが、空気中で3時間保持した後は炭酸ナトリウム結晶が析出していた。この炭酸ナトリウム結晶が吸光度変化の原因になったと考えられる。
以上の通り、アルカリ性窒素化合物は空気中の二酸化炭素と反応しにくく、多孔質ガラス中に担持しても炭酸塩結晶を析出しにくい。そのため、アルカリ性窒素化合物を使用した本発明のガス検出材料は、空気中に放置した際にも析出結晶に起因する不当な吸光度変化が生じにくいため、目的とするガスを高感度で検出することが可能である。
<参考実験例2>
(多孔質ガラスの作製)
実施例2と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(多孔質ガラスの作製)
実施例2と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(バニリンの担持)
バニリン0.1gと純水15mlを混合し、バニリン水溶液を得た。
バニリン0.1gと純水15mlを混合し、バニリン水溶液を得た。
多孔質ガラスを、上記水溶液15mlに120分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に24時間放置して水分を蒸発させた。
得られた多孔質ガラスに担持されたバニリンについて、上記と同様の昇温脱離ガス分析を行った。その結果、図4に示すように、120~480℃にかけてバニリン由来ガス(m/z=31)の脱離が見られ、脱着量は280℃において最大であった。
<参考実験例3>
(多孔質ガラスの作製)
実施例3と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(多孔質ガラスの作製)
実施例3と同様にして多孔質ガラスを作製した。
(バニリンの担持)
バニリン0.1gと純水15mlを混合し、バニリン水溶液を得た。
バニリン0.1gと純水15mlを混合し、バニリン水溶液を得た。
多孔質ガラスを、上記水溶液15mlに120分間浸漬させた後、多孔質ガラスを減圧中に24時間放置して水分を蒸発させた。
得られた多孔質ガラスに担持されたバニリンについて、上記と同様の昇温脱離ガス分析を行った。その結果、図5に示すように、60~180℃にかけてバニリン由来ガス(m/z=31)の脱離が見られ、その脱離量は110℃において最大であった。
上記の通り、昇温脱離ガス分析で得られたチャートを比較した場合、参考実験例2のピーク温度が、参考実験例3のピーク温度より高かった。このことから、参考実験例2の多孔質ガラスのほうが、参考実験例3の多孔質ガラスと比較して、バニリンを安定的に担持できることがわかる。これは、多孔質ガラスの組成が異なること(特にZrO2成分の有無)に起因するものであると考えられる。
本発明のガス検出材料は、呼気診断、皮膚ガス測定、口臭チェッカー、環境モニタリング、作業環境管理など幅広い用途に好適である。
Claims (4)
- 細孔を有する多孔質ガラス、並びに、前記細孔内に担持されたアルカリ性窒素化合物及びガス検知剤、を備えることを特徴とするガス検出材料。
- 前記アルカリ性窒素化合物は、アザン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及び水酸化第四級アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のガス検出材料。
- 前記ガス検知剤は、バニリン及び/またはバニリン誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス検出材料。
- アルデヒド系ガス検出用であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガス検出材料。
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