JP2022035388A - アルミニウム合金の粘性特性算出方法と粘性特性算出プログラム - Google Patents
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ここで半凝固とは、固相と液相が共存していることを意味し、したがって半凝固領域は固相線温度と液相線温度の間の領域を意味する。
C=1-fLGB…(a)式
fLGB=2.64{(1-fs)/k}1/2…(b)式
k=√3+{3/tan(30-θ/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(c)式
ただし、各式において、fLGBは粒界の全面積に対する液相で濡れた面積の割合を定量化した指標であり、微細等軸晶で表される固相の形状と固相の結合している部分に粒界三重点を示す金属組織を想定すると、前記二面角θと固相率fsの関数でfLGBが与えられる。
ここで、前記3水準の固相結合率とは、C=0、Ce/2、Ceであり、Ceは共晶凝固温度Teに対応する固相結合率を示し、kおよびmは以下の(5)式で示される粘性構成式における係数を意味し、εcreepはクリープひずみ速度を意味し、σは応力を意味する。
m=f(C) (0≦C≦Ce)…(1)式
m=f(Ce) (Ce<C≦1)…(2)式
logk=g(C) (0≦C≦Ce)…(3)式
logk=g(Ce) (Ce<C≦1)…(4)式
εcreep=kσ1/m …(5)式
ただし、f(C)およびg(C)は実験で得られた前記3水準の特性値の組(n,C)および(logk,C)それぞれ3点より作成した二次関数であることを意味する。なお、クリープひずみ速度εcreepは一般にはドットを伴った表記とするが、(5)式では単にεcreepで表記している。
fLGB=2.64{(1-fs)/k}1/2 …(6)式
k=√3+{3/tan(30-θ/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(7)式
ここでfLGBは粒界の全面積に対する固相と液相の接触面積の割合を定量化した指標である。
ここで、前記3水準の固相結合率とは、C=0、Ce/2、Ceであり、Ceは共晶凝固温度Teに対応する固相結合率を示し、kおよびmは以下の(5)式で示される粘性構成式における係数を意味し、εcreepはクリープひずみ速度を意味し、σは応力を意味する。
m=f(C) (0≦C≦Ce)…(1)式
m=f(Ce) (Ce<C≦1)…(2)式
logk=g(C) (0≦C≦Ce)…(3)式
logk=g(Ce) (Ce<C≦1)…(4)式
εcreep=kσ1/m …(5)式
ただし、f(C)およびg(C)は実験で得られた前記3水準の特性値の組(n,C)および(logk,C)それぞれ3点より作成した二次関数であることを意味する。
fLGB=2.64{(1-fs)/k}1/2 …(6)式
k=√3+{3/tan(30-θ/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(7)式
ここでfLGBは粒界の全面積に対する固相と液相の接触面積の割合を定量化した指標である。
(6)本形態の粘性特性算出プログラムにおいて、凝固組織において面積率で70%以上が初晶α-Alであるアルミニウム合金に適用することが好ましい。
本発明の第1実施形態に係るアルミニウム合金の粘性特性算出方法を実施するには、該当するアルミニウム合金の半凝固領域における固相結合率(C)と固相率(fs)と二面角(θ)を利用する。
二面角は、半凝固状態のアルミニウム合金において液相が固相間に染み渡る角度であり、アルミニウム合金の合金組成により二面角が異なること、また、二面角の大きさでアルミニウム合金の凝固割れ感受性を定量化できることが知られている。二面角の大きい合金(液相が固相間にしみ渡りにくい合金)は鋳造時に割れにくく、二面角の小さい合金(液相が固相間にしみ渡り易い合金)は鋳造時に割れ易いと判断できる。
そこで、本発明者らは、二面角を実測し、固相結合率を算出した上で半凝固状態のアルミニウム合金の力学特性に着目し、種々の研究を行った。
本実施形態では、まず、対象とするアルミニウム合金供試材として、必要とする複数の組成のアルミニウム合金を選択し、それぞれのアルミニウム合金の二面角を求める二面角測定ステップを実施する。
図1は、Al-2Cu-Ti-B合金とAl-5Mg-Ti-B合金とAl-0.5Si-0.4Fe-1.0Cu-1.15Mn-Ti-B合金の3種の合金について、以下に説明する方法により二面角(θ)を求めた結果を示すグラフである。このグラフに示す二面角の測定結果は、「軽金属,第69巻,第4号(2019),P257-259,半凝固状態のアルミニウム合金の最大引張力および伸び値の支配因子」に記載されている実験の内容に基づいて求めた。
各合金にTiとBを添加しているのは、それぞれの合金の組織を微細化するためであり、Ti、Bを微量程度添加することで、それぞれの合金の結晶粒径の差異を小さくして凝固中の初晶の形状を正六角形状に近似できるように工夫するためである。粗大等軸組織よりも微細等軸組織の方が単純化した組織形態に近いと考える。
第2のAl-5Mg-Ti-B合金は、Si:0.001質量%、Mg:4.68質量%、Zn:0.003質量%、Fe:0.004質量%、Mn:0.004質量%、Ni:0.001質量%、Ti:0.053質量%、B:0.010質量%、残部Al及び不可避不純物の組成を有する。以下、この合金をAl-Mg系合金と略称することがある。
第3のAl-0.5Si-0.4Fe-1.0Cu-1.15Mn-Ti-B合金は、Si:0.5質量%、Fe:0.4質量%、Cu:1.0質量%、Mn:1.15質量%、Ti:0.053質量%、B:0.010質量%、残部Al及び不可避不純物の組成を有する。以下、この合金をAl-Mn-Cu系合金と略称することがある。
また、上記引張試験装置を用い、「軽金属,第63巻,第9号(2013),P310-317,半凝固状態における引張試験を用いたAl-Mg系合金の弾粘塑性構成式の構築」に示すような手順を踏むことで、後述の粘性特性値kおよびmを取得することができる。
測定手順は下記の3過程とする。
「1」図2(a)に示すように、初晶と共晶生成物の界面に沿って5点o、a、b、cおよびdの座標を測定する。点oは初晶2つと共晶生成物の界面三重点である。
「2」3点o-a-bおよびo-c-dのそれぞれを通る2つの円を決定する。
「3」図2(b)に示すように、点oを通る2つの内接円の接線を2つ求め、それら接線のなす角度を算術的に求める。
上述のアルミニウム合金では、Al-2Cu-Ti-B合金の二面角の代表値12.5°、Al-5Mg-Ti-B合金の二面角の代表値39°、Al-0.5Si-0.4Fe-1.0Cu-1.15Mn-Ti-B合金の二面角の代表値10°を得ることができる。
図1に示すようにAl-Mn-Cu系合金は、他の2つの合金に比べて二面角が小さいので、凝固割れ感受性が高いことが示唆される。
「固相結合率と粘性特性の関係」
半凝固領域におけるアルミニウム合金の固相同士の接触面積率(固相結合率C)を3水準に変量した実験で得られた粘性特性値kおよびmを用い、半凝固領域全体の粘性特性値を前記固相結合率の関数として、以下の(1)式~(4)式に従って求めることができる。
ここで、前記3水準の固相結合率とは、C=0、Ce/2、Ceであり、Ceは共晶凝固温度Teに対応する固相結合率を示し、kおよびmは以下の(5)式で示される粘性構成式における係数を意味し、εcreepはクリープひずみ速度を意味し、σは応力を意味する。
m=f(C) (0≦C≦Ce)…(1)式
m=f(Ce) (Ce<C≦1)…(2)式
logk=g(C) (0≦C≦Ce)…(3)式
logk=g(Ce) (Ce<C≦1)…(4)式
εcreep=kσ1/m …(5)式
ただし、f(C)およびg(C)は実験で得られた前記3水準の特性値の組(n,C)および(logk,C)それぞれ3点より作成した二次関数であることを意味する。なお、クリープひずみ速度εcreepは一般にはドットを伴った表記とするが、(5)式では単にεcreepで表記している。
Campbell により提案された固相率(fs)と固相結合率(C)の関係式を用い、固相率から固相結合率を計算することができる。その数式を下記に示す。このモデルの詳細については、以下の文献に記載されている。J. Campbell: Metallography, 4 (1971), 269-278,
k=√3+{3/tan(30-θrep/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(7)式
ここでfLGBは粒界の全面積に対する固相と液相の接触面積の割合を定量化した指標であり、固相結合率に対してC=1-fLGBの関係となる。また、固相率(fs)はClyne-Kurzモデル等の温度-固相率関係により、温度から換算することができる。
すなわち、同一固相率における荷重負担面積率が二面角の大きさにより異なることが示唆される。
半凝固状態のアルミニウム合金の力学特性について、数値解析に必要となる粘性特性(m,k)を以下に示すように取得することができる。
まず、以下の表1に示すように各合金の固相線温度(Ts)、共晶凝固温度(Te)、固相結合開始温度(引張強度発生温度、Tc)を求める。各合金に対応するこれらの温度は物性値データベースあるいは熱力学計算ソフトウエア(例えば、JmatPro ver.7, 英国Thermo Tech 社製)の計算結果等から得ることができる。
図4は固相結合率(C)と(1)式に示す粘性特性値(m)との関係を示し、図5は固相結合率(C)と(3)式に示す粘性特性値kの対数(logk)との関係を示す。
図4と図5における、Cs~Ceまでの領域に関し、Al-Mn-Cu合金とAl-Cu合金についてはプロットした点の間を直線で結ぶことができる。
共晶域において粘性特性が一定に推移する理由について、この温度域では液相から共晶生成物が晶出することで固相結合率の算出値は増加しているが、共晶生成物を除いた同相同士の結合面積率自体は共晶凝固開始から変化しないためであると考えられる。
以上のように、固相結合率により組成が異なる合金の粘性特性の挙動を統一的に説明できることが示唆された。
・共晶域で粘性特性が一定であるため、C=1における値は実験で取得しなくてもC=Ceの実験値から推定することができる。
・逆にC=1の実験値があれば、C=Ceにおける実験値の取得は不要となる。
ステップS1では半凝固領域におけるアルミニウム合金の引張試験を行い、基準となる粘性特性(m,k)と、二面角測定用の凝固組織画像を取得する。
ステップS2では凝固組織画像から二面角を測定する。
ステップS3では得られた二面角を元に、固相率と固相結合率の関係を求める。
その際に、先の(6)式と(7)式の関係を用いることができる。また、物性値データベースや熱力学計算ソフトなどの物性値供給手段から得られた温度と固相率の関係を用いて、温温度-固相率-固相結合率関係を求めることができる。
ステップS4では、ここまでに得られた基準となる粘性特性と固相結合率との結果から、先の(1)式~(4)式の関係に従って半凝固領域全体の固相結合率-粘性特性関係を求める。
鋳造シミュレーションの実現には、変量項目として、型および鋳物の冷却条件、鋳造速度、鋳造温度などが挙げられる。一概に、どの場合であれば凝固割れが発生し易いかの判断は難しいが、鋳造シミュレーションの結果を見て、応力やひずみが特定箇所に集中する場合はその箇所が割れ易く、またいずれの箇所にも応力やひずみの集中がない場合は割れが発生し難い製造条件であると判断できる。
凝固割れ予測の一例として、「軽金属,第69巻 第8号(2019),P400-409,熱応力解析による鋳造凝固割れ予測」などの文献を参考にすることができる。
この例の粘性特性算出装置1は、所謂コンピュータであって、主として入力手段2と、制御部3と、記憶手段4と、出力手段5と、算出手段6を備えている。
入力手段2は、例えば、文字や数字を入力するキーボードなどであり、これによってAl合金の組成や実測した二面角、基準となる粘性特性などの情報を記憶手段4または制御部3に入力することができる。
制御部3は、所謂CPU(中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されており、プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行うことができる。
出力手段5は、例えばモニターやプリンターなどであり、各ソフトやプログラムから得られる各種の情報を画面上又は紙面上に必要に応じて表示または印刷することができる。
なお、記憶手段4にインターネットやネットワークへの通信機能のみを備え、インターネットやネットワークに接続された他のパーソナルコンピュータに備えられた記憶手段や算出手段を利用して粘性特性算出装置1と同様に計算し結果を算出できるように構成しても良いのは勿論である。
実証試験は、実験により、Al-2Cu-Ti-B合金と、Al-5Mg-Ti-B合金と、Al-0.5Si-0.4Fe-1.0Cu-1.15Mn-Ti-B合金に対し半凝固状態の粘性特性値(m、logk)を求めた。
図8は実験により求めた各合金の固相結合率(C)と粘性特性値(m)との関係を示し、図9は固相結合率(C)と粘性特性値kの対数(logk)との関係を示す。
このため、任意組成のアルミニウム合金に対し鋳造を行う場合、上述の粘性特性算出方法により粘性特性を把握することができる。また、この粘性特性を利用し、前述の鋳造シミュレーションを行うことで、実際に鋳造する前に凝固割れ発生の有無について予測することができ、割れを有していない鋳塊を得るための条件決定の指針とすることができる。
また、例えば、同一の解析条件で合金種(入力する力学特性)のみを変えることで、その製造条件においてどちらの合金が割れ易いかを予測することができる。
Claims (6)
- 半凝固領域におけるアルミニウム合金の固相同士の接触面積率(固相結合率C)を3水準に変量した実験で得られた粘性特性値kおよびmを用い、半凝固領域全体の粘性特性値を前記固相結合率の関数として、以下の(1)式~(4)式に従って求めることを特徴とする粘性特性算出方法。
ここで、前記3水準の固相結合率とは、C=0、Ce/2、Ceであり、Ceは共晶凝固温度Teに対応する固相結合率を示し、kおよびmは以下の(5)式で示される粘性構成式における係数を意味し、εcreepはクリープひずみ速度を意味し、σは応力を意味する。
m=f(C) (0≦C≦Ce)…(1)式
m=f(Ce) (Ce<C≦1)…(2)式
logk=g(C) (0≦C≦Ce)…(3)式
logk=g(Ce) (Ce<C≦1)…(4)式
εcreep=kσ1/m …(5)式
ただし、f(C)およびg(C)は実験で得られた前記3水準の特性値の組(n,C)および(logk,C)それぞれ3点より作成した二次関数であることを意味する。 - 前記固相結合率Cの温度依存関数C(T)を、粒界の全面積に対する固相と液相の接触面積の割合を定量化した指標であるfLGBを用いてC(T)=1-fLGB(T)と表記する場合、fLGBが液相の固相間浸入角(二面角)θと固相率fsを用いた以下の(6)式と(7)式で表されることを特徴とする請求項1に記載の粘性特性算出方法。
fLGB=2.64{(1-fs)/k}1/2 …(6)式
k=√3+{3/tan(30-θ/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(7)式 - 前記アルミニウム合金の凝固組織において面積率で70%以上が初晶α-Alであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘性特性算出方法。
- アルミニウム合金の凝固時の粘性特性を算出するプログラムであって、半凝固領域におけるアルミニウム合金の固相同士の接触面積率(固相結合率C)を3水準に変量した実験で得られた粘性特性値kおよびmを用い、コンピュータを、半凝固領域全体の粘性特性値を前記固相結合率の関数として、以下の(1)式~(4)式に従って求める手段として機能させることを特徴とする粘性特性算出プログラム。
ここで、前記3水準の固相結合率とは、C=0、Ce/2、Ceであり、Ceは共晶凝固温度Teに対応する固相結合率を示し、kおよびmは以下の(5)式で示される粘性構成式における係数を意味し、εcreepはクリープひずみ速度を意味し、σは応力を意味する。
m=f(C) (0≦C≦Ce)…(1)式
m=f(Ce) (Ce<C≦1)…(2)式
logk=g(C) (0≦C≦Ce)…(3)式
logk=g(Ce) (Ce<C≦1)…(4)式
εcreep=kσ1/m …(5)式
ただし、f(C)およびg(C)は実験で得られた前記3水準の特性値の組(n,C)および(logk,C)それぞれ3点より作成した二次関数であることを意味する。 - 前記固相結合率Cの温度依存関数C(T)を、粒界の全面積に対する固相と液相の接触面積の割合を定量化した指標であるfLGBを用いてC(T)=1-fLGB(T)と表記する場合、fLGBが液相の固相間浸入角(二面角)θと固相率fsを用いた以下の(6)式と(7)式で表されることを特徴とする請求項4に記載の粘性特性算出プログラム。
fLGB=2.64{(1-fs)/k}1/2 …(6)式
k=√3+{3/tan(30-θ/2)}-{(30-θ/2)/60}×π/{sin2(30-θ/2)}…(7)式 - 凝固組織において面積率で70%以上が初晶α-Alであるアルミニウム合金に適用することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の粘性特性算出プログラム。
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