JP2022033630A - 除ウイルスシート - Google Patents

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Minoru Sawai
翔太郎 百合野
Shotaro Yurino
拓也 松永
Takuya Matsunaga
温子 早瀬
Atsuko Hayase
義隆 古賀
Yoshitaka Koga
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Abstract

【課題】除ウイルスが高い除ウイルスシートを提供すること。【解決手段】本発明の除ウイルスシートは繊維集合体に水性液剤が担持されている。除ウイルスシートは、該シートから清拭対象面に放出される水性液剤由来の放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドと、水溶性溶剤とを含むように、前記繊維集合体の繊維組成及び/又は前記水性液剤の組成が調整されている。除ウイルスシートは、エンベロープ型ウイルスの除去に用いられることも好適である。【選択図】なし

Description

本発明は、除ウイルスシートに関する。
シートに液剤を含浸させたウエットタイプのシートが物品の清拭及び身体の清拭の用途で用いられている。例えば特許文献1には、基材シートに液剤が含浸されている、身体に付着した有害物質を除去するための有害物質除去用シートが開示されている。
国際公開第2016/072433号パンフレット
しかし、特許文献1の有害物質除去用シートは、花粉の除去効果に関して一応の記載があるものの、清拭対象面に存在するウイルスの除去効果があるか否かについては何ら検討されていない。
したがって本発明は、ウイルスの除去効果が高い除ウイルスシートに関する。
本発明は、繊維集合体に水性液剤が担持された除ウイルスシートであって、
前記シートから清拭対象面に放出される前記水性液剤由来の放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドと、水溶性溶剤とを含むように、前記繊維集合体の繊維組成及び/又は前記水性液剤の組成が調整されている、除ウイルスシートに関する。
本発明によれば、ウイルスの除去効果が高い除ウイルスシートが提供される。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の除ウイルスシートは、その基材として繊維集合体を備え、繊維集合体に水を含む水性液剤が担持された、25℃、1気圧で湿潤状態にある湿式のシートである。本発明の除ウイルスシートは、例えば清拭対象面として、床、壁、天井及び柱等の建物、棚、窓ガラス、鏡、ドア、ドアノブ等の建具や、机、食卓、キッチン、トイレなどの備品やその他物品等の硬質表面の清拭や、あるいは清拭対象面として、手、足、指、鼻、口及びこれらの周囲の皮膚表面といった身体の清拭に適用可能である。以下の説明では、特に断りのない限り、硬質表面の清拭及び身体等の清拭を総称して、単に「清拭」ともいう。
本明細書における「除ウイルス」とは、清拭対象面に存在するウイルスを除去する機能を指す。詳細には、当該機能は、除ウイルスシートを用いた清拭によって、清拭対象面に存在するウイルスを繊維集合体によって絡め取ったり、繊維集合体又は水性液剤によって吸着したり、水性液剤中に分散させたりして、清拭対象面からウイルスを物理的に取り除くことと、水性液剤中の成分によってウイルスを化学的に不活化させることとの少なくとも一方によって発現するが、これらの寄与の度合いは問わない趣旨である。以下の説明では、特に断りのない限り、「除ウイルス」は、物理的除去及び化学的除去の双方を包含して説明する。
ウイルスは、表面にエンベロープ(脂質膜)を有するエンベロープ型ウイルスと、表面にエンベロープを有しないノンエンベロープ型ウイルスとに大別される。
エンベロープ型ウイルスに分類されるウイルスとしては、例えば帯状疱疹ウイルス等のヘルペスウイルス科、日本脳炎ウイルスやジカウイルス等のフラビウイルス科、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス等のコロナウイルス科、インフルエンザウイルス等のオルトミクソウイルス科、麻疹ウイルス等のパラミクソウイルス科、免疫不全ウイルス等のレトロウイルス科などが挙げられる。
ノンエンベロープ型ウイルスに分類されるウイルスとしては、例えばノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが挙げられる。
これらのうち、エンベロープ型ウイルスは、典型的には、ノンエンベロープ型ウイルスよりも物理的・化学的抵抗性が低いため、清拭対象面からの除去が容易とされている。したがって、高い除ウイルス性能を清拭対象面に発現する観点から、除ウイルスシートは、エンベロープ型ウイルスの除去に用いられることが好ましい。
除ウイルスシートは、第1面と、第1面と反対側に位置する第2面とを有する。第1面及び第2面は、いずれも除ウイルスシートの使用時において、清拭対象面と当接する清拭面として使用可能である。第1面及び第2面は、繊維集合体の一方の面と他方の面とによってそれぞれ構成される。したがって、除ウイルスシートの第1面は繊維集合体の第1面によって構成され、除ウイルスシートの第2面は繊維集合体の第2面によって構成される。
繊維集合体は、繊維どうしの交絡、接合及び融着のうち少なくとも一つの態様によって保形されている。繊維集合体の形態として、例えば、一種又は複数種の繊維が互いに交絡又は融着して保形性を獲得し、一体の繊維集合体となっていてもよく、あるいは複数の繊維層が交絡、接合又は融着されて保形性を獲得し一体化されていてもよい。除ウイルスシートは、その基材が繊維集合体のみから構成されていてもよく、繊維集合体に加えて、他のシート材料、スクリムネット等の他の部材を更に備えていてもよい。
繊維集合体を構成する繊維としては、天然繊維、合成樹脂繊維及び再生繊維等のうち一種又は二種以上が挙げられる。繊維集合体を構成する繊維は、好ましくは親水性を有する繊維を含む。
天然繊維としては、例えば、パルプ繊維、コットン繊維、麻等の天然セルロース繊維などのうち一種又は二種以上が挙げられる。パルプ繊維としては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒しサルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の木材パルプ、化学処理を施してアルカリ膨潤したマーセル化パルプ、螺旋構造を有する化学架橋パルプなどが挙げられる。
合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、PE及びPETや、PE及びPP、PP及びPET等の二種以上の成分を含む混合樹脂繊維、二種以上の成分を有する芯鞘繊維若しくはサイドバイサイド繊維等の複合繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド繊維、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などのうち一種又は二種以上が挙げられる。
再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、アセテート繊維、リヨセル等の繊維のうち一種又は二種以上が挙げられ、好ましくはレーヨンである。
また繊維集合体として、上述した繊維を含む紙、不織布、織布又は編み物地等を用いてもよい。繊維集合体として不織布を用いる場合、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などを用いることができる。また、これらの不織布の積層体を用いても良い。
繊維集合体として紙を用いる場合、エアレイド不織布又は湿式抄紙体を用いることができる。この場合、繊維集合体は、繊維どうしを物理的に又は化学的に接合するためのバインダ化合物等を含んでいてもよい。
除ウイルスシートによる除ウイルス性能の発現は繊維集合体及び水性液剤の少なくとも一方の寄与があるところ、本発明者の検討によって、繊維集合体の繊維組成及び/又はシートの製造時に含浸させた水性液剤の組成によっては、意外にも、シートの製造時に含浸させた水性液剤の組成と、シートの使用時にシートから清拭対象面に放出される水性液剤由来の放出液の組成とが異なり得ることが見出された。この液組成の変化が生じ得る理由は明らかではないが、例えば、繊維集合体を構成する繊維に水性液剤中の成分が吸着したり、水性液剤中の成分どうしの化学反応が意図せず発生したりするなどの何らかの相互作用が発生したり、水性液剤成分の揮発が意図せず発生したためと推測される。そして、水性液剤の処方を除ウイルスに適したものに設計したとしても、放出液の組成は水性液剤の組成と異なり得ることから、設計段階で意図したとおりの除ウイルス効果が実使用時に発現しづらいことも本発明者は見出した。
上述した知見から、本発明の除ウイルスシートは、水性液剤の組成ではなく、該シートから清拭対象面に放出される水性液剤由来の放出液に着目して、清拭対象面に接触する放出液の組成が所定のものとなるように、繊維集合体の繊維組成及び/又は水性液剤の組成が調整されていることが肝要である。
上述のとおり、放出液は水性液剤に由来するものである。放出液は水性液剤と同様に水を含む水性液である。放出液に含まれる成分自体は水性液剤に含まれるが、その組成は水性液剤と異なり得る。組成が互いに異なる具体例としては、水性液剤と放出液とを比較して、特定の成分の有無若しくは含有量が異なっていたり、pHが異なっていたりすること等が挙げられる。
除ウイルスシートは、清拭対象面に放出される放出液の構成成分として、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドと、水溶性溶剤とを含むように調整されている。アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドはカチオン性界面活性剤の一種であり、化学式として、C-CH-N(CH-R・Clで表される化合物(Rは、炭素数が8以上18以下の長鎖アルキル基である。)の一種以上である。
必要に応じて、除ウイルスシートは、放出液の構成成分として、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド以外のカチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のうち一種以上を更に含むように調整されていてもよい。
放出液に含まれるように調整されている水溶性溶剤としては、例えば、アルコール類が挙げられる。アルコール類としては、例えば、エタノール等の脂肪族一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族二価アルコール;グリセリン等の脂肪族三価アルコール;フェノキシエタノール等の芳香族アルコール;並びに、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。水溶性溶剤に含まれる化合物に異性体が存在する場合、放出液に含まれる水溶性溶剤は、異性体の混合物であってもよく、単一の異性体であってもよい。
放出液の構成成分及び含有量は、以下の方法で測定することができる。以下に示す測定方法は、特に断りのない限り、本明細書における放出液の各成分の測定方法で共通である。
詳細には、25℃、60%RHの環境下で、対象となる除ウイルスシートから、該シートを絞る、押圧する又は固液分離するなどの方法で放出液を抽出する。そして、この放出液をLC/MS/MS(高速液体クロマトグラフィー法/質量分析)、及びGC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析)の少なくとも一方を用いて、放出液の構成成分及び含有量を測定し、定量する。
除ウイルスシートについて、繊維集合体の繊維組成及び/又は水性液剤の組成が調整された実施形態の詳細を以下に説明する。以下の説明では、3つの実施形態を例にとり説明するが、除ウイルス性能が発現できる限りにおいて、これらの実施形態に制限されるものではない。
以下に、除ウイルスシートの一実施形態(第1実施形態)を説明する。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドに加えて、乳酸又はその塩と、安息香酸塩とを更に含むように調整されていることが好ましい。塩を構成する対イオンとしては、例えばカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオンが挙げられる。放出液に含まれる乳酸は、L体であってもよく、D体であってもよく、又は光学異性体の混合物若しくはラセミ体であってもよい。このような化合物を放出液中に更に含むことによって、除ウイルス性能に加えて、除菌性能も清拭後の清拭対象面に発現させることができるとともに、放出液が身体に接触した場合でも安全性が高く、シートの使用者に安心感を想起させやすくすることができる。特に、放出液に乳酸を含んでいることによって、タンパク質を含む汚れの存在下でも、タンパク質を含む汚れの非存在下と同等以上の除菌性能を清拭対象面に発現することができる。
本明細書における「除菌」とは、清拭対象面に存在する細菌や真菌を除去する機能を指し、上述した「除ウイルス」と同様に、細菌や真菌の物理的除去及び化学的除去の双方を包含する。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液の25℃におけるpHが好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上、更に好ましくは4.2以上であり、好ましくは6.0未満、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは5.0以下となるように調整されていることが好ましい。放出液がこのようなpHに調整されていることによって、除ウイルス性能に加えて、除菌性能も清拭後の清拭対象面に効果的に発現させることができるとともに、放出液が使用者の肌に接触した際の肌への刺激性を低減することができる。
放出液の25℃におけるpHは、除ウイルスシートから上述の方法で抽出した放出液を対象として、pH測定装置を用いて測定することができる。
また放出液に含まれる水溶性溶剤としてジプロピレングリコールを含むように調整されていることも好ましい。このような溶剤を放出液に含むように調整されることによって、放出液の成分の溶解性を高めることができる。また放出液の表面張力の低下に起因して、放出液が清拭対象面に濡れ広がりやすくなり、除ウイルスや微粒子除去などの各種清拭性能が更に向上する。
本実施形態におけるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.015質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下である。
本実施形態における乳酸の含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは0.6質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
本実施形態における安息香酸塩の含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下である。
本実施形態におけるジプロピレングリコールの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
放出液に含まれる成分の有無及び含有量、あるいはpHを所望のものとなるように調整するためには、例えば放出液に含有させる成分を水性液剤に予め所定量含有させたり、水性液剤のpHを予め所定の範囲に調整したり、またシートの構成繊維として特定の繊維を用いたりすればよい。また構成繊維及び水性液剤の各組成の調整においては、予備検討を行って各組成が決定されることが好ましい。
詳細には、放出液に含まれるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの有無及び含有量を調整する場合、構成繊維としてパルプ繊維やレーヨン繊維などのセルロース繊維を用いる場合には、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの放出液中の含有量が水性液剤の組成よりも低下する傾向にある。一方、構成繊維としてPET繊維やアクリル繊維等を用いる場合には、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの放出液中の含有量は水性液剤の組成と同等となる傾向にある。
これらの放出液の組成に関する傾向は、特に断りのない限り、後述する各実施形態においても共通である。
また、放出液のpHを上述した範囲に調整するためには、例えば水性液剤のpHを塩酸や硫酸等の無機酸やアルカリ金属の水酸化物等の無機塩基を添加して調整するとともに、構成繊維の組成及び水性液剤の組成の少なくとも一方を予め調整したりすればよい。構成繊維の組成としては、構成繊維としてレーヨン繊維やパルプ繊維等を用いる場合には、放出液のpHが水性液剤のpHよりも低下する傾向にある。この傾向は、例えば後述する実施形態のように、放出液のpHを6.0以上の中性~アルカリ性領域とする場合に顕著となる。
これらの放出液のpHに関する傾向は、特に断りのない限り、後述する各実施形態においても共通である。
本実施形態における繊維集合体は、例えば単層構造又は複層構造のスパンレース不織布を用いることができる。スパンレース不織布を用いる場合、例えばレーヨンなどの親水性繊維や合成樹脂繊維を混綿で又は積層して用いることができる。実使用に耐えうるシート強度を確保する観点から、必要に応じて、合成樹脂製のスクリムネットを配してもよい。除ウイルス性能の向上と、清拭時に生じる摩擦力の低減とを両立する観点から、繊維集合体における清拭対象面と対向する面は、凹凸賦形が施されていることが好ましい。
本実施形態における繊維集合体の構成繊維としては、親水性の繊維を含むことが好ましく、再生繊維としてレーヨンを含むことがより好ましく、レーヨンに加えて合成樹脂繊維を更に含むことが更に好ましく、レーヨン及び合成樹脂繊維のみであることが一層好ましい。
レーヨンは適度な強度を有しつつ親水性が高いので、シートの水性液剤の担持量の増加と、広い面積を有する清拭対象面への放出液の徐放性とを両立させることができ、除ウイルス性能を広い面積で発現できるため有利である。一方、レーヨンは、その構造中にアニオン性となるセルロース骨格を有しているので、水性液剤中のカチオン性のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドとのイオン的相互作用が生じ得ることが推測される。このような場合であっても、製造時に担持させる水性液剤ではなく、清拭時に清拭対象面に放出される放出液に着目して、放出液に所定の成分が含まれるように構成繊維及び水性液剤のうち少なくとも一方の組成が調整されていることによって、除ウイルス性能を清拭後の清拭対象面に十分に発現できる。
また合成樹脂繊維を更に用いることによって、塵やほこりなどの微粒子汚れや、毛髪の除去性能を高めるとともに、シート強度を高めて、1枚のシートで広い面積の清拭対象面を清拭することができ、除ウイルス性能を広い面積で発現できるため有利である。このことは、例えば床や壁などの硬質表面を清拭する際に特に有利である。
繊維集合体の構成繊維としてレーヨンを含む場合、繊維集合体全体の乾燥質量に対するレーヨンの含有割合は、除ウイルスシートの適用対象に応じて適宜変更可能であるが、放出液の徐放性を高める観点から、好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
また、繊維集合体の構成繊維として合成樹脂繊維を含む場合、繊維集合体全体の乾燥質量に対する合成樹脂繊維の合計含有割合は、除ウイルスシートの適用対象に応じて適宜変更可能であるが、微粒子汚れや毛髪の除去性能とシート強度との向上の観点から、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
以下に、除ウイルスシートの別の実施形態(第2実施形態)を説明する。本実施形態に関し特に説明しない点については、上述した実施形態に関する説明が適宜適用される。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドに加えて、ラウリルジメチルアミンオキサイドを更に含むように調整されていることが好ましい。ラウリルジメチルアミンオキサイドは両性界面活性剤の一種である。このような化合物を放出液中に更に含むことによって、除ウイルス性能に加えて、除菌性能も清拭後の清拭対象面に発現させることができるとともに、清拭対象面に付着した油脂汚れを放出液によって効率的に除去することができる。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液の25℃におけるpHが好ましくは6.0以上、より好ましくは6.3以上、更に好ましくは6.5以上であり、好ましくは11.0以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8.5以下となるように調整されていることが好ましい。放出液がこのようなpHに調整されていることによって、除ウイルス性能に加えて、除菌性能も清拭後の清拭対象面に発現させることができるとともに、床や調理設備等の表面に付着した皮脂や固化変性した調理油脂などの油脂汚れを乳化させやすくして、一度の清拭で効率的に除去することができる。
本実施形態における放出液のpHに関する傾向は、上述する実施形態と同様の傾向を有する。上述の放出液のpHは、例えば、中性又はアルカリ性の水性液剤をレーヨンやパルプ繊維等のセルロース繊維を含む繊維集合体に含浸させることによって達成することができる。
また放出液に含まれる水溶性溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びフェノキシエタノールのうち少なくとも一種を含むように調整されていることも好ましい。このような溶剤を放出液に含むように調整されることによって、放出液の成分の溶解性を高めることができる。また放出液の表面張力の低下に起因して、放出液が清拭対象面に濡れ広がりやすくなり、除ウイルスや微粒子除去などの各種清拭性能が更に向上する。
本実施形態におけるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以下である。
本実施形態におけるラウリルジメチルアミンオキサイドの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上であり、好ましくは0.06質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
本実施形態におけるプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びフェノキシエタノールの合計含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下である。
また放出液に含まれる水溶性溶剤としてエタノールを更に含むように調整されていることも好ましい。このような溶剤を放出液に含むように調整されることによって、放出液の成分の溶解性を高めることができる。また放出液の表面張力の低下に起因して、放出液が清拭対象面に濡れ広がりやすくなり、除ウイルスや微粒子除去などの各種清拭性能が更に向上する。
本実施形態におけるエタノールの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
放出液に含まれるラウリルジメチルアミンオキサイドの有無及び含有量を調整する場合、構成繊維としてレーヨン繊維やパルプ繊維等を用いる場合には、ラウリルジメチルアミンオキサイドの放出液中の含有量が水性液剤の組成よりも低下する傾向にある。一方、構成繊維としてPET繊維やアクリル繊維等を用いる場合には、ラウリルジメチルアミンオキサイドの放出液中の含有量は水性液剤の組成と同等となる傾向にある。
本実施形態における繊維集合体は、例えば単層構造又は複層構造のスパンレース不織布を用いることができる。スパンレース不織布を用いる場合、例えばレーヨンなどの親水性繊維や合成樹脂繊維を混綿で又は積層して用いることができる。この場合、実使用に耐えうるシート強度を確保する観点から、必要に応じて、合成樹脂製のスクリムネットを配してもよい。
これに代えて、本実施形態における繊維集合体として紙を用いることができる。紙を用いる場合、例えばパルプ繊維を含む分散液を湿式抄紙して得られた湿式抄紙体や、エアレイド不織布を用いることができる。
いずれの場合であっても、除ウイルス性能の向上と、清拭時に生じる摩擦力の低減とを両立する観点から、繊維集合体における清拭対象面と対向する面は、凹凸賦形が施されていることが好ましい。
本実施形態における繊維集合体の構成繊維としては、上述の実施形態と同様に、親水性の繊維を含むことが好ましい。親水性繊維を含む場合、再生繊維としてレーヨン繊維を含むことがより好ましく、レーヨン繊維に加えて合成樹脂繊維を更に含むことが更に好ましく、レーヨン繊維及び合成樹脂繊維のみであることが一層好ましい。またこれに代えて、繊維集合体の構成繊維として、パルプ繊維を含むことが好ましい。
パルプ繊維は、レーヨン繊維と同様に、適度な強度を有しつつ親水性が高いので、除ウイルス性能を広い面積で発現できるため有利である。パルプ繊維は、その構造中にアニオン性となるセルロース骨格を有しているので、水性液剤中のカチオン性のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドや、水性液剤中の両性イオンとなったラウリルジメチルアミンオキサイドとのイオン的相互作用が生じ得ることが推測される。このような場合であっても、放出液に着目して、放出液に所定の成分が含まれるように構成繊維及び水性液剤のうち少なくとも一方の組成が調整されていることによって、除ウイルス性能を清拭後の清拭対象面に十分に発現しつつ、油脂汚れの除去性能を更に高めることができる。
繊維集合体の構成繊維としてレーヨン繊維を含む場合、繊維集合体全体の乾燥質量に対するレーヨン繊維の含有割合は、上述した実施形態と同様の範囲とすることができる。
また、繊維集合体の構成繊維として合成樹脂繊維を含む場合、繊維集合体全体の乾燥質量に対する合成樹脂繊維の総含有割合は、上述した実施形態と同様の範囲とすることができる。
また、繊維集合体の構成繊維としてパルプ繊維を含む場合、繊維集合体全体の乾燥質量に対するパルプ繊維の含有割合は、除ウイルスシートの適用対象に応じて適宜変更可能であるが、放出液の徐放性を高める観点から、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%、更に好ましくは85質量%以下である。
以下に、除ウイルスシートの更に別の実施形態(第3実施形態)を説明する。本実施形態に関し特に説明しない点については、上述した各実施形態に関する説明が適宜適用される。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液の25℃におけるpHが好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上、更に好ましくは4.2以上であり、好ましくは6.0未満、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは5.0以下となるように調整されていることが好ましい。放出液がこのようなpHに調整されていることによって、除ウイルス性能に加えて、除菌性能も清拭後の清拭対象面に効果的に発現させることができるとともに、放出液が使用者の肌に接触した際の肌への刺激性を低減することができる。
本実施形態における放出液のpHに関する傾向は、上述する各実施形態と同様の傾向を有する。上述の放出液のpHは、例えば、中性又は弱酸性の水性液剤をレーヨン繊維やパルプ繊維等のセルロース繊維を含む繊維集合体に含浸させることによって達成することができる。
また放出液に含まれる水溶性溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールの双方を含むように調整されていることも好ましい。このような溶剤を放出液に含むように調整されることによって、放出液の成分の溶解性を高めることができる。また放出液の表面張力の低下に起因して、放出液が清拭対象面に濡れ広がりやすくなり、除ウイルスや微粒子除去などの各種清拭性能が更に向上する。
本実施形態におけるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.007質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
本実施形態における除ウイルスシートは、その放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドに加えて、ラウリルジメチルアミンオキサイドを更に含むように調整されていることも好ましい。この場合、ラウリルジメチルアミンオキサイドの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
本実施形態におけるプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは14質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。
本実施形態におけるポリプロピレングリコールの含有量は、放出液中の質量割合で表して、好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
放出液中において、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールの合計含有量が好ましくは15質量%以上、更に好ましくは17質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下であるように調整されることが好ましい。このような溶剤を上述の割合で放出液に含むように調整されることによって、構成成分の溶解性や放出液の清拭対象面への濡れ性が更に向上する。
また放出液中において、ポリプロピレングリコールの含有質量に対するプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有質量の比が好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上であり、好ましくは3以下、更に好ましくは2以下であるように調整されることがより好ましい。このような溶剤を上述の比率で放出液に含むように調整されることによって、実使用に耐えうるシートの強度をより効果的に発現することができる。
本実施形態における繊維集合体は、例えば紙を用いることができる。紙を用いる場合、例えばパルプ繊維と、必要に応じてバインダ化合物とを含む分散液を湿式抄紙して得られた湿式抄紙体や、エアレイド不織布を用いることができる。
除ウイルス性能の向上と、清拭時に生じる摩擦力の低減とを両立する観点から、繊維集合体における清拭対象面と対向する面は、凹凸賦形が施されていることが好ましい。
本実施形態における繊維集合体の構成繊維としては、シートの水性液剤の担持量の増加と、広い面積を有する清拭対象面への放出液の徐放性とを両立させて、除ウイルス性能を広い面積で発現させる観点から、パルプ繊維のみであることが一層好ましい。
上述したように、放出液に所定の成分が含まれるように構成繊維及び水性液剤のうち少なくとも一方の組成が調整されていることによって、除ウイルス性能を清拭後の清拭対象面に十分に発現できる。
本実施形態の除ウイルスシートは、水分散可能であることが好ましい。「水分散可能」とは、シートを多量の水中に投入すると、該シートの形状が崩れてシートの構成繊維が水中に分散してしまうが、水性薬剤の担持によってはシートの形状が崩壊しないものを指す。このように、シートが水分散可能な性質を有していることによって、周囲環境の清潔さを保つことができ、使用後の除ウイルスシートを水洗トイレ等を介して下水に流すことによって容易に廃棄することができる。
水分散可能か否かの程度は、例えばJIS P4501に準じてほぐれやすさとして測定することができ、この値が低いほどシートの水分散性が良好なものとなる。除ウイルスシートは、JIS P4501に準じて測定したほぐれやすさの時間(水解時間)が、100秒未満であれば水分散可能であることを意味し、好ましくは80秒以下、更に好ましくは60秒以下である。
本実施形態の除ウイルスシートにおいては、シートの湿潤強度を高める観点から、水溶性バインダ化合物を含むことが好ましい。水溶性バインダ化合物は、除ウイルスシートが湿潤状態にあるときに、該シートの構成繊維どうし、好ましくはパルプ繊維どうしの結合を維持する結合剤として機能する。このような水溶性バインダ化合物としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース又はこれらの塩が好ましく挙げられる。これに加えて、シートの湿潤強度を更に高める観点から、カルシウムなどのアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛などの2価金属のイオンを生成する水溶性金属塩を含むことが好ましい。
水溶性バインダ化合物を含む場合、除ウイルスシートにおける水溶性バインダ化合物の含有量は、シートの湿潤強度と水分散性とのバランスをとる観点から、繊維集合体の乾燥質量に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
以下に、上述した各実施形態に共通して適用可能な事項を説明する。
放出液は水を含有するものであるところ、放出液中の水が好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、更に好ましくは83質量%以下となるように調整されることが好ましい。このような範囲で水が放出液中に含有されるように調整することによって、上述した放出液の各成分を放出液に均一に分散させた状態で清拭対象面に適用することができ、除ウイルス性能を清拭対象面にムラなく安定的に発現させることができる。放出液中の水の含有量は、水性液剤中の水の処方、構成繊維の種類、繊維集合体の坪量若しくは厚みなどを適宜変更することによって、調整することができる。
放出液は、上述の成分に加えて、当該技術分野で通常使用される他の成分を更に含むように調整されていてもよい。このような他の成分としては、例えばトリイソプロパノールアミンなどのpH調整剤、香料、色素、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン等が挙げられる。これらの成分は、単独又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。放出液中のこれらの含有量は、それぞれ独立して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
香料としては、成分が水溶性である限りにおいて、調合香料、天然香料の何れでもよい。具体的には、「香料と調香の基礎知識」(中島基貴編著,産業図書株式会社,1995年6月21日初版)、「合成香料-化学と商品知識」(合成香料編集委員会 編集、化学工業日報社、2016年12月20日増補新版)、「Perfume and Flavor Chemicals」(ステファン・アークテンダー著、自費出版、1969年)に記載されている香料成分等を使用することができる。いずれの香料であっても、大気圧下で大気中に揮発して、常温常圧の環境下でその香気を知覚し得るもの等を用いることができる。このような香料として、例えばローズ、ラベンダー、ローズマリー、ジャスミン、イランイラン様の香気を有する成分を用いることができる。
また必要に応じて、除ウイルスシートは、放出液の構成成分として、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド以外のカチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド以外の両性界面活性剤のうち一種以上を更に含むように調整されていてもよい。放出液に含まれ得る他の界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチルヘキシルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル、ラウリルグルコシド等のアルキルグルコシド等といったノニオン性界面活性剤等が挙げられる。他の界面活性剤の放出液中の含有量は、各種化合物の種類応じて適宜変更可能であるが、それぞれ独立して、好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上又は更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下又は更に好ましくは0.05質量%以下である。
放出液に含まれる各種ノニオン性界面活性剤の有無及び含有量を調整する場合、構成繊維としてレーヨン繊維やパルプ繊維等を用いる場合には、ノニオン性界面活性剤の放出液中の各含有量が水性液剤の組成よりも低下する傾向にある。一方、構成繊維としてPET繊維やアクリル繊維等を用いる場合には、ノニオン性界面活性剤の放出液中の各含有量は水性液剤の組成と同等となる傾向にある。
除ウイルスシートの使用に耐えうる強度を十分に確保しつつ、液剤の担持性を高め、除ウイルスシートの意図しない乾燥を防ぐ観点から、除ウイルスシートを構成する繊維集合体の絶乾状態の坪量は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上、更に好ましくは40g/m以上であり、好ましくは200g/m以下、より好ましくは150g/m以下、更に好ましくは100g/m以下である。
シートの強度と柔軟性を向上させる観点から、繊維集合体の厚みは、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下である。繊維集合体の厚みは、除ウイルスシートを乾燥して得られた絶乾状態の繊維集合体に対して、0.3N/m荷重下において、例えばレーザー変位計などを用いて測定することができる。
汚れの除去性と除ウイルス性能とを高いレベルで両立する観点から、繊維集合体に担持されている水性液剤の割合は、絶乾状態の繊維集合体の質量に対して、100質量%以上とすることが好ましく、200質量%以上とすることが更に好ましく、500質量%以下とすることが好ましく、300質量%以下とすることが更に好ましい。
上述した第1実施形態及び第2実施形態の好適な態様として、除ウイルスシートの構成繊維としてレーヨン繊維や合成樹脂繊維を含む場合、除ウイルスシートを構成する繊維集合体は、その少なくとも一方の面にレーヨン繊維及び合成樹脂繊維の少なくとも一方が存在することが好ましく、レーヨン繊維及び合成樹脂繊維の双方が存在することが更に好ましい。このような構成となっていることによって、放出液を清拭対象面に効率よく供給して、除ウイルス性能をより効果的に発揮させることができる。
同様に、第2実施形態の好適な態様として、除ウイルスシートの構成繊維としてパルプ繊維を含む場合、除ウイルスシートを構成する繊維集合体は、その少なくとも一方の面にパルプ繊維が存在することが好ましく、このような構成となっていることによっても、放出液を清拭対象面に効率よく供給して、除ウイルス性能をより効果的に発揮させることができる。
繊維集合体の構成繊維の配置の一実施形態としては、繊維集合体は、例えば(i)第1面及び第2面のうち少なくとも一方の面を含む領域にのみレーヨン繊維及び合成樹脂繊維の少なくとも一方が存在し、シート厚み方向における該領域以外の領域はレーヨン繊維のみ、合成樹脂繊維のみ又はこれらの繊維以外の他の繊維が存在していてもよい。
あるいは、繊維集合体は、例えば(ii)第1面及び第2面のうち少なくとも一方の面を含むシート厚み方向の全域に、レーヨン繊維、パルプ繊維及び合成樹脂繊維の少なくとも一種を含む混綿タイプのものである。
繊維集合体が前記(i)の態様である場合、繊維集合体は、例えば複数の繊維層によって構成された複層構造を有していることが更に好ましい。詳細には、繊維集合体は、第1面を含む第1繊維層と、第2面を含む第2繊維層と、第1繊維層及び第2繊維層と隣接して介在配置された第3繊維層との3層構造によって構成されることが好ましい。第1繊維層及び第2繊維層はそれぞれ、例えばレーヨン繊維又はパルプ繊維と、合成樹脂繊維とが絡合又は融着されて構成されていることが好ましい。第3繊維層は、例えば合成樹脂繊維を含み、該繊維どうしが絡合又は融着して構成されている。
このような構成となっていることによって、シートの実使用に耐えうる十分な強度を確保することができる。これに加えて、複数の繊維層が水性液剤を保持するタンクのような役割を担うので、シートの水性液剤の担持性をより一層高めることができる。更に、放出液を清拭対象面に連続的且つ持続的に供給して、清拭対象面における除ウイルス性能に加えて、汚れの除去性能及び除菌性能の発現をより効果的に広い面積に発現させることができる。このような構成を有するシートは、一枚のシートで広い面積の清拭対象面を清拭する場合に好適に用いることができる。特に本形態は、除ウイルス性能に加えて、タンパク質や油脂を含む汚れを液剤に溶解又は分散させることによって除去するとともに、ホコリ等の微粒子や毛髪などの汚れを繊維にからめとって一度の清拭で除去できるので、例えば床や壁などの硬質表面の清拭に特に好適である。
繊維集合体が複層構造を有する場合、各繊維層の境界面は明瞭となって存在していてもよく、各繊維層の境界面が不明瞭となって存在していてもよい。いずれの場合であっても、除ウイルスシートにおける繊維集合体を厚み方向に沿って見たときに、各繊維層における構成繊維の存在割合が階段状に、連続的に、又はその組み合わせで変化していることが好ましい。
繊維集合体が複層構造を有する場合、各繊維層に存在する繊維、好ましくは各繊維層に存在するレーヨン繊維及び合成樹脂繊維は、それぞれ独立して、繊維の種類が同一であってもよく、異なっていてもよい。「繊維の種類が異なる」とは、繊維の構成成分が異なる場合だけではなく、繊維の構成成分は同じであるが、繊維の太さや物理的構成が異なる場合も包含する。繊維の物理的構成が異なる場合とは、例えば繊維の構成成分としてPEとPPとの二種の合成樹脂を含むが、一方は二種の合成樹脂が混合された混合樹脂繊維であり、他方はPPの芯とPEの鞘とから構成された芯鞘繊維である態様などが挙げられる。
複数の繊維層によって構成された繊維集合体を有する除ウイルスシートは、例えば、各繊維層に相当する不織布を積層した積層体を交絡、接合又は融着させて一体化させて繊維集合体としたあと、該繊維集合体に水性液剤を担持させて得ることができる。第1、第2及び第3繊維層等の複層構造を有する除ウイルスシートは、例えば、第1繊維層及び第2繊維層として、レーヨン繊維又はパルプ繊維と、合成樹脂繊維とを含んで水流交絡させたスパンレース不織布を用い、第3繊維層として、合成樹脂繊維を含み、繊維どうしが融着したエアスルー不織布を用いて、これらの不織布の積層体をヒートロールに通過させてエンボス加工を施して、各繊維層を接合させることによって得ることができる。
あるいは、各繊維層と、スクリムネットとの積層体を水流交絡させて得られたスパンレース不織布を繊維集合体として用い、該繊維集合体に水性液剤を担持させて得ることができる。
繊維集合体が前記(ii)の態様である場合、繊維集合体は、単一の繊維層によって構成されることが好ましい。このような構成となっていることによって、シートの柔軟性を更に高めることができ、清拭対象面にシートを追従させやすくして、清拭対象面への除ウイルス性能の発現を効率的に行うことができる。このような構成を有するシートは、清拭対象面が曲面や凹凸面を有する硬質表面だけでなく、清拭対象面が柔軟性を有する面である場合の清拭に好適に用いることができ、ヒトの手や顔、口等の身体の清拭に特に好適である。
単一の繊維層を有する繊維集合体は、例えば、パルプ繊維の繊維ウエブ、又は、レーヨン繊維若しくはパルプ繊維と、合成樹脂繊維とを所定の割合で混合した繊維ウエブを、必要に応じて繊維ウエブの片面又は両面に配されたてスクリムネットともに水流交絡して、繊維どうしを交絡させたスパンレース不織布として用いることができる。
このような構成となっていることによっても、シートの実使用に耐えうる十分な強度を確保することができる。これに加えて、シートの水性液剤の担持性をより一層高めることができる。更に、放出液を清拭対象面に連続的且つ持続的に供給して、清拭対象面における除ウイルス性能に加えて、汚れの除去性能及び除菌性能の発現をより効果的に広い面積に発現させることができる。このような構成を有するシートは、一枚のシートで広い面積の清拭対象面を清拭する場合に好適に用いることができる。本形態についても、除ウイルス性能に加えて、タンパク質や油脂を含む汚れを液剤に溶解又は分散させることによって除去するとともに、ホコリ等の微粒子や毛髪などの汚れを繊維にからめとって一度の清拭で除去できるので、例えば床や壁などの硬質表面の清拭に特に好適である。
上述した第3実施形態の好適な態様として、除ウイルスシートの構成繊維がパルプ繊維のみから構成される場合、すなわち繊維集合体が紙である場合、例えば以下の方法で繊維集合体を製造して、その後、該繊維集合体に水性液剤を担持させて得ることができる。
このような構成となっていることによって、シートの実使用に耐えうる十分な強度を確保しつつ、水解性を有するシートを生産性高く製造することができる。また、放出液を清拭対象面に連続的且つ持続的に供給して、清拭対象面における除ウイルス性能に加えて、汚れの除去性能及び除菌性能の発現をより効果的に発現させることができる。このような構成を有するシートは、例えばキッチン周りやトイレ、洗面台などの衛生的な環境が要求される硬質表面の清拭に特に好適である。
本形態における繊維集合体の製造方法としては、例えば、パルプ繊維を含む分散液中に、水溶性バインダ化合物と、必要に応じ該バインダ化合物のパルプ繊維への定着剤とを添加して抄紙原料を得、該抄紙原料を用いて湿式抄紙法を実施することによって、湿式抄紙体として得ることができる。この製造方法は、水溶性バインダ化合物を内添する方法である。
これに代えて、例えばパルプ繊維を含む分散液から湿式抄紙法により湿潤状態の中間抄紙体を製造し、該中間抄紙体にプレス脱水処理及び/又は熱風吹き付け等の加熱処理を施して乾燥若しくは半乾燥状態とした後、該中間抄紙体の一方の面又は双方の面に水溶性バインダ化合物を噴霧又は塗布する等して付与し、更に乾燥することで、繊維集合体を製造することができる。この製造方法は、水溶性バインダ化合物を外添する方法である。
湿式抄紙法以外の方法として、例えば、パルプ繊維を乾式によって解繊して繊維ウエブを形成した後、該繊維ウエブに水溶性バインダを噴霧する等して付与し乾燥することで、繊維集合体を製造することができる。この製造方法はエアレイド製法である。
第1実施形態ないし第3実施形態のいずれの場合において、シートの強度を向上させて、清拭時における操作性や取り扱い性を高める観点から、繊維集合体は、清拭対象面と対向する面に、複数の凹部と、該凹部どうしの間に形成された凸部とを有する凹凸形状が形成されていることも好ましい。すなわち繊維集合体は、清拭対象面と対向する面に凹凸賦形が施されていることが好ましい。
繊維集合体への凹凸形状の形成は、例えば、繊維シートに熱を伴うか又は伴わないエンボス加工を施すことで実施することができる。エンボス加工は、例えば、周面に互いに噛み合う凹凸(歯溝)を有する一対の凹凸ロール間に、繊維集合体を供給することで実施することができる。エンボス加工された部位であるエンボス部は典型的には凹部を形成する。エンボス部は、繊維層が厚み方向に圧縮されて、繊維どうしが融着しておらず、繊維の存在密度がエンボス部以外の部位よりも高い部位であるか、繊維どうしが融着している部位であるか、又は厚み方向に貫通した開孔が形成された部位である。
繊維集合体にエンボス部が複数形成されている場合、エンボス部の平面視形状は、それぞれ独立して、真円形、楕円形、あるいは四角形等の多角形状であり得る。この場合、エンボス部のピッチはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。また、繊維集合体を一方向に沿ってみたときのエンボス部の位相はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
繊維集合体に複数のエンボス部が形成されている場合、平面視した際のエンボス部の面積は、開孔1つ当たり、それぞれ独立して、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.2mm以上であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。
またエンボス部の平面視形状が楕円である場合、エンボス部における長軸の長さに対する短軸の長さの比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下である。
繊維集合体における単位面積当たりのエンボス部の数は、100cm当たり、好ましくは100個以上、より好ましくは600個以上であり、好ましくは2000個以下、より好ましくは1000個以下である。このようなエンボス部を形成するためには、例えばニードルパンチ加工や、ヒートロールを用いたエンボス加工等が挙げられる。エンボス部を形成する場合にヒートロールを用いる場合には、繊維集合体に付与される圧力や温度を適宜変更することによって、調整することができる。
除ウイルスシートは、これを単体で用いることができ、又は該シートをワイパー等の清拭用具に取り付けて用いることができる。除ウイルスシートは典型的には使い捨てとすることができる。
除ウイルスシートは、例えば所定の寸法を有する枚葉のシートの態様であり得る。この場合、枚葉のシートが複数枚積層された状態で包装袋又は包装容器に収容された包装体として、製造又は流通させることができる。このような除ウイルスシートは、これを単体で人手で把持するか、又は該シートを清掃用具に取り付けて、床、壁、天井及び柱等の建物、棚、窓ガラス、鏡、ドア、ドアノブ等の建具や、机、食卓、キッチン、トイレなどの備品やその他物品等の硬質表面の清拭に好適に使用される。清掃用具に取り付けて用いることによって、除ウイルスシートの使用者が不自由な姿勢をとることなく清拭対象面を簡便に清拭することができる点で有利である。除ウイルスシートを清掃用具に取り付けて用いる場合、第1実施形態又は第2実施形態の除ウイルスシートと組み合わせて用いることが、広い面積の清拭対象面を清拭した場合であっても除ウイルス性能と、シート強度とを十分に維持して、使用感を高められる点で特に有利である。
これに代えて、除ウイルスシートは、長尺シートの態様であり得る。この場合、長尺シートを巻回した状態で包装袋又は包装容器に収容された包装体として、製造又は流通させることができる。このような除ウイルスシートは、シート単体を人手で把持して用いて、例えばヒトの手や顔、口等の身体の清拭に好適に用いられる。長尺シートの態様である除ウイルスシートは、例えば長手方向に直交する方向に沿って延びるミシン目を、長手方向に沿う所定の間隔で設けて、シートの使用時にミシン目に沿ってシートを切り離し可能に構成されていてもよい。
以上の構成を有する除ウイルスシートは、該シートから放出される放出液が特定の物性や成分を有するように調整されていることによって、シートを用いて清拭対象面を清拭したときに、清拭対象面に存在するウイルスを効果的に除去することができる。この除去性能は、後述する実施例の結果からも支持される。
また除ウイルスシートの好適な態様によれば、シートを用いた清拭によって、除ウイルス性能のみならず、除菌性能も発現させることができ、清拭対象面をより清潔にすることができる。更に、塵やほこりなどの微粒子や毛髪、油脂などといった、一般生活で生じる各種汚れも清拭対象面から除去することができるので、除ウイルス性能、除菌性能及び汚れ除去性能を一度の清拭によって同時に発現させることができる点で、利便性が高いものである。
また本発明は、上述した実施形態の除ウイルスシートを用いて、清拭対象面に存在するウイルスを除去するウイルスの除去方法も提供する。詳細には、本方法は、除ウイルスシートの一方の面と清拭対象面とを接触させることで、除ウイルスシートから清拭対象面に放出液を放出させながら、該清拭対象面に存在するウイルスを除去する。除ウイルス性能を更に高める観点から、除ウイルスシートの一方の面と清拭対象面とを接触させたあと、必要に応じて、各面の接触状態を維持したまま、除ウイルスシートを清拭対象面に向けて押圧したり、除ウイルスシートを清拭対象面上で滑らせたり若しくはこすったりしてもよい。このような操作によって、清拭対象面からウイルスを効果的に除去することができる。本方法において特に説明しない点は、上述した説明が適宜適用される。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、上述の説明では3つの実施形態を例にとり説明したが、本発明の効果が奏される限りにおいて、繊維組成や放出液の組成は、各実施形態で相互に適宜組み合わせることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。表中、「-」で示す欄については、成分が非含有(検出限界未満による非検出も包含する)であるか、又は評価を実施していないことを示す。
〔実施例1ないし9〕
以下の表1に示す構成繊維組成を有する繊維集合体を用い、繊維集合体の絶乾状態の質量に対して水性液剤を含浸させて、除ウイルスシートを製造した。放出液は以下の表1に示す組成であった。なお、表1に示す成分は水性液剤に含まれているものであったが、その組成は放出液の組成と異なっていた。
各実施例における繊維集合体は、第1面及び第2面を含む厚み方向の全域が表1に示す構成繊維によって構成されている。
実施例1の繊維集合体は、ダイワボウポリテック株式会社製RH3-40Bを用い、総坪量が40g/m、厚み0.56mmの単一層のものであった。繊維集合体の構成繊維組成は、レーヨン繊維が80質量%、PP/PE繊維(芯をPP/鞘をPEとした芯鞘タイプの合成樹脂繊維、以下同様である)が20質量%であり、PP/PE繊維中のPP/PE質量比は、PP/PE=9/11であった。
実施例2の繊維集合体は、PP/PE繊維、PET/PE繊維(芯をPET/鞘をPEとした芯鞘タイプの合成樹脂繊維、質量比1/1)、アクリル繊維、レーヨン繊維を表1に示す質量比率で混合した繊維ウエブとし、水流交絡を行うことによって製造された、単一層のスパンレース不織布であった。本実施例の繊維集合体は、総坪量が65g/mであり、厚みが1.1mmであった。
実施例3及び4の繊維集合体は、PET繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維を所定比率で混合して繊維ウエブにして、PPスクリムネット(CONWED社製、型番R03235-8007)に繊維ウエブの片面または両面に重ねて、その状態で水流交絡を行うことによって製造された、単一層のスパンレース不織布であった。本実施例の繊維集合体は、総坪量が70g/mであり、厚みが1.9mmであった。
実施例5の繊維集合体は、ダイワボウポリテック株式会社製RH3-55BSを用い、総坪量が55g/m、厚み0.57mmの単一層のものであった。繊維集合体の構成繊維組成は、レーヨン繊維が80質量%、PP/PE繊維が20質量%であり、PP/PE繊維中のPP/PE質量比は、PP/PE=9/11であった。
実施例6の繊維集合体は、ダイワボウポリテック株式会社製KDH-60Xを用い、総坪量が60g/m、厚み1.35mmの単一層のものであった。繊維集合体の構成繊維組成は、レーヨン繊維(南京レンチング製、繊度1.7dtex×繊維長40mm)70質量%、PET繊維(儀征製、繊度1.56dtex×繊維長38mm)30質量%であった。
実施例7の繊維集合体は、湿式抄紙法で製造された紙である。本実施例の繊維集合体は、伊野紙株式会社製K-2を用い、総坪量が60g/m、厚みが0.8mmの単一層のものであった。繊維集合体の構成繊維組成は、パルプ繊維が90重量%、PET/PE繊維(芯をPET/鞘をPEとした芯鞘タイプの合成樹脂繊維)が10重量%であり、PET/PE繊維中のPET/PE質量比は、PET/PE=9/11であった。
実施例8及び9の繊維集合体は、湿式抄紙法で製造された紙である。実施例の繊維集合体はそれぞれ、総坪量が80g/mであり、厚みが2mmであった。実施例8及び9の繊維集合体は、繊維集合体の絶乾状態の質量に対してパルプ繊維が95質量%含まれ、水溶性バインダ化合物としてのCMCが5質量%含まれていた。
〔比較例1〕
本比較例は、繊維集合体として、JIS L0803に規定される染色堅ろう度試験用添付白布(金巾3号)を用い、水性液剤として、ノニオン性界面活性剤であるポリソルベート80のみを含む水溶液を該繊維集合体に担持させたものとした。
〔放出液のpHの測定〕
実施例及び比較例の除ウイルスシートについて、担持されている液剤を人手で絞って放出液を抽出して、該放出液の25℃におけるpHを株式会社堀場製作所製のLAQUA F-72を用いて測定した。結果を表1に示す。
〔放出液の成分組成及び含有量の測定〕
実施例及び比較例の除ウイルスシートについて、担持されている液剤を人手で絞って放出液を抽出して、該放出液の成分組成及び含有量を上述した方法で測定した。結果を表1に示す。
〔除ウイルス試験による除ウイルス性能の評価〕
実施例及び比較例の除ウイルスシートについて、実施例の組成に応じて、以下の試験法A(表中、単に「A」と示す。)又は試験法B(表中、単に「B」と示す。)の方法に従い、除ウイルス性能を評価した。
<試験法A>
試験法Aは、日本衛生材料工業連合会が定める「ウエットワイパー類の除菌性能試験方法」(以下、この試験方法を「連合会試験方法」ともいう。)に準拠して行った。詳細な手順は以下のとおりである。特に断りのない限り、試験温度は25±1℃の環境下で行った。本試験法は、実施例1及び5~9並びに比較例1のシート(長手方向15cm×幅方向10cm)を対象とした。
(除ウイルス性能評価手順)
(1)A型インフルエンザウイルス(H1N1、A/Puerto Rico/8/1934)を用い、0.3質量%ウシ血清アルブミン水溶液中に前記ウイルス濃度が1.5×10FFU(フォーカスアッセイ法)/mLとなるように、ウイルス溶液を調製した。
(2)フロア材に縦9cm×横1.5cmの塗布領域を設定し、該塗布領域内に10μLのウイルス溶液を乗せ、コンラージ棒を用いて、ウイルス溶液を塗布領域内に30秒間塗り広げた。
(3)フロア材を安全キャビネット内で5分間乾燥させた。
(4)連合会試験方法に記載の標準治具に評価対象のシートを装着し、指定荷重下(62g/cm)で塗布領域の拭き取り操作を行った。このときの拭き取り操作は、塗布領域の縦方向とシートの幅方向とを一致させた状態で、塗布領域の縦方向9cmと、該縦方向よりも手前側及び奥側に各3cm超えた領域との計15cmを片道1秒ずつかけて、5往復行った。
(5)塗布領域を含むふき取り操作を行った領域に、10cmシャーレをかぶせて5分間静置した。
(6)塗布領域を含むふき取り操作を行った領域を、SCDLP培地(消毒液不活性化剤入り培地)含浸スワブで10往復してふき取って、フロア材に残存したウイルスを回収した。
(7)ウイルスを回収したSCDLP培地をボルテックスミキサーで3分間攪拌した。
(8)細胞用無血清培地を用いて、前記(7)のSCDLP培地を10倍ずつ段階希釈した。
(9)前記(8)で段階希釈した培地をMDCK細胞培養系に添加して感染させて、37℃、5%CO雰囲気下で20~24時間静置したあと、フォーカスアッセイ法にて、インフルエンザウイルスの残存感染価(FFU)を測定した。
<試験法B>
本試験方法も同様に、日本衛生材料工業連合会が定める「ウエットワイパー類の除菌性能試験方法」に準拠して行った。本試験法は、実施例2~4並びに比較例1のシート(長手方向28.5cm×幅方向20.5cm)を対象とした。
詳細な手順は、上述した<試験法A>の手順(4)において、治具として清掃用具(花王株式会社製、クイックルワイパー道具本体)を用い、該清掃用具に評価対象のシートを通常の使用方法と同様に装着し、拭き取り操作を行った以外は、<試験法A>の手順と同様の方法で行った。
<除ウイルス性能の評価>
上述した試験法A又は試験法Bによって残存感染価を測定したあと、実施例のシートにおける残存感染価の常用対数値を〔A〕とし、比較例のシートにおける残存感染価の常用対数値を〔B〕としたときに、以下の計算式(1)によって除ウイルス性能を数値化した。除ウイルス性能値が2.0以上であり、またその数値が高いほど、除ウイルス性能が高いものである。結果を表1に示す。
除ウイルス性能値=〔B〕-〔A〕 ・・・(1)
〔除菌試験による除菌性能の評価〕
洗剤・石けん公正取引協議会が定める「住宅用合成洗剤及び石けんの除菌活性試験方法」に準じて、実施例及び比較例の除ウイルスシートの除菌性能を評価した。詳細な手順は以下のとおりである。特に断りのない限り、試験温度は25±1℃の環境下で行った。本試験法は各実施例及び比較例で共通とした。
(除菌性能評価手順)
(1)牛血清アルブミンCohn FractionV(富士フィルム和光純薬製)の30g/L水溶液を調製し、該水溶液を0.45μmフィルターに通過させてろ過滅菌した。
(2)前記(1)のアルブミン溶液と、滅菌済みの1/2ニュートリエント培地(Oxoid社製)とを各1mLずつ混合した溶液に、生菌数が1.0~5.0×10個/mLとなるように大腸菌又は黄色ブドウ球菌を加えて、菌液を調製した。
(3)フナ浅型滅菌シャーレ(φ90mm×15mm)内に置いた滅菌済のステンレス鋼製板(SUS304:表面グレード2B、5cm四方)の上に、前記(2)で調製した菌液の0.01mLを滴下し、該菌液を直径約20mmの円状に塗り広げた。
(4)シャーレにフタをして、塗り広げたステンレス鋼製板上の菌液が目視で乾燥したと判別できる程度まで、約10分程度静置した。
(5)シャーレのフタを開けて、実施例又は比較例の除ウイルスシートを人手で絞って抽出した放出液の0.1mLをステンレス鋼製板における菌液を塗り広げた領域を覆うように塗布した。
(6)シャーレのフタをして、5分間静置した。
(7)シャーレのフタを開けて、シャーレ内にLP希釈液(日本製薬(株)製)を10mL添加して、ステンレス鋼製板の付着物を除去しながら混合して、シャーレ内で細菌抽出液を調製した。
(8)前記(7)の細菌抽出液をSCD培地に塗抹して、該培地を35℃で18~24時間培養した。
(9)培養した培地から生菌を採取して、コロニーカウンターを用い生菌数測定を行った。
<除菌性能の評価>
各実施例のシートで3回実施した結果における生菌数の常用対数値の算術平均値を〔C〕とし、比較例のシートで3回実施した結果における生菌数の常用対数値の算術平均値を〔D〕としたときに、以下の計算式(2)によって除菌性能を数値化した。本評価は放出液を対象として評価しているので、放出液による菌の化学的な不活化の度合いを実質的に評価している。以下の計算式における除菌性能値が2.0以上であり、またその数値が高いほど、除菌性能が高いものである。結果を表1に示す。
除菌性能値=〔D〕-〔C〕 ・・・(2)
Figure 2022033630000001
表1に示すとおり、実施例の除ウイルスシートはいずれも、除ウイルス性能が高く発現していることが判る。これに加えて、実施例の除ウイルスシートはいずれも除菌性能を兼ね備えていることも判る。

Claims (11)

  1. 繊維集合体に水性液剤が担持された除ウイルスシートであって、
    前記シートから清拭対象面に放出される前記水性液剤由来の放出液が、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドと、水溶性溶剤とを含むように、前記繊維集合体の繊維組成及び/又は前記水性液剤の組成が調整されている、除ウイルスシート。
  2. 前記放出液の25℃におけるpHが3.0以上6.0未満であり、
    前記放出液が、乳酸と、安息香酸塩とを更に含み、
    前記水溶性溶剤としてジプロピレングリコールを含むように、前記繊維集合体の繊維組成及び/又は前記水性液剤の組成が調整されている、請求項1に記載の除ウイルスシート。
  3. 前記放出液の25℃におけるpHが6.0以上11.0以下であり、
    前記放出液が、ラウリルジメチルアミンオキサイドを更に含み、
    前記水溶性溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール及びフェノキシエタノールのうち少なくとも一種を含むように、前記繊維集合体の繊維組成及び/又は前記水性液剤の組成が調整されている、請求項1に記載の除ウイルスシート。
  4. 前記繊維集合体の構成繊維がパルプ繊維からなり、
    前記放出液の25℃におけるpHが3.0以上6.0未満であり、
    前記水溶性溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールを含むように、前記水性液剤の組成が調整されている、請求項1に記載の除ウイルスシート。
  5. 前記放出液中のプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールの合計含有量が15質量%以上25質量%以下であり、
    前記放出液中のポリプロピレングリコールの含有質量に対する、前記放出液中のプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有質量の比が1以上3以下であるように、前記水性液剤の組成が調整されている、請求項4に記載の除ウイルスシート。
  6. 前記繊維集合体の構成繊維としてパルプ繊維を含む、請求項3に記載の除ウイルスシート。
  7. 前記繊維集合体の構成繊維として、レーヨン繊維及び合成樹脂繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の除ウイルスシート。
  8. 清掃用具に取り付けて用いられる、請求項1~3、7のいずれか一項に記載の除ウイルスシート。
  9. 硬質表面の清拭に用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の除ウイルスシート。
  10. エンベロープ型ウイルスの除去に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の除ウイルスシート。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の除ウイルスシートの一方の面と清拭対象面とを接触させることで、前記シートから清拭対象面に前記水性液剤由来の放出液を放出させて、該清拭対象面に存在するウイルスを除去する、ウイルスの除去方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023210498A1 (ja) * 2022-04-27 2023-11-02 花王株式会社 ワイピングシート

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