以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
また、以下に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
また、以下に記載される説明における、相対的または絶対的な位置関係を示す表現、たとえば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」または「同軸」などは、特に断らない限りは、その位置関係を厳密に示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において角度または距離が変位している場合を含むものとする。
また、以下に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、たとえば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合を含むものとする。
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
また、以下に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「甲の上面に設けられる乙」と記載される場合、甲と乙との間に別の構成要素「丙」が介在することを妨げるものではない。
<実施の形態>
以下、本実施の形態に関する熱処理装置および熱処理方法について説明する。
<熱処理装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関する熱処理装置100の構成の例を概略的に示す平面図である。また、図2は、本実施の形態に関する熱処理装置100の構成の例を概略的に示す正面図である。
図1に例が示されるように、熱処理装置100は、基板として円板形状の半導体ウエハWにフラッシュ光を照射して当該半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
処理対象となる半導体ウエハWのサイズは特に限定されるものではないが、たとえばφ300mmまたはφ450mmの円形である。
図1および図2に示されるように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウエハWを外部から装置内に搬入するとともに、処理済みの半導体ウエハWを装置外に搬出するためのインデクサ部101と、未処理の半導体ウエハWの位置決めを行うアライメント部230と、加熱処理後の半導体ウエハWの冷却を行う2つの冷却部130および冷却部140と、半導体ウエハWにフラッシュ加熱処理を施す熱処理部160と、冷却部130、冷却部140および熱処理部160に対して半導体ウエハWの受け渡しを行う搬送ロボット150とを備える。
また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して、半導体ウエハWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施の形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウエハWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウエハWを収納する受渡ロボット120とを備えている。
未処理の半導体ウエハWを収容するキャリアCは、無人搬送車(AGV、OHT)などによって搬送されてロードポート110に載置されるとともに、処理済みの半導体ウエハWを収容するキャリアCは、無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウエハWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUで示されるように昇降移動可能に構成されている。
なお、キャリアCの形態としては、半導体ウエハWを密閉空間に収納するfront opening unified pod(FOUP)の他に、standard mechanical inter face(SMIF)ポッド、または、収納された半導体ウエハWを外気に曝すopen cassette(OC)であってもよい。
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sによって示されるようなスライド移動、矢印120Rによって示されるような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これによって、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウエハWの出し入れを行うとともに、アライメント部230および2つの冷却部130および冷却部140に対して半導体ウエハWの受け渡しを行う。
受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウエハWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動によって行われる。また、受渡ロボット120と、アライメント部230または冷却部130(冷却部140)との半導体ウエハWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
アライメント部230は、Y軸方向に沿ったインデクサ部101の側方に接続されて設けられている。アライメント部230は、半導体ウエハWを水平面内で回転させてフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部230は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー231の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウエハWの周縁部に形成されたノッチまたはオリフラなどを光学的に検出する機構などを設けて構成される。
アライメント部230への半導体ウエハWの受け渡しは、受渡ロボット120によって行われる。受渡ロボット120からアライメントチャンバー231へは、ウエハ中心が所定の位置に位置するように半導体ウエハWが渡される。
アライメント部230では、インデクサ部101から受け取った半導体ウエハWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで半導体ウエハWを回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウエハWの向きを調整する。向き調整の終了した半導体ウエハWは、受渡ロボット120によってアライメントチャンバー231から取り出される。
搬送ロボット150による半導体ウエハWの搬送空間として、搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられている。その搬送チャンバー170の三方に熱処理部160のチャンバー6、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141が連通接続されている。
熱処理装置100の主要部である熱処理部160は、予備加熱(アシスト加熱)を行った半導体ウエハWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。この熱処理部160の構成についてはさらに後述する。
2つの冷却部130および冷却部140は、概ね同様の構成を備える。冷却部130および冷却部140はそれぞれ、アルミニウム合金製の筐体である第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートと、その上面に載置された石英板とを備える(いずれも図示省略)。当該冷却プレートは、ペルチェ素子または恒温水循環によって常温(約23℃)に温調されている。
熱処理部160においてフラッシュ加熱処理が施された半導体ウエハWは、第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入されて、当該石英板に載置されて冷却される。
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141はともに、インデクサ部101と搬送チャンバー170との間において、それらの双方に接続されている。
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141には、半導体ウエハWを搬入出するための2つの開口が形設されている。第1クールチャンバー131の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口は、ゲートバルブ181によって開閉可能とされている。
一方、第1クールチャンバー131の搬送チャンバー170に接続される開口は、ゲートバルブ183によって開閉可能とされている。すなわち、第1クールチャンバー131とインデクサ部101とはゲートバルブ181を介して接続され、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170とはゲートバルブ183を介して接続されている。
インデクサ部101と第1クールチャンバー131との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ181が開放される。また、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ183が開放される。ゲートバルブ181およびゲートバルブ183が閉鎖されているときには、第1クールチャンバー131の内部が密閉空間となる。
また、第2クールチャンバー141の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ182によって開閉可能とされている。一方、第2クールチャンバー141の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ184によって開閉可能とされている。すなわち、第2クールチャンバー141とインデクサ部101とはゲートバルブ182を介して接続され、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170とはゲートバルブ184を介して接続されている。
インデクサ部101と第2クールチャンバー141との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ182が開放される。また、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ184が開放される。ゲートバルブ182およびゲートバルブ184が閉鎖されているときには、第2クールチャンバー141の内部が密閉空間となる。
チャンバー6に隣接して設置された搬送チャンバー170に設けられた搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rで示すように旋回可能とされる。搬送ロボット150は、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウエハWを保持する搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bが設けられている。これらの搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によってそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。
また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することによって、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bを昇降移動させる。
搬送ロボット150が第1クールチャンバー131、第2クールチャンバー141または熱処理部160のチャンバー6を受け渡し相手として半導体ウエハWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウエハWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウエハWの受け渡しを行う。
搬送ロボット150と受渡ロボット120との半導体ウエハWの受け渡しは冷却部130および冷却部140を介して行うことができる。すなわち、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141は、搬送ロボット150と受渡ロボット120との間で半導体ウエハWを受け渡すためのパスとしても機能するものである。具体的には、搬送ロボット150または受渡ロボット120のうちの一方が第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に渡した半導体ウエハWを他方が受け取ることによって半導体ウエハWの受け渡しが行われる。搬送ロボット150および受渡ロボット120によって半導体ウエハWをキャリアCから熱処理部160にまで搬送する搬送機構が構成される。
上述したように、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181またはゲートバルブ182が設けられている。また、搬送チャンバー170と第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141との間にはそれぞれゲートバルブ183またはゲートバルブ184が設けられている。さらに、搬送チャンバー170と熱処理部160のチャンバー6との間にはゲートバルブ185が設けられている。熱処理装置100内において半導体ウエハWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。
図3は、本実施の形態に関する熱処理装置100における熱処理部160の構成を概略的に示す断面図である。
図3に例が示されるように、熱処理部160は、基板としての円板形状の半導体ウエハWに対してフラッシュ光照射を行うことによって、その半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
処理対象となる半導体ウエハWのサイズは特に限定されるものではないが、たとえばφ300mmまたはφ450mmである(本実施の形態ではφ300mm)。
熱処理部160は、半導体ウエハWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4とを備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。
また、熱処理部160は、チャンバー6の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う移載機構10とを備える。
さらに、熱処理部160は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウエハWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英によって形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英によって形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68および反射リング69は、ともに円環状に形成されている。
上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68および反射リング69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。
チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61、反射リング68および反射リング69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68および反射リング69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68および反射リング69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。
凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウエハWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68および反射リング69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(たとえば、ステンレススチール)で形成されている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウエハWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は、凹部62の外周面に連通接続されている。
このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウエハWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウエハWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61a、貫通孔61bおよび貫通孔61cが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。貫通孔61bは、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61cは、フラッシュ光が照射される際に変位が生じ得る半導体ウエハWの画像を少なくとも1つのカメラ142によって撮像するための円筒状の孔である。貫通孔61a、貫通孔61bおよび貫通孔61cは、それらの貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。
赤外線センサー29は、たとえば、量子型赤外線センサーなどである。また、赤外線センサー24は、たとえば、焦電効果を利用する焦電センサー、ゼーベック効果を利用するサーモパイル、または、熱による半導体の抵抗変化を利用するボロメータなどの熱型赤外線センサーである。また、カメラ142は、たとえば、CCDカメラなどである。
貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。また、貫通孔61cの熱処理空間65に臨む側の端部には、光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26aが装着されている。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていてもよい。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。
ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。
緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、たとえば窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施の形態では窒素ガス)。
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が設けられている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていてもよい。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。
なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていてもよいし、スリット状のものであってもよい。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理部160に設けられた機構であってもよいし、熱処理部160が設置される工場のユーティリティであってもよい。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英で形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英で形成されている。
基台リング71は、円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図3を参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施の形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
サセプタ74は、基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図5は、サセプタ74の平面図である。また、図6は、サセプタ74の断面図である。
サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英で形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は、半導体ウエハWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウエハWよりも大きな平面サイズを有する。
保持プレート75の上面周縁部には、ガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウエハWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。たとえば、半導体ウエハWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。
ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英で形成される。
ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしてもよいし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしてもよい。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしてもよい。
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウエハWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の支持ピン77が設けられている。本実施の形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に合計12個の支持ピン77が環状に立設されている。
12個の支持ピン77を配置した円の径(対向する支持ピン77間の距離)は半導体ウエハWの径よりも小さく、半導体ウエハWの径がφ300mmであればφ210mm~φ280mmである。支持ピン77は、3本以上設けられる。それぞれの支持ピン77は石英で形成されている。
複数の支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしてもよいし、保持プレート75と一体に加工するようにしてもよい。
図4に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
チャンバー6に搬入された半導体ウエハWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢で載置されて保持される。このとき、半導体ウエハWは保持プレート75上に立設された12個の支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の支持ピン77の上端部が半導体ウエハWの下面に接触して当該半導体ウエハWを支持する。
12個の支持ピン77の高さ(支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の支持ピン77によって半導体ウエハWを水平姿勢に支持することができる。
また、半導体ウエハWは複数の支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の支持ピン77によって支持された半導体ウエハWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
また、図4および図5に示されるように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20が半導体ウエハWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウエハWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウエハWの温度を測定する。
さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウエハWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
図7は、移載機構10の平面図である。また、図8は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。
それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英で形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウエハWの移載を行う移載動作位置(図7の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウエハWと平面視で重ならない退避位置(図7の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。
水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであってもよいし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであってもよい。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において上昇させると、合計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図4および図5参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。
一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図3に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施の形態では30本)のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52とを備えて構成される。
また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英によって形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。
フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウエハWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。
キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。
なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板で形成されており、その上面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施の形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウエハWを加熱する。
図9は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。
各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウエハWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図9に示されるように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウエハWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウエハWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように合計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。
したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウエハWへの放射効率が優れたものとなる。
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図3)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
図3に示されるように、チャンバー6には、上部放射温度計25および下部放射温度計20の2つの放射温度計(本実施の形態ではパイロメーター)が設けられている。上部放射温度計25はサセプタ74に保持された半導体ウエハWの斜め上方に設置されるとともに、下部放射温度計20はサセプタ74に保持された半導体ウエハWの斜め下方に設けられている。
図10は、下部放射温度計20、上部放射温度計25、カメラ142および制御部3の関係性を示す図である。
半導体ウエハWの斜め下方に設けられて半導体ウエハWの下面の温度を測定する下部放射温度計20は、赤外線センサー24および温度測定ユニット22を備える。
赤外線センサー24は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を受光する。赤外線センサー24は、温度測定ユニット22と電気的に接続されており、受光に応答して生じた信号を温度測定ユニット22に伝達する。
温度測定ユニット22は、図示を省略する増幅回路、A/Dコンバータおよび温度変換回路などを備えており、赤外線センサー24から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット22によって求められた温度が半導体ウエハWの下面の温度である。
一方、半導体ウエハWの斜め上方に設けられて半導体ウエハWの上面の温度を測定する上部放射温度計25は、赤外線センサー29および温度測定ユニット27を備える。赤外線センサー29は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を受光する。赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウエハWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。赤外線センサー29は、温度測定ユニット27と電気的に接続されており、受光に応答して生じた信号を温度測定ユニット27に伝達する。
温度測定ユニット27は、赤外線センサー29から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット27によって求められた温度が半導体ウエハWの上面の温度である。
下部放射温度計20および上部放射温度計25は、熱処理部160全体のコントローラである制御部3と電気的に接続されており、下部放射温度計20および上部放射温度計25によってそれぞれ測定された半導体ウエハWの下面および上面の温度は制御部3に伝達される。
また、カメラ142は、フラッシュ光が照射される際に(たとえば、サセプタ74から跳ねるなどの)変位が生じ得る半導体ウエハWの画像を撮像する。望ましくは高速シャッター可能なカメラ142で半導体ウエハWの画像を連続撮像する。カメラ142は、算出部143に接続されており、カメラ142の撮像によって得られた画像データは、算出部143へ入力される。なお、カメラ142は1つのみ備えられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
算出部143は、カメラ142から入力された画像データを解析することによって得られる、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの変位および加速度をさらに高速フーリエ変換(fast fourier transform、すなわち、FFT)することによって、半導体ウエハWの周波数分布である測定周波数分布を算出する。測定周波数分布に関するデータは、分類部144へ入力される。
分類部144は、算出部143から入力された測定周波数分布と、記憶部145においてあらかじめ記憶されている第1の周波数分布および第2の周波数分布との類似度に基づいて、測定周波数分布の分類を行う。測定周波数分布、測定周波数分布の第1の周波数分布との類似度、測定周波数分布の第2の周波数分布との類似度、および、測定周波数分布の分類に関するデータは、制御部3へ入力される。
ここで、記憶部145は、たとえば、ハードディスクドライブ(Hard disk drive、すなわち、HDD)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、すなわち、RAM)、リードオンリーメモリ(read only memory、すなわち、ROM)、フラッシュメモリ、erasable programmable read only memory(EPROM)およびelectrically erasable programmable read-only memory(EEPROM)などの、揮発性または不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVDなどを含むメモリ(記憶媒体)、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
制御部3は、熱処理部160に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。また、制御部3は、分類部144から入力される測定周波数分布の分類に基づいて、たとえば、当該測定周波数分布が半導体ウエハWに割れが生じにくい場合に分類される設定条件であれば、以降の基板処理において採用可能な設定条件として記憶部145に記憶させる。また、制御部3は、後述するように、測定周波数分布を第2の周波数分布に近づける振動調整のための制御を行う。
また、制御部3には表示部33および入力部34が接続されている。制御部3は、表示部33に種々の情報を表示する。入力部34は、熱処理装置100のオペレータが制御部3に種々のコマンドまたはパラメータを入力するための機器である。オペレータは、表示部33の表示内容を確認しつつ、入力部34から半導体ウエハWの処理手順および処理条件を記述した処理レシピの条件設定を行うこともできる。
制御部3、算出部143および分類部144のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3、算出部143および分類部144は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理部160における処理が進行する。
表示部33および入力部34としては、双方の機能を兼ね備えたタッチパネルを用いることもでき、本実施の形態では熱処理装置100の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用している。
上記の構成以外にも熱処理装置100は、半導体ウエハWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。
たとえば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
<熱処理装置の動作について>
次に、熱処理装置100における半導体ウエハWの処理手順について説明する。図11は、半導体ウエハWの処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89およびバルブ192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置100における半導体ウエハWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウエハWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップST1)。このときには、半導体ウエハWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
搬送ロボットによって搬入された半導体ウエハWは、保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウエハWを受け取る。このとき、リフトピン12は支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
半導体ウエハWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウエハWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウエハWは、保持プレート75上に立設された複数の支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウエハWは、被処理面を上面として保持部7に保持される。複数の支持ピン77によって支持された半導体ウエハWの下面(上面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
図12は、半導体ウエハWの上面の温度の変化を示す図である。半導体ウエハWがチャンバー6内に搬入されてサセプタ74に保持された後、時刻t1にハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップST2)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウエハWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウエハWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることはない。
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウエハWの温度は下部放射温度計20によって測定される。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して下部放射温度計20が受光して半導体ウエハWの下面の温度を測定する。なお、ハロゲンランプHLによる予備加熱を開始する前から下部放射温度計20による温度測定を開始するようにしてもよい。
下部放射温度計20によって半導体ウエハWの下面の温度を非接触で測定する際には、当該下面の放射率を下部放射温度計20に設定する必要がある。半導体ウエハWの下面に膜が形成されていなければウエハ基材であるシリコンの放射率を下部放射温度計20に設定すればよいところ、半導体ウエハWの下面にも膜が形成されていると、下面の放射率も膜によって変動することとなる。
下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの下面の温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウエハWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。このように下部放射温度計20は、予備加熱段階においてハロゲンランプHLの出力を制御するための温度センサーでもある。なお、下部放射温度計20は半導体ウエハWの下面の温度を測定しているが、ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階では半導体ウエハWの上下面に温度差が生じることはなく、下部放射温度計20によって測定される下面の温度は半導体ウエハW全体の温度であるとみなすことができる。また、予備加熱温度T1は、半導体ウエハWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、たとえば、200℃以上、かつ、800℃以下であり、好ましくは350℃以上、かつ、600℃以下である(本実施の形態では600℃)。
半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウエハWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達した時刻t2に制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウエハWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウエハWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウエハWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウエハWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウエハWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウエハWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t3にフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面にフラッシュ光照射を行う(ステップST3)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウエハWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウエハWの上面の温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射により、半導体ウエハWの上面の温度は極めて短時間のうちに急激に上昇する。
半導体ウエハWの上面の温度は上部放射温度計25によって監視されている。但し、上部放射温度計25は、半導体ウエハWの上面の絶対温度を測定するものではなく、当該上面の温度変化を測定する。すなわち、上部放射温度計25は、フラッシュ光照射時の予備加熱温度T1からの半導体ウエハWの上面の上昇温度(ジャンプ温度)ΔTを測定するのである。なお、フラッシュ光照射時にも半導体ウエハWの下面の温度が下部放射温度計20によって測定されているものの、照射時間が極めて短く強度の強いフラッシュ光を照射したときには、半導体ウエハWの表面近傍のみが急激に加熱されるため、半導体ウエハWの上下面で温度差が生じ、下部放射温度計20によっては半導体ウエハWの上面の温度を測定することはできない。下部放射温度計20および上部放射温度計25の半導体ウエハWに対する受光角は60°以上、かつ、89°以下であるため、半導体ウエハWの上面に成膜されている膜の種類にかかわらず、上部放射温度計25によって半導体ウエハWの上面の上昇温度ΔTを正確に測定することができる。
また、複数のカメラ142を用いて、フラッシュ光が照射された後に、サセプタ74から跳ねるなどの変位が生じ得る半導体ウエハWの画像を撮像する(ステップST4)。望ましくは高速シャッター可能なカメラ142で半導体ウエハWの画像を連続撮像する。カメラ142の撮像によって得られた画像データは、算出部143へ入力される。
また、制御部3がフラッシュ光照射時に半導体ウエハWの上面が到達した最高温度を算定する。半導体ウエハWの下面の温度は少なくとも予備加熱時に半導体ウエハWが一定温度に到達した時刻t2からフラッシュ光が照射される時刻t3までの間は継続して下部放射温度計20によって測定されている。フラッシュ光照射前の予備加熱の段階では半導体ウエハWの上下面に温度差が生じておらず、フラッシュ光照射前に下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの下面の温度は上面の温度でもある。制御部3は、フラッシュ光を照射する直前の時刻t2から時刻t3までの間に下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの下面の温度(予備加熱温度T1)に上部放射温度計25によって測定されたフラッシュ光照射時の半導体ウエハWの上面の上昇温度ΔTを加算して当該上面の最高到達温度T2を算定する。制御部3は、算定した最高到達温度T2を表示部33に表示するようにしてもよい。最高到達温度T2は、たとえば、800℃以上、かつ、11100℃以下となることが想定され、好ましくは1000℃以上、かつ、1100℃以下となることが想定される(本実施の形態では1000℃)。
下部放射温度計20によって正確に測定された半導体ウエハWの下面の温度(=上面の温度)に上部放射温度計25によって測定された半導体ウエハWの上面の上昇温度ΔTを加算することによって、フラッシュ光照射時の半導体ウエハWの上面の最高到達温度T2を正確に算定することができる。
フラッシュ光照射が終了した後、所定時間経過後の時刻t4にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウエハWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウエハWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウエハWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウエハWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウエハWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウエハWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウエハWの加熱処理が完了する(ステップST5)。
<測定周波数分布の分類について>
以下では、図11におけるステップST4で得られた画像データに基づいて半導体ウエハWの周波数分布である測定周波数分布を算出し、さらに、当該測定周波数分布を分類する動作について、説明する。なお、当該動作は、算出部143と分類部144とによって行われる。
図13は、カメラ142によって撮像された画像データを算出部143において解析することによって得られる、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの変位の例を示す図である。図13において、縦軸は高さ(鉛直方向の変位)を示し、横軸は時間を示す。なお、縦軸および横軸の目盛は、具体的な数値に対応するものではなく、便宜的に示された概念的な値に過ぎないものとする。また、図13においては、半導体ウエハWの鉛直方向の変位が示されているが、画像データを解析することによって得られる半導体ウエハWの変位の方向は、鉛直方向に限られるものではない。
図13には、フラッシュランプFLに3パターンの電圧値が印加された場合に対応する3つのグラフ(電圧値が低い順にA、B、Cパターンとする)が示されている。なお、図13においては、Aパターンが実線、Bパターンが点線、Cパターンが太線で示される。
一方で、図14は、図13に例が示された半導体ウエハWの変位および加速度を算出部143において高速フーリエ変換することによって得られる、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの周波数分布(測定周波数分布)の例を示す図である。図14において、縦軸は振幅を示し、横軸は周波数を示す。なお、縦軸および横軸の目盛は、具体的な数値に対応するものではなく、便宜的に示された概念的な値に過ぎないものとする。
フラッシュ光が照射されると、半導体ウエハWの上面の温度が瞬間的に高温(たとえば、1000℃以上)になる一方で、半導体ウエハWの下面の温度は予備加熱温度から大きくは上昇しない。そのため、半導体ウエハWの上下面に大きな温度差が生じる。そうすると、半導体ウエハWの上面のみにおいて急激な熱膨張が生じるため、半導体ウエハWは、その上面が凸形状となるように反る。次の瞬間には、半導体ウエハWの上面から下面へ熱が伝わるとともに、上記の反りの反動によって、半導体ウエハWは、その下面が凸形状となるように反る。以降、半導体ウエハWは、その上下面が交互に凸形状となるように反る動作を繰り返すことによって振動する。当該振動の態様は、フラッシュ光を照射する際の条件(たとえば、出力エネルギーまたはパルス幅など)、または、フラッシュ光が照射される前の半導体ウエハWの温度分布などに依存するものと考えられる。なお、半導体ウエハWがサセプタ74から跳ねる場合、上記の振動は半導体ウエハWがサセプタ74から離れている間にも継続される。
図14には、フラッシュランプFLに3パターンの電圧値が印加された場合に対応する、上記の振動を示す3つのグラフ(電圧値が低い順にA、B、Cパターンとする)が示されている。なお、図14においては、Aパターンが実線、Bパターンが点線、Cパターンが太線で示される。
図14に示された測定周波数分布に対し、分類部144は、第1の周波数分布および第2の周波数分布を用いて類似度を算出する。分布間の類似度は、たとえば、ユークリッド距離などを用いて算出される。そして、第1の周波数分布および第2の周波数分布のうち、より高い類似度となる周波数分布と同じグループに属するものとして、測定周波数を分類する。
ここで、第1の周波数分布および第2の周波数分布は、それぞれあらかじめ記憶部145に記憶されている。第1の周波数分布とは、フラッシュ光が照射された後に割れが生じた半導体ウエハWの周波数分布である。たとえば、第1の周波数分布とは、フラッシュ光が照射された後に割れが生じた半導体ウエハWの、複数の周波数分布パターンの集合であってもよいし、そのような周波数分布パターンの集合の平均値であってもよい。一方で、第2の周波数分布とは、フラッシュ光が照射された後に割れが生じなかった半導体ウエハWの周波数分布である。たとえば、第2の周波数分布とは、フラッシュ光が照射された後に割れが生じなかった半導体ウエハWの、複数の周波数分布パターンの集合であってもよいし、そのような周波数分布パターンの集合の平均値であってもよい。
測定周波数分布が第1の周波数分布と同じグループに属するものとして分類されることは、測定周波数分布が、第1の周波数分布と同じ結果(すなわち、フラッシュ光が照射された後に割れが生じる)となりやすい周波数分布であると分類されることを意味する。
同様に、測定周波数分布が第2の周波数分布と同じグループに属するものとして分類されることは、測定周波数分布が、第2の周波数分布と同じ結果(すなわち、フラッシュ光が照射された後に割れが生じない)となりやすい周波数分布であると分類されることを意味する。
第1の周波数分布および第2の周波数分布それぞれは、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの実際の周波数分布のデータと、当該半導体ウエハWに実際に割れが生じたか否かの結果のデータとが関連づけられて、記憶部145に順次記憶されることによって生成される。なお、第1の周波数分布および第2の周波数分布を蓄積するに当たっては、フラッシュランプFLの出力エネルギーまたはパルス幅などの設定条件を様々に変更することができる。
ここで、分類部144による分類は、機械学習によってあらかじめ作成された学習済みモデルを用いて行われてもよい。その場合、まず、第1の周波数分布および第2の周波数分布を、対応する周波数分布での半導体ウエハWにおける割れの有無と関連づけて教師データとする。そして、当該教師データを用いて、たとえば、ニューラルネットワークを用いて学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。
<測定周波数分布の調整について>
また、制御部3は、測定周波数分布が第2の周波数分布に近づくように、半導体ウエハWに生じる振動を調整することができる。具体的には、振幅への寄与が大きい周波数成分を調整することによって、半導体ウエハWに生じる振動を調整することができる。
ここで、振幅への寄与が大きい周波数成分の特定には、まず、制御部3は、設定条件のうち、フラッシュランプFLの出力エネルギーを変化させていき、その際の測定周波数分布におけるそれぞれの周波数成分の、出力エネルギーに対する振幅の相関を調べる。そして、それぞれの周波数成分における相関係数を算出する。
図15は、ある周波数成分における、出力エネルギーと振幅との相関の例を示す図である。図15においては、縦軸が振幅を示し、横軸が出力エネルギーを示す。
図15に例が示されるように、出力エネルギーがE1、E2、E3の順に変化した場合に、当該周波数成分の振幅がA1、A2、A3の順に変化した場合、これらのプロットに対する近似線の傾きが相関係数に対応する。なお、近似線は、直線である場合に限られるものではなく、曲線であってもよい。
そして、制御部3は、上記と同様に、他の設定条件(たとえば、フラッシュ光のパルス幅などが異なる設定条件)でも、それぞれの周波数成分における相関係数を算出する。
次に、制御部3は、複数の設定条件間で対応する周波数成分の相関係数同士を乗算して特徴量とし、振幅への寄与が大きい周波数成分を特定する。具体的には、相関が低い周波数成分の相関係数が0に近づくことを利用して、相関係数同士の乗算後に1に近い特徴量に対応する周波数成分(およびその逓倍の周波数成分)を、振幅への寄与が大きい周波数成分として特定する。
次に、周波数成分を調整するための具体的な手段について説明する。図16は、複数のダンパー機構280を備える保持部7aの構成の例を示す断面図である。なお、ダンパー機構280は、1つであってもよい。
図16に例が示されるように、保持部7aにおいては、保持プレート75の下面に複数のダンパー機構280が配置され、さらに、ダンパー機構280の下面に連結部72が配置される。すなわち、ダンパー機構280が、保持プレート75と連結部72との間に配置される。
ここで、ダンパー機構280は、半導体ウエハWに生じる振動を調整するものであり、弾性を有するバネ280aと、バネ280aの伸縮変位を抑制する可変ダンパー280bとを備える。
制御部3は、可変ダンパー280bの制御量を調整する(複数のダンパー機構280間で互いに異なる制御量であってもよい)ことによって、保持プレート75、さらには、保持プレート75に支持ピン77を介して支持される半導体ウエハWに生じる振動を間接的に制御することができる。よって、制御部3は、測定周波数分布を、第2の周波数分布に近づくように調整することができる。
なお、可変ダンパー280bの制御量と任意の周波数成分の変化量との関係は、それぞれの設定条件(出力エネルギーまたはパルス幅など)ごとにあらかじめ実験などによって測定されており、それらを関連づけて記憶する対応テーブルが記憶部145に記憶されているものとする。制御部3は、対応する周波数成分の相関係数の正負も含めて考慮し、可変ダンパー280bの制御量を決定する。
図17は、複数のダンパー機構281を備える保持部7bの構成の例を示す断面図である。なお、ダンパー機構281は、1つであってもよい。
図17に例が示されるように、保持部7bのサセプタ74bにおいては、保持プレート75の上面に複数のダンパー機構281が配置され、さらに、ダンパー機構281の上端に半導体ウエハWが配置される。すなわち、ダンパー機構281が、保持プレート75と半導体ウエハWとの間に配置され、支持ピンの代わりに半導体ウエハWを支持する。
ここで、ダンパー機構281は、半導体ウエハWに生じる振動を調整するものであり、ダンパー機構280と同様に、弾性を有するバネと、バネの伸縮変位を抑制する可変ダンパーとを備える。なお、ダンパー機構281は、保持プレート75を貫通して設けられていてもよい。また、ダンパー機構281は、図16におけるダンパー機構280とともに設けられてもよい。
制御部3は、ダンパー機構281における可変ダンパーの制御量を調整する(複数のダンパー機構281間で互いに異なる制御量であってもよい)ことによって、ダンパー機構281によって支持される半導体ウエハWに生じる振動を直接的に制御することができる。よって、制御部3は、測定周波数分布を、第2の周波数分布に近づくように調整することができる。
なお、ダンパー機構281における可変ダンパーの制御量と任意の周波数成分の変化量との関係は、それぞれの設定条件(出力エネルギーまたはパルス幅など)ごとにあらかじめ実験などによって測定されており、それらを関連づけて記憶する対応テーブルが記憶部145に記憶されているものとする。制御部3は、対応する周波数成分の相関係数の正負も含めて考慮し、ダンパー機構281における可変ダンパーの制御量を決定する。
図18は、複数の超音波振動子282を備える保持部7cの構成の例を示す断面図である。なお、超音波振動子282は、1つであってもよい。
図18に例が示されるように、保持部7cにおいては、チャンバー6内において複数の超音波振動子282が配置される。それぞれの超音波振動子282は、支持ピン77に支持された状態の半導体ウエハWの上面に向けて超音波を発生させる向きに配置されている。それぞれの超音波振動子282は、超音波によって、半導体ウエハWに生じる振動を調整する。
超音波振動子282は、高周波電力を超音波振動に変換する機器であり、電歪型または磁歪型のいずれであってもよい。なお、超音波振動子282は、図18においては半導体ウエハWの上方において半導体ウエハWから離間して配置されているが、超音波振動子282の配置位置はこの場合に限られるものではない。また、超音波振動子282は、図16におけるダンパー機構280および図17におけるダンパー機構281の少なくとも一方とともに設けられてもよい。
制御部3は、超音波振動子282から生じる超音波振動の振動数または振幅などを調整する(複数の超音波振動子282間で互いに異なる振動数または振幅であってもよい)ことによって、半導体ウエハWに生じる振動を直接的に制御することができる。よって、制御部3は、測定周波数分布を、第2の周波数分布に近づくように調整することができる。
なお、超音波振動子282から生じる超音波振動の振動数および振幅と任意の周波数成分の変化量との関係は、それぞれの設定条件(出力エネルギーまたはパルス幅など)ごとにあらかじめ実験などによって測定されており、それらを関連づけて記憶する対応テーブルが記憶部145に記憶されているものとする。制御部3は、対応する周波数成分の相関係数の正負も含めて考慮し、超音波振動子282から生じる超音波振動の振動数または振幅などを決定する。
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
以上に記載された実施の形態によれば、熱処理装置は、保持部と、フラッシュランプFLと、少なくとも1つの検知部と、算出部143と、記憶部145と、分類部144とを備える。ここで、保持部は、たとえば、保持部7、保持部7a、保持部7bまたは保持部7cなどのうちのいずれか1つに対応するものである(以下では便宜上、これらのうちのいずれか1つを対応させて記載する場合がある)。また、検知部は、たとえば、カメラ142などに対応するものである。保持部7は、基板(半導体ウエハW)を保持する。フラッシュランプFLは、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱する。カメラ142は、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの変位を検知する。算出部143は、検知された半導体ウエハWの変位に基づいて、半導体ウエハWの周波数分布である測定周波数分布を算出する。記憶部145は、フラッシュ光が照射された後に割れが生じた半導体ウエハWの周波数分布である第1の周波数分布と、フラッシュ光が照射された後に割れが生じなかった半導体ウエハWの周波数分布である第2の周波数分布とをあらかじめ記憶する。分類部144は、測定周波数分布と第1の周波数分布との間の類似度、および、測定周波数分布と第2の周波数分布との間の類似度に基づいて、測定周波数分布の分類を行う。
このような構成によれば、フラッシュ光が照射された半導体ウエハWの周波数分布を測定し、当該周波数分布を、フラッシュ光によって半導体ウエハWに割れが生じやすい場合と割れが生じにくい場合とに分類することができるため、たとえば、半導体ウエハWに割れが生じにくい場合に分類される周波数分布を実現するように、フラッシュ光の出力エネルギーまたはパルス幅などの設定条件を調整すれば、フラッシュ光の照射によって半導体ウエハWが割れることを抑制することができる。
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
また、以上に記載された実施の形態によれば、保持部7a、保持部7bまたは保持部7cは、半導体ウエハWに生じる振動を調整するための少なくとも1つの振動調整部を備える。ここで、振動調整部は、たとえば、ダンパー機構280、ダンパー機構281または超音波振動子282などのうちのいずれか1つに対応するものである。そして、熱処理装置は、測定周波数分布が第2の周波数分布に近づくように、振動調整部を制御する制御部3を備える。このような構成によれば、制御部3の制御によって半導体ウエハWに生じる振動を調整することによって、測定周波数分布を第2の周波数分布に近づけることができる。そのため、フラッシュ光が照射された半導体ウエハWに割れが生じることを抑制することができる。
また、以上に記載された実施の形態によれば、振動調整部は、半導体ウエハWの下面に接触し、かつ、半導体ウエハWを支持するダンパー機構281である。このような構成によれば、制御部3がダンパー機構281における可変ダンパーの制御量を調整することによって、ダンパー機構281によって支持される半導体ウエハWに生じる振動を直接的に制御することができる。
また、以上に記載された実施の形態によれば、保持部7aは、半導体ウエハWの下面に接触し、かつ、半導体ウエハWを支持する支持ピン77と、支持ピン77が上面に配置される保持プレート75とを備える。そして、振動調整部は、保持プレート75の下面に接触し、かつ、保持プレート75を支持するダンパー機構280である。このような構成によれば、制御部3がダンパー機構280における可変ダンパー280bの制御量を調整することによって、保持プレート75、さらには、保持プレート75に支持ピン77を介して支持される半導体ウエハWに生じる振動を間接的に制御することができる。
また、以上に記載された実施の形態によれば、振動調整部は、半導体ウエハWに向けて超音波を発生させる超音波振動子282である。このような構成によれば、制御部3が超音波振動子282から生じる超音波振動の振動数または振幅などを調整することによって、半導体ウエハWに生じる振動を直接的に制御することができる。
また、以上に記載された実施の形態によれば、分類部144は、第1の周波数分布および第2の周波数分布を教師データとして機械学習を行うことによって、機械学習によって得られる学習済みモデルを用いて測定周波数分布の分類を行う。このような構成によれば、機械学習によって得られた学習済みモデルを用いて測定周波数分布の分類を行うことによって、分類の精度を高めることができる。
以上に記載された実施の形態によれば、熱処理方法において、半導体ウエハWを保持する。そして、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱する。そして、フラッシュ光が照射された後の半導体ウエハWの変位を検知する。そして、検知された半導体ウエハWの変位に基づいて、半導体ウエハWの周波数分布である測定周波数分布を算出する。そして、フラッシュ光が照射された後に割れが生じた半導体ウエハWの周波数分布を第1の周波数分布とし、フラッシュ光が照射された後に割れが生じなかった半導体ウエハWの周波数分布を第2の周波数分布とし、測定周波数分布と第1の周波数分布との間の類似度、および、測定周波数分布と第2の周波数分布との間の類似度に基づいて、測定周波数分布の分類を行う。
このような構成によれば、フラッシュ光が照射された半導体ウエハWの周波数分布を測定し、当該周波数分布を、フラッシュ光によって半導体ウエハWに割れが生じやすい場合と割れが生じにくい場合とに分類することができるため、たとえば、半導体ウエハWに割れが生じにくい場合に分類される周波数分布を実現するように、フラッシュ光の出力エネルギーまたはパルス幅などの設定条件を調整すれば、フラッシュ光の照射によって半導体ウエハWが割れることを抑制することができる。
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
熱処理装置100の処理対象となる半導体ウエハWは、シリコン酸化膜の上面にゲート絶縁膜としての高誘電率膜が形成された半導体ウエハWであってもよいし、当該高誘電率膜の上面にさらにメタルゲートが形成された半導体ウエハWであってもよい。ここで、メタルゲートの素材としては、たとえば、チタンナイトライド(TiN)、チタンアルミ(TiAl)またはタングステン(W)などを用いることができる。また、処理対象となる半導体ウエハWは、金属膜が成膜され、さらに、当該金属膜を用いてフラッシュ加熱処理によってシリサイドまたはゲルマナイドを形成するものであってもよい。さらには、処理対象となる半導体ウエハWは、注入された不純物をフラッシュ加熱処理によって活性化するものであってもよい。
以上に記載された実施の形態では、カメラ142によって半導体ウエハWが撮像されているが、半導体ウエハWの位置を測定する機器として光学センサーなどが用いられてもよい。
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
また、以上に記載された実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
さらに、以上に記載された実施の形態におけるそれぞれの構成要素は概念的な単位であって、本願明細書に開示される技術の範囲内には、1つの構成要素が複数の構造物から成る場合と、1つの構成要素がある構造物の一部に対応する場合と、さらには、複数の構成要素が1つの構造物に備えられる場合とを含むものとする。
また、以上に記載された実施の形態で記載されたそれぞれの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定される。ソフトウェアまたはファームウェアとして想定される場合、それぞれの構成要素は、たとえば、「モジュール」などと称される。ハードウェアとして想定される場合、それぞれの構成要素は、たとえば、「処理回路」(circuitry)、「ユニット」などと称される。また、その双方の概念において、それぞれの構成要素は「部」などと称される。