JP2022013204A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の特定の気筒のみノッキングが起こり続けて車両の搭乗者に違和感を与える事象を回避する。【解決手段】内燃機関の複数の気筒を内包するシリンダブロックに生じる振動を検出するノックセンサの出力信号を参照して気筒内でノッキングが起こったか否かを判定し、複数の気筒内でノッキングが起こったことを条件として各気筒における混合気に対する点火タイミングを遅角補正するものであって、特定の気筒のみでノッキングが続発しそれ以外の他の気筒ではノッキングが起こっていない場合に、そうでない場合と比較して、当該他の気筒における点火タイミングをより進角させる内燃機関の制御装置を構成した。【選択図】図3

Description

本発明は、車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置に関する。
内燃機関の気筒に充填された混合気への火花点火のタイミングは、原則として、そのときの内燃機関の運転領域に応じて設定する。ベース点火タイミングは、そのときの運転領域におけるMBT(Minimum advance for Best Torque)と、同運転領域においてノッキングが惹起されないと通常考えられる限界の点火タイミングの進角量との比較により定まる。低負荷ないし中負荷域では、ノッキングは起こり難いことから、ベース点火タイミングをMBTのタイミングとする。これに対し、中負荷域ないし高負荷域では、MBTのタイミングで点火するとノッキングを起こすリスクがあるので、ベース点火タイミングをMBTのタイミングよりも遅らせる。
その上で、内燃機関の運転制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)は、シリンダブロックに設置した振動式のノックセンサを介して、気筒内で混合気が燃焼する際にノッキングが起こったか否かを判定する。そして、ノッキングを感知したならば、以後、ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる。翻って、ノッキングを感知していないならば、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させる(例えば、下記特許文献を参照)。
ノックセンサが検出するのは、ノッキングに起因して生じる振動だけではない。クランクシャフトやカムシャフト、ピストンや吸排気バルブといった内燃機関の構成部材が駆動されることで、衝突や摩擦が発生し、それに伴って生ずる振動もまたシリンダブロックを伝わってノックセンサに入力される。このノイズの振動は、ノッキングに起因する振動と同じ周波数帯にスペクトル成分を有しており、ノックセンサが得る振動信号から完全に除去することができない。それ故、現実にはノッキングが起こっていないにもかかわらず、ノッキングが起こったと誤判定して点火タイミングを遅角補正してしまう懸念が残る。不必要な点火タイミングの遅角化は、内燃機関の熱機械変換効率の低下、ひいては出力及び燃費性能の低下に繋がり、好ましくない。
そこで、現状の制御装置は、内燃機関が包有する複数の気筒内でノッキングが起こったことを条件として、混合気に対する火花点火のタイミングを遅角補正するようにしている。
特開2019-132184号公報
稀ではあるが、内燃機関の特定の気筒でのみノッキングが続発し、それ以外の気筒ではノッキングが起こっていないという現象が生起することがある。これは、各気筒間で実際の吸気量や燃焼室の温度等にばらつきが生じることが一因である。
特定の気筒のみでノッキングが起こる場合、従前の制御装置では、内燃機関にダメージを与える程の重篤な異常燃焼ではないと見なして、点火タイミングの遅角補正を行わなかった。結果、当該気筒において引き続きノッキングが惹起され、そのノッキングによる異音を車両の搭乗者が知覚する状況が継続することがあり得た。
本発明は、以上の問題に初めて着目してなされたものであり、内燃機関の特定の気筒のみでノッキングが起こり続け車両の搭乗者に違和感を与える事象を回避することを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関の複数の気筒を内包するシリンダブロックに生じる振動を検出するノックセンサの出力信号を参照して気筒内でノッキングが起こったか否かを判定し、複数の気筒内でノッキングが起こったことを条件として各気筒における混合気に対する点火タイミングを遅角補正するものであって、特定の気筒のみでノッキングが続発しそれ以外の他の気筒ではノッキングが起こっていない場合に、そうでない場合と比較して、当該他の気筒における点火タイミングをより進角させる内燃機関の制御装置を構成した。
本発明によれば、内燃機関の特定の気筒のみノッキングが起こり続けて車両の搭乗者に違和感を与える事象を回避できる。
本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態の内燃機関の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。 同実施形態の内燃機関の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態の内燃機関は、ポート噴射式の4ストローク火花点火エンジンであり、複数の気筒1(例えば、四気筒。図1には、そのうち一つを図示している)を具備する。各気筒1の吸気バルブよりも上流、各気筒1に連なる吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、特にサージタンク33に接続している。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラがCAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号f、複数の気筒1を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号g、排気通路4を流れる排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサから出力される空燃比信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、イグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、メモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に吸入される空気(新気)量を推算する。そして、吸入空気量に見合った要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量、EGRガス分圧)等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
各気筒1における充填された混合気への火花点火のタイミングを決定するにあたり、ECU0は、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,エンジン負荷率(または、エンジントルク、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される吸気量若しくは燃料噴射量)]に応じてベース点火タイミングを設定し、そのベース点火タイミングに、気筒1におけるノッキングの発生の有無に応じた遅角補正量を加える。
アクセル開度が大きくない部分負荷領域における点火タイミングは、MBTまたはMBTに近く、圧縮行程から膨脹行程を迎える気筒1の圧縮上死点よりも前のタイミングとなる。アクセル開度が全開または全開に近い全負荷ないし高負荷領域における点火タイミングは、MBTよりも遅れ、気筒1の圧縮上死点よりも後のタイミングとなる。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域を示すパラメータ[エンジン回転数,エンジン負荷率]と、ベース点火タイミングとの関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関の運転領域のパラメータをキーとしてマップデータを検索し、設定するべきベース点火タイミングを得る。
そして、ECU0は、ノックセンサの出力信号hを参照して各気筒1におけるノッキングの有無を判定し、その判定結果に応じた点火タイミングの調整を行う、いわゆるノックコントロールシステムを実現する。ECU0は、気筒1またはシリンダブロックの振動の強度を示す振動信号hをサンプリングし、ノッキングに起因して生じる振動が持つ周波数成分、例えば7kHzないし15kHzの成分を通過させつつ、そのような振動以外の成分を減衰させるバンドパスフィルタに入力する。
図2に示すように、ECU0は、バンドパスフィルタで処理した後の信号hの値をノック判定値と比較し(ステップS1)、前者が後者を上回ったならば、直近に膨脹行程を迎えた気筒1でノッキングが起こったと判定する(ステップS2)。翻って、前者が後者以下であるならば、直近に膨脹行程を迎えた気筒1でノッキングは起こっていないと判定する(ステップS3)。
しかして、ECU0は、内燃機関の複数(所定数以上、または全て)の気筒1において連続的に、または一定期間内に所定以上の頻度でノッキングの発生を感知したときに(ステップS4)、以後、複数の気筒1でノッキングが起こらなくなるまで(ステップS4の条件が成立しなくなるまで)各気筒1の点火タイミングを徐々に遅角させる、換言すればベース点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる(ステップS5)。
翻って、複数の気筒1でのノッキングの発生を感知していないときには、ノッキングが起こらない(ステップS4の条件が成立しない)限りにおいて各気筒1の点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させて(ステップS6)点火タイミングをMBTに近づける。点火タイミングがMBTに近づくほど、内燃機関の熱機械変換効率が高くなり、その出力及び燃費性能が向上する。上述したノックコントロールシステムの基本的な内容は、従前の内燃機関の運転制御を司るECUのそれと同様である。
ところで、稀ではあるが、内燃機関の特定の一つまたは少数の気筒1でのみノッキングが続発し、それ以外の気筒1ではノッキングが起こらないという現象が生起することがある。この場合、上記ステップS4の条件が成立しないために、当該気筒1における混合気への点火タイミングが遅角補正されない。従って、当該気筒1において引き続きノッキングが惹起され、ノッキングにより発生する異音を車両の搭乗者が知覚して違和感を覚える状況が継続するおそれがある。
以上の問題を解決するべく、図3に示すように、本実施形態のECU0は、特定の気筒1のみでノッキングが続発しそれ以外の他の気筒1ではノッキングが起こっていない場合(ステップS7)、そうでない場合と比較して、当該他の気筒1における点火タイミングをより進角させる、即ちベース点火タイミングに(ノックコントロールシステムによる遅角補正量とは別に)進角補正量を加味する(ステップS8)。これにより、特定の気筒1以外の他の気筒1でもノッキングが起こりやすくなり、ステップS4の条件が成立するようになって、特定の気筒1における点火タイミングが適正に遅角補正され、当該気筒1でのノッキングが鎮圧される。
上記ステップS8の点火タイミングの進角補正は、図2に示すノックコントロールシステムステップS4の条件が成立してステップS5の点火タイミングの遅角補正が行われるようになった(ステップS9)ときに終了する(ステップS10)。
本実施形態によれば、内燃機関の特定の気筒1のみでノッキングが起こり続けて車両の搭乗者に違和感を与える事象を回避することができる。また、特定の気筒1のみでノッキングが続発することに伴うエンジン回転数の上下動や振動を抑制でき、内燃機関の信頼性が増す。
本実施形態の制御は、既製のノックコントロールシステムの基本枠組みそのものは改変しない。つまり、既製のノックコントロールシステムをそのまま援用でき、少ない開発工数で実装することが可能である。
また、ステップS8の点火タイミングの進角補正は、特定の気筒1以外の他の気筒の点火タイミングをMBTに近づけることと同義であり、内燃機関の熱機械変換効率ひいては燃費性能の低下を招かない。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
12…点火プラグ
b…クランク角信号
c…アクセル開度信号
h…ノックセンサの出力信号
i…点火信号

Claims (1)

  1. 内燃機関の複数の気筒を内包するシリンダブロックに生じる振動を検出するノックセンサの出力信号を参照して気筒内でノッキングが起こったか否かを判定し、複数の気筒内でノッキングが起こったことを条件として各気筒における混合気に対する点火タイミングを遅角補正するものであって、
    特定の気筒のみでノッキングが続発しそれ以外の他の気筒ではノッキングが起こっていない場合に、そうでない場合と比較して、当該他の気筒における点火タイミングをより進角させる内燃機関の制御装置。
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