以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態は、細胞の核内に存在する標的部位(標的配列)と、前記標的配列と相補的な配列を有する核酸配列を含み蛍光色素により標識された核酸プローブ(以下、単にプローブという)とをハイブリダイズさせる前処理が施された試料を測定し、試料中の複数の細胞について細胞ごとに取得された蛍光画像の分析を行う装置及び方法に、本発明を適用したものである。
本実施態様の一例は、Fluorescence In Situ Hybridization (FISH)法による染色
体異常の分析を、例えばフローサイトメータ(例えば、イメージングフローサイトメータ)、蛍光顕微鏡等において行う。以下の実施形態では、一例として、核酸中の標的部位を22番染色体にあるBCR遺伝子および9番染色体にあるABL遺伝子とし、フローサイトメータを使用して、FISH法によって、慢性骨髄性白血病に見られる9番染色体と22番染色体との間における転座(BCR/ABL融合遺伝子、フィラデルフィア染色体とも呼ばれる:t(9;22)(q34.12;q11.23))を有する細胞を測定及び分析する態様を示す。蛍光画像分析装置において検出される染色体異常は、(FISH)法によって検出できる限り制限されない。染色体異常としては、転座、欠失、逆位、重複等を挙げることができる。具体的には、例えば、BCR/ABL融合遺伝子、ALK遺伝子等の遺伝子座に関連する染色体異常を挙げることができる。図8、図9及び図11に染色体異常があると判定するための陽性パターンを遺伝子毎に示す。
また、以下の実施形態では、測定対象となる細胞は、有核細胞である限り制限されない。例えば被験者から採取された検体中の有核細胞を挙げることができ、好ましくは血液検体中の有核細胞である。本明細書等において試料は、プローブとハイブリダイズした標的部位を含む検体由来の細胞を含む、測定に供される細胞浮遊液である。試料には複数の細胞が含まれる。複数の細胞とは、少なくとも102個以上、好ましくは103個以上、より好ましくは104個以上、さらに好ましくは105個以上、さらにより好ましくは106個以上である。
本態様において、異常細胞とは染色体異常を有する細胞を意味する。異常細胞の例としては、がん細胞等の腫瘍細胞を挙げることができる。好ましくは、白血病等の造血器腫瘍細胞、肺癌等のがん細胞である。
図1は、本実施形態の蛍光画像分析装置1の概略構成を示す。図1に示す蛍光画像分析装置1は、測定装置100及び処理装置200を備えており、前処理装置300による前処理により調製された試料10を測定し、分析を行う。オペレータは、被検者から採取した血液検体に対してフィコール等の細胞分離用媒体を用いて遠心分離等を行って、測定対象細胞である有核細胞を回収する。有核細胞の回収にあたっては、遠心分離による有核細胞の回収に代えて溶血剤を用いて赤血球等を溶血させることにより有核細胞を残してもよい。前処理装置300は、遠心分離等により得られた有核細胞浮遊液と試薬とを混合させるための混合容器、有核細胞浮遊液と試薬を混合容器に分注するための分注ユニット、混合容器を加温するための加温部等を含む。前処理装置300は、被検者から採取した細胞内の標的部位を蛍光色素により標識する工程と、細胞の核を核染色用色素により染色する工程と、を含む前処理を行って試料10を調製する。具体的には、標的部位を蛍光色素により標識する工程では、前記標的配列と、前記標的配列と相補的な配列を有する核酸配列を含み蛍光色素により標識されたプローブとをハイブリダイズされる。
FISH法は、1以上の蛍光色素を使用して染色体上の標的部位を検出する。好ましくはFISH法は、2以上の蛍光色素を使用して第1の染色体上の標的部位と第2の染色体上の標的部位を検出する(「染色体」を修飾する「第1」及び「第2」は染色体番号を意味しない、包括的な数の概念である)。例えば、BCR遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、BCR遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ11の光が照射されることにより波長λ21の第1蛍光を生じる第1蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、BCR遺伝子座が、第1蛍光色素によって標識される。ABL遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、ABL遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ12の光が照射されることにより波長λ22の第2蛍光を生じる第2蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、ABL遺伝子座が、第2蛍光色素によって標識される。核は、波長λ13の光が照射されることにより波長λ23の第3蛍光を生じる核染色用色素によって染色される。波長11、波長λ12及び波長λ13はいわゆる励起光である。
より具体的には、前処理装置300は、脱水により細胞が収縮しないよう細胞を固定する処理、プローブを細胞内に導入できる大きさの穴を細胞に開ける膜透過処理、細胞に熱を加える熱変性処理、標的部位とプローブとをハイブリダイゼーションさせる処理、細胞から不要なプローブを除去する洗浄処理、および、核を染色する処理を含んでいる。
測定装置100は、フローセル110と、光源120~123と、集光レンズ130~133と、ダイクロイックミラー140~141と、集光レンズ150と、光学ユニット151と、集光レンズ152と、撮像部160と、を備えている。フローセル110の流路111には、試料10が流される。
光源120~123は、フローセル110を流れる試料10に光を照射する。光源120~123は、例えば半導体レーザー光源により構成される。光源120~123からは、それぞれ波長λ11~λ14の光が出射される。
集光レンズ130~133は、光源120~123から出射された波長λ11~λ14の光をそれぞれ集光する。ダイクロイックミラー140は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を屈折させる。ダイクロイックミラー141は、波長λ11及びλ12の光を透過させ、波長λ13の光を屈折させる。こうして、波長λ11~λ14の光が、フローセル110の流路111を流れる試料10に照射される。なお、測定装置100が備える半導体レーザー光源の数は1以上であれば制限されない。半導体レーザー光源の数は、例えば、1、2、3、4、5又は6の中から選択することができる。
フローセル110を流れる試料10に波長λ11~λ13の光が照射されると、細胞を染色している蛍光色素から蛍光が生じる。具体的には、波長λ11の光がBCR遺伝子座を標識する第1蛍光色素に照射されると、第1蛍光色素から波長λ21の第1蛍光が生じる。波長λ12の光がABL遺伝子座を標識する第2蛍光色素に照射されると、第2蛍光色素から波長λ22の第2蛍光が生じる。波長λ13の光が核を染色する核染色用色素に照射されると、核染色用色素から波長λ23の第3蛍光が生じる。フローセル110を流れる試料10に波長λ14の光が照射されると、この光は細胞を透過する。細胞を透過した波長λ14の透過光は、明視野画像の生成に用いられる。例えば、実施形態では、第1蛍光は緑色の光の波長帯域であり、第2蛍光は赤色の光の波長帯域であり、第3蛍光は青色の光の波長帯域である。
集光レンズ150は、フローセル110の流路111を流れる試料10から生じた第1蛍光~第3蛍光と、フローセル110の流路111を流れる試料10を透過した透過光とを集光する。光学ユニット151は、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット151の4枚のダイクロイックミラーは、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部160の受光面上において分離させる。集光レンズ152は、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを集光する。
撮像部160は、TDI(Time Delay Integration)カメラにより構成される。撮像部160は、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを撮像して第1蛍光~第3蛍光にそれぞれ対応した蛍光画像と、透過光に対応した明視野画像とを、撮像信号として処理装置200に出力する。第1蛍光~第3蛍光に対応する蛍光画像を、以下、それぞれ「第1画像」、「第2画像」、「第3画像」と称する。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、輝点の重なりを分析するため同じ大きさであることが好ましい。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、カラー画像であってもよいし、グレースケール画像であってもよい。
図2(a)は、蛍光画像の例である。図2(a)の第1画像において黒く点状に見える部分は、第1蛍光の輝点、すなわち第1蛍光色素で標識された標的部位を示す。第2画像において第1画像ほどではないが核を示す淡い灰色の中に濃い灰色の点が認められる。これは、第2蛍光の輝点、すなわち第2蛍光色素で標識された標的部位を示す。第3画像では、略円形の核の領域が黒く表されている。明視野画像では、実際の細胞の状態を観察できる。なお、図2(a)の各画像は、前処理後の白血球をスライドガラス上に配置して顕微鏡で観察したものを例として示す画像であり、蛍光画像は生データ(ローデータ)では、蛍光強度が高いほど白く、蛍光強度が低いほど黒く撮像される。図2(a)の第1~第3画像は、撮像された生データの階調を反転させグレースケールで表したものである。上記のようにフローセル110を流れる試料10を撮像部160により撮像した場合は、細胞が互いに分離した状態で流路111を流れるため、蛍光画像および明視野画像は、細胞ごとに取得されることになる。
図1に戻り、処理装置200は、ハードウェア構成として、処理部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、を備える。処理部11は、プロセッサ(CPU)により構成される。記憶部12は、処理部11の各種処理の作業領域に使用する読み出し及び書き込み可能メモリ(RAM)、コンピュータプログラム及びデータを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)及びハードディスク等により構成される。処理部11及び記憶部12は、汎用コンピュータで構成することができる。ハードディスクは、コンピュータ内に含まれていてもよいし、コンピュータの外部装置として置かれてもよい。表示部13は、ディスプレイにより構成される。入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル装置等により構成される。処理部11は、バス15を介して記憶部12との間でデータを伝送し、インターフェース16を介して表示部13、入力部14、測定装置100との間でデータの入出力を行う。
処理部11は、ROMやハードディスクに記憶されている各種コンピュータプログラムをRAMに読み出して実行することにより、測定装置100による試料10の測定により取得された細胞の蛍光画像の処理を行い、表示部13、入力部14などの動作を制御する。具体的に、処理部11は、蛍光画像を処理して蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、記憶部12に記憶された複数の測定項目に対応した複数の参照パターンから、試料10の測定項目に対応した参照パターンを選択する。そして、蛍光画像における蛍光の輝点パターンと、選択した参照パターンと、に基づいて、試料10の判定に用いられる情報を生成する。
以下、細胞の蛍光画像を分析するための処理手順を規定したコンピュータプログラムに基づき、処理部11により実行される蛍光画像の分析方法の一例について、図3~図5を参照して説明する。なお、当該コンピュータプログラムは、予め記憶部12に格納されているが、例えばCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体(図示せず)からインストールしてもよいし、例えば外部のサーバ(図示せず)からネットワーク(図示せず)を介してダウンロードしてインストールしてもよい。
図3~図5に示すように、処理部11は、画像取得ステップS1、輝点パターンの取得ステップS2、輝点パターン及び参照パターンの比較ステップS3、細胞が異常細胞又は正常細胞かの判定結果に関する情報の表示ステップS4、試料の判定に用いられる情報の生成ステップS5、試料の判定に用いられる情報の表示ステップS6で各処理を行う。
まず、処理部11はS1において、撮像部160により撮像された生データを階調反転、グレースケール表示された第1~第3画像を取得する。処理部11は、取得した第1~第3画像を記憶部12に記憶させる。
次に、処理部11はS2において、第1蛍光に基づく第1画像における第1蛍光の輝点パターンを取得するとともに、第2蛍光に基づく第2画像における第2蛍光の輝点パターンを取得する。
このS2においては、図4に示すように、まず、S20において、処理部11は、第1画像、第2画像、第3画像から、それぞれ、第1蛍光の輝点(第1輝点)、第2蛍光の輝点(第2輝点)、核領域を抽出する処理を行う。具体的に、図2(b)~(d)を用いて説明すると、図2(b)の左端に示す第3画像、図2(c)の左端に示す第1画像、及び、図2(d)の左端に示す第2画像は、フローセル110を流れる1つの細胞から取得されたものである。
図2(b)の左端に示すような第3画像が取得された場合、処理部11は、始めに第3画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、図2(b)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。縦軸の画素数は、画素の個数を示している。なお、画像の画素数は、特に限定されるものではないが、例えば横51個×縦51個である。また、1画素あたりの空間分解能も特に限定されるものではない。そして、処理部11は、図2(b)のグラフにおいて画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、図2(b)の右端において破線で示すように、核領域として抽出する。
図2(c)の左端に示すような第1画像が取得された場合、処理部11は、第1画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、図2(c)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。そして、処理部11は、図2(c)のグラフにおいて、たとえば大津法に基づいて輝点とバックグランドとの境界として画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、図2(c)の右端において破線で示すように、輝点として抽出する。なお、第1画像から輝点を抽出する場合に、極端に小さい範囲を有する輝点、極端に大きい範囲を有する輝点は除外される。
図2(d)の左端に示すような第2画像が取得された場合、第1画像の場合と同様、処理部11は、第2画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、図2(d)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。そして、処理部11は、図2(c)のグラフにおいて、画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、図2(d)の右端において破線で示すように、輝点として抽出する。なお、第2画像から輝点を抽出する場合に、極端に小さい範囲を有する輝点、極端に大きい範囲を有する輝点は除外される。
次に、処理部11は、図4のS21において、第3画像から抽出される核領域の位置と、第1画像から抽出される輝点の位置とを比較し、核領域に含まれない輝点を除外する。これにより、第1画像から第1蛍光の第1輝点が抽出され、第1画像における第1輝点の数、位置が導出される。同様に、第3画像から抽出される核領域の位置と、第2画像から抽出される輝点の位置とを比較し、核領域に含まれない輝点を除外する。これにより、第2画像から第2輝点が抽出され、第2画像における第2輝点の数、位置が導出される。
各画像における核領域及び輝点の位置は、例えば各画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の画素について座標情報(x,y)を予め定め、核領域及び輝点に含まれる複数の画素の座標情報に基づき計測できる。
なお、処理部11は、図2(b)~(d)の中央に示すようなグラフを作成することなく、上記のような手順に沿って、演算により、第3画像から核領域を抽出し、第1画像及び第2画像から各輝点を抽出してもよい。また、輝点の抽出は、正常とされる輝点の分布波形と判定対象の領域との整合の度合いを判定し、整合の度合いが高い場合に、判定対象の領域を輝点として抽出してもよい。処理部11は、第3画像から核領域を抽出することにより細胞を検出したが、明視野画像に基づいて細胞を検出してもよい。明視野画像に基づいて細胞が検出される場合、第3画像の取得を省略することもできる。本実施形態における輝点とは、蛍光画像に生じる小さな蛍光の点を意味している。より具体的には、輝点とは、輝点の中心点(最も画素値(蛍光強度)が高い画素の位置)を意味している。なお、輝点の抽出は、例えば輝点として指定された画素以外の画素の色階調をバックグラウンドと同じレベルに変換する等して行うことができる。
なお、本明細書における「画素値」とは、画像の各画素に割り当てられたディジタル値を指し、特に、カメラからの出力画像(いわゆる生画像)においては、撮像対象物体の輝度がディジタル信号に変換された値を指す。
次に、処理部11は、S22において、第1画像及び第2画像から抽出した第1輝点及び第2輝点の配置例(数、位置)に基づいて、第1画像及び第2画像の合成画像において互いに重なり合う第1輝点及び第2輝点を抽出する。
ここで、まず、細胞が染色体異常を有する異常細胞であるか否かの判定方法について説明する。
図6(a)は、染色体異常を有していない正常細胞の輝点の配置例つまり輝点パターン(陰性パターン)を例示し、図6(b)~(d)は異常細胞の輝点パターン(陽性パターン)を例示している。なお、図6(a)~(d)のいずれにおいても、各画像には第3画像を重ね合わせた状態で表示している。
図6(a)に示すように、BCR遺伝子座とABL遺伝子座の転座等の染色体に異常が生じていない場合、それぞれの遺伝子は1つの核内に1対ずつ、各対立遺伝子が独立して存在する。したがって、第1画像において、第1輝点は1つの核領域内に2つ存在する。また、第2画像において、第2輝点は1つの核領域内に2つ存在する。この場合、同じ大きさで撮像された第1画像と第2画像とを重ね合わせて合成すると、合成画像においては、2つの第1輝点と2つの第2輝点とが、1つの核領域内に重ならずに存在することになる。そのため、図6(a)に示すように核領域内に第1輝点及び第2輝点が2つずつ存在する細胞は、染色体異常が認められない、すなわち染色体異常が陰性の正常細胞であると判定する。
陽性パターンの一例をBCR/ABL融合遺伝子を標的とするプローブ[Cytocell BCR/ABL Translocation, Extra Signal (ES) Probe (シスメックス株式会社)](以下、単に「ESプローブ」ということがある)を使用した場合を例にして説明する。なお、BCR/ABL融合遺伝子を標的とするプローブは複数種ある。各プローブがハイブリダイズする標的部位の例を、図7に示す。BCR遺伝子は染色体22q11.22-q11.23に位置し、BCR遺伝子座にハイブリダイズするプローブは第1蛍光(例えば、緑)で標識されている。ABL遺伝子は染色体9q34.11-q34.12に位置し、ABL遺伝子座にハイブリダイズするプローブは第2蛍光(例えば、赤)で標識されている。図7Aは、上述のESプローブの結合部位を示し、図7Bは、Cytocell BCR/ABL Translocation, Dual Fusion (DF) Probe (シスメックス株式会社、Cat No. LPH007)(以下、単に「
DFプローブ」ということがある)の結合部位を示す。
図6(b)に示すように、転座によりABL遺伝子座の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、2つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの第4蛍光(例えば黄色)の輝点(融合輝点)とが、1つの核内に存在することになる。そのため、図6(b)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子とABL遺伝子について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
図6(c)に示すように、転座によりBCR遺伝子座の一部が22番染色体に移動し、ABL遺伝子の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に3点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった2つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、図6(c)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
図6(d)に示すように、転座によりABL遺伝子座が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に2点存在する。この場合に、第1画像と第2画像を合成すると、合成画像において、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、図6(d)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
上述したように、第1画像及び第2画像を合成した合成画像における各輝点の位置、数に基づき、細胞ごとに染色体異常を有する異常細胞であるかどうかを判定することができる。そのため、処理部11は、図4のS22において、細胞ごとに、蛍光画像の蛍光の輝点パターンとして、第1画像及び第2画像の合成画像の各輝点の位置ごとの数、つまり、第2輝点と重ならない位置の第1輝点の数と、第1輝点と重ならない位置の第2輝点の数と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なる位置の融合輝点の数とをカウントする。例えば、図6(d)では、輝点パターンを、単体の第1輝点の数を「1」、単体の第2輝点の数を「1」、第1輝点及び第2輝点からなる融合輝点の数を「1」として作成することができる。
なお、第1輝点、第2輝点及び融合輝点は、色として示して、輝点パターン及び後述する参照パターンを作成してもよい。例えば単体の第1輝点を緑(G)、単体の第2輝点を赤(R)、融合輝点を黄(F)として表すことができ、G、R、Fの直後に、それぞれ、G、R、Fの輝点の数を示すことで、輝点パターンとすることができる。例えば、図6(d)では、輝点パターンが「G1R1F1」で表示することができる。
また、蛍光画像の蛍光の輝点パターンとしては、上述した第1輝点の数を、第1画像における第1輝点の総数とし、上述した第2輝点の数を、第2画像における第2輝点の総数として作成することができる。例えば、図6(d)では、輝点パターンを、第1画像における第1輝点の数を「2」、第2画像における第2輝点の数を「2」、合成画像における第1輝点及び第2輝点が互いに重なる融合輝点の数を「1」として作成し、「G2R2F1」と表示することができるが、意味は同じである。
合成画像において、第1画像の第1輝点と第2画像の第2輝点とが重なっているか否かは、第1輝点及び第2輝点の互いに重なる領域の割合、例えば、第1輝点に含まれる複数の画素のうち、第2輝点に含まれる各画素と同じ位置(座標情報(x、y))にある画素の割合が閾値よりも大きいか否かで判定することができる。また、第1輝点の中心点(最も蛍光強度が高い画素の位置)と、第2輝点の中心点(最も蛍光強度が高い画素の位置)との距離が閾値よりも小さいか否かで判定することができる。
なお、細胞ごとに取得する蛍光画像における蛍光の輝点パターンとしては、合成画像における輝点の色ごとの数であってもよい。つまり、各画像をグレースケールで表示することに代えて、第1画像の各画素の色をその画素値に基づく緑色の色階調(RGB値)で表示し、第2画像の各画素の色を赤色の色階調(RGB値)で表示する。そして、各画像を重ねて合成した際には、合成画像の各画素のRGB値の組み合わせに基づき、細胞が異常細胞であると、核領域に、緑色の第1輝点と、赤色の第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が重なることで黄色の融合輝点とが存在する。よって、輝点パターンとして、輝点の色ごとの数をカウントすることでも、細胞が異常細胞であるか否かを判定できる。
処理部11は、図3のS2で作成した第1画像及び第2画像の合成画像と、合成画像における蛍光の輝点パターンとを細胞ごとに記憶部12に記憶させる。
上述したように、細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得すると、次に、処理部11は、細胞ごとに取得した輝点パターンに基づいて、細胞が異常細胞であるか正常細胞であるかを判定する。本実施形態では、記憶部12は、細胞が異常細胞であるか正常細胞であるかを判定するための参照パターンを、複数の測定項目について測定項目ごとに記憶している。処理部11は、S3において、細胞ごとに取得した輝点パターンと、記憶部12に記憶された複数の参照パターンから試料10の測定項目に対応した参照パターンとを比較することで、細胞ごとに異常細胞であるか否かを判定する。処理部11による異常細胞の判定については、追って図5を参照して説明する。
なお、参照パターンとは、例えば図6で示したような、染色体異常を有する異常細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターン(陽性パターン)、及び、染色体異常を有していない正常細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターン(陰性パターン)の少なくとも一方を含むものである。本実施形態では、参照パターンに、異常細胞の輝点パターン(陽性パターン)及び正常細胞の輝点パターン(陰性パターン)の両方を含んでいる。
本実施形態では、例えば図8、図9及び図11に示すように、測定項目としてBCR/ABL融合遺伝子、ALK遺伝子、第5染色体長腕欠失の参照パターン(陰性パターン及び陽性パターン)が記憶部12に記憶されている。また、本実施形態では、測定項目は、標的部位にハイブリダイズするプローブごとにさらに分類されており、記憶部12には、参照パターンがプローブごとに記憶されている。さらに、本実施形態では、記憶部12には、プローブごとに、異常細胞の参照パターン(陽性パターン)について、典型異常細胞の参照パターン(典型陽性パターン)と、非典型異常細胞の参照パターン(非典型陽性パターン)とが分類されて記憶されている。
図8は、BCR/ABL融合遺伝子の典型陽性パターン(メジャーパターン)の参照パターンの例である。第1画像及び第2画像を重ねた状態では、ESプローブを用いた場合、陰性パターンは第1輝点の数が2個であり、第2輝点の数が2個であり、融合輝点の数は0個である。ESプローブを用いた典型陽性パターンの例は、第1輝点の数が1個であり、第2輝点の数が2個であり、融合輝点の数は1個である。DFプローブを用いた場合、第1画像及び第2画像を重ねた状態では、陰性パターンは第1輝点の数が2個であり、第2輝点の数が2個であり、融合輝点の数は0個である。DFプローブを用いた典型陽性パターンの例は、第1輝点の数が1個であり、第2輝点の数が1個であり、融合輝点の数は2個である。
図9は、BCR/ABL融合遺伝子の非典型陽性パターンの参照パターンの例である。非典型陽性パターンの1例は、マイナーBCR/ABLパターンであり、BCR遺伝子の切断点がBCR遺伝子の比較的上流にあるため、ESプローブでも第1輝点が3個検出される。非典型陽性パターンの他の例は、9番染色体のABL遺伝子を標的とするプローブの結合領域の一部が欠失した例であり、これに依存してDFプローブを使用した場合に本来2個検出されるはずの融合輝点が1個のみ検出されている。また、非典型陽性パターンの他の例は、9番染色体のABL遺伝子を標的とするプローブの結合領域の一部と22番染色体のBCR遺伝子を標的とするプローブの結合領域の一部とがともに欠失した例である。これに依存してDFプローブを使用した場合に本来2個検出されるはずの融合輝点が1個のみ検出されている。
BCR/ABL融合遺伝子の他、FISH法によって融合輝点を検出できる染色体転座としては、AML1/ETO(MTG8)融合遺伝子(t(8;21))、PML/RARα融合遺伝子(t(15;17))、AML1(21q22)転座、MLL(11q23)転座、TEL(12p13)転座、TEL/AML1融合遺伝子(t(12;21))、IgH(14q32)転座、CCND1(BCL1)/IgH融合遺伝子(t(11;14))、BCL2(18q21)転座、IgH/MAF融合遺伝子(t(14;16))、IgH/BCL2融合遺伝子(t(14;18))、c-myc/IgH融合遺伝子(t(8;14))、FGFR3/IgH融合遺伝子(t(4;14))、BCL6(3q27)転座、c-myc(8q24)転座、MALT1(18q21)転座、API2/MALT1融合遺伝子(t(11;18)転座)、TCF3/PBX1融合遺伝子(t(1;19)転座)、EWSR1(22q12)転座、PDGFRβ(5q32)転座等を挙げることができる。
図10には、ALK遺伝子座のプローブ例を示す。また、図11には、ALK遺伝子座に関連する染色体異常を検出する場合の陰性パターン及び陽性パターンの参照パターンの例を示す。図10に示すように、ALK遺伝子の染色体異常はD2S405付近に切断点を有し、ALK遺伝子の一部が他の部位に転座する。このため切断点を挟んで、第1蛍光標識プローブと第2蛍光標識プローブを設計する。図11に示す陰性パターンでは、ALK遺伝子が切断されていないため、融合輝点が2個存在する。一方、陽性パターンでは、ALK遺伝子が切断されているため、融合輝点が1個のみとなる(対立遺伝子の一方のみが切断された場合)か、融合輝点が認められなくなる(対立遺伝子の両方が切断された場合)。この陰性パターン及び陽性パターンは、ALK遺伝子の他、ROS1遺伝子、RET遺伝子でも同じである。
さらに、図11に、第5番染色体長腕(5q)が欠失する染色体異常の参照パターンの例を示す。例えば、第1蛍光標識プローブは第5番染色体長腕に結合し、第2蛍光標識プローブは第5番染色体のセントロメアと結合するように設計する。陰性パターンでは、第5番染色体のセントロメアの数と第5番染色体長腕の数は同じであるため、第1輝点と第2輝点は、相同染色体の数を反映し2個ずつ存在する。陽性パターンでは、第5番染色体の一方又は両方に長腕の欠失が起り、第1輝点の数が1個のみ又は0個となる。この陰性パターンと陽性パターンは、他の染色体の短腕又は長腕の欠失でも同じである。他の染色体の長腕欠失の例として、第7番染色体、及び第20番染色体の長腕欠失を挙げることができる。また、この他、同様の陽性パターン及び陰性パターンを示す例として、7q31(欠失)、p16 (9p21欠失解析)、IRF-1(5q31)欠失、D20S108(20q12)欠失、D13S319(13q14)欠失、4q12欠失、ATM(11q22.3)欠失、p53(17p13.1)欠失等を挙げることができる。
さらにまた、図11に第8番染色体トリソミーの例を示す。第1蛍光標識プローブは例えば第8番染色体のセントロメアと結合する。陽性パターンは第1輝点が3個となる。陰性パターンは、第1輝点が2個となる。このような輝点パターンは第12番染色体トリソミーでも同様である。さらに、第7番染色体モノソミーでは、例えば第7番染色体のセントロメアと結合する第1蛍光標識プローブを用いた場合、陽性パターンは第1輝点が1個となる。陰性パターンは、第1輝点が2個となる。
次に、図5を用いて、図3のS3の詳細を示す。まず、処理部11は、S30において、記憶部12に記憶された複数の測定項目に対応した複数の参照パターンから、試料10の測定項目に対応した参照パターンを選択する処理を行う。そして、S31において、細胞ごとに取得した輝点パターンと、試料10の測定項目に応じて選択した参照パターンの中の陰性パターンと比較する処理を行う。測定項目の選択は、例えば図12に示すように、表示部13に測定項目の選択のための受付画面30を表示して受け付けることができる。図12の受付画面30には、分析対象の複数(図示例では縦(A~H)8個×横(1~12)12個=96個)の細胞について測定項目を選択するための選択欄31が設けられており、例えばプルダウン方式で測定項目(例えばBCR/ABL融合遺伝子、ALK遺伝子、第5染色体長腕欠失等)を細胞ごとに選択可能である。なお、図12では、選択欄31において、測定項目に加えて測定項目をさらに分類するプローブ(例えば測定項目がBCR/ABL融合遺伝子であれば、DFプローブあるいはESプローブ)まで選択することが可能である。
処理部11は、記憶部12に記憶された複数の測定項目に対応した複数の参照パターンから、受付画面30で選択された測定項目あるいは測定項目の中のプローブに応じた参照パターン(陰性パターン及び陽性パターン)を読み込み、分析対象の細胞の輝点パターンと比較する。分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致する場合には、S31がYESとなってS32に進み、当該細胞が正常細胞であると判定する。一方、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致しない場合には、S31がNOとなってS33に進み、典型陽性パターンと比較する。典型陽性パターンに合致する場合には、S33がYESとなってS34に進み、当該細胞が典型異常細胞であると判定する。一方で、典型陽性パターンに合致しない場合には、S33がNOとなってS35に進み、当該細胞が非典型異常細胞であると判定する。処理部11は、同様の比較処理を分析対象の細胞の全てに対し繰り返し行って、細胞ごとに異常細胞又は正常細胞の判定を行う。処理部11は、図3のS3による判定結果を細胞ごとに記憶部12に記憶させる。
図3に戻って、次に、処理部11はS4において、分析対象の細胞ごとの判定結果に関する情報を表示部13に表示させる。判定結果に関する情報として、処理部11は、例えば、異常細胞と判定した細胞の蛍光画像(第1画像、第2画像及び第3画像の合成画像)、正常細胞と判定した細胞の蛍光画像(第1画像、第2画像及び第3画像の合成画像)等を、表示部13に表示させる。
図13は、表示部13の情報表示画面32の一例である。図13の情報表示画面32では、分析対象の細胞のうち、所定の分析方法に基づき検出した細胞ごとに蛍光画像が縦横に並べて表示される。情報表示画面32には、細胞の分析に用いた測定項目33が表示されるとともに、分析方法を選択可能な分析方法選択欄34が設けられている。分析方法選択欄34では、異常細胞の分析方法として、典型異常細胞(ESメジャーパターン)を検出するか、非典型異常細胞(ESマイナーパターン、ESディリーションパターン)を検出するか、選択できる。また、情報表示画面32には、分析方法選択欄34で選択された分析方法に基づき検出された細胞について、異常細胞(ポジティブ)と判定された細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、正常細胞(ネガティブ)と判定された細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、分析した全ての細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、を例えばプルダウン方式で選択可能な表示画像選択欄38が設けられている。
処理部11は、選択欄34で選択された分析方法に基づいて検出した細胞について、表示画像選択欄38で選択された細胞の蛍光画像を表示画面32の画像表示欄35に表示させる。画像表示欄35に表示される細胞の蛍光画像には、細胞の蛍光画像ごとに、Cell IDの他、異常細胞(ポジティブ)であるか正常細胞(ネガティブ)であるかの判定結果が表示されている。図13では、典型異常細胞(ESメジャーパターン)を検出する分析方法が選択されているため、表示画像選択欄38で異常細胞(ポジティブ)と判定された細胞の蛍光画像を表示させる選択肢が選択されると、画像表示欄35には、典型異常細胞(ESメジャーパターン)と判定された細胞の蛍光画像が表示される。なお、表示画像選択欄38の選択に応じて、正常細胞と判定された細胞の蛍光画像、あるいは、分析した全ての細胞の蛍光画像を表示させることができる。
これにより、オペレータ等は、異常細胞と判定された細胞の蛍光画像を表示部13で観察することができる。なお、オペレータ等の観察により、異常細胞であると判定された細胞が正常細胞であると判断された場合には、処理部11は、表示部13に表示された異常細胞の蛍光画像の中から、オペレータ等に入力部14により正常細胞であるとして選択され、改訂ボタン36で改訂された異常細胞については正常細胞に判定結果を修正する。そして、処理部11は、改訂後の判定結果を記憶部12に記憶する。同様に、オペレータ等の観察者の観察により、正常細胞であると判定された細胞が異常細胞であると判断された場合には、処理部11は、表示部13に表示された正常細胞の蛍光画像の中から、オペレータ等に入力部14で異常細胞であるとして選択され、改訂ボタン36で改訂された正常細胞については異常細胞に判定結果を修正する。そして、処理部11は、改訂後の判定結果を記憶部12に記憶する。これにより、異常細胞及び正常細胞の検出精度を高めることができる。また、処理部11は、改訂後の異常細胞あるいは正常細胞と判定した細胞の蛍光画像を表示部13に再表示させることもできる。
図3に戻って、次に、処理部11はS5において、細胞ごとの異常細胞であるか否かの判定結果に基づいて、試料10の判定に用いられる情報を生成する。
例えば、処理部11は、分析方法選択欄34で選択された分析方法による分析結果に基づき、異常細胞の数、異常細胞の数の割合、正常細胞の数、及び、正常細胞の数の割合からなる群より選ばれる少なくとも一つの情報を生成する処理を行う。なお、異常細胞の数の割合及び正常細胞の数の割合は、検出した全ての細胞の数(異常細胞と判定した細胞の数及び正常細胞と判定した細胞の数の合算値)に対する割合であってもよいし、分析した細胞の総数に対する割合であってもよい。
そして、処理部11は、図3のS6において、S5で生成した情報を記憶部12に記憶させるとともに表示部13に表示させる。例えば、図13の情報表示画面32では、判定結果欄37が設けられており、この判定結果欄37に、異常細胞と判定した細胞の数及び割合、正常細胞と判定した細胞の数及び割合が表示されている。ここでは、分析方法選択欄34で典型異常細胞(ESメジャーパターン)を検出する分析方法が選択されているため、判定結果欄37に、判定結果が「G1R2F1」の典型異常細胞(ポジティブ)の数及び割合、判定結果が「G2R2F0」の正常細胞(ネガティブ)の数及び割合が表示されている。なお、その他にも、分析方法選択欄34で非典型異常細胞(ESマイナーパターン、ESディリーションパターン)を検出する分析方法が選択されると、判定結果が非典型異常細胞(ポジティブ)の数及び割合、判定結果が正常細胞(ネガティブ)の数及び割合が分析結果欄37に表示される。
これにより、医師等は、情報表示画面32に表示される情報を参照して、試料10中に異常細胞が含まれているか否か、さらには試料10中の有核細胞に含まれる異常細胞の割合を把握でき、試料10が陽性及び陰性のいずれであるかを高精度に判定することができる。
なお、試料10の判定に用いられる情報としては、「陽性の可能性?」、「陰性の可能性?」などの文字情報等、他の様々な情報を、処理部11は生成して表示部13に表示させることができる。「陽性の可能性?」は、異常細胞の割合が所定の閾値より大きい場合、正常細胞の割合が所定の閾値より小さい場合に表示される。正常細胞の割合が所定の閾値より大きい場合、異常細胞の割合が所定の閾値より小さい場合には「陰性の可能性?」が表示される。
以上、本発明によれば、分析対象の細胞ごとに取得された蛍光画像の蛍光の輝点パターンと、測定項目ごとの参照パターンの中から試料10の測定項目に対応する参照パターンと、に基づいて、試料10の判定に用いられる情報を生成する。よって、オペレータ等が、染色体異常を有する異常細胞を示す多種類の輝点パターンを記憶して、細胞ごとに異常細胞であるか判定する必要がなく、異常細胞の判定がオペレータの感覚に依存しない。そのため、異常細胞の判定精度を高めることができ、その結果、試料10の判定に用いられる情報の精度を向上することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1において、図1に示す測定装置100を、図14に示す蛍光顕微鏡を含む測定装置400に代えてもよい。
図14に示す測定装置400は、光源410~412と、ミラー420と、ダイクロイックミラー421~422と、シャッター430と、1/4波長板431と、ビームエキスパンダ432と、集光レンズ433と、ダイクロイックミラー434と、対物レンズ435と、ステージ440と、集光レンズ450と、撮像部451と、コントローラ460~461と、を備えている。ステージ440には、スライドガラス441が設置される。スライドガラス441には、前処理装置300で前処理により調製された試料10(図1に示す)が載せられる。
光源410~412は、それぞれ、図1に示す光源120~122と同様である。ミラー420は、光源410からの光を反射する。ダイクロイックミラー421は、光源410からの光を透過し、光源411からの光を反射する。ダイクロイックミラー422は、光源410~411からの光を透過し、光源412からの光を反射する。光源410~412からの光の光軸は、ミラー420とダイクロイックミラー421~422により、互いに一致させられる。
シャッター430は、コントローラ460により駆動され、光源410~412から出射された光を通過させる状態と、光源410~412から出射された光を遮断する状態とに切り替える。これにより、試料10に対する光の照射時間が調整される。1/4波長板431は、光源410~412から出射された直線偏光の光を円偏光に変換する。プローブに結合している蛍光色素は、所定の偏光方向の光に反応する。よって、光源410~412から出射された励起用の光を円偏光に変換することにより、励起用の光の偏光方向が、蛍光色素が反応する偏光方向に一致し易くなる。これにより、蛍光色素に効率良く蛍光を励起させることができる。ビームエキスパンダ432は、スライドガラス441上における光の照射領域を広げる。集光レンズ433は、対物レンズ435からスライドガラス441に平行光が照射されるよう光を集光する。
ダイクロイックミラー434は、光源410~412から出射された光を反射し、試料10から生じた蛍光を透過する。対物レンズ435は、ダイクロイックミラー434で反射された光を、スライドガラス441に導く。ステージ440は、コントローラ461により駆動される。試料10から生じた蛍光は、対物レンズ435を通り、ダイクロイックミラー434を透過する。集光レンズ450は、ダイクロイックミラー434を透過した蛍光を集光して、撮像部451の撮像面452に導く。撮像部451は、撮像面452に照射された蛍光の像を撮像し、蛍光画像を生成する。撮像部451は、たとえばCCD等により構成される。
コントローラ460~461と撮像部451とは、図1に示す処理部11と接続されており、処理部11は、コントローラ460~461と撮像部451とを制御し、撮像部451により撮像された蛍光画像を受信する。なお、撮像部451により撮像される蛍光画像は、図1に示すようにフローセル110が用いられる場合とは異なり、図2(a)に示すように細胞が密接した状態となっている場合がある。このため、処理部11は、取得した蛍光画像を、細胞の核ごとに分割する処理、又は、蛍光画像において1つの細胞の核に対応する領域を設定する処理等を行う。
この図14に示す測定装置400においても、本実施形態と同様、3つの蛍光画像(第1画像~第3画像)を取得できるため、各蛍光画像に基づいて細胞ごとに輝点パターンを抽出し、抽出した輝点パターンに基づいて、細胞ごとに参照パターンと比較することで、細胞ごとに異常細胞であるか正常細胞であるかを判定することができる。
また、図15に示す実施形態のように、蛍光画像分析装置1において、処理部11をインターフェース16を介して前処理装置300との間でデータの入出力可能に接続してもよい。この実施形態では、処理部11は、前処理装置300からの情報として、測定項目、プローブを含む試薬に関する情報を受信することができる。これにより、処理部11が、図5のS30において、記憶部12に記憶された複数の測定項目に対応した複数の参照パターンから、試料10の測定項目に対応した参照パターンを選択する際に、前処理装置300から送信される測定項目、プローブを含む試薬に関する情報に応じた参照パターンを自動的に読み込み、S31において、処理部11は、選択した参照パターンと、細胞ごとに取得した輝点パターンとを比較してもよい。
また、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1において、参照パターンが蛍光画像分析装置1内の記憶部12に予め記憶されているが、外部のサーバ(図示せず)からネットワークを介して取得してもよい。
また、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1において、処理部11は、新たに取得した異常細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターンを、参照パターンとして測定項目ごとに記憶部12に記憶してもよい。新たな参照パターンは、ユーザが入力部14を介して入力することで取得してもよいし、処理部11が外部のサーバ(図示せず)からネットワークを介して取得してもよい。
また、上述した処理装置200の処理部11による細胞の蛍光画像を処理するための処理手順を規定したコンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供することができる。