本発明は、円板カッターに「なた切断作用」を付加することで、板状のワークに対する円板カッターの切断力を高めた板状ワークの切断方法、及びその装置に関するものである。
円板カッターを用いて板状ワークを切断する装置は、例えば特許文献1及び同2に示されるように、駆動回転する円板カッターによりワークを「連続切断」する構成である。ここで、「連続切断」とは、円板カッターの外周部の切断部により、時間的に連続してワークを切断することをいう。特許文献1のように、角柱状に焼成された軟らかいパンを所定厚にスライス切断する場合には、外周部に鋭利な刃部が形成された円板カッターを使用することで、切粉(切屑)を発生させないで切断可能であるが、発泡樹脂又は木材を切断する場合には、円板カッターは鋸刃を用いているため、切断時に切粉が連続して発生し、その処理に多大な労力を有していた。
このように、円板カッターによる「連続切断」は、板状のワークに対する当該円板カッターの配置位置は、当該カッターとワークとの相対的な移動方向に沿った配置位置が変動するのみで、側面視における当該円板カッターとワークの配置位置、即ち、円板カッターの中心位置は不変である。このため、ワークに対する円板カッターの切断力は、それ程大きくない。
また、切断対象のワークに関しても、その硬さにもよるが、切断可能なワークの厚さには、一定の限界があって、板厚及び硬さを含めた切断可能なワークの範囲は限定される。
特開昭58−132496号公報
特開2005−131958号公報
本発明は、円板カッターを公転(偏心回転)させながら駆動回転により自転させて、円板カッターに「なた切断作用」を付加して回転切断することで、ワークに対する当該円板カッターの切断力を飛躍的に高めることを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、円板カッターが支持された切断ユニットと、板状のワークとを相対的に直線移動させて、当該ワークを切断する方法であって、
前記円板カッターは、公転中心に対する公転により円運動しながら、駆動回転により自転することで、
前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの円運動により生ずるなた切断作用との相乗により、前記ワークを切断することを特徴としている。
請求項1の発明によれば、円板カッターは、公転中心に対する公転により円運動(偏心回転)しながら、駆動回転されて自転することで、当該円板カッターの外周の刃部は、ワークに対して断続的に喰い込んで切断される。即ち、円板カッターは、その回転中における特定回転角度においてのみ、ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込んで切断する「なた切断作用」と、当該円板カッターが連続駆動回転する「回転切断作用」とが相乗して、ワークが切断され、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、当該円板カッターはワークから退避することで、ワークを切断することなく連続回転する「断続切断作用」によりワークが切断される。請求項1の発明の切断は、円板カッターが連続駆動回転しながら、公転により円板カッターの全体が公転(円運動)を行うことで「なた切断作用」を生じさせており、この切断現象はワークに対して円板カッターの全体が移動しながら当該ワークを切断しているので、「引き切り作用」が生じており、これによりワークは、複数の切断作用(円板カッターの連続回転切断作用、なた切り切断作用及び引き切り切断作用)が相乗して、大きな切断作用でもってスムーズに切断できる。この結果、周縁部が鋭利に形成された円板カッターにより、切粉(切屑)を発生させずに、ワークの切断が可能となる。なお、カッターの回転中における前記特定回転角度以外の角度では、当該円板カッターは、ワークに対して退避しているため、切断作用はない。
即ち、円板カッターは、その回転中における前記特定回転角度においては、円板カッターの円運動により、板状のワークの板面に対して垂直な方向に円板カッターが移動して、当該ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込む「なた切断作用」と、本来の「回転切断作用」とが相乗して切断されて、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、ワークは全く切断されない「断続切断作用」によりワークが切断されるので、ワークに対する円板カッターの切断力が飛躍的に高められる。また、円板カッターの円運動により、当該円板カッターが最も前方に配置された後に、後退する瞬間において、ワークに対する円板カッターの切断力の方向は、当該ワークの板面に対して垂直となって、最大の切断力が瞬間的に発生するので、当該円板カッターの切断力は、単に連続回転するのみの場合に比較して、飛躍的に高められる。このため、円板カッターの切断対象である板状のワークの範囲が広くなって、円板カッターの連続回転切断作用のみでは切断できなかった大きな板厚或いは硬いワークであっても切断可能となる。
また、請求項1の発明によれば、円板カッターの外周の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切断時に切粉が発生せず、従来の切断では不可欠であった切粉の処理が不用となる。
請求項2の発明は、円板カッターが支持された切断ユニットと、板状のワークとを相対的に直線移動させて、当該ワークを切断する装置であって、
前記切断ユニットは、
軸方向の一端部に前記円板カッターが一体に取付けられている自転駆動軸は、駆動回転される公転駆動軸に所定の偏心量だけ偏心して支持され、
当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた平歯車は、前記公転駆動軸と同心となって、前記円板カッターとは独立して駆動回転される内歯車と噛合され、前記公転駆動軸の軸心を中心にして前記自転駆動軸を公転させながら、当該自転駆動軸を駆動回転させる遊星歯車機構が構成され、
前記公転駆動軸及び前記内歯車の駆動回転により、前記円板カッターは、当該公転駆動軸及び内歯車の軸心に対する公転により円運動しながら連続駆動回転することで、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの円運動により生ずるなた切断作用との相乗により、前記ワークを切断することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1の発明を具体的に実施するための切断装置であって、前記自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた平歯車は、前記公転駆動軸と同心となって、前記自転駆動軸とは独立して駆動回転される内歯車と噛合されて遊星歯車機構を構成し、前記公転回転軸の駆動回転により前記自転駆動軸は、当該公転駆動軸の軸心を中心にして公転することで、当該自転駆動軸の一端に取付けられた円板カッターは円運動(偏心回転)しながら駆動回転される。即ち、前記円板カッターは、公転駆動軸及び前記内歯車が独立して駆動回転されることで、当該公転駆動軸及び内歯車の軸心に対する公転により円運動しながら、ワークが切断されることで、当該ワークは、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの公転(円運動)により生ずるなた切断作用との相乗により、大きな切断力により断続的に切断される。また、円板カッターは、公転しながら連続回転しているため、上記した「なた切断作用」は、円板カッターの全周で発生することで、円板カッターは、その全周に亘り切断作用が生じて、即ち、円板カッターの円周上の特定部のみで「なた切断作用」が生ずることはないので、円板カッターの磨耗が均一化されることで、その寿命も長くなる。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されるので、公転駆動軸と自転駆動軸との各回転数、即ち、当該自転駆動軸に取付けられた円板カッターの公転(円運動)の回転数と、自転駆動軸の回転数とを、鎖歯車等の歯数の変更によらずに、個別に、しかも容易に変更できる。また、請求項3の発明によれば、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されるので、ワークの硬度及び刃物寿命の延長(最適化)等を考慮して、円板カッターの回転数を任意に選択できる。
請求項4の発明は、円板カッターが支持された切断ユニットと、板状のワークとを相対的に直線移動させて、当該ワークを切断する装置であって、
前記切断ユニットは、
軸方向の一端部に前記円板カッターが一体に取付けられている自転駆動軸は、駆動回転される公転駆動軸に所定の偏心量だけ偏心して支持され、
当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた内歯車は、前記切断ユニットのフレームに固定された平歯車と噛合されることで、前記公転駆動軸の軸心を中心にして前記自転駆動軸を公転させながら当該自転駆動軸を駆動回転させる遊星歯車機構が構成され、
前記公転駆動軸の駆動回転により、前記円板カッターは、当該公転駆動軸の軸心に対する公転により円運動しながら連続駆動回転することで、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの円運動により生ずるなた切断作用との相乗により、前記ワークを切断することを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項2の発明に対して、円板カッターを円運動させる機構が異なるのみで、ワークの切断原理は、請求項2の発明と同一である。即ち、請求項4の発明では、当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた内歯車は、前記切断ユニットのフレームに固定された平歯車と噛合された遊星歯車機構により、円板カッターが公転(円運動)される。
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明において、前記ワークを固定配置させる作業テーブルには、前記切断ユニットを移動可能に支持するカッター支持フレームが設けられ、
前記カッター支持フレームの側面に設けられたリニアーガイドにガイドされた前記切断ユニットは、当該切断ユニットの移動方向に沿って張設された無端鎖の途中に連結されることで、移動可能となっており、
前記無端鎖が駆動されて周回走行することで、当該切断ユニットは、設定速度で移動して前記作業テーブルに固定配置されたワークを切断する構成であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明において、ワークを作業テーブル上に固定配置して、カッター支持フレームの側面に沿って切断ユニットが直線移動することで、板状のワークを切断するものである。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記作業テーブルには、前記切断ユニットの円板カッターの下端外周の刃部を非接触状態で入り込ませて横振れを防止するためのカッター振止め部材が配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明によれば、前記作業テーブルには、前記円板カッターの下端外周の刃部を非接触状態で入り込ませて横振れを防止するためのカッター振止め部材が設けられているので、当該円板カッターの外周の刃部の横振れが防止されるため、当該円板カッターの切断力が一層に高められる。
本発明(請求項1の発明)によれば、円板カッターは、公転中心に対する公転により円運動(偏心回転)しながら、駆動回転されることで、当該円板カッターの外周の刃部は、ワークに対して断続的に喰い込んで切断される。即ち、円板カッターは、その回転中における特定回転角度においてのみ、ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込んで切断する「なた切断作用」と、当該円板カッターの連続駆動回転による「回転切断作用」とが相乗して、ワークが切断され、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、当該円板カッターはワークから退避することで、ワークを切断することなく連続回転する「断続切断作用」によりワークが切断される。なお、カッターの回転中における前記特定回転角度以外の角度では、当該円板カッターは、ワークに対して退避しているため、切断作用はない。また、円板カッターの外周の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切断時に切粉が発生せず、従来の切断では不可欠であった切粉の処理が不用となる。
また、請求項2及び4の各発明は、軸方向の一端部に円板カッターを取付けた自転駆動軸が公転駆動軸に偏心して支持され、当該自転駆動軸の駆動回転は、遊星歯車機構を利用しているので、請求項1の発明を確実に実現できる。
本発明に係る切断装置の斜視図である。
(a)は、同じく正面図であり、(b)は、(a)のZ−Z線拡大断面図である。
同じく平面図である。
支持フレーム3の側面に切断ユニットUが水平方向に走行可能に支持された状態を示す側面図である。
同じく斜視図である。
遊星歯車機構SP1 を用いた切断ユニットUの縦断面図である。
切断ユニットUの分解斜視図である。
切断ユニットUを構成する遊星歯車機構SP1 の部分の背面図である。
切断ユニットUの背面図である。
切断ユニットUの背面側の斜視図である。
公転駆動軸43の軸心C00に対して公転する円板カッターKが最も高い位置である公転の原点位置に配置された状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に90°だけ公転した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に180°だけ公転して、当該円板カッターKが最も低い位置に達した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に270°だけ公転して、当該円板カッターKがワークWの切断済先端面に対して最も後退した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て360°だけ反時計方向に公転して、公転の新たな原点位置に戻った状態を示す側面図である。
公転の新たな原点位置に対して円板カッターKが、公転駆動軸43の新たな軸心C01に対して前側から見て90°だけ反時計方向に公転した状態を示す側面図である。
公転駆動軸43と内歯車G1 とを別々の駆動モータM11,M12で駆動する構造の模式的断面図である。
別の遊星歯車機構SP2 を用いた切断機構の縦断面図である。
遊星歯車機構SP2 の背面図である。
以下、最適な実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図5に本発明に係る切断装置の全体構成が示されている。長方形状の作業台1の作業テーブル2の幅方向Yの一端部には、後述の切断ユニットUを支持して、水平方向に沿って移動可能に支持するための支持フレーム3が当該作業テーブル2の長手方向Xに沿って配置されている。当該支持フレーム3の両端部は、支持台4で支持されることで、作業テーブル2の上面との間には、被切断物である板状のワークWを配置可能なワーク配置空間部5が形成されている。前記支持フレーム3の直下を含めて、作業テーブル2の上面は、長方形状の複数の金属製の表面板材6が長手方向X及び幅方向Yに並べられて固定配置され、幅方向Yに沿った2枚の表面板材6の間には、後述の円板カッターKの下端部を入り込ませて、その振れを防止するための振止め空間7(図3参照)となっている。前記ワークWは、作業テーブル2の上面に、その長手方向Xに沿って所定間隔をおいて配置された一対の規制具8により、当該ワークWが作業テーブル2の長手方向Xにずれるのを防止しており、当該ワークWの上面は、後述の切断ユニットUの円板カッターKが走行する近辺においてワーク押え11により下方に押し付けられる。ワーク押え11は、その長手方向Xの両端に配置された押付け具12のハンドル13の回転により一対の押え板14により上方から押し付けられる構成である。一方の押付け具12のハンドル13の回転は、連結ロッド15を介して他方の押付け具12に伝達されて、一方のハンドル13の回転により、一対の押え板14は同時にワークWを押し付ける構成となっている。
図4及び図5に示されるように、前記支持フレーム3の手前側の側面には、上下方向に所定間隔をおいて一対の直線ガイドレール16が取付けられ、切断ユニットUの後板36の背面側に設けられた上下一対の嵌着ガイド体17が前記各直線ガイドレール16に嵌着されることで、当該切断ユニットUは、前記支持フレーム3の長手方向Xに沿って直線移動する。また、前記支持フレーム3の長手方向Xの両端部には、切断ユニットUの走行方向である作業テーブル2の長手方向Xと直交する水平方向である前後方向(前記幅方向Yと同じ)に沿った回転軸心を有する各鎖歯車18a,18bがそれぞれ支持され、各鎖歯車18a,18bには無端鎖21が掛装されて、当該無端鎖21における下方に配置される部分は、所定長だけ欠落された状態となって、当該欠落部に臨む当該無端鎖21の両端部は、それぞれ切断ユニットUの背面側に突出された一対の突出板22に取付けられた各鎖連結ロッド23に連結されている。一対の鎖歯車18a,18bのうち一方の鎖歯車18aが駆動モータM2 により駆動回転されて、無端鎖21が走行することで、切断ユニットUは、一対の直線ガイドレール16に沿って走行する。無端鎖21のたるみ防止するために、下方の直線ガイドレール16を挟んで前記支持フレーム3の手前側の側面に設けられた鎖支持体24により支持されている。なお、図4及び図5において、支持フレーム3の長手方向Xに沿って切断ユニットUの両移動端を規制するために、当該支持フレーム3における当該両移動端には、それぞれ検出センサ25が取付けられ、切断ユニットUの後板36には、当該検出センサ25により検出されるドッグ26が取付けられている。
次に、図6〜図10を参照して、前記切断ユニットUについて説明する。切断ユニットUは、駆動モータM1 の駆動回転により、後述のカッター駆動軸(自転駆動軸)42の先端部に取付けられた円板カッターKを円運動(偏心回転)させながら、当該円板カッターKを駆動回転させるものである。即ち、駆動モータM1 及び当該駆動モータM1 の駆動軸(図示せず)の回転を減速させるための減速機31は、後述の後板36に一体に取付けられていて、前記減速機31の出力軸32と一体に駆動回転する第1及び第2の各駆動鎖歯車S1 ,S2 は、それぞれキー33,34を介して当該出力軸32に一体に取付けられ、各駆動鎖歯車S1 ,S2 は、それぞれ前板35と後板36との間、及び後板36の背面側における上部に配置されて、前記出力軸32は、前板35及び後板36を貫通して各軸受37,38により当該前板35及び後板36に回転可能に支持されている。前記出力軸32における前板35の前方に突出したボルト部32aをナット41で締め上げることで、当該出力軸32の軸方向に沿った隙間がなくなって、当該出力軸32は、前記各軸受37,38を介して前板35及び後板36に回転可能に支持される。
前記減速機31の出力軸32の直下には、軸方向の前端部に円板カッターKを一体に取付けたカッター駆動軸(自転駆動軸)42を偏心状態で支持する公転駆動軸43が配置されて、一対の軸受44a,44bを介して前板35及び後板36に回転可能に支持されている。カッター駆動軸42の軸心Ceは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心して配置されている。図6及び図7に示されるように、カッター駆動軸42の先端のボルト部42aは、公転駆動軸43の先端面から突出していて、カッター駆動軸42におけるボルト部42aよりも内側の二面幅部(当該部分の外側に嵌め込まれる部材が廻るのを防止するための互いに平行な二面が面取りされた部分)に、回動不能に内側ナイフ固定体46aが嵌合され、円板カッターKの中心孔47に前記ボルト部42aを嵌め込んで、複数の固定ピン48を介して円板カッターKの中心孔47に近い部分を前記内側ナイフ固定体46aに対して回動不能に連結して、当該ボルト部42aに外側ナイフ固定体46bを嵌め込んで、当該ボルト部42aに固定ナット51を螺合させると、カッター駆動軸42の先端のボルト部42aに円板カッターKが取付けられる。なお、図7において、49は、切断ユニットUの円板カッターKを覆うためのカッターカバーを示す。
前記公転駆動軸43の大部分は、前板35と後板36との間に配置されて、円板カッターKが一体に取付けられたカッター駆動軸42は、その軸心Ceが公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心配置された状態で一対の軸受52a,52bを介して回転可能に支持されている。公転駆動軸43の鍔部43aに一体に取付けられた被動鎖歯車S3 と、前記出力軸32に取付けられた駆動鎖歯車S1 とには、無端鎖53が掛装されている。カッター駆動軸42の軸心Ceは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心して配置されているので、出力軸32から伝達された動力により公転駆動軸43が、その軸心C0 を中心にして駆動回転すると、カッター駆動軸42に一体に取付けられた円板カッターKは、公転駆動軸43の軸心C0 を中心として、前記偏心量(e1 )を半径とする公転(円運動)を行う。
前記後板36の背面側には、内歯車支持体55が取付けられ、当該内歯車支持体55には、軸受56を介して内歯車G1 が回転可能に支持され、当該内歯車G1 の外側端面部に一体に取付けられた被動鎖歯車S4 と、前記出力軸32に一体に取付けられた駆動鎖歯車S2 とには、無端鎖54が掛装されることで、当該内歯車G1 は、前記公転駆動軸43と同心となって、独立して駆動回転される。なお、内歯車G1 は、前記軸受56の内輪側であって、しかも後板36の側に抜出し不能に支持された内歯車連結体57に複数のピン(図示せず)を介して一体に取付けられることで、当該内歯車G1 は、軸受56に対して抜け出ない構造になっている。なお、図8及び図9において、61,62は、それぞれ無端鎖53,54にテンションを付与するためのテンション鎖歯車を示す。
前記カッター駆動軸42の後端部(円板カッターKが取付けられた端部と反対側の端部)には、平歯車G2 が当該カッター駆動軸42と同心となって一体に取付けられ、当該平歯車G2 は前記内歯車G1 と噛合することで、遊星歯車機構SP1 となっている。この結果、前記出力軸32の駆動回転により公転駆動軸43が、裏側(円板カッターKと反対の側)からみて時計方向に被動回転されると、カッター駆動軸42は、公転駆動軸43の軸心C0 を中心として、前記偏心量(e1 )に対応する半径の時計方向への公転(円運動)を行う。図9において、Rは、カッター駆動軸(自転駆動軸)42の軸心Ceの公転の軌跡を示す公転軌跡円である。カッター駆動軸42を公転させるための公転駆動軸43を設けた理由は、当該公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転(円運動又は偏心回転)しながら自転する円板カッターKは、後述の「なた切断作用」を奏させるために、当該公転駆動軸43と同方向に回転して、当該円板カッターKの全体が公転により、上方から下方に移動する間にワークWを「ダウンカット」で切断する必要があるためである。また、遊星歯車機構SP1 を設けたのは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転する平歯車G2 を減速させて駆動回転させるためである。更に、遊星歯車機構SP1 を構成する内歯車G1 を駆動回転させるのは、仮に、当該内歯車G1 を固定した場合には、公転する平歯車G2 は、公転駆動軸43の回転方向と逆方向に回転するため、円板カッターKの全体が公転により、「アップカット方向」に公転して、上方から下方に移動する間にワークWを「ダウンカット」で切断することが不能となり、これを回避するため、内歯車G1 を、平歯車G2 を回転させようとする方向に駆動回転させる必要があるためである。
ここで、前記遊星歯車機構SP1 によって、出力軸32の回転が減速されて円板カッターKに伝達されて、ダウンカット方向に回転する円板カッターK及び公転駆動軸43が同方向に回転することを説明する。簡便のために、鎖歯車S1 と同S3 は、同歯数と仮定し、鎖歯車S2 の歯数は、同S4 の(1/ 2)と仮定すると共に、内歯車G1 及び平歯車G2 の歯数は、それぞれ50、30とする。
(A)鎖歯車S2 が非回転で、鎖歯車S1 が図9のように裏側から見て時計方向に1回転した場合、平歯車G2 は、内歯車G1 との直接の噛合により、反時計方向に(50/ 30)回転すると共に、時計方向への1回の公転により、時計方向に1回転するので、平歯車G2 は、反時計方向に〔(50/ 30)−1〕=(20/ 30)回転する。
(B)鎖歯車S1 が非回転で、鎖歯車S2 が裏側から見て時計方向に1回転した場合、平歯車G2 は、時計方向に(25/ 30)回転する。
(C)鎖歯車S1 ,S2 を取付けている出力軸32が1回転すると、平歯車G2 の回転数は、上記したA,Bの異なる2つの現象を合成すればよいので、以下の通りとなる。
よって、平歯車G2 は、〔(25/ 30)−(20/ 30)〕=(1/ 6)だけ、裏側から見て、円板カッターKのダウンカット方向である「時計方向」に回転する。
この結果、上記の設定条件では、公転駆動軸43が6回転する間に、円板カッターKは1回転し、当該円板カッターKは、1回転の間に6回だけ公転する。
本発明に係る切断ユニットUを用いて、作業テーブル2に固定された平板状のワークWを切断するには、駆動モータM2 により無端鎖21を周回走行させて、支持フレーム3に沿って当該切断ユニットUを設定速度で走行させて、当該切断ユニットUに組み込まれた円板カッターKが、公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転しながらダウンカット方向に駆動回転(自転)することで、前記ワークWが断続的に切断される。
次に、図11−A〜図11−Fを参照して、円板カッターKの切断原理について説明する。ここで、ワークWとして発泡樹脂を使用し、切断の設定条件として、公転駆動軸43が6回転することで、平歯車G2 、即ち、円板カッターKは、1回転し、他の設定条件は、以下の通りである。なお、図11−A〜図11−Fにおいて、C00, C01は、円板カッターKの1回の公転毎の中心を示し、Ce1は、円板カッターKの1回の公転の「原点位置」における当該円板カッターKの中心位置を示し、Ce2〜Ce4は、当該「原点位置」から円板カッターKが90°ずつ公転した状態の当該円板カッターKの中心位置を示す。
・円板カッターの外径 :450mm
・円板カッターの偏心量:20mm
・円板カッターの送り :円板カッターの1公転で24mm
・ワークの板厚 :100mm
そして、上記した円板カッターKを上記送りで当該円板カッターKを移動させて、円板カッターKの中心Ce1が「原点位置」である最も高い位置に配置された状態(図11−A)から、当該円板カッターKが公転中心C00を中心にして90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、ダウンカットしながら、その全体が下方に移動することで、当該円板カッターKの中心Ce2は、前方に移動しながら、ワークWは、「回転切断作用」と「なた切断作用」とが相乗して大きく切断される(図11−B)。次に、円板カッターKが公転中心C00を中心にして更に90°だけ公転すると、円板カッターKの中心Ce2は、最も低い位置まで達して、その間に、当該円板カッターKは、ワークWの下部を僅かに切断する(図11−C)。円板カッターKが最も低い位置に配置された状態で、当該円板カッターKが公転中心C00を中心にして更に90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、ワークの切断端面Waに対して最大に後退し(図11−D)、当該円板カッターKが更に90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、新たな公転中心C01に対して最も高い位置である新たな「原点位置」に配置される(図11−E)。このように、円板カッターKの公転により最も低い位置に配置された状態から、ワークの切断端面Waに対して最大に後退した後に、当該切断端面Waに対して前進しながら新たな「原点位置」に達する間においては、円板カッターKは、回転しているが、ワークWは切断されない。そして、円板カッターKが新たな「原点位置」から90°だけ公転すると、次の公転による切断が開始される(図11−F)。なお、円板カッターKの各公転毎の公転中心C00( C01) も、当然に円板カッターKの送り速度で移動している。
また、円板カッターKが1回転する間に、当該円板カッターKは、公転駆動軸43の軸心C00(C01) を中心にして計6回の公転を行うので、当該円板カッターKの1回転により、計6回の切断が行われる。
ここで、減速機31の出力軸32の回転数を480rpmとして、円板カッターKが1回の公転で24mm移動する場合における当該円板カッターKの送り速度を求める。鎖歯車S1 と同S3 は、同歯数であるため、公転駆動軸43の回転数は、出力軸32と同一である。平歯車G2 の回転数、即ち、円板カッターKの回転数は、公転駆動軸43の回転数の(1/ 6)であるので、80rpmであり、円板カッターKの1分間の公転数は、(80×6)=480回である。円板カッターKは、1回の円運動で24mmだけ送られるので、1分間には、(480×24)mm=11.52mだけ送られる。即ち、円板カッターKの送り速度は、11.52m/ 分である。
上記したように、円板カッターKが1回転する間に、円板カッターKがダウンカット方向に回転しながら、円板カッターKの全体が公転運動により上方から下方に向けて移動することで、「なた切断作用」が発生し、当該「なた切断作用」と本来の「回転切断作用」との相乗により、ワークWに対する切断力が飛躍的に高められる。また、カッター駆動軸(自転駆動軸)42を中心にして連続回転しながら、当該カッター駆動軸42は、公転駆動軸43の軸心C0 (C00,C01) を中心にして公転し、円板カッターKの全体が上方から下方に移動する途中であって、しかも当該カッター駆動軸42の軸心Ce と公転駆動軸43の軸心C0 (C00,C01) とを結ぶ線分が水平になった時点で、当該円板カッターKの全体の移動方向は、ワークWに対して瞬間的に垂直となって過大な切断力が発生し、この過大な切断力も、円板カッターKの切断力を飛躍的に高めるのに寄与する。また、円板カッターKの外周部の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切粉を発生させずに、ワークの切断ができる。
ここで、円板カッターKの送り速度、即ち、切断ユニットUの送り速度は、無端鎖21を周回駆動走行させる駆動モータM2 の回転数の変更により実現可能であるが、ワークWの材質又は板厚によっては、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を調整する必要がある。例えば、送り速度を一定にした場合において、ワークWが相対的に硬い材質である場合には、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を多くして、当該円板カッターKの1回の公転に対するワークWの切削量を少なくする必要があると共に、逆に、ワークWが相対的に軟らかい材質である場合には、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を少なくして、当該円板カッターKの1回の公転に対するワークWの切削量を多くすることが、当該ワークWを効率的に切断できる。
円板カッターKの1回転に対する公転数の変更は、上記実施例では、各鎖歯車S1 〜S4 の各歯数を変更により可能であり、このためには、各鎖歯車S1 〜S4 のうち特定の鎖歯車の変更が必要であり、この作業は極めて面倒であって、実用的でない。そこで、図12に示されるように、前後の各板35’,36’に、切断ユニットUの走行方向に沿って所定間隔をおいて別々の可変速駆動モータM11,M12により駆動される2本の出力軸63,64を支持して、出力軸63に取付けられた鎖歯車S1 と、公転駆動軸43に取付けられた鎖歯車S3 とに無端鎖53’が掛装され、別の出力軸64に取付けられた鎖歯車S2 と、内歯車G1 に一体に取付けられた鎖歯車S4 とに無端鎖54’が掛装された構成にすると、別々の可変速駆動モータM11,M12の回転数を任意に変速させることで、円板カッターKの1回転に対する公転数を自在に変更できる。なお、図12において、65,66は、それぞれ可変速駆動モータM11,M12の減速機を示す。
次に、図13及び図14を参照して、別の遊星歯車機構SP2 を用いた切断機構の原理についてのみ説明する。前後の各板35,36に支持された公転駆動軸71には、偏心量(e1 )だけ偏心してカッター駆動軸(自転駆動軸)72が回転可能に支持され、当該カッター駆動軸72の前端部には、円板カッターKが取付けられ、その後端部には、フランジ板部73を介して内歯車G3 が、複数本のボルト74を介して当該カッター駆動軸72と同心となって一体に取付けられている。後板36には、前記公転駆動軸71の軸心C0 ’と同心となって第1リング体75が複数本のボルト76を介して固定され、当該第1リング体75には、同一形状の第2リング体77が複数本のボルト78を介して固定され、第2リング体77には、複数本のボルト81を介して平歯車固定板82が固定されている。前記内歯車G3 と噛合される平歯車G4 は、その背面側から複数本のボルト83を介して前記平歯車固定板82に固定されることで、当該平歯車G4 は、後板36に固定された状態で配置される。平歯車G4 の軸心は、公転駆動軸71の軸心C0'と同一である。駆動モータM13の駆動軸84に取付けられた鎖歯車S5 と、公転駆動軸71に取付けられた鎖歯車S6 とには、無端鎖85が掛装されて、当該公転駆動軸71が駆動回転される。
公転駆動軸71の駆動回転により、カッター駆動軸72が公転されると、当該カッター駆動軸72に一体に取付けられている内歯車G3 は、平歯車G4 と噛合した状態で、公転駆動軸71の軸心C0'を中心に公転することで、カッター駆動軸72の先端に取付けられた円板カッターKは、公転駆動軸71の軸心C0'を中心に公転しながら、当該公転駆動軸71と同方向に自転して、ワークWを断続的に切断する。なお、図14において、R2 は、公転駆動軸71の軸心C0'を中心とする偏心量(e2 )を半径とする円であって、カッター駆動軸72の軸心Ce’の公転軌跡円である。
遊星歯車機構SP2 を構成する内歯車G3 及び平歯車S4 の歯数をそれぞれA1 ,A2 とすると、公転駆動軸71が1回転すると、カッター駆動軸72は、(A2 / A1 )だけ、前記公転駆動軸71と同方向に減速回転される。
C0 :公転駆動軸の軸心(公転中心)
Ce:カッター駆動軸(自転駆動軸)の軸心
e1 ,e2 :カッター駆動軸(自転駆動軸)の偏心量
G1 ,G3 :内歯車
G2 ,G4 :平歯車
R1 ,R2 :カッター駆動軸の軸心の公転軌跡円
SP1 ,SP2 :遊星歯車機構
U:切断ユニット
W:ワーク
Wa:ワークの切断端面
42,72:カッター駆動軸(自転駆動軸)
43,71:公転駆動軸
本発明は、円板カッターに「なた切断作用」を付加することで、板状のワークに対する円板カッターの切断力を高めた板状ワークの切断装置に関するものである。
円板カッターを用いて板状ワークを切断する装置は、例えば特許文献1及び同2に示されるように、駆動回転する円板カッターによりワークを「連続切断」する構成である。ここで、「連続切断」とは、円板カッターの外周部の切断部により、時間的に連続してワークを切断することをいう。特許文献1のように、角柱状に焼成された軟らかいパンを所定厚にスライス切断する場合には、外周部に鋭利な刃部が形成された円板カッターを使用することで、切粉(切屑)を発生させないで切断可能であるが、発泡樹脂又は木材を切断する場合には、円板カッターは鋸刃を用いているため、切断時に切粉が連続して発生し、その処理に多大な労力を有していた。
このように、円板カッターによる「連続切断」は、板状のワークに対する当該円板カッターの配置位置は、当該カッターとワークとの相対的な移動方向に沿った配置位置が変動するのみで、側面視における当該円板カッターとワークの配置位置、即ち、円板カッターの中心位置は不変である。このため、ワークに対する円板カッターの切断力は、それ程大きくない。
また、切断対象のワークに関しても、その硬さにもよるが、切断可能なワークの厚さには、一定の限界があって、板厚及び硬さを含めた切断可能なワークの範囲は限定される。
特開昭58−132496号公報
特開2005−131958号公報
本発明は、円板カッターを公転(偏心回転)させながら駆動回転により自転させて、円板カッターに「なた切断作用」を付加して回転切断することで、ワークに対する当該円板カッターの切断力を飛躍的に高めることを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、円板カッターが支持された切断ユニットと、板状のワークとを相対的に直線移動させて、当該ワークを切断する装置であって、
前記切断ユニットは、
軸方向の一端部に前記円板カッターが一体に取付けられている自転駆動軸は、駆動回転される公転駆動軸に所定の偏心量だけ偏心して支持され、
当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた平歯車は、前記公転駆動軸と同心となって、前記円板カッターとは独立して駆動回転される内歯車と噛合され、前記公転駆動軸の軸心を中心にして前記自転駆動軸を公転させながら、当該自転駆動軸を駆動回転させる遊星歯車機構が構成され、
前記公転駆動軸及び前記内歯車の駆動回転により、前記円板カッターは、当該公転駆動軸及び内歯車の軸心に対する公転により円運動しながら連続駆動回転することで、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの円運動により生ずるなた切断作用との相乗により、前記ワークを切断することを特徴としている。
請求項1の発明によれば、前記自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた平歯車は、前記公転駆動軸と同心となって、前記自転駆動軸とは独立して駆動回転される内歯車と噛合されて遊星歯車機構を構成し、前記公転回転軸の駆動回転により前記自転駆動軸は、当該公転駆動軸の軸心を中心にして公転することで、当該自転駆動軸の一端に取付けられた円板カッターは円運動(偏心回転)しながら駆動回転される。即ち、前記円板カッターは、公転駆動軸及び前記内歯車が独立して駆動回転されることで、当該公転駆動軸及び内歯車の軸心に対する公転により円運動しながら、ワークが切断されることで、当該ワークは、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの公転(円運動)により生ずるなた切断作用との相乗により、大きな切断力により断続的に切断される。また、円板カッターは、公転しながら連続回転しているため、上記した「なた切断作用」は、円板カッターの全周で発生することで、円板カッターは、その全周に亘り切断作用が生じて、即ち、円板カッターの円周上の特定部のみで「なた切断作用」が生ずることはないので、円板カッターの磨耗が均一化されることで、その寿命も長くなる。
また、請求項1の発明の板状ワークの切断装置の切断作用を「遊星歯車機構」を捨象して説明すると、以下のようになる。円板カッターは、公転中心に対する公転により円運動(偏心回転)しながら、駆動回転されて自転することで、当該円板カッターの外周の刃部は、ワークに対して断続的に喰い込んで切断される。即ち、円板カッターは、その回転中における特定回転角度においてのみ、ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込んで切断する「なた切断作用」と、当該円板カッターが連続駆動回転する「回転切断作用」とが相乗して、ワークが切断され、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、当該円板カッターはワークから退避することで、ワークを切断することなく連続回転する「断続切断作用」によりワークが切断される。請求項1の発明の切断は、円板カッターが連続駆動回転しながら、公転により円板カッターの全体が公転(円運動)を行うことで「なた切断作用」を生じさせており、この切断現象はワークに対して円板カッターの全体が移動しながら当該ワークを切断しているので、「引き切り作用」が生じており、これによりワークは、複数の切断作用(円板カッターの連続回転切断作用、なた切り切断作用及び引き切り切断作用)が相乗して、大きな切断作用でもってスムーズに切断できる。この結果、周縁部が鋭利に形成された円板カッターにより、切粉(切屑)を発生させずに、ワークの切断が可能となる。なお、カッターの回転中における前記特定回転角度以外の角度では、当該円板カッターは、ワークに対して退避しているため、切断作用はない。
即ち、円板カッターは、その回転中における前記特定回転角度においては、円板カッターの円運動により、板状のワークの板面に対して垂直な方向に円板カッターが移動して、当該ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込む「なた切断作用」と、本来の「回転切断作用」とが相乗して切断されて、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、ワークは全く切断されない「断続切断作用」によりワークが切断されるので、ワークに対する円板カッターの切断力が飛躍的に高められる。また、円板カッターの円運動により、当該円板カッターが最も前方に配置された後に、後退する瞬間において、ワークに対する円板カッターの切断力の方向は、当該ワークの板面に対して垂直となって、最大の切断力が瞬間的に発生するので、当該円板カッターの切断力は、単に連続回転するのみの場合に比較して、飛躍的に高められる。このため、円板カッターの切断対象である板状のワークの範囲が広くなって、円板カッターの連続回転切断作用のみでは切断できなかった大きな板厚或いは硬いワークであっても切断可能となる。
また、請求項1の発明によれば、円板カッターの外周の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切断時に切粉が発生せず、従来の切断では不可欠であった切粉の処理が不用となる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されることを特徴としている。
請求項2の発明によれば、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されるので、公転駆動軸と自転駆動軸との各回転数、即ち、当該自転駆動軸に取付けられた円板カッターの公転(円運動)の回転数と、自転駆動軸の回転数とを、鎖歯車等の歯数の変更によらずに、個別に、しかも容易に変更できる。また、請求項3の発明によれば、前記公転駆動軸と自転駆動軸とは、個別の可変速駆動モータで駆動されるので、ワークの硬度及び刃物寿命の延長(最適化)等を考慮して、円板カッターの回転数を任意に選択できる。
請求項3の発明は、円板カッターが支持された切断ユニットと、板状のワークとを相対的に直線移動させて、当該ワークを切断する装置であって、
前記切断ユニットは、
軸方向の一端部に前記円板カッターが一体に取付けられている自転駆動軸は、駆動回転される公転駆動軸に所定の偏心量だけ偏心して支持され、
当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた内歯車は、前記切断ユニットのフレームに固定された平歯車と噛合されることで、前記公転駆動軸の軸心を中心にして前記自転駆動軸を公転させながら当該自転駆動軸を駆動回転させる遊星歯車機構が構成され、
前記公転駆動軸の駆動回転により、前記円板カッターは、当該公転駆動軸の軸心に対する公転により円運動しながら連続駆動回転することで、前記円板カッターの連続駆動回転による本来の回転切断作用と、当該円板カッターの円運動により生ずるなた切断作用との相乗により、前記ワークを切断することを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1の発明に対して、円板カッターを円運動させる機構が異なるのみで、ワークの切断原理は、請求項1の発明と同一である。即ち、請求項3の発明では、当該自転駆動軸の他端部に一体に取付けられた内歯車は、前記切断ユニットのフレームに固定された平歯車と噛合された遊星歯車機構により、円板カッターが公転(円運動)される。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記ワークを固定配置させる作業テーブルには、前記切断ユニットを移動可能に支持するカッター支持フレームが設けられ、
前記カッター支持フレームの側面に設けられたリニアーガイドにガイドされた前記切断ユニットは、当該切断ユニットの移動方向に沿って張設された無端鎖の途中に連結されることで、移動可能となっており、
前記無端鎖が駆動されて周回走行することで、当該切断ユニットは、設定速度で移動して前記作業テーブルに固定配置されたワークを切断する構成であることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、ワークを作業テーブル上に固定配置して、カッター支持フレームの側面に沿って切断ユニットが直線移動することで、板状のワークを切断するものである。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記作業テーブルには、前記切断ユニットの円板カッターの下端外周の刃部を非接触状態で入り込ませて横振れを防止するためのカッター振止め部材が配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明によれば、前記作業テーブルには、前記円板カッターの下端外周の刃部を非接触状態で入り込ませて横振れを防止するためのカッター振止め部材が設けられているので、当該円板カッターの外周の刃部の横振れが防止されるため、当該円板カッターの切断力が一層に高められる。
本発明(請求項1,3の各発明)は、軸方向の一端部に円板カッターを取付けた自転駆動軸が公転駆動軸に偏心して支持され、当該自転駆動軸の駆動回転は、遊星歯車機構を利用しているので、円板カッターは、公転中心に対する公転により円運動(偏心回転)しながら、駆動回転されることで、当該円板カッターの外周の刃部は、ワークに対して断続的に喰い込んで切断される。即ち、円板カッターは、その回転中における特定回転角度においてのみ、ワークに対して円板カッターが「なた状」に喰い込んで切断する「なた切断作用」と、当該円板カッターの連続駆動回転による「回転切断作用」とが相乗して、ワークが切断され、前記特定回転角度を除く残りの回転角度では、当該円板カッターはワークから退避することで、ワークを切断することなく連続回転する「断続切断作用」によりワークが切断される。なお、カッターの回転中における前記特定回転角度以外の角度では、当該円板カッターは、ワークに対して退避しているため、切断作用はない。また、円板カッターの外周の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切断時に切粉が発生せず、従来の切断では不可欠であった切粉の処理が不用となる。
本発明に係る切断装置の斜視図である。
(a)は、同じく正面図であり、(b)は、(a)のZ−Z線拡大断面図である。
同じく平面図である。
支持フレーム3の側面に切断ユニットUが水平方向に走行可能に支持された状態を示す側面図である。
同じく斜視図である。
遊星歯車機構SP1 を用いた切断ユニットUの縦断面図である。
切断ユニットUの分解斜視図である。
切断ユニットUを構成する遊星歯車機構SP1 の部分の背面図である。
切断ユニットUの背面図である。
切断ユニットUの背面側の斜視図である。
公転駆動軸43の軸心C00に対して公転する円板カッターKが最も高い位置である公転の原点位置に配置された状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に90°だけ公転した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に180°だけ公転して、当該円板カッターKが最も低い位置に達した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て反時計方向に270°だけ公転して、当該円板カッターKがワークWの切断済先端面に対して最も後退した状態を示す側面図である。
公転の原点位置に対して円板カッターKが前側から見て360°だけ反時計方向に公転して、公転の新たな原点位置に戻った状態を示す側面図である。
公転の新たな原点位置に対して円板カッターKが、公転駆動軸43の新たな軸心C01に対して前側から見て90°だけ反時計方向に公転した状態を示す側面図である。
公転駆動軸43と内歯車G1 とを別々の駆動モータM11,M12で駆動する構造の模式的断面図である。
別の遊星歯車機構SP2 を用いた切断機構の縦断面図である。
遊星歯車機構SP2 の背面図である。
以下、最適な実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図5に本発明に係る切断装置の全体構成が示されている。長方形状の作業台1の作業テーブル2の幅方向Yの一端部には、後述の切断ユニットUを支持して、水平方向に沿って移動可能に支持するための支持フレーム3が当該作業テーブル2の長手方向Xに沿って配置されている。当該支持フレーム3の両端部は、支持台4で支持されることで、作業テーブル2の上面との間には、被切断物である板状のワークWを配置可能なワーク配置空間部5が形成されている。前記支持フレーム3の直下を含めて、作業テーブル2の上面は、長方形状の複数の金属製の表面板材6が長手方向X及び幅方向Yに並べられて固定配置され、幅方向Yに沿った2枚の表面板材6の間には、後述の円板カッターKの下端部を入り込ませて、その振れを防止するための振止め空間7(図3参照)となっている。前記ワークWは、作業テーブル2の上面に、その長手方向Xに沿って所定間隔をおいて配置された一対の規制具8により、当該ワークWが作業テーブル2の長手方向Xにずれるのを防止しており、当該ワークWの上面は、後述の切断ユニットUの円板カッターKが走行する近辺においてワーク押え11により下方に押し付けられる。ワーク押え11は、その長手方向Xの両端に配置された押付け具12のハンドル13の回転により一対の押え板14により上方から押し付けられる構成である。一方の押付け具12のハンドル13の回転は、連結ロッド15を介して他方の押付け具12に伝達されて、一方のハンドル13の回転により、一対の押え板14は同時にワークWを押し付ける構成となっている。
図4及び図5に示されるように、前記支持フレーム3の手前側の側面には、上下方向に所定間隔をおいて一対の直線ガイドレール16が取付けられ、切断ユニットUの後板36の背面側に設けられた上下一対の嵌着ガイド体17が前記各直線ガイドレール16に嵌着されることで、当該切断ユニットUは、前記支持フレーム3の長手方向Xに沿って直線移動する。また、前記支持フレーム3の長手方向Xの両端部には、切断ユニットUの走行方向である作業テーブル2の長手方向Xと直交する水平方向である前後方向(前記幅方向Yと同じ)に沿った回転軸心を有する各鎖歯車18a,18bがそれぞれ支持され、各鎖歯車18a,18bには無端鎖21が掛装されて、当該無端鎖21における下方に配置される部分は、所定長だけ欠落された状態となって、当該欠落部に臨む当該無端鎖21の両端部は、それぞれ切断ユニットUの背面側に突出された一対の突出板22に取付けられた各鎖連結ロッド23に連結されている。一対の鎖歯車18a,18bのうち一方の鎖歯車18aが駆動モータM2 により駆動回転されて、無端鎖21が走行することで、切断ユニットUは、一対の直線ガイドレール16に沿って走行する。無端鎖21のたるみ防止するために、下方の直線ガイドレール16を挟んで前記支持フレーム3の手前側の側面に設けられた鎖支持体24により支持されている。なお、図4及び図5において、支持フレーム3の長手方向Xに沿って切断ユニットUの両移動端を規制するために、当該支持フレーム3における当該両移動端には、それぞれ検出センサ25が取付けられ、切断ユニットUの後板36には、当該検出センサ25により検出されるドッグ26が取付けられている。
次に、図6〜図10を参照して、前記切断ユニットUについて説明する。切断ユニットUは、駆動モータM1 の駆動回転により、後述のカッター駆動軸(自転駆動軸)42の先端部に取付けられた円板カッターKを円運動(偏心回転)させながら、当該円板カッターKを駆動回転させるものである。即ち、駆動モータM1 及び当該駆動モータM1 の駆動軸(図示せず)の回転を減速させるための減速機31は、後述の後板36に一体に取付けられていて、前記減速機31の出力軸32と一体に駆動回転する第1及び第2の各駆動鎖歯車S1 ,S2 は、それぞれキー33,34を介して当該出力軸32に一体に取付けられ、各駆動鎖歯車S1 ,S2 は、それぞれ前板35と後板36との間、及び後板36の背面側における上部に配置されて、前記出力軸32は、前板35及び後板36を貫通して各軸受37,38により当該前板35及び後板36に回転可能に支持されている。前記出力軸32における前板35の前方に突出したボルト部32aをナット41で締め上げることで、当該出力軸32の軸方向に沿った隙間がなくなって、当該出力軸32は、前記各軸受37,38を介して前板35及び後板36に回転可能に支持される。
前記減速機31の出力軸32の直下には、軸方向の前端部に円板カッターKを一体に取付けたカッター駆動軸(自転駆動軸)42を偏心状態で支持する公転駆動軸43が配置されて、一対の軸受44a,44bを介して前板35及び後板36に回転可能に支持されている。カッター駆動軸42の軸心Ceは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心して配置されている。図6及び図7に示されるように、カッター駆動軸42の先端のボルト部42aは、公転駆動軸43の先端面から突出していて、カッター駆動軸42におけるボルト部42aよりも内側の二面幅部(当該部分の外側に嵌め込まれる部材が廻るのを防止するための互いに平行な二面が面取りされた部分)に、回動不能に内側ナイフ固定体46aが嵌合され、円板カッターKの中心孔47に前記ボルト部42aを嵌め込んで、複数の固定ピン48を介して円板カッターKの中心孔47に近い部分を前記内側ナイフ固定体46aに対して回動不能に連結して、当該ボルト部42aに外側ナイフ固定体46bを嵌め込んで、当該ボルト部42aに固定ナット51を螺合させると、カッター駆動軸42の先端のボルト部42aに円板カッターKが取付けられる。なお、図7において、49は、切断ユニットUの円板カッターKを覆うためのカッターカバーを示す。
前記公転駆動軸43の大部分は、前板35と後板36との間に配置されて、円板カッターKが一体に取付けられたカッター駆動軸42は、その軸心Ceが公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心配置された状態で一対の軸受52a,52bを介して回転可能に支持されている。公転駆動軸43の鍔部43aに一体に取付けられた被動鎖歯車S3 と、前記出力軸32に取付けられた駆動鎖歯車S1 とには、無端鎖53が掛装されている。カッター駆動軸42の軸心Ceは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して偏心量(e1 )だけ偏心して配置されているので、出力軸32から伝達された動力により公転駆動軸43が、その軸心C0 を中心にして駆動回転すると、カッター駆動軸42に一体に取付けられた円板カッターKは、公転駆動軸43の軸心C0 を中心として、前記偏心量(e1 )を半径とする公転(円運動)を行う。
前記後板36の背面側には、内歯車支持体55が取付けられ、当該内歯車支持体55には、軸受56を介して内歯車G1 が回転可能に支持され、当該内歯車G1 の外側端面部に一体に取付けられた被動鎖歯車S4 と、前記出力軸32に一体に取付けられた駆動鎖歯車S2 とには、無端鎖54が掛装されることで、当該内歯車G1 は、前記公転駆動軸43と同心となって、独立して駆動回転される。なお、内歯車G1 は、前記軸受56の内輪側であって、しかも後板36の側に抜出し不能に支持された内歯車連結体57に複数のピン(図示せず)を介して一体に取付けられることで、当該内歯車G1 は、軸受56に対して抜け出ない構造になっている。なお、図8及び図9において、61,62は、それぞれ無端鎖53,54にテンションを付与するためのテンション鎖歯車を示す。
前記カッター駆動軸42の後端部(円板カッターKが取付けられた端部と反対側の端部)には、平歯車G2 が当該カッター駆動軸42と同心となって一体に取付けられ、当該平歯車G2 は前記内歯車G1 と噛合することで、遊星歯車機構SP1 となっている。この結果、前記出力軸32の駆動回転により公転駆動軸43が、裏側(円板カッターKと反対の側)からみて時計方向に被動回転されると、カッター駆動軸42は、公転駆動軸43の軸心C0 を中心として、前記偏心量(e1 )に対応する半径の時計方向への公転(円運動)を行う。図9において、Rは、カッター駆動軸(自転駆動軸)42の軸心Ceの公転の軌跡を示す公転軌跡円である。カッター駆動軸42を公転させるための公転駆動軸43を設けた理由は、当該公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転(円運動又は偏心回転)しながら自転する円板カッターKは、後述の「なた切断作用」を奏させるために、当該公転駆動軸43と同方向に回転して、当該円板カッターKの全体が公転により、上方から下方に移動する間にワークWを「ダウンカット」で切断する必要があるためである。また、遊星歯車機構SP1 を設けたのは、公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転する平歯車G2 を減速させて駆動回転させるためである。更に、遊星歯車機構SP1 を構成する内歯車G1 を駆動回転させるのは、仮に、当該内歯車G1 を固定した場合には、公転する平歯車G2 は、公転駆動軸43の回転方向と逆方向に回転するため、円板カッターKの全体が公転により、「アップカット方向」に公転して、上方から下方に移動する間にワークWを「ダウンカット」で切断することが不能となり、これを回避するため、内歯車G1 を、平歯車G2 を回転させようとする方向に駆動回転させる必要があるためである。
ここで、前記遊星歯車機構SP1 によって、出力軸32の回転が減速されて円板カッターKに伝達されて、ダウンカット方向に回転する円板カッターK及び公転駆動軸43が同方向に回転することを説明する。簡便のために、鎖歯車S1 と同S3 は、同歯数と仮定し、鎖歯車S2 の歯数は、同S4 の(1/ 2)と仮定すると共に、内歯車G1 及び平歯車G2 の歯数は、それぞれ50、30とする。
(A)鎖歯車S2 が非回転で、鎖歯車S1 が図9のように裏側から見て時計方向に1回転した場合、平歯車G2 は、内歯車G1 との直接の噛合により、反時計方向に(50/ 30)回転すると共に、時計方向への1回の公転により、時計方向に1回転するので、平歯車G2 は、反時計方向に〔(50/ 30)−1〕=(20/ 30)回転する。
(B)鎖歯車S1 が非回転で、鎖歯車S2 が裏側から見て時計方向に1回転した場合、平歯車G2 は、時計方向に(25/ 30)回転する。
(C)鎖歯車S1 ,S2 を取付けている出力軸32が1回転すると、平歯車G2 の回転数は、上記したA,Bの異なる2つの現象を合成すればよいので、以下の通りとなる。
よって、平歯車G2 は、〔(25/ 30)−(20/ 30)〕=(1/ 6)だけ、裏側から見て、円板カッターKのダウンカット方向である「時計方向」に回転する。
この結果、上記の設定条件では、公転駆動軸43が6回転する間に、円板カッターKは1回転し、当該円板カッターKは、1回転の間に6回だけ公転する。
本発明に係る切断ユニットUを用いて、作業テーブル2に固定された平板状のワークWを切断するには、駆動モータM2 により無端鎖21を周回走行させて、支持フレーム3に沿って当該切断ユニットUを設定速度で走行させて、当該切断ユニットUに組み込まれた円板カッターKが、公転駆動軸43の軸心C0 に対して公転しながらダウンカット方向に駆動回転(自転)することで、前記ワークWが断続的に切断される。
次に、図11−A〜図11−Fを参照して、円板カッターKの切断原理について説明する。ここで、ワークWとして発泡樹脂を使用し、切断の設定条件として、公転駆動軸43が6回転することで、平歯車G2 、即ち、円板カッターKは、1回転し、他の設定条件は、以下の通りである。なお、図11−A〜図11−Fにおいて、C00, C01は、円板カッターKの1回の公転毎の中心を示し、Ce1は、円板カッターKの1回の公転の「原点位置」における当該円板カッターKの中心位置を示し、Ce2〜Ce4は、当該「原点位置」から円板カッターKが90°ずつ公転した状態の当該円板カッターKの中心位置を示す。
・円板カッターの外径 :450mm
・円板カッターの偏心量:20mm
・円板カッターの送り :円板カッターの1公転で24mm
・ワークの板厚 :100mm
そして、上記した円板カッターKを上記送りで当該円板カッターKを移動させて、円板カッターKの中心Ce1が「原点位置」である最も高い位置に配置された状態(図11−A)から、当該円板カッターKが公転中心C00を中心にして90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、ダウンカットしながら、その全体が下方に移動することで、当該円板カッターKの中心Ce2は、前方に移動しながら、ワークWは、「回転切断作用」と「なた切断作用」とが相乗して大きく切断される(図11−B)。次に、円板カッターKが公転中心C00を中心にして更に90°だけ公転すると、円板カッターKの中心Ce2は、最も低い位置まで達して、その間に、当該円板カッターKは、ワークWの下部を僅かに切断する(図11−C)。円板カッターKが最も低い位置に配置された状態で、当該円板カッターKが公転中心C00を中心にして更に90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、ワークの切断端面Waに対して最大に後退し(図11−D)、当該円板カッターKが更に90°だけ公転すると、当該円板カッターKは、新たな公転中心C01に対して最も高い位置である新たな「原点位置」に配置される(図11−E)。このように、円板カッターKの公転により最も低い位置に配置された状態から、ワークの切断端面Waに対して最大に後退した後に、当該切断端面Waに対して前進しながら新たな「原点位置」に達する間においては、円板カッターKは、回転しているが、ワークWは切断されない。そして、円板カッターKが新たな「原点位置」から90°だけ公転すると、次の公転による切断が開始される(図11−F)。なお、円板カッターKの各公転毎の公転中心C00( C01) も、当然に円板カッターKの送り速度で移動している。
また、円板カッターKが1回転する間に、当該円板カッターKは、公転駆動軸43の軸心C00(C01) を中心にして計6回の公転を行うので、当該円板カッターKの1回転により、計6回の切断が行われる。
ここで、減速機31の出力軸32の回転数を480rpmとして、円板カッターKが1回の公転で24mm移動する場合における当該円板カッターKの送り速度を求める。鎖歯車S1 と同S3 は、同歯数であるため、公転駆動軸43の回転数は、出力軸32と同一である。平歯車G2 の回転数、即ち、円板カッターKの回転数は、公転駆動軸43の回転数の(1/ 6)であるので、80rpmであり、円板カッターKの1分間の公転数は、(80×6)=480回である。円板カッターKは、1回の円運動で24mmだけ送られるので、1分間には、(480×24)mm=11.52mだけ送られる。即ち、円板カッターKの送り速度は、11.52m/ 分である。
上記したように、円板カッターKが1回転する間に、円板カッターKがダウンカット方向に回転しながら、円板カッターKの全体が公転運動により上方から下方に向けて移動することで、「なた切断作用」が発生し、当該「なた切断作用」と本来の「回転切断作用」との相乗により、ワークWに対する切断力が飛躍的に高められる。また、カッター駆動軸(自転駆動軸)42を中心にして連続回転しながら、当該カッター駆動軸42は、公転駆動軸43の軸心C0 (C00,C01) を中心にして公転し、円板カッターKの全体が上方から下方に移動する途中であって、しかも当該カッター駆動軸42の軸心Ce と公転駆動軸43の軸心C0 (C00,C01) とを結ぶ線分が水平になった時点で、当該円板カッターKの全体の移動方向は、ワークWに対して瞬間的に垂直となって過大な切断力が発生し、この過大な切断力も、円板カッターKの切断力を飛躍的に高めるのに寄与する。また、円板カッターKの外周部の鋭利な刃部によりワークを切断するので、切粉を発生させずに、ワークの切断ができる。
ここで、円板カッターKの送り速度、即ち、切断ユニットUの送り速度は、無端鎖21を周回駆動走行させる駆動モータM2 の回転数の変更により実現可能であるが、ワークWの材質又は板厚によっては、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を調整する必要がある。例えば、送り速度を一定にした場合において、ワークWが相対的に硬い材質である場合には、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を多くして、当該円板カッターKの1回の公転に対するワークWの切削量を少なくする必要があると共に、逆に、ワークWが相対的に軟らかい材質である場合には、円板カッターKの1回転に対する当該円板カッターKの公転数を少なくして、当該円板カッターKの1回の公転に対するワークWの切削量を多くすることが、当該ワークWを効率的に切断できる。
円板カッターKの1回転に対する公転数の変更は、上記実施例では、各鎖歯車S1 〜S4 の各歯数を変更により可能であり、このためには、各鎖歯車S1 〜S4 のうち特定の鎖歯車の変更が必要であり、この作業は極めて面倒であって、実用的でない。そこで、図12に示されるように、前後の各板35’,36’に、切断ユニットUの走行方向に沿って所定間隔をおいて別々の可変速駆動モータM11,M12により駆動される2本の出力軸63,64を支持して、出力軸63に取付けられた鎖歯車S1 と、公転駆動軸43に取付けられた鎖歯車S3 とに無端鎖53’が掛装され、別の出力軸64に取付けられた鎖歯車S2 と、内歯車G1 に一体に取付けられた鎖歯車S4 とに無端鎖54’が掛装された構成にすると、別々の可変速駆動モータM11,M12の回転数を任意に変速させることで、円板カッターKの1回転に対する公転数を自在に変更できる。なお、図12において、65,66は、それぞれ可変速駆動モータM11,M12の減速機を示す。
次に、図13及び図14を参照して、別の遊星歯車機構SP2 を用いた切断機構の原理についてのみ説明する。前後の各板35,36に支持された公転駆動軸71には、偏心量(e1 )だけ偏心してカッター駆動軸(自転駆動軸)72が回転可能に支持され、当該カッター駆動軸72の前端部には、円板カッターKが取付けられ、その後端部には、フランジ板部73を介して内歯車G3 が、複数本のボルト74を介して当該カッター駆動軸72と同心となって一体に取付けられている。後板36には、前記公転駆動軸71の軸心C0 ’と同心となって第1リング体75が複数本のボルト76を介して固定され、当該第1リング体75には、同一形状の第2リング体77が複数本のボルト78を介して固定され、第2リング体77には、複数本のボルト81を介して平歯車固定板82が固定されている。前記内歯車G3 と噛合される平歯車G4 は、その背面側から複数本のボルト83を介して前記平歯車固定板82に固定されることで、当該平歯車G4 は、後板36に固定された状態で配置される。平歯車G4 の軸心は、公転駆動軸71の軸心C0'と同一である。駆動モータM13の駆動軸84に取付けられた鎖歯車S5 と、公転駆動軸71に取付けられた鎖歯車S6 とには、無端鎖85が掛装されて、当該公転駆動軸71が駆動回転される。
公転駆動軸71の駆動回転により、カッター駆動軸72が公転されると、当該カッター駆動軸72に一体に取付けられている内歯車G3 は、平歯車G4 と噛合した状態で、公転駆動軸71の軸心C0'を中心に公転することで、カッター駆動軸72の先端に取付けられた円板カッターKは、公転駆動軸71の軸心C0'を中心に公転しながら、当該公転駆動軸71と同方向に自転して、ワークWを断続的に切断する。なお、図14において、R2 は、公転駆動軸71の軸心C0'を中心とする偏心量(e2 )を半径とする円であって、カッター駆動軸72の軸心Ce’の公転軌跡円である。
遊星歯車機構SP2 を構成する内歯車G3 及び平歯車S4 の歯数をそれぞれA1 ,A2 とすると、公転駆動軸71が1回転すると、カッター駆動軸72は、(A2 / A1 )だけ、前記公転駆動軸71と同方向に減速回転される。
C0 :公転駆動軸の軸心(公転中心)
Ce:カッター駆動軸(自転駆動軸)の軸心
e1 ,e2 :カッター駆動軸(自転駆動軸)の偏心量
G1 ,G3 :内歯車
G2 ,G4 :平歯車
R1 ,R2 :カッター駆動軸の軸心の公転軌跡円
SP1 ,SP2 :遊星歯車機構
U:切断ユニット
W:ワーク
Wa:ワークの切断端面
42,72:カッター駆動軸(自転駆動軸)
43,71:公転駆動軸