JP2022001040A - 細胞の評価方法及び細胞解析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】多数の細胞を含む細胞集団としての細胞の厚みを、客観的及び定量的に評価可能とする。【解決手段】本発明に係る細胞解析装置の一態様は、ホログラフィック顕微鏡である観察部(1)と、容器内の細胞の集団に対し前記観察部により得られたホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、所定の観察範囲についての位相像を作成する位相像作成部(22、23)と、位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出部(25)と、位相像において細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得部(26)と、細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出部(27)と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞の評価方法及びその評価に利用される細胞解析装置に関し、さらに詳しくは、多数の細胞の集団における細胞の形態を非侵襲で評価するのに好適な評価方法及び解析装置に関する。
再生医療分野では、近年、iPS細胞やES細胞、或いは間葉系幹細胞等の多能性幹細胞を用いた研究が盛んに行われている。こうした多能性幹細胞を利用した再生医療の研究・開発においては、多能性を維持した状態の未分化の細胞を大量に培養する必要がある。そのため、適切な培養環境の選択と環境の安定的な制御が必要であるとともに、培養中の細胞の状態を高い頻度で確認する必要がある。再生医療分野における細胞状態の確認は、細胞を非破壊的、非侵襲的に行うことが重要である。こうした非破壊的・非侵襲的な細胞状態の評価は、細胞観察装置で得られる細胞画像を利用した形態学的な評価が一般的である。
一般に細胞などの薄く透明な観察対象物は光の吸収が少ないため、光学的な強度像では対象物の形態を認識することは難しい。そのため、従来一般に、細胞の観察には位相差顕微鏡が広く利用されている。位相差顕微鏡では光が対象物を通過する際に変化する位相の変化量をコントラストとして画像化するため、透明である細胞の輪郭などを明瞭に可視化した位相差画像を得ることができる。しかしながら、位相差顕微鏡による位相差画像の画素値(信号値)では、対象物の厚み方向の情報、具体的には細胞の厚みを、定量的に評価することができないという限界がある。
これに対し、非特許文献1に開示されているような細胞解析装置では、細胞観察画像を取得するためにホログラフィック顕微鏡が用いられている。ホログラフィック顕微鏡では、培養容器内の培地と該培地上の細胞との屈折率の差と、細胞の厚みの積である物理量、即ち光学厚み(Optical thickness)、を画像化する。そのため、ホログラフィック顕微鏡により得られる位相像は光学厚みの情報を有している。非特許文献1に開示されている細胞解析装置では、光学厚みにカラースケールに従った表示色を割り当てることで、位相像から光学厚みの分布を示すカラー画像を作成することができる。また、非特許文献1には、光学厚みの違いを利用して、iPS細胞の未分化維持コロニーと未分化逸脱細胞との識別が可能であることも示されている。
国際特許公開第2016/084420号パンフレット
「細胞培養解析装置 CultureScanner CS-1」、[online]、[2020年5月14日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/bio/cell/cs1/index.htm>
例えば、mRNAやタンパク質の核内蓄積や、異常な脂質代謝によって、細胞核の肥大化が引き起こされる場合があり、細胞核が肥大化した細胞を正常な細胞と識別できれば、再生医療や核酸医薬等の細胞関連の各種分野における研究・開発、或いは製品化において有用である。しかしながら、一般に、細胞の培養時において、個々の細胞の形態のばらつきは比較的大きい。そのため、培養条件や培養環境等の相違による細胞形態の違いや変化を評価する際には、個々の細胞ではなく、100〜1011程度の数の細胞の集団を対象として評価を行う必要がある。従来の細胞解析装置では、上述したように、個々の細胞の厚みをカラースケールで表した画像を表示することができるので、これを利用することで、複数の試料についてどちらが全体的に細胞の厚みが大きい傾向にある、といった主観的な評価を行うことは可能である。しかしながら、こうした評価は客観的なものでないため、評価者によって評価結果がばらつくことが避けられない。また、複数の試料に対しどの程度の差異があるのかといった定量性を持った評価結果を得ることができないため、細胞の形態の変化の度合や形態の差異の程度を比較することは困難である。
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、多数の細胞を含む細胞集団における細胞の形態の比較や形態の変化の把握を客観的に又は定量的に行うことができる細胞の評価方法及び細胞解析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る細胞の評価方法の一態様は、
ホログラフィック顕微鏡を用いて容器内の細胞の集団に対する撮影を行い、所定の観察範囲についての位相像を取得する位相像取得ステップと、
前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出ステップと、
前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得ステップと、
前記個別光学厚み取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出ステップと、
を有する。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る細胞解析装置の一態様は、
ホログラフィック顕微鏡である観察部と、
容器内の細胞の集団に対し前記観察部により得られたホログラムデータに基いて、所定の観察範囲についての位相像を作成する位相像作成部と、
前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出部と、
前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得部と、
前記個別光学厚み取得部で細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を算出する評価指標算出部と、
を備える。
本発明に係る上記態様の細胞の評価方法及び細胞解析装置によれば、培養容器内で培養中である多数の細胞に対し、細胞集団としての細胞の厚みの評価指標が得られる。従って、この評価指標を用いて、例えば培養容器毎の細胞の厚みを客観的に比較したり評価したりすることができる。それによって、評価者の主観に頼らない比較や評価が行える。また、細胞集団としての細胞の厚さを定量化して示すことで、従来は不明瞭であった僅かな細胞の形態の相違や変化を把握することが可能となる。例えば、細胞核は細胞内において屈折率が高い部位であり、この肥大化によって計測される細胞の光学厚みの最大値は増加する。従って、細胞の光学厚み最大値のような代表的な光学厚みの指標を利用して、例えば、正常な細胞と細胞核が肥大化した細胞とを識別することができる。
本発明の一実施形態である細胞解析装置の概略構成図。 本実施形態の細胞解析装置において細胞集団の形態評価を行う際の処理の流れを示すフローチャート。 図2に示したフローチャートにおける位相反転補正処理の流れを示すフローチャート。 本実施形態の細胞解析装置における撮影動作及び画像再構成処理を説明するための概念図。 本実施形態の細胞解析装置で得られるIHM位相像とそれから求まる細胞領域抽出画像の一例を示す図。 図3に示した位相反転部位の補正処理の動作を説明するための画像及び位相遅れ分布を示す図。 実験例1における6種類の試料についての、IHM位相像及び光学厚み疑似カラー画像を示す図。 実験例1における6種類の試料についての、個々の細胞の面積と光学厚みとの関係を示す散布図。 実験例1における6種類の試料についての、個々の細胞の面積と光学厚みとの関係を示すヒートマップ。 実験例1における6種類の試料についての、個々の細胞の光学厚みの頻度分布を示す図。 図10に示した頻度分布から求まる薄い細胞及び厚い細胞の割合を示す図。 実験例1における6種類の試料についての、個々の細胞の面積の頻度分布を示す図。 図12に示した頻度分布から求まる小さい細胞及び大きい細胞の割合を示す図。 本実施形態の細胞解析装置において追加的に実施可能である細胞の外縁部の勾配度合を示す指標値を算出する処理の流れを示すフローチャート。 細胞の外縁部の勾配度合を示す指標値の算出方法の一例の説明図。 実験例1における6種類の試料についての、個々の細胞の外縁部の勾配指標値を示す図。 実験例2における6種類の試料についての位相差顕微鏡観察像を示す図。 実験例2における6種類の試料についてのIHM位相像を示す図。 実験例2における6種類の試料についての光学厚み疑似カラー画像を示す図。 実験例2における6種類の試料についての、個々の細胞の面積と光学厚みとの関係を示すヒートマップ。 実験例3における6種類の試料についての位相差顕微鏡観察像を示す図。 実験例3における6種類の試料についてのIHM位相像を示す図。 実験例3における6種類の試料についての光学厚み疑似カラー画像を示す図。 実験例3における6種類の試料についての、個々の細胞の面積と光学厚みとの関係を示すヒートマップ。
以下、本発明に係る細胞解析装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
[本実施形態の細胞解析装置の構成]
図1は、本実施形態による細胞解析装置の概略構成図である。
本実施形態の細胞解析装置は、顕微観察部1と、制御・処理部2と、ユーザーインターフェイスである入力部3及び表示部4と、を備える。
本実施形態において、顕微観察部1はインライン型ホログラフィック顕微鏡であり、レーザーダイオードなどを含む光源部10とイメージセンサー11とを備え、光源部10とイメージセンサー11との間に、解析対象である細胞13を含む培養プレート12が配置される。
制御・処理部2は、顕微観察部1の動作を制御するとともに顕微観察部1で取得されたデータを処理するものであって、撮影制御部20と、ホログラムデータ記憶部21と、位相情報算出部22と、画像再構成部23と、位相反転補正部24と、細胞領域抽出部25と、光学厚み/面積算出部26と、評価指標算出部27と、表示処理部28と、を機能ブロックとして備える。
通常、制御・処理部2の実体は、所定のソフトウェア(コンピュータープログラム)がインストールされたパーソナルコンピューターやより性能の高いワークステーション、或いは、そうしたコンピューターと通信回線を介して接続された高性能なコンピューターを含むコンピューターシステムである。即ち、制御・処理部2に含まれる各ブロックの機能は、コンピューター単体又は複数のコンピューターを含むコンピューターシステムに搭載されているソフトウェアを実行することで達成される、該コンピューター又はコンピューターシステムに記憶されている各種データを用いた処理によって具現化されるものとすることができる。
[細胞評価処理]
本実施形態の細胞解析装置では、様々な細胞についての解析を行うことができるが、ここでは一例として、解析対象の細胞は腸管上皮細胞であるものとする。腸管上皮細胞を培養する際に必要な細胞解析を目的として細胞の観察画像を取得し、該観察画像から培養中の細胞の形態を評価する際の処理について、以下に説明する。
図2は、本実施形態の細胞解析装置を用いた細胞評価作業における処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、本実施形態の細胞解析装置における撮影動作及び画像再構成処理を説明するための概念図である。
<細胞のIHM位相像の取得>
図4(A)は本実施形態の細胞解析装置において使用される培養プレート12の略上面図である。この培養プレート12には上面視円形状である6個のウェル12aが形成されており、その各ウェル12a内で細胞が培養される。ここでは、1枚の培養プレート12全体、つまりは6個のウェル12aを含む矩形状の範囲全体が観察対象領域である。顕微観察部1は、光源部10及びイメージセンサー11の組を4組備える。各組の光源部10及びイメージセンサー11はそれぞれ、図4(A)に示すように、培養プレート12全体を4等分した四つの4分割範囲81のホログラムデータの収集を担う。つまり、4組の光源部10及びイメージセンサー11が、培養プレート12全体に亘るホログラムデータの収集を分担する。
一組の光源部10及びイメージセンサー11が1回に撮影可能である範囲は、図4(B)及び(C)に示すように、4分割範囲81の中の1個のウェル12aを含む略正方形状の範囲82をX軸方向に10等分、Y軸方向に12等分して得られる一つの撮像単位83に相当する範囲である。一つの4分割範囲81は15×12=180個の撮像単位83を含む。四つの光源部10と四つのイメージセンサー11はそれぞれ、光源部10及びイメージセンサー11を含むX−Y面内で、4分割範囲81と同じ大きさである矩形の四つの頂点付近にそれぞれ配置されており、培養プレート12上の異なる四つの撮像単位83についてのホログラムデータの取得を略同時に行う。
ホログラムデータの収集に際し、オペレーターはまず、培養プレート12を顕微観察部1の所定位置にセットし、該培養プレート12を特定する識別番号や測定日時などの情報を入力部3から入力したうえで測定実行を指示する。この測定指示を受けて撮影制御部20は、顕微観察部1の各部を制御して撮影を実行する(ステップS1)。
より詳しく述べると、一つの光源部10は、所定角度(例えば10°程度)の広がりを持つコヒーレント光を培養プレート12の所定の領域(一つの撮像単位83)に照射する。培養プレート12上の細胞13を透過したコヒーレント光(物体光15)は、培養プレート12上で細胞13の周囲の領域(通常は培地)を透過した光(参照光14)と干渉しつつイメージセンサー11に到達する。物体光15は細胞13を透過する際に位相が変化した光であり、他方、参照光14は細胞13を透過しないので該細胞13に起因する位相変化を受けない光である。従って、イメージセンサー11の検出面(像面)上には、細胞13により位相が変化した物体光15と位相が変化していない参照光14との干渉像、つまりホログラムがそれぞれ形成され、このホログラムに対応する2次元的な光強度分布データ(ホログラムデータ)がイメージセンサー11から出力される。
上述したように、四つの光源部10からは略同時に培養プレート12に向けてコヒーレント光が出射され、四つのイメージセンサー11では培養プレート12上の異なる撮像単位83に対応する領域のホログラムデータが取得される。一つの測定位置での測定が終了する毎に、光源部10及びイメージセンサー11は、図示しない移動部により、X−Y面内で一つの撮像単位83に相当する距離だけX軸方向及びY軸方向にステップ状に順次移動される。これによって、4分割範囲81に含まれる180個の撮像単位83での測定が実施され、四組の光源部10及びイメージセンサー11全体で培養プレート12全体の測定が実行されることになる。このようにして顕微観察部1の四つのイメージセンサー11で得られたホログラムデータは、測定日時等の属性情報とともに、ホログラムデータ記憶部21に格納される。
上述したような一連の測定(撮影)が終了すると、位相情報算出部22はホログラムデータ記憶部21からホログラムデータを順次読み出し、光波の伝播計算処理(位相回復処理)を行うことで2次元的な各位置における位相情報及び振幅情報を復元する。これら情報の空間分布は撮像単位83毎に求まる。全ての撮像単位83の位相情報及び振幅情報が得られたならば、画像再構成部23は、その位相情報や振幅情報に基づいて、観察対象領域全体の位相像を作成する(ステップS2)。ここでは、顕微観察部1にインライン型ホログラフィック顕微鏡 (Inline Holographic Microscope)を用いているため、得られる位相像をIHM位相像と呼ぶ。
即ち、画像再構成部23は撮像単位83毎に算出された位相情報の空間分布に基づいて、各撮像単位83のIHM位相像を再構成する。そして、その限られた範囲のIHM位相像を繋ぎ合わせるタイリング処理(図4(D)参照)を行うことにより、観察範囲全体つまりは培養プレート12全体についてのIHM位相像を作成する。タイリング処理の際には、撮像単位83の境界においてIHM位相像が滑らかに繋がるように、適宜の補正処理を行うとよい。
なお、上記のような位相情報の算出や画像再構成の際には、特許文献1等に開示されている周知のアルゴリズムを用いることができる。
<位相反転補正処理>
ホログラフィック顕微鏡による測定の原理上、位相回復処理によって得られるIHM位相像における画素値は2πの幅の範囲に限定され、その範囲を超えた値は位相が反転した値となる。例えば、画素値(位相遅れ量)を−π〜πの範囲で表現している場合には、或る画素の真の値が1.2πであったとしてもπを超える数値は表現できないため、その画素値は−0.8πとなってしまう。ここでは、この現象を「位相反転」という。細胞が薄いもののみであれば位相反転は問題とならないが、腸管上皮細胞などの比較的厚い細胞を観察する場合には、位相反転が生じ易く、細胞の厚さを正確に求める際に支障をきたす。そこで、ここでは、IHM位相像上で位相反転が生じている領域を検出し、その領域の画素値を補正する処理を行う。即ち、位相反転補正部24は、ステップS2で得られた補正前のIHM位相像に対し、位相が反転している部位を検出してこの部位における画素値を補正する処理を実行する(ステップS3)。
図3は、図2に示したフローチャートにおける位相反転補正処理の流れを示すフローチャートである。また、図6は、図3に示した位相反転補正処理の動作を説明するための画像及び位相遅れ分布を示す図である。図3及び図6を用いて、位相反転補正処理を説明する。
位相反転補正部24は、補正前のIHM位相像を読み込み(ステップS31)、まず、位相遅れ量が低い領域Pを抽出する(ステップS32)。図6(A)は1個の細胞のIHM位相像であり、該IHM位相像上で線90で示す領域の位相遅れ分布を(Aa)に示している。腸管上皮細胞は、通常、中央部が盛り上がった形状であり、輪郭部の厚さは−π〜πの範囲に入っているものの、中央部の厚さはπを超えているために位相反転が生じている。図6(Aa)に示した位相遅れ分布では、細胞の輪郭部では背景領域よりも位相遅れ量が十分に高くなっているものの、輪郭部を除く細胞の大半の領域では、位相遅れ量が背景領域に比べてもかなり低くなっている。従って、例えば位相遅れ量が所定の閾値よりも低い領域を検出すればよい。
次に位相反転補正部24は、輝度が周囲の画素よりも低い画素Qを抽出する(ステップS33)。そして、上記領域Pで且つ画素Qでもある画素を、位相が反転している画素として選択する(ステップS34)。図6(B)は、ステップS34で選択された画素を黒色、それ以外の画素を白色の二値で示す画像である。この二値画像では、細胞の外周部を示す線(厳密には細胞の外縁部よりも少し内側の範囲を示す線)が概ね示される。
そのあと位相反転補正部24は、上記二値画像において閉じた曲線で囲まれる領域を穴埋めする処理を行うことにより、補正対象マスク画像を作成する(ステップS35)。例えば、図6(B)に示す二値画像において描かれている細胞の外周部を示す線は閉じた曲線であるから、その曲線で囲まれる領域、つまりは細胞の大半を占める領域が穴埋めされ、図6(C)に示すような補正対象マスク画像が得られる。そして、元のIHM位相像において上記補正対象マスク画像上のマスク領域(図6(C)において白い領域)に存在する画素の値に2πを加算することで、その画素値を補正する(ステップS36)。こうして位相反転領域の画素値が補正されたIHM位相像を出力する(ステップS37)。
図6(D)は、図6(A)に示したIHM位相像に対し上述した手順による位相反転補正処理がなされたあとの画像(補正済みIHM位相像)であり、図6(Da)は、該補正済みIHM位相像上において線91で示す領域の位相遅れ分布である。図6(Da)に示すように、細胞領域における位相遅れ量は、中央が盛り上がった良好な形状となる。
このようにして、各細胞において位相反転が生じている領域の画素値が補正され、位相反転の影響を回避することができる。なお、すでに述べたように、解析対象の細胞の厚さによっては位相反転が生じない場合もあるから、位相反転補正処理は必須の処理ではなく、解析対象の細胞の種類等に応じて適宜省略することができる。
<個々の細胞の光学厚さ及び面積の算出>
図2に戻り説明を続ける。補正済みIHM位相像が得られると、細胞領域抽出部25は、その補正済みIHM位相像に対し、ガウシアンフィルター等を用いたノイズ除去処理を実行する(ステップS4)。これにより、主として細胞が存在しない背景領域のノイズが除去される。なお、このノイズ除去処理は省略してもよい。また、ガウシアンフィルターを用いる以外の、適宜のノイズ除去の手法を用いることができる。
そのあと細胞領域抽出部25は、ノイズ除去後のIHM位相像に対し、所定の閾値を判定基準とした単純二値化処理を行うことにより個々の細胞領域を抽出する(ステップS5)。これにより、例えば細胞領域が白、背景領域(培地の領域)が黒色で示される細胞領域抽出画像が得られる。図5は、腸管上皮細胞に対する補正済みIHM位相像(A)とそれに対する細胞領域抽出画像(B)の一例を示す図である。図5から、IHM位相像上の細胞に対応する細胞領域が概ね適切に抽出できていることが分かる。
上記二値化処理の際には、背景領域を細胞領域であるとして誤認識しないようにする必要がある。また、コロニーを形成している複数の細胞を、一つの細胞領域として認識せず、できるだけ個々の細胞領域に分離することが望ましい。このため、二値化のための閾値は、背景領域の光学厚みや解析対象である細胞種の立体形状等に応じて適宜に定めることが好ましい。そのため、この閾値は予め装置(又はソフトウェア)に設定された固定値でもよいが、ユーザーが適宜に変更又は選択できるようにするとよい。
なお、多くの細胞種では、細胞の外縁部は厚み方向に急峻に立ち上がっているわけではなく、外縁部から中央部側に向かって徐々に厚みが厚くなるような勾配を有している。そのため、或る閾値を基準として単純な二値化を行うと、本来は細胞である部分の一部が細胞領域に入らなくなる、つまりは本来の細胞の外周部の一部が細胞領域としては欠損する可能性がある。しかしながら、後述するようにして細胞の光学厚みを求める際には、こうした欠損は問題とならない。一方、細胞領域の欠損は細胞の面積に影響する。但し、ここで実施している細胞評価では、個々の細胞の面積の絶対値の厳密さはあまり重要ではなく、細胞集団での相対的な定量評価が行えればよいので、上述したような細胞領域の欠損は面積を求める際にも実質的に問題とはならない。
続いて細胞領域抽出部25は、細胞領域抽出画像上の個々の細胞領域に対しラベリングを行う(ステップS6)。ここでいうラベリングとはナンバリングであり、例えば細胞領域抽出画像上の全ての細胞領域についてそれぞれ固有の番号を割り当て、その番号と各細胞領域の中心位置の座標とを組としたリストを作成すればよい。
光学厚み/面積算出部26は、ステップS4で得られた補正済みで且つノイズ除去後のIHM位相像とステップS5で得られた細胞領域抽出画像とを用い、ラベリングされた細胞領域毎に、光学厚みの代表値を求める(ステップS7)。具体的には、例えば、IHM位相像において細胞領域毎に、その領域に含まれる複数の画素の画素値の中で最大の値を探索し、その値をその細胞領域に対応する細胞の光学厚みの代表値とすることができる。もちろん、単に最大値を選択するのではなく、最大値を示す位置及びその周囲の複数の位置での光学厚みの平均値を用いる等、他の方法によって光学厚みの代表値を決めてもよい。例えば、光学厚みの最大値を示す画素を含む予め指定された範囲(例えば最大値を示す画素を中心とする3×3画素の範囲)における光学厚みの平均値やその中の中央値を光学厚みの代表値とすることができる。また、二値化処理によって細胞領域であると判定された領域に含まれる全画素における光学厚みの平均値やその中の中央値を光学厚みの代表値とすることもできる。
また光学厚み/面積算出部26は、細胞領域抽出画像に基き、ラベリングされた細胞領域毎にその面積値を求める(ステップS8)。これは、単純に細胞領域に含まれる画素の数を計数し、その計数値から面積値を計算すればよい。
ステップS7及びS8の処理によって、観察範囲全体に含まれる、ラベリングされた細胞領域(つまりは細胞)の一つ一つについて、光学厚みの値と面積値とが求まる。
<細胞集団における光学厚さ及び面積の評価指標の算出>
そのあと、評価指標算出部27は、観察範囲全体について細胞領域毎つまりは細胞毎に得られた光学厚みの値と面積値とに基いて、種々の評価指標を作成又は算出する。
まず、評価指標算出部27は、観察範囲全体についての各細胞の光学厚み値と面積値との関係を示す散布図を作成し、さらに散布図をヒートマップに変換する(ステップS9)。
即ち、光学厚み値と面積値と互いに直交する二軸とした2次元グラフ上で、ラベリングされた各細胞はそれぞれ1点として表すことができるから、観察範囲内でラベリングされた全ての細胞に対応する点を上記2次元グラフ上で描画することにより散布図を作成することができる。また、この散布図を所定のサイズの矩形状の小領域に区切って小領域毎に点の数を計数し、その計数値にカラースケールに従った表示色を割り当てることで、散布図をヒートマップに変換することができる。即ち、このヒートマップは、散布図上の点の集積度合(密度)を示す2次元グラフである。これらグラフの具体例は後述する。
また評価指標算出部27は、観察範囲内でラベリングされた全ての細胞の光学厚み値の頻度分布、及び、その全ての細胞の面積値の頻度分布をそれぞれ求める(ステップS10)。そして、それらの頻度分布からそれぞれ、細胞集団としての光学厚み値や面積値の傾向を特徴付けるような指標値を算出する(ステップS11)。
一例としては、観察範囲内でラベリングされた全ての細胞の数に対し、光学厚み値又は面積値が特定の範囲に含まれる細胞の数の割合を頻度分布から計算し、それを指標値とすることができる。また、頻度分布においてピークが形成される場合には、そのピークのトップの位置に対応する光学厚み値や面積値とそのピーク幅とを指標値とすることもできる。また、全ての細胞の数に対して所定の割合の数の細胞が含まれるような光学厚み値の範囲や面積値の範囲を求め、これを指標値としてもよい。これら指標値の具体例は後述する。
表示処理部28は、ステップS10で作成された散布図やヒートマップと、ステップS11で得られた光学厚み値及び面積値の頻度分布、及び該頻度分布から求まる指標値とを、表示部4の画面上に解析結果として表示する(ステップS12)。なお、ユーザーによる入力部3からの指示に応じて、必要なグラフや情報のみを表示することができる。
以上のようにして、本実施形態の細胞解析装置では、培養中の細胞について、細胞集団としての細胞の光学厚みや面積に関する評価指標をユーザーに提供することができる。
上記方法により細胞の評価を行った幾つかの実験例について説明する。
[実験例1]
この実験では、解析対象の細胞はラット腸管上皮細胞であり、細胞障害性サイトカイン(TNFα:Tumor Necrosis Factor‐α)による細胞刺激の有無、及びTNFα刺激下における細胞保護剤の添加の有無、による細胞形態の相違(変化)を評価した。
試料は次の6種類である。
・TNFα0:ラット腸管上皮細胞にTNFαを添加せずに72時間培養を行った試料
・TNFα66:ラット腸管上皮細胞に66ng/mLの量のTNFαを添加して72時間培養を行った試料
・TNFα100:ラット腸管上皮細胞に100ng/mLの量のTNFαを添加して72時間培養を行った試料
・TNFα200:ラット腸管上皮細胞に200ng/mLの量のTNFαを添加して72時間培養を行った試料
・TNFα200+A:ラット腸管上皮細胞に200ng/mLの量のTNFα及び細胞保護剤Aを添加して72時間培養を行った試料
・TNFα200+B:ラット腸管上皮細胞に200ng/mLの量のTNFα及び細胞保護剤Bを添加して72時間培養を行った試料
図7は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像と該IHM位相像から求めた光学厚みの疑似カラー画像(但し、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)を示す図である。
図7に示すIHM位相像から、次のような定性的な評価が可能である。
TNFα添加なしの試料では、細胞の密度が高く、細胞が敷石状に存在している。また、個々の細胞の輝度(ハロ)は明瞭ではなく、細胞の厚みは比較的薄い。これに対し、TNFαを添加した試料では、個々の細胞の輝度が増加しており、細胞の厚みが増している。また、個々の細胞の面積が増大しており、細胞同士の間隔が広がっている。こうした変化は、TNFαの濃度が高いほど顕著である。また、細胞保護剤を添加することで、上記のような変化は軽減されている。
また図7に示す光学厚みの疑似カラー画像から、次のような定性的な評価が可能である。
TNFαの添加によって、面積が小さく光学厚みが薄い細胞が減少している。逆に、面積が大きく光学厚みが厚い細胞が増加している。細胞保護剤を添加することで、こうした変化は軽減されている。また、TNFα添加なしの試料では、細胞輪郭が不鮮明である。
図8は、6種類の試料について得られたIHM位相像から上述した手順に従って作成された散布図である。また、図9は、この散布図から求めたヒートマップ(本来はカラー図面であるが、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)である。ヒートマップを作成する際にデータ点の密集度合はデータ点数で正規化している。
散布図ではデータ点の密集度合を十分に表現しきれないが、ヒートマップでは密集度合を定性的に比較することが可能である。これにより、培養条件の相違によって、面積小で光学厚みが薄いような細胞と面積大で光学厚みが厚いような細胞の密集度合が変化していることが確認できる。
図10は6種類の試料についての細胞の光学厚み値の頻度分布を示す図、図11はこの頻度分布から算出した薄い細胞の割合及び厚い細胞の割合を比較した図である。図11において、薄い細胞とは光学厚みが0.1〜0.2πの範囲にある細胞であり、厚い細胞とは光学厚みが0.5〜1.0πの範囲にある細胞である。ここでは、これらがそれぞれ光学厚みに関する評価の指標値である。
また、図12は6種類の試料についての面積値の頻度分布を示す図、図13はこの頻度分布から算出した小さい細胞の割合及び大きい細胞の割合を比較した図である。図13において、小さい細胞とは面積値が100〜200um2の範囲にある細胞であり、大きい細胞とは面積値が500〜1000um2の範囲にある細胞である。ここでは、これらがそれぞれ面積値に関する評価の指標値である。
図10、図12のいずれにおいても、縦軸の頻度はデータ総数を用いて正規化している。また、面積が100um2に達しない細胞は光学厚みの頻度分布を求める際に除外している。
図11に示した光学厚みに関する指標値の比較結果から、TNFαの添加によって、薄い細胞が減少し厚い細胞が増加するという大きな変化が生じていることが数値として分かる。また、細胞保護剤の添加によって、その変化が或る程度軽減されていることも数値として分かる。
一方、図13に示した面積値に関する指標値の比較結果から、TNFαの添加によって、小さな細胞が減少し大きな細胞が増加するという大きな変化が生じていることが数値として分かる。また、細胞保護剤の添加によって、その変化が軽減されており、その軽減の程度は細胞の厚みについての軽減よりも大きいことが数値として分かる。
上述したように、光学厚みの頻度分布や面積値の頻度分布から算出される指標値による評価結果は、IHM位相像や光学厚み疑似カラー画像に基く定性的な評価結果と概ね一致しているが、その評価は客観性及び定量性を有しているので、評価者の主観に左右されることなく、常に的確で信頼性のある評価を行うことができる。また、複数の試料の結果を比較したり或る試料の時間的な変化を調べたりする際に、どの程度の差異があるのかを定量的に示すことができ、比較結果の可視化が容易である。
[実験例2]
この実験では、解析対象の細胞はヒト大腸癌細胞であり、代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)の一種である5−フルオロウラシル(以下「5-FU」と称す)を使用し、各種濃度の5-FUを用いた細胞刺激による細胞形態の相違(変化)を評価した。
試料は次の6種類である。
・5-FU 0μM:ヒト大腸癌細胞に5-FUを添加せずに48時間培養を行った試料
・5-FU 2.5μM:ヒト大腸癌細胞に2.5μMの濃度の5-FUを添加して48時間培養を行った試料
・5-FU 5μM:ヒト大腸癌細胞に5μMの濃度の5-FUを添加して48時間培養を行った試料
・5-FU 10μM:ヒト大腸癌細胞に10μMの濃度の5-FUを添加して48時間培養を行った試料
・5-FU 20μM:ヒト大腸癌細胞に20μMの濃度の5-FUを添加して48時間培養を行った試料
・5-FU 40μM:ヒト大腸癌細胞に40μMの濃度の5-FUを添加して48時間培養を行った試料
図17は、上記6種類の試料について得られた位相差顕微鏡観察像を示す図である。図17に示す位相差顕微鏡観察像から、次のような定性的な評価が可能である。
5-FU未添加の試料(5-FU 0μM)では、細胞同士が接着して隙間が殆どない。即ち、細胞の密度は高く、細胞が敷石状に存在している。これに対し、試料に5-FUを添加することにより、個々の細胞の形態が紡錘形や突起を伸ばした多角形に変化する。試料に添加する5-FUの濃度を増加するに伴い、細胞間の接着性が低下して細胞間の距離が拡大し、ハロが高い細胞の数が増加する。5-FUの濃度が20μMを越えると、突起を伸ばした面積の大きい細胞とハロが高く面積が小さい細胞とが混在し、細胞の大きさの不揃いが顕著になる。
図18は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像を示す図である。
図18に示すIHM位相像から、次のような定性的な評価が可能である。
5-FU未添加の試料(5-FU 0μM)では、細胞同士が接着してコロニーを形成している。試料に5-FUを添加することにより、その濃度が増加するに伴い、コロニーを形成する細胞数が減少する。また、5-FU 10μMの濃度までは、細胞突起の延伸が観測され、個々の細胞面積は拡大する。5-FUの濃度が20μMを越えると、細胞面積の大きい細胞に加えて、孤立して散在する小形の細胞が出現する。
図19は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像から求めた光学厚みの疑似カラー画像(但し、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)を示す図である。
図19に示す光学厚みの疑似カラー画像から、次のような定性的な評価が可能である。
5-FU未添加の試料(5-FU 0μM)では、細胞面積が小さく、光学厚みが薄い細胞が多い。試料に5-FUを添加することにより、細胞面積が大きく光学厚みが厚い細胞が増加する。5-FUの添加量が多いほど、光学厚みが厚い細胞が増えている。5-FUの濃度が20μMを越える高濃度になると、光学厚みの厚い部分のみが残り、光学厚みの薄い細胞突起部分が消失した細胞が増える。
図20は、6種類の試料について得られたIHM位相像から上述した手順に従って作成された散布図から求めたヒートマップ(本来はカラー図面であるが、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)である。ヒートマップを作成する際にデータ点の密集度合はデータ点数で正規化している。
このヒートマップでは、細胞の密集度合を定性的に比較することが可能である。これにより、培養条件の相違によって、面積小で光学厚みが薄いような細胞と面積大で光学厚みが厚いような細胞の密集度合が変化していることが確認できる。
なお、この実験例2では、細胞の光学厚みが全体的に厚いため、光学厚みのスケールを2倍に伸ばし、細胞領域を抽出するための閾値を実験例1と比較して0.075π[rad]から0.15π[rad]に上げた。
図20に示すヒートマップの疑似カラー画像から、次のような定性的な評価が可能である。
5-FU未添加の試料(5-FU 0μM)では、細胞面積が小さく光学厚みも薄い細胞が多い。これに対し、試料に5-FUを添加するとき、添加量を増加するに伴って、面積の小さい細胞が減り、面積の大きい細胞が増える。また、光学厚みが厚い細胞も増える。
また、作成されたヒートマップの疑似カラー画像から光学厚みの最頻値を抽出することができるため、その最頻値を指標値として算出し、画像に映り込んだ細胞の状態を評価してもよい。この場合には、上記の定性的な評価だけでなく、定量的な評価も行えるようになる。
[実験例3]
この実験では、解析対象の細胞はヒト大腸癌細胞であり、白金製剤の一種であるオキサリプラチン(Oxaliplatin、以下「Oxa」と称す)を使用し、各種濃度のOxaを用いた細胞刺激による細胞形態の相違(変化)を評価した。
試料は次の6種類である。
・Oxa 0μM:ヒト大腸癌細胞にOxaを添加せずに48時間培養を行った試料
・Oxa 2.5μM:ヒト大腸癌細胞に2.5μMの濃度のOxaを添加して48時間培養を行った試料
・Oxa 5μM:ヒト大腸癌細胞に5μMの濃度のOxaを添加して48時間培養を行った試料
・Oxa 10μM:ヒト大腸癌細胞に10μMの濃度のOxaを添加して48時間培養を行った試料
・Oxa 20μM:ヒト大腸癌細胞に20μMの濃度のOxaを添加して48時間培養を行った試料
・Oxa 40μM:ヒト大腸癌細胞に40μMの濃度のOxaを添加して48時間培養を行った試料
図21は、上記6種類の試料について得られた位相差顕微鏡観察像を示す図である。
図21に示す位相差顕微鏡観察像から、次のような定性的な評価が可能である。
Oxa未添加の試料(Oxa 0μM)では、ハロが小さい小形の細胞が多く、細胞同士が接着して隙間が少ない。
Oxaを添加することにより、個々の細胞が紡錘形や突起を伸ばした多角形を呈するようになり、細胞面積が大きくなる。添加するOxaの濃度が増加するに伴い、細胞間の距離が増加し、10μM以上の濃度ではコロニー形成は観測されない。またOxaの濃度が10μMを越えると、ハロが大きい類円形状の細胞が出現する。さらに、Oxaの濃度が20μMを越えると、細胞突起が短縮して細胞面積が減少し、ハロが大きい細胞が増える。
図22は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像を示す図である。
図22に示すIHM位相像から、次のような定性的な評価が可能である。
Oxa未添加の試料(Oxa 0μM)では、個々の細胞面積が小さく、細胞同士が密に接してコロニーを形成している。
Oxaを添加することにより細胞同士が離れ、その濃度を高くするに伴いコロニーを形成する細胞数が減少する。また、Oxaの濃度を増加させると、細胞突起の延伸と個々の細胞の面積の増大が観測される。Oxaの濃度が20μmを越えると、細胞面積の大きい細胞に混じって、孤立して存在する小形の細胞が出現する。Oxaの濃度が40μMを越えると、細胞突起が短縮・消失して細胞面積が減少した細胞が大部分となり、各細胞は孤立して散在する。
図23は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像から求めた光学厚みの疑似カラー画像(但し、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)を示す図である。
図23に示す光学厚みの疑似カラー画像から、次のような定性的な評価が可能である。
Oxa未添加の試料(Oxa 0μM)では、細胞面積が小さく光学厚みが薄い細胞が多い。
試料にOxaを添加すると、その濃度が20μMまではOxaの添加量に依存して細胞面積が大きく光学厚みが厚い細胞が増加する。一方、40μM以上もの高濃度になると、孤立して存在する、細胞面積が小さく光学厚みが薄い細胞が再び出現する。
図24は、上記6種類の試料について得られたIHM位相像から上述した手順に従って作成された散布図から求めたヒートマップ(本来はカラー図面であるが、ここではカラー画像をグレイスケールに変換して示している)である。ヒートマップを作成する際にデータ点の密集度合はデータ点数で正規化している。
ヒートマップでは、密集度合を定性的に比較することが可能である。これにより、培養条件の相違によって、面積小で光学厚みが薄いような細胞と面積大で光学厚みが厚いような細胞の密集度合が変化していることが確認できる。なお、実験例2では実験例2と同様に、光学厚みのスケールを2倍に伸ばし、細胞領域を抽出させるための閾値を変更した。
図24に示すヒートマップの疑似カラー画像から、次のような定性的な評価が可能である。
Oxa未添加及びOxaを低い濃度で添加した試料では、細胞面積や光学厚みの小さい細胞が多い。Oxaを5μM以上の濃度で添加すると、その濃度の増加に伴い、面積の小さい細胞が減って面積の大きい細胞が増える。また、光学厚みの薄い細胞が減って、光学厚みの厚い細胞が増える。一方、Oxaの濃度が40μM以上になると、細胞の面積は再び小さくなり、光学厚みの薄い細胞が増える。ただ、これら細胞はOxa未添加の場合とは異なり、細胞面積及び光学厚みともにばらつきが大きい。
また、実験例2で述べたように、この実験例3においてもヒートマップの疑似カラー画像から光学厚みの最頻値を求め、それを利用して定量的な評価も可能である。
上記実験例2、3においても、実験例1において図10に示した細胞の光学厚みの頻度分布や図12に示した細胞の面積値の頻度分布から算出される指標値による評価結果は、IHM位相像や光学厚み疑似カラー画像に基く定性的な評価結果と概ね一致する。即ち、上記実施形態の細胞解析装置における細胞の評価方法は、ヒト大腸癌細胞などのヒトの病変細胞にも適用が可能である。
[変形例]
上記実施形態の細胞解析装置では、細胞の形態として細胞の厚さと大きさ(面積)の指標値を提供することができるが、本願出願人の先願である特願2019−119042号及びPCT/JP2019/025489号で提案されているような、細胞の外縁部における厚みの勾配(傾斜)を定量化した指標値をさらに組み合わせると、細胞についてのより多面的な形態の情報に基いた評価が可能な場合がある。
ここで、細胞の外縁部における厚みの勾配の指標値を算出する方法の一例を簡単に説明する。図14は、細胞の外縁部における厚みの勾配の指標値を算出する際の手順の一例である。この場合、評価指標算出部27は、微分画像作成部、微分値ヒストグラム作成部、勾配指標値算出部を含む。
微分画像作成部は、ノイズ除去後のIHM位相像の各画素の信号値(画素値)に対し微分フィルターを適用し、画素毎の微分値を算出する(ステップS100)。微分フィルターとしては、例えば画像のエッジ検出によく利用されるラプラシアンフィルターを用いることができる。画素毎に微分値が得られたならば、それを用いてIHM位相像に対応する微分画像を作成する(ステップS101)。上述したように、IHM位相像における各画素値は細胞の光学厚さを反映しているから、細胞の外縁部の厚み方向の傾斜が急峻であるほど、該外縁部における微分値は大きくなる。
微分値ヒストグラム作成部は、微分画像を構成する全ての画素の微分値に基づいて、横軸が微分値、縦軸が出現数(画素数)であるヒストグラムを作成する(ステップS102)。微分値の増加に対する出現数の変化の状況を視覚的に把握し易くするには、ヒストグラムの横軸をリニア軸、縦軸を対数軸とするとよい。図15は微分値ヒストグラムの一例である。図15に示すように、微分値ヒストグラムには、低微分値側のスロープが急峻で、高微分値側のスロープがなだらかである左右非対称のピークが現れる。このピークのピークトップを含む低微分値側の範囲に含まれる画素は、主として細胞ではない背景領域や細胞内で厚さが比較的平坦な部位に存在する画素であると考えられる。一方、高微分値側のなだらかなスロープの範囲に含まれる画素は、主として細胞の外縁部に存在する画素であると考えられる。従って、微分値ヒストグラムにおける高微分値側のスロープの勾配の程度は、細胞の後縁部の厚み方向における勾配の程度を反映している。
即ち、IHM位相像に現れている多数の細胞の中で、細胞の外縁部の厚み方向における勾配が急峻である細胞の割合が多いほど、相対的に微分値が高い画素の割合が増える。そして、微分値が相対的に高い画素の割合が多いと、微分値ヒストグラムにおけるピークの右側のスロープの勾配が緩やかになる。図15では、Aで示したピークのほうがBで示したピークに比べてスロープが緩やかであり、細胞の外縁部の厚み方向における勾配が急峻である細胞の割合が多い、ということができる。そこで、微分値ヒストグラムにおいて上記スロープの勾配の程度を表す指標値を算出し、これを細胞の外縁部の厚み方向の勾配指標値とする。
具体的には、勾配指標値算出部は、まず微分値ヒストグラムに対してばらつきや誤差を軽減するために微分値の変化方向に移動平均をとることでスムージング処理を実行する。図15に示すように、細胞の外縁部の厚み方向の勾配の差異が顕著に現れる高微分値範囲では、スロープの減少は指数関数で近似することができる。そこで、その高微分値範囲の中で任意の微分値を2個選択し、その2個の微分値の間におけるスロープを、y=a・e-bx(但し、a、bは任意の定数)の指数関数で近似する。ここでは、最も近似誤差が小さくなる定数a、bを探索すればよい。このときの指数部の定数bはスロープの勾配の程度を反映しており、細胞の密度の影響を受けない。そこで、この指数部の定数bを勾配指標値とする。
但し、これに限らず、上記先願に記載されているような他の方法、例えば図15に示したピークの半値幅を求める等によって勾配指標値を求めてもよい。
図16は、上記実験例で示した6種類の試料について勾配指標値を算出した結果を示す図である。図16から、TNFαの添加によって細胞の外縁部の厚み方向の勾配が顕著に緩やかになっていることが分かる。また、上述したように、TNFαの添加による細胞の厚みや大きさの変化は細胞保護剤の添加によって明瞭に軽減されているのに対し、細胞の厚み方向の勾配の変化は細胞保護剤の添加によっても殆ど軽減されていないことが分かる。このように、細胞の厚み、大きさ以外に、外縁部における厚み方向の勾配という別の評価指標を加えることで、より詳細に細胞の状態や機能を反映した形態の評価が可能である。
なお、図1に示した細胞解析装置では、制御・処理部2において全ての処理を実施しているが、一般に、ホログラムデータに基づく位相情報の計算や画像の再構成処理には膨大な量の計算が必要である。また、細胞状態の判定処理の負荷も大きい。そこで、顕微観察部1に接続されたパーソナルコンピューターを端末装置とし、この端末装置と高性能なコンピューターであるサーバーとがインターネットやイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されたコンピューターシステムを利用し、上記のような煩雑な計算や処理は高性能なコンピューターで行い、顕微観察部1の制御や処理後のデータを用いた表示処理などを比較的低性能のパーソナルコンピューターで実行するように役割を分けてもよい。
また上記実施形態の細胞観察装置では、顕微観察部1としてインライン型ホログラフィック顕微鏡を用いていたが、ホログラムが得られる顕微鏡であれば、オフアクシス(軸外し)型、位相シフト型などの他の方式のホログラフィック顕微鏡に置換え可能である。
また上記実施形態や各種の変形例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲でさらに適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係る細胞の評価方法の一態様は、
ホログラフィック顕微鏡を用いて容器内の細胞の集団に対する撮影を行い、所定の観察範囲についての位相像を取得する位相像取得ステップと、
前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出ステップと、
前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得ステップと、
前記個別光学厚み取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出ステップと、
を有し、前記評価指標に基いて前記細胞の集団を評価するものである。
(第8項)本発明に係る細胞解析装置の一態様は、
ホログラフィック顕微鏡である観察部と、
容器内の細胞の集団に対し前記観察部により得られたホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、所定の観察範囲についての位相像を作成する位相像作成部と、
前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出部と、
前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得部と、
前記個別光学厚み取得部で細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出部と、
を備えるものである。
第1項に記載の細胞の評価方法、及び第8項に記載の細胞解析装置よれば、培養容器内で培養中である多数の細胞に対し、細胞集団としての細胞の厚みの評価指標を得ることができる。従って、この評価指標を用いて、例えば培養容器毎の細胞の厚みを客観的に且つ定量的に比較したり評価したりすることができる。それによって、評価者の主観に頼らない正確な比較や評価が行える。また、細胞集団としての細胞の厚さを定量化して示すことで、従来は不明瞭であった僅かな細胞の形態の相違や変化を把握することが可能となる。
(第2項、第9項)第1項に記載の細胞の評価方法、及び第8項に記載の細胞解析装置において、前記細胞厚みの評価指標は、前記観察領域における細胞数に対する所定の光学厚みの範囲に含まれる細胞数の割合であるものとすることができる。
第2項に記載の細胞の評価方法、及び第9項に記載の細胞解析装置によれば、多数の細胞を含む細胞集団における、細胞の厚みの傾向を的確に表す指標を簡便に得ることができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載の細胞の評価方法では、
前記細胞領域抽出ステップで抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得ステップ、をさらに有し、
前記評価指標算出ステップでは、前記個別面積取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた面積値から前記観察範囲における細胞の面積値の頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞集団についての細胞面積の評価指標を求めるものとすることができる。
(第10項)第8項又は第9項に記載の細胞解析装置では、
前記細胞領域抽出部で抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得部、をさらに備え、
前記評価指標算出部は、前記個別面積取得部で細胞領域毎に得られた面積値から前記観察範囲における細胞の面積値の頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞集団についての細胞面積の評価指標を求めるものとすることができる。
第3項に記載の細胞の評価方法、及び第10項に記載の細胞解析装置によれば、細胞集団における細胞の厚さの指標値のほかに、細胞の大きさの指標値も併せてユーザーに提供することができる。それにより、細胞の形態について、より多面的に評価することが可能となる。
(第4項)第1項〜第3項のいずれか1項に記載の細胞の評価方法では、
前記細胞領域抽出ステップにおいて抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得ステップ、をさらに有し、
前記評価指標算出ステップでは、前記個別光学厚み取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた光学厚み値と、前記個別面積取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた面積値と、を用い、前記観察範囲における個々の細胞の光学厚み値と面積値との関係を示す散布図、を作成するものとすることができる。
(第11項)また第8項〜第10項のいずれか1項に記載の細胞解析装置では、
前記細胞領域抽出部で抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得部、をさらに備え、
前記評価指標算出部は、前記個別光学厚み取得部で細胞領域毎に得られた光学厚み値と、前記個別面積取得部で細胞領域毎に得られた面積値と、を用い、前記観察範囲における個々の細胞の光学厚み値と面積値との関係を示す散布図、を作成するものとすることができる。
第4項に記載の細胞の評価方法、及び第11項に記載の細胞解析装置によれば、細胞集団に含まれる個々の細胞の厚みと大きさとの関係を視覚的に把握することが可能となる。
(第5項)第4項に記載の細胞の評価方法において、前記評価指標算出ステップでは、前記散布図から点の密集度合を2次元的に示すヒートマップを作成するものとすることができる。
(第12項)第11項に記載の細胞解析装置において、前記評価指標算出部は、前記散布図から点の密集度合を2次元的に示すヒートマップを作成するものとすることができる。
第5項に記載の細胞の評価方法、及び第12項に記載の細胞解析装置によれば、細胞集団に含まれる個々の細胞の厚みと大きさとの関係の片寄り具合などを、より的確に把握することが可能となる。
(第6項)第1項〜第5項のいずれか1項に記載の細胞の評価方法では、
前記位相像から画素毎の空間的な微分値を求め微分画像を作成する微分画像作成ステップと、
前記微分画像において前記目的細胞に対応する範囲に含まれる各画素の信号値の出現頻度分布を示すヒストグラムを作成し、該ヒストグラムに現れるピークの高信号値側のスロープの勾配の程度を数値化した指標値を算出する第2の指標値算出ステップと、
をさらに有するものとすることができる。
(第13項)また第8項〜第12項のいずれか1項に記載の細胞解析装置では、
前記位相像から画素毎の空間的な微分値を求め微分画像を作成する微分画像作成部と、
前記微分画像において前記目的細胞に対応する範囲に含まれる各画素の信号値の出現頻度分布を示すヒストグラムを作成し、該ヒストグラムに現れるピークの高信号値側のスロープの勾配の程度を数値化した指標値を算出する第2の指標値算出部と、をさらに備えるものとすることができる。
第6項に記載の細胞の評価方法、及び第13項に記載の細胞解析装置によれば、細胞集団における細胞の厚さや大きさの指標値のほかに、細胞の外周部の厚み方向の勾配度合を表す指標値も併せてユーザーに提供することができる。それにより、細胞の形態について、さらに多面的に評価することが可能となる。
(第7項)第1項〜第6項のいずれか1項に記載の細胞の評価方法において、前記位相像取得ステップでは、その値が所定の位相範囲を超えたために反転した画素の値を補正する補正処理を行うことで位相像を取得するものとすることができる。
(第14項)また第8項〜第13項のいずれか1項に記載の細胞解析装置において、前記位相像作成部は、その値が所定の位相範囲を超えたために反転した画素の値を補正する補正処理を行うことで位相像を取得するものとすることができる。
第7項に記載の細胞の評価方法、及び第14項に記載の細胞解析装置によれば、細胞の厚さが厚く、ホログラフィック顕微鏡で観察可能な光学厚みの位相範囲を超えてしまうような場合であっても、補正処理によって適切な画素値を求め、細胞の厚みを評価することができる。
1…顕微観察部
10…光源部
11…イメージセンサー
12…培養プレート
12a…ウェル
13…細胞
14…参照光
15…物体光
2…制御・処理部
20…撮影制御部
21…ホログラムデータ記憶部
22…位相情報算出部
23…画像再構成部
24…位相反転補正部
25…細胞領域抽出部
26…光学厚み/面積算出部
27…評価指標算出部
28…表示処理部
3…入力部
4…表示部

Claims (14)

  1. ホログラフィック顕微鏡を用いて容器内の細胞の集団に対する撮影を行い、所定の観察範囲についての位相像を取得する位相像取得ステップと、
    前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出ステップと、
    前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得ステップと、
    前記個別光学厚み取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出ステップと、
    を有し、前記評価指標に基いて前記細胞の集団を評価する細胞の評価方法。
  2. 前記細胞厚みの評価指標は、前記観察領域における細胞数に対する所定の光学厚みの範囲に含まれる細胞数の割合である、請求項1に記載の細胞の評価方法。
  3. 前記細胞領域抽出ステップで抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得ステップ、をさらに有し、
    前記評価指標算出ステップでは、前記個別面積取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた面積値から前記観察範囲における細胞の面積値の頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞集団についての細胞面積の評価指標を求める、請求項1又は2に記載の細胞の評価方法。
  4. 前記細胞領域抽出ステップにおいて抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得ステップ、をさらに有し、
    前記評価指標算出ステップでは、前記個別光学厚み取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた光学厚み値と、前記個別面積取得ステップにおいて細胞領域毎に得られた面積値と、を用い、前記観察範囲における個々の細胞の光学厚み値と面積値との関係を示す散布図、を作成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞の評価方法。
  5. 前記評価指標算出ステップでは、前記散布図から点の密集度合を2次元的に示すヒートマップを作成する、請求項4に記載の細胞の評価方法。
  6. 前記位相像から画素毎の空間的な微分値を求め微分画像を作成する微分画像作成ステップと、
    前記微分画像において前記目的細胞に対応する範囲に含まれる各画素の信号値の出現頻度分布を示すヒストグラムを作成し、該ヒストグラムに現れるピークの高信号値側のスロープの勾配の程度を数値化した指標値を算出する第2の指標値算出ステップと、
    をさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞の評価方法。
  7. 前記位相像取得ステップでは、その値が所定の位相範囲を超えたために反転した画素の値を補正する補正処理を行うことで位相像を取得する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞の評価方法。
  8. ホログラフィック顕微鏡である観察部と、
    容器内の細胞の集団に対し前記観察部により得られたホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、所定の観察範囲についての位相像を作成する位相像作成部と、
    前記位相像において個々の細胞領域を抽出する細胞領域抽出部と、
    前記位相像において前記細胞領域毎に光学厚みの代表値をそれぞれ求める個別光学厚み取得部と、
    前記個別光学厚み取得部で細胞領域毎に得られた光学厚みの代表値から前記観察範囲における細胞の光学厚みの頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞の集団についての細胞厚みの評価指標を求める評価指標算出部と、
    を備える細胞解析装置。
  9. 前記細胞厚みの評価指標は、前記観察領域における細胞数に対する所定の光学厚みの範囲に含まれる細胞数の割合である、請求項8に記載の細胞解析装置。
  10. 前記細胞領域抽出部で抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得部、をさらに備え、
    前記評価指標算出部は、前記個別面積取得部で細胞領域毎に得られた面積値から前記観察範囲における細胞の面積値の頻度分布を作成し、該頻度分布を用いて該観察範囲に存在する細胞集団についての細胞面積の評価指標を求める、請求項8又は9に記載の細胞解析装置。
  11. 前記細胞領域抽出部で抽出された各細胞領域の面積をそれぞれ算出する個別面積取得部、をさらに備え、
    前記評価指標算出部は、前記個別光学厚み取得部で細胞領域毎に得られた光学厚み値と、前記個別面積取得部で細胞領域毎に得られた面積値と、を用い、前記観察範囲における個々の細胞の光学厚み値と面積値との関係を示す散布図、を作成する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
  12. 前記評価指標算出部は、前記散布図から点の密集度合を2次元的に示すヒートマップを作成する、請求項11に記載の細胞解析装置。
  13. 前記位相像から画素毎の空間的な微分値を求め微分画像を作成する微分画像作成部と、
    前記微分画像において前記目的細胞に対応する範囲に含まれる各画素の信号値の出現頻度分布を示すヒストグラムを作成し、該ヒストグラムに現れるピークの高信号値側のスロープの勾配の程度を数値化した指標値を算出する第2の指標値算出部と、をさらに備える、請求項8〜12のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
  14. 前記位相像作成部は、その値が所定の位相範囲を超えたために反転した画素の値を補正する補正処理を行うことで位相像を取得する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023195491A1 (ja) * 2022-04-06 2023-10-12 富士フイルム株式会社 撮像システム及び培養条件調整方法
WO2023248954A1 (ja) * 2022-06-24 2023-12-28 ソニーグループ株式会社 生体試料観察システム、生体試料観察方法及びデータセット作成方法

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