JP2022001034A - 三次元皮膚モデルにおけるタイトジャンクションの可視化方法 - Google Patents

三次元皮膚モデルにおけるタイトジャンクションの可視化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、三次元皮膚モデルの表面からタイトジャンクションを観察可能にするタイトジャンクションの可視化方法を提供することである。【解決手段】三次元皮膚モデルにおいてタイトジャンクションを可視化する方法であって、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1工程、及び前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2工程を含む、前記可視化方法。【選択図】なし

Description

本発明は、三次元皮膚モデルの表面からタイトジャンクションを観察可能にするタイトジャンクションの可視化方法に関する。また、本発明は、当該タイトジャンクションの可視化方法を利用した、被験物質のタイトジャンクション形成能を評価する方法、及びタイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質をスクリーニングする方法に関する。
皮膚は生体の最外層に位置する組織であり、常に乾燥や外来から異物侵入等のストレスに曝露されている。これらのストレスから生体を防御するために皮膚はバリア機能を発達させている。細胞間接着構造の一つであるタイトジャンクションは、角層直下の顆粒層に局在し、角層と共に皮膚バリア機能を担っている。タイトジャンクションの構成タンパク質の一つであるクローディン1を欠損したマウスでは経表皮水分蒸散量の増加により出生後致死となることが報告されており、タイトジャンクションは、外界からのバリア機能だけではなく、生体内の水分流出の防御にも働いていると考えられている。更に、タイトジャンクションの構成タンパク質の減少はアトピー性皮膚炎の発症の要因の一つになっていることも提唱されている。そのため、タイトジャンクションの形成を促進させることは、皮膚の健全化のために有用であると考えられている。
従来、入手が困難なヒト皮膚又は実験動物の代替として三次元皮膚モデルが評価試験に汎用されている。三次元皮膚モデルは、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行うことにより作製される組織モデルであり、基底層、有棘層、顆粒層、及び角層が順に積層された擬似表皮組織が形成されている。従来、タイトジャンクションの形成評価は、三次元皮膚モデルが使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、タイトジャンクションは角層下の顆粒層に局在しているため、角層が最表面に存在している従来の三次元皮膚モデルでは、タイトジャンクションを免疫染色によって可視化しても、角層が形成されている三次元皮膚モデルの表面からはタイトジャンクションを観察することができないため、三次元皮膚モデルの断面からタイトジャンクションを観察しているのが現状である。このように三次元皮膚モデルの断面からタイトジャンクションを観察したとしても、当該断面において点状又は線状でしかタイトジャンクションを観察できず、タイトジャンクションの発達度を正確に評価できないという欠点がある。
特開2008−26092号公報
本発明の目的は、三次元皮膚モデルの表面からタイトジャンクションを観察可能にするタイトジャンクションの可視化方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該タイトジャンクションの可視化方法を利用した、被験物質のタイトジャンクション形成能に及ぼす影響を評価する方法、及びタイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質をスクリーニングする方法を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止させた三次元皮膚モデルは、表面(三次元皮膚モデルの平面)においてタイトジャンクションの網目構造(タイトジャンクションストランドのネットワーク)を可視化できることを見出した。更に、当該手法を利用することにより、被験物質のタイトジャンクション形成能の評価や、タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニングが可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 三次元皮膚モデルにおいてタイトジャンクションを可視化する方法であって、
ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1工程、及び
前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2工程を含む、前記可視化方法。
項2. 前記第2工程におけるタイトジャンクションの構成タンパク質の可視化が、当該構成タンパク質に対する免疫染色によって行われる、項1に記載の可視化方法。
項3. 被験試料のタイトジャンクション形成能に及ぼす影響を評価する方法であって、
被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1A工程、及び
前記第1A工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2A工程を含み、
被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、被験試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較する、前記評価方法。
項4. タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニング方法であって、
候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1B工程、及び
前記第1B工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2B工程を含み、
候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、候補試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較する、前記スクリーニング方法。
本発明によれば、三次元皮膚モデルの表面からタイトジャンクションの網目構造(タイトジャンクションストランドのネットワーク)を可視化でき、タイトジャンクションの発達度をより正確に評価できるので、被験物質のタイトジャンクション形成能に及ぼす影響の評価や、タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニングを効率的に行うことが可能になる。
試験例1で作製した三次元皮膚モデルに対してタイトジャンクション構成タンパク質(ZO-1及びオクルーディン)の免疫染色を行った像である。 試験例2で作製した三次元皮膚モデルに対してタイトジャンクション構成タンパク質(ZO-1及びオクルーディン)の免疫染色を行った像である。
1.タイトジャンクションの可視化方法
本発明のタイトジャンクションの可視化方法は、三次元皮膚モデルにおいてタイトジャンクションを可視化する方法であって、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1工程、及び前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2工程を含むことを特徴とする。以下、本発明のタイトジャンクションの可視化方法について詳述する。
[第1工程]
第1工程では、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する。即ち、第1工程では、最表面に顆粒層が形成されている三次元皮膚モデルが作製される。
第1工程で使用するケラチノサイトの由来については、特に制限されず、ヒト、マウス、ラット、サル等のいずれに由来するものであってもよいが、ヒト皮膚に近い三次元皮膚モデルにするという観点からヒト由来であることが好ましい。
また、第1工程で使用するケラチノサイトは、基底層、有棘層、及び顆粒層に分化可能である限り、遺伝子改変や薬剤処理等が施されたものであってもよい。
第1工程においてケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導するために、先ず、液透過性膜上にケラチノサイトを播種してケラチノサイトを増殖させる。
液透過性膜とは、培地を透過可能であり、且つケラチノサイトの支持体となり得る多孔質膜であればよく、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等の膜が挙げられる。また、液透過性膜には、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン等の細胞外マトリックスや、ポリL−リジン等の細胞の接着性を高める成分がコーティングされていてもよい。
液透過性膜上でケラチノサイトを増殖させるには、底面に液透過性膜を有するカルチャー培養インサートを使用することが好ましい。
液透過性膜上に播種するケラチノサイト数については、特に制限されないが、例えば、1×103〜1×107細胞/cm2程度、好ましくは1×104〜1×106細胞/cm2程度、より好ましくは1×105〜2×105細胞/cm2程度が挙げられる。
液透過性膜上でのケラチノサイトの増殖は、ケラチノサイトを増殖用培地中に浸漬させた状態で培養すればよい。カルチャーインサートを使用する場合には、カルチャーインサート内及び外に増殖用培地を添加した状態にしてカルチャーインサート内でケラチノサイトを培養すればよい。
増殖用培地としては、ケラチノサイトが増殖可能であることを限度として特に制限されず、ケラチノサイトの増殖に使用されている従来の培地を使用すればよいが、低カルシウム濃度で無血清培地であることが好ましい。また、前記増殖用培地には、エピネフリン、トランスフェリン、ビタミン類、アミノ酸類、インターロイキン、インスリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲンフィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、増殖因子としてケラチノサイト増殖因子(KGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、白血球遊走阻止因子(LIF)、肝細胞増殖因子(SCF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、抗生物質等が含有されてもよい。分化誘導用培地としては、例えば、KGMTM、KGMTM-2、KGM-GoldTM、KGM-CDTM(以上、ロンザ株式会社製)等の市販品を使用することができる。
液透過性膜上でのケラチノサイトの増殖は、ケラチノサイトがコンフルエントになるまで行えばよく、培養時間は、使用するケラチノサイトの種類や状態に応じて適宜設定されるが、例えば、24〜168時間、好ましくは48〜120時間、より好ましくは72〜96時間が挙げられる。また、液透過性膜上でのケラチノサイトの増殖は、CO2インキュベーター内で、25〜40℃、好ましくは36〜38℃、より好ましくは37℃で行えばよい。
液透過性膜上でケラチノサイトを増殖させた後に、気液界面培養に先立って、分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させた状態で培養してもよい。このように、気液界面培養前に分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させて培養することにより、ケラチノサイトを効率的に、基底層、有棘層、及び顆粒層に分化させることができる。カルチャーインサートを使用する場合であれば、分化誘導用培地中に浸漬させてケラチノサイトを培養するには、ケラチノサイトを増殖させた後に、カルチャーインサート内及び外の増殖用培地を分化誘導用培地に置換して培養すればよい。
分化誘導用培地としては、コンフルエントになったケラチノサイトを基底層、有棘層、及び顆粒層に分化誘導できることを限度として特に制限されず、ケラチノサイトの分化誘導に使用されている従来の培地を使用すればよいが、カルシウム濃度が1mM以上、好ましくは1.2〜1.8mM程度の無血清培地であることが好ましい。分化誘導用培地としては、例えば、CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium(CELLnTEC社製)等の市販品を使用することができる。
分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させた状態で培養する際の培養時間については、使用するケラチノサイトの種類や状態に応じて適宜設定されるが、例えば、6〜72時間、好ましくは12〜48時間、より好ましくは18〜27時間が挙げられる。また、当該培養は、CO2インキュベーター内で、25〜40℃、好ましくは36〜38℃、より好ましくは37℃で行えばよい。
また、ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導するには、液透過性膜のケラチノサイトが存在する側を気相(大気)に晒し、液透過性膜のケラチノサイトが存在しない側は分化誘導用培地を接触させた状態で培養すればよい。カルチャーインサートを使用する場合には、カルチャーインサート内には分化誘導用培地が含まれず、及びカルチャーインサート外に増殖用培地が含まれる状態にしてケラチノサイトを培養すればよい。
ケラチノサイトの気液界面培養は、1〜4日に1回、好ましくは2〜3日に1回の頻度で分化誘導用培地を新鮮なものに交換しながら行えばよい。また、気液界面培養は、CO2インキュベーター内で、25〜40℃、好ましくは36〜38℃、より好ましくは37℃で行えばよい。
気液界面培養を行うことにより、ケラチノサイトが分化誘導されて、基底層、有棘層、及び顆粒層をこの順で形成して重層化する。第1工程では、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で気液界面培養を停止する。本発明において、「基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階」とは、可視化されたタイトジャンクションの構成タンパク質を表面から直接視認できる程度に、顆粒層が表面側に位置している状態になっている時点を指し、顆粒層の形成終了後且つ角層の形成が開始される前の時点だけでなく、タイトジャンクションの形成が認められる限り、顆粒層の形成途中の時点であってもよく、更に、可視化されたタイトジャンクションの視認性に悪影響を及ぼさない程度の僅かな角層が顆粒層上に形成された状態になっている時点であってもよい。即ち、第1工程では、顆粒層の形成途中から、顆粒層に僅かな角層が形成されるまでの間に、気液界面培養を終了する。
気液界面培養の培養時間については、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で終了するように、使用するケラチノサイトの種類や状態に応じて設定すればよい。通常、気液界面培養の培養時間が240時間を超えると、最表層において角層の形成が開始され、培養時間が270時間を超えると、十分な角層の形成によりタイトジャンクションの可視化ができなくなる傾向が現れるので、気液界面培養の培養時間は、通常96〜270時間、好ましくは170〜240時間、より好ましくは190〜240時間にすればよい。
斯くして、第1工程を行うことにより、最表面に顆粒層が形成されている三次元皮膚モデルが作製される。
[第2工程]
第2工程では、前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する。
タイトジャンクションの構成タンパク質としては、OZ−1、オクルーディン、クローディン1、トリセルリン、ERM、JAM等が挙げられる。
三次元皮膚モデルのタイトジャンクションの構成タンパク質を可視化するには、当該三次元皮膚モデルに対して、タイトジャンクションの構成タンパク質に対する抗体を用いて免疫染色を行えばよい。免疫染色は、公知のホールマウント免疫染色によって行うことができる。
また、タイトジャンクションの構成タンパク質を免疫染色する際は、メタノール等を用いて、前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルを固定化しておくことが好ましい。
更に、タイトジャンクションの構成タンパク質を効率的に免疫染色するために、固定化後の三次元皮膚モデルに対して界面活性剤処理を行うことが好ましい。界面活性剤処理は、具体的には、界面活性剤を含む緩衝剤に固定化後の三次元皮膚モデルを浸漬させる方法、界面活性剤を含む緩衝剤で固定化後の三次元皮膚モデルを洗浄する方法等によって行うことができる。使用される界面活性剤の種類としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、界面活性剤を含む緩衝剤における界面活性剤の含有量としては、例えば、0.05〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%が挙げられる。
斯くして、前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルのタイトジャンクションの構成タンパク質を可視化することにより、三次元皮膚モデルの表面において、タイトジャンクションの網目構造(タイトジャンクションストランドのネットワーク)が観察可能になる。
2.タイトジャンクション形成能に及ぼす影響の評価方法
本発明の評価方法は、被験試料のタイトジャンクション形成能に及ぼす影響を評価する方法であって、被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層を形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1A工程、及び前記第1A工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2A工程を含み、被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、被験試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較することを特徴とする。
本発明のタイトジャンクション形成能の評価方法は、被験試料が有するタイトジャンクション形成能を評価する方法である。タイトジャンクション形成能とは、タイトジャンクションの形成を促進する能力、又はタイトジャンクションの形成を抑制又は阻害する能力を指しており、本発明の評価方法では、被験試料がタイトジャンクションの形成に及ぼす作用の有無及び強弱を判定することができる。
被験試料とは、タイトジャンクション形成能の有無及び強弱の評価対象となる試料であり、単一化合物であってもよく、また、2以上の成分が含まれる混合物であってもよい。
本発明の評価方法における第1A工程は、ケラチノサイトから三次元皮膚モデルを作製する際に、被験物質存在下で気液界面培養を行うこと以外は、前記タイトジャンクションの可視化方法における第1工程と同じである。
第1A工程において、被験物質存在下でケラチノサイトを気液界面培養するには、気液界面培養に使用する分化誘導用培地に被験物質を添加することが好ましいが、ケラチノサイトに対して被験物質を直接添加してもよい。
また、第1A工程では、ケラチノサイトの分化誘導中のいずれの段階で被験物質とケラチノサイトを共存させてもよく、例えば、(1)被験物質の存在下で最初から最後まで気液界面培養を行う、(2)被験物質の非存在下で気液界面培養を開始し、途中から被験物質の存在下で気液界面培養を行う、(3)被験物質非存在下で気液界面培養を開始し、途中から被験物質存在下で気液界面培養を行う、等の方法によって実施することができる。
第2A工程は、前記タイトジャンクションの可視化方法における第1工程と同じである。
第2A工程で可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度が、被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合の方が、被験試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合に比べて高い場合には、当該被験物質は、タイトジャンクションの形成を促進する作用があると判定される。また、第2A工程で可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度が、被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合の方が、被験試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合に比べて低い場合には、当該被験物質は、タイトジャンクションの形成を抑制又は阻害する作用があると判定される。
3.タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニング方法であって、候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層を形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1B工程、及び前記第1B工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2B工程を含み、候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、候補試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較することを特徴とする。
タイトジャンクション形成能とは、タイトジャンクションの形成を促進する能力、又はタイトジャンクションの形成を抑制又は阻害する能力を指しており、本発明のスクリーニング方法では、候補物質の中からタイトジャンクション形成能に影響し得るものを選択することができる。
候補物質は、タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす作用の有無が判定される試料であり、単一化合物であってもよく、また、2以上の成分が含まれる混合物であってもよい。
本発明のスクリーニング方法における第1B工程は、ケラチノサイトから三次元皮膚モデルを作製する際に、候補物質存在下で気液界面培養を行うこと以外は、前記タイトジャンクションの可視化方法における第1工程と同じである。
第1B工程において、候補物質存在下でケラチノサイトを気液界面培養するには、気液界面培養に使用する分化誘導用培地に被験物質を添加することが好ましいが、ケラチノサイトに対して候補物質を直接添加してもよい。
また、第1B工程では、ケラチノサイトの分化誘導中のいずれの段階で候補物質とケラチノサイトを共存させればよく、例えば、(1)候補物質の存在下で最初から最後まで気液界面培養を行う、(2)候補物質の非存在下で気液界面培養を開始し、途中から候補物質の存在下で気液界面培養を行う、(3)候補物質非存在下で気液界面培養を開始し、途中から候補物質存在下で気液界面培養を行う、等の方法によって実施することができる。
第2B工程は、前記タイトジャンクションの可視化方法における第1工程と同じである。
第2A工程で可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度が、候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合の方が、候補試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合に比べて高い場合には、当該候補物質は、タイトジャンクションの形成を促進する作用を有するものとして選択される。また、第2A工程で可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度が、候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合の方が、候補試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合に比べて低い場合には、当該候補物質は、タイトジャンクションの形成を抑制又は阻害する作用を有するものとして選択される。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
試験例1:三次元皮膚モデルにおけるタイトジャンクションの可視化
1.タイトジャンクション構成タンパク質を免疫染色した三次元皮膚モデルの作製
(1)ケラチノサイトの増殖
ヒト新生児包皮由来のケラチノサイト(ロンザ株式会社)を1.0×105 cells/mlとなるように増殖用培地(KGM-GOLD培地、ロンザ株式会社)で調整した細胞懸濁液1 mlをセルカルチャーインサート(Falconカルチャーインサート(353180, 12ウェル用,ポアサイズ 0.4 μm, 培養面積0.9cm2;コーニング社)内に播種した。カルチャーインサートを静置した12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)には1.5 ml/wellで増殖用培地(KGM-GOLD培地、ロンザ株式会社)を添加した。播種後、37℃でCO2インキュベーター内で3日間培養した。
(2)分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させた状態での培養
前記(1)の培養後に、カルチャーインサート内及び12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)の培地を、分化誘導用培地(CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium、CELLnTEC社)に交換し、37℃でCO2インキュベーター内で1日間培養した。
(3)ケラチノサイトの分化誘導
前記(2)の培養後に、カルチャーインサート内の培地をアスピレーターで除去し、37℃でCO2インキュベーター内で気液界面培養を10日間行った。気液界面培養中は、2日に1回、12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)の培地を新鮮な分化誘導用培地に交換した。なお、10日間の気液界面培養により、ケラチノサイトが分化誘導されて基底層、有棘層、及び顆粒層が形成されているが、角層の形成前の状態になっている。
(4)タイトジャンクションの可視化
前記(3)の気液界面培養後に、12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)の培地をアスピレーターで除去し、PBS(-)で2回洗浄した後、セルカルチャーインサート内及び12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)に冷メタノールを添加し(カルチャーインサート内は100 μl、12ウェルプレート内は1.5 ml),-20℃で10分間固定した。固定後、PBS(-)でセルカルチャーインサートを3回洗浄した。洗浄後、セルカルチャーインサート内に形成されている三次元皮膚モデルをメスを用いてメンブレンごと切り出した後、メンブレンを三次元皮膚モデルから取り除いた。
切り出した三次元表皮モデルを0.5% トリトンX-100を含むPBSに浸漬させ、室温で1時間処理させた。処理後、PBS(-)で3回洗浄した後、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むPBSを用いて、室温で30分間ブロッキングを行った。次いで、一次抗体として、ウサギ抗ZO-1ポリクローナルIgG(#61-7300、インビトロジェン社)、及びマウス抗オクルーディンモノクローナルIgG(OC-3F10、#33-1500、インビトロジェン社)を添加して、4℃で一晩反応させた。一次抗体の反応後にPBS(-)で洗浄した後に、二次抗体として、Alexa488標識ロバ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(インビトロジェン社)、及びAlexa Fluor 568標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(インビトロジェン社)を用いて、DAPI(10236276001、シグマ社製)と共に室温で1時間反応させた。次いで、PBS(-)で3回洗浄し、タイトジャンクション構成タンパク質(ZO-1及びオクルーディン)を免疫染色した三次元皮膚モデルを得た。
2.三次元皮膚モデルの観察
前記で得られた三次元皮膚モデルを蛍光顕微鏡で観察した結果を図1に示す。この結果、得られた三次元皮膚モデルは、三次元皮膚モデルの表面(三次元皮膚モデルの平面)においてタイトジャンクションの網目構造(タイトジャンクションストランドのネットワーク)が明瞭に観察されることが確認された。即ち、本結果から、ケラチノサイトを分化誘導させて三次元皮膚モデルを作製する際に、顆粒層の形成後、且つ角層の形成前に、ケラチノサイトの分化誘導を停止させることにより、表面からタイトジャンクションの網目構造を観察可能な三次元皮膚モデルが得られることが明らかとなった。
試験例2:タイトジャンクションを可視化できる三次元皮膚モデルを用いた被験物質のタイトジャンクション形成能の評価
1.被験物質存在下での三次元皮膚モデルの作製
(1)ケラチノサイトの増殖
前記試験例1の「(1)ケラチノサイトの増殖」と同条件で、ケラチノサイトをカルチャーインサート内で増殖させた。
(2)分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させた状態での培養
前記試験例1の「(2)分化誘導用培地中にケラチノサイトを浸漬させた状態での培養」と同条件で、増殖させたケラチノサイトを分化誘導用培地中に浸漬させた状態で培養した。
(3)被験物質の添加及びケラチノサイトの分化誘導
前記(2)の培養後に、カルチャーインサート内の培地をアスピレーターで除去し、2日に1回、12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)の培地を新鮮な分化誘導用培地(CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium、CELLnTEC社)に交換しながら、37℃でCO2インキュベーター内で気液界面培養を7日間行った。7日間の気液界面培養後に、12ウェルプレート内(カルチャーインサートの外)の培地を、グリチルリチン酸ジカリウム(タイトジャンクション形成促進作用が知られている被験物質)を0.0004重量%含む分化誘導用培地(CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium、CELLnTEC社)に置換して、更に37℃でCO2インキュベーター内で気液界面培養を3日間行った。また、コントロールとして、グリチルリチン酸ジカリウムを添加していない分化誘導用培地を用いて、前記と同条件で気液界面培養を行った。なお、合計10日間の気液界面培養により、ケラチノサイトが分化誘導されて基底層、有棘層、及び顆粒層が形成されているが、角層の形成前の状態になっている。
(4)タイトジャンクションの可視化
前記試験例1の「4)タイトジャンクションの可視化」と同条件で、タイトジャンクション構成タンパク質を免疫染色した三次元皮膚モデルを得た。
2.三次元皮膚モデルの観察及び被験物質のタイトジャンクション形成能の評価
前記で得られた三次元皮膚モデルを蛍光顕微鏡で観察した結果を図2に示す。この結果、タイトジャンクション形成促進作用が知られているグリチルリチン酸ジカリウム存在下で気液界面培養を行うことにより得られた三次元皮膚モデルでは、コントロールに比べて、三次元皮膚モデルの表面で観察されるタイトジャンクションの網目構造(タイトジャンクションストランドのネットワーク)が発達していることが確認された。即ち、本結果から、顆粒層の形成後、且つ角層の形成前に、ケラチノサイトの分化誘導を停止させることにより作製された三次元皮膚モデルは、被験物質のタイトジャンクション形成能を正確に評価できることが分かった。

Claims (4)

  1. 三次元皮膚モデルにおいてタイトジャンクションを可視化する方法であって、
    ケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1工程、及び
    前記第1工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2工程を含む、前記可視化方法。
  2. 前記第2工程におけるタイトジャンクションの構成タンパク質の可視化が、当該構成タンパク質に対する免疫染色によって行われる、請求項1に記載の可視化方法。
  3. 被験試料のタイトジャンクション形成能に及ぼす影響を評価する方法であって、
    被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1A工程、及び
    前記第1A工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2A工程を含み、
    被験試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、被験試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較する、前記評価方法。
  4. タイトジャンクション形成能に影響を及ぼす物質のスクリーニング方法であって、
    候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養して分化誘導を行い、基底層、有棘層、及び顆粒層が形成された段階で分化誘導を停止して、三次元皮膚モデルを作製する第1B工程、及び
    前記第1B工程で作製された三次元皮膚モデルにおいて、タイトジャンクションの構成タンパク質を可視化する第2B工程を含み、
    候補試料の存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合と、候補試料の非存在下でケラチノサイトを気液界面培養した場合について、可視化されたタイトジャンクションの網目構造の発達度を比較する、前記スクリーニング方法。
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