本発明は、包括的には、光ファイバセンサの分野に関する。特に、本発明は、コモンモード信号を、温度に起因した寄与と、歪みに起因した寄与とに分離することを可能にする光ファイバセンサに関する。
光ファイバセンサは、特殊光ファイバの3次元形状をファイバ内の光の反射から再構成することができる技術である光形状センシング(OSS)において用いることができる。この技術は、例えば、医療デバイス、例えばカテーテルおよびガイドワイヤのようなデバイスの形状全体のリアルタイム3D視覚化を可能にする。光形状センシングは、X線追跡を必要とすることなく、医師が処置中に医療デバイスをナビゲートすることを可能にする。
光形状センシングにおいて、光形状センシングファイバとも呼ばれる光ファイバセンサが、ファイバのファイバコアに結合された光を用いて検査される。ツイストマルチコアファイバセンサのファイバコアの各々に対し同時に実行される分散歪み測定を用いて、ファイバの長さに沿った全ての位置において光ファイバの特定の変形に対応する信号を計算する。例えば、レーザ、例えばシングルモードレーザの波長が、矛盾なく定義された波長範囲にわたって単調に変動される波長掃引型干渉分光法を用いて、分散歪み測定が行われる。各ファイバコアは、自身の干渉計と通信する。通例、矛盾なく定義された反射信号を提供するために、ファイバブラッググレーティング(FBG)がファイバコアに書き込まれる。従来から、光ファイバセンサの光ファイバは、4つのファイバコア、すなわち中央ファイバコアと、中心コアの周りに螺旋状に巻き付けられた3つの対称的に配置された外側コアとを含む。4つのファイバコア信号から計算することができる変形信号は、2つの独立した方向における湾曲(ファイバの曲げ)、ファイバの捻れ(ツイスト)、およびコモンモードの影響を表す信号、すなわち全てのコアに共通の信号を表すことができる。4×4の行列は、ファイバコア信号から変形信号を計算するのに習慣的に用いられ、すなわち、変形信号は、4つのファイバコア信号の適切な線形結合である。次に、2つの独立した湾曲成分(例えば、l/m単位)およびツイスト角(例えば、ラジアン単位)が、較正手順において事前に決定された適切なスケーリング係数との乗算によって対応する変形信号から計算される。光ファイバセンサの形状は、ファイバセンサに沿った全ての位置において入手可能な2つの曲率成分およびツイスト角から再構成することができる。
コモンモード信号は、光ファイバ(軸歪み)の伸長の結果とすることができるか、温度変化の結果とすることができるか、これらの影響の組み合わせの結果とすることができる。軸歪みまたは温度変化が光ファイバセンサに加えられると、コモンモード信号変化のみでなく、ツイスト信号(twist signal)も影響を受けることが経験的にわかっている。ツイスト角の正確な値は、形状再構築の精度に重要であるため、ツイスト信号に対する軸歪みおよび/または温度変化の影響が補償されなくてはならない。純粋な軸歪みまたは純粋な温度変化の影響を無効にするためにコモンモード信号の小さな割合を減算することによって(または等価には、4×4の行列を僅かに変更することによって)、ツイスト信号におけるこれらの影響を補償することが可能である。しかしながら、一般に、必要とされる補償要素は、軸歪みの場合と温度変化の場合とで異なる。適切な補償は、観測される総コモンモード信号に対する軸歪みおよび温度の影響の相対的寄与に関する知識を必要とするため、ツイスト信号を補償するための単純な方式は利用可能でない。これらの相対的寄与がわかっている場合、ツイスト信号に対する正味の補償は、各寄与をその適切な補償係数と組み合わせた後にこれらの別個の寄与の補償を加えることによって計算することができる。
コモンモード信号を歪みに起因した寄与と温度に起因した寄与とに分離することは、光ファイバベースの形状センシングにおけるよく知られた問題である。「標準的な」4コア形状センシングファイバの4つのファイバコア信号は、十分な情報を提供しない。第5の信号が必要とされる。形状センシングにおいて、これは、1つまたは複数のファイバコアをマルチコアファイバに加えることによって達成することができる。追加のファイバコアは、コモンモード信号を温度に起因した寄与と歪みに起因した寄与とに分離することを可能にするために、歪みに対する感度と温度に対する感度との異なる比を有する必要がある。
国際公開公報第2016/099976号および国際公開公報第2016/122742号は、4つの「標準的な」ファイバコアの温度感度(temperature sensitivity)と異なる温度感度を有する1つまたは複数のファイバコアを加えることによる、光ファイバにおける歪みと温度との分離について開示している。後者の文書は、歪みと温度との分離が実際的になるには、2つのタイプのファイバコアの温度感度が2%を超えて異なるべきであることを開示している。追加のファイバコアのための異なる温度感度は、ファイバコアにおける異なるドーピングレベルによって、および/またはファイバコアのうちのいくつかに異なるドーピング材料を加えることによって達成される。しかしながら、これらの文書において検討されていないものは、温度感度以外のファイバセンサ特性に対する追加のファイバコアの影響である。換言すれば、提案される追加のファイバコアは、特に、2つのタイプのファイバコアの温度感度が少なくとも2%異なることが必要とされるときに、形状センシング目的の最適に達しない特性の混合を示す場合がある。
このため、形状センシングの精度に影響を及ぼすことなくコモンモード信号における温度に起因した寄与および歪みに起因した寄与間の分離を可能にする改善された光ファイバセンサ設計が依然として必要とされている。
国際公開公報第2016/099976号
国際公開公報第2016/122742号
本発明の目的は、歪みの影響と温度の影響との分離を可能にするのみでなく、光形状センシングのためのセンサの最適性能も可能にする光ファイバセンサを提供することである。
本発明の態様によれば、光ファイバを備える、形状センシングのための光ファイバセンサが提供される。この光ファイバは、クラッド屈折率を有するクラッドと、クラッドに埋め込まれ、光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数のファイバコアとを備え、複数のファイバコアは、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1のサブセットと、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のサブセットとを有し、少なくとも1つの第1のファイバコアは、クラッド屈折率と異なる第1のコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の第1の半径とを有し、少なくとも1つの第2のファイバコアは、クラッド屈折率と異なる第2のコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の第2の半径とを有し、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のコア屈折率および第2の半径は、第1のコア屈折率および第1の半径と異なる。
本発明による光ファイバセンサは、1つまたは複数のファイバコアの第1のサブセット(第1のタイプ)と、コア-クラッドの屈折率差においてのみでなくコア半径においても第1のサブセットのファイバコアと異なる1つまたは複数のファイバコアの第2のサブセット(第2のタイプ)とを有する。ファイバコアのコア半径または直径の2分の1は、ファイバコアの長手方向を横切る方向における、すなわち断面におけるファイバコアの半径であり、半径は、ファイバコアの長手方向中心軸に対し取得される。本発明によれば、ファイバセンサは2つ(以上)の異なるファイバコア設計を有し、これにより、コモンモード信号において、温度に起因した寄与を、歪みに起因した寄与から分離することが可能になる。以下で説明され、より詳細に示されるように、追加のファイバコアのコア-クラッドの屈折率差とコア半径との組み合わせは、光ファイバセンサが歪みおよび温度の分離を可能にするのみでなく、光形状センシングのための最適な性能も可能にするように選択することができる。追加のコアのコア-クラッドの屈折率差とコア半径との組み合わせにより、ファイバコアの第1および第2のサブセットのファイバコア設計間の温度感度差と、光形状センシングに関連する他の特性との間の最良バランスがもたらされる。第2のサブセットの少なくとも1つのファイバコアのコア屈折率は、第1のサブセットの少なくとも1つのファイバのドーピングレベルおよび/またはドーピング材料と異なるドーピングレベルおよび/またはドーピング材料を選択することによって設定することができる。本発明は、形状を正確にセンシングするために光ファイバの性能を妥協することなく、温度に起因した影響と歪みに起因した影響との分離を達成し、このため、本発明による光ファイバセンサを用いた3D形状再構成は、従来技術による標準的な光ファイバセンサよりも正確になることができる。
形状センシング精度に関連し得る光ファイバセンサの光学特性は、開口数(NA)、シングルモード動作、共振波長、群速度分散、曲げ損失等とすることができ、上述した特性は、ファイバコア屈折率およびファイバコア半径による影響を受ける。
実施形態において、第1のコア屈折率および第1の半径に対する第2のコア屈折率および第2の半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1の開口数と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2の開口数との差の絶対値が最大で0.03、または約0.01〜約0.03の範囲にあるようにすることができる。
第1のサブセットおよび第2のサブセットのファイバコア設計間のそのような開口数(NA)の差は、高い形状センシング精度も提供しながら、ファイバコアの2つの組間の温度感度の十分な差を可能にする。
更に、最大で0.03の、または0.01〜0.03の範囲にあるファイバコアの第1のサブセットおよび第2のサブセットのコア設計間のNA差は、ファイバコアの波長感受性反射構造(wavelength sensitive reflecting structure)、例えばFBGの共振波長差を制限するのに適切である。第1のサブセットおよび第2のサブセットの異なるコア設計の共振波長間の差を制限することは、光ファイバセンサのより小さな曲げ半径を、光ファイバセンサで測定することができるという利点を有する。
実施形態において、第1および第2のファイバコア設計(第1および第2のサブセット)のうちの一方のファイバコア設計は、他方のファイバコア設計よりも低い開口数を有することができ、より低い開口数は、少なくとも0.17である。
少なくとも0.17のNAは、光ファイバセンサの非常に急激な曲げにおける曲げ損失を制限するのに有利である。
実施形態において、第1および/または第2のコア屈折率ならびに第1および/または第2のファイバコア半径は、少なくとも1つの第1および/または第2のファイバコアの第1および/または第2のLP11-カットオフ波長が1500nm未満でありかつ1100nmを上回るようにすることができる。
これらの実施形態において、最も低いLP11-カットオフ波長は、少なくとも1100nm、例えば1200nmとすることができる。光ファイバセンサが、C帯域(1530nm〜1565nm)において動作している形状センシングシステムにおいて光学的に検査されているとき、この実施形態におけるファイバのシングルモード動作が確保される。ファイバのシングルモード動作は、形状センシング性能および精度の観点で有利である。
実施形態において、第2のコア屈折率、第2の半径、第1のコア屈折率および第1の半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1の開口数と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2の開口数との差と、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1のLP11-カットオフ波長と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のLP11-カットオフ波長との差との積が負値を有するように選択することができる。
この実施形態において、より低いNAを有するファイバコア設計は、より高いNAを有するファイバコア設計のLP11-カットオフ波長よりも長いLP11-カットオフ波長を有する。この実施形態の有利な効果は、異なるコア設計の共振波長間の差を、光ファイバセンサの測定可能な曲げ半径の最大範囲に対応するように、温度感度の所与の差について可能な限り小さく維持することができるということである。
実施形態において、少なくとも1つの第1のファイバコアは、ファイバコアの歪みのない状態で光に曝されたときに第1の共振波長を有するファイバコアの長さに沿った少なくとも1つの第1の波長感受性反射構造を有し、少なくとも1つの第2のファイバコアは、ファイバコアの歪みのない状態で光に曝されたときに第2の共振波長を有するファイバコアの長さに沿った少なくとも1つの第2の波長感受性反射構造を有し、第1の共振波長と第2の共振波長との差の絶対値は、3nm以下である。
第1および第2の波長感受性反射構造は、ファイバブラッググレーティングとすることができる。所与の範囲における異なるコア設計間の共振波長の差により、測定可能な曲げ半径の範囲は、温度感度における所与の差について可能な限り大きく留まる。FBGの共振波長は、幾何学的格子周期に依拠するのみでなく、対応するファイバコアのモード屈折率(mode index)にも依拠し、これはひいてはファイバコアの開口数およびファイバコア半径に依拠する。このため、異なるコア設計間の共振波長の適切な差は、コア設計のモード屈折率を適切に選択することによって調節することができ、これはひいては、ファイバコア-クラッドの屈折率の差およびファイバコア半径に依拠する。
実施形態において、ファイバコアの第1および第2のサブセットの2つのファイバコア設計は、可能な限り類似しているUV放射に対する感度を有することができるか、または換言すれば、互いから実質的に逸脱していない。利点は、波長依存反射性構造を第1および第2のサブセットのファイバコアに刻み込むとき、結果として得られる構造、例えばFBGを十分な強度で作製することができることである。
実施形態において、第2の温度感度は、絶対値で0.5%〜2%の範囲内で第1の温度感度と異なる。
所与の範囲における温度感度差は、形状センシングの精度に関連する温度感度差以外のファイバコアの特性も、この範囲を超える温度感度差、例として従来技術において提案される温度感度差の場合よりも良好に制御することができるという点で有利である。
実施形態において、第1および/または第2のコア屈折率ならびに第1および/または第2の半径は、少なくとも1つの第1および/または第2のファイバコアの第1および/または第2の群速度分散が、7ps/nm/km〜20ps/nm/kmの範囲内にあるように選択される。
標準的なシングルモードファイバ(SMF28)で構築されたレーザスキャンを線形化するために補助干渉計を用いるとき、光ファイバセンサの光ファイバと補助干渉計との間の分散の差は、可能な限り小さくなるべきである。光ファイバセンサと補助干渉計との分散の増大する差により、対称誤差が生じる場合があり、これは光形状センシングの精度に影響を及ぼし得る。このため、本実施形態による光ファイバセンサは、約17ps/nm/kmの群速度分散を有する標準的なシングルモードファイバ(SMF28)を用いて構築される補助干渉計を有する形状センシングコンソールにおける使用に最も適している。
更なる実施形態において、第1のコア屈折率および第1のコア半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアが6μm〜7μmの範囲のモードフィールド径を有するように選択され、かつ/または第2のコア屈折率および第2のコア半径は、少なくとも1つの第2のファイバコアが6μm〜7μmの範囲のモードフィールド径を有するように選択される。
大きなモードフィールド径は、例えば、2つのファイバセンサを互いに接続するための、光コネクタにおける損失を低減する際に有利である。
少なくとも第1のファイバコアおよび少なくとも1つの第2のファイバコアは、ドーパントを含むことができ、ドーパントの濃度および/または材料は、少なくとも1つの第1のファイバコアと少なくとも1つの第2のファイバコアとの間で異なる。
実施形態において、ドーパントはGeO2である。
更に、光ファイバのクラッドはSiO2を含むことができる。
好ましくは、ファイバコアの第1のサブセットは、複数のファイバコア、例えば、1つの中心コアおよび2つ以上、例えば3つの外側コアの4つのファイバコアを有し、ファイバコアの第2のサブセットは、1つ、2つまたは3つ以上の外側ファイバコアを有する。第2のサブセットのファイバコアは、コア屈折率およびコア半径の観点で第1のサブセットのファイバコアと異なる。第1のサブセットの第1のファイバコアの第1のコア屈折率およびコア半径は、全ての第1のファイバコアについて等しくすることができる。第2のサブセットの第2のファイバコアの第2のコア屈折率およびコア半径は、全ての第2のファイバコアについて等しくすることができる。このように、ファイバセンサの製造が容易にされる。第2のサブセットのファイバコアは、外側ファイバコアのみを含むことができるが、第1のサブセットは、外側コアおよび1つの中心コアを含むことができる。第2のサブセットのファイバコアおよび第1のサブセットの外側コアは、互いに交互に配置することができる。
光形状センシングにおける最適精度を提供しながら、形状センシング手順において温度に起因した影響を歪みに起因した影響から分離することを可能にする光ファイバセンサを提供するために、上記の全ての実施形態を互いに組み合わせることができることを理解されたい。
本発明のこれらの態様および他の態様は、以後に記載される実施形態の参照から明らかとなり、解明される。
光形状センシングシステムの例を示すブロック図を示す。
標準的な光ファイバセンサの例の斜視図を示す。
標準的な光ファイバセンサの断面を示す。
本発明の原理による追加のファイバコアを有する光ファイバセンサの断面を示す。
本発明の原理による3つの追加のファイバコアを有する光ファイバセンサの断面を示す。
ファイバコアにおけるドーパント濃度の関数として開口数を示す図を示す。
異なるLP11-カットオフ波長についてファイバコア半径の関数として開口数を示す図を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として温度感度を示す図を示す。
図6の温度感度に対する単一の寄与の図を示し、左上の図は、光ファイバのクラッドからの温度感度に対する寄与を示し、右上の図は、ファイバコアからクラッドへの屈折率段差(index step)からの温度感度に対する寄与を示し、左下の図は、ファイバコア半径からの温度感度に対する寄与を示し、右下の図は、熱膨張からの温度感度に対する寄与を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として歪み感度を示す図を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として共振波長を示す図を示す。
基準の第1のファイバコア設計(円形マーカ)から±1%だけ異なる2つの例示的な第2のファイバコア設計の温度感度の輪郭線(実線)、および基準設計から±2nmだけ異なる2つの第2のファイバコア設計の共振波長の輪郭線(破線)を示す図を示す。
計算された群速度分散の輪郭線を示す図を示す。
LP11-カットオフ波長の関数として、異なる開口数を有する複数のファイバコア設計のための推定モードフィールド径を示す図を示す。
いくつかのファイバコア設計について、固定曲げ半径の場合の推定曲げ損失を示す図を示す。
7つのファイバコアを有する光ファイバセンサに対する形状センシング実験のセットアップの略図を示す。
本発明の原理による、標準的な4ファイバコア光ファイバセンサおよび7ファイバコア光ファイバセンサのための、図14におけるセットアップを用いて実行される測定の結果を示す。
図1は、光ファイバセンサ12をセンシングするための、マルチチャネル光周波数領域反射測定法(OFDR)ベースの分散-歪みセンシングシステムとして構成された光ファイバセンサシステム10の一部を概略的に示す。光ファイバセンサ12は、クラッドと、クラッドに埋め込まれた複数のファイバコア14、16、18、20、この例では、1つの中心コア16および3つの外側コア14、18、20の4つのコアとを有する光ファイバを含む。図1に示す光ファイバセンサは、標準的なファイバセンサである。ここで、本発明は、5つ以上のファイバコアを有する光ファイバセンサ設計を提案することに留意されたい。図2は、ある長さのファイバコア14、16、18、20片を示し、外側コア14、18、20は、中心コア16から径方向に離間され、中心コア16の周りに螺旋状に巻かれている。中心コア16は、光ファイバセンサの中心軸上に配置される。外側ファイバコア14、18、20は、光ファイバセンサ12の長手方向の中心軸の周りをアジマス方向に互いに対し角度間隔を置かれる。本例における3つの外側ファイバコアによれば、近傍外側コア間の角度間隔は120°とすることができる。
再び図1を参照すると、光形状センシングシステム10は、インテロゲータユニット21を備える。インテロゲータユニット21は、走査範囲とも呼ばれる光周波数範囲を通じて掃引することができる波長可変光源22を含むことができる。光源22によって放射された光は、光ファイバセンサ12のファイバコアの数に従って、光チャネル24a、24b、24c、24dを有する光干渉計測ネットワーク24内に結合される。光ファイバセンサ12が5つ以上のコアを有する場合、光干渉計測ネットワーク24は、対応する数の5つ以上の光チャネルを有することができる。各チャネルがファイバコアのうちの1つのための干渉計を形成する。
波長可変光源22が光周波数範囲を通じて掃引されるとき、各チャネル24a、24b、24c、24d、およびこのため光ファイバセンサ12の各ファイバコア14、16、18、20は、同時にかつ独立して光学的に検査され、ファイバコア14、16、18、20の各々から戻る光によって生じた干渉信号が、それぞれの光検出器25を介して処理ユニットまたはデータ取得ユニット26にルーティングされる。次に、マルチチャネルOFDRシステムを用いたファイバコア14、16、18、20からの分散歪み測定を、更なる処理のために、特に光ファイバセンサ12の3次元形状再構成のために、例えば再構成された3次元光ファイバセンサ12の視覚表示のために、ユニット27にエクスポートすることができる。
光ファイバセンサ12の実施形態において、ファイバコア14、16、18、20は、ファイバコアに沿った屈折率の周期的変動によって形成される波長感受性反射構造(図示せず)としてファイバブラッググレーティング(FBG)を有することができる。FBGは、(共振波長とも呼ばれる)特定の波長の光を反射し、全ての他の波長を透過する。本明細書において、対応するファイバコアの長さに沿って単一の共振周波数(または波長)を有するFBGを有するファイバコアが検討される。局所的な曲げが光ファイバセンサ12にもたらされると、共振波長は歪みによってシフト(増減)し、ファイバに沿った任意の位置の反射波長の測定により、局所的歪みを特定することが可能になる。
図3Aは、図2における標準的な光ファイバセンサ12の断面を示す。光ファイバセンサ12の光ファイバは、ファイバコア14、16、18、20と、ファイバコア14、16、18、20が埋め込まれるクラッド30とを有する。コーティング32によりクラッド30を封入することができる。光ファイバセンサ12のような4ファイバコア光ファイバセンサを用いるとき、4つのファイバコア信号から計算することができる変形信号は、2つの独立した方向における曲率(ファイバの曲げ)、ファイバセンサ12の捻れ(ツイスト)、およびコモンモードの影響を表す信号、すなわち全てのコアに共通の信号を表す。コモンモード信号は、ファイバ(軸歪み)の伸長の結果とすることができるか、温度変化の結果とすることができるか、またはこれらの影響の組み合わせの結果とすることができる。コモンモード信号はツイスト信号にも影響を与える。ツイスト角の正しい値は、再構成された形状の精度に重要である。したがって、ツイスト信号に対する軸歪みおよび/または温度変化の影響は補償されなくてはならない。そのような補償は、観測される総コモンモード信号に対する軸歪みおよび温度の影響の相対的寄与に関する知識を必要とする。4ファイバコアファイバセンサは、コモンモード信号を歪みに起因した寄与と温度に起因した寄与とに分離するための十分な情報を提供しない。
したがって、本発明は、クラッド30'と、ファイバコア14'、16'、18'、20'の第1のサブセットと、少なくとも1つのファイバコア34'の第2のサブセットとを有する光ファイバを備える、図3Bに示す光ファイバセンサ12'を提供する。クラッド30'はクラッド屈折率を有する。ファイバコア14'、16'、18'、20'および34'はクラッド30'に埋め込まれ、光ファイバの長手方向軸に沿って延びる。ファイバコア34'は、クラッド屈折率と異なるコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の断面における第1の半径(直径の2分の1)とを有し、ファイバコア14'、16'、18'、20'は、クラッド屈折率と異なるコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の半径とを有する。ファイバコア34'のコア屈折率および半径(直径の2分の1)は、ファイバコア14'、16'、18'、20'のコア屈折率および半径と異なり、ファイバコア34'の温度感度がファイバコア14'、16'、18'、20'の温度感度と異なるようにされ、それによって、コモンモード信号に対する歪みの影響と温度の影響との分離が可能になる。ファイバコア14'、16'、18'、20'のコア屈折率は、ファイバコア14'、16'、18'、20'間で同じにすることができる。
本実施形態において、ファイバコア14'、16'、18'、20'に対するファイバコア34'の異なるコア屈折率は、ファイバコア14'、16'、18'、20'に対するファイバコア34'における異なるドーパント濃度および/またはドーパント材料によって取得することができる。例として、ファイバコア14'、16'、18'、20'およびファイバコア34'は、ゲルマニウムドープファイバコアとすることができ、ファイバコア34'におけるゲルマニウム濃度は、ファイバコア14'、16'、18'、20'におけるゲルマニウム濃度と異なる。ファイバコア14'、16'、18'、20'および34'は、GeO2をドープされたシリカから作製することができる。他のドーパント材料が可能である。クラッド30'はシリカ(SiO2)から作製することができる。
図3Bにおける光ファイバセンサ12'の5つのファイバコア設計が、温度の影響と歪みの影響との分離を可能にするが、これは形状センシングの精度の観点で最適でない場合がある。したがって、本発明では、光ファイバセンサ12''のより対称的な設計が好ましく、ファイバコアの第2のサブセットは、ファイバコア14''、16''、18''および20''の第1のサブセットに加えて3つのファイバコア34''、36''および38''を含む。図3Bに関して上述したように、ファイバコアの第2のサブセットのファイバコア34''、36''、38''は、断面におけるコア屈折率および半径(直径)の観点で、ファイバコアの第1のサブセットのファイバコア14''、16''、18''、20''と異なる。ファイバコア34''、36''、38''およびファイバコア14''、18''、20''は、中心コア16''から等しい径方向距離を有することができ、中心コア16''の周りに螺旋状に巻き付けることができる。ファイバコア34''、36''、38''、14''、18''、20''の2つの近傍ファイバコア間の中心コア16''の周りのアジマス方向における角度分離は、完全対称構成において60°とすることができる。第1のサブセットの外側ファイバコアと、第2のサブセットのファイバコアとは、交互に配置することができる。例えば、中心コアの周りで、ファイバコア14''、18''、20''は位置0°120°、240°に配置することができ、ファイバコア34''、36''、38''は位置60°、180°および300°に配置することができる。
以下において、光ファイバセンサ12''のファイバコアの第1のサブセットおよび第2のサブセットの最適化されたファイバコア設計の組み合わせについて説明する。例えば、ファイバコア14''、16''、18''、20''は、第1のファイバコア設計に従って構成することができ、(追加の)ファイバコア34''、36''、38''は、第2のファイバコア設計に従って構成することができる。第1および第2のサブセット内のファイバコアは、等しい特性を有することができる。以下の検討事項は、C帯域(1530-1565nm)内で動作する形状センシングシステム10のような形状センシングシステムにおいて用いられる、シリカから作製されたクラッド30''と、ステップインデックス型ゲルマニウムドープファイバコア14''、16''、18''、20''、34''、36''、38''とに基づく。以下の図に示されるモデル計算は、1545nmの波長について行われた。
選択された波長におけるステップインデックス型光ファイバの特性は、クラッド屈折率、ファイバコア-クラッドの屈折率の差、およびファイバコア半径によって完全に決定される。クラッド屈折率は全てのファイバコアに共通であるため、ステップインデックス型ファイバコア間の差は、ファイバコア半径の差と、ファイバコア屈折率の差との結果であり、ファイバコア屈折率の差は、例えばドーピングレベル(例えばゲルマニウム濃度)における差の結果である。2つのパラメータ、すなわちファイバコア半径およびドーピングレベルがあれば、ファイバコア設計を指定するのに十分である。代替的に、ファイバコア設計を指定するためにファイバコア半径およびドーピングレベルに独自に依存する異なる独立パラメータを用いることも可能である。2つのそのようなパラメータは、開口数(NA)およびLP11-カットオフ波長λLP11である。
開口数は、以下によってファイバコアおよびクラッドの屈折率に関係付けられる。
図4は、ファイバコアの開口数(NA)およびゲルマニウム濃度間の関係を示す。図4に示すように、NAは、ドーパント濃度の増大と共に増大する。
LP11-カットオフ波長λLP11は、光ファイバが依然としてシングルモードファイバとして動作する最小波長である。LP11-カットオフ波長を上回ると、ファイバは、LP01モードのみがファイバセンサを通って伝播することを可能にする。LP11-カットオフ波長を下回ると、より高次のモード、すなわちLP11、LP21、LP02等が伝播することが可能になる。光ファイバセンサ12のシングルモード動作は、形状センシングモダリティにおける性能の観点で好ましい。したがって、光ファイバセンサが用いられる波長範囲は、LP11-カットオフ波長よりも長い波長にあるべきである。弱導波ステップインデックス型ファイバの場合、理論的LP11-カットオフ波長は、以下によって開口数NAおよびコア半径に関係付けられる。
定数2.4048は、ベッセル関数J0の最初のゼロである。λLP11がnm単位で表され、aがμm単位で表されるとき、1000の追加の数値係数が式(2)において必要とされることに留意されたい。
定数LP11-カットオフ波長の輪郭線が図5にプロットされ、ファイバコア半径および開口数NAはそれぞれx軸およびy軸に沿っている。図5の図内の数字は、各輪郭線が対応するカットオフ波長λLP11をnm単位で示す。
以下において、ファイバコア設計の温度および歪み感度が探索される。これを可能にするために、まず、温度および歪み感度を定義しなくてはならない。光形状センシング測定における干渉計信号から取得される位相は、光路長の変化に比例して変化し、ここで、シングルモードファイバのセクションの光路長は、そのセクションの幾何学的長さと、そのセクションにおける光ファイバのモード屈折率nmodeとの積として定義される。したがって、温度感度は、ある度合いの温度変化あたりの単位長あたりの光路長の変化として定義することができるのに対し、歪み感度は、単位歪みあたりの単位長あたりの光路長の変化として定義することができる。
上記の定義から、温度感度は以下の式によって与えられる。
ここで、Tは温度を表し、αは、光ファイバの熱膨張の係数である。本例において、光ファイバの断面積に対するファイバコアの寄与が小さいため、シリカクラッド材料の熱膨張が取得される。
歪み感度は以下の式(4)によって与えられる。
ここで、εは歪み(相対伸長Δl/l)である。
式(3)および式(4)から、異なるコア設計の温度感度および歪み感度の比較のために、モード屈折率nmodeが計算されなくてはならないのみでなく、検討中のファイバコア設計について、温度に伴うモード屈折率の変化、すなわちdnmode/dT、および歪みに伴うモード屈折率の変化、すなわちdnmode/dεも計算されなくてはならないことを見て取ることができる。選択された波長について、モード屈折率nmodeは、クラッド屈折率ncladと、コア-クラッド屈折率段差Δn=ncore-ncladと、ファイバコア半径aとによって決定される。このため、温度および歪みに伴うモード屈折率nmodeの変化は、屈折率決定パラメータに対する、変化の結果として生じる寄与の和として書くことができる。
所与のファイバコア設計についてモード屈折率nmodeをどのように数値的に計算するかは、当業者に既知である。ファイバコア設計パラメータに関するモード屈折率nmodeの微分は、僅かに異なるパラメータ値におけるモード屈折率計算から数値的に概算することができる。温度および歪みに対するクラッド屈折率の反応、すなわち、dnclad/dTおよびdnclad/dε、ならびに温度および歪みに伴うファイバコア半径の変化、すなわち、da/dTおよびda/dεが既知である。歪みに伴う屈折率段差の変化を計算するために、ドープされたファイバコア材料の弾性-光学係数が、クラッドの材料(本例ではシリカ)と同じであることが仮定される。温度に伴う屈折率段差の変化の計算のために、ドープされたファイバコア材料の熱膨張係数が、クラッド材料(本例ではシリカ)の熱膨張と異なり、これにより、弾性-光学効果を通じて屈折率段差を効果的に変化するファイバセンサの光ファイバにおける熱応力および歪みがもたらされることを考慮に入れなくてはならない。熱膨張の差、このため温度に伴う屈折率段差における変化は、ファイバコアのドーピングレベルに依拠する。
正味の温度感度は、式(3)および以下の式(5)を組み合わせることによって得られる。
ファイバコア設計の範囲にわたる温度感度の計算結果が図6に示される。図6は、異なる開口数NAを有するファイバコア設計についてLP11カットオフ波長の関数として温度感度(y軸)を示す。検討されるファイバコア設計の範囲にわたる温度感度の変動は、約6%であることを見て取ることができる。形状センシング用途におけるファイバセンサの性能に関する他の特性が考慮に入れられるとき、歪み-温度分離のためのマルチコア光ファイバセンサの実際の設計について完全な温度感度範囲が入手可能でないことが後に示される。
図7は、各図が式(7)の右辺の項のうちの1つに対応する4つの図を示す。左上の図(式(7)の第1項)は、クラッドからの温度感度に対する寄与を示し、右上の図(式(7)の第2項)は、(ファイバコアからクラッドへの)屈折率段差からの温度感度に対する寄与を示し、左下の図(式(7)の第3項)は、ファイバコア半径からの温度感度に対する寄与を示し、右下の図は、式(7)の最後の項からの温度感度に対する寄与を示す。図の垂直スケール範囲における大きな差に留意されたい。図7に示すような温度感度に対する別個の寄与の調査により、クラッド屈折率の温度依存性(図7における左上の図)が平均正味温度感度に対し主として寄与するが、ファイバコア設計間の差は、主にコア-クラッドの屈折率差の温度依存性(図7における右上の図)によって生じることが明らかになる。このため、クラッドの温度依存屈折率により、ファイバコアの大半(>90%)の熱感度が生じている一方で、ファイバコア設計に対する熱感度の依存性の原因となるのは、温度に伴うファイバコア-クラッドの屈折率差の変動である。
正味の歪み感度は、式(4)および以下の式(6)を組み合わせることによって得ることができる。
ファイバコア設計の範囲にわたる計算結果が図8に示される。図8から、検討されるファイバコア設計の範囲にわたる歪み感度の変動が、約0.5%にすぎず、すなわち、検討されるファイバコア設計間の温度感度の変動よりも大幅に小さいことを見て取ることができる。歪み感度における差は十分大きくないため、温度および歪みの分離を達成するためには、温度感度が異なるファイバコア設計を選択する必要がある。
しかしながら、単に最も大きい温度感度差を有するファイバコア設計が選択される場合、最適な結果がもたらされない。対照的に、形状センシングに関係するファイバコア設計の他の特性も検討する必要がある。以下において、これらの他のファイバコア特性によって課される要件が探索される。
これらの特性のうちの1つは、モード伝播に関するファイバコアの動作とすることができる。シングルモード伝播は、マルチモード伝播よりも有利である。C帯域(1530-1565nm)において動作する形状センシングシステムの場合、これは、ファイバコアのLP11-カットオフ波長が1530nm未満、好ましくは1500nm未満となるべきであることを意味する。
形状センシング目的の最適化されたファイバコア設計に関連する別の特性は、ファイバコアの波長感受性反射構造の共振波長である。好ましくは、光ファイバセンサの各ファイバコアは、ファイバ製造プロセス中に光ファイバ上に書き込まれる1つまたは複数のファイバブラッググレーティング(FBG)を有する。FBGは、全てのファイバコアに共通の空間的に変動するUV強度パターンへの曝露の結果として生じるため、各ファイバコアにおいて本質的に同じ幾何学的周期ΛBを有することができる。光ファイバセンサの歪みのない状態であっても、共振波長は、幾何学的周期ΛBのみでなく、以下の式に従ってモード屈折率nmodeにも依拠するため、ファイバブラッググレーティングの共振波長λresは、同じモード屈折率nmodeを有しないファイバコアについて異なり得る。
λres=2nmodeΛB (9)
(ファイバコア34''または36''または38''のような)外側ファイバコアが、例えばファイバセンサ12''の曲げに起因して歪みを受ける場合、その共振波長はシフトする。受ける歪みが過度に大きい場合、共振波長はシフトしてレーザ走査範囲から出て、この際、信号が検出されないため曲げ歪みセンシングが失敗する。曲げ半径の最大範囲に対応するために、歪みのない基準状態におけるコアの共振波長は、走査波長範囲の中心波長に近くなるように選択されるべきである。ファイバコアが異なる共振波長を有するとき、ファイバコアのうちの1つの共振がシフトして走査波長範囲から出る歪みレベルは小さくなり、測定可能な曲げ半径の範囲の損失につながる。この影響は、走査範囲を増大させることによって軽減することができるが、これにより、処理される必要があるデータ量がより大きくなる。したがって、所与の十分な温度感度差について可能な限り小さな共振波長差を提供するモード屈折率を有するファイバコア設計を有することが有利である。
図9は、LP11-カットオフ波長の関数として異なる開口数NAを有するファイバコア設計の範囲について計算された共振波長の図を示す。ブラッグ周期ΛBは、開口数が0.215に等しく、ファイバコア半径が2.4μmの「基準」ファイバコア設計について共振波長が1545nmであるように選択され、結果として1346nmのLP11-カットオフ波長が得られた。
図9および図6の詳細な比較は、第1のファイバコア設計、例えば、図3Bにおけるファイバコア14'、16'、18'、20'または図3Cにおけるファイバコア14''、16''、18''、20''(ファイバコアの第1のサブセット)のファイバコア設計が選択されたとき、例えば、図3Bにおけるファイバコア34'または図3Cにおける34''、36''、38''(ファイバコアの第2のサブセット)の、第2のファイバコア設計が、所与の温度感度差について共振波長差を最小限にするようにどのように選択されるべきかに関する情報を提供することができる。比較を単純化するために、図6の温度感度データおよび図9の共振波長データのうちのいくつかは、図10におけるファイバコア設計図における輪郭線としてプロットされる。図10は、第1の(基準)ファイバコア設計に対し±1%の温度感度差を有する2つの第2のファイバコア設計の輪郭線(実線)、および第1の(基準)ファイバコア設計(図10における円形マーカによって示される)に対し±2nmの共振波長差を有する2つの第2のファイバコア設計の輪郭線(破線)を示す。図10における図を用いて、ファイバコア設計の対をどのように改善することができるかを説明することができる。例として、ファイバコアの第2のサブセットのファイバコアの第2のファイバコア設計が、ファイバコアの第1のサブセットのファイバコアの第1の(基準)ファイバコア設計と比較して-1%の差の温度感度を有するように選択される場合、共振波長差(の絶対値)は、矢印60の方向に右に-1%線に沿って移動する場合に低下させることができることを見て取ることができる。代替的に、第2のファイバコア設計を、第1のファイバコア設計と比較して-1%ではなく+1%の差の温度感度を有するように選択する場合、矢印62に沿って左に+1%線に沿って移動することによって共振波長差をより下げることができる。図10から、温度感度が異なるように意図されるファイバコア設計の対(第1の(基準)ファイバコア設計、および上記の第2のファイバコア設計のうちの1つ)について、2つの設計のうちのより低いNAを有する設計が、他方の設計よりも長いLP11-カットオフ波長を有することが最良であると結論付けることができる。換言すれば、NAの差と、LP11-カットオフ波長の差との積は、好ましくは負になるべきである。更に換言すれば、第1のファイバコア設計(図10における基準マーカ)に対し最適化された第2のファイバコア設計を得るためには、基準設計から離れて図10における概ね左上または概ね右下の方向に移動するべきである。
ファイバコア設計の対を最適化するために考慮に入れるべき別の特性は群速度分散である。ここでの背景は、形状センシングコンソールのようなシステム10は、通常、レーザ走査を線形化するのに用いられる補助干渉計を含むことである。補助干渉計は、約17ps/nm/kmの群速度分散を有する標準的なシングルモードファイバ(SMF28)を用いて構築される。光ファイバセンサ12'または12''と、補助干渉計との分散の差により、系統誤差が生じる場合がある。分散の差を補償する方法が存在するが、分散の差が増大すると分散補償の精度が悪化することが予期される。したがって、マルチコア光ファイバセンサ12'または12''の第1および第2のファイバコア設計のための分散値が必要以上に17ps/nm/kmと異ならないことが有利であり好ましい。
図11は、いくつかのファイバコア設計について計算された群速度分散値の輪郭線の図を示す。輪郭線における値はps/nm/km単位で与えられる。SMF28の分散値と等しい分散値は、図に示すNAおよびカットオフ波長の範囲に到達しない可能性があるが、低いカットオフ波長および大きなNAを有するファイバコア設計の場合に差が劇的に増大することを見て取ることができる。ファイバコア設計が図の左上の部分に陥ることは回避するべきである。点線の矢印は、ファイバコア設計の適切性の増大方向を示す。
ファイバコア設計の最適化に関連し得る別の特性は、モードフィールド径(MFD)である。光コネクタ、例えば光ファイバセンサ12'または12''を光形状センシングコンソールまたはシステム10に接続するコネクタにおいて、ファイバコア間の位置合わせ不良により、送信される光パワーの損失が生じる。位置合わせ不良の原因は、例えば、コネクタにおける機械的耐性、およびマルチコア光ファイバにおけるファイバコア位置の幾何学的耐性である。所与の位置合わせ不良について、モードのサイズが大きくなると、損失が低くなる。モードのサイズは、モードフィールド径(MFD)の観点で表される。ファイバコア設計の範囲にわたるMFDの計算が図12に示される。モードフィールド径は、LP11-カットオフ波長に対する感度が比較的低く、所望のより大きなモードサイズは、より低いNA値に対応することを見て取ることができる。
光ファイバセンサ12'または12''を用いた光形状センシングの精度に関連し得る光ファイバセンサ12'または12''の更なる態様は、曲げ損失、UV感度および熱応力である。
曲げ損失に関して、ファイバセンサが曲げられると、ファイバコア内を進行する光の一部を損失する可能性がある。これらの損失は、ファイバコア設計および曲げ半径に対する感受性が非常に高い。2.5mm半径の非常に急な曲げの場合の推定曲げ損失の輪郭線が図13に示される。曲げ損失は、低LP11-カットオフ波長および低NAを有するファイバコア設計、すなわち図の左下領域におけるファイバコア設計の場合に劇的に増大する。しかしながら、2倍の半径、すなわち5mmの曲げ半径を有する曲げの場合の曲げ損失は大幅に低く、図13の極左下領域を除いて、示されるファイバコア設計半径において問題を課さない。図13において、曲げ損失はdB/turn単位で表される。点線の矢印は、曲げ損失に対するファイバコア設計の適切性の増大方向を示す。
UV感度に関して、2つのファイバコア設計のゲルマニウム濃度の比が大きすぎる場合、FBG刻印のための最適なUVレーザ強度は、2つのファイバコア設計によって過度に異なり、ファイバコア設計の一方または双方について準最適な格子強度につながる場合がある。これは、2つのファイバコア設計間のNAの実際の差に対し制限を課す。
熱応力に関して、ゲルマニウムドープファイバコアの熱膨張係数は、純粋なクラッド材料の熱膨張係数と異なることを考慮に入れるべきである。差は、ファイバコアのNAに概ね比例する。差が過度に大きいとき、描画プロセス中に凍結される熱応力により、ファイバが破損する確率が増大する場合があり、可能な最大NAに対し制限が課される。実際には、約0.3のNAが確実に達成可能であるべきである。
上記を要約するために、コモンモード信号における温度の影響および歪みの影響の十分な分類のために、光ファイバセンサ12'または12''を用いた光形状センシングの精度の最適化のための光ファイバセンサの更なる特性を考慮に入れて、ファイバコアの第1のサブセット(第1のファイバコア設計)、例えば、ファイバコア14''、16''、18''、20''または14'、16'、18'、20'、およびファイバコアの第2のサブセット(第2のファイバコア設計)、例えば、ファイバコア34'または34''、36''、38''の以下のファイバコア設計が有利であり得る。
第1のファイバコア設計の開口数と、第2のファイバコア設計の開口数との差の絶対値は、0.01〜0.03の範囲内にあることができる。
より低いNAを有するファイバコア設計は、少なくとも0.17のNAを有することができる。
ファイバコア設計の一方または双方のLP11-カットオフ波長は、1100nm〜1500nmの範囲内にあることができる。
より低いNAを有するファイバコア設計は、より高いNAを有するファイバコア設計のLP11-カットオフ波長よりも長いLP11-カットオフ波長を有することができる。
第1および第2のファイバコア設計間の共振波長差は、3nm以下とすることができる。
第1および第2のファイバコア設計間の温度感度差は、0.5%〜2%の範囲内にあることができる。
第1および第2のファイバコア設計の群速度分散は、7ps/nm/km〜20ps/nm/kmの範囲内にあることができる。
第1のファイバコア設計のファイバコアおよび/または第2のファイバコア設計のファイバコアは、ドーパントを含むことができ、ドーパントの濃度および/または材料は、第1および第2のファイバコア設計間で異なる。
ドーパントはGeO2とすることができる。光ファイバのクラッドはシリカ(SiO2)を含むことができる。
実施形態において、7ファイバコア光ファイバセンサである図3Cにおける光ファイバセンサ12''は、以下の特性を有することができる。ファイバコアの第1のサブセット、例えばファイバコア14''、16''、18''、20''は、ファイバコアの第2のサブセット、例えば、ファイバコア34''、36''、38''のNAよりも高いNAを有することができる。第1のサブセットのNAは約0.215とすることができ、第2のサブセットのNAは約0.188とすることができる。ファイバコアの第1のサブセットは、約1400nmのLP11-カットオフ波長を有することができ、ファイバコアの第2のサブセットは、約1460nmのLP11-カットオフ波長を有することができる。
(約0.215のより高いNAを有する)第1のサブセットのファイバコアは、図10における円形ドットによって表される光学特性を呈する。これは、例えば図3Aに示す「標準的な」4ファイバコアセンサの場合のものと同じファイバコア設計である。このファイバコア設計が、図3Cにおける光ファイバセンサ12''におけるファイバコア14''、16''、18''、20''の第1のサブセットについて維持される場合、ファイバコア34''、36''、38''の第2のサブセットの第2のファイバコア設計の最適値は、図10におけるNA対LP11-カットオフ波長のプロットの右下に移動することによって取得することができる。
上述した実施形態の更なる特性は以下の通りとすることができる。低NAファイバコア設計(ファイバコアの第1のサブセット)のモードフィールド径は約6.8μmであり、高NAファイバコア設計(ファイバコアの第2のサブセット)の場合、約5.9μmである。低NAファイバコア設計のための群速度分散は、約12.5ps/nm/kmであり、高NAファイバコア設計の場合、約7.9ps/nm/kmである。
低NA設計の共振波長と、高NAファイバコア設計の共振波長との差は約-1.545nmである。信号レベルは、双方のファイバコア設計について同一(1dB以内)である(信号レベルは、ファイバコアのファイバブラッググレーティングの振幅反射率によって決定される)。低NAファイバコア設計の温度感度と、高NAファイバコア設計の温度感度との差は-1.11%である。低NAファイバコア設計の歪み感度と、高NAファイバコア設計の歪み感度との差は約0.13%である。
図14および図15に関して、形状センシングにおける図3Aにおけるファイバセンサ12のような4ファイバコア光ファイバセンサに関連して図3Cにおけるファイバセンサ12''のような7ファイバコア光ファイバセンサの改善された精度を示すために行われた実験について説明する。図14は、実験のセットアップを示す。図14に示すように、光ファイバセンサFが平坦な台の上にL字型で配置され、固定された。Lは、形状再構成が開始する起動位置を示し、TはファイバFの(遠位)先端を表す。Hは、ファイバセンサFの一部に熱を加えるためのヒータを表す。一方が標準的な4コアファイバセンサであり、他方が本発明の原理による7コアファイバセンサである、2つの異なるファイバFが調べられた。
図15は、標準的な4コアファイバセンサおよび本発明の原理による7コアファイバセンサに対し実行された32個の測定(x軸)のシーケンスについて、先端Tの再構成された位置を示す。測定において用いられる7コアファイバセンサは、上述した実施形態に対応する。
10個の測定(図15における形状1〜10)の第1のサブセットにおいて、軸歪みも熱もファイバセンサFに加えられなかった。6つの測定(図15における形状11〜16)の更なるサブセットにおいて、軸歪みのみがファイバセンサFに加えられた。7つの測定(図15における形状17〜23)の次のサブセットにおいて、熱(温度変化)のみがファイバセンサFに加えられた。7つの測定(図15における形状24〜30)の更なるサブセットにおいて、温度変化および軸歪みの双方がファイバセンサFに加えられた。一連の測定は、2つの更なる測定(図15における形状31〜32)で終了する。ここでも、刺激は(軸歪みも熱も)加えられなかった。一連の測定の各々の間、軸歪みおよび/または温度は増減した。加えられた最大軸歪みは、0.5mの長さにわたって約1msであったのに対し、最大温度差は、40cmの長さにわたって約20℃であった。形状再構成の結果として生じる先端Tの見かけ位置が図15に示される。x方向は、面外挙動を与え、y方向における誤差は90°の曲げ角度の逸れに対応し、z方向は伸長に対応する。曲線70は、図3Aにおける光ファイバセンサ12のような4ファイバコア設計の場合の、すなわち、軸歪みおよび温度を互いに区別することができないときの3つの方向(x、y、z)における先端Tの位置を示す。軸歪みと温度とを分離できないことにより、ファイバセンサFの計算されたツイストの誤差が生じる。これは、90°の曲げの誤った角度、および結果として、再構成における傾いた形状をもたらす。誤差は、加えられる刺激の量に比例する。曲線72は、本発明の原理による7ファイバコアファイバセンサFについて先端Tの位置を示す。7ファイバコアファイバセンサFの完全なデータセットが考慮に入れられるとき、ツイストの正しい値を評価することができ、図15における曲線72によって示されるように、先端Tの真の位置からの先端Tの見かけ位置の僅かな逸れのみを観測することができた。
第1および第2のサブセット(第1および第2のファイバコア設計)のファイバコアの温度感度における差は、上記の実施形態において1.1%にすぎないことに留意されたい。結果として得られる形状誤差は、温度および歪みを適切に分離すると、100mm超からmm範囲に低減される。0.8mのレバーアーム(先端Tのz座標)を所与とすると、これは、計算されるツイストにおける誤差が約0.1radから数mradまで低減されることを意味する。
上記は、光形状センシングにおける高精度をもたらす光ファイバセンサの他の特性に対し平衡を取られた形状センシングシステムにおける良好な歪み-温度分離を提供する本発明の原理に従って、光ファイバセンサのためのファイバコア設計を得ることができることを示す。
本発明は、図面および上記の説明において詳細に図示および説明されたが、そのような図示および説明は、例証または例示とみなされるべきであり、制約とみなされるべきでない。本発明は開示された実施形態に限定されない。
開示された実施形態に対する他の変形は、特許請求された発明を実施する当業者によって、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を検討することにより理解および実行することができる。
請求項において、「含む」との用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、また、「a」または「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一の要素または他のユニットが、請求項に記載されるいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
10 光形状センシングシステム
12、12' 光ファイバセンサ
14、18、20、14'、18'、20'、14''、18''、20'' ファイバコア、外側コア
16、16'、16'' ファイバコア、中心コア
21 インテロゲータユニット
22 波長可変光源
24a、24b、24c、24 光チャネル
26 データ取得ユニット
30、30'、30'' クラッド
32 コーティング
34'、34''、36''、38'' ファイバコア
本発明は、包括的には、光ファイバセンサの分野に関する。特に、本発明は、コモンモード信号を、温度に起因した寄与と、歪みに起因した寄与とに分離することを可能にする光ファイバセンサに関する。
光ファイバセンサは、特殊光ファイバの3次元形状をファイバ内の光の反射から再構成することができる技術である光形状センシング(OSS)において用いることができる。この技術は、例えば、医療デバイス、例えばカテーテルおよびガイドワイヤのようなデバイスの形状全体のリアルタイム3D視覚化を可能にする。光形状センシングは、X線追跡を必要とすることなく、医師が処置中に医療デバイスをナビゲートすることを可能にする。
光形状センシングにおいて、光形状センシングファイバとも呼ばれる光ファイバセンサが、ファイバのファイバコアに結合された光を用いて検査される。ツイストマルチコアファイバセンサのファイバコアの各々に対し同時に実行される分散歪み測定を用いて、ファイバの長さに沿った全ての位置において光ファイバの特定の変形に対応する信号を計算する。例えば、レーザ、例えばシングルモードレーザの波長が、矛盾なく定義された波長範囲にわたって単調に変動される波長掃引型干渉分光法を用いて、分散歪み測定が行われる。各ファイバコアは、自身の干渉計と通信する。通例、矛盾なく定義された反射信号を提供するために、ファイバブラッググレーティング(FBG)がファイバコアに書き込まれる。従来から、光ファイバセンサの光ファイバは、4つのファイバコア、すなわち中央ファイバコアと、中心コアの周りに螺旋状に巻き付けられた3つの対称的に配置された外側コアとを含む。4つのファイバコア信号から計算することができる変形信号は、2つの独立した方向における湾曲(ファイバの曲げ)、ファイバの捻れ(ツイスト)、およびコモンモードの影響を表す信号、すなわち全てのコアに共通の信号を表すことができる。4×4の行列は、ファイバコア信号から変形信号を計算するのに習慣的に用いられ、すなわち、変形信号は、4つのファイバコア信号の適切な線形結合である。次に、2つの独立した湾曲成分(例えば、l/m単位)およびツイスト角(例えば、ラジアン単位)が、較正手順において事前に決定された適切なスケーリング係数との乗算によって対応する変形信号から計算される。光ファイバセンサの形状は、ファイバセンサに沿った全ての位置において入手可能な2つの曲率成分およびツイスト角から再構成することができる。
コモンモード信号は、光ファイバ(軸歪み)の伸長の結果とすることができるか、温度変化の結果とすることができるか、これらの影響の組み合わせの結果とすることができる。軸歪みまたは温度変化が光ファイバセンサに加えられると、コモンモード信号変化のみでなく、ツイスト信号(twist signal)も影響を受けることが経験的にわかっている。ツイスト角の正確な値は、形状再構築の精度に重要であるため、ツイスト信号に対する軸歪みおよび/または温度変化の影響が補償されなくてはならない。純粋な軸歪みまたは純粋な温度変化の影響を無効にするためにコモンモード信号の小さな割合を減算することによって(または等価には、4×4の行列を僅かに変更することによって)、ツイスト信号におけるこれらの影響を補償することが可能である。しかしながら、一般に、必要とされる補償要素は、軸歪みの場合と温度変化の場合とで異なる。適切な補償は、観測される総コモンモード信号に対する軸歪みおよび温度の影響の相対的寄与に関する知識を必要とするため、ツイスト信号を補償するための単純な方式は利用可能でない。これらの相対的寄与がわかっている場合、ツイスト信号に対する正味の補償は、各寄与をその適切な補償係数と組み合わせた後にこれらの別個の寄与の補償を加えることによって計算することができる。
コモンモード信号を歪みに起因した寄与と温度に起因した寄与とに分離することは、光ファイバベースの形状センシングにおけるよく知られた問題である。「標準的な」4コア形状センシングファイバの4つのファイバコア信号は、十分な情報を提供しない。第5の信号が必要とされる。形状センシングにおいて、これは、1つまたは複数のファイバコアをマルチコアファイバに加えることによって達成することができる。追加のファイバコアは、コモンモード信号を温度に起因した寄与と歪みに起因した寄与とに分離することを可能にするために、歪みに対する感度と温度に対する感度との異なる比を有する必要がある。
国際公開公報第2016/099976号および国際公開公報第2016/122742号は、4つの「標準的な」ファイバコアの温度感度(temperature sensitivity)と異なる温度感度を有する1つまたは複数のファイバコアを加えることによる、光ファイバにおける歪みと温度との分離について開示している。後者の文書は、歪みと温度との分離が実際的になるには、2つのタイプのファイバコアの温度感度が2%を超えて異なるべきであることを開示している。追加のファイバコアのための異なる温度感度は、ファイバコアにおける異なるドーピングレベルによって、および/またはファイバコアのうちのいくつかに異なるドーピング材料を加えることによって達成される。しかしながら、これらの文書において検討されていないものは、温度感度以外のファイバセンサ特性に対する追加のファイバコアの影響である。換言すれば、提案される追加のファイバコアは、特に、2つのタイプのファイバコアの温度感度が少なくとも2%異なることが必要とされるときに、形状センシング目的の最適に達しない特性の混合を示す場合がある。
LiMing-Jun他は、「Dual Core Optical Fiber for Distributed Brillouin Fiber Sensor」2014 ASIA COMMUNICATIONS AND PHOTONICS CONFERENCE(ACP), OSA, 11 November 2014、1-3頁において、ブルリアン散乱に基づく歪みおよび温度の測定のためのデュアルコア光ファイバを開示している。ファイバは、異なるコア半径および異なるコア相対屈折率差を有する2つのファイバコアを含む。
形状センシングの精度に影響を及ぼすことなくコモンモード信号における温度に起因した寄与および歪みに起因した寄与間の分離を可能にする改善された光ファイバセンサ設計が依然として必要とされている。
国際公開公報第2016/099976号
国際公開公報第2016/122742号
LiMing-Jun他「Dual Core Optical Fiber for Distributed Brillouin Fiber Sensor」2014 ASIA COMMUNICATIONS AND PHOTONICS CONFERENCE(ACP), OSA, 11 November 2014、1-3頁
本発明の目的は、歪みの影響と温度の影響との分離を可能にするのみでなく、光形状センシングのためのセンサの最適性能も可能にする光ファイバセンサを提供することである。
本発明の態様によれば、光ファイバを備える、形状センシングのための光ファイバセンサが提供される。この光ファイバは、クラッド屈折率を有するクラッドと、クラッドに埋め込まれ、光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数のファイバコアとを備え、複数のファイバコアは、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1のサブセットと、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のサブセットとを有し、少なくとも1つの第1のファイバコアは、少なくとも1つの第1のファイバブラッググレーティングを有し、少なくとも1つの第2のファイバコアは、少なくとも1つの第2のファイバブラッググレーティングを有し、少なくとも1つの第1のファイバコアは、クラッド屈折率と異なる第1のコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の第1の半径とを有し、少なくとも1つの第2のファイバコアは、クラッド屈折率と異なる第2のコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の第2の半径とを有し、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のコア屈折率および第2の半径は、第1のコア屈折率および第1の半径と異なる。
本発明による光ファイバセンサは、1つまたは複数のファイバコアの第1のサブセット(第1のタイプ)と、コア-クラッドの屈折率差においてのみでなくコア半径においても第1のサブセットのファイバコアと異なる1つまたは複数のファイバコアの第2のサブセット(第2のタイプ)とを有する。ファイバコアのコア半径または直径の2分の1は、ファイバコアの長手方向を横切る方向における、すなわち断面におけるファイバコアの半径であり、半径は、ファイバコアの長手方向中心軸に対し取得される。本発明によれば、ファイバセンサは2つ(以上)の異なるファイバコア設計を有し、これにより、コモンモード信号において、温度に起因した寄与を、歪みに起因した寄与から分離することが可能になる。以下で説明され、より詳細に示されるように、追加のファイバコアのコア-クラッドの屈折率差とコア半径との組み合わせは、光ファイバセンサが歪みおよび温度の分離を可能にするのみでなく、光形状センシングのための最適な性能も可能にするように選択することができる。追加のコアのコア-クラッドの屈折率差とコア半径との組み合わせにより、ファイバコアの第1および第2のサブセットのファイバコア設計間の温度感度差と、光形状センシングに関連する他の特性との間の最良バランスがもたらされる。第2のサブセットの少なくとも1つのファイバコアのコア屈折率は、第1のサブセットの少なくとも1つのファイバのドーピングレベルおよび/またはドーピング材料と異なるドーピングレベルおよび/またはドーピング材料を選択することによって設定することができる。本発明は、形状を正確にセンシングするために光ファイバの性能を妥協することなく、温度に起因した影響と歪みに起因した影響との分離を達成し、このため、本発明による光ファイバセンサを用いた3D形状再構成は、従来技術による標準的な光ファイバセンサよりも正確になることができる。
形状センシング精度に関連し得る光ファイバセンサの光学特性は、開口数(NA)、シングルモード動作、共振波長、群速度分散、曲げ損失等とすることができ、上述した特性は、ファイバコア屈折率およびファイバコア半径による影響を受ける。
実施形態において、第1のコア屈折率および第1の半径に対する第2のコア屈折率および第2の半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1の開口数と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2の開口数との差の絶対値が最大で0.03、または約0.01〜約0.03の範囲にあるようにすることができる。
第1のサブセットおよび第2のサブセットのファイバコア設計間のそのような開口数(NA)の差は、高い形状センシング精度も提供しながら、ファイバコアの2つの組間の温度感度の十分な差を可能にする。
更に、最大で0.03の、または0.01〜0.03の範囲にあるファイバコアの第1のサブセットおよび第2のサブセットのコア設計間のNA差は、ファイバコアの波長感受性反射構造(wavelength sensitive reflecting structure)、例えばFBGの共振波長差を制限するのに適切である。第1のサブセットおよび第2のサブセットの異なるコア設計の共振波長間の差を制限することは、光ファイバセンサのより小さな曲げ半径を、光ファイバセンサで測定することができるという利点を有する。
実施形態において、第1および第2のファイバコア設計(第1および第2のサブセット)のうちの一方のファイバコア設計は、他方のファイバコア設計よりも低い開口数を有することができ、より低い開口数は、少なくとも0.17である。
少なくとも0.17のNAは、光ファイバセンサの非常に急激な曲げにおける曲げ損失を制限するのに有利である。
実施形態において、第1および/または第2のコア屈折率ならびに第1および/または第2のファイバコア半径は、少なくとも1つの第1および/または第2のファイバコアの第1および/または第2のLP11-カットオフ波長が1500nm未満でありかつ1100nmを上回るようにすることができる。
これらの実施形態において、最も低いLP11-カットオフ波長は、少なくとも1100nm、例えば1200nmとすることができる。光ファイバセンサが、C帯域(1530nm〜1565nm)において動作している形状センシングシステムにおいて光学的に検査されているとき、この実施形態におけるファイバのシングルモード動作が確保される。ファイバのシングルモード動作は、形状センシング性能および精度の観点で有利である。
実施形態において、第2のコア屈折率、第2の半径、第1のコア屈折率および第1の半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1の開口数と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2の開口数との差と、少なくとも1つの第1のファイバコアの第1のLP11-カットオフ波長と、少なくとも1つの第2のファイバコアの第2のLP11-カットオフ波長との差との積が負値を有するように選択することができる。
この実施形態において、より低いNAを有するファイバコア設計は、より高いNAを有するファイバコア設計のLP11-カットオフ波長よりも長いLP11-カットオフ波長を有する。この実施形態の有利な効果は、異なるコア設計の共振波長間の差を、光ファイバセンサの測定可能な曲げ半径の最大範囲に対応するように、温度感度の所与の差について可能な限り小さく維持することができるということである。
実施形態において、少なくとも1つの第1のファイバブラッググレーティングは、ファイバコアの歪みのない状態で光に曝されたときに第1の共振波長を有し、少なくとも1つの第2のファイバブラッググレーティングは、ファイバコアの歪みのない状態で光に曝されたときに第2の共振波長を有し、第1の共振波長と第2の共振波長との差の絶対値は、3nm以下である。
ファイバブラッググレーティングは、波長感受性反射構造である。所与の範囲における異なるコア設計間の共振波長の差により、測定可能な曲げ半径の範囲は、温度感度における所与の差について可能な限り大きく留まる。FBGの共振波長は、幾何学的格子周期に依拠するのみでなく、対応するファイバコアのモード屈折率(mode index)にも依拠し、これはひいてはファイバコアの開口数およびファイバコア半径に依拠する。このため、異なるコア設計間の共振波長の適切な差は、コア設計のモード屈折率を適切に選択することによって調節することができ、これはひいては、ファイバコア-クラッドの屈折率の差およびファイバコア半径に依拠する。
実施形態において、ファイバコアの第1および第2のサブセットの2つのファイバコア設計は、可能な限り類似しているUV放射に対する感度を有することができるか、または換言すれば、互いから実質的に逸脱していない。利点は、波長依存反射性構造を第1および第2のサブセットのファイバコアに刻み込むとき、結果として得られる構造、例えばFBGを十分な強度で作製することができることである。
実施形態において、第2の温度感度は、絶対値で0.5%〜2%の範囲内で第1の温度感度と異なる。
所与の範囲における温度感度差は、形状センシングの精度に関連する温度感度差以外のファイバコアの特性も、この範囲を超える温度感度差、例として従来技術において提案される温度感度差の場合よりも良好に制御することができるという点で有利である。
実施形態において、第1および/または第2のコア屈折率ならびに第1および/または第2の半径は、少なくとも1つの第1および/または第2のファイバコアの第1および/または第2の群速度分散が、7ps/nm/km〜20ps/nm/kmの範囲内にあるように選択される。
標準的なシングルモードファイバ(SMF28)で構築されたレーザスキャンを線形化するために補助干渉計を用いるとき、光ファイバセンサの光ファイバと補助干渉計との間の分散の差は、可能な限り小さくなるべきである。光ファイバセンサと補助干渉計との分散の増大する差により、対称誤差が生じる場合があり、これは光形状センシングの精度に影響を及ぼし得る。このため、本実施形態による光ファイバセンサは、約17ps/nm/kmの群速度分散を有する標準的なシングルモードファイバ(SMF28)を用いて構築される補助干渉計を有する形状センシングコンソールにおける使用に最も適している。
更なる実施形態において、第1のコア屈折率および第1のコア半径は、少なくとも1つの第1のファイバコアが6μm〜7μmの範囲のモードフィールド径を有するように選択され、かつ/または第2のコア屈折率および第2のコア半径は、少なくとも1つの第2のファイバコアが6μm〜7μmの範囲のモードフィールド径を有するように選択される。
大きなモードフィールド径は、例えば、2つのファイバセンサを互いに接続するための、光コネクタにおける損失を低減する際に有利である。
少なくとも第1のファイバコアおよび少なくとも1つの第2のファイバコアは、ドーパントを含むことができ、ドーパントの濃度および/または材料は、少なくとも1つの第1のファイバコアと少なくとも1つの第2のファイバコアとの間で異なる。
実施形態において、ドーパントはGeO2である。
更に、光ファイバのクラッドはSiO2を含むことができる。
好ましくは、ファイバコアの第1のサブセットは、複数のファイバコア、例えば、1つの中心コアおよび2つ以上、例えば3つの外側コアの4つのファイバコアを有し、ファイバコアの第2のサブセットは、1つ、2つまたは3つ以上の外側ファイバコアを有する。第2のサブセットのファイバコアは、コア屈折率およびコア半径の観点で第1のサブセットのファイバコアと異なる。第1のサブセットの第1のファイバコアの第1のコア屈折率およびコア半径は、全ての第1のファイバコアについて等しくすることができる。第2のサブセットの第2のファイバコアの第2のコア屈折率およびコア半径は、全ての第2のファイバコアについて等しくすることができる。このように、ファイバセンサの製造が容易にされる。第2のサブセットのファイバコアは、外側ファイバコアのみを含むことができるが、第1のサブセットは、外側コアおよび1つの中心コアを含むことができる。第2のサブセットのファイバコアおよび第1のサブセットの外側コアは、互いに交互に配置することができる。
光形状センシングにおける最適精度を提供しながら、形状センシング手順において温度に起因した影響を歪みに起因した影響から分離することを可能にする光ファイバセンサを提供するために、上記の全ての実施形態を互いに組み合わせることができることを理解されたい。
本発明のこれらの態様および他の態様は、以後に記載される実施形態の参照から明らかとなり、解明される。
光形状センシングシステムの例を示すブロック図を示す。
標準的な光ファイバセンサの例の斜視図を示す。
標準的な光ファイバセンサの断面を示す。
本発明の原理による追加のファイバコアを有する光ファイバセンサの断面を示す。
本発明の原理による3つの追加のファイバコアを有する光ファイバセンサの断面を示す。
ファイバコアにおけるドーパント濃度の関数として開口数を示す図を示す。
異なるLP11-カットオフ波長についてファイバコア半径の関数として開口数を示す図を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として温度感度を示す図を示す。
図6の温度感度に対する単一の寄与の図を示し、左上の図は、光ファイバのクラッドからの温度感度に対する寄与を示し、右上の図は、ファイバコアからクラッドへの屈折率段差(index step)からの温度感度に対する寄与を示し、左下の図は、ファイバコア半径からの温度感度に対する寄与を示し、右下の図は、熱膨張からの温度感度に対する寄与を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として歪み感度を示す図を示す。
異なる開口数を有するいくつかのファイバコア設計についてLP11-カットオフ波長の関数として共振波長を示す図を示す。
基準の第1のファイバコア設計(円形マーカ)から±1%だけ異なる2つの例示的な第2のファイバコア設計の温度感度の輪郭線(実線)、および基準設計から±2nmだけ異なる2つの第2のファイバコア設計の共振波長の輪郭線(破線)を示す図を示す。
計算された群速度分散の輪郭線を示す図を示す。
LP11-カットオフ波長の関数として、異なる開口数を有する複数のファイバコア設計のための推定モードフィールド径を示す図を示す。
いくつかのファイバコア設計について、固定曲げ半径の場合の推定曲げ損失を示す図を示す。
7つのファイバコアを有する光ファイバセンサに対する形状センシング実験のセットアップの略図を示す。
本発明の原理による、標準的な4ファイバコア光ファイバセンサおよび7ファイバコア光ファイバセンサのための、図14におけるセットアップを用いて実行される測定の結果を示す。
図1は、光ファイバセンサ12をセンシングするための、マルチチャネル光周波数領域反射測定法(OFDR)ベースの分散-歪みセンシングシステムとして構成された光ファイバセンサシステム10の一部を概略的に示す。光ファイバセンサ12は、クラッドと、クラッドに埋め込まれた複数のファイバコア14、16、18、20、この例では、1つの中心コア16および3つの外側コア14、18、20の4つのコアとを有する光ファイバを含む。図1に示す光ファイバセンサは、標準的なファイバセンサである。ここで、本発明は、5つ以上のファイバコアを有する光ファイバセンサ設計を提案することに留意されたい。図2は、ある長さのファイバコア14、16、18、20片を示し、外側コア14、18、20は、中心コア16から径方向に離間され、中心コア16の周りに螺旋状に巻かれている。中心コア16は、光ファイバセンサの中心軸上に配置される。外側ファイバコア14、18、20は、光ファイバセンサ12の長手方向の中心軸の周りをアジマス方向に互いに対し角度間隔を置かれる。本例における3つの外側ファイバコアによれば、近傍外側コア間の角度間隔は120°とすることができる。
再び図1を参照すると、光形状センシングシステム10は、インテロゲータユニット21を備える。インテロゲータユニット21は、走査範囲とも呼ばれる光周波数範囲を通じて掃引することができる波長可変光源22を含むことができる。光源22によって放射された光は、光ファイバセンサ12のファイバコアの数に従って、光チャネル24a、24b、24c、24dを有する光干渉計測ネットワーク24内に結合される。光ファイバセンサ12が5つ以上のコアを有する場合、光干渉計測ネットワーク24は、対応する数の5つ以上の光チャネルを有することができる。各チャネルがファイバコアのうちの1つのための干渉計を形成する。
波長可変光源22が光周波数範囲を通じて掃引されるとき、各チャネル24a、24b、24c、24d、およびこのため光ファイバセンサ12の各ファイバコア14、16、18、20は、同時にかつ独立して光学的に検査され、ファイバコア14、16、18、20の各々から戻る光によって生じた干渉信号が、それぞれの光検出器25を介して処理ユニットまたはデータ取得ユニット26にルーティングされる。次に、マルチチャネルOFDRシステムを用いたファイバコア14、16、18、20からの分散歪み測定を、更なる処理のために、特に光ファイバセンサ12の3次元形状再構成のために、例えば再構成された3次元光ファイバセンサ12の視覚表示のために、ユニット27にエクスポートすることができる。
光ファイバセンサ12の実施形態において、ファイバコア14、16、18、20は、ファイバコアに沿った屈折率の周期的変動によって形成される波長感受性反射構造(図示せず)としてファイバブラッググレーティング(FBG)を有することができる。FBGは、(共振波長とも呼ばれる)特定の波長の光を反射し、全ての他の波長を透過する。本明細書において、対応するファイバコアの長さに沿って単一の共振周波数(または波長)を有するFBGを有するファイバコアが検討される。局所的な曲げが光ファイバセンサ12にもたらされると、共振波長は歪みによってシフト(増減)し、ファイバに沿った任意の位置の反射波長の測定により、局所的歪みを特定することが可能になる。
図3Aは、図2における標準的な光ファイバセンサ12の断面を示す。光ファイバセンサ12の光ファイバは、ファイバコア14、16、18、20と、ファイバコア14、16、18、20が埋め込まれるクラッド30とを有する。コーティング32によりクラッド30を封入することができる。光ファイバセンサ12のような4ファイバコア光ファイバセンサを用いるとき、4つのファイバコア信号から計算することができる変形信号は、2つの独立した方向における曲率(ファイバの曲げ)、ファイバセンサ12の捻れ(ツイスト)、およびコモンモードの影響を表す信号、すなわち全てのコアに共通の信号を表す。コモンモード信号は、ファイバ(軸歪み)の伸長の結果とすることができるか、温度変化の結果とすることができるか、またはこれらの影響の組み合わせの結果とすることができる。コモンモード信号はツイスト信号にも影響を与える。ツイスト角の正しい値は、再構成された形状の精度に重要である。したがって、ツイスト信号に対する軸歪みおよび/または温度変化の影響は補償されなくてはならない。そのような補償は、観測される総コモンモード信号に対する軸歪みおよび温度の影響の相対的寄与に関する知識を必要とする。4ファイバコアファイバセンサは、コモンモード信号を歪みに起因した寄与と温度に起因した寄与とに分離するための十分な情報を提供しない。
したがって、本発明は、クラッド30'と、ファイバコア14'、16'、18'、20'の第1のサブセットと、少なくとも1つのファイバコア34'の第2のサブセットとを有する光ファイバを備える、図3Bに示す光ファイバセンサ12'を提供する。クラッド30'はクラッド屈折率を有する。ファイバコア14'、16'、18'、20'および34'はクラッド30'に埋め込まれ、光ファイバの長手方向軸に沿って延びる。ファイバコア34'は、クラッド屈折率と異なるコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の断面における第1の半径(直径の2分の1)とを有し、ファイバコア14'、16'、18'、20'は、クラッド屈折率と異なるコア屈折率と、長手方向軸を横切る方向の半径とを有する。ファイバコア34'のコア屈折率および半径(直径の2分の1)は、ファイバコア14'、16'、18'、20'のコア屈折率および半径と異なり、ファイバコア34'の温度感度がファイバコア14'、16'、18'、20'の温度感度と異なるようにされ、それによって、コモンモード信号に対する歪みの影響と温度の影響との分離が可能になる。ファイバコア14'、16'、18'、20'のコア屈折率は、ファイバコア14'、16'、18'、20'間で同じにすることができる。
本実施形態において、ファイバコア14'、16'、18'、20'に対するファイバコア34'の異なるコア屈折率は、ファイバコア14'、16'、18'、20'に対するファイバコア34'における異なるドーパント濃度および/またはドーパント材料によって取得することができる。例として、ファイバコア14'、16'、18'、20'およびファイバコア34'は、ゲルマニウムドープファイバコアとすることができ、ファイバコア34'におけるゲルマニウム濃度は、ファイバコア14'、16'、18'、20'におけるゲルマニウム濃度と異なる。ファイバコア14'、16'、18'、20'および34'は、GeO2をドープされたシリカから作製することができる。他のドーパント材料が可能である。クラッド30'はシリカ(SiO2)から作製することができる。
図3Bにおける光ファイバセンサ12'の5つのファイバコア設計が、温度の影響と歪みの影響との分離を可能にするが、これは形状センシングの精度の観点で最適でない場合がある。したがって、本発明では、光ファイバセンサ12''のより対称的な設計が好ましく、ファイバコアの第2のサブセットは、ファイバコア14''、16''、18''および20''の第1のサブセットに加えて3つのファイバコア34''、36''および38''を含む。図3Bに関して上述したように、ファイバコアの第2のサブセットのファイバコア34''、36''、38''は、断面におけるコア屈折率および半径(直径)の観点で、ファイバコアの第1のサブセットのファイバコア14''、16''、18''、20''と異なる。ファイバコア34''、36''、38''およびファイバコア14''、18''、20''は、中心コア16''から等しい径方向距離を有することができ、中心コア16''の周りに螺旋状に巻き付けることができる。ファイバコア34''、36''、38''、14''、18''、20''の2つの近傍ファイバコア間の中心コア16''の周りのアジマス方向における角度分離は、完全対称構成において60°とすることができる。第1のサブセットの外側ファイバコアと、第2のサブセットのファイバコアとは、交互に配置することができる。例えば、中心コアの周りで、ファイバコア14''、18''、20''は位置0°120°、240°に配置することができ、ファイバコア34''、36''、38''は位置60°、180°および300°に配置することができる。
以下において、光ファイバセンサ12''のファイバコアの第1のサブセットおよび第2のサブセットの最適化されたファイバコア設計の組み合わせについて説明する。例えば、ファイバコア14''、16''、18''、20''は、第1のファイバコア設計に従って構成することができ、(追加の)ファイバコア34''、36''、38''は、第2のファイバコア設計に従って構成することができる。第1および第2のサブセット内のファイバコアは、等しい特性を有することができる。以下の検討事項は、C帯域(1530-1565nm)内で動作する形状センシングシステム10のような形状センシングシステムにおいて用いられる、シリカから作製されたクラッド30''と、ステップインデックス型ゲルマニウムドープファイバコア14''、16''、18''、20''、34''、36''、38''とに基づく。以下の図に示されるモデル計算は、1545nmの波長について行われた。
選択された波長におけるステップインデックス型光ファイバの特性は、クラッド屈折率、ファイバコア-クラッドの屈折率の差、およびファイバコア半径によって完全に決定される。クラッド屈折率は全てのファイバコアに共通であるため、ステップインデックス型ファイバコア間の差は、ファイバコア半径の差と、ファイバコア屈折率の差との結果であり、ファイバコア屈折率の差は、例えばドーピングレベル(例えばゲルマニウム濃度)における差の結果である。2つのパラメータ、すなわちファイバコア半径およびドーピングレベルがあれば、ファイバコア設計を指定するのに十分である。代替的に、ファイバコア設計を指定するためにファイバコア半径およびドーピングレベルに独自に依存する異なる独立パラメータを用いることも可能である。2つのそのようなパラメータは、開口数(NA)およびLP11-カットオフ波長λLP11である。
開口数は、以下によってファイバコアおよびクラッドの屈折率に関係付けられる。
図4は、ファイバコアの開口数(NA)およびゲルマニウム濃度間の関係を示す。図4に示すように、NAは、ドーパント濃度の増大と共に増大する。
LP11-カットオフ波長λLP11は、光ファイバが依然としてシングルモードファイバとして動作する最小波長である。LP11-カットオフ波長を上回ると、ファイバは、LP01モードのみがファイバセンサを通って伝播することを可能にする。LP11-カットオフ波長を下回ると、より高次のモード、すなわちLP11、LP21、LP02等が伝播することが可能になる。光ファイバセンサ12のシングルモード動作は、形状センシングモダリティにおける性能の観点で好ましい。したがって、光ファイバセンサが用いられる波長範囲は、LP11-カットオフ波長よりも長い波長にあるべきである。弱導波ステップインデックス型ファイバの場合、理論的LP11-カットオフ波長は、以下によって開口数NAおよびコア半径に関係付けられる。
定数2.4048は、ベッセル関数J0の最初のゼロである。λLP11がnm単位で表され、aがμm単位で表されるとき、1000の追加の数値係数が式(2)において必要とされることに留意されたい。
定数LP11-カットオフ波長の輪郭線が図5にプロットされ、ファイバコア半径および開口数NAはそれぞれx軸およびy軸に沿っている。図5の図内の数字は、各輪郭線が対応するカットオフ波長λLP11をnm単位で示す。
以下において、ファイバコア設計の温度および歪み感度が探索される。これを可能にするために、まず、温度および歪み感度を定義しなくてはならない。光形状センシング測定における干渉計信号から取得される位相は、光路長の変化に比例して変化し、ここで、シングルモードファイバのセクションの光路長は、そのセクションの幾何学的長さと、そのセクションにおける光ファイバのモード屈折率nmodeとの積として定義される。したがって、温度感度は、ある度合いの温度変化あたりの単位長あたりの光路長の変化として定義することができるのに対し、歪み感度は、単位歪みあたりの単位長あたりの光路長の変化として定義することができる。
上記の定義から、温度感度は以下の式によって与えられる。
ここで、Tは温度を表し、αは、光ファイバの熱膨張の係数である。本例において、光ファイバの断面積に対するファイバコアの寄与が小さいため、シリカクラッド材料の熱膨張が取得される。
歪み感度は以下の式(4)によって与えられる。
ここで、εは歪み(相対伸長Δl/l)である。
式(3)および式(4)から、異なるコア設計の温度感度および歪み感度の比較のために、モード屈折率nmodeが計算されなくてはならないのみでなく、検討中のファイバコア設計について、温度に伴うモード屈折率の変化、すなわちdnmode/dT、および歪みに伴うモード屈折率の変化、すなわちdnmode/dεも計算されなくてはならないことを見て取ることができる。選択された波長について、モード屈折率nmodeは、クラッド屈折率ncladと、コア-クラッド屈折率段差Δn=ncore-ncladと、ファイバコア半径aとによって決定される。このため、温度および歪みに伴うモード屈折率nmodeの変化は、屈折率決定パラメータに対する、変化の結果として生じる寄与の和として書くことができる。
所与のファイバコア設計についてモード屈折率nmodeをどのように数値的に計算するかは、当業者に既知である。ファイバコア設計パラメータに関するモード屈折率nmodeの微分は、僅かに異なるパラメータ値におけるモード屈折率計算から数値的に概算することができる。温度および歪みに対するクラッド屈折率の反応、すなわち、dnclad/dTおよびdnclad/dε、ならびに温度および歪みに伴うファイバコア半径の変化、すなわち、da/dTおよびda/dεが既知である。歪みに伴う屈折率段差の変化を計算するために、ドープされたファイバコア材料の弾性-光学係数が、クラッドの材料(本例ではシリカ)と同じであることが仮定される。温度に伴う屈折率段差の変化の計算のために、ドープされたファイバコア材料の熱膨張係数が、クラッド材料(本例ではシリカ)の熱膨張と異なり、これにより、弾性-光学効果を通じて屈折率段差を効果的に変化するファイバセンサの光ファイバにおける熱応力および歪みがもたらされることを考慮に入れなくてはならない。熱膨張の差、このため温度に伴う屈折率段差における変化は、ファイバコアのドーピングレベルに依拠する。
正味の温度感度は、式(3)および以下の式(5)を組み合わせることによって得られる。
ファイバコア設計の範囲にわたる温度感度の計算結果が図6に示される。図6は、異なる開口数NAを有するファイバコア設計についてLP11カットオフ波長の関数として温度感度(y軸)を示す。検討されるファイバコア設計の範囲にわたる温度感度の変動は、約6%であることを見て取ることができる。形状センシング用途におけるファイバセンサの性能に関する他の特性が考慮に入れられるとき、歪み-温度分離のためのマルチコア光ファイバセンサの実際の設計について完全な温度感度範囲が入手可能でないことが後に示される。
図7は、各図が式(7)の右辺の項のうちの1つに対応する4つの図を示す。左上の図(式(7)の第1項)は、クラッドからの温度感度に対する寄与を示し、右上の図(式(7)の第2項)は、(ファイバコアからクラッドへの)屈折率段差からの温度感度に対する寄与を示し、左下の図(式(7)の第3項)は、ファイバコア半径からの温度感度に対する寄与を示し、右下の図は、式(7)の最後の項からの温度感度に対する寄与を示す。図の垂直スケール範囲における大きな差に留意されたい。図7に示すような温度感度に対する別個の寄与の調査により、クラッド屈折率の温度依存性(図7における左上の図)が平均正味温度感度に対し主として寄与するが、ファイバコア設計間の差は、主にコア-クラッドの屈折率差の温度依存性(図7における右上の図)によって生じることが明らかになる。このため、クラッドの温度依存屈折率により、ファイバコアの大半(>90%)の熱感度が生じている一方で、ファイバコア設計に対する熱感度の依存性の原因となるのは、温度に伴うファイバコア-クラッドの屈折率差の変動である。
正味の歪み感度は、式(4)および以下の式(6)を組み合わせることによって得ることができる。
ファイバコア設計の範囲にわたる計算結果が図8に示される。図8から、検討されるファイバコア設計の範囲にわたる歪み感度の変動が、約0.5%にすぎず、すなわち、検討されるファイバコア設計間の温度感度の変動よりも大幅に小さいことを見て取ることができる。歪み感度における差は十分大きくないため、温度および歪みの分離を達成するためには、温度感度が異なるファイバコア設計を選択する必要がある。
しかしながら、単に最も大きい温度感度差を有するファイバコア設計が選択される場合、最適な結果がもたらされない。対照的に、形状センシングに関係するファイバコア設計の他の特性も検討する必要がある。以下において、これらの他のファイバコア特性によって課される要件が探索される。
これらの特性のうちの1つは、モード伝播に関するファイバコアの動作とすることができる。シングルモード伝播は、マルチモード伝播よりも有利である。C帯域(1530-1565nm)において動作する形状センシングシステムの場合、これは、ファイバコアのLP11-カットオフ波長が1530nm未満、好ましくは1500nm未満となるべきであることを意味する。
形状センシング目的の最適化されたファイバコア設計に関連する別の特性は、ファイバコアの波長感受性反射構造の共振波長である。好ましくは、光ファイバセンサの各ファイバコアは、ファイバ製造プロセス中に光ファイバ上に書き込まれる1つまたは複数のファイバブラッググレーティング(FBG)を有する。FBGは、全てのファイバコアに共通の空間的に変動するUV強度パターンへの曝露の結果として生じるため、各ファイバコアにおいて本質的に同じ幾何学的周期ΛBを有することができる。光ファイバセンサの歪みのない状態であっても、共振波長は、幾何学的周期ΛBのみでなく、以下の式に従ってモード屈折率nmodeにも依拠するため、ファイバブラッググレーティングの共振波長λresは、同じモード屈折率nmodeを有しないファイバコアについて異なり得る。
λres=2nmodeΛB (9)
(ファイバコア34''または36''または38''のような)外側ファイバコアが、例えばファイバセンサ12''の曲げに起因して歪みを受ける場合、その共振波長はシフトする。受ける歪みが過度に大きい場合、共振波長はシフトしてレーザ走査範囲から出て、この際、信号が検出されないため曲げ歪みセンシングが失敗する。曲げ半径の最大範囲に対応するために、歪みのない基準状態におけるコアの共振波長は、走査波長範囲の中心波長に近くなるように選択されるべきである。ファイバコアが異なる共振波長を有するとき、ファイバコアのうちの1つの共振がシフトして走査波長範囲から出る歪みレベルは小さくなり、測定可能な曲げ半径の範囲の損失につながる。この影響は、走査範囲を増大させることによって軽減することができるが、これにより、処理される必要があるデータ量がより大きくなる。したがって、所与の十分な温度感度差について可能な限り小さな共振波長差を提供するモード屈折率を有するファイバコア設計を有することが有利である。
図9は、LP11-カットオフ波長の関数として異なる開口数NAを有するファイバコア設計の範囲について計算された共振波長の図を示す。ブラッグ周期ΛBは、開口数が0.215に等しく、ファイバコア半径が2.4μmの「基準」ファイバコア設計について共振波長が1545nmであるように選択され、結果として1346nmのLP11-カットオフ波長が得られた。
図9および図6の詳細な比較は、第1のファイバコア設計、例えば、図3Bにおけるファイバコア14'、16'、18'、20'または図3Cにおけるファイバコア14''、16''、18''、20''(ファイバコアの第1のサブセット)のファイバコア設計が選択されたとき、例えば、図3Bにおけるファイバコア34'または図3Cにおける34''、36''、38''(ファイバコアの第2のサブセット)の、第2のファイバコア設計が、所与の温度感度差について共振波長差を最小限にするようにどのように選択されるべきかに関する情報を提供することができる。比較を単純化するために、図6の温度感度データおよび図9の共振波長データのうちのいくつかは、図10におけるファイバコア設計図における輪郭線としてプロットされる。図10は、第1の(基準)ファイバコア設計に対し±1%の温度感度差を有する2つの第2のファイバコア設計の輪郭線(実線)、および第1の(基準)ファイバコア設計(図10における円形マーカによって示される)に対し±2nmの共振波長差を有する2つの第2のファイバコア設計の輪郭線(破線)を示す。図10における図を用いて、ファイバコア設計の対をどのように改善することができるかを説明することができる。例として、ファイバコアの第2のサブセットのファイバコアの第2のファイバコア設計が、ファイバコアの第1のサブセットのファイバコアの第1の(基準)ファイバコア設計と比較して-1%の差の温度感度を有するように選択される場合、共振波長差(の絶対値)は、矢印60の方向に右に-1%線に沿って移動する場合に低下させることができることを見て取ることができる。代替的に、第2のファイバコア設計を、第1のファイバコア設計と比較して-1%ではなく+1%の差の温度感度を有するように選択する場合、矢印62に沿って左に+1%線に沿って移動することによって共振波長差をより下げることができる。図10から、温度感度が異なるように意図されるファイバコア設計の対(第1の(基準)ファイバコア設計、および上記の第2のファイバコア設計のうちの1つ)について、2つの設計のうちのより低いNAを有する設計が、他方の設計よりも長いLP11-カットオフ波長を有することが最良であると結論付けることができる。換言すれば、NAの差と、LP11-カットオフ波長の差との積は、好ましくは負になるべきである。更に換言すれば、第1のファイバコア設計(図10における基準マーカ)に対し最適化された第2のファイバコア設計を得るためには、基準設計から離れて図10における概ね左上または概ね右下の方向に移動するべきである。
ファイバコア設計の対を最適化するために考慮に入れるべき別の特性は群速度分散である。ここでの背景は、形状センシングコンソールのようなシステム10は、通常、レーザ走査を線形化するのに用いられる補助干渉計を含むことである。補助干渉計は、約17ps/nm/kmの群速度分散を有する標準的なシングルモードファイバ(SMF28)を用いて構築される。光ファイバセンサ12'または12''と、補助干渉計との分散の差により、系統誤差が生じる場合がある。分散の差を補償する方法が存在するが、分散の差が増大すると分散補償の精度が悪化することが予期される。したがって、マルチコア光ファイバセンサ12'または12''の第1および第2のファイバコア設計のための分散値が必要以上に17ps/nm/kmと異ならないことが有利であり好ましい。
図11は、いくつかのファイバコア設計について計算された群速度分散値の輪郭線の図を示す。輪郭線における値はps/nm/km単位で与えられる。SMF28の分散値と等しい分散値は、図に示すNAおよびカットオフ波長の範囲に到達しない可能性があるが、低いカットオフ波長および大きなNAを有するファイバコア設計の場合に差が劇的に増大することを見て取ることができる。ファイバコア設計が図の左上の部分に陥ることは回避するべきである。点線の矢印は、ファイバコア設計の適切性の増大方向を示す。
ファイバコア設計の最適化に関連し得る別の特性は、モードフィールド径(MFD)である。光コネクタ、例えば光ファイバセンサ12'または12''を光形状センシングコンソールまたはシステム10に接続するコネクタにおいて、ファイバコア間の位置合わせ不良により、送信される光パワーの損失が生じる。位置合わせ不良の原因は、例えば、コネクタにおける機械的耐性、およびマルチコア光ファイバにおけるファイバコア位置の幾何学的耐性である。所与の位置合わせ不良について、モードのサイズが大きくなると、損失が低くなる。モードのサイズは、モードフィールド径(MFD)の観点で表される。ファイバコア設計の範囲にわたるMFDの計算が図12に示される。モードフィールド径は、LP11-カットオフ波長に対する感度が比較的低く、所望のより大きなモードサイズは、より低いNA値に対応することを見て取ることができる。
光ファイバセンサ12'または12''を用いた光形状センシングの精度に関連し得る光ファイバセンサ12'または12''の更なる態様は、曲げ損失、UV感度および熱応力である。
曲げ損失に関して、ファイバセンサが曲げられると、ファイバコア内を進行する光の一部を損失する可能性がある。これらの損失は、ファイバコア設計および曲げ半径に対する感受性が非常に高い。2.5mm半径の非常に急な曲げの場合の推定曲げ損失の輪郭線が図13に示される。曲げ損失は、低LP11-カットオフ波長および低NAを有するファイバコア設計、すなわち図の左下領域におけるファイバコア設計の場合に劇的に増大する。しかしながら、2倍の半径、すなわち5mmの曲げ半径を有する曲げの場合の曲げ損失は大幅に低く、図13の極左下領域を除いて、示されるファイバコア設計半径において問題を課さない。図13において、曲げ損失はdB/turn単位で表される。点線の矢印は、曲げ損失に対するファイバコア設計の適切性の増大方向を示す。
UV感度に関して、2つのファイバコア設計のゲルマニウム濃度の比が大きすぎる場合、FBG刻印のための最適なUVレーザ強度は、2つのファイバコア設計によって過度に異なり、ファイバコア設計の一方または双方について準最適な格子強度につながる場合がある。これは、2つのファイバコア設計間のNAの実際の差に対し制限を課す。
熱応力に関して、ゲルマニウムドープファイバコアの熱膨張係数は、純粋なクラッド材料の熱膨張係数と異なることを考慮に入れるべきである。差は、ファイバコアのNAに概ね比例する。差が過度に大きいとき、描画プロセス中に凍結される熱応力により、ファイバが破損する確率が増大する場合があり、可能な最大NAに対し制限が課される。実際には、約0.3のNAが確実に達成可能であるべきである。
上記を要約するために、コモンモード信号における温度の影響および歪みの影響の十分な分類のために、光ファイバセンサ12'または12''を用いた光形状センシングの精度の最適化のための光ファイバセンサの更なる特性を考慮に入れて、ファイバコアの第1のサブセット(第1のファイバコア設計)、例えば、ファイバコア14''、16''、18''、20''または14'、16'、18'、20'、およびファイバコアの第2のサブセット(第2のファイバコア設計)、例えば、ファイバコア34'または34''、36''、38''の以下のファイバコア設計が有利であり得る。
第1のファイバコア設計の開口数と、第2のファイバコア設計の開口数との差の絶対値は、0.01〜0.03の範囲内にあることができる。
より低いNAを有するファイバコア設計は、少なくとも0.17のNAを有することができる。
ファイバコア設計の一方または双方のLP11-カットオフ波長は、1100nm〜1500nmの範囲内にあることができる。
より低いNAを有するファイバコア設計は、より高いNAを有するファイバコア設計のLP11-カットオフ波長よりも長いLP11-カットオフ波長を有することができる。
第1および第2のファイバコア設計間の共振波長差は、3nm以下とすることができる。
第1および第2のファイバコア設計間の温度感度差は、0.5%〜2%の範囲内にあることができる。
第1および第2のファイバコア設計の群速度分散は、7ps/nm/km〜20ps/nm/kmの範囲内にあることができる。
第1のファイバコア設計のファイバコアおよび/または第2のファイバコア設計のファイバコアは、ドーパントを含むことができ、ドーパントの濃度および/または材料は、第1および第2のファイバコア設計間で異なる。
ドーパントはGeO2とすることができる。光ファイバのクラッドはシリカ(SiO2)を含むことができる。
実施形態において、7ファイバコア光ファイバセンサである図3Cにおける光ファイバセンサ12''は、以下の特性を有することができる。ファイバコアの第1のサブセット、例えばファイバコア14''、16''、18''、20''は、ファイバコアの第2のサブセット、例えば、ファイバコア34''、36''、38''のNAよりも高いNAを有することができる。第1のサブセットのNAは約0.215とすることができ、第2のサブセットのNAは約0.188とすることができる。ファイバコアの第1のサブセットは、約1400nmのLP11-カットオフ波長を有することができ、ファイバコアの第2のサブセットは、約1460nmのLP11-カットオフ波長を有することができる。
(約0.215のより高いNAを有する)第1のサブセットのファイバコアは、図10における円形ドットによって表される光学特性を呈する。これは、例えば図3Aに示す「標準的な」4ファイバコアセンサの場合のものと同じファイバコア設計である。このファイバコア設計が、図3Cにおける光ファイバセンサ12''におけるファイバコア14''、16''、18''、20''の第1のサブセットについて維持される場合、ファイバコア34''、36''、38''の第2のサブセットの第2のファイバコア設計の最適値は、図10におけるNA対LP11-カットオフ波長のプロットの右下に移動することによって取得することができる。
上述した実施形態の更なる特性は以下の通りとすることができる。低NAファイバコア設計(ファイバコアの第1のサブセット)のモードフィールド径は約6.8μmであり、高NAファイバコア設計(ファイバコアの第2のサブセット)の場合、約5.9μmである。低NAファイバコア設計のための群速度分散は、約12.5ps/nm/kmであり、高NAファイバコア設計の場合、約7.9ps/nm/kmである。
低NA設計の共振波長と、高NAファイバコア設計の共振波長との差は約-1.545nmである。信号レベルは、双方のファイバコア設計について同一(1dB以内)である(信号レベルは、ファイバコアのファイバブラッググレーティングの振幅反射率によって決定される)。低NAファイバコア設計の温度感度と、高NAファイバコア設計の温度感度との差は-1.11%である。低NAファイバコア設計の歪み感度と、高NAファイバコア設計の歪み感度との差は約0.13%である。
図14および図15に関して、形状センシングにおける図3Aにおけるファイバセンサ12のような4ファイバコア光ファイバセンサに関連して図3Cにおけるファイバセンサ12''のような7ファイバコア光ファイバセンサの改善された精度を示すために行われた実験について説明する。図14は、実験のセットアップを示す。図14に示すように、光ファイバセンサFが平坦な台の上にL字型で配置され、固定された。Lは、形状再構成が開始する起動位置を示し、TはファイバFの(遠位)先端を表す。Hは、ファイバセンサFの一部に熱を加えるためのヒータを表す。一方が標準的な4コアファイバセンサであり、他方が本発明の原理による7コアファイバセンサである、2つの異なるファイバFが調べられた。
図15は、標準的な4コアファイバセンサおよび本発明の原理による7コアファイバセンサに対し実行された32個の測定(x軸)のシーケンスについて、先端Tの再構成された位置を示す。測定において用いられる7コアファイバセンサは、上述した実施形態に対応する。
10個の測定(図15における形状1〜10)の第1のサブセットにおいて、軸歪みも熱もファイバセンサFに加えられなかった。6つの測定(図15における形状11〜16)の更なるサブセットにおいて、軸歪みのみがファイバセンサFに加えられた。7つの測定(図15における形状17〜23)の次のサブセットにおいて、熱(温度変化)のみがファイバセンサFに加えられた。7つの測定(図15における形状24〜30)の更なるサブセットにおいて、温度変化および軸歪みの双方がファイバセンサFに加えられた。一連の測定は、2つの更なる測定(図15における形状31〜32)で終了する。ここでも、刺激は(軸歪みも熱も)加えられなかった。一連の測定の各々の間、軸歪みおよび/または温度は増減した。加えられた最大軸歪みは、0.5mの長さにわたって約1msであったのに対し、最大温度差は、40cmの長さにわたって約20℃であった。形状再構成の結果として生じる先端Tの見かけ位置が図15に示される。x方向は、面外挙動を与え、y方向における誤差は90°の曲げ角度の逸れに対応し、z方向は伸長に対応する。曲線70は、図3Aにおける光ファイバセンサ12のような4ファイバコア設計の場合の、すなわち、軸歪みおよび温度を互いに区別することができないときの3つの方向(x、y、z)における先端Tの位置を示す。軸歪みと温度とを分離できないことにより、ファイバセンサFの計算されたツイストの誤差が生じる。これは、90°の曲げの誤った角度、および結果として、再構成における傾いた形状をもたらす。誤差は、加えられる刺激の量に比例する。曲線72は、本発明の原理による7ファイバコアファイバセンサFについて先端Tの位置を示す。7ファイバコアファイバセンサFの完全なデータセットが考慮に入れられるとき、ツイストの正しい値を評価することができ、図15における曲線72によって示されるように、先端Tの真の位置からの先端Tの見かけ位置の僅かな逸れのみを観測することができた。
第1および第2のサブセット(第1および第2のファイバコア設計)のファイバコアの温度感度における差は、上記の実施形態において1.1%にすぎないことに留意されたい。結果として得られる形状誤差は、温度および歪みを適切に分離すると、100mm超からmm範囲に低減される。0.8mのレバーアーム(先端Tのz座標)を所与とすると、これは、計算されるツイストにおける誤差が約0.1radから数mradまで低減されることを意味する。
上記は、光形状センシングにおける高精度をもたらす光ファイバセンサの他の特性に対し平衡を取られた形状センシングシステムにおける良好な歪み-温度分離を提供する本発明の原理に従って、光ファイバセンサのためのファイバコア設計を得ることができることを示す。
本発明は、図面および上記の説明において詳細に図示および説明されたが、そのような図示および説明は、例証または例示とみなされるべきであり、制約とみなされるべきでない。本発明は開示された実施形態に限定されない。
開示された実施形態に対する他の変形は、特許請求された発明を実施する当業者によって、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を検討することにより理解および実行することができる。
請求項において、「含む」との用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、また、「a」または「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一の要素または他のユニットが、請求項に記載されるいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
10 光形状センシングシステム
12、12' 光ファイバセンサ
14、18、20、14'、18'、20'、14''、18''、20'' ファイバコア、外側コア
16、16'、16'' ファイバコア、中心コア
21 インテロゲータユニット
22 波長可変光源
24a、24b、24c、24 光チャネル
26 データ取得ユニット
30、30'、30'' クラッド
32 コーティング
34'、34''、36''、38'' ファイバコア