本開示は、一般に、冷凍システムの分野に関する。より具体的には、本開示は、入力電力又はモータ電流制御によるチラー吸入流量制限に関する。冷凍システムはチラーを備えることができ、チラーは、蒸発器と、凝縮器と、圧縮機と、これら及び他の様々な構成要素を接続する配管とを備え得る。蒸発器は冷媒を蒸発させて、配管を流れる水等のプロセス流体を正味冷却する。蒸発器が冷媒から乾燥した飽和蒸気を生成し、圧縮機が圧縮機によって発生された吸引に基づいて、この乾燥した飽和蒸気を受け取ることが望ましい場合がある。しかしながら、場合によっては、蒸発器が出力する冷媒は液滴を含み、液滴は圧縮機からの吸引に基づくより高速の蒸気流で引き上げられる。加えて、サイズ、重量、電力、及びコストの考慮事項により、冷凍システムの設計能力の最小ニーズを満たすために蒸発器のサイズを縮小することが望ましくなる場合がある。しかしながら、チラーの運転条件に起因して圧縮機全体のリフト又は差圧が低下するため、圧縮機がより高い能力及び吸引流量を提供する場合があり、これにより、蒸発器におけるガス速度が上がり、液滴が圧縮機内に持ち込まれ得る。これらの影響により、チラーの効率が低下することがあり、圧縮機の機械的構成要素が損傷することがある。
このような考慮事項に対して、本解決策は、圧縮機の運転を効果的に管理して蒸発器から圧縮機への液滴の流れを削減又は排除するために、入力電力又はモータ電流制御によるチラー吸入流量制限を実施することにより対処する。例えば、本解決策によるシステム及び方法は、圧縮機への液滴の流れの発生が予期され得る、蒸発器の設計速度制限に対応する電力又は電流のレベルを予測し、制御器を使用して、さらなる電力又は電流の増加を制限して、圧縮機への液滴の流れ(例えば、液体の流れの持ち込み)を防ぐことができる。いくつかの実施形態では、チラーは、冷媒の第1の流れを受け取り、冷媒の第1の流れに熱を伝達し、冷媒の第2の流れを出力する蒸発器を備える。チラーは、蒸発器と圧縮機との間の配管を介して冷媒の第2の流れを受け取る圧縮機を備え、圧縮機は、原動機への入力電力及び原動機への入力電流のうちの少なくとも1つに基づいて冷媒の第2の流れに対して仕事をする原動機を備える。チラーは、蒸発器における冷媒の第1の圧力を検出する第1の圧力センサを備える。チラーは、チラーの凝縮器における冷媒の第2の圧力を検出する第2の圧力センサを備える。チラーは、第1の圧力及び第2の圧力に基づいて圧縮機の運転の予測されるエネルギーレベルを判定し、予測されるエネルギーレベルを、圧縮機により受け取られた冷媒の第2の流れにおける液滴の流れに関連付けられた運転状態時エネルギーレベルと比較し、比較が変更条件を満たしていることに基づいて、原動機への入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを変更する制御器を備える。これにより、予測されるエネルギーレベルが高すぎる場合(例えば、運転状態時エネルギーレベルよりも大きい場合)、制御器は、原動機への電力又は電流を必要に応じて制限して、蒸発器の設計速度制限を超えた場合に本来発生し得る圧縮機への液滴の流れ込みのリスクを軽減又は排除することができる。
HVACシステム
図1は、建物10の斜視図を示している。建物10は、暖房、換気及び空調システム(HVAC)システム20によってサービスの提供を受ける。HVACシステム20は、チラー22、ボイラ24、屋上冷却ユニット26、及び複数の空気処理ユニット(AHU)36を含むことができる。HVACシステム20は、建物10に加熱及び/又は冷却を提供するために流体循環システムを使用する。循環流体は、冷却又は加熱が必要であるかどうかに応じて、チラー22で冷却され得る、又はボイラ24で加熱され得る。ボイラ24は、可燃性材料(例えば、天然ガス)を燃焼させることによって循環流体に熱を加えることができる。チラー22は、循環流体を、熱交換器(例えば、蒸発器)において別の流体(例えば、冷媒)との熱交換関係に置くことができる。冷媒は、蒸発プロセス中に循環流体から熱を除去し、それによって循環流体を冷却する。
チラー22又はボイラ24からの循環流体は、配管32を介してAHU36に輸送され得る。AHU36は、循環流体をAHU36を通過する空気流との熱交換関係に置くことができる。例えば、空気流は、循環流体が流れるファンコイルユニット又は他の空調ターミナルユニット内の配管に通され得る。AHU36は、空気流と循環流体との間で熱を伝達して、空気流の加熱又は冷却を提供することができる。加熱又は冷却された空気は、空気供給ダクト38を含む空気分配システムを介して建物10に送達され、空気戻りダクト40を介してAHU36に戻ることができる。HVACシステム20は、建物10の各フロアに別個のAHU36を含むことができる。他の実施形態では、単一のAHU(例えば、屋上AHU)が複数のフロア又はゾーンに対して空気を供給することができる。AHU36からの循環流体は、配管34を介してチラー22又はボイラ24を戻ることができる。
チラー22内の冷媒は、循環流体から熱を吸収すると蒸発され得る。蒸気冷媒は、冷媒の温度及び圧力が(例えば、回転インペラ、スクリュー圧縮機、スクロール圧縮機、往復圧縮機、遠心圧縮機等を使用して)増加するチラー22内の圧縮機に供給されてもよい。圧縮された冷媒はチラー22内の凝縮器に吐出されてもよい。いくつかの実施形態では、水(又は別の流体)がチラー22の凝縮器内の管を通って流れて、冷媒蒸気から熱を吸収し、それによって冷媒を凝縮させる。凝縮器内の管を通って流れる水は、チラー22から配管28を介して冷却ユニット26に圧送することができる。冷却ユニット26は、ファン駆動冷却又はファン駆動蒸発を使用して水から熱を除去することができる。冷却ユニット26からの冷却水は、配管30を介してチラー22に送り返されてもよく、サイクルが繰り返される。
図2は、例示的実施形態によるHVACシステム20の一部を示すブロック図を示している。チラー22は、冷凍回路42と制御器100とを備え得る。冷凍回路42は、蒸発器46と、圧縮機48と、凝縮器50と、膨張弁52とを備え得る。圧縮機48は、冷媒を冷凍回路42を通して循環するように構成されてもよい。圧縮機48は制御器100によって運転され得る。圧縮機48は、冷媒を高圧高温状態に圧縮し、圧縮された冷媒を、圧縮機48の出口を凝縮器50の入口に接続する圧縮機吐出ライン54に吐出することができる。圧縮機48は、スクリュー圧縮機若しくは半密閉スクリュー圧縮機であってもこれを含んでもよい、又は圧縮機48は、例えば、密閉又は開放スクリュー圧縮機である。圧縮機48はまた、スクロール圧縮機、往復圧縮機、遠心圧縮機、又はさらに別のタイプの圧縮機であってもこれを含んでもよい。
凝縮器50は、圧縮機吐出ライン54から圧縮された冷媒を受け入れることができる。凝縮器50は、冷却回路56から別個の熱交換流体(例えば、水、水−グリコール混合物、別の冷媒等)を受け入れることもできる。凝縮器50は、圧縮された冷媒から熱交換流体に熱を伝達し、それによって圧縮された冷媒を気体冷媒から液体又は混合流体状態に凝縮させるように構成されてもよい。冷却回路56は、加熱用途のために冷媒から吸収された熱を使用するように構成された熱回収回路を備えてもよい。冷却回路56は、凝縮器50と冷却ユニット26との間で熱交換流体を循環させるためのポンプ58を備えてもよい。冷却ユニット26は、熱交換流体と、冷却ユニット26を流れる別の流体(例えば、空気)との間の熱伝達を促すように構成された冷却コイル60を備えてもよい。冷却ユニット26は冷却塔を備えてもよい。熱交換流体は、冷却ユニット26内で熱を放出し、配管30を介して凝縮器50に戻ることができる。
冷凍回路42は、凝縮器50の出口を膨張装置52の入口に接続するライン62を備えることができる。膨張装置52は、冷凍回路42内の冷媒を低温低圧状態に膨張させることができる。膨張装置52は、固定位置装置であっても可変位置装置(例えば、弁)であってもよい。膨張装置52は、それを通過する冷媒の膨張を調整するために、手動又は自動で(例えば、制御器100によってバルブアクチュエータを介して)作動させることができる。膨張装置52は、膨張装置52の出口を蒸発器46の入口に接続するライン64に膨張した冷媒を出力することができる。
蒸発器46は、ライン64から膨張した冷媒を受け取ることができる。蒸発器46はまた、チルド流体回路66から別個のチルド流体(例えば、水、水グリコール混合物、別の冷媒等)を受け取ることもできる。蒸発器46は、チルド流体から冷凍回路42内の膨張した冷媒に熱を伝達し、それによってチルド流体を冷却し、冷媒を蒸発させるように構成され得る。チルド流体回路66は、チルド流体を蒸発器46とAHU36との間で循環させるためのポンプ68を備えてもよい。AHU36は、チルド流体と、AHU36を通って流れる別の流体(例えば、空気)との間の熱伝達を促すように構成された冷却コイル70を備えてもよい。チルド流体は、AHU36内の熱を吸収し、配管34を介して蒸発器46に戻ることができる。蒸発器46は、加熱された冷媒を蒸発器46の出口を圧縮機48の入口に接続する圧縮機吸入ライン72に出力することができる。
チルド流体回路66は、配管32に沿って配置されたチルド流体温度センサ74を備えることができる。チルド流体温度センサ74は、蒸発器46とAHU36との間の配管32内を流れるチルド流体の温度Tcf(例えば、出て行くチルド液体温度等)を検出するように構成され得る。冷凍回路42は、圧縮機吸入ライン72に沿って配置された吸入温度センサ76を備えることができる。吸入温度センサ76は、蒸発器46と圧縮機48との間の圧縮機吸入ライン72内を流れる冷媒の温度Tsuc(すなわち、圧縮機48に入る冷媒の温度)を検出するように構成され得る。冷凍回路42は、圧縮機吸入ライン72に沿って配置された吸入圧力センサ78を備えることができる。吸入圧力センサ78は、蒸発器46と圧縮機48との間の圧縮機吸入ライン72内を流れる冷媒の圧力Psuc(すなわち、圧縮機48に入る冷媒の圧力)を検出するように構成され得る。冷凍回路42は、圧縮機吐出ライン54に沿って配置された吐出温度センサ80を備えることができる。吐出温度センサ80は、圧縮機48と凝縮器50との間の圧縮機吐出ライン54内を流れる冷媒の温度Tdis(すなわち、圧縮機48を出る冷媒の温度)を検出するように構成され得る。冷凍回路42は、圧縮機吐出ライン54に沿って配置された吐出圧力センサ82を備えることができる。吐出圧力センサ82は、圧縮機48と凝縮器50との間の圧縮機吐出ライン54内を流れる冷媒の圧力Pdis(すなわち、圧縮機48を出る冷媒の圧力)を検出するように構成され得る。
冷凍回路42は、蒸発器46内を流れる冷媒の圧力Pevapを検出する蒸発器圧力センサ86と、凝縮器50内を流れる冷媒の圧力Pcondを検出する凝縮器圧力センサ88とを備えることができる。センサ86、88はセンサ78、82と同様であってもよく、センサ78、82は、本明細書でさらに説明するように、蒸発器46及び圧縮機48に関連付けられた圧力の測定に関連するセンサ86、88の機能を実行するためにそれぞれ使用され得る。センサ86、88は、それぞれ蒸発器46及び凝縮器50内又はこれに隣接する様々なポイントに配置されて、それぞれの圧力Pevap及びPcondを検出できる。
圧縮機48は、原動機84(例えば、モータ)を備える。原動機84は、固定速度ドライブ又は可変速ドライブとすることができる。制御器100は、原動機84に制御信号を送信して、圧縮機48の回転速度、流量、又は他の運転パラメータを制御する等のために、原動機84の運転を制御することができる。制御器100は、圧縮機48の運転に対応する電力又は電流のうちの少なくとも1つに基づいて、原動機84の運転を制御することができる。冷凍回路42の運転条件によっては、冷媒の液滴が蒸発器46から圧縮機48に流れることがある。制御器100は、蒸発器46から圧縮機48への液滴の流れを削減又は排除するために原動機84の運転を制御することができる。
入力電力又はモータ電流制御によるチラー吸入流量制限
図3は、例示的な実施形態による、制御器100を備える冷凍システム150のブロック図を示している。制御器100は、入力電力又はモータ電流制御のうちの少なくとも1つに基づいて圧縮機48の運転を制御する等のために、圧縮機48の運転を制御することができる。入力電力、入力電流、モータ電力、モータ電流等の電力及び電流は、冷凍システム150への(例えば、チラーへの)電力若しくは電流、冷凍システム150のモータ制御器への電力若しくは電流、圧縮機48のドライブ(例えば、可変速ドライブ)への電力若しくは電流、圧縮機48のモータへの電力若しくは電流、又は圧縮機48を移動させるために使用される他の電力若しくは電流を含むことができる。制御器100は、圧縮機48(例えば、原動機84)を保護するために電力及び電流の制限を使用することもできるし、建物のエネルギー使用量を制限することもでき、このような制限は、制御方法の点で極めて安定であり得る(例えば、制御器100は、フィードバック制御ループへの入力として検出された液滴に依存する必要がないため、液滴の持ち込みをそれが発生する前に防ぐことができる)。例えば、制御器100は、可変速ドライブ原動機84の運転の電力を制御することもできるし、固定速度ドライブ原動機84の運転の電流を制御することもできる。制御器100は、蒸発器46から圧縮機48への吸引流が、液滴を圧縮機48内に流入させると予期され得る圧縮機48の運転の予測されるエネルギーレベルを判定し、予測されるエネルギーレベルを圧縮機48の実際の運転状態時エネルギーレベルと比較し、比較に基づいて圧縮機48の能力を制限するように判定して、圧縮機48を液滴の流れから保護することができる。
制御器100は、通信インターフェース102と、処理回路104とを備えることができる。通信インターフェース102は、様々なシステム、装置又はネットワークとデータ通信を行うための有線又は無線インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、有線端末等)を含んでもよい。例えば、通信インターフェース102は、イーサネットベースの通信ネットワークを介してデータを送受信するためのイーサネットカード及び/又はポートを含むことができる。いくつかの実施形態では、通信インターフェース102は、無線通信ネットワークを介して通信するための無線送受信機(例えば、WiFi送受信機、Bluetooth送受信機、NFC送受信機、ZigBee等)を含む。通信インターフェース102は、ローカルエリアネットワーク(例えば、建物LAN等)及び/又はワイドエリアネットワーク(例えば、インターネット、セルラネットワーク、無線通信ネットワーク等)を介して通信するように構成されてもよく、多様な通信プロトコル(例えば、BACnet、TCP/IP、ポイント・ツー・ポイント等)を使用してもよい。
通信インターフェース102は、様々なセンサからの入力の受信を助け得る。センサは、例えば、蒸発器46の出口でチルド流体の温度を検出するように構成されたチルド流体温度センサ74、圧縮機吸入ライン72内の冷媒の圧力を検出するように構成された吸入圧力センサ78、圧縮機吐出ライン54内の冷媒の圧力を検出するように構成された吐出圧力センサ82、並びに/又はチラー22及び/若しくはHVACシステム20の他のセンサ(例えば、吸入温度センサ76、吐出温度センサ80、チルド流体温度センサ74等)を含むことができる。通信インターフェース102は、センサから直接、ローカルネットワークを介して、及び/又はリモート通信ネットワークを介して、入力を受信することができる。通信インターフェース102により、制御器100と圧縮機48との間で通信することができる。
処理回路104は、プロセッサ106とメモリ108とを備えることができる。プロセッサ106は、汎用又は特定目的プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素のグループ、又は他の適切な処理構成要素であってもよい。プロセッサ106は、メモリ108に格納されているコンピュータコード若しくは命令(例えば、ファジー論理等)、又は本明細書に記載されるプロセスの1つ若しくは複数を実行するために他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワークストレージ、リモートサーバ等)から受信されたコンピュータコード若しくは命令を実行するように構成されてもよい。
メモリ108は、データ、コンピュータコード、実行可能命令、又は他の形態のコンピュータ可読情報を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶デバイス(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、コンピュータ可読記憶媒体等)を含むことができる。メモリ108は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ記憶装置、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光学メモリ、又はソフトウェアオブジェクト及び/若しくはコンピュータ命令を記憶するための任意の他の適切なメモリを含んでもよい。メモリ108は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は本開示で記載される様々なアクティビティ及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含んでもよい。メモリ108は、処理回路104を介してプロセッサ106に通信可能に接続されてもよく、本明細書に記載されるプロセスの1つ又は複数を(例えば、プロセッサ106によって)実行するコンピュータコードを含むことができる。
メモリ108は、本明細書に記載のプロセスを完了するための様々なモジュールを含むことができる。より具体的には、メモリ108は、状態検出器110と、エネルギー予測器112と、圧縮機制御器114とを備える。特定の機能を有する様々なモジュールが図3に示されているが、制御器100及びメモリ108は、本明細書に記載の機能を完了するための任意の数のモジュールを含むことができる。例えば、複数のモジュールのアクティビティを単一のモジュールとして組み合わせることができ、追加の機能を有する追加のモジュールを含めることができる。制御器100は、限定されないが、冷凍システム150の様々な構成要素の動作を、望ましい又は期待される負荷条件に基づいて制御することを含む、本開示の範囲を超える他のプロセスをさらに制御できる。
状態検出器110は、冷凍システム150の様々なセンサからの状態データを受信することができる。例えば、状態検出器110は、蒸発器圧力センサ86及び凝縮器圧力センサ88からの圧力データを受信することができる。状態検出器110はまた、温度センサからの温度データを受信することもできる。
エネルギー予測器112は、状態検出器110からの状態データを受信し、受信した状態データに基づいて圧縮機48の運転の予測されるエネルギーレベルを判定することができる。予測されるエネルギーレベルは、圧縮機の速度、圧縮機の容量、水の流量、水温、吸引体積流量、圧縮機の性能、モータの性能、及びスタータの性能のうちの少なくとも1つに対応し得る。
エネルギー予測器112は、状態検出器110によって蒸発器圧力センサ86から受信した第1の圧力と、状態検出器110によって凝縮器圧力センサ88から受信した第2の圧力とに基づいて、予測されるエネルギーレベルを判定することができる。エネルギー予測器112は、エネルギー予測機能を実行して予測されるエネルギーレベルを計算することができる。
エネルギー予測機能は、エネルギー予測器112が第1の圧力及び第2の圧力に適用して予測されるエネルギーレベルを計算できる1つ又は複数の計算パラメータを含むことができる。1つ又は複数の計算パラメータは、冷凍システム150の運転の実験的及び/又はシミュレーション試験に基づいて判定され得る。例えば、1つ又は複数の計算パラメータは、蒸発器圧力及び凝縮器圧力の様々な値に関連付けられたエネルギーレベルを特定し、蒸発器圧力及び凝縮器圧力の値に基づいて曲線、関数、又は他の表現をエネルギーレベルに当てはめることによって判定され得る。エネルギーレベルは、冷凍システム150(又はその駆動系)を様々な運転状態時条件で運転させることによって特定され得る。エネルギーレベルは、冷凍システム150を部分負荷状態で運転させることによって特定されてもよく、これにより、エネルギーレベルを予測するために1つ又は複数の計算パラメータが使用された場合に冷凍システムの動作をより正確に表すことができる。第1の冷凍システム150について判定された計算パラメータは、他の様々な冷凍システム150に適用され得ることが理解されよう。蒸発器圧力、凝縮器圧力、吸引体積流量、及び入力電流(又は入力電力)等のフィードバック値と共に、容量、水の流量、水温等の入力を使用し、蒸発器圧力(又は飽和温度)、吸引体積流量制限、容量、及び所望の体積流量の間の依存関係に起因する反復処理を実行して、特定の冷凍システムに対して1つ又は複数の計算パラメータが判定され得る。計算パラメータが冷凍システム150の駆動系に基づいて判定される場合(例えば、判定された計算パラメータから同様の駆動系を持つ他のユニットを推定するため)、性能パラメータ(例えば、圧縮機の性能、モータの性能、スタータの性能)は、圧縮機48の境界条件変数(例えば、吸引圧力、体積流量(又は無次元流量θ)、及び吐出圧力(又は無次元水頭Ω))に基づいて判定されて、対応する入力電流(又は入力電力)を判定することができる。これにより、境界条件変数(例えば、体積流量又はθ)の値が適切な制限値になるように選択されている場合、駆動系の計算は計算パラメータを判定するために必要なデータを直接提供することができる。計算パラメータは、処理回路104、又は蒸発器圧力、凝縮器圧力、及び液滴の流れの間の関係を特定するために運転する冷凍システム150(又は駆動系)から離れた装置の処理回路を使用して判定され得ることが理解されよう。
エネルギー予測器112は、エネルギー予測器112によって格納され得る圧縮機48の運転状態時特性に基づいて、実行する特定のエネルギー予測機能を選択することができる。運転状態時特性は、圧縮機48の原動機84が可変速度運転モードで運転するか固定速度運転モードで運転するかを示し得る。運転状態時特性が、原動機84が可変速度運転モードで運転することを示している場合、エネルギー予測器112は、式1に従ってエネルギー予測機能を選択することができる。
運転状態時特性が、原動機84が固定速度運転モードで運転することを示している場合、エネルギー予測器112は、式2に従ってエネルギー予測機能を選択することができる。
このようにして、エネルギー予測器112は、計算パラメータ並びに第1の圧力及び第2の圧力を使用して(例えば、pevap=第1の圧力、pcond=第2の圧力)適切なエネルギー予測機能を実行して、予測されるエネルギーレベルを計算することができる。計算パラメータの値は、蒸発器圧力及び凝縮器圧力の関数として特定されたエネルギーレベルの値に、必要に応じて式1又は式2に示す形の曲線を当てはめることによって判定され得ることが理解されよう。計算パラメータの値を判定するために反復最適化処理を使用してもよい。式1及び式2に示されている関数は、線形化されて(例えば、それぞれの式の両側の自然対数等の対数を取ることによって)、線形最小二乗法等の直線当てはめ法の使用を可能にすることによって、計算パラメータを判定するための計算要件を減らすことができる。
圧縮機制御器114は、圧縮機48の運転を制御する(例えば、原動機84の運転を制御する)ことができる。圧縮機制御器114は、入力電力又は入力電流を必要に応じて制限することを含めて、圧縮機48への所望の入力電力又は入力電流に対応する制御信号を出力することができる。圧縮機制御器114は、圧縮機48の運転状態時特性を使用して、入力電力(例えば、圧縮機48が可変速度運転モードで運転する場合)を制御するための制御信号を生成するか、入力電流(例えば、圧縮機48が固定速度運転モードで運転する場合)を制御するための制御信号を生成するかを判定することができる。圧縮機制御器114は、最初に、所望の水の流量、水温、又は冷凍システム150の性能を表す他の変数等の入力変数に基づいて、入力電力又は入力電流を計算してもよい。圧縮機制御器114は、最初に計算された入力電力又は入力電流を制限して、圧縮機48内への液滴の流れを削減又は排除することができる。
圧縮機制御器114は、エネルギー予測器112によって判定された予測されるエネルギーレベルを運転状態時エネルギーレベルと比較する。予測されるエネルギーレベルは、蒸発器圧力及び凝縮器圧力の特定の値が与えられた場合、蒸発器46から圧縮機48内への液滴の流れが発生すると予想され得るエネルギーレベルに対応し得る。例えば、予測されるエネルギーレベルは、蒸発器46の設計速度制限を超える、又は液滴の流れが実験的及び/若しくはシミュレーション試験によって発生すると判定されたエネルギーレベルに対応し得る。運転状態時エネルギーレベルは、圧縮機48の電流エネルギーレベルとすることができる。そのため、圧縮機制御器114は、比較を使用して、蒸発器46から圧縮機48内への液滴の流れが発生すると予想され得る予測されるエネルギーレベルを超え得る条件で圧縮機48が運転しているか否かを判定することができる。
圧縮機制御器114は、実際の入力電流及び実際の入力電力のうちの少なくとも1つを測定することができる。例えば、圧縮機制御器114は、実際の入力電流を測定するために、変流器等の入力電流センサを備えることができる。圧縮機制御器114は、実際の入力電力を(例えば、実際の入力電流及び実際の入力電力に基づいて)判定するために使用され得る電圧センサ等の入力電力センサを備えることができる。圧縮機制御器114は、実際の入力電流及び実際の入力電力のうちの少なくとも1つに基づいて運転状態時エネルギーレベルを判定することができる。
圧縮機制御器114は、比較が変更条件を満たしていることに基づいて、圧縮機48への入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを変更する。例えば、予測されるエネルギーレベルが超えるべきではない値である場合、圧縮機制御器114は、運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルを超えたことに応じて入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを制限することができる(例えば、運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルより大きい場合、入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを制限する)。予測されるエネルギーレベルが制限をトリガする値に設定されている場合、圧縮機制御器114は、運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルに等しいことに応じて入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを制限することができる(例えば、予測されるエネルギーレベルが運転状態時エネルギーレベルに等しい場合、入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを制限する)。圧縮機制御器114は、圧縮機制御器114が、実際の入力電流を予測された入力電流と比較すること、及び実際の入力電力を予測された入力電力と比較することのうちの少なくとも1つにより比較を実行できるように、予測されるエネルギーレベルを予測される入力電流及び予測される入力電力のうちの少なくとも1つとして計算することができる。
運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルよりも小さい場合等、比較が変更条件を満たさない場合、圧縮機制御器114は、入力電力又は入力電流を制限しないことを判定することができ、例えば、圧縮機制御器114は第1の圧力及び第2の圧力を引き続き監視することができ、圧縮機制御器114は、(水の流量又は水温等の所望の性能が、入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを増やすための命令を示している場合)入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを増やすことを判定することができる。これにより、入力電力及び/又は入力電流の測定値が予測値を上回っている場合、圧縮機制御器114は圧縮機48の運転状態時能力を低下させることができ、入力電力及び/又は入力電流の測定値が予測値を下回っている場合、圧縮機48(ひいては冷凍システム150)の運転状態時能力は、吸引流量によって制限されず、圧縮機制御器114は、様々なプロセスを実行することにより、チルド流体温度センサ74によって(例えば、Tcfを所望のTcfの値と比較することによって)検出された蒸発器46を離れるチルド流体のTcfに基づいて入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを制御すること等によって、入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを制御することができる。圧縮機制御器114は、可変速ドライブ、圧縮機吸入流量ダンパ又は予旋回翼流量スロットル、圧縮機吐出可変形状拡散流量スロットル、又は容量制御スライドバルブ(例えば、圧縮機48がスクリュー圧縮機を含む場合)を使用して圧縮機の速度の変動のうちの1つ又は複数に基づいて圧縮機48の能力制御を実行することができる。
圧縮機制御器114は、入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを以前の値に設定することにより、入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを制限することができる。例えば、圧縮機制御器114は、電力の値及び電流の値のデータベースを維持することができる。入力電力又は入力電流を制限するとの判定に応じて、圧縮機制御器114は、圧縮機制御器114が、対応する以前の予測されるエネルギーレベルに基づいて入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを変更しないことを判定した時点での以前の値等、履歴から入力電力又は入力電流の以前の値を取得することができる。
圧縮機制御器114は、入力電力又は入力電流が制限されるべきであると比較が示したという指示と併せて、蒸発器圧力、凝縮器圧力、入力電力、入力電流、予測されるエネルギーレベル、及び他の様々な運転パラメータを含むデータベースを維持することができる。
圧縮機制御器114は、比較に基づいて液滴の流れが発生している可能性があることを示すアラートを出力することができる。例えば、圧縮機制御器114は、通信インターフェース102にアラートを送信させることができる。アラートは、圧縮機制御器114によってデータベースに維持されている運転パラメータ等の情報を含んでもよい。アラートは、液滴の流れに関連付けられた予測されるエネルギーレベルをもたらす水の流量又は水温等、変更条件が満たされていることに対応する性能変数の値の指示を含んでもよい。
図4は、例示的な実施形態による、冷凍システム(例えば、チラー)を運転させる方法400を示している。方法400は、図1のHVACシステム、並びに/又は図2及び図3の冷凍システム150を使用して実行され得る。
405において、第1の圧力が蒸発器圧力センサから制御器によって受信される。第1の圧力は、蒸発器を流れる冷媒の圧力を表すことができる。蒸発器は、冷媒の第1の流れを受け取り、冷媒の第1の流れに熱を伝達し、冷媒の第2の流れを出力することができる。
410において、第2の圧力が凝縮器圧力センサから制御器によって受信される。第2の圧力は、凝縮器を流れる冷媒の圧力を表すことができる。
415において、制御器は圧縮機の運転の予測されるエネルギーレベルを判定する。圧縮機は、蒸発器と圧縮機との間の配管を介して冷媒の第2の流れを受け取ることができる。予測されるエネルギーレベルは、第1の圧力及び第2の圧力を入力として使用し、入力を所定のパラメータを使用して評価するエネルギー予測機能を使用して判定され得る。圧縮機は、原動機への入力電力及び原動機への入力電流のうちの少なくとも1つに基づいて冷媒の第2の流れに対して仕事をする原動機を備えることができる。原動機は、制御器が入力電力を使用して駆動する可変速ドライブを含むことができる。原動機は、制御器が入力電流を使用して駆動する固定速度ドライブを含むことができる。
420において、制御器は圧縮機の運転の予測されるエネルギーレベルを運転状態時エネルギーレベルと比較する。予測されるエネルギーレベルは、圧縮機により受け取られた冷媒の第2の流れにおける液滴の流れに関連付けることができる。予測されるエネルギーレベルは蒸発器の設計速度制限に対応することができる。圧縮機制御器は、実際の入力電流及び実際の入力電力のうちの少なくとも1つを使用して運転状態時エネルギーレベルを判定することができる。
425において、制御器は比較が変更条件を満たすか否かを判定する。変更条件は、運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルより大きいこと、又は運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベル以上であることに対応し得る。
430において、制御器は、比較が変更条件を満たしていることに基づいて、原動機への入力電力又は入力電流のうちの少なくとも1つを制限する。制御器は、入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを変更して、入力電力及び入力電流の少なくとも1つを、蒸発器から圧縮機内への液滴の流れを削減又は排除できる値に制限することができる。制御器は、比較が変更条件を満たしていることに基づいて、原動機への入力電力及び入力電流のうちの少なくとも1つを変更したことに応じてアラートを出力することができる。運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルよりも小さい場合等、比較が変更条件を満たさない場合、制御器は蒸発器圧力センサ及び凝縮器圧力センサから受信された圧力を引き続き監視することができる。運転状態時エネルギーレベルが予測されるエネルギーレベルよりも小さい場合等、比較が変更条件を満たさない場合、制御器は、チラーの所望の性能(例えば、所望の水の流量又は水温)が入力電力又は入力電流を増やす命令を示している場合、入力電力又は入力電流を必要に応じて増やし続けることができる。
「又は(or)」への言及は、「又は」を使用して記載された用語が、説明された用語の単体、複数、及び全部のいずれかを示すことができるように、包括的であると解釈され得る。連なる用語のリストのうちの少なくとも1つへの言及は、記載された用語の単体、複数、及び全部のいずれかを示す論理和として解釈され得る。例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」への言及は、Aのみ、Bのみ、及びAとBとの両方を含むことができる。「含む(comprising)」又は他のオープンな用語と組み合わせて使用されるそのような言及は、追加の項目を含むことができる。
様々な例示的な実施形態に示されているシステム及び方法の構築及び構成は、例示的なものにすぎない。例示的な実施形態のみが本開示に詳述されているが、多くの修正形態(例えば、種々の要素の大きさ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータ値、取り付け配置、材料の使用量、色、向き等における変更)が可能である。例えば、要素の位置を逆にするか又は別様に変更することができ、且つ別個の要素の性質若しくは数又は位置を改変又は変更することができる。したがって、そのような修正形態は、本開示の範囲内に含まれるように意図されている。任意の工程又は方法ステップの順番又は順序は、代替的な実施形態に従って変更又は再順序付けすることができる。本開示の範囲から逸脱することなく、他の置換形態、修正形態、変更形態及び省略形態が例示的な実施形態の設計、運転状態時条件及び配置においてなされ得る。