JP2021521582A - Tof質量分析器の抽出領域内でイオンパケットを動的に濃縮する - Google Patents

Tof質量分析器の抽出領域内でイオンパケットを動的に濃縮する Download PDF

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Abstract

システムおよび方法が、標的化入手においてイオンを濃縮することと濃縮しないこととの間でイオンガイドおよびTOF質量分析器を動的に切り替えるために開示される。生成イオンが、イオンガイドからTOF質量分析器の中に放出され、既知の生成イオンの強度が、2つ以上の時間ステップにおいて測定される。イオンガイドは、最初に、同時にTOF質量分析器内の異なるm/z値を伴う生成イオンを濃縮する、順次またはゼノンパルシングモードを使用して、生成イオンを放出する。生成イオンの強度が、増加しており、閾値強度を上回る場合、イオンガイドは、同時にTOF質量分析器内の異なるm/z値を伴うイオンを濃縮しない、連続または通常パルシングモードに切り替わる。同様に、強度が、連続モードで閾値を下回って減少する場合、イオンガイドは、順次モードに戻って切り替わる。

Description

(関連出願)
本願は、その内容が参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2018年4月10日に出願された米国仮特許出願第62/655,527号の利益を主張する。
(分野)
本願は、概して、質量分析に関する。特に、本願は、質量分析計による分析のためにイオンパケットを濃縮することに関する。
(背景)
一般に、タンデム質量分析またはMS/MSは、化合物を分析するための周知の技法である。タンデム質量分析は、サンプルからの1つ以上の化合物のイオン化、1つ以上の化合物の1つ以上の前駆イオンの選択、断片または生成イオンへの1つ以上の前駆イオンの断片化、および生成イオンの質量分析を伴う。
タンデム質量分析は、定性的および定量的情報の両方を提供することができる。生成イオンスペクトルは、着目分子を識別するために使用されることができる。1つ以上の生成イオンの強度が、サンプルに存在する化合物の量を定量化するために使用されることができる。
(LC−MSおよびLC−MS/MS背景)
質量分析(MS)(または質量分析/質量分析(MS/MS))と液体クロマトグラフィ(LC)の組み合わせは、混合物内の化合物の識別および定量化のための重要な分析ツールである。概して、液体クロマトグラフィでは、分析下の流体サンプルが、(典型的には、小型固体粒子、例えば、シリカの形態の)固体吸着材料で充填されるカラムを通して通過される。固体吸着材料(典型的には、固定相と称される)との混合物の成分のわずかに異なる相互作用に起因して、異なる成分が、充塞カラムを通して異なる通過(溶出)時間を有し、種々の成分の分離をもたらし得る。LC−MSでは、LCカラムから退出する流出物が、溶出または残留時間の関数として、検出されるイオン強度(検出されたイオンの数、合計イオン強度、または1つ以上の特定の被分析物の測定値)を描写し得る、抽出されるイオンクロマトグラム(XIC)またはLCピークを発生させるように、質量分光分析を連続的に受け得る。
ある場合には、LC流出物は、XIC内のピークに対応する生成イオンの識別のために、タンデム質量分析(または質量分析/質量分析MS/MS)を受け得る。例えば、前駆イオンが、質量分析の後続の段階を受けるように、それらの質量/電荷比に基づいて選択されることができる。選択された前駆イオンは、次いで、(例えば、衝突誘起解離を介して)断片化されることができ、断片化されたイオン(生成イオン)は、質量分析の後続の段階を介して分析されることができる。
(タンデム質量分析入手方法)
多数の異なるタイプの実験入手方法またはワークフローが、タンデム質量分析計を使用して実施されることができる。これらのワークフローの3つの広義のカテゴリは、標的化入手、情報依存性入手(IDA)またはデータ依存性入手(DDA)、およびデータ非依存性入手(DIA)である。
標的化入手方法では、生成イオンへの前駆イオンの1つ以上の遷移が、着目化合物に関して事前定義または把握される。サンプルが、タンデム質量分析計の中に導入されるにつれて、1つ以上の遷移は、複数の時間周期またはサイクルのうちの各時間周期またはサイクルの間に調査される。換言すると、質量分析計は、各遷移の前駆イオンを選択および断片化し、遷移の生成イオンに関して標的化質量分析を実施する。結果として、強度(生成イオン強度)が、遷移毎に生成される。標的化入手方法は、限定ではないが、多重反応監視(MRM)および選択反応監視(SRM)を含む。
IDA方法では、ユーザが、サンプルがタンデム質量分析計の中に導入されている間に、生成イオンの非標的化質量分析を実施するための基準を規定することができる。例えば、IDA方法では、前駆イオンまたは質量分析(MS)調査走査が、前駆イオンピークリストを発生させるように実施される。ユーザは、ピークリスト上の前駆イオンのサブセットに関してピークリストをフィルタ処理するための基準を選択することができる。MS/MSが、次いで、前駆イオンのサブセットのうちの各前駆イオンに実施される。生成イオンスペクトルが、前駆イオン毎に生成される。MS/MSは、サンプルがタンデム質量分析計の中に導入されるにつれて、前駆イオンのサブセットのうちの前駆イオンに繰り返し実施されることができる。
しかしながら、プロテオミクスおよび多くの他のサンプルタイプでは、化合物の複雑性およびダイナミックレンジは、非常に大きい。これは、従来的な標的化およびIDA方法に課題をもたらし、ある範囲の被分析物の識別および定量化の両方を行うためにサンプルを深く調査するように、超高速MS/MS入手を要求する。
結果として、タンデム質量分析の第3の広義のカテゴリである、DIA方法が、開発された。これらのDIA方法は、複雑なサンプルからのデータ収集の再現性および包括性を増加させるために使用されてきた。DIA方法はまた、非特異的断片化方法と呼ばれることもできる。従来的なDIA方法では、タンデム質量分析計のアクションは、前の前駆または生成イオン走査で入手されたデータに基づいて、MS/MS走査の中でも変動されない。代わりに、前駆イオン質量範囲が、選択される。前駆イオン質量選択窓が、次いで、前駆イオン質量範囲を横断して段階化される。前駆イオン質量選択窓内の全ての前駆イオンが、断片化され、前駆イオン質量選択窓内の前駆イオンの全ての生成イオンの全てが、質量分析される。
(イオンパケットを濃縮するためのイオンガイド)
2008年11月25日に発行され、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,456,388号(以降では「第‘388号特許」)は、イオンパケットを濃縮するためのイオンガイドを説明する。第‘388号特許は、例えば、透過損失を事実上伴わずに、広いm/z範囲にわたってイオンの分析を可能にする、装置および方法を提供する。イオンガイドからのイオンの放出は、(m/zにかかわらず)全てのイオンが、所望のシーケンスで、または所望の時間に、ほぼ同一のエネルギーを用いて、例えば、TOF質量分析器の抽出領域または加速器等の空間内の指定された点に到着させられ得る、条件を作成することによる影響を受ける。そのような方法で束ねられるイオンは、次いで、例えば、TOF抽出パルスを使用して抽出されることによって、群として操作され、TOF検出器上の同一のスポットに到着するために、所望の経路に沿って推進されることができる。
同一のエネルギーを用いて、より重いおよびより軽いイオンを、実質的に同時に質量分析器の抽出領域等の空間内の点で衝合させるために、より重いイオンが、より軽いイオンの前にイオンガイドから放出されることができる。所与の電荷のより重いイオンは、電磁場内で同一の電荷のより軽いイオンよりも遅く進行し、したがって、所望のシーケンスで場内に解放された場合のより軽いイオンと同時に、またはそれに対して選択された間隔で、抽出領域または他の点に到着させられることができる。第‘388号特許は、所望のシーケンスでイオンガイドからイオンの質量相関放出を提供する。
図2は、質量分析計の例示的概略図200である。図2の質量分析計は、例えば、第‘388号特許に説明される。装置30は、イオン源20と、イオンガイド24と、TOF質量分析器28とを含む、質量分析計を備える。イオン源20は、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)、イオン衝撃、静電場の印加(例えば、電場イオン化および電場脱離)、化学イオン化等を通してイオンを提供する源を含む、本明細書に説明される目的に適合する任意のタイプの源を含むことができる。
イオン源20からのイオンが、イオン操作領域22の中に通過されてもよく、そこで、イオンは、イオンビーム集束、イオン選択、イオン放出、イオン断片化、イオン捕獲、または任意の他の概して公知の形態のイオン分析、イオン化学反応、イオン捕獲、もしくはイオン透過を受け得る。そのように操作されるイオンは、操作領域22から退出し、24によって示されるイオンガイドの中に通過することができる。
イオンガイド24は、軸174を画定し、入口38と、出口42と、出口開口46とを備える。イオンガイド24は、ガイド軸に対して法線である方向にイオンの移動を制止するための構成要素と、ガイド軸と平行なイオンの移動を制御するための構成要素とを備える、イオン制御場を発生させる、または別様に提供するように適合される。
イオンガイド24は、複数の区分もしくは部分および/または補助電極を含んでもよい。下記により詳細に解説されるであろうように、分光計30のイオンガイド24は、出口42から異なる質量および/またはm/z比のイオンを放出する一方で、イオンが、実質的に同時に、または所望のシーケンスで、押板54に隣接するTOF質量分析器28の抽出領域56内等の実質的にイオンガイドの軸に沿った所望の点に、もしくはそれに所望の近接性で到着するように、イオンガイド24内で、かつそれを越えて、軸174に沿って半径方向閉じ込めを維持するように動作可能である。
イオンガイド24から放出されるイオンが、例えば、静電レンズ26(ガイド24の一部と見なされ得る)および/または質量分析器28としてのさらなる装置によって、集束または別様に処理されることができる。分光計30はまた、例えば、質量分析器28の抽出機構の一部であり得る、押板54および加速カラム55等のデバイスを含むこともできる。
図3は、イオンガイドの蓄積電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、および質量分析器の例示的概略図300である。図3の蓄積電位プロファイル58は、イオンガイド24の軸174に沿って提供される、電圧または圧力等の相対電位値を表す。イオンガイド24の部分34aにおける相対電位が、90に示され、部分34bおよび34cにおいて提供される電位が、91に示され、イオンガイド24の部分34cおよび開口46の出口42を横断して提供される電位勾配が、92に示される。示されていないが、RF電圧が、半径方向にイオンの閉じ込めを提供するためにイオンガイド24に印加される。したがって、ガイド軸に対して法線である方向にイオンの移動を制止するための構成要素と、ガイド軸と平行なイオンの移動を制御するための構成要素とを備える、イオン制御場が、イオンガイド24内に提供される。
イオンガイド24内の図3に示されるもの等の蓄積電位58の提供は、大型イオン62(すなわち、大きいm/z値を有するイオン)および小型イオン66(すなわち、小さいm/z値を有するイオン)が、軸174と平行な方向にイオンガイド24を横断し、91における低電位によって提供される電極34bおよび34cに近接する優先的領域の中に整定することを可能にするが、開口46上により高い電位を提供することによって、それらがイオンガイド24から退出しないように防止する。当業者に熟知されるであろうように、いくつかの状況では、上記に述べられるDC電圧に加えて、DCオフセット電圧をイオンガイド24に印加することが有益であり得る。その事例では、全体的な電位プロファイル58が、対応するDCオフセット電圧によって上昇されるであろう。
図4は、イオンガイドの放出前電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、および質量分析器の例示的概略図400である。図4の放出前電位プロファイル70は、イオンガイド24の軸174に沿って提供される、電圧または圧力等の相対電位値を表す。図4に示される実施例では、放出前プロファイル70は、図3の蓄積電位プロファイル58に関して説明されるものに類似するが、イオンガイド24の部分34bにおける電位96によって置換される電位91および電位勾配92の対応する変化を伴う。したがって、ガイド軸に対して法線である方向にイオンの移動を制止するための構成要素と、ガイド軸と平行なイオンの移動を制御するための構成要素とを備える、修正されたイオン制御場が、イオンガイド24内に提供される。
図4に示されるもの等の放出前プロファイル70の提供は、例えば、比較的により大きいm/zのイオン62および比較的により小さいm/zのイオン66を、軸174と平行な方向にイオンガイド24内で移動させ、ガイドの部分34bと開口46との間のイオンガイド24の領域内で整定させるために、使用されることができる。96における電位はまた、付加的イオンが部分34bを越えた点までイオンガイド24に進入しないように防止することもできる。
図5は、イオンガイドの放出電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、および質量分析器の例示的概略図500である。図5の放出電位プロファイル74は、例えば、イオンガイド24に別様に印加される電圧に重ね合わせられて、イオンガイド24の部分34c内に、および/または出口開口46において、交流(「AC」)電圧を印加することによって、作成されることができる。例えば、適切なRFおよびDC電位が、電極の種々のセットに印加される好適なDCオフセット電圧とともに、イオンガイド24内の反対の電極対に印加されてもよい。AC電圧が、例えば、RF電圧にわたって重ね合わせられることができる一方で、部分34cにおける電位と出口開口46における電位との間の差異が、低減される。
ガイド24の軸に沿った放出電位プロファイル74は、例えば、図5の参照78における鎖線によって表されるもの等の擬ポテンシャルを使用することによって、提供されることができる。
例えば、図5に表されるサイクル74等の放出サイクルの開始時に、擬ポテンシャル78の規模または深度は、より大きいm/z比のイオン62が、最初に出口42から退出するであろうように、選定されてもよい。より大きいm/zのイオン62が、解放されるにつれて、AC電圧の振幅は、擬ポテンシャル78の深度を十分に変化させ、所望の遅延後に、より小さいm/zのイオン66がイオンガイド24から退出することを可能にするように、徐々に低減されてもよい。遅延は、AC振幅の変化率を制御することによって判定されてもよく、例えば、所望の遅延を達成するようにイオン62および66の質量および/またはm/z比に基づいて選定されてもよい。図5に示される状況では、より小さいm/zのイオン66は、より大きいm/zのイオン62よりも速く進行し、勾配78が、それに応じて設定される。勾配78は、時間ではなく空間における、あるパラメータの変動を説明するために使用される。
イオンが、当技術分野で概して公知である方法を使用する検出および質量分析のために、例えば、TOF分析器内の抽出領域として、ガイド軸174上に、または実質的にそれに沿って配置される空間内の所望の点56に提供される。これは、イオン62および66の異なる進行率が、イオン62および66を、実質的に同時に押板54の前の直交抽出領域56に到達させた、図5の右側部分に表される。本時点で、抽出パルス82が、加速カラム55を通してイオン62、66をパルス化するように押板54に印加されてもよい。
(IDAにおけるイオンパケットのオンデマンド濃縮)
Journal of the American Society of Mass Spectrometry(2009年7月、vol.20、no.7)に公開された、Alexander V.LobodaおよびIgor V.Chernushevichによる、「A Novel Ion Trap That Enables High Duty Cycle and Wide m/z Range on an Orthogonal Injection TOF Mass Spectrometer」と題された論文(以降では「Loboda論文」)は、ゼノンパルシングとして第‘388号特許に説明されるイオンパケットを濃縮する方法を指す。Loboda論文は、ゼノンパルシングを実施するときに低減された線形ダイナミックレンジに起因して、印加方略が、依存性MS/MS実装のみで使用するためにゼノンパルシング方法を限定することを伴い得ることを示唆する。ゼノンパルシングをMS/MS実装に限定するために提供される論拠は、依存性MS/MS実験における強度が、一般に、TOF MSの場合よりも数桁低く、故に、典型的には、ゼノンパルシングに起因し得る7の平均利得が、より有益であることであった。さらに、器具が、ミリ秒時間尺度において通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えることが可能であるため、ゼノンパルシングは、依存性MS/MS実験が、先行調査単一MS実験における低強度前駆体の検出によってトリガされていたときに、情報依存性入手(IDA)において「オンデマンドで」実装され得る。
結果として、Loboda論文は、ある閾値を下回る強度を伴う前駆イオンに関する単一MS調査走査を監視することを示唆した。閾値を下回る強度を伴うそれらの前駆イオンに関して、ゼノンパルシングが、各前駆イオンの1つ以上の依存性MS/MS実験のためにオンにされるであろう。
図6は、Loboda論文のオンデマンドIDA方法のMS(前駆イオン)スペクトルおよびMS/MS(生成イオンスペクトル)を示す、例示的略図600である。IDA方法では、単一MS調査走査が、実施され、前駆イオンスペクトル601を生成する。前駆イオンスペクトル601から、IDA前駆イオンピークリストが、取得される。この場合、ピークリストは、前駆イオン610、620、および630のみを含む。
Loboda論文は、「単一MS実験において低強度前駆イオンによってトリガされる、それらのMS/MS実験で」オンデマンドゼノンパルシングを実施することを説明する。図6では、例えば、前駆イオン610は、強度閾値640を下回り、前駆イオン620および630は、強度閾値640を上回る。結果として、前駆イオン610は、単一MS実験の前駆イオンスペクトル601内の低強度前駆イオンである。
その結果として、ゼノンパルシングが、前駆イオン610のMS/MS実験で実施される。前駆イオン610のMS/MS実験は、生成イオンスペクトル611によって図6に表される。
しかしながら、前駆イオンスペクトル601では、前駆イオン620および630が、強度閾値640を上回るため、ゼノンパルシングは、前駆イオン620および630のMS/MS実験では実施されない。前駆イオン620および630のMS/MS実験は、それぞれ、生成イオンスペクトル621および631によって図6に表される。
図6に示されるように、Loboda論文のオンデマンドゼノンパルシングは、単一MS前駆イオン実験における前駆イオンの強度に基づいて、依存性MS/MS生成イオン実験でゼノンパルシングを選択的に使用することを伴う。
Loboda論文内のゼノンパルシングの実装の一側面は、オンデマンドゼノンパルシングをIDA入手実験に効果的に限定する。本側面は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間の切替である。より具体的には、Loboda論文は、2つのモードの間で切り替えるときに、TOF反復またはパルシング率が変更されることを説明する。これは、通常モードに関しては13〜18kHzのTOF反復率、ゼノンパルシングモードに関しては1〜1.25kHzの率を列挙する。
本TOF反復率の変化は、瞬間的ではない。TOF加速器の電子機器は、TOF抽出パルスタイミングを、通常モードにおけるより高いパルスタイミング周波数から、ゼノンパルシングモードで使用される、より低いパルスタイミング率に変更するときに、整定するための時間を必要とする。結果として、一時停止が、反復率を変更した後にTOF抽出パルスの同一のパルス振幅を維持するために、通常モードとゼノンパルシングモードとの間に整定時間を導入するために必要とされ得る。Loboda論文は、本切替時間または整定時間を、数十または数百ミリ秒であった可能性が高いミリ秒範囲内であり、実装で使用される電力供給部およびTOFパルサ回路に依存すると説明する。結果として、Loboda論文の実装は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間の切替の遅延を要求する。
図7は、通常パルシングモードおよびゼノンパルシングモードのためのTOF質量分析器の2つの異なるTOF抽出パルス、ならびに2つのモードの間で切り替えるために必要とされる整定時間を示す、例示的タイミング図700である。領域710では、通常抽出パルシングが、10kHzのTOF反復率にわたって0.1ミリ秒毎に生じている。本反復率は、例証目的のために簡略化および使用され、通常のTOF反復率は、典型的には、上記に説明されるように、より高いことに留意されたい。
1ミリ秒で、TOF反復率は、ゼノンパルシングモードのために1kHzに切り替えられる。しかしながら、TOF加速器の電子機器は、整定するために時間を必要とする。電子機器が、TOF反復率の間で切り替えた後に整定するための時間は、有意であり得、後続の実験のための可用性に影響を及ぼし得る。
図7では、領域720は、10ミリ秒の整定時間を表す。再度、整定時間のための10ミリ秒周期が、例証目的のためのみに使用され、実際の整定時間は、典型的には、上記に説明されるように、より長くあり得る。
整定時間後、TOF質量分析器は、約1kHzのゼノンパルシングモードのためのTOF反復率においてサンプルを分析し続ける。本反復率は、1ミリ秒毎に1つのパルスに変換され、これは、領域730に示される。
図7は、通常およびゼノンパルシング周期と比較すると、Loboda論文に説明されるような通常モードとゼノンパルシングモードとの間の整定時間または切替時間が有意であることを図示する。有意であるが、Loboda論文は、本遅延がIDA入手方法のために容認可能であることを見出した。これは、IDA入手が、典型的には、特定のクロマトグラフピークの精密な形状または面積が必要ではない、識別に使用されるためである。換言すると、IDA識別方法では、定量化のための標的化方法等の他の方法で必要であり得るように、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で迅速に切り替えることは、必ずしも必要ではない。
その結果として、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えるときに遅延を要求することなく、ゼノンパルシングモードの柔軟な採用を可能にする、タンデム質量分析計を動作させるシステムおよび方法の必要性が存在する。さらに、IDA以外の入手方法で通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えることを可能にする、タンデム質量分析計を動作させるシステムおよび方法の必要性が存在する。
米国特許第7,456,388号公報
(要約)
本明細書の教示は、実験のダイナミックレンジを増加させるために、質量分析計を制御し、標的化入手実験内で質量分析器の抽出領域内のイオンパケットを動的に濃縮することに関する。より具体的には、システムおよび方法が、定量的ピークのダイナミックレンジを増加させ、飽和を防止するために、定量的標的化入手実験内で飛行時間(TOF)質量分析器の加速器において変動する質量対電荷比(m/z)値のイオンパケットを濃縮する、イオンガイドを動的にオンおよびオフにするように提供される。質量分析器の抽出領域内でイオンパケットを濃縮することは、質量正確度または分解能の損失を伴わずに、器具の感度を改良することができる。しかしながら、イオンパケットの本濃縮はまた、質量分析計の検出サブシステムの線形ダイナミックレンジを有意に低減させる。定量的標的化入手内でイオンパケットの本濃縮を賢明にオンおよびオフにすることによって、検出サブシステムの線形ダイナミックレンジは、効果的に増加されることができる。
本明細書のシステムおよび方法は、プロセッサ、コントローラ、または図1のコンピュータシステム等のコンピュータシステムと併せて実施されることができる。
システム、方法、およびコンピュータプログラム製品が、タンデム質量分析計のイオンガイドおよびTOF質量分析器を動作させ、標的化入手における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器の中への注入の前に異なる質量対電荷比(m/z)値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないために、開示される。より具体的には、3つ全ての実施形態は、標的化入手において、順次またはゼノンパルシングモードと連続または通常パルシングモードとの間でイオンガイドおよびTOF質量分析器を動的に切り替えることを対象とする。
いくつかの実施形態は、以下のステップを含む。
既知の化合物を含有するサンプルが、イオン源デバイスを使用して、連続的に受容およびイオン化され、イオンビームを生成する。
標的化入手方法においてイオンビームから選択される既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンが、ガイド軸を画定するイオンガイドを使用して受容される。
ガイド軸に沿ってイオンガイドから抽出領域の中に放出される生成イオンが、受容され、既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、イオンガイドの下流のTOF質量分析器を使用して、標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて測定される。
イオンガイドは、生成イオンのm/z値に従って、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの順次放出が存在する、順次またはゼノンパルシングモードを使用して、既知の前駆イオンの生成イオンを放出し、実質的に同時に抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように命令され、TOF質量分析器は、プロセッサを使用して、2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように命令される。
少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、イオンガイドは、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続または通常パルシングモードに切り替えるように命令され、TOF質量分析器は、プロセッサを使用して、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するように命令される。
いくつかの実施形態では、質量分析計が、提供される。質量分析計は、イオンガイドと、質量分析器とを含む。イオンガイドは、ガイド軸を画定し、ガイド軸に対して法線であるイオンの移動を制止するための構成要素を備え、ガイド軸と平行なイオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合される。場は、ガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、プロファイルは、イオンガイドからのイオンの連続解放(通常モード)、またはイオンの質量対電荷比に従って、ガイド軸と平行な経路に沿ってガイドからのイオンの順次解放(ゼノンパルシングモード)のいずれかを選択的に提供するように適合され、同一のイオンエネルギーが、イオンの質量対電荷比に関係なく、イオンガイドを通した実質的にガイド軸に沿って配置される抽出領域までのそれらの進行にわたってイオンに印加され、イオンは、実質的に同時に抽出領域内で実質的に全ての解放質量対電荷比のイオンの到着を提供するように、イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放され、質量分析器の飛行時間(TOF)抽出パルスと一致するように同期化され、TOF抽出パルスは、連続解放および順次解放の両方の間に同一のパルスタイミングを有する。
本出願者の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
当業者は、下記に説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、いかようにも本教示の範囲を限定することを意図していない。
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステムを図示するブロック図である。
図2は、質量分析計の例示的概略図である。
図3は、イオンガイドの蓄積電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、およびTOF質量分析器の例示的概略図である。
図4は、イオンガイドの放出前電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、およびTOF質量分析器の例示的概略図である。
図5は、イオンガイドの放出電位プロファイル付きの、第‘388号特許のイオンガイド、静電レンズ、およびTOF質量分析器の例示的概略図である。
図6は、Loboda論文のオンデマンドIDA方法のMS(前駆イオン)スペクトルおよびMS/MS(生成イオンスペクトル)を示す、例示的略図である。
図7は、通常パルシングモードおよびゼノンパルシングモードのためのTOF質量分析器の2つの異なるTOF抽出パルス、ならびに2つのモードの間で切り替えるために必要とされる整定時間を示す、例示的タイミング図である。
図8は、種々の実施形態による、抽出されるイオンクロマトグラム(XIC)が、通常パルシングモードでタンデム質量分析計を使用して、多重反応監視(MRM)等の定量的標的化入手方法で取得される様子を示す、例示的略図である。
図9は、種々の実施形態による、XICが、ゼノンパルシングモードでタンデム質量分析計を使用して、MRM等の定量的標的化入手方法で取得されるときに、飽和が生じ得る様子を示す、例示的略図である。
図10は、種々の実施形態による、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の動的切替が、感度の増加を伴って、飽和を伴わずに、定量的標的化入手方法でXICを取得するために使用される様子を示す、例示的略図である。
図11は、種々の実施形態による、TOF質量分析器の同一のTOF抽出パルスが、ゼノンパルシングモードおよび通常パルシングモードに使用され得、整定時間が、2つのモードの間で切り替えるために必要とされないことを示す、例示的タイミング図である。
図12は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計のイオンガイドおよびTOF質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器の中への注入の前に異なるm/z値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法を示す、フローチャートである。
図13は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計のイオンガイドおよびTOF質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器の中への注入の前に異なるm/z値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムの概略図である。
本教示の1つ以上の実施形態が、詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、それらの用途において、以下の詳細な説明に記載される、または図面に図示される、構造の詳細、構成要素の配列、およびステップの配列に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現法および用語は、説明の目的のためであり、限定的と見なされるべきではないことを理解されたい。
(様々な実施形態の説明)
(コンピュータ実装システム)
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためのバス102と結合されるプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得る、メモリ106も含む。メモリ106はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令の実行の間にテンポラリ変数または他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するためのバス102に結合される読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110が、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合されてもよい。英数字または他のキーを含む、入力デバイス114が、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するためにバス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するため、かつディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。本入力デバイスは、典型的には、本デバイスが平面内の位置を規定することを可能にする、2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において2つの自由度を有する。
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装と一致して、結果が、プロセッサ104がメモリ106内に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体からメモリ106に読み込まれてもよい。メモリ106内に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、配線回路が、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用されてもよい。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路とソフトウェアのいずれの具体的組み合わせにも限定されない。
本明細書で使用されるような用語「コンピュータ可読媒体」は、実行のために命令をプロセッサ104に提供することに関与する、任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および前駆イオン質量選択媒体を含む、多くの形態をとってもよい。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。前駆イオン質量選択媒体は、バス102を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
コンピュータ可読媒体の一般的形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD−ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、Blu−ray(登録商標)ディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH(登録商標)−EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、もしくはコンピュータが読み取り得る任意の他の有形媒体を含む。
コンピュータ可読媒体の種々の形態が、実行のために1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104に搬送することに関与し得る。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送されてもよい。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリの中にロードし、モデムを使用して、電話線を経由して命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデルが、電話線上でデータを受信し、赤外線伝送機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合される赤外線検出器が、赤外線信号内で搬送されるデータを受信し、バス102上にデータを設置することができる。バス102は、メモリ106にデータを搬送し、そこから、プロセッサ104が、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信される命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前または後のいずれかに記憶デバイス110上に記憶されてもよい。
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令が、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであり得る。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するための当技術分野内で公知であるようなコンパクトディスク読取専用メモリ(CD−ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
本教示の種々の実装の以下の説明が、例証および説明の目的のために提示された。これは、包括的ではなく、本教示を開示される精密な形態に限定しない。修正および変形例が、上記の教示を踏まえて可能である、または本教示の実践から入手され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独で実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向プログラミングシステムの両方を用いて実装され得る。
(ゼノンパルシングの動的切替)
上記に説明されるように、第‘388号特許は、透過損失を事実上伴わずに、広いm/z範囲にわたってイオンの分析を可能にする、装置および方法を提供する。具体的には、第‘388号特許のイオンガイドが、TOF質量分析器の前にイオンを捕獲し、全てのイオンが、それらのm/zに関係なく、同時にTOF質量分析器の抽出領域に到着し、濃縮されるように、それらのm/zに従ってそれらを順次に放出する。
Loboda論文は、イオンガイドからのイオンの順次放出をゼノンパルシングと称する。Loboda論文はまた、IDA入手実験においてオンデマンドモードでゼノンパルシングを実施することも示唆する。
Loboda論文で示唆されるオンデマンドモードでは、低強度前駆イオンが、IDA入手の単一MS実験で見出される場合には、ゼノンパルシングが、その前駆イオンの生成イオンMS/MS実験に印加される。Loboda論文内のゼノンパルシングの実装は、ゼノンパルシングのオンデマンド使用をIDA入手実験に効果的に限定する。これは、Loboda論文内のゼノンパルシングの実装が、通常パルシングとゼノンパルシングとの間で切り替えるときに、TOF反復率の変化を要求し、これが、ひいては、ミリ秒範囲内で通常パルシングとゼノンパルシングとの間の切替時間または整定時間遅延を引き起こすためである。TOF反復率の変化はまた、TOF較正係数の2つのセットも要求する。
その結果として、IDA以外の入手方法で通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えることを可能にする、タンデム質量分析計を動作させるシステムおよび方法の必要性が存在する。より具体的には、定量的標的化入手方法で通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えることを可能にする、タンデム質量分析計を動作させるシステムおよび方法の必要性が存在する。
図8は、種々の実施形態による、抽出されるイオンクロマトグラム(XIC)が、通常パルシングモードでタンデム質量分析計を使用して、多重反応監視(MRM)等の定量的標的化入手方法で取得される様子を示す、例示的略図800である。図8では、生成イオン遷移810への単一の前駆イオンに関する生成イオン強度が、通常パルシングモードを使用して、9つの異なる時間ステップまたはサイクルにおいて測定される。各時間ステップにおいて、遷移810の前駆イオンが、選択および断片化され、遷移810の生成イオンの強度が、測定される。クロマトグラム820では、遷移810の生成イオンの強度が、経時的にプロットされる。これらの強度から、XICピーク830が、計算される。
XICピーク830は、分析されるサンプル内の遷移810によって表される化合物の量を定量化するために使用される。例えば、XICピーク830の面積が、分析されるサンプル内の化合物の数量を判定するために使用されることができる。XICピーク830の面積は、数量を判定するように、較正XICの面積と比較されることができる。
Loboda論文に説明されるように、ゼノンパルシングは、質量正確度または分解能の損失を伴わずに、感度を増加させることができる。結果として、ゼノンパルシングは、定量的標的化入手の感度を増加させることができる。換言すると、ゼノンパルシングは、定量化で使用される計算されたXICピークの正確度を改良することができる。しかしながら、ゼノンパルシングに関する1つの問題は、感度の大きな増加が、タンデム質量分析計の検出器において飽和をもたらし得ることである。
感度利得が飽和を引き起こすだけではなく、周波数がゼノンパルシングでは約10倍小さいため、イオンが、より低頻度で測定される。両方のモードで同一のTOF反復率を用いても、イオンは、ゼノンパルシングモードでは、「群化」され、10回毎にTOF分析器の中に送られる。
図9は、種々の実施形態による、XICが、ゼノンパルシングモードでタンデム質量分析計を使用して、MRM等の定量的標的化入手方法で取得されるときに、飽和が生じ得る様子を示す、例示的略図900である。図9では、図8で使用される生成イオン遷移810への同一の単一前駆イオンに関する生成イオン強度が、ゼノンパルシングモードを使用して、9つの異なる時間ステップまたはサイクルにおいて測定される。各時間ステップにおいて、遷移810の前駆イオンが、選択および断片化され、遷移810の生成イオンの強度が、測定される。クロマトグラム920では、遷移810の生成イオンの測定された強度が、経時的にプロットされる。これらの強度から、XICピーク930が、計算される。
図8のXICピーク830と比較して、図9のXICピーク930が、感度の7倍利得を有する(クロマトグラム920のy軸強度スケールが、図8のクロマトグラム820のy軸強度スケールよりも7倍大きい)ことに留意されたい。しかしながら、図9のXICピーク930の頂点940が、タンデム質量分析計の検出器の飽和に起因して平坦化される。換言すると、ゼノンパルシングによって生成される、感度の大きな利得は、検出器飽和を引き起こす。結果として、XICピーク930は、歪曲され、定量化に使用されることができない。
いくつかの実施形態では、ゼノンパルシングモードは、前もって測定されたイオン強度に基づいて選択されてもよく、質量分析計は、通常モードでのイオンの連続解放およびゼノンパルシングモードでのイオンの順次解放の両方のために一定のTOF抽出パルスタイミングを維持しながら、通常モードからゼノンパルシングモードに動的に遷移するように動作し得る。
いくつかの実施形態では、ゼノンパルシングモードは、前もって測定されたイオン強度に基づいて選択されてもよく、質量分析計は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間に整定時間または遅延周期を導入することなく、通常モードからゼノンパルシングモードに動的に遷移するように動作し得る。いくつかの側面では、ゼノンパルスモードは、ゼノン周期の間に収集される実質的に全てのイオンが、抽出領域内に到着し、イオンの連続解放を伴う通常モードおよびイオンの順次解放を伴うゼノンパルシングモードの両方の間に同一のパルスタイミングを有するTOF抽出パルスと一致するように、TOF抽出パルスタイミングに同期化される。
種々の実施形態では、感度の大きな利得が、ゼノンパルシングによって取得され、飽和が、同一の定量的標的化入手実験内でゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間で動的に切り替えることによって回避される。いくつかの実施形態では、パルシングモードの間の切替は、生成イオンの前もって測定された強度によってトリガされる。換言すると、生成イオンの強度が、ある閾値を超える場合、ゼノンパルシングモードが、オフにされ、通常パルシングモードが、オンにされる。同様に、生成イオンの前もって測定された強度が、ある閾値未満またはそれと等しい場合、通常パルシングモードが、オフにされ、ゼノンパルシングモードが、オンに戻される。
図10は、種々の実施形態による、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の動的切替が、感度の増加を伴って、飽和を伴わずに、定量的標的化入手方法でXICを取得するために使用される様子を示す、例示的略図1000である。図10では、図8で使用される生成イオン遷移810への同一の単一前駆イオンに関する生成イオン強度が、9つの異なる時間ステップまたはサイクルにおいて測定される。各時間ステップにおいて、遷移810の前駆イオンが、選択および断片化され、遷移810の生成イオンの強度が、測定される。
最初に、遷移810の生成イオンの強度が、ゼノンパルシングモードを使用して測定される。例えば、時間ステップ1、2、および3では、強度は、ゼノンパルシングモードを使用して測定される。ゼノンパルシングは、強度が低く、ゼノンパルシングのより高い感度から利益を得ることができるため、最初に使用される。時間ステップ1、2、および3における強度は、ゼノンモードクロマトグラム1010にプロットされて示される。
飽和を防止するために、時間ステップ1、2、および3における強度はそれぞれ、例えば、ゼノンパルシングモード強度閾値1015と比較される。測定された強度が、ゼノンパルシングモード強度閾値1015を上回り、ゼノンパルシングモードにおける前もって測定された強度が、測定された強度未満である場合には、タンデム質量分析計は、ゼノンパルシングモードから通常パルシングモードに切り替えられる。例えば、時間ステップ3では、測定された強度は、ゼノンパルシングモード強度閾値1015を上回る。時間ステップ3における測定された強度はまた、時間ステップ2における測定された強度を上回り、測定されたイオン強度が増加していることを示す。結果として、飽和が起こり得るため、パルシングモードは、通常モードに切り返される。
時間ステップ4では、遷移810の生成イオンの強度が、ここで、通常パルシングモードを使用して測定される。本強度は、通常モードクロマトグラム1020でプロットされる。通常パルシングモードでは、強度がゼノンパルシングモードにおける強度の1/7まで低減されることに留意されたい。その結果として、飽和が、防止される。
質量分析は、生成イオンの測定された強度が通常パルシングモード強度閾値1025を下回って減少するまで、通常パルシングモードで継続する。例えば、通常パルシングモードが、時間ステップ4に加えて、時間ステップ5および6において強度を測定するために使用される。
しかしながら、時間ステップ6では、測定された強度は、通常パルシングモード強度閾値1025未満である。加えて、時間ステップ6における測定された強度はまた、時間ステップ5における測定された強度未満であり、測定されたイオン強度が減少していることを示す。結果として、飽和が生じる可能性が高くないため、ゼノンパルシングモードが、質量分析計の感度を増加させるように選択され得る。その結果として、時間ステップ7、8、および9では、強度は、ゼノンパルシングモードを使用して測定される。時間ステップ7、8、および9における強度は、ゼノンモードクロマトグラム1010にプロットされて示される。
ゼノンモードパルシングから通常モードパルシングへ、および再びゼノンモードパルシングに戻る切替に起因して、通常モードクロマトグラム1020およびゼノンモードクロマトグラム1010内の遷移810の生成イオンの強度は、XICピークを計算するために組み合わせられなければならない。しかしながら、クロマトグラム1010および1020内の強度のスケールは、7倍異なる。
結果として、クロマトグラムのうちの一方の強度は、他方のクロマトグラムの強度に漸減または正規化される必要がある。定量化に使用される較正データが、典型的には、通常パルシングモードで取得されるため、ゼノンパルシングモードを使用して測定される強度は、好ましくは、通常モードを使用して行われる異なる測定を比較するときに、一貫した強度測定を有するために、通常パルシングモードを使用して測定される強度に正規化される。換言すると、図10に示されるように、ゼノンモードクロマトグラム1010の強度は、通常モードクロマトグラム1020の強度に漸減または正規化され、正規化されたクロマトグラム1030を生成する。
強度は、通常モード測定に合致するようにゼノンパルシングモード測定から便宜的に縮小され得るが、いくつかの実施形態では、ゼノンパルシングモード測定に合致するように通常モード測定から拡大することが好ましくあり得る。いずれかの漸減動作は、ゼノンクロマトグラムが最終提示のために通常クロマトグラムと組み合わせられるときに、モードのそれぞれで行われる強度測定が相互と正規化されることを前提として、動作可能である。
7の倍数が、Loboda論文に説明される特定の器具のための平均ゼノンパルシング利得であることに留意されたい。実際には、これは、機械の幾何学形状に応じて異なり、また、3から約25まで変動する、異なるm/zを伴うイオンに関しても異なる。m/z値への利得依存を予測する式が、存在する。
Figure 2021521582
式中、Cは、幾何学的係数であり、(m/z)maxは、スペクトルで記録されるm/zの最大値である。
通常モードクロマトグラム1020および正規化されたクロマトグラム1030が、同一の強度スケールを有するため、それらは、組み合わせられることができる。例えば、通常モードクロマトグラム1020および正規化されたクロマトグラム1030は、加算され、複合クロマトグラム1040を生成する。XICピーク1045が、最終的に複合クロマトグラム1040から計算される。XICピーク1045は、定量化に使用される。
図10は、Loboda論文で示唆されるような前駆イオンではなく、検出された生成イオンの強度に基づいて、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の動的切替を行うことによって、動的に制御されたゼノンパルシングモードが、標的化入手方法で使用され得ることを示す。しかしながら、Loboda論文で実装されるように、前駆イオンに基づく切替のみが、検討され、さらに、検出された生成イオン強度に基づく切替は、モード間の要求される整定時間により、標的化入手のために十分に高速ではなかった。
種々の実施形態では、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の動的切替は、イオンガイドが、TOF抽出領域へのイオンの連続解放を伴う通常モードと、TOF抽出領域へのイオンの順次解放を伴うゼノンパルシングモードとの間で切り替わるにつれて、TOF抽出パルスのパルスタイミングが一定であるように、TOF反復率を変化させることなく実装されてもよい。TOF抽出パルス周波数が、一定に維持されるため、TOF抽出パルシング回路の変化に適応する必要性が存在せず、結果として、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えるときに要求される整定時間遅延が存在しない。
図11は、種々の実施形態による、TOF質量分析器の同一のTOF抽出パルス周波数が、ゼノンパルシングモードおよび通常パルシングモードに使用され得、整定時間が、2つのモードの間で切り替えるときに適応される必要がないことを示す、例示的タイミング図1100である。本実施形態では、TOF抽出パルスは、ゼノンパルシングモード(イオンの順次解放)および通常パルシングモード(イオンの連続解放)の両方の間に同一のパルスタイミングを有し、イオンの順次解放は、順次に解放されたイオンの到着が、TOF抽出パルスタイミングと同期化されるように、同期化されてもよい。故に、TOF抽出パルスの周波数は、質量分析計がイオンの連続解放と順次解放との間で選択的に切り替えている間に一定のままである。
領域1110では、ゼノン抽出パルシングが、10kHzのTOF反復率に関して0.1ミリ秒毎に生じているが、トラップは、1ミリ秒の各周期にわたって、すなわち、10個の0.1ミリ秒TOF抽出パルスを含む周期にわたって、維持される。TOF反復率は、ゼノンパルシングモードである間のトラップ内のイオンの濃縮に起因して10kHzであるが、イオンは、(第10のパルスの陰影によって図示されるように)第10のパルス毎にのみ押動される。換言すると、最初の9つのパルスでは、いずれのイオンも抽出領域にまだ到着していないため、いずれのイオンも押動されない。本反復率および周期が、簡略化された例証目的のみのために使用され、TOF反復率が、典型的には、上記に説明されるように、より高いことに留意されたい。
6ミリ秒で、領域1120は、TOFパルシングがゼノンパルシングモードから通常パルシングモードに切り替えられる、通常モードを定義する。本実施形態では、TOF反復率は、10kHzに留まるが、しかしながら、イオンがもはや第10のパルス毎に抽出領域内で濃縮されなくなるため、各パルスは、ここでは(パルスの陰影によって図示されるように)イオンを含有し得る。
故に、TOF抽出パルスは、定義されたパルス繰り返し率において連続的に起動し、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の遷移が、最初に、イオントラップを通電させてゼノンパルシングモードを開始し、イオンガイドに沿って進行するイオンを捕捉し、ゼノンパルス周期の持続時間にわたってイオントラップを保持し、ゼノンパルスの終了時に、すなわち、図11では6ミリ秒で、イオントラップを解放して、トラップから捕捉されたイオンを解放し、それらが質量分析器まで進行することを可能にすることによって、生じさせられる。いくつかの側面では、ゼノン捕捉モードの1つ以上のサイクルが、システムが通常パルシングモードに戻って切り替わる前に実装されてもよい。各ゼノン周期の終了時の通電解除は、順次に解放されたイオンが、継続中のTOF抽出パルシングの対応するパルスと一致して抽出領域に到着するように、同期化される。このように、TOF抽出パルシング周波数は、ゼノンパルシング周波数およびトラップ通電の整数の倍数であり、イオン解放は、対応するTOF抽出パルスと同期化される。故に、TOF抽出パルス周波数が、一定のままである一方で、本システムは、モード間の遅延または整定周期を伴わずに、通常モードでの連続解放とゼノンパルシングモードでの順次解放との間で選択的に切り替わってもよい。
結果として、TOF抽出パルス回路がパルスタイミング周波数の変化を調節することを可能にするように、TOF反復率の切替および整定時間遅延が存在しない。これは、イオンの順次解放を伴うゼノンパルシングモードとイオンの連続解放を伴う通常パルシングモードとの間で遷移するときに、本質的に遅延が存在せず、標的化入手方法においてゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間の動的切替の使用を可能にすることを意味する。これはまた、Loboda論文に説明されるTOF較正係数の2つのセットが、もはや必要とされなくなり、実装を単純化することも意味する。
しかしながら、ゼノンパルシングモードでのTOF反復率の単一パルス上のイオンの濃縮および順次解放の慎重なタイミングが、必要とされる。また、ゼノンパルシングモードでのイオンの計数の計算は、イオンガイドがイオンを捕獲しており、イオンを抽出領域に解放していない間に発射されるTOF抽出パルスを無視しなければならない。
ある実施形態では、ゼノンパルスモードの間のイオンの順次解放は、抽出領域への順次に解放されたイオンの到着が、抽出領域内のTOF抽出パルスと一致するように同期化されるように、同期化される。いくつかの実施形態では、到着は、TOFパルシング回路内の閾値電圧を監視および検出し、TOFパルシング回路のパルスタイミングを判定することによって、同期化される。検出された閾値電圧は、ゼノンパルシングモードが活性化されるときのイオントラップの通電および後続の通電解除のタイミングを、閾値電圧に基づいて識別されるパルスタイミングに合致させるために使用されてもよい。
要約すると、単一MS調査実験における前駆イオンの強度に基づいて、依存性MS/MS実験のためのゼノンパルシングモードに切り替わる、Loboda論文のオンデマンド方法とは対照的に、一連のMS/MS実験における生成イオンの前の測定に基づいて、そのMS/MS実験内でゼノンパルシングモードに、またはそこから切り替わるように動作し得る、種々の実施形態の動的切替方法が、ここで提供される。結果として、本動的切替方法はまた、例えば、標的化入手方法で使用されてもよい。
さらに、Loboda論文のオンデマンド方法は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で切り替えるときに、TOF反復率の変化を要求する。種々の実施形態の動的切替方法では、TOF反復率は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で変更されない。結果として、種々の実施形態の動的切替方法では、通常モードとゼノンパルシングモードとの間の切替の時間遅延、およびTOF較正係数の2つのセットの必要性が存在しない。再度、この向上された性能は、動的切替方法が、IDAに加えて、標的化入手方法で使用されることを可能にし、分析のために要求される時間を短縮する。
(ゼノンモードと通常モードとの間で動的に切り替えるためのシステム)
図2に戻ると、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間で動的に切り替えるためのシステムは、タンデム質量分析計30と、プロセッサ(図示せず)とを含む。プロセッサは、限定ではないが、コンピュータ、マイクロプロセッサ、図1のコンピュータシステム、または制御信号およびデータをタンデム質量分析計30に送信し、そこから受信し、データを処理することが可能な任意のデバイスであり得る。プロセッサは、少なくともイオンガイド24およびTOF質量分析器28と通信する。
より一般的には、タンデム質量分析計30のイオンガイド24およびTOF質量分析器28は、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器28の中への注入の前に異なる質量対電荷比(m/z)値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないように動作される。ゼノンパルシングモードが、異なるm/z値を伴う生成イオンを濃縮する一方で、通常パルシングモードは、濃縮しない。
イオン源デバイス20は、既知の化合物を含有するサンプルを連続的に受容およびイオン化し、ガイド軸174に沿ってイオンビームを生成する。上記に説明されるように、イオン源20からのイオンが、イオン操作領域22の中に通過されてもよく、そこで、イオンは、イオンビーム集束、イオン選択、イオン放出、イオン断片化、イオン捕獲、または任意の他の概して公知の形態のイオン分析、イオン化学反応、イオン捕獲、もしくはイオン透過を受け得る。そのように操作されるイオンは、操作領域22から退出し、24によって示されるイオンガイドの中に通過することができる。
イオンガイド24は、ガイド軸174を画定し、標的化入手方法においてイオンビームから選択される既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンを受容する。既知の前駆イオンは、操作領域22内で選択および断片化される。
TOF質量分析器28は、イオンガイド24に隣接して位置する。上記に説明されるように、静電レンズ26は、イオンガイド24の一部と見なされ得る。TOF質量分析器28は、ガイド軸174に沿ってイオンガイド24からTOF質量分析器28の抽出領域56の中に放出される生成イオンを受容し、標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定する。イオンガイド24は、ガイド軸174に対して法線である生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、ガイド軸174と平行な生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合される。イオン制御場は、イオンガイド24のガイド軸174に沿って制御可能な電位プロファイルを有する。
プロファイルは、i)生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイド24からTOF質量分析器28までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードと、ii)イオンの質量対電荷比に従って、イオンガイド24からTOF質量分析器28までの生成イオンの順次放出が存在する、順次モードとのいずれかの間で、交互に切替可能である。順次モードは、ゼノンパルシングモードであり、連続モードは、通常モードである。
いくつかの実施形態では、本システムは、TOF抽出パルス回路の電圧を監視するように、かつ閾値電圧を超える電圧に基づいてTOF抽出パルスの開始を検出するように、動作し得る。TOF抽出パルス回路の電圧を監視することによって、本システムは、TOF抽出パルスを連続的に提供するように、かつTOF抽出パルスに合致するように連続モードと順次モードとの間の遷移を同期化するように、動作し得る。
順次モードに関して、同一のイオンエネルギーが、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイド24を通した抽出領域56までのそれらの進行にわたって生成イオンに印加される。生成イオンは、実質的に同時に抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、イオンガイド24から同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される。
プロセッサは、最初に、順次モードを使用して、既知の前駆イオンの生成イオンを放出するようにイオンガイド24に命令し、2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するようにTOF質量分析器28に命令する。順次またはゼノンパルシングモードは、次いで、連続または通常パルシングモードに動的に切り替えられてもよい。少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、プロセッサは、連続モードに切り替えるようにイオンガイド24に命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するようにTOF質量分析器28に命令する。
種々の実施形態では、プロセッサは、強度が、先行時間ステップにおいて順次モードで測定される少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を上回る場合に、強度が増加していることを判定する。
種々の実施形態では、連続または通常パルシングモードは、順次またはゼノンパルシングモードに動的に切り替えられてもよい。イオンガイド24が、連続モードで生成イオンを放出しており、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、減少しており、ある時間ステップにおいて所定の連続モード閾値未満である場合には、プロセッサは、順次モードに戻って切り替えるようにイオンガイド24に命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するようにTOF質量分析器28に命令する。
種々の実施形態では、プロセッサは、強度が、先行時間ステップにおいて連続モードで測定される少なくとも1つの既知の生成イオンの強度未満である場合に、強度が減少していることを判定する。
種々の実施形態では、プロセッサは、イオンガイド24が順次モードであるとき、およびイオンガイド24が連続モードであるときに、同一の反復率を適用するようにTOF質量分析器28に命令する。しかしながら、順次モードでは、少なくとも1つの既知の生成イオンが、低周波数において記録または分析されるが、TOF抽出パルスは、高反復率において印加される。
種々の実施形態では、プロセッサは、同一のTOF質量分析器較正係数を使用して、イオンガイド24が順次モードであるとき、およびイオンガイド24が連続モードであるときに、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するようにTOF質量分析器28に命令する。
種々の実施形態では、プロセッサはさらに、強度が順次モードを使用して測定される場合に、強度を連続モードで同等に測定される強度に正規化する。プロセッサは、代替として、強度が連続モードを使用して測定される場合に、強度を順次モードで同等に測定される強度に正規化することができる。
(ゼノンモードと通常モードとの間で動的に切り替えるための方法)
図12は、ゼノンモードと通常モードとの間で動的に切り替えるための方法を示す、フローチャート1200である。より一般的には、図12は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計のイオンガイドおよびTOF質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器の中への注入の前に異なるm/z値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法を示す、フローチャート1200である。
方法1200のステップ1210では、既知の化合物を含有するサンプルが、イオン源デバイスを使用して、連続的に受容およびイオン化され、イオンビームを生成する。
ステップ1220では、標的化入手方法においてイオンビームから選択される既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンが、ガイド軸を画定するイオンガイドを使用して受容される。
ステップ1230では、ガイド軸に沿ってイオンガイドから抽出領域の中に放出される生成イオンが、受容され、既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、イオンガイドの下流のTOF質量分析器を使用して、標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて測定される。イオンガイドは、ガイド軸に対して法線である生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、ガイド軸と平行な生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合される。イオン制御場は、イオンガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、プロファイルは、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードに、または生成イオンのm/z値に従って、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの順次放出が存在する、順次モードに、交互に切替可能である。順次モードに関して、同一のイオンエネルギーが、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイドを通した抽出領域までのそれらの進行にわたって生成イオンに印加され、生成イオンは、実質的に同時に抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される。
ステップ1240では、イオンガイドは、順次モードを使用して、既知の前駆イオンの生成イオンを放出するように命令され、TOF質量分析器は、プロセッサを使用して、2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように命令される。
ステップ1250では、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、イオンガイドは、連続モードに切り替えるように命令され、TOF質量分析器は、プロセッサを使用して、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するように命令される。
(ゼノンモードと通常モードとの間で動的に切り替えるためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、そのコンテンツが、ゼノンパルシングモードと通常パルシングモードとの間で動的に切り替えるための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含む、非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムによって実施される。
より一般的には、図13は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計のイオンガイドおよびTOF質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、TOF質量分析器の中への注入の前に異なるm/z値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システム1300の概略図である。システム1300は、制御モジュール1310を含む。
制御モジュール1310は、標的化入手方法においてイオンビームから選択される既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンを受容するように、ガイド軸を画定するイオンガイドに命令する。イオン源デバイスが、既知の化合物を含有するサンプルを連続的に受容およびイオン化し、イオンビームを生成する。
制御モジュール1310は、ガイド軸に沿ってイオンガイドからTOF質量分析器の抽出領域の中に放出される生成イオンを受容し、標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように、イオンガイドの下流のTOF質量分析器に命令する。イオンガイドは、ガイド軸に対して法線である生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、ガイド軸と平行な生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合される。
イオン制御場は、通常モードとゼノンパルシングモードとの間で動的に切替可能である。イオン制御場は、イオンガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、プロファイルは、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードに、または生成イオンのm/z値に従って、イオンガイドからTOF質量分析器までの生成イオンの順次放出が存在する、順次モードに、交互に切替可能である。連続モードは、通常パルシングモードであり、順次モードは、ゼノンパルシングモードである。順次モードに関して、同一のイオンエネルギーが、生成イオンのm/z値に関係なく、イオンガイドを通した抽出領域までのそれらの進行にわたって生成イオンに印加され、生成イオンは、実質的に同時に抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される。
制御モジュール1310は、順次モードを使用して、既知の前駆イオンの生成イオンを放出するようにイオンガイドに命令し、2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するようにTOF質量分析器に命令する。少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、制御モジュール1310は、連続モードに切り替えるようにイオンガイドに命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するようにTOF質量分析器に命令する。
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。
対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。
さらに、種々の実施形態を説明する際に、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない限りにおいて、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも、可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項上の限定として解釈されるべきではない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、書かれる順序でのそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが変動され、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まり得ることを容易に理解することができる。

Claims (27)

  1. タンデム質量分析計のイオンガイドおよび飛行時間(TOF)質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、前記TOF質量分析器の中への注入の前に異なる質量対電荷比(m/z)値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないためのシステムであって、
    既知の化合物を含有するサンプルを連続的に受容およびイオン化し、イオンビームを生成する、イオン源デバイスと、
    標的化入手方法において前記イオンビームから選択される前記既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンを受容するガイド軸を画定する、イオンガイドと、
    前記イオンガイドの下流のTOF質量分析器であって、前記TOF質量分析器は、前記ガイド軸に沿って前記イオンガイドから前記TOF質量分析器の抽出領域の中に放出される生成イオンを受容し、前記標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて前記既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定し、
    前記イオンガイドは、前記ガイド軸に対して法線である前記生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、前記ガイド軸と平行な前記生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合され、
    前記イオン制御場は、前記イオンガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、前記プロファイルは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードに、または前記生成イオンのm/z値に従って、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの前記生成イオンの順次放出が存在する、順次モードに、交互に切替可能であり、
    前記順次モードに関して、同一のイオンエネルギーは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドを通した前記抽出領域までのそれらの進行にわたって前記生成イオンに印加され、前記生成イオンは、実質的に同時に前記抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、前記イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される、TOF質量分析器と、
    前記イオンガイドおよび前記TOF質量分析器と通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
    最初に、前記順次モードを使用して、前記既知の前駆イオンの生成イオンを放出するように前記イオンガイドに命令し、前記2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令し、
    前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、前記連続モードに切り替えるように前記イオンガイドに命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するように前記TOF質量分析器に命令する、プロセッサと
    を備える、システム。
  2. 前記プロセッサは、前記強度が、先行時間ステップにおいて順次モードで測定される前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を上回る場合に、前記強度が増加していることを判定する、請求項1に記載のシステム。
  3. さらに、前記イオンガイドが、前記連続モードで生成イオンを放出しており、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、減少しており、ある時間ステップにおいて所定の連続モード閾値未満である場合に、前記プロセッサは、前記順次モードに戻って切り替えるように前記イオンガイドに命令し、前記残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令する、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記プロセッサは、前記強度が、前記先行時間ステップにおいて前記連続モードで測定される前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度未満である場合に、前記強度が減少していることを判定する、請求項3に記載のシステム。
  5. 前記プロセッサは、前記イオンガイドが前記順次モードであるとき、および前記イオンガイドが前記連続モードであるときに、同一の反復率を適用するように前記TOF質量分析器に命令する、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記プロセッサは、同一のTOF質量分析器較正係数を使用して、前記イオンガイドが前記順次モードであるとき、および前記イオンガイドが前記連続モードであるときに、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令する、請求項1に記載のシステム。
  7. 前記プロセッサはさらに、前記強度が前記順次モードを使用して測定される場合に、前記強度を前記連続モードで同等に測定された強度に正規化する、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記プロセッサはさらに、前記強度が前記連続モードを使用して測定される場合に、前記強度を前記順次モードで同等に測定された強度に正規化する、請求項1に記載のシステム。
  9. タンデム質量分析計のイオンガイドおよび飛行時間(TOF)質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、前記TOF質量分析器の中への注入の前に異なる質量対電荷比(m/z)値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法であって、
    イオン源デバイスを使用して、既知の化合物を含有するサンプルを連続的に受容およびイオン化し、イオンビームを生成することと、
    ガイド軸を画定するイオンガイドを使用して、標的化入手方法において前記イオンビームから選択される前記既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンを受容することと、
    前記イオンガイドの下流のTOF質量分析器を使用して、前記ガイド軸に沿って前記イオンガイドから抽出領域の中に放出される生成イオンを受容し、前記標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて前記既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定することであって、
    前記イオンガイドは、前記ガイド軸に対して法線である前記生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、前記ガイド軸と平行な前記生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合され、
    前記イオン制御場は、前記イオンガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、前記プロファイルは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードに、または前記生成イオンのm/z値に従って、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの前記生成イオンの順次放出が存在する、順次モードに、交互に切替可能であり、
    前記順次モードに関して、同一のイオンエネルギーは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドを通した前記抽出領域までのそれらの進行にわたって前記生成イオンに印加され、前記生成イオンは、実質的に同時に前記抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、前記イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される、ことと、
    プロセッサを使用して、前記順次モードを使用して、前記既知の前駆イオンの生成イオンを放出するように前記イオンガイドに命令し、前記2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令することと、
    前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、前記プロセッサを使用して、前記連続モードに切り替えるように前記イオンガイドに命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するように前記TOF質量分析器に命令することと
    を含む、方法。
  10. 前記強度が、先行時間ステップにおいて順次モードで測定される前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を上回る場合に、前記強度は、増加している、請求項9に記載の方法。
  11. 前記イオンガイドが、前記連続モードで生成イオンを放出しており、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、減少しており、ある時間ステップにおいて所定の連続モード閾値未満である場合に、前記プロセッサを使用して、前記順次モードに戻って切り替えるように前記イオンガイドに命令し、前記残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  12. 前記強度が、前記先行時間ステップにおいて前記連続モードで測定される前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度未満である場合に、前記強度は、減少している、請求項11に記載の方法。
  13. 前記プロセッサを使用して、前記イオンガイドが前記順次モードであるとき、および前記イオンガイドが前記連続モードであるときに、同一の反復率を適用するように前記TOF質量分析器に命令することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  14. 前記プロセッサを使用して、同一のTOF質量分析器較正係数を使用して、前記イオンガイドが前記順次モードであるとき、および前記イオンガイドが前記連続モードであるときに、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  15. 前記強度が前記順次モードを使用して測定される場合に、前記強度を前記連続モードで同等に測定された強度に正規化することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  16. 前記強度が前記連続モードを使用して測定される場合に、前記強度を前記順次モードで同等に測定された強度に正規化することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  17. 非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、そのコンテンツは、タンデム質量分析計のイオンガイドおよび飛行時間(TOF)質量分析器を動作させ、標的化入手方法における標的化生成イオンの前もって測定された強度に基づいて、前記TOF質量分析器の中への注入の前に異なる質量対電荷比(m/z)値を伴う生成イオンを動的に濃縮する、または濃縮しないための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴う、プログラムを含み、前記命令は、
    システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを備え、前記明確に異なるソフトウェアモジュールは、制御モジュールを備える、ことと、
    前記制御モジュールを使用して、標的化入手方法においてイオンビームから選択される既知の化合物の既知の前駆イオンから断片化される、生成イオンを受容するように、ガイド軸を画定するイオンガイドに命令することであって、イオン源デバイスは、前記既知の化合物を含有するサンプルを連続的に受容およびイオン化し、イオンビームを生成する、ことと、
    前記制御モジュールを使用して、前記ガイド軸に沿って前記イオンガイドからTOF質量分析器の抽出領域の中に放出される生成イオンを受容し、前記標的化入手方法の2つ以上の時間ステップにおいて前記既知の前駆イオンの少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように、前記イオンガイドの下流の前記TOF質量分析器に命令することであって、
    前記イオンガイドは、前記ガイド軸に対して法線である前記生成イオンの移動を制止するための構成要素を備え、前記ガイド軸と平行な前記生成イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合され、
    前記イオン制御場は、前記イオンガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、前記プロファイルは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの生成イオンの連続放出が存在する、連続モードに、または前記生成イオンのm/z値に従って、前記イオンガイドから前記TOF質量分析器までの前記生成イオンの順次放出が存在する、順次モードに、交互に切替可能であり、
    前記順次モードに関して、同一のイオンエネルギーは、前記生成イオンのm/z値に関係なく、前記イオンガイドを通した前記抽出領域までのそれらの進行にわたって前記生成イオンに印加され、前記生成イオンは、実質的に同時に前記抽出領域内で実質的に全ての解放m/z値の生成イオンの到着を提供するように、前記イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放される、ことと、
    前記制御モジュールを使用して、前記順次モードを使用して、前記既知の前駆イオンの生成イオンを放出するように前記イオンガイドに命令し、前記2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度を測定するように前記TOF質量分析器に命令することと、
    前記少なくとも1つの既知の生成イオンの強度が、増加しており、ある時間ステップにおいて所定の順次モード強度閾値を上回る場合、前記制御モジュールを使用して、前記連続モードに切り替えるように前記イオンガイドに命令し、残りの2つ以上の時間ステップのうちの各時間ステップにおいて、前記少なくとも1つの既知の生成イオンのm/zを測定するように前記TOF質量分析器に命令することと
    を含む、コンピュータプログラム製品。
  18. イオンガイドと、質量分析器とを備える質量分析計であって、
    前記イオンガイドは、ガイド軸を画定し、前記ガイド軸に対して法線であるイオンの移動を制止するための構成要素を備え、前記ガイド軸と平行な前記イオンの移動を制御するための構成要素を備える、イオン制御場を提供するように適合され、
    前記場は、前記ガイドのガイド軸に沿って制御可能な電位プロファイルを有し、前記プロファイルは、前記イオンガイドからの前記イオンの連続解放、または前記イオンの質量対電荷比に従って、前記ガイド軸と平行な経路に沿って前記ガイドからの前記イオンの順次解放のいずれかを選択的に提供するように適合され、
    同一のイオンエネルギーは、前記イオンの質量対電荷比に関係なく、前記イオンガイドを通した実質的に前記ガイド軸に沿って配置される抽出領域までのそれらの進行にわたって前記イオンに印加され、前記イオンは、実質的に同時に前記抽出領域内で実質的に全ての解放質量対電荷比のイオンの到着を提供するように、前記イオンガイドから同一のイオンエネルギーを用いて順次に解放され、前記質量分析器の飛行時間(TOF)抽出パルスと一致するように同期化され、
    前記TOF抽出パルスは、連続解放および順次解放の両方の間に同一のパルスタイミングを有する、質量分析計。
  19. 前記質量分析計はさらに、TOFパルシング回路の電圧を監視して閾値電圧を検出し、前記検出された閾値電圧に基づいて前記TOFパルシング回路のパルスタイミングを判定し、前記パルスタイミングに基づいて前記到着を同期化することによって、前記到着を同期化するように動作する、請求項18に記載の質量分析計。
  20. 前記質量分析計はさらに、イオンの連続解放を実行する前に、前記イオンの順次解放を複数回実行するように動作する、請求項18に記載の質量分析計。
  21. 前記質量分析計は、前記イオンの連続解放に基づいて実施される先行質量分析測定で測定される生成イオン強度に基づいて、前記イオンの順次解放を選択するように動作する、請求項18に記載の質量分析計。
  22. 前記イオンは、生成イオンを備える、請求項18に記載の質量分析計。
  23. 質量対電荷比が異なるイオンを誘導する方法であって、
    ガイド軸を画定するイオンガイド内で、前記ガイド軸に対して法線であるイオンの移動を制止するための構成要素を備える、イオン制御場を提供することであって、プロファイルは、前記イオンガイドからの前記イオンの連続解放、または前記イオンの質量対電荷比に従って、前記ガイドからの前記イオンの順次解放のいずれかを選択的に提供するように適合される、ことと、
    前記イオン制御場内で、前記イオンガイド内の制約された空間内で前記イオンを蓄積するための蓄積電位プロファイルを提供することと、
    前記イオン制御場内で、前記イオンガイドのガイド軸に沿って放出電位プロファイルを提供することであって、前記プロファイルは、同一のイオンエネルギーを、前記イオンの質量対電荷比に関係なく、前記イオンガイドを通した実質的に前記ガイド軸に沿って配置される抽出領域までのそれらの進行にわたって前記イオンに印加し、前記イオンガイドからの同一のイオンエネルギーを用いた前記イオンの順次解放に関して、実質的に同時に前記抽出領域内で実質的に全ての解放質量対電荷比のイオンの到着を提供するように適合され、前記抽出領域内の飛行時間(TOF)抽出パルスと一致するように同期化され、前記TOF抽出パルスは、連続解放および順次解放の両方の間に同一のパルスタイミングを有する、ことと
    を含む、方法。
  24. TOFパルシング回路の電圧を監視し、閾値電圧を検出することと、
    前記検出された閾値電圧に基づいて前記TOFパルシング回路のパルスタイミングを判定することと、
    前記パルスタイミングに基づいて前記順次解放を同期化することと
    をさらに含む、請求項23に記載の方法。
  25. イオンの連続解放を実行する前に、前記イオンの順次解放を複数回実行することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
  26. 前記イオンの順次解放は、前記イオンガイドから前記抽出領域までのイオンの連続解放に基づいて実施される、先行質量分析測定で測定される生成イオン強度に基づいて選択される、請求項23に記載の方法。
  27. 前記イオンは、生成イオンを備える、請求項23に記載の方法。
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