JP2021513523A - IgE駆動型B細胞疾患の治療のためのクロザピン - Google Patents
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Abstract
本発明は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための、化合物クロザピン及びその主要代謝産物ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物に関する。また、本発明は、そのような化合物を含有する医薬組成物を提供する。【選択図】なし
Description
(技術分野)
本発明は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための化合物及びそのような化合物を含有する医薬組成物に関する。
本発明は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための化合物及びそのような化合物を含有する医薬組成物に関する。
クロザピンは、抵抗性統合失調症の治療薬として知られている。統合失調症は、人口の約1%に影響を及ぼす永続的な主要精神障害である。衰弱性の精神医学的症状は別として、これは、80〜90%の失業率、及び10〜20年減少した平均余命を伴う、深刻な心理社会的な帰結を有する。統合失調症の者の自殺率は、一般集団よりもかなり高く、統合失調症と診断された者の約5%が、自殺する。
クロザピンは、重要な治療薬剤であり、かつWHOの必須医薬品リストに収載されている。これは、ジベンゾジアゼピン非定型抗精神病薬であり、1990年以降、30%の治療抵抗性統合失調症(TRS)患者のために英国において認可された唯一の療法である。これは、統合失調症患者において陽性症状及び陰性症状の双方を減少させるのに優れた有効性を示し、以前に治療抵抗性(treatment refractive)であった患者の約60%で、自殺リスクの有意な低下を伴って有効である。英国国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE))のガイドラインでは、少なくとも2種の抗精神病薬(そのうちの少なくとも一方は、クロザピンではない第2世代抗精神病薬であるべきである)での治療に適切に反応していない統合失調症の成人は、クロザピンの提供を受けるべきであると推奨されている。
クロザピンは、発作、腸閉塞、糖尿病、血栓塞栓症、心筋症、及び突発性心臓死を含む重篤な有害作用と関連がある。また、これは、無顆粒球症(累積発生率0.8%)を引き起こすことがあり;それの安全な使用を支えるには、集中中央登録機関ベースの監視システムが必要となる。英国においては、3つの電子登録機関(www.clozaril.co.uk、www.denzapine.co.uk、及びwww.ztas.co.uk)があり、クロザピン供給業者の各々につき1つの電子登録機関が存在する。治療中断を求める好中球絶対数(ANC)の「赤旗」カットオフ値を1500/μL未満とする、義務的な血液検査が、初めの18週間は毎週、その後、第19週〜第52週は2週間毎、その後、月1回必要とされる。
2015年に、米国食品医薬品局(FDA)は、米国における6つの既存のクロザピン登録機関を統合して置き換えて、50,000超の処方者、28,000超の薬局、及び90,000超のカルテからのデータを、全クロザピン製品のための単一の共有登録機関である、クロザピンリスク評価及び軽減戦略(the Clozapine Risk Evaluation and Mitigation Strategy; REMS)プログラム(www.clozapinerems.com)に集約した。クロザピン治療を中断する好中球絶対数(ANC)閾値を、一般には、1000/μL未満に、かつ良性の民族性好中球減少症(BEN)では500/μL未満に低下させる変化が導入された。処方を行う者は、中程度から重篤な好中球減少症を発症した患者において治療を継続又は再開することについての患者個人別の決定をより柔軟に下せるようになり、従って、クロザピンを利用できることによる患者の利益を最大化させる。
統合失調症は、一般集団と比較して、3.5倍に増加した早期死亡の可能性と関連する。これは、多くの場合、身体的な病気、特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(標準化死亡比(SMR) 9.9)、インフルエンザ及び肺炎(SMR 7.0)を原因とする。クロザピンは、重篤な統合失調症における総合的な死亡率を低下させるものの、クロザピンを肺炎関連の入院率及び死亡率の上昇と結びつける証拠が増えてきている。33,024名の統合失調症患者の解析では、第2世代抗精神病薬薬物療法と入院を必要とする肺炎のリスクとの関連は、調整リスク比が3.18であるクロザピンで最も高く、2種の抗精神病薬の使用と関連するさらなる有意なリスクの増加が存在した(Kuoらの文献、2013)。クエチアピン、オランザピン、ゾテピン、及びリスペリドンは、少し増加したリスクと関連していたが、明確な用量依存的関係は存在せず、30日超の時点で、リスクは著しいものではなかった(Leungらの文献、2017;Stoeckerらの文献、2017)。
クロザピンを摂取する患者の12年間の試験において、試験期間の間に、104名の患者が、248回の入院を経験した。主たる入院のタイプは、肺(32.2%)又は胃腸(19.8%)いずれかの病気の治療のためのものであった。最も好発する肺の診断は、肺炎(肺に関連する入院の58%)であり、これらの入院は、黒枠警告(boxed warning)には記載されていなかった(Leungらの文献、2017)。
さらなるコホート内症例対照研究において、クロザピンが、明確な再発性肺炎の用量依存的リスクを有する唯一の抗精神病薬であることが分かり、このリスクは、クロザピンへの再曝露に際して増加した(Hungらの文献、2016)。
これらの試験は、他の抗精神病薬と比較した、クロザピンを摂取する患者における肺炎及び敗血症による入院又は死の増加を強調しているが、極端な転帰(死及び肺炎)に注目することは、副鼻腔炎、皮膚、眼、耳、又は喉の感染症などのより重篤度が低いがより頻発する感染症、及び市中感染し治療された肺炎の負荷を過小評価する可能性がある。感染症は、統合失調症の制御及びクロザピンレベルの不安定化における重要な追加の因子となり得る。
誤嚥、流涎症、及び食道の拡張を伴う嚥下機能の障害、運動性低下、並びに無顆粒球症を含む、肺炎の増加のさまざまな機構が提案されている。加えて、喫煙は、統合失調症患者全体の間で非常に一般的に行われており、肺炎発生率及び重症度の独立したリスク因子となっている(Belloらの文献、2014)。
(クロザピンの免疫調節性の性質についての研究がわずかに行われている:)
Hinze-Selchら(Hinze-Selchらの文献、1998)は、クロザピンを、免疫調節性の性質を有する非定型的な抗精神病薬として説明している。この論文は、クロザピン治療を6週間受けた患者が、IgGの血清濃度の著しい増加を示したが、IgAもしくはIgM濃度や、自己抗体のパターンに対しては著しい作用がみられなかったことを報告している。
Hinze-Selchら(Hinze-Selchらの文献、1998)は、クロザピンを、免疫調節性の性質を有する非定型的な抗精神病薬として説明している。この論文は、クロザピン治療を6週間受けた患者が、IgGの血清濃度の著しい増加を示したが、IgAもしくはIgM濃度や、自己抗体のパターンに対しては著しい作用がみられなかったことを報告している。
Jollesら(Jollesらの文献、2014)は、抗体欠損症のスクリーニング試験としての「算出グロブリン(calculated globulin; CG)」というパラメーターに関する研究を報告している。広範な背景を持つ患者が、ウェールズ全土の13の研究室から選択された。一次医療でのCGスクリーニングで識別された、著しい抗体欠損症(IgG<4g/L、基準範囲6〜16g/L)の患者のうちの、13%の試料で、クロザピンの使用が、依頼書上で言及されていた。しかしながら、抗体欠損症は、英国国民医薬品集(British National Formulary; BNF)に収載されたクロザピンの副作用ではなく、抗体検査も、現行のクロザピンモニタリングプロトコルの一部を構成してはいない。
Lozanoらによる別の研究(Lozanoらの文献、2016)では、対照群との比較での、試験群(これは、クロザピンを少なくとも5年間摂取した精神科外来患者からなっていた)におけるIgMの平均血漿レベルの全体的な低下が報告され、また、IgA、IgG、好中球絶対数、及び白血球数に関してはこれらの群間で差が認められなかったことが報告された。
結果として、報告されているこれらの矛盾した結果を考えれば、クロザピンの免疫調節性の性質、及びその免疫グロビン(immunoglobin)レベル特に、IgEに対する作用は、本技術分野において、明確ではなく、理解されてもいない。
病原性IgE免疫グロブリン駆動型疾患は、抗体分泌細胞(ASC、集合的に形質芽細胞及び形質細胞、これらは、成熟B細胞の種類である)による自己抗体(IgEを含む)の分泌に起因する。これらの抗体は、これらの状態のうちの多くで特徴とされている過剰な反応を引き起こす種々の外因性抗原を標的としている。病理学的プロセスが、全免疫グロブリンのうちの僅かな割合を占める特定の免疫グロブリンの分泌によって駆動されるために、全体的な免疫グロブリンの増加はめったに生じない。IgE抗体の分泌は、ASCからのものであり、ASCは、クラススイッチした及びクラススイッチしていないメモリーB細胞の分化に次いで発生し、これらは、成熟B細胞のさらなる種類である。さまざまな系統の証拠が、これが、進行中の分化がほとんど絶え間無く生じる高度に動的なプロセスであることを示唆している。
クラススイッチしたメモリーB細胞は、繰り返される抗原認識に応答して、その最初のコードされた膜受容体[IgM]が、IgG、IgA、又はIgEで置き換えられている成熟B細胞である。このクラススイッチプロセスは、長寿命の形質細胞による先在している防御抗体の分泌を介する「構成的」、及び抗原への再曝露及びメモリーB細胞の再活性化を反映して、形質細胞に分化して抗体を産生するか、又は胚中心B細胞に分化して抗体応答のさらなる多様化及び親和性成熟を可能とするかのいずれかである「反応性」の双方である正常な液性免疫記憶の重要な特徴である。免疫応答の初期に、形質細胞は、スイッチしていない活性化B細胞から派生し、かつIgMを分泌する。免疫応答ではその後、形質細胞が、クラススイッチング(抗原特異性を保持しているが、免疫グロブリンアイソタイプを交換している)及び免疫グロブリン体細胞超変異によるB細胞受容体(BCR)多様化を受けた、胚中心(抗原曝露に応答して二次的リンパ濾胞性組織に形成される領域)に関与している活性化B細胞から生じる。この成熟プロセスは、抗原に対する高い親和性を有するBCRの発生、及び種々の免疫グロブリンアイソタイプの産生(すなわち、もともと発現しているIgM及びIgDからIgG、IgA、又はIgEアイソタイプへの交換)を可能とする(Budeusらの文献、2015;Kracker及びDurandyの文献、2011)。
二次リンパ器官での胚中心反応後のクラススイッチ組換え(CSR)は、抗原でプライミングされた/抗原を経験した自己反応性のメモリーB細胞、及び自己免疫の発達及び/又は維持のための中心経路を提供する。末梢でIgG又はIgAへとクラススイッチした胚中心後のB細胞は、例えば、中枢神経系などの他の解剖学的コンパートメントに入ることができ、更なる親和性成熟を(例えば、多発性硬化症における三次リンパ組織様構造において)受け、免疫病態の一因となる(Palanichamyらの文献、2014)。病理学において、CSRは、例えば、関節リウマチ滑膜などの慢性的に炎症を起こしている組織における異所性のリンパ組織様構造内などの、組織内に局所的に生じることがある(Alsalehらの文献、2011;Humbyらの文献、2009)。
特に、形質細胞(形質芽細胞に加えて)は、例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(Fritzらの文献、2011)、IL-10(Matsumotoらの文献、2014;Rojasらの文献、2019)、IL-35(Shenらの文献、2014)、IL-17a(Bermejoらの文献、2013)、及びISG15(Careらの文献、2016)などのサイトカイン(Shen及びFillatreauの文献、2015)及び免疫調節因子の発生を含む、免疫グロブリンの産生を超える重要なエフェクター免疫機能を発揮することの理解が進んでいる。
遊走能力を有するB細胞系列の短寿命の急速に循環する抗体分泌細胞を表す形質芽細胞も、骨髄ニッチに向かうものを含む、長寿命(有糸分裂後)形質細胞の前駆体である(Nuttらの文献、2015)。自己反応性の長寿命形質細胞の前駆体であることに加えて、形質芽細胞は、病原性免疫グロブリン/自己抗体(Hoyerらの文献、2004)を産生するその能力のためにそれ自体が重要な有望な治療標的である。循環形質芽細胞は、その直接の抗体分泌機能に加えて、胚中心由来の免疫応答、及び、それによる、濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)の分化及び増殖のIl-6誘発性促進を伴うフィードフォワード機構を介する抗体産生を増強する活性も発揮する(Chaveleらの文献、2015)。
その主要な常在ニッチ(residency niche)が、骨髄内である(Bennerらの文献、1981)長寿命形質細胞は、生理学的状態及び発症状態の双方において安定な自己抗体産生の主要な供給源であると考えられており、グルココルチコイド、慣用の免疫抑制及びB細胞枯渇療法(Hiepeらの文献、2011)に抵抗性である。長期的抗体産生に対するこのB細胞集団の決定的な重要性を具体化して、以前の抗原に対する長続きする(免疫化後最長10年)抗体応答を伴う骨髄由来形質細胞の部位特異的な生存が、持続的なメモリーB細胞枯渇にもかかわらず非ヒト霊長類において実際に示されている(Hammarlundらの文献、2017)。自己免疫の維持において自己反応性長寿命形質細胞によってなされる重要な役割(Mumtazらの文献、2012)−及びこれらの細胞によって形成される例えば、抗TNFなどの慣用の免疫抑制剤又はB細胞枯渇生物製剤に対する自己反応性の記憶の実質的な不応性を考えれば(Hiepeらの文献、2011)、CD19(+)B細胞及びCD19(-)B形質細胞は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の駆動因子である。
病原性IgE駆動型B細胞疾患は、全ての自己免疫性及び炎症性疾患のうちの相当な比率となる。病原性免疫グロブリン駆動型B細胞が疾患を引き起こす、唯一ではないが最も顕著な機構は、自己抗体産生を通じてのものである。
病原性IgE駆動型B細胞疾患は、治療が不十分であり、結果として、これは、かなりの死亡率を有し、「良性の」疾患であってもかなりの罹患率を有する。ある現行の高度な療法は、成熟B細胞を標的としている。例えば、ベリムマブは、B細胞活性化因子を阻害するヒトモノクローナル抗体である。アタシセプトは、同じくB細胞活性化因子を阻害する、組換え融合タンパク質である。しかしながら、メモリーB細胞は、例えば、B細胞活性化因子などの生存シグナルを標的とする、例えば、ベリムマブ又はアタシセプトなどの療法に対して抵抗性であることがある(Stohlらの文献、2012)。自己免疫障害の病態形成におけるメモリーB細胞の重要性も、関節リウマチ及び多発性硬化症の治療においてアタシセプトが有効性を欠くことによって実証された(Kapposらの文献、2014;Richezらの文献、2014)。プラスマフェレーシス及び免疫吸収法は、患者の血流からの疾患を引き起こす自己抗体の除去を伴う。しかしながら、これらの治療は、有効性が限られているか、又は複雑かつ実施するのに高いコストがかかる。CD19(+)B細胞を標的とするCAR-T法は、CD19(-)B形質細胞をインタクトなままとし、このことは、CAR-T法を無効としている。IgEレベルに対するリツキシマブの作用は、あまり大きくはなく、持続的な臨床的利益は、観察されていない(van Vollenhovenらの文献、2013)。
オマリズマブ(抗IgE抗体)は、現在、喘息の治療に適応とされている。しかしながら、これは、高価な薬剤である。
従って、病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患に対する新たな治療に対する重要なまだ満たされていない医学的必要性が存在する。
(発明の概要)
(クラススイッチしたメモリーB細胞及び抗体産生に対する影響)
本発明者らによって、クロザピンが、成熟B細胞の一種類であるクラススイッチしたメモリーB細胞(「CSMB」)を顕著に減少させるために、それが、有望で重要な治療効果を有することが見いだされている。
(クラススイッチしたメモリーB細胞及び抗体産生に対する影響)
本発明者らによって、クロザピンが、成熟B細胞の一種類であるクラススイッチしたメモリーB細胞(「CSMB」)を顕著に減少させるために、それが、有望で重要な治療効果を有することが見いだされている。
クロザピンによるCSMBの減少は、その結果として、ASCの数を減少させ、従って、病原性免疫グロブリンを含む特定の免疫グロブリンの分泌を低下させるであろう。また、クロザピンが、成熟B細胞の別の種類である形質芽細胞のレベルの低下を引き起こすことが観察された。この持続性かつ長寿命の適応B細胞及び形質細胞機能に対する機能的作用は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の病態を駆動する病原性免疫グロブリンの持続的な産生によって駆動される疾患を改善し得る。その結果、これは、ASCの数、従って、病原性免疫グロブリンを含む特定の免疫グロブリンの分泌を減少させるであろう。また、クロザピンが、成熟B細胞の別の種類である形質芽細胞のレベルの低下を引き起こすことが観察された。この持続性かつ長寿命の適応B細胞及び形質細胞機能に対する機能的作用は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の病態を駆動する病原性免疫グロブリンの持続的な産生によって駆動される疾患を改善し得る。さらに、本発明者らの新規データは、循環するクラススイッチしたメモリーB細胞の数に対する非常に著しい作用、形質芽細胞の数に対する相当な作用の双方を示し、重要なことに、通常のワクチンに対するリコール応答を欠くことを通じて、以前に曝露された抗原を標的とする抗体の特異的減少をもたらすクラススイッチしたメモリーB細胞及び形質芽細胞の機能に対する作用を示す。本発明者らの新規データはまた、この薬物の、総免疫グロブリンレベルの減少における作用を示している。他のサブタイプのB細胞数及び総B細胞数の枯渇がないことによって示される他のB細胞に対する作用を欠くが、CSMB及び形質芽細胞の特異的減少があるために、この観察結果は、病原性IgE駆動型B細胞疾患における病原性抗体の長期間にわたる産生の中心をなす、CSMB及び形質芽細胞に対する機能的作用を強力に支持する。
本発明者らによるクロザピンで治療された患者におけるクラススイッチしたメモリーB細胞の顕著な減少の発見は、免疫グロブリンクラススイッチングのプロセスに対する強い影響を示している。このことは、二次リンパ器官における胚中心反応後のクラススイッチ組換え(CSR)が、抗原でプライミングされた/抗原を経験した自己反応性のメモリーB細胞及び自己免疫の発生及び/又は維持のための中心経路を提供する病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患において特定の治療的関連性を有する。CSRに影響を及ぼすこと及び免疫グロブリンを低下させることの双方のクロザピンの作用は、自己免疫記憶レパートリーと病原性免疫グロブリンとの双方に対する影響が望ましい病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患の状況において、特別の治療的可能性を有する。
本発明者らによる形質細胞集団に対するクロザピンの著しい影響の確認は、(自己)免疫介在性疾患にも関連性のあるB細胞の多様な抗体非依存性エフェクター機能を調節する明確な可能性を示している。
(形質芽細胞性抗体分泌細胞に対する影響)
本発明者らは、クロザピンが、患者における循環形質芽細胞の低下するレベルに対して重大な作用を発揮することを見出だしている。従って、本発明者らによる循環形質芽細胞数に対するクロザピン使用の重大な影響の観察は、免疫グロブリンの循環形質芽細胞分泌に対する作用、及びTfh(T濾胞性ヘルパー)細胞機能を促進する形質芽細胞の強力な機能への干渉の双方を通じてクロザピンが病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患を調節する可能性を強調する。
本発明者らは、クロザピンが、患者における循環形質芽細胞の低下するレベルに対して重大な作用を発揮することを見出だしている。従って、本発明者らによる循環形質芽細胞数に対するクロザピン使用の重大な影響の観察は、免疫グロブリンの循環形質芽細胞分泌に対する作用、及びTfh(T濾胞性ヘルパー)細胞機能を促進する形質芽細胞の強力な機能への干渉の双方を通じてクロザピンが病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患を調節する可能性を強調する。
(長寿命形質細胞に対する影響)
野生型マウスモデルを用いて、本発明者らは、マウスにおける規則的なクロザピン投与が、骨髄における長寿命形質細胞の比率を顕著に低下させることを見出だしており、これは、対照の抗精神病薬(ハロペリドール)を用いた場合には認められない作用である。特に、ヒト骨髄常在性長寿命PCは、ヒトにおける循環Igの主要な起源として長い間みなされている。従って、これは、本発明者らによるクロザピンで治療された患者におけるIgの低下の確認に対して明確な基礎を提供する。本発明者らによる骨髄長寿命形質細胞を枯渇させるクロザピンの特定の作用の観察は、長寿命形質細胞(自己反応性)記憶に対する影響によって、病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患において炎症をなくし寛解を達成する相当な治療的可能性を有する。
野生型マウスモデルを用いて、本発明者らは、マウスにおける規則的なクロザピン投与が、骨髄における長寿命形質細胞の比率を顕著に低下させることを見出だしており、これは、対照の抗精神病薬(ハロペリドール)を用いた場合には認められない作用である。特に、ヒト骨髄常在性長寿命PCは、ヒトにおける循環Igの主要な起源として長い間みなされている。従って、これは、本発明者らによるクロザピンで治療された患者におけるIgの低下の確認に対して明確な基礎を提供する。本発明者らによる骨髄長寿命形質細胞を枯渇させるクロザピンの特定の作用の観察は、長寿命形質細胞(自己反応性)記憶に対する影響によって、病原性免疫グロブリン駆動型B細胞疾患において炎症をなくし寛解を達成する相当な治療的可能性を有する。
本発明者らの形質細胞集団に対するクロザピンの著しい影響の確認は、(自己)免疫介在性疾患にも関連性のあるB細胞の多様な抗体非依存性エフェクター機能を調節する明確な可能性を示している。
(骨髄及び脾臓の未熟/移行期細胞におけるB細胞前駆体に対する影響)
本発明者らは、野生型マウスへの投薬後の骨髄B細胞前駆体に対するクロザピンの明確な影響を確認している。具体的には、骨髄中のプレB細胞、増殖性プレB細胞、及び未熟B細胞の減少と関連したプレプロB細胞の比率の増加である。合わせると、これらの知見は、特定の免疫学的な負荷の非存在下でのプレプロB細胞期とプレB細胞期との間での部分的な停止を伴う初期のB細胞発生に対するクロザピンの特異的な影響を示唆している。本発明者らは、野生型マウスにおける脾臓T1細胞の比率を低下させるクロザピンの影響をはっきりと認めている。このマウスで知見を反映して、本発明者らによる進行中のクロザピンを受けている患者の観察研究からの暫定的な知見は、循環移行期B細胞の著しい減少を明らかとした。ヒト循環移行期B細胞亜集団は、マウスT1 B細胞に最もよく似た表現型を示し、自己免疫疾患において、増殖している。
本発明者らは、野生型マウスへの投薬後の骨髄B細胞前駆体に対するクロザピンの明確な影響を確認している。具体的には、骨髄中のプレB細胞、増殖性プレB細胞、及び未熟B細胞の減少と関連したプレプロB細胞の比率の増加である。合わせると、これらの知見は、特定の免疫学的な負荷の非存在下でのプレプロB細胞期とプレB細胞期との間での部分的な停止を伴う初期のB細胞発生に対するクロザピンの特異的な影響を示唆している。本発明者らは、野生型マウスにおける脾臓T1細胞の比率を低下させるクロザピンの影響をはっきりと認めている。このマウスで知見を反映して、本発明者らによる進行中のクロザピンを受けている患者の観察研究からの暫定的な知見は、循環移行期B細胞の著しい減少を明らかとした。ヒト循環移行期B細胞亜集団は、マウスT1 B細胞に最もよく似た表現型を示し、自己免疫疾患において、増殖している。
従って、本発明者らによる骨髄B細胞前駆体及び未熟(T1)脾臓B細胞の比率を低下させるクロザピンの影響の観察は、本発明者らによるクロザピンで治療された患者における循環するクラススイッチしたメモリーB細胞及び免疫グロブリンの減少の知見に対して、胚中心を超える追加の解剖学的コンパートメントの起源を提供する。このことの治療的可能性が、初期未熟B細胞により発現される抗体の大部分が、自己反応性であることを考慮することによってさらに強調される(Wardemannらの文献、2003)。
(インビトロでの直接的なB細胞毒性の欠如)
クロザピン、その代謝産物(N-デスメチルクロザピン)、及び比較用抗精神病対照薬(ハロペリドール)の特定の影響を評価するインビトロB細胞分化系を用いる本発明者らの新規データは:分化中のB細胞に対するクロザピン又はその代謝産物の直接的な毒性作用がないこと、分化したASCの抗体を分泌する能力に対する一貫した作用がないこと、及び確立されたインビトロアッセイの観点からの活性化B細胞の初期PC状態への機能的な又は表現型の成熟に対する一貫した抑制性の作用がないことをさらに示している。
クロザピン、その代謝産物(N-デスメチルクロザピン)、及び比較用抗精神病対照薬(ハロペリドール)の特定の影響を評価するインビトロB細胞分化系を用いる本発明者らの新規データは:分化中のB細胞に対するクロザピン又はその代謝産物の直接的な毒性作用がないこと、分化したASCの抗体を分泌する能力に対する一貫した作用がないこと、及び確立されたインビトロアッセイの観点からの活性化B細胞の初期PC状態への機能的な又は表現型の成熟に対する一貫した抑制性の作用がないことをさらに示している。
これらのインビトロ実験の内容に限定されて、これらのデータは、クロザピンが、形質細胞又はそれらの前駆体に対して直接的に有毒な様式で(例えば、細胞の内因性作用を介して)作用して、免疫グロブリンレベルで観察される作用を誘導することがありそうもないことを示唆する。この観察は、B細胞に対するクロザピンの作用が、結果として複数のB細胞亜集団の実質的な枯渇をもたらす、その有効性が、例えば、シグナル伝達誘導性アポトーシス、補体媒介性細胞傷害性、又は抗体依存性細胞傷害などの、B細胞に対する直接的な作用によって媒介される、自己免疫疾患のために使用される既存のB細胞標的療法(例えば、リツキシマブ及び他の抗CD20バイオシミラー)よりも微妙な差違を付けられていることを示唆する。
そのようなクロザピンによる明らかな実質的な直接的毒性の欠如は、無差別のB細胞枯渇(保護的なB細胞の除去を含む)に関連する全身的な免疫抑制のリスクの低下、及び慣用のB細胞枯渇療法を用いた場合に観察される非適応性の変化を回避する可能性を含む、クロザピンにとってのいくつかの有望な治療的利点を有する。
(コラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスモデルにおける有効性及び病原性免疫グロブリンが関与するB細胞駆動型疾患のモデルとしてのCIAの妥当性)
CIAは、フロイント完全アジュバント中に乳化された、軟骨の主要なタンパク質成分であるII型コラーゲン(CII)での齧歯動物及び非ヒト霊長類の遺伝的感受性がある系統の免疫化に由来するよく確立された自己免疫疾患の実験モデルである(Brandらの文献、2004)。これは、通常、マウスにおいては、免疫化後18〜28日で、単相性であり、約60日後に回復する重篤な多関節型の関節炎を伴う自己免疫応答をもたらす(Bessisらの文献、2017;Brandらの文献、2007)。このCIAモデルの病態は、滑膜炎、滑膜増殖/パンヌス形成、軟骨分解、骨侵食、及び関節強直を含み、関節リウマチのものに類似している(Williamsの文献、2012)。
CIAは、フロイント完全アジュバント中に乳化された、軟骨の主要なタンパク質成分であるII型コラーゲン(CII)での齧歯動物及び非ヒト霊長類の遺伝的感受性がある系統の免疫化に由来するよく確立された自己免疫疾患の実験モデルである(Brandらの文献、2004)。これは、通常、マウスにおいては、免疫化後18〜28日で、単相性であり、約60日後に回復する重篤な多関節型の関節炎を伴う自己免疫応答をもたらす(Bessisらの文献、2017;Brandらの文献、2007)。このCIAモデルの病態は、滑膜炎、滑膜増殖/パンヌス形成、軟骨分解、骨侵食、及び関節強直を含み、関節リウマチのものに類似している(Williamsの文献、2012)。
CIAの免疫病態形成は、CII、FcγR(すなわち、IgGのFc受容体)、及び補体へのT細胞特異的な応答を含むことに加えて、病原性自己抗体の産生を伴うCIIへのB細胞特異的な応答に依存的である。CIAの発症におけるB細胞の重要な役割は、インタクトな抗CII T細胞応答にもかかわらずに、B細胞が欠損した(IgM欠失)マウスにおけるCIAの発症の完全な阻止によって実証される(Svenssonらの文献、1998)。さらに、抗CII免疫グロブリン応答自体は通常の胚中心形成に対して大部分は依存的であるとともに、CIAの発症が、B細胞による胚中心形成に対して完全に依存的であることが示されている(Dahdahらの文献、2018;Endoらの文献、2015)。また、B細胞は、骨芽細胞の阻害による骨びらんを含む、CIA病態の他の態様と関係があるとされている(Sunらの文献、2018)。当然の結果として、CII免疫化の前に抗CD20モノクローナル抗体を用いるB細胞枯渇は、遅延性自己抗体産生に関連してCIAの発症及び重症度を遅らせる(Yanabaらの文献、2007)。このモデルにおいて、B細胞の回復は、コラーゲンでの免疫化後の病原性免疫グロブリン産生及び関連する疾患発症をもたらすのに十分であった。
未免疫動物への抗CII血清又はポリクローナルIgG免疫グロブリンの受動移送が、関節炎をもたらす(Stuart及びDixonの文献、1983)のに対して、FcγR鎖の欠如が、マウスにおいてCIAの発症を殆ど完全に抑止する(Kleinauらの文献、2000)という観察によって、CIAの病態形成においてコラーゲン特異的自己抗体が果たす根本的な役割が強調される。加えて、胚中心欠損マウスへの病原性抗体(すなわち、コラーゲン抗体誘発性関節炎、CAIA)の導入は、関節炎をもたらし、これは、病原性抗体が、胚中心反応の要件を大部分回避する能力を示している(Dahdahらの文献、2018)。さらに、適応免疫(すなわち、B細胞及びT細胞)を欠くマウスであっても、CIAの誘導を受けやすい(Nandakumarらの文献、2004)。
従って、本発明者らは、試料抗原に応答して産生されるB細胞由来の病原性免疫グロブリンが、自己免疫性病態を駆動する高度に臨床的に意義のある実験系としてCIAモデルを採用して、クロザピンの潜在的な有効性及びその関連する細胞機構を調査している。本発明者らは、クロザピンが、マウスにおいてCIAの発症を遅らせること、及びその発生率を低下させることを示し、これは、CII免疫化直後に投薬した場合に最も明白なとなる効果である。さらに、本発明者らのデータは、クロザピンが、発症した足の数及び臨床的重症度スコアによって判断して、CIAの重症度を低下させることを示す。本発明者らは、脾臓形質細胞の比率の低下及び局所流入領域リンパ節における胚中心B細胞の非常に著しい減少を含む、CIAの病態形成に関係があるとされている重要な細胞型に対するクロザピンの重要な作用を確認している。さらに、本発明者らの知見は、CII免疫化マウスにおけるクロザピンに反応しての、リンパ節胚中心B細胞上の抗体産生及び抗原提示の機能活動のマーカーの減少を示している。単一の時点で測定して、本発明者らはまた、抗コラーゲン抗体レベルの著しい低下を観察している。まとめると、CIAモデルにおける本発明者らの知見は、病原性免疫グロブリンB細胞駆動型病態に対して、及びそれにより、自己抗体形成が重要な成分であるB細胞介在性障害に対して好ましい影響を及ぼすクロザピンの特定の能力を指し示している。
重要なことに、IgEメモリーB細胞及びIgE形質細胞も、胚中心経路を経て発達することが示されている(Talayらの文献、2012)。特にIgEスイッチメモリーB細胞は、細胞のIgE記憶の主な起源である(Talayらの文献、2012)。更に、IgE+ B細胞及び形質細胞の個体発生は、IgGからの逐次スイッチングプロセスによって起こるIgE+胚中心様B細胞、IgE+形質芽細胞、及びIgE+形質細胞を含む、IgG(1)のものと類似の表現型段階をたどる(Ramadaniらの文献、2017)。特に、B細胞の固有成熟状態(intrinsic maturation state)が、そのIgEへのクラススイッチを受ける能力を決定し、従って、最大比率のIgE+細胞は、胚中心B細胞に由来する(Ramadaniらの文献、2017)。更に、アイソタイプスイッチングは、細胞分裂の数に依存し、かつIgGよりもIgEで多く(Tangyeらの文献、2002)、これは、IgE応答が、一般に、より長期の抗原刺激を必要とするという事実と一致する(Hasboldらの文献、1998)。従って、本発明者らのクラススイッチング、胚中心形成、及び長寿命形質細胞に対するクロザピンの特異的な影響の知見は、病原性IgE駆動型B細胞疾患においてIgE媒介免疫グロブリン応答を開始させ維持する能力に対して実質的に影響を及ぼすことが期待される。実際に、IgE+を効率よく産生するためのより多いB細胞分裂の回数及び胚中心B細胞に対する要件によって、これらの障害が、クロザピンの作用に対して特に感受性が高い可能性があることが示唆されている。
従って、本発明は、対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物であって、特に、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記化合物を提供する。
(図面の簡単な説明)
図1A〜図1Cは、クロザピン処置患者(黒色)及びクロザピン未処置患者(灰色)の、IgG、IgA、及びIgMそれぞれについての各血清濃度値での患者の数の相対頻度を示す(実施例1を参照されたい)。 図1Dは、4名の患者(n=血液学的悪性腫瘍の2名、及びn=発明者の最近の症例対照研究(Ponsfordらの文献、2018b)に以前含まれていた2名)を除いた後の免疫学的評価(薄灰色の最も左の曲線、n=13)で調べられたクロザピンを投与された患者における血清免疫グロブリンレベルの分布を示す密度プロットを示す。クロザピン処置(中程度の灰色の中央の曲線、n=94)及びクロザピン未処置(濃灰色の最も右の曲線、n=98)の血清免疫グロブリン分布も、比較のために示す[出典:(Ponsfordらの文献、2018b)]。点線は、健常成人についての5及び95パーセンタイルを表す(実施例1を参照されたい)。IgG、IgA、及びIgMのそれぞれについて、クロザピン未処置患者と比較して、総免疫グロブリンの分布曲線における左側へのシフトが、クロザピンを受けている患者において観察される;この知見は、クロザピン紹介患者(clozapine referred patients)に特に顕著であった。
図2は、血清IgGレベルに対するクロザピン使用の期間の効果を示す(実施例1を参照されたい)。
図3Aは、健常対照、クリニックを受診したクロザピンを摂取する患者、及び分類不能型免疫不全症(common variable immunodeficiency disorder; CVID)の患者における、クラススイッチしたメモリーB細胞(CSMB)の数(CD27+/IgM-/IgD-、総CD19+細胞の百分率として表される)を示す(実施例1を参照されたい)。 図3Bは、クリニックを受診したクロザピン療法の履歴を有する統合失調症患者(数は示されるとおりである)、分類不能型免疫不全(CVID、n=26)、及び健常対照(n=17)における、総CD19+細胞の百分率として表されるB細胞サブセットを示す。B細胞サブセットは、CD19+細胞でゲーティングされ、以下のように定義される:ナイーブB細胞(CD27-IgD+IgM+)、辺縁帯様B細胞(CD27+IgD+IgM+)、クラススイッチしたメモリーB細胞(CD27+IgD-IgM-)、及び形質芽細胞(CD19+CD27HiIgD-)。非正規分布データについてはノンパラメトリック マン・ホイットニー検定を行った、* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001(実施例1を参照されたい)。
図4Aは、健常対照、クリニックに紹介されたクロザピンを摂取している患者、及び分類不能型免疫不全症(CVID)の患者における、形質芽細胞の数(CD38+++/IgM-、総CD19+細胞の百分率として表される)を示す(実施例1を参照されたい)。 図4Bは、ワクチン特異的IgG応答評価を示す(実施例1を参照されたい)。
図5は、3.5〜5.95g/Lのクロザピンの中断後の3年間の血清IgGのゆるやかな回復を示す。LLN=正常下限(実施例1を参照されたい)。
図6A〜図6Cは、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、循環IgG、IgA、及びIgMのレベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図7は、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、肺炎球菌特異的IgGの末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図8A〜図8Bは、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、絶対的なレベルとして及びリンパ球に対する百分率(%、すなわち、T+B+NK細胞のもの)として表される、B細胞(CD19+)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図9A〜図9Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、ナイーブB細胞(CD19+/CD27-)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図10A〜図10Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した、非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、メモリーB細胞(CD19+/CD27+)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図11A〜図11Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した、非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、クラススイッチした(CS)メモリーB細胞(CD27+/IgM-/IgD-)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図12A〜図12Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、高IgM低IgD(CD27+/IgM++/IgD-)メモリーB細胞、すなわち胚中心後のIgMのみのB細胞の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図13A〜図13Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、移行期B細胞(IgM++/CD38++)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図14A〜図14Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、辺縁帯(MZ)B細胞(CD27+/IgD+/IgM+)の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図15A〜図15Cは、それぞれ、クロザピン(右)と比較した非クロザピン抗精神病薬(「対照」、左)を摂取している患者における、総B細胞に対する百分率(CD19+細胞、%B)、リンパ球に対する百分率(%L)、又は絶対値(abs)として表される、形質芽細胞の末梢血レベルに関する暫定的なデータ知見を示す。平均±SEM(実施例2を参照されたい)。
図16は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、種々の用量でのクロザピンに反応しての、WTマウスの体重増加曲線を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図17は、処置の第3、12、及び21日でのWTマウスの体重比較を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図18は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの骨髄における総B細胞含量並びにプレプロB細胞及びプロB細胞前駆体に対する、クロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図19は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの骨髄におけるプレB細胞、増殖性B細胞、及び未熟B細胞前駆体に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図20は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの骨髄におけるクラススイッチしたメモリーB細胞、形質芽細胞、及び長寿命形質細胞に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図21は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの脾臓における総B細胞、T細胞、他の細胞集団(TCR-β-/B220-)、及び活性化T細胞に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図22は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの脾臓における移行期(T1及びT2)、濾胞性、辺縁帯(MZ)、及び胚中心(GC)B細胞に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例3を参照されたい)。
図23は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスの腸間膜リンパ節(MLN)におけるB細胞亜集団及びT細胞に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM。T1及びT2は、それぞれ、1型移行期B細胞及び2型移行期B細胞である。MZは、辺縁帯である。GCは、胚中心である。(実施例3を参照されたい)。
図24は、ハロペリドール及びビヒクル対照と比較した、WTマウスにおける循環免疫グロブリンに対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM。(実施例3を参照されたい)。
図25は、CIAの臨床的発症日に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM。(実施例4を参照されたい)。
図26は、CIAの発生率に対するクロザピンの影響を示す。(実施例4を参照されたい)。
図27は、免疫化後第1日から投薬を受けたマウスにおける、臨床スコア及び初めに発症した足の厚さによって判定されたCIAの重症度に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図28は、免疫化後のクロザピンでの処置の日(第15日D15又は第1日D1)ごとに、発症した足の数によって判定されたCIAの重症度に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図29は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節におけるB220+(すなわち、CD45+)細胞に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図30は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における形質細胞(PC)に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図31は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心(GC)B細胞(B220+/IgD-/Fas+/GL7+)に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図32は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心(GC)B細胞(B220+/IgD-/Fas+/GL7+)上のGL7の発現に対するクロザピンの影響を示す。MFIは、平均蛍光強度である。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図33は、対照と比較した、CIAマウスの末梢血抗コラーゲンIgG1及びIgG2a抗体レベルに対するクロザピンの影響を示す。(実施例4を参照されたい)。
図34は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞(CD4+ PD1+)に対するクロザピンの影響を示す。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図35は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞(CD4+ PD1+)上のPD1の発現に対するクロザピンの影響を示す。MFIは、平均蛍光強度である。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図36は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞(CD4+ PD1+)上のCXCR5の発現に対するクロザピンの影響を示す。MFIは、平均蛍光強度である。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図37は、対照と比較した、CIAマウスの脾臓及び局所リンパ節における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞(CD4+ PD1+)上のCCR7の発現に対するクロザピンの影響を示す。MFIは、平均蛍光強度である。平均±SEM(実施例4を参照されたい)。
図38は、ヒト形質細胞のインビトロ発生/分化のプロトコール概略図を示す。(実施例5を参照されたい)。
図39は、クロザピン漸増期間、それに続く注射による腸チフスワクチン(Typhim Vi)の投与(矢印)、及びその後の進行中のクロザピンの投薬を説明する治験の概略図を示す。対照コホート(ワクチンのみ、クロザピンなし)及び任意選択コホート(optional cohort)(用量は、用量1及び用量3からの知見を指針として選択されることとなっている)(実施例6を参照されたい)。
(発明の詳細な説明)
本発明はまた、対象に、有効量のクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物を投与することによる、該対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防の方法であって、特に、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記方法を提供する。
本発明はまた、対象に、有効量のクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物を投与することによる、該対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防の方法であって、特に、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記方法を提供する。
本発明はまた、対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防のための、薬品の生産におけるクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物の使用であって、特に、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記使用を提供する。
クロザピン又はノルクロザピンは、任意に、医薬として許容し得る塩及び/又は溶媒和物及び/又はプロドラッグの形態で利用され得る。本発明の一実施態様において、クロザピン又はノルクロザピンは、医薬として許容し得る塩の形態で利用される。本発明のさらなる実施態様において、クロザピン又はノルクロザピンは、医薬として許容し得る溶媒和物の形態で利用される。本発明のさらなる実施態様において、クロザピン又はノルクロザピンは、塩又は溶媒和物の形態ではない。本発明のさらなる実施態様において、クロザピン又はノルクロザピンは、プロドラッグの形態で利用される。本発明のさらなる実施態様において、クロザピン又はノルクロザピンは、プロドラッグの形態では利用されない。
「病原性IgE駆動型B細胞疾患」という用語は、主な機構として異常に高くかつ病原性のIgEレベルを引き起こす外因性抗原が関与するB細胞介在性疾患、特に、炎症性疾患を含む。
病原性IgE駆動型B細胞疾患の外因性抗原の範囲には、好中球(チャーグ・ストラウス血管炎)及び花粉抗原(アレルギー性鼻炎、アレルギー性眼疾患、及びアトピー性喘息、但し、他の原因の場合もあり得る)が含まれる。
例示的な病原性IgE駆動型B細胞疾患は、肺関連疾患であるアトピー性喘息であってもよい。あるいは、該疾患は、皮膚関連疾患であるアトピー性皮膚炎及び慢性非自己免疫性蕁麻疹であってもよい。あるいは、該疾患は、神経関連疾患であるチャーグ・ストラウス血管炎であってもよい。あるいは、該疾患は、鼻の関連疾患であるアレルギー性鼻炎であってもよい。あるいは、該疾患は、眼の関連疾患であるアレルギー性眼疾患であってもよい。あるいは、該疾患は、食道関連疾患である好酸球性食道炎であってもよい。
上述の疾患におけるB細胞及び病原性IgE抗体の役割を強調する参考文献としては、以下のものが挙げられる:
(好酸球性食道炎(EO))
EOは、顕著な好酸球浸潤を病理学的な特徴とする慢性のアレルゲン駆動型免疫媒介性障害である(Chen及びKaoの文献、2017)。Tヘルパー2型細胞(Th2)の重要な役割が、アレルゲン及び関連するIL-4、IL-5、及びIL-13の産生に応答して確認されており、病態形成は、IgE媒介性機構及び非IgE媒介性機構の組合せによって駆動されると考えられている(Weinbrand-Goichbergらの文献、2013)。好酸球は、炎症を促進し、平滑筋を活性化し、マスト細胞及び好塩基球の細胞脱顆粒を誘導する(Chen及びKaoの文献、2017)。
EOは、顕著な好酸球浸潤を病理学的な特徴とする慢性のアレルゲン駆動型免疫媒介性障害である(Chen及びKaoの文献、2017)。Tヘルパー2型細胞(Th2)の重要な役割が、アレルゲン及び関連するIL-4、IL-5、及びIL-13の産生に応答して確認されており、病態形成は、IgE媒介性機構及び非IgE媒介性機構の組合せによって駆動されると考えられている(Weinbrand-Goichbergらの文献、2013)。好酸球は、炎症を促進し、平滑筋を活性化し、マスト細胞及び好塩基球の細胞脱顆粒を誘導する(Chen及びKaoの文献、2017)。
EOの患者の食道生検は、CD20+B細胞密度とマスト細胞との間に正の相関を伴って、B細胞及びIgE結合マスト細胞の対照と比較して増加した密度を明らかにする(Vicarioらの文献、2010)。特に、CSRの最初の工程を触媒するAIDの発現に加えて、IgE重鎖及び成熟IgE mRNAの発現の上方制御が、ε、μ、及びγ4の生殖系列転写産物の検出によって提供されるIgEへの局所的クラススイッチ組換え(CSR)の証拠と共に確認されている(Vicarioらの文献、2010)。これらの知見は、「アトピー性」個体及び「非アトピー性」個体の双方における局所的なCSR及び成熟IgE産生と共に、EOにおける活性なB細胞動員を示し、このことは、EOにおける明確な局所的抗体応答を示している(Vicarioらの文献、2010)。別の研究でも、EOにおける、IgGサブクラス、IgA及びIgM、特に、IgG4の増加が確認されており、後者は、食道の好酸球数、組織学的検査、及び疾患のステージと相関している(Rosenbergらの文献、2018)。免疫複合体形成及びIgG4+形質細胞が、深部粘膜固有層内に認められている(Claytonらの文献、2014)。重要なことに、IgG4にスイッチしたB細胞は、IgEへとスイッチすることができるが、反対は、IgEへのCSRのプロセスの間の遺伝学的な欠失のために起こらない。特に、形質細胞表現型への移行は、IgE B細胞の場合早期に起こり、IgGスイッチしたB細胞の場合よりもかなり早期に起こる(Aalberseらの文献、2016)。
IgEの役割が、EOにおけるマスト細胞を含むIgEを持つ細胞の観察によってさらに示唆されている(Straumannらの文献、2001)。特に、IgEに対する高親和性受容体であるFcεRIを発現している細胞が、EOの患者の食道上皮に数多く存在しており、この受容体が、EOにおける免疫細胞のIgE媒介性活性化において重要となることを示唆している(Yenらの文献、2010)。
EOは、多くの場合、小児では食品中のアレルゲン、また成人では植物/空気中のアレルゲンに対するIgE感作と関連する。血清IgEレベルも、多くの場合、IgE産生性長寿命形質細胞の存在(Aalberseらの文献、2016)と一致して、EOの患者において顕著に上昇しており、これは、特定のIgE抗体と共に、病態形成に対するIgEの寄与を示唆している(Straumannらの文献、2001)。特に、食品特異的なIgE抗体は、小児における食道の好酸球増加症を予測する(Erwinらの文献、2017)。EOにおける活性な食道炎は、食道での上昇した形質細胞のレベルと関連する(Mohammadらの文献、2018)。
特に、外因性抗原を標的とする免疫グロブリンに加えて、最近のデータは、EOにおける、組織学的反応と相関しているようである自己抗体、特に、抗NC16Aの存在を示唆している(Dellonらの文献、2018)。
EOにおけるIgEの病原性の役割を支持して、オマリズマブを用いる抗IgE治療のパイロット研究は、低下した組織IgEレベル、トリプターゼ陽性細胞、及び好酸球を伴う患者の比率の臨床的改善を示した(Loizouらの文献、2015)。
(アトピー性喘息(外因性、早期発症型又はアレルギー性喘息))
アトピー性喘息は、アトピー(アレルギー性鼻炎及びアトピー性湿疹)と関連しており、IL-5で促進される好酸球の活性化と共に、2型ヘルパーT細胞(TH2)応答によって実質的に駆動されて、早期のIgE媒介性(すなわち、1型)過敏症反応を促進すると考えられている。
アトピー性喘息は、アトピー(アレルギー性鼻炎及びアトピー性湿疹)と関連しており、IL-5で促進される好酸球の活性化と共に、2型ヘルパーT細胞(TH2)応答によって実質的に駆動されて、早期のIgE媒介性(すなわち、1型)過敏症反応を促進すると考えられている。
特に、TH2細胞は、B細胞によるIgEクラススイッチを促進する高レベルのIL-4及びIL-13を分泌する。それに続き、IgEメモリーB細胞は、形質細胞へと分化して、例えば、マスト細胞及び好塩基球などの標的細胞上の高親和性受容体であるFcεRIに結合することができる特定のIgEを産生することができる(Palomaresらの文献、2017)。マスト細胞上のFcεRIに対する抗原特異的IgEの結合は、これらの細胞を感作させて、特定の様式でマスト細胞メディエーターを放出するのに重要である。加えて、抗原-IgEから形成される免疫複合体は、B細胞上のCD23又はFcεRIに結合して、IgE関連免疫応答をさらに増幅することができる(Galli及びTsaiの文献、2012)。重要なことに、数名の喘息患者由来の気管支の上皮細胞は、FcεRIを発現し、IgEを固定することができ、エイコサノイド放出の点で機能的であるが、健常対照由来のものは、そうではない(Campbellらの文献、1998)。
重要なことに、IgM/IgG/IgAからIgEへのクラススイッチ組換えは、喘息の気管支組織で局所的に起こることがあり、IgE産生性B細胞のクローン選択及び親和性成熟をもたらして、局所的にIgEを放出する(Takharらの文献、2007)。アレルギー性喘息の患者は、気道において、健常対照及び「アレルギー性の」対照と比較してIgE+ CD19+ B細胞の高度に上昇したレベルを示し、また、増加したIgE+メモリーB細胞及びIgE+形質細胞を示す(Oliveriaらの文献、2017)。特に、IgE+ B細胞の頻度は、好酸球、IgE、及びBAFFの気道レベルと正に相関し、これは、アレルギー性喘息の患者の気道におけるIgE+ B細胞の局所的成熟及び増殖と一致する知見であり(Oliveriaらの文献、2017)、それによるIgEの産生及び強力な抗原提示機能によって疾患過程を駆動する(Wypychらの文献、2018)。更に、組織常在性メモリーB細胞も、アレルギー性喘息のマウスモデルの気道で確認されており、アレルゲン/抗原再曝露に応答して急速に局所的に活性化されることができる常在性のB細胞集団を提供する(Turnerらの文献、2017)。
喘息及び/又はアトピーの小児は、IgE+メモリー細胞及びTH2細胞に加えて、増殖したIgE+形質芽細胞の証拠を示す;特に、形質芽細胞の数は、循環TH2細胞の頻度と正の相関を示す(Heeringaらの文献、2018)。
アトピー性喘息の病態形成におけるB細胞の重要な役割を具体化して、HDM感作マウスにおける、イエダニ・チリダニ(house dust mite)(HDM)曝露前の抗CD20を用いるB細胞枯渇が、アレルギー応答を顕著に減少させ、これは、より低いTH2応答と一致する肺免疫浸潤物中の減少したCD4+ CD44+ T細胞、好酸球、及び好中球を伴う(Wypychらの文献、2018)。従って、B細胞は、インビボでのTH2応答の増幅において重要な役割を果たし、アレルギー応答を促進し、このことは、一部には、抗原を効率的に提示するその能力を反映しているようである(Wypychらの文献、2018)。
アトピー性/アレルギー性喘息におけるIgEの役割を具体化して、アレルギー性喘息患者に対するFcεRIを標的とする(それにより、マスト細胞活性化を刺激することなく、マスト細胞及び他のエフェクター細胞への内因性IgEの結合を阻害する)モノクローナル抗体療法の実施は、血清IgEの低下、吸い込まれたアレルゲンに対する感受性の鈍化、及びアレルゲン吸入と関連する呼吸容量の低下の弱化と関連する、吸い込まれたアレルゲンに対する早期及び後期段階の応答を抑制する(Fahyらの文献、1997)。持続性喘息におけるIgEの重要な病原性の役割のさらなる証拠が、都心部の小児及び若年成人におけるヒト化モノクローナル抗IgE抗体であるオマリズマブの治験から得られる。これは、吸入型グルココルチコイド及びβ-アゴニスト気管支拡張剤療法の必要量がより低かったにもかかわらず、喘息症状の負荷、増悪、特に、季節性ピークの頻度の著しい減少を示した(Busseらの文献、2011)。また、IgEの特異的な体外免疫吸着が、アレルギー性喘息の患者における花粉の季節の間のアレルゲン特異的な好塩基球感受性及び臨床症状を低下させるのに有効であることを示している(Lupinekらの文献、2017)。オマリズマブ投与とは異なって、このアプローチは、侵襲性ではあるものの、IgEの閾値レベルによって制限されない(Lupinekらの文献、2017)。
(アトピー性皮膚炎(AD;アトピー性湿疹))
ADは、そう痒性湿疹性の皮膚病変を特徴とする慢性炎症性皮膚障害である。これは、共通する病態生理学の態様、特に、IgE抗体を形成する傾向及び外因性トリガーに対する感作を伴って、他のアトピー疾患(stopic disease)(喘息及びアレルギー性鼻炎)と関連している(Zhengらの文献、2011)。ADは、B細胞由来のIgEによって駆動される著しい疾患成分に加えて、TH2からTH1への切換えが、慢性化を促進する、二相性のT細胞性障害とみなされる(Furueらの文献、2017)。
ADは、そう痒性湿疹性の皮膚病変を特徴とする慢性炎症性皮膚障害である。これは、共通する病態生理学の態様、特に、IgE抗体を形成する傾向及び外因性トリガーに対する感作を伴って、他のアトピー疾患(stopic disease)(喘息及びアレルギー性鼻炎)と関連している(Zhengらの文献、2011)。ADは、B細胞由来のIgEによって駆動される著しい疾患成分に加えて、TH2からTH1への切換えが、慢性化を促進する、二相性のT細胞性障害とみなされる(Furueらの文献、2017)。
特に、約80〜90%のADの患者が、上昇した血清IgEを特徴とし、上昇したレベルは、複数の抗原に対するIgE自己反応性と相関している(Furueらの文献、2017)。高められたIgEのレベルは、主に、より多いIgE抗体産生細胞の数を反映していると考えられている(Thomasらの文献、1995)。
ADの患者は、特に、重篤な症例において、ケラチノサイトタンパク質に対するIgE自己抗体を示す(Altrichterらの文献、2008)。ADにおける自己反応性IgEの、臨床的重症度及び他の皮膚障害の非存在との相関は、疾患の病態形成におけるIgE媒介性自己反応性の役割を支持する(Navarrete-Dechentらの文献、2016)。特に、ADは、他の自己免疫疾患、例えば、白斑(Mohan及びSilverbergの文献、2015)との関連でも生じ、重篤な顔面の発疹の患者の一部は、ANA陽性を示し(Higashiらの文献、2009)、このことは、ADにおけるより一般化された液性免疫の調節不全を示唆している。解説されている自己抗体としては、特に、SART-1、サイトケラチンII型、hMnSOD、及びBCL7Bを標的とするものが挙げられる(Navarrete-Dechentらの文献、2016)。臨床的重症度スコアは、これらの特定のIgE自己抗体の一部と強く相関している。(Schmid-Grendelmeierらの文献、2005)。この抗原のアレルギー源性は、それのT細胞増殖及び皮膚曝露に対する正の即時型応答を誘導する能力によって更に支持される(Schmid-Grendelmeierらの文献、2005)。
ADにおけるB細胞の役割をさらに支持して、末梢リンパ球サブセットの分析が、活性化B細胞とメモリーT細胞レベルとの間の正の相関を伴って、特に、ADの小児でのB細胞の変化を明らかにしている(Czarnowickiらの文献、2017)。更に、末梢血分析によって、早期のADが、異常なB細胞成熟を特徴とすることが示され、かつADにおけるメモリーB細胞とTH1及びTH2細胞との間の正の相関が明らかされている(Czarnowickiらの文献、2017)。重要なことに、ADの小児において、IgE感作が、IgEクラススイッチングを支持するであろう加速したB細胞発生の証拠を伴って、総IgEレベル、スイッチしたメモリーB細胞、及びTH1/TH2 細胞と一群を成すことが分かっている(Czarnowickiらの文献、2017)。
成人において、ADは、循環移行期B細胞、慢性的に活性化されたメモリーB細胞、形質芽細胞、及びIgEメモリーB細胞の増加と関連する(Czarnowickiらの文献、2016)。特に、IgEのFc領域の低親和性受容体(FcεRII)であるCD23の循環細胞発現が、ADにおいて増加し、ADの臨床的重症度と相関している(Czarnowickiらの文献、2016);この観察は、IgE合成/応答を促進するCD23の役割を考えれば、注目に値する(Pene、1989)。
ADの病態形成における主要なB細胞の役割を支持して、リツキシマブを用いるB細胞枯渇は、組織学的検査(減少したB及びT細胞浸潤)、IL-5/IL-13の改善、及び総IgEのいくらかの減少に関連して、実質的な臨床的改善(重症度/発症面積)をもたらす(Simonらの文献、2008)。特に、ほぼ完全な循環B細胞の枯渇にもかかわらず、皮膚におけるものは、実質的にそれほど減少しておらず(約50%)、療法の前後双方で皮膚試料における形質細胞も明らかであった(Simonらの文献、2008)。更に、抗IgE(オマリズマブ)を用いB細胞枯渇(リツキシマブ)をそれに続ける重篤な抵抗性ADの逐次的な治療が、血清IgE及び末梢血B細胞レベルの低下と関連する劇的な臨床反応を報告している(Sanchez-Ramonらの文献、2013)。ADの駆動における病原性IgE免疫グロブリンの役割をさらに支持して、血清IgEが増加したADの患者における繰り返されたIgE免疫吸着は、IgEの低下と共に著しい臨床的改善をもたらす(Daeschleinらの文献、2015)。
(チャーグ・ストラウス症候群(チャーグ・ストラウス血管炎;好酸球性多発血管炎性肉芽腫症;CSS/EGPA))
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)としても知られるチャーグ・ストラウス症候群は、ANCA関連血管炎(ANCA、約40で抗好中球細胞質抗体陽性)の臨床スペクトルの一部であり、重篤な成人発症喘息、副鼻腔炎、及び血液/組織好酸球増加症と関連する、小型-中型血管全身性壊死性血管炎である(Grohらの文献、2015)。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)としても知られるチャーグ・ストラウス症候群は、ANCA関連血管炎(ANCA、約40で抗好中球細胞質抗体陽性)の臨床スペクトルの一部であり、重篤な成人発症喘息、副鼻腔炎、及び血液/組織好酸球増加症と関連する、小型-中型血管全身性壊死性血管炎である(Grohらの文献、2015)。
CSSの病態形成には、液性応答を伴って、T細胞(特に、過度のTH2応答であるが、TH1及び減少した制御性T細胞の関与も)、活性化された組織好酸球及びB細胞が関与する(Grecoらの文献、2015)。ANCAは、直接的に病原性であり、主に、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びプロテイナーゼ3を標的とし、前者はCCSに特徴的である。ANCAは、ANCA-特異的抗原の結合を通じて及び好中球上のFcγ受容体であるそれらのFc領域によってサイトカイン、細胞溶解性酵素、及びROS放出に繋がる好中球活性化及び脱顆粒をもたらす(Nakazawaらの文献、2019)。
CSSの病態形成におけるIgEの役割を支持して、IgE-免疫複合体曝露を提供する皮膚の逆受身アルサス反応(cutaneous reverse passive Arthus reaction)(IgEを用いる)を受けたマウスは、CSSを暗示する皮膚好酸球性血管炎を発症する(Ishiiらの文献、2009)。特に、このモデルにおける好酸球浸潤は、IgE媒介性免疫複合体曝露に対して著しく特異的であり、IgG抗体注入の場合にはめったに見られない(Ishiiらの文献、2009)。また、免疫複合体形成及び補体の活性化によるCSSにおけるIgEの病原性を支持する証拠も存在する(Mangerらの文献、1985)。
活性な疾患及び頻繁な再発を示すCSSの患者は、増加したレベルの活性化B細胞及び低下したレベルの循環T制御性細胞を示す(Tsurikisawaらの文献、2013)。また、CSSの患者は、IL-21分泌Tヘルパー細胞の増加を通じて、特に、ANCA陽性患者において、形質細胞分化及び抗体媒介性応答に助けとなる細胞環境を示す(Abdulahadらの文献、2013)。
CCSの病態形成におけるB細胞及びその自己抗体の重要な役割を支持して、リツキシマブを用いるB細胞枯渇は、寛解又は部分奏効の誘導及びコルチコステロイド療法の必要量の低下に臨床的に有効である;特に、ベースラインANCAのレベルは、より高いレベルの寛解と関連する(Mohammadらの文献、2016)。これらの知見は、抵抗性のCSS患者の別の臨床試験で確認されており、リツキシマブは、寛解を誘導すると共に、IgE、CRP、及び好酸球のレベルを低下させる(Thielらの文献、2017)。また、抵抗性/再発性CCSにおいてオマリズマブを用いてIgEを標的とすることの、コルチコステロイド節約効果(corticosteroid-sparing effect)の証拠も存在する(Jachietらの文献、2016)。
(アレルギー性鼻炎(AR))
ARは、他のアトピー性の特徴(喘息及びアトピー性皮膚炎)と頻繁に関連する、好発しかつ慢性のIgE媒介炎症性鼻障害である。特定のアレルゲンへの曝露が、後に高親和性受容体であるFcεRIを介して標的細胞(例えば、マスト細胞及び好塩基球)に結合することができるアレルゲン特異的IgEの産生を促進する(Wiseらの文献、2018)。また、ARの患者由来の鼻のマスト細胞は、FcεRI発現の上方制御及び血清IgEレベルと相関する増加した細胞結合性IgEを示す;この細胞は、B細胞によるIgE産生を誘導することもでき、ARを永続化させる可能性がある病原性IGEに決定的に依存するフィードフォワードIgE-FcεRI-マスト細胞系(feed-forward IgE- FcεRI - mast cell axis)を示している(Pawankar及びRaの文献、1998)。
ARは、他のアトピー性の特徴(喘息及びアトピー性皮膚炎)と頻繁に関連する、好発しかつ慢性のIgE媒介炎症性鼻障害である。特定のアレルゲンへの曝露が、後に高親和性受容体であるFcεRIを介して標的細胞(例えば、マスト細胞及び好塩基球)に結合することができるアレルゲン特異的IgEの産生を促進する(Wiseらの文献、2018)。また、ARの患者由来の鼻のマスト細胞は、FcεRI発現の上方制御及び血清IgEレベルと相関する増加した細胞結合性IgEを示す;この細胞は、B細胞によるIgE産生を誘導することもでき、ARを永続化させる可能性がある病原性IGEに決定的に依存するフィードフォワードIgE-FcεRI-マスト細胞系(feed-forward IgE- FcεRI - mast cell axis)を示している(Pawankar及びRaの文献、1998)。
ARにおいて、鼻粘膜B細胞は、末梢血中のものよりも1000倍超多く存在し、アレルゲン曝露後にIgEを産生する(Cokerらの文献、2003;Takharらの文献、2005)。ARの患者の鼻粘膜における局所的クラススイッチ組換えを支持する証拠が存在しており(Cameronらの文献、2000)、これは、アレルゲンに対する局所的免疫応答との関連でのIgEへのIgアイソタイプスイッチングを受けている組織常在性/局所性B細胞を示唆している(Cameronらの文献、2003)。IgE+ B細胞及びIgE+形質細胞は双方とも、ARの患者の鼻粘膜で増加している(KleinJanらの文献、2000)。
ARにおけるIgEの中心的役割を具体化して、オマリズマブを用いる抗IgE療法は、ARの患者において臨床的に有効であり、また、組織/血液内好酸球の季節関連性アレルゲン誘発性の増加を阻害する(Holgateらの文献、2005;Tsabouriらの文献、2014)。
(アレルギー性眼疾患)
季節性及び通年性アレルギー性の結膜炎は、アレルギー性眼疾患の最も好発する形態であり、他のアトピー性疾患と関連しており、機構は、B細胞由来のIgEの重要な役割を含む概説したものと類似している。このことを支持して、オマリズマブを用いる抗IgE療法が、眼疾患が共存するアトピーの個人において有効性を示している(Koppらの文献、2009)。
季節性及び通年性アレルギー性の結膜炎は、アレルギー性眼疾患の最も好発する形態であり、他のアトピー性疾患と関連しており、機構は、B細胞由来のIgEの重要な役割を含む概説したものと類似している。このことを支持して、オマリズマブを用いる抗IgE療法が、眼疾患が共存するアトピーの個人において有効性を示している(Koppらの文献、2009)。
(慢性非自己免疫性蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹、CSU))
蕁麻疹は、好発するマスト細胞駆動型疾患であり、急性又は慢性として分類することができ;慢性非自己免疫性蕁麻疹は、それ自体を、慢性特発性蕁麻疹(CSU)及び慢性誘導性蕁麻疹として分類することができる(Radonjic-Hoesliらの文献、2018)。CSUにおいては明白な外部トリガーは存在せず、かつ大部分の患者は、自己免疫性の原因を有するものの、自己免疫疾患を有しない患者が、かなりの比率で存在する。これらにおいて、架橋することなくマスト細胞上のFcεRIに結合するIgEが、マスト細胞の生存及び増殖を促進し、マスト細胞メディエーター放出の閾値を低下させると考えられている(Changらの文献、2015)。このこと及びこの状態におけるB細胞由来IgEの病原性の役割と一致して、現在までに、オマリズマブでの抗IgE療法を用いるIgE枯渇が、現行の標準治療に対して抵抗性のCSUを治療するのに有効かつ安全であることを説得力を持って確立している2件の第二相及び4件の第三相無作為化プラセボ対照臨床試験が存在している(Changらの文献、2015)。
蕁麻疹は、好発するマスト細胞駆動型疾患であり、急性又は慢性として分類することができ;慢性非自己免疫性蕁麻疹は、それ自体を、慢性特発性蕁麻疹(CSU)及び慢性誘導性蕁麻疹として分類することができる(Radonjic-Hoesliらの文献、2018)。CSUにおいては明白な外部トリガーは存在せず、かつ大部分の患者は、自己免疫性の原因を有するものの、自己免疫疾患を有しない患者が、かなりの比率で存在する。これらにおいて、架橋することなくマスト細胞上のFcεRIに結合するIgEが、マスト細胞の生存及び増殖を促進し、マスト細胞メディエーター放出の閾値を低下させると考えられている(Changらの文献、2015)。このこと及びこの状態におけるB細胞由来IgEの病原性の役割と一致して、現在までに、オマリズマブでの抗IgE療法を用いるIgE枯渇が、現行の標準治療に対して抵抗性のCSUを治療するのに有効かつ安全であることを説得力を持って確立している2件の第二相及び4件の第三相無作為化プラセボ対照臨床試験が存在している(Changらの文献、2015)。
従って、実施態様において、本発明は、(i)対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物、及び(ii)対象に、有効量のクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物を投与することによる、該対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防の方法であって、(i)及び(ii)の場合に、該病原性IgE駆動型B細胞疾患が、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、慢性非自己免疫性蕁麻疹、チャーグ・ストラウス血管炎、アレルギー性鼻炎、及びアレルギー性眼疾患、好ましくは、アトピー性皮膚炎、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される疾患である、前記化合物及び方法を提供する。
好ましくは、前記疾患は、アトピー性皮膚炎、アトピー性喘息、及びアレルギー性鼻炎から選択される。
クロザピンは、これらの疾患のうちの一部を治療するのに価値がある性質となるであろう高いレベルのCNS浸透と関連している(Michelらの文献、2015)。
例えば、アトピー性皮膚炎などのある種の疾患において、該疾患の病態の一因となるT細胞成分が存在することもある。これは、B細胞が、T細胞への専門の抗原提示細胞として作用するという理由で生じる(その重要性はまた、その数の増加を原因として増加する)。B細胞は、T細胞に影響を及ぼす著しい量のサイトカインを分泌する。B-T相互作用は、T依存性タンパク質抗原への応答及びクラススイッチングに関与する。従って、クロザピン及びノルクロザピンが、それらのB細胞数を減少させることに対する作用を原因としてT細胞に対する作用を有することが期待される。
好適には、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグから選択される化合物は、成熟B細胞、特に、CSMB及び形質芽細胞、特に、CSMBを阻害する。「阻害」は、該細胞の数及び/又は活性の低減を意味する。従って、好適には、クロザピン又はノルクロザピンは、CSMB及び形質芽細胞、特に、CSMBの数を減少させる。
実施態様において、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグから選択される化合物は、CD19(+)B細胞及び/又はCD19(-)B形質細胞を減少させる作用を有する。
「治療」という用語は、疾患又は疾患の症状の軽減を意味する。「予防」という用語は、疾患又は疾患の症状の予防を意味する。治療は、単独で又は他の療法との併用での治療を含む。治療は、疾患又はその症状の改善に繋がるか又は疾患又はその症状の進行の速度を低下させる治療を包含する。治療は、再発の予防を含む。
「有効量」という用語は、必要な投薬量及び期間で、薬剤の有毒又は有害な作用を治療上有益な作用が上回る所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。有効な投薬量が、受け手の年齢、性別、健康、及び体重、存在するのであれば併用される治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存するであろうことが理解される。最も好ましい投薬量は、当業者によって必要以上の実験を伴わずに理解され決定できるように、個々の対象に対して合わせられるものである。例示的な投薬量を、以下で説明する。
本明細書で使用される、「対象」は、疾患と関連する少なくとも1つの症状を示すか、疾患と診断されているか、又は疾患を発症するリスクがある、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマなどの家畜;例えば、ネコ、イヌ、ウサギなどの飼育動物;例えば、マウス、ラット、及びモルモットなどの実験動物を含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物である。この用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。好適には、対象は、ヒト対象である。
医薬における使用のために、クロザピン及びノルクロザピンの塩が、医薬として許容し得るはずであることが認識されるであろう。適当な医薬として許容し得る塩は、当業者には明らかであろう。医薬として許容し得る塩としては、Berge, Bighley及びMonkhouse J.の文献、Pharm. Sci. (1977) 66, 1〜19頁に記載されるものが挙げられる。このような医薬として許容し得る塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、又はリン酸、及び有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はナフタレンスルホン酸と形成される酸付加塩が含まれる。他の塩、例えば、シュウ酸塩又はギ酸塩を、例えば、クロザピンの単離において用いてもよく、これらは、本発明の範囲内に含まれる。
クロザピン又はノルクロザピンは、結晶形態又は非結晶形態で調製し得、結晶性の場合には、例えば、水和物として、任意に溶媒和されていてもよい。本発明は、その範囲内に、化学量論溶媒和物(例えば、水和物)及び変動する量の溶媒(例えば、水)を含有する化合物を含む。
例えば、N-アシル化誘導体(アミド)(例えば、ノルクロザピンのN-アシル化誘導体)などの「プロドラッグ」は、受け手に投与すると、クロザピン又はその活性代謝産物もしくは残基を(直接的に又は間接的に)提供することができる化合物である。適当なプロドラッグの別のそのような例としては、クロザピンそれ自体以外のノルクロザピンのアルキル化誘導体が挙げられる。
1つ以上の原子が、自然界で最もよくみられる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられているという事実を除いてクロザピン又はノルクロザピンと同一であるか、又は自然界でより一般的ではない原子質量又は質量数を有する原子の比率が、増加している(後者の概念は、「同位体濃縮」と呼ばれる)同位体標識された化合物もまた、本発明の使用及び方法に想定される。クロザピン又はノルクロザピンに組み込むことができる同位体の例としては、天然の又は非天然の同位元素であり得る、例えば、2H(重水素)、3H、11C、13C、14C、18F、123I、又は125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ヨウ素、及び塩素の同位体が挙げられる。
上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有するクロザピン又はノルクロザピン及びクロザピン又はノルクロザピンの医薬として許容し得る塩が、本発明の使用及び方法のための使用に想定される。同位体標識されたクロザピン又はノルクロザピン、例えば、3H又は14Cなどの放射性同位体が、その中に組み込まれているクロザピン又はノルクロザピンは、薬物及び/又は基質分布アッセイにおいて有用である。トリチウム標識された、すなわち、3H同位体及び炭素-14、すなわち、14C同位体は、それらの調製の容易さ及び検出能力のために特に好ましい。11C及び18F同位体は、PET(陽電子放出断層撮影)において特に有用である。
クロザピン又はノルクロザピンは、医薬組成物における使用のために意図されているために、これが、好ましくは、実質的に純粋な形態で、例えば、少なくとも60%純度で、より好適には、少なくとも75%純度で、好ましくは少なくとも85%純度で、特に、少なくとも98%純度で(%は、重量対重量基準のものである)提供されることが容易に理解されるであろう。化合物の純粋でない調製物を、医薬組成物中に用いられるより純粋な形態を調製するのに用いてもよい。
一般的に、クロザピン又はノルクロザピンは、当業者に公知の有機合成技術によって(例えば、US3539573に記載されているように)調製し得る。
療法における使用のためのクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、通常、医薬組成物として投与される。クロザピンもしくはノルクロザピン、又はその医薬として許容し得る塩及び/もしくは溶媒和物及び/もしくはプロドラッグ、並びに医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含む医薬組成物も提供される。該組成物は、対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のために提供され、ここで、該化合物は、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす。
クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、任意の都合のよい方法で、例えば、経口、非経口、頬側、舌下、経鼻、直腸、又は経皮投与で投与され得、かつ該医薬組成物を、それに合わせて適合させ得る。他の考えられる投与経路としては、鼓室内及び蝸牛内が挙げられる。好適には、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、経口投与される。
経口的に与えられた場合に活性であるクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、液剤又は固形剤として、例えば、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、カプセル剤、又はロゼンジ錠として製剤化することができる。
液体製剤は、一般に、適当な液体担体(複数可)、例えば、水、エタノール、又はグリセリンなどの水性溶媒、又は例えば、ポリエチレングリコール又は油などの非水性溶媒中の活性成分の懸濁液又は溶液からなるものである。該製剤は、懸濁化剤、防腐剤、香味料、及び/又は着色料も含有していてもよい。
錠剤の形態の組成物は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、及びセルロースなどの、固形製剤を調製するために通常使用される任意の適当な医薬担体(複数可)を用いて調製することができる。
カプセル剤の形態の組成物は、ルーチンのカプセル化手順を用いて調製することができ、例えば、活性な成分を含有するペレットを、標準的な担体を用いて調製し、その後に、硬質ゼラチンカプセルに充填することができる;あるいは、分散液又は懸濁液を、任意の適当な医薬担体(複数可)、例えば、水性ゴム質、セルロース、ケイ酸塩、又は油を用いて調製することができ、該分散液又は懸濁液を、その後、軟質ゼラチンカプセルに充填することができる。
典型的な非経口組成物は、滅菌水性担体又は非経口的に許容し得る油、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、ラッカセイ油、又はゴマ油中の活性成分の溶液又は懸濁液からなる。あるいは、溶液を、凍結乾燥して、その後、投与直前に適当な溶媒を用いて再構成することができる。
経鼻又は経肺投与用の組成物は、好都合には、エアロゾル剤、スプレー剤、滴剤、ゲル剤、及び散剤として製剤化し得る。エアロゾル製剤は、通常、医薬として許容し得る水性又は非水性溶媒中の活性成分の溶液又は微細懸濁液を含み、通常、噴霧装置との使用のためのカートリッジ又は詰め替え品の形態をとることができる密閉容器中に滅菌形態で単回又は複数回投与量の量で提供される。あるいは、密閉容器は、例えば、単回投与経鼻又は経肺吸入器又は絞り弁が取り付けられたエアロゾルディスペンサーなどの、使い捨ての分注装置であってもよい。剤形が、エアロゾルディスペンサーを含む場合、それは、圧縮された気体、例えば、空気、又は例えば、フルオロクロロハイドロカーボン又はヒドロフルオロカーボンなどの有機プロペラントとすることができるプロペラントを含有するであろう。エアロゾル剤形もまた、ポンプ噴霧器の形態をとることができる。
頬側又は舌下投与に適した組成物としては、活性な成分が、例えば、糖及びアラビアゴム、トラガント、又はゼラチン、及びグリセリンなどの担体と共に製剤化されている錠剤、ロゼンジ錠、及びトローチが挙げられる。
直腸内投与用の組成物は、好都合には、例えば、カカオ脂などの慣用の坐剤基剤を含有する坐剤の形態である。
皮膚への外用投与に適した組成物としては、軟膏剤、ゲル、及びパッチが挙げられる。
一実施態様において、組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、又はアンプル剤などの単位用量形態にある。
組成物は、投与時の(すなわち、経口組成物の場合には摂取時の)即時放出プロファイルを有してか、又は投与時の持続性又は遅延性の放出プロファイルを有して調製し得る。
例えば、24時間にわたるクロザピンの一定の放出を提供するよう意図される組成物が、その内容が全体として本明細書に組み込まれる、WO2006/059194に記載されている。
組成物は、投与の方法に応じて0.1重量%〜100重量%、例えば、10〜60重量%の活性物質を含有し得る。組成物は、投与の方法に応じて0%〜99重量%、例えば、40%〜90重量%の担体を含有し得る。組成物は、投与の方法に応じて、0.05mg〜1000mg、例えば、1.0mg〜500mgの活性物質(すなわち、クロザピン又はノルクロザピン)を含有していてもよい。組成物は、投与の方法に応じて、50mg〜1000mg、例えば、100mg〜400mgの担体を含有していてもよい。上述の疾患の治療又は予防に用いられるクロザピン又はノルクロザピンの用量は、疾患の重篤度、患者の体重、及び他の類似の因子によって、通常通りに変化するであろう。しかしながら、一般的な指針として、遊離塩基としてのクロザピンの好適な単位用量は、0.05〜1000mg、より好適には、1.0〜500mgであろう。また、そのような単位用量は、1日1回よりも多く、例えば、1日2回又は3回投与され得る。そのような療法は、数週間又は数か月間にわたって実施される。
クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、B細胞又はB細胞-T細胞相互作用を阻害するものなどの、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療のための別の治療薬剤と組み合わせて投与され得る。別の治療薬剤としては、例えば:抗TNFα剤(例えば、抗TNFα抗体(例えば、インフリキシマブ又はアダルムマブ(adalumumab))など)、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムス又はシクロスポリンなど)、抗増殖剤(例えば、ミコフェノレート(例えば、モフェチルもしくはナトリウム)又はアザチオプリンなど)、全身抗炎症薬(例えば、ヒドロキシクロロキン、又はNSAID(例えば、ケトプロフェン)、及びコルヒチンなど)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムスなど)、ステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、抗CD80/CD86剤(例えば、アバタセプトなど)、抗CD-20剤(例えば、抗CD-20抗体(例えば、リツキシマブ)など)、抗BAFF剤(例えば、抗BAFF抗体(例えば、タバルマブもしくはベリムマブ)、又はアタシセプトなど)、免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート又はシクロホスファミドなど)、抗FcRn剤(例えば、抗FcRn抗体)、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)、及び他の抗体(例えば、ARGX-113、PRN-1008、SYNT-001、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、アレムツズマブ、ミラツズマブ、エプラツズマブ、及びブリナツモマブなど)が挙げられる。
本発明と組み合わせて用いられ得る他の療法としては、例えば、静脈内免疫グロブリン療法(IVIg)、皮下免疫グロブリン療法(SCIg)、例えば、促進性皮下免疫グロブリン療法(facilitated subcutaneous immunoglobulin therapy)、プラスマフェレーシス、及び免疫吸収法などの非薬理学的療法が挙げられる。
従って、本発明は、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防のための第2の又はさらなる治療薬剤、例えば、抗TNFα剤(例えば、抗TNFα抗体(例えば、インフリキシマブ又はアダルムマブ)など)、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムス又はシクロスポリンなど)、抗増殖剤(例えば、ミコフェノレート(例えば、モフェチルもしくはナトリウム)又は及びアザチオプリンなど)、全身抗炎症薬(例えば、ヒドロキシクロロキン及びNSAID(例えば、ケトプロフェン)、及びコルヒチンなど)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムスなど)、ステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、抗CD80/CD86剤(例えば、アバタセプトなど)、抗CD-20剤(例えば、抗CD-20抗体(例えば、リツキシマブ)など)、抗BAFF剤(例えば、抗BAFF抗体(例えば、タバルマブもしくはベリムマブ)、又はアタシセプトなど)、免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート又はシクロホスファミドなど)、抗FcRn剤(例えば、抗FcRn抗体)、及び他の抗体(例えば、ARGX-113、PRN-1008、SYNT-001、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、アレムツズマブ、ミラツズマブ、エプラツズマブ、及びブリナツモマブなど)からなる群から選択される物質との組み合わせで、病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のためのクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物を提供する。
クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物が、他の治療薬剤と組み合わせて使用される場合、該化合物は任意の都合のよい経路で別々に、順次に、又は同時に投与され得る。
上述の組合せは、好都合には、医薬製剤の形態での使用のために提供されてもよく、従って、医薬として許容し得る担体又は賦形剤と共に上で規定されたような組合せを含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を構成する。そのような組合せの個々の成分は、別々の医薬製剤中又は複合医薬製剤中で、順次又は同時のいずれかで投与され得る。また、組合せの個々の成分は、同一又は異なる経路によって別々に投与され得る。例えば、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、及びそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物、並びに前記他の治療薬剤が、双方とも経口投与されてもよい。あるいは、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物が、経口的に投与され、前記他の治療薬剤が、静脈内又は皮下へ投与されてもよい。
通常、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物は、ヒトに投与される。
(実施例)
(実施例1)
(抗精神病療法を受けるヒト患者の最初の観察研究)
抗体欠損症とクロザピン使用との間に生じ得る関連を評価するために、本発明者らは、クロザピン又は別の抗精神病薬のいずれかを摂取している患者において、免疫グロブリンレベル及び特異抗体レベル(ヘモフィルス(ヘモフィルスB)(Hib)、破傷風、及び肺炎球菌に対するもの)を比較する横断的症例対照研究に着手した。
(実施例1)
(抗精神病療法を受けるヒト患者の最初の観察研究)
抗体欠損症とクロザピン使用との間に生じ得る関連を評価するために、本発明者らは、クロザピン又は別の抗精神病薬のいずれかを摂取している患者において、免疫グロブリンレベル及び特異抗体レベル(ヘモフィルス(ヘモフィルスB)(Hib)、破傷風、及び肺炎球菌に対するもの)を比較する横断的症例対照研究に着手した。
(方法)
クロザピン又は非クロザピン抗精神病薬いずれかの投与を受けている成人(>18歳)を、2013年11月から2016年12月の間に専門の研究官によってCardiff & Vale及びCwm Tafの保健委員会(Cardiff & Vale and Cwm Taf Health Boards)のCommunity Mental Health Trust (CMHT)外来クリニック10施設への通常のクリニック受診の間に募集した(表1)。同意の後に、参加者は、生活習慣、薬歴、及び感染症についての短い質問表を完成させ、それに続き採血を受けた。必要とされる場合、薬歴を、患者の総合診療記録を用いて確認した。正式な精神医学的診断及び抗精神病薬の使用を、他の試験に合わせて医療記録を用いて確認した。患者の入院率を、動員前12か月の期間の電子的な調査によって確認した。化学療法、カルバマゼピン、フェニトイン、抗マラリア薬、カプトプリル、高用量グルココルチコイド、血液悪性腫瘍、及び22q11欠失症候群の既往を含む、低ガンマグロブリン血症の既知の可能性のある原因を有する患者は、除外された。
クロザピン又は非クロザピン抗精神病薬いずれかの投与を受けている成人(>18歳)を、2013年11月から2016年12月の間に専門の研究官によってCardiff & Vale及びCwm Tafの保健委員会(Cardiff & Vale and Cwm Taf Health Boards)のCommunity Mental Health Trust (CMHT)外来クリニック10施設への通常のクリニック受診の間に募集した(表1)。同意の後に、参加者は、生活習慣、薬歴、及び感染症についての短い質問表を完成させ、それに続き採血を受けた。必要とされる場合、薬歴を、患者の総合診療記録を用いて確認した。正式な精神医学的診断及び抗精神病薬の使用を、他の試験に合わせて医療記録を用いて確認した。患者の入院率を、動員前12か月の期間の電子的な調査によって確認した。化学療法、カルバマゼピン、フェニトイン、抗マラリア薬、カプトプリル、高用量グルココルチコイド、血液悪性腫瘍、及び22q11欠失症候群の既往を含む、低ガンマグロブリン血症の既知の可能性のある原因を有する患者は、除外された。
13名のクロザピンを摂取する患者(そのうちの11名は、本研究とは無関係に、免疫学クリニックでの評価のために紹介されていた)からの臨床的及び免疫学的なデータを、表3に示す。これらの患者、健常対照、及び分類不能型免疫不全(CVID)の患者の検査データを、図3に示す。前記11名の独立に紹介された患者は、総合的な試験解析からは除外された。
免疫グロブリンレベル(IgG、IgA、及びIgM)を、比濁分析(Siemens BN2比濁計;Siemens)、血清電気泳動(Sebia Capillarys 2;Sebia、Norcross、GA、米国)及び、適切な場合には、血清免疫固定法(Sebia Hydrasys;Sebia、Norcross、GA、米国)によってアッセイした。インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、破傷風、及び肺炎球菌の莢膜多糖に対する特異抗体力価を、ELISAによって決定した(The Binding Site、Birmingham、英国)。リンパ球サブセット、ナイーブT細胞、及びEUROclass B細胞表現型決定を、Beckman Coulter FC500 (Beckman Coulter、California、米国)フローサイトメーターを用いて計数した。全ての試験は、ウェールズ大学病院(the University Hospital of Wales)の英国認証機関認定審議会(the United Kingdom Accreditation Service; UKAS)認定免疫検査室で行なわれた。用いられた免疫グロブリンレベルの成人の検査基準範囲は、IgG 6〜16g/L、IgA 0.8〜4g/L、IgM 0.5〜2g/Lであった。
検査及び臨床データの統計学的解析を、Microsoft Excel及びGraphpad Prismバージョン6.07(グラフパッド、San Diego、California、米国)を用いて行った。D’Agoustino及びPearsonの検定が、ガウス分布からの著しい逸脱を示した場合(その場合には、ノンパラメトリックマン・ホイットニー検定を用いた)を除き、独立標本t検定を行った。全ての検定は、p<0.05の有意水準を用いる両側検定である。
(結果)
(研究の参加者)
合計で291名のクロザピンを摂取している患者及び280名のクロザピン未処置患者と交渉し、123名のクロザピン患者及び111名のクロザピン未処置患者が、本研究に同意した(表1)。目標の各群100名の患者が達成された時に、プロトコールのとおりに募集を停止した。わずかな差が存在しており、性別はクロザピン処置群で男性が多く(53%対50%)、かつクロザピン群で平均年齢が低かった(45歳対50歳)。これらの差は、血清免疫グロブリンの成人基準範囲に性差がなく、かつ統合失調症は男性が優勢であるために、問題とされることはなさそうである。喫煙、糖尿病、COPD/喘息、及びアルコール摂取のレベルは、群間で類似していた。クロザピン群でより多くの患者が感染症で入院しており(1患者あたり1年あたり0.12対0.06)、対照と比較して、より多くの患者が、1年あたり>5コースの抗生物質を摂取していた(5.3%対2%)。この統合失調症の診断、抗体欠損症のリスク因子としての薬物療法、及び喫煙の考えられる影響が、部分群解析で評価される(表2)。
(研究の参加者)
合計で291名のクロザピンを摂取している患者及び280名のクロザピン未処置患者と交渉し、123名のクロザピン患者及び111名のクロザピン未処置患者が、本研究に同意した(表1)。目標の各群100名の患者が達成された時に、プロトコールのとおりに募集を停止した。わずかな差が存在しており、性別はクロザピン処置群で男性が多く(53%対50%)、かつクロザピン群で平均年齢が低かった(45歳対50歳)。これらの差は、血清免疫グロブリンの成人基準範囲に性差がなく、かつ統合失調症は男性が優勢であるために、問題とされることはなさそうである。喫煙、糖尿病、COPD/喘息、及びアルコール摂取のレベルは、群間で類似していた。クロザピン群でより多くの患者が感染症で入院しており(1患者あたり1年あたり0.12対0.06)、対照と比較して、より多くの患者が、1年あたり>5コースの抗生物質を摂取していた(5.3%対2%)。この統合失調症の診断、抗体欠損症のリスク因子としての薬物療法、及び喫煙の考えられる影響が、部分群解析で評価される(表2)。
(抗体レベルに対するクロザピンの作用)
図1A〜図1Cは、クロザピンを投与された患者における3つの免疫グロブリンクラス(IgG、IgA、及びIgM)全ての顕著に減少した濃度を示し、IgG、IgA、及びIgMのそれぞれについての全体としての分布において、クロザピン未処置対照群と比較して、より低い免疫グロブリンレベルへのシフトを伴う。基準範囲を下回る免疫グロブリンレベルを有する123名の患者の百分率は、111名のクロザピン未処置患者のIgG 1.8%、IgA 0.0%、及びIgM 14.4%と比較して、IgG 9.8%(p<0.0001)、IgA 13.0%(p<0.0001)、及びIgM 38.2%(p<0.0001)であった。高い割合のクロザピン処置及びクロザピン未処置双方の患者が、HiB(51%及び56%が、1mcg/ml未満(オレンジらの文献、2012))、肺炎球菌(54%及び56%が、50mg/L未満(Chuaらの文献、2011))、及び破傷風(12%及び14%が、0.1IU/ml未満)についての保護的なレベルを下回る特異抗体レベルを有していた。肺炎球菌のIgA(31U/ml対58.4U/ml p<0.001)及びIgM(58.5U/ml対85.0U/ml p<0.001)レベルは、クロザピン未処置患者と比較してクロザピン処置患者でかなり低い。
図1A〜図1Cは、クロザピンを投与された患者における3つの免疫グロブリンクラス(IgG、IgA、及びIgM)全ての顕著に減少した濃度を示し、IgG、IgA、及びIgMのそれぞれについての全体としての分布において、クロザピン未処置対照群と比較して、より低い免疫グロブリンレベルへのシフトを伴う。基準範囲を下回る免疫グロブリンレベルを有する123名の患者の百分率は、111名のクロザピン未処置患者のIgG 1.8%、IgA 0.0%、及びIgM 14.4%と比較して、IgG 9.8%(p<0.0001)、IgA 13.0%(p<0.0001)、及びIgM 38.2%(p<0.0001)であった。高い割合のクロザピン処置及びクロザピン未処置双方の患者が、HiB(51%及び56%が、1mcg/ml未満(オレンジらの文献、2012))、肺炎球菌(54%及び56%が、50mg/L未満(Chuaらの文献、2011))、及び破傷風(12%及び14%が、0.1IU/ml未満)についての保護的なレベルを下回る特異抗体レベルを有していた。肺炎球菌のIgA(31U/ml対58.4U/ml p<0.001)及びIgM(58.5U/ml対85.0U/ml p<0.001)レベルは、クロザピン未処置患者と比較してクロザピン処置患者でかなり低い。
部分群解析(表2)は、免疫グロブリンの減少が、ことによると、任意の他の薬物、統合失調症の診断、及び喫煙を含む交絡因子によって説明されるかどうかを決定するために試みられた。抗体欠損症の他の二次的な原因(加えて、追加の診断が見つかった少数-表1)を除外することの作用の評価を、カラムBに示す。抗てんかん薬を摂取していたことに基づいて除外された患者の数は、クロザピン処置群でより高かった。これは、てんかんの治療としてというよりはむしろ、気分を安定させる性質を求めてのこれらの薬剤の使用を反映していそうである。
(表2 サブグループA〜Dにおける免疫グロブリンレベル及び特異抗体レベル)
データは、特に断りのない限り、平均±1 SEMとして示される。*独立t検定(正規分布)又は†マン・ホイットニー(非正規分布)
有意性のレベル:*/† p<0.05、**/†† p<0.005、***/††† p<0.0005、****/†††† p<0.0001
有意性のレベル:*/† p<0.05、**/†† p<0.005、***/††† p<0.0005、****/†††† p<0.0001
減少したIgG、IgA、IgM並びに肺炎球菌IgA及びIgMとクロザピンとの関連は、精神医学的診断が統合失調症のみに限定された場合(カラムC)、及び非喫煙者が除外された場合(カラムD)を含めて、全ての部分群で95%信頼区間で統計学的に有意なままであった。抗体欠損症の二次的原因が、除外された場合(カラムB)には、減少した免疫グロブリンのオッズ比は(95%の信頼区間で)、IgG 9.02(1.11〜73.7)、IgA:32.6(1.91〜558)、及びIgM:2.86 (1.42〜5.73)であった。加えて、より長いクロザピン療法の期間は、図2に示されるより低い血清IgGレベル(p 0.014)と関連する。これは、別の抗精神病薬で治療されたクロザピン未処置患者では、クロザピン療法群よりも長い治療期間にもかかわらず観察されない。
(紹介されたクロザピンを摂取している患者の免疫学的な評価)
クロザピンを受けている13名の患者が、独立に、抗体欠損症の評価のために免疫学クリニックに紹介された。2名は、以前に、本研究に採用されており、他の11名は、バイアスを避けるために本研究に含めていない。13名の患者のうちの5名は、全ウェールズ算出グロブリンスクリーニングプログラム(the all Wales calculated globulin screening program)によって確認された。従って、この13名の「実際の(real life)」患者の群でより詳細な免疫学的な評価を試みて、追加の背景情報を提供することが可能であった(表3)。
クロザピンを受けている13名の患者が、独立に、抗体欠損症の評価のために免疫学クリニックに紹介された。2名は、以前に、本研究に採用されており、他の11名は、バイアスを避けるために本研究に含めていない。13名の患者のうちの5名は、全ウェールズ算出グロブリンスクリーニングプログラム(the all Wales calculated globulin screening program)によって確認された。従って、この13名の「実際の(real life)」患者の群でより詳細な免疫学的な評価を試みて、追加の背景情報を提供することが可能であった(表3)。
図1D、図3B、図4B、及び図5に示されたある種の追加の分析は、表3で触れた前記13名に加えて4名の追加募集された患者を含む紹介されたクロザピン患者の僅かに異なるセットに対して行われた。図1Dについては、17名の患者のうちの4名が、種々の理由で除外されており、従って、データを示した患者の数は、13名である。図3Bについては、データを示した患者の数は、図に記載されている。図4Bについては、データを示した患者の数は、以下で記載する。図5については、データを示した患者の数は、15名である。
免疫グロブリンは、全ての患者(平均IgG 3.6g/L、IgA 0.34g/L、及びIgM 0.21g/L)において減少した。重篤な全体的なリンパ球減少症又はB細胞リンパ球減少症はなかった。しかしながら、全ての患者で、CSMBの百分率の大きな低下がみられた(平均1.87%、基準範囲6.5〜29.1%)。CSMBのかなりの減少は、成人における最も好発する重篤な原発性免疫不全である分類不能型免疫不全(CVID)患者に特徴的である。健常対照と比較した、これらのクロザピン処置患者及びCVID患者でのCSMBの百分率を、図3Aに示す(p<0.0001)。CVID患者及び健常対照と比較したクロザピン患者のうちの6名についての形質芽細胞レベルを、図4A(p=0.04)に示し、図3Bでは、年齢をマッチさせたCVID及び健常対照とともに示す。形質芽細胞の減少も、分類不能型免疫不全(CVID)患者に特徴的であり、かつこれも、クロザピン処置患者で観察された。ワクチン接種に対する応答が、評価を受けた10/11の患者で損なわれ、管理は、2/13の患者に対する緊急時バックアップ抗生物質、9/13における予防的抗生物質を含んでおり、6/13の患者は、免疫グロブリン交換療法(IGRT)で治療された。抗体欠損症を理由としてクロザピンを中止した患者はいなかった。CVID患者のサブセットで生じる炎症性又は肉芽腫性の合併症は、観察されなかった。
ワクチン特異的IgG応答が、臨床評価の一部としてルーチンに評価され、図4Bにまとめられる。はじめの評価では、推定される保護閾値を下回るレベルがよく見られ、各個人が試験を受けて、12/16の患者(75%)においてヘモフィルスインフルエンザB(HiB)に対するIgG<1mcg/ml;15/16の患者(94%)において肺炎球菌-IgG<50mg/L;かつ6/16の患者(38%)において破傷風-IgG<0.1 IU/mLであった。Menitorix(HiB/MenC)ワクチン接種後の血清学を、4週間後に評価し、5/12(42%)の個人が、Haemophilus-IgG応答≧1mcg/mlを配備することができず、かつ1/12が、世界保健機関によって規定される≧0.1 IU/mLのワクチン接種後破傷風-IgGレベルを超えることができなかった。Pneumovax IIの後に、8/11(73%)の個人が、≧50mg/Lの閾値を超えるIgG応答を発揮することができなかった。
図5は、3年にわたる血清IgGレベルの3.5g/Lから5.95g/Lへのゆるやかな回復を示すが、クロザピンの中断後にIgA又はIgMの明確な改善は伴われない。
その後、1名の患者が、クロザピン中断に対して標準化されている好中球減少症を理由としてクロザピンを中止した。それに続く24か月にわたり、血清IgGレベルは、3.3g/Lから4.8g/L、その後5.95g/Lに徐々に増加したが、IgA及びIgMは、低いままであった。IgGの増加には、同時にクラススイッチしたメモリーB細胞の1.58から2.77%への増加が伴われ、このことは、クロザピンの中止によるゆるやかな回復を示唆している。
図1Dは、免疫学的評価で調べられたクロザピンを投与された患者における血清免疫グロブリンレベルの分布を示す密度プロットを示す。また、クロザピン処置(n=94)及びクロザピン未処置(n=98)の血清免疫グロブリン分布を、比較のために示す(出典:Ponsfordらの文献、2018a)。点線は、健常成人についての5及び95パーセンタイルを表す。クロザピン未処置患者と比較して、総免疫グロブリンの分布曲線の左側へのシフト(減少)が、IgG、IgA、及びIgMのそれぞれについて、クロザピンを受けている患者において観察される;この発見は、追加募集されたクロザピン紹介患者で特に顕著であった。
(結果の概要)
患者におけるクロザピン治療が、全ての免疫グロブリンタイプの著しい減少に繋がった。免疫グロブリン基準範囲を下回る患者の百分率は、クロザピン未処置患者(n=111)と比較してクロザピン処置患者(n=123)で高かった(IgG<6g/L:9.8%対1.8%;IgA<0.8g/L:13.1%対0.0%;IgM<0.5g/L:38.2%対14.2%)(p<0.0001)(図1A〜図1Cを参照されたい)。
患者におけるクロザピン治療が、全ての免疫グロブリンタイプの著しい減少に繋がった。免疫グロブリン基準範囲を下回る患者の百分率は、クロザピン未処置患者(n=111)と比較してクロザピン処置患者(n=123)で高かった(IgG<6g/L:9.8%対1.8%;IgA<0.8g/L:13.1%対0.0%;IgM<0.5g/L:38.2%対14.2%)(p<0.0001)(図1A〜図1Cを参照されたい)。
クロザピン治療期間の延長は、クロザピンで治療された患者において次第に減少するIgGレベルと関連していたが、他の抗精神病薬を受けていたクロザピン未処置患者では関連していなかった(図2を参照されたい)。
特に、IgGレベルに対するクロザピンの作用が、ゆっくりと(数年)ではあるものの可逆的であることが分かった。これは、特に、長寿命IgG+形質細胞に対するクロザピンの影響と一致する。
特定のIgG抗体が、クロザピン処置群及びクロザピン未処置群の双方で保護的なレベルを下回った(HiB 51.2%対55.9%;肺炎球菌53.7%対55.9%;破傷風12.2%対13.5%))。しかしながら、肺炎球菌IgA及びIgMレベルは、クロザピン未処置患者と比較してクロザピン処置患者で顕著に低かった(IgA 31.0U/L対58.4U/L;IgM 58.5U/L対85U/L)(p<0.001)(表2を参照されたい)。
CSMBの平均レベルは、健常対照(n=36)及び6.5〜29.1%の基準範囲と比較して(p<0.0001)、独立にクリニックに紹介されかつ総合的な研究に含めなかったクロザピン処置患者(n=12)で及びCVID患者(n=54)で1.87%に顕著に低下した(図3Aを参照されたい)。形質芽細胞の平均レベルも、クロザピン処置患者で低下した(p=0.04)。
図3Bは、紹介されたクロザピン患者が、年齢をマッチさせたCVID及び健常対照対象と比較される、図3Aのデータの延長を示す。第1のグラフは、総B細胞数が、クロザピン、CVID、及び健常対照の間で類似であることを示し、第2のグラフは、クロザピン処置及び健常対照の辺縁帯B細胞数の間に有意な差がないことを示し、一方で、CVID患者においては数の増加が観察される。下の2つのグラフは、クロザピン処置患者及びCVID患者の双方におけるCSMB及び形質芽細胞の双方の健常対照と比較しての著しい減少を示す。
(実施例2)
(抗精神病療法を受けているヒト患者についての第2の観察研究)
抗精神病療法を受けている患者における横断観察設計を用いて、本研究は、他の抗精神病薬と比較して、クロザピンの使用、免疫表現型−具体的には、循環B細胞サブセット及び免疫グロブリンレベル−、並びに記録された感染症の間の関連を試験しようとしている。本研究は、Ashworth Hospitalから及びMersey Care NHS Foundation Trustにおける地域精神保健活動の外来患者から、クロザピンを基盤とする患者及び他の抗精神病薬を基盤とする患者を募集している。知見は、より詳細な免疫表現型解析を通じたB細胞集団に対するクロザピンの影響についての見識を広げることに加えて、一部には、直交集団(orthogonal population)における初めの観察研究から来た者の妥当性確認を提供するであろう。
(抗精神病療法を受けているヒト患者についての第2の観察研究)
抗精神病療法を受けている患者における横断観察設計を用いて、本研究は、他の抗精神病薬と比較して、クロザピンの使用、免疫表現型−具体的には、循環B細胞サブセット及び免疫グロブリンレベル−、並びに記録された感染症の間の関連を試験しようとしている。本研究は、Ashworth Hospitalから及びMersey Care NHS Foundation Trustにおける地域精神保健活動の外来患者から、クロザピンを基盤とする患者及び他の抗精神病薬を基盤とする患者を募集している。知見は、より詳細な免疫表現型解析を通じたB細胞集団に対するクロザピンの影響についての見識を広げることに加えて、一部には、直交集団(orthogonal population)における初めの観察研究から来た者の妥当性確認を提供するであろう。
本試験は、詳細な免疫学的分析のための単回の血液検査、及び記録された感染症歴、過去の病歴、及び併用薬の使用を含む重要な臨床パラメーターを詳述する臨床研究フォームベースの質問表の完成を課する。知見は、クロザピン、循環B細胞レベル/機能及び免疫グロブリンレベル、その頻度及び重症度、並びに他の抗精神病薬との関連での特異性の間の何らかの関連を確認するよう解析されるであろう。
(試験の目標と目的)
本試験が答えを出そうとしている具体的な研究論点は、以下のものである:
主要評価項目:
i)クロザピンでの長期治療が、対照で観察される基準範囲を下回る比率と比較した場合の、(a)基準範囲を下回る特定のB細胞サブセット(すなわち、クラススイッチしたメモリーB細胞及び形質細胞)を有する者のより高い比率、及び(b)基準を下回る循環免疫グロブリンレベル(IgG、IgA、及びIgM)を有する者のより高い比率と関連するか?
副次評価項目:
ii)対照と比較して、クロザピンが、特定の抗体(例えば、肺炎球菌、破傷風、及びHib)の減少と関連するか?
iii)対照と比較して、クロザピンの使用が、循環T細胞(数/機能)に対する作用と関連するか?
iv)クロザピンが、感染症及び抗生物質使用の、対照よりも高い頻度と関連するか?
v)主要評価項目が、クロザピン療法の期間と関連しているか?
本試験が答えを出そうとしている具体的な研究論点は、以下のものである:
主要評価項目:
i)クロザピンでの長期治療が、対照で観察される基準範囲を下回る比率と比較した場合の、(a)基準範囲を下回る特定のB細胞サブセット(すなわち、クラススイッチしたメモリーB細胞及び形質細胞)を有する者のより高い比率、及び(b)基準を下回る循環免疫グロブリンレベル(IgG、IgA、及びIgM)を有する者のより高い比率と関連するか?
副次評価項目:
ii)対照と比較して、クロザピンが、特定の抗体(例えば、肺炎球菌、破傷風、及びHib)の減少と関連するか?
iii)対照と比較して、クロザピンの使用が、循環T細胞(数/機能)に対する作用と関連するか?
iv)クロザピンが、感染症及び抗生物質使用の、対照よりも高い頻度と関連するか?
v)主要評価項目が、クロザピン療法の期間と関連しているか?
(免疫バイオマーカー)
以下の免疫バイオマーカーが、試験される:
1.総IgG、IgM、IgA、及び適切な場合には、免疫固定法を用いる血清電気泳動;
2.特定のIgGレベル−破傷風トキソイド、肺炎球菌、Hib(肺炎球菌については±IgA及びIgM);
3.以下:
a.リンパ球表現型‐(CD3、CD4、CD8、CD19、CD56を含む)
b.CSMB細胞及び形質芽細胞を含むB細胞パネル(B細胞表現型のEUROclass分類に基づく(Wehrらの文献、2008))
c.ナイーブT細胞パネル
を含むFACS分析による詳細な免疫細胞表現型決定;
4.後続のRNA転写分析のための、PBMC(RNA保存溶液、例えば、約4〜5mLのRNALaterが入った汎用容器中又はRNAの完全性を保存するPAXgeneチューブ中に保存された全血)からのRNA抽出。
以下の免疫バイオマーカーが、試験される:
1.総IgG、IgM、IgA、及び適切な場合には、免疫固定法を用いる血清電気泳動;
2.特定のIgGレベル−破傷風トキソイド、肺炎球菌、Hib(肺炎球菌については±IgA及びIgM);
3.以下:
a.リンパ球表現型‐(CD3、CD4、CD8、CD19、CD56を含む)
b.CSMB細胞及び形質芽細胞を含むB細胞パネル(B細胞表現型のEUROclass分類に基づく(Wehrらの文献、2008))
c.ナイーブT細胞パネル
を含むFACS分析による詳細な免疫細胞表現型決定;
4.後続のRNA転写分析のための、PBMC(RNA保存溶液、例えば、約4〜5mLのRNALaterが入った汎用容器中又はRNAの完全性を保存するPAXgeneチューブ中に保存された全血)からのRNA抽出。
全ての免疫バイオマーカー試料は、UKAS認定の妥当性確認されたNHS検査室(UKAS Accredited validated NHS laboratory)で処理されて分析される。
(結果)
文書作成時点で、本試験は、まだ募集中であるが、入手可能な収集された免疫表現型のデータ(募集の約2/3)の暫定的な分析が、これが、最終の計画された試料規模の一部を表す(n約100)ことに注意して着手されている。
文書作成時点で、本試験は、まだ募集中であるが、入手可能な収集された免疫表現型のデータ(募集の約2/3)の暫定的な分析が、これが、最終の計画された試料規模の一部を表す(n約100)ことに注意して着手されている。
これまでの主な知見を、以下に詳述する:
a.クロザピンを摂取したことがない患者(すなわち、対照、クロザピン未処置)と比較して、クロザピンを受けている患者での循環総IgG、IgA、及びIgMの顕著に低下したレベル(図6A〜図6Cを参照されたい)。これらの低下は、A及びMサブクラスのIgについて比較的大きい。加えて、肺炎球菌に対するより低いIgG抗体への傾向が、クロザピンで治療された者に存在する(図7を参照されたい)。
b.全CD19+ B細胞数が、群間で顕著に異なることはなかった(図8A〜図8Bを参照されたい)。c.総CD19+ B細胞のうちの比率として表されるナイーブ(CD19+ CD27-)B細胞の数の僅かな増加(図9A〜図9Cを参照されたい)。
d.全メモリーB細胞プール(図10A〜図10Cを参照されたい)やIgMhi IgDloメモリーB細胞亜集団(図12A〜図12Cを参照されたい)の撹乱を伴わない、クロザピンで治療された者における(図11A〜図11Cを参照されたい)、クラススイッチしたメモリーB細胞の特定の減少に向かう強い傾向(対照と比較してP=0.06、CD27+ IgM- IgD-、%Bとして)。
e.群間で移行期B細胞又は辺縁帯B細胞の循環レベルに著しい差はない(図13A〜図13C及び図14A〜図14Cを参照されたい)。
f.クロザピンで治療された患者における形質芽細胞のレベルの低下に対する強い傾向(対照のクロザピン未処置と比較してP=0.07)(図15A〜図15Cを参照されたい)。
a.クロザピンを摂取したことがない患者(すなわち、対照、クロザピン未処置)と比較して、クロザピンを受けている患者での循環総IgG、IgA、及びIgMの顕著に低下したレベル(図6A〜図6Cを参照されたい)。これらの低下は、A及びMサブクラスのIgについて比較的大きい。加えて、肺炎球菌に対するより低いIgG抗体への傾向が、クロザピンで治療された者に存在する(図7を参照されたい)。
b.全CD19+ B細胞数が、群間で顕著に異なることはなかった(図8A〜図8Bを参照されたい)。c.総CD19+ B細胞のうちの比率として表されるナイーブ(CD19+ CD27-)B細胞の数の僅かな増加(図9A〜図9Cを参照されたい)。
d.全メモリーB細胞プール(図10A〜図10Cを参照されたい)やIgMhi IgDloメモリーB細胞亜集団(図12A〜図12Cを参照されたい)の撹乱を伴わない、クロザピンで治療された者における(図11A〜図11Cを参照されたい)、クラススイッチしたメモリーB細胞の特定の減少に向かう強い傾向(対照と比較してP=0.06、CD27+ IgM- IgD-、%Bとして)。
e.群間で移行期B細胞又は辺縁帯B細胞の循環レベルに著しい差はない(図13A〜図13C及び図14A〜図14Cを参照されたい)。
f.クロザピンで治療された患者における形質芽細胞のレベルの低下に対する強い傾向(対照のクロザピン未処置と比較してP=0.07)(図15A〜図15Cを参照されたい)。
(実施例3)
(インビボでの野生型マウス試験−ハロペリドールと比較したクロザピンの作用)
定常状態における(すなわち、特定の免疫学的な負荷の非存在下での野生型マウスの一次(骨髄)及び二次(脾臓及び腸間膜リンパ節)リンパ組織におけるB細胞の発生、分化、及び機能(循環免疫グロブリンレベルから推測)に対するクロザピンの影響を評価した。
(インビボでの野生型マウス試験−ハロペリドールと比較したクロザピンの作用)
定常状態における(すなわち、特定の免疫学的な負荷の非存在下での野生型マウスの一次(骨髄)及び二次(脾臓及び腸間膜リンパ節)リンパ組織におけるB細胞の発生、分化、及び機能(循環免疫グロブリンレベルから推測)に対するクロザピンの影響を評価した。
具体的な目的は:
a)健常マウスの骨髄及び重要な二次リンパ器官(脾臓及び腸間膜リンパ節)における主要B細胞サブセットに対するクロザピンの影響を決定すること;
b)B細胞免疫表現型の面に対するクロザピンの用量-反応関係が存在するかどうかを明らかにすること;
c)健常マウスの循環免疫グロブリンプロファイルに対するクロザピン投与の作用を評価すること;
d)別の抗精神病薬との比較で、上記読み取り情報に対するクロザピンの作用の特異性を決定すること
であった。
a)健常マウスの骨髄及び重要な二次リンパ器官(脾臓及び腸間膜リンパ節)における主要B細胞サブセットに対するクロザピンの影響を決定すること;
b)B細胞免疫表現型の面に対するクロザピンの用量-反応関係が存在するかどうかを明らかにすること;
c)健常マウスの循環免疫グロブリンプロファイルに対するクロザピン投与の作用を評価すること;
d)別の抗精神病薬との比較で、上記読み取り情報に対するクロザピンの作用の特異性を決定すること
であった。
(方法)
(動物:)
若年成体(7〜8週齢)C57BL/6成熟雌性マウスを、試験に使用した。マウスを、飼料及び水に自由にアクセス可能として、12時間の明暗周期(午前8時/午後8時)で、個別に換気されたケージ内に22℃で収容した。マウスを、実験を開始する前に、到着後すぐに1週間順化させた。
(動物:)
若年成体(7〜8週齢)C57BL/6成熟雌性マウスを、試験に使用した。マウスを、飼料及び水に自由にアクセス可能として、12時間の明暗周期(午前8時/午後8時)で、個別に換気されたケージ内に22℃で収容した。マウスを、実験を開始する前に、到着後すぐに1週間順化させた。
(実験群及び用量選択:)
マウスを、5つの実験群のうちの1つに以下のように割り当てた:
1. 対照 生理食塩水
2. クロザピン低用量 2.5mg/kg
3. クロザピン中用量 5mg/kg
4. クロザピン高用量 10mg/kg
5. ハロペリドール 1mg/kg(中用量)
マウスを、5つの実験群のうちの1つに以下のように割り当てた:
1. 対照 生理食塩水
2. クロザピン低用量 2.5mg/kg
3. クロザピン中用量 5mg/kg
4. クロザピン高用量 10mg/kg
5. ハロペリドール 1mg/kg(中用量)
用量選択は、初め、これらの薬物を慢性的にマウスに投与する研究(Ishisakaらの文献、2015;Liらの文献、2016;Mutluらの文献、2012;Sacchiらの文献、2017;Simonらの文献、2000;Tanyeriらの文献、2017)の文献調査を基礎とした。これらの大多数は、腹腔内(IP)投与経路を採用していた:クロザピン(1.5、5、10、25mg/kg/日)(Grayらの文献、2009;Morenoらの文献、2013);ハロペリドール(0.25mg/kg、1mg/kg/日)(Grayらの文献、2009)、及び双方の薬物のLD50(クロザピン200mg/kg、ハロペリドール30mg/kg)を考慮に入れた。
それに続き、これらの影響、特に、クロザピンのより高い用量を評価するため、用量選択を改良するため、及び処置を受けるマウスの幸福を最大化するために、パイロット研究を開始した。明確な用量関連鎮静作用が、5mg/kgから開始したクロザピンの投薬量から明らかとなり、顕著な精神運動抑制(深さ及び期間に関して)が、評価された最高用量(20mg/kg及び25mg/kg)で観察された。加えて、体温調節に対する作用も明らかとなり、熱恒常性を守るために加温室の使用及び全身の維持手段が必要とされた。これらの有害作用は、前臨床(Joshiらの文献、2017;McOmishらの文献、2012;Millanらの文献、1995;Williamsらの文献、2012)及び臨床の現場(Marinkovicらの文献、1994)におけるクロザピンの既知の(オンターゲットの)プロファイルと一致し、ヒトで記述されているように、初めの数日の投薬の後に耐性が生じた(Marinkovicらの文献、1994)。
マウス(n=12/群)に、連続する21日間、1日1回IP注射によって、各対照溶液/クロザピン/ハロペリドールでの処置を行った。
(免疫表現型決定のための生体試料:)
実験期間の最後に、マウスを人道的に麻酔し、血清分離、-80℃での保管、及びその後のELISAによる免疫グロブリンプロファイルの測定(主要な免疫グロブリンサブセットであるIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgM、及び双方の軽鎖κ及びλを含む)用の血液試料を得た。
実験期間の最後に、マウスを人道的に麻酔し、血清分離、-80℃での保管、及びその後のELISAによる免疫グロブリンプロファイルの測定(主要な免疫グロブリンサブセットであるIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgM、及び双方の軽鎖κ及びλを含む)用の血液試料を得た。
並行して、マルチレーザーフローサイトメトリー検出及び解析を用いるこれらの区画全体の細胞組成の評価のために、組織試料を、骨髄(大腿骨由来)、脾臓、及び腸間膜リンパ節から速やかに集めた。
(フローサイトメトリーによるB細胞免疫表現型決定:)
集中的(focused)B細胞FACS(fluorescence-activated cell sorter;蛍光標識細胞分取器)パネルを、B細胞発生の抗原非依存性の及び依存性段階のスペクトルに広がるB細胞サブセットの相対組成に対する薬物の影響の評価を可能とするために、一次(骨髄)及び二次(脾臓/リンパ節)リンパ組織の双方に対して別々に調製した。
集中的(focused)B細胞FACS(fluorescence-activated cell sorter;蛍光標識細胞分取器)パネルを、B細胞発生の抗原非依存性の及び依存性段階のスペクトルに広がるB細胞サブセットの相対組成に対する薬物の影響の評価を可能とするために、一次(骨髄)及び二次(脾臓/リンパ節)リンパ組織の双方に対して別々に調製した。
フローサイトメトリーパネルに採用された個々の抗体を、関連性のある組織(すなわち、骨髄、脾臓及び腸間膜リンパ節)で予備試験し、亜集団の明確な識別を可能にする各抗体の最適な希釈度を決定した。FACSデータは、BD FACSymphonyによって抽出し、FlowJoソフトウェアで解析した。
(結果)
(体重:)
クロザピン(CLZ)は、5mg/kg及び10mg/kg用量の双方で体重の一時的な低下を誘導し、3日間で最大となり、第9日までにベースラインまで完全に回復し、それを過ぎると体重が次第に増加した(図16及び図17を参照されたい)。この知見は、実験の間にこれに対する耐性が生じている証拠を伴って、投薬の初めの数日の間の液体/飼料摂取に対するクロザピンの鎮静作用を反映していそうである。
(体重:)
クロザピン(CLZ)は、5mg/kg及び10mg/kg用量の双方で体重の一時的な低下を誘導し、3日間で最大となり、第9日までにベースラインまで完全に回復し、それを過ぎると体重が次第に増加した(図16及び図17を参照されたい)。この知見は、実験の間にこれに対する耐性が生じている証拠を伴って、投薬の初めの数日の間の液体/飼料摂取に対するクロザピンの鎮静作用を反映していそうである。
(骨髄における初期のB細胞発生:)
B細胞は、骨髄に位置する、自己再生能力を有する複能性細胞である造血幹細胞(HSC)を起源とする。この初期のB細胞発生は、コミットしたリンパ球系共通前駆細胞から生じ、細胞表面マーカーを用いて規定される、骨髄間質細胞との物理的及び可溶性ケモカイン/サイトカイン相互作用に依存する一連の段階を通じて進行する。
B細胞は、骨髄に位置する、自己再生能力を有する複能性細胞である造血幹細胞(HSC)を起源とする。この初期のB細胞発生は、コミットしたリンパ球系共通前駆細胞から生じ、細胞表面マーカーを用いて規定される、骨髄間質細胞との物理的及び可溶性ケモカイン/サイトカイン相互作用に依存する一連の段階を通じて進行する。
最も早期のB細胞前駆体は、B220を発現し、生殖系列Ig遺伝子を有するプレプロB細胞である。次に、プロB細胞が、そのH(重)鎖Igμ遺伝子を再構成し、転写因子Pax5の制御の下でCD19を発現する。プレB細胞期では、細胞は、CD43を下方制御し、細胞内Igμを発現し、その後、L(軽)鎖を再構成し、CD25をIrf4依存性の様式で上方制御する。成功裏に選択された細胞は、未熟(表面IgM+IgD-)B細胞となる。未熟B細胞は、中枢性トレランスのプロセスによって自己反応性について試験され、自己抗原に対する強力な反応性がないものは、洞様毛細血管を経て骨髄を出て、脾臓で成熟を続ける。
骨髄(BM)におけるB細胞の全体的な減少は、どの用量のクロザピンでも観察されなかった(図18を参照されたい)。しかしながら、10mg/kgクロザピンでは、非常に早期のB細胞前駆体であるプレプロB細胞(すなわち、B220+CD19-CD43+CD24loBP-1-IgM-IgD-)の比率の著しい増加が、後続のプロB細胞画分にはっきりと表れる変化を何ら伴うことなく、観察された(図18を参照されたい)。対照的に、ハロペリドールの著しい作用は、これら早期の進行中のB細胞サブセットのいずれに対しても明らかではなかった。
骨髄におけるB細胞発生の後続の段階の調査は、クロザピンで治療されたマウスにおけるプレB細胞(すなわち、B220+CD19+CD43-CD24+BP-1-IgM-IgD-)の減少を明らかにした(図19を参照されたい)。特に、この作用は、最も低いクロザピンの用量(2.5mg/kg)を採用した場合であっても、対照マウスと比較して観察される著しい差を伴って、用量依存性を示した。更に、増殖性であるプレB細胞(すなわち、B220+CD19+CD43-CD24hiBP-1+IgM-IgD-)の百分率は、クロザピンで低下し、5mg/kg用量では有意性なものに到達した(図19を参照されたい)。それに対応して、骨髄における未熟B細胞の百分率の低下が確認された(すなわち、B220+CD19+CD43-CD24+IgM+IgD-)(図19を参照されたい)。
まとめると、これらの知見は、特定の免疫学的な負荷の非存在下でのプレプロB細胞期とプレB細胞期との間の中程度の停止を伴う、初期のB細胞発生に対するクロザピンの特異的な影響を示唆している。
(末梢B細胞発生−総脾臓B細胞:)
骨髄から遊出した後に、機能的に未熟なB細胞は、(末梢)自己抗原への更なる曝露及び末梢性寛容(アポトーシスによる細胞除去、アネルギー、又は生存をもたらす)を可能とする、二次リンパ器官内でのさらなる発達を経験する。骨髄を出た未熟B細胞の大部分は、生き残って完全に成熟したB細胞になることがない。これは、濾胞性樹状細胞によって分泌されるBAFF(B細胞活性化因子)を含む、リンパ濾胞で受け取られる成熟及び生存シグナルによって調節されるプロセスである。
骨髄から遊出した後に、機能的に未熟なB細胞は、(末梢)自己抗原への更なる曝露及び末梢性寛容(アポトーシスによる細胞除去、アネルギー、又は生存をもたらす)を可能とする、二次リンパ器官内でのさらなる発達を経験する。骨髄を出た未熟B細胞の大部分は、生き残って完全に成熟したB細胞になることがない。これは、濾胞性樹状細胞によって分泌されるBAFF(B細胞活性化因子)を含む、リンパ濾胞で受け取られる成熟及び生存シグナルによって調節されるプロセスである。
5mg/kg及び10mg/kgのクロザピンでの処置を受けたマウスは、総生脾細胞のうちの比率として表される顕著に低下した脾臓B細胞(すなわち、B220+TCR-β-)の百分率を有することが分かった(図21を参照されたい)。γδ T細胞(これは、αβ T細胞受容体、TCRを発現しない)、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は他の稀なリンパ系細胞集団を含み得る他の細胞集団(すなわち、B220-TCR-β-)に対する作用は、確認されなかった(図21を参照されたい)。これは、脾臓T細胞(すなわち、B220-TCR-β+)の百分率の逆比例する増加を伴った(図21を参照されたい)。対照的に、活性化T細胞(すなわち、B220+TCR-β+)は、総生脾細胞に占める低い比率を反映して、対照と比較してクロザピンによって用量依存的な様式で減少した。これは、ハロペリドールにもまずまずはっきりと認められる作用である(図21を参照されたい)。
これらの知見は、観察された骨髄B細胞前駆体の変化に加えて、クロザピンは、末梢(脾臓)のB細胞に影響を及ぼすことができるが、ハロペリドールはできないことを示唆する。
(脾臓B細胞亜集団:)
骨髄を出て循環に入った未熟B細胞は、移行期B細胞として知られている。これらの未熟細胞は、脾臓に入り、脾臓の濾胞に競合的に接近して、移行期を経て免疫適格性のナイーブ成熟B細胞へと分化する。このことは、濾胞内で、骨髄での未熟B細胞に類似の移行期1型(T1)細胞から、2型(T2)前駆体へと連続的に生じる。後者は、成熟ナイーブB細胞の直接の前駆体であると考えられている。T2 B細胞が、B細胞受容体刺激に応答して、T1 B細胞よりも大きい効力を示すことが実証されており、このことは、T2サブセットが、優先的に、正の選択及び長寿命の成熟B細胞プールへの進行を受け得ることを示唆している(Petroらの文献、2002)。
骨髄を出て循環に入った未熟B細胞は、移行期B細胞として知られている。これらの未熟細胞は、脾臓に入り、脾臓の濾胞に競合的に接近して、移行期を経て免疫適格性のナイーブ成熟B細胞へと分化する。このことは、濾胞内で、骨髄での未熟B細胞に類似の移行期1型(T1)細胞から、2型(T2)前駆体へと連続的に生じる。後者は、成熟ナイーブB細胞の直接の前駆体であると考えられている。T2 B細胞が、B細胞受容体刺激に応答して、T1 B細胞よりも大きい効力を示すことが実証されており、このことは、T2サブセットが、優先的に、正の選択及び長寿命の成熟B細胞プールへの進行を受け得ることを示唆している(Petroらの文献、2002)。
移行期細胞は、二次リンパ器官に存在する末梢B細胞の大部分となる濾胞性B細胞、又は血液で運ばれる抗原/病原体に対して迅速に応答することができる、白脾髄/赤脾髄界面に存在するそれほど多くはない集団である辺縁帯(MZ)B細胞へと分化することができる。
クロザピンでの処置を受けたマウスが、一部には、骨髄未熟B細胞の百分率の低下を反映している可能性がある、2.5mg/kg用量でのものを含む、脾臓において少し減少した比率の新たに遊出した移行期1(T1)B細胞を有することが分かった(図22を参照されたい)。対照的に、T2 B細胞の比率の僅かな増加が、クロザピンの全ての用量全体にわたって確認され(図22を参照されたい)、これは、起こりうる長寿命成熟B細胞プールへの進行のためのT1 B細胞サブセットの強化された正の選択と一致した。
クロザピン投与が、生脾細胞への脾臓B細胞の寄与を低下させたが(図21を参照されたい)、特定の減少は、脾臓濾胞性(すなわち、B220+CD19+CD21midCD23+)B細胞サブセットにおいても、辺縁帯(すなわち、B220+CD19+CD21+CD23Lo/-)B細胞サブセットにおいても確認されておらず(図22を参照されたい)、免疫学的に未処置の状態では、マウスにおけるクロザピン投与が、脾臓B細胞集団の全体的な減少をもたらすことを示唆している。
胚中心(GC)は、T細胞依存性抗原(例えば、感染症又は免疫化を原因として)曝露に応答して、二次リンパ組織のB細胞濾胞内に数日のうちに形成される微小解剖学的構造である(Meyer-Hermannらの文献、2012)。GCの内部では、B細胞は、その抗体可変領域の体細胞超変異を、その後のGC常在性濾胞性樹状細胞によって提示される抗原に対する変異型B細胞受容体の試験と共に受ける。抗体親和性成熟のプロセスによって、抗原に対するより高い親和性を有する変異型B細胞が特定され、増殖される。加えて、成熟ナイーブ(IgM+IgD+)B細胞の免疫グロブリン重鎖遺伝子座のクラススイッチ組換えが、GC反応の前及びその間に起こり、抗体エフェクター機能を変化させるが、その特異性や抗原に対する親和性は変化させない。このことは、抗原刺激に応答したIgMから他の免疫グロブリンクラス(IgG、IgA、又はIgE)へのアイソタイプスイッチングをもたらす。
従って、GCは、激しいB細胞増殖及び細胞死の部位であり、結果は、アポトーシス、体細胞超変異のさらなる繰り返し(すなわち、サイクルへの再進入(cyclic re-entry))のための正の選択、又は抗体分泌形質細胞及びメモリーB細胞へのB細胞分化を含む(Suanらの文献、2017)。定常状態において、GC細胞(すなわち、B220+CD19+IgD-CD95+GL-7+)は、脾臓における総生存B細胞のうちの非常に少ない比率を形成しており、クロザピン投与への応答での、対照又はハロペリドールと比較しての差は、観察されなかった(図22を参照されたい)。
(骨髄抗体分泌細胞集団:)
抗体分泌細胞は、B細胞系列の最終段階の分化を表し、健康な場合一次及び二次リンパ器官、胃腸管、及び粘膜のいたる所に広く分布している(Tellier及びNuttの文献、2018)。これらの細胞は全て、活性化B細胞(濾胞性、MZ又はB1)に由来する。形質芽細胞は、短寿命の循環細胞を表すが、一次応答(比較的低親和性の抗体を産生する)において濾胞外分化経路から誘導されることができ、また、GCで親和性成熟を受けたメモリーB細胞からも誘導されることができる(Tellier及びNuttの文献、2018)。
抗体分泌細胞は、B細胞系列の最終段階の分化を表し、健康な場合一次及び二次リンパ器官、胃腸管、及び粘膜のいたる所に広く分布している(Tellier及びNuttの文献、2018)。これらの細胞は全て、活性化B細胞(濾胞性、MZ又はB1)に由来する。形質芽細胞は、短寿命の循環細胞を表すが、一次応答(比較的低親和性の抗体を産生する)において濾胞外分化経路から誘導されることができ、また、GCで親和性成熟を受けたメモリーB細胞からも誘導されることができる(Tellier及びNuttの文献、2018)。
GCで発達する形質芽細胞は、二次リンパ器官を出て、骨髄へと帰る。ここで、少しの比率のみが、保持されて、専用の微小環境的生存ニッチにそれら自身を樹立して、長寿命形質細胞へと成熟すると考えられている(Chu及びBerekの文献、2013)。これは、間葉系細網間質細胞上にドッキングすることによって調節されると考えられており(Zehentmeierらの文献、2014)、かつ造血細胞(例えば、好酸球)(Chuらの文献、2011)、B細胞生存因子の存在(例えば、APRIL及びIL-6)(Belnoueらの文献、2008)、並びに低酸素条件(Nguyenらの文献、2018)を必要とするプロセスである。
健常状態では、骨髄が、長寿命形質細胞の大部分を収容している。5及び10mg/kgのクロザピンは、対照と比較して約30%の、骨髄における長寿命形質細胞(すなわち、B220loCD19-IgD-IgM-CD20-CD38++CD138+)の百分率の著しい減少を誘導した(図20を参照されたい)。対照的に、この特定のB細胞集団に対してハロペリドールの作用は、見られなかった(図20を参照されたい)。著しい変化は、どの処置を用いても、骨髄におけるクラススイッチしたメモリーB細胞(すなわち、B220+CD19+CD27+IgD-IgM-CD20+CD38+/-)又は形質芽細胞(すなわち、B220loCD19+CD27+IgD-IgM-CD20-CD38++)のいずれにおいても検出されなかった。しかしながら、これら双方は、免疫学的に未処置の定常状態では骨髄における総B細胞のうちの非常に小さい比率に相当する(図20を参照されたい)。
これらの知見は、クロザピンが、骨髄における、液性免疫による保護、及び発症状態では、安定な自己抗体産生に関与する血漿中の安定な抗原特異抗体力価の主要な起源であると考えられている集団である長寿命形質細胞の比率を低下させる特定の作用を発揮できることを示している。
(循環免疫グロブリンレベル:)
5及び10mg/kg双方でのクロザピン投与は、対照と比較して循環IgAレベルの低下をもたらし、これは、ハロペリドールでは観察されない作用であった(図24を参照されたい;P、陽性対照;N、陰性対照)。他のアイソタイプクラスは、用いた実験条件下では影響を受けなかった(図24を参照されたい)。
5及び10mg/kg双方でのクロザピン投与は、対照と比較して循環IgAレベルの低下をもたらし、これは、ハロペリドールでは観察されない作用であった(図24を参照されたい;P、陽性対照;N、陰性対照)。他のアイソタイプクラスは、用いた実験条件下では影響を受けなかった(図24を参照されたい)。
(腸間膜リンパ節:)
現行の実験条件下では、腸間膜リンパ節(MLN)において評価されたリンパ球亜集団の任意の群の間で著しい差は確認されなかった(図23を参照されたい)。
現行の実験条件下では、腸間膜リンパ節(MLN)において評価されたリンパ球亜集団の任意の群の間で著しい差は確認されなかった(図23を参照されたい)。
(結論)
本試験では、クロザピンが、定常状態において野生型マウスの免疫表現型、特に、B細胞亜集団に影響を及ぼす可能性を、免疫グロブリンの循環レベルから推測される機能的影響と共に調査した。本試験の主要な知見は、3週間のクロザピンの非経口(I.P.)投与が:
a)プレプロB細胞の比率を増加させる一方で、骨髄での後の段階のプレB細胞及び未熟B細胞の比率を低下させること;
b)B細胞である生脾細胞の比率を低下させること;
c)脾臓内で発達中のB細胞、特に、移行期B細胞集団に対して、より高い比率のT2型細胞に好都合であるわずかな作用を発揮すること;
d)骨髄における長寿命形質細胞の比率を顕著に低下させること;
e)循環免疫グロブリンレベルに対して影響を与えること、特に、IgAを低下させること;
f)上記の知見の全てと対照的に、使用したハロペリドールの用量でも同じく観察された脾臓における活性化T細胞の比率の、用量依存的な低下をもたらすこと
である。
本試験では、クロザピンが、定常状態において野生型マウスの免疫表現型、特に、B細胞亜集団に影響を及ぼす可能性を、免疫グロブリンの循環レベルから推測される機能的影響と共に調査した。本試験の主要な知見は、3週間のクロザピンの非経口(I.P.)投与が:
a)プレプロB細胞の比率を増加させる一方で、骨髄での後の段階のプレB細胞及び未熟B細胞の比率を低下させること;
b)B細胞である生脾細胞の比率を低下させること;
c)脾臓内で発達中のB細胞、特に、移行期B細胞集団に対して、より高い比率のT2型細胞に好都合であるわずかな作用を発揮すること;
d)骨髄における長寿命形質細胞の比率を顕著に低下させること;
e)循環免疫グロブリンレベルに対して影響を与えること、特に、IgAを低下させること;
f)上記の知見の全てと対照的に、使用したハロペリドールの用量でも同じく観察された脾臓における活性化T細胞の比率の、用量依存的な低下をもたらすこと
である。
まとめると、これらの観察事項は、クロザピンが、インビボで、B細胞分化又は活性化の後期に限定されずに、B細胞成熟に対して複雑な作用を発揮することを示している。特に、この知見は、クロザピンが、骨髄における抗原非依存性のB細胞発生の部分的な停止を伴って、早期のB細胞前駆体の成熟に影響を及ぼすことができることを示唆する。
並行して、クロザピンの明確な作用が、生脾細胞のうちの総B細胞比率を低下させることに対する、及び骨髄における長寿命抗体分泌形質細胞に対する注目に値する影響と共に、末梢B細胞亜集団に対して確認された。抗体分泌細胞に対する影響は、観察された循環IgAの著しい減少の基礎を成していそうであり、これは、マウスのその他の点では免疫学的に未処置の状態を考えれば特に印象的である。
特に、B細胞亜集団に対する影響は、対照の抗精神病薬であるハロペリドールでは観察されず、このことは、B細胞成熟に対するクロザピンの作用の特異性と一致している。この実験は、骨髄、末梢、及び後期B細胞集団に対する直接又は間接的なクロザピンの作用の区別を可能にしないが、別のインビトロB細胞増殖アッセイからの知見と合わると、間接的な作用の可能性が高そうだと思われる。これには、種々の他の骨髄系、リンパ系(例えば、T濾胞性ヘルパー細胞)、及び/又は(間葉系)ストローマ支持細胞が関与している可能性がある。
(実施例4)
(マウスコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデル研究−クロザピンの作用)
CIAモデルは、よく確立された自己免疫疾患の実験モデルである。本発明者らは、試料特異的抗原に応答して作られたB細胞由来の病原性免疫グロブリンが、自己免疫性症状を駆動する高度に臨床的に意義のある実験系としてこのCIAモデル採用して、クロザピンの有し得る有効性及びその関連する細胞機構を調査している。
(マウスコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデル研究−クロザピンの作用)
CIAモデルは、よく確立された自己免疫疾患の実験モデルである。本発明者らは、試料特異的抗原に応答して作られたB細胞由来の病原性免疫グロブリンが、自己免疫性症状を駆動する高度に臨床的に意義のある実験系としてこのCIAモデル採用して、クロザピンの有し得る有効性及びその関連する細胞機構を調査している。
(方法)
(動物:)
成体(13〜15週齢)DBA/1雄性マウスを、Envigo(Horst、オランダ)から購入した。マウスを、飼料及び水へ自由にアクセス可能として、12時間の明暗周期(午前7時/午後7時)で、個別に換気されたケージ内に21℃±2℃で収容した。マウスを、実験を開始する前に、到着後すぐに1週間順化させた。
(動物:)
成体(13〜15週齢)DBA/1雄性マウスを、Envigo(Horst、オランダ)から購入した。マウスを、飼料及び水へ自由にアクセス可能として、12時間の明暗周期(午前7時/午後7時)で、個別に換気されたケージ内に21℃±2℃で収容した。マウスを、実験を開始する前に、到着後すぐに1週間順化させた。
(実験群及び用量選択:)
マウスを、5つの実験群のうちの1つに以下のように割り当てた:
1.対照 生理食塩水
2.免疫化後の第15日からクロザピン5mg/kg処置
3.免疫化後の第15日からクロザピン10mg/kg処置
4.免疫化後の第1日からクロザピン5mg/kg処置
5.免疫化後の第1日からクロザピン10mg/kg処置。
マウスを、5つの実験群のうちの1つに以下のように割り当てた:
1.対照 生理食塩水
2.免疫化後の第15日からクロザピン5mg/kg処置
3.免疫化後の第15日からクロザピン10mg/kg処置
4.免疫化後の第1日からクロザピン5mg/kg処置
5.免疫化後の第1日からクロザピン10mg/kg処置。
マウス(n=10/群)に対して、関節炎の臨床的特徴の発現後第10日まで、各対照溶液/クロザピンのIP注射での1日1回の処置を行った。全ての実験は、the Clinical Medicine Animal Welfare(AWERB)及び英国内務省(the UK Home Office)によって承認されたものである。
(インビボでのクロザピンの抗関節炎作用:)
DBA/1マウスを、CFA中のウシのII型コラーゲンで免疫化し、関節炎の発症について毎日モニタリングした。クロザピンを、5mg/kg又は10mg/kgの用量で腹腔内注射によって毎日投与した。対照は、ビヒクル(生理食塩水)単独の投与を受けた。マウスの処置を、1つの実験では免疫化後の第1日に開始し、第2の実験では、免疫化後の第15日に開始した。臨床スコア及び足の腫脹を、関節炎の発症後10日間モニタリングした。臨床スコアリング系を以下のように用いた。関節炎の重症度を、経験を積んだ非盲検の治験責任医師によって以下のようにスコア付けした:0=正常、1=わずかな腫脹及び/又は紅斑、2=顕著な腫脹、3=関節強直。四肢全てをスコア付けし、考えられる最高のスコアは、動物1頭あたり12である。
DBA/1マウスを、CFA中のウシのII型コラーゲンで免疫化し、関節炎の発症について毎日モニタリングした。クロザピンを、5mg/kg又は10mg/kgの用量で腹腔内注射によって毎日投与した。対照は、ビヒクル(生理食塩水)単独の投与を受けた。マウスの処置を、1つの実験では免疫化後の第1日に開始し、第2の実験では、免疫化後の第15日に開始した。臨床スコア及び足の腫脹を、関節炎の発症後10日間モニタリングした。臨床スコアリング系を以下のように用いた。関節炎の重症度を、経験を積んだ非盲検の治験責任医師によって以下のようにスコア付けした:0=正常、1=わずかな腫脹及び/又は紅斑、2=顕著な腫脹、3=関節強直。四肢全てをスコア付けし、考えられる最高のスコアは、動物1頭あたり12である。
実験期間の最後に、マウスを人道的に麻酔し、心臓穿刺によって出血させて、血清分離、-80℃での保管、及びその後のELISAによる特定の抗コラーゲン免疫グロブリン(IgG1及びIgG2aアイソタイプ)の測定用の血液試料を得た。並行して、脾臓及び鼠径リンパ節を、マルチレーザーフローサイトメトリー検出及び解析を用いるこれらのコンパートメント全体の細胞組成の評価のために回収した。脾臓及びリンパ節内のB細胞サブセットの数を、FACSによって決定した。
(統計学的解析:)
データを、必要に応じて、チューキーもしくはダネットの多重比較検定を伴う一元配置分散分析、又はチューキーの多重比較検定を伴う二元配置分散分析によって解析した。全ての計算は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて行った。0.05未満のP値を、有意であるとみなした。
データを、必要に応じて、チューキーもしくはダネットの多重比較検定を伴う一元配置分散分析、又はチューキーの多重比較検定を伴う二元配置分散分析によって解析した。全ての計算は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて行った。0.05未満のP値を、有意であるとみなした。
(結果)
(発症、臨床スコア、及び足の腫脹に対するクロザピンの作用:)
クロザピンでのマウスの処置は、免疫化後の関節炎の発症を遅らせるのに有意に有効であった(図25及び図26を参照されたい)。特に、第1日からの双方の用量のクロザピンでの処置は、関節炎の発症を遅らせるのに極めて有効であった(図25及び図26を参照されたい)。
(発症、臨床スコア、及び足の腫脹に対するクロザピンの作用:)
クロザピンでのマウスの処置は、免疫化後の関節炎の発症を遅らせるのに有意に有効であった(図25及び図26を参照されたい)。特に、第1日からの双方の用量のクロザピンでの処置は、関節炎の発症を遅らせるのに極めて有効であった(図25及び図26を参照されたい)。
更に、双方の用量のクロザピンでの処置は、10mg/kgクロザピンの場合には第1日に投与したときに総合的な臨床スコアを低下させ、また、初めに発症した足の腫脹を減少させた(図27を参照されたい)。また、クロザピン投与は、ビヒクル対照と比較して、発症した足の総数を減少させ、これは、D1での投薬で著しい作用であった(図28を参照されたい)。
(末梢B細胞サブセットに対するクロザピンの作用:)
全ての用量及び全ての時点(すなわち、5mg/kg又は10mg/kgの第1日又は第15日)でクロザピンでの処置を受けたマウスが、リンパ節におけるB220+ B細胞の顕著に低下した百分率を有することが分かった(図29を参照されたい)。加えて、第1日から10mg/kgで投与されたクロザピンも、脾臓におけるB220+ B細胞の比率を顕著に低下させた。
全ての用量及び全ての時点(すなわち、5mg/kg又は10mg/kgの第1日又は第15日)でクロザピンでの処置を受けたマウスが、リンパ節におけるB220+ B細胞の顕著に低下した百分率を有することが分かった(図29を参照されたい)。加えて、第1日から10mg/kgで投与されたクロザピンも、脾臓におけるB220+ B細胞の比率を顕著に低下させた。
採用された実験条件下では、リンパ節内の形質細胞数に対して著しいクロザピンの作用は観察されなかったが、第1日に与えられた10mg/kgクロザピンの用量で、脾臓での形質細胞の比率の著しい減少が、対照と比較して評価された全ての他の用量/時点での生細胞のうちの比率としての形質細胞についてのわずかにより低い値と共に確認された(図30を参照されたい)。
リンパ節濾胞性B細胞(B220+IgD-Fas+GL7hi)の際立って著しい減少が、クロザピンでの処置を受けたマウスにおいて全ての用量/双方の時点の全体にわたって観察された(図31を参照されたい)。加えて、リンパ節における濾胞性B細胞上のGL7発現のレベルは、全てのクロザピン治療群全体で、ビヒクル処置対照と比較して顕著に低下した(図32を参照されたい)。第1日からクロザピン処置を受けたマウスにおけるGL7発現の特に著明な低下を伴う作用の用量及び時間依存性の証拠が存在した(図32を参照されたい)。
(抗II型コラーゲンIgGアイソタイプに対するクロザピンの作用:)
第1日又は第15日からの5又は10mg/kgでのクロザピン投与は、単一の時点で測定された血清IgG2aに対する著しい影響を有しなかった。しかしながら、クロザピン投与は、試験された全ての用量全体にわたってIgG1のレベルのわずかな低下に繋がり、第15日から10mg/kgで処置された群については統計学的な有意性に到達した(図33を参照されたい)。
第1日又は第15日からの5又は10mg/kgでのクロザピン投与は、単一の時点で測定された血清IgG2aに対する著しい影響を有しなかった。しかしながら、クロザピン投与は、試験された全ての用量全体にわたってIgG1のレベルのわずかな低下に繋がり、第15日から10mg/kgで処置された群については統計学的な有意性に到達した(図33を参照されたい)。
(T濾胞性ヘルパー細胞に対するクロザピンの作用:)
第1日又は第15日からの5mg/kg又は10mg/kgのクロザピンでのマウスの処置は、リンパ節又は脾臓におけるCD4+PD1+CXCR5+ T濾胞性ヘルパー細胞の比率に顕著な影響を及ぼさなかった(図34を参照されたい)。しかしながら、平均蛍光強度(MFI)の分析は、クロザピンでの処置を受けたマウスにおけるT濾胞性ヘルパー細胞上のPD-1及びCXCR5の発現の強い低下を明らかとした(図35及び図36を参照されたい)。リンパ節濾胞性ヘルパー細胞でのPD-1の低下した発現は、評価された全ての用量及び時点でのクロザピンに関して明白であった(図35を参照されたい)。CXCR5発現の場合には、著しい低下が、クロザピンを第1日から投与されたマウスで観察され、リンパ節(低下の最も強いシグナル)及び脾臓の双方で明白であった(図36を参照されたい)。加えて、CCR7の発現の低下が、クロザピンでの処置を受けたマウスのリンパ節及び脾臓の双方における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞上で観察された(図37を参照されたい)。
第1日又は第15日からの5mg/kg又は10mg/kgのクロザピンでのマウスの処置は、リンパ節又は脾臓におけるCD4+PD1+CXCR5+ T濾胞性ヘルパー細胞の比率に顕著な影響を及ぼさなかった(図34を参照されたい)。しかしながら、平均蛍光強度(MFI)の分析は、クロザピンでの処置を受けたマウスにおけるT濾胞性ヘルパー細胞上のPD-1及びCXCR5の発現の強い低下を明らかとした(図35及び図36を参照されたい)。リンパ節濾胞性ヘルパー細胞でのPD-1の低下した発現は、評価された全ての用量及び時点でのクロザピンに関して明白であった(図35を参照されたい)。CXCR5発現の場合には、著しい低下が、クロザピンを第1日から投与されたマウスで観察され、リンパ節(低下の最も強いシグナル)及び脾臓の双方で明白であった(図36を参照されたい)。加えて、CCR7の発現の低下が、クロザピンでの処置を受けたマウスのリンパ節及び脾臓の双方における胚中心常在性T濾胞性ヘルパー細胞上で観察された(図37を参照されたい)。
(結論)
この試験では、クロザピンがCIAを改善する可能性、及びそれの主要B細胞サブセットに対する影響を調査した。本試験での主要な発見は、以下の通りである.
a)クロザピンは、CIAモデルにおける疾患発症を遅らせるのに極めて有効である。
b)クロザピンは、CIAの重症度を改善する。
c)クロザピンは、脾臓及びリンパ節の双方においてB220+ B細胞の比率を低下させる。
d)クロザピンは、脾臓形質細胞の比率を低下させる。
e)クロザピンは、B220+ B細胞におけるリンパ節濾胞性B細胞(IgD-Fas+GL7hi)の比率の実質的な低下をもたらし、そのGL-7の発現を低下させる。
f)クロザピンは、評価された実験条件(単一の時点での免疫グロブリン測定)との関連で、病原性免疫グロブリン、特に、抗コラーゲンIgG1を(免疫化後D15から投与された10mg/kgの用量で)減少させる能力をいくらか示す。
g)クロザピンは、細胞の比率に影響を及ぼすことなく、リンパ節濾胞性ヘルパー細胞(PD1+CXCR5+)上でのCCR7に加えてPD1及びCXCR5の発現を顕著に低下させる。
この試験では、クロザピンがCIAを改善する可能性、及びそれの主要B細胞サブセットに対する影響を調査した。本試験での主要な発見は、以下の通りである.
a)クロザピンは、CIAモデルにおける疾患発症を遅らせるのに極めて有効である。
b)クロザピンは、CIAの重症度を改善する。
c)クロザピンは、脾臓及びリンパ節の双方においてB220+ B細胞の比率を低下させる。
d)クロザピンは、脾臓形質細胞の比率を低下させる。
e)クロザピンは、B220+ B細胞におけるリンパ節濾胞性B細胞(IgD-Fas+GL7hi)の比率の実質的な低下をもたらし、そのGL-7の発現を低下させる。
f)クロザピンは、評価された実験条件(単一の時点での免疫グロブリン測定)との関連で、病原性免疫グロブリン、特に、抗コラーゲンIgG1を(免疫化後D15から投与された10mg/kgの用量で)減少させる能力をいくらか示す。
g)クロザピンは、細胞の比率に影響を及ぼすことなく、リンパ節濾胞性ヘルパー細胞(PD1+CXCR5+)上でのCCR7に加えてPD1及びCXCR5の発現を顕著に低下させる。
まとめると、これらの観察は、おそらく複数の機構によるクロザピンによって遅らされる疾患の発症が、それの(二次)リンパ組織に対する影響及びそれの機能的胚中心を形成する能力を、その後の抗体産生B細胞に対する影響と共に伴いそうであることを示している。
特に、クロザピンが、免疫化後局所リンパ節における胚中心B細胞[免疫化された脾臓/リンパ節でのGL7の発現によって特徴づけられる(Naitoらの文献、2007)]を減少させることが分かる。GL7hi B細胞は、より高い抗原提示能に加えて、より高い特定及び総免疫グロブリン産生を示す(Cervenakらの文献、2001)。従って、クロザピンでのGL7エピトープの表面発現の減少の観察は、これらのB細胞の抗体を産生し抗原を提示する機能活動を低下させる影響を示唆している。
並行して、クロザピンが、B細胞をメモリーB細胞又は形質細胞へと分化させる体細胞超変異、アイソタイプクラススイッチング、及び抗体親和性成熟に必須である、環胚中心内部で起こる細胞反応の形成を制御しそれを調整する重要なT細胞サブセットであるT濾胞性ヘルパー細胞に影響を及ぼすことが分かる。従って、T濾胞性ヘルパー細胞は、T細胞依存性B細胞応答を促進するのに特化している(Shiらの文献、2018)。特に、T濾胞性ヘルパー細胞の全体的な比率には影響を及ぼさない一方で、クロザピンが、濾胞から胚中心へとT濾胞性ヘルパー細胞の濃度を移動させることによる該T濾胞性ヘルパー細胞の適切な配置に必須であるPD1(プログラム細胞死-1)発現を低下させることが分かる(Shiらの文献、2018)。また、PD1は、T濾胞性ヘルパー細胞と胚中心B細胞との間のPD1-PD-L1相互作用(すなわち、PD1の同族リガンド)が、親和性ベースの選択の厳密さを促進して、T濾胞性ヘルパー細胞によるIL-21の最適な産生に必要とされる。
更に、クロザピンが、T濾胞性ヘルパー細胞上のCXCR5の発現を低下させることが分かった。CXCR5(CXCケモカイン受容体5)は、この細胞の決定マーカーであるとみなされている;CXCR5の上方制御は、T/B境界へ、及びCXCL-13への誘引によって、リンパ組織のB細胞領域への再配置を可能として、T濾胞性ヘルパー細胞がB細胞濾胞に入ることを可能とする(Chenらの文献、2015)。従って、T濾胞性ヘルパー細胞上のCXCR5の低下した発現は、そのB細胞濾胞内への遊走を妨げ、それによって、局在化して胚中心B細胞と相互作用するその能力を低下させるであろう。このことと一致して、CXCR5が欠損したか又はT細胞上にCXCR5を選択的に欠くマウスは、低下した二次リンパ系胚中心形成及びより低下した抗コラーゲン抗体産生と協調して、CIAの誘導に対して完全な抵抗性を示す(Moschovakisらの文献、2017)。
また、クロザピンが、T濾胞性ヘルパー細胞上のCCR7の発現を低下させることが分かった。CCR7下方調節は、それによって活性化CD4+ T細胞が、Tゾーンでの保留を促進するTゾーンケモカインを克服する重要な機構であると考えられている(Haynesらの文献、2007)。重要なことに、T濾胞性ヘルパー細胞による正常な胚中心反応の促進は、協調的なCXCR5の上方制御及びCCR7の下方調節を必要とする(Haynesらの文献、2007)。従って、CXCR5及びCCR7のバランスのとれた発現が、濾胞性ヘルパーT細胞配置の微調整及びB細胞ヘルプの効率的な提供に重要である(Hardtkeらの文献、2005)。従って、クロザピンが、T濾胞性ヘルパー細胞上のCXCR5及びCCR7発現の双方に影響を及ぼすことができるという観察は、T依存性抗原に応答する高親和性抗体の産生のT細胞による支持に重要である、この細胞の配置及び適切な機能を撹乱させるクロザピンの能力と一致する。
CIAの病態形成に対する胚中心形成の重要性をさらに強調しているのは、流入領域リンパ節においてより少ないB細胞の数及び欠損した胚中心形成を示すシンデカン-4欠損マウスが、CIAに対して抵抗性であるという知見である(Endoらの文献、2015)。自己免疫における自己寛容の維持及び病原性自己抗体産生の予防に対しての、胚中心のしっかりとした調節の決定的な重要性を考慮すると、CIAモデルで実証されたクロザピンの影響は、それが病原性自己抗体産生を軽減する可能性を強力に支持している。
(実施例5)
(インビトロB細胞分化系を用いるヒト形質細胞発生に対するクロザピン及びノルクロザピンの作用の試験)
確立されたインビトロプラットフォーム(Coccoらの文献、2012)を用いて、ヒト形質細胞の発生及び分化並びに生存に対するクロザピン、その主要代謝産物であるノルクロザピン、及び対照抗精神病薬であるハロペリドールの影響を評価した。
(インビトロB細胞分化系を用いるヒト形質細胞発生に対するクロザピン及びノルクロザピンの作用の試験)
確立されたインビトロプラットフォーム(Coccoらの文献、2012)を用いて、ヒト形質細胞の発生及び分化並びに生存に対するクロザピン、その主要代謝産物であるノルクロザピン、及び対照抗精神病薬であるハロペリドールの影響を評価した。
(方法)
(全般:)
採用される系は、CD40L/IL-2/IL-21ベースの刺激を用いて、B細胞活性化及び分化を3ステップのプロセスで駆動して、形質芽細胞及び機能的ポリクローナル成熟形質細胞を発生させる公表されているモデル(Coccoらの文献、2012)に基づくものである(図38を参照されたい)。培養の最後のステップ(第6日〜第9日)は、IFN-α駆動型生存シグナルとの関連で、間質細胞を用いずに行った。
(全般:)
採用される系は、CD40L/IL-2/IL-21ベースの刺激を用いて、B細胞活性化及び分化を3ステップのプロセスで駆動して、形質芽細胞及び機能的ポリクローナル成熟形質細胞を発生させる公表されているモデル(Coccoらの文献、2012)に基づくものである(図38を参照されたい)。培養の最後のステップ(第6日〜第9日)は、IFN-α駆動型生存シグナルとの関連で、間質細胞を用いずに行った。
実験は、健常ドナーから単離された全末梢血B細胞を用いて行った。実験は、4名の独立のドナー由来で行った。
(薬物添加:)
化合物は、Tocrisから供給され、以下の濃度でDMSOに溶解させた:
クロザピン:
・350ng/mlクロザピン(500mgの成人ヒト用量にほぼ等価)
・100ng/mlクロザピン
・25ng/mlクロザピン(55mgの成人ヒト用量にほぼ等価)
ノルクロザピン:
・200ng/mlノルクロザピン
・70ng/mlノルクロザピン
・15ng/mlノルクロザピン
ハロペリドール:
・25ng/mlハロペリドール
・8ng/mlハロペリドール
・2ng/mlハロペリドール
化合物は、Tocrisから供給され、以下の濃度でDMSOに溶解させた:
クロザピン:
・350ng/mlクロザピン(500mgの成人ヒト用量にほぼ等価)
・100ng/mlクロザピン
・25ng/mlクロザピン(55mgの成人ヒト用量にほぼ等価)
ノルクロザピン:
・200ng/mlノルクロザピン
・70ng/mlノルクロザピン
・15ng/mlノルクロザピン
ハロペリドール:
・25ng/mlハロペリドール
・8ng/mlハロペリドール
・2ng/mlハロペリドール
希釈剤対照として0.1%のDMSO。全てのDMSO濃度は、全ての薬物処理試料に対して0.1%に調整した。
薬物は、2つの時点で加えた:
・培養の第3日(活性化B細胞/プレ形質芽細胞)、又は
・培養の第6日(形質芽細胞)。
・培養の第3日(活性化B細胞/プレ形質芽細胞)、又は
・培養の第6日(形質芽細胞)。
(評価:)
第3日の薬物添加は、第6日に評価(形質芽細胞)し、第6日の薬物添加は、第9日に評価(早期形質細胞)して、培養物を、化合物の添加の3日後に評価した(図38を参照されたい)。
第3日の薬物添加は、第6日に評価(形質芽細胞)し、第6日の薬物添加は、第9日に評価(早期形質細胞)して、培養物を、化合物の添加の3日後に評価した(図38を参照されたい)。
評価は、以下のものを含んでいた:
以下のもののフローサイトメトリー評価:
・表現型(CD19、CD20、CD27、CD38、CD138)
・生存率(7AAD)
・細胞数(ビーズカウント)
免疫グロブリン分泌:
・各培養物の第6日及び第9日に収集したバルク上清由来の総IgM/IgGのELISA分析。
以下のもののフローサイトメトリー評価:
・表現型(CD19、CD20、CD27、CD38、CD138)
・生存率(7AAD)
・細胞数(ビーズカウント)
免疫グロブリン分泌:
・各培養物の第6日及び第9日に収集したバルク上清由来の総IgM/IgGのELISA分析。
(結果)
(細胞表現型:)
4名のドナー全てにわたって、対照DMSO試料は、保持されたCD19発現及びCD138の欠如と組み合わせて、CD20の下方調節、CD38の上方制御、及び一定ではないCD27の上方制御を伴って、第3日から第6日まで形質芽細胞状態への移行を示した。その後に形質細胞成熟条件へ移すと、対照細胞は、CD38及びCD27のさらなる上方制御と組み合わせて徐々に進行するCD20の喪失、CD19の下方調節、及びCD138の上方制御を示し、このことは、早期形質細胞状態への移行を示している。これらの知見は、分化プロトコールが、表現型との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、インビトロ分化系の基準として適していたことを示す。
(細胞表現型:)
4名のドナー全てにわたって、対照DMSO試料は、保持されたCD19発現及びCD138の欠如と組み合わせて、CD20の下方調節、CD38の上方制御、及び一定ではないCD27の上方制御を伴って、第3日から第6日まで形質芽細胞状態への移行を示した。その後に形質細胞成熟条件へ移すと、対照細胞は、CD38及びCD27のさらなる上方制御と組み合わせて徐々に進行するCD20の喪失、CD19の下方調節、及びCD138の上方制御を示し、このことは、早期形質細胞状態への移行を示している。これらの知見は、分化プロトコールが、表現型との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、インビトロ分化系の基準として適していたことを示す。
表現型の成熟に対する作用の観点から、前記薬物はいずれも、どの濃度においても、CD20及びCD19発現の同量の喪失に反映されるB細胞表現型の下方調節に対する著しい作用を示さなかった。前記薬物はいずれも、どの濃度においても、第6日又は第9日時点のいずれにおいても、C27やCD138の発現の獲得に対する著しい作用を示さなかった。
3種の薬物は全て、1名のドナーでCD38の発現に対する用量関連型の作用を示した。これは、第6日の時点では中程度のものであったが、第9日の時点では、CD38発現の実質的かつ再現性のあるシフトを伴って、著しいものであった。しかしながら、この作用は、他のドナー全員にわたる一貫した作用としては観察されなかった。
(細胞数及び生存率:)
4名のドナー全員で、対照DMSO試料は、第3日から第6日までの形質芽細胞状態への増殖及び形質細胞状態への移行の間の減少を示した。105という第3日に入力された活性化B細胞数を基準として、第3日から第6日の培養の間に観察された平均増殖は、12倍であった。形質細胞状態への成熟に伴った、第6日での5×105の入力から第9日での105生細胞への5倍の減少がみられた。分化プロトコールが、細胞数との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、基準として適していることが結論づけられた。
4名のドナー全員で、対照DMSO試料は、第3日から第6日までの形質芽細胞状態への増殖及び形質細胞状態への移行の間の減少を示した。105という第3日に入力された活性化B細胞数を基準として、第3日から第6日の培養の間に観察された平均増殖は、12倍であった。形質細胞状態への成熟に伴った、第6日での5×105の入力から第9日での105生細胞への5倍の減少がみられた。分化プロトコールが、細胞数との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、基準として適していることが結論づけられた。
前記薬物はいずれも、どの濃度においても、第6日又は第9日のいずれにおいても生細胞の数に対して顕著に影響を及ぼさなかった。これは、入力細胞あたりの総細胞数又は生細胞数を考慮に入れようが入れまいが影響を受けなかった。同等な入力活性化B細胞数に基づけば、第3日から第6日までの増殖の度合いは、全ての薬物及び濃度にわたって同等であった。同様に、どの薬物のどの濃度でも第9日で回収された生細胞数に対する作用はなかった。
(免疫グロブリン分泌:)
4名のドナー全員で、対照DMSO試料は、第3日から第6日の培養物全体で著しいIgM及びIgG分泌の証拠を示した。これは、述べられた形質細胞へのこの第2の培養段階における予測される、より高い細胞あたりの推定分泌速度を伴って、第6日から第9日の培養物中に継続された。分化プロトコールが、免疫グロブリン分泌との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、基準として適していることが結論づけられた。
4名のドナー全員で、対照DMSO試料は、第3日から第6日の培養物全体で著しいIgM及びIgG分泌の証拠を示した。これは、述べられた形質細胞へのこの第2の培養段階における予測される、より高い細胞あたりの推定分泌速度を伴って、第6日から第9日の培養物中に継続された。分化プロトコールが、免疫グロブリン分泌との関連で働いたこと、及び4つの試料全てが、基準として適していることが結論づけられた。
免疫グロブリン分泌の観点で、個々のドナーの間で大きな変動があるが、前記3種の薬物のうちのいずれに対してもいずれの用量であってもそれに応答する明らかな傾向はない。
対照としてのDMSOに対して規格化すると、データの最も単純な見方が提供され、IgGとの関連で検出される免疫グロブリンのわずかなシフトのみが示された。変化が観察される場合、これらは、1名のドナーについて、用量、例えば、ノルクロザピンとの関連で逆の反応に従う。
対照としてのDMSOに対して規格化すると、データの最も単純な見方が提供され、IgGとの関連で検出される免疫グロブリンのわずかなシフトのみが示された。変化が観察される場合、これらは、1名のドナーについて、用量、例えば、ノルクロザピンとの関連で逆の反応に従う。
(結論)
結果は、前記薬物はいずれも、分化中のB細胞に対して直接的に有毒ではないこと、該薬物はいずれも、どの濃度においても、結果として得られる分化した抗体分泌細胞の抗体を分泌する能力に対する一貫した作用を示さないことを示した。
結果は、前記薬物はいずれも、分化中のB細胞に対して直接的に有毒ではないこと、該薬物はいずれも、どの濃度においても、結果として得られる分化した抗体分泌細胞の抗体を分泌する能力に対する一貫した作用を示さないことを示した。
表現型の反応に関しては、CD38発現に関してドナー間で変動があり、1名のドナーは、特に、形質芽細胞(第6日)と早期形質細胞(第9日)との間の分化のウィンドウに明確な用量依存的下方制御を示す。しかしながら、この反応は、試験された他のドナー全体に一貫した特徴として再現できなかった。
従って、全体的にみれば、試験された化合物は、活性化B細胞の早期形質細胞状態への機能又は表現型の成熟に対する一貫した抑制性の作用を示さず、抗体分泌細胞の生存能力に対する作用を有さない。
採用したインビトロ系には、「強制的な」B細胞分化アッセイ(生理的増殖とは対照的に)であるという観点から限界があり、焦点は末梢B細胞に置かれ、培養期間が限られているため非常に長期的な曝露の作用を反映しない可能性があり、かつ一次(例えば、骨髄)又は二次リンパ組織内にB細胞の正常な微小環境がなく、間接的な調節(例えば、T濾胞性ヘルパー細胞及び/又はIL-21によるもの)もない。これらにもかかわらず、この知見は、クロザピンが、形質細胞又はその前駆体に対して直接作用することはなさそうであること、及びインビボでの免疫表現型の知見が、より複雑なかつ/又は間接的な作用を反映することを示唆する。このインビトロ試験からの知見は、総B細胞数が減少しないこと(すなわち、クロザピンを摂取する患者において一般化したB細胞枯渇の証拠がないこと)と一致している。
(実施例1〜5に記載した結果の概要):
上記実施例に記載した、クロザピンで長期間治療されたヒトにおける観察データ、免疫学的に未処置の状況における健常野生型マウスでの短期間投薬に関する観察データ、及び抗原によって駆動される主要なB細胞成分での自己免疫疾患の疾患モデル(CIAモデル)における評価に関する観察データを含む結果は、クロザピンのいくつかの重要な作用を強調している:
1.評価された全てのクラス(IgG、IgM、及びIgA)に影響を及ぼす総循環免疫グロブリンレベルの低下。個人間での変動を示すものの、クロザピンは、これらの免疫グロブリンについての頻度分布曲線の左側へのシフトをもたらすことが分かる。この知見の堅牢性は、クロザピン又は他の抗精神病薬を摂取する患者の直交性コホート(orthogonal cohort)における暫定的な知見によって強調される。
2.野生型マウスの短期的な投薬で部分的に再現された、ヒトにおける、IgGと比較してIgA(及びIgM)を減少させる比較的大きな影響。
3.ヒトにおけるクロザピン曝露の期間の増加とともに徐々に進行する免疫グロブリン(IgG)の減少の証拠。逆に言えば、クロザピン中断後のIgGのゆるやかな回復(数年にわたる)の証拠。
4.特定の免疫グロブリンの減少。総免疫グロブリン力価の減少を上回って、クロザピンが、病原性免疫グロブリン(CIAモデル)を低下させることが分かり、本発明者らによって、ヒトにおける肺炎球菌特異抗体を低下させること(Ponsfordらの文献、2018b)が実証されている。また、後者は、第2の観察コホートのなおも暫定的な分析に関する値を顕著に低下させる強い傾向を示している。
5.総循環(CD19+)B細胞数に対する著しい影響はない。この観察は、現行の侵襲性全身性B細胞枯渇生物学的手法の影響と際立って対照的である。
6.循環形質芽細胞(B細胞系列の短寿命増殖性抗体分泌細胞)及びクラススイッチしたメモリーB細胞の実質的な減少。双方の細胞型は、即時型液性応答及び二次的液性応答において重要である。クラススイッチは、B細胞が、IgMから、異なるエフェクター機能を有する二次的IgHアイソタイプ抗体IgG、IgA、又はIgEの産生へとスイッチすることを可能とする(Chaudhuri及びAltの文献、2004)。増加したクラススイッチ及び形質細胞分化は、病原性免疫グロブリン産生と関連する自己免疫疾患における重要な特徴として認識される(Suurmondらの文献、2018)。クロザピンのこのプロセスを阻害する、すなわち、クラススイッチしたメモリーB細胞を減少させる能力は、主にIgG、IgA、又はIgEサブクラスの自己抗体によって媒介される病原性免疫グロブリン媒介性障害の状況における特定の治療的可能性を示唆している。
7.特に、総プレB細胞、増殖性プレB細胞、及び未熟B細胞の減少を含む、骨髄B細胞前駆体に対する僅かな作用。これは、自己反応性のためのB細胞発生の重要な内在性移行チェックポイント(endogenous transition checkpoint)であるために注目に値する(Melchers、2015)。早期寛容を含む欠陥のあるB細胞寛容が、自己免疫となりやすい根本的特徴として認識される(Samuelsらの文献、2005;Yurasovらの文献、2005)。従って、不確かではあるものの、このクロザピンの作用が、自己反応性(IgH鎖のもの)を有するB細胞のさらなる発達を減少させて、新たなB細胞レパートリーを調節するのに役立つ可能性がある。
8.病原性免疫グロブリンの産生を通じて持続性の自己免疫疾患を駆動することを担い、既存の治療法に対して実質的に抵抗性である重要な細胞集団である、骨髄長寿命形質細胞の減少。
9.実質的なB細胞駆動型かつ病原性自己抗体成分を伴う自己免疫疾患の実験モデルの発症を実質的に遅らせる能力。
10.その重要な細胞の成分に対する作用による胚中心機能の撹乱:T濾胞性ヘルパー細胞機能を調節する重要なタンパク質(PD1及びCXCR5)の表面発現の減少と共に胚中心B細胞の著明な減少の誘導。胚中心は、抗原活性化B細胞の高親和性メモリーB細胞又は形質細胞への分化をもたらす激しい増殖及び体細胞変異の場である。従って、この知見(CIAモデルにおける抗原注入後のもの)は、末端(distal)B細胞系列成熟/機能に対するクロザピンの影響と一致し、減少したクラススイッチしたメモリーB細胞、減少した形質芽細胞、及び長寿命形質細胞形成の実施例に記載された観察と合致する。合わせると、これらの作用は、自己免疫疾患の状況における病原性免疫グロブリン産生を減少させる傾向があるであろう。
11.インビトロ分化アッセイに基づいて、クロザピンの観察された作用は、抗体分泌細胞に対する直接的な作用を反映しそうにないようである。
上記実施例に記載した、クロザピンで長期間治療されたヒトにおける観察データ、免疫学的に未処置の状況における健常野生型マウスでの短期間投薬に関する観察データ、及び抗原によって駆動される主要なB細胞成分での自己免疫疾患の疾患モデル(CIAモデル)における評価に関する観察データを含む結果は、クロザピンのいくつかの重要な作用を強調している:
1.評価された全てのクラス(IgG、IgM、及びIgA)に影響を及ぼす総循環免疫グロブリンレベルの低下。個人間での変動を示すものの、クロザピンは、これらの免疫グロブリンについての頻度分布曲線の左側へのシフトをもたらすことが分かる。この知見の堅牢性は、クロザピン又は他の抗精神病薬を摂取する患者の直交性コホート(orthogonal cohort)における暫定的な知見によって強調される。
2.野生型マウスの短期的な投薬で部分的に再現された、ヒトにおける、IgGと比較してIgA(及びIgM)を減少させる比較的大きな影響。
3.ヒトにおけるクロザピン曝露の期間の増加とともに徐々に進行する免疫グロブリン(IgG)の減少の証拠。逆に言えば、クロザピン中断後のIgGのゆるやかな回復(数年にわたる)の証拠。
4.特定の免疫グロブリンの減少。総免疫グロブリン力価の減少を上回って、クロザピンが、病原性免疫グロブリン(CIAモデル)を低下させることが分かり、本発明者らによって、ヒトにおける肺炎球菌特異抗体を低下させること(Ponsfordらの文献、2018b)が実証されている。また、後者は、第2の観察コホートのなおも暫定的な分析に関する値を顕著に低下させる強い傾向を示している。
5.総循環(CD19+)B細胞数に対する著しい影響はない。この観察は、現行の侵襲性全身性B細胞枯渇生物学的手法の影響と際立って対照的である。
6.循環形質芽細胞(B細胞系列の短寿命増殖性抗体分泌細胞)及びクラススイッチしたメモリーB細胞の実質的な減少。双方の細胞型は、即時型液性応答及び二次的液性応答において重要である。クラススイッチは、B細胞が、IgMから、異なるエフェクター機能を有する二次的IgHアイソタイプ抗体IgG、IgA、又はIgEの産生へとスイッチすることを可能とする(Chaudhuri及びAltの文献、2004)。増加したクラススイッチ及び形質細胞分化は、病原性免疫グロブリン産生と関連する自己免疫疾患における重要な特徴として認識される(Suurmondらの文献、2018)。クロザピンのこのプロセスを阻害する、すなわち、クラススイッチしたメモリーB細胞を減少させる能力は、主にIgG、IgA、又はIgEサブクラスの自己抗体によって媒介される病原性免疫グロブリン媒介性障害の状況における特定の治療的可能性を示唆している。
7.特に、総プレB細胞、増殖性プレB細胞、及び未熟B細胞の減少を含む、骨髄B細胞前駆体に対する僅かな作用。これは、自己反応性のためのB細胞発生の重要な内在性移行チェックポイント(endogenous transition checkpoint)であるために注目に値する(Melchers、2015)。早期寛容を含む欠陥のあるB細胞寛容が、自己免疫となりやすい根本的特徴として認識される(Samuelsらの文献、2005;Yurasovらの文献、2005)。従って、不確かではあるものの、このクロザピンの作用が、自己反応性(IgH鎖のもの)を有するB細胞のさらなる発達を減少させて、新たなB細胞レパートリーを調節するのに役立つ可能性がある。
8.病原性免疫グロブリンの産生を通じて持続性の自己免疫疾患を駆動することを担い、既存の治療法に対して実質的に抵抗性である重要な細胞集団である、骨髄長寿命形質細胞の減少。
9.実質的なB細胞駆動型かつ病原性自己抗体成分を伴う自己免疫疾患の実験モデルの発症を実質的に遅らせる能力。
10.その重要な細胞の成分に対する作用による胚中心機能の撹乱:T濾胞性ヘルパー細胞機能を調節する重要なタンパク質(PD1及びCXCR5)の表面発現の減少と共に胚中心B細胞の著明な減少の誘導。胚中心は、抗原活性化B細胞の高親和性メモリーB細胞又は形質細胞への分化をもたらす激しい増殖及び体細胞変異の場である。従って、この知見(CIAモデルにおける抗原注入後のもの)は、末端(distal)B細胞系列成熟/機能に対するクロザピンの影響と一致し、減少したクラススイッチしたメモリーB細胞、減少した形質芽細胞、及び長寿命形質細胞形成の実施例に記載された観察と合致する。合わせると、これらの作用は、自己免疫疾患の状況における病原性免疫グロブリン産生を減少させる傾向があるであろう。
11.インビトロ分化アッセイに基づいて、クロザピンの観察された作用は、抗体分泌細胞に対する直接的な作用を反映しそうにないようである。
したがって、クロザピンは、B細胞成熟及び病原性抗体(特に、病原性IgG及びIgA抗体)産生に関与する経路に対してインビボで重大な影響を有するようであり、従って、病原性免疫グロブリン駆動型B細胞介在性疾患を治療するのに有用である。
これらの知見は、以下のこと:IgEメモリーB細胞及びIgE形質細胞が、胚中心経路によっても発達すること(Talayらの文献、2012);IgEにスイッチしたメモリーB細胞が、細胞性IgE記憶の主要な起源であること(Talayらの文献、2012);IgE+胚中心様B細胞、IgE+形質芽細胞、及びIgE+形質細胞が、IgGからの逐次のスイッチングプロセスを経て生じることを含むIgG(1)の表現型段階に類似の表現型段階に、IgE+ B細胞及び形質細胞の個体発生が従うこと(Ramadaniらの文献、2017);B細胞の固有の成熟状態が、そのIgEへのクラススイッチングを受ける能力を決定し、胚中心B細胞由来であるIgE+細胞の比率が、最も高いこと(Ramadaniらの文献、2017);アイソタイプスイッチングが、細胞分裂の回数に依存し、かつIgGよりもIgEで多く(Tangyeらの文献、2002)、このことが、IgE応答が、一般に、より長期の抗原刺激を必要とするという事実と一致すること(Hasboldらの文献、1998)を考えると、IgE+ B細胞の個体発生に基づく分化したB細胞によるIgE産生のプロセス及びIgEの産生と相当な関連がある。従って、クロザピンは、病原性免疫グロブリンE(IgE)駆動型B細胞介在性疾患を治療するのに有用であると期待される。
(実施例6)
(健常ヒト志願者での試験)
この試験は、ワクチン接種(すなわち、抗原曝露)後の健康志願者におけるB細胞の数及び機能に対する低用量クロザピンの作用を調査する無作為化非盲検比較対照試験である。この試験は、試験する高い方の用量の開始を遅らせる、パラレルアーム設計を採用する(図39を参照されたい)。この試験においては、合計で最大48名の健康志願者が、最大で4つのコホートに募集されるものとする。全ての参加者は、第1日(免疫化当日)に特定の免疫グロブリン(具体的には、IgG)の産生を刺激するチフス免疫化を受けて、約56日の期間追跡されるものとする。コホート1(n=12名の参加者)は、25mgのクロザピンを28日間投与され、さらに28日間追跡されるものとする。一方、コホート2(n=12名の参加者(コホート1と並行して募集されるものとする))は、クロザピンを全く投与されないが、ワクチン接種を受けるものとする。コホート2は、コホート1と同じ様式で追跡される。コホート3(100mgクロザピン)は、コホート1における積極的なクロザピン治療期間(積極的な治療の第28日)からのデータが、安全性委員会によって調査された後に初めて開始されるものとする。データによって、25〜100mgの間のクロザピンのさらなる用量の評価が正当化される場合に、別の12名の健康志願者の任意選択コホートが開始される可能性がある。
(健常ヒト志願者での試験)
この試験は、ワクチン接種(すなわち、抗原曝露)後の健康志願者におけるB細胞の数及び機能に対する低用量クロザピンの作用を調査する無作為化非盲検比較対照試験である。この試験は、試験する高い方の用量の開始を遅らせる、パラレルアーム設計を採用する(図39を参照されたい)。この試験においては、合計で最大48名の健康志願者が、最大で4つのコホートに募集されるものとする。全ての参加者は、第1日(免疫化当日)に特定の免疫グロブリン(具体的には、IgG)の産生を刺激するチフス免疫化を受けて、約56日の期間追跡されるものとする。コホート1(n=12名の参加者)は、25mgのクロザピンを28日間投与され、さらに28日間追跡されるものとする。一方、コホート2(n=12名の参加者(コホート1と並行して募集されるものとする))は、クロザピンを全く投与されないが、ワクチン接種を受けるものとする。コホート2は、コホート1と同じ様式で追跡される。コホート3(100mgクロザピン)は、コホート1における積極的なクロザピン治療期間(積極的な治療の第28日)からのデータが、安全性委員会によって調査された後に初めて開始されるものとする。データによって、25〜100mgの間のクロザピンのさらなる用量の評価が正当化される場合に、別の12名の健康志願者の任意選択コホートが開始される可能性がある。
コホート1及び2の参加者は、最初のスクリーニング受診を除いて合計で60日間この試験に参加したままとする。コホート3の参加者は、最初のスクリーニング受診を除いて合計で70日間参加するものとする。
用量設定期間が、選択される用量に合わせて変更されるために、任意選択コホート4の参加者の参加の期間は、選択される用量次第で変わるものであるが、最初のスクリーニング受診を除けば、参加者は、最高63日間参加することとなる(100mg用量が選択される場合)。
観察研究(実施例2)における免疫バイオマーカーと類似の免疫バイオマーカーが、健康志願者試験において集められるものとする。
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体にわたって、文脈がそうでないことを必要とする場合を除き、「を含む(comprise)」という単語、並びに、例えば、「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」などの変形形態は、記載されたインテジャー(integer)、工程、インテジャーの群、又は工程の群を含むことを意味するが、任意の他のインテジャー、工程、インテジャーの群、又は工程の群を排除することは意味しないとして理解されるものとする。
本明細書で触れられた全ての特許及び特許出願は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
Claims (15)
- 対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のためのクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物であって、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記化合物。
- 対象に、有効量のクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物を投与することによる、該対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防の方法であって、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記方法。
- 対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防のための薬品の生産における、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物の使用であって、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記使用。
- 前記化合物が、クロザピン、又はその医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用のための化合物、方法、又は使用。
- 前記成熟B細胞が、クラススイッチしたメモリーB細胞である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用のための化合物、方法、又は使用。
- 前記成熟B細胞が、形質芽細胞である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用のための化合物、方法、又は使用。
- 前記病原性IgE駆動型B細胞疾患が、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、慢性非自己免疫性蕁麻疹、チャーグ・ストラウス血管炎、アレルギー性鼻炎、及びアレルギー性眼疾患、好ましくは、アトピー性皮膚炎、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される疾患である、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用のための化合物、方法、又は使用。
- 前記化合物が、CD19(+)B細胞及び/又は(-)B形質細胞を減少させる作用を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用のための化合物、方法、又は使用。
- 対象における病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防における使用のための、クロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、及びそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物;並びに医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含む医薬組成物であって、該化合物が、該対象において成熟B細胞が阻害されることを引き起こす、前記医薬組成物。
- 前記医薬組成物が、経口投与される、請求項9記載の使用のための医薬組成物。
- 前記医薬組成物が、例えば、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、カプセル剤、又はロゼンジ錠などの液剤又は固形剤として製剤化されている、請求項9又は10記載の使用のための医薬組成物。
- 前記成熟B細胞が、クラススイッチしたメモリーB細胞である、請求項9〜11のいずれか1項記載の使用のための医薬組成物。
- 前記成熟B細胞が、形質芽細胞である、請求項9〜11のいずれか1項記載の使用のための医薬組成物。
- 病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防のための第2の又はさらなる治療薬剤との組み合わせでの、請求項1及び4〜8のいずれか1項記載の使用のためのクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物。
- 前記病原性IgE駆動型B細胞疾患の治療又は予防のための第2の又はさらなる物質が、抗TNFα剤(例えば、抗TNFα抗体(例えば、インフリキシマブ又はアダルムマブ)など)、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムス又はシクロスポリンなど)、抗増殖剤(例えば、ミコフェノレート(例えば、モフェチルもしくはナトリウム)又はアザチオプリンなど)、全身抗炎症薬(例えば、ヒドロキシクロロキン、又はNSAID(例えば、ケトプロフェン)、及びコルヒチンなど)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムスなど)、ステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、抗CD80/CD86剤(例えば、アバタセプトなど)、抗CD-20剤(例えば、抗CD-20抗体(例えば、リツキシマブ)など)、抗BAFF剤(例えば、抗BAFF抗体(例えば、タバルマブもしくはベリムマブ)、又はアタシセプトなど)、免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート又はシクロホスファミドなど)、抗FcRn剤(例えば、抗FcRn抗体)、及び他の抗体(例えば、ARGX-113、PRN-1008、SYNT-001、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、アレムツズマブ、ミラツズマブ、エプラツズマブ、及びブリナツモマブなど)から選択される、請求項14記載の使用のためのクロザピン、ノルクロザピン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの医薬として許容し得る塩及び溶媒和物から選択される化合物。
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