JP2021511055A - 被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入ならびに前記介入の有効性を判定するためのキットおよび方法 - Google Patents

被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入ならびに前記介入の有効性を判定するためのキットおよび方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比、特に(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比の測定、または被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適したキットに関する。本発明はまた、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入が有効であったかを判定するための方法にも関する。最後に、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための標的化介入に関する。

Description

本発明は、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入に関する。本発明はさらに、前記介入の有効性を判定するためのキットおよび方法に関する。
循環器疾患(CVD)は、心臓および血管の障害を説明するために使用される総称であり、世界中の主要な死因を占める。先進国では、CVDは通常、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症および高血圧症として顕れ、中心性肥満が、危険因子としてますます重要な役割を果たしている。
活性酸素種の発生およびその結果として起きる下流の波及効果が、CVDの進行に関連してきた。また、高レベルの循環スクシネートが、いくつかの高リスクCVD状態、例えば、高血圧症(Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215)、虚血性心疾患(Aguiar et al.,2014,Cell Commun.Signal.12:78)および2型糖尿病(T2DM)(Guo et al.,2017,Nat.Commun.8:15621;Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215;Toma et al.,2008,J.Clin.Invest.118:2526−2534;van Diepen et al.,2017,Diabetologia 60:1304−1313)において検出されている。これらのシナリオの下では、細胞外のスクシネートが、その同族レセプターであるSUCNR1/GPR91を介してシグナル伝達し、肥大型心筋症(Aguiar et al.,2014,Cell Commun.Signal.12:78)、肥満関連代謝障害(McCreath et al.,Diabetes.2015 Apr;64(4):1154−67)、レニン誘発性高血圧(Toma et al.,2008,J.Clin.Invest.118:2526−2534)および糖尿病性網膜症(Ariza et al.,2012,Front.Endocrinol.(Lausanne)3:22)において病理学的な意味を有すると考えられている。
したがって、前記下流の効果を考慮すると、循環スクシネートのレベルを低下させることが、CVDおよびCVDに関連する病理をはじめとした種々の疾患を治療するための魅力的なストラテジーであると思われる。スクシネートレセプターは、心臓血管の欠陥および線維性の欠陥に対抗するまたはそれらを予防するための有望な薬物標的としても提案されてきた(Ariza et al.,2012,Front.Endocrinol.(Lausanne)3:22)。興味深いことに、循環スクシネートの正確な起源は、未だに不明である。この点について、損傷を受けた組織が、循環中に見られるスクシネートの一因となり得ることが示唆された(Ariza et al.,2012,Front.Endocrinol.(Lausanne)3:22;Deen and Robben,2011,J.Am.Soc.Nephrol.22:1416−1422)。したがって、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする効率的な介入が当該分野において必要とされている。
本発明者らは、驚いたことに、腸内微生物叢の細菌によって産生されるスクシネートが、循環スクシネートの総レベルの極めて重要な要因であることを見出した。さらに、本発明者らは、被験体由来の糞便サンプルにおいて計測されたスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比、特に(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比が、同じ被験体における循環スクシネートレベルに関係し得ることを実証することができた。
したがって、第1の態様において、本発明は、被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比の測定に適した試薬を含むキットに関し、
・そのキットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを含み、または
・そのキットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするプローブを含み、
そのプライマーセットまたはプローブは、キットを形成する試薬の総量の少なくとも10%を構成する。
第2の態様において、本発明は、被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を検出するための本発明の第1の態様に係るキットの使用に関する。
第3の態様において、本発明は、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含むキットに関し、
・前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより高いスクシネートが存在することは、陽性の結果を提供し、
・前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより低いスクシネートが存在することまたは前記生体液サンプル中にスクシネートが存在しないことは、陰性の結果を提供する。
第4の態様において、本発明は、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルが閾値レベルより高いかを判定するための、本発明の第3の態様に係るキットの使用に関する。
別の態様において、本発明は、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とするプロバイオティクス介入が有効であったかを判定するためのキットの使用に関し、そのキットは、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含み、
・プロバイオティクス介入前の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルより低い、プロバイオティクス介入後の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルは、プロバイオティクス介入が有効であったことを示し、
・プロバイオティクス介入前の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルと等しいまたはそれより高い、プロバイオティクス介入後の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルは、プロバイオティクス介入が有効でなかったことを示す。
さらなる態様において、本発明は、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入が有効であったかを判定するための方法に関し、その方法は、
(a)標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程、および
(b)標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程
を含み、
・標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より低い、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入が有効であったことを示し、
・標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比と等しいまたはそれより高い、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入が有効でなかったことを示す。
なおもさらなる態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための食事介入またはダイエット製品に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
なおさらなる態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品に関し、その製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。
別のさらなる態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品に関し、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。
最後の態様において、本発明は、有効量のスクシネート消費細菌を含むプロバイオティクス製品に関し、そのスクシネート消費細菌は、Odoribacter spp、Phascolarctobacterium spp、Ruminococcus sppおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
最適な/変化した代謝プロファイルの予測因子を特定するための決定木を示す図である。年齢、ボディマス指数(BMI)、スクシネート、コレステロール、高密度リポタンパク質−c(HDLc)、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)および2型糖尿病(T2DM)に基づく、最適な/変化した代謝プロファイルに対する分類木と回帰木。パイチャートは、木の各ノードにおいて最適(暗灰色)または変化(薄灰色)を満たした患者の比率を表している。 循環スクシネートレベルが肥満および2型糖尿病において上昇していることを示す図である。(A)痩せ個体、肥満個体および2型糖尿病(T2DM)個体における循環血漿レベル。データは、中央値および四分位範囲として表されている。クラスカル・ワリス検定およびダンの事後多重比較検定によって、差を解析した。、痩せに対してp<0.0001。(B)コホート全体を用いた、スクシネートレベルと、BMI、インスリン、グルコース、HOMA−IRおよびトリグリセリドとの正の相関。(C)スクシネートレベルと、SAT ATGL、SAT ABHD5、SAT HSLおよびSAT ZAGのレベルとの負の相関。(D)スクシネートレベルと、SAT HIF1AおよびSAT CD163との正の相関。SAT;皮下脂肪組織。(B)、(C)および(D)に対する統計解析:スピアマンの相関解析。 肥満−腸内微生物叢の組成が、循環スクシネートレベルと関連することを示す図である。(A)非肥満個体および肥満個体におけるBacteroidetes科およびFirmicutes科の出現率のパーセンテージ。(B)科レベルにおける非肥満個体と肥満個体との差:科[(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridaceae)](fam[(P+V)/(O+C)])比。(C)血清スクシネートレベルとfam[(P+V)/(O+C)])比との正の相関。(D)血清スクシネートレベルと循環ゾヌリンレベルとの正の相関。(E)コホートIIIを用いて検証研究を行った。痩せ個体および肥満個体におけるBacteroidetes科およびFirmicutes科の出現率のパーセンテージ。(F)血漿スクシネートレベルとVeillonellaceaeとの正の相関。(G)コホートIII研究におけるfam[(P+V)/(O+C)]比の痩せ個体と肥満個体との差。(H)コホートIII研究における血清スクシネートレベルとlog fam[(P+V)/(O+C)])比との正の相関。データ情報:(A)および(E)の場合、値は、平均値±SDとして表されている。(B)および(G)の場合、データは、箱ひげ図の形式で表されている(ひげ:最小値から最大値)。統計解析:マン・ホイットニーのU検定。、非肥満または痩せに対してp<0.05。(C)、(D)、(F)および(H)の場合、スピアマンまたはピアソン相関解析およびボンフェローニ補正を用いた。(I)17人の2型糖尿病(T2D)被験体(9人の女性および4人の男性)を本研究に含めた。P+V/O+C比は、4.70±6.12である。(J)グラフは、肥満の糖尿病患者由来の26個の血漿サンプルについて、血漿スクシネートレベルとOdoribacteraceaeとのスピアマン相関を示している。被験体を、Hospital Universitari de BellvitgeのEndocrinology Service(Barcelona,Spain)にリクルートした。 食事介入またはダイエット製品によって誘導された体重減少が、特定の腸内微生物叢を改変し、循環スクシネートレベルに影響することを示す図である。(A)コホートIVの、基礎状態および12週間の食事介入またはダイエット製品(12−wDI)の後の循環血清スクシネートレベル。(B)基礎状態および12−wDI後の肥満個体におけるBacteroidetes科およびFirmicutes科の出現率のパーセンテージ。(C)血清スクシネートレベルの変化(12−wDI[スクシネート]−基礎[スクシネート])とPrevotellaceaeの変化(12−wDI[Prevotellaceaeの%存在量]−基礎[Prevotellaceaeの%存在量])との正の相関。(D)基礎状態と12−wDIとの間のfam[(P+V)/(O+C)]比の差。(E)血清スクシネートレベルの変化(12−wDI[スクシネート]−基礎[スクシネート])と(12−wDI fam[P+V/O+C]−基礎fam[(P+V)/(O+C)])比の変化との正の相関。データ情報:(A)および(B)の場合、値は、平均値±SDとして表されている。(D)の場合、データは、箱ひげ図の形式で表されている(ひげ:最小値から最大値)。統計解析:ウィルコクソン符号付き順位検定。、基礎に対してp<0.05。(C)および(D)の場合、スピアマン相関解析およびボンフェローニ補正を用いた。 コホートII研究における非肥満被験体および肥満被験体における腸内微生物叢の組成を示す図である。非肥満個体および肥満個体において算出された、(A)Firmicutes/bacteroidetes比、(B)豊富さ指数(OTUの数)および(C)多様度指数(Shannon−Weaver)。(D)非肥満個体および肥満個体におけるBacteroidetes属およびFirmicutes属の出現率のパーセンテージ。(E)非肥満個体および肥満個体における、属レベルでの比[(Prevotella spp.+Veillonella spp.)/(Odoribacter spp.+Clostridium spp.)](gen[(P+V)/(O+C)])。データ情報:(A)、(B)、(C)および(E)の場合、データは、箱ひげ図の形式で表されている(ひげ:最小値から最大値)。(D)の場合、値は、平均値±SDとして表されている。統計解析:マン・ホイットニーのU検定。、非肥満に対してp<0.05。 食事介入研究コホートIVにおける腸内微生物叢の組成を示す図である。微生物叢コホートIVの肥満個体における基礎状態および12−wDIにおいて算出された、(A)豊富さ指数(OTUの数)および(B)多様度指数(Shannon−Weaver)(C)Firmicutes/bacteroidetes比。(D)基礎状態および12−wDIにおけるBacteroidetes属およびFirmicutes属の出現率のパーセンテージの差。(E)基礎状態および12−wDIにおける属レベルでの比(gen[(P+V)/(O+C)])。データ情報:(A)、(B)、(C)および(E)の場合、データは、箱ひげ図の形式で表されている(ひげ:最小値から最大値)。(D)の場合、値は、平均値±SDとして表されている。統計解析:ウィルコクソン符号付き順位検定。、12−wDIに対してp<0.05。 スクシネート代謝に関係する代謝遺伝子およびスクシネートを代謝する微生物叢を示す図である。群1(追跡調査の終わりに比が低下する患者)と群2(追跡調査の終わりに比が上昇する患者)との間の、酵素をコードする遺伝子の差。データは、平均値およびSDを用いて散布図に表されている。統計解析:マン・ホイットニーのU検定。 肥満マウスにおける耐糖能試験(GTT)に対するOdoribacter laneusの効果を示す図である。C57/Bl6マウスに16週間、高フルクトース食を与えた。次いで、結果として生じた肥満マウスを、100uLの、PBS+グリセロール1%(ビヒクル)中の1×10CFU/mLのOdoribacter laneusで24日間、経口胃管栄養法にて毎日治療した。耐糖能試験(A)は、Odoribacter laneusで治療された動物において改善した。曲線下面積(AUC)を(B)に示す。
上記で説明したように、本発明者らは、驚いたことに、腸内微生物叢の細菌によって産生されるスクシネートが、循環スクシネートの総レベルの極めて重要な要因であることを見出した。さらに、本発明者らは、被験体由来の糞便サンプルにおいて計測されたスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比、特に(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比が、同じ被験体における循環スクシネートレベルに関係し得ることを実証することができた。
本発明のキット
本発明者らは、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定するためのキットを開発した。
したがって、第1の態様において、本発明は、被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比の測定に適した試薬を含むキットに関し、好ましくは、
・そのキットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを含み、または
・そのキットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするプローブを含み、
そのプライマーセットまたはプローブは、キットを形成する試薬の総量の少なくとも10%を構成する。
本発明の文脈において、「キット」は、種々の用途および本発明の方法に従って使用するための種々の試薬を輸送および保管できるように包装された、それらの試薬を含む製品として理解される。さらに、本発明において使用されるキットは、そのキットに含まれる種々の構成要素を同時に、連続的にまたは別個に使用するための指示を含み得る。前記指示は、印刷物の形態、あるいは読むまたは理解することが可能な指示を記憶できる電子的支持体の形態、例えば、電子的記憶媒体(例えば、磁気ディスク、磁気テープ)または光学媒体(例えば、CD−ROM、DVD)または音声材料であり得る。追加的または代替的に、その媒体は、前記指示を提供しているインターネットアドレスを含み得る。
好ましい実施形態において、上記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを含む。
別の好ましい実施形態において、上記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするプローブを含む。
本明細書中で使用される用語「16S rRNA遺伝子」とは、シャイン・ダルガノ配列に結合する原核生物のリボソームの30S小サブユニットの構成要素をコードする細菌遺伝子のことを指す。16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子の配列解析は、細菌種を同定するためおよび分類学研究を行うために広く使用されている。細菌の16S rRNA遺伝子は、一般に、異なる細菌種の間でかなりの配列多様性を示す9つの「超可変領域」を含み、種の同定に使用できる。したがって、本明細書中で使用される用語「16S rRNA遺伝子の超可変領域」とは、単一の細菌種の同定あるいは限られた数の異なる種または属の間の識別を可能にする16SリボソームrRNA遺伝子における前記配列のことを指す。本発明の文脈において、16S rRNA遺伝子の超可変領域は、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌の同定または識別を可能にする。前記領域の特定は、当業者に周知の手法によって媒介され得る。そのような手法の非限定的な例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、ノーザンブロットまたはマイクロアレイである。
特定の実施形態において、16S rRNA遺伝子の超可変領域を用いて、Prevotella spp.、Veillonella spp.、Odoribacter spp.および/またはClostridium spp.の種の細菌が特定される。好ましい実施形態において、Prevotella spp.の16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号1(Genbank受託番号:AB244770;バージョンNo.:AB244770.1;最終修正日2007年4月19日)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。より好ましい実施形態において、Prevotella spp.は、Prevotella copriであり、16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号1を有する配列を含む。好ましい実施形態において、Veillonella spp.の16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号2(Genbank受託番号:EF108443;バージョンNo.:EF108443.1、最終修正日2011年1月3日)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。より好ましい実施形態において、Veillonella spp.は、Veillonella rogosaeであり、16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号2を有する配列を含む。好ましい実施形態において、Odoribacter spp.の16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号3(Genbank受託番号:AB547648;バージョンNo.:AB547648.1;最終修正日2012年11月9日)と少なくとも86%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。より好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneusであり、16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号3を有する配列を含む。好ましい実施形態において、Clostridium spp.の16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号4と少なくとも95%、少なくとも99%または少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。より好ましい実施形態において、Clostridium spp.は、Clostridium ramosumであり、16S rRNAに対する遺伝子は、配列番号4(Genbank受託番号:AB627078;バージョンNo.:AB627078.1、最終修正日2012年11月9日)を有する配列を含む。
本明細書中で使用される用語「プライマーセット」とは、16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズし、DNA合成の開始点として働く、RNAまたはDNAのオリゴヌクレオチドのセット(好ましくは、約15〜35塩基)のことを指す。それらは、PCR法に基づく反応においてDNAポリメラーゼによって媒介されるDNA増幅に必要である。次いで、各アンプリコンの相対量、濃度および/または平均サイズが、当業者に公知の手法を用いて解析され得る。そのような手法の非限定的な例は、ゲル電気泳動、またはRT−PCR法に基づく手法である。当業者に公知のさらなる工程の後、前記プライマーを用いて、標的核酸の配列を決定することも可能である。
本明細書中で使用される用語「プローブ」とは、特定の配列との相補性によってハイブリダイズするDNAまたはRNAオリゴヌクレオチド配列のことを指す。換言すれば、プローブは、プローブと標的との相補性に起因してプローブと標的との塩基対形成を可能にする塩基配列を有する特定の一本鎖核酸(DNAまたはRNA)にハイブリダイズする。好ましい実施形態において、その結果生じたハイブリッドは、当業者に公知の手法を用いて検出できる。例えば、プローブは、放射性であり得るかまたは蛍光分子であり得るマーカーであって、膜上に固定化されたまたはインサイチュで固定化されるマーカーで、ラベルされ得る。通常使用されるマーカーは、32P(プローブDNAにおけるホスホジエステル結合に組み込まれるリンの放射性同位体)、または非放射性の抗体ベースのマーカーであるジゴキシゲニンである。次いで、ハイブリダイズしたプローブをオートラジオグラフィまたは他のイメージング技術を介して可視化することによって、プローブに対して中程度から高い配列類似性を有するDNA配列またはRNA転写物が検出される。通常、フィルターのX線写真を撮影し、または、蛍光標識されたプローブを検出する場合は、フィルターをUV光または顕微鏡の下に置く。中程度または高い類似性を有する配列の検出は、どれくらいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が適用されたかに左右される。高ストリンジェンシー(例えば、高いハイブリダイゼーション温度およびハイブリダイゼーション緩衝液中の低い塩)は、高度に類似の核酸配列間のハイブリダイゼーションだけを可能にするのに対して、低ストリンジェンシー(例えば、低い温度および高い塩)は、それらの配列がそれほど類似でなくてもハイブリダイゼーションを可能にする。
本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」とは、好ましくは、最大35、30、25、20、19、18、17、16、15、14または13塩基長(上限)を有する、一本鎖のDNAまたはRNA分子のことを指す。本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも25ヌクレオチド塩基長(下限)の、DNAまたはRNA分子である。塩基長の範囲は、上述の下限および上限、例えば、少なくとも2塩基および最大30塩基、少なくとも10塩基および最大15塩基、少なくとも5塩基および最大15塩基または少なくとも15塩基および最大18塩基を用いて、種々のあらゆる様式で組み合わせることができる。
本明細書中で使用される用語「特異的にハイブリダイズする」とは、高ストリンジェント条件下または中ストリンジェント条件下において2つのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にする条件のことを指す。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に確定可能であり、一般に、プローブの長さ、洗浄温度および塩濃度に左右される経験的な計算結果である。通常、プローブが長いほど、適切なアニーリングには高い温度が必要であり、プローブが短いほど、低い温度が必要となる。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補鎖がそれらの融解温度より低い環境に存在するとき、変性DNAが再アニールする能力に依存する。プローブと標的配列との所望の相同性の程度が高いほど、使用しなければならない相対温度は高くなる。結果として、当然、高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにする傾向があり、低い温度は、そのようにする傾向を低くする、ということになる。Brown T,“Gene Cloning”(Chapman&Hall,London,UK,1995)を参照のこと。
好ましい実施形態において、プライマーセットまたはプローブは、本発明のキットを形成する試薬の総量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%を構成する。特定の実施形態において、本発明のキットを形成する試薬の総量とは、キットにおける試薬の総数のことを指す。
本明細書中で使用される用語「スクシネート」とは、コハク酸の陰イオンである代謝産物のことを指し、ブタンジオエートとしても知られる。それは、トリカルボン酸(TCA)サイクルの中間体であり、ミトコンドリアにおけるアデノシン三リン酸(ATP)の生成において極めて重要な役割を果たす。スクシネートの化学式は、C 2−である。本明細書中で使用される表現「循環スクシネート」または「被験体における循環スクシネート」とは、被験体由来の血液、血漿または血清サンプルにおいて検出可能なスクシネートのことを指す。
本明細書中で使用される表現「スクシネート産生細菌」とは、スクシネートを産生し、放出する細菌のことを指す。本発明の文脈において、表現「スクシネート産生細菌」とは、スクシネートを活発に産生している細菌のことと、活発にはスクシネートを産生していない細菌のことを等しく指すが、但し、後者は、環境条件がスクシネートの産生および放出を許容する(すなわち、適切な基質の存在下である)場合、スクシネートを産生し、放出することができる。特定の実施形態において、「スクシネート産生細菌」は、スクシネートを活発に産生している細菌である。別の特定の実施形態において、「スクシネート産生細菌」は、活発にはスクシネートを産生していない細菌であるが、但し、その細菌は、環境条件がスクシネートの産生および放出を許容する(すなわち、適切な基質の存在下である)場合、スクシネートを産生および放出することができる。当業者は、細菌がスクシネート産生細菌であるかを判定するためにアッセイをデザインできるだろう。例として、細菌が、所定の長さの時間にわたる、培養液中での生育であり得、次いで、その細菌がスクシネート産生細菌であることを示す前記培養液中のスクシネートの蓄積について、培養上清が解析され得る。スクシネート産生細菌の例は、当該分野で公知である:Louis et al.,2014,Nat.Rev.Microbiol 12:661−672;Nakayama et al.,2017,Front.Microbiol.8:197;Vogt et al.,2015,Anaerobe 34:106−115。好ましくは、前記細菌は、腸内細菌、すなわち、被験体の腸において生存でき、効率的に増殖できる細菌である。好ましい実施形態において、前記細菌は、Prevotella spp.、Veillonella spp.、Bacteroides spp.Paraprevotella spp.、Succinovibrio spp.、Ruminococcus spp.、Fibrobacter succinogenesおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、スクシネート産生細菌は、Prevotellaceae科およびVeillonellaceae科の細菌である。Prevotellaceae科は、Bacteroidetes門、Bacteroidia綱およびBacteroidales目に属する。Prevotellaceae科は、4つの属:Prevotella、Alloprevotella、HallellaおよびParaprevotellaから構成される。Veillonellaceae科は、Firmicutes門、Negativicutes綱およびSelenomonadales目に属する。Veillonellaceae科は、6つの属:Veillonella、Megasphaera、Dialister、Allisonella、AnaeroglobusおよびNegativicoccusを含む。なおもより好ましくは、スクシネート産生細菌は、Prevotella copri;Prevotella intermedia;Prevotella nigrescens;Prevotella melaninogenica;Prevotella nanceiensis;Veillonella rogosae;Veillonella atypicalおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される種である。PrevotellaとVeillonelaの両方が、グラム陰性菌である。
本明細書中で使用される表現「スクシネート消費細菌」とは、スクシネートを消費する細菌のことを指す。本発明の文脈において、表現「スクシネート消費細菌」とは、スクシネートを活発に消費している細菌のことと、活発にはスクシネートを消費していない細菌のことを等しく指すが、但し、後者は、環境条件がスクシネートの消費を許容する(すなわち、スクシネートの存在下である)場合、スクシネートを消費することができる。特定の実施形態において、「スクシネート消費細菌」は、スクシネートを活発に消費している細菌である。別の特定の実施形態において、「スクシネート消費細菌」は、活発にはスクシネートを消費していない細菌であるが、但し、その細菌は、環境条件がスクシネートの消費を許容する(すなわち、スクシネートの存在下である)場合、スクシネートを消費することができる。当業者は、細菌がスクシネート消費細菌であるかを判定するためにアッセイをデザインできるだろう。例として、細菌が、所定の長さの時間にわたるスクシネートを含む培養液中での生育であり得、次いで、その細菌がスクシネート消費細菌であることを示す、前記培養液中のスクシネートの枯渇およびブチレートなどの最終産物の蓄積について培養上清が解析され得る。スクシネート消費細菌の例は、当該分野で公知である:Ferreyra et al.,2014,Cell Host Microbe.16:770−777;Reichardt et al.,2014,ISME J.8:1323−1335。好ましくは、前記細菌は、腸内細菌、すなわち、被験体の腸において生存でき、効率的に増殖できる細菌である。好ましい実施形態において、前記細菌は、Odoribacter spp.、Clostridium spp、Phascolarctobacterium succinatutensおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、スクシネート消費細菌は、Odoribacteriaceae科およびClostridiaceae科の細菌である。Odoribacteriaceae科は、Bacteroidetes門、Bacteroidia綱およびBacteroidales目に属する。Clostridiaceae科は、Firmicutes門、Clostridia綱およびClostridiales目に属する。なおもより好ましくは、スクシネート産生細菌は、Odoribacter laneus;Odoribacter splanchnicus;Clostridium scindens;Clostridium symbiosum;Clostridium perfringens;Clostridium citroniae;Clostridium hathewayi;Clostridium ramosumおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される種である。Odoribacterは、グラム陰性菌であるのに対して、Clostridiumは、グラム陽性菌である。
本明細書中で使用される表現「スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比」とは、スクシネート産生細菌の総数または特定のサブセットをスクシネート消費細菌の総数または特定のサブセットで除算した結果のことを指す。好ましい実施形態において、求められるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である。
本明細書中で使用される表現「糞便」とは、腸において消化できなかった食物の固体または半固体の便残物のことを指す。特定の実施形態において、糞便サンプルは、被験体から排便後に回収される。本明細書中で使用される用語「被験体」または「患者」とは、哺乳動物として分類されるあらゆる動物のことを指し、それらとしては、家庭内の動物および家畜、霊長類およびヒト、例えば、人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、被験体は、任意の年齢または人種の男性または女性のヒトである。
第2の態様において、本発明は、被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比、好ましくは、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比を検出するための、本発明の第1の態様に係るキットの使用に関する。
第3の態様において、本発明は、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含むキットに関し、
・前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより高いスクシネートが存在することは、陽性の結果を提供し、
・前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより低いスクシネートが存在することまたは前記生体液サンプル中にスクシネートが存在しないことは、陰性の結果を提供する。
本明細書中で使用される表現「生体液中のスクシネートレベルの測定に適した試薬」とは、サンプル中のスクシネートの存在を直接または間接的に検出できる試薬のことを指す。非限定的な例は、スクシネートの存在下において生成され得る、NADPHまたはPiの存在を検出できる試薬である。スクシネートが存在することによってPiが生成される反応の非限定的な例は、以下である:スクシニル−CoAシンターゼによる、スクシネート+ATP+CoAからスクシニル−CoA+ADP+Piへの反応。特定の例において、反応産物の450nmにおける色の強度は、サンプル中のスクシネート濃度に正比例する。好ましい実施形態において、反応産物のうちの少なくとも1つは、色の変化によって検出可能である。別の好ましい実施形態において、キットは、スクシネート特異的酵素を含む。
好ましい実施形態において、生体液中のスクシネートレベルの測定に適した試薬は、各々、本発明のキットを形成する試薬の総量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%を構成する。特定の実施形態において、本発明のキットを形成する試薬の総量とは、キットにおける試薬の総数のことを指す。
本明細書中で使用される用語「生体液」または「被験体由来の生体液」とは、被験体の生物から得られた生体液のことを指す。生体液の非限定的な例は、血液、唾液、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)、尿、便、骨髄、乳頭吸引液、血漿、血清、脳脊髄液(cerebrospinal liquid)(CSF)、便、頬側または頬側−咽頭スワブ、外科的生体液検体、または生体液生検材料から得られる検体である。したがって、本明細書中で使用される表現「生体液サンプル」とは、被験体の生体液から単離されたサンプルのことを指す。生体液サンプルを単離するための方法は、当業者に周知である。
特定の実施形態において、生体液は、尿、血液または唾液であり、好ましくは、尿である。生体液が尿である好ましい実施形態において、スクシネートの閾値レベルは、好ましくは、5〜15μM、より好ましくは、8〜12μM、なおもより好ましくは、10μMである。生体液が血液である好ましい実施形態において、スクシネートの閾値レベルは、好ましくは、50〜70μM、より好ましくは、55〜65μM、なおもより好ましくは、60μMである。
本明細書中で使用される表現「閾値レベル」とは、患者の被検体レベルが前記閾値レベルより高い場合、被験体が、糖尿病などの代謝病態を発症する高リスクに関連する異常な代謝プロファイルを有すると分類され、ゆえに前記代謝病態に罹患する可能性があることを示す、少なくとも1つの特定の被検体の濃度レベルのことを指す。通常、閾値レベルは、「変化した」代謝プロファイルを有する被験体または「最適な」代謝プロファイルを有する被験体に特有のスクシネート値を求めるためにCART(分類木と回帰木)統計学的方法を用いて算出される。CARTの主要素は、(a)1つの変数の値に基づいて、あるノードにおいてデータを分割するための法則;(b)枝が終わるときおよびそれ以上分割できないとき、決定するために法則を停止すること;および(c)最後に、各ノードの終端において標的の変数について予測することである。
特定の実施形態において、キットは、自宅検査キットである。本明細書中で使用されるとき、用語「自宅検査キット」とは、自宅での検査、例えば、色の変化またはデジタル出力などの他の手段によって陽性または陰性の結果を示す尿検査を被験体が行うことができる検査キットのことを指す。自宅検査は、医療経験のない人が使用するようにデザインされているので、尿タイプの検査が理想的である。自宅検査キットは、サンプル中のスクシネートの存在に対して感受性があり、特定の検査において、スクシネートの閾値感度を超えて検出されたとき、色を変化させるかまたはその他の方法で示す。
特定の実施形態において、キットは、少なくとも1つのテストストリップを含む。本明細書中で使用されるとき、「テストストリップ」は、スクシネートサンプルの発色を惹起する特定のスポットにサンプルをのせる目的でまたは他の指示薬検査のために使用される種類のストリップである。より新しいタイプの試験では、テストストリップは、デジタルタイプでもあり得、その場合、単純な色の変化の代わりに、インジケーターのスクリーンに、スクシネートが大量に存在することまたは存在しないことなどのメッセージが表示される。1つの実施形態において、「ストリップ」は、本発明において単一のデバイスを意味するが、テストストリップという用語によって網羅される他の実施形態には、2つ以上のデバイスの両方に同時に尿をつけやすくするために互いにくっついた2つ以上のデバイスが含まれる。なおも別の実施形態において、ストリップとは、感度がより高いおよび低い検査の結果を同時に得るために同時に使用されるようにデザインされた2つ以上の別個のストリップのことを指す。
第4の態様において、本発明は、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルが閾値レベルより高いかを判定するための、本発明の第3の態様に係るキットの使用に関する。特定の実施形態において、被験体由来の生体液サンプルは、血液サンプル、尿サンプルまたは糞便サンプルである。スクシネートの閾値レベルは、本明細書中の上記で定義されたとおりである。
別の態様において、本発明は、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とするプロバイオティクス介入が有効であったかを判定するためのキットの使用に関し、そのキットは、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含み、
・プロバイオティクス介入前の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルより低い、プロバイオティクス介入後の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルは、プロバイオティクス介入が有効であったことを示し、
・プロバイオティクス介入前の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルと等しいまたはそれより高い、プロバイオティクス介入後の被験体由来の生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルは、プロバイオティクス介入が有効でなかったことを示す。
標的化介入が有効であったかを判定するための方法
本発明者らは、被験体の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる介入が、被験体における循環スクシネートのレベルの低下に有効であり得ることを示した。
したがって、さらなる態様において、本発明は、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入が有効であったかを判定するための方法に関し、その方法は、
(a)標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程、および
(b)標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程
を含み、
・標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より低い、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入が有効であったことを示し、
・標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比と等しいまたはそれより高い、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入が有効でなかったことを示す。
特定の実施形態において、被験体は、肥満である。別の特定の実施形態において、被験体は、2型糖尿病を有する。なおも別の特定の実施形態において、被験体は、肥満であり、2型糖尿病を有する。
本発明によると、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比よりも少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%:少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%またはそれ以上低いとき、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より低いとみなされる。
同様に、本発明の文脈において、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比よりも少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%:少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%またはそれ以上高いとき、標的化介入後の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、標的化介入前の被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より高いとみなされる。
本発明の文脈において、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入は、標的化介入後の被験体における循環スクシネートのレベルが、標的化介入前の被験体における循環スクシネートのレベルよりも少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%:少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%またはそれ以上低いとき、有効であった。
同様に、被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入は、標的化介入後の被験体における循環スクシネートのレベルが、標的化介入前の被験体における循環スクシネートのレベルと等しく、またはそれより少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%:少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%またはそれ以上高いとき、有効でなかった。
表現「被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする介入」とは、前記被験体における循環スクシネートのレベルを低下させる目的として、被験体において達成される任意の行為のことを指す。好ましくは、前記介入は、特定の化合物または化合物の組み合わせ(例えば、特定の栄養分または栄養分の組み合わせ)、医薬化合物あるいは生物学的化合物の投与を含む。特定の実施形態において、標的化介入は、食事介入またはダイエット製品、薬理学的介入およびプロバイオティクス介入からなる群から選択される。
本発明の標的化介入
標的化介入は、食事介入またはダイエット製品からなり得る。したがって、なおもさらなる態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための食事介入またはダイエット製品に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
別の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、食事介入またはダイエット製品の使用に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
なおも別の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患を治療および/または予防するための方法に関し、その方法は、その患者を食事介入に供する工程またはその被験体にダイエット製品を提供する工程を含み、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
なお別の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療のための、食事介入またはダイエット製品の使用に関し、その介入は、前記患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療において使用するための食事介入またはダイエット製品に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、食事介入またはダイエット製品の使用に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
なおも別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患を治療および/または予防するための方法に関し、その方法は、その患者を食事介入またはダイエット製品に供する工程を含み、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
なお別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療のための、食事介入またはダイエット製品の使用に関し、その方法は、その患者を食事介入に供する工程を含み、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。
本明細書中で使用されるとき、用語「予防」とは、疾患または状態の発病予防、すなわち、発症するまたはさらには発生する疾患または状態を、その初期段階においてまたはその発症前に妨害することまたは妨げることを指す。本明細書中で使用される用語「治療」とは、疾患または状態の発生後、および臨床的徴候があらわれる前またはあらわれた後に、その疾患または状態の根絶、除去、逆転、軽減、改変またはその進行の制御のことを指す。より正確には、疾患または状態の進行は、有益なまたは所望の臨床結果が現れる場合、制御されると理解され、それらの臨床結果としては、症状の低減、その疾患または状態の期間の短縮、その状態または疾患に伴う病理学的状態の安定化(詳細には、さらなる悪化の回避)、その疾患または状態の進行の遅延、および/あるいはその疾患または状態に関連する病理学的状態の改善ならびにその緩解(部分的と全体的の両方)が挙げられるがこれらに限定されない。
特定の実施形態において、患者は、肥満患者である。別の特定の実施形態において、被験体は、2型糖尿病を有する。なおも別の特定の実施形態において、被験体は、肥満であり、2型糖尿病を有する。本明細書中で使用される用語「肥満」とは、肥満症に罹患している被験体のことを指し、本明細書中で使用される用語「肥満症」は、世界保健機関(WHO)が示すように定義される。WHOによると、肥満症および過体重とは、肥満症または過体重を有する被験体が、健康を損ない得る異常または過剰な脂質蓄積を有する状態のことを指す。より詳細には、WHOは、以下のようなボディマス指数(BMI)を用いて過体重および肥満症を定義し、そのBMIは、ある人の体重(単位はキログラム)をその人の身長(単位はメートル)の二乗で除算したもの(kg/m2)と定義される:
・過体重は、25kg/m2を超えるかまたはそれと等しいBMIを有する被験体の状態であり;
・肥満症は、30kg/m2を超えるかまたはそれと等しいBMIを有する被験体の状態である。
本明細書中で使用される表現「患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患」とは、その疾患の進行に関連してきた高レベルの循環スクシネートと同時に発生すると知られている疾患のことを指す。そのような疾患の非限定的な例は、高血圧症(Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215)、虚血性心疾患(Aguiar et al.,2014,Cell Commun.Signal.12:78)、2型糖尿病(T2DM)(Guo et al.,2017,Nat.Commun.8:15621;Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215;Toma et al.,2008,J.Clin.Invest.118:2526−2534;van Diepen et al.,2017,Diabetologia 60:1304−1313)、肥大型心筋症(Aguiar et al.,2014,Cell Commun.Signal.12:78)、肥満関連代謝障害(McCreath et al.,Diabetes.2015 Apr;64(4):1154−67)、レニン誘発性高血圧(Toma et al.,2008,J.Clin.Invest.118:2526−2534)および糖尿病性網膜症(Ariza et al.,2012,Front.Endocrinol.(Lausanne)3:22)である。さらに、高スクシネートレベルは、自己免疫疾患において報告されてきた。スクシネートは、関節リウマチ(RA)患者由来の滑液(SF)中に大量に検出され(Borestein et al.,1982,Arthritis Rheum.25:947−953;Kim et al.,2014,PLoS One.9:e97501)、代謝プロファイリング研究によって、スクシネートが、他の関節症と比べてRAにおいて最も異なって発現された代謝産物であると特定された(Kim et al.,2014,PLoS One.9:e97501)。
特定の実施形態において、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される。好ましい実施形態において、疾患は、肥満症である。
本明細書中で使用される表現「高レベルの循環スクシネート」とは、参照値を基準にして、高い循環スクシネートのレベルのことを指す。特定の実施形態において、参照値は、健常な被験体から得られる。別の特定の実施形態において、参照値は、高レベルの循環スクシネートに関連する疾患、好ましくは、上に列挙された疾患の病歴を有しない被験体から得られる。
特定の実施形態において、循環スクシネートのレベルが、参照サンプルを基準にして、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも150%、少なくとも200%またはそれ以上上昇するとき、そのレベルは、参照サンプル中の循環スクシネートのレベルに対して上昇しているとみなされる。
本明細書中で使用される表現「スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる」とは、スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、スクシネート産生細菌の総量を減少させることによって、スクシネート消費細菌の総量を増加させることによって、またはスクシネート産生細菌の総量の減少とスクシネート消費細菌の総量の増加との両方の組み合わせによって、低下する、介入のことを指す。
本明細書中で使用される用語「患者の腸管」または「消化管」とは、一般に、口から肛門に及ぶ消化器構造のことを指すが、付属腺器官、例えば、肝臓;胆管;または膵臓は含まない。消化管は、食物を取り入れ、それを消化して、エネルギーおよび栄養分を抽出、吸収し、残りの廃棄物を便として排出する、ヒトおよび他の動物における器官系である。口、食道、胃、小腸および大腸は、消化管の一部である。消化管は、腸管内菌叢に数千の異なる細菌を含む。特定の実施形態において、本発明の文脈における用語「消化管」とは、とりわけ小腸および/または大腸のことを指す。
特定の実施形態において、低下されるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である。
本明細書中で使用される表現「食事介入」とは、目的の特定の食事に従うことを含む、被験体において達成される行為または行為の群のことを指す。本明細書中で使用される用語「ダイエット製品」とは、被験体に提供される、前記被験体の総食物摂取量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%を構成する完全な食事一式のことを指す。特定の実施形態において、ダイエット製品は、少なくとも朝食、昼食および夕食を含む。特定の実施形態において、ダイエット製品は、1日当たり1回の食事、1日当たり2回の食事、1日当たり3回の食事、1日当たり4回の食事あるいは1日当たり5回またはそれ以上の食事を含む。本明細書中で使用される用語「食事」とは、所定量の特定の栄養分の吸収を達成するために被験体が消費しなければならない食物に関する指示のことを指す。いくつかの場合において、食事は、被験体が消費する液体のタイプおよび量、ならびに所定量の特定の栄養分の前記吸収を達成するために被験体が達成しなければならない身体的運動のタイプおよび持続時間に対する指示も含み得る。食事の非限定的な例は、低カロリー食または地中海食である。
特定の実施形態において、介入は、低カロリー食、好ましくは、
・脂肪が、1日当たりの総カロリー摂取量の35〜40%であること;および
・炭水化物が、1日当たりの総カロリー摂取量の40〜45%であること
を特徴とする低カロリー食を含み;
その食事介入またはダイエット製品は、少なくとも12週間にわたって投与され、その食事介入またはダイエット製品は、場合により身体的運動プログラムと併用して投与される。
本明細書中で使用される表現「1日当たりの総カロリー摂取量」とは、所与の1日の間に被験体が経口摂取する各食料品のカロリーを合算した結果のことを指す。1日当たりの脂質パーセンテージを計算するために、脂質のカロリーを総カロリーで除算し、次いで、100を乗算する。1日当たりの炭水化物パーセンテージを計算するために、炭水化物のカロリーを総カロリーで除算し、次いで、100を乗算する。
好ましい実施形態において、食事は、地中海食である。本発明の文脈において、「地中海食」は、オリーブ油、豆類、未精製穀物、果物および野菜の消費が比例的に多いこと、魚類の消費が中程度から多いこと、乳製品(主にチーズおよびヨーグルトとして)の消費が中程度であること、ワインの消費が中程度であること、ならびに魚以外の肉製品の消費が少ないことを特徴とする。好ましい実施形態において、その食事は、エキストラバージンオリーブ油およびナッツを含む。好ましい実施形態において、総脂質の8〜10%は、飽和脂肪酸である。好ましい実施形態において、炭水化物は、グリセミックインデックスが低い。グリセミックインデックスが低い炭水化物は、55以下のGI範囲を特徴とする。低GI炭水化物の例は、フルクトース;豆(黒豆、ぶちインゲンマメ、インゲンマメ、レンズマメ、ピーナッツ、ヒヨコマメ);小さい種子(ヒマワリ、アマ、カボチャ、ポピー、ゴマ、アサ);クルミ、カシューナッツ、たいていの全粒粉穀物(デュラム/スペルト/カムットコムギ、キビ、カラスムギ、ライムギ、イネ、オオムギ);たいていの野菜、たいていの甘い果物(モモ、イチゴ、マンゴー);タガトース;キノコ;およびトウガラシである。好ましい実施形態において、タンパク質は、1日当たりの総カロリー摂取量の20%である。
好ましい実施形態において、食事介入またはダイエット製品は、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年にわたって、または無期限に投与される。食事介入またはダイエット製品が場合により身体的運動プログラムと併用して投与される好ましい実施形態において、身体的運動の持続時間は、ダイエット製品の投与期間中、1日につき少なくとも45分である。
本発明の文脈において、「低カロリー食」は、被験体が1日を通して費やすカロリーより少ないカロリーを食す食事である。したがって、低カロリー食をデザインするために、被験体の1日当たりのカロリー必要量を計算する必要がある。すなわち、基礎代謝消費量(身体が正常な機能のために費やす消費)を求め、1日当たりの身体活動(すなわち、歩行、階段昇段など)およびスポーツ活動(すなわち、トレーニング)を通じて被験体が費やすカロリーを追加しなければならない。
基礎代謝消費量は、種々の方法を用いて計算され得、各人の身長および体重などの種々の因子に依存する。基礎代謝消費量は、年齢、筋肉量、体温などの因子にも影響される。基本代謝消費量は、例えば、Harris−Benedictの式:
・男性の基礎代謝(メトリック):66,473+(13,751×体重(kg))+(5,0033×身長(cm))−(6,7550×年齢)
・女性の基礎代謝(メトリック):655.1+(9.463×体重(kg))+(1.8×身長(cm))−(4.6756×年齢)
を用いて計算され得る。
したがって、好ましい実施形態において、1日当たりのカロリー摂取量を、1日当たりの総カロリー必要量に対して200kcal減少させ;好ましい実施形態において、1日当たりのカロリー摂取量を、1日当たりの総カロリー必要量に対して300kcal減少させ;好ましい実施形態において、1日当たりのカロリー摂取量を、1日当たりの総カロリー必要量に対して400kcal減少させ;好ましい実施形態において、1日当たりのカロリー摂取量を、1日当たりの総カロリー必要量に対して500kcal減少させ;好ましい実施形態において、1日当たりのカロリー摂取量を、1日当たりの総カロリー必要量に対して600kcal減少させる。
標的化介入とは、医薬介入またはプロバイオティクス介入のことも指し得る。したがって、ある態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品に関し、その製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。特定の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品にも関し、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。
別の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品の使用に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。特定の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品の使用にも関し、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させる。
なおも別の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患を治療および/または予防するための方法に関し、その方法は、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品をその患者に投与する工程を含み、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。特定の態様において、本発明は、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患を治療および/または予防するための方法にも関し、その方法は、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品をその患者に投与する工程を含み、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させる。
別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療において使用するための製品に関し、その製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。特定の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療において使用するための製品にも関し、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させ、その製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。
別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品の使用に関し、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。特定の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患の予防および/または治療における薬を製造するための、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品の使用にも関し、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させる。
なおも別の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患を治療および/または予防するための方法に関し、その方法は、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品をその患者に投与する工程を含み、その介入は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる。特定の態様において、本発明は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される疾患を治療および/または予防するための方法にも関し、その方法は、薬理学的製品またはプロバイオティクス製品をその患者に投与する工程を含み、その製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させる。
用語および表現「予防」、「治療」、「スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる」、「循環スクシネートのレベルを低下させる」および「腸管」は、上で定義されたように使用される。
本明細書中で使用される用語「薬理学的介入」とは、目的の薬理学的製品を被験体に投与することを含む、被験体において達成される、行為または行為の群のことを指す。本明細書中で使用される表現「薬理学的製品」または「薬理学的組成物」とは、特定の疾患または状態を治療するための、所定の用量の1つまたはいくつかの治療薬の投与に適応させた化学製剤を含む製品または組成物のことを指す。前記治療薬は、通常、前記薬理学的製品または組成物において、医薬的に許容され得るキャリアと併用される。本明細書中で使用される用語「キャリア」とは、活性成分または活性な作用物質とともに投与される希釈剤または賦形剤のことを指す。そのような医薬キャリアは、滅菌された液体(例えば、水および油(石油、動物起源、植物起源または合成起源の油、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む))であり得る。これらは、好ましくは、特に注射剤用に、水キャリアまたは食塩水溶液、ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液として使用される。好適な医薬キャリアは、EW Martinによる1995年の“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。好ましくは、本発明のキャリアは、連邦政府の州の規制当局によって承認されており、あるいは米国薬局方、または動物、より詳細にはヒトにおいて使用するために一般に認められている他の薬局方に列挙されている。本発明の医薬組成物の投与の所望の医薬形態を製造するために必要なビヒクルおよび補助物質は、他の因子の中でも、投与の選択された医薬形態に依存する。医薬組成物の投与の前記医薬形態は、当業者に公知の従来の方法に従って製造される。有効成分の種々の投与方法、使用される賦形剤、およびそれらを生成するための手順の総説は、“Tratado de Farmacia Galenica”,C.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.de Ediciones,1993に見られる。医薬組成物の例としては、経口、局所または非経口(parental)投与のための、任意の固体組成物(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)または液体(溶液、懸濁液またはエマルジョン)が挙げられる。さらに、医薬組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤などを含んでもよい。
本明細書中で使用される用語「プロバイオティクス介入」とは、目的のプロバイオティクス製品を被験体に投与することを含む、被験体において達成される、行為または行為の群のことを指す。本明細書中で使用される表現「プロバイオティクス製品」または「プロバイオティクス組成物」とは、プロバイオティクス剤を含む製品または組成物のことを指し、ここで、プロバイオティクス剤は、適切な量で投与されたとき、宿主に健康上の利益を提供する、生存している微生物と理解される。プロバイオティクスは、それらが生きているとき、有益な効果を示す。好ましくは、前記健康上の利益は、特定の疾患または状態に特異的であり、さらにより好ましくは、特定の疾患または状態の治療または予防の基礎となる。通常、プロバイオティクスは、細菌集団である。プロバイオティクスを消費するための基本的な方法は、4つある:飲料(例えば、果汁など)に濃縮培養物を加えたものを消費すること、プレバイオティクス繊維に接種されたものを消費すること、凍結乾燥された細胞の剤形(例えば、粉末、カプセル、錠剤など)の栄養補助食品として消費すること、および乳製品に接種されたものを消費すること。
特定の実施形態において、患者は、肥満の患者である。用語「肥満」は、上で定義されたように使用される。特定の実施形態において、患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患は、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される。
特定の実施形態において、低下されるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である。
特定の実施形態において、薬理学的製品は、スクシネート産生細菌を特異的に標的化し、好ましくは、薬理学的製品は、抗生物質、抗菌性抗体およびバクテリオファージからなる群から選択される。表現「スクシネート産生細菌を特異的に標的化する」とは、スクシネート産生細菌の集団を全細菌に対して選択的に減少させる薬理学的製品のことを指す。薬理学的製品がスクシネート産生細菌の集団を選択的に減少させるかを判定するためのスクリーニング方法は、当業者によって容易にデザインされ得る。特定の例において、特定の薬理学的製品がスクシネート産生細菌の集団を選択的に減少させるかを判定するためのスクリーニング方法は、その特定の薬理学的製品を含む培地中でPrevotellaを培養する工程、およびPrevotellaの増殖を他のタイプの細菌の増殖と比較する工程を含み得る。
本明細書中で使用される用語「抗生物質」とは、細菌感染症の治療および予防において使用される抗菌製品または抗菌組成物の1タイプのことを指す。抗生物質は、細菌を殺滅し得るかまたは細菌の増殖を阻害し得る。抗生物質は、薬理学的製品または薬理学的組成物の形態で投与され得る。特定の実施形態において、抗生物質は、グラム陰性菌に特異的な抗生物質である。好ましい実施形態において、グラム陰性菌に特異的な抗生物質は、β−ラクタム系抗生物質である。より好ましい実施形態において、グラム陰性菌に特異的な抗生物質は、モノバクタム抗生物質である。なおもより好ましい実施形態において、グラム陰性菌に特異的な抗生物質は、アズトレオナムである。
本明細書中で使用される用語「抗菌性抗体」とは、(a)抗体および抗生物質の重要な特性を兼ね備える抗体抗生物質コンジュゲート(AAC)、または(b)抗菌性モノクローナル抗体(DiGiandomenico and Sellman,Current Opinion in Microbiology 2015,27:78−85)のことを指す。AACは、3つの構成要素を有する:細菌を殺滅するための抗生物質ペイロード、ペイロードの送達を細菌に標的化するための抗体、およびペイロードを抗体に付着させるリンカー。AACは、特定の細菌感染症の治療において効率的である可能性がある。AACによって標的化されると示された細菌の非限定的な例は、Staphylococcus aureusである。他方で、抗菌性モノクローナル抗体技術とは、前記特定の細菌の細菌負荷量を減少させるための細菌特異的モノクローナル抗体(mAb)の使用のことを指す。優れた機能活性のために選択されたmAbによる個体の受動免疫は、細菌のビルレンスを中和することがあり、かつ特定の細菌に対する宿主の免疫応答を利用することがある。この意味において、細菌の莢膜多糖類が、ワクチン抗原として首尾良く標的化されてきた(すなわち、Streptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeに対して)が、特異的な抗毒素抗体も開発されている。表面抗原は、抗菌性抗体を見出すための有望な標的であると考えられている。細菌表面特異的なmAbの重要な活性は、補体結合およびオプソニン食作用傷害作用(opsonophagocytic killing)(OPK)を介した宿主の免疫系の関与である。ハイブリドーマによるモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論は周知である。不死の抗体産生細胞株は、融合以外の手法(例えば、発癌性DNAによるBリンパ球の直接的なトランスフォーメーション、またはエプスタイン・バーウイルスによるトランスフェクション)によっても作製され得る。例えば、M.Schreier et al.,“Hybridoma Techniques”(1980);Hammerling et al.,“Monoclonal Antibodies And T−cell Hybridomas”(1981);Kennett et al.,“Monoclonal Antibodies”(1980)を参照のこと。Prevotellaに対するモノクローナル抗体は、商業的に入手可能である(すなわち、ヒト慢性歯根膜炎由来のPrevotella intermediaのOMZ248株に対する抗Prevotella intermediaモノクローナル抗体DMAB9450、Creative Diagnostics製)。
本明細書中で使用される用語「バクテリオファージ」とは、細菌に感染して細菌内で複製するウイルスのことを指す。ファージは、そのゲノムを細菌の細胞質に注入した後、細菌内で複製する。ファージは、抗生物質に代わるものとして90年超にわたって使用されている。特定の実施形態において、バクテリオファージは、Prevotellaに選択的に感染する。好ましい実施形態において、バクテリオファージは、Prevotella ruminicolaに選択的に感染する。より好ましい実施形態において、バクテリオファージは、φBRB01、φBRB02(Klieve et al.1989 Apl.Environ.Microbiol.55:1630−4)およびφ4AR29(Gregg K et.al.1994 Microbiology 140:2109−14)からなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、バクテリオファージは、公知のスクシネート産生者であるBacteroides fragilisに選択的に感染する。より好ましい実施形態において、バクテリオファージは、φB124−14およびφB40−8(Ogilvie et al.2013 Nature Communications 4,2420)からなる群から選択される。
特定の実施形態において、プロバイオティクス製品は、スクシネート消費細菌を含む。好ましい実施形態において、スクシネート消費細菌は、Odoribacter spp、Clostridium spp、Phascolarctobacterium spp、Ruminococcus sppおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
特定の実施形態において、プロバイオティクス製品は、Odoribacter spp.とClostridium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Clostridium spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Clostridium sppとPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Ruminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とClostridium spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とClostridium spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Clostridium spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;またはOdoribacter spp.とClostridium spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせである。
好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneus;Odoribacter splanchnicusとそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneusである。なおもより好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneusの基準株DSM22474である。好ましい実施形態において、Clostridium spp.は、Clostridium scindens;Clostridium symbiosum;Clostridium perfringens;Clostridium citroniae;Clostridium hathewayi;Clostridium ramosumおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態において、Phascolarctobacterium spp.は、Phascolarctobacterium succinatutensおよびPhascolarctobacterium faeciumからなる群から選択される。好ましい実施形態において、Ruminococcus spp.は、Ruminococcus bromiiである。
別の態様において、本発明は、患者において変化した代謝プロファイルを改善するための方法において使用するための製品に関し、その製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、その製品は、ダイエット製品、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される。本明細書中の他の箇所に記載されるすべての用語および実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
本明細書中で使用される用語「変化した代謝プロファイル」とは、糖尿病などの代謝病態を発症するリスクに関連するいくつかのパラメータに対する閾値セットのことを指す。特定の実施形態において、変化した代謝プロファイルは、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心筋症、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される代謝機能不全に罹患する高リスクに関連する。本発明の文脈における変化した代謝プロファイルに特有の値は、以下のとおりである:
・インスリン>25μLU/mL
・グルコース>100(mg/dl)
・HOMA−IR>3,21
・トリグリセリド>1,7(mM)
グルコースおよびトリグリセリドに対する閾値は、代謝症候群を定義するために、American Diabetes Association、American Heart AssociationまたはInternational Diabetes Federationが定義する値である。しかしながら、本発明の文脈において、これらの閾値は、必ずしも代謝症候群に関係しない。HOMA−IR(インスリン抵抗性指数)に対する閾値は、他で説明されている(Ceperuelo−Mallafre et al.,J Clin Endocrinol Metab.2014 May;99(5):E908−19;Cardona F.et al.,Clin Chem.2006 Oct;52(10):1920−5)。
本明細書中で使用される用語「患者における変化した代謝プロファイルを改善する」とは、糖尿病などの代謝病態を発症するリスクに関連するパラメータに対応する値の低下を目的とする行為のことを指す。特定の実施形態において、代謝病態を発症するリスクに関連するパラメータに対応する値は、変化した代謝プロファイルを定義する閾値より低く低下する。好ましい実施形態において、代謝病態を発症するリスクに関連するパラメータに対応するすべての値が、変化した代謝プロファイルを定義する閾値より低く低下する。
最後の態様において、本発明は、有効量のスクシネート消費細菌を含むプロバイオティクス製品に関し、そのスクシネート消費細菌は、Odoribacter spp、Phascolarctobacterium spp、Ruminococcus sppおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。用語「プロバイオティクス製品」および「スクシネート消費細菌」は、上で定義されたように使用される。
特定の実施形態において、プロバイオティクス製品は、Odoribacter spp.とClostridium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Clostridium spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Clostridium sppとPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Ruminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とClostridium spp.とRuminococcus spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とClostridium spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Odoribacter spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;Clostridium spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせ;またはOdoribacter spp.とClostridium spp.とRuminococcus spp.とPhascolarctobacterium spp.との組み合わせである。
好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneus;Odoribacter splanchnicusおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneusである。なおもより好ましい実施形態において、Odoribacter spp.は、Odoribacter laneusの基準株DSM22474である。好ましい実施形態において、Clostridium spp.は、Clostridium scindens;Clostridium symbiosum;Clostridium perfringens;Clostridium citroniae;Clostridium hathewayi;Clostridium ramosumおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態において、Phascolarctobacterium spp.は、Phascolarctobacterium succinatutensおよびPhascolarctobacterium faeciumからなる群から選択される。好ましい実施形態において、Ruminococcus spp.は、Ruminococcus bromiiである。
本発明は、以下の態様をさらに開示する:
1.被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比の測定に適した試薬を含むキットであって、
前記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを含み、または
前記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするプローブを含み、
前記プライマーセットまたは前記プローブは、前記キットを形成する試薬の総量の少なくとも10%を構成する、
キット。
2.被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を検出するための、態様1に記載のキットの使用。
3.スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である、態様1に記載のキットまたは態様2に記載の使用。
4.被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入が有効であったかを判定するための方法であって、当該方法は、
(a)前記標的化介入前の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程、および
(b)前記標的化介入後の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程
を含み、
・前記標的化介入前の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より低い、前記標的化介入後の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、前記標的化介入が有効であったことを示し、
・前記標的化介入前の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比と等しいまたはそれより高い、前記標的化介入後の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比は、前記標的化介入が有効でなかったことを示す、
方法。
5.前記標的化介入が、食事介入またはダイエット製品、薬理学的介入およびプロバイオティクス介入からなる群から選択される、態様4に記載の方法。
6.患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための食事介入またはダイエット製品であって、前記介入は、前記患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる、食事介入またはダイエット製品。
7.前記介入が、
・脂肪が、1日当たりの総カロリー摂取量の35〜40%であり;
・炭水化物が、1日当たりの総カロリー摂取量の40〜45%であること
を特徴とする低カロリー食を含み;
前記食事介入またはダイエット製品は、少なくとも12週間投与され、
前記食事介入またはダイエット製品は、場合により、身体的運動プログラムと組み合わせて投与される、
態様6に記載の使用のための食事介入またはダイエット製品。
8.高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品であって、前記製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、前記製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される、製品。
9.患者が、肥満である、態様6または7のいずれか1つに記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは態様8に記載の使用のための製品。
10.患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患が、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される、態様6、7または9のいずれか1つに記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは態様8または9のいずれか1つに記載の使用のための製品。
11.スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である、態様6〜7または9〜10のいずれか1つに記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは態様8〜10のいずれか1つに記載の使用のための製品。
12.前記薬理学的製品が、スクシネート産生細菌を特異的に標的化し、前記薬理学的製品が、抗生物質、抗菌性抗体およびバクテリオファージからなる群から選択される、態様8〜11のいずれか1つに記載の使用のための製品。
13.前記プロバイオティクス製品が、スクシネート消費細菌を含む、態様8〜12のいずれか1つに記載の使用のための製品。
14.前記スクシネート消費細菌が、Odoribacter spp、Clostridium spp、Phascolarctobacterium succinatutensおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様13に記載の使用のための製品。
15.前記スクシネート消費細菌が、Odoribacter spp、Clostridium spp、Phascolarctobacterium succinatutensおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、有効量のスクシネート消費細菌を含むプロバイオティクス製品。
以下の発明は、以下の実施例によって本明細書に説明されるが、それらの実施例は、単に例証的ものであって、本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
材料および方法
研究デザインおよび患者
本研究は、以下の異なる目的:1)横断的研究コホートIを用いて、痩せ被験体、肥満被験体および糖尿病被験体における循環スクシネートレベルを解析すること;2)腸内微生物叢とスクシネートとの関係性を調べること(発見コホートIIおよび検証コホートIII);3)循環スクシネートと腸内微生物叢との関連を確証すること(食事介入研究コホートIVおよび追跡調査研究コホートV)を果たすための5つの異なるサブ臨床研究(clinical sub−studies)を含んだ。
すべての研究を、ヘルシンキ宣言の原則に従って行った。すべてのボランティアが、当該研究への参加に関する情報を受け取り、書面によるインフォームドコンセントに同意した。これらの研究は、参加病院のそれぞれの地域の倫理委員会の審査委員会によって承認された。
すべての被験体に対する選択規準:(1)白色人種の男性および女性;(2)痩せから肥満のBMI範囲(各群において適切に示される);(3)体重過剰または糖尿病に関連するもの以外に理学的検査および試験において基礎病理が無いこと;(4)研究への参加についてインフォームドコンセントに署名したこと。
すべての被験体に対する除外規準:(1)肥満症に無関係な重篤な全身性疾患(例えば、癌、重篤な腎疾患または肝疾患);(2)内因性の炎症活性を伴う全身性疾患;(3)肝疾患(慢性活動性肝炎または肝硬変)および/または肝機能異常(正常上限値より3倍高いALTおよび/またはAST)の履歴;変化した腎機能(女性の場合、1.4mg/dlおよび男性の場合、1.5mg/dlを超えるクレアチニン);(4)妊娠および授乳;(5)菜食主義者または規則に従わない食事を取った被験体;(6)重篤な摂食行動障害を有する患者;(7)前月における感染の臨床症状および徴候;(8)ステロイド系および/または非ステロイド系抗炎症薬を用いた慢性抗炎症治療;(9)最近3ヶ月における事前の抗生物質治療;(10)主要な精神医学的前駆症状;(11)制御されていないアルコール依存症または薬物乱用。
横断的研究コホートI
デザイン:単施設(single−point)観察研究。
参加者:91人の被験体(49人の女性および42人の男性)を横断的研究に含めた(30人の痩せ患者、41人の肥満患者および20人のT2DM患者)。肥満症を世界保健機関(WHO)の基準に従って分類した。T2DM患者を、American Diabetes Associationの基準に従って、安定したグリコシル化ヘモグロビン値によって定義される直前の6ヶ月における安定した代謝調節によって診断した。どの患者にもインスリンで治療しなかった。60%にメトホルミンを投与し、20%をスルホニル尿素で治療し、15%未満をジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤で治療した。被験体を、University Hospital Joan XXIIIのEndocrinology Service(Tarragona,Spain)にリクルートした。
介入:すべての患者が、一晩絶食した後、皮下脂肪組織(SAT)および血液を採取された。SATは、裂孔ヘルニア修復術または胆嚢摘出術のための腹腔鏡下手術を含む、予定された非急性の外科手技中に得た。SATサンプルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、直ちに液体N2中で凍結し、−80℃にて保管し、または直ちに分画に使用した。SATの分画のために、新鮮なSATをさいの目の小片(10〜30mg)に切り、PBSで洗浄し、Medium199(Gibco,Gran Island,NY)ならびに4%ウシ血清アルブミンおよび2mg/mlのI型コラゲナーゼ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中、37℃の振盪ウォーターバスにおいて1時間インキュベートした。人体測定変数および臨床変数を表1に要約する。
Figure 2021511055
発見コホートII
デザイン:単施設観察研究。
参加者:20人の女性被験体を横断的研究に含めた(10人の痩せ被験体および10人の肥満被験体)。肥満症をWHOの基準に従って分類した。被験体を、University Hospital Virgen de la Victoria de Malaga(Malaga,Spain)のEndocrinology Serviceにおける外来診察室にリクルートした。研究開始前の3ヶ月間、研究参加者には、抗生物質治療、プロバイオティクス、プレバイオティクス、または腸管微生物叢に影響する他の任意の医学的治療を行わなかった。
介入:すべての患者が、一晩絶食した後、血液および糞便を採取された。人体測定変数および臨床変数を表2に要約する。
検証コホートIII
デザイン:単施設観察研究。
参加者:17人の被験体(10人の女性および7人の男性)を本研究に含めた(9人の痩せ被験体および8人の肥満被験体)。肥満症をWHOの基準に従って分類した。被験体を、University Hospital Dr. Josep Trueta(Girona,Spain)のEndocrinology Serviceにリクルートした。研究開始前の3ヶ月間、研究参加者には、抗生物質治療、プロバイオティクス、プレバイオティクス、または腸管微生物叢に影響する他の任意の医学的治療を行わなかった。
介入:すべての患者が、一晩絶食した後、血液および糞便を採取された。人体測定変数および臨床変数を表2に要約する。
Figure 2021511055
食事介入またはダイエット製品コホートIV
デザイン:介入研究。
参加者:9人の肥満女性(登録研究ISRCTN88315555のサブサンプル)を本研究に含めた。被験体を、University Hospital Virgen de la Victoria de MalagaのEndocrinology Serviceにおける外来診察室にリクルートした。研究開始前の3ヶ月間、研究参加者には、抗生物質治療、プロバイオティクス、プレバイオティクス、または腸管微生物叢に影響する他の任意の医学的治療を行わなかった。
介入:患者に対して、低カロリーの地中海食および身体的運動プログラムを含む介入を行った。地中海食は、エキストラバージンオリーブ油およびナッツを含んでおり、それにより、エネルギー摂取がおよそ600kcal減少した。その食事は、脂肪(35〜40%;8〜10%飽和脂肪酸)、炭水化物(40〜45%;低グリセミックインデックス)およびタンパク質(20%)を含んだ(Davis et al.,2015,Nutrients 7:9139−9153;Martinez−Gonzalez and Sanchez−Villegas 2004,Eur.J.Epidemiol.19:9−13)。食事の順守を、以前に記載されたとおりに計測した(Trichopoulou et al.,2003,N.Engl.J.Med.348:2599−2608)。参加者には、本研究の経過中に身体活動レベルを徐々に上げて、1日あたり少なくとも45分に到達するように促し、これを、月単位で個人トレーナーが評価した。参加者は、GENEActiv(著作権)加速度計を使用して、身体活動の記録を続けた。身体活動レベルを、Rapid Assessment of Physical Activity質問票(Topolski et al.,2006,Prev.Chronic Dis.3:A118)を用いて評価した。
食事介入および身体的介入には、3ヶ月の間、栄養士による毎週の個別訪問が必要であった。さらに、栄養教育プログラムを開始して、体重減少とその後の体重維持の両方を促進することを目的として食習慣および生活習慣を変更した。すべての患者が、血液および糞便の採取の前、介入の前および後に、一晩絶食した。人体測定変数および臨床変数を表3に要約する。研究開始前の3ヶ月間または研究中、9人のボランティアのいずれにも、抗生物質療法、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクス、ビタミンサプリメント、または腸管微生物叢に影響する他の任意の医学的治療を行わなかった。
Figure 2021511055
追跡調査研究コホートV
デザイン:自発的観察追跡調査研究。
参加者:19人の患者を2年間追跡して、微生物叢の自発的な進化を評価した。一般的なカウンセリングを被験体に提供した。研究開始前の3ヶ月間または研究中(2年間)、19人のボランティアのいずれにも、抗生物質療法、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクス、ビタミンサプリメント、または腸管微生物叢に影響する他の任意の医学的治療を行わなかった。すべての患者が、血液および糞便サンプルの採取の前、追跡調査期間の前および後に、一晩絶食した。人体測定変数および臨床変数を表4に要約する。
Figure 2021511055
分析測定
血液サンプルを12時間の絶食後に採取した。血清/血漿を分離し、直ちに−80℃で凍結した。血清の生化学的パラメータを2つ組で計測した。血清グルコース、コレステロール、HDLコレステロールおよびトリグリセリドを、標準的な酵素法(Randox Laboratories Ltd.,Antrim,UK)によって計測した。インスリンを、イムノラジオメトリックアッセイ(BioSource International,Camarillo,CA)によって計測した。
遺伝子発現解析
全RNAを、RNeasy Lipid Tissue Midi Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を用いてSATから抽出した。全RNA量を260nmにおいて計測し、純度をOD260/OD280比によって評価した。遺伝子発現解析の場合、1μgのRNAを、Reverse Transcription System(Applied Byosistems,Foster City,CA)を用いてランダムプライマーで逆転写した。miRNA解析の場合、cDNA合成を、TaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kit(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を用いて行った。リアルタイムPCR(qPCR)を、ATGL(Hs00386101_m1)、ZAG(Hs00426651_m1)、ABHD5(Hs01104373)、HSL(Hs00193510_m1)、CD163(Hs00174705_m1)、HIF1A(Hs00153153_m1)、IL1B(Hs001749097_m1)およびCCL2(Hs00234140_m1)に対するTaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems)を用いて7900HT Fast Real−Time PCR Systemにおいて行った。結果を、比較Ct法(2−ΔΔCt)を用いて算出し、ハウスキーピング遺伝子18S(Hs03928985_g1)の発現に対して表した。
便マイクロバイオーム解析
16Sの配列決定(コホートIIおよびIV)
採取した糞便サンプルを直ちに−80℃で凍結した。ゲノムDNAを、International Human Microbiome Standards(IHMS;http://www.microbiome−standards.org)(Santiago et al.,2014,BMC Microbiol.14:112)の推奨に従って抽出した。各サンプルの凍結アリコート(250mg)を250mlのチオシアン酸グアニジン、40mlの10%N−ラウロイルサルコシンおよび500mlの5%N−ラウロイルサルコシンに懸濁した。ビーズを用いた微生物細胞の機械的破砕によってDNAを抽出し、透明の溶解産物からアルコール沈殿によって核酸を回収した。1mg相当の各サンプルを、分光光度計(NanoDrop Technologies,Wilmington,DE)を用いたDNA定量に使用した。DNAの完全性を、DNA12000KitとともにAgilent 2100 Bioanalyzerを用いたマイクロキャピラリー電気泳動(最大17,000bp長の二本鎖DNAフラグメントの分布を分解する)によって調べた。リボソーム16S rRNA遺伝子の配列を、16S Metagenomics Kit(Thermo Fisher Scientific,Italy)を用いてcDNAから増幅した。そのキットには、細菌における16S領域の対応する超可変領域を選択的に増幅する2つのプライマーセットを含んだ:プライマーセットV2−4−8およびプライマーセットV3−6、7−9。用いたPCR条件は、95℃10分、ならびに95℃30秒、58℃30秒および72℃20秒の30サイクルの後、72℃10分であった。各アンプリコンの濃度および平均サイズを、Quant−iT PicoGreen dsDNA Assay Kit(Invitrogen)を用いて測定した;1マイクロリットル当たりのDNAフラグメントの量を算出し、Ion Plus Fragment Library Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてライブラリーを作製した。Ion Xpress Barcode Adapters 1−16キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、各サンプルにバーコードを付加した。ライブラリー濃度を、Ion Universal Library Quantification Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて測定した。アンプリコンライブラリーのエマルジョンPCRおよび配列決定を、Ion Torrent S5TMシステムおよびIon 520TM/530TM Kit−Chef(Thermo Fisher Scientific)を製造者の指示に従って使用して、Ion 520チップ(Ion 520TMChip Kit)において行った。配列決定後、個々の配列リードを、Ion Reporter Software V4.0を用いてフィルタリングして、低品質の配列およびポリクローナル配列を除去した。
メタゲノム解析(コホートIIIおよびV)
全DNAを、QIAamp DNA Stool Mini Kit(Qiagen,Courtaboeuf,France)を用いて凍結ヒト糞便サンプルから抽出した。品質評価を、以下のパラメータを適用するprinseq−liteプログラムを用いて行った:min_length、50、trim_qual_right、20、trim_qual_type、mean;およびtrim_qual_window、20。Illuminaの配列決定からのR1およびR2リードを、ea−tools suiteのfastq−joinを用いてつなぎ合わせた。そのfastqファイルを、FastX−Toolkitプログラムの「fastq_to_fasta」ツールを用いてfastaファイルに変換した。それらのファイルを、NCBIのFTPサイト(ftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/H_sapiens/)からダウンロードしたヒトゲノムに対してフィルタリングした。アラインメントされなかったファイル、つまり、ヒトゲノムに対してマッピングしなかったファイルを、Human Microbiome、およびNCBIのFTPサイト(ftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/HUMAN MICROBIOM/Bacteria/およびftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/archive/old_refseq/Bacteria/)からダウンロードした細菌ゲノムからなるカスタマイズされた細菌データベース(Bacteria_2015_06_09)に対するBLASTn検索の入力ファイルとした。BLASTn出力ファイルの最良のヒットを抽出し、分割表に変換し、BIOM形式に変形して、Quantitative Insights Into Microbial Ecology(QIIME)オープンソースソフトウェアパイプラインバージョン1.9.0(Langmead and Salzberg,2012,9:357−359;Schmieder and Edwards,2011,Bioinformatics 27:863−864)の入力ファイルとして使用した。
循環スクシネートの計測
蛍光定量的方法
循環血清/血漿スクシネートレベルを、EnzyChromTM Succinate Assay Kit(BioAssay Systems,Hayward,CA)を用いて計測した。アッセイ感度は、12μMであり、アッセイ内およびアッセイ間の変動係数は、それぞれ3.5および6.95%未満であった。
LC−MS/MSおよびNMR解析
蛍光定量的アッセイによって得られた循環スクシネートレベルを、LC−MS/MSおよびNMR解析を用いて検証した。これを行うために、コホートI由来の血漿サンプルのサブサンプルを、以前に報告されたものにいくつかの修正を加えて調製した(Nagana Gowda et al.,2015,Anal.Chem.87:706−715;Tulipani et al.,2013,Anal.Chem.85:341−348)。重要なことには、蛍光定量的アッセイによって計測されたコハク酸の濃度は、LC−MS/MSによって計測されたコハク酸の濃度(r=0.617、p=0.019)およびNMRによって計測されたコハク酸の濃度(r=0.769、p=0.043)と相関したことから、蛍光定量的アッセイが、ヒトスクシネートレベルを計測するために使用でき、他の2つの方法論よりも迅速かつ経済的であることが示唆された。
循環ゾヌリンの計測
血清ゾヌリンを、腸透過性の代用マーカーとして計測した。循環血漿/血清ゾヌリンレベルを、Human Zonulin Elisa Kit(MyBiosource,San Diego,CA)(Smecuol et al.,2005,Clin.Gastroenterol.Hepatol.3:335−341;Wang et al.,2000,J.Cell Sci.113 Pt 24:4435−4440)を用いて評価した。このアッセイは、ゾヌリンの検出に対して高い感度(1ng/ml)および優れた特異性を有し、このアッセイだけが、活性(未切断)型を検出する。これらの測定に対するアッセイ内およびアッセイ間の変動係数は、<10%であった。
統計解析
統計解析は、Statistical Package for the Social Sciencesソフトウェア、バージョン15(SPSS,Chicago,IL)を用いて行った。臨床変数および人体測定変数については、正規分布したデータを平均値±SDとして表し、ガウス分布値を有しない変数については、中央値(25th−75th四分位数)として表した。スチューデントt検定およびボンフェローニ補正を用いて、正規分布した連続変数の平均値を比較した。ガウス分布を有しなかった変数の場合、クラスカル・ワリス検定をダンの事後多重比較検定とともに用いた。群間の名義変数の差を解析するために、χ検定を用いた。微生物叢データの場合、統計的有意性を、SPSSソフトウェアパッケージの一部としての、対応のないt検定またはマン・ホイットニーU検定によって検定した。介入研究の場合、適宜、2つのプロスペクティブコホートにおける対解析のために、ウィルコクソン符号付き順位検定または対応のあるt検定を使用した。ピアソン相関係数およびスピアマン相関係数ならびにボンフェローニ補正を用いて、パラメータ間の関係性を解析した。変数が循環スクシネートに関連したかを判定するために、複数の線形回帰分析を使用した(変数増減法)。単変量解析においてスクシネートと関連したすべての変数を、それぞれのモデルに含めた。0.05未満のp値を有意とみなした。機能的研究のために、R統計ソフトウェアバージョン3.3.3を用いて統計解析を行った。2つの群の間の仮説検定解析(群1対群2)のために、ウィルコクソン順位和検定を用いた。階層的クラスタリングアルゴリズムを用いてヒートマップを作成して、メタゲノム機能およびデータセット内の代謝産物の差を可視化した。
変化した代謝プロファイルに関連したスクシネートの閾値レベル
被験体における変化した代謝プロファイルを、糖尿病などの代謝病態を発症するリスクに関連するいくつかのパラメータに対する閾値セットとして定義する。変化した代謝プロファイルに特有の値は、以下のとおりである:
・インスリン>25μLU/mL
・グルコース>100(mg/dl)
・HOMA−IR>3,21
・トリグリセリド>1,7(mM)
グルコースおよびトリグリセリドに対する閾値は、代謝症候群を定義するために、American Diabetes Association、American Heart AssociationまたはInternational Diabetes Federationが定義する値である。しかしながら、本発明の文脈において、これらの閾値は、必ずしも代謝症候群に関係しない。HOMA−IR(インスリン抵抗性指数)に対する閾値は、他で説明されている(Ceperuelo−Mallafre et al.,J Clin Endocrinol Metab.2014 May;99(5):E908−19;Cardona F.et al.,Clin Chem.2006 Oct;52(10):1920−5)。
コホートIの94人の患者のデータ(表1)に基づいて、本発明者らは、上で定義された変化した代謝プロファイルに関連する循環スクシネートに対する閾値を算出した。特に、本発明者らは、CART(分類木と回帰木)統計学的方法を用いて、「変化した」代謝プロファイルを有する被験体または「最適な」代謝プロファイルを有する被験体に特有のスクシネート値を求めた。CART法は、Statistical Package for the Social Sciencesソフトウェア、バージョン19(SPSS,Chicago,IL)を用いて行った。CART法は、一連の決定規則のグラフィック表示である。CARTは、変数の分類能力が分岐に対して評価される段階的なノンパラメトリック手順である。カットオフ点未満の値を有する被験体は、1つのカテゴリーに移動し、カットオフ点より高い値を有する被験体は、その木の第2のボックスに入る。CARTの主要素は、(a)1つの変数の値に基づいて、あるノードにおいてデータを分割するための法則;(b)枝が終わるときおよびそれ以上分割できないとき、決定のために法則を停止すること;および(c)最後に、各ノードの終端において標的の変数について予測することである。この方法で得られた、血液サンプルに対する循環スクシネート閾値は、60.390μΜ(図1A)であり、尿サンプルに対する循環スクシネートの閾値レベルは、10.250μM(図1B)である。
実施例1:スクシネートの循環レベルは、肥満症において上昇し、より悪い代謝プロファイルと関連する
肥満症およびT2DMに従って層別された91人の患者のコホート(コホート1)において、血漿スクシネートレベルは、痩せ個体よりも肥満個体において有意に高く(図2A、表1)、同BMIのT2DM患者において類似の上昇が検出され、これは、最近の報告とも一致した(van Diepen et al.,2017,Diabetologia 60:1304−1313)。これらの結果から、全身のスクシネートが体重の状態にも関連することが示唆される。したがって、循環スクシネートレベルと、BMIとの間だけでなく(図2B)、インスリン、グルコース、インスリン抵抗性指数(HOMA−IR)およびトリグリセリド(図2B)との間にも、正の関連が見出された。血圧調節におけるスクシネートの実証されている役割と一致して(He et al.,2004,Nature 429:188−193;Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215)、循環スクシネートは、拡張期血圧とも正に相関した(R=0.386、p=0.039)。年齢および性別に対して調整された複数の回帰分析モデル(R2=0.295)は、BMIおよびグルコース(それぞれβ=0.495 p<0.001およびβ=0.279 p=0.013)が、循環スクシネートレベルの主要な決定因子であることを示した。
スクシネートは、脂肪組織においてSUCNR1との関与を介して抗脂肪分解作用を発揮し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を阻害すると示されている(McCreath et al.,2015,Diabetes 64:1154−1167;Regard et al.,2008,Cell 135:561−571)。このシナリオと一致して、コホートIの代表的なサブセット(n=42)由来のSATにおける代謝遺伝子発現プロファイリングは、全身スクシネートレベルと、脂肪トリグリセリドリパーゼ(ATGL)、アブヒドロラーゼ(abhydrolase)ドメイン含有(ABHD5)およびホルモン感受性リパーゼ(HSL)を含む、トリアシルグリセロールの細胞内分解に関わる肝要な酵素をコードする遺伝子との負の関連を明らかにした(図2C)。類似の負の関連が、分泌型AT脂肪分解因子である亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質(ZAG)をコードする遺伝子についても見出された(図2C)。逆に、正の関連が、スクシネートと、慢性炎症および肥満症におけるAT機能不全の基礎をなす肝要な転写因子である低酸素誘発因子HIF−1α(図2D)との間に見出された(Trayhurn et al.,2008,Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.295:R1097;Ye,2009,Int.J.Obes.(Lond.)33:54−66)。実際に、スクシネートに対する明確な機能が、自然免疫のシグナル伝達において確立されており、スクシネートは、HIF−1αの安定化を介してインターロイキン−1ベータ(IL−1β)産生を増強する(Corcoran and O’Neill 2016,J.Clin.Invest.126:3699−3707;Tannahill et al.,2013,Nature 496:238−242)。それにもかかわらず、全身スクシネートレベルは、SATにおける抗炎症性マクロファージマーカーCD163の発現と関連すると見出された(図2D)が、IL−1βまたはMCP−1などの炎症性マーカーの発現とは関連すると見出されなかった(それぞれR=0.116 p=0.466;R=0.039 p=0.809)ことから、スクシネートは、他のストレス関連因子(例えば、オステオポンチンおよび熱ショックタンパク質)に対して以前に述べられた、他と異なる細胞内および細胞外の機能を有し得るという考えが支持される。注目すべきことに、内臓脂肪組織においてもいくつかの関連が見出されたが、より強い相関がSATにおいて検出されたことから、皮下脂肪貯留が、内臓脂肪よりもスクシネートに対して応答性であることが示唆される。
実施例2:腸内微生物叢の組成が循環スクシネートレベルに関連する
独立コホート(コホートII。臨床上および人体測定の特徴が表2に要約されている)において、スクシネートの血清濃度は、非肥満個体よりも肥満個体において有意に高かった(43.93±6.16μM 対 23.2±1.57μM、p=0.0020)。注目すべきことに、血清中のスクシネート濃度は、血漿中で見られる濃度よりも約3分の1低い(Ariza et al.,2012,Front.Endocrinol.(Lausanne)3:22および本研究)。
16S rRNA遺伝子の配列決定による腸内微生物叢の組成の解析から、肥満被験体におけるFirmicutes/Bacteroidetes比の上昇(図3A)、ならびに門レベルおよび属レベルでの豊富さおよび生物多様性の低下(図5B〜C)が明らかになった(Duncan et al.,2008,Int.J.Obes.(Lond.)32:1720−1724;Ley et al.,2005,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11070−11075;Ley et al.,2006,Nature 444:1022−1023;Zhang et al.,2009,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:2365−2370)。公知のスクシネート産生者である、Prevotellaceae(37.52±3.86% 対 12.93±3.97%、p=0.0005)およびVeillonellaceae(36.08±9.52% 対 19.51±4.26%、p=0.03)(Louis et al.,2014,Nat.Rev.Microbiol 12:661−672;Nakayama et al.,2017,Front.Microbiol.8:197;Vogt et al.,2015,Anaerobe 34:106−115)の相対存在量(RA)が、非肥満個体よりも肥満個体において高いことが見出された(図3A)。したがって、血清スクシネートレベルは、Prevotellaceaeと正に相関した(R=0.465;p=0.039)。逆に、公知のスクシネート消費者である、Odoribacteraceae科(1.58±0.68% 対 6.18±1.64%、p=0.005)およびClostridaceae科(0.09±0.04% 対 1.02±0.36%、p=0.05)(Ferreyra et al.,2014,Cell Host Microbe.16:770−777;Reichardt et al.,2014,ISME J.8:1323−1335)のRAは、非肥満個体よりも肥満個体において有意に低かった(図3A)。スクシネート代謝に関係する他の細菌の科(例えば、Paraprevotellaceae、BacteroidaceaeまたはRuminococcaceae)では、差は検出されなかった(Ferreyra et al.,2014,Cell Host Microbe 16:770−777;Louis et al.,2014,Nat.Rev.Microbiol 12:661−672;Morotomi et al.,2008,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.58:2716−2720;O’Herrin and Kenealy 1993,Appl.Environ.Microbiol.59:748−755;Watanabe et al.,2012,Appl.Environ.Microbiol.78:511−518)。その結果として、特定のスクシネート産生者/消費者である、[(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteraceae+Clostridaceae)](fam[P+V/O+C])という比は、肥満被験体において有意により高く(図3B)、スクシネートの血清レベルと正に相関した(図3C)。属レベルでは、スクシネート産生メンバーであるMitsuokella spp.が、肥満被験体の便サンプルにおいて豊富であることが見出され(9.67±5.37% 対 0.11±0.11%、p=0.08)、これは、スクシネート消費メンバーであるPhascolarctobacterium spp.(7.27±2.29% 対 24.15±6.12%、p=0.018)およびOdoribacter spp.(0.8±0.27% 対 3.66±1.81%、p=0.017)の有意な減少を伴った(図5D)。同様に、属レベルでの特定のスクシネート産生者/スクシネート消費者の比も、非肥満個体よりも肥満個体において有意に高かった(図5E)。
「漏出性腸(leaky gut)」仮説によると、肥満症に特有の腸管ディスバイオシスは、体循環への細菌およびそれらの生成物の移行に直接関係する(Slyepchenko et al.,2016,Curr.Pharm.Des.22:6087−6106)。予想通り、腸透過性の有用なバイオマーカーであるゾヌリンの循環レベルは、非肥満個体よりも肥満個体において有意に高かった(869.33±199.013ng/ml 対 500.87±44.61ng/ml、p=0.04)。血清スクシネートと循環ゾヌリンとの間に正の相関が見出された(R=0.61;p=0.011)(図3D)ことから、肥満症における高レベルの循環リポ多糖と同様に、腸透過性が、体循環におけるスクシネートの存在と密接に関連し得ると示唆される。
血清スクシネートと腸内マイクロバイオームとの関連性をさらに調査するために、独立コホート(検証コホートIII;臨床上および人体測定の特徴が表2に要約されている)において、便DNAの全ゲノムショットガン法を行った。前のコホートにおいて述べたように、スクシネート血漿レベルは、痩せ個体よりも肥満個体において有意に高かった(101.72±9.37μM 対 78.24±4.4μM、p=0.043)。さらに、Veillonellaceae科の有意な増加(2.37±0.39% 対 1.41±0.24%、p=0.043)が、肥満被験体において見出され(図3E)、ならびにVeillonellaceaeと血漿中のスクシネートレベルとの正の相関が見出された(R=0.773;p<0.001)(図3F)。したがって、肥満被験体は、より高いfam[(P+V)/(O+C)]比を有し(図3G)、これは、血漿スクシネートレベルと正に関連した(図3H)。コホートIIと同様に、肥満個体は、より高いゾヌリンレベルを有し(表2)、これも、循環スクシネートレベルと正に関連した(R=0.59;p=0.0152)。さらにより高いfam[(P+V)/(O+C)]比が、肥満の糖尿病被験体で見られた(図3I)。この患者の亜群において、Odoribacteriaceaeと血漿中のスクシネートレベルとの間に相関が見出された(図3J)。
全体的に見て、これらのデータは、個体間の異質性があるにもかかわらず、循環スクシネートレベルが、腸内微生物叢の特定の構成要素と関連することを実証している。興味深いことに、循環スクシネートレベルと関係がある微生物は、以前にCVDおよび/またはその危険因子に関係していた。したがって、OdoribacterおよびClostridiumなどのスクシネート消費属は、CVDのリスクと関連する臨床パラメータの低下と関係があった(Karlsson et al.,2012,Nat.Commun.3:1245;Tang et al.,2017,Circ.Res.120:1183−1196)。対照的に、肥満個体において上昇していると見出されたPrevotella属は、最近、高血圧症(Li et al.,2017b,Microbiome 5:14)およびTMAO誘発アテローム性動脈硬化症(Koeth et al.,2013,Nat.Med.19:576−585;Org et al.,2015,Atherosclerosis 241:387−399)と関連した。これらの筋道に沿って、Chenおよび同僚らは、リスベラトロールが、Prevotella属を阻害することによって腸内微生物叢を調節し、それによって、循環TMAOレベルの低下が誘導されることを実証し(Chen et al.,2016,MBio 7:e02210−02215)、CVDの発症リスクを低下させるための薬理学的介入または食事介入あるいはダイエット製品に対する魅力的な標的として腸内微生物叢を指摘した。
実施例3:食事性体重減少介入による腸内微生物叢の改変は循環スクシネートレベルに影響する
腸内微生物叢の食事誘発性改変が、循環スクシネートレベルの変動に反映され得るかを判定するために、食事介入またはダイエット製品による12週間の前向き研究を、体重減少を目的として、肥満患者において行った(コホートIV、表3)。属および科の豊富さの増大(図6A)と同時に、介入後に血清スクシネートレベルが低下した(図4A)。属または科の多様性に有意差は検出されなかったが(図6B)、以前の食事性体重減少介入研究において報告されたもの(Cotillard et al.,2013,Nature 500:585−588;Dao et al.,2016,Clinical Nutrition Experimental 6:39−58;Healey et al.,2017,Nutr.Rev.75:1059−1080)と同様に、Firmicutes/Bacteroidetes比の低下(図6C)が明らかにされた。
先の2つのコホート(コホートIIおよびIII)の結果と一致して、スクシネートを産生する科であるPrevotellaceae(17.91±6.43% 対 7.15±2.47%、p=0.019)およびVeillonellaceae(13.11±2.76% 対 3.73±1.48%、p=0.027)の有意な減少が、食事介入またはダイエット製品の後に見出された(図4B)。コホートIIIにおいて観察されたものと同様に、Prevotellaceaeの出現率の変化([Prevotellaceae]介入後−[Prevotellaceae]基礎)とスクシネートレベルとの間に正の相関が見出された(R=0.751;p=0.019)(図4C)。同様に、fam[(P+V)/(O+C)]比は、スクシネートの低下と同時に、体重減少後に有意に低下し(図4D)、これは、fam[(P+V)/(O+C)]比の変化と循環スクシネートの変化(介入後−基礎)との正の相関に反映された(図4E)。同様の観察結果が、属レベルで見られ(図6D)、gen[(P+V)/(O+C)]比は、介入後に有意に低下した(図6E)。
まとめると、これらの結果から、短期的な食事性体重減少介入は、スクシネート代謝に関係する腸の共生群集の種々のメンバーに影響することが示唆される。詳細には、2つの分類レベルにおけるスクシネート消費者の増加と同時に起こるスクシネート産生者の減少が、観察された全身スクシネートレベルの低下と相関することから、肥満症の状況における新しいディスバイオシス関連代謝産物として循環スクシネートが指摘される。
際だったことに、両方の微生物叢コホート(コホートIIおよびIV)の共同解析から、fam[(P+V)/(O+C)]比と循環血清スクシネートレベルとの間の強い正の相関が確証された(n=38、R=0.646;p<0.001)。頼もしいことに、複数の回帰分析から、[スクシネート産生]科 対 [スクシネート消費]科に基づく本発明者らが提唱する比が、全身スクシネートレベルの主要な決定因子であることが明らかになった(R=0.744、β=0.597;p=0.007)。これらの強い相関にもかかわらず、正確にはどのように微生物群集がスクシネートと相互作用し、スクシネートを使用するかは、現在のところ不明である。さらに、他の微生物群も、スクシネートの産生(例えば、Succinovibrio spp.、Ruminococcus spp.またはFibrobacter succinogenes)および消費(例えば、Dialister spp.、Phascolartobacterium succinatutes)に関与し得る(Ferreyra et al.,2014,Cell Host Microbe.16:770−777;Louis et al.,2014,Nat.Rev.Microbiol 12:661−672;Morotomi et al.,2008,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.58:2716−2720;O’Herrin and Kenealy 1993,Appl.Environ.Microbiol.59:748−755;Watanabe et al.,2012,Appl.Environ.Microbiol.78:511−518)。それにもかかわらず、本発明者らの結果は、特定のfam[(P+V)/(O+C)]比と循環スクシネートとを強く関連づける。
実施例4:微生物叢の自発的な進化は全身スクシネートの変化を駆動する
最後に、微生物叢の自発的な進化を評価するために、一般的な健康習慣カウンセリングを提供した19人の被験体を調べた:ベースラインおよびその2年後(方法の項、表4におけるコホートVの説明を参照のこと)。追跡調査において、これらの患者に体重の有意差は観察されなかった。16Sの配列決定ではなく、メタゲノムアプローチを用いて、このコホートにおける腸内微生物叢を解析した。追跡調査の終わりに、比[スクシネート産生]科 対 [スクシネート消費]科の変化に関して、被験体を2群に分類した(群1、比は低下 対 群2、比は増加)。fam[(P+V)/(O+C)]の低下は、スクシネートレベルの有意な低下と関連した(表5、群1)のに対して、この比の有意な上昇は、全身スクシネートの増加と関係した(表5、群2)。
Figure 2021511055
これらの結果は、体重変化と無関係な腸の微生物組成の変動が、循環スクシネートに直接関係することを実証する。注目すべきことに、高い全身スクシネートは、グルコースホメオスタシスの機能障害と平行して生じたが、これは、微生物叢によって産生されるスクシネートがグルコースホメオスタシスの改善に直接関係することを示す動物モデルにおいて最近報告された知見(De Vadder et al.,2016,Cell Metab.24:151−157)と対照的である。実際に、高スクシネートレベルは、循環器疾患(Aguiar et al.,2014,Cell Commun.Signal.12:78)およびT2DM(Guo et al.,2017,Nat.Commun.8:15621;Sadagopan et al.,2007,Am.J.Hypertens.20:1209−1215;Toma et al.,2008,J.Clin.Invest.118:2526−2534;van Diepen et al.,2017,Diabetologia 60:1304−1313)をはじめとした様々なヒトの病理学的状況と関連した。
多変量解析によって、代謝酵素をコードする64個の遺伝子の発現とfam[(P+V)/(O+C)]比との間の統計学的に有意な関連が明らかになった。これらのメタゲノムデータ、ならびにfam[(P+V)/(O+C)]比、循環スクシネートおよびスクシネート関連微生物種の間の関連の階層的クラスタリングによって、fam[(P+V)/(O+C)]比と明確な関連性を有する2つのクラスター(AおよびBと標識、データ示さず)が明らかになり、これは、主にスクシネートレベルによって反映された。メタゲノムによって得られたクラスターは、PrevotellaceaeおよびClostridaceaeとの関連を解析したときにも確認され、強い逆の関係性が検出された。クラスターAにおける主要な正の関連は、アミノ酸の輸送および代謝に関わる代謝酵素をコードする遺伝子([E])との関連であったのに対して、クラスターBは、エネルギーの生成および変換に関係する遺伝子([C])との優勢な関連を示した。炭水化物の輸送および代謝に関係する遺伝子([G])との強固な関連性が、両クラスターにおいて明らかにされた。興味深いことに、サブクラスターA1/A2およびB1/B2を、VeillonellaceaeおよびClostridaceaeとの逆の関連に基づいて分けた。これらの結果は、fam[(P+V)/(O+C)]比、特定の腸内微生物叢および循環スクシネートレベルと、特定の分子実体および代謝機能とを関連づける。
コホートをfam[(P+V)/(O+C)]比に従って2群に分類したとき、特定の細菌群集に関連する遺伝子発現プロファイルの差も明白になった(群1 対 群2)(図7A)。2年間の追跡調査の後の、炭水化物の輸送および代謝に関連する酵素([G])(例えば、ペクチン酸リアーゼ[EC:4.2.2.2]、ペクチンエステラーゼ[EC:3.1.1.11]およびグリコシルヒドロラーゼ[EC:3.2.1.52])をコードする遺伝子の存在量の増加が、スクシネートレベルの上昇と並行してfam[(P+V)/(O+C)]比が増加した被験体において検出された。不思議なことに、ペントースリン酸経路を解糖につなぐ酵素(例えば、リブロキナーゼ[EC:2.7.1.16]およびトランスアルドラーゼ[EC:2.2.1.2])をコードする遺伝子の存在量の減少も、これらの患者において観察された。二次代謝産物の生合成に関係する代謝経路に関連する遺伝子([Q])(例えば、スクシニル安息香酸−CoAリガーゼ[EC:6.2.1.26])またはアミノ酸の輸送および代謝と関連する遺伝子([E])(例えば、ホスホリボシルホルムイミノ−5−アミノイミダゾールカルボキサミドリボチドイソメラーゼ[EC:5.3.1.16]およびグルタミン酸シンターゼ[EC:1.4.1.14])も改変された。興味深いことに、これらの遺伝子のすべてが、fam[(P+V)/(O+C)]比と最も強い関連を示した(データ示さず)。より重要なことには、これらの酵素をKEGG代謝経路マップに投影すると、中央代謝が、fam[(P+V)/(O+C)]比と関連する主要プロセスであると明らかになった。中でも、グリコシド(glyocoside)ヒドロラーゼおよびグルタミン酸シンターゼが、GABAシャント経路を介した解糖活性化およびスクシネート産生におけるそれらの機能的な役割から、特に興味深かった。また、fam[(P+V)/(O+C)]比とリブロキナーゼおよびトランスアルドラーゼとの負の関連も言及に値し、それは、ペントースリン酸経路の阻害によっても解糖を促進し得る(データ示さず)。fam[(P+V)/(O+C)]比と正または負に相関した主要酵素のマッピングによって、それらの機能的特長とスクシネート代謝(KEGG代謝経路から適合された)との明確な関係が明らかになった(データ示さず)。
結論として、本研究は、ヒトにおける微生物群集、遺伝子組成および代謝と循環スクシネートレベルとの間の強い関連を初めて明らかにした。
実施例5:Odoribacter laneusで治療された肥満マウスにおける耐糖能試験
C57/Bl6マウスに16週間、高フルクトース食を与えた。次いで、肥満マウスを、100uLの、PBS+グリセロール1%(ビヒクル)中の1×10CFU/mLの細菌を用いて24日間、経口胃管栄養法にてOdoribacter laneusで毎日治療した。Odoribacter laneusで治療された動物において、耐糖能(図8A)が改善した。曲線下面積(AUC)を(図8B)に示す。

Claims (24)

  1. 被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比の測定に適した試薬を含むキットであって、
    前記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを含み、または
    前記キットは、少なくとも1つのスクシネート産生細菌および少なくとも1つのスクシネート消費細菌における16S rRNA遺伝子の超可変領域に特異的にハイブリダイズするプローブを含み、
    前記プライマーセットまたは前記プローブは、前記キットを形成する試薬の総量の少なくとも10%を構成する、
    キット。
  2. 被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を検出するための、請求項1に記載のキットの使用。
  3. スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である、請求項1に記載のキットまたは請求項2に記載の使用。
  4. 被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルが閾値レベルより高いかを判定するためのキットの使用であって、前記キットは、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含み、
    ・ 前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより高いスクシネートが存在することが、陽性の結果を提供し、
    ・ 前記生体液サンプル中に所定の閾値レベルより低いスクシネートが存在することまたは前記生体液サンプル中にスクシネートが存在しないことが、陰性の結果を提供する、
    使用。
  5. 前記被験体由来の前記生体液サンプルが、血液サンプル、尿サンプルまたは糞便サンプルである、請求項4に記載の使用。
  6. 前記生体液が血液である場合、スクシネートの前記閾値レベルが、50〜70μMであり、または、前記生体液が尿である場合、スクシネートの前記閾値レベルが、5〜15μMである、請求項5に記載の使用。
  7. 被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とするプロバイオティクス介入が有効であったかを判定するためのキットの使用であって、前記キットは、被験体由来の生体液サンプル中のスクシネートレベルの測定に適した試薬を含み、
    ・ 前記プロバイオティクス介入前の前記被験体由来の前記生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルより低い、前記プロバイオティクス介入後の前記被験体由来の前記生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルが、前記プロバイオティクス介入が有効であったことを示し、
    ・ 前記プロバイオティクス介入前の前記被験体由来の前記生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルと等しいまたはそれより高い、前記プロバイオティクス介入後の前記被験体由来の前記生体液サンプル中の循環スクシネートのレベルが、前記プロバイオティクス介入が有効でなかったことを示す、使用。
  8. 被験体における循環スクシネートのレベルの低下を目的とする標的化介入が有効であったかを判定するための方法であって、当該方法は、
    (a)前記標的化介入前の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程、および
    (b)前記標的化介入後の前記被験体由来の糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を測定する工程
    を含み、
    ・ 前記標的化介入前の前記被験体由来の前記糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比より低い、前記標的化介入後の前記被験体由来の前記糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、前記標的化介入が有効であったことを示し、
    ・ 前記標的化介入前の前記被験体由来の前記糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比と等しいまたはそれより高い、前記標的化介入後の前記被験体由来の前記糞便サンプル中のスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、前記標的化介入が有効でなかったことを示す、
    方法。
  9. 前記標的化介入が、食事介入またはダイエット製品、薬理学的介入およびプロバイオティクス介入からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記患者が、肥満である、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記患者が、2型糖尿病を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 患者における高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための食事介入またはダイエット製品であって、前記介入が、前記患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させる、食事介入またはダイエット製品。
  13. 請求項12に記載の使用のための食事介入またはダイエット製品であって、前記介入が、
    ・ 脂肪が、1日当たりの総カロリー摂取量の35〜40%であること;および
    ・ 炭水化物が、1日当たりの総カロリー摂取量の40〜45%であること
    を特徴とする低カロリー食を含み;
    前記食事介入またはダイエット製品は、少なくとも12週間投与され、
    前記食事介入またはダイエット製品は、場合により、身体的運動プログラムと組み合わせて投与される
    食事介入またはダイエット製品。
  14. 高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品であって、前記製品は、患者の腸管におけるスクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比を低下させ、前記製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される、製品。
  15. 高レベルの循環スクシネートに関連する疾患の予防および/または治療において使用するための製品であって、前記製品は、患者の循環スクシネートのレベルを低下させ、前記製品は、薬理学的製品およびプロバイオティクス製品からなる群から選択される、製品。
  16. 前記患者が、肥満である、請求項12または13のいずれか一項に記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは請求項14または15のいずれか一項に記載の使用のための製品。
  17. 患者における高レベルの循環スクシネートに関連する前記疾患が、肥満症、循環器疾患、高血圧症、2型糖尿病、慢性心不全、虚血性心疾患、虚血/再灌流傷害および糖尿病性腎症からなる群から選択される、請求項12、13または16のいずれか一項に記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは請求項14から15または16のいずれか一項に記載の使用のための製品。
  18. スクシネート産生細菌とスクシネート消費細菌との比が、(Prevotellaceae+Veillonellaceae)/(Odoribacteriaceae+Clostridiaceae)比である、請求項12から13または16から17のいずれか一項に記載の使用のための食事介入またはダイエット製品、あるいは請求項14から17のいずれか一項に記載の使用のための製品。
  19. 前記薬理学的製品が、スクシネート産生細菌を特異的に標的化し、かつ前記薬理学的製品が、抗生物質、抗菌性抗体およびバクテリオファージからなる群から選択される、請求項14から18のいずれか一項に記載の使用のための製品。
  20. 前記プロバイオティクス製品が、スクシネート消費細菌を含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の使用のための製品。
  21. 前記スクシネート消費細菌が、Odoribacter spp.、Clostridium spp.、Phascolarctobacterium spp.、Ruminococcus spp.およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の使用のための製品。
  22. 前記スクシネート消費細菌が、Phascolarctobacterium succinatutens、Phascolarctobacterium faecium、Ruminococcus bromiiおよびOdoribacter laneusからなる群から選択される、請求項21に記載の使用のための製品。
  23. 有効量のスクシネート消費細菌を含むプロバイオティクス製品であって、前記スクシネート消費細菌が、Odoribacter spp.、Phascolarctobacterium spp.、Ruminococcus spp.およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、プロバイオティクス製品。
  24. 前記スクシネート消費細菌が、Phascolarctobacterium succinatutens、Phascolarctobacterium faecium、Ruminococcus bromiiおよびOdoribacter laneusからなる群から選択される、請求項23に記載のプロバイオティクス製品。

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