JP2021506963A - 不安の予防及び処置のためのフルオロエチルノルメマンチンの使用 - Google Patents

不安の予防及び処置のためのフルオロエチルノルメマンチンの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、単独で、又は化学的抗うつ処置若しくは認知行動的技法と組み合わせて、不安、より詳細には外傷後ストレス状態を処置するための、フルオロエチルノルメマンチン又はその塩の1種に関する。

Description

本発明は、不安及びうつ病に関係する障害の処置における医薬成分の使用の発見に関する。
不安及びうつ病に関係する不安を処置するために、多数の分子が開発されている。しかし、これらの分子は多くの欠点、特に顕著な副作用を有し、それにより眠気が相対的に増大する、又は更には統合失調症的精神病状態が生じる、又は治療の効果が現れるまでかなりの処置時間を要し(数日又は更には数週間)、その処置期間中に不安惹起作用のリスクが伴う。
不安
ヒトの不安とは、心配の感情、不安定感、身体的若しくは精神障害、又は漠然とした危険の予感である。不安は更に、2つのタイプ:状態不安と特性不安に区別される。状態不安は、対象が自らの置かれた特定の状況に関係する「正常な」不安である。特性不安は、対象の本質的なものである「病的な」不安である。永続的であり、特定の状況とは無関係である。
うつ病
うつ病は、患者が気分の低下、活力の低減及び活動の減少を経験する、いわゆるうつ病エピソードを特徴とする。うつ病では、喜びを経験する能力の変化、興味の喪失、及び集中力の急速な減少も見られる。更に、最小限の労力の後でさえ顕著な疲労が見られ、睡眠障害等も見られる。患者は自尊心の減少、罪悪感、並びに希死願望及び自殺念慮に発展するほど極端でありうる自尊心の低下を頻繁に経験する。症状の数と重症度に応じて、うつ病の重症度は3つの程度:軽度、中等度及び重度に定義される。
不安及びうつ病に関連する複数の精神障害が、世界保健機関(WHO)が提唱する国際疾病分類(ICD-10)に列挙されている。
恐怖症性不安障害: F40
対象は、もっぱら又は本質的に、1つ又は複数の特定の無害な状況によって誘発される不安症状を呈する。結果として、患者はそうした状況を回避しようとするか、又は懸念を抱えて耐える。この恐怖症性不安は、多くの場合うつ病に関連する。
混合性不安抗うつ障害: F41.2
この障害の場合、対象は不安とうつ症状の両方を呈するが、どちらも明らかに優勢とは言えず、どちらも個別の診断を付けるほど深刻ではない。
強迫性障害(OCD): F42
この障害は、反復する強迫思考又は強制的行動を特徴とする。強迫思考は、対象がそれらを回避しようとするときでさえ対象の意識に繰り返し、決まった形で侵入する。強制的行動もまた、対象が直接喜びを感じないが行わずにはいられない、繰り返し行われる、決まった形の行為である。これらの目的は、対象にとっての不幸を含む、客観的に起こりそうにない事象の発生を防ぐためである。対象は通常、自身の行動を不条理とみなし、それを止めようと繰り返し試みる。この障害は、ほぼ常に不安及びうつ病を併発する。
外傷後ストレス障害(PTSD): F43.1
外傷後ストレス障害は、対象が死、死の脅威、重篤な傷害、又は性的暴行等の状況の外傷性事象に(直接又は間接的に)曝露された後に発症する。この「外傷性」事象は、定義上強迫的で激しい恐怖反応を引き起こすものであり、極度のストレス状況を表す。外傷性事象により、一連の特定の症状及び行動が生じる。例えば:フラッシュバック(事象の繰り返しの、及び侵入的な記憶、悪夢等)、回避行動(外傷性事象を呼び起こす記憶、思考、人、状況等の回避)、認知及び感情の変化(自身を非難する傾向、持続的な否定的な感情等)、最後に神経系の過剰活性化(過覚醒、睡眠困難等)である。この症候群を患う人々は、深刻なうつ病又は自殺観念を発症することも多い(Shalev, Am. J. Psychiatry 155,5、630〜637頁、1998年5月)。この外傷後ストレス障害現象は、事象の記憶の符号化の重大な歪みにつながる。記憶は長期的に、しかし偏った態様で保存され、特定の側面については記憶喪失、対象を悩ます他の詳細については記憶増進を伴う。
したがって、うつ病に結び付くか否かを問わず、不安障害に有効に対処するための新規の解決策に対する真の必要性が存在する。
不安とうつ病が併発する障害の処置:
うつ病に関連するか否かを問わず、不安のための従来の処置には、行動療法、生活様式の変更及び医薬療法が含まれる。しかし、こうした障害を処置するために使用される薬物の多くは、厄介な副作用を有するか、又は嗜癖若しくは依存症の原因となることが公知である(Thesis A. Dubois 2015年 Universite de Bordeaux)。不安に関係する障害を処置するために現在使用されている治療的解決手段のほとんど、及びそれらの副作用のいくつかは、以下の総説に見出すことができる: Guidelines for the pharmacological treatment of anxiety disorders, obsessive - compulsive disorder and posttraumatic stress disorder in primary care, B. Bandelow, International Journal of Psychiatry in Clinical Practice、2012年; 16: 77〜84。
使用された最も初期の物質の中には、例えば、バルビツール酸塩として公知のバルビタール誘導体があり、1950年代に広く使用されたが、嗜癖又は不耐性の高リスクがあった。
その後、不安及びうつ病を処置するための他の薬物、特にジアゼパム(Valium(登録商標)等)をはじめとするベンゾジアゼピンが開発された。これらの分子は当初、有効で忍容性が比較的良好であると示され、特にフランス及び米国において処方されたものであり、現在も広く処方されている。ベンゾジアゼピンは、通常はGABA(γ-アミノ酪酸)のための細胞受容体に結合する能力を有する。この天然の化学化合物は、中枢神経系の主要な阻害剤である。細胞受容体に結合することにより、ベンゾジアゼピンはGABAに対する受容体の親和性を増大させ、それによりその強度を10倍増加させる。しかし、これらの分子には顕著な薬物依存性、及び他の望ましくない作用(認知機能の損傷、統合失調症性障害、眠気、退薬症候群及び反跳現象等)があることが示され、それゆえ代替物が探求されている。更に、ベンゾジアゼピンはOCD及び不安とうつ病が併発する他の障害の処置に対する有効性は見出されていない。
その後、他の神経伝達物質:セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン又は5-HT)の作用に基づく他のクラスの抗不安及び抗うつ病分子が開発された。セロトニンは、放出ニューロンと受容ニューロンの間で情報が交換されるときに放出される神経伝達物質である。選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はSSRIには、フルオキセチン(Prozac(登録商標))及びボルチオキセチン(Trintellix(登録商標)、Brintellix(登録商標))が含まれる。神経伝達物質が送信ニューロンによって再捕捉され、受信ニューロンに利用可能でないことから、送信ニューロンと受信ニューロンの間で一部の情報が失われる。SSRIは、伝達ニューロンがセロトニンを再捕捉することを阻止し、セロトニンが受信ニューロンによって認識される可能性を高め、それによりそのニューロンの刺激を増大させることによって作用する。この特性を利用するために、多くのSSRI分子が開発されている(例えば、特許EP0216555A2を参照されたい)。不安及びうつ病に対する成果は非常に有望であるが、やはり副作用が観察されている(特に、行動の脱抑制等)。更に、PTSD症状の重症度を低減することに対するSSRIの、特にパロキセチン及びセルトラリンの有効性のエビデンスが提供されている(P Carlier、Annales medico-psychologiques 166、2008年、747〜754)。しかし、ここでもまた、副作用(偏執症、セロトニン症候群等)及び特定数の不耐性又は無効性が出現しており、SSRIを他の抗うつ薬(気分安定剤等)と併用する必要性が正当化される。
他の神経伝達物質であるグルタミン酸も、新薬を開発するための鋭意研究の対象である。グルタミン酸は、複数の型の受容体を活性化することがこれまでに認識されている(M. Teigell-Webb、EPHP論文):グルタミン酸は、それらの最も選択的なアゴニストの名称を特徴とする、またそれによって命名される3つのイオンチャネル型受容体: N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、カイニン酸(KA)及びa-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体に作用する。研究によってNMDA受容体が脳機能の興味深い側面に関与することが示されたため、NMDA受容体の研究は、より急速に発展している。NMDA受容体は、多種多様な生理学的役割:神経分化、発達中のシナプス結合の形成、成人におけるシナプス可塑性を担う。特に、NMDA受容体は、学習及び短期記憶に関与することが成人において示されている;海馬の特定の領域で、NMDA受容体は情報保存の媒体として機能するシナプス効率(又は長期増強)を強化するのに役立つ。最後に、NMDA受容体は、ストレスへの曝露後の不安行動の増加に関与する(R.E. Adamek et al., Physiology & Behavior、65巻、Nos. 4/5、723〜737頁、1999年)ため、PTSD処置の開発の主要な標的となっている。グルタミン酸受容体の新規性は、他のリガンド活性化受容体チャネルとは異なり、この受容体がアゴニスト(及び共アゴニスト)結合と膜電位の双方に依存することであることに留意されたい。グルタミン酸部位には競合的アゴニストとアンタゴニストが結合する。非競合的NMDA受容体アンタゴニストは、グルタミン酸とは異なる調節部位に結合することができる分子である。不安の処置の場合、例えば、NMDA受容体阻害ペプチドが開発されている(特許EP2175873)。
更に、いわゆる「チャネル遮断薬」は、NMDA受容体が「開口」状態である(細胞が脱分極しグルタミン酸が結合している)ときに、NMDA受容体に付随するチャネルに結合する薬剤である。最も良く知られる「チャネル遮断薬」には、ケタミン、メマンチン等がある。メマンチンは、神経保護作用を既に示している。例えば、メマンチンはアルツハイマー病の処置に既に使用されているが、例えば特許US2010081723A1では、小児(自閉症)の行動障害を処置するためにも試験されている。
更に、ケタミン、ジゾシルピン、メマンチン等の、NMDA受容体のフェンシクリジン(PCP)部位に結合する非競合的アンタゴニストも、外傷後ストレスに関係する不安について試験されている(Arthur L. Womble, AANA Journal 2013年4月81巻、No. 2.)ことに留意されたい。ケタミン及びジゾシルピンに関しては、これらの研究のポジティブな結果は副作用(幻覚、フラッシュバック、偏執症等)によって強く影を投げかけられている。ケタミンは感覚フィルタリングを強く阻害することに留意すべきである。
それにもかかわらず、複数のチームによってケタミンの開発が探求されており、これらのチームにより、この分子を恐怖条件付けの1週間前にげっ歯類に単回注射すると、安定化期にテタニーが顕著に低減するという興味深い予防作用が示された(Neuropsychopharmacology(2017年)のC. Dennyら、1〜13)。しかし、その作用はこのモデルでは高用量でしか視認できず(30mg/kg)、且つ処置が条件付けと同時(又はその直前)である場合、又は防御処置が早すぎる(1カ月前)場合には再現できない。
US2014/057988A1もまた、軽度不安の発症の阻害、軽減又は処置のために、ケタミンをNMDA受容体アンタゴニストとして使用する方法を提案している。軽度不安は、該文献では不快な感情又は懸念と定義される。該文献は、メマンチンを認知症の処置に使用する方法について考察及び引用しているが、メマンチンは抗不安作用を有さず、且つ統合失調症様の有害な副作用を有する。
WO2014/191424は、アルツハイマー病又はパーキンソン病等の神経変性疾患の処置にメマンチン誘導体、特に2-フルオロエチルノルメマンチンを使用する方法について記載している。
メマンチンは、PTSD及び強迫性障害等の、うつ病に関連するか否かを問わず、不安障害を処置するためにも使用されている(G. Sani、総説論文CNS Drugs 2012; 26 (8): 663〜690)。一般的に、メマンチンの作用は他の分子と併用される場合(増強療法)、ポジティブである。単独療法として使用される場合、その効能ははるかに弱く、議論の余地がある。例えば、OCDを処置するために、メマンチンは、フルオキセチン若しくはシタロプラム等のSSRIと、又はクロミプラミン等の他の三環系抗うつ薬と併用されている。一般的に、補助療法としてメマンチンを使用すると、低一日用量(約15mg未満/日)で忍容性が良好である。しかし、投与量が高すぎる場合、不快な状態、眠気、悪心等の副作用が観察されている。PTSDの動物モデルに使用した結果は説得力のあるものではないが、ヒトのPTSDの数例の研究では、メマンチンを追加処置として使用したところ、患者の症状を改善するようであった。いずれの場合でも、単独で使用されるメマンチンは、軽度であるか重度であるかにかかわらず、うつ病に関連するか否かを問わず、不安を低減又は処置することができない。他の分子との他の併用には、メマンチンとシナプス小胞糖タンパク質SV2A阻害剤の併用(米国特許2016030391A1)及びメマンチン/メラトニンの組合せ(特許EP2905021A1)が含まれる。
更に、メマンチンは副作用が少なく忍容性が良好であるようだが、意図されない過鎮静作用(眠気、疲労、感情鈍麻等)を有するようであり、更に、高用量では眩暈の増進ももたらし(NR Swerdlow、Neuropsychopharma.、2009年、34、1854〜1864)、また、インターネットフォーラムでは患者によって反跳作用が報告されている。更に、メマンチンは、特に高用量で統合失調症型副作用を誘導しうること、又は抗不安作用を有さないことが周知である。
最後に、NMDA受容体の場合、様々なアンタゴニストが一つの態様で作用するわけではないため、ある一つのアンタゴニストの利点及び不利は、構造が類似しているとしても、必ずしも別のアンタゴニストと同じではないようである。
PTSDの二次処置として、最新のクラスの分子:カテコールアミン作動性薬剤が提案されている(F. Ducrocq, L'Encephale、2005年; 31: 212〜26)。これらは、ノルアドレナリン作動性の反応性亢進を直接抑制する目的で医薬的介入に使用されており、少数の患者に対して非盲検及び二重盲検試験を通して試験されている。これらの薬剤には、クロニジン、グアンファシン、プラゾシン及びプロプラノロールが含まれる。これらの分子のうち、プロプラノロールが今日までに最も確定的な研究の対象になっている。この非選択的β-アドレナリン作動性遮断薬はこうして、1994年という早期に、外傷性事象の直後の情動記憶の固定化現象を低減しうると立論された(Cahill L.、Nature 1994年; 371: 702〜4)。その数年前には、Famularoらが、2週間の休薬期を組み入れた4週間の処置からなる3期のB-A-B(off-on-off)デザインに基づく試験を構築することにより、小児に発症する障害においてこの分子を試験している。この試験では、参加した11名の小児のうち8名が、処置期においてPTSD症状(反復及び自律神経系の反応性亢進)の顕著な改善を示したが、この改善は休薬中に消失した(Famularo R、Am J Dis Child 1990年; 142: 1244〜7)。この最後の要素により、PTSDの認知療法の付随物以上のプロプラノロールの重要性が相当に限定される。
PTSD処置のための効率的な解決手段の欠如は、処方に関係する状況によっても示される。最近の研究(Tonix Pharmaceuticals Holding Corp. (TNXP) FORM 8-K | Current report Dec 8 2016. UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION Washington, D.C. 20549 Pursuant to Section 13 or 15(d) of the Securities Exchange Act of 1934)により、米国では、PTSD処置に対してSSRIクラスのみがFDAによる承認を受けている一方で、処方される主要なクラスの薬物は、SSRIの53%と比較して、患者の55%でベンゾジアゼピンクラスであることが示された。
EP0216555A2 EP2175873 US2010081723A1 US2014/057988A1 WO2014/191424 米国特許2016030391A1 EP2905021A1 WO2014191424A1 JP2007148435
Shalev, Am. J. Psychiatry 155,5、630〜637頁、1998年5月 Thesis A. Dubois 2015年 Universite de Bordeaux Guidelines for the pharmacological treatment of anxiety disorders, obsessive - compulsive disorder and posttraumatic stress disorder in primary care, B. Bandelow, International Journal of Psychiatry in Clinical Practice、2012年; 16: 77〜84 P Carlier、Annales medico-psychologiques 166、2008年、747〜754 M. Teigell-Webb、EPHP論文 R.E. Adamek et al., Physiology & Behavior、65巻、Nos. 4/5、723〜737頁、1999年 Arthur L. Womble, AANA Journal 2013年4月81巻、No. 2 Neuropsychopharmacology(2017年)のC. Dennyら、1〜13. G. Sani、総説論文CNS Drugs 2012; 26 (8): 663〜690 NR Swerdlow、Neuropsychopharma.、2009年、34、1854〜1864 F. Ducrocq, L'Encephale、2005年; 31: 212〜26 Cahill L.、Nature 1994年; 371: 702〜4 Famularo R、Am J Dis Child 1990年; 142: 1244〜7 Tonix Pharmaceuticals Holding Corp. (TNXP) FORM 8-K | Current report Dec 8 2016. UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION Washington, D.C. 20549 Pursuant to Section 13 or 15(d) of the Securities Exchange Act of 1934 http://psychobiologierouen.free.fr/?page_id=40、M Royによるコース「Animal models of anxiety disorders」 L. Prut, European Journal of Pharmacology 463 (2003年) 3〜33 M Bourin, European Journal of Pharmacology 463 (2003年) 55〜65 F. Borsini, Psychopharmacology (1988) 94:147〜160 Kaouane N. Science 335, 1510 (2012年) Zovkic, Neuropsychopharmacology REVIEWS (2013年)38、77〜93
本出願人らは、PTSD処置の効率的な解決手段に対する必要性に直面し、したがって、構造的にはメマンチンに由来するが、フッ素原子の導入によって生じる非常に異なる双極子モーメントを有する分子を使用して、うつ病に関連するか否かを問わずに不安を処置する方法を想定した。PTSDの特定の場合、本出願人らは、驚くべきことに、該分子が防御として、すなわち外傷性事象と同時に投与されることによって、及び後処置又は更には遅延処置の両方で作用し得ることを発見した。本出願人らは更に、該分子が先行技術、又は研究中の提案される処置の多くの望ましくない副作用を示さなかったことを決定した。
したがって、本発明の第1の目的は、患者の不安障害の処置又は予防に使用するための、式(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を提案することである。
本発明による使用のための化合物(I)は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
「統合失調症誘導作用を欠く」という用語は、化合物(I)が、不安障害の処置又は予防のための用量で、統合失調症又は統合失調症的妄想、偏執性妄想、幻覚、注意欠陥障害、退薬症状、思考散乱若しくは解体症状等の、関連する症状を誘導しないことを意味する。
第2の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される塩が、式(II)
(式中、X-は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸(camphosulfonate)イオン、酒石酸イオン、ジベンゾエートイオン、アスコルビン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、サリチル酸イオン、シュウ酸イオン、ブロモハイドレート(bromohydrate)イオン及びトシル酸イオンからなる群から選択される対アニオンを示す)
に対応することを特徴とする、第1の実施形態に記載の使用のための化合物に関する。
更に、本発明の第3の目的は、不安障害がうつ病に関連することを特徴とする、実施形態1又は2の1つに記載の使用のための化合物を提案することである。
化合物は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
本発明の第4の実施形態の目的は、観察される不安障害が不眠症に関連することを特徴とする、実施形態1又は2の1つに記載の使用のための化合物を提供することである。
本発明は更に、第5の実施形態において、不安障害が、外傷後ストレス障害(PTSD)、特定の恐怖症、社会恐怖症、全般性不安障害、広場恐怖症を伴う又は伴わないパニック障害及び強迫性障害からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1〜4の1つに記載の使用のための化合物に関する。
化合物は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
第6の実施形態では、本発明は更に、外傷後ストレスに関係する不安障害の出現を予防するための処置に使用されることを特徴とする、実施形態1〜5の1つに記載の使用のための化合物に関する。
化合物は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
PTSDに関係する不安障害の処置は、特に、フラッシュバック、回避、否定的認知及び気分、並びに応答性亢進からなる群から選択されるPTSDのDSM5基準のうちの少なくとも1つの任意の組合せの処置を含む。
フラッシュバックは特に、関連する悪夢を指す。否定的認知及び気分はうつ状態を指す。
本発明の実施形態によると、化合物(I)又は(II)は、1mg〜1000mgの化合物(I)又は(II)、例えば5〜250mg、例えば5〜100mg、好ましくは5〜30mgの化合物(I)又は(II)を含む用量で投与されうる。件の用量は、例えば、一日1〜4回、例えば1回、例えば2回、特に3回、又は更には4回投与されうる。
特定の実施形態によると、本発明による使用のための化合物(I)は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。第7の実施形態では、本発明は、処置が、外傷後ストレスを引き起こす外傷性事象と同時に化合物を投与することを含むことを特徴とする、実施形態6に記載の使用のための化合物に関する。
本発明の第8の実施形態は更に、処置が、外傷後ストレスを引き起こす外傷性事象の後に化合物を4〜18週間投与することを含むことを特徴とする、実施形態6に記載の使用のための化合物に関する。
化合物は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18週間投与されうる。
第9の実施形態は、不安障害が、外傷後ストレス、特に確立された外傷後ストレスに関係することを特徴とする、実施形態1〜5の1つに記載の使用のための化合物を提供する。
化合物は、統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
第10の実施形態では、本発明は、不安障害を呈する患者が、行動療法及び薬理学的抗うつ処置から選択される抗うつ療法に従うことを特徴とする、実施形態9に記載の使用のための化合物に関する。
薬理学的抗うつ処置は、うつ病の処置のために公知の少なくとも1つの化学的分子の投与を意味する。これらには、フルオキセチン、ボルチオキセチン、フルボキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、デュロキセチン、ミルナシプラン、ベンラファキシン、インダルピン、ジメリジン、ダポキセチン等のセロトニン再取り込み阻害剤が含まれる。
第11の実施形態では、本発明は、患者がプロプラノロールに基づく処置を受けていることを特徴とする、実施形態10に記載の使用のための化合物に関する。
第12の実施形態によると、本発明は、不安障害が急性不安発作及びエピソードを伴うことを特徴とする、実施形態1〜11の1つに記載の使用のための化合物に関する。
本発明は更に、第13の実施形態で、以下の成分:式(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む成分(A)、プロプラノロール及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む成分(B)を含む、特に、同時、別個又は逐次使用のための組合せ製品に関する。
本発明による製品の特定の実施形態によると、製品は統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
本発明の第14の実施形態は、以下の成分:式(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む成分(A)、抗うつ薬、特に、実施形態10に記載のセロトニン再取り込み阻害剤のうちの1つを含む成分(C)を含む組合せ製品であって、成分(A)及び(C)のそれぞれが少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化される製品を提供する。
本発明による製品の特定の実施形態によると、製品は統合失調症誘導作用を欠くことを特徴とする。
第15の実施形態では、本発明は更に、薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されるケタミンを含む成分(D)を組合せで更に含む、実施形態13に記載の製品に関する。
第16の実施形態では、本発明は更に、薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されるケタミンを含む成分(D)を組合せで更に含む、実施形態14に記載の製品に関する。
第17の実施形態では、本発明は更に、成分(A)及び(B)が同時、別個又は逐次投与に適応される、実施形態13に記載の製品に関する。
第18の実施形態では、本発明は、成分(A)及び(C)が同時、別個又は逐次投与に適応される、実施形態14に記載の製品に関する。
第19の実施形態では、本発明は、成分(A)、(B)及び(D)が同時、別個又は逐次投与に適応される、実施形態15に記載の製品に関する。
第20の実施形態によると、本発明は、成分(A)、(C)及び(D)が同時、別個又は逐次投与に適応される、実施形態16に記載の製品に関する。
第21の実施形態では、本発明は、患者の不安障害の予防又は処置に使用するための、実施形態13〜20の1つに記載の製品に関する。
第22の実施形態によると、本発明は、患者が認知行動療法を受けていることを特徴とする、実施形態21に記載の使用のための製品に関する。
第23の実施形態によると、本発明は更に、不安障害の処置が認知行動療法に続くことを特徴とする、実施形態22に記載の使用のための製品に関する。
第24の実施形態では、本発明は、特に小児期に虐待を繰り返し被った患者の不安障害の予防又は処置に使用するための、実施形態13又は17に記載の製品に関する。
第25の実施形態によると、本発明は、前記患者が認知行動療法を受けていることを特徴とする、実施形態24に記載の使用のための製品を提供する。
第26の実施形態によると、本発明は更に、成分(A)及び(B)が時間的に別個に、且つ認知行動療法の後に使用されることを特徴とする、実施形態25に記載の使用のための製品に関する。
図1は、実施例5の試験の内容を示す表である。
実際、本出願人は最近、NMDA受容体に対する親和性が改善された、メマンチンの極性化誘導体である2-フルオロエチルノルメマンチン(FENM)(式Iを参照されたい)を発見した(特許WO2014191424A1)。
分子(I)は、式(II)
(式中、X-は生物学的媒体に由来する、又は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酒石酸イオン、ジベンゾエートイオン、アスコルビン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、サリチル酸イオン、シュウ酸イオン、臭化水素酸イオン及びトシル酸イオンから選択される対アニオンを示す)のプロトン化形態と平衡状態にありうる。したがって、式(II)の製品は、式(I)の製品の薬学的に許容される塩である。
例えば、対アニオンが塩化物イオンであるフルオロエチルノルメマンチンの特に好ましい許容される薬学的な塩、すなわちFENM-HClに留意されたい。
バイオマーカーとしてのNMDAの開発中に実施された研究試験では、この分子は、NMDA受容体のチャネルが「開口」状態であるときにNMDA受容体のPCP(フェンシクリジン)部位に効率的に結合し、それにより特に細胞へのCa2+の過剰な流入を防ぐことが示された。興味深いことに、この親和性の増強はNMDA受容体への強い結合によるものではなく、受容体が位置する脳の領域への分子の高い特異性、及びその領域での長い滞留時間によるものである。実際に、生体標識の効率を示すNMDAとモノクローナル抗体との間に存在する相関は、ケタミンが注射されると失われる。更に、これらの予備試験により、血液脳関門の迅速な通過が示された。
驚くべきことに、本出願人は、化合物(I)(又はその塩、特にFENM-HCl)がうつ病に関連するか否かを問わず、不安の処置に使用されうることを示した。PTSDの特定の場合、驚くべきことに、本出願人は、化合物(I)又は薬学的に許容されるその塩が、防御的に、つまり外傷性事象と同時に投与されることにより、及び後処置又は更には遅延処置の両方で作用しうることを発見した。本出願人は更に、この分子が、従来技術又は試験中の提案される処置の多くの望ましくない副作用を示さなかったことを決定した。
本出願人はまた、本明細書に記載される製品(I)の抗不安活性を示した(明暗箱試験及び光勾配)。対照的に、同じ条件下で、メマンチンは抗不安活性を有さないことが示された。
本明細書に記載される製品(I)は非常に顕著な抗不安活性を有しており、NMDA受容体とのその親和性(Kiで測定)は、メマンチンのものと同じ桁である。
げっ歯類の光への生得的な嫌悪に基づく明暗箱試験では、照明区画で費やされる時間の増加が不安レベルの低下を反映するとみなされ、不安レベルの低下は、本発明による製品(I)で処置されるげっ歯類について見出される。メマンチンでは作用が見出されないため、メマンチンは抗不安作用を有さないことが結論付けられ、確認される。
更に、本発明者らは、感覚フィルタリング試験を通して、メマンチンとは異なり、製品(I)は、統合失調症誘導作用を誘導しないことも示した。
このこと、つまり統合失調症誘導作用を誘導することなく、うつ病に関連するか否かを問わずに不安を処置することは、製品(I)の重要な特色である。
本発明の文脈では、「外傷性事象と同時の投与」という表現は、化合物(I)が、外傷性事象の48時間前から外傷性事象の72時間後の範囲の時間枠内で投与されることを意味する。この「外傷性事象と同時の投与」はまた、外傷性事象の48時間前〜外傷性事象の48時間後、又は外傷性事象の48時間前〜24時間後、又は外傷性事象の24時間前〜24時間後、又は外傷性事象の24時間前〜48時間後、又は外傷性事象の24時間前〜72時間後でありうる。いずれの場合でも、より効率的な防御を達成するために、同時投与は4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18週間にわたって延長されてもよい。
したがって、本発明の第1の目的は、特に式(I)の化合物又は式(II)の薬学的に許容される塩を投与することによって、うつ病に関連するか否かを問わず、不安障害を患う患者を処置するための方法を提供することである。特に、方法は統合失調症誘導作用を誘導しない。
本発明は、うつ病に関連するか否かを問わず、不安障害の処置のための医薬の製造における、式(I)の化合物又は式(II)の薬学的に許容される塩の使用を目的とする。
以下の例に記載される通り、式(I)の化合物の抗不安活性及びおそらく抗うつ活性は、適切な動物パラダイムを使用することによって評価されうる。
したがって、明暗箱の実験パラダイムによって、本出願人は、本発明による式(I)又は(II)の化合物は、暗区画での存在時間を増加させるメマンチンとは対照的に、顕著な抗不安特性を有し、この特性は10mg/kgの投与量で最初の注射から得られることを発見した。比較として、フルオキセチン等の分子は、5mg/kgの用量でそのような抗不安活性を有するが、処置から7日後である。
この発見は、光勾配の存在下でオープンフィールド試験を実施することによって検証された。この条件下で、本発明による化合物は、特に10mg/kgの用量で、曝露期のげっ歯類によるフィールドの最も明るいエリアの回避を顕著に制限する、又は更にはそれを完全に打ち消す。
同様に、強制水泳試験を通して、本出願人は、本発明による化合物が、メマンチン又はケタミンで処置した場合と同様にラットの不動時間を顕著に減少させることを発見した。このことは、これらの分子及び化合物の抗うつ作用を反映する。
本出願人は更に、本発明による化合物を消去期及び安定化期を含む恐怖条件付け試験に使用することにより、うつ病に関連するか否かを問わず、不安障害の処置におけるそれらの驚くべき利点を確認した。一般的にPTSD処置の有効性を試験するために使用されるこのパラダイムは、本発明による化合物が、驚くべき態様で、特に10mg/kg及び20mg/kgの用量で、より詳細には化合物が条件付け期と同時に投与される場合に、安定化期に患者が障害を持続しないよう防御できることを示す。同じ試験において、プロプラノロールについては作用が観察されなかった。FENMについて観察された作用は、条件付けの1週間前にはるかに高量で注射されたケタミンについてC.Dennyによって観察された作用以上である。更に驚くべきことに、本出願人は、本発明による化合物が安定化期前、すなわちPTSD症状の固定化中に投与された場合、強度において、より詳細には同用量で、同様の有益な作用が観察されうることを認めた。同じ試験で、プロプラノロールについては作用が観察されなかった。
最後に、本発明による化合物は、特に消去期に投与される場合、より詳細には20mg/kgの用量で、障害の持続を消失させるのにも有効である。この試験で、プロプラノロールは消去期にテタニーを低減させるが、この有益な作用は安定化期で喪失する。
また、メマンチンについては、消去期に投与されると安定化期で顕著な反跳作用が観察されることに留意すべきである。この作用は、メマンチンとFENMでは作用機構が異なることを示すだけでなく、メマンチンがPTSDの処置に有効でないことが臨床的に観察されたことと一致する。
更に本出願人は、本発明による化合物では、その有益な作用が見出された場合でもプレインパルス効果の阻害作用が記録されなかったのに対し、メマンチンは阻害作用をもたらすことを観察した。この統合失調症誘導作用に関する限り、他に提案される分子(一般的にベンゾジアゼピン、特にジアゼパム、更にケタミンを含む)のほとんどについて観察されるため、この統合失調症誘導作用の非存在は、うつ病に関連するか否かを問わず、不安に対する新規処置の開発にとって非常に好ましい。
本発明による化合物は、抗不安又は抗うつ作用を得るために種々の方法で投与されうる。本発明による化合物は、単独で又は医薬調製物の形態で、経口的又は非経口的(皮下又は静脈内等)のいずれかで、処置される患者に投与されてもよい。
投与される化合物の量は変動してもよく、抗不安及び/又は抗うつ作用をもたらす任意の量であってもよい。患者及び投与方法に応じて、投与される化合物の量は、用量あたり0.01mg/kg〜20mg/kg、好ましくは0.05mg/kg〜15mg/kg(患者の体重)の広範囲にわたって変動しうる。
本発明による化合物の単位用量は、例えば、5mg〜1000mg、好ましくは5〜30mgを含んでもよく、例えば、一日1〜4回投与されてもよい。
本発明は、うつ病に関連するか否かを問わず、不安障害を処置するための医薬又は認知行動療法の方法と関連した、本発明による化合物から製剤化される薬用製品の使用に関する。
本発明の目的では、「認知行動療法」又はCBTは、精神障害(特に嗜癖、精神病、うつ病及び不安障害)のための一連の処置を含む認知行動心理療法を意味し、一連の処置は、治療法が科学的心理学に由来する知識に基づくための基準となるアプローチを共有する。CBTは、比較的標準化されたプロトコールに従う。CBTは多くの場合、治療中の患者の進捗を評価する。CBTは、エビデンスに基づく医学のアプローチを容認する。CBTの特殊性は、CBTが、行動から観察可能な症状を中心とする実践的な訓練を通して、並びに、意識的かそうでないかを問わず、感情及び患者の障害の起源とみなされる、認知過程としても公知の心理過程に介入することを目的とする治療専門家の付き添いを通して、患者の「今、ここ」における困難に対処することである。その実践の標準化に起因して、科学的アプローチの要件の1つである再現性を通したCBTの有効性が認識されている。CBTは特に、不安障害(特に恐怖症)及び嗜癖に適応される。
特に、本出願人は、PTSDを処置するために、ケタミンの予防的投与と、外傷性曝露後の本発明による化合物を含む薬物の投与の併用を行うことを提案する。同様に、本出願人は、特に小児期に虐待を被った患者が呈する不安障害を処置するために、PTSDの初期処置期間中の認知療法と合わせたプロプラノロールの投与と、休薬期中の本発明による化合物を含む薬用製品を用いた処置の併用を行うことを提案する。
動物モデル:
疾患を処置するための薬物の開発は、多くの場合、ヒトへの試験前に薬物の効能及び毒性を試験するため、動物モデルを使用する。
動物モデルは、以下の3つの基準:予測妥当性、症状の類似性及び構成的妥当性を満たす場合に妥当とみなされる。当然ながら、これらの動物モデルから得られる結果は実験者に依存するべきではなく、自動条件付け及び観察手段の使用の開発が盛んである(光電セル、ビデオ追跡の使用等)。
不安のための動物モデルの使用
動物モデルは不安の分野で長年にわたって使用されており、新規の観察技術が開発されるにつれ、また妥当性のバイアスが観察されるにつれ改良されてきた(例えば、http://psychobiologierouen.free.fr/?page_id=40でオンラインで入手可能のM Royによるコース「Animal models of anxiety disorders」を参照されたい)。ほとんどの動物モデルはげっ歯類を用いて開発される。
不安の場合、複数の動物モデルを単に新規環境に曝露すること、又は事前に強化した状況に供すことのいずれかを行って動物を危険な状況に供すことにより、不安を誘導し測定することが可能である。これらの動物モデルは特に、ヒトの応答を予測するそれらの特性を検証することによって妥当性が検証されている。
したがって、不安の状態を試験するために、複数の動物モデルが一般的に使用され、多くの試験によって妥当性が検証されている:
- オープンフィールド試験:この試験は、動物(ラット又はマウス)を新規環境に強制的に曝露し、その行動を観察することから構成される。動物は通常、動物がその存在を知らないグリッド床を備えたケージ又は箱に置かれる。次に、グリッド線を越えた数、退避頻度、進入回数、及び中央区域で費やした時間を記録することにより、歩行活動及び行動を評価する。この動物モデルは、新規環境に適応した場合に「正常な」不安の良好なモデルとみなされる。この動物モデルは、処置に対するヒトの応答の予測可能性が良好である(L. Prut, European Journal of Pharmacology 463 (2003年) 3〜33)。また、オープンフィールド試験は、動物の運動活動及びしたがって覚醒状態のモニタリングが可能であるため、長時間行われる(行動記録時間が2時間を超える)と有用である一方、短時間での測定は不安に関する情報をもたらす。
- 明暗箱試験:不安の別の動物モデルは、解放された空間に対する嫌悪性、並びに抗不安物質の影響下での、明区画及び暗区画での探索活動の比較に基づく(M Bourin, European Journal of Pharmacology 463 (2003年) 55〜65)。このパラダイムは、げっ歯類の明るい場所に対する生得的な嫌悪、及びげっ歯類のストレスの多い環境(新規環境又は光)に応答した自発的な探索行動に基づく。試験デバイスは、1つは小さく暗く安全な区画、もう1つは大きく明るくストレスの多い区画の2つの区画に分けられる。このパラダイムにより、マウスにおける抗不安又は不安惹起薬物様活性の予測が可能になる。それぞれの区画の間の通路は探索活動の合図であり、それぞれの区画における滞在時間は嫌悪を反映する。ヒトに有効な抗不安薬、古典薬(ベンゾジアゼピン)及びより最近の抗不安化合物(セロトニン作動薬又は神経ペプチド受容体に作用する薬物)がこの動物モデルで検出可能であり、これは単純で迅速に使用可能であるという利点を有する。
光勾配を伴うオープンフィールド試験:上記2種のモデルを適切に組み合わせて、暗区画の存在によって誘導される「隠れ場」効果を消失させることにより、分子の抗不安薬としての潜在性を確かめることができる。
うつ病のための動物モデルの使用
- 強制水泳試験:
本試験は、抗うつ薬の活性を試験するためにラット又はマウスを用いて何年もの間使用されており(F. Borsini, Psychopharmacology (1988) 94:147〜160)、動物を室温の水で満たした水槽に入れることからなる。15分(前試験セッション)後、動物を水から取り出して乾燥させる。24時間後、動物を再び以前の条件に曝露し、5分間の間の総不動時間を記録する(試験セッション)。動物は、水から頭を出した状態を保つのに必要な動きのみ行う場合、不動とされる。この不動は明瞭な動きが少ないマウスよりラットで評価する方が容易である。当初、動物が2回目の浸水時にいっそう不動であることは、動物が、前試験中に脱出できないことを学習したことの指標であると思われた。したがって、この不動は動物による確かな「絶望」の徴候であると思われた。この不動の増加は他の理由(既に知っている状況に適応した応答等)によって説明がつくため、この解釈は現在ではより微妙に異なるものの、本試験は依然としてうつ病の主要なパラダイムのうちの1つであり、薬物の抗うつ活性について非常に良好な結果をもたらす。
PTSDのための動物モデルの使用
多数の研究グループ(例えば、INSERMのPier-Vincenzo Piazza及びAline Desmedt)によって、PTSDに関連する記憶困難はヒトに特異的なものではなく、げっ歯類に見出されることが示されている(例えば、Kaouane N. Science 335, 1510 (2012年)を参照されたい)。
したがって、動物モデルはPTSDの発症機構を理解するために(Zovkic, Neuropsychopharmacology REVIEWS (2013年)38、77〜93)、又はPTSDの潜在的な処置を試験するために(例えば特許JP2007148435)通常使用される。
PTSDに特徴的な強烈で反復的な恐怖症状を誘導する外傷性事象を模倣するために、複数の動物モデルが開発されている。
動物のパブロフ型恐怖条件付け:
この動物モデルは、パブロフ型恐怖条件付け(Zovkic, Neuropsychopharmacology Reviews (2013年) 38、77〜93)から構成される:マウス(又はラット)を、危険(電気ショック等)への曝露を、特定の合図又は環境(例えば音の合図)の存在と関連付けるように訓練する。その後、動物を、実際の危険を伴わずに条件付け合図に再曝露したときのテタニー行動(恐怖による)を測定することにより、この関連付け(危険-合図)の記憶を試験する。
恐怖条件付けは、PTSDのモデルとして多くの利点を有する。第一に、げっ歯類はPTSD患者と同様に外傷性事象に供され、この事象の記憶は長期間持続する。第二に、外傷性事象の再経験又はPTSDの典型的な回避は、外傷性事象それ自体(電気ショック)への実際の再曝露を要さずに、げっ歯類を音の合図又は危機に関連する状況に曝露することによってモデル化することができる。更に、PTSD患者で観察される神経系の過剰活性は、外傷を想起させる音に応答して生じるバーストの振幅及び発生を比較することによって評価可能である。最後に、PTSDの研究は、関与する脳領域には扁桃体、海馬及び前頭前皮質が含まれ、これらの領域は動物の恐怖条件付けにも関与することを示している。
したがって、この動物モデルによって、テタニー行動が増加するか、減少するか、又は抑制されるかを単純に観察することにより、様々な実験変数の影響又は病的な恐怖記憶に対する様々な処置を試験することが可能である。このため、電気ショックの強度を減少させること、並びにそれを恐怖記憶の持続性及び強さに関連付けることを試みることにより、外傷性事象の重症度を増大又は減少させることができる。
他の動物モデルもまた、接触(臭い、動物それ自体への曝露等)の程度が変動する1種又は複数の捕食動物への曝露等のPTSDパラダイムとして一般的に使用される。
ここでもまた、PTSD症状の発生は、PTSD病態の長期発症をシミュレートするために、危機への曝露を伴わずに一定期間の後で評価される。
恐怖消去:
上記の恐怖条件付けの後、恐怖を消滅させるためのプロトコールを適用することが重要である場合がある。典型的には、この期間は条件付けの24時間後に設けられる。
これを行うために、条件付けした動物を、条件付け合図(音)によって危険(電気ショック)の発生がもはや予測されなくなるように訓練する。
消去は以前の恐怖に対する学習を打ち消すように見えることもあるが、記憶の抹消又は明確な忘却と同等ではなく、これは、一方では、テタニーは消去期によって完全に消失するわけではなく、他方では刺激に対する応答は自発的に、又はショックに続いて再出現しうるためである。消去プロトコールは、合図(音)に対する正常(恐怖に動機付けられていない)応答の再学習をモデル化するものであり、PTSDのモデル化において非常に有用である。
恐怖の安定化:
処置の実績を評価するために、消去期の後に24時間あけて安定化期を加えることが有用でありうる。典型的に、この期間では動物を消去期条件に戻す。これにより、処置の時間差実績だけでなく、テタニーの再発(反跳作用)の検出も可能になる。
更に、「固定化された」PTSD、すなわち心理的外傷に曝露され(1回又は長期間)、従来の方法で処置された(又はされなかった)個体が、この外傷の残存障害を呈す状況をモデル化することが可能になる。
統合失調症障害の発症のための動物モデルの使用
プレパルス抑制(PPI)試験
中枢神経系を標的とする処置の主要な問題の1つは、依然として、処置の治療利益さえも上回る大きな損害を与える心理的副作用の出現を伴わずに所望の効果を達成することである。これらの作用は多くの場合顕著であるか(ベンゾジアゼピンの反跳作用)、又は更には逆説的である(短期セロトニン再取り込み阻害剤の不安誘発作用)。特に、これらの作用は感覚フィルタリングの不安定化を誘導し、統合失調症に類似した症状を引き起こしうる。
プレインパルス抑制試験は、適度な強度の刺激に適応して、高強度の同じ刺激の影響を制限する脳の能力に基づくものである。この試験では、動物を防音ケージに入れ、120デシベル(dB)の音パルス、又は約100ミリ秒の間隔をあけた2回のパルスであって、2回目のパルスが120dBの強度に固定され、1回目のパルスの強度が70〜85dBで変動する2回のパルスのシーケンスのいずれかに供す。
正常な動物では、1回目の音インパルスは最大の音によって引き起こされる驚愕を部分的に抑制するよう働く。統合失調症性の特質の精神障害を有する動物では、この抑制は多かれ少なかれ消失する。
げっ歯類を用いたPPI試験は、統合失調症性障害及び医薬処置(PCP、ベンゾジアゼピン、ケタミン)の有害作用が検出されうるヒトで再現可能である限り、有力な試験である。
以下の例では、メマンチン、プロプラノロール及びフルオロエチルノルメマンチン(FENM、本発明の主題)の作用を、うつ病又は不安に関係する種々の試験に供される未処置のラット(Wistar)を用いて試験し、比較する。
試験物質は、行動試験実施の30分前に、5ml/kgの容量でラットに腹腔内投与する。
注射される溶液は、分子のいずれかを、窒素誘導体についてはそれらの塩の1種である塩酸塩(メマンチンHCl及びFENM-HCl)の形態で、プロプラノロールについてはそれ自体で、95%(NaCl 0.9%w/w水溶液)/5%エタノールの混合物中の以下に示される濃度で含んだ。各実験で、キログラムあたりの用量を参照する。
このようにして、動物に(体重差が最も近い方で)5ml/kg、又はラット300gにつき1.5mlに等しい一定容量の溶液を投与する。
各パラダイム及び各試験溶液について、12匹のラットを注射及び行動試験に供す。対照溶液は生理食塩水である。
(実施例1)
不安処置及び歩行活動
オープンフィールド試験:
動物の歩行活動及び未知の環境の発見に関連する「正常な」不安を、試験溶液の注射から30分後に、オープンフィールドでビデオモニタリングシステムを使用して2時間測定する。5分毎に読み取る記録データには、中央区域における滞在時間、垂直活動及び転位の数が含まれる。
下のTables 1〜3(表1〜3)は、メマンチン及び対照の生理食塩水と比較したFENM-HClの作用を報告する。
種々の測定値の結果により、FENM-HClは、高用量であってもメマンチンについて観察される眠気作用を引き起こさず、メマンチンは、動物の活動レベルを全体的に減少させ、フィールド中心での存在時間を向上させないことが示される。この作用は、2時間にわたる実験期間で特に著しい。
(実施例2)
不安処置(明暗箱パラダイム)
本実施例では、明暗箱試験を使用した。本試験はげっ歯類の光に対する生得的な嫌悪に基づくため、照明区間における滞在時間の増加が不安レベルの低下を反映するとみなされる。
本試験に使用される箱は、高出力照明を備える白区画(600lux)と、蓋を備える黒区画(約5lux)に分けられる。照射区画(不安ゾーン)における進入回数及び滞在時間を、ビデオモニタリングシステムによって10分間記録する。更に、このシステムは0〜5分の期間と5〜10分の期間を区別することが可能である。
Table 4(表4)は、様々な用量のFENM-HClについて、照明区画での存在時間をメマンチン及び対照の生理食塩水と比較して示す。
結果は、10mg/kgのFENM溶液で処置された動物では、箱の照明区画における滞在時間が対照と比較して大きく有意に増加する(スチューデントt検定p<0.01)が、メマンチンでは作用が観察されなかったことを示す。この結果は、本発明による化合物が抗不安作用を有すること、及びメマンチンと比較すると作用機序及び作用が異なることを示す。
このことは実際、メマンチンが抗不安作用を有さないことを示す。
(実施例3)
不安の処置(光勾配フィールドパラダイム)
本実施例では、箱の区画化を排除し、高強度の光勾配(600lux)を使用することにより、明暗箱試験を改変した。本試験はげっ歯類の光に対する生得的な嫌悪に基づくため、光源に最も近いエリアにおける滞在時間の増加が不安レベルの低下を反映するとみなされる。
動物を、暗闇(5luxの周囲光)で4分、光勾配の存在下で4分、及び再び暗闇で4分の3部に分かれた12分のシーケンスに曝露する。オープンフィールド試験と同様に転位を記録する。観察フィールドを、光源からの距離の増加に応じて1〜4に番号付けした4つのゾーンに分割する。
下のTable 5(表5)は、対照溶液と比較した様々な用量のFENM-HClの作用を示す。
結果は、FENM-HClで処置された動物について、動物による最も強く照明されたエリアの回避が顕著に低減することを示し、不安の全体的な減少が表される。10mg/kgの用量の場合、不安作用が完全に消失し、動物は、光源に近いエリアで、光の存在下と非存在下で同じ長さの時間を費やした。
更に、この不安を打ち消す又は低減させる作用は、動物の行動に対して、特に動物が動き回る能力に対して他の既知の作用を有さないことが見出される。
(実施例4)
うつ病の処置(強制水泳)
強制水泳試験では、ラット(グループあたり12匹)を、23℃の水で満たした水槽で強制的に泳がせる(1日目は環境条件に馴化させるために10分、2日目は6分)。
ラットの行動(泳ぐのを止める、活動を減少させる)を、ビデオモニタリングシステムで定量化する。
試験される治療溶液を、2日目の実験30分前に投与する。あきらめた動物とは、(a)より長い不動時間を示す、及び(b)精力的に(必死に)ビーカーから脱出しようとするのに費やす時間がより少ない、すなわち「うつ病」型行動を示す動物である。
下のTable 6(表6)は、メマンチン及び対照の生理食塩水と比較した、これら2つのパラメータに対して様々な用量のFENM-HClで観察された作用を報告する。
結果は、不動時間の非常に有意な(p<0.001)減少及び必死にさせる作用の顕著な増大を示し、メマンチンと本発明による化合物(FENM)の抗うつ作用が同等であることを示す。この作用はすべての用量レベルで観察され、10mg/kgで特に著しい。
(実施例5)
PTSDの処置(恐怖条件付け+消去+安定化)
合図(音)に対する正常(恐怖に動機付けされていない)応答の再学習をモデル化する消去プロトコールは、PTSDのモデル化において非常に有用である。
本出願人は、合図(中立的な条件刺激)を音とし、それと結び付く危険(嫌悪的な非条件刺激)を箱の床から与えられる電気ショックとする恐怖条件付け試験を使用した。この条件付けの後に試験される処置溶液の注射を伴う恐怖消去期、その後試験期それ自体が続く。
恐怖条件付け期(FC):恐怖条件付けは、標準的な条件付け箱(Table 7(図1)の状況A、白箱)で行い、ラット(グループあたり8匹)を、箱に置いてから180秒、381秒及び582秒後の時間の3回の「音-電気ショック」ペアに供す。各音は20秒続き、各電気ショックは1mAの電流で1秒続く。
恐怖消去期(Ext.)は以下の通り行う: 25分のセッションの間、ラットを最終試験で使用されるものと同様の箱(Table 7(図1)の状況B、ピンク箱)に入れる。このセッションの間、条件付けセッション中に使用したものと同じ音を24回提示する(各20秒、35秒間隔)。当然ながら電気ショックは与えず、この期間中のテタニー(「すくみ行動」)の時間のパーセンテージを記録する。
安定化期:消去期の翌日、試験期の30分前にラットに生理食塩水を注射し、3回の音のシーケンス(条件付けに使用したものと同じシーケンス)に供すことにより、状況Bでの恐怖応答を試験し、この試験期中に静止したままでいる時間のパーセンテージを記録する。
下のTable 8(表8)は、3つの処置条件:
・防御作用 - 条件付け期の30分前に1回の注射
・早期処置 - 消去期の30分前に1回の注射
・後期処置 - 安定化期の30分前に1回の注射
下でプロプラノロール及び対照の生理食塩水と比較した様々な用量のFENM-HClについて、安定化期中に動物が不動であった時間のパーセンテージに対する作用を報告する。
これらの結果は、FENMが、条件付けの時点で、及び早期又は後期外傷後処置中に投与された場合の両方で、安定化期においてテタニー現象を事実上消失させる(p<0.001)潜在性を有することを示す。プロプラノロールは安定化期で対照と差がない一方で消去現象は向上させており、これは、休薬後反跳に対して文献で公開されたデータと一致する。
更に、メマンチンが消去期に10mg/kgで投与される場合、安定化期に顕著な反跳作用(テタニーの増加)が観察される(対照と比較して+25%)ことに留意されたい。
(実施例6)
「感覚フィルタリング」の妨害の欠如(PPI試験)。
プレインパルス抑制試験は、適度な強度の刺激に適応して、高強度の同じ刺激の影響を制限する脳の能力に基づくものである。この試験では、動物(グループあたり12匹)を防音ケージに入れ、120デシベル(dB)の音パルス、又は約100ミリ秒の間隔をあけた2回のパルスであって、2回目のパルスが120dBの強度に固定され、1回目のパルスの強度が70〜85dBで変動する2回のパルスのシーケンスのいずれかに供す。
正常な動物では、1回目の音インパルスは最大の音によって引き起こされる驚愕を部分的に抑制するよう働く。統合失調症性の特質の精神障害を有する動物では、この抑制は多かれ少なかれ消失する。
下のTable 9(表9)は、メマンチン又は対照の生理食塩水と比較した、様々な用量のFENM-HClの存在下でこれら2つのパラメータに対して観察された作用を報告する。
これらの結果は、10mg/kgのメマンチンがPPI阻害作用を誘導する(p<0.01、この化合物について文献で報告された作用と同等の作用)一方で、FENMは高用量(20mg/kg)であっても作用を誘導しないことを示す。これは、メマンチンは、統合失調症を引き起こす望ましくない作用を有するが、FENMは統合失調症を引き起こす望ましくない作用を有さないことを意味する。
本試験では、メマンチンの働き及び暗示的にFENMの働きの欠如により、メマンチンの統合失調症性副作用が示される。この作用は特に望ましくない。実際、この種の挙動は患者の苦痛の源であるだけでなく、不安を減少するよりむしろ増大させる不安誘起ストレスも生じさせるため望ましくない。

Claims (18)

  1. 患者の不安障害の処置又は予防に使用するための、式(I)
    の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
  2. 薬学的に許容される塩が、式(II)
    (式中、X-は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酒石酸イオン、ジベンゾエートイオン、アスコルビン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、サリチル酸イオン、シュウ酸イオン、ブロモハイドレートイオン及びトシル酸イオンからなる群から選択される対アニオンを示す)
    に対応することを特徴とする、請求項1に記載の使用のための化合物。
  3. 不安障害がうつ病に関連することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  4. 観察される不安障害が不眠症に関連することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  5. 不安障害が、外傷後ストレス障害(PTSD)、特定の恐怖症、社会恐怖症、全般性不安障害、広場恐怖症を伴う又は伴わないパニック障害及び強迫性障害からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  6. 外傷後ストレスに関係する不安障害の出現を予防するための処置に使用されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  7. 不安障害が、外傷後ストレス、特に確立された外傷後ストレスに関係することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  8. 不安障害が急性不安発作及びエピソードを伴うことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  9. 以下の成分:式(I)
    の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む成分(A)、プロプラノロール及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む成分(B)を含む、特に同時、別個又は逐次使用のための組合せ製品。
  10. 以下の成分:式(I)
    の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む成分(A)、抗うつ薬を含む成分(C)を含む組合せ製品であって、成分(A)及び(C)のそれぞれが少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化される、組合せ製品。
  11. 薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されるケタミンを含む成分(D)を組合せで更に含む、請求項9に記載の製品。
  12. 薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されるケタミンを含む成分(D)を組合せで更に含む、請求項10に記載の製品。
  13. 成分(A)及び(B)が同時、別個又は逐次投与に適応される、請求項9に記載の製品。
  14. 成分(A)及び(C)が同時、別個又は逐次投与に適応される、請求項10に記載の製品。
  15. 成分(A)、(B)及び(D)が同時、別個又は逐次投与に適応される、請求項11に記載の製品。
  16. 成分(A)、(C)及び(D)が同時、別個又は逐次投与に適応される、請求項12に記載の製品。
  17. 患者の不安障害の予防又は処置に使用するための、請求項9から16のいずれか一項に記載の製品。
  18. 特に小児期に虐待を繰り返し被った患者の不安障害の予防又は処置に使用するための、請求項9又は13に記載の製品。
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