JP2021195484A - 中芯用塗料及び中芯原紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】中芯原紙を補強する中芯用塗料、及びその中芯用塗料が付与された、吸水性に優れた中芯原紙を提供する。【解決手段】水溶性高分子20と微細化セルロース繊維30を有し、前記微細化セルロース繊維30は、平均繊維長が0.2mm以下で、かつ平均繊維径が20μm以下であり、前記微細化セルロース繊維に占める、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維の百分率が50%以上であることを特徴とする中芯用塗料、及び当該中芯用塗料が塗布されている、ことを特徴とする中芯原紙。【選択図】図1
Description
本発明は、中芯用塗料及び中芯原紙に関するものである。
従来より、物品を梱包するための資材として、段ボールに代表される包装用紙が用いられている。この包装用紙は、例えば箱状に成形されて、物品を梱包したり、搬送したり、保管したりする等幅広い用途に用いられ、強度が求められる。包装用紙は、例えば、波型に加工された中芯原紙と、当該中芯原紙の片面又は両面が貼合されたライナーで形成され、所定の強度が備わったものとなっている。近年では、資材単価の高騰化や地球環境保護等に対処するため、薄くする等して原料の使用量を減らしたものでありながら十分な強度を有する包装用紙の需要が増加する傾向にある。
このような傾向の中、包装用紙の強度を向上することを目的として、強度のある塗料を中芯原紙に塗工し、所定の強度が備わった中芯原紙の研究開発がなされている。この研究開発においては塗料が塗工された中芯原紙は強度が向上するが、一方で吸水性が低下してしまう。吸水性が低下した中芯原紙には、貼合糊が浸透しづらいという問題があった。貼合糊が十分に浸透する中芯原紙であれば、ライナーと強固に貼り合わさって、剥がれにくいものとなるが、貼合糊の浸透が十分でない中芯原紙は、剥がれ易いものとなってしまう。
ここで、中芯原紙は、例えば、平面状の紙を波型に加工され、複数の段頂(波の頂点)からなる段頂群が形成されたものであり、波の高さ(振幅)を変えることによって、包装用紙は、所望の厚み、クッション性、強度等を備えたものとなる。波型に加工された中芯原紙の段頂群には、貼合糊が付与され、ライナーが貼合される。ライナーは、例えば、波型の形状ではなく、平面形状や曲面形状をしており、包装用紙の表面及び/又は裏面を構成するものである。包装用紙として、例えば、ライナーが複数枚、面相互が平行になるように間隔をあけて配され、この間隔に中芯原紙が配される形態を挙げることができ、この場合、ライナーは中芯原紙の段頂群で貼合されている。
特許文献1は、目標とする紙力(強度)を得るために多量の塗工剤が塗工されている場合であっても、貼合のために表面に付与される貼合糊は紙中へ容易に浸透することができる塗工紙を提供することを課題としている。そして、この課題は、原紙とその少なくとも一方の面に塗工された紙力剤とを含む、貼合する用途に用いられる塗工紙であって、前記紙力剤は、所定の水溶性高分子と、浸透剤と、を含む塗工紙により解決されるとしている。
しかしながら、当該文献の紙力剤は、アルキル基やフェノール基を有する化合物からなる浸透剤を用いており、この浸透剤を水溶性高分子と混合したとしても、時間が経つにつれ、浸透剤と水溶性高分子とが分離してしまうおそれがある。分離した紙力剤は、塗工したときに塗工ムラが発生してしまい、吸水性及び強度を中芯原紙に付与することが困難となる。
そこで本発明は、吸水性に優れ、中芯原紙を補強する中芯用塗料及びその中芯用塗料が付与された中芯原紙を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための態様を次記に示す。
(第1の態様)
水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有し、
前記微細化セルロース繊維は、平均繊維長が0.2mm以下で、かつ平均繊維径が20μm以下である、
ことを特徴とする中芯用塗料。
(第1の態様)
水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有し、
前記微細化セルロース繊維は、平均繊維長が0.2mm以下で、かつ平均繊維径が20μm以下である、
ことを特徴とする中芯用塗料。
微細化セルロース繊維は、それ自体が有する多数の水素結合点において相互に水素結合して、三次元ネットワークを形成し、優れた強度を発揮する。また、微細化セルロース繊維は、極性基を多数有し、極性を有する分散媒(例えば、水)とも水素結合するので、優れた吸水性を発揮する。水溶性高分子もまた、極性基を有するので直接に、又は水分子を介して微細化セルロース繊維と結合する。被塗布物がセルロース繊維からなる紙類である場合は、セルロース繊維に備わる極性基に水溶性高分子が容易に付着するものと考えられ、被塗布物と水溶性高分子は優れた付着力を発揮する。微細化セルロース繊維についても、所定の付着力をもって被塗布物に付着するものと考えられるが、一部は剥離することがある。しかしながら、微細化セルロース繊維は、水溶性高分子と混合されていれば、水溶性高分子が微細化セルロース繊維と被塗布物の付着を増大する働きをして、被塗布物から剥離しがたいものとなると推測される。
微細化セルロース繊維はセルロース繊維を解繊して微細化されたものである、ミクロフィブリル化セルロースや、それよりも微細なナノサイズレベルのセルロースナノファイバー等がある。セルロースナノファイバーの中でも、平均繊維径が100nm未満や10nm未満のサイズのものもある。
本態様は、このような微細化されたセルロース繊維の中でも、平均繊維長が0.2mm以下で、かつ平均繊維径が20μm以下のものを用いている。このサイズの微細化セルロース繊維を有する中芯用塗料は、水溶性高分子のみからなる中芯用塗料よりも高い吸水性を備え貼合糊の吸収性が高まる。この理由は定かではないが、おそらく、次のとおりに推測できる。
微細化セルロース繊維は、所定の形状をしており、三次元ネットワークを形成するので、水溶性高分子よりも乱雑に中芯用塗料中に分散している。中芯用塗料の塗布により被塗布物には、微細化セルロース繊維が乱雑に分散した状態で付着する。水溶性高分子は微細化セルロース繊維に誘導されて被塗布物に付着するので、中芯用塗料を塗布することにより形成される被膜は、局所的に厚み及び/又は濃度が異なったものとなる。薄い箇所や低濃度の箇所は、水溶性高分子の濃度が低いため、貼合糊を吸収しやすい。
(第2の態様)
前記微細化セルロース繊維に占める、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維の百分率が50%以上である、
第1の態様の中芯用塗料。
前記微細化セルロース繊維に占める、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維の百分率が50%以上である、
第1の態様の中芯用塗料。
パルプを解繊して微細化セルロース繊維を得る場合、解繊に先立って化学的な変性処理をすることができる(この変性処理については後述する)。化学的な変性処理がなされて得られた微細化セルロース繊維は、化学的な変性処理を行わずに解繊して得られた微細化セルロース繊維よりも平均繊維幅(径)が小さいもの、すなわちシングルナノサイズからなるものとなる。これに対して、化学的な変性処理を行わずに解繊して得られた微細化セルロース繊維は、平均繊維幅(径)がシングルナノサイズよりも大きいものとなる。
微細化セルロース繊維相互の結合によって形成される三次元ネットワークにおいては、微細化セルロース繊維による三次元ネットワークの骨格と、当該骨格で囲まれた空隙が形成される。微細化セルロース繊維がシングルナノサイズであれば、形成される空隙が相対的に狭く、シングルナノサイズよりも大きいサイズであれば、形成される空隙が相対的に広いものとなる。水溶性高分子は、微細化セルロース繊維に付着して誘導されるので、当該空隙では相対的に低濃度となる。空隙が広いほど水溶性高分子が低濃度となる領域が広くなるので、シングルナノサイズよりも大きいサイズの微細化セルロース繊維、すなわち化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維が多く含まれている中芯用塗料は、吸水度が高く、貼合糊の吸収性に優れる。
(第3の態様)
前記水溶性高分子は、ポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコールのうちから選択される1種又は2種以上からなるものである、
第1の態様又は第2の態様の中芯用塗料。
前記水溶性高分子は、ポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコールのうちから選択される1種又は2種以上からなるものである、
第1の態様又は第2の態様の中芯用塗料。
ポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコールは、紙力を増強する効果に優れ、また微細化セルロース繊維との親和性に優れる。
(第4の態様)
前記微細化セルロース繊維が固形分基準で10質量%〜50質量%含まれる、
第1の態様〜第3の態様のいずれかの態様の中芯用塗料。
前記微細化セルロース繊維が固形分基準で10質量%〜50質量%含まれる、
第1の態様〜第3の態様のいずれかの態様の中芯用塗料。
微細化セルロース繊維の濃度が高いと、中芯用塗料は、粘度が大きくなり、被塗布物に塗布し難いものとなり、また塗布するために用いる設備機器に付着する等して取り扱いし難いものとなる。同濃度が上記範囲であれば、中芯用塗料は、塗布し易く、設備機器への予期せぬ付着を回避できる。
(第5の態様)
第1〜第4の態様のいずれかの態様の中芯用塗料が塗布されている、
ことを特徴とする中芯原紙。
第1〜第4の態様のいずれかの態様の中芯用塗料が塗布されている、
ことを特徴とする中芯原紙。
吸水性及び強度に優れる中芯原紙となる。
(第6の態様)
前記中芯用塗料が塗布されてなる被膜が片面又は両面に備わる、
第5の態様の中芯原紙。
前記中芯用塗料が塗布されてなる被膜が片面又は両面に備わる、
第5の態様の中芯原紙。
付着膜において、吸水性及び強度に優れる中芯原紙となる。
(第7の態様)
比引張強さが50Nm/g以上、かつ吸水度が220g/m2以上である、
第5の態様又は第6の態様の中芯原紙。
比引張強さが50Nm/g以上、かつ吸水度が220g/m2以上である、
第5の態様又は第6の態様の中芯原紙。
中芯原紙は、比引張強さが50Nm/g以上、かつ吸水度が220g/m2以上であると、中芯原紙とライナーの貼合が容易になされ、かつ包装用紙は強力に貼合されたものとなり好ましい。従来は、中芯原紙の比引張強さを高めようとすると、紙力剤を多量に中芯原紙に付与しなければならず、多量の紙力剤の付与は、貼合糊の吸収性を低下させるものであった。すなわち、比引張強さと吸水度は相反する物性であった。本態様であれば、微細化セルロース繊維の付与によって、相対的に高い比引張強さと相対的に高い吸水度を備えた中芯原紙となる。
本発明によると、吸水性に優れ、中芯原紙を補強する中芯用塗料及びその中芯用塗料が付与された中芯原紙となる。
本発明を実施するための形態を次記に説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態の中芯用塗料は、例えば、包装用紙の製造過程で用いられる。包装用紙は、一般的に中芯原紙と中芯原紙の表面と接着するライナー等によって構成される。製造過程では、紙力剤や貼合糊等が用いられる。紙力剤は中芯原紙やライナーに強度を付与し、貼合糊は強度が付与された中芯原紙とライナーを貼り合わせるために用いられる。ここで、紙力剤が塗布された中芯原紙には、貼合糊が浸透し難くなるという問題がある。紙力剤が塗布された中芯原紙は、表面に紙力剤による被膜が形成される。そして、この被膜は、貼合糊をはじき、中芯原紙が貼合糊を吸収するのを妨げてしまう、というものである。貼合糊が中芯原紙に十分に吸収されないと、ライナーと中芯原紙の貼り合わせが弱く、剥がれやすくなったり、強度が不十分なものとなったりする。本形態の中芯用塗料は、上記実情を鑑みて発明されたものである。
本形態における中芯用塗料は、主に紙の紙力を高める用途で包装用紙に用いられるものであり、水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有することを特徴とし、前記微細化セルロース繊維は、所定の平均繊維長及び平均繊維径を有するものである。中芯用塗料の用途としては、例えば分散媒と混ぜて塗料として、中芯原紙等の被塗布物に塗布する。ここで、分散媒には、水、炭素数3以下の低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、グリセリン等を使用することができる。
(水溶性高分子)
本形態では、水溶性高分子は、それ自体が強度を有し、中芯原紙等の被塗布物を補強すること、微細化セルロース繊維が被塗布物から剥がれ落ちるのを抑制することを目的として中芯用塗料に備わる。水溶性高分子20と微細化セルロース繊維30を含む中芯用塗料を被塗布物10に塗布すると、形成される中芯用塗料の膜(中芯用塗料膜)40bが不均一なものとなる(図1(b)参照)。仮に水溶性高分子20を有し、微細化セルロース繊維30を有しない中芯用塗料を被塗布物10に塗布すると、厚みや濃度が均一な膜(中芯用塗料膜)40aが形成される(図1(a)参照)。この違いは、次の理由によるものと推測される。微細化セルロース繊維は水素結合点を複数有し、微細化セルロース繊維が相互に水素結合点で相互作用して三次元ネットワークを形成する。また、微細化セルロース繊維に備わるカルボキシ基と水溶性高分子が相互作用して、水溶性高分子が微細化セルロース繊維に付着する。そうすると、中芯用塗料膜における微細化セルロース繊維の濃度の差異によって、水溶性高分子の濃度に差が生じる。すなわち、中芯用塗料膜において、微細化セルロース繊維の濃度が高い箇所では水溶性高分子の濃度が高い箇所となり、微細化セルロース繊維の濃度が低い箇所では水溶性高分子の濃度が低い箇所21となる。水溶性高分子は貼合糊の吸収性に乏しいので、被塗布物において水溶性高分子の濃度が相対的に低い箇所は、吸水性に富んだものとなる。一方で、被塗布物において水溶性高分子の濃度が相対的に高い箇所は、吸水性に乏しいものとなる。水系の貼合糊は、高い吸水性を有するほど吸収されるから、水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有する中芯用塗料膜40bが備わる被塗布物の方が、水溶性高分子20を有し、微細化セルロース繊維30を有しない中芯用塗料膜40aが備わる被塗布物よりも吸水度が高いものとなる。
本形態では、水溶性高分子は、それ自体が強度を有し、中芯原紙等の被塗布物を補強すること、微細化セルロース繊維が被塗布物から剥がれ落ちるのを抑制することを目的として中芯用塗料に備わる。水溶性高分子20と微細化セルロース繊維30を含む中芯用塗料を被塗布物10に塗布すると、形成される中芯用塗料の膜(中芯用塗料膜)40bが不均一なものとなる(図1(b)参照)。仮に水溶性高分子20を有し、微細化セルロース繊維30を有しない中芯用塗料を被塗布物10に塗布すると、厚みや濃度が均一な膜(中芯用塗料膜)40aが形成される(図1(a)参照)。この違いは、次の理由によるものと推測される。微細化セルロース繊維は水素結合点を複数有し、微細化セルロース繊維が相互に水素結合点で相互作用して三次元ネットワークを形成する。また、微細化セルロース繊維に備わるカルボキシ基と水溶性高分子が相互作用して、水溶性高分子が微細化セルロース繊維に付着する。そうすると、中芯用塗料膜における微細化セルロース繊維の濃度の差異によって、水溶性高分子の濃度に差が生じる。すなわち、中芯用塗料膜において、微細化セルロース繊維の濃度が高い箇所では水溶性高分子の濃度が高い箇所となり、微細化セルロース繊維の濃度が低い箇所では水溶性高分子の濃度が低い箇所21となる。水溶性高分子は貼合糊の吸収性に乏しいので、被塗布物において水溶性高分子の濃度が相対的に低い箇所は、吸水性に富んだものとなる。一方で、被塗布物において水溶性高分子の濃度が相対的に高い箇所は、吸水性に乏しいものとなる。水系の貼合糊は、高い吸水性を有するほど吸収されるから、水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有する中芯用塗料膜40bが備わる被塗布物の方が、水溶性高分子20を有し、微細化セルロース繊維30を有しない中芯用塗料膜40aが備わる被塗布物よりも吸水度が高いものとなる。
以上のように、本形態では、微細化セルロース繊維が被塗布物に分散して付着し、微細化セルロース繊維と静電的に親和性を有する水溶性高分子が微細化セルロース繊維に誘導されて同被塗布物に付着するので、厚み及び/又は濃度が局所的に異なった中芯用塗料膜が形成される。すなわち、中芯用塗料膜において、特定の箇所では中芯用塗料膜が厚くなったり、高濃度となったりし、別の箇所では中芯用塗料膜が薄くなったり、低濃度となったりする。
紙の紙力は、パルプ繊維相互が水素結合による結びつきにより発現する。紙力剤をパルプ繊維に塗布すると、パルプ繊維に紙力剤の分子鎖が静電的に吸着し、パルプ繊維相互を分子鎖で結合することで、紙力増強効果が得られる。このため、紙力剤は、水溶性高分子が含まれていることでパルプ繊維相互を結びつきやすいものにし、紙力を向上させている。水溶性高分子は、一例として直鎖状、分岐状、網目状の形態を採り得え、本態様では、どの形態の水溶性高分子でも用いることができる。
直鎖状又は分岐状の水溶性高分子を単独で塗料に用いると、形成される塗布膜は、均一な被膜になりやすい。均一な被膜を有する中芯原紙には、貼合糊が吸収され難く、成形された包装用紙が中芯原紙とライナーに剥がれ易いものとなるので好ましくない。しかしながら、直鎖状又は分岐状の水溶性高分子と微細化セルロース繊維を含む中芯用塗料であれば、微細化セルロース繊維の分散に伴い、水溶性高分子も分散したものとなるので、中芯原紙表面に形成される中芯用塗料膜が厚みや濃度の点で不均一となり、好ましい。
網目状の水溶性高分子は、面形状なので分散媒中では、同水溶性高分子相互が三次元的に分散する。すなわち、網目状の水溶性高分子は、分子相互が三次元的な隙間を形成しつつ、低い嵩密度で分散する。この網目状の水溶性高分子と微細化セルロース繊維を含む中芯用塗料を用いることにより、形成される中芯用塗料膜は、網目状の水溶性高分子により形成される三次元的な隙間と、微細化セルロース繊維の三次元ネットワークとにより、嵩密度が一層低いものとなり、不均一な膜となるので好ましい。なお、直鎖状又は分岐状の水溶性高分子は、三次元的に分散するものの、形成される三次元的な隙間は狭く、相対的に高い嵩密度で分散すると推測される。したがって、水溶性高分子は、直鎖状、分岐状、網目状の形態のうち、特に網目状の水溶性高分子がより好ましい。
ここで、上記均一な塗布膜の形成を防止するには、各種添加剤を添加する手法がある。しかしながら、添加剤は、水溶性高分子の可塑性を低下させる場合があり、水溶性高分子を硬化させることとなる。そうすると、中芯用塗料の粘度が高まるため、安定した塗布ができないという問題が生じる。
本形態で用いる水溶性高分子としては、従来から製紙用途で用いられる水溶性高分子を適宜用いることができる。水溶性高分子は、水酸基を有し、この水酸基が微細化セルロース繊維の水素結合点と直接に又は分散媒を介して結合するので、微細化セルロース繊維との親和性に優れる。本形態で用いる水溶性高分子としては、一例に、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、澱粉等を挙げることができる。
澱粉としては、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含有トウモロコシ澱粉等を挙げることができる。これら澱粉の中でも、タピオカ澱粉は、中芯原紙に高い引張強度、圧縮強度を付与することができ、透気度にも優れる点から好ましい。
また、これら水溶性高分子のうち、より少ない塗布量で高い比引張強度、圧縮強度の向上が得られる、ポリアクリルアミド(PAM)、澱粉、ポリビニルアルコールがより好ましい。例えばフィルム転写型の塗布方式によれば、少ない塗布量による塗布が可能であり、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミドを用いた場合、塗布により形成される中芯用塗料膜の膜厚を薄くすることができ、かつ高い強度の被塗布物を製造することができ好ましい。水溶性高分子として、ポリアクリルアミド(PAM)、澱粉、ポリビニルアルコールのうちから選択される1種又は2種以上からなるものとすると、好適である。
ここで、直鎖状とは、分子鎖が分岐しておらず、側鎖がない形態をいい、網目状とは、分子鎖相互が架橋して網目構造を形成する形態をいい、分岐状とは、主鎖に多数の側鎖が結合している形態をいう。また、網目状の製造手法としては、公知の手法を適宜採用することができ、たとえば特開平07−278204号公報や特表平09−510889号公報に記載の手法を採用することができる。
水溶性高分子は、水溶性高分子その他が分散媒に分散された分散液の状態で中芯原紙に塗布される。水溶性高分子の塗付量は、中芯原紙表面に水溶性高分子が片面あたり0.1〜10g/m2、好ましくは1〜5g/m2含有されるように、塗布されているとよい。
(微細化セルロース繊維)
本形態の中芯用塗料は微細化セルロース繊維を有する。本形態の微細化セルロース繊維は平均繊維径を20μm以下としている。当該微細化セルロース繊維を含む中芯用塗料を塗布して中芯原紙に形成された被膜は、厚み及び/又は濃度の点で不均一なものとなる。この中でも、平均繊維径が相対的に小さい微細化セルロース繊維のみを有する中芯用塗料(以下、「中芯用塗料a」ともいう。)を用いて中芯原紙表面に塗布すると、中芯原紙表面に膜状の中芯用塗料による膜(中芯用塗料膜)は、不均一ながらも、やや均一なものに近い被膜となる。中芯用塗料膜は、平均繊維径が相対的に大きい微細化セルロース繊維を有する中芯用塗料(以下、「中芯用塗料A」ともいう。)を中芯原紙表面に塗布した場合であっても形成されるが、両者では形成される膜の形態が異なる。中芯用塗料aによる中芯用塗料膜は、単位面積当たりの中芯用塗料の重さ(すなわち、塗布量(g/m2))が中芯原紙表面において不均一なものとなる。しかしながら、この不均一さの程度が、中芯用塗料aによる中芯用塗料膜の不均一さの方が、中芯用塗料Aによる中芯用塗料膜の不均一さよりも小さい。すなわち、微細化セルロース繊維の平均繊維径が大きいほど、中芯用塗料膜の不均一性が増大する。
本形態の中芯用塗料は微細化セルロース繊維を有する。本形態の微細化セルロース繊維は平均繊維径を20μm以下としている。当該微細化セルロース繊維を含む中芯用塗料を塗布して中芯原紙に形成された被膜は、厚み及び/又は濃度の点で不均一なものとなる。この中でも、平均繊維径が相対的に小さい微細化セルロース繊維のみを有する中芯用塗料(以下、「中芯用塗料a」ともいう。)を用いて中芯原紙表面に塗布すると、中芯原紙表面に膜状の中芯用塗料による膜(中芯用塗料膜)は、不均一ながらも、やや均一なものに近い被膜となる。中芯用塗料膜は、平均繊維径が相対的に大きい微細化セルロース繊維を有する中芯用塗料(以下、「中芯用塗料A」ともいう。)を中芯原紙表面に塗布した場合であっても形成されるが、両者では形成される膜の形態が異なる。中芯用塗料aによる中芯用塗料膜は、単位面積当たりの中芯用塗料の重さ(すなわち、塗布量(g/m2))が中芯原紙表面において不均一なものとなる。しかしながら、この不均一さの程度が、中芯用塗料aによる中芯用塗料膜の不均一さの方が、中芯用塗料Aによる中芯用塗料膜の不均一さよりも小さい。すなわち、微細化セルロース繊維の平均繊維径が大きいほど、中芯用塗料膜の不均一性が増大する。
このように中芯用塗料aと中芯用塗料Aの両者で異なる形態の被膜、つまり不均一性が異なる被膜が形成される理由は定かではないが、おそらく次のように推測される。微細化セルロース繊維は、塗料中に分散された状態化では、サイズのより小さい微細化セルロース繊維は、より緻密に分散し、微細化セルロース繊維と親和性を有する水溶性高分子もまた、より緻密に分散する。この中芯用塗料からなる中芯用塗料膜は、水溶性高分子の緻密な分散ゆえに、中芯原紙表面において塗布量(g/m2)の不均一性が小さいものとなる。一方でサイズのより大きい微細化セルロース繊維は相対的に粗いので塗料中に分散させたとしても、水溶性高分子が緻密に分散しにくく、形成された中芯用塗料膜は、中芯原紙表面において塗布量(g/m2)の不均一性が大きいものになる。なお、中芯用塗料aは、中芯用塗料Aよりも不均一性が小さいが、水溶性高分子のみからなる中芯用塗料よりも不均一性が大きい。
本形態では、微細化セルロース繊維が、吸水性の向上、被塗布物の補強を目的として中芯用塗料に含まれる。微細化セルロース繊維は、水素結合点を多数有し、微細化セルロース繊維の相互作用によって被塗布物の強度を向上する役割を有する。微細化セルロース繊維は、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。原料となるセルロース繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維(原料パルプ)を使用するのが、包装用紙の原料もまた植物繊維であるパルプである場合、相互に静電的に反発し合わないため、及び経済的コストを低廉化できるため好ましい。
微細化セルロース繊維の原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。古紙パルブ以外のパルプは、古紙パルプよりもセルロース繊維の純度が高く、セルロース繊維以外の夾雑物が少ないので好ましい。セルロース繊維の純度が高いパルプから得られた微細化セルロース繊維は、流動性や三次元ネットワークの形成に優れる。
なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。近年のオーガニック成分含有の中芯用塗料の需要が増加傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。特に、セルロース成分を高める木材パルプである、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプが好ましく、晒パルプ(BKP)が好適である。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
微細化セルロース繊維の解繊に先立って、解繊の前処理として、化学的な手法によって微細化セルロース繊維を変性処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。化学的な手法による変性処理は、酸処理、酵素処理、アルカリ処理、酸化処理、還元処理の中から選択された1種又は2種以上の組み合わせによる処理を施すとよい。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、塗料の相分離の抑制に資する。ただし、前処理は、微細化セルロース繊維のアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
上記酸化処理のうち、特に原料パルプをリンオキソ酸によるエステル化を施す処理を行うと、繊維原料を微細化でき、製造される微細化セルロース繊維は、アスペクト比が大きく強度に優れ、チキソトロピー性及び粘度が高いものとなる。リンオキソ酸によるエステル化は、特開2019−199671号公報に掲げる手法で行うことができる。リンオキソ酸によりエステル化された微細化セルロース繊維の一例を次記に示す。セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されてリンオキソ酸でエステル化されており、構造式(1)に示す官能基の導入量が、セルロース繊維1gあたり2.0mmоl以上、好ましくはセルロース繊維1gあたり2.1mmоl以上、より好ましくはセルロース繊維1gあたり2.2mmоl以上であると、粘性及びチキソトロピー性が備わったものとなり好ましい。
〔構造式(1)〕
構造式(1)において、a,b,m,nは自然数である。
A1,A2,・・・,AnおよびA’のうちの少なくとも1つはOであり、残りはR、OR、NHR、及び、なしのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。αは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
〔構造式(1)〕
A1,A2,・・・,AnおよびA’のうちの少なくとも1つはOであり、残りはR、OR、NHR、及び、なしのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。αは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
リンオキソ酸によるエステル化の反応は、セルロース繊維に、リンオキソ酸類及びリンオキソ酸金属塩類の少なくともいずれか一方を含む添加物からなるpH3.0未満の溶液を添加し、加熱し、解繊することで進行する。
添加物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの添加物は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
上記化学的な変性処理のうちの酵素処理は、セルロース原料の容易な解繊を行いうるという観点から有用である。酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するとその後の解繊処理に多くのエネルギーをかけなくても解繊できるので好ましい。なお、セルラーゼ系酵素やヘミセルラーゼ系酵素は、水系媒体下でセルロースの分解が促進される。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ−ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
セルロース原料に対する酵素の添加量は、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まり、例えば0.1〜3質量%とすることができる。酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0〜6.9)であるのが好ましい。酵素処理時の温度は、酵素にセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、30〜70℃とするとよい。酵素処理の時間は、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まり、例えば0.5〜24時間である。
化学的な変性処理を原料パルプに行って解繊すると、平均繊維径の相対的に小さい微細化セルロース繊維が生成する。中芯用塗料は、微細化セルロース繊維を有するが、微細化セルロース繊維は、化学的な変性処理がなされていないものであってもよいし、化学的な変性処理がなされているものであってもよい。
中芯用塗料中の微細化セルロース繊維に占める、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維の百分率は50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは中芯用塗料中の微細化セルロース繊維のすべてが化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維であるとよい。中芯用塗料中の微細化セルロース繊維は、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維と化学的な変性処理がなされた微細化セルロースとで構成される。同百分率が50%未満だと塗料が紙面上でフィルム化しやすくなり、強度向上が見込めるものの、一方でコッブサイズ度が低下するため、糊付等の加工性が乏しいものとなる。
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
原料パルプの解繊は、得られる微細化セルロース繊維の各種物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
<平均繊維径>
微細化セルロース繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、下限が10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、上限が20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下とするとよい。同平均繊維径が10nm未満だと、微細化セルロース繊維の粘度が高まり過ぎて塗工機による安定した塗布がし難くなり、またその粘度の調整に伴い塗料濃度を下げると、所望の塗工量が付かなくなる。同平均繊維径が20μm超だと、パルプと変わらなくなり、微細化セルロース繊維に備わる高い強度が発現し難いものとなる。
微細化セルロース繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、下限が10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、上限が20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下とするとよい。同平均繊維径が10nm未満だと、微細化セルロース繊維の粘度が高まり過ぎて塗工機による安定した塗布がし難くなり、またその粘度の調整に伴い塗料濃度を下げると、所望の塗工量が付かなくなる。同平均繊維径が20μm超だと、パルプと変わらなくなり、微細化セルロース繊維に備わる高い強度が発現し難いものとなる。
微細化セルロース繊維は、セルロースナノファイバーやミクロフィブリル化セルロースを含む概念であるが、セルロースナノファイバーとミクロフィブリル化セルロースは、平均繊維径により区分され、平均繊維径が0.1μmを超える微細化セルロース繊維をミクロフィブリル化セルロースといい、平均繊維径が0.1μm以下の微細化セルロース繊維をセルロースナノファイバーという。
中芯用塗料に含まれる微細化セルロース繊維について、セルロースナノファイバーとミクロフィブリル化セルロースとの配合割合は、例えば、セルロースナノファイバー量(固形分基準(%)):ミクロフィブリル化セルロース量(固形分基準(%))=0〜100:100〜0、0〜20:100〜80、10:90〜20:80、0:100、100:0とすることができる。より好ましくは、同配合割合が10:90〜20:80である。ミクロフィブリル化セルロースの割合が高い形態は好ましいが、セルロースナノファイバーが含まれることで、中芯用塗料の粘度やチキソトロピー性を容易に調節でき好ましい。
微細化セルロース繊維の平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
微細化セルロース繊維の平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%の微細化セルロース繊維の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍〜30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%の微細化セルロース繊維の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍〜30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
<平均繊維長>
微細化セルロース繊維の平均繊維長(単繊維の長さ)は、上限が0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.2mm以下であればよい。微細化セルロース繊維の平均繊維長の下限は、特に限定されない。しかしながら、同平均繊維長の下限を0.1μm以上、好ましくは1μm以上にすると、微細化セルロース繊維のアスペクト比が大きいので、強度により優れた微細化セルロース繊維となり好ましい。
微細化セルロース繊維の平均繊維長(単繊維の長さ)は、上限が0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.2mm以下であればよい。微細化セルロース繊維の平均繊維長の下限は、特に限定されない。しかしながら、同平均繊維長の下限を0.1μm以上、好ましくは1μm以上にすると、微細化セルロース繊維のアスペクト比が大きいので、強度により優れた微細化セルロース繊維となり好ましい。
微細化セルロース繊維の平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
微細化セルロース繊維の平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって任意に調整することができる。
微細化セルロース繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)は、下限が好ましくは10以上、より好ましくは50以上、特に好ましくは100以上とするとよく、上限が好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは300,000以下とするとよい。同アスペクト比が10未満であると微細化セルロース繊維が球形状に近くなり、形成された三次元ネットワークにより形成された隙間が相対的に狭く、緻密になり過ぎる。他方、同アスペクト比が500,000を超えると、微細化セルロース繊維を分散液としたときの粘度が高く、塗工機からの塗料の吐出が不安定になる。
<保水度>
微細化セルロース繊維の保水度は、例えば、250〜500%以上、好ましくは300〜450%、より好ましくは300〜400%である。微細化セルロース繊維の保水度が250%を下回ると、分散性が悪化し、微細化セルロース繊維及び水溶性高分子と、分散媒とで相分離が発生しやすくなる。同保水度が500%を上回ると、製造した包装用紙を乾燥するのに多くのエネルギーを費やすことになる。
微細化セルロース繊維の保水度は、例えば、250〜500%以上、好ましくは300〜450%、より好ましくは300〜400%である。微細化セルロース繊維の保水度が250%を下回ると、分散性が悪化し、微細化セルロース繊維及び水溶性高分子と、分散媒とで相分離が発生しやすくなる。同保水度が500%を上回ると、製造した包装用紙を乾燥するのに多くのエネルギーを費やすことになる。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
<ゼータ電位>
微細化セルロース繊維のゼータ電位は、好ましくは−150〜20mV、より好ましくは−100〜0mV、特に好ましくは−80〜−10mVである。同ゼータ電位が−150mVを下回ると、強度が発揮されないおそれがある。他方、同ゼータ電位が20mVを上回ると、分散安定性が低下するおそれがある。
微細化セルロース繊維のゼータ電位は、好ましくは−150〜20mV、より好ましくは−100〜0mV、特に好ましくは−80〜−10mVである。同ゼータ電位が−150mVを下回ると、強度が発揮されないおそれがある。他方、同ゼータ電位が20mVを上回ると、分散安定性が低下するおそれがある。
<フィブリル化率>
微細化セルロース繊維のフィブリル化率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上である。フィブリル化率が50%を下回ると、繊維の水分保持力が弱く、塗料の流動性が悪化するおそれがある。なお、フィブリル化率とは、セルロース繊維をJIS−P8220:2012「パルプ−離解方法」に準拠して離解し、得られた離解パルプをFiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した値をいう。
微細化セルロース繊維のフィブリル化率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上である。フィブリル化率が50%を下回ると、繊維の水分保持力が弱く、塗料の流動性が悪化するおそれがある。なお、フィブリル化率とは、セルロース繊維をJIS−P8220:2012「パルプ−離解方法」に準拠して離解し、得られた離解パルプをFiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した値をいう。
<結晶化度>
微細化セルロース繊維の結晶化度は、50〜95、より好ましくは60〜90、特に好ましくは65〜85である。同結晶化度が50未満であると、微細化セルロース繊維の強度が低く、紙力剤としての効果が期待できない。同結晶化度が95超であると、微細化セルロース繊維の剛直性が高く、分散性に欠けたものとなる。
微細化セルロース繊維の結晶化度は、50〜95、より好ましくは60〜90、特に好ましくは65〜85である。同結晶化度が50未満であると、微細化セルロース繊維の強度が低く、紙力剤としての効果が期待できない。同結晶化度が95超であると、微細化セルロース繊維の剛直性が高く、分散性に欠けたものとなる。
結晶化度は、JIS−K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、微細化セルロース繊維は、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度は微細化セルロース繊維全体における結晶質部分の割合を意味する。
<擬似粒度分布曲線>
微細化セルロース繊維の擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、微細化セルロース繊維は、繊維長及び繊維径の均一性が高く、中芯用塗料中に含まれる微細化セルロース繊維以外の組成物の分散性が良好になる。
微細化セルロース繊維の擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、微細化セルロース繊維は、繊維長及び繊維径の均一性が高く、中芯用塗料中に含まれる微細化セルロース繊維以外の組成物の分散性が良好になる。
微細化セルロース繊維のピーク値はISO−13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用して微細化セルロース繊維の水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布から微細化セルロース繊維の最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。微細化セルロース繊維は、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線において単一のピークを有することが好ましい。このように、一つのピークを有する微細化セルロース繊維は、十分な微細化が進行しており、微細化セルロース繊維としての良好な物性を発揮することができ、得られる水性塗料による描画が均一化され好ましい。
上記単一のピークとなる微細化セルロース繊維の粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば1000μm以下であるのが好ましく、900μm以下であるのがより好ましく、800μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が1000μmを超えると、均質な解繊がなされていないおそれがある。
微細化セルロース繊維の粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
解繊して得られた微細化セルロース繊維は、中芯用塗料を調製するのに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
<粘度等>
微細化セルロース繊維の濃度を1質量%(w/w)とする水分散液のB型粘度は、10〜300000cP、より好ましくは100〜100000cPとするとよい。同B型粘度が10cP未満であると粘度が低すぎるため、塗料の流動性が高く、塗料中における水溶性高分子の偏りが顕著になるおそれがある。同B型粘度が300,000cPを超えると、粘性が高すぎて塗工が困難となる。
微細化セルロース繊維の濃度を1質量%(w/w)とする水分散液のB型粘度は、10〜300000cP、より好ましくは100〜100000cPとするとよい。同B型粘度が10cP未満であると粘度が低すぎるため、塗料の流動性が高く、塗料中における水溶性高分子の偏りが顕著になるおそれがある。同B型粘度が300,000cPを超えると、粘性が高すぎて塗工が困難となる。
B型粘度は、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。B型粘度は25℃で測定した値である。
(内添紙力剤)
本形態の中芯用塗料は、中芯原紙に内添又は外添により付与するものであるが、生産性を考慮した場合、外添により付与するものであるとしたほうが好ましい。この場合、本形態の中芯用塗料以外の内添紙力剤を別途、中芯原紙に付与することができる。中芯原紙の強度は、本形態の中芯用塗料で主に調節できるが、さらに内添紙力剤を内添することによっても調節できる。
本形態の中芯用塗料は、中芯原紙に内添又は外添により付与するものであるが、生産性を考慮した場合、外添により付与するものであるとしたほうが好ましい。この場合、本形態の中芯用塗料以外の内添紙力剤を別途、中芯原紙に付与することができる。中芯原紙の強度は、本形態の中芯用塗料で主に調節できるが、さらに内添紙力剤を内添することによっても調節できる。
内添紙力剤としては、一般に製紙用途で使用されるものを用いることができる。
内添紙力剤としては、特に限定されず、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤を使用することができる。乾燥紙力剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂等を用いることができる。
内添紙力剤は、カチオン性、アニオン性、両性のうちのいずれのものを用いてもよい。この中でも両性の内添紙力剤は、製造工程においてpHを調整することで塩が生成し難く、また、貼合糊の吸収性に優れるから、好ましい。
内添紙力剤の添加量が多いと、製造工程において異物として析出する場合があり、当該異物は損紙の原因となるため、例えば、同添加量を50kg/絶乾Pt(パルプトン)以下、好ましくは40kg/絶乾Pt以下とするとよい。
(中芯用塗料)
中芯用塗料の塗布量は、基紙の物性、強度、貼合適性等に応じて適宜調整して行うことができる。例えば、中芯用塗料の塗布量は、固形分基準で水溶性高分子及び微細化セルロース繊維の合計量が、例えば片面あたり0.1〜10g/m2、好ましくは0.2〜8g/m2、より好ましくは0.3〜5g/m2となるようにするとよい。中芯用塗料の塗布量が0.1g/m2未満だと、強度や吸水性等の効果に乏しいものとなり、10g/m2超だと、紙基材上で被膜となりやすく中芯原紙内部への貼合糊の吸水性が優れない。
中芯用塗料の塗布量は、基紙の物性、強度、貼合適性等に応じて適宜調整して行うことができる。例えば、中芯用塗料の塗布量は、固形分基準で水溶性高分子及び微細化セルロース繊維の合計量が、例えば片面あたり0.1〜10g/m2、好ましくは0.2〜8g/m2、より好ましくは0.3〜5g/m2となるようにするとよい。中芯用塗料の塗布量が0.1g/m2未満だと、強度や吸水性等の効果に乏しいものとなり、10g/m2超だと、紙基材上で被膜となりやすく中芯原紙内部への貼合糊の吸水性が優れない。
中芯用塗料には微細化セルロース繊維は、固形分基準で上限が50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下含まれているとよい。中芯用塗料における微細化セルロース繊維の含有量が50質量%超だと、中芯用塗料が粘度の高いものとなり、安定した塗布がしにくくなる。また、中芯用塗料に含まれる微細化セルロース繊維の下限は特に限定されないが、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上含まれていると、中芯用塗料における微細化セルロース繊維の分散性が優れたものとなり好ましいが、上記下限を下回ると微細化セルロース繊維が少ないので優れた分散性の効果が弱まる。
(中芯原紙)
本形態の中芯原紙は、中芯用塗料が塗布されてなるものである。特に、中芯原紙は、中芯用塗料が塗布されてなる被膜が表面又は裏面に備わるものとすることができる。ここで、表面とは、製造工程における中芯原紙のフェルト面をいう。裏面とは、製造工程における中芯原紙のワイヤー面をいう。
本形態の中芯原紙は、中芯用塗料が塗布されてなるものである。特に、中芯原紙は、中芯用塗料が塗布されてなる被膜が表面又は裏面に備わるものとすることができる。ここで、表面とは、製造工程における中芯原紙のフェルト面をいう。裏面とは、製造工程における中芯原紙のワイヤー面をいう。
中芯原紙には、JIS P3904に規定される規格である表示坪量115〜200g/m2のものが用いられる。近年では省資源化、軽量化の観点から、坪量が75g/m2前後の軽量中芯のニーズも増大している。本形態には、上記範囲の坪量の中芯原紙であってもよいが、例えば坪量が50〜300g/m2、好ましくは100〜250g/m2である中芯原紙を用いることができる。同坪量が50g/m2未満だと強度に乏しいものとなり、300g/m2超だと、貼合糊が中芯原紙の内部に浸透しすぎるため効果を発揮しにくい。なお、中芯原紙の坪量は、基紙に中芯用塗料を塗布して乾燥させた後の値である。
中芯原紙の原料パルプとしては、公知のパルプを適宜用いることができ、前述の微細化セルロース繊維に用いることができるパルプを1種又は2種以上からなる組み合わせを選択して用いてもよい。
原料パルプのフリーネスは、中芯原紙をJIS P8220:1998「パルプ−離解方法」に準拠して離解し、得られた離解パルプについてJIS P8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定することができる。原料パルプのフリーネスは、100〜600ccCSF、好ましくは150〜550ccCSFになるように調整するとよい。同フリーネスが100ccCSF未満だと、紙層中の平均繊維長が短くなり強度が低下することになる。同フリーネスが600ccCSF超だと、パルプ繊維相互の絡み合いが少なく、貼合糊の吸収性が上がり、紙表面に塗膜が作りにくくなる。なお、フリーネスの調節は、例えば、原料として用いる古紙の選択、公知の叩解処理などの調節手段を取ることによって、行うことができる。
中芯原紙は微細繊維が多いほど紙層が密になりやすく、毛細管現象により貼合糊の吸収性が高くなるため、微細繊維を多く含む古紙パルプを用いて紙層を形成することが好ましい。古紙パルプは繊維自体が脆くなっているため、得られる紙質の強度は低くなる。しかしながら、本形態では、中芯用塗料が中芯原紙に強度を付与するものなので貼合糊の吸収性を維持しつつ、強度に優れた中芯原紙となる。
<比引張強さ>
中芯原紙は比引張強さが30Nm/g以上、好ましくは40Nm/g以上、より好ましくは50Nm/g以上であると破れにくく、例えば箱状に成形した包装用紙を複数段に積み上げても、つぶれ難いものとなる。同比引張強さが30Nm/g未満だと、成形した包装用紙が容易につぶれる場合がある。
中芯原紙は比引張強さが30Nm/g以上、好ましくは40Nm/g以上、より好ましくは50Nm/g以上であると破れにくく、例えば箱状に成形した包装用紙を複数段に積み上げても、つぶれ難いものとなる。同比引張強さが30Nm/g未満だと、成形した包装用紙が容易につぶれる場合がある。
中芯原紙は吸水度が100g/m2以上、好ましくは150g/m2以上、より200g/m2以上であるとよい。同吸水度が100g/m2未満だと貼合糊の中芯原紙への吸収が鈍く、貼合力が弱い、又は一旦貼合された中芯原紙とライナーが剥離するおそれがある。
中芯原紙に用いられる基紙は、以下に例示する手法により製造される。一般に中芯原紙は、コルゲータで波状に加工され、表面及び/又は裏面にライナーと貼り合わされる。貼り合されたものは段ボール等の包装用紙に製造され、多層に加工された包装用紙や、波状の中芯原紙が表面にでている片面包装用紙も知られており、本形態の中芯原紙は、いずれのタイプの段ボールにも使用することができる。
本明細書では、基紙に中芯用塗料が付与されたもの中芯原紙ということができる。基紙は、公知のコルゲータを用いて波型に加工(フルーテッド)することができる。波型加工としては、公知の加工を適宜施すことができる。例えば、Aフルート、AAフルート、AAAフルート、Bフルート、Cフルート、Fフルート、Gフルート等を基紙に施すことができる。
コルゲータとしては、公知のものを適宜用いることができ、一例にシングルフェーサ、ダブルバッカーによって構成される。コルゲータには中芯用塗料が付着した中芯原紙とライナーを貼り合わせるための製糊装置、貼合糊を熱により溶かすため装置等が装備されている。
ライナーは、特に制限なく公知のものを適宜用いることができる。ライナーとしては、一般に多層抄きの板紙が用いられ、原料としては主に古紙パルプやクラフトパルプが用いられる。ライナーには、強度や耐候性が求められるため、ポリアクリルアミドや変性でん粉などの紙力増強剤を添加したり、吸湿防止のためのサイズ剤や撥水剤を使用したりしてもよい。
(中芯原紙の製造方法)
中芯原紙は、基紙の一方の面又は両方の面に中芯用塗料を塗布することで得ることができる。基紙に対して内添法又は外添法により中芯用塗料を付与することができる。一例に外添法による塗布例を次記に示す。中芯原紙は、中芯用塗料を分散液の形態で基紙に塗布して、次いで乾燥して得られる。
中芯原紙は、基紙の一方の面又は両方の面に中芯用塗料を塗布することで得ることができる。基紙に対して内添法又は外添法により中芯用塗料を付与することができる。一例に外添法による塗布例を次記に示す。中芯原紙は、中芯用塗料を分散液の形態で基紙に塗布して、次いで乾燥して得られる。
基紙への塗布は、公知の塗工機を使用して塗布することができる。抄紙工程及び塗布工程を一連の工程で行うオンマシン方式であってもよいし、抄紙工程及び塗布工程を別工程で行うオフマシン方式であってもよい。塗布手法としては、例えば、基紙を中芯用塗料の分散液に浸漬する手法、基紙に同分散液をロールやブレードで塗布する手法、基紙に同分散液を噴霧する手法等を採用することができる。また、抄紙機としては、例えば、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、バーコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等を採用することができる。
塗布後に行う乾燥では、公知の乾燥機を適宜採用することができる。例えば蒸気過熱シリンダ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、加熱熱風エアドライヤ等の乾燥機を単独で、又は複数台を併用して乾燥を行うことができる。
塗料(試験例1〜5)を次記のとおりに調製した。処方を表1に示した。表中、塗料濃度(%)は、次の式1により算出される。セルロースナノファイバー(「CNF」ともいう。)は大王製紙株式会社製のもの、ミクロフィブリル化セルロース(「MFC」ともいう。)は大王製紙株式会社製のものを用いた。表中、PAMとは、ハリコートG−38を示す。
[式1]
塗料濃度(%)=((2質量%セルロースナノファイバー水分散液の固形分質量)+(30質量%ハリコートG−38水分散液の固形分質量))÷((2質量%セルロースナノファイバー水分散液の質量)+(30質量%ハリコートG−38水分散液の質量)+(精製水の質量))×100
[式1]
塗料濃度(%)=((2質量%セルロースナノファイバー水分散液の固形分質量)+(30質量%ハリコートG−38水分散液の固形分質量))÷((2質量%セルロースナノファイバー水分散液の質量)+(30質量%ハリコートG−38水分散液の質量)+(精製水の質量))×100
[試験例1について]
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例1を調整した。
(1)2質量%セルロースナノファイバー水分散液 43g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水 739g
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例1を調整した。
(1)2質量%セルロースナノファイバー水分散液 43g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水 739g
[試験例2について]
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例2を調整した。
(1)2質量%セルロースナノファイバー水分散液 17g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水751g
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例2を調整した。
(1)2質量%セルロースナノファイバー水分散液 17g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水751g
[試験例3について]
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例3を調整した。
(1)2質量%ミクロフィブリル化セルロース水分散液 43g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水715g
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例3を調整した。
(1)2質量%ミクロフィブリル化セルロース水分散液 43g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水715g
[試験例4について]
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例4を調整した。
(1)2質量%ミクロフィブリル化セルロース水分散液 17g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水739g
下記、(1)と(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例4を調整した。
(1)2質量%ミクロフィブリル化セルロース水分散液 17g
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水739g
[試験例5について]
下記、(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例5を調整した。
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水750g
下記、(2)を(3)に投入して、均一になるようにかき混ぜて試験例5を調整した。
(2)30質量%ハリコートG−38(ハリマ化成(株)製)水分散液 100g
(3)精製水750g
セルロースナノファイバーは、大王製紙株式会社製のものを用い、広葉樹漂白パルプをシングルディスクリファイナーで粗解繊した後、高圧ホモジナイザーで微細化処理(解繊)して得たものである。当該セルロースナノファイバーは平均繊維径が50nmであり、これを水に分散させてセルロースナノファイバー水分散液濃度を2.0%(固形分濃度)とした。ミクロフィブリル化セルロースは、大王製紙株式会社製のものを用い、広葉樹漂白パルプをシングルディスクリファイナーで解繊して得たものである。当該ミクロフィブリル化セルロースは平均繊維幅が15μm、平均繊維長が0.17mmであり、これを水に分散させてミクロフィブリル化セルロース分散液濃度を3.0%(固形分濃度)とした。
試験例1〜5それぞれを一般中芯((120g/m2)、大王製紙株式会社製)にワイヤーバーで塗布して、乾燥させ中芯原紙(試験例1a〜5a)を得た。これらとは別に、一般中芯を試験例6aとして用意した。一般中芯には、その両面に塗布した。
試験例1a〜6aについて、坪量、塗料の塗布量、紙厚、密度、透気度(低圧)、比引張強さ、引張強さ、圧縮強さ、コッブサイズ度を測定、算出した。各種測定値、算出値は以下に基づく。結果を表2に示した。
<坪量>
坪量は、JIS P8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法−に準拠して測定した。
坪量は、JIS P8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法−に準拠して測定した。
<塗布量>
塗布量は、JIS P8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法−に準拠して測定した。具体的には、塗料を塗布した後の中芯原紙について秤量した坪量、から塗料を塗布する前の中芯原紙について秤量した坪量を差し引いた値を塗布量とした。
塗布量は、JIS P8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法−に準拠して測定した。具体的には、塗料を塗布した後の中芯原紙について秤量した坪量、から塗料を塗布する前の中芯原紙について秤量した坪量を差し引いた値を塗布量とした。
<紙厚>
紙厚は、JIS P8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法−に準拠して測定した。
紙厚は、JIS P8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法−に準拠して測定した。
<密度>
密度は、JIS P8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法−に準拠して測定した。
密度は、JIS P8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法−に準拠して測定した。
<透気度(低圧)>
透気度(低圧)は、JIS P8117:2009紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法−に準拠して測定した。
透気度(低圧)は、JIS P8117:2009紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法−に準拠して測定した。
<比引張強さ(縦方向)>
比引張強さ(縦方向)は、JIS P8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。ここで縦方向とは、中芯原紙の製造におけるワイヤーの流れ方向をいう。本明細書において同じ。
比引張強さ(縦方向)は、JIS P8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。ここで縦方向とは、中芯原紙の製造におけるワイヤーの流れ方向をいう。本明細書において同じ。
<引張強さ(縦方向)>
引張強さ(縦方向)は、JIS P8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。
引張強さ(縦方向)は、JIS P8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。
<圧縮強さ(縦方向)>
圧縮強さ(縦方向)は、JIS P8126:2015紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。
圧縮強さ(縦方向)は、JIS P8126:2015紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−に準拠して、中芯原紙の縦方向について測定した。
<コッブサイズ度>
コッブサイズ度は、JIS P8140:1998紙及び板紙−吸水度試験方法(コッブ法)−に準拠して中芯原紙の表面及び裏面について測定した。表中、コッブサイズ度の平均は、中芯原紙の表面のコッブサイズ度と裏面のコッブサイズ度の平均値である。
コッブサイズ度は、JIS P8140:1998紙及び板紙−吸水度試験方法(コッブ法)−に準拠して中芯原紙の表面及び裏面について測定した。表中、コッブサイズ度の平均は、中芯原紙の表面のコッブサイズ度と裏面のコッブサイズ度の平均値である。
(考察)
比引張強さ及び引張強さについては、セルロースナノファイバー又はミクロフィブリル化セルロースが含まれた塗料を塗布した中芯原紙の方が、セルロースナノファイバー又はミクロフィブリル化セルロースが含まれていない塗料を塗布した中芯原紙よりも大きい。
比引張強さ及び引張強さについては、セルロースナノファイバー又はミクロフィブリル化セルロースが含まれた塗料を塗布した中芯原紙の方が、セルロースナノファイバー又はミクロフィブリル化セルロースが含まれていない塗料を塗布した中芯原紙よりも大きい。
中芯原紙を補強するための紙力剤に、ハリコートG−38が用いられる場合があるが、本実施例は、ハリコートG−38のみからなる塗料よりも、セルロースナノファイバー又はミクロフィブリル化セルロースが含有する塗料の方が、中芯原紙をより補強する場合があることを示す。
また、セルロースナノファイバーを含有する塗料よりもミクロフィブリル化セルロースを含有する塗料の方が引張強さに優れる場合があることを示す。
コッブサイズ度の結果から、試験例6aは、塗料が塗布されていないので中芯原紙への吸水が抑制されにくく、コッブサイズ度が相対的に高い。一方で、ハリコートG−38のみからなる塗料が塗布された中芯原紙(試験例5a)は、中芯原紙に緻密な被膜が形成されているので中芯原紙への吸水が抑制され、コッブサイズ度が相対的に低い。
セルロースナノファイバーを含有する塗料を塗布した中芯原紙、及びミクロフィブリル化セルロースを含有する塗料を塗布した中芯原紙は、ハリコートG−38のみからなる塗料が塗布された中芯原紙よりもコッブサイズ度が高い。分散されたミクロフィブリル化セルロース(又はセルロースナノファイバー)にハリコートG−38が誘導されて、形成された被膜に局所的な厚み差や濃度差が形成され、被膜の中でも被膜が薄い箇所や低濃度の箇所から吸水されたことによるものと推測される。
また、試験例3a及び試験例4aは、試験例1a及び試験例2aよりもコッブサイズ度が高い。ミクロフィブリル化セルロースにより形成される三次元ネットワークの空隙が、セルロースナノファイバーにより形成される三次元ネットワークの空隙よりも広いことによるものと推測される。
(用語の意義等)
・シングルナノサイズとは、例えば、平均繊維径が10nm未満に微細化されたセルロース繊維ということができるが、これに限定されるものではない。
・シングルナノサイズとは、例えば、平均繊維径が10nm未満に微細化されたセルロース繊維ということができるが、これに限定されるものではない。
本発明の中芯用塗料は、包装用紙、例えば段ボール箱の材料に塗布する塗料として利用可能である。
10 被塗布物
20 水溶性高分子
21 水溶性高分子の濃度が低い箇所
30 微細化セルロース繊維
40a 中芯用塗料膜
40b 中芯用塗料膜
20 水溶性高分子
21 水溶性高分子の濃度が低い箇所
30 微細化セルロース繊維
40a 中芯用塗料膜
40b 中芯用塗料膜
Claims (7)
- 水溶性高分子と微細化セルロース繊維を有し、
前記微細化セルロース繊維は、平均繊維長が0.2mm以下で、かつ平均繊維径が20μm以下である、
ことを特徴とする中芯用塗料。 - 前記微細化セルロース繊維に占める、化学的な変性処理がなされていない微細化セルロース繊維の百分率が50%以上である、
請求項1に記載の中芯用塗料。 - 前記水溶性高分子は、ポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコールのうちから選択される1種又は2種以上からなるものである、
請求項1又は請求項2に記載の中芯用塗料。 - 前記微細化セルロース繊維が固形分基準で10質量%〜50質量%含まれる、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の中芯用塗料。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の中芯用塗料が塗布されている、
ことを特徴とする中芯原紙。 - 前記中芯用塗料が塗布されてなる被膜が片面又は両面に備わる、
請求項5に記載の中芯原紙。 - 比引張強さが50Nm/g以上、かつ吸水度が220g/m2以上である、
請求項5又は請求項6に記載の中芯原紙。
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