腹腔鏡下手術では、外科用器械及び腹腔鏡を腹腔内に配置するために通す直径約5〜10ミリメートルのトロカール又は小径円筒形管の挿入を可能にするよう数個の小さな切開創を腹部に設けることが必要である。腹腔鏡は、術野を照明し、そして拡大イメージを体内からビデオモニタに送り、ビデオモニタは、外科医に器官又は臓器及び組織の拡大図を提供する。外科医は、ライブビデオフィードを監視し、トロカールを通って配置された外科用器械を操作することによって手術を行う。
腹腔鏡下手術における第1ステップは、接近のための小さな切開創を作り、そして腹部に接近して気腹状態を作ることである。気腹状態は、腹腔への二酸化炭素ガスの送気状態である。ガスの送気により、腹腔鏡検査に必要な作業空間が腹部内に作られる。適当な作業空間がいったん作られると、腹腔鏡下手技を実施するために外科用器械を挿入することができる。他の器械の挿入に先立って腹部を穿通して気腹状態を作るこのプロセスは、ファーストエントリー(first entry)と呼ばれる。気腹状態の達成には多種多様な仕方が存在する。一オプションは、ベレス(Veress)針を用いることである。ベレス針は、長さ約12〜15センチメートル、直径約2ミリメートルのものである。外科医は、小さな切開創を作った後にばね押し針を患者の腹部中に挿入する。この針が腹部を破って内側腹部空間に入ると、ばね押し内側スタイレットが前方にはねるようにして動いて鋭利な針を覆い、その目的は、内部臓器を保護することにある。外科医は、適正な配置が得られるようにするために針及びばねの手応えを当てにしている。適正なエントリーがいったん確認されると、ベレス針を通って二酸化炭素を患者の腹腔中に導入し、腹部を拡張して作業空間を作る。
別のオプションは、ハッサン(Hasson)法又はカットダウン(cut down)法であり、この方法では、外科医は、臍部のところに初期切開創を作り、組織を鈍的に切り裂く。縫合糸を切開創の各側で筋膜層中に配置して器具を定位置に保持するのを助ける。腹膜上組織を切り裂いて、腹膜を切開して腹腔に入る。この時点で、ハッサントロカールを切開創中に挿入する。ハッサントロカールは、ハッサントロカールを定位置に保持するための縫合糸結紮部及び/又はバルーンを備えた鈍的先端部を有する。トロカールを切開創中に配置した後、器具を縫合糸及び/又はバルーンにより固定し、トロカールを通って二酸化炭素を患者の体内に圧送して気腹状態を達成する。
別のオプションは、ダイレクトトロカールエントリーである。このオプションでは、外科医は、ブレード付きの又はブレードが付いていないトロカールを用いる。トロカールを光学的に使用することができ、この場合、トロカールは、腹腔鏡を受け入れるよう構成されており、穿通が行われているときに穿通状態を観察するためにエントリー前に腹腔鏡をトロカール中に挿入する。また、腹腔鏡を内部で用いないでトロカールを非光学的に使用することができる。初期切開創を作った後に腹壁の層を貫通してトロカールを配置する。カメラが存在しているので、腹壁の層の全てを穿通中に観察することができる。外科医が自分で腹膜を破ったことがいったん分かると、穿通が止まるのが良く、トロカールの穿刺先端部を僅かに引き戻し又は完全に取り出すのが良く、そしてカニューレを通って二酸化炭素ガスを圧送することによって送気が開始し、それにより気腹状態を作ることができる。
別のオプションは、専用ファーストエントリートロカール、例えばカリフォルニア州所在のアプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレーション(Applied Medical Resources Corporation)製のFIOS(登録商標)ファーストエントリートロカールに係る。光学ダイレクトトロカールエントリーと同様、カメラをFIOS(登録商標)トロカール中に挿入し、腹腔中への挿入中、腹壁層を観察する。専用FIOS(登録商標)トロカールは、先端部に小さな通気穴を有し、その結果、カニューレを通って二酸化炭素を導入するためにトロカールの穿刺を引き戻し又は完全に引き抜く必要なく、カメラが定位置にある状態で穿刺の先端部の小さな通気穴を通って二酸化炭素ガスを導入するようになっている。先端部を通って二酸化炭素を導入することができるので、FIOS(登録商標)トロカールは、伝統的なトロカールと同じほど腹腔中に深く穿通する必要はなく、それにより、送気が開始可能になる前に内部臓器に多大な保護を与える。また、穿刺を引き戻し又は引き抜く必要がないので、挿入状態のカメラによる観察を送気時点で行うことができる。
腹腔に入るための上述のオプションに加えて、一般的に腹部に関して、外科医がどのように入るかを知らなければならない2つの常識がある。ファーストエントリーに関する最も広く用いられている場所は、臍部である。臍部は、臍帯が子宮内で取り付けられていた腹部内の生まれつき弱い部分である。腹部のこの部分には、直筋、動脈又は静脈が存在せず、従って、腹腔に達することが一般的に容易である。加うるに、臍部は、典型的には、瘢痕を隠しやすい場所である。外科医がエントリー部位として臍部を用いるとき、特に、ハッサン法に関し、臍部の底を掴むためにクランプを用いる場合が多く、そして臍部を逆さまにする。この時点において、切開創を作り、そして外科医は、所望通りにカットダウンし、トロカール又はベレス針を挿入する。光学エントリーでは、外科医は、腹壁の層を全て見ることができる。この挿通場所では、外科医は、脂肪組織、白線、横筋筋膜を見ることができ、そして最終的には、腹膜を見ることができる。加うるに、臍部のところで入ると、臍部茎も又見えるはずである。茎は、臍帯の残っているものであり、この茎は、臍部を構成する皮膚から腹膜層まで伸展する。
患者が先に手術を受けていて癒着部が臍部の部位のところに疑われ又はヘルニアが存在する場合、ファーストエントリーは、別の場所で行われることが必要な場合がある。この場合、外科医は、左上四分区間から入る場合が多いであろう。と言うのは、この場所では、生体臓器を損傷させる恐れが低いからである。左上四分区間は、筋層が存在するという点で臍領域とは異なる。臍領域の筋は、患者の腹部と平行に延び、患者の正中の各側で見受けられる。腹直筋の下には、外科医が回避するよう注意を払わなければならない下腹壁静脈及び動脈が延びている。外科医が腹腔の上四分区間に光学的に入っているとき、外科医は、皮膚、脂肪組織、前腹直筋鞘、腹直筋、後腹直筋鞘を貫通して延びる腹壁静脈を見ることができ、そして最終的に腹膜を見ることができる。左上四分区間がポートにとって理想的な位置ではない場合、外科医は、別の場所、例えば、皮下脂肪、直筋鞘及び腹膜が存在する剣状突起下で入るよう選択する場合がある。
次に図1を参照すると、腹部のモデル10が示されており、このモデルは、腹腔鏡下外科的処置を実施するために腹腔中への外科的ファーストエントリーを実施するための臍部を有する。本明細書全体を通じて、モデル10をファーストエントリーモデル10と称する。モデル10は、実質的に扁平な形態を形成するよう支持体14に連結された解剖学的部分12を有している。支持体14は、解剖学的部分12の周囲を包囲し且つこれに連結されると共に解剖学的部分12を一緒に保持するフレームである。具体的に言えば、支持体14は、構造的支持体となると共にモデル10の扁平な形状を維持し且つ中央に配置された解剖学的部分を一方の側から他方の側に穿通することができるようにするほど十分に硬質のプラスチック材料で作られた頂部フレーム及び底部フレームを有する。一変形例では、モデル10は、外方に湾曲した腹を真似るよう僅かに湾曲している。頂部フレーム及び底部フレームは、互いに連結されて頂部フレームと底部フレームとの間に解剖学的部分12の周囲が捕捉される。図1のモデル10は、僅かに細長い形状を形成する5つの辺を有する多角形であり、1つの辺は、全体としてU字形の形態をなして外方に湾曲している。円形解剖学的部分12を枠に納める円形の支持体14を備えたモデル10が図2に示されている。モデル10は、任意形状のものであって良い。フレーム14は、図3に示されているようにモデル10を大型腹腔鏡下訓練装置に連結するよう構成された連結要素16を有する。
次に図3を参照すると、腹腔鏡下訓練装置20が1対の脚部26によってベース24に連結された頂部カバー22を有し、これら脚部は、頂部カバー22をベース24から離隔させている。腹腔鏡下訓練装置20は、患者の胴、例えば腹部を真似るよう構成されている。頂部カバー22は、患者の前面を表し、頂部カバー22とベース24との間に構成された空間又はキャビティ28は、臓器が収められている患者の内部又は体腔を表している。腹腔鏡下訓練装置20は、種々の外科的処置及び患者を真似たこれらの関連の器械を教示し、練習すると共に/或いは実演する上で有用なツールである。組み立てられると、頂部カバー22は、脚部26が実質的に周囲のところに配置されると共に頂部カバー22とベース24との間に相互に連結された状態でベース24の真上に配置される。頂部カバー22及びベース24は、実質的に同一の形状及びサイズのものであり、実質的に同一の周辺輪郭を有している。腹腔鏡下訓練装置20は、ベース24に対して角度をなした頂部カバー22を有する。脚部26は、ベース24に対する頂部カバー22の角度を調節することができるよう構成されている。図3は、ベース24に対して約30〜45°の角度に合わせて調節された訓練装置20を示している。腹腔鏡下訓練装置20がプラボング等(Pravong et al.)により2011年9月29日に出願され、アプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレーションに譲渡された同時係属中の米国特許出願第13/248,449号明細書(発明の名称:Portable laparoscopic trainer)に記載されており、この米国特許出願は、米国特許出願公開第2012/0082970号明細書として公開されており、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
種々の手術法を練習するため、外科用器具が頂部カバー22に設けられたあらかじめ形成されている孔30を通って腹腔鏡下訓練装置20のキャビティ28中に挿入される。これらあらかじめ形成されている孔30は、トロカールを真似たシールを有するのが良く又は患者の皮膚及び腹壁部分を真似ている模倣組織を有するのが良い。例えば、図2に示されている円形のファーストエントリーモデル10は、同形化する円形形状を有する中央円形孔30の場所で頂部カバー22に連結されている。腹腔鏡下訓練装置20の頂部カバー22は、図1に示されているファーストエントリーモデル10と交換可能な取り外し可能なインサート32を備えている。孔30を備えたインサート32は、頂部カバー22の開口部に一致する形状を有する。インサート32が取り外されると、同形化形状を有するファーストエントリーモデル10、例えば図1に示されているファーストエントリーモデルは、頂部カバー20の開口部中に挿入され、ファーストエントリーモデル10上の連結要素16は、モデル10を訓練装置に固定するのを助ける。
種々のツール及び種々の方法を用いて本明細書の背景技術の項で記載されているように頂部カバー20を穿通することができ、それによりモデル10に対する実寸大の手技を実施するだけでなく、頂部カバー22とベース24との間には位置された追加のモデル臓器に対して実寸大の手技を実施することができる。訓練装置20のキャビティ28内に配置されると、臓器モデルは、一般に、ユーザの視界から覆い隠され、ユーザは、この場合、ビデオモニタ34上に表示されるビデオフィードにより手術部位を間接的に視認することによって腹腔鏡下における手術法の実施を練習することができる。ビデオディスプレイモニタ34は、頂部カバー22にヒンジ留めされており、図3に開放向きで示されている。ビデオモニタ34は、イメージをモニタ34に送るための種々の視覚システムに連結可能である。例えば、あらかじめ形成された孔30又はキャビティ28内に設けられたウェブカムのうちの一方を通って挿入され、そして模倣(シミュレーション)手技を完成するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ34及び/又はモバイルコンピュータ計算装置に連結してイメージをユーザに提供するのが良い。ファーストエントリー手技を訓練装置20に連結されたファーストエントリーモデル10に対して実施した後、ファーストエントリーモデル10を取り外してこれに代えて新たなインサートを用いても良く、或いはファーストエントリーモデル10を訓練が続くことができ又は訓練を繰り返すことができるよう再構成されると共に訓練装置20に再連結されても良い。当然のことながら、ファーストエントリー技術を練習するためにファーストエントリーモデル10を訓練装置20とは独立して用いることができる。
次に図4及び図5を参照して、ファーストエントリーモデル10の解剖学的部分12につき以下において説明する。解剖学的部分12は、皮膚層40、臍部茎42、脂肪層44、前腹直筋鞘層46、第1の直筋層48、第2の直筋層50、第3の直筋層52、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56、及び腹膜層58を有する。層40,44,46,48,50,52,54,56,58は、図5及び図6に示されているように互いに上下に配置されており、臍部茎42が皮膚層40の下に位置する層の全てを穿通している。層40,44,46,48,50,52,54,56,58は、接着剤又は他の締結具によって互いに連結されている。一形態では、層40,44,46,48,50,52,54,56は、フレーム14に取り付けられる前に、これらの層を貫通して打ち抜かれると共に皮膚層40と腹膜層58との間にサンドイッチされた少なくとも1つの値札ホルダによって互いに連結される。別の形態では、これら層は、接着剤又は他の締結具なしで互いに保持され、これら層は、頂部フレームと底部フレームとの間にクランプされる。オプションとしての下腹壁静脈及び動脈層60が図4及び図5に示されているように後腹直筋鞘層54と横筋筋膜層56との間に設けられている。
引き続き図4を参照すると、皮膚層40は、鮮やかな色で染色されたシリコーン又は熱可塑性エラストマーから成形される。皮膚層40は、約0.1インチ(2.54mm)の厚さを定める頂面62及び底面64を有する。皮膚層40は、一体形成された臍部茎部分42aを有する。以下、皮膚層40について詳細に説明する。
依然として図4を参照すると、脂肪層44は、黄色を呈する気泡ポリエチレンフォームで作られている。気泡質フォーム層は、中実ではなく、気泡で表面模様付けされている。脂肪層44は、厚さが約0.625インチ(15.88mm)である。前腹直筋鞘層46は、白色を呈する中実エチレンビニルアセテート(EVA)フォームで作られ、厚さが約1ミリメートルである。第1の直筋層48は、中実EVAフォームで作られており、色が赤色であり且つ厚さが約1ミリメートルである。第2の直筋層50は、ピンク色を呈する気泡ポリエチレンフォームで作られている。第2の直筋層50は、気泡テキスチャをもたらす気泡を含み且つ厚さ約0.125インチ(3.17mm)の気泡質フォームである。第3の直筋層52は、赤色を呈する中実EVAフォームで作られ且つ厚さが約1ミリメートルである。後腹直筋鞘層54は、色が白色であり且つ厚さが約1ミリメートルの中実EVAフォームで作られている。横筋筋膜層56は、色が白色であり且つ厚さが約0.25インチ(6.35mm)の気泡ポリエチレンフォームで作られている。筋膜層56は、中実EVAフォーム層とは対照的に気泡ポリエチレンフォームから得られた気泡テキスチャを有する。腹膜層58は、色が白色であり且つ厚さが約1ミリメートルの中実EVAフォームで作られている。下腹壁静脈及び動脈層60は、約0.15インチ(3.81mm)の断面直径を有するシリコーン若しくはクラトン(Kraton)ポリマー又は他のエラストマーで作られた中実又は中空の細長い円筒形構造体を含む。動脈は、色が赤色であり、静脈は、色が青色である。上述した層は、最終使用者に対して極めて真に迫った外観を備える光学エントリーを提供する。
次に図6を参照すると、脂肪層44、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56及び腹膜層58を表す平面図が示されている。これらの層は、幅が約6インチ(152.40mm)であり且つ長さが6.5インチ(165.10mm)である。脂肪層44、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56及び腹膜層58は全て、直径約1インチ(25.40mm)の円形孔66を有する。孔66は、1本の側から約2インチ(50.80mm)離れた状態でこれらの層44,54,56,58の全ての同一の場所に配置されており、その結果、重ね合わされると、孔66は、これらの層を横切る臍部茎42の通路となるよう整列する。
次に図7を参照すると、前腹直筋鞘層46、第1の直筋層48、第2の直筋層50及び第3の直筋層52を表す平面図が示されている。これらの層は、幅が約6インチ(152.4mm)であり且つ長さが6.5インチ(165.10mm)である。前腹直筋鞘層46、第1の直筋層48、第2の直筋層50及び第3の直筋層52は全て、細長い開口部68を有している。細長い開口部68は、これら層の中心線に沿って延び且つ図7では、幅約1インチ(25.40mm)且つ長さ5.75インチ(146.05mm)の長方形の切り欠きであるよう示されている。層46,48,50,52を互いに上下に重ね合わせると、それぞれの開口部68の全てが整列する。層46,48,50,52を他の層44,54,56,58と重ね合わせると、孔66は、細長い開口部68と連通状態にあり又はこれらと整列状態にある。細長い開口部68は、腹の白線を表している。
図4に戻ってこれを参照すると共に更に図8〜図10を参照すると、未硬化であり且つ染色されたシリコーン又は熱可塑性エラストマーを専用モールド70内に注ぎ込むことによって皮膚層40が形成されている。モールド70の上から見た分解組み立て斜視図が図8に示されている。モールド70は、ベース72、頂部74及びコア76を有する。モールド70のベース72は、プラスチック材料を受け入れるキャビティ78を有する。キャビティ78は、多角形であり、実質的に形状が長方形である。キャビティ78は、第2のフロア82を有するウェル80を包囲した第1のフロア79を有している。ウェル80の第2のフロア82は、第1のフロア79の下に約1インチ(25.40mm)下に位置し、この第2のフロアは、コア76をウェル80内に挿入するための穴を有する。ウェル80の断面は、形状が楕円形であり、約1インチ(25.40mm)の長軸及び約0.5インチ(12.7mm)の短軸を有している。コア76の断面も又形状が楕円形であり、ウェル80と相補している。コア76は、約0.75インチ(19.05mm)の長軸及び約0.25インチ(6.35mm)の短軸を有する。コア76がウェル80内の定位置に位置した状態で、約1/8インチ(3.18mm)の空間がコア76の外面とウェル80の内面との間でコア76の周りにぐるりと形成され、シリコーン又は熱可塑性エラストマーがこの空間内に注ぎ込まれ、それにより開口部92を備えた臍部茎42aの管状構造体が形成される。コア76は、長さが約1.5インチ(38.10mm)であり、このコアは、ウェル80内に配置されると、注ぎ込み線の上方に延びる。
モールドキャビティ78は、第1のウェル80の周りに周方向に形成された周方向ウェル84を更に有する。周方向ウェル84は、第1のフロア79から約1/8インチ(3.18mm)深いところに位置した凹状又は湾曲したフロア86を有している。シリコーン又は熱可塑性エラストマーが注ぎ込まれると、平坦な頂部を備えた楕円形トロイド状の形状がプラスチック材料中に形成され、その結果、最終製品の周方向ウェル84の領域に約0.25インチ(6.35mm)の材料の厚さの増大分が得られる。周方向ウェル84は、第1のウェル80の壁と一致した内周88を有する。周方向ウェル84の内周88から周方向ウェル84の外周又は端までの環状距離は、約0.75インチ(19.05mm)である。モールド70のベース72は、結果として得られる成形材料に穴を形成するよう第1のフロア79から直立した複数のペグ90を更に有している。第1のウェル80は、楕円形の形状を有するものとして説明されているが、別の変形例では、第1のウェルは、形状が円形であり、対応した円形コア及び円形の周方向ウェルを有する。
最初にコア76がウェル80内に挿入され、そしてシリコーン又は熱可塑性エラストマーがモールド70のベース72中に注ぎ込まれる。シリコーン又は熱可塑性エラストマーは、ウェル80内に流れ、コア76とウェル80の壁との間の空間により定められる管状構造体を形成する。シリコーン又は熱可塑性エラストマーは、周方向ウェル84中にも流れ、そして凹状フロア86を覆い、それにより約0.25インチ(6.35mm)の増大した厚さの実質的にトロイド状の形状を形成する。増大した厚さの周方向部分94が図4及び図5に見える。シリコーン又は熱可塑性エラストマーは、その液体状態で、第1のフロア79を覆うことに成り、それにより約1/8インチ(3.18mm)の厚さを備えた扁平な領域が形成される。モールド70の頂部74は、モールド70のベース72上に配置される。頂部74は、周囲周りのシリコーンの厚さを減少させるよう注ぎ込まれたシリコーン又は熱可塑性エラストマーの周囲だけを覆うよう構成されている。
シリコーン又は熱可塑性エラストマーが凝固した後、モールドの頂部74を取り外し、成形されたシリコーン又は熱可塑性エラストマーをモールド70から取り出す。コア76も又材料から取り外し、後には皮膚層40を貫通した楕円形開口部92が残される。ウェル80によって皮膚層40の残部と一体成形された管状構造体又は臍部茎42aは、開口部92を備え、かかる管状構造体又は臍部茎は、形状が楕円形であり、約0.75インチ(19.05mm)の長軸及び約0.25インチ(6.35mm)の短軸を有し、壁厚は、約1/8インチ(3.18mm)である。管状構造体42aが逆さまにされ、即ち、この管状構造体は、開口部92中へ押し込まれてモールド70のフロア79と接触状態にある表面が皮膚層の頂面62になる。これにより、有利には、モールドのフロア79が皮膚様のテキスチャを非不相の頂面62に与える表面模様を有することができる。また、管状構造体42aを逆さまにすることによって、臍部茎が形成されるだけでなく、皮膚層40の厚さの増大部分94は、有利には、図4及び図5に明確に見える皮膚層頂面62のところに隆起表面を形成することになる。この隆起部分94は、有利には、縫合糸を通すが、シリコーン又は熱可塑性材料を通って引くことなしに縫合糸を定位置に維持するための材料の余剰厚さ分を提供する。また、開口部92を包囲している周方向隆起部分94が図1で理解できる真に迫った臍効果を生じさせる。隆起周方向部分94が設けられていない皮膚層40の変形例が図2に示されている。臍部茎は長さが約1インチ(25.40mm)であるが、臍部茎は、これよりも長く、即ち、長さが約1.25インチ(31.75mm)〜約2.0インチ(50.80mm)であるよう成形されても良い。皮膚層40は、約0.1インチ(2.54mm)の皮膚層厚さを定める頂面62と底面64を備えた成形材料の扁平なシートである。皮膚層40は、開口部92を有し、管状延長部42が開口部92のところで一体成形されると共に層40の残部と相互に連結されている。開口部92を包囲して約0.2インチ(5.08mm)の増大厚さの周方向隆起部94が設けられている。隆起部分94は、皮膚層40の頂面62の残部中に移行する凸状外面を備えている。
モールド70は、Vero White Plus Fullcure 835材料から3D印刷されて作られたものである。注ぎ込み線からフロア79までの距離は、約0.1インチ(2.54mm)の皮膚層厚さを生じさせるよう約0.1インチ(2.54mm)である。モールド70の頂部74の下の厚さは、周囲沿いにぐるりと、フレーム支持体14への連結を容易にする約0.05インチ(1.27mm)の減少厚さを有する周囲のところに結果として生じる皮膚層厚さについて約0.05インチ(1.27mm)まで減少している。周方向ウェル84の場所のところでは、結果として得られる皮膚層40の厚さは、約0.2インチ(5.08mm)である。最初に、モールド70にモールド離型溶液を吹き付け、そして乾燥するようにする。一変形例では、2.5グラムの部品Aと2.5グラムの部品Bから成る約5グラムのDragon Skin Siliconeを混合させる。変形例として、熱可塑性エラストマー、例えばKraton CL2003Xがそのコストの節約のため及びその縫合性能のゆえに用いられる。約20マイクロリットルの肌色の染料をシリコーン中に混ぜ込む。コア76をウェル80中に挿入し、そしてシリコーン混合物をモールドベース72中に注ぎ込む。混合物を注ぎ込み線まで均等に広げ、それによりウェルの全てが満たされているのを確認する。頂部74をモールド70のベース72上に配置する。過剰のシリコーン混合物を掃除して除去し、モールド70内のシリコーンが加熱ランプ下で約1時間又は加熱ランプなしで2時間かけて乾燥するようにする。
シリコーン混合物が乾燥した後、頂部74を取り外し、成形された皮膚層40を剥がしてベース72から取り外す。コア76も又取り外す。一体に成形された臍部茎42を成形された開口部92に通すことによってこの臍部茎42を逆さまにする。シリコーン接着剤を用意し、注射器を用いてこのシリコーン接着剤を臍部茎42の管の内部に送り込む。1つ又は2つ以上のクランプ、一変形例では3つのクランプ、例えばバインダークリップを用いて逆さまの状態の臍部茎42を閉鎖状態且つ封止状態にクランプして図1又は図2に示されているように星形又はY字形クロージャを有する臍形状を作る。臍部茎42の最も下に位置する部分をクランプして皮膚層の底面64の近くにクランプするのではなく、深い臍部を作る。皮膚層40をひっくり返して臍部42からしみ出ている場合のある過剰のグルーを除去する。接着剤を約1時間かけて乾燥させ、そしてクランプを取り外す。一変形例では、臍部シャフト42bが用意される。臍部シャフト42bは、中央ルーメンを備えた管状であり且つ厚さ約1ミリメートルの白色シリコーンの薄い層で作られている。臍部シャフト42bを臍部茎42aに接着して臍部が層中に深く延びるようにし、それにより、より真に迫った見た目と風合いを生じさせる。臍部シャフト42bを臍部茎42aに接着してルーメンが相互に繋がるようにする。臍部シャフト42bの近位端部を茎42a上に配置してこれに接着し、そして臍部シャフト42bの遠位端部を自由な状態にしておく。別の形態では、臍部シャフトの遠位端部を腹膜層58に接着し又はこれと一体に成形する。
層の全てを同一の方向に適正に差し向けると共に整列させて孔66及び開口部68を互いに重ね合わせる。次に、皮膚層40を逆さまにした状態で、図5に示されているように、臍部茎42aを単独か伸長状態の臍部シャフト42bと共にかのいずれかの状態で脂肪層44の円形孔66中に通し、そして前腹直筋鞘層46、第1の直筋層48、第2の直筋層50、及び第3の直筋層52の細長い開口部68中に通し、次に、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56及び腹膜層58の円形孔66に通す。一変形例では、臍部42は、腹膜層58に当たった状態のまま残され又は別の変形例では、臍部42は、接着剤により腹膜層58に取り付けられ、更に別の変形例では、腹膜層58と一体成形される。下腹壁静脈及び動脈層60も又設けられる。この層60は、植え込み状態の動脈及び静脈を備えた円形孔66を有する層として形成されても良く、或いは、単に、図4に示されているように正中の一方の側に配置された一方が赤色で一方が青色の1対の円筒形シリコーン構造体及び正中の他方の側に配置された一方が赤色で一方が青色の別の1対の円筒形シリコーン構造体から成っていても良い。腹壁静脈及び動脈を表す円筒形シリコーン構造体を隣接の後腹直筋鞘層54及び横筋筋膜層56のうちの少なくとも一方に接着する。次に、値札ホルダ又は他の締結具を用いて、図示の臍部42が最も下に位置する腹膜層58の孔66から突き出た状態で図5に示されているようにこれらの層を互いに連結するのが良い。
図5で理解できるように、皮膚層50及び腹膜層58は、他の内側の層44,46,48,50,52,54,56よりも僅かに大きい。具体的に言えば、皮膚層40及び腹膜層58は、長さ及び幅が約1.25インチ(31.75mm)だけ大きい。内側の層は、長さが約6.5インチ(165.10mm)であり幅が6インチ(152.40mm)であるが、腹膜層58及び皮膚層40は、長さが約8インチ(203.20mm)であり、幅が7.5インチ(190.50mm)である。これら余分の長さ及び幅部分は、支持体14の頂部フレームと底部フレームとの間に捕捉される頂部又は底部フレームのうちの一方のペグをモールドペグ90により形成された皮膚層40の孔に通す。腹膜層58も又、フレームペグを通すための孔を有するのが良い。次に、頂部フレームと底部フレームを互いに熱かしめし、それにより解剖学的部分12を捕捉する。結果的に得られるモデル10は、厚さが約1.5インチ(38.10mm)である。
次に、ファーストエントリーモデル10を腹腔鏡下訓練装置20の頂部カバー22に設けられている開口部内に配置し、そしてこれにしっかりと取り付ける。次に、腹腔鏡下ファーストエントリー手技、例えば本明細書の背景技術の項で説明した手技を上述のトロカール器械のうちの1つ又は2つ以上を採用したモデル10について実施し、それにより臍部を直接貫通するファーストエントリーを含む上述の場所のうちの任意の場所にファーストエントリーを作る。ファーストエントリーのための別の場所は、正中の各側で1/2インチ(12.70mm)の範囲内にあっても良い。かかるファーストエントリーは、外科的には好ましくないが、訓練生は、白線のところで皮膚層40、脂肪層44、後腹直筋鞘層54及び腹膜層58しか観察されない場合、最初のアプローチが誤っていることに有利に且つ迅速に気付くであろう。ピンク色の第1の直筋層48が存在していない場合、これは穿通が誤った場所で行われたという警告を訓練中、訓練生に即座に出すべきである。ファーストエントリー穿通の別の場所は、左上四分区間又は右上四分区間で得られても良い。上述したように、左上四分区間は、筋層が存在しているという点で臍領域とは異なっている。右上又は左上の四分区間での穿通を行っている間、訓練生は、以下の層、即ち、皮膚層40、脂肪層44、前腹直筋鞘層46、第1の直筋層48、第2の直筋層50、第3の直筋層52、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56及び腹膜層58を観察することになる。
本発明のファーストエントリーモデル10は、腹腔鏡下手技に特に適しており、かかるファーストエントリーモデルは、腹腔鏡下訓練装置20と共に使用されるのが良いが、本発明は、これには限定されず、本発明のファーストエントリーモデル10を単独で用いてファーストエントリー外科的処置を同様に効果的に練習することができる。
今図11を参照して、ファーストエントリーシステム100について以下説明するが、この図では、同一の部分は、同一の参照符号で示されている。ファーストエントリーシステム100は、上述したのと同一のファーストエントリーモデル10を含む。ファーストエントリーモデル10は、上述の層のうちの1つ又は2つ以上を有するのが良く、そして、開口部66,68及び/又は臍部42を備えても良く或いは備えなくても良い。ファーストエントリーモデル10は、臓器入れ物102に連結されている。臓器入れ物102は、1つ又は2つ以上の生又は模倣臓器又は組織構造体104を収容している。ファーストエントリーシステム100は、上述したのと同一の腹腔鏡下訓練装置20内に挿入可能である。ファーストエントリーシステム100は、本明細書において以下に説明するように外科訓練生に真に迫った送気訓練上の経験を提供するよう腹部空間の送気(気腹)状態を模倣するよう構成されている。
ファーストエントリーモデル10は、少なくとも、第1の端のところに位置する第1の模倣組織層40、例えば皮膚層40及び第2の端のところに位置する第2の模倣組織層58、例えば腹膜層58を有する。第1の模倣組織層40と第2の模倣組織層58との間には、上述したように任意の数の追加の模倣組織層及び構造体を設けることができる。ファーストエントリーモデル10は、下面及び上面を有する。代表的には、上面は、皮膚層40の頂面62を含み、下面は、腹膜層58の外側に向いた表面を含む。
臓器入れ物102は、開口頂部を備えた内部110を構成するよう1つ又は2つ以上の側壁108に相互連結されたベース106を有する。臓器104は、内部110内に配置されている。入れ物102は、定まったベース106及び定まった側壁108を有する必要はない。これとは異なり、ベース106は、識別可能な側部のない不定形で袋状の容器を形成するのが良く、ベース106は、開口頂部又は口を備えた内部110を備える。かかる形態では、開口頂部は、モデル10の下面に密封的に連結され、このモデルは、代表的には、腹膜層58である。変形例として、開口頂部は、支持体14のフレーム要素相互間に連結され又は捕捉される。別の形態では、入れ物102は、開口頂部周りに位置する半径方向外方に延びるフランジを有しても良い。フランジは、モデル10に連結されるために支持体14のフレーム要素内に捕捉されるよう構成される。別の形態では、ベース106は、剛性であり且つ実質的に平坦であり又は平面状であり、模倣臓器104を支持するのに適しており、このベースは、可撓性側壁108に連結される。別の形態では、入れ物102は、厚さを定める上面及び下面を備えたエラストマー材料の少なくとも1つの層である。この層は、入れ物102を構成する。層の上面は、ファーストエントリーモデル10の下面に密封的に取り付けられる。この上面は、接着剤を用いて又は用いないで取り付け可能である。例えば、接着剤を用いない場合、入れ物102の層は、その周囲周りに且つ腹壁を模倣した複数の層に隣接してフレーム支持体14内に捕捉される。接着剤がモデル10の下面への密封的取り付けを行うよう用いられても良く、その結果、非付着状態又は非取り付け状態の層の一部分が取り付けられた層の一部分によって包囲され又は取り囲まれ、それによりモデル10と入れ物102のこの層との間に拡張可能な分離部又はポケットが作られる。入れ物102の壁/層は、透明な材料で作られるのが良い。
入れ物102は、入れ物102の内部110がファーストエントリーモデル10に密着されて中央部分が非密封状態のままであるようにされるようファーストエントリーモデル10に密封的に連結される。中央部分又はポケットは、密封部分によって包囲される。入れ物102は、ポケットである。一形態では、臓器入れ物102は、開口頂部が最も下に位置する模倣組織層58に密着して閉鎖状態になるようファーストエントリーモデル10に連結される。別の形態では、臓器入れ物102は、ファーストエントリーモデル10の支持体又はフレーム14に連結される。臓器入れ物102は、内部110がファーストエントリーモデル10の少なくとも一部分によって、一形態では、第2の模倣組織層58によって外部から密封されるよう連結され、その結果、第2の模倣組織層58は、入れ物102の開口頂部の少なくとも一部分を閉鎖し又は覆うようになっている。
一形態では、入れ物102は、完全に密閉され、この入れ物は、開口頂部を備えていない。かかる形態では、少なくとも入れ物102の一方の側面は、ファーストエントリーモデル10に隣接して位置し、或いは、入れ物102の少なくとも一方の側面それ自体は、ファーストエントリーモデル10の層のうちの1つ、例えば第2の模倣腹膜組織層58から成る。この形態では、入れ物102は、その周囲周りに位置するフランジ要素を更に有するのが良く、このフランジ要素は、支持体14のフレーム要素内に捕捉されるよう構成される。別の形態では、入れ物102をモデル10に連結する他の締結手段が用いられ、かかる締結手段としては、磁石、面ファスナ、スナップ、フランジ、ねじ、ペグ、摩擦嵌め形態が挙げられるが、これらには限定されない。
入れ物102は、任意適当な材料、例えば弾性ポリマー、エラストマー、ポリマー、シリコーン、クラトン、ラテックス、ゴム、ゲル、透明ゲル、透明シリコーン等で構成できる。入れ物102は、弾性であり、且つインフレート時に拡張することができ、デフレート時にはサイズが小さくなる(収縮する)ことができる。したがって、入れ物102は、バルーン状の物体である。入れ物102内に配置される模倣臓器104は、任意の材料、例えば、シリコーン、クラトン、エラストマー、ポリマー、プラスチック、ゴム、ヒドロゲル、メッシュ材料等で構成でき、そしてかかる模倣臓器は、液体、水、伝熱材料、フィラメント等の充填物を入れることができる。一形態では、模倣臓器104は、腹部の内部の真に迫った外観を提供するよう三次元形状に取り付けられた二次元イメージを有する。別の形態では、模倣臓器104は、滑らかである入れ物102の内面に取り付けられた二次元イメージだけを有する。二次元イメージは、臓器、組織及び色を含む患者の内部のピクチャ(絵)、写真、作図であるのが良い。さらに別の形態では、模倣臓器104は、輪郭付けられた入れ物102の内面に取り付けられた二次元イメージを有する。理解されるように、模倣臓器104は、臓器の表示又は模倣体には限定されず、臓器又は組織として容易には識別できないが、血液、脂肪、筋肉、及び/又は腫瘍等の色を表す組織一般、部分臓器及び/又は着色物を含むことができる。
さらに、入れ物102をファーストエントリーモデル10に封着させると又は閉鎖容器102の取り付けに先立って、負圧が外部に対して入れ物102の内部110内に作られる。弁112が入れ物102の中に真空を作るよう入れ物102を横切って設けられるのが良い。弁112は、真空源、例えば機械的、電気機械的及び/又は手動ポンプ等に連結可能であるように構成されている。入れ物102は、負圧をかけた状態で内部110の容積が図11に示されているように減少するよう構成されている。内部110の減容は、少なくとも入れ物102の側壁を弾性又は軟質プラスチック材料で作ることによって達成され、その結果、入れ物102の側部がファーストエントリーモデル10の近くに引き上げられ、特に真空が加えられたときに第2の模倣組織層58の近くに引き上げられるようになる。当然のことながら、入れ物102の全体が非変形状態で又は負圧を加えたときにファーストエントリーモデル10の近くに引き寄せられるように弾性、軟質プラスチック、又はバルーン状材料で作られるのが良い。変形例として、ベース106が側壁108に対して実質的に剛性である状態で、側壁108だけが負圧下で引っ込められる。かかる形態では、側壁108は、収縮するよう構成され、その結果、ベース106は、真空下においてファーストエントリーモデル10の近くに引き寄せられる。任意の形態において、負圧を加えた結果として、入れ物102内に配置されている模倣臓器104も又、図11に示されているようにベース106と一緒にファーストエントリーモデル10の近くに引き寄せられる。それ故、第2の模倣組織層58とベース106との間の距離が減少する。
ファーストエントリーモデル10が臓器入れ物102の上方に配置されるので、トロカール又は他の器具による第1の模倣組織層40の穿通に続き、トロカール又は他の器具の前進を続けることにより第2の模倣組織層58が穿通される。かかる穿通は、モデル10の一部をなす場合のある任意の追加の介在する層、例えば脂肪層44、前腹直筋鞘層46、第1の腹直筋層48、第2の腹直筋層50、第3の腹直筋層52、後腹直筋鞘層54、横筋筋膜層56、及び下腹壁静脈及び動脈層60のうちの1つ又は2つ以上の穿通を含むことになる。第2の模倣組織層58又は最も下に位置する層の穿通時、真空が解除され、内部110の圧力が突き刺し穴それ自体かトロカール又は他の器具の遠位先端部の孔かのいずれかを介して外部圧力と等しくなる。カリフォルニア州所在のアプライド・メディカル・リソーシーズ・インコーポレーテッド(Applied Medical Resources, Inc.)によって製造されたFIOS(登録商標)トロカールは、有利には、穿通の際の遠位側に設けられたベント穴、及び入れ物102の内部110と外部又は他の流体源とを流体連通させるトロカールの透明な先端部を有する。一形態では、トロカール又は他の器具は、トロカールの近位端部のところに位置するストップコック弁を有し、ユーザは、内部110との均圧を行うためにこのストップコック弁を開く。入れ物102のシールが穿通トロカール又は他の器具等によって壊されると、例えば入れ物102の穿通によって圧力が均等化され、内部110の容積が増大する。内部110の容積が増大すると、可撓性又は弾性側壁108及び/又はベース106が広がり、ベース106とファーストエントリーモデル10との間の距離が増大することになる。トロカール又は他の器具内に設けられたカメラ、例えば腹腔鏡がディスプレイモニタ34に連結されているビデオフィードを介して穿通のライブ視覚化をユーザに提供することになる。シールの穿通及び/又は圧力の均等化は、臓器104がファーストエントリーモデル10に対して図12に示されている入れ物102の送気状態まで落ちるように見える動的映像をユーザに提供する。それ故、本発明は、送気用ガスの使用なしで送気の模倣をもたらす。
入れ物102がモデル10に連結された開口頂部又は口を有する場合又は入れ物102が密閉容器である場合、実演の直前に又は出荷前の工場で弁112を横切って内部110内に負圧を発生させるのが良い。ユーザは、ポンプを取り付けて空気を抜き、そして第1の形態を作るのが良い。一形態では、弁112は、一方向にのみ流れを許容する逆止弁である。別の形態では、弁112は、入れ物102が弁を開放するのに十分な圧縮圧力を受けたときに空気を入れ物102の内部から抜くよう開く一方向圧力弁である。入れ物に加わる圧力を抜くと、弁112が閉まる。それ故、使用に先立って、ユーザは、入れ物を握りしめて一方向圧力弁を横切って空気を入れ物102の内部から抜くのが良く、一方向圧力弁は、入れ物102の握り締めるのを止めた後、閉じて入れ物102を密封する。過剰空気が入れ物102から除去された状態で、入れ物102の内容積が第1の容積から第2の容積に減少する。入れ物102の側壁は、入れ物102内の模倣臓器104の周りにくしゃくしゃの状態になってこれらを覆う。入れ物102を穴あけすると、入れ物内の空気の体積が第2の体積よりも大きい第1の体積に戻る。内部の容積が代表的には重力の影響を受けて増大すると、入れ物102及び/又は模倣臓器104の重量は、重力によって下方に引かれてモデル10から離れる。かかる形態では、入れ物102は、入れ物102の下に、例えば腹腔鏡下訓練装置20の内部に空間がある状態でモデル10から吊り下げられ又はモデル10からぶら下がる。入れ物102の内部の容積の増大は、入れ物102の側壁の引き伸ばしの結果として又は1つ又は2つ以上の場所における入れ物102の側壁の拡開、広がり、又は皺がなくなるような伸びにより生じる。模倣臓器104が入れ物102よりも重いので、模倣臓器104は、重力の影響を受けてモデル10の近くに引き上げられている先の位置から落下することになる。穿通穴により空気は、入れ物102の内部110に入ることができ、入れ物102は、下方に拡張して自然な形態を取る。本質的には、空気は例えば一方向弁又は他の開口部を介して入れ物102から除去され又は排出され、それにより、入れ物102の内容物がモデル10又は模倣組織58の最も下に位置する層の近くの定位置に保持され、ついには、ユーザが入れ物102の内部110中への空気の通路を作り、その時点で、内部が入れ物及び/又は模倣臓器104に作用する重力の作用により開くようになる状況が作られる。入れ物102の内部110への空気の通路は、模擬医学的手技においてモデル10を横切ってトロカールを入れ物102の内部に挿入することによって作られる。入れ物102は、ユーザによる入れ物102内への模倣臓器104のカスタマイズされた選択及び配置が可能になるよう内部110に接近するためのジッパを有するのが良い。模倣臓器104は、入れ物102内にあらかじめ装入されていても良く、或いは、使用する直前にユーザによって装入されても良い。また、入れ物102内の圧力差は、種々のポンプを用いて現場でユーザによって作られるのが良く、或いは、変形例として、入れ物102は、密封されていつでも使用できる状態でユーザに出荷される。
ファーストエントリーシステム100の別の形態では、入れ物102を横切って真空又は差圧が用いられることはない。その代わりに、実際の送気流体が穿通部位又は他の場所で穿通トロカール又は他の器具経由で入れ物102の内部110内に送り込まれる。穿通トロカールは、近位端部が流体源、例えば穿通が行われた後にトロカールの遠位端部に設けられているベント穴を通って送り出されるべき圧力下の空気に連結されている。流体源は、例えば、ガスタンク、空気入りのバルーン、電気又は機械式ポンプ、例えば手動ポンプであるのが良い。かかる形態では、入れ物102は、バルーン状材料で作られる。入れ物102は、側壁108及び/又はベース106が送気圧力下で第1の小容積状態から拡大容積送気状態に拡張するよう構成されている。かかる形態では、入れ物102の内部110の容積が増大する。容積のこの増大は、入れ物壁の拡張によって、例えばバルーン状形態の場合のように弾性材料の引き伸ばしによって又は1つ又は2つ以上の場所における入れ物102の側壁の拡開、広がり、又は皺がなくなるような伸びによって実施できる。容積の変化により、ビデオモニタ34により手技を観察している訓練生に模倣送気状態の映像が提供される。
ファーストエントリーシステム100の更に別の形態では、入れ物102を横切って弁112が設けられ、その結果、圧力が均等化され又は送気流体がトロカール又は他の器具を介するのではなく弁を介して提供されるようになる。弁は、送気を模倣するよう入れ物102の容積を増大させるためにユーザ又は他のオペレータによって開放/閉鎖されるのが良い。
別の形態では、ベース106とファーストエントリーモデル10との間の距離は、ファーストエントリーモデル10の穿通時に作動され、そして第2の模倣組織層58の穿通時に自動的に作動され又は所望に応じてユーザ又は教師によって手動で作動される機械的手段、例えば流体力学的手段、レバー又はバルーンによって増大する。一形態では、入れ物102は、内部110内に模倣臓器104を収容していない。その代わりに、模倣臓器104は、モデル10の隣に位置する入れ物102の外面上に載せられ、模倣臓器104が入れ物102とモデル10との間に配置されるようにする。かかる形態では、入れ物102、例えばバルーンは、入れ物102の外面が模倣臓器104を押してこれをモデル10の下面に対して並置状態にするよう拡張形態を含む。モデル10の下面、例えば腹膜層58が外科的処置の実施の際にトロカール又は他の外科用器具により外科的に穿通されたという少なくとも1つの情報が受け取られると、この少なくとも1つの情報は、プロセッサに伝えられ、プロセッサは、入れ物102の機械的又は電気機械的デフレーションが起こるように指示を出す。デフレート中の入れ物102は、入れ物102の外面上に載せられている模倣臓器104を下方に動かして穿通器具、例えば光学栓塞子/トロカールのバンテージの見晴らしの利く箇所から受け取られた映像の内容が、模倣臓器が引っ込んでいる状態又は模倣臓器が穿通器具から又はモデル10から遠位側に遠ざかっている状態であるようにする。かかる形態では、模倣臓器104は、接着剤によって入れ物102の外面に連結されるのが良い。入れ物102の外部に位置する模倣臓器104の別の形態では、模倣臓器104は、三次元アンダーレイのある状態の又はない状態の二次元イメージを含む。例えば、模倣臓器のイメージは、入れ物102の外部に取り付けられたイメージによって提供され、その結果、入れ物のデフレーション時、イメージがモデル10から遠位側に遠ざかるようにする。別の形態では、イメージは、入れ物102の外面に取り付けられた剛性の平坦は又は輪郭付けられた表面に取り付けられる。
別の形態では、外部に対する内部110の負圧は、入れ物102を横切る弁112を介して又は挿入状態のトロカールを介して回復されるのが良く、その目的は、手技の実施中に気腹状態がなくなることを模倣することにある。負圧の回復は、外科的処置中に圧力の低下をどのように取り扱うかについて学生を訓練するための外科的処置を実施している間、教師によって実施されるのが良い。
ファーストエントリーシステム100の別の形態では、ファーストエントリーシステム100は、腹壁を模倣した複数の層を有する穿通可能な組織構造体、例えば上述のファーストエントリーモデル10又は解剖学的部分12を含む。システム100は、穿通可能な組織構造体に連結された入れ物を含む。入れ物102は、エラストマー材料の少なくとも1つの層として構成された壁を有する。少なくとも1つの層は、入れ物を構成する。入れ物層は、上面及び下面を有する。入れ物層は、入れ物層の上面が穿通可能な組織構造体に隣接して並置関係をなすよう穿通可能な組織構造体に取り付けられている。入れ物層の上面は、穿通可能な組織構造体の下面に密封的に取り付けられている。入れ物層の上面は、接着剤により又は接着剤なしで取り付け可能である。例えば、接着剤なしの場合、入れ物102の層は、上述のフレーム要素相互間でフレーム支持体14内にその周囲に沿って捕捉される。したがって、周囲に隣接して腹壁を模倣した複数の層が設けられる。接着剤は、入れ物層を穿通可能な組織構造体の下面に密封的に取り付けるために用いられるのが良く、その結果、非付着状態又は非取り付け状態の層の一部分が取り付けられた層の一部分によって包囲され又は取り囲まれ、それにより穿通可能な組織構造体と入れ物層との間に拡張可能な分離部又はポケットが作られる。入れ物層は、透明な材料、例えば透明なゲル、透明なシリコーン、又はゴム、ポリマー等を含む任意の透明なエラストマーで作られるのが良い。接着剤は、少なくとも1つのポケットを作るのと同様な仕方で入れ物層を穿通可能な組織構造体に密封的に連結するために使用できる。入れ物層は、穿通可能な組織構造体に封着され、それにより非密封状態の中央部分が残される。入れ物層の非密封中央部分は、穿通可能な組織構造体に封着された入れ物層の部分によって包囲される。非密封中央部分は、中央部分へのガスを含む流体の出入りを阻止するよう密封されたポケットを形成する。したがって、流体を圧力下で中央部分内に慎重に導入することにより、エラストマー壁が拡張すると共にインフレートし、このエラストマー壁は、模倣腹部送気状態を模倣した映像をユーザに提供することになる。入れ物102は、ポケットである。システムは、上述したのと同様な少なくとも1つの組織模倣体を含み、かかる組織模倣体としては、二次元構成物例えばテキスチャ、輪郭及び色を備えた組織、臓器を模倣したイメージ又は三次元構造体が挙げられるが、これには限定されない。入れ物ポケット内に配置された組織模倣体は、模倣血管、脂肪、臓器、腸等を含むことができる。別の形態では、組織模倣体は、入れ物層と一体に形成される。例えば、入れ物層は、複数の層で作られ、各層は、人間の腹部内で見受けられる組織及び臓器を模倣するよう所望の寸法形状及び透明性を有する。組織模倣体は、入れ物層/壁に取り付けられても良く、取り付けられなくても良い。一形態では、組織模倣体は、入れ物層の下面に取り付けられる。かかる形態では、取り付け状態の組織模倣体は、透明な入れ物層越しに視認できる。入れ物層は、第1の形態及び第2の形態を有する。入れ物の第1の形態にある間、入れ物内の組織模倣体は、第2の形態に対して模倣組織構造体の近位側に配置され、この第2の形態にある間、入れ物内の組織模倣体の少なくとも一部は、第1の形態に対して模倣組織構造体から見て遠位側に配置される。流体が入れ物ポケット中に移送可能であり、それにより、入れ物が第1の形態から第2の形態に変換される。これは、幾つかのやり方で達成できる。1つのやり方は、空気をポケットから抜いて真空又は部分真空を作り、その結果、入れ物ポケット層が穿通可能な模倣組織構造体の近くに引き寄せられるようにすることである。穿通可能な模倣組織構造体を外科用器具の遠位先端部、例えば光学栓塞子の遠位先端部で穿通すると、真空が解除され、圧力が均等化され、それにより入れ物層/壁が特に入れ物内に配置されている組織模倣体の重量の影響を受けてたるみ又は穿通可能な模倣組織構造体から遠ざかる。別の例では、第2の形態は、穿通式外科用器具、例えば遠位端部のところの先端部に設けられたベント穴を有すると共に近位端部のところに設けられていて圧力下の流体源に結合可能な流体ポートを備えた光学栓塞子の先端部を通って流体、例えば空気を直接圧力下で送り出すことによって達成される。流体ポートは、送気用ガスの送気をターンオンしたりターンオフしたりするためのルアーロックを有する。流体は、栓塞子の流体ポートに連結された機械式手動ポンプにより送り出されるのが良い。流体は、インフレート状態の袋、例えばバルーン又は他のキャニスタから送り出されても良い。流体源は、管類を介して栓塞子の流体ポートに連結される。流体ポートが開かれ、源からの流体が栓塞子内に送り込まれて先端部のベント穴から送り出され、そして先端部がポケットの内側に配置されている状態で、流体がポケット中に送り込まれる。入れ物層が弾性なので、入れ物層は、ガスの送り込みにより拡張し、それにより組織模倣体を穿通可能な模倣組織構造体から遠ざけ、その結果、本物の腹腔送気(気腹)を模倣した映像を栓塞子の観点から提供する。一形態では、上述のファーストエントリーシステム100は、販売実演目的で並びにファーストエントリー外科的技術を訓練するために手持ち型モデルとして構成される。流体源を流体ポートに連結する管類は、システムを保持すると共にこれを持ち運ぶためのハンドピース又はハンドルとしての役目を果たすことができる。手持ち型モデルは又、例えばハンドルを片手で容易に保持して容易にひっくり返すことができるような寸法形状のものである。したがって、システムは、人間工学的に設計されていて、直径が約3〜6インチ(7.62〜15.24cm)である。穿通可能な模倣組織構造体及び入れ物は、腹壁の近位皮膚内側及び透明な遠位入れ物ポケット層を露出させるフレーム要素を備えた支持体内に収納される。上述したように、組織模倣体は、ポケット上に設けられる模倣又は実際の血管系等のイメージを有するのが良い。販売員又は医師は、流体源に連結された栓塞子を利用することができ、そしてモデルの皮膚側又は頂部側からシステムの穿通を開始することができる。複数の層への穿通を続けることにより、ユーザは、流体ポートをターンオンして流体が栓塞子中に流れることができるようにするのが良い。栓塞子の先端部のベント穴が穿通可能な組織構造体の層を貫通して進むにつれて穿通可能な組織構造体の層で覆われる場合、流体は、流れず、入れ物層は、拡張しない。穿通可能な組織構造体中の最終の層、例えば腹膜層がポケットの存在場所で穿通された場合にのみ、入れ物層は、流体源からの流体が今や組織層によって妨害されることなく自由にポケット中に流れることができるので拡張する。それにより、ユーザは、送気を行うのに栓塞子による穿通がどれほど多く必要であるかを実演すると共に教示することができる。観察者又は学生は、送気が行われている視覚的指標を提供する透明な入れ物層の拡張を迅速に見て知ることになる。穿通箇所も又、組織模倣体のうちのどれがポケットに入るときに遠位先端部と接触しているかどうかを理解するために手持ち型モデルを容易に逆さまにしたときに注目されるのが良い。システムは、任意の先の穿通により作られた開口部内に嵌まり込むよう寸法決めされたプラグ、例えばダウエルピンを更に含み、従って、システムは、再使用可能であり、次の多数回の穿通及び実演が可能である。また、穿通可能な模倣組織構造体内の層のうちの1つ、好ましくは、脂肪性の層、即ち脂肪層を模倣した層は、先の穿通箇所を塞ぐのを助け、構造体を再使用可能にするようセルフシールフォームで作られる。一変形例では、流体源を栓塞子に連結する管類は、栓塞子に入る流体の量及び流速を調節するための流体流れ調整器を備える。流れ調整器は、例えば低い流速、中程度の流速及び高い流速のための1つ又は2つ以上の設定値を有するクリップ型フローレストリクタを含むのが良い。
本明細書において開示したファーストエントリーモデル10及びファーストエントリーシステム100の実施形態に対して種々の改造を行うことができるということは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものと解されてはならず、上述の説明は、好ましい実施形態の単に例示として解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲及び精神に含まれる他の改造例を想到するであろう。